説明

飲酒検査装置

【課題】飲食物から発生する体内ガスの影響を排除して飲酒検査を行うことができる飲酒検査装置を提供する。
【解決手段】 飲酒検査装置1は、ECU3と、ドライバのアルコール濃度を検出するアルコール検知センサ4と、アルコール濃度の検出前にドライバがうがいするための水を貯めるうがい用貯水タンク5と、うがい用貯水タンク5内の貯水量を監視する貯水量監視器6とを備えている。ECU3は、貯水量監視器6の監視信号に基づいてアルコール検知センサ4を起動するか否かを判断し、その結果に応じてアルコール検知センサ4のON/OFFを切り換えるセンサ起動判断部11と、アルコール検知センサ4の検出信号に基づいて運転者のアルコール濃度が規定量を超えているか否かを判定し、アルコール濃度が規定量を超えているときは、車両の発進をインターロックする飲酒量判定部12とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者等が飲酒したかどうかを検査する飲酒検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の飲酒検査装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、被験者が飲食直後にアルコール測定したことによる誤測定を回避するために、約15分後に再測定を行うようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−69742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、運転前のアルコール測定時に運転者の口に残っている飲食物から発生する体内ガスの影響により誤測定されたときには、その誤測定が解除されるまでの間、運転者は運転することができず待機していなければならない。
【0005】
本発明の目的は、飲食物から発生する体内ガスの影響を排除して飲酒検査を行うことができる飲酒検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の飲酒検査装置は、被験者のアルコール濃度を検出するアルコール検出手段と、アルコール検出手段により検出されたアルコール濃度に基づいて被験者の飲酒状態を判定する判定手段と、アルコール検出手段によりアルコール濃度を検出する前に被験者に対してうがいを促す手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明の飲酒検査装置においては、被験者のアルコール濃度を検出する前に被験者に対してうがいを促す手段を設けることにより、被験者がうがいした後に、被験者のアルコール濃度が検出され、そのアルコール濃度に基づいて被験者の飲酒状態が判定されることとなる。被験者がうがいを行うことで、被験者の口に残っている飲食物から発生する体内ガスの影響が排除されるため、アルコール濃度の検出精度が高くなる。その結果、飲酒検査を高精度に且つ迅速に行うことができる。
【0008】
好ましくは、うがいを促す手段は、被験者がうがいするためのうがい液を貯めるうがい液タンクを有する。この場合には、うがい液タンク内のうがい液を吸引してうがいすることにより、被験者がうがい液をいちいち用意しなくて済む。
【0009】
このとき、うがいを促す手段は、うがい液タンクに貯められたうがい液の減少量を検出する液量検出手段と、液量検出手段によりうがい液が所定時間内に所定量減少したことが検知されたときに、アルコール検出手段によるアルコール濃度の検出を許可する検出許可手段とを有することが好ましい。この場合には、被験者がうがい液タンク内のうがい液を用いてうがいしたことで、タンク内のうがい液が所定時間内に所定量減少したときに限り、アルコール検出手段によるアルコール濃度の検出が許可されるので、アルコール検出手段により被験者のアルコール濃度を検出する際に、被験者に確実にうがいさせることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、飲食物から発生する体内ガスの影響を排除して飲酒検査を行うことができる。これにより、飲食物によるアルコール濃度の誤検出が抑制されるため、例えば被験者が車両の運転者の場合に、運転者が飲酒していなければ、直ちに車両の運転を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係わる飲酒検査装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した飲酒検査装置の外観の一例を示す側面図である。
【図3】図1に示したセンサ起動判断部により実行されるセンサ起動判断処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】図1に示した飲酒量判定部により実行される飲酒量判定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係わる飲酒検査装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係わる飲酒検査装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図である。同図において、本実施形態の飲酒検査装置1は、例えば燃料電池(FC)式車両に搭載され、車両のドライバの飲酒運転を防止するための装置である。燃料電池式車両は、燃料電池を利用して発電を行い、動力を発生させる燃料電池式発電システム2を具備している。
【0014】
飲酒検査装置1は、ECU(Electronic Control Unit)3と、アルコール検知センサ4と、うがい用貯水タンク5と、貯水量監視器6とを備えている。ECU3は、CPU、ROMやRAM等のメモリ、入出力回路等により構成されている。
【0015】
アルコール検知センサ4は、ドライバの呼気からアルコール濃度を検出するセンサである。なお、アルコール検知センサ4としては、ドライバのアルコール濃度を検出するものであれば何でも良い。
【0016】
うがい用貯水タンク5は、アルコール検知センサ4によりドライバのアルコール濃度を検出する前にドライバがうがいするための水(うがい用水)を貯めておくタンクである。うがい用水としては、燃料電池式発電システム2から排出される水が再利用される。燃料電池式発電システム2から排出された水は、ろ過フィルタ7により不純物が除去された状態でうがい用貯水タンク5に送り込まれる。
【0017】
貯水量監視器6は、うがい用貯水タンク5に貯められたうがい用水の量(貯水量)を計測・監視する。
【0018】
このような飲酒検査装置1は、例えば図2に示すように、検査装置本体8と、貯水タンク構造体9とから構成されている。これらの検査装置本体8及び貯水タンク構造体9は、分離可能となっている(図2(b)参照)。検査装置本体8は、上記のECU3及びアルコール検知センサ4を含んでいる。貯水タンク構造体9は、上記のうがい用貯水タンク5、ろ過フィルタ7及び貯水量監視器6を含んでいる。貯水タンク構造体9には、うがい用水を吸引するための吸引口10aを有する吸引パイプ10が引き出し可能に設けられている。
【0019】
飲酒検査装置1は、通常は図示の通り立てられた状態となっている。ドライバがうがい用水を口に含むときは、貯水タンク構造体9内から吸引パイプ10を引き出した状態(図2(a)参照)で、貯水タンク構造体9を手に持ったまま、吸引口10aに口をつけてうがい用水を吸い込むようにする。
【0020】
図1に戻り、ECU3は、センサ起動判断部11と、飲酒量判定部12とを有している。センサ起動判断部11は、貯水量監視器6の監視信号に基づいてアルコール検知センサ4を起動するかどうかを判断し、その判断結果に応じてアルコール検知センサ4のON/OFFを切り換える。飲酒量判定部12は、アルコール検知センサ4の検出信号に基づいて、運転者のアルコール濃度(アルコール量)が規定量を超えているかどうかを判定し、アルコール濃度が規定量を超えているときは、車両が発進しないようにインターロック部13を制御する。
【0021】
図3は、センサ起動判断部11により実行されるセンサ起動判断処理の手順を示すフローチャートである。同図において、まず貯水量監視器6の監視信号を入力し(手順S51)、うがい用貯水タンク5内の貯水量が一定時間内(例えば5sec以内)に20ml以上減少したかどうかを判定する(手順S52)。ドライバがうがいするために必要な水量は、20ml程度である。
【0022】
うがい用貯水タンク5内の貯水量が一定時間内に20ml以上減少していないときは、手順S51に戻り、うがい用貯水タンク5内の貯水量が一定時間内に20ml以上減少したときは、アルコール検知センサ4をONにする(手順S53)。これにより、アルコール検知センサ4が起動されるため、ドライバの飲酒検査を行うことが可能となる。
【0023】
図4は、飲酒量判定部12により実行される飲酒量判定処理の手順を示すフローチャートである。同図において、まずアルコール検知センサ4の検出信号を入力し(手順S61)、ドライバのアルコール濃度が規定量を超えているかどうかを判定する(手順S62)。
【0024】
ドライバのアルコール濃度が規定量を超えているときは、インターロック部13を制御して燃料電池式発電システム2の始動のインターロックを行うことで、車両の発進を不許可とする(手順S63)。
【0025】
ドライバのアルコール濃度が規定量を超えていないときは、車両の発進を許可する(手順S64)。すると、燃料電池式発電システム2の始動により動力が生成されると共に、燃料電池式発電システム2から水が排出される。そして、その水は、ろ過フィルタ7を通ってうがい用貯水タンク5に送水される。
【0026】
以上において、アルコール検知センサ4は、被験者のアルコール濃度を検出するアルコール検出手段を構成する。ECU3の飲酒量判定部12は、アルコール検出手段により検出されたアルコール濃度に基づいて被験者の飲酒状態を判定する判定手段を構成する。うがい用貯水タンク5、貯水量監視器6、ろ過フィルタ7及びECU3のセンサ起動判断部11は、アルコール検出手段によりアルコール濃度を検出する前に被験者に対してうがいを促す手段を構成する。
【0027】
このとき、うがい用貯水タンク5は、被験者がうがいするためのうがい液を貯めるうがい液タンクを構成する。貯水量監視器6は、うがい液タンクに貯められたうがい液の減少量を検出する液量検出手段を構成する。センサ起動判断部11は、液量検出手段によりうがい液が所定時間内に所定量減少したことが検知されたときに、アルコール検出手段によるアルコール濃度の検出を許可する検出許可手段を構成する。
【0028】
以上のように本実施形態にあっては、うがい用貯水タンク5内の貯水量が一定時間内に20ml以上減少したことが検知されたときに限り、アルコール検知センサ4によるドライバのアルコール濃度の検出を実施するので、ドライバの飲酒検査の前にドライバは必ずうがいを行うようになる。従って、ドライバの口の中に残っている飲食物によって発生する妨害ガス(体内ガス)の影響を排除した状態で、ドライバの飲酒検査を行うことができる。これにより、飲食物に起因したアルコール濃度の誤検出を抑制し、検査精度を向上させることができる。
【0029】
また、ドライバがうがいを行うことで、飲食物によって発生する妨害ガスの影響が効果的に排除されるため、飲食物に起因したアルコール濃度の誤検出により長い時間にわたって運転待機する必要が無い。つまり、ドライバが飲酒していなければ、ドライバは直ちに車両の運転に移ることができる。
【0030】
さらに、うがい用貯水タンク5を設けることで、飲酒検査のたびにドライバが洗面所等に行ってうがいをする必要が無いため、ドライバの労力や煩わしさを軽減することができる。
【0031】
また、うがい用貯水タンク5及び貯水量監視器6を設けることで、誤検知の防止のためにハイスペックなマイコンや妨害ガス専用のセンサを必要としなくて済むため、装置の大型化及び高価格化を防止することができる。
【0032】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態の飲酒検査装置1は、燃料電池式車両に搭載されるものであるが、本発明は、エンジン式、電気式、ハイブリッド式の車両等にも適用可能であることは言うまでもない。この場合でも、うがい用貯水タンク5を貯水するために数回に1回だけ水道のある場所まで出向くだけで良いので、上記と同様にドライバの労力や煩わしさを軽減することができる。また、本発明は、車両以外の交通機関に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0033】
1…飲酒検査装置、3…ECU、4…アルコール検知センサ(アルコール検出手段)、5…うがい用貯水タンク(うがい液タンク、うがいを促す手段)、6…貯水量監視器(液量検出手段、うがいを促す手段)、11…センサ起動判断部(検出許可手段、うがいを促す手段)、12…飲酒量判定部(判定手段)。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者のアルコール濃度を検出するアルコール検出手段と、
前記アルコール検出手段により検出された前記アルコール濃度に基づいて前記被験者の飲酒状態を判定する判定手段と、
前記アルコール検出手段により前記アルコール濃度を検出する前に前記被験者に対してうがいを促す手段とを備えることを特徴とする飲酒検査装置。
【請求項2】
前記うがいを促す手段は、前記被験者がうがいするためのうがい液を貯めるうがい液タンクを有することを特徴とする請求項1記載の飲酒検査装置。
【請求項3】
前記うがいを促す手段は、前記液タンクに貯められた前記うがい液の減少量を検出する液量検出手段と、前記液量検出手段により前記うがい液が所定時間内に所定量減少したことが検知されたときに、前記アルコール検出手段による前記アルコール濃度の検出を許可する検出許可手段とを更に有することを特徴とする請求項2記載の飲酒検査装置。





【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−112609(P2011−112609A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271755(P2009−271755)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】