説明

駆動伝達装置

【課題】 ギア歯面の形状に限定されることなく、シザーズギアを構成するメイン歯車とサブ歯車との間に弾性部材を配置しないことで組立性の向上を図る
【解決手段】 第一歯車或いは第二歯車の一方の歯車の外面側から他方の歯車に向かう付勢力を付与する付勢手段と、を有し、第一連結部或いは第二連結部の少なくとも一方の連結部は傾斜面が設けられ、傾斜面で他方の連結部と接触することで第二歯車の回転方向において第二歯車が、第一歯車と第二歯車とに噛み合う三歯車の歯面を付勢する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車を用いた駆動伝達装置に関し、特にバックラッシュによる影響を除去するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録材に画像を形成する画像形成装置においては、感光体ドラムを回転させるためのドラム回転機構や、シートを画像形成部に搬送するためシート搬送機構を備えている。そして、これら画像形成装置のシート搬送機構やドラム回転機構は、モータ等の駆動部からの駆動力により回転する歯車(ギア)対を備え、この歯車対により駆動部からの駆動力を被駆動部に伝達する歯車装置を備えている。
【0003】
歯車装置においては、歯車による円滑な回転伝達を行うには噛み合う歯車同士に適切な間隙(バックラッシュ)を必ず設定する必要がある。しかし、このようなバックラッシュを設定すると、歯車駆動時に互いの歯面が叩き合う現象が生じて振動や騒音が生じるようになる。
【0004】
その対策として、本体歯車の側面に同一歯数の補助歯車を設けると共に、補助歯車を、補助歯車と本体歯車間に設けられたスプリングにより回転方向に捩り力を持たせた状態で本体歯車に接続するようにしたシザーズギア機構を用いたものがある(特許文献1及び2参照)。そして、このような構成のシザーズギア機構では、相手歯車が回転する際、相手歯車の歯を、補助歯車の歯と本体歯車の歯とによって挟み込むことにより、ガタ打ちを低減するようにしている。
【0005】
図16は、このような従来の歯車装置に設けられたシザーズギア機構を備えた構成を説明する図である。このシザーズギアは、図16の(a)に示すメイン歯車122と、歯車間に設けられたバネによりメイン歯車122に後続するように回転するサブ歯車123と、これら2つの歯車122、123と噛合する図16の(b)に示すドライブ歯車121を備えている。
【0006】
そして、図16の(b)に示すように、ドライブ歯車121を矢印a方向に回転すると、まず、その歯121aがメイン歯車122の歯122aに着力点pで当接し、メイン歯車122を矢印b方向に回転駆動する。この後、バネの付勢力により後続するサブ歯車123の歯123aが、ドライブ歯車121の歯121aに回転方向後方側から着力点qで圧接する。
【0007】
これにより、ドライブ歯車121の歯121aの後に生じるバックラッシュが除去され、これによってトルク変動が生じても着力点pが離れず、歯打ちが低減される。このようにバネ等の弾性部材を用いて歯車を挟持することにより、歯面のあばれを低減することができ、駆動時の騒音を低減させることができる。
【0008】
図17も同様にシザーズギア機構を備えた構成を説明する図である。図中、131は不図示のモータ等の出力軸に圧入されたドライブ歯車である。また、132は回転軸135に回転可能に軸支されたメイン歯車、133はメイン歯車132に対して回転自在に勘合するサブ歯車、134はメイン歯車132とサブ歯車133間に付勢力を与えるトーションスプリングである。図17では、トーションスプリング134が見える様にサブ歯車133は半断面で示してある。この様にトーションスプリング134の一端はメイン歯車132に、反対側の一端はサブ歯車133に各歯車ハブ面に設けられた孔等を利用して引っ掛けられており、トーションスプリングにより互いに回転力が働く仕組みとなっている。しかし、最近の製品小型に伴い歯車自体が小型化してくるとトーションスプリングを組み込む作業が難しい。
【0009】
そこで、歯車間に弾性部材を設けない構成として、図18に示す様な形態の歯車機構も提案され組込み性の向上と噛合い率の向上がなされてきている。図中、141は駆動歯車、142は歯溝に噛合するメイン歯を有するメイン歯車、143はサブ歯を有するサブ歯車でメイン歯車142と同一回転軸上に配置されメイン歯車142と共に駆動歯車141の歯溝に噛合している。更に、メイン歯車142とサブ歯車143には不図示の付勢手段により回転軸方向に相対的に近づく方向に付勢力が働く構成となっている。ここで、メイン歯車142のメイン歯にはサブ歯車143側に向かってメイン歯142の厚みが薄くなる方向に傾斜した傾斜面142(a)を形成している。一方、サブ歯車のサブ歯にも同様にメイン歯車142側に向かってサブ歯143の厚みが薄くなる方向に傾斜した傾斜面143(a)を形成している。この時、メイン歯とサブ歯とが、互いの傾斜面の一部が対面重合した状態で駆動歯車141の歯溝に噛合するようになっている。そして、この互いの傾斜面により回転軸方向の付勢力が回転力を与え、組込み性と噛合い率を向上させるシザーズギア構成となっている。(特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−109961号公報
【特許文献2】特開平9−89082号公報
【特許文献3】特開平11−303974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図18に示す構成の提案もなされ組込み性の課題は低減されるが、この様な構成では歯を分割させる構成となるため、ギア歯面が非常に小さくなることで、歯面強度が弱くなり、回転伝達誤差が生じやすくなる。そして、ギア歯面が非常に小さいことから、加工誤差による歯車円ピッチや歯厚がばらつくことにより、バックラッシュ量は常に一定にならず、更に、歯車の回転軸と歯の偏芯によっても1回転中におけるバックラッシュ量の変化を生じさせる要因となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明は、回転可能な回転軸と、前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸と一体で回転する第一歯車と、前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸に対して回転可能な第二歯車と、前記第一歯車と前記第二歯車とに噛み合うように配置され、駆動伝達経路を形成する第三歯車と、前記第二歯車に対向する前記第一歯車の内面に設けられ、前記第一歯車と前記第二歯車とを連結するため第一連結部と前記第一歯車に対向する前記第二歯車の内面に設けられ、前記第一連結部と連結する第二連結部とを備えた連結機構と、を有する駆動伝達機構において、前記第一歯車或いは前記第二歯車の少なくとも一方の歯車の外面側から他方の歯車に向かう付勢力を付与する付勢手段と、を有し、前記第一連結部或いは前記第二連結部の少なくとも一方の連結部は傾斜面が設けられ、前記傾斜面が他方の連結部と接触することで前記第二歯車の回転方向において前記第二歯車が前記三歯車を付勢することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、ギア歯面の形状に限定されることなく、シザーズギアを構成するメイン歯車とサブ歯車との間に弾性部材を配置しないことで組立性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る歯車装置の構成を示す図
【図2】上記歯車装置の組立図
【図3】上記歯車駆動装置に設けられた第一歯車の構成を示す斜視図
【図4】上記歯車駆動装置に設けられた第二歯車の構成を示す斜視図
【図5】上記歯車装置の組立図(半断面)
【図6】回転軸の斜視図
【図7】傾斜面における力の釣合い状態説明図
【図8】傾斜面の斜視図
【図9】傾斜面の斜視図
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る歯車装置の構成を示す図
【図11】上記歯車駆動装置に設けられた第二歯車の構成を示す斜視図
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る歯車装置の構成を示す側面図
【図13】上記歯車装置を備えた本発明の第1の実施例に係る複写機の構成を説明する図
【図14】上記複写機に設けられたシート搬送部の駆動部の構成を示す斜視図
【図15】上記歯車装置を備えた本発明の第2の実施例に係る電子カメラの構成を説明する図
【図16】上記従来の歯車装置に設けられたシザーズギア機構の構成を説明する図
【図17】上記従来の歯車装置に設けられたシザーズギア機構の他の構成を説明する図
【図18】上記従来の歯車装置に設けられたシザーズギア機構の他の構成を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施例)
本発明を適用した駆動伝達機構を図面に従って説明する。
【0016】
図1は本発明を適用した第1実施例の歯車(ギア)対の斜視図であり、図2は歯車対組立図、図3は第一歯車の内面側斜視図、図4は第二歯車の内面側斜視図である。また、図5は第一歯車と第二歯車とが連結する状態を示す図であり、第二歯車は連結部が見える様に半断面で示してある。図6は回転軸の斜視図である。
【0017】
まず、第一歯車について説明する。図1を参照すると、符号1は第一歯車である。第一歯車1は、駆動力の伝達を行う歯形成部1(a)を有する。また、第一歯車1は、回転軸3に対して第一歯車1が動かないように固定されている。そのため、図3に示されるように、回転軸3により支持される部分は、係合穴部1(d)及び1(e)のようなDカット形状部となっている。また、第一歯車1は、第二歯車内面に形成された第二連結部と回転自在に係合するための円筒部1(b)と、第二連結部の一部に当接し摺動する傾斜面1(c)を有している。この円筒部1(b)は、第一歯車1の回転中心を中心とした円筒部であり、傾斜面1は円筒部表面に対して垂直となっている構成である。第一歯車1に設けられた円筒部1(b)と傾斜面1は、第二連結部と連結する第一連結部のとしての機能を有する。
【0018】
次に、第二歯車について説明する。図1を参照すると、符号2は第二歯車で駆動伝達を行うための歯形成部2(a)を有する。また、図4に示されるように、第二歯車2は、回転軸3に対して回転可能となるように円筒部の一部2(b)が設けられており、この部分で回転軸3に支持されている。図4を参照すると、第一歯車1の傾斜面(c)と当接する第二傾斜面2(c)を有している。
【0019】
次に、図6を参照して、回転軸3について説明する。回転軸3は、駆動力が第一歯車1に伝達され、第一歯車1が回転すると、回転軸3が回転する構成となっている。回転軸3は、回転軸3の回転軸方向において歯車対の位置規制を行うためのフランジ部3(a)と、第一歯車との回り止めとなるDカット部3(b)と、Eリング等の止め輪を取り付ける溝部3(c)、3(d)、3(e)が形成されている。そして、回転軸3は、図示しない板金フレームに回転自在に支持されている。そして、回転軸3が回転することで、回転させたい対象物に駆動力を伝達する。
【0020】
また、図6において、符号4は回転軸3の溝部3(c)、3(d)、3(e)に嵌め込む止め輪である。符号5は付勢手段としての弾性部材である圧縮コイルバネであり、止め輪4により第二歯車を回転軸スラスト方向(第一歯車の方向)へ押圧するように圧縮された状態で回転軸3に組み込まれている。本実施例では、圧縮コイルバネ5は、第二歯車が第一歯車と対向する内面と反対側の外面側から第二歯車を付勢する構成であるが、これに限定されるものではない。例えば、一方の歯車である第二歯車がフランジ部で位置規制が行われている状態であれば、他方の歯車である第一歯車の外面側から圧縮コイルバネにより付勢される構成であってもいい。ただし、付勢手段である弾性部材は、組立性の向上のために、第一歯車と第二歯車との間に配置されないものとする。符号6はPOM(ポリアセタール)等の摺動性の良好な樹脂材料から構成されたスラスト受け板で、第二歯車が円滑に回転する様に圧縮コイルバネ5の端面と当接している。なお、本実施例では、第一歯車1と第二歯車2は樹脂ギアであり、もちろん、金属ギアであっても問題ない。
【0021】
次に本構成で組み上げた歯車対の回転力発生の仕組みを、図1〜図6及び図7を用いて説明する。
【0022】
第一歯車1の円筒部1(b)と第二歯車2の円筒部2(b)とは、第二歯車2が第一歯車1に対して回転可能となるように、連結する連結機構を構成するものである。さらに、圧縮コイルバネ5により傾斜面1(c)と第二傾斜面2(c)が当接して歯車同士が互いに近づく方向へ付勢されている。第一歯車1に形成された傾斜面1(b)及び第二歯車2に形成された第二傾斜面2(b)は同一の傾斜角度θ(図5参照)で形成され、この傾斜角度θにより第二歯車2の回転容易性が決まってくる。本実施例では一般的な構成として、図5に示すθが35〜55degの範囲で傾斜角度を設定しているが、摺動性や歯車のバックラッシュ力の設定によっては、この範囲に限るものではない。
【0023】
図7は第一歯車1(固定側ギア)と第二歯車2(可動側ギア)の傾斜面同士1(c)、2(c)が接触している様子を示す模式図である。
【0024】
この図では第一歯車1の一つの歯面1(a)と第二歯車2の一つの歯面2(a)が、第一歯車1と第二歯車2の両方に噛み合う駆動力を付与するための駆動歯車(第三歯車)の歯面間(図中点線部)に挟み込まれ噛み合っている状態のときの、連結機構の部分を示すものである。
【0025】
ここで、駆動歯車の歯のピッチ誤差から生じるバックラッシュ変動により第二歯車2の歯面2(a)が受ける力をW、第二歯車2が第一歯車1から受ける抗力をN、傾斜面間の摩擦力をF、静止摩擦係数をμ、傾斜面の傾斜角度をθ(deg)、第二歯車2が動こうとする力をPとすると、釣合いの条件から以下の式が求まる。
N=W×COS(θ)
F=μN
=W×SIN(θ)−F
ここで、仮にW=100g、μ=0.1、θ=45degとすると、力P
=100×SIN(45)−0.1×100×COS(45)=63.64(g)
となり、この値P=63.64gの分力が第二歯車2を回転させる力となる。このPの分力が大きい程、回転し易い条件となる事は説明するまでもないが、ここで、上記条件にて摩擦係数μを0.3とするとP=49.50gとなり、傾斜面間の摩擦係数μを低減させると回転し易くなる事が確認できる。
【0026】
そこで、本実施例では第一歯車1の傾斜面1(c)の形状を図8〜図9に示す様に構成し、摩擦力の低減を図っている。図8において、第1の歯車1傾斜面1(c)には長手方向に略半円筒形状の稜線部1(f)を形成している。ここで、この傾斜面1(c)と対向して配置され摺動する傾斜面2(c)は図4に示す様な平面的な面で構わない。この様な構成のもと、圧縮コイルバネ5の付勢力により、互いの摺動面としての略半円筒形状の稜線部1(f)と傾斜面2(c)が当接して歯車間に回転力を与える事となる。この時、略半円筒形状の稜線部1(f)が傾斜面2(c)と接触する構成となり、接触する部分が少なくなり非常に摩擦抵抗の少ない状態で回転可能な状態となる。
【0027】
図9も同様に摩擦抵抗を低減させる構成であり、傾斜面1(c)には局所的に複数に渡り略半球形状の突起部1(g)が形成されている。これにより、略半球形状の突起部1(g)の球R先端部分が傾斜面2(c)と接触する構成となり、非常に摩擦抵抗の少ない状態で回転可能な状態となる。
【0028】
ここで発生する回転力はスラスト受け板6を介して圧縮コイルバネ5によりバランスする状態となる。しかし、本実施例では圧縮コイルバネ5による付勢力を簡単に変更できる様に、回転軸には止め輪4を取り付ける溝部を数箇所に配置させ、所望の付勢力を与える事が可能な構成になっている。
【0029】
このような構成にすることで、第一歯車と第二歯車を用いてシザーズギア機構を形成することができる。即ち、駆動歯車の少なくとも一の歯面が第一歯車の位置の歯面と第二歯車の一の歯面とにそれぞれ接触して挟まれることになり、歯車が噛み合うことによるバックラッシュを除去することができる。
なお、本実施例では、第一歯車と第二歯車のそれぞれの内面には、永久磁石が設けられており、回転方向における第一歯車の歯面に対する第二歯車の歯面の位相が大きく変動し難い構成にしている。しかし、永久磁石を設ける構成であっても、駆動歯車の歯面と第一歯車の歯面と第二歯車の歯面との位置関係によっては、第二歯車の第一歯車に対する位置は変動可能としている。
【0030】
また、本実施例では、シザーズギア機構は、駆動力が伝達される側に配置される駆動伝達経路の構成あったが、駆動力を伝達する側に配置する駆動伝達経路の構成であっても、本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0031】
なお、本実施例では、傾斜面をそれぞれの歯車に設ける構成であったが、傾斜面は少なくとも一方の歯車に設けられていい。即ち、一方の歯車にのみ、傾斜面を設ける構成の場合には、他方の歯車には、傾斜面と接触する接触部があればよく、接触部の形状は傾斜面に限定されるものではない。
【0032】
(第2の実施例)
次に、本発明での第2実施例を説明する。第2実施例においては、第1実施例に対して第二歯車の構成を変更したものである。その変更した構成について、説明する。
【0033】
図10は第2実施例の歯車対の斜視図であり、図11は第二歯車の斜視図、図12は歯車対の側面図である。
【0034】
次に本構成で組み上げた歯車対の回転力発生の仕組みを、図10〜図12を用いて説明する。
【0035】
図10において、符号7は第1実施例と同様な第1の歯車、符号8は図11に示す様にスラスト板バネ10が歯車側面に一体的に設けられた第二歯車である。第二歯車には駆動伝達を行う歯面8(a)と側面には後述するスラスト板バネを位置決め取り付ける突起部8(b)が複数設けられている。符号9は第一歯車7と圧入により嵌め込まれ一体的に回転する回転軸、符号10はスラスト板バネで位置決め穴10(a)と、付勢力を与える為に予め所定量変形させた腕部10(b)が複数箇所にわたり設けられ、第二歯車8の側面に一体的に取り付けられている。腕部10(b)の一部には摺動抵抗を低減させる為の突起部10(c)を有し、この突起部10(c)がスラスト受け板11の側面と当接して、所定量の付勢力が第二歯車8にかかる様に構成されている。尚、スラスト受け板11は不図示の部品にて位置決めされており、回転軸9のスラスト方向(回転軸方向)には動かない構成となっている。
【0036】
本実施例では第二歯車8の材料にはPOM等の可撓性材料を使用しており、一方、スラスト板バネ10は板バネ材料として好適な板厚0.1〜0.3mmのリン青銅板やバネ用ステンレス板を使用している。その為、歯車成形時にインサート成形により一体的にスラスト板バネを形成する事が可能となる。又、第二歯車8を更にバネ性の良好な可撓性材料で構成すれば、スラスト板バネ10も必要とせず、付勢力を発生させるバネとしての腕部を一体的に形成する事も可能であることは言うまでもない。
【0037】
この様に、第2実施例では第二歯車の片寄せを板バネを用いて行う事で、回転軸のバネによるスペースが少なくなり、より小型のシザーズギア機構を提供することが可能となる。そして、画像形成装置に限らず、小型電子機器の駆動機構に対しても適した形態とすることができる。
【0038】
図13は、本実施の形態に係る駆動伝達装置を備えた第1の実施例に係る画像形成装置の構成を説明する図である。なお、本実施例においては、本実施の形態に係る駆動伝達装置をシートの搬送系に使用している。
【0039】
図13において、20は画像形成装置、21は画像形成装置本体である。この画像形成装置本体21の上部には原稿載置台としてのプラテンガラス31に載置された原稿30を読み取る画像読み取り部22が設けられている。
【0040】
この画像読み取り部22には、原稿を照明するハロゲンランプ又は蛍光灯等の光源32、光源32からの光をレンズ33により結像し、カラー色分解画像信号を得るCCD34を備えている。そして、CCD34により得られたカラー色分解画像信号は、不図示の増幅回路を経て、ビデオ処理ユニットにて処理を施され、後述するレーザ露光光学系38に伝送される。
【0041】
一方、画像形成装置本体21には画像形成部23、給紙カセット43に収納されたシートSを給送するシート給送部24、シート給送部24から給送されたシートを搬送するシート搬送系を構成するシート搬送部25、定着部44等が設けられている。画像形成部23には、矢印方向に回転自在な像担持体である感光体ドラム35を有する。また、感光ドラム35を除電するための前露光ランプ36、感光ドラム35を帯電するコロナ帯電器37を有する。感光ドラム上のトナーを記録材に転写するための転写装置41、感光ドラム上のトナーを除去するクリーニング装置42、感光ドラム上の電位を検知する電位センサ39が設けられている。また、画像形成部23には、樹脂と顔料を基体としたイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色トナーを用いて、後述するように感光体ドラム上に形成された静電潜像を現像する4個の現像器40y,40c,40m,40Bkが設けられている。転写装置41は転写ドラム、転写帯電器、記録材を静電吸着させるための吸着帯電器と対向する吸着ローラ、内側帯電器、外側帯電器とを有する。そして、回転駆動される様に軸支持された転写ドラムの周面開口域には誘電体からなる記録材担持シートを円筒状に一体的に張設している。記録材担持シートは本実施例の装置ではポリカーボネートフィルム等の誘電体シートを使用している。
【0042】
なお、図13において、38はレーザ露光光学系であり、このレーザ露光光学系38は不図示のレーザドライバ、レーザドライバからのレーザ光を水平走査させるポリゴンミラー等を備えている。
【0043】
次に、このような構成の複写機20の画像形成動作について説明する。
【0044】
画像読み取り部22より原稿画像が読み取られると、画像読み取り部22からイエロー、シアン、マゼンタまたはブラックのカラー色分解画像信号がレーザ露光光学系38に送られる。そして、この画像信号に基づきレーザ露光光学系38からレーザ光がそれぞれの分解色ごとに出力され、このレーザ光は感光体ドラム35を走査する。
【0045】
なお、このとき感光体ドラム35は、予めコロナ帯電器37により所定極性、所定電圧に帯電されており、レーザ光が照射されることによって表面に静電潜像が形成される。次に、複数の現像器40y,40c,40m,40Bkにより、選択された色のトナー像が形成される。
【0046】
ここで、フルカラーモードの場合には、例えば1色目としてイエローの静電潜像を現像するためにイエロー現像器40yが感光体ドラム35と対向する位置に配置され、このイエロー現像器40yにより、1色目のイエロートナー像が感光体ドラム上に形成される。この後、イエロートナー像が転写された感光体ドラム35は次のトナー像が形成転写されるよう回転する。なお、この間、次の指定カラーの現像器が感光体ドラム35に対向する位置に移動し、次の静電潜像を現像する準備をする。こうして、フルカラーモードでは所定画像数のトナー画像が転写され終わるまで、静電潜像形成・現像・転写を繰り返す。
【0047】
一方、不図示の制御装置は、所定のタイミングでシート給送部24を駆動し、給紙カセット43からシートSを給送する。この後、給送されたシートSはシート搬送部25により、レジストローラ46まで搬送された後、レジストローラ46により斜行が補正され、さらにタイミングが合わされて感光体ドラム35と転写装置41とにより構成される転写部に送られる。
【0048】
次に、転写部に送られたシートSは、転写部において感光体ドラム上のフルカラーのトナー像が転写される。そして、このようにして4色のトナー像の転写が終了すると、シートSを転写装置41から不図示の分離爪、分離押し上げコロ及び分離帯電器の作用によって分離して定着器44まで搬送する。この後、定着器44により加熱及び加圧されることにより、シートSに未定着転写画像が永久定着され、このように画像が定着されたシートSは排紙トレイ45に排出される。
【0049】
なお、シートSに転写した後、感光体ドラム上に残ったトナーはクリーニング器42により、クリーニングされ、このようにクリーニング器42にて残トナーがクリーニングされた後、感光体ドラム35は再び画像形成工程に供される。
【0050】
ここで、本実施例に係る複写機20では、ファーストコピー時間の短縮及び画像形成時にシート間隔を狭くするため、シート搬送部25によるレジストローラ46までのシート搬送速度は、画像形成速度(レジストローラの搬送速度)の2倍以上の速度としている。
【0051】
このため、シート搬送系を構成するシート搬送部25は、シートカセット43に対応して駆動部である第1及び第2駆動モータ47,48を設けている。そして、第1及び第2駆動モータ47,48は、シートSをレジストローラ46に搬送するまでは高回転で駆動され、シートSがレジストローラ46に達した後は、画像形成速度(低回転)で駆動されるように駆動されている。
【0052】
なお、本実施例のように、2個(複数個)の駆動モータ47,48を配置するシート搬送部25において、高回転側の回転数が低回転側の回転数の2倍以上の値の場合、低回転時のモータのトルクは必要トルクに対して数倍の値となる。
【0053】
このようなトルクの余った状態でのモータ駆動の場合、歯車列にバックラッシュが存在している場合には、モータ駆動時の振動及び歯車同士の歯面が叩き合う音が大きくなる。そして、特に第1及び第2駆動モータ47,48が画像形成部23に近い場合には、音だけではなく振動によって画像形成へのピッチムラ等への悪影響が生じる場合がある。
【0054】
しかし、このようなシート搬送部25においては、本発明の駆動伝達装置を用いることにより、このような不具合を改善することができる。
【0055】
図14は、このような本発明の駆動伝達装置を用いたシート搬送部25の駆動部の構成を示す斜視図である。
【0056】
図14において、49は給紙カセット43(上段)から搬送されたシートをレジストローラ46まで搬送する第1給紙ローラ対であり、駆動ローラ49a及び圧接ローラ49bから構成されている。50は、第1給紙ローラ対49の下方に配置され、給紙カセット43(下段)から搬送されたシートをレジストローラ46まで搬送する第2給紙ローラ対であり、駆動ローラ50a及び圧接ローラ50bから構成されている。51〜54,54aは給紙カセット43から搬送されたシートを導き、移動規制を行うための搬送ガイドである。
【0057】
55、56は第1及び第2駆動モータ47,48の回転軸部に圧入された駆動歯車(第三歯車)であるピニオン歯車、57、58は駆動ローラ49a及び駆動ローラ50aの軸部に固定され一体的に回転する第一歯車である駆動歯車である。そして、この駆動歯車57,58の内周面には、永久磁石が固定されている。
【0058】
59、60はバックラッシュを除去するために駆動歯車57,58に対して回転自在に取り付けられた第二歯車であるバックラッシュ除去歯車である。なお、本実施例において、駆動歯車57,58及びバックラッシュ除去歯車59,60を摺動性の良好なポリアセタール系の樹脂で形成し、ピニオン歯車55,56をPPS等に代表されるエンジニアリングプラスチックス樹脂で形成している。
【0059】
そして、このバックラッシュ除去歯車59,60の内周面には、永久磁石が固定されており、且つ、その位相は駆動歯車57,58に設けられた永久磁石とずらして配置されている。この結果、駆動歯車57,58とバックラッシュ除去歯車59,60との間には、回転方向に付勢力が働くようになる。これにより、歯車の回転伝達誤差及びピニオン歯車55,56に直接伝わる駆動モータ47,48の振動を低減させることができ、歯車の振動或いは騒音の伝達を減少させることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施例においては、シート搬送部25に本発明の歯車装置を用いることにより、組立作業性を損なう事なく歯車駆動時の振動を低減できるとともに、歯車単部品も安価なので低コストな複写機を提供する事が可能となる。なお、本実施例ではシートの搬送精度を向上させる目的から、給紙ローラ対49,50にそれぞれ独立して駆動モータ47,48を配置させた構成をとっているが、歯車列を構成して同一の駆動モータで構成できる事は言うまでもない。
【0061】
また、本実施利では、シート搬送部に本発明の駆動伝達装置を用いる構成であったが、像担持体である感光ドラム等に駆動力を伝達する駆動伝達装置に本発明の構成を採用しても、本発明の効果を発揮することができる。
【0062】
図15は、本実施の形態に係る駆動伝達装置を備えた第2の実施例に係る装置としての撮像装置である撮像素子を備えた電子カメラの構成を説明する図である。なお、本実施例においては、本実施の形態に係る駆動伝達装置をカメラ鏡筒のズーム駆動部に使用している。また、図15において、(a)は非使用時のいわゆる沈胴位置での鏡筒断面図であり、(b)は動作状態での鏡筒断面図である。
【0063】
図15において、61は鏡筒ユニットの基部であるベースで、固定筒62、カバー63と共にネジ止め等で固定されて、鏡筒ユニットの構造体を形成する。64は第1レンズ65を保持している第1鏡筒であり、第1鏡筒64の外周側面には、先端にテーパ部を持つフォロア部64aが突出形成されている。また、第1鏡筒64の前面には、環状のキャップ66が接着等により固定されている。
【0064】
67は第2レンズ68を保持している第2鏡筒であり、第2鏡筒67の外周側面には、先端にテーパ部を持つフォロア部67aが突出形成されている。69は第3レンズ70を保持している第3鏡筒であり、ガイドバー71により光軸方向に移動可能に案内されると共に軸方向の位置は、その腕部69aに設けられ、スクリュー72と回転自在に係合する不図示のナットにより規制されている。
【0065】
なお、スクリュー72は、マグネット73と一体的に設けられており、第3鏡筒69の不図示のナットの雌ネジ部と螺合する雄ネジ部を有している。また、このスクリュー72の一端部は、ベース61の軸受部61aに回転可能に嵌合し、他端部は、ベース61に固定されたキャップ74に回転可能に嵌合している。
【0066】
75はヨークで、マグネット73と対向する位置に配置されており、不図示のコイルに通電されることにより、回転駆動力を発生する。76はLPF(ローパスフィルタ)で、ベース61に接着等により固定されている。77は撮像素子で、ベース61にネジ止め固定される保持板78に接着等により固定保持されている。79はPCBフレキで、撮像素子77で光電変換された画像信号を不図示の信号処理回路に供給する。
【0067】
固定筒62の外周部には、駆動環80が回転可能に嵌合しており、さらに駆動環80の外周部には一部に歯車部80aが形成されており、この駆動環80は、モータ81及び減速歯車83を介して回転駆動される。さらに、この駆動環80の歯車部80aは、固定筒62の内周部に移動カム環84が嵌合し、その内周に更に直進ガイド筒85が嵌合している。移動カム環84の外周部には、駆動ピン86が圧入固定されており、また、移動カム環84の外周部にはテーパ部を有するフォロアピン87が突設されている。
【0068】
駆動ピン86は、固定筒62の穴部62aを貫通して駆動環80の内周側に設けられた溝部80bに嵌合している。また、フォロアピン87は、その先端テーパ部が固定筒62の内周に設けられたテーパカム溝62bに摺接している。
【0069】
このような構成において、駆動環80が回転駆動されると、駆動ピン86を介して移動カム環84が固定筒62のテーパカム溝62bに沿って回転しながら光軸方向にも移動する。このとき直進ガイド筒85は、移動カム環84の光軸方向の移動に追従して光軸方向にのみ移動する。
【0070】
第1鏡筒64及び第2鏡筒67は、それぞれのフォロア部64a,67aを介して移動カム環84と直進ガイド筒85の相対運動に伴って光軸方向に移動する。このカムの軌跡に沿って使用状態への繰り出し及び変倍操作を行うように構成されている。
【0071】
ここで、本実施例においては、駆動歯車である歯車部80aと、歯車部80aにより回転する減速歯車83とにより構成される歯車装置に本発明の駆動伝達装置を用いている。即ち、本実施例においては、減速歯車83を、既述した図1、図10等に示すような2つの歯車から構成することにより、歯車に噛合う時のバックラッシュを除去することで駆動時に生じる振動を低減させている。
【0072】
なお、本実施例において、歯車材料に関しては第1の実施例と同様に、歯車部80aの材料を摺動性の良好なポリアセタール系の樹脂で形成している。また、モータ軸側の減速歯車83(駆動側歯車とバックラッシュ除去歯車)の材料をPPS等に代表されるエンジニアリングプラスチックス樹脂で形成している。これにより、歯車の回転伝達誤差及びモータ軸の減速歯車83に直接伝わるモータ振動を低減させて、歯車の振動或いは騒音の伝達を減少させている。
【0073】
上記構成により、付勢手段としてのバネによる回転軸方向からの付勢力を可動側ギアの回転力に効率よく変換し、歯面から受ける力をギア全体に回転力として均一に分散させる事ができるので、噛合うギアのバックラッシュ変動に円滑に追従する事が可能となる。その結果、歯車の加工誤差によるガタを吸収でき、歯面のあばれも低減し高精度な回転伝達と騒音低減を図る事ができる。
【0074】
又、従来例(図18)では歯数に応じた接触面(摺動面)を持つ事より可動側ギア回転時の摩擦が増大する。しかし、本発明では固定側ギア又は可動側ギアに設けた傾斜面の少なくとも一方に略半円筒形状又は略半球形状の突起部を当接領域に設ける事で摩擦力を小さくする事が可能となり設計自由度も広くなる。
【0075】
更に、固定側ギア及び可動側ギアに設けた傾斜面の角度を35〜55degの範囲に設定する事により、バネによる回転軸方向の付勢力を可動側ギアの回転力に効率よく変換する事ができる。更に、可動側ギアの材料を可撓性樹脂で形成する事で可動側ギアの側面に弾性変形可能な腕部を一体成形若しくは金属板バネ等をインサート成形することが可能となる。その結果、別部品としてのバネ部材を必要とせずに簡単な構成でギア間のバックラッシュを低減させることができる。
【0076】
更に、本発明では駆動モータ及び歯車列の部品点数を増やす事無く、組立時においても従来以上に簡単な作業で組込みを行う事ができるので、安定した装置を供給する事が可能になる。
【符号の説明】
【0077】
1、7 第一歯車
2、8 第二歯車
1(a)、2(a) 歯車の歯面
1(b)、2(b) 円筒部
1(c)、2(c) 傾斜面
1(f) 略半円筒形状の稜線部
1(g) 略半球形状の突起部
3、9 回転軸
4 止め輪
5 圧縮コイルバネ
6、11 スラスト受け板
10 スラスト板バネ
10(a) 位置決め穴
10(b) 腕部
10(c) 突起部
20 複写機
25 シート搬送部
47、48 第1及び第2駆動モータ
55、56 ピニオン歯車
57、58 駆動歯車
59、60 バックラッシュ除去歯車
80(a) 歯車部
83 減速歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な回転軸と、前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸と一体で回転する第一歯車と、前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸に対して回転可能な第二歯車と、前記第一歯車と前記第二歯車とに噛み合うように配置され、駆動伝達経路を形成する第三歯車と、前記第二歯車に対向する前記第一歯車の内面に設けられ、前記第一歯車と前記第二歯車とを連結するため第一連結部と前記第一歯車に対向する前記第二歯車の内面に設けられ、前記第一連結部と連結する第二連結部とを備えた連結機構と、を有する駆動伝達機構において、
前記第一歯車或いは前記第二歯車の少なくとも一方の歯車の外面側から他方の歯車に向かう付勢力を付与する付勢手段と、を有し、前記第一連結部或いは前記第二連結部の少なくとも一方の連結部は傾斜面が設けられ、前記傾斜面が他方の連結部と接触することで前記第二歯車の回転方向において前記第二歯車が前記三歯車を付勢することを特徴とする駆動伝達機構。
【請求項2】
前記傾斜面と接触する前記他方の連結部には第二傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達機構。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記回転軸の回転方向において複数設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の駆動伝達機構。
【請求項4】
前記第一連結部は、円筒部を有し、前記傾斜面は円筒部の表面に対して垂直となるように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の駆動伝達機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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