説明

香粧品用香料組成物

【課題】天然のオリーブの花の香気に近い、瑞々しさと芳醇な香りを兼ね備えたオリーブの花様香料組成物を提供する。
【解決手段】ジャスモン酸メチル、シスジャスモンを含有する香料組成物にジャスモン酸エチルを組成物中0.01〜10質量%添加したことを特徴とするオリーブの花様香気を有する香粧品用香料組成物。より好ましくは、ジャスモン酸エチル/(ジャスモン酸メチルとシスジャスモンの合計量)は質量比で1/0.1〜10で、ジャスモン酸エチル、ジャスモン酸メチルおよびシスジャスモン合計の含有量が1〜12質量%であることを特徴とするオリーブの花様香気を有する香粧品用香料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香粧品用の香料組成物、特にオリーブの花様の優れた香りを有する香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オリーブは地中海沿岸をはじめ世界各国で栽培され、実は塩漬けし、熟した実からは上質の油、葉はオリーブ茶として、世界で広く食されている。中でも、オリーブオイルは保湿効果に優れ、化粧品用オイルとして広く用いられている。しかしながら、オリーブの花の香調を有する香料はこれまでになかった。
【0003】
なお、ジャスモン酸エチルは、モクセイ科ソケイ属のジャスミン(Jasminum officinale)の花の溶剤抽出物、コンクリート、アブソリュートの香気成分として知られている(非特許文献1)。ジャスモン酸エチルの同族体であるジャスモン酸メチル、およびシスジャスモンは、ジャスミンの特徴香気成分として、強いジャスミン様香気を有する香料組成物として、香水、化粧品、食品調合香料として利用されている(非特許文献2)。しかし、ジャスモン酸エチルは、ジャスミン様の香気を有する化合物であるが、それ自体の香気が弱いため、香料組成物としての利用は少なく、香粧品用の香料としての有用性は知られていなかった。
【非特許文献1】「テトラヘドロン レターズ」第38号、1974年、P3413(Tetrahedron Letters 38(1974)3413,Kaiser, Roman et al.)
【非特許文献2】「合成香料―化学と商品知識」、印藤元一 著、843ページ、化学工業日報社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オリーブに関しては、オリーブオイル、果実水の産業上の利用は多いが、その付与香気にオリーブの花の香調はこれまでない。これに対して、最近の天然嗜好から、オリーブ植物自体の香気を付与した製品の開発が望まれていた。オリーブの花香は、ジャスミンの花香に似ているものの、ほのかに甘い、淡い青さを有し、明らかにジャスミンとは区別できるものであり、その香気再現を実現する方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記従来技術の課題を鑑みなされたものであり、オリーブの花の香気成分として未同定で解明されていなかった成分を添加することを特徴とする、香粧品用の香料組成物、特にオリーブの花の香気を有する香料組成物を提供することにある。
【0006】
前記目的を達成するために本発明者らは、オリーブの花の香気成分を溶剤抽出、蒸留、化学分画処理を駆使し、官能評価を繰り返すことにより鋭意検討した結果、ジャスモン酸エチルがオリーブの花の香りの重要香気成分であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の香粧品用香料組成物は、ジャスモン酸エチルをジャスモン酸メチル、シスジャスモンを含有する香料組成物に0.01〜10質量%添加することを特徴とする。
【0008】
さらに本発明の好ましい態様としては、前記の香粧品用香料組成物において、ジャスモン酸エチル/(ジャスモン酸メチル+シスジャスモン)が質量比で1/0.1〜10で、かつ、ジャスモン酸エチル、ジャスモン酸メチルおよびシスジャスモンの含有量合計が1〜12質量%である香粧品香料組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の香料組成物は、ジャスミン様香気を有する調合香料にジャスモン酸エチルを配合することにより、オリーブの花香を再現した香調に整え、脂くささを抑え、瑞々しさと芳醇な香りをひき出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の香料組成物は、ジャスモン酸エチルを含有することで、優れたオリーブの花様の香りを醸し出すことができる。
【0011】
ジャスモン酸エチルは淡いジャスミン様香気である。一方、ジャスモン酸メチル、シスジャスモンは、低濃度でジャスミン調の優雅な花香を有する。ジャスモン酸メチル、シスジャスモンを含有する天然精油あるいは調合香料を配合してなるジャスミン様調合香料に、ジャスモン酸エチルを添加することで、ほのかに甘い、淡い青さを有する天然のオリーブの花様の香りを再現することができる。すなわち、添加前では、油臭く、重いジャスミン様の香気が、ジャスモン酸エチルを添加することで香気が軽く、華やかなオリーブの花を想起する香調に変化する。
【0012】
本発明のジャスモン酸エチルは、公知の化合物であり、公知の方法で製造することができる。また市販化合物のジャスモン酸メチルを通常のエステル交換反応で容易に入手することができる。
【0013】
本発明におけるジャスモン酸エチルの配合量は、香料組成物中の含有量が0.01〜10質量%である。ジャスモン酸エチルの含有量が0.01質量%未満だと、オリーブの花香を想起させる軽さや透明感が不足しジャスミンとの区別がつき難い香気となるため好ましくない。また、10質量%を越えると、充分な香気強度が得られず、淡くぼやけた香調となるため好ましくない。
【0014】
本発明の香料組成物は、ジャスモン酸メチル、シスジャスモンとジャスモン酸エチルを組み合わせることが特徴となる物であるが、好ましくはジャスモン酸エチルとジャスモン酸メチルおよびシスジャスモンの合計量との比率が、質量比で1/0.1から1/10となることが、ジャスミンの花香とより明確に区別が可能なオリーブの花様の香調となるためより好ましい。
【0015】
本発明の香粧品用香料組成物は、ジャスモン酸エチルを通常の香料処方中に加えて香気を調整するだけでよく、特に通常の香料調合工程と異なる操作を必要としない。
【0016】
なお、本発明にかかる香料組成物には香りを損なわない程度に、ジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、プロピレングリコール、トリエチルシトレート、ベンジールベンゾエート、トリアセチンなどの溶剤、また必要に応じ可溶化剤、安定化剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、着色剤など、公知の香料調整物をさらに配合することが可能である。
【0017】
また、本発明にかかる香料組成物は、香水、オーデコロン、ローション、ミルク、クリーム、ファンデーションなどの化粧品、石鹸、ボディーソープなどの身体洗浄剤、シャンプー、リンス、トリートメント、整髪料などの毛髪用化粧品、衣類用洗剤、柔軟剤、食器用洗剤などのハウスホールド製品、エアゾール、スプレー、ゲル、液体または固体に含浸させた消臭芳香剤、香水香、アロマキャンドル、紙製品、繊維製品などの雑貨類や衣類などの香粧品に応用可能である。
【0018】
前記香粧品に対する本発明の添加量は、特に限定されないが、各香粧品類の通常の香料添加量と同等でよい。
【0019】
本発明の香料組成物は、通常液体状態で提供されるが、たとえば紙製品や繊維製品に適用する場合にマイクロカプセル化するなど、目的、用途に応じて公知の方法で形態を選択することができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の好適な実施例を説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0021】
(官能試験)
表1に示す処方に従い香料組成物を調製し、専門パネル員10名による官能評価を実施した。尚、表中の数字は処方中の質量比を示す。
【0022】
【表1】

【0023】
実施例1〜実施例3の処方は、処方中にジャスモン酸エチルを0.01〜10質量%の範囲で含有するものであり、実施例2はさらにジャスモン酸エチルと、シスジャスモンおよびジャスモン酸メチルの合計量の質量比が1/0.1〜1/10の範囲内にあり、かつジャスモン酸エチルと、シスジャスモンおよびジャスモン酸メチルの組成物中の総和が香料組成物全体の1〜12質量%の範囲内になるものである。
【0024】
官能評価の結果、実施例1および実施例3は、天然オリーブの花香を再現したものとされ、実施例2はパネラー全員が特に優れたオリーブの花様香気であると評価した。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の香粧品用香料組成物は、香水、化粧品、身体洗浄剤、毛髪用化粧料、口腔用組成物、室内芳香剤などの香粧品全般に使用することができ、嗜好性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャスモン酸メチル、シスジャスモンを含有する香料組成物にジャスモン酸エチルを組成物中0.01〜10質量%添加したことを特徴とするオリーブの花様香気を有する香粧品用香料組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の香料組成物において、ジャスモン酸エチル/(ジャスモン酸メチルとシスジャスモンの合計量)は質量比で1/0.1〜10であり、ジャスモン酸エチルジャスモン酸メチルおよびシスジャスモンの含有量合計が1〜12質量%であることを特徴とするオリーブの花様香気を有する香粧品用香料組成物。

【公開番号】特開2007−70425(P2007−70425A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257287(P2005−257287)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000201733)曽田香料株式会社 (56)
【出願人】(504180206)株式会社カネボウ化粧品 (125)
【Fターム(参考)】