説明

駆動ステージ、レーザ加工装置および薄膜太陽電池加工装置

【課題】駆動系の負荷を増大させずに、被処理基板を静止系に対して加速または減速させる時間を短縮し、被処理基板を等速で移動させる時間を長くすることで、加工効率を向上させること。
【解決手段】駆動ステージ5は加工される被処理基板Sを保持する保持部30と、保持部30が載置されて保持部30を第一上方軸16に沿って移動させる第一上方ステージ10と、第一上方ステージ10が載置されて第一上方ステージ10を第一下方軸26に沿って移動させる第一下方ステージ20と、第一上方ステージ10および第一下方ステージ20の駆動を制御する制御部50と、を備えている。第一上方軸16が延在する直線と第一下方軸26が延在する直線は、同じ所定の一方向の成分を含んでいる。制御部50は、保持部30を所定の一方向で加速または減速させるときに、第一上方ステージ10および第一下方ステージ20によって保持部30を所定の一方向で加速または減速させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工される被処理基板が載置される駆動ステージ、レーザ光で被処理基板を加工するレーザ加工装置、および、レーザ光で薄膜太陽電池を加工する薄膜太陽電池加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被処理基板を保持した保持部をX方向に移動させるX方向ステージと、X方向に直交する方向であるY方向に移動させるY方向ステージとを有する駆動ステージが知られている(特許文献1参照)。そして、このような駆動ステージを用いることで、加工光学系により集光されるレーザ光の集光位置を、駆動ステージ上の保持部で保持された被処理基板の表面上の任意の位置にくるように制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−344921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この点、質量が0ではない物体が動くときに働く惰性(イナーシャ)の影響から、被処理基板が動き始めて所定の速度に達するまでには時間がかかり、他方、被処理基板が停止する際にも完全に停止されるまでには時間がかかる。このため、従来の駆動ステージでは、被処理基板を等速で移動させる時間が限られてしまっている。
【0005】
一般に、レーザ光、放電、火力などによるエネルギーを被処理基板に与えて被処理基板を加工する場合において、エネルギー供給手段と被処理基板の相対移動運動が一定でないと、被処理基板に供給される時間当たりのエネルギー値が変動してしまい、加工状態にばらつきが生じてしまう。このため、被処理基板に対しての相対移動速度が一定となっている時間だけエネルギーを供給して、被処理基板を加工することができる。この点、従来のように被処理基板を等速で移動させる時間が限られてしまっているものでは、被処理基板を加工することができる時間が短くなってしまい、加工効率が低くなってしまう。
【0006】
ところで、被処理基板を加工することができる時間を長くするために、被処理基板の加減速度を大きくすることも考えられる。しかしながら、このように被処理基板の加減速度を大きくすると、駆動系の負荷が増大し、必要なシステムが重厚になってしまったり、高価になってしまったり、あるいはステージそのものの強度を上げる必要などが生じる。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、駆動系の負荷を増大させずに(あるいはわずかな増大で)、被処理基板を静止系に対して加速または減速させる時間を短縮し、被処理基板を等速で移動させる時間を長くすることができ、ひいては、加工効率を向上させることができる駆動ステージ、レーザ加工装置および薄膜太陽電池加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による駆動ステージは、
加工される被処理基板を保持する保持部と、
前記保持部が載置され、該保持部を第一上方軸に沿って移動させる第一上方ステージと、
前記第一上方ステージが載置され、該第一上方ステージを第一下方軸に沿って移動させる第一下方ステージと、
前記第一上方ステージおよび前記第一下方ステージの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記第一上方軸が延在する直線と前記第一下方軸が延在する直線が、同じ所定の一方向の成分を含み、
前記制御部が、前記保持部を前記所定の一方向で加速または減速させるときに、前記第一上方ステージおよび前記第一下方ステージによって前記保持部を該所定の一方向で加速または減速させる。
【0009】
本発明による駆動ステージにおいて、
前記制御部は、前記保持部を前記所定の一方向において等速度で移動させるときに、前記第一上方ステージまたは前記第一下方ステージのいずれか一方のみを移動させて他方を停止させてもよい。
【0010】
本発明による駆動ステージにおいて、
前記第一下方ステージによって前記第一上方ステージを加速する際に、該第一上方ステージによって前記保持部を減速させる第一時間があり、当該第一時間において、該第一下方ステージによって該第一上方ステージを加速する加速度の絶対値と該第一上方ステージによって該保持部を減速する減速度の絶対値とが等しくなり、静止系において該保持部が等速で移動してもよい。
【0011】
本発明による駆動ステージにおいて、
前記第一上方ステージによって前記保持部を加速する際に、前記第一下方ステージによって該第一上方ステージを減速させる第一時間があり、当該第一時間において、該第一上方ステージによって該保持部を加速する加速度の絶対値と該第一下方ステージによって該第一上方ステージを減速する減速度の絶対値とが等しくなり、静止系において該保持部が等速で移動してもよい。
【0012】
本発明による駆動ステージにおいて、
前記第一下方ステージによって前記第一上方ステージを減速する際に、該第一上方ステージによって前記保持部を加速させる第二時間があり、当該第二時間において、該第一下方ステージによって該第一上方ステージを減速する減速度の絶対値と該第一上方ステージによって該保持部を加速する加速度の絶対値とが等しくなり、静止系において該保持部が等速で移動してもよい。
【0013】
本発明による駆動ステージにおいて、
前記第一上方ステージによって前記保持部を減速する際に、前記第一下方ステージによって該第一上方ステージを加速させる第二時間があり、当該第二時間において、該第一上方ステージによって該保持部を減速する減速度の絶対値と該第一下方ステージによって該第一上方ステージを加速する加速度の絶対値とが等しくなり、静止系において該保持部が等速で移動してもよい。
【0014】
本発明による駆動ステージにおいて、
前記第一下方軸と前記第一上方軸が平行に配置されてもよい。
【0015】
本発明による駆動ステージは、
前記第一下方ステージが載置され、該第一下方ステージを第二上方軸に沿って移動させる第二上方ステージと、
前記第二上方ステージが載置され、該第二上方ステージを第二下方軸に沿って移動させる第二下方ステージと、をさらに備え、
前記第二上方軸が延在する直線と前記第二下方軸が延在する直線が、同じ所定の別方向の成分を含み、
前記制御部が、前記保持部を前記所定の別方向で加速または減速させるときに、前記第二上方ステージおよび前記第二下方ステージによって前記保持部を該所定の別方向で加速または減速させてもよい。
【0016】
本発明による駆動ステージにおいて、
前記制御部は、前記保持部を前記所定の別方向において等速度で移動させるときに、前記第二上方ステージまたは前記第二下方ステージのいずれか一方のみを移動させて他方を停止させてもよい。
【0017】
本発明による駆動ステージにおいて、
前記第二下方軸と前記第二上方軸が平行に配置されてもよい。
【0018】
本発明によるレーザ加工装置は、
レーザ光を照射するレーザ照射部と、
前記レーザ光によって加工される被処理基板を移動させる駆動ステージと、を備え、
前記駆動ステージが、
レーザ照射部から照射されるレーザ光によって加工される被処理基板を保持する保持部と、
前記保持部が載置され、該保持部を第一上方軸に沿って移動させる第一上方ステージと、
前記第一上方ステージが載置され、該第一上方ステージを第一下方軸に沿って移動させる第一下方ステージと、
前記第一上方ステージおよび前記第一下方ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、
前記第一上方軸が延在する直線と前記第一下方軸が延在する直線が、同じ所定の一方向の成分を含み、
前記制御部が、前記保持部を前記所定の一方向で加速または減速させるときに、前記第一上方ステージおよび前記第一下方ステージによって前記保持部を該所定の一方向で加速または減速させる。
【0019】
本発明による薄膜太陽電池加工装置は、
薄膜太陽電池を加工する薄膜太陽電池加工装置であって、
レーザ光を照射するレーザ照射部と、
前記レーザ光によって加工される被処理基板を移動させる駆動ステージと、を備え、
前記駆動ステージが、
レーザ照射部から照射されるレーザ光によって加工される被処理基板を保持する保持部と、
前記保持部が載置され、該保持部を第一上方軸に沿って移動させる第一上方ステージと、
前記第一上方ステージが載置され、該第一上方ステージを第一下方軸に沿って移動させる第一下方ステージと、
前記第一上方ステージおよび前記第一下方ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、
前記第一上方軸が延在する直線と前記第一下方軸が延在する直線が、同じ所定の一方向の成分を含み、
前記制御部が、前記保持部を前記所定の一方向で加速または減速させるときに、前記第一上方ステージおよび前記第一下方ステージによって前記保持部を該所定の一方向で加速または減速させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるレーザ加工装置の構成を示す側方断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態による駆動ステージの構成を示す上方平面図と側方断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の別の態様による駆動ステージの構成を示す上方平面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態による駆動ステージの速度と位置の時間に対する変化を示したグラフ。
【図5】従来の駆動ステージの構成を示す側方断面図。
【図6】従来の駆動ステージの速度と位置の時間に対する変化を示したグラフ。
【図7】本発明の第2の実施の形態による駆動ステージの駆動態様を示した側方断面図。
【図8】本発明の第2の実施の形態による駆動ステージの速度と位置の時間に対する変化を示したグラフ。
【図9】本発明の第1の実施の形態に対応した第3の実施の形態による駆動ステージの駆動態様を示した側方断面図。
【図10】本発明の第2の実施の形態に対応した第3の実施の形態による駆動ステージの駆動態様を示した側方断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の実施の形態
以下、本発明に係る第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図4は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0022】
本実施の形態のレーザ加工装置は、図1に示すように、レーザ光Lを照射するレーザ照射部1と、レーザ光Lによって加工される被処理基板Sを移動させる駆動ステージ5と、を備えている。なお、被処理基板Sの加工方法としては、被処理基板Sのパターニングやトリミングなどの往復直線加工を例として挙げることができる。また、被処理基板Sとしては、薄膜太陽電池に用いられる基板などを例として挙げることができる。なお、本実施の形態では、被処理基板Sにレーザ光Lを照射することで、被処理基板Sを加工する態様を用いて説明するが、これに限られることはなく、被処理基板Sに放電、火力、熱などの他のエネルギーを加えて加工する態様も用いることができる。
【0023】
図2(a)(b)に示すように、駆動ステージ5は、レーザ照射部1から照射されるレーザ光Lによって加工される被処理基板Sを保持する保持部30と、保持部30が載置されて当該保持部30を移動させる従駆動ステージである第一上方ステージ10と、第一上方ステージ10が載置されて当該第一上方ステージ10を移動させる主駆動ステージである第一下方ステージ20と、第一上方ステージ10および第一下方ステージ20の駆動を制御する制御部50と、を備えている。
【0024】
このうち、第一上方ステージ10は、保持部30が載置される第一上方載置台12と、所定の一方向(本実施の形態では、図2(a)(b)の「X方向」)に延在する第一上方軸16と、第一上方軸16に連結されて第一上方載置台12を第一上方軸16に沿って移動させる駆動力を付与する第一上方駆動部15と、を有している。また、第一下方ステージ20は、第一上方ステージ10が載置された第一下方載置台22と、所定の一方向(図2(a)(b)の「X方向」)に延在する第一下方軸26と、第一下方軸26に連結されて第一下方載置台22を第一下方軸26に沿って移動させる駆動力を付与する第一下方駆動部25と、を有している。また、第一上方駆動部15と第一下方駆動部25には、上記の制御部50が接続されており、この制御部50からの信号を受けて、第一上方駆動部15と第一下方駆動部25が制御される。なお、本実施の形態では、第一下方ステージ20と比較して第一上方ステージ10の長さは短くなっており、第一下方ステージ20が主駆動ステージとして機能し、第一上方ステージ10が従駆動ステージとして機能する態様からなっているが、これに限られることはなく、第一上方ステージ10と比較して第一下方ステージ20の長さが短くなっており、第一上方ステージ10が主駆動ステージとして機能し、第一下方ステージ20が従駆動ステージとして機能する態様からなってもよい。ところで、本実施の形態において「X方向」とは図2(a)(b)の左右方向であり、「Y方向」とは図2(a)の上下方向であり図2(b)の紙面の法線方向である。
【0025】
本実施の形態では、図2(a)(b)に示すように、第一下方軸26と第一上方軸16が互いに平行に配置されているが、第一上方軸16が延在する直線と第一下方軸26が延在する直線が同じ方向の成分を含んでいればこれに限られない。このため、例えば図3に示すように、第一下方軸26と第一上方軸16が互いに平行でなくてもよく、第一下方軸26と第一上方軸16を例えば30°や45°といった所望の角度だけ傾斜させた状態で配置することができる。
【0026】
上述した制御部50は、保持部30をX方向で加速または減速させるときに、第一上方ステージ10および第一下方ステージ20によって保持部30をX方向で加速または減速させるように構成されている。また、制御部50は、保持部30をX方向において等速度で移動させるときに、主駆動ステージである第一下方ステージ20のみを移動させて、従駆動ステージである第一上方ステージ10を停止させるように構成されている。
【0027】
より具体的には、静止系において、保持部30をX方向の正方向(図2(a)(b)の右側)に移動させ始める際には、第一上方ステージ10によって保持部30をX方向の正方向に加速させるとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10をX方向の正方向に加速させる。また、静止系において、保持部30をX方向の負方向(図2(a)(b)の左側)に移動させ始める際には、第一上方ステージ10によって保持部30をX方向の負方向に加速させるとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10をX方向の負方向に加速させる。
【0028】
また、静止系において、保持部30をX方向の正方向に等速で移動させる際には、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の正方向に等速で移動され、第一上方ステージ10による保持部30の移動は停止されている。また、静止系において、保持部30をX方向の負方向に等速で移動させる際には、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の負方向に等速で移動され、第一上方ステージ10による保持部30の移動は停止されている。
【0029】
また、静止系において、保持部30のX方向の正方向の移動を停止させる際には、第一上方ステージ10による保持部30のX方向の正方向の移動を減速させるとともに第一下方ステージ20による第一上方ステージ10のX方向の正方向の移動を減速させる。また、静止系において、保持部30のX方向の負方向の移動を停止させる際には、第一上方ステージ10による保持部30のX方向の負方向の移動を減速させるとともに第一下方ステージ20による第一上方ステージ10のX方向の負方向の移動を減速させる。
【0030】
ところで、図示しないが上記のように、第一上方ステージ10が主駆動ステージとして機能し、第一下方ステージ20が従駆動ステージとして機能する態様では、保持部30をX方向において等速度で移動させるときに、第一上方ステージ10のみが移動されて第一下方ステージ20は停止されることとなる。
【0031】
(第1の実施の形態の実施例)
次に、このような構成からなる本実施の形態の実施例について述べる。なお、図4(a)は、時間と第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動速度(v1)との関係を示している。また、図4(b)は、時間と第一上方ステージ10による保持部30の移動速度(v2)との関係を示している。また、図4(c)は、時間と第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動速度および第一上方ステージ10による保持部30の移動速度の合成速度(v1+v2)との関係を示している。また、図4(d)は、図4(a)−(c)を同じ座標で示したものである。また、図4(e)は、時間と第一下方ステージ20から見た第一上方ステージ10のX方向における変位量(x1)との関係、時間と第一上方ステージ10から見た保持部30のX方向における変位量(x2)との関係、および、時間と静止系における保持部30のX方向における変位量(x1+x2)の関係を示している。
【0032】
ところで、図4(a)−(e)において、横軸の単位は「t」として示す。また、図4(a)−(d)において、縦軸の単位は「v」として示し、図4(e)において、縦軸の単位は「d」として示す。
【0033】
まず、静止系において、保持部30がX方向の正方向(図2(a)(b)の右側)に移動され始める。(以下、図2(a)(b)の右側への移動速度を「正」として示し、図2(a)(b)の左側への移動速度を「負」として示す。また、加速度に関しては、以下、加速する際を「正」として示し、減速する際を「負」として示す。)この際、第一上方ステージ10によって保持部30を右側に加速度a=1v/t(以下、aの単位である「v/t」は省略する。)で加速させるとともに、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を右側に加速度a=1で加速させる(図4(a)−(d)の横軸0t〜5t、参照)。
【0034】
そして、静止系において保持部30が所定の速度(図4(c)において10v)まで加速されると、第一上方ステージ10によって保持部30が加速度a=−1で減速され始める(図4(b)の横軸5t、参照)。他方、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は、加速度a=1で加速され続ける(図4(a)の横軸5t〜10t、参照)。このため、保持部30は静止系において等速で移動されることとなる(図4(c)の横軸5t〜10t、参照)。
【0035】
そして、第一上方ステージ10による保持部30の移動が停止される(図4(b)の横軸10t、参照)。他方、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動は、所定の速度(本実施の形態では10v)に達すると、等速で移動される(図4(a)の横軸10t〜30t、参照)。本実施例では、第一上方ステージ10による保持部30の移動が停止される時点と、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動が所定の速度に達する時点は、同じ10tである。
【0036】
そして、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の距離だけ移動される、言い換えれば第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の時間だけ(本実施例では30tまで)移動されると、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は加速度a=−1で減速され始める。このとき、第一上方ステージ10によって保持部30が加速度a=1で加速され、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が減速される分、第一上方ステージ10によって保持部30が加速され、保持部30は静止系において等速で移動されることとなる(図4(a)−(d)の横軸30t〜35t、参照)。
【0037】
そして、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の速度(図4(a)において5v)まで減速されると、第一上方ステージ10によって保持部30が加速度a=−1で減速され始める(図4(b)の横軸35t、参照)。そして、第一上方ステージ10による保持部30の移動が停止されるとともに、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動が停止される(図4(a)−(e)の横軸40t、参照)。
【0038】
次に、移動方向を反転するために、保持部30は静止系において一旦停止される(図4(a)−(e)の横軸40t〜45t、参照)。ここまでで、保持部30は図4(e)のグラフで移動量350dまで移動している。
【0039】
次に、静止系において、保持部30がX方向の負方向(図2(a)(b)の左側)に移動され始める。この際、第一上方ステージ10によって保持部30を左側に加速度a=1で加速させるとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を左側に加速度a=1で加速させる(図4(a)−(d)の横軸45t〜50t、参照)。
【0040】
そして、静止系において保持部30が所定の速度(図4(c)において−10v)まで加速されると、第一上方ステージ10によって保持部30が加速度a=−1で減速され始める(図4(b)の横軸50t、参照)。他方、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は、加速度a=1で加速され続ける(図4(a)の横軸50t〜55t、参照)。このため、保持部30は静止系において等速で移動されることとなる(図4(c)の横軸50t〜55t、参照)。この点、第一上方ステージ10による保持部30の移動が停止される時点と、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動が所定の速度に達する時点は、同じ55tである。
【0041】
そして、第一上方ステージ10による保持部30の移動が停止される(図4(b)の横軸55t、参照)。他方、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動は、加速度a=1で加速され続けて所定の速度(本実施の形態では−10v)に達すると、等速で移動される(図4(a)の横軸55t〜75t、参照)。
【0042】
そして、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の距離だけ移動される、言い換えれば第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の時間だけ(本実施例では75tまで)移動されると、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は加速度a=−1で減速され始める。このとき、第一上方ステージ10によって保持部30が加速度a=1で加速され、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が減速される分、第一上方ステージ10によって保持部30が加速され、保持部30は静止系において等速で移動されることとなる(図4(a)−(d)の横軸75t〜80t、参照)。
【0043】
そして、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の速度(図4(a)において−5v)まで減速されると、第一上方ステージ10によって保持部30が加速度a=−1で減速され始める(図4(b)の横軸80t、参照)。そして、第一上方ステージ10による保持部30の移動が停止されるとともに、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動が停止される(図4(a)−(e)の横軸85t、参照)。
【0044】
次に、移動方向を反転するために、保持部30は静止系において一旦停止される(図4(a)−(e)の横軸85t〜90t、参照)。
【0045】
以降は、上記の工程が繰り返されて、被処理基板Sが加工されることとなる。
【0046】
(比較例)
次に、図5に示すように、被処理基板Sを保持する保持部130と、保持部130が載置されて当該保持部130を移動させるステージ120と、を備えた駆動ステージ105を用いて、比較例について説明する。なお、ステージ120は、保持部130が載置される載置台122と、所定の一方向に延在する延在軸126と、延在軸126に連結されて載置台122を延在軸126に沿って移動させる駆動力を付与する駆動部125と、を有している。なお、図6(a)は、時間と保持部130の速度との関係を示し、図6(b)は、時間と保持部130の変位量の関係を示している。
【0047】
まず、静止系において、保持部130が図5の右側に移動され始める。この際、ステージ120によって保持部130を右側に加速度a=1で加速させる(図6(a)の横軸0t〜10t、参照)。
【0048】
そして、ステージ120によって保持部30が加速され続けて所定の速度(図6(a)において10v)に達すると、ステージ120によって保持部30は等速で移動される(図6(a)の横軸10t〜30t、参照)。
【0049】
そして、ステージ120によって保持部30が所定の距離だけ移動される、言い換えればステージ120によって保持部30が所定の時間だけ(本実施例では30tまで)移動されると、ステージ120は保持部30を加速度a=−1で減速させ始める。(図6(a)の横軸30t〜40t、参照)。
【0050】
次に、移動方向を反転するために、保持部30は静止系において一旦停止される(図6(a)の横軸40t〜45t、参照)。ここまでで、保持部30は図6(b)のグラフで移動量300dまで移動している。
【0051】
次に、静止系において、保持部30が図5の左側に移動され始める。この際、ステージ120によって保持部30を左側に加速度a=1で加速させる(図6(a)の横軸45t〜50t、参照)。
【0052】
そして、ステージ120によって保持部30が加速され続けて所定の速度(図6(a)において−10v)に達すると、ステージ120は保持部30を等速で移動させる(図6(a)の横軸55t〜75t、参照)。
【0053】
そして、ステージ120によって保持部30が所定の距離だけ移動される、言い換えればステージ120によって保持部30が所定の時間(だけ本実施例では75tまで)移動されると、ステージ120は保持部30を加速度a=−1で減速させ始める(図6(a)の横軸75t〜85t、参照)。
【0054】
次に、移動方向を反転するために、保持部30は静止系において一旦停止される(図6(a)の横軸85t〜90t、参照)。
【0055】
以降は、上記の工程が繰り返されて、被処理基板Sが加工されることとなる。
【0056】
上記のような実施例と比較例を比較することから理解されるように、静止系において保持部30を所定の速度(例えば10v)まで加速したり所定の速度から停止させたりするのに、比較例では10tかかるのに対して、実施例では5tの時間があれば足り、半分の時間になっている。このため、本実施例によれば、被処理基板Sを静止系に対して加速させる時間と減速させる時間の両方を短縮することができ、被処理基板Sを等速で移動させる時間を長くすることで加工効率を向上させることができる。(ちなみに、比較例では被処理基板Sを等速で移動させる時間は20dとなっているのに対して、本実施例では被処理基板Sを等速で移動させる時間は30dとなっており、本実施例によれば、被処理基板Sを等速で移動させる時間を、比較例の1.5倍にすることができる。)
【0057】
また、比較例では被処理基板Sが0d〜300dまで移動するのに対して、本実施例では被処理基板Sを0d〜350dまで移動させることができ、被処理基板Sの移動距離を長くすることができる。このため、本実施例によれば、被処理基板Sを等速で移動させる時間を短縮させることもでき、一枚の被処理基板Sを処理する時間を短縮させることができる。このため、被処理基板Sの加工効率を向上させることができる。
【0058】
また、このように本実施例では被処理基板Sの移動距離が長くなっているので、移動距離を短くするために、加減速を小さくしたり等速で移動される際の速度を低く調整したりすることもできる。このため、駆動ステージ5で必要とされる電力を小さくすることができるし、駆動部15,25に加わる駆動負荷も小さくすることができる。従って、駆動部15,25をより小さな出力で駆動するものにすることもできる。
【0059】
また、実施例と比較例で加速度aの絶対値が「1」で等しいことからも理解されるように、本実施例では、一つの駆動系を高速に駆動することで被処理基板Sの加減速度を大きくするのではなく、二つの駆動部15,25による駆動を用いて被処理基板Sの加減速度を大きくするため、駆動部の負荷をさほど増大させずに、被処理基板Sを静止系に対して加速させる時間と減速させる時間の両方を短縮することができる。
【0060】
また、本実施例によれば、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が加速度a=1で加速されているときに第一上方ステージ10によって保持部30を加速度a=−1で減速したり、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が加速度a=−1で減速されているときに第一上方ステージ10によって保持部30を加速度a=1で加速したりしており、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を加速または減速する際の加減速度の絶対値と、第一上方ステージ10によって保持部30を減速または加速する際の加減速度の絶対値が等しくなっている。このため、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を加速または減速させている間においても、静止系において保持部30を等速で移動させることができる。このため、被処理基板Sを等速で移動させる時間を長くすることができ、被処理基板Sの加工効率を向上させることができる。なお、本実施例では5t〜10tおよび50t〜55tが第一時間になっており、30t〜35tおよび75t〜80tが第二時間になっている。
【0061】
ところで、第一上方ステージ10が主駆動ステージとして機能し、第一下方ステージ20が従駆動ステージとして機能する態様では、第一上方ステージ10によって保持部30を加速する際に、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を減速させる第一時間(本実施例の5t〜10tおよび50t〜55tに対応)があり、当該第一時間において、第一上方ステージ10によって保持部30を加速する加速度の絶対値と第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を減速する減速度の絶対値とが等しくなり、静止系において保持部30を等速で移動させればよい。また、第一上方ステージ10によって保持部30を減速する際に、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を加速させる第二時間(本実施例の30t〜35tおよび75t〜80tに対応)があり、当該第二時間において、第一上方ステージ10によって保持部30を減速する減速度の絶対値と第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を加速する加速度の絶対値とが等しくなり、静止系において保持部30を等速で移動させればよい。
【0062】
第2の実施の形態
次に、図7および図8により、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0063】
第1の実施の形態は、保持部30を所定の一方向において等速度で移動させるときに、第一上方ステージ10または第一下方ステージ20のいずれか一方のみを移動させて他方を停止させる態様であったが、本実施の形態では、保持部30を所定の一方向において等速度で移動させるときでも、第一上方ステージ10と第一下方ステージ20の両方を移動させる態様になっている。第2の実施の形態において、その他の構成は、第1の実施の形態と略同一の態様となっている。
【0064】
図7および図8(a)−(e)に示す第2の実施の形態において、図1乃至図4(a)−(e)に示す第1の実施の形態および図5および図6(a)(b)に示す比較例と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
(第2の実施の形態の実施例)
【0065】
以下、本実施の形態の実施例について述べる。なお、図8(a)は、時間と第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動速度(v1)との関係を示している。また、図8(b)は、時間と第一上方ステージ10による保持部30の移動速度(v2)との関係を示している。また、図8(c)は、時間と第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動速度および第一上方ステージ10による保持部30の移動速度の合成速度(v1+v2)との関係を示している。また、図8(d)は、図8(a)−(c)を同じ座標で示したものである。また、図8(e)は、時間と第一下方ステージ20から見た第一上方ステージ10のX方向における変位量(x1)との関係、時間と第一上方ステージ10から見た保持部30のX方向における変位量(x2)との関係、および、時間と静止系における保持部30のX方向における変位量(x1+x2)の関係を示している。
【0066】
まず、静止系において、保持部30が図7の右側に移動され始める。この際、第一上方ステージ10によって保持部30を右側に加速度a=1で加速させるとともに、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を右側に加速度a=1で加速させる(図8(a)−(d)の横軸0t〜5t、参照)。
【0067】
そして、静止系において保持部30が所定の速度(図8(c)において10v)まで加速されると、第一上方ステージ10による保持部30の移動速度と、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動速度とが、等速になる(図8(a)−(d)の横軸5t〜25t、参照)。より具体的には、第一上方ステージ10によって保持部30が5vで移動され、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が5vで移動される。
【0068】
そして、静止系において保持部30が所定の距離だけ移動される、言い換えれば保持部30が所定の時間だけ(本実施例では25tまで)移動されると、第一上方ステージ10によって保持部30が加速度a=−1で減速され始めるとともに、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が加速度a=−1で減速され始める(図8(a)−(d)の横軸25t〜30t、参照)。
【0069】
次に、移動方向を反転するために、保持部30は静止系において一旦停止される(図8(a)−(d)の横軸30t〜35t、参照)。ここまでで、保持部30は図8(b)のグラフで移動量250dまで移動している。
【0070】
次に、静止系において、保持部30が図7の左側に移動され始める。この際、第一上方ステージ10によって保持部30を左側に加速度a=1で加速させるとともに、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を左側に加速度a=1で加速させる(図8(a)−(e)の横軸35t〜40t、参照)。
【0071】
そして、静止系において保持部30が所定の速度(図8(c)において−10v)まで加速されると、第一上方ステージ10による保持部30の移動速度と、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動速度とが、等速になる(図8(a)−(e)の横軸40t〜60t、参照)。より具体的には、第一上方ステージ10によって保持部30が−5vで移動され、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が−5vで移動される。
【0072】
そして、静止系において保持部30が所定の距離だけ移動される、言い換えれば保持部30が所定の時間だけ(本実施例では60tまで)移動されると、第一上方ステージ10によって保持部30が加速度a=−1で減速され始めるとともに、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が加速度a=−1で減速され始める(図8(a)−(e)の横軸60t〜65t、参照)。
【0073】
次に、移動方向を反転するために、保持部30は静止系において一旦停止される(図8(a)−(e)の横軸65t〜70t、参照)。
【0074】
以降は、上記の工程が繰り返されて、被処理基板Sが加工されることとなる。
【0075】
上述した第2の実施の形態の実施例と第1の実施の形態で示した比較例を比較すると、静止系において保持部30を所定の速度(例えば10v)まで加速したり所定の速度から停止させたりするのに、比較例では10tかかるのに対して、本実施例では5tの時間があれば足りる。このため、本実施例によれば、被処理基板Sを静止系に対して加速させる時間と減速させる時間の両方を短縮することができ、被処理基板Sを等速で移動させる時間を長くすることで加工効率を向上させることができる。
【0076】
また、本実施例によれば、保持部30は0d〜250dまで移動されるが、第一上方ステージ10と第一下方ステージ20の移動量を125d程度にすることができるので、従来のものと比較して、駆動ステージ5を小型化することができる。
【0077】
また、本実施例によれば、第一上方ステージ10による保持部30の移動速度の絶対値と、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動速度の絶対値を、5vとすることができ、小さくすることができる。このため、駆動ステージ5で必要とされる電力を小さくすることができるし、駆動部15,25に加わる駆動負荷も小さくすることができる。従って、駆動部15,25をより小さな出力で駆動するものにすることもできる。
【0078】
また、本実施例では、一つの駆動系を高速に駆動することで被処理基板Sの加減速度を大きくするのではなく、二つの駆動部15,25による駆動を用いて被処理基板Sの加減速度を大きくするため、駆動部の負荷を増大させずに、被処理基板Sを静止系に対して加速させる時間と減速させる時間の両方を短縮することができる。
【0079】
ところで、第1の実施の形態では、第2の実施の形態と異なり、静止系において保持部30を加速または減速させるときにのみ、第一上方ステージ10は保持部30を移動させるので、第一上方ステージ10をより小型化することができる。このため、第1の実施の形態によれば、第2の実施の形態と比較して、安価に駆動ステージ5を作成することができ、かつ、駆動ステージ5を省エネで駆動することができる点で優れている。
【0080】
第3の実施の形態
次に、図9(a)(b)および図10(a)(b)により、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0081】
本実施の形態では、上記のような第一上方ステージ10および第一下方ステージ20に加えて、第一下方ステージ20が載置され、この第一下方ステージ20を移動させる第二上方ステージ60と、第二上方ステージ60が載置され、この第二上方ステージ60を移動させる第二下方ステージ70と、がさらに設けられている。なお、図9(a)(b)は、第1の実施の形態における第一上方ステージ10および第一下方ステージ20に加えて、従駆動ステージである第二上方ステージ60と、主駆動ステージである第二下方ステージ70がさらに設けられている態様である。また、図10(a)(b)は、第2の実施の形態における第一上方ステージ10および第一下方ステージ20に加えて、第二上方ステージ60と、第二上方ステージ60と同じ長さからなる第二下方ステージ70がさらに設けられている態様である。
【0082】
このうち、第二上方ステージ60は、第一下方ステージ20が載置される第二上方載置台62と、所定の別方向(本実施の形態では、図9(b)および図10(b)の「Y方向」)に延在する第二上方軸66と、第一上方軸66に連結されて第二上方載置台62を第二上方軸66に沿って移動させる駆動力を付与する第二上方駆動部65と、を有している。また、第二下方ステージ70は、第二上方ステージ60が載置された第二下方載置台72と、所定の別方向(本実施の形態では、図9(b)および図10(b)の「Y方向」)に延在する第二下方軸76と、第二下方軸76に連結されて第二下方載置台72を第二下方軸76に沿って移動させる駆動力を付与する第二下方駆動部75と、を有している。また、第二上方駆動部65と第二下方駆動部75に、制御部50が接続されており、この制御部50からの信号を受けて、第二上方駆動部65と第二下方駆動部75が制御される(図2(a)(b)参照)。
【0083】
なお、本実施の形態では、第一上方軸16および第一下方軸26がX方向で互いに平行になり、第二上方軸66および第二下方軸76がY方向で互いに平行になり、第一上方軸16および第一下方軸26と、第二上方軸66および第二下方軸76とが直交している。しかしながら、第一上方軸16および第一下方軸26と、第二上方軸66および第二下方軸76とは互いに直交している必要は必ずしもなく、例えば、互いに平行な第一上方軸16および第一下方軸26が、互いに平行な第二上方軸66および第二下方軸76に対して、30°や45°といった所望の角度だけ傾斜させた状態で配置することもできる。
【0084】
第3の実施の形態において、その他の構成は、第1の実施の形態または第2の実施の形態と略同一の態様となっている。より具体的には、図9(a)(b)に示す第3の実施の形態においては、その他の構成は、第1の実施の形態と略同一の態様となり、図10(a)(b)に示す第3の実施の形態においては、その他の構成は、第2の実施の形態と略同一の態様となっている。
【0085】
図9(a)(b)および図10(a)(b)に示す第3の実施の形態において、図1乃至図4(a)−(e)に示す第1の実施の形態、図5および図6(a)(b)に示す比較例、並びに、図7および図8(a)−(e)に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0086】
静止系において、保持部30をY方向の正方向に移動させ始める際には、制御部50は、第二上方ステージ60によって第一下方ステージ20をY方向の正方向に加速させるとともに第二下方ステージ70によって第二上方ステージ60をY方向の正方向に加速させる。また、静止系において、保持部30をY方向の負方向に移動させ始める際には、第二上方ステージ60によって第一下方ステージ20をY方向の負方向に加速させるとともに第二下方ステージ70によって第二上方ステージ60をY方向の負方向に加速させる。
【0087】
また、静止系において、保持部30のY方向の正方向の移動を停止させる際には、制御部50は、第二上方ステージ60による第一下方ステージ20のY方向の正方向の移動を減速させるとともに第二下方ステージ70による第二上方ステージ60のY方向の正方向の移動を減速させる。また、静止系において、保持部30のY方向の負方向の移動を停止させる際には、第二上方ステージ60による第一下方ステージ20のY方向の負方向の移動を減速させるとともに第二下方ステージ70による第二上方ステージ60のY方向の負方向の移動を減速させる。
【0088】
静止系において、保持部30をY方向の正方向に等速で移動させる際には、図9(a)(b)に示す態様では、第二下方ステージ70によって第二上方ステージ60がY方向の正方向に等速で移動され、第二上方ステージ60による第一下方ステージ20の移動は停止されている。また、静止系において、保持部30をY方向の負方向に等速で移動させる際には、第二下方ステージ70によって第二上方ステージ60がY方向の負方向に等速で移動され、第二上方ステージ60による第一下方ステージ20の移動は停止されている。
【0089】
他方、図10(a)(b)に示す態様では、静止系において、保持部30をY方向の正方向に等速で移動させる際には、第二上方ステージ60によって第一下方ステージ20がY方向の正方向に等速で移動され、第二下方ステージ70によって第二上方ステージ60がY方向の正方向に等速で移動される。また、静止系において、保持部30をY方向の負方向に等速で移動させる際には、第二上方ステージ60によって第一下方ステージ20がY方向の負方向に等速で移動され、第二下方ステージ70による第二上方ステージ60がY方向の正方向に等速で移動される。
【0090】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態および第2の実施の形態で述べた効果を、直交する二方向で達成することができる。このため、被処理基板Sを様々なパターンで加工する場合においても、第1の実施の形態および第2の実施の形態で述べた効果(例えば加工効率の向上など)を得ることができる。
【0091】
ところで、上記の各実施の形態では、ボールねじなどの実際に存在する「軸」を想定して第一上方軸16、第一下方軸26、第二上方軸66および第二下方軸76を記載しているが、これに限られることはない。すなわち、本願において第一上方軸、第一下方軸、第二上方軸および第二下方軸は仮想的な「軸」であってもよく、例えばリニアモータテーブルのように仮想軸に沿って移動される態様も含まれている。
【符号の説明】
【0092】
1 レーザ照射部
5 駆動ステージ
10 第一上方ステージ
12 第一上方載置台
15 第一上方駆動部
16 第一上方軸
20 第一下方ステージ
22 第一下方載置台
25 第一下方駆動部
26 第一下方軸
30 保持部
50 制御部
60 第二上方ステージ
62 第二上方載置台
65 第二上方駆動部
66 第二上方軸
70 第二下方ステージ
72 第二下方載置台
75 第二下方駆動部
76 第二下方軸
S 被処理基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工される被処理基板を保持する保持部と、
前記保持部が載置され、該保持部を第一上方軸に沿って移動させる第一上方ステージと、
前記第一上方ステージが載置され、該第一上方ステージを第一下方軸に沿って移動させる第一下方ステージと、
前記第一上方ステージおよび前記第一下方ステージの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記第一上方軸が延在する直線と前記第一下方軸が延在する直線が、同じ所定の一方向の成分を含み、
前記制御部は、前記保持部を前記所定の一方向で加速または減速させるときに、前記第一上方ステージおよび前記第一下方ステージによって前記保持部を該所定の一方向で加速または減速させることを特徴とする駆動ステージ。
【請求項2】
前記制御部は、前記保持部を前記所定の一方向において等速度で移動させるときに、前記第一上方ステージまたは前記第一下方ステージのいずれか一方のみを移動させて他方を停止させることを特徴とする請求項1に記載の駆動ステージ。
【請求項3】
前記第一下方ステージによって前記第一上方ステージを加速する際に、該第一上方ステージによって前記保持部を減速させる第一時間があり、当該第一時間において、該第一下方ステージによって該第一上方ステージを加速する加速度の絶対値と該第一上方ステージによって該保持部を減速する減速度の絶対値とが等しくなり、静止系において該保持部が等速で移動することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の駆動ステージ。
【請求項4】
前記第一上方ステージによって前記保持部を加速する際に、前記第一下方ステージによって該第一上方ステージを減速させる第一時間があり、当該第一時間において、該第一上方ステージによって該保持部を加速する加速度の絶対値と該第一下方ステージによって該第一上方ステージを減速する減速度の絶対値とが等しくなり、静止系において該保持部が等速で移動することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の駆動ステージ。
【請求項5】
前記第一下方ステージによって前記第一上方ステージを減速する際に、該第一上方ステージによって前記保持部を加速させる第二時間があり、当該第二時間において、該第一下方ステージによって該第一上方ステージを減速する減速度の絶対値と該第一上方ステージによって該保持部を加速する加速度の絶対値とが等しくなり、静止系において該保持部が等速で移動することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の駆動ステージ。
【請求項6】
前記第一上方ステージによって前記保持部を減速する際に、前記第一下方ステージによって該第一上方ステージを加速させる第二時間があり、当該第二時間において、該第一上方ステージによって該保持部を減速する減速度の絶対値と該第一下方ステージによって該第一上方ステージを加速する加速度の絶対値とが等しくなり、静止系において該保持部が等速で移動することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の駆動ステージ。
【請求項7】
前記第一下方軸と前記第一上方軸が平行に配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の駆動ステージ。
【請求項8】
前記第一下方ステージが載置され、該第一下方ステージを第二上方軸に沿って移動させる第二上方ステージと、
前記第二上方ステージが載置され、該第二上方ステージを第二下方軸に沿って移動させる第二下方ステージと、をさらに備え、
前記第二上方軸が延在する直線と前記第二下方軸が延在する直線が、同じ所定の別方向の成分を含み、
前記制御部は、前記保持部を前記所定の別方向で加速または減速させるときに、前記第二上方ステージおよび前記第二下方ステージによって前記保持部を該所定の別方向で加速または減速させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の駆動ステージ。
【請求項9】
前記制御部は、前記保持部を前記所定の別方向において等速度で移動させるときに、前記第二上方ステージまたは前記第二下方ステージのいずれか一方のみを移動させて他方を停止させることを特徴とする請求項8に記載の駆動ステージ。
【請求項10】
前記第二下方軸と前記第二上方軸が平行に配置されていることを特徴とする請求項8または9のいずれかに記載の駆動ステージ。
【請求項11】
レーザ光を照射するレーザ照射部と、
前記レーザ光によって加工される被処理基板を移動させる駆動ステージと、を備え、
前記駆動ステージは、
レーザ照射部から照射されるレーザ光によって加工される被処理基板を保持する保持部と、
前記保持部が載置され、該保持部を第一上方軸に沿って移動させる第一上方ステージと、
前記第一上方ステージが載置され、該第一上方ステージを第一下方軸に沿って移動させる第一下方ステージと、
前記第一上方ステージおよび前記第一下方ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、
前記第一上方軸が延在する直線と前記第一下方軸が延在する直線が、同じ所定の一方向の成分を含み、
前記制御部は、前記保持部を前記所定の一方向で加速または減速させるときに、前記第一上方ステージおよび前記第一下方ステージによって前記保持部を該所定の一方向で加速または減速させることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項12】
薄膜太陽電池を加工する薄膜太陽電池加工装置において、
レーザ光を照射するレーザ照射部と、
前記レーザ光によって加工される被処理基板を移動させる駆動ステージと、を備え、
前記駆動ステージは、
レーザ照射部から照射されるレーザ光によって加工される被処理基板を保持する保持部と、
前記保持部が載置され、該保持部を第一上方軸に沿って移動させる第一上方ステージと、
前記第一上方ステージが載置され、該第一上方ステージを第一下方軸に沿って移動させる第一下方ステージと、
前記第一上方ステージおよび前記第一下方ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、
前記第一上方軸が延在する直線と前記第一下方軸が延在する直線が、同じ所定の一方向の成分を含み、
前記制御部は、前記保持部を前記所定の一方向で加速または減速させるときに、前記第一上方ステージおよび前記第一下方ステージによって前記保持部を該所定の一方向で加速または減速させることを特徴とする薄膜太陽電池加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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