説明

首部関節機構及びそれを具備するロボット

【課題】ロボットの首部関節機構において、ピッチ方向の回転自由度を大きくすることができ、且つ、掛かるコストを抑制することのできる首部関節機構及びそれを具備するロボットを提供する。
【解決手段】首部ベース部材3と、前記首部ベース部材3の前端側に設けられピッチ方向に回転可能な第一の回転軸4と、前記第一の回転軸4に接続され該第一の回転軸4の回転によりピッチ方向に回動する第一の連結部材5と、前記第一の連結部材5の先端側に設けられた第二の回転軸S2と、前記第二の回転軸S2に後端側が回動自在に接続され上方にロボット頭部11が設けられる第二の連結部材6と、前記第二の連結部材6の前端側と前記首部ベース部材3の後端側の夫々に回動自在に接続された第三の連結部材9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの首部関節機構及びそれを具備するロボットに関し、特に、少なくともピッチ方向に頭部を回動することが可能な首部関節機構及びそれを具備するロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、産業用ロボットに限らず、民生用として様々な役目を担うロボットの研究開発が盛んに行われている。そのようなロボットの中でも、直立歩行が可能な人間型(ヒューマノイド)ロボットは、人間の代替行動をできるものとして期待されている。かかる人間型ロボットは、脚部、腕部、首部等に複数のリンク機構(関節)を有し、人間に近い動作を可能にしている。
【0003】
ところで、この人間型ロボットは、移動の際に障害物を回避するため足元の状況を見て認識する必要がある。また、作業を行う際には、胴体直近(胸元)が見えないと、充分な作業範囲を確保することができない。しかしながら、従来の人間型ロボットの首関節は、3つのモータを3軸(ロール、ピッチ、ヨー)の各軸に対応させて頭部を上下左右に動かす単純な構成であり、頭部前方に取り付けられたカメラ(目)で自身の足元、胸元を見ることが困難であった。
【0004】
このような問題を解決するため、特許文献1には、図7に示すように、ロボット200の首部のピッチ軸を2つの関節構造とし、夫々の関節にモータを夫々設けるという構成が開示されている。即ち、2つのモータを用いて、首部の回動軸201、202を夫々回転駆動することにより、単に頷く動作だけでなく頭部を前方により突き出して、下方をある程度覗き込む動作も可能としている。
【特許文献1】特開2003−200366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるような構成では、首部だけでも2つのモータを使用するため、製造コストを要し、また、消費電力が大きくなるという課題があった。
また、足元や胴体直近の状況を認識するために、特許文献1に開示される構成の他、専用のカメラを設ける方法も考えられるが、その場合もカメラ設置のコストが余分に掛かるという課題があった。
【0006】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、ロボットの首部関節機構において、ピッチ方向の回転自由度を大きくすることができ、且つ、掛かるコストを抑制することのできる首部関節機構及びそれを具備するロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するために、本発明に係る首部関節機構は、胴体に対し頭部を少なくともピッチ方向に回動可能なロボットの首部関節機構であって、前記胴体上部に設けられた首部ベース部材と、前記首部ベース部材の前端側に設けられピッチ方向に回転可能な第一の回転軸と、前記第一の回転軸に接続され該第一の回転軸の回転によりピッチ方向に回動する第一の連結部材と、前記第一の連結部材の先端側に設けられた第二の回転軸と、前記第二の回転軸に後端側が回動自在に接続され上方にロボット頭部が設けられる第二の連結部材と、前記第二の連結部材の前端側と前記首部ベース部材の後端側の夫々に回動自在に接続された第三の連結部材とを備え、前記第一の回転軸の回転によって前記第一の連結部材が回動することにより、前記第二の連結部材は、前記第一の回転軸周りに回動すると共に前記第二の回転軸周りに回動することに特徴を有する。
また、動力発生源となるモータを備え、前記第一の回転軸は、前記モータにより回転駆動されることが望ましい。
また、前記した課題を解決するために係るロボットは、前記首部関節機構を具備することを特徴とする。
【0008】
このように構成することにより、第一の回転軸の回転駆動のみでピッチ方向のダブルリンク機構が実現でき、第一の回転軸の回転角度が小さくても、ロボット頭部を大きく回動させることができる。また、下方を覗き込む動作が可能となり、従来のロボットでは困難であった、自身の胸元を見る動作を容易にすることができる。また、ロボット頭部と胴体外装との干渉が少なくなり、より外装の自由度を広げることができる。さらに、ピッチ方向の回動に関し、1つのモータで前記した動作が実現可能であるため、従来のように複数のモータや専用カメラを設ける必要がなく、コストを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロボットの首部関節機構において、ピッチ方向の回転自由度を大きくすることができ、且つ、掛かるコストを抑制することのできる首部関節機構及びそれを具備するロボットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は本発明に係る首部関節機構の全体を示す斜視図である。図2は、ロボット頭部が直立状態の図1の首部関節機構の正面図、図3は図2の側面図である。尚、図2、図3においては、首部関節機構1を胸部フレーム2上に取り付けた状態を示し、また、ロボット頭部の輪郭線の一例も合わせて示している。
【0011】
図1に示すように、首部関節機構1は、胸部フレーム2(図2、図3参照)に固定されるためのアダプタ2aを有し、このアダプタ2aが胸部フレーム2に対しボルト固定される。アダプタ2aの上部には首部ベース部材3が設けられ、アダプタ2aの下部には動力発生源となるモータ(図示せず)の駆動によりヨー方向に回転可能なヨー駆動軸8が設けられている。そして、首部ベース部材3はヨー駆動軸8にアダプタ2aを介し接続され、ヨー駆動軸8が回転駆動することによって、首部ベース部材3はアダプタ2aに対しヨー方向に回動するようになされている。
【0012】
また、首部ベース部材3内の前端側には、動力発生源となるモータ(図示せず)の駆動によりピッチ(前後)方向に回転可能なピッチ駆動軸(第一の回転軸)4が設けられている。図示するように前記ピッチ駆動軸4(の両端)には連結部材5(第一の連結部材)の後端側(下端)が接続され、ピッチ駆動軸4が回転すると同時に、連結部材5がピッチ方向に回動するようになされている。また、この連結部材5の先端側(上端)には、矩形の筒形状をなすロール軸保持部材6(第二の連結部材)の後端側が回動自在に接続されている。
【0013】
また、前記ロール軸保持部材6の内部には、動力発生源となるモータ(図示せず)の駆動によりロール(左右)方向に回転可能になされたロール駆動軸7が設けられ、ロール軸保持部材6の上方には、ロール駆動軸7の回転によりロール方向に回動(傾動)すると共に、ロボットの視覚となるカメラ機構10が設けられている。
また、前記首部ベース部材3とロール軸保持部材6とを連結する連結部材9(第三の連結部材)が設けられ、この連結部材9の両端は、首部ベース部材3の後端側とロール軸保持部材6の前端側に夫々回動自在に接続されている。
【0014】
尚、図2、図3に示すように、ロボット頭部11がカメラ機構10を内設するよう設けられ、このロボット頭部11(カメラ機構10)は、ピッチ駆動軸4の回転駆動によりピッチ方向に傾動し、ロール駆動軸7の回転駆動によりロール方向に傾動し、ヨー駆動軸8の回転駆動によりヨー方向に回転するように構成されている。
【0015】
続いて、このように構成された首部関節機構1のピッチ方向の回動機構についてさらに説明する。図4は、首部関節機構1のピッチ方向回動動作を説明するため、そのリンク機構を模式的に示した側面図であり、状態Aが直立状態、二点鎖線で示す状態Bが最大傾斜状態である。また、図5に、ロボット頭部が最大傾斜状態の首部関節機構の正面図、図6に図5の側面図を示す。尚、図5、図6においては、ロボット頭部の輪郭線の一例も合わせて示している。
【0016】
図4において、ピッチ駆動軸4が状態Aから状態Bの方向に回転駆動すると、軸S1(第一の回転軸)周りに連結部材5が回動する。連結部材5が回動すると、その前端側に軸S2(第二の回転軸)を介して連結されたロール軸保持部材6も軸S1周りに回動する。
ロール軸保持部材6が回転移動すると、その先端側に形成された軸S3も軸S1周りに回転移動する。ここで、連結部材9により軸S3と連結された首部ベース部材3の軸S4が固定されているため、軸S3は同時に軸S2周りにも回転する。
即ち、ピッチ方向に関しては、ピッチ駆動軸4の回転駆動のみで、ロール軸保持部材6を軸S1周りに回動させると共に軸S2周りに回動させることができるダブルリンク機構となされている。
【0017】
このダブルリンク機構により状態Aから状態B(図5、図6の状態)となるまで首部が回動する場合、カメラ機構10の回転角は角度D1となるが、実際にピッチ駆動軸4が回転する角度は、より小さな角度D2でよい。したがって、ロボット頭部11を傾斜させて、カメラ機構10により下方や胸元を見る場合、ピッチ駆動軸4による少しの回転駆動で実現することができる。
【0018】
以上のように本発明の実施の形態によれば、ロボット頭部をピッチ方向に傾斜させる場合、ピッチ駆動軸4の回転角度が小さくても、ロボット頭部を大きく回動させることができる。即ち、従来の1つのモータによる回転よりもロボット頭部の回転自由度を大きくすることができる。また、ダブルリンク機構により、下方を覗き込む動作が可能となり、従来のロボットでは困難であった、自身の胸元を見る動作を容易にすることができる。また、ロボット頭部と胴体外装との干渉が少なくなり、より外装の自由度を広げることができる。さらに、ピッチ方向の回動に関し、1つのモータで前記した動作が実現可能であるため、従来のように複数のモータや専用カメラを設ける必要がなく、掛かるコストを抑制することができる。
【0019】
尚、前記実施の形態においては、ピッチ駆動軸4等の駆動軸が、動力発生源となるモータの駆動により回転する構成を示したが、本発明に係る首部関節機構では、それら駆動軸の回転にモータを用いない(即ち、操作者の手動による軸回転等の)構成にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、例えば人間型ロボットのように頭部を胴部に対して回動可能とする首部関節機構及びそれを具備するロボットに関し、そのようなロボットの製造業界において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明に係る首部関節機構の全体を示す斜視図である。
【図2】図2は、ロボット頭部が直立状態の図1の首部関節機構の正面図である。
【図3】図3は、図2の側面図である。
【図4】図4は、首部関節機構のピッチ方向回動動作を説明するため、そのリンク機構を模式的に示した側面図である。
【図5】図5は、ロボット頭部が最大傾斜状態の首部関節機構の正面図である。
【図6】図6は、図5の側面図である。
【図7】図7は、首部に2つのピッチ軸を有する従来のロボットを示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 首部関節機構
2 胸部フレーム(胴体)
3 首部ベース部材
4 ピッチ駆動軸(第一の回転軸)
5 連結部材(第一の連結部材)
6 ロール軸保持部材(第二の連結部材)
7 ロール駆動軸
8 ヨー駆動軸
9 連結部材(第三の連結部材)
10 カメラ機構
11 ロボット頭部
S1 軸(第一の回転軸)
S2 軸(第二の回転軸)
S3 軸
S4 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体に対し頭部を少なくともピッチ方向に回動可能なロボットの首部関節機構であって、
前記胴体上部に設けられた首部ベース部材と、前記首部ベース部材の前端側に設けられピッチ方向に回転可能な第一の回転軸と、前記第一の回転軸に接続され該第一の回転軸の回転によりピッチ方向に回動する第一の連結部材と、前記第一の連結部材の先端側に設けられた第二の回転軸と、前記第二の回転軸に後端側が回動自在に接続され上方にロボット頭部が設けられる第二の連結部材と、前記第二の連結部材の前端側と前記首部ベース部材の後端側の夫々に回動自在に接続された第三の連結部材とを備え、
前記第一の回転軸の回転によって前記第一の連結部材が回動することにより、前記第二の連結部材は、前記第一の回転軸周りに回動すると共に前記第二の回転軸周りに回動することを特徴とする首部関節機構。
【請求項2】
動力発生源となるモータを備え、前記第一の回転軸は、前記モータにより回転駆動されることを特徴とする請求項1に記載された首部関節機構。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載された首部関節機構を具備することを特徴とするロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−160482(P2007−160482A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362926(P2005−362926)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(505466295)株式会社イクシスリサーチ (5)
【Fターム(参考)】