説明

飲料製造装置及びそれに用いるカップホルダ

【課題】カップホルダからカップを外し易く、カップ内の飲料をこぼし難い飲料製造装置及びそれに用いるカップホルダを提供する。
【解決手段】本発明の飲料製造装置は、カップ15を保持するカップホルダ13と、カップホルダ13に保持されたカップ15を覆うためのキャップ31と、キャップ31を貫通しキャップ31の下方に回転刃を有する回転シャフト19と、回転シャフト19を回転させるためのモータ17とを備えている。カップホルダ13は無底筒状であり、カップ15の外周面の一部がカップホルダ13の内周面に密着し、かつカップホルダ13の下端からカップ13が下方に突出する状態で保持され、カップホルダ13のカップ15の外周面と密着している部分の内径が上方に向かって拡径されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毎回異なる飲料を1カップ分だけ作ることができる飲料製造装置及びそれに用いるカップホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カップに水や濃縮ジュース等の飲料用液体と、野菜や果物や氷等の飲料用固形物とを入れ、これをカップホルダに載せ、さらにキャップを被せた状態で切削刃によって混合粉砕する飲料製造装置が知られている(例えば特許文献1)。このタイプの飲料製造装置では、特別な容器を用いることなく、カップ内において飲料を製造するため、製造後にカップホルダからカップを取り外し、そのまま飲用に供することができるという利点がある。
【0003】
図8は、上記飲料製造装置の具体例であり、カップ100を保持するカップホルダ101と、該カップホルダ101に保持されたカップ100を覆うキャップ102と、該キャップ102を貫通し、下端に回転刃103を有する回転シャフト104と、該回転シャフト104を回転させる図示しないモータとを有している。
【0004】
この装置により、飲料を製造する場合には、カップ100内に氷や野菜や果実等の飲料用固形物と、水や濃縮ジュース等の飲料用液体とを入れてカップホルダ101に保持させ、回転刃103をカップ100内に挿入しつつキャップ102をカップ100に被せる。そして、モータを駆動させて回転刃103を回転させる。これにより飲料用固形物が回転刃103によって細かく切削されるとともに、飲料用液体と混合され、ジュースやソフトアイスドリンク等の飲料が製造される。このため、顧客の好みに応じて1杯づつ異なる飲料を提供することができる。また、製造中においてカップ100がカップホルダ101に密着して保持されるため、カップ100が潰れるのを防止できる。このため、機械的強度の小さな使い捨てカップを用いることもでき、カップの洗浄の手間を省くこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−301919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の飲料製造装置では、飲料を製造後にカップホルダからカップを外す際、外し難かったり、勢いあまって飲料をこぼしてしまったりするおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたもので、カップホルダからカップを外し易く、カップ内の飲料をこぼし難い飲料製造装置及びそれに用いるカップホルダを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の飲料製造装置は、
カップを保持するカップホルダと、該カップホルダに保持されたカップを覆うためのキャップと、該キャップを貫通し該キャップの下方に回転刃を有する回転シャフトと、該回転シャフトを回転させるための回転機構とを備えた飲料製造装置であって、
前記カップホルダは無底筒状であり、前記カップの外周面の少なくとも一部が該カップホルダに内周面に密着し、かつ該カップホルダの下端から該カップが下方に突出する状態で保持され、該カップホルダにおける該カップの外周面と密着している部分の内径が上方に向かって拡径されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の飲料製造装置を使用する場合には、まずカップに氷や果実や野菜等の固形物とジュースや水等の飲料用液体とを入れ、カップホルダに保持させた状態でカップの上端をキャップで覆い密閉する。このとき、カップにはキャップから圧力を受けるが、カップの外周面の少なくとも一部がカップホルダに内周面に密着して保持されるため、カップが潰れるのを防止できる。このため、紙製や薄手のポリエチレン製のような機械的強度の小さい使い捨てカップを用いることもできる。そして、回転機構によって回転刃を回転させる。これにより切削刃に当たった氷が切削される。こうして、氷等の固形物は切削されて細かくなるとともに、回転刃の回転運動によって飲料用液体と混合されカップの中で飲料となる。そして、飲料の入ったカップをカップホルダとともに取り出し、平らな作業机の上に置く。カップはカップホルダの下端から下方に突出しているため、作業机にカップの下端が接し、カップホルダの下端と作業机とは一定の距離が開いた状態となる。ここで、カップホルダのカップの外周面と密着している部分の内径は上方に向かって拡径されているため、この状態でカップホルダを手に持って下方に押し下げれば、カップホルダとカップの間に隙間ができて、密着状態は容易に解消される。こうしてカップがカップホルダから離れ、カップホルダの下端が作業机に当たって止まる。このため、カップをカップホルダからは外すのが容易となり、その際、カップに与える衝撃も小さく、カップの中の飲料をこぼすおそれも少なくなる。
【0010】
カップホルダは円筒状の円筒部と、該円筒部から上方に向かって拡径する拡径部とからなり、該拡径部の内周面と前記カップの外周面とが密着するようにしてもよい。こうであれば、円筒部はカップと密着しないため、カップをカップホルダから外すことがより容易となる。
【0011】
また、カップを保持するカップホルダを所定の位置に固定する固定治具が設けられていることが好ましい。こうであれば、飲料製造時においてカップがより安定に保持されるため、カップが倒れるなどの事故を防ぐことができ、製造作業をより安全に行うことができる。
【0012】
また、本発明のカップホルダは、本発明の飲料製造装置に用いられるカップホルダであって、無底筒状をなし、前記カップの外周面の少なくとも一部が前記カップホルダの内周面に密着しつつ下端から該カップが下方に突出する状態で該カップを保持し、該カップの外周面と密着している部分の内径が上方に向かって拡径されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の飲料製造装置についての説明でも述べたように、本発明のカップホルダは、無底筒状をなし、前記カップの外周面の少なくとも一部が前記カップホルダの内周面に密着しつつ保持するため、カップが潰れるのを防止でき、機械的強度の小さい使い捨てカップを用いることもできる。
また、下端から該カップが下方に突出する状態で該カップを保持し、さらには、カップの外周面と密着している部分の内径が上方に向かって拡径されているため、飲料製造後にカップをカップホルダごと取り出し、作業机のうえに置き、カップホルダを手に持って下方に押し下げれば、密着状態は容易に解消され、こぼしたりするおそれも少ない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の飲料製造装置の斜視図である。
【図2】実施例1の飲料製造装置のカップ及びカップホルダ周辺を示す一部断面図である。
【図3】実施例1の飲料製造装置におけるカップホルダの斜視図である。
【図4】実施例1の飲料製造装置におけるカップホルダを固定するための固定治具の平面図である。
【図5】実施例1の飲料製造装置の断面図であるである。
【図6】実施例1の飲料製造装置に係るキャップの斜視図である。
【図7】実施例1の飲料製造装置の使用中の各局面での状態を示す断面図であるである。
【図8】実施例1においてカップホルダからカップの引き抜く工程を示す断面図である。
【図9】従来の飲料製造装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した飲料製造装置について図面を参照しつつ詳述する。
(実施例1)
図1は実施例1の飲料製造装置1の外観を示す。この飲料製造装置1は、喫茶店やコンビニエンスストア等に設置され、客の求めにしたがって好みのソフトアイス飲料を提供するためのものであり、縦長略直方体容器状のハウジング3を備えている。ハウジング3の前面パネル5には後述するモータ17を駆動するための電源スイッチ7が設けられており、前面パネル5の下方は開口部9が設けられている。開口部9の下端は固定治具台11が奥に向かって延在している。固定治具台11の手前側中央にはカップ15がカップホルダ13に収容されている。
【0016】
図2に示すように、カップホルダ13は無底筒状であり、下端から上方に向かって円筒状に延在する円筒部13aと、円筒部13aの上端から上方に向かって拡径するように延在する拡径部13bとからなる。カップ15は拡径部13bの内側面に密着するように保持されている。カップ15の下端は有底円筒状に突出する台座15aが設けられており、台座15aはカップホルダ13の下端よりも下方に突出しているが、固定治具台11からは僅かに隙間が空いた状態とされている。なお、拡径部13bの形状は、カップ15の形状に合わせて密着するものであり、飲料製造後においてカップ15をカップホルダ13から引き抜けるように上方に向かって拡径するものであれば、特に制限はない。
また、カップホルダ13の下端には、径外方向に突出する凸部13c、13dが互いに向かい合わせに対面する位置で2箇所に設けられており(図3参照)、固定治具台11の上に設けられたリング状の固定治具14に嵌められている。すなわち、図4に示すように、固定治具14には、カップホルダ13の凸部13c、13dと整合する位置に、凹部14a、14bが設けられており、さらに、凹部14a、14bから右回り方向に案内溝14c、14dが設けられている。そして、カップホルダ13の凸部13c、13dを凹部14a、14bに挿入し、右方向にまわすことにより凸部13c、13dが案内溝14c、14dに嵌り、固定されるようになっている。
【0017】
図5は飲料製造装置1の断面図である。カップホルダ13の上方には、モータ17と、モータの軸に接続された回転シャフト19と、回転シャフトの下端にネジ22によって取り付けられた回転刃21とが設けられている。モータ17は上端がL字状に曲げられたラック23の一端に固定されており、ラック23とピニオン25とによって上下方向に移動可能とされている。ピニオン25の軸25aの一端はハウジング3の側面から突出しており、操作レバー27が取り付けられている。
回転シャフト19には、回転刃21の上側の位置にキャップ支持部材29がネジ止めされている。このキャップ支持部材29によって、キャップ31が保持されている。キャップ31の下端は、図6に示すように、円筒部31aが設けられており、円筒部31aから上方に向かって、胴部31bが延在している。円筒部31aはカップ15(図2参照)の開口部分に嵌合するようにされている。また、胴部31bの上端は蓋部31cによって覆われており、蓋部31cの中央には回転シャフト19(図5参照)が挿通される孔31dが形成されている。また、円筒部31aと胴部31bの間には、径外方向にリング状に突出する鍔部31eが形成されている。
キャップ31の上にバネホルダ33が配置されている。バネホルダ33は凹部33aを有しており、この凹部33aにコイルバネ35が保持されている。回転シャフト19は、コイルバネ35の軸心を貫通し、さらにキャップ31及びバネホルダ33を貫通している。回転シャフト19は、キャップ31の中心を貫通して延在している。回転シャフト19の上端にはバネ押え部材37が装着されている。
【0018】
<使用方法>
以上のように構成された実施例1の飲料製造装置の使用方法について説明する。
図7Aに示すように、操作レバー27を手動で引き上げることにより、ピニオン25が回転してラック23を上方に押し上げ、これによりモータ17、回転シャフト19、コイルバネ35、バネホルダ33、及び、キャップ31が上側の待機位置に配置される。そして濃縮飲料、水及びブロック氷を所定量入れたカップ15をカップホルダ13に挿入した状態で、図3に示すカップホルダ13の凸部13c、13dを、図4に示す凹部14a、14bに挿入し、右方向にまわすことにより凸部13c、13dを案内溝14c、14dに嵌めて固定する(図2参照)。そして、図1に示す操作ボタン7を押してON状態とする。
【0019】
次に、操作レバー27を手動で下げる。これにより図7Bに示すように、モータ17、回転シャフト19、コイルバネ35、バネホルダ33、及び、キャップ31が下がり、キャップ31の鍔部31eがカップ15の上端に当接した状態となる。このとき、コイルバネ35は圧縮されていない。
【0020】
そして、さらに操作レバー27を下げると、回転シャフト19は下降を続けるが、キャップ31及びバネホルダ33は、カップ15の上に保持される。そして、回転シャフト19の下降に伴い、バネ押え部材37も下降するため、図7Cに示すように、バネホルダ33とバネ押え部材37との間の距離が短くなり、コイルバネ35が圧縮され、その圧縮力によってバネホルダ33は下方に押し付けられる。そして、さらには押し付け力によって、キャップ31は、カップ15の上端に押し付けられ、カップ15を密閉状態にされるとともに、図示しないマイクロスイッチがON状態となり、モータ17が自動的に駆動し、回転シャフト19及び回転刃21が回転し、カップ15内の液体は、氷と共に回転し、切削刃に当たった氷が切削される。こうして、氷は切削されて細かくなるとともに、回転刃の回転運動によって濃縮飲料と混合されソフトアイス飲料が出来上がる。
【0021】
そして、操作レバー27を上げる。これにより、モータ17、回転シャフト19、コイルバネ35、バネホルダ33、及び、キャップ31が上がるとともに、キャップ31の鍔部31aがカップ15の上端から離れ、マイクロスイッチがOFF状態となり、モータ17、回転シャフト19及び回転刃21が停止する。
そして、カップホルダ13をカップ15とともに手で持って左方向に回し、カップホルダ13の凸部13c、13dが固定治具14の凹部14a、14bの位置に合せ、上方に引き上げることによって、カップ15をカップホルダ13ごと取り出す。
【0022】
<カップホルダ13からのカップ15の引き抜き>
上記のようにして取り出したカップ15及びカップホルダ13を、図8Aに示すように、作業机40の上に載置する。これにより、カップ15の下端の台座15aは台40と接触するが、カップホルダ13と作業机40との間には隙間が生じる。そして、カップホルダー13の外周面を手で握りながら下方に押す。これにより、図8Bに示すように、カップ15はそのままの位置に留まりながら、カップホルダ13のみが下がり、作業机40に当たって止まる。これにより、カップ15とカップホルダ13との間の密着状態が解消されてわずかな隙間ができる。そして、飲料の入ったカップ15を取り出し、顧客に提供する。こうして、このカップホルダ13を用いれば、容易にカップ15をカップホルダ13から取り出すことができる。また、取り出すときには、カップホルダ13が作業机40に当たって強制的に止まるため、カップに与える衝撃も小さく、カップの中の飲料をこぼすおそれも少なくなる。
【0023】
この発明は、上記発明の実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
1…飲料製造装置
15…カップ
13…カップホルダ
13a…円筒部
13b…拡径部
14…固定治具
19…回転シャフト
21…回転刃
31…キャップ
17…モータ(回転機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップを保持するカップホルダと、該カップホルダに保持されたカップを覆うためのキャップと、該キャップを貫通し該キャップの下方に回転刃を有する回転シャフトと、該回転シャフトを回転させるための回転機構とを備えた飲料製造装置であって、
前記カップホルダは無底筒状であり、前記カップの外周面の少なくとも一部が該カップホルダに内周面に密着し、かつ該カップホルダの下端から該カップが下方に突出する状態で保持され、該カップホルダにおける該カップの外周面と密着している部分の内径が上方に向かって拡径されていることを特徴とする飲料製造装置。
【請求項2】
前記カップホルダは円筒状の円筒部と、該円筒部から上方に向かって拡径する拡径部とからなり、該拡径部の内周面と前記カップの外周面とが密着することを特徴とする請求項1記載の飲料製造装置。
【請求項3】
前記カップを保持する前記カップホルダを所定の位置に固定する固定治具が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の飲料製造装置。
【請求項4】
請求項1に記載の飲料製造装置に用いられるカップホルダであって、
無底筒状をなし、前記カップの外周面の少なくとも一部が前記カップホルダの内周面に密着しつつ下端から該カップが下方に突出する状態で該カップを保持し、該カップの外周面と密着している部分の内径が上方に向かって拡径されていることを特徴とするカップホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−85665(P2013−85665A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228331(P2011−228331)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000213231)株式会社中部コーポレーション (35)
【Fターム(参考)】