説明

飲食品の呈味改善剤

【課題】
飲食品の好ましくない雑味、エグ味、酸味、苦味、渋味を低減し、好ましい旨味や甘味を付与することのできる呈味改善剤を提供すること。
【解決手段】
麦芽の加熱処理物をプロテアーゼおよびα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、グルカナーゼ、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼおよびトランスグルコシダーゼから選択される少なくとも1種以上の糖質関連酵素で処理して得られる麦芽酵素処理物を有効成分とする飲食品の呈味改善剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品の呈味改善剤に関し、詳しくは、飲食品の好ましくない雑味、エグ味、酸味、苦味、渋味を低減し、好ましい旨味や甘味を付与する呈味改善剤に関する。さらに詳しくは、麦芽の加熱処理物をプロテアーゼおよび糖質関連酵素で処理して得られる麦芽酵素処理物を有効成分とする飲食品の呈味改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
麦芽は一般的には大麦に適度の水分と温度を与えて発芽後乾燥させ、必要に応じて焙焼させて得られたものであり、主にビール製造の原料として使用されている。また、麦芽エキス(モルトエキスと言うこともある)は、麦芽から水溶性成分を抽出したエキスであり、色々な加工食品に利用されている。
【0003】
麦芽を使用した呈味改善剤としては、例えば、麦芽を水とエチルアルコールとの混合溶液で抽出して得られる抽出物からなる香味改善剤またはビール様飲料用香味改善剤(特許文献1および特許文献2)などが提案されている。
【0004】
また、麦芽の酵素処理に関しては、ビール醸造用麦汁の製造工程において外部からプロテアーゼを加えることにより、濃醇で香気のタイプの異なるビールを製造するための麦汁の製造方法(特許文献3)、生の穀物を磨砕して加熱した後、プロテアーゼ処理を施し、さらにエキス分を回収して得られるビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤の製造方法(特許文献4)などが知られている。
【0005】
これらの従来提案されている技術はある程度の効果はあるものの、必ずしも満足できるものではなく、さらに優れた呈味改善剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−346096号公報
【特許文献2】特開2005−13166号公報
【特許文献3】特開平6−78740号公報
【特許文献4】特開2008−43231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、飲食品の好ましくない雑味、エグ味、酸味、苦味、渋味を低減し、好ましい旨味や甘味を付与することのできる呈味改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは先に、麦芽を加熱して内在酵素を失活させた後、プロテアーゼおよびアミラーゼを加えて処理して得られるエキスからなるビール風味飲料用風味改善剤を提案した(特願2009−253647)。さらに検討した結果、麦芽の加熱処理物をプロテアーゼと、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、グルカナーゼ、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼおよびトランスグルコシダーゼから選択される少なくとも1種以上の糖質関連酵素、特に、プルラナーゼ、グルカナーゼおよびサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼから選択される少なくとも1種以上を併用して処理して得られる麦芽の酵素処理物が、飲食品の好ましくない雑味、エグ味、酸味、苦味、渋味を低減し、好ましい旨味や甘味を付与することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明は、麦芽の加熱処理物をプロテアーゼおよび糖質関連酵素で処理して得られる麦芽酵素処理物を有効成分とする飲食品の呈味改善剤を提供することができる。
【0010】
また本発明は、糖質関連酵素がα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、グルカナーゼ、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼおよびトランスグルコシダーゼから選択される少なくとも1種以上である前記の呈味改善剤を提供することができる。
【0011】
さらに本発明は、糖質関連酵素がプルラナーゼ、グルカナーゼおよびサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼより選択される少なくとも1種以上である前記の呈味改善剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の呈味改善剤は、飲食品に不要な呈味や香気を付与することなく、飲食品の好ましくない雑味、エグ味、酸味、苦味、渋味を低減し、かつ、好ましい旨味や甘味を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明でいう麦芽は、大麦、小麦、裸麦、ライ麦などの麦類を原料として得られる公知のものであり特に制限はないが、具体的には、これらの各種麦類を水に20℃以下で約40時間〜50時間浸漬し、適当量の水分を含ませ発芽させた後、温度50℃以下で乾燥したものをいう。麦芽は非常に強い酵素活性(特にアミラーゼ活性)を有する。生の麦そのものには元々酵素が不活性の状態で多量に含まれているが、発芽によって酵素が活性化されると考えられている。これは、発芽直後はまだ光合成ができない段階であるため、種子中に元々含まれている栄養源を利用するための生体機構と考えられている。
【0014】
一般的に、ビールなどの製造においては、この麦芽中に内在する酵素活性を最大限有効に利用して、麦汁を製造するが、本発明では、まずはじめに麦芽を加熱して内在酵素を失活させる点に一つの大きな特徴がある。この加熱処理には、以下のような作用があると考えられる。(1)内在酵素を失活させてからプロテアーゼおよび糖質関連酵素を加えて処理することにより従来の麦汁とは風味特性の異なる麦芽エキスが製造できる、(2)加熱殺菌の効果により微生物の繁殖を抑制することができ、長時間の酵素処理が可能になる、(3)組織の軟化作用により、固形分収率も増加する。
【0015】
麦芽中の内在酵素を加熱により失活する方法としては、特に制限はなく、いかなる方法でも採用することができる。例えば、生の麦芽を焙煎するなどにより、そのまま加熱する方法を例示することができる。麦芽の加熱方法としては、例えば、100℃以上の熱風で処理するか、あるいは、例えば、回転式焙煎器で100℃〜250℃でロースト(焙煎)処理する方法などを挙げることができる。これらの加熱処理された麦芽は、例えば、ミュンヘン麦芽、アンバー麦芽、ロースト麦芽、チョコレート麦芽、カラメル麦芽として市販品として入手することもできる。
【0016】
また、別の加熱方法として生の乾燥麦芽を熱水中で加熱する方法を例示することもできる。このような加熱方法としては、例えば、生の乾燥麦芽の粉砕物を水と混合し、加熱する方法を挙げることができる。
【0017】
生の麦芽は水と混合する前に適当な大きさに粉砕または裁断することで、水との混合・攪拌状態を良好にすることができる。好ましい粉砕または裁断の大きさは0.01mm〜原体(未粉砕)程度であるが、水との混合・攪拌状態を考慮した場合0.05mm〜3mmが好ましく、さらには0.1mm〜2mmが好ましい。粉砕粒度を0.01mm未満の微粉砕、あるいは、磨砕状態とした場合は、麦芽の内在酵素が作用してしまい、得られるエキスに雑味などのマイナスの風味が生じてしまうため好ましくない。
【0018】
使用する水の量は麦芽と水が混合でき、物理的に攪拌が容易な量であれば特に制限はないが、通常、麦芽1重量部に対し2重量部〜100重量部を例示することができる。しかし、麦芽に対し水が少なすぎると、その後の酵素反応が行いにくく、また、水が多すぎると抽出液の濃度が低下してしまうため、麦芽1重量部に対し5重量部〜50重量部が好ましく、さらに、麦芽1重量部に対し8重量部〜20重量部が特に好ましい。水の量が麦芽1重量部に対し2重量部未満の場合、攪拌ができなくなってしまい、酵素反応には不適当である。また、水の量が麦芽1重量部に対し100重量部より多く使用した場合、抽出液の濃度が薄くなってしまい、飲料などに添加する場合に多量に必要になったり、また、抽出液を濃縮する場合でも多量の水を蒸発させなければならないなど不利益な面が多くなってしまい好ましくない。
【0019】
麦芽と水を混合後、加熱処理し、麦芽に存在する酵素の失活をおこなう。加熱温度としては麦芽の内在酵素を失活させることができる温度であれば特に制限はなく、65℃〜120℃が好ましく、さらには70℃〜110℃が好ましく、特に75℃〜105℃を好ましい範囲として挙げることができる。また、加熱時間としては0.1分〜180分を好ましく、さらには0.5分〜120分を好ましく、特に1分〜60分をより好ましい範囲として挙げることができる。また、加熱に際しては内在酵素がなるべく作用しないように、麦芽と水を混合後、できる限り速やかに前記の温度に昇温することが望ましい。
【0020】
なお、すでに生の麦芽を焙煎するなどのそのまま加熱する方法により得られた麦芽も、生の乾燥麦芽と同様に粉砕し、水と混合後加熱することで、その後の酵素反応を容易に行うことが可能となる。
【0021】
加熱後、引き続き酵素処理に適当な温度まで冷却する。冷却の温度は使用する酵素の種類により一概には言えないが、雑味の発生を避けるためには必ずしも酵素の至適温度で反応させる必要はなく、やや低めで反応させることが好ましい場合もある。冷却の温度としては、20℃〜70℃が好ましく、さらには25℃〜60℃が好ましく、特に30℃〜55℃を好ましい範囲として挙げることができる。
【0022】
次いで、麦芽と水の混合物にプロテアーゼおよび糖質関連酵素を加えて酵素処理を行う。酵素処理の方法としては、プロテアーゼと糖質関連酵素を同時に加えて反応を行っても良いが、プロテアーゼ処理を行った後、糖質関連酵素で処理する方法、逆に、糖質関連酵素で処理した後、プロテアーゼで処理する方法のいずれも採用することができる。
【0023】
プロテアーゼと糖質関連酵素を同時に加えて反応を行う場合は、麦芽と水のスラリーを先に例示した温度に冷却後、必要に応じてpH4〜7に調整し、必要な量のプロテアーゼと糖質関連酵素を添加し、20℃〜70℃、好ましくは25℃〜60℃、さらに好ましくは30℃〜55℃の温度範囲で、反応時間としては5分〜24時間、好ましくは1時間〜20時間、より好ましくは4時間〜18時間攪拌または静置条件により酵素反応を行うことができる。
【0024】
また、プロテアーゼ処理を行った後、引き続き糖質関連酵素処理を行う場合は、麦芽と水のスラリーを先に例示した温度に冷却後、必要に応じてpH4〜7に調整し、必要な量のプロテアーゼを添加し、20℃〜70℃、好ましくは25℃〜60℃、さらに好ましくは30℃〜55℃の温度範囲で、反応時間としては1時間〜24時間、好ましくは2時間〜20時間、より好ましくは3時間〜18時間反応させる。このプロテアーゼ処理の際の反応は、攪拌条件よりも静置条件で行う方が雑味が生じにくく好ましい。このプロテアーゼ処理により、コク味、うま味および独特の濃厚な風味が生成すると考えられる。
【0025】
引き続き、必要な量の糖質関連酵素を添加し、20℃〜70℃、好ましくは25℃〜60℃、さらに好ましくは30℃〜55℃の温度範囲で反応を行う。糖質関連酵素処理に際しては、攪拌して反応させることが好ましく、また、反応時間はプロテアーゼ処理よりも短時間であることが好ましく、5分〜6時間、好ましくは10分〜4時間、より好ましくは30分〜2時間反応させる。糖質関連酵素の処理時間が長くなりすぎると目的とする独特の濃厚な風味が弱まる傾向があり好ましくない。この糖質関連酵素処理により、甘味、すっきり感が生成し、また、不溶解物とエキス分との分離性、濾過性が向上し、収率の向上、作業性の向上にもつながる。
【0026】
また、プロテアーゼおよび糖質関連酵素の使用量は、力価などにより異なり、一概には言えないが、プロテアーゼについては比較的多量に使用することが、目的とする麦芽独特の風味が出やすいため好ましい。一方、糖質関連酵素の使用量が多くなりすぎると、目的とする独特の濃厚な風味が弱まってしまう傾向があるため好ましくない。
【0027】
プロテアーゼの使用量は、通常、麦芽原料の重量を基準として0.1質量%〜5質量%、好ましくは0.2質量%〜3質量%、より好ましくは0.5質量%〜2質量%の範囲内を例示することができる。
【0028】
一方の、糖質関連酵素の使用量は、通常、麦芽原料の重量を基準として0.01質量%〜1質量%、好ましくは0.02質量%〜0.5質量%、より好ましくは0.05質量%〜0.2質量%の範囲内を例示することができる。
【0029】
さらにまた、プロテアーゼと糖質関連酵素の比率については、それぞれの質量を基準として1:0.01〜1:0.1の範囲内を例示することができる。
【0030】
本発明で使用可能なプロテアーゼとしては、例えば、プロテアーゼA、プロテアーゼM「アマノ」G、プロテアーゼM「アマノ」SD、プロテアーゼP、ウマミザイム、ペプチダーゼR、ニューラーゼ(登録商標)A、ニューラーゼ(登録商標)F(以上、天野エンザイム社製の麹菌由来プロテアーゼ);スミチーム(登録商標)AP、スミチーム(登録商標)LP、スミチーム(登録商標)MP、スミチーム(登録商標)FP、スミチーム(登録商標)LPL(以上、新日本化学工業社製の麹菌由来プロテアーゼ);プロチン(登録商標)FN(大和化成社製の麹菌由来プロテアーゼ);デナプシン2P、デナチーム(登録商標)AP、XP−415(以上、ナガセケムテックス社製の麹菌由来プロテアーゼ);オリエンターゼ(登録商標)20A、オリエンターゼ(登録商標)ONS、テトラーゼ(登録商標)S(以上、エイチビィアイ社製の麹菌由来プロテアーゼ);モルシン(登録商標)F、PD酵素、IP酵素、AO−プロテアーゼ(以上、キッコーマン社製の麹菌由来プロテアーゼ);サカナーゼ(科研ファルマ社製の麹菌由来プロテアーゼ);パンチダーゼ(登録商標)YP−SS、パンチダーゼ(登録商標)NP−2、パンチダーゼ(登録商標)P(以上、ヤクルト薬品工業社製の麹菌由来プロテアーゼ);フレーバザイム(登録商標)(ノボザイムズジャパン社製の麹菌由来プロテアーゼ);コクラーゼ(登録商標)SS、コクラーゼ(登録商標)P(以上、三共ライフテック社製の麹菌由来プロテアーゼ);VERON PS、COROLASE PN−L(以上、ABエンザイム社製の麹菌由来プロテアーゼ);プロテアーゼN、プロテアーゼNL、プロテアーゼS、プロレザー(登録商標)FG−F(以上、天野エンザイム社製の細菌由来プロテアーゼ);プロチンP、デスキン、デピレイス、プロチンA、サモアーゼ(登録商標)(以上、大和化成社製の細菌由来プロテアーゼ);ビオプラーゼ(登録商標)XL−416F、ビオプラーゼ(登録商標)SP−4FG、ビオプラーゼ(登録商標)SP−15FG(以上、ナガセケムテックス社製の細菌由来プロテアーゼ);オリエンターゼ(登録商標)90N、ヌクレイシン(登録商標)、オリエンターゼ(登録商標)10NL、オリエンターゼ(登録商標)22BF(以上、エイチビィアイ社製の細菌由来プロテアーゼ);アロアーゼ(登録商標)AP−10(ヤクルト薬品工業社製の細菌由来プロテアーゼ);プロタメックス(登録商標)、ニュートラーゼ(登録商標)、アルカラーゼ(登録商標)(以上、ノボザイムズ社製の細菌由来プロテアーゼ);COROLASE N、COROLASE 7089、VERON W、VERON P(以上、ABエンザイム社製の細菌由来プロテアーゼ);エンチロンNBS(洛東化成工業社製の細菌由来プロテアーゼ);アルカリプロテアーゼGL440、ピュラフェクト(登録商標)4000L、プロテアーゼ899、プロテックス6L(以上、ジェネコン協和社製の細菌由来プロテアーゼ);アクチナーゼ(登録商標)AS、アクチナーゼ(登録商標)AF(以上、科研ファルマ社製の放線菌由来プロテアーゼ);タシナーゼ(登録商標)(ジェネンコア協和社製の放線菌由来プロテアーゼ);パパインW−40(アマノエンザイム社製の植物由来プロテアーゼ);食品用精製パパイン(ナガセケムテックス社製の植物由来プロテアーゼ);その他動物由来のペプシン、トリプシンなどを挙げることができる。
【0031】
糖質関連酵素としては、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、グルカナーゼ、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼおよびトランスグルコシダーゼから選択される少なくとも1種が好ましく、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼが特に好ましい。プロテアーゼとサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼとの組合せにおいては、少糖類の生成が少なく、オリゴ糖が生成し、すっきりとした甘味となるため好ましい。
【0032】
α−アミラーゼはデンプンやグリコーゲンのα−1,4結合を不規則に切断し、多糖ないしオリゴ糖を生み出す酵素であり、β−アミラーゼはデンプンやグリコーゲンを麦芽糖に分解する酵素であり、グルコアミラーゼは糖鎖の非還元末端のα−1,4結合を分解してブドウ糖を産生する酵素である。
【0033】
プルラナーゼはアミロペクチン中の糖鎖のα−1,6結合を切断する酵素と知られており、別名「枝きり酵素」とも呼ばれている。グルカナーゼはβ−グルカンを分解し、オリゴ糖を生成する酵素であり、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼは、(1)澱粉等のα−1,4グルカンの加水分解、(2)澱粉に作用してサイクロデキストリンを作る環化反応、(3)アクセプターとなる糖の存在下でサイクロデキストリンを開環結合するカップリング反応、(4)直鎖のオリゴ糖間での不均化反応を行う酵素である。サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼとしては、例えば、バチルス属の細菌(バチルス・マセランス,バチルス・ステアロサーモフィルス,バチルス・メガテリウム,バチルス・サーキュランス)由来の酵素が知られているが、本発明においては、その起源を問わずサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼであればいずれの酵素を用いてもよい。トランスグルコシダーゼは、マルトデキストリン、オリゴ糖に作用してイソマルトース、パノース、イソマルトトリオースなどのイソマルトオリゴ糖を生成する酵素である。
【0034】
市販のα−アミラーゼ製剤としては、ビオザイム(登録商標)F1OSD、アミラーゼ S「アマノ」35G、ビオザイム(登録商標)A、ビオザイム(登録商標)L(以上アマノエンザイム社製);コクラーゼ(登録商標)(三菱化学フーズ社製);スミチーム(登録商標)L(新日本化学工業社製);クライスターゼ(登録商標)L1、クライスターゼ(登録商標)P8、クライスターゼ(登録商標)SD80、コクゲンSD−A、コクゲンL、クライスターゼ(登録商標)T10S(以上、大和化成社製);ビオテックスL#3000、ビオテックスTS、スピターゼHS、スピターゼCP−40FG、スピターゼXP−404(以上、ナガセケムテックス社製);グリンドアミル(登録商標)A(ダニスコジャパン社製);BAN、ファンガミル(登録商標)、ターマミル(登録商標)、ノバミル(登録商標)、マルトゲナーゼ(登録商標)、リコザイムスープラ、ステインザイム(登録商標)、アクアザイム、サーモザイム(登録商標)、デュラミル(登録商標)(以上、ノボザイムズジャパン社製);フクタミラーゼ(登録商標)30、フクタミラーゼ(登録商標)50、フクタミラーゼ(登録商標)10L、液化酵素6T、液化酵素、リクィファーゼL45(以上、エイチビーアイ社製);VERON AX、VERON GX、VERON M4、VERON ELS(以上、樋口商会社製);ユニアーゼ(登録商標)BM−8(ヤクルト薬品工業社製);ラタターゼ、ラタターゼRCS、SVA、マグナックスJW−121、スミチーム(登録商標)A−10、スミチーム(登録商標)AS(以上、新日本化学工業社製);ソフターゲン(登録商標)・3H(タイショウテクノス社製);スペザイム(登録商標)AA、スペザイム(登録商標)FRED、ピュラスターOxAm、ピュラスターST(以上、ジェネンコア協和社製);ベイクザイム(登録商標)P500(日本シイベルヘグナー社製)などが挙げられる。
【0035】
また、β−アミラーゼ製剤としてはオプチマルトBBA(ジェネンコア協和社製);β−アミラーゼ#1500、β−アミラーゼL、β−アミラーゼ#1500S(以上、ナガセケムテックス社製);ハイマルトシン(登録商標)G 、ハイマルトシン(登録商標)GL(以上、エイチビィアイ社製);ユニアーゼ(登録商標)L(ヤクルト薬品工業社製);GODO−GBA(合同清酒社製)などが挙げられる。
【0036】
市販のグルコアミラーゼとしては、例えば、グルク(登録商標)SG、グルクザイム(登録商標)AF6、グルクザイム(登録商標)NL4.2、酒造用グルコアミラーゼ「アマノ」SD(以上、天野エンザイム社製);GODO−ANGH(合同酒精社製);コクラーゼ(登録商標)G2、コクラーゼ(登録商標)M(以上、三菱化学フーズ社製);オプチデックスL(ジェネンコア協和社製);スミチーム(登録商標)、スミチーム(登録商標)SG(以上、新日本化学工業社製);グルコチーム(登録商標)#20000(ナガセケムテックス社製);AMG、サンスーパー(以上、ノボザイムズジャパン社製);グルターゼAN(エイチビィアイ社製);ユニアーゼ(登録商標)K、ユニアーゼ(登録商標)2K、ユニアーゼ(登録商標)30、ユニアーゼ(登録商標)60F(以上、ヤクルト薬品工業社製);マグナックス(登録商標)JW−201(洛東化成工業社製);グリンドアミル(登録商標)AG(ダニスコジャパン社製)などが挙げられる。さらにまた、α−アミラーゼ活性、β−アミラーゼ活性、グルコアミラーゼ活性の全てを含むアミラーゼ複合酵素製剤なども使用することができる。
【0037】
市販のプルラナーゼ製剤としては、GODO−FIA(合同酒精社製);プルラナーゼ「アマノ」3(天野エンザイム社製);クライスターゼ(登録商標)PLF、クライスターゼ(登録商標)PL45(以上、大和化成社製);オプチマックスL−100、オプチマックス4060VHP、プロモザイム、プロモザイムD2(以上、ジェネンコア協和社製);デキストロザイム DX(ノボザイムズジャパン社製)などが挙げられる。
【0038】
市販のグルカナーゼとしては、例えば、フィニザイム(登録商標)、ウルトラフロ(登録商標)、ビスコザイム(登録商標)、グルカネックス、セレミックス(以上、ノボザイムズジャパン社製)、マルチフェクト(登録商標)BGL、β−グルカナーゼ750L(以上、ジェネンコア協和社製)、ツニカーゼ(登録商標)FN(大和化成社製)、グルカナーゼ(ICN Biochemical Inc.(California,USA)社製)などが挙げられる。
【0039】
市販のサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼとしては、トルザイム(ノボザイムズジャパン社製)、コンチザイム(アマノエンザイム社製)などを挙げることができる。
【0040】
市販のトランスグルコシダーゼとしては、トランスグルコシダーゼL「アマノ」(アマノエンザイム社製)、トランスグルコシダーゼL−500(ジェネンコア協和社製)などを挙げることができる。
【0041】
酵素処理終了後、加熱により酵素失活し、固液分離、濾過して、または、固液分離し、加熱により酵素失活、濾過して酵素処理抽出液を得ることができる。
【0042】
引き続き、酵素処理抽出液は、必要に応じて濃縮を行っても良い。濃縮方法としては、例えば、減圧濃縮、逆浸透膜(RO膜)濃縮、凍結濃縮など適宜な濃縮手段を採用して濃縮することにより、酵素処理抽出液の濃縮物を得ることができる。濃縮の程度は特に制限されないが、一般には、Bx3°〜Bx80°、好ましくはBx8°〜Bx60°、より好ましくはBx10°〜Bx50°の範囲内が好適である。
【0043】
濾過液または濃縮液はこのまま本発明品としても良いが、さらに再度、沈殿除去、濾過、殺菌などの工程を行い密閉容器に充填して流通可能な状態としてもよい。
【0044】
また、濾過液または濃縮液は、所望により、デキストリン、加工澱粉、サイクロデキストリン、アラビアガム等の賦形剤を添加してペースト状、粉末状の組成物とすることもできる。
【0045】
本発明の呈味改善剤が適用される飲食品は、特に制限されることはなく各種の飲食品に適用でき、例えば、茶類飲料、スポーツ飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、酒類などの飲料類;ヨーグルト、ゼリー、プディング及びムースなどのデザート類;ケーキや饅頭などといった洋菓子、和菓子、蒸菓子などの製菓類;ポテトチップス、煎餅、クッキーなどの菓子スナック類;アイスクリームやシャーベットなどの冷菓類および氷菓類;チューインガム、ハードキャンディー、ヌガーキャンディー、ゼリービーンズなどのその他の菓子類;果実フレーバーソースやチョコレートソースなどのソース類;バタークリームや生クリームなどのクリーム類;イチゴジャムやマーマレードなどのジャム類;菓子パンなどのパン類;味噌、醤油、だし、ドレッシング、マヨネーズなどの調味料類;焼き肉、焼き鳥、鰻蒲焼きなどに用いられるタレやトマトケチャップなどのソース類;お吸い物、出汁類(牛、豚、魚介類)、コンソメスープ、卵スープ、ワカメスープ、フカヒレスープ、ポタージュ、みそ汁などのスープ類;麺・パスタ類(そば、うどん、ラーメン、パスタなど)のつゆ類;おかゆ、雑炊、お茶漬けなどの米調理食品類;ハム、ソーセージ、チーズなどの畜産加工品類;蒲鉾などの練り製品類;レトルト食品、佃煮、総菜類および冷凍食品類;干物、塩辛、珍味などの水産加工品類;漬物などの野菜加工品類;以上の他、その他にも、煮物、揚げ物、焼き物、カレーなどのあらゆる加工食品などを挙げることができる。本発明の呈味増強剤を上記した飲食品に配合することにより、好ましくない雑味、エグ味、酸味、苦味、渋味を低減し、好ましい旨味や甘味を付与することができる。
【0046】
本発明の呈味改善剤は、特に、機能性を訴求した飲食品に配合することにより、該機能性飲食品に添加されている機能性素材の好ましくない雑味、エグ味、酸味、苦味、渋味を低減し、好ましい旨味や甘味を付与することができる。このような機能性素材としては、例えば、バリン、ロイシン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファンなどのアミノ酸;カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、ホエイタンパク質、乳タンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質などのタンパク質およびその分解物;大豆ペプチド、小麦ペプチド、カゼイン分解ペプチド、乳清ペプチド、卵白ペプチドなどのペプチド;ビタミンB1、B2、B6、B12、C、D、K、ナイアシン、ニコチン酸アミド、パントテン酸、葉酸などのビタミンまたはその塩;ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラル;各種植物由来のポリフェノール(緑茶ポリフェノール、ウーロン茶ポリフェノール、甜茶ポリフェノール、ブドウ種子ポリフェノール、カカオポリフェノールなど);オウバク、ゲンチアナ、センブリ、トウキなどの生薬;ステビア、甘草、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースなどの高甘味度甘味料を挙げることができる。本発明の呈味改善剤を上記した機能性素材を含有する飲食品に配合することにより、機能性素材が有する好ましくない雑味、エグ味、酸味、苦味、渋味を低減し、好ましい旨味や甘味を付与することができる。
【0047】
本発明の呈味改善剤の上記した飲食品への配合割合は、飲食品の種類、呈味改善剤の濃度などにより異なり一概に言えないが、通常、これらの飲食品に0.02質量%〜2質量%程度の濃度とすることができる。
【0048】
以下に実施例、比較例および参考例を挙げて本発明を詳しく説明する。
【実施例】
【0049】
実施例1(麦芽を熱水中で加熱後、プロテアーゼ処理後に糖質関連酵素としてα−アミラーゼ処理を行った例)
市販の醸造用乾燥麦芽1Kgをハンマーミル(スクリーン1mm)にて粉砕し、水13Kgを加え、加熱して速やかに95℃に昇温して同温度で10分間保持し、麦芽中の内在酵素を失活させた。スラリーを45℃に冷却後、プロテアーゼM「アマノ」SD(天野エンザイム社製の麹菌由来プロテアーゼ)20gを添加し、45℃で30分間攪拌した後、45℃にて6時間静置した。その後、コクラーゼ(三菱化学フーズ社製のα−アミラーゼ)1gを添加し、45℃にて1時間攪拌反応を行った。引き続き、脱水機型遠心分離機により固形物を除去し、抽出液13.14Kgを得た(Bx6.4°、pH6.0)。引き続き90℃、1分間加熱して殺菌をかねて酵素失活を行った後、30℃に冷却し、セルロース粉末(ダイヤフロック:東京今野商店社製)250gをプレコートしたヌッチェ(No.2濾紙、30cm:アドバンテック社製)にて吸引濾過し、濾液13.0Kg(Bx6.3°、pH6.0)を得た。濾液をロータリーエバポレーターにてBx17°まで減圧濃縮し、濃縮液4.63Kgを得た。濃縮液を20℃に冷却後、遠心分離(800×g、6分)により不溶解物を除去し、上清液4.44Kg(Bx17.1°)を得た。上清液にイオン交換水を加え、Bxを15°に調整した後、90℃、1分間加熱殺菌した後、30℃に冷却し無菌的に密閉容器に充填し、本発明品1(5.04Kg、Bx15.0°、pH6.0)を得た。
【0050】
実施例2(糖質関連酵素としてβ−アミラーゼを使用した例)
実施例1において、コクラーゼ1gの代わりにオプチマルトBBA(ジェネンコア協和社製のβ−アミラーゼ)1gを使用した以外は実施例1と同様に処理し、本発明品2(5.01Kg、Bx15.0°、pH6.0)を得た。
【0051】
実施例3(糖質関連酵素としてグルコアミラーゼを使用した例)
実施例1において、コクラーゼ1gの代わりにスミチーム2000(新日本化学工業社製のグルコアミラーゼ)1gを使用した以外は実施例1と同様に処理し、本発明品3(5.15Kg、Bx15.0°、pH6.1)を得た。
【0052】
実施例4(糖質関連酵素としてプルラナーゼを使用した例)
実施例1において、コクラーゼ1gの代わりにクライスターゼPL45(大和化成社製のプルラナーゼ)1gを使用した以外は実施例1と同様に処理し、本発明品4(5.12Kg、Bx15.0°、pH5.9)を得た。
【0053】
実施例5(糖質関連酵素としてグルカナーゼを使用した例)
実施例1において、コクラーゼ1gの代わりにツニカーゼFN(大和化成社製のグルカナーゼ)1gを使用した以外は実施例1と同様に処理し、本発明品5(5.10Kg、Bx15.0°、pH6.2)を得た。
【0054】
実施例6(糖質関連酵素としてサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを使用した例)
実施例1において、コクラーゼ1gの代わりにコンチザイム(アマノエンザイム社製のサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ)1gを使用した以外は実施例1と同様に処理し、本発明品6(5.03Kg、Bx15.0°、pH6.1)を得た。
【0055】
実施例7(糖質関連酵素としてトランスグルコシダーゼを使用した例)
実施例1において、コクラーゼ1gの代わりにトランスグルコシダーゼL「アマノ」(アマノエンザイム社製のトランスグルコシダーゼ)1gを使用した以外は実施例1と同様に処理し、本発明品7(5.01Kg、Bx15.0°、pH6.2)を得た。
【0056】
比較例1(麦芽内在酵素のみで酵素反応を行った例)
市販の醸造用乾燥麦芽1Kgをハンマーミル(スクリーン1mm)にて粉砕し、水13Kgを加え、45℃に加温後、45℃にて2時間攪拌、その後65℃に加温後、65℃にて2時間攪拌、その後80℃に加温後、80℃にて1時間攪拌反応を行った。引き続き、脱水機型遠心分離機により固形物を除去し、抽出液13.95Kgを得た(Bx3.2°、pH6.3)。引き続き90℃、1分間加熱して殺菌をかねて酵素失活を行った後、30℃に冷却し、セルロース粉末(ダイヤフロック:東京今野商店社製)250gをプレコートしたヌッチェ(No.2濾紙、30cm:アドバンテック社製)にて吸引濾過し、濾液13.78Kg(Bx3.1°、pH6.3)を得た。濾液をロータリーエバポレーターにてBx17°まで減圧濃縮し、濃縮液2.44Kgを得た。濃縮液を20℃に冷却後、遠心分離(800×g、6分)により不溶解物を除去し、上清液2.40Kg(Bx17.1°)を得た。上清液にイオン交換水を加え、Bxを15°に調整した後、90℃、1分間加熱殺菌した後、30℃に冷却し無菌的に密閉容器に充填し、比較品1(2.68Kg、Bx15.0°、pH6.3)を得た。
【0057】
比較例2(プロテアーゼのみで処理した例)
実施例1において、コクラーゼ1gを添加しない以外は実施例1と同様に処理して、比較品2(4.81Kg、Bx15.0°、pH6.3)を得た。
【0058】
比較例3(糖質関連酵素のみで処理した例)
実施例1において、プロテアーゼM「アマノ」SD20gを添加しない以外は実施例1と同様に処理して、比較品3(5.03Kg、Bx15.0°、pH6.0)を得た。
【0059】
実施例8(官能評価)
下記のビタミン強化スポーツ飲料に、前記の本発明品1〜7および比較品1〜3の麦芽エキスを0.2%添加し、無添加品を基準としてそれぞれの飲料を、10名の良く訓練されたパネラーにより官能評価し評点をつけた。評価項目は、雑味、エグ味、苦味、旨味、甘味について評価し、それぞれ−5:非常に悪い、−2:やや悪い、0:変化無し、+2:良い、+5:非常に良いとして採点した。その平均点および平均的な官能評価結果を表1に示す。
【0060】
ビタミン強化スポーツ飲料
果糖ぶどう糖液糖 2.50
ビタミンミックス※ 0.25
クエン酸 0.12
ビタミンC 0.10
水 残部
合計 200.00
※ビタミンミックス:クエン酸3ナトリウム、塩化カリウム、乳酸カルシウム、
パントテン酸カルシウム、硫酸マグネシウム
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示したように、プロテアーゼと糖質関連酵素を使用した本発明品1〜7の麦芽エキスを配合することにより、ビタミン由来の雑味、エグ味、苦味が抑制され、旨味、甘味も付与されて飲みやすくなっていた。
【0063】
実施例9(麦芽を熱水中で加熱後、プロテアーゼ処理と糖質関連酵素処理を同時に行った例)
市販の醸造用乾燥麦芽1Kgをハンマーミル(スクリーン1mm)にて粉砕し、水13Kgを加え、加熱して速やかに95℃に昇温して同温度で10分間保持し、麦芽中の内在酵素を失活させた。スラリーを45℃に冷却後、プロテアーゼM「アマノ」SD20gおよびコンチザイム1gを添加し、45℃で30分間攪拌した後、45℃にて6時間静置した。引き続き、脱水機型遠心分離機により固形物を除去し、抽出液13.14Kgを得た(Bx6.8°、pH6.0)。引き続き90℃、1分間加熱して殺菌をかねて酵素失活を行った後、30℃に冷却し、セルロース粉末(ダイヤフロック:東京今野商店社製)250gをプレコートしたヌッチェ(No.2濾紙、30cm:アドバンテック社製)にて吸引濾過し、濾液13.1Kg(Bx6.5°、pH6.0)を得た。濾液をロータリーエバポレーターにてBx17°まで減圧濃縮し、濃縮液4.86Kgを得た。濃縮液を20℃に冷却後、遠心分離(800×g、6分)により不溶解物を除去し、上清液4.68Kg(Bx17.0°)を得た。上清液にイオン交換水を加え、Bxを15°に調整した後、90℃、1分間加熱殺菌した後、30℃に冷却し無菌的に密閉容器に充填し、本発明品9(5.25Kg、Bx15.0°、pH6.0)を得た。
【0064】
実施例10(プロテアーゼを変更した例)
実施例9において、プロテアーゼM「アマノ」SD20gの代わりにスミチームMP(新日本化学工業社製の麹菌由来プロテアーゼ)20gを使用した以外は実施例9と同様に処理して、本発明品10(5.28Kg、Bx15.0°、pH6.1)を得た。
【0065】
実施例11(焙煎麦芽を使用した例)
市販の焙煎麦芽(L値39)1Kgをハンマーミル(スクリーン1mm)にて粉砕し、水13Kgを加え、90℃にて1分間加熱殺菌した。スラリーを45℃に冷却後、スミチームMP20gおよびコンチザイム1gを添加し、45℃で30分間攪拌した後、45℃にて6時間静置した。引き続き、脱水機型遠心分離機により固形物を除去し、抽出液12.7Kgを得た(Bx5.7°、pH5.0)。引き続き90℃、1分間加熱して殺菌をかねて酵素失活を行った後、30℃に冷却し、セルロース粉末(ダイヤフロック:東京今野商店社製)250gをプレコートしたヌッチェ(No.2濾紙、30cm:アドバンテック社製)にて吸引濾過し、濾液12.45Kg(Bx5.6°、pH5.0)を得た。濾液をロータリーエバポレーターにてBx17°まで減圧濃縮し、濃縮液4.05Kgを得た。濃縮液を20℃に冷却後、遠心分離(800×g、6分)により不溶解物を除去し、上清液3.96Kg(Bx17.0°)を得た。上清液にイオン交換水を加え、Bxを15°に調整した後、90℃、1分間加熱殺菌した後、30℃に冷却し無菌的に密閉容器に充填し、本発明品11(4.42Kg、Bx15.0°、pH5.0)を得た。
【0066】
比較例4(酵素を使用しない例)
実施例11において、スミチームMP20gおよびコンチザイム1gを使用しない以外は実施例11と同様に処理して、比較品4(3.40Kg、Bx15.0°、pH6.1)を得た。
【0067】
実施例12(官能評価)
緑茶ポリフェノール1.0重量%、果糖ブドウ糖液糖2.5重量%、クエン酸0.05重量%、クエン酸三ナトリウム0.03重量%および水(残部)からなる機能性飲料に、本発明品9〜11および比較品4の麦芽エキスを0.2%添加し、無添加品を基準としてそれぞれの飲料を、10名の良く訓練されたパネラーにより官能評価し評点をつけた。評価項目は、雑味、エグ味、渋味、旨味、甘味について評価し、それぞれ−5:非常に悪い、−2:やや悪い、0:変化無し、+2:良い、+5:非常に良いとして採点した。その平均点および平均的な官能評価結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
表2に示したように、プロテアーゼと糖質関連酵素を使用した本発明品9〜11の麦芽エキスを配合することにより、緑茶ポリフェノール由来の雑味、エグ味、渋味が抑制され、旨味、甘味も付与されて飲みやすくなっていた。
【0070】
実施例13(低カロリー飲料)
クエン酸0.15g、クエン酸三ナトリウム0.02g、ステビア甘味料(α−グルコシルレバウディオサイドAを85%含有)0.04g、レモンフレーバー(長谷川香料社製)0.1gを混合した後、水を加えて全量を100mLとした。これに実施例9で得られた本発明品9の麦芽エキスを0.2%添加したところ、無添加品に比べ、高甘味度甘味料に起因する苦味を伴った甘味がマイルドな甘味に改善されていた。
【0071】
実施例14(コラーゲン溶液)
脱臭コラーゲン(長谷川香料社製、商品名:コラーゲンTH40−P 40重量%含有)3重量%、スリーシュガーHF55(群栄化学工業社製、商品名)10重量%、軟水86.78重量%からなるコラーゲン溶液に対して実施例11で得られた麦芽エキスを0.3重量%添加して、よく訓練されたパネラー5名によりコラーゲン溶液の呈味の官能評価を行ったところ、パネラー全員が、麦芽エキスの無添加品に比べ本発明品11の麦芽エキスを添加したものは、コラーゲンの雑味、エグ味、苦味が抑えられ、旨味、さわやかな甘味が付与されていると評価した。
【0072】
実施例15(生薬配合組成物)
センブリ末を水に溶解し0.03%溶液とし、それに実施例10で得られた本発明品10の麦芽エキスを0.2%添加し、パネラー5名に口に含んでもらい、雑味、エグ味、苦味などの不快な呈味について評価した。その結果、パネラー全員が本発明品10の麦芽エキスを添加したものは無添加品に比べ、雑味、エグ味、苦味が抑えられていると評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麦芽の加熱処理物をプロテアーゼおよび糖質関連酵素で処理して得られる麦芽酵素処理物を有効成分とする飲食品の呈味改善剤。
【請求項2】
糖質関連酵素がα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、グルカナーゼ、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼおよびトランスグルコシダーゼから選択される少なくとも1種以上である請求項1に記載の呈味改善剤。
【請求項3】
糖質関連酵素がプルラナーゼ、グルカナーゼおよびサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼから選択される少なくとも1種以上である請求項1に記載の呈味改善剤。