説明

飲料粉末から飲料を調製するための方法、及びこの方法を実施するための装置

本発明は、可溶性飲料粉末から飲料を調製するための方法であって、分与1回分の可溶性飲料粉末を計量するステップと、可溶性飲料粉末の分与物を加熱するステップと、加熱された可溶性飲料粉末の分与物を希釈剤で希釈するステップとを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性粉末の飲料材料の溶解による飲料の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料ディスペンサ装置は通常、1つ又は複数の可溶性の飲料材料を液体と相互作用させることによって、可溶性の飲料材料から飲料を調製する。いくつかのタイプの飲料ディスペンサでは、飲料を調製するために、粉末が、例えば水などの液体と混合される。それにより、特にコーヒー、茶、チョコレート飲料、麦芽を含む飲料、スープ、幼児用調合乳、カプチーノなどの飲料の分野では粉末を用いて飲料を調製する。したがって、周知の飲料ディスペンサは、貯蔵チャンバに貯蔵された予め決められた量の可溶性粉末を、混合チャンバ又は専用の容器に分与(dosing)するための分与装置を備えている。混合チャンバ又は専用の容器では、液体が導入され、可溶性粉末と相互作用するように、したがって食品配合物を形成することができるようになっている。
【0003】
しかしながら、これまでに概略を述べた原理を使用する既存の飲料ディスペンサ装置には、特に粉末を低温の希釈剤で溶解することによって低温の飲料を調製するとき、可溶性飲料粉末が必ずしも完全に溶解するわけではないという不都合がある。したがって、調製された飲料中には、分散していない又は溶解していない粉末の残留物が存在し、このため、調製された飲料が不均一なものになり、したがって魅力的な外観にならない。さらに、可溶性粉末の全分与量が完全に溶解しないため、最終の飲料は期待された味を示さず、実際には、最適な最終の飲料を得るために、希釈剤の体積と粉末の量との間の微調整がある。溶解が効率的ではない場合、最終の飲料は期待された味にならない。溶解しない材料が、口の中で砂状の感覚をもたらす可能性もあり、及び/又は飲み終えたとき、カップの底に残り物が生じ、その結果、消費者によくない影響をもたらす。
【0004】
解決策は、可溶性飲料粉末の配合物に添加剤を加え、溶解を改善することを提案してきたが、こうした添加剤は飲料の味に影響を及ぼす、又は既存の粉末の製造コストを高める可能性がある。例えば国際公開第2007/088195号パンフレットは、低温での溶解特性を改善するために、食物の粉末に流動剤を加えることを提案している。
【0005】
欧州特許第740904号明細書は、塊になったココア及び砂糖を含む粉末の湿潤性を改善する方法について記載しており、その方法は粉末を電磁放射に曝すことにある。しかしながら、湿潤性の改善は、飲料の調製時に粉末の適切な溶解を得るには不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、飲料粉末に添加剤を用いずに、可溶性飲料粉末の溶解性を改善する問題を解決することを目的とする。
【0007】
本発明は、可溶性飲料粉末の溶解時間、及び飲料の復元時間を短縮する問題を解決することを目的とする。
【0008】
本発明は、可溶性飲料粉末を低温の希釈剤で溶解するとき、可溶性飲料粉末の復元を改善する問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様によれば、本発明は、可溶性飲料粉末から飲料を調製するための方法であって、
可溶性飲料粉末の分与物を計量するステップと、
可溶性飲料粉末の分与物を加熱するステップと、
加熱された可溶性飲料粉末の分与物を希釈剤で希釈するステップと
を含む方法に関する。
【0010】
本発明の方法は、分与し、その後溶解する粉末に熱を加えるという原理に基づいている。実際には、より早いステップ、例えば工業プロセスの粉末の調製中に粉末に熱を加えても、本発明において観察することができる溶解改善の効果はもたらされないことが認められている。次いで、加熱された飲料粉末の分与物は一般に、加熱された後、5分未満で溶解される。本発明の好ましい実施形態によれば、加熱された飲料粉末の分与物は、加熱された後、直ちに溶解される。飲料粉末の分与物に与えられる熱の量は、粉末の性質、特に水の含有量及び粉末の水分活性によって決まる。前記性質に応じて、熱の量は、例えば粘着性、メイラード反応、褐変、結晶化、分解のような望ましくない反応を引き起こす、又は脂肪の溶解及び粉末マトリックスからの浸出のような粉末の物理的性質を変化させる熱の量より少ないことが好ましい。したがって、加熱のための時間又は加熱のエネルギーは、各粉末の性質及び組成に従って決めることができる。
【0011】
本発明の方法の加熱ステップは、任意の熱源を用いて実施することができる。しかしながら、その方法は飲料ディスペンサ装置において実施することが好ましく、その場合、飲料の調製プロセスが短くなければならないため、飲料粉末の分与物は、マイクロ波の範囲の電磁エネルギーを加えることによって加熱することが好ましい。
【0012】
本発明の方法は、高温又は低温の希釈剤を用いて実施することができる。さらに低温の希釈剤を用いた低温の飲料の調製について、改善された溶解及び/又は復元の結果が認められている。特に低温の飲料は、0℃と周囲温度の間、より具体的には2〜15℃の間、さらに好ましくは4〜10℃の間を含めた温度を示す希釈剤を用いて調製することができる。
【0013】
本発明の方法は、コーヒー、茶、チョコレート飲料、麦芽を含む飲料、スープ、幼児用調合乳、ミルク、クリーマ及びカプチーノのような任意のタイプの可溶性飲料粉末を用いて実施することができる。本発明の方法では、ミルクベースの粉末、クリーマ及びチョコレートベースの粉末の場合に特定の改善が認められているが、実際のところ、これらの製品は、通常は低温で溶解することが困難である。
【0014】
本願において、「粉末」という用語は、粉体、細かい粒状物、固まっていない粒子、塊、顆粒のような任意の自由に流動する固体製品を含む。この用語は、ペレットにした可溶性製品又は可溶性錠剤も含む。
【0015】
簡単な実施形態によれば、可溶性飲料粉末を容器に分与することが可能であり、次いで、可溶性飲料粉末の分与物を容器の内部で加熱することができる。この加熱ステップの後、容器に希釈剤が導入される。
【0016】
この実施形態の第1の方式によれば、容器はカップ又は混合チャンバとすることができる。この方式は、粉末を希釈剤で溶解する前に最終のカップ又は混合チャンバに分与する、飲料分配装置に適用することができる。
【0017】
この実施形態の第2の方式によれば、容器はカプセルとすることができる。この方式は、カプセルの内部に予め分与された粉末が、次いでカプセルに希釈剤を直接注入することによって溶解される、飲料分配装置に適用することができる。
【0018】
第2の態様によれば、本発明は、
粉末供給手段と、
希釈剤供給手段と、
可溶性飲料粉末の分与物に熱を加えるように構成された加熱装置と
を備える、飲料粉末から飲料を調製するための可溶性飲料製造装置に関する。
【0019】
加熱装置は、粉末の分与物を希釈剤と混合する前に加熱することが可能な任意の手段とすることができる。伝導、対流又は輻射加熱手段を用いることができる。加熱手段のタイプに応じて、粉末を同時に攪拌し、粉末の分与物全体を通して加熱を均質化することができる。加熱装置は、マイクロ波の範囲の電磁エネルギーを供給するように構成されたマグネトロンであることが好ましい。
【0020】
第1の実施形態によれば、粉末供給手段は、粉末貯蔵手段及び粉末分与手段を備えることができる。この第1の実施形態は特に、粉末を希釈剤で溶解する前に最終のカップ又は混合チャンバに分与する飲料ディスペンサ装置に関する。
【0021】
粉末供給手段は、出口が粉末分与手段に向けられたマルチドーズ型(複数回分与型)容器のような、飲料粉末を供給するための任意の周知の装置とすることができる。このマルチドーズ型容器は、タンク又は槽、小袋、サッシェ、ブリキ製容器又はキャニスタとすることができ、また使い捨てのもの又は使い捨てではないものとすることができる。粉末分与手段は、粉末の分与物を加熱することができる飲料製造装置の一部に粉末の分与物を送達するためのねじ、オーガ、バレル、摺動チャンバ、回転穿孔ディスクのような任意の周知のタイプのものとすることもできる。
【0022】
第1の方式によれば、粉末分与手段は粉末を消費者のカップに直接送達することができ、加熱装置はカップに熱を加えるように構成される。
【0023】
第2の方式によれば、粉末分与手段は粉末を混合チャンバに送達することができ、加熱装置は混合チャンバに熱を加えるように構成される。
【0024】
第3の方式によれば、飲料製造装置は、粉末を供給するように構成され、導波路と交差するように配置された加熱通路を備え、導波路内に電磁エネルギーを加えると粉末を加熱することができる。
【0025】
第2の実施形態によれば、飲料製造装置はカプセルを受け入れる区画を備えることができ、加熱装置は前記区画に熱を加えるように構成することができる。
【0026】
好ましい実施形態によれば、加熱装置は、希釈剤に熱を加えるように構成することもできる。その場合、同じ加熱装置手段を希釈剤と粉末の両方の加熱に用いることが可能であり、それによって、飲料製造装置の設置面積が最適化される。この実施形態では、加熱装置は、マイクロ波の範囲の電磁エネルギーを供給するように構成されたマグネトロンであることが好ましい。
【0027】
本発明の方法及び装置は、従来技術より短い時間で粉末を溶解することによる飲料の調製を可能にする。
【0028】
この利点は、消費者が飲料の調製に長時間待たされることを容認しないため、分配装置における飲料の調製に対して特に重要である。さらに粉末は完全に溶解し、最終のカップに塊が残らない。
【実施例】
【0029】
実施例1
従来技術に従い、ある量の可溶性粉末を分与し、分与した粉末を5℃の温度を示す200mlの水で希釈することによって様々な飲料を調製した。溶解は600秒間、マグネティックスターラを用いた攪拌によって行った。粉末の量は、200mlの水によって味のよい飲料を得るように決めた(通常は10〜20gの粉末)。
【0030】
次いで、本発明に従い、分与された量の粉末が溶解の直前にマイクロ波処理を受けることを除き、従来技術に従って調製した飲料の場合と同じ条件を再現することによって様々な飲料を調製した。マイクロ波処理は、1400Wで動作するPanasonic製のオーブンを用いて行った。
【0031】
様々な可溶性粉末は、以下の組成を示した。
[チョコレート飲料粉末1]
麦芽エキス
ミルク粉末
マルトデキストリン
砂糖
ココア
パーム油
ビタミン類
ミネラル類
香味料類
[チョコレート飲料粉末2]
砂糖
カカオ
レシチン
香味料類
ビタミン類
ミネラル類
[栄養補給用ミルク粉末(幼児用調合乳)]
スキムミルク粉末
脂肪及び/又は油
マルトデキストリン
【0032】
表1は、粉末が受けた熱処理条件を示している。望ましくない反応又は粉末の物理的変化を避けるために、粉末ごとに熱処理時間の長さを決めた。
【表1】

【0033】
表2は、粉末の初期量の80%の固体を溶解するのに必要な復元時間t80を示している。この値は、飲料の伝導率の測定から計算したものであり、伝導率の測定は粉末を水中に分配したときから開始した。
【表2】

【0034】
この実施例は、水中での復元前に粉末を短時間加熱することによって、通常は復元の問題が観察される復元の水の温度が5℃である場合でも、溶解時間が著しく短くなることを示している。
【0035】
実施例2
以下の実施例は、実施例1と同じチョコレート飲料粉末1について行った。粉末は表1に定めたものと同じ熱処理を受けたが、粉末は、実施例1と同じ条件(5℃の水200ml)での溶解を測定する前に6週間貯蔵した。この場合、結果は、熱処理を受けていない元のチョコレート飲料粉末1の場合よりもさらに悪かった。
【表3】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性飲料粉末から飲料を調製するための方法であって、
前記可溶性飲料粉末の分与物を計量するステップと、
前記可溶性飲料粉末の分与物を加熱するステップと、
前記加熱された可溶性飲料粉末の分与物を希釈剤で希釈するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記加熱された可溶性飲料粉末の分与物が、加熱された後、5分未満で溶解される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱された可溶性飲料粉末の分与物が、加熱された直後に溶解される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記可溶性飲料粉末の分与物が、マイクロ波の範囲の電磁エネルギーを加えることによって加熱される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記希釈剤が低温である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記可溶性飲料粉末が、コーヒー、茶、チョコレート飲料、麦芽を含む飲料、スープ、幼児用調合乳、ミルク、クリーマ及び/又はカプチーノの粉末である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記可溶性飲料粉末が容器に分与され、前記飲料の分与物が前記容器の内部で加熱される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記容器がカップ又は混合チャンバである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記容器がカプセルである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
粉末供給手段と、
希釈剤供給手段と
を備える、可溶性飲料粉末から飲料を調製するための飲料製造装置において、
可溶性飲料粉末の分与物に熱を加えるように構成された加熱装置を備えることを特徴とする、飲料製造装置。
【請求項11】
前記加熱装置が、マイクロ波の範囲の電磁エネルギーを供給するように構成されたマグネトロンである、請求項10に記載の飲料製造装置。
【請求項12】
前記粉末供給手段が、粉末貯蔵手段及び粉末分与手段を備える、請求項10又は11に記載の飲料製造装置。
【請求項13】
前記粉末を供給するように構成され、導波路と交差するように配置された加熱通路を備え、前記導波路内に電磁エネルギーを加えると前記粉末を加熱する、請求項12に記載の飲料製造装置。
【請求項14】
前記飲料製造装置がカプセルを受け入れる区画を備え、前記加熱装置が前記区画に熱を加えるように構成される、請求項10又は11に記載の飲料製造装置。

【公表番号】特表2013−506407(P2013−506407A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531433(P2012−531433)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064577
【国際公開番号】WO2011/042356
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】