説明

飲酒状態検出装置

【課題】ドライバの呼気の吹きかけ量を参照しながらアルコール量の検出を行うことにより、飲酒状態を精度よく検出することができる飲酒状態検出装置を提供する。
【解決手段】ルームミラー2におけるハーフミラー3の裏面側には、顔撮像カメラ11が配設されており、ルームミラー2の右側面にはアルコール検出センサ12が取り付けられている。顔撮像カメラ11では、ドライバの顔と、ハーフミラー3の表面における曇り具合を撮像している。ハーフミラー3の表面に曇りがある場合に、アルコール検知センサ12によってアルコール濃度を検知して飲酒状態検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲酒状態を検出する飲酒状態検出装置に係り、車両を運転するドライバの飲酒状態を検出する飲酒状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を運転するドライバの飲酒状態を検出する装置として、従来、ルームミラー内にアルコール検知手段を取り付けた自動車用アルコール検知器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この自動車用アルコール検知器は、ルームミラーに取り付けたアルコール検知器によって被検者(ドライバ)の呼気に含まれるアルコール量を検知するものというである。
【0003】
ところが、上記特許文献1に開示された自動車用アルコール検知器では、同乗者がドライバに成り済ましてアルコール検知を行ったとしても、この成り済ましを判断することができない。このため、上記特許文献1に開示された自動車用アルコール検知器では、ドライバの飲酒状態を検出するためには、その正確性が問題となるものであった。
【0004】
これに対して、被測定者の特徴、たとえば虹彩などを用いて本人認証を行った後、アルコール測定を行う身体状態管理装置がある(たとえば、特許文献2参照)。この身体状態管理装置では、本人認証を行った後にアルコール測定を行うことから、成り済ましの防止に寄与することができる。この身体状態管理装置を車両に搭載することにより、成り済ましの防止を図ることができる。
【特許文献1】特開平9−292354号公報
【特許文献2】特開2005−245956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2に開示された身体状態管理装置を搭載した車両では、ドライバの成り済ましを防止することはできる。ところが、アルコール測定を行うにあたり、精度よく飲酒状態を検出するためには、被検者がアルコール検知器に適正量の呼気を吹きかけることが必要となる。しかし、上記特許文献2に開示された身体状態管理装置を搭載した車両では、アルコール検知器に対する呼気の吹きかけ量を検出することができない。このため、精度のよいアルコール量の検出を行うことができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、ドライバの呼気の吹きかけ量を参照しながらアルコール量の検出を行うことにより、飲酒状態を精度よく検出することができる飲酒状態検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係る飲酒状態検出装置は、車両のドライバの顔を撮像する撮像手段と、撮像手段による画像に基づいて、ドライバの認証を行う認証手段と、撮像手段で撮像した撮像を行う際のドライバの顔を写すミラー部材と、ミラー部材にドライバの顔が写る状態で、ドライバの呼気が到達する位置に配置され、ドライバの呼気に含まれるアルコール量を検出するアルコールセンサと、ミラー部材における曇り状態を判定する曇り状態判定手段と、アルコールセンサで検出されたアルコール量および曇り状態判定手段によって判定されたミラーの曇り状態に基づいて、認証手段で認証されたドライバの飲酒状態を検出する飲酒状態検出手段と、を備えるものである。
【0008】
本発明に係る飲酒状態検出装置においては、ドライバの認証を行うとともに、アルコールセンサで検出されたアルコール量およびミラーの曇り状態に基づいて、ドライバの飲酒状態を検出している。ここで、ミラー部材にドライバの顔が写る状態でアルコールセンサにドライバが息を吹きかけた場合、ドライバの息の吹きかけ量が適正量であると、ミラーにも曇りが生じる。このため、ミラーの曇り状態を検出することにより、ドライバの息の吹きかけ量を推定することができる。したがって、ドライバの呼気の吹きかけ量を参照しながらアルコール量の検出を行うことができ、もって飲酒状態を精度よく検出することができる。
【0009】
ここで、ミラー部材は、表面が鏡面であり、裏面側から表面側に向けて光を透過するハーフミラーを備え、撮像手段は、ハーフミラーの裏面側に配設されており、曇り状態判定手段は、撮像手段が撮像した画像におけるハーフミラーの曇り状態を画像処理によって検出する画像処理手段である態様とすることができる。
【0010】
このように、撮像手段で撮像した画像を用いて曇り状態の判定を行うことにより、撮像手段で撮像した画像によってドライバの認証およびハーフミラーの曇り状態の判定を行うことができるので、部品点数の削減を図ることができる。
【0011】
また、ミラー部材は、車両の車室内に設けられるルームミラー、または車室内に設けられたサンバイザに配置されたインナミラーである態様とすることができる。
【0012】
このように、ルームミラーやインナミラーは、ドライバが呼気を吹きかけ易い位置に配置されている。このため、ミラー部材としてルームミラーやインナミラーを用いることにより、ドライバの呼気の吹きかけ量を容易に確認することができる。
【0013】
さらに、ミラー部材をドライバの顔を写す位置に移動させる移動手段を備える態様とすることができる。
【0014】
ミラー部材はドライバの顔を写す位置に配置されていないことが多いので、ミラー部材をドライバの顔を写す位置に移動させる移動手段を備えることにより、飲酒状態検出を円滑に行うことができるとともに、ドライバの撮像拒否による不正防止に寄与することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る飲酒状態検出装置によれば、ドライバの呼気の吹きかけ量を参照しながらアルコール量の検出を行うことにより、飲酒状態を精度よく検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る飲酒状態検知装置のブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る飲酒状態検出装置1は、顔撮像カメラ11、アルコール検知センサ12、画像処理ECU(electronic controlunit)13、アルコール濃度判定ECU14、およびスピーカ15を備えている。また、飲酒状態検出装置1が設けられる車両では、右側がドライバ席、左側がパートナー席とされている。
【0018】
顔撮像カメラ11は、図2にも示すように、車室内に設けられるルームミラー2の内部に設けられている。ルームミラー2の表面には、裏面側から表面側に向けて光を透過するハーフミラー3が取り付けられており、顔撮像カメラ11は、ハーフミラー3の裏面側に配置され、ハーフミラー3越しにルームミラー2の鏡面側(車両の進行方向に対して後方側)に向けて配設されている。
【0019】
また、ルームミラー2における図示しないルームミラー支持部材には、ルームミラー2の向きを変える移動機構が設けられている。ルームミラー2の向きは、車両の走行時などの通常時には、ルームミラー2の鏡面に反射する映像をドライバが視認できる向きに調整されている。また、飲酒状態の検出を行う際には、移動機構によってルームミラー2の向きが調整され、ドライバが自らの顔を視認できる向きに調整される。
【0020】
ルームミラー2の内部に配設される顔撮像カメラ11は、飲酒状態の検出を行う際に、ドライバの顔を撮像する。また、顔撮像カメラ11は、飲酒状態の検出の際、ドライバの顔を撮像すると同時に、ハーフミラー3の表面も撮像する。顔撮像カメラ11は、撮像した画像に関する画像情報を画像処理ECU13に送信する。
【0021】
アルコール検知センサ12は、ルームミラー2の右側面に取り付けられている。アルコール検知センサ12は、ドライバがアルコール検知センサ12に息を吹きかける際に、ドライバが吐出した息がハーフミラー3にも吹きかかる位置に配設されており、飲酒状態の検出を行う際、ドライバが吐出した呼気に含まれるアルコール量に基づくアルコール濃度を検知する。アルコール検知センサ12は、検知したアルコール濃度に関するアルコール濃度情報をアルコール濃度判定ECU14に送信する。
【0022】
画像処理ECU13は、顔撮像カメラ11から送信される画像情報に画像処理を施し、ドライバの顔の特徴点、具体的には目、鼻、口などを抽出する。また、画像処理ECU13は、ドライバの各特徴点を学習によって記憶しており、記憶している各特徴点と、画像処理によって抽出した特徴点とを対比することによってドライバの認証を行う。
【0023】
また、画像処理ECU13は、画像情報に画像処理を施すことにより、ドライバの認証を行うとともに、ハーフミラー3における表面の曇り具合を検出する。画像処理ECU13は、ドライバの認証を行った後、ハーフミラー3の曇り具合に関する画像処理情報をアルコール濃度判定ECU14に送信する。画像処理ECU13は、認証手段および曇り状態判定手段を構成する。
【0024】
アルコール濃度判定ECU14は、アルコール検知センサ12から送信されるアルコール濃度情報および画像処理ECU13から送信される画像処理情報に基づいて、ドライバの飲酒状態を検出する。アルコール濃度判定ECU14は、ドライバの飲酒状態を検出した際に、スピーカ15に対して警報情報を送信する。
【0025】
さらに、アルコール濃度判定ECU14は、画像処理ECU13から送信される画像処理情報に基づいて、飲酒状態検出を行うのに適切な状態であるか否かを判断する。そして、飲酒状態検出を行うのに適切な状態である場合に、飲酒状態検出を行う。また、飲酒状態検出を行うのに適切な状態ではない場合には、スピーカ15に対して、再検査要求情報を送信する。
【0026】
スピーカ15は、たとえば、車室内に設けられている。スピーカ15は、アルコール濃度判定ECU14から警報情報が送信された場合に、所定の警報音を出力する。また、アルコール濃度判定ECU14から再検査要求情報が送信された場合には、再検査を要求する案内に関する音声を出力する。
【0027】
次に、本実施形態に係る飲酒状態検出装置における飲酒状態検出処理手順について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態に係る飲酒状態検出装置の処理手順を示すフローチャートである。
【0028】
図3に示すように、本実施形態に係る飲酒状態検出装置1では、まず、飲酒状態検出準備処理を行う(S1)。飲酒状態検出準備処理では、飲酒状態検出を開始する際に、ルームミラー2が通常時の向きとなっている場合には、ドライバが自らの顔を視認できる位置に移動機構によってルームミラー2を移動させる。
【0029】
続いて、飲酒状態検出準備処理の一部として、ドライバに対して、ハーフミラー3を見ながらアルコール検知センサ12に呼気を吹きかけるように案内を行う。ドライバは、ルームミラー2に写る自らの顔を視認しながら、アルコール検知センサ12に対して呼気を吹きかける。続いて、ハーフミラー3の端部における呼気による曇りの確認を、ドライバに対して促す。
【0030】
続いて、顔撮像カメラ11によって、ドライバの顔およびハーフミラー3の曇り具合を撮像し、画像情報を画像処理ECU13に送信する。画像処理ECU13においては、顔撮像カメラ11で撮像した画像に画像処理を施し、ドライバ顔画像を収集する(S2)。次に、ドライバの顔の特徴点を検出する(S3)。ここでは、ドライバの顔の特徴点として、目、鼻、口等を検出する。それから、画像処理ECU13において、顔撮像カメラで撮像した画像に画像処理を施し、ハーフミラー3の表面における曇り具合を検出する(S4)。
【0031】
次に、所定の位置に顔があるか否かを判断する(S5)。ここでの所定の位置とは、飲酒検出を行うために適切な位置、具体的には、ドライバが吐出する呼気が、ハーフミラー3およびアルコール検知センサ12に直接吹きかかる位置をいう。
【0032】
その結果、ドライバの顔が所定の位置にあると判断した場合には、ハーフミラー3の表面に曇りがあるか否かを判断する(S6)。この判断にあたり、ハーフミラー3の表面において曇り部分が占める面積の割合が、ハーフミラー3の表面全体の面積に対して所定の割合以上である場合に、ハーフミラー3の表面に曇りがあると判定する。
【0033】
その結果、ハーフミラー3の表面に曇りがあると判断した場合には、アルコール濃度判定ECU14において、アルコール検知センサ12から送信されるあるアルコール濃度情報に基づいて、アルコール濃度チェックを行う(S7)。それから、ドライバが飲酒状態にあるか否かの判断を行う(S8)。飲酒状態にあるか否かは、アルコール検知センサ12で検知されたアルコール濃度が、所定のアルコール濃度しきい値以上となっているか否かによって判断する。
【0034】
その結果、飲酒状態にあると判断した場合には、スピーカ15に対して警報情報を送信し、スピーカ15から警報を出力する(S9)。スピーカ15から出力される警報としては、たとえば「飲酒状態にあります。運転を行わないようにしてください」とするなど、飲酒状態にあるドライバによる運転を中止させる指示とする。
【0035】
その後、移動機構によってルームミラー2の位置を通常時の位置に戻す(S10)。また、ステップS8において、ドライバが飲酒状態でないと判断した場合には、そのまま移動機構によってルームミラー2の位置を通常時の位置に戻す(S10)。こうして、飲酒状態検出処理を終了する。
【0036】
また、ステップS5において、ドライバの顔が所定の位置にないと判断した場合や、ステップS6においてハーフミラー3の表面に曇りがないと判断した場合には、ドライバの飲酒状態を確実に検出することができない状態であると考えられる。たとえば、ドライバの顔が所定の位置にない場合には、ドライバ以外の者がアルコール検知センサ12に呼気を吹きかけることが十分に想定される。また、所定の位置にドライバの顔があったとしても、ハーフミラー3の表面に曇りがない場合には、ドライバの息の吹きかけ量が少ないことが想定される。これらの場合には、ドライバの飲酒状態を適切に検出することが困難となる。
【0037】
したがって、ステップS5において、ドライバの顔が所定の位置にないと判断した場合や、ステップS6においてハーフミラー3の表面に曇りがないと判断した場合には、アルコール濃度チェックを行うことなく、再検査要求情報をスピーカ15に送信する。再検査要求情報を受信したスピーカ15は、再検査要求音を出力して、再検査の要求を行う(S11)。再検査の要求として出力される再検査要求音は、たとえば「息の吹きかけ量が不足しています。適切な量の息を吹きかけてください」として、ドライバに対して適性量の呼気を吹きかけることを要求する。こうして、飲酒状態検出処理を終了する。
【0038】
このように、本実施形態に係る飲酒状態検出装置1においては、ドライバに対して、ルームミラー2におけるハーフミラー3を見ながら、アルコール検知センサ12に対する呼気の吹きかけを案内する。この案内に応じたドライバが、ハーフミラー3を見ながら呼気を吹きかけたアルコール検知センサ12によって検出されたアルコール濃度によって飲酒状態を検出する。
【0039】
ここで、ルームミラー2は、ドライバが着座するドライバ席に近接しているとともに、アルコール検知センサ12は、ルームミラー2におけるドライバ席側である右側に取り付けられている。このため、飲酒検出の対象となる被検者は、ドライバ席に着座しなければならないことから、ドライバを飲酒検出の被検者とすることができる。また、アルコール検知センサ12がルームミラー2の右側に取り付けられているので、パートナー席からアルコール検知センサ12に息を吹きかけられないようにし、パートナー席からのドライバへの成り済ましを防止することができる。
【0040】
また、アルコール検知を行うにあたり、ルームミラー2におけるハーフミラー3の曇り具合を判定しており、ハーフミラー3に曇りがあるときにアルコール濃度を検知するようにしている。ドライバがドライバ席からアルコール検知センサ12に息を吹きかけると、ハーフミラー3の端部にもその息が吹きかかる。そのため、ハーフミラー3が曇ることになる。このとき、ドライバが吹きかける息の量が少ないと、アルコール濃度を適正に検知することが困難となるが、この場合には、ハーフミラー3に吹きかかる息も少なくなるので、ハーフミラー3の曇りが少なくなる。
【0041】
ここで、本実施形態に係る飲酒状態検出装置1では、アルコール検知センサ12でアルコール濃度を検知するにあたり、ハーフミラー3の曇り具合を検出し、ハーフミラー3の曇りがないと判断した場合には、再検査を要求するようにしている。このため、アルコール検知を行う場合に、アルコール検知センサ12に対して適正な量の息を吹きかけることをドライバに促すことができる。
【0042】
また、本実施形態に係る飲酒状態検出装置1では、ハーフミラー3に曇りがある場合に、アルコール濃度判定を行うようにしている。このため、アルコール検知センサ12に対する息の吹きかけ量が適切である場合に、飲酒状態検出を行うことができる。したがって、ドライバの呼気の吹きかけ量を参照しながらアルコール量の検出を行うことにより、飲酒状態を精度よく検出することができる。
【0043】
さらに、ハーフミラー3に曇りがある状態は、ドライバ自身もハーフミラー3の曇り具合を視認することができる。このため、ドライバに対して、ハーフミラー3の曇り状態を視認させることにより、飲酒状態検出が行われているということを認識させることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る飲酒状態検出装置1では、ハーフミラー3に息が吹きかかる状態で飲酒状態検出を行わせている。このため、ドライバの顔画像を確実に収集することができる。その結果、ドライバ認識のための顔画像のサンプルを集め易くすることができ、その分ドライバの認証を行う際の精度を向上させることができる。
【0045】
さらに、ルームミラー2は多様の車種に汎用されているものであり、本実施形態に係る飲酒状態検出装置1では、ルームミラー2に顔撮像カメラ11やアルコール検知センサ12が設けられている。このため、多様の車種について共用可能となるように、顔撮像カメラ11やアルコール検知センサ12を共通化することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る飲酒状態検出装置1では、ルームミラー2における鏡面としてハーフミラー3を用い、顔撮像カメラ11をハーフミラー3の裏面側に配設して、ドライバの顔画像とともに、ハーフミラー3の表面をも撮像することができるようにしている。このため、ハーフミラー3の曇り具合を検出するための検出手段を別途設ける必要がなくなるので、その分、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0047】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る飲酒状態検出装置は、上記第1の実施形態と比較して、顔撮像カメラ11およびアルコール検知センサ12の取り付け位置が異なっている。その他の点については、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0048】
図4は、本実施形態に係る飲酒状態検出装置のブロック構成図である。図4に示すように、本実施形態に係る飲酒状態検出装置20は、上記第1の実施形態と同様、顔撮像カメラ11、アルコール検知センサ12、画像処理ECU13、アルコール濃度判定ECU14、およびスピーカ15を備えている。このうち、顔撮像カメラ11、アルコール検知センサ12は、図5にも示すように、車室内における運転席の前方上部位置に配設されたサンバイザ30に取り付けられている。
【0049】
サンバイザ30は、車室内において、収容可能に取り付けられている。このサンバイザ30は、その上辺が車体に枢着されており、上辺に取り付けられた回転軸を中心として回動することにより、日よけとして用いる際の使用位置および収容時の収容位置との間を移動可能とされている。
【0050】
サンバイザ30が使用位置にある際には、サンバイザ30の裏面側が運転席から視認可能となり、収容位置にあるときには、サンバイザ30の裏面側が車室の天井を向いて収容される。さらに、サンバイザ30は、使用位置と収容位置とにおいて、それぞれ停止可能とされている。図5において、使用位置P1にあるサンバイザ30を実線で示し、収容位置P2にあるサンバイザ30を破線で示す。
【0051】
また、サンバイザ30の裏面側には、インナミラー31が取り付けられている。インナミラー31はハーフミラーからなり、インナミラー31の裏面側に顔撮像カメラ11が配設されている。サンバイザ30を使用位置に位置させた際に、顔撮像カメラ11でドライバの顔を撮像すると、インナミラー31の鏡面も顔撮像カメラ11で撮像される。
【0052】
さらに、サンバイザ30の裏面側であって、インナミラー31の側部には、アルコール検知センサ12が取り付けられている。アルコール検知センサ12は、ドライバがアルコール検知センサ12に息を吹きかける際に、ドライバが吐出した息がインナミラー31にも吹きかかる位置に配設されている。本実施形態に係る飲酒状態検出装置20は、その他の点については、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0053】
次に、本実施形態に係る飲酒状態検出装置における飲酒状態検出処理手順について、図6を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る飲酒状態検出装置の処理手順を示すフローチャートである。
【0054】
図6に示すように、本実施形態に係る飲酒状態検出装置20では、最初に、飲酒状態検出準備処理を行う(S21)。本実施形態に係る飲酒状態検出装置20における飲酒状態検出準備処理では、まず、サンバイザ30を立てて、使用位置にセットする。次に、飲酒状態検出準備処理の一部として、ドライバに対して、インナミラー31を見ながらアルコール検知センサ12に呼気を吹きかけるように案内を行う。ドライバは、ルームミラー2に写る自らの顔を視認しながら、アルコール検知センサ12に対して呼気を吹きかける。続いて、インナミラー31の端部における呼気による曇りの確認を、ドライバに対して促す。
【0055】
続いて、ドライバ顔画像を収集する(S22)。次に、ドライバの顔の特徴点を検出する(S23)。それから、インナミラー31の表面における曇り具合を検出する(S24)。次に、所定の位置に顔があるか否かを判断し(S25)、ドライバの顔が所定の位置にあると判断した場合には、インナミラー31の表面に曇りがあるか否かを判断する(S26)。
【0056】
その結果、インナミラー31の表面に曇りがあると判断した場合には、アルコール濃度チェックを行う(S27)。それから、ドライバが飲酒状態にあるか否かの判断を行う(S28)。その結果、飲酒状態にあると判断した場合には、スピーカ15に対して警報情報を送信し、スピーカ15から警報を出力する(S29)。スピーカ15から出力される警報としては、たとえば「飲酒状態にあります。運転を行わないようにしてください」などと、飲酒状態にあるドライバによる運転を中止させる指示とする。こうして、飲酒状態検出処理を終了する。
【0057】
また、ステップS25において、ドライバの顔が所定の位置にないと判断した場合や、ステップS26においてインナミラー31の表面に曇りがないと判断した場合には、ドライバの飲酒状態を確実に検出することができない状態であると考えられる。したがって、アルコール濃度チェックを行うことなく、再検査要求情報をスピーカ15に送信する。再検査要求情報を受信したスピーカ15は、再検査要求音を出力して、再検査の要求を行う(S30)。再検査の要求として出力される再検査要求音は、たとえば「息の吹きかけ量が不足しています。適切な量の息を吹きかけてください」として、ドライバに対して適性量の呼気を吹きかけることを要求する。こうして、飲酒状態検出処理を終了する。
【0058】
このように、本実施形態に係る飲酒状態検出装置20では、上記第1の実施形態と同様、アルコール検知センサ12でアルコール濃度を検知するにあたり、インナミラー31の曇り具合を検出し、インナミラー31の曇りがないと判断した場合には、再検査を要求するようにしている。このため、アルコール検知を行う場合に、アルコール検知センサ12に対して適正な量の息を吹きかけることをドライバに促すことができる。
【0059】
また、本実施形態に係る飲酒状態検出装置20では、インナミラー31に曇りがある場合に、アルコール濃度判定を行うようにしている。このため、アルコール検知センサ12に対する息の吹きかけ量が適切である場合に、飲酒状態検出を行うことができる。したがって、ドライバの呼気の吹きかけ量を参照しながらアルコール量の検出を行うことにより、飲酒状態を精度よく検出することができる。
【0060】
さらに、インナミラー31に曇りがある状態は、ドライバ自身もインナミラー31の曇り具合を視認することができる。このため、ドライバに対して、インナミラー31の曇り状態を視認させることにより、飲酒状態検出が行われているということを認識させることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る飲酒状態検出装置20では、インナミラー31に息が吹きかかる状態で飲酒状態検出を行わせている。このため、ドライバの顔画像を確実に収集することができる。その結果、ドライバ認識のための顔画像のサンプルを集め易くすることができ、その分ドライバ認識の精度を向上させることができる。
【0062】
さらに、サンバイザ30は多様の車種に汎用されているものであり、本実施形態に係る飲酒状態検出装置20では、サンバイザ30に顔撮像カメラ11やアルコール検知センサ12が設けられている。このため、多様の車種について共用可能となるように、顔撮像カメラ11やアルコール検知センサ12を共通化することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る飲酒状態検出装置1では、顔撮像カメラ11をインナミラー31の裏面側に配設して、ドライバの顔画像とともに、インナミラー31の表面をも撮像することができるようにしている。このため、インナミラー31の曇り具合を検出するための検出手段を別途設ける必要がなくなるので、その分、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0064】
また、サンバイザ30は、使用位置と収容位置との間で移動可能とされているとともに、使用位置と収容位置とにおいて、それぞれ停止可能とされている。このため、サンバイザ30を使用位置と収容位置との間で移動させるのみで飲酒状態検出を行うことができるので、ルームミラー2を用いる場合に対して、ミラーの位置を調整する手間などを省くことができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記各実施形態では、顔撮像カメラ11によってハーフミラー3またはインナミラー31の曇り具合を撮像しているが、ミラー曇り具合を検出する他の曇り検出手段を設ける態様とすることもできる。他の曇り検出手段としては、たとえばミラーを表面側から撮像するカメラや、ミラーの表面の湿度を検出する湿度検出手段を用いることができる。この場合、ミラーとしては、ハーフミラーのような透過性を有しないものを用いることができる。
【0066】
また、上記第1の実施形態では、ルームミラー2を移動させる移動機構を設けているが、このような移動機構を設けることのない態様とすることができる。この場合には、飲酒状態検出を行うにあたり、ドライバがルームミラー2をドライバの方向に向ける作業を行うこととなるが、ドライバに対して、ルームミラー2をドライバの方向に向けるようにスピーカから案内する態様とすることもできる。さらに、上記実施形態では、飲酒状態が検出された際には、スピーカ15から警報を発するようにしているが、この他の態様とすることもできる。たとえば、車両の走行を不能とさせる態様とすることもできる。また、警報を発する装置として、スピーカのほか、モニタなどを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】第1の実施形態に係る飲酒状態検知装置のブロック構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る飲酒状態検知装置の要部斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る飲酒状態検知装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る飲酒状態検知装置のブロック構成図である。
【図5】第2の実施形態に係る飲酒状態検知装置の要部斜視図である。
【図6】第2の実施形態に係る飲酒状態検知装置の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1…飲酒状態検出装置、2…ルームミラー、3…ハーフミラー、11…顔撮像カメラ、12…アルコール検知センサ、13…画像処理ECU、14…アルコール濃度判定ECU、15…スピーカ、20…飲酒状態検出装置、30…サンバイザ、31…インナミラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドライバの顔を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した画像に基づいて、ドライバの認証を行う認証手段と、
前記撮像手段による撮像を行う際の前記ドライバの顔を写すミラー部材と、
前記ミラー部材に前記ドライバの顔が写る状態で、前記ドライバの呼気が到達する位置に配置され、前記ドライバの呼気に含まれるアルコール量を検出するアルコールセンサと、
前記ミラー部材における曇り状態を判定する曇り状態判定手段と、
前記アルコールセンサで検出されたアルコール量および前記曇り状態判定手段によって判定された前記ミラーの曇り状態に基づいて、前記認証手段で認証されたドライバの飲酒状態を検出する飲酒状態検出手段と、
を備えることを特徴とする飲酒状態検出装置。
【請求項2】
前記ミラー部材は、表面が鏡面であり、裏面側から表面側に向けて光を透過するハーフミラーを備え、
前記撮像手段は、前記ハーフミラーの裏面側に配設されており、
前記曇り状態判定手段は、前記撮像手段が撮像した画像における前記ハーフミラーの曇り状態を画像処理によって検出する画像処理手段である請求項1に記載の飲酒状態検出装置。
【請求項3】
前記ミラー部材は、前記車両の車室内に設けられるルームミラー、または前記車室内に設けられたサンバイザに配置されたインナミラーである請求項1または請求項2に記載の飲酒状態検出装置。
【請求項4】
前記ミラー部材を前記ドライバの顔を写す位置に移動させる移動手段を備える請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の飲酒状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−941(P2010−941A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162137(P2008−162137)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】