説明

飲料用ディスペンサー

【課題】単一の冷却水槽を使用し、プラス温度とマイナス温度の2種の飲料を注出できる飲料ディスペンサー。
【解決手段】飲料ディスペンサー1は、飲料供給手段2から供給されるビールを冷却する冷却槽本体11内に配置されて、流過するビールBに対する冷却構造を、管路の長さ、内径、材質、肉厚などを変えることでプラス温度用と、マイナス温度用とに異ならせた2系統の飲料用冷却管12、13と、これらの吐出側と連結した2個の注出コックと、冷却槽本体11内に入れた砂糖を混合した不凍液16と、冷却槽本体11の内に配置した冷媒管17と、冷媒管17の周囲に氷20を蓄氷させ、不凍液16をマイナス温度に冷却する冷凍機ユニット19と、冷媒管17周囲の氷量を検出する氷量センサ21と、不凍液16を撹拌する撹拌手段22と、氷量センサ21の検出信号を基に冷凍機ユニット19及び撹拌手段22の駆動する制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用ディスペンサーに関し、詳しくは単一の冷却水槽のみを使用して、マイナス温度の飲料又はプラス温度とマイナス温度の2種の飲料を注出し得るようにした飲料用ディスペンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の飲料用ディスペンサーにおいては、冷却水槽に飲料用冷却管、冷媒管(冷媒蒸発管)、撹拌機、冷凍機を組み込み、冷却水として水を入れ、冷凍機により冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、氷量をセンサーで制御し、冷却水を撹拌して、常温の飲料を飲料用冷却管に通してその周囲の冷却水で冷却し、注出コックからジョッキ等に注出するように構成している。
【0003】
このような飲料用ディスペンサーの場合、冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、氷量をセンサーで制御しているため、飲料を連続注出しても蓄氷された氷が残っている間は、氷の融解熱により冷却水の温度上昇は防止される。
【0004】
このような飲料用ディスペンサーにおいて、冷却水が水の場合、氷の融解熟を利用しているため、冷却水を0℃以下にはできず、従って注出する飲料も0℃以下に冷却することができない。飲料が生ビールの場合、通常+3℃〜5℃に冷却して注出することから、この飲料用ディスペンサーでも特に支障は生じない。
【0005】
最近では、通常+3℃〜5℃に冷却されるビールに関して、更に低温(0℃前後)に冷却し、一層飲み易くしようとする新規で、斬新なビールの飲用技術の開発が試みられている。
【0006】
例えば、特許文献1には、清涼飲料を、−3℃程度の極く低温に冷却して、連続して注出可能であるとしたディスペンサーが提案されている。
【0007】
このディスペンサーは、飲料用冷却管を+3℃〜5℃に冷却する氷冷却式の冷却装置と、飲料用冷却管を0℃以下の低温に保持する不凍液冷却式の冷却装置とを2槽構造で組み合わせたものである。
【0008】
しかし、この特許文献1のディスペンサーの場合、氷冷却式の冷却装置と不凍液冷却式の冷却装置とを2槽構造で組み合わせた構造であり、このため、全体として構造が複雑で高価格にならざるを得ない。
【特許文献1】特開2003−26292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする問題点は、単一の冷却水槽を使用した簡略構造で低価格に構成でき、かつ、マイナス温度の飲料又はプラス温度とマイナス温度の2種の飲料を注出可能とするような飲料用ディスペンサーが存在しない点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る飲料用ディスペンサーは、飲料供給手段から供給される同一又は異種の飲料を冷却する冷却槽本体と、冷却槽本体内に配置され、流過する飲料に対する冷却構造を、管路の長さ、内径、材質、肉厚又はこれらの要素の組み合わせを変えることでプラス温度用と、マイナス温度用とに異ならせた2系統の同一又は異種の飲料用冷却管と、2系統の飲料用冷却管の吐出側と連結した2個の注出コックと、冷却槽本体内に入れた冷却水である不凍液と、冷却槽本体内周辺部に配置した冷媒管と、前記冷媒管に連結され冷媒を冷却してこの冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、不凍液をマイナス温度に冷却する冷凍機ユニットと、前記冷媒管の周囲の氷の氷量を検出する氷量センサと、前記氷によりマイナス温度に冷却される不凍液を撹拌する撹拌手段と、前記氷量センサの検出信号を基に冷凍機ユニット及び撹拌手段の駆動制御を行う制御手段と、を有し、前記2系統の同一又は異種の飲料用冷却管内を流過する各飲料を、両者の冷却構造の相違に応じてプラス温度、マイナス温度に冷却し、前記2個の注出コックからプラス温度と、マイナス温度の冷却飲料を各々注出するように構成したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、冷却槽本体内に配置されて、流過する飲料に対する冷却構造を、管路の長さ、内径、材質、肉厚又はこれらの要素の組み合わせの選定によりマイナス温度用とした飲料用冷却管を採用し、冷凍機ユニットによって冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、不凍液をマイナス温度に冷却することで、簡略構造で低価格に構成でき、かつ、マイナス温度の飲料を注出できる飲料用ディスペンサーを提供することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、冷却槽本体内に配置されて、流過する飲料に対する冷却構造を−0℃以下〜−3℃の範囲のマイナス温度用とした管路の長いコイル状の飲料用冷却管を採用し、冷凍機ユニットによって冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、砂糖を混合した不凍液をマイナス温度に冷却し、更に、氷量センサ、制御手段により冷凍機ユニット及び撹拌手段を適切に制御することで、簡略構造で低価格に構成でき、かつ、−0℃以下〜−3℃のマイナス温度の飲料を注出できる飲料用ディスペンサーを提供することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明と同様、冷却槽本体内に配置されて、流過するビールに対する冷却構造を−0℃以下〜−3℃の範囲のマイナス温度用とした管路の長いコイル状の飲料用冷却管を採用し、冷凍機ユニットによって冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、砂糖を混合した不凍液をマイナス温度に冷却し、更に、氷量センサ、制御手段により冷凍機ユニット及び撹拌手段を適切に制御することで、冷却水槽を使用した簡略構造で低価格に構成でき、かつ、−0℃以下〜−3℃のマイナス温度の冷却ビールを注出できる飲料用ディスペンサーを提供することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、冷却槽本体内に配置されて、流過する飲料に対する冷却構造を、管路の長さ、内径、材質、肉厚又はこれらの要素の組み合わせを変えることでプラス温度用と、マイナス温度用とに異ならせた2系統の同一又は異種の飲料用冷却管を採用し、冷凍機ユニットによって冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、不凍液をマイナス温度に冷却することで、単一の冷却水槽を使用した簡略構造で低価格に構成でき、かつ、プラス温度とマイナス温度の2種の飲料を注出できる飲料用ディスペンサーを提供することができる。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、冷却槽本体内に配置されて、流過する同一又は異種の飲料に対する冷却構造を2系統とする+3℃〜+5℃の範囲のプラス温度用とした管路の短いコイル状の飲料用冷却管及び−0℃以下〜−3℃の範囲のマイナス温度用とした管路の長いコイル状の飲料用冷却管を採用し、冷凍機ユニットによって冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、砂糖を混合した不凍液をマイナス温度に冷却し、更に、氷量センサ、制御手段により冷凍機ユニット及び撹拌手段を適切に制御することで、単一の冷却水槽を使用した簡略構造で低価格に構成でき、かつ、+3℃〜+5℃の範囲のプラス温度と、−0℃以下〜−3℃のマイナス温度の2種の飲料を注出できる飲料用ディスペンサーを提供することができる。
【0016】
請求項6記載の発明によれば、請求項2記載の発明と同様、冷却槽本体内に配置されて、流過するビールに対する冷却構造を2系統とする+3℃〜+5℃の範囲のプラス温度用とした管路の短いコイル状の飲料用冷却管及び−0℃以下〜−3℃の範囲のマイナス温度用とした管路の長いコイル状の飲料用冷却管を採用し、冷凍機ユニットによって冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、砂糖を混合した不凍液をマイナス温度に冷却し、更に、氷量センサ、制御手段により冷凍機ユニット及び撹拌手段を適切に制御することで、単一の冷却水槽を使用した簡略構造で低価格に構成でき、かつ、+3℃〜+5℃の範囲のプラス温度と、−0℃以下〜−3℃のマイナス温度の2種の冷却ビールを注出できる飲料用ディスペンサーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、単一の冷却水槽を使用した簡略構造で低価格に構成でき、かつ、マイナス温度の飲料又はプラス温度とマイナス温度の2種の飲料を注出可能とするような飲料用ディスペンサーを提供するという目的を有するものである。
【0018】
本発明は、飲料供給手段から供給される同一(例えばビール)又は異種(例えばビールとワイン)の飲料を冷却する冷却槽本体と、冷却槽本体内に配置されて、流過する飲料に対する冷却構造を2系統とする+3℃〜+5℃の範囲のプラス温度用とした管路の短いコイル状の飲料用冷却管及び−0℃以下〜−3℃の範囲のマイナス温度用とした管路の長いコイル状の飲料用冷却管と、2系統の同一又は異種の飲料用冷却管の吐出側と連結した2個の注出コックと、冷却槽本体内に入れた冷却水である不凍液と、冷却槽本体内周辺部に配置した冷媒管と、前記冷媒管に連結され冷媒を冷却してこの冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、砂糖を混合した不凍液をマイナス温度に冷却する冷凍機ユニットと、前記冷媒管の周囲の氷の氷量を、着氷開始時点から着氷終了時点に至るまで検出し、着氷終了時点で着氷終了信号を送出する氷量センサと、前記氷によりマイナス温度に冷却される不凍液を撹拌する撹拌手段と、前記氷量センサの検出信号を基に、冷凍機ユニット及び撹拌手段の駆動制御を行い着氷終了信号を受けて駆動停止を行う制御手段と、を有し、前記2系統の飲料用冷却管内を流過する各飲料を、両者の冷却構造の相違に応じて+3℃〜+5℃の範囲のプラス温度、−0℃以下〜−3℃の範囲のマイナス温度に冷却し、前記2個の注出コックからプラス温度とマイナス温度の同一又は異種の冷却飲料を各々注出する構成により上記目的を実現した。
【実施例】
【0019】
以下に、本発明の実施例に係る飲料用ディスペンサーについて詳細に説明する。
【0020】
(実施例1)
本実施例1に係る飲料用ディスペンサー1は、図1、図2に示すように、飲料である常温の例えばビールBを冷却し、プラス温度とマイナス温度の2種の冷却飲料である冷却ビールB1、B2を注出するように構成したものである。なお、本発明においては、この実施例の他、同一(例えばビール)又は異種(例えばビールとワイン)の飲料用ディスペンサー1としてこれを構成できることは勿論である。
【0021】
すなわち、この飲料用ディスペンサー1に対しては、公知のように、常温のビールBを収納したビール樽3と、このビール樽3内に高圧の炭酸ガスを送り、そのガス圧でビール樽3内の常温のビールBを供給管5から送り出す炭酸ガスボンベ4とからなる飲料供給手段2を接続している。
【0022】
本実施例1に係る飲料用ディスペンサー1は、ビール樽3から供給される飲料を冷却する例えば直方体箱型状で、内壁に断熱材11bを貼った例えば金属製からなる冷却槽本体11と、前記冷却槽本体11内に配置されて、流過するビールBに対する冷却構造(詳細は後述する)をプラス温度(例えば+3℃〜+5℃)用と、マイナス温度(例えば−0℃以下〜−3℃)用とに異ならせた2系統の飲料用冷却管12、13と、前記冷却槽本体11の正面に横並びで取り付けられるとともに前記2系統の飲料用冷却管12、13の各吐出側と連結又は接続した2個の注出コック14、15と、前記冷却槽本体11内に入れた冷却水である所要量のマイナス温度でも凍結しない砂糖を混合した不凍液16と、前記冷却槽本体11内における周辺部を巡るようにコイル状に配置した冷媒管17と、冷却槽本体11の下部に設けた冷凍機収容箱体18内に配置されて、前記冷媒管17に接続され冷媒を冷却してこの冷媒管17の周囲に氷20を蓄氷させる圧縮器、凝縮器等を搭載した公知の冷凍機ユニット19と、前記冷媒管17の周囲の氷20の氷量を検出する詳細は後述する氷量センサ21と、前記冷却槽本体11に取り付けられ、前記氷20によりマイナス温度(例えば−0℃以下〜−3℃)に冷却される不凍液16を撹拌し、不凍液16の温度の均一化を図る撹拌手段22と、を有している。
なお、図1において、a,aは冷媒管17が連続配管されていることを意味している。
なお、本発明においては、前述したように、この実施例の他、ビール樽3、炭酸ガスボンベ4を複数配置して、複数の夫々の樽3に同一飲料(例えば本実施例の如くビール)の他、異種(例えばビールとワイン)の飲料を収納し、前記2系統の飲料用冷却管12、13に個別に接続すると、同一(例えばビール)又は異種(例えばビールとワイン)の飲料用ディスペンサー1及びその各構成部として実施できることは勿論である。
【0023】
前記不凍液16としては、マイナス温度(例えば−3℃)まで凍結しないものを使用することが好ましいが、その種類によっては−1℃、−2℃等で凍結するものもある。このような場合は、不凍液16内に砂糖を溶かして濃度管理或いは糖度管理を行なって凝固点降下を図ることで本実施例1に係る飲料用ディスペンサー1に使用する不凍液16とすることができる。
【0024】
ここに、凝固点降下とは、純粋な溶媒に不揮発性の物質を溶かすことで、その溶液の凝固点が純粋な溶媒の凝固点よりも低くなる現象であることが知られている。
【0025】
本実施例1に係る飲料用ディスペンサー1は、更に、図3に示すように、前記氷量センサ21の検出信号を基に前記冷凍機ユニット19及び撹拌手段22の駆動制御を行う制御手段40を有している。
【0026】
前記氷量センサ21の一例を挙げると、例えば、前記冷媒管17の周囲に付着する氷20の量(厚さ)の大小に応じた検出信号を送出する3個のフロートレスセンサを用いた構成を挙げることができる。
【0027】
すなわち、前記氷量センサ21は、図3、図4に示すように、前記冷媒管17に掛け止めるバンド式でフロートレスリレーを利用した第1センサ21aと、この第1センサ21aの下端に水平状態に取り付けた支持板25と、支持板25上で前記冷媒管17に近い側に配置したフロートレスリレーを利用した第2センサ21bと、支持板25上で第2センサ21bより前記冷媒管17から遠い位置に配置したフロートレスリレーを利用した第3センサ21cと、前記第1センサ21a乃至第3センサ21cを制御するセンサコントローラ26とを有している。
【0028】
前記氷量センサ21のセンサコントローラ26は、前記冷却槽本体11内に不凍液16を入れて冷却動作を開始する時点(着氷開始時点)では、第1センサ21a乃至第3センサ21cのすべてが不凍液16中で、オンの検出信号を出力し(図4右欄)、その後前記冷媒管17への着氷中では第1センサ21a、第2センサ21bが氷中でも、第3センサ21cが不凍液16中にあるためオンの検出信号を出力し(図4中欄)、更に着氷が進み第3センサ21cが氷中に入った時点で着氷完了を示すオフの検出信号を出力する(図4左欄)ようになっている。
【0029】
また、センサコントローラ26は、冷却ビールB2が注出され、氷20と熱交換し第3センサ21cが不凍液中に露出してもまだオフの検出信号を出力し、更に氷20が解け、第2センサ21bの一部が露出した時点では、オンの検出信号を出力し冷凍機ユニット19のショートサイクルを防ぐように構成している。
【0030】
そして、前記氷量センサ21の上述した動作が、本実施例1に係る飲料用ディスペンサー1の稼働中繰り返し実行され、また、営業終了後は、何時間後かに初期状態に戻るように構成している。
【0031】
前記制御手段40は、前記氷量センサ21におけるセンサコントローラ26の上述したような検出信号を基に、前記冷媒管17の周囲に付着する氷20の量(厚さ)が予め設定した一定量となるように、換言すれば前記不凍液16の温度が予め設定した一定温度(例えば−0℃以下〜−3℃)となるように前記冷凍機ユニット19の稼働時間や前記撹拌手段22による不凍液16の撹拌時間を制御するように構成している。
【0032】
なお、ビールBを−3℃よりも更に低温に冷却すると凍結してしまうことが知られている。
【0033】
本実施例1に係る飲料用ディスペンサー1について更に詳述すると、前記冷却槽本体11の背面には、プラス温度用の飲料用冷却管12が接続される第1接続栓23と、マイナス温度用の飲料用冷却管13が接続される第2接続栓24とが取り付けられ、これら第1、第2接続栓23、24に対して、前記供給管5に設けた三方弁6或いは分岐継手(図示せず)等を経て常温のビールBが供給されるように構成している。なお、上記三方弁6或いは分岐継手としては、図示例の他、各種構造の三方弁或いは分岐継手等を用いることができる。
なお、本発明においては、前述したように、この実施例の他、ビール樽3、炭酸ガスボンベ4を複数配置して、複数の夫々の樽3に同一飲料(例えば本実施例の如くビール)の他、異種(例えばビールとワイン)の飲料を収納し、前記2系統の飲料用冷却管12、13に個別に接続すると、同一(例えばビール)又は異種(例えばビールとワイン)の飲料用ディスペンサー1及びその各構成部として実施できることは勿論である。
【0034】
前記2系統の飲料用冷却管12、13の内、マイナス温度用の飲料用冷却管13は、図1、図2に示すように、前記冷却槽本体11内において、前記冷却槽本体11において、配管材を多数回巻回してコイル状に形成された前段冷却管31と同じく配管材を多数回巻回してコイル状に形成された後段冷却管32とを1本のパイプからなる連結管33で連結する状態で並設するとともに、前段冷却管31の一端(受け入れ端)を前記第2接続栓24に接続し、後段冷却管32の注出端を前記注出コック15に連結又は接続することにより構成している。図2には、プラス温度用の飲料用冷却管12とマイナス温度用の飲料用冷却管13の2本の管が夫々個別に配設されていることを示す。
【0035】
また、プラス温度用の飲料用冷却管12は、前段冷却管31の回りを巡るように、かつ、略一巻半程度としたコイル状に形成されて、その一端(受け入れ端)を前記第1接続栓23に接続し、注出端を前記注出コック14に連結又は接続することにより構成している。
【0036】
すなわち、前記2系統の飲料用冷却管12、13は、流過するビールBに対する冷却構造として、一方の飲料用冷却管12においては流過するビールBの管路を短くし、他方の飲料用冷却管13においては流過するビールBの管路を長くするというビールBに対する冷却構造を異ならせた構成を採用している。
【0037】
前記撹拌手段22は、図1、図2に示すように、前記冷却槽本体11の蓋部11aの下面に対して前記前段冷却管31、後段冷却管32の各中心に対応する配置でモータ軸に前段羽根35を取り付けた前段モータ34と、モータ軸に後段羽根37を取り付けた後段モータ36とを具備し、前記前段冷却管31、後段冷却管32の各内部で前段羽根35、後段羽根37を回転させることで、前記不凍液16を各々撹拌し、前記冷却槽本体11内の不凍液16全体の温度の均一化を図るように構成している。
【0038】
なお、前記2系統の飲料用冷却管12、13における冷却構造を異ならせる手段としては、上述した場合の他、飲料用冷却管12、13の材質、肉厚、内径、長さ又はこれらの組み合わせ等を異ならせる手段を挙げることができる。
【0039】
次に、上述した本実施例1に係る飲料用ディスペンサー1の作用、効果について説明する。
本実施例1に係る飲料用ディスペンサー1によれば、前記飲料供給手段2から供給される常温のビールBは、前記冷却槽本体11に設けた第1接続栓23からプラス温度用の飲料用冷却管12に流入し、また、第2接続栓24からマイナス温度用の飲料用冷却管13に流入する。
【0040】
そして、前記冷却槽本体11において、上述したように、前記氷量センサ21、制御手段40の動作に応じた前記冷凍機ユニット19の動作により冷媒管17の周囲に氷20を蓄氷させ、これにより不凍液16を、−0℃以下〜−3℃の範囲の温度に冷却するとともに、前記氷量センサ21、制御手段40の動作に応じた前記撹拌手段22の撹拌動作により冷却槽本体11内の不凍液16全体の温度の均一化を実行しておく。
【0041】
これにより、前記第1接続栓23から短い管路からなるプラス温度用の飲料用冷却管12に流入した常温のビールBは、この飲料用冷却管12を流過していく過程でプラス温度(例えば+3℃〜+5℃)に冷却された冷却ビールB1となって、前記注出コック14から注出されることになる。
【0042】
また、第2接続栓24から長いマイナス温度用の飲料用冷却管13に流入に常温のビールBは、この飲料用冷却管13を流過していく過程でマイナス温度(例えば−0℃以下〜−3℃)に冷却された冷却ビールB2となって、前記注出コック15から注出されることになる。
【0043】
本実施例1に係る飲料用ディスペンサー1によれば、上述したように、単一の冷却槽本体11を使用した簡略、安価な構造の基に、プラス温度とマイナス温度の2種の冷却ビールB1、B2を適宜注出することが可能となる。
なお、本発明においては、前述したように、この実施例の他、同一(例えばビール)又は異種(例えばビールとワイン)の飲料用ディスペンサー1及びその各構成部として実施できることは勿論である。
【0044】
(実施例2)
本発明の実施例2に係る飲料用ディスペンサー1Aについて、図5、図6を参照して説明する。なお、本実施例2に係る飲料用ディスペンサー1Aにおいて、実施例1の飲料用ディスペンサー1の場合と同一の要素には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。図6は本実施例2に係る飲料用ディスペンサーの概略横断面図であり、図6中で例示する前段冷却管31と後段冷却管32の構造としては、図示例の他、各種構造のものを用いることができる。
【0045】
本実施例2に係る飲料用ディスペンサー1Aは、図5、図6に示すように、実施例1の飲料用ディスペンサー1における2系統の飲料用冷却管12、13の内の飲料用冷却管12を省いて飲料用冷却管13のみとするとともに、これに伴い、第1接続栓23を省いて第2接続栓24のみとし、更に、注出コック14を省いて注出コック15のみとしたことが特徴である。残余の構成は実施例1の飲料用ディスペンサー1の場合と同一である。
【0046】
次に、上述した本実施例2に係る飲料用ディスペンサー1Aの作用、効果について説明する。
【0047】
本実施例2に係る飲料用ディスペンサー1Aによれば、前記飲料供給手段2から供給される常温のビールBは、前記冷却槽本体11に設けた第2接続栓24からマイナス温度用の飲料用冷却管13に流入する。
【0048】
そして、前記冷却槽本体11において、上述したように、前記氷量センサ21、制御手段40の動作に応じた前記冷凍機ユニット19の動作により冷媒管17の周囲に氷20を蓄氷させ、これにより不凍液16を、−0℃以下〜−3℃の範囲の温度に冷却するとともに、前記氷量センサ21、制御手段40の動作に応じた前記撹拌手段22の撹拌動作により冷却槽本体11内の不凍液16全体の温度の均一化を実行しておく。
【0049】
これにより、前記第2接続栓24から長いマイナス温度用の飲料用冷却管13に流入した常温のビールBは、この飲料用冷却管13を流過していく過程でマイナス温度(例えば−0℃以下〜−3℃)に冷却された冷却ビールB2となって、前記注出コック15から注出されることになる。
【0050】
本実施例2に係る飲料用ディスペンサー1Aによれば、上述したように、単一の冷却槽本体11を使用した簡略、安価な構造の基に、マイナス温度(例えば−0℃以下〜−3℃)の冷却ビールB2を適宜注出することが可能となる。
【0051】
すなわち、本実施例2に係る飲料用ディスペンサー1Aによれば、単一の冷却槽本体11を使用した簡略、安価な構造の基に、マイナス温度(例えば−0℃以下〜−3℃)の冷却ビールB2のみを注出する専用ディスペンサーとして機能させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、上述した場合に限定されるものではなく、アルコール度数がビールの場合よりも大きいワイン、日本酒又は焼酎等の各種飲料の低温冷却用としても応用でき、この場合にはアルコール度数の違いからより低温(例えば−5℃、−8℃等)まで冷却した飲料を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例1に係る飲料用ディスペンサーの概略縦断面図である。
【図2】本実施例1に係る飲料用ディスペンサーの概略横断面図である。
【図3】本実施例1に係る飲料用ディスペンサーにおける氷量センサ、冷凍機ユニット及び撹拌手段の制御系を示すブロック図である。
【図4】本実施例1に係る飲料用ディスペンサーにおける氷量センサの概略構成及び動作を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例2に係る飲料用ディスペンサーの概略縦断面図である。
【図6】本実施例2に係る飲料用ディスペンサーの概略横断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 飲料用ディスペンサー
2 飲料供給手段
3 ビール樽
4 炭酸ガスボンベ
5 供給管
6 三方弁
11 冷却槽本体
11a 蓋部
11b 断熱材
12 飲料用冷却管
13 飲料用冷却管
14 注出コック
15 注出コック
16 不凍液
17 冷媒管
18 冷凍機収容箱体
19 冷凍機ユニット
20 氷
21 氷量センサ
21a 第1センサ
21b 第2センサ
21c 第3センサ
22 撹拌手段
23 第1接続栓
24 第2接続栓
25 支持板
26 センサコントローラ26
31 前段冷却管
32 後段冷却管
33 連結管
34 前段モータ
35 前段羽根
36 後段モータ
37 後段羽根
40 制御手段
B ビール
B1 冷却ビール
B2 冷却ビール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料供給手段から供給される飲料を冷却する冷却槽本体と、
冷却槽本体内に配置され、流過する飲料に対する冷却構造を、管路の長さ、内径、材質、肉厚又はこれらの要素の組み合わせの選定によりマイナス温度用とした飲料用冷却管と、
飲料用冷却管の吐出側と連結した注出コックと、
冷却槽本体内に入れた冷却水である不凍液と、
冷却槽本体内周辺部に配置した冷媒管と、
前記冷媒管に連結され冷媒を冷却してこの冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、不凍液をマイナス温度に冷却する冷凍機ユニットと、
前記冷媒管の周囲の氷の氷量を検出する氷量センサと、
前記氷によりマイナス温度に冷却される不凍液を撹拌する撹拌手段と、
前記氷量センサの検出信号を基に冷凍機ユニット及び撹拌手段の駆動制御を行う制御手段と、
を有し、
前記飲料用冷却管内を流過する飲料を、マイナス温度に冷却し、前記注出コックからマイナス温度の冷却飲料を注出するように構成したことを特徴とする飲料用ディスペンサー。
【請求項2】
飲料供給手段から供給される飲料を冷却する冷却槽本体と、
冷却槽本体内に配置され、流過する飲料に対する冷却構造を−0℃以下〜−3℃の範囲のマイナス温度用とした管路の長いコイル状の飲料用冷却管と、
飲料用冷却管の吐出側と連結した注出コックと、
冷却槽本体内に入れた冷却水である砂糖を混合した不凍液と、
冷却槽本体内周辺部に配置した冷媒管と、
前記冷媒管に連結され冷媒を冷却してこの冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、不凍液をマイナス温度に冷却する冷凍機ユニットと、
前記冷媒管の周囲の氷の氷量を、着氷開始時点から着氷終了時点に至るまで検出し、着氷終了時点で着氷終了信号を送出する氷量センサと、
前記氷によりマイナス温度に冷却される不凍液を撹拌する撹拌手段と、
前記氷量センサの検出信号を基に冷凍機ユニット及び撹拌手段の駆動制御を行い着氷終了信号を受けて駆動停止を行う制御手段と、
を有し、
前記飲料用冷却管内を流過する飲料を、−0℃以下〜−3℃の範囲のマイナス温度に冷却し、前記注出コックからマイナス温度の冷却飲料を注出するように構成したことを特徴とする飲料用ディスペンサー。
【請求項3】
飲料供給手段から供給される常温のビールを冷却する冷却槽本体と、
冷却槽本体内に配置され、流過するビールに対する冷却構造を−0℃以下〜−3℃の範囲のマイナス温度用とした管路の長いコイル状の飲料用冷却管と、
飲料用冷却管の吐出側と連結した注出コックと、
冷却槽本体内に入れた冷却水である砂糖を混合した不凍液と、
冷却槽本体内周辺部に配置した冷媒管と、
前記冷媒管に連結され冷媒を冷却してこの冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、不凍液をマイナス温度に冷却する冷凍機ユニットと、
前記冷媒管の周囲の氷の氷量を、着氷開始時点から着氷終了時点に至るまで検出し、着氷終了時点で着氷終了信号を送出する氷量センサと、
前記氷によりマイナス温度に冷却される不凍液を撹拌する撹拌手段と、
前記氷量センサの検出信号を基に冷凍機ユニット及び撹拌手段の駆動制御を行う制御手段と、
を有し、
前記飲料用冷却管内を流過するビールを−0℃以下〜−3℃の範囲のマイナス温度に冷却し、前記注出コックからマイナス温度の冷却ビールを注出するように構成したことを特徴とする飲料用ディスペンサー。
【請求項4】
飲料供給手段から供給される同一又は異種の飲料を冷却する冷却槽本体と、
冷却槽本体内に配置され、流過する飲料に対する冷却構造を、管路の長さ、内径、材質、肉厚又はこれらの要素の組み合わせを変えることでプラス温度用と、マイナス温度用とに異ならせた2系統の同一又は異種の飲料用冷却管と、
2系統の飲料用冷却管の吐出側と連結した2個の注出コックと、
冷却槽本体内に入れた冷却水である不凍液と、
冷却槽本体内周辺部に配置した冷媒管と、
前記冷媒管に連結され冷媒を冷却してこの冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、不凍液をマイナス温度に冷却する冷凍機ユニットと、
前記冷媒管の周囲の氷の氷量を検出する氷量センサと、
前記氷によりマイナス温度に冷却される不凍液を撹拌する撹拌手段と、
前記氷量センサの検出信号を基に冷凍機ユニット及び撹拌手段の駆動制御を行う制御手段と、
を有し、
前記2系統の飲料用冷却管内を流過する同一又は異種の各飲料を、両者の冷却構造の相違に応じてプラス温度、マイナス温度に冷却し、前記2個の注出コックからプラス温度と、マイナス温度の冷却飲料を各々注出するように構成したことを特徴とする飲料用ディスペンサー。
【請求項5】
飲料供給手段から供給される同一又は異種の飲料を冷却する冷却槽本体と、
冷却槽本体内に配置され、流過する飲料に対する冷却構造を2系統とする+3℃〜+5℃の範囲のプラス温度用とした管路の短いコイル状の飲料用冷却管及び−0℃以下〜−3℃の範囲のマイナス温度用とした管路の長いコイル状の飲料用冷却管と、
2系統の同一又は異種の飲料用冷却管の吐出側と連結した2個の注出コックと、
冷却槽本体内に入れた冷却水である砂糖を混合した不凍液と、
冷却槽本体内周辺部に配置した冷媒管と、
前記冷媒管に連結され冷媒を冷却してこの冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、不凍液をマイナス温度に冷却する冷凍機ユニットと、
前記冷媒管の周囲の氷の氷量を、着氷開始時点から着氷終了時点に至るまで検出し、着氷終了時点で着氷終了信号を送出する氷量センサと、
前記氷によりマイナス温度に冷却される不凍液を撹拌する撹拌手段と、
前記氷量センサの検出信号を基に、冷凍機ユニット及び撹拌手段の駆動制御を行い着氷終了信号を受けて駆動停止を行う制御手段と、
前記氷量センサの検出信号を基に冷凍機ユニット及び撹拌手段の駆動制御を行う制御手段と、
を有し、
前記2系統の同一又は異種の飲料用冷却管内を流過する各飲料を、両者の冷却構造の相違に応じて+3℃〜+5℃の範囲のプラス温度、−0℃以下〜−3℃の範囲のマイナス温度に冷却し、前記2個の注出コックからプラス温度とマイナス温度の冷却飲料を各々注出するように構成したことを特徴とする飲料用ディスペンサー。
【請求項6】
飲料供給手段から供給される常温のビールを冷却する冷却槽本体と、
冷却槽本体内に配置され、流過するビールに対する冷却構造を2系統とする+3℃〜+5℃の範囲のプラス温度用とした管路の短いコイル状の飲料用冷却管及び−0℃以下〜−3℃の範囲のマイナス温度用とした管路の長いコイル状の飲料用冷却管と、
2系統の飲料用冷却管の吐出側と連結した2個の注出コックと、
冷却槽本体内に入れた冷却水である砂糖を混合した不凍液と、
冷却槽本体内周辺部に配置した冷媒管と、
前記冷媒管に連結され冷媒を冷却してこの冷媒管の周囲に氷を蓄氷させ、不凍液をマイナス温度に冷却する冷凍機ユニットと、
前記冷媒管の周囲の氷の氷量を、着氷開始時点から着氷終了時点に至るまで検出し、着氷終了時点で着氷終了信号を送出する氷量センサと、
前記氷によりマイナス温度に冷却される不凍液を撹拌する撹拌手段と、
前記氷量センサの検出信号を基に、冷凍機ユニット及び撹拌手段の駆動制御を行い着氷終了信号を受けて駆動停止を行う制御手段と、
を有し、
前記2系統の飲料用冷却管内を流過する各ビールを、両者の冷却構造の相違に応じて+3℃〜+5℃の範囲のプラス温度、−0℃以下〜−3℃の範囲のマイナス温度に冷却し、前記2個の注出コックからプラス温度とマイナス温度の冷却ビールを各々注出するように構成したことを特徴とする飲料用ディスペンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−100309(P2010−100309A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273004(P2008−273004)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(592126027)ボクソン工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】