説明

養魚活性器

【課題】
養魚水から養魚に有害な物質を除去したり、殺菌したりする方法は提案されているが、電解水が養魚の健康、成長及び寿命に有益である事を積極的に利用する技術は提案されていない。
【解決手段】
本発明は、電解水を生成する手段と魚が充電部である電解極などに近づく事を防ぐ防御手段を濾過機能と併せて一体構造としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電解水が魚の寿命を延ばしサイズを大きくし、さらに養魚が金魚の場合には発色が良くなるという発見に基き、養魚に使用される養魚水を電気分解し、提供する手段を一体構造にした、養魚水の水質を向上させる事に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,図2に示すような濾過器(以下,従来装置と記する。)が知られている(特許文献1)。鑑賞魚飼育用水槽5にイオン交換処理部10と流動電解処理部12とを飼育水流通路6で直列閉回路状に連結し、当該水槽5を基準にイオン交換処理部10を流通電解処理部12の流通上手側に配置し、イオン交換処理部10には多孔状無機鉱物を母体にした多孔状イオン交換体14を収容し、流動電解処理部12には誘電率の異なる複数の粒状無機物17の混合体を摩擦・衝突可能に収容する。これにより、有機老廃物などをイオン交換処理部10で予め除去して、流動電解部の失活を防止し、イオン交換体14により水域に緩衝作用を持たせたものである。
【0003】
あるいは図3(特許文献2)にあるように例えば水族館の淡水魚類等飼育システムに適用した魚類等飼育水における殺菌システムが知られている。
【0004】
図3中、符号5は、例えば水族館における淡水魚類等飼育システムの中心部を構成する淡水魚類等の飼育水槽であり、該飼育水槽5内には例えば複数種の淡水魚が飼育されている。そして、この飼育水槽5の上方には第1,第2の淡水貯留タンク7,8が設けられている。該第1,第2の淡水貯留タンク7,8には、後述するように飼育水槽5中で殺菌その他の処理が行われ、かつ濾過装置9で排泄物中のアンモニア等が浄化された一定量の新しい淡水が貯留されるようになっている。そして、一定量を超えた新しい淡水は、オーバーフロー配管15,16を介して飼育水槽5に供給される。一方、それらの内の第2の淡水貯留タンク8内の淡水の一部は、さらに流出配管13を介して一旦電解槽11に供給された後、さらに上記飼育水槽5内に供給され、常時オーバフロー状態で流出するようになっている。
【0005】
上記電解槽11内には、上記第2の淡水貯留タンク8から流入した新しい淡水中の微量塩分(Cl)を電気分解して次亜塩素酸(ClO)を析出させるための電極1が設けられており、該電極1は電源ケーブル1aにより印加電流調整手段18を介して直流電源19に接続されている。直流電源19は、具体的にはAC電源を整流した整流電源により構成される。
【0006】
【特許文献1】特開平5−115870
【特許文献2】特開2001−178307
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来装置においては,完全な濾過をしたり、あるいは殺菌機能を向上させる事により養魚の効率を上げようというものであった。しかし、魚がさらに健康に、寿命を長くするという事に関しては、水の不純物を除去し、養魚水を殺菌するだけでは不十分である。本発明は電解水が魚の寿命を延ばし健康にする事を発見した事を基礎としたシステムを提供するものである。
【0008】
発見に至った実験は次のごとくである。20リットルの2つの水槽を用意し、両方とも活性炭素の濾過器で循環濾過し、それぞれ8尾の金魚を入れた。片方の水槽には電極を沈め、200mAの電流を電極間に流し、ほぼ1年間成長を比較検討した。電極が沈められている水槽の電気分解による水槽中の溶存水素は0.05ppm、溶存酸素は9.5ppmであった。酸素還元電位(ORP)は150mVであった。これは1リットル当たり10mAの電流を投入した事になる。またこれにより1時間あたり約0.4mgの水素ガスと3mgの酸素ガスを生成する。当初8尾であった電極を入れない水槽2では、91日後に全て死滅したので、電極が入っている水槽1から3尾を水槽1に140日後に移して、育成を続けた。350日後にはサイズに明確な差が現れ、発色にも差異が表れた。結果を以下に示す。
【表1】

【課題を解決するための手段】
【0009】
水中に設置された一つの構造体の中に、電解手段を収めて、電解水が、養魚水槽の中に拡散させるための強制的な手段をとらず、気泡が自然循環するに任せ、養魚が電極などの充電部に近づかないように防護手段を設け、または当該防護手段に濾過手段を兼ねさせた養魚活性器。または
【0010】
電解水が魚の成育する水槽に循環して流込むシステムにおいて、ごみが流路に入り込む事を防止し、さらに、魚が電流に近づかないようにするために、水槽から水を取り入れる流路の入り口に活性炭フィルターなどの濾過手段を設け、魚、又はごみがポンプに吸込まれる事を防止し、流路の途中にポンプを付けて流れを確保し、さらに流路のポンプの上流又は下流又はポンプ内に水を電気分解する電極を付け、流路の出口が水中に没している場合には、流路の出口にも魚の侵入を禁止し、または電極で気泡の状態の水素又は酸素の泡を水とよく混ぜ、溶存させるためのフィルター例えば活性炭で出来ている第2の濾過手段を着脱可能にした養魚活性器。
【0011】
電解水生成時に水中に電流が流れるが、その電流に適当な磁界をかける事により水流を起こさせる事が出来る。この力をポンプの代わりに利用した養魚活性器。
【0012】
電極にはミネラルが蓄積するのを防止するために一定時間で電極の正負が反転するような電源を設置してもよい。
【発明の効果】
【0013】
電解水の効果により、養殖されている魚が、体重を増して健康になり、金魚の場合は発色が鮮やかになる。管理が簡単なシステムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
電解水を容易に水槽に導くための一体型の養魚活性器を提供する。活性器は養魚を電気分解の電極などの充電部から守る防護手段あるいはその防護手段が濾過手段もかねる部分と、電解水生成部からなり、濾過部は着脱可能とするとよい。濾過機能が低下したとき容易に交換できる(図5)。さらに電極の正負を一定期間の間に交代させる事により電極へのミネラルの蓄積を防止する事により全体として本活性器の維持管理が容易とすることもできる。水流を確保するポンプを電磁ポンプにすることで電解水生成とポンプの2つの機能を持たせ、回転部分がない。
充電部が魚からなるべく遠くに配置するために流路を水槽から外に導いても良い。電解水を生成した後水槽に戻す。また電解水の生成と同時に発生する水中の微弱電流により、適宜磁界をかけると、水流が発生し(電磁ポンプ)、電解水生成と水の循環が同時にできる。
【実施例1】
【0015】
水の流れを制御し、魚などが侵入できない素材例えばアクリルを素材にして断面が略正方形のチューブを作り、チューブの略真中の相対する一組の内壁に正極と負極の金属電極を貼付け、電極からはそれぞれ当該チューブの壁を防水貫通して電線を引き出し、一定の直流電流が流れるように制御する(図6)。電流が流れると電極で水の電気分解が起こり電解水が生成される。
【0016】
電極表面には電気分解により正極には酸素ガスの気泡が生成され、負極には水素ガスの気泡が生成される。また、気泡以外にも水の中に水素ガスと酸素ガスが少量溶存すると考えられる。本実施例では水素ガスと酸素ガスの拡散は自然拡散でおこなわれる。チューブの素材は魚が入り込まない程度に孔が開いており、上記ガスの自然拡散の妨げにはならないが魚は充電部である電極には近づけないようになっている。ガスの気泡は水の表面に上がっていき大気に放出される。
【実施例2】
【0017】
魚などが侵入できない素材でしかもごみなどは通過できる孔が多く開いている箱の中に電極を置き(図7)、電気分解により微小の泡をつくりそれが水中を浮力により上昇していく間に、水中のごみが微小の泡に吸着され、泡とともに水中を上昇する。その泡を濾過手段で補足し、ごみを除去する。濾過材は前記箱に着脱可能に取り付けられており、濾過機能が低下したときに容易に交換出来るようにする。
【実施例3】
【0018】
実施例1においても同じであるが、電気分解により
陽極:
【化1】

陰極:
【化2】

これにより、陽極で発生した水素のプラスイオンはクーロン力により陰極に引かれて移動し、陰極で発生した水酸基イオンは同じくクーロン力により陽極に引かれて移動しこれらのイオンの移動により電流が発生する。
ここでクーロン力は良く知られているように
【数1】

である。ここでqはイオンの電荷でありEは電極間の電界である。
イオンの移動によりおきる電流密度は
【数2】

である。ここでρは電荷密度であり、プラスイオンとマイナスイオンでは符号が反対となる。vはイオン電荷の移動速度であるがプラスイオンのHは陽極から陰極に流れ、反対にOHは陰極から陽極に流れる。
全体としては正極から負極に電流が流れる。
【0019】
電気分解により、水中に電流が発生すると、そこに磁界がある場合にはロレンツ力

【数3】

の力が発生する。ここでiは電流密度、Bは磁束密度である。そこでもし磁界をイオンの流れによる電流が発生している所に発生させると、この力により水流が発生し、いわゆるポンプと同じ機能をもつ(電磁ポンプ)。そこで水路の電流と直行する方向に磁界が発生するように永久磁石を接着剤で貼り付ける(図5)。
【0020】
水槽から水を取り入れる水路の入り口にはごみを濾過し、あるいは魚が電気分解している充電部分に近づかないようにフィルターを設ける。
【0021】
目詰まりなどの理由で濾過器能が低下した場合は簡便に取り替えられる着脱可能なフィルターとする。
【0022】
電極で発生した水素ガスの気泡と酸素ガスの気泡を水に溶存させるために、又は、水路の出口が水槽の水に没した際に魚が電解水発生手段に近づくのを防ぐためのフィルターを水路の出口に必要に応じて着脱可能に設置する。
【実施例4】
【0023】
電解水生成部を、水槽の外に設けてもよい(図4)。この場合も取り入れ口には魚やゴミが入り込まないような濾過部を着脱可能に設置し、濾過機能が低下した場合には交換可能とするとよい。電解水を水槽に放出する場合、放出口が水面下の場合にも、魚が侵入しないような防護のための侵入防止手段を設けてもよい。電極で発生した気泡をさらに水に溶存させるための濾過膜と前記侵入防止手段を兼備えた濾過手段とするとなおよい。
【実施例5】
【0024】
電磁ポンプだけでは濾過手段を通して水槽の外に水を汲み上げる力が無い場合は通常のポンプで水を電解水生成手段に汲み上げてもよい。(図1)
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る実施例1の濾過装置の構成を示す図である。
【図2】従来の養魚用濾過器の構成を示す図である。
【図3】従来の養魚用濾過器の構成を示す図である。
【図4】電解水生成機能とくみ上げ機能を電磁ポンプに行わせた場合の構成図。
【図5】電解水生成手段兼電磁ポンプが水槽中にある場合。
【図6】自然対流で電解水の拡散をする場合。
【図7】電極に発生する微小な気泡にゴミを吸着させ、濾過材で捕捉する場合。
【符号の説明】
【0026】
1 電極
2 濾過手段
3 ポンプ
4 水
5 水槽
6 飼育水流通路
7 貯留タンク
8 貯留タンク
9 濾過装置
10 イオン交換処理部
11 電解槽
12 流動電解処理部
13 流出配管
14 多孔状イオン交換体
15 オーバーフロー配管
16 オーバーフロー配管
17 粒状無機物
18 印加電流調整手段
19 直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽で魚を飼育するシステムにおいて、魚が充電部に近づくのを防ぐ防御手段、前記防御手段を通過した水を電気分解し電解水を作る手段、以上2つの手段を流路上に一体的に構成され、さらに前記電解水生成手段に前記電流を供給する手段からなる養魚活性器。
【請求項2】
水槽で魚を飼育するシステムに用いられる請求項1の養魚活性器において、水槽から取水する手段、魚が充電部に近づくのを防ぐ手段が濾過手段を兼ねており流路上の電解水生成手段の取水口、又は流路上の排水口にあって着脱可能に取り付けられ、目詰まり等により濾過手段の濾過機能が減じたときに交換可能となっている事を特長とする養魚活性器。
【請求項3】
水槽から水を取り入れる機能と電解水生成機能の2つの機能が電磁ポンプにて同時に実現される請求項2の養魚活性器。
【請求項4】
電解水を生成する電極で発生する気泡が水中のゴミを吸着し、浮力により移動する途中で捕捉する手段が着脱可能に一体的に設けられている請求項1の養魚活性器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−182908(P2008−182908A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17240(P2007−17240)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【出願人】(000108580)タカオカ化成工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】