駆動回路および静電型電気音響変換システム
【課題】人体が静電型電気音響変換器の電極に触れても感電しないようにする。
【解決手段】発振器140から出力された正弦波の信号は導電膜50U,50Lに供給される。音響信号は、アンプ部130で増幅され、変圧器110で昇圧されて静電型スピーカの電極20U,20Lに出力される。導電膜50U,50Lに人体が近づくと、コンデンサC1に掛かる電圧が増加する。コンデンサC1に掛かる電圧は増幅回路210で増幅されて制御部230で測定される。制御部230は、オペアンプ131の出力端子の電圧値が予め定められた閾値を超えると、スイッチSW1〜SW3が開の状態を維持するように制御する。これにより、音響信号の静電型スピーカ1への出力が停止される。
【解決手段】発振器140から出力された正弦波の信号は導電膜50U,50Lに供給される。音響信号は、アンプ部130で増幅され、変圧器110で昇圧されて静電型スピーカの電極20U,20Lに出力される。導電膜50U,50Lに人体が近づくと、コンデンサC1に掛かる電圧が増加する。コンデンサC1に掛かる電圧は増幅回路210で増幅されて制御部230で測定される。制御部230は、オペアンプ131の出力端子の電圧値が予め定められた閾値を超えると、スイッチSW1〜SW3が開の状態を維持するように制御する。これにより、音響信号の静電型スピーカ1への出力が停止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電型電気音響変換器及び静電型電気音響変換器に係る回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているコンデンサ型のヘッドホンは、固定極に電圧を印加する成極電圧出力部がヘッドホンの筐体内部に収納されている。ヘッドホン外部に成極電圧出力部があると、ヘッドホンと成極電圧出力部とを接続するケーブルが必要となる。この場合、ケーブルを接続する端子に人体が触れてしまうと感電する虞がある。特許文献1に開示されたヘッドホンでは、成極電圧出力部がヘッドホンの筐体内部にある。このため、ヘッドホンと成極電圧出力部とをユーザがケーブルで接続する必要がなく、感電する虞が低くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−41569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているヘッドホンでは、固定極に高電圧が印加されているため、固定極に人体が触れると感電する虞がある。特許文献1の発明おいては、固定極と成極電圧出力部との間に人体が触れて感電する可能性が低いものの、固定極に触れて感電することについては、何ら対策がなされていない。
なお、固定極と振動板と備える構成は、コンデンサ型のマイクロフォンとしても用いることができる。マイクロフォンとして用いる場合には、振動板に到達した音に対応した信号を固定極から得ることができるが、マイクロフォンとして用いた場合においても、スピーカの場合と同様に感電の虞がある。
【0005】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、その目的は、人体が静電型電気音響変換器の電極に触れても感電しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明は、入力される音響信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段で増幅された音響信号を昇圧する昇圧手段と、前記昇圧手段で昇圧された音響信号を静電型スピーカの固定極へ出力する出力手段と、予め定められた振幅及び周波数の信号を生成する信号生成手段と、一端に前記信号生成手段が生成した信号が入力され、他端は、前記固定極を挟んで前記静電型スピーカの振動体と対向する導電膜に接続されたコンデンサと、前記コンデンサに掛かる電圧を測定する測定手段と、前記測定手段で測定した電圧が予め定められた閾値を超えた場合、前記固定極への前記音響信号の出力を停止する制御手段とを有する駆動回路を提供する。
【0007】
本発明においては、前記制御手段は、前記増幅手段から前記昇圧手段への前記音響信号の供給を遮断することにより、前記固定極への前記音響信号の出力を停止する構成であってもよい。
【0008】
また、本発明は、導電性を有する振動体と、前記振動体と間隔をあけて対向する固定極と、前記固定極を挟んで前記振動体と対向し、前記固定極と間隔を空けて配置され、導電性を有する導電膜とを有する静電型スピーカと、上記のいずれかの構成を備えた駆動回路を備えた静電型電気音響変換システムを提供する。
【0009】
また、本発明は、静電型マイクロフォンの固定極から出力された信号から音響信号を生成する音響信号生成手段と、予め定められた振幅及び周波数の信号を生成する信号生成手段と、一端に前記信号生成手段が生成した信号が入力され、他端は、前記静電型マイクロフォンの固定極を挟んで前記静電型マイクロフォンの振動体と対向する導電膜に接続されたコンデンサと、前記コンデンサに掛かる電圧を測定する測定手段と、前記測定手段で測定した電圧が予め定められた閾値を超えた場合、前記振動体への電圧の印加を停止する制御手段とを有する駆動回路を提供する。
【0010】
また、本発明は、導電性を有する振動体と、前記振動体と間隔をあけて対向する固定極と、前記固定極を挟んで前記振動体と対向し、前記固定極と間隔を空けて配置され、導電性を有する導電膜とを有する静電型マイクロフォンと、静電型マイクロフォンの固定極から出力された信号から音響信号を生成する音響信号生成手段と、予め定められた振幅及び周波数の信号を生成する信号生成手段と、一端に前記信号生成手段が生成した信号が入力され、他端は、前記静電型マイクロフォンの固定極を挟んで前記静電型マイクロフォンの振動体と対向する導電膜に接続されたコンデンサと、前記コンデンサに掛かる電圧を測定する測定手段と、前記測定手段で測定した電圧が予め定められた閾値を超えた場合、前記振動体への電圧の印加を停止する制御手段とを有する駆動回路を備えた静電型電気音響変換システムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、人体が静電型電気音響変換器の電極に触れても感電しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る静電型スピーカの外観図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】静電型スピーカ1の分解図。
【図4】静電型スピーカ1に係る電気的構成を示した図。
【図5】発振器140から大地までの経路の等価回路の図。
【図6】発振器140から大地までの経路の等価回路の図。
【図7】静電型マイクロフォン2に係る電気的構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る静電型スピーカ1(静電型電気音響変換器)の外観図、図2は、静電型スピーカ1のA−A線断面図である。また、図3は、静電型スピーカ1の分解図、図4は、静電型スピーカ1の電気的構成を示した図である。なお、図においては、直交するX軸、Y軸およびZ軸で方向を示しており、静電型スピーカ1を正面から見たときの左右方向をX軸の方向、奥行き方向をY軸の方向、高さ方向をZ軸の方向としている。また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは図面の裏から表に向かう矢印を意味するものとする。また、図中、「○」の中に「×」が記載されたものは図面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
【0014】
図に示したように、静電型スピーカ1は、振動体10、電極20U,20L、弾性部材30U,30L、スペーサ40U,40L、導電膜50U,50L及び保護部材60U,60Lを有している。なお、本実施形態においては、電極20Uと電極20Lの構成は同じであり、弾性部材30Uと弾性部材30Lの構成は同じである。このため、これらの部材において符号の末尾が「U」の部材と符号の末尾が「L」の部材とを区別する必要が特に無い場合は、「L」および「U」などの記載を省略する。また、スペーサ40Uとスペーサ40Lの構成は同じであり、導電膜50Uと導電膜50Lの構成は同じであり、保護部材60Uと保護部材60Lの構成は同じである。このため、これらの部材においても符号の末尾が「U」の部材と符号の末尾が「L」の部材とを区別する必要が特に無い場合は、「L」および「U」などの記載を省略する。また、図中の各部材の寸法は、各部材の形状や位置関係を容易に理解できるように実際の寸法とは異ならせてある。
【0015】
(静電型スピーカ1の各部の構成)
まず、静電型スピーカ1を構成する各部について説明する。Z軸上の点から見て矩形の振動体10は、PET(polyethylene terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)またはPP(polypropylene:ポリプロピレン)などの絶縁性および柔軟性を有する合成樹脂のフィルム(絶縁層)を基材とし、フィルムの一方の面に導電性のある金属を蒸着して導電膜(導電層)を形成したシート状の構成となっている。なお、本実施形態においては、導電膜は、フィルムの一方の面に形成されているが、フィルムの両面に形成されていてもよい。また、振動体10は、導電性を有する金属を圧延して膜状にした構成であってもよい。
【0016】
弾性部材30は、本実施形態においては不織布であって電気を通さず空気および音の通過が可能となっており、その形状はZ軸上の点から見て矩形となっている。また、弾性部材30は、弾性を有しており、外部から力を加えられると変形し、外部から加えられた力が取り除かれると元の形状に戻る。なお、弾性部材30は、絶縁性があり、音が透過し、弾性がある部材であればよく、中綿に熱を加えて圧縮したもの、織られた布、絶縁性を有する合成樹脂を海綿状にしたものなどであってもよい。なお、本実施形態においては、弾性部材30のX軸方向の長さは振動体10のX軸方向の長さより長く、弾性部材30のY軸方向の長さは振動体10のY軸方向の長さより長くなっている。
【0017】
スペーサ40は、本実施形態においては不織布であって電気を通さず(絶縁性を有し)空気および音の通過が可能となっており、その形状はZ軸上の点から見て矩形となっている。また、弾性部材30は、弾性を有している。なお、本実施形態においては、スペーサ40は、弾性部材30と同じ素材となっているが、電気を通さず、空気及び音の通過が可能であれば弾性を備えていなくてもよい。また、本実施形態においては、スペーサ40は、X軸方向の長さとY軸方向の長さが弾性部材30と同じとなっている。
【0018】
電極(固定極)20は、PETまたはPPなどの絶縁性を有する合成樹脂のフィルム(絶縁層)を基材とし、フィルムの一方の面に導電性のある金属を蒸着して導電膜(導電層)を形成した構成となっている。電極20は、Z軸上の点から見て矩形となっており、表面から裏面に貫通する孔を複数有しており、空気および音の通過が可能となっている。なお、図面においては、この孔の図示を省略している。なお、本実施形態においては、電極20のX軸方向の長さとY軸方向の長さは弾性部材30と同じとなっている。また、振動体10と同様に電極20についても、導電性を有する金属を圧延して膜状にした構成であってもよい。
【0019】
導電膜50は、PETまたはPPなどの絶縁性を有する合成樹脂のフィルム(絶縁層)を基材とし、フィルムの一方の面に導電性のある金属を蒸着して導電膜(導電層)を形成した構成となっており、表面から裏面に貫通した複数の孔が設けられている。なお、本実施形態では、振動体10が振動することにより静電型スピーカ1から音が放射されるが、導電膜50に孔を設けない場合には、静電型スピーカ1が放射する音の周波数特性に影響を与えないように厚みを10μm程度とするのが好ましい。また、振動体10と同様に導電膜50についても、導電性を有する金属を圧延して膜状にした構成であってもよい。
【0020】
保護部材60は、絶縁性を有する布である。保護部材60は、Z軸上の点から見て矩形となっており、空気及び音の通過が可能となっている。なお、本実施形態においては、保護部材60のX軸方向の長さとY軸方向の長さは弾性部材30と同じとなっている。
【0021】
(静電型スピーカ1の構造)
次に静電型スピーカ1の構造について説明する。静電型スピーカ1においては、振動体10は、弾性部材30Uの下面と弾性部材30Lの上面との間に配置されている。なお、振動体10は、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて弾性部材30Uと弾性部材30Lに接着されており、接着剤が塗布された部分より内側は弾性部材30Uと弾性部材30Lに固着されていない状態となっている。また、弾性部材30Uと弾性部材30L同士も、縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて互いに固着されている。
【0022】
電極20Uは、弾性部材30Uの上面に接着されている。また、電極20Lは、弾性部材30Lの下面に接着されている。なお、電極20Uは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて弾性部材30Uに接着されており、電極20Lは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて弾性部材30Lに接着されている。なお、電極20は、接着剤が塗布された部分より内側は弾性部材30に固着されていない状態となっている。また、電極20Uは、導電膜のある側が弾性部材30Uに接しており、電極20Lは、導電膜のある側が弾性部材30Lに接している。
【0023】
スペーサ40Uは、電極20Uの上面に接着されている。また、スペーサ40Lは、電極20Lの下面に接着されている。なお、スペーサ40Uは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて電極20Uに接着されており、スペーサ40Lは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて電極20Lに接着されている。なお、スペーサ40は、接着剤が塗布された部分より内側は電極20に固着されていない状態となっている。
【0024】
導電膜50Uは、スペーサ40Uの上面に接着されている。また、導電膜50Lは、スペーサ40Lの下面に接着されている。なお、導電膜50Uは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されてスペーサ40Uに接着されており、導電膜50Lは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されてスペーサ40Lに接着されている。なお、導電膜50は、接着剤が塗布された部分より内側はスペーサ40に固着されていない状態となっている。
【0025】
保護部材60Uは、導電膜50Uの上面に接着されている。また、保護部材60Lは、導電膜50Lの下面に接着されている。なお、保護部材60Uは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて導電膜50Uに接着されており、保護部材60Lは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて導電膜50Lに接着されている。なお、保護部材60は、接着剤が塗布された部分より内側は導電膜50に固着されていない状態となっている。
【0026】
(静電型スピーカ1の電気的構成)
次に、静電型スピーカ1に係る電気的構成について説明する。図4に示したように、静電型スピーカ1には、アンプ部130、変圧器110、振動体10に対して直流バイアスを与えるバイアス電源120、発振器140及び増幅回路210を備えた駆動回路100が接続される。
【0027】
電極20Uは、変圧器110の二次側の端子T1に接続され、電極20Lは、変圧器110の二次側のもう一方の端子T2に接続される。端子T1と端子T2は、静電型スピーカ1へ音響信号を出力する出力手段として機能する。また、振動体10は、抵抗器R1を介してスイッチSW3に接続される。スイッチSW3は、バイアス電源120に接続されている。変圧器110の中点の端子T3は、抵抗器R2を介してアンプ部130の基準電位であるグラウンドGND1に接続されている。
【0028】
アンプ部130には音響信号が入力される。アンプ部130は、入力された音響信号を増幅し、増幅された音響信号を出力する増幅手段である。アンプ部130は、音響信号を出力するための端子TA1,TA2を有しており、端子TA1は、スイッチSW1に接続され、端子TA2は、スイッチSW2に接続されている。スイッチSW1は、抵抗器R3を介して変圧器110の一次側の端子T4に接続され、スイッチSW2は、抵抗器R4を介して変圧器110の一次側のもう一方の端子T5に接続されている。
【0029】
発振器140は、予め定められた振幅で且つ予め定められた一定の周波数の信号を生成する信号生成手段であり、コンデンサC1に接続されている。発振器140は、例えば振幅が1Vの正弦波の信号を生成して出力する。なお、発振器140から出力される信号の振幅は1Vに限定されるものではなく1Vを超えるもの又は1V未満のものであってもよい。
【0030】
増幅回路210は、人体が導電膜50に近づいたことを検知するために設けられた回路である。具体的には、増幅回路210は、コンデンサC1に掛かる電圧を増幅する回路であり、オペアンプ131、コンデンサC1及び抵抗器R5〜R8で構成されている。
コンデンサC1において発振器140に接続されている側(一端)は、抵抗器R6が接続されており、コンデンサC1において発振器140に接続されている側と反対側(他端)は、抵抗器R5と導電膜50U,50Lが接続されている。なお、コンデンサC1の静電容量は、人体の静電容量と同じ静電容量に設定されている。また、抵抗器R5においてコンデンサC1に接続されている側と反対側は、オペアンプ131の反転入力端子に接続され、抵抗器R6においてコンデンサC1に接続されている側と反対側は、オペアンプ131の非反転入力端子に接続されている。また、抵抗器R7の一端は、オペアンプ131の非反転入力端子に接続され、他端は、増幅回路210のグラウンドGND2に接続されている。なお、グラウンドGND2は、本実施形態においては、大地に接続されているのが好ましい。また、抵抗器R8の一端は、オペアンプ131の反転入力端子に接続され、抵抗器R8の他端は、オペアンプ131の出力端子に接続されている。
【0031】
オペアンプ131の出力端子は、制御部230に接続されている。コンデンサC1に掛かる電圧が変化すると、オペアンプ131の出力端子の電圧がコンデンサC1に掛かる電圧に応じて変化する。具体的には、コンデンサC1に掛かる電圧が増加すると、オペアンプ131の出力端子の電圧も増加し、コンデンサC1に掛かる電圧が減少すると、オペアンプ131の出力端子の電圧も減少する。
【0032】
制御部230は、スイッチSW1〜SW3に接続されている。制御部230は、オペアンプ131の出力端子の電圧値を測定する。制御部230は、測定した電圧が予め定められた閾値以下である場合にはスイッチSW1〜SW3が閉となるようにスイッチSW1〜SW3を制御する。また、制御部230は、測定した電圧が予め定められた閾値を超えた場合にはスイッチSW1〜SW3が開となるようにスイッチSW1〜SW3を制御し、スイッチSW1〜SW3が開の状態を維持する。つまり、制御部230は、スイッチSW1〜SW3を制御する制御手段としても機能する。また、増幅回路210は、コンデンサC1に掛かる電圧を増幅し、制御部230は、増幅回路210の出力を測定しており、増幅回路210と制御部230の組み合わせでコンデンサC1に掛かる電圧を測定している。つまり、増幅回路210と制御部230は、コンデンサC1に掛かる電圧を測定する測定手段として機能する。
【0033】
(静電型スピーカ1の動作)
次に、静電型スピーカ1の動作について説明する。アンプ部130に交流の音響信号が入力されると、入力された音響信号が増幅されて変圧器110の一次側に供給される。そして、供給された電圧によって電極20Uと電極20Lとの間に電位差が生じると、電極20Uと電極20Lとの間にある振動体10には、電極20Uと電極20Lのいずれかの側へ引き寄せられるような静電力が働く。
【0034】
具体的には、昇圧手段である変圧器110で昇圧されて端子T2から出力される音響信号は、変圧器110で昇圧されて端子T1から出力される音響信号とは信号の極性が逆となる。端子T1からプラスの音響信号が出力され、端子T2からマイナスの音響信号が出力されると、電極20Uにはプラスの電圧が印加され、電極20Lにはマイナスの電圧が印加される。振動体10にはバイアス電源120によりプラスの電圧が印加されているため、振動体10は、プラスの電圧が印加されている電極20Uとの間の静電引力が弱まる一方、マイナスの電圧が印加されている電極20Lとの間の静電引力が強くなるため、振動体10に加わる静電引力の差に応じて電極20L側に吸引力が働き、電極20L側(Z方向と反対方向)へ変位する。
【0035】
また、端子T1からマイナスの音響信号が出力され、端子T2からプラスの音響信号が出力されると、電極20Uにはマイナスの電圧が印加され、電極20Lにはプラスの電圧が印加される。振動体10にはバイアス電源120によりプラスの電圧が印加されているため、振動体10は、プラスの電圧が印加されている電極20Lとの間の静電引力は弱まり、マイナスの電圧が印加されている電極20Uとの間の静電引力は強まる。振動体10に加わる静電引力の差に応じて、電極20U側に吸引力が働き電極20U側(Z軸方向)へ変位する。
【0036】
このように、振動体10が音響信号に応じて図のZ軸の正の方向とZ軸の負の方向に変位し(撓み)、その変位方向が逐次変わることによって振動となり、その振動状態(振動数、振幅、位相)に応じた音波が振動体10から発生する。発生した音波は、音響透過性を有する弾性部材30、電極20、スペーサ40、導電膜50及び保護部材60を通過して静電型スピーカ1の外部に音として放射される。
【0037】
次に、人体が導電膜50Uに近づいた時の増幅回路210の動作について説明する。図5は、人体を静電容量がCmのコンデンサC3とし、人体と導電膜50Uとの間を静電容量がCdのコンデンサC2とした時の、発振器140から大地までの経路の等価回路である。図5に示したように、本実施形態では、発振器140から大地までの間にコンデンサC1〜C3が直列に接続された構成となる。ここで、人体と導電膜50Uとの間の距離が長く、Cd≒0pFである場合、コンデンサC1に掛かる電圧VcはVc≒0Vとなる。コンデンサC1に掛かる電圧がVc≒0Vであると、オペアンプ131の出力端子の電圧Voは、Vo≒0Vとなる。制御部230は、オペアンプ131の出力端子の電圧値を測定し、測定した電圧値が予め定められた閾値未満である場合には、スイッチSW1〜SW3が閉となるように各スイッチを制御する。
【0038】
次に、例えば人体の手の指が導電膜50Uに近づいていくと、コンデンサC2のCd(静電容量)が増加する。コンデンサC1〜C3は直列接続であるため、人体が導電膜50Uに近づいてコンデンサC2のCd(静電容量)が増加していくと、コンデンサC1に掛かる電圧のピーク値も増加していく。コンデンサC1に掛かる電圧のピーク値が増加すると、オペアンプ131の出力端子の電圧のピーク値も増加することとなる。このように、人体と導電膜50Uとの間の距離に応じてオペアンプ131の出力端子の電圧は変化するため、換言すると、オペアンプ131の出力端子の電圧値のピーク値は、人体と導電膜50Uとの間の距離を表している。
【0039】
制御部230は、オペアンプ131の出力端子の電圧値を測定し、測定した電圧値が予め定められた閾値を超えたことを検知すると、スイッチSW1〜SW3が開の状態を維持するように測定結果に応じて各スイッチを制御する。ここで、電圧値のピーク値は、人体と導電膜との間の距離を表しているため、換言すると、人体と導電膜50Uとの間の距離が予め定められた距離より近づくと、スイッチSW1〜SW3が開の状態を維持するように各スイッチを制御していると言うことができる。なお、人体が導電膜50Uに近づいていくと、発振器140から出力される信号の電圧の振幅が1Vであり、コンデンサC1の静電容量が人体の静電容量のCmと同じに設定されているため、コンデンサC1に掛かる電圧のピーク値は、0.5Vに近づいていく。このため、閾値は、本実施形態では0.5V未満に設定される。スイッチSW1〜SW3が開にされると、変圧器110から音響信号が静電型スピーカ1に供給されなくなり、バイアス電源120からも振動体10に対してバイアス電圧が印加されなくなる。つまり、静電型スピーカ1へ電流が流れなくなるため人体が感電することを防止できる。なお、上記では、人体が導電膜50Uに近づいた時の動作について説明したが、人体が導電膜50Lに近づいた時も上記と同様の動作となる。
【0040】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。
【0041】
上述した実施形態においては、制御部230はスイッチSW3を制御しているが、スイッチSW3を設けず、スイッチSW1とスイッチSW2のみを制御するようにしてもよい。
上述した実施形態においては、スイッチSW1を端子T1と接続し、スイッチSW2を端子T2と接続してもよい。この場合、スイッチSW1において端子T1と接続されている側と反対側の端子が電極20Uに接続され、スイッチSW2において端子T2と接続されている側と反対側の端子が電極20Lに接続される。
【0042】
上述した実施形態においては、アンプ部130を駆動する図示せぬ電源とアンプ部130との間にスイッチを設け、制御部230は、入力された信号の電圧が閾値を超えた場合には、このスイッチを開として電源からアンプ部130への電力供給を中止するようにしてもよい。この構成においても、アンプ部130の駆動が停止されて音響信号が静電型スピーカ1へ供給されなくなるので、人体が感電することを防止できる。
【0043】
図5の等価回路では、導電膜50Uと電極20Uとの間の静電容量を無視した回路となっているが、導電膜50Uと電極20Uとの間を静電容量がCfのコンデンサC4とすると、図6に示したように、コンデンサC2,C3に対してコンデンサC4が並列な回路となる。この場合、例えば10MΩ以上の抵抗器R9でグラウンドGND1とグラウンドGND2とを接続し、増幅回路210のグラウンドGND2とアンプ部130の基準電位であるグラウンドGND1とを絶縁してもよい。
【0044】
上述した実施形態においては、静電型スピーカ1はプッシュプル型であるが、静電型スピーカは、一つの電極20で振動体10を振動させるシングル型の静電型スピーカであってもよい。シングル型の場合、電極20において振動体10と対向する面側と反対側に導電膜50を配置し、静電型スピーカを駆動する駆動回路に増幅回路210を設ける構成にすれば、上述した実施形態と同様に感電を防止できる。
【0045】
上述した実施形態では、コンデンサC1は、導電膜50Lと導電膜50Uの両方に接続されているが、どちらか一方の導電膜にのみ接続される構成であってもよい。
また、上述した実施形態では、静電型スピーカ1は、保護部材60を備えているが、保護部材60を備えない構成であってもよい。
【0046】
上述した実施形態においては、電極、振動体、弾性部材及び導電膜を積層した構成を、音響信号を音に変換するスピーカとしているが、この構成は、音を音響信号に変換するマイクロフォン(静電型電気音響変換器)とすることも可能である。
図7は、本変形例に係る静電型マイクロフォン2と、静電型マイクロフォン2で収音された音を表す音響信号を生成する音響信号生成回路200の構成を示した図である。本変形例においては、静電型マイクロフォン2は、前述の静電型スピーカ1と同じ部材を備えているため、静電型マイクロフォン2を構成する部材には、静電型スピーカ1の各部材と同じ符号を付し、その説明を省略する。また、音響信号生成回路200の構成は、信号が流れる方向が駆動回路100と異なる以外は、駆動回路100と同じであるため、音響信号生成回路200が備える部品には駆動回路100が備える部品と同じ符号を付し、各部品の説明を省略する。なお、変圧器110の変圧比及び各抵抗器の抵抗値は適宜調整される。
【0047】
静電型マイクロフォン2においては、導体である電極20と導体である振動体10は距離をおいて向かいあっており、電極20と振動体10は平行平板の導体によって構成されたコンデンサとして機能している。振動体10にはバイアス電圧が印加されているため、静電型マイクロフォン2に音が到達していない状態においては、このコンデンサに一定の電荷が溜まった状態となる。
静電型マイクロフォン2に音が到達した場合、到達した音によって振動体10が振動する。振動体10が振動すると、振動体10と電極20U,20Lとの間の距離が変わるため、振動体10と電極20との間の静電容量に変化が生じる。
【0048】
例えば、振動体10が電極20U側に変位すると、電極20Uと振動体10との間の距離が短くなり、電極20Uと振動体10との間の静電容量が大きくなる。また、電極20Lと振動体10との間の距離が長くなり、電極20Lと振動体10との間の静電容量が小さくなる。このように静電容量が変化すると、電極20Uと振動体10との電位差が小さくなるように電極20Uの電位が変化し、電極20Lと振動体10との電位差が大きくなるように電極20Lの電位が変化する。ここで、電極20Uと電極20Lとの間で電位差が生じるため、変圧器110の二次側コイルには電流が流れる。
【0049】
また、振動体10が電極20L側に変位すると、電極20Lと振動体10との間の距離が短くなり、電極20Lと振動体10との間の静電容量が大きくなる。また、電極20Uと振動体10との間の距離が長くなり、電極20Uと振動体10との間の静電容量が小さくなる。すると、電極20Lと振動体10との電位差が小さくなるように電極20Lの電位が変化し、電極20Uと振動体10との電位差が大きくなるように電極20Uの電位が変化する。ここで、電極20Uと電極20Lとの間で電位差が生じ、変圧器110の二次側コイルには、振動体10が電極20Uの方向に変位したときとは逆の方向に電流が流れる。
【0050】
変圧器110の二次側コイルに電流が流れると、この電流に対応して変圧器110の一次側コイルにも電流が流れる。一次側コイルに流れた信号は、アンプ部130で増幅され、増幅された信号が静電型マイクロフォン2で収音された音を表す音響信号としてアンプ部130から出力される。つまり、変圧器110とアンプ部130は電極20から出力された信号から音響信号を生成する音響信号生成手段として機能する。
【0051】
なお、本変形例においては、変圧器110のインピーダンスが低い場合には、静電型マイクロフォン2の負荷容量の影響により、低い周波数における周波数特性が低下する場合がある。この場合、変圧器110に替えてインピーダンスの高いアンプを電極20U,20Lに接続し、周波数特性の低下を抑えるようにしてもよい。この場合、このアンプが電極20から出力された信号から音響信号を生成する音響信号生成手段として機能する。
【0052】
駆動回路100や音響信号生成回路200においては、変圧器110の端子T3は、グラウンドGNDに接続されているが、直流電源を接続し、電極20にバイアス電圧を加えるようにしてもよい。また、この構成の音響信号生成回路200においては、スイッチSW1を端子T1と電極20Uとの間に配置し、スイッチSW2を端子T2と電極20Lとの間に配置してもよい。そして、このスイッチSW1,SW2を制御部230で制御してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…静電型スピーカ、2…静電型マイクロフォン、10…振動体、20,20U,20L…電極、30,30U,30L…弾性部材、40,40U,40L…スペーサ、50,50U,50L…導電膜、60,60U,60L…保護部材、100…駆動回路、110…変圧器、120…バイアス電源、130…アンプ部、140…発振器、200…音響信号生成回路、210…増幅回路、230…制御部、SW1〜SW3…スイッチ、R1〜R9…抵抗器
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電型電気音響変換器及び静電型電気音響変換器に係る回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているコンデンサ型のヘッドホンは、固定極に電圧を印加する成極電圧出力部がヘッドホンの筐体内部に収納されている。ヘッドホン外部に成極電圧出力部があると、ヘッドホンと成極電圧出力部とを接続するケーブルが必要となる。この場合、ケーブルを接続する端子に人体が触れてしまうと感電する虞がある。特許文献1に開示されたヘッドホンでは、成極電圧出力部がヘッドホンの筐体内部にある。このため、ヘッドホンと成極電圧出力部とをユーザがケーブルで接続する必要がなく、感電する虞が低くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−41569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているヘッドホンでは、固定極に高電圧が印加されているため、固定極に人体が触れると感電する虞がある。特許文献1の発明おいては、固定極と成極電圧出力部との間に人体が触れて感電する可能性が低いものの、固定極に触れて感電することについては、何ら対策がなされていない。
なお、固定極と振動板と備える構成は、コンデンサ型のマイクロフォンとしても用いることができる。マイクロフォンとして用いる場合には、振動板に到達した音に対応した信号を固定極から得ることができるが、マイクロフォンとして用いた場合においても、スピーカの場合と同様に感電の虞がある。
【0005】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、その目的は、人体が静電型電気音響変換器の電極に触れても感電しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明は、入力される音響信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段で増幅された音響信号を昇圧する昇圧手段と、前記昇圧手段で昇圧された音響信号を静電型スピーカの固定極へ出力する出力手段と、予め定められた振幅及び周波数の信号を生成する信号生成手段と、一端に前記信号生成手段が生成した信号が入力され、他端は、前記固定極を挟んで前記静電型スピーカの振動体と対向する導電膜に接続されたコンデンサと、前記コンデンサに掛かる電圧を測定する測定手段と、前記測定手段で測定した電圧が予め定められた閾値を超えた場合、前記固定極への前記音響信号の出力を停止する制御手段とを有する駆動回路を提供する。
【0007】
本発明においては、前記制御手段は、前記増幅手段から前記昇圧手段への前記音響信号の供給を遮断することにより、前記固定極への前記音響信号の出力を停止する構成であってもよい。
【0008】
また、本発明は、導電性を有する振動体と、前記振動体と間隔をあけて対向する固定極と、前記固定極を挟んで前記振動体と対向し、前記固定極と間隔を空けて配置され、導電性を有する導電膜とを有する静電型スピーカと、上記のいずれかの構成を備えた駆動回路を備えた静電型電気音響変換システムを提供する。
【0009】
また、本発明は、静電型マイクロフォンの固定極から出力された信号から音響信号を生成する音響信号生成手段と、予め定められた振幅及び周波数の信号を生成する信号生成手段と、一端に前記信号生成手段が生成した信号が入力され、他端は、前記静電型マイクロフォンの固定極を挟んで前記静電型マイクロフォンの振動体と対向する導電膜に接続されたコンデンサと、前記コンデンサに掛かる電圧を測定する測定手段と、前記測定手段で測定した電圧が予め定められた閾値を超えた場合、前記振動体への電圧の印加を停止する制御手段とを有する駆動回路を提供する。
【0010】
また、本発明は、導電性を有する振動体と、前記振動体と間隔をあけて対向する固定極と、前記固定極を挟んで前記振動体と対向し、前記固定極と間隔を空けて配置され、導電性を有する導電膜とを有する静電型マイクロフォンと、静電型マイクロフォンの固定極から出力された信号から音響信号を生成する音響信号生成手段と、予め定められた振幅及び周波数の信号を生成する信号生成手段と、一端に前記信号生成手段が生成した信号が入力され、他端は、前記静電型マイクロフォンの固定極を挟んで前記静電型マイクロフォンの振動体と対向する導電膜に接続されたコンデンサと、前記コンデンサに掛かる電圧を測定する測定手段と、前記測定手段で測定した電圧が予め定められた閾値を超えた場合、前記振動体への電圧の印加を停止する制御手段とを有する駆動回路を備えた静電型電気音響変換システムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、人体が静電型電気音響変換器の電極に触れても感電しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る静電型スピーカの外観図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】静電型スピーカ1の分解図。
【図4】静電型スピーカ1に係る電気的構成を示した図。
【図5】発振器140から大地までの経路の等価回路の図。
【図6】発振器140から大地までの経路の等価回路の図。
【図7】静電型マイクロフォン2に係る電気的構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る静電型スピーカ1(静電型電気音響変換器)の外観図、図2は、静電型スピーカ1のA−A線断面図である。また、図3は、静電型スピーカ1の分解図、図4は、静電型スピーカ1の電気的構成を示した図である。なお、図においては、直交するX軸、Y軸およびZ軸で方向を示しており、静電型スピーカ1を正面から見たときの左右方向をX軸の方向、奥行き方向をY軸の方向、高さ方向をZ軸の方向としている。また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは図面の裏から表に向かう矢印を意味するものとする。また、図中、「○」の中に「×」が記載されたものは図面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
【0014】
図に示したように、静電型スピーカ1は、振動体10、電極20U,20L、弾性部材30U,30L、スペーサ40U,40L、導電膜50U,50L及び保護部材60U,60Lを有している。なお、本実施形態においては、電極20Uと電極20Lの構成は同じであり、弾性部材30Uと弾性部材30Lの構成は同じである。このため、これらの部材において符号の末尾が「U」の部材と符号の末尾が「L」の部材とを区別する必要が特に無い場合は、「L」および「U」などの記載を省略する。また、スペーサ40Uとスペーサ40Lの構成は同じであり、導電膜50Uと導電膜50Lの構成は同じであり、保護部材60Uと保護部材60Lの構成は同じである。このため、これらの部材においても符号の末尾が「U」の部材と符号の末尾が「L」の部材とを区別する必要が特に無い場合は、「L」および「U」などの記載を省略する。また、図中の各部材の寸法は、各部材の形状や位置関係を容易に理解できるように実際の寸法とは異ならせてある。
【0015】
(静電型スピーカ1の各部の構成)
まず、静電型スピーカ1を構成する各部について説明する。Z軸上の点から見て矩形の振動体10は、PET(polyethylene terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)またはPP(polypropylene:ポリプロピレン)などの絶縁性および柔軟性を有する合成樹脂のフィルム(絶縁層)を基材とし、フィルムの一方の面に導電性のある金属を蒸着して導電膜(導電層)を形成したシート状の構成となっている。なお、本実施形態においては、導電膜は、フィルムの一方の面に形成されているが、フィルムの両面に形成されていてもよい。また、振動体10は、導電性を有する金属を圧延して膜状にした構成であってもよい。
【0016】
弾性部材30は、本実施形態においては不織布であって電気を通さず空気および音の通過が可能となっており、その形状はZ軸上の点から見て矩形となっている。また、弾性部材30は、弾性を有しており、外部から力を加えられると変形し、外部から加えられた力が取り除かれると元の形状に戻る。なお、弾性部材30は、絶縁性があり、音が透過し、弾性がある部材であればよく、中綿に熱を加えて圧縮したもの、織られた布、絶縁性を有する合成樹脂を海綿状にしたものなどであってもよい。なお、本実施形態においては、弾性部材30のX軸方向の長さは振動体10のX軸方向の長さより長く、弾性部材30のY軸方向の長さは振動体10のY軸方向の長さより長くなっている。
【0017】
スペーサ40は、本実施形態においては不織布であって電気を通さず(絶縁性を有し)空気および音の通過が可能となっており、その形状はZ軸上の点から見て矩形となっている。また、弾性部材30は、弾性を有している。なお、本実施形態においては、スペーサ40は、弾性部材30と同じ素材となっているが、電気を通さず、空気及び音の通過が可能であれば弾性を備えていなくてもよい。また、本実施形態においては、スペーサ40は、X軸方向の長さとY軸方向の長さが弾性部材30と同じとなっている。
【0018】
電極(固定極)20は、PETまたはPPなどの絶縁性を有する合成樹脂のフィルム(絶縁層)を基材とし、フィルムの一方の面に導電性のある金属を蒸着して導電膜(導電層)を形成した構成となっている。電極20は、Z軸上の点から見て矩形となっており、表面から裏面に貫通する孔を複数有しており、空気および音の通過が可能となっている。なお、図面においては、この孔の図示を省略している。なお、本実施形態においては、電極20のX軸方向の長さとY軸方向の長さは弾性部材30と同じとなっている。また、振動体10と同様に電極20についても、導電性を有する金属を圧延して膜状にした構成であってもよい。
【0019】
導電膜50は、PETまたはPPなどの絶縁性を有する合成樹脂のフィルム(絶縁層)を基材とし、フィルムの一方の面に導電性のある金属を蒸着して導電膜(導電層)を形成した構成となっており、表面から裏面に貫通した複数の孔が設けられている。なお、本実施形態では、振動体10が振動することにより静電型スピーカ1から音が放射されるが、導電膜50に孔を設けない場合には、静電型スピーカ1が放射する音の周波数特性に影響を与えないように厚みを10μm程度とするのが好ましい。また、振動体10と同様に導電膜50についても、導電性を有する金属を圧延して膜状にした構成であってもよい。
【0020】
保護部材60は、絶縁性を有する布である。保護部材60は、Z軸上の点から見て矩形となっており、空気及び音の通過が可能となっている。なお、本実施形態においては、保護部材60のX軸方向の長さとY軸方向の長さは弾性部材30と同じとなっている。
【0021】
(静電型スピーカ1の構造)
次に静電型スピーカ1の構造について説明する。静電型スピーカ1においては、振動体10は、弾性部材30Uの下面と弾性部材30Lの上面との間に配置されている。なお、振動体10は、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて弾性部材30Uと弾性部材30Lに接着されており、接着剤が塗布された部分より内側は弾性部材30Uと弾性部材30Lに固着されていない状態となっている。また、弾性部材30Uと弾性部材30L同士も、縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて互いに固着されている。
【0022】
電極20Uは、弾性部材30Uの上面に接着されている。また、電極20Lは、弾性部材30Lの下面に接着されている。なお、電極20Uは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて弾性部材30Uに接着されており、電極20Lは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて弾性部材30Lに接着されている。なお、電極20は、接着剤が塗布された部分より内側は弾性部材30に固着されていない状態となっている。また、電極20Uは、導電膜のある側が弾性部材30Uに接しており、電極20Lは、導電膜のある側が弾性部材30Lに接している。
【0023】
スペーサ40Uは、電極20Uの上面に接着されている。また、スペーサ40Lは、電極20Lの下面に接着されている。なお、スペーサ40Uは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて電極20Uに接着されており、スペーサ40Lは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて電極20Lに接着されている。なお、スペーサ40は、接着剤が塗布された部分より内側は電極20に固着されていない状態となっている。
【0024】
導電膜50Uは、スペーサ40Uの上面に接着されている。また、導電膜50Lは、スペーサ40Lの下面に接着されている。なお、導電膜50Uは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されてスペーサ40Uに接着されており、導電膜50Lは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されてスペーサ40Lに接着されている。なお、導電膜50は、接着剤が塗布された部分より内側はスペーサ40に固着されていない状態となっている。
【0025】
保護部材60Uは、導電膜50Uの上面に接着されている。また、保護部材60Lは、導電膜50Lの下面に接着されている。なお、保護部材60Uは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて導電膜50Uに接着されており、保護部材60Lは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて導電膜50Lに接着されている。なお、保護部材60は、接着剤が塗布された部分より内側は導電膜50に固着されていない状態となっている。
【0026】
(静電型スピーカ1の電気的構成)
次に、静電型スピーカ1に係る電気的構成について説明する。図4に示したように、静電型スピーカ1には、アンプ部130、変圧器110、振動体10に対して直流バイアスを与えるバイアス電源120、発振器140及び増幅回路210を備えた駆動回路100が接続される。
【0027】
電極20Uは、変圧器110の二次側の端子T1に接続され、電極20Lは、変圧器110の二次側のもう一方の端子T2に接続される。端子T1と端子T2は、静電型スピーカ1へ音響信号を出力する出力手段として機能する。また、振動体10は、抵抗器R1を介してスイッチSW3に接続される。スイッチSW3は、バイアス電源120に接続されている。変圧器110の中点の端子T3は、抵抗器R2を介してアンプ部130の基準電位であるグラウンドGND1に接続されている。
【0028】
アンプ部130には音響信号が入力される。アンプ部130は、入力された音響信号を増幅し、増幅された音響信号を出力する増幅手段である。アンプ部130は、音響信号を出力するための端子TA1,TA2を有しており、端子TA1は、スイッチSW1に接続され、端子TA2は、スイッチSW2に接続されている。スイッチSW1は、抵抗器R3を介して変圧器110の一次側の端子T4に接続され、スイッチSW2は、抵抗器R4を介して変圧器110の一次側のもう一方の端子T5に接続されている。
【0029】
発振器140は、予め定められた振幅で且つ予め定められた一定の周波数の信号を生成する信号生成手段であり、コンデンサC1に接続されている。発振器140は、例えば振幅が1Vの正弦波の信号を生成して出力する。なお、発振器140から出力される信号の振幅は1Vに限定されるものではなく1Vを超えるもの又は1V未満のものであってもよい。
【0030】
増幅回路210は、人体が導電膜50に近づいたことを検知するために設けられた回路である。具体的には、増幅回路210は、コンデンサC1に掛かる電圧を増幅する回路であり、オペアンプ131、コンデンサC1及び抵抗器R5〜R8で構成されている。
コンデンサC1において発振器140に接続されている側(一端)は、抵抗器R6が接続されており、コンデンサC1において発振器140に接続されている側と反対側(他端)は、抵抗器R5と導電膜50U,50Lが接続されている。なお、コンデンサC1の静電容量は、人体の静電容量と同じ静電容量に設定されている。また、抵抗器R5においてコンデンサC1に接続されている側と反対側は、オペアンプ131の反転入力端子に接続され、抵抗器R6においてコンデンサC1に接続されている側と反対側は、オペアンプ131の非反転入力端子に接続されている。また、抵抗器R7の一端は、オペアンプ131の非反転入力端子に接続され、他端は、増幅回路210のグラウンドGND2に接続されている。なお、グラウンドGND2は、本実施形態においては、大地に接続されているのが好ましい。また、抵抗器R8の一端は、オペアンプ131の反転入力端子に接続され、抵抗器R8の他端は、オペアンプ131の出力端子に接続されている。
【0031】
オペアンプ131の出力端子は、制御部230に接続されている。コンデンサC1に掛かる電圧が変化すると、オペアンプ131の出力端子の電圧がコンデンサC1に掛かる電圧に応じて変化する。具体的には、コンデンサC1に掛かる電圧が増加すると、オペアンプ131の出力端子の電圧も増加し、コンデンサC1に掛かる電圧が減少すると、オペアンプ131の出力端子の電圧も減少する。
【0032】
制御部230は、スイッチSW1〜SW3に接続されている。制御部230は、オペアンプ131の出力端子の電圧値を測定する。制御部230は、測定した電圧が予め定められた閾値以下である場合にはスイッチSW1〜SW3が閉となるようにスイッチSW1〜SW3を制御する。また、制御部230は、測定した電圧が予め定められた閾値を超えた場合にはスイッチSW1〜SW3が開となるようにスイッチSW1〜SW3を制御し、スイッチSW1〜SW3が開の状態を維持する。つまり、制御部230は、スイッチSW1〜SW3を制御する制御手段としても機能する。また、増幅回路210は、コンデンサC1に掛かる電圧を増幅し、制御部230は、増幅回路210の出力を測定しており、増幅回路210と制御部230の組み合わせでコンデンサC1に掛かる電圧を測定している。つまり、増幅回路210と制御部230は、コンデンサC1に掛かる電圧を測定する測定手段として機能する。
【0033】
(静電型スピーカ1の動作)
次に、静電型スピーカ1の動作について説明する。アンプ部130に交流の音響信号が入力されると、入力された音響信号が増幅されて変圧器110の一次側に供給される。そして、供給された電圧によって電極20Uと電極20Lとの間に電位差が生じると、電極20Uと電極20Lとの間にある振動体10には、電極20Uと電極20Lのいずれかの側へ引き寄せられるような静電力が働く。
【0034】
具体的には、昇圧手段である変圧器110で昇圧されて端子T2から出力される音響信号は、変圧器110で昇圧されて端子T1から出力される音響信号とは信号の極性が逆となる。端子T1からプラスの音響信号が出力され、端子T2からマイナスの音響信号が出力されると、電極20Uにはプラスの電圧が印加され、電極20Lにはマイナスの電圧が印加される。振動体10にはバイアス電源120によりプラスの電圧が印加されているため、振動体10は、プラスの電圧が印加されている電極20Uとの間の静電引力が弱まる一方、マイナスの電圧が印加されている電極20Lとの間の静電引力が強くなるため、振動体10に加わる静電引力の差に応じて電極20L側に吸引力が働き、電極20L側(Z方向と反対方向)へ変位する。
【0035】
また、端子T1からマイナスの音響信号が出力され、端子T2からプラスの音響信号が出力されると、電極20Uにはマイナスの電圧が印加され、電極20Lにはプラスの電圧が印加される。振動体10にはバイアス電源120によりプラスの電圧が印加されているため、振動体10は、プラスの電圧が印加されている電極20Lとの間の静電引力は弱まり、マイナスの電圧が印加されている電極20Uとの間の静電引力は強まる。振動体10に加わる静電引力の差に応じて、電極20U側に吸引力が働き電極20U側(Z軸方向)へ変位する。
【0036】
このように、振動体10が音響信号に応じて図のZ軸の正の方向とZ軸の負の方向に変位し(撓み)、その変位方向が逐次変わることによって振動となり、その振動状態(振動数、振幅、位相)に応じた音波が振動体10から発生する。発生した音波は、音響透過性を有する弾性部材30、電極20、スペーサ40、導電膜50及び保護部材60を通過して静電型スピーカ1の外部に音として放射される。
【0037】
次に、人体が導電膜50Uに近づいた時の増幅回路210の動作について説明する。図5は、人体を静電容量がCmのコンデンサC3とし、人体と導電膜50Uとの間を静電容量がCdのコンデンサC2とした時の、発振器140から大地までの経路の等価回路である。図5に示したように、本実施形態では、発振器140から大地までの間にコンデンサC1〜C3が直列に接続された構成となる。ここで、人体と導電膜50Uとの間の距離が長く、Cd≒0pFである場合、コンデンサC1に掛かる電圧VcはVc≒0Vとなる。コンデンサC1に掛かる電圧がVc≒0Vであると、オペアンプ131の出力端子の電圧Voは、Vo≒0Vとなる。制御部230は、オペアンプ131の出力端子の電圧値を測定し、測定した電圧値が予め定められた閾値未満である場合には、スイッチSW1〜SW3が閉となるように各スイッチを制御する。
【0038】
次に、例えば人体の手の指が導電膜50Uに近づいていくと、コンデンサC2のCd(静電容量)が増加する。コンデンサC1〜C3は直列接続であるため、人体が導電膜50Uに近づいてコンデンサC2のCd(静電容量)が増加していくと、コンデンサC1に掛かる電圧のピーク値も増加していく。コンデンサC1に掛かる電圧のピーク値が増加すると、オペアンプ131の出力端子の電圧のピーク値も増加することとなる。このように、人体と導電膜50Uとの間の距離に応じてオペアンプ131の出力端子の電圧は変化するため、換言すると、オペアンプ131の出力端子の電圧値のピーク値は、人体と導電膜50Uとの間の距離を表している。
【0039】
制御部230は、オペアンプ131の出力端子の電圧値を測定し、測定した電圧値が予め定められた閾値を超えたことを検知すると、スイッチSW1〜SW3が開の状態を維持するように測定結果に応じて各スイッチを制御する。ここで、電圧値のピーク値は、人体と導電膜との間の距離を表しているため、換言すると、人体と導電膜50Uとの間の距離が予め定められた距離より近づくと、スイッチSW1〜SW3が開の状態を維持するように各スイッチを制御していると言うことができる。なお、人体が導電膜50Uに近づいていくと、発振器140から出力される信号の電圧の振幅が1Vであり、コンデンサC1の静電容量が人体の静電容量のCmと同じに設定されているため、コンデンサC1に掛かる電圧のピーク値は、0.5Vに近づいていく。このため、閾値は、本実施形態では0.5V未満に設定される。スイッチSW1〜SW3が開にされると、変圧器110から音響信号が静電型スピーカ1に供給されなくなり、バイアス電源120からも振動体10に対してバイアス電圧が印加されなくなる。つまり、静電型スピーカ1へ電流が流れなくなるため人体が感電することを防止できる。なお、上記では、人体が導電膜50Uに近づいた時の動作について説明したが、人体が導電膜50Lに近づいた時も上記と同様の動作となる。
【0040】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。
【0041】
上述した実施形態においては、制御部230はスイッチSW3を制御しているが、スイッチSW3を設けず、スイッチSW1とスイッチSW2のみを制御するようにしてもよい。
上述した実施形態においては、スイッチSW1を端子T1と接続し、スイッチSW2を端子T2と接続してもよい。この場合、スイッチSW1において端子T1と接続されている側と反対側の端子が電極20Uに接続され、スイッチSW2において端子T2と接続されている側と反対側の端子が電極20Lに接続される。
【0042】
上述した実施形態においては、アンプ部130を駆動する図示せぬ電源とアンプ部130との間にスイッチを設け、制御部230は、入力された信号の電圧が閾値を超えた場合には、このスイッチを開として電源からアンプ部130への電力供給を中止するようにしてもよい。この構成においても、アンプ部130の駆動が停止されて音響信号が静電型スピーカ1へ供給されなくなるので、人体が感電することを防止できる。
【0043】
図5の等価回路では、導電膜50Uと電極20Uとの間の静電容量を無視した回路となっているが、導電膜50Uと電極20Uとの間を静電容量がCfのコンデンサC4とすると、図6に示したように、コンデンサC2,C3に対してコンデンサC4が並列な回路となる。この場合、例えば10MΩ以上の抵抗器R9でグラウンドGND1とグラウンドGND2とを接続し、増幅回路210のグラウンドGND2とアンプ部130の基準電位であるグラウンドGND1とを絶縁してもよい。
【0044】
上述した実施形態においては、静電型スピーカ1はプッシュプル型であるが、静電型スピーカは、一つの電極20で振動体10を振動させるシングル型の静電型スピーカであってもよい。シングル型の場合、電極20において振動体10と対向する面側と反対側に導電膜50を配置し、静電型スピーカを駆動する駆動回路に増幅回路210を設ける構成にすれば、上述した実施形態と同様に感電を防止できる。
【0045】
上述した実施形態では、コンデンサC1は、導電膜50Lと導電膜50Uの両方に接続されているが、どちらか一方の導電膜にのみ接続される構成であってもよい。
また、上述した実施形態では、静電型スピーカ1は、保護部材60を備えているが、保護部材60を備えない構成であってもよい。
【0046】
上述した実施形態においては、電極、振動体、弾性部材及び導電膜を積層した構成を、音響信号を音に変換するスピーカとしているが、この構成は、音を音響信号に変換するマイクロフォン(静電型電気音響変換器)とすることも可能である。
図7は、本変形例に係る静電型マイクロフォン2と、静電型マイクロフォン2で収音された音を表す音響信号を生成する音響信号生成回路200の構成を示した図である。本変形例においては、静電型マイクロフォン2は、前述の静電型スピーカ1と同じ部材を備えているため、静電型マイクロフォン2を構成する部材には、静電型スピーカ1の各部材と同じ符号を付し、その説明を省略する。また、音響信号生成回路200の構成は、信号が流れる方向が駆動回路100と異なる以外は、駆動回路100と同じであるため、音響信号生成回路200が備える部品には駆動回路100が備える部品と同じ符号を付し、各部品の説明を省略する。なお、変圧器110の変圧比及び各抵抗器の抵抗値は適宜調整される。
【0047】
静電型マイクロフォン2においては、導体である電極20と導体である振動体10は距離をおいて向かいあっており、電極20と振動体10は平行平板の導体によって構成されたコンデンサとして機能している。振動体10にはバイアス電圧が印加されているため、静電型マイクロフォン2に音が到達していない状態においては、このコンデンサに一定の電荷が溜まった状態となる。
静電型マイクロフォン2に音が到達した場合、到達した音によって振動体10が振動する。振動体10が振動すると、振動体10と電極20U,20Lとの間の距離が変わるため、振動体10と電極20との間の静電容量に変化が生じる。
【0048】
例えば、振動体10が電極20U側に変位すると、電極20Uと振動体10との間の距離が短くなり、電極20Uと振動体10との間の静電容量が大きくなる。また、電極20Lと振動体10との間の距離が長くなり、電極20Lと振動体10との間の静電容量が小さくなる。このように静電容量が変化すると、電極20Uと振動体10との電位差が小さくなるように電極20Uの電位が変化し、電極20Lと振動体10との電位差が大きくなるように電極20Lの電位が変化する。ここで、電極20Uと電極20Lとの間で電位差が生じるため、変圧器110の二次側コイルには電流が流れる。
【0049】
また、振動体10が電極20L側に変位すると、電極20Lと振動体10との間の距離が短くなり、電極20Lと振動体10との間の静電容量が大きくなる。また、電極20Uと振動体10との間の距離が長くなり、電極20Uと振動体10との間の静電容量が小さくなる。すると、電極20Lと振動体10との電位差が小さくなるように電極20Lの電位が変化し、電極20Uと振動体10との電位差が大きくなるように電極20Uの電位が変化する。ここで、電極20Uと電極20Lとの間で電位差が生じ、変圧器110の二次側コイルには、振動体10が電極20Uの方向に変位したときとは逆の方向に電流が流れる。
【0050】
変圧器110の二次側コイルに電流が流れると、この電流に対応して変圧器110の一次側コイルにも電流が流れる。一次側コイルに流れた信号は、アンプ部130で増幅され、増幅された信号が静電型マイクロフォン2で収音された音を表す音響信号としてアンプ部130から出力される。つまり、変圧器110とアンプ部130は電極20から出力された信号から音響信号を生成する音響信号生成手段として機能する。
【0051】
なお、本変形例においては、変圧器110のインピーダンスが低い場合には、静電型マイクロフォン2の負荷容量の影響により、低い周波数における周波数特性が低下する場合がある。この場合、変圧器110に替えてインピーダンスの高いアンプを電極20U,20Lに接続し、周波数特性の低下を抑えるようにしてもよい。この場合、このアンプが電極20から出力された信号から音響信号を生成する音響信号生成手段として機能する。
【0052】
駆動回路100や音響信号生成回路200においては、変圧器110の端子T3は、グラウンドGNDに接続されているが、直流電源を接続し、電極20にバイアス電圧を加えるようにしてもよい。また、この構成の音響信号生成回路200においては、スイッチSW1を端子T1と電極20Uとの間に配置し、スイッチSW2を端子T2と電極20Lとの間に配置してもよい。そして、このスイッチSW1,SW2を制御部230で制御してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…静電型スピーカ、2…静電型マイクロフォン、10…振動体、20,20U,20L…電極、30,30U,30L…弾性部材、40,40U,40L…スペーサ、50,50U,50L…導電膜、60,60U,60L…保護部材、100…駆動回路、110…変圧器、120…バイアス電源、130…アンプ部、140…発振器、200…音響信号生成回路、210…増幅回路、230…制御部、SW1〜SW3…スイッチ、R1〜R9…抵抗器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される音響信号を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段で増幅された音響信号を昇圧する昇圧手段と、
前記昇圧手段で昇圧された音響信号を静電型スピーカの固定極へ出力する出力手段と、
予め定められた振幅及び周波数の信号を生成する信号生成手段と、
一端に前記信号生成手段が生成した信号が入力され、他端は、前記固定極を挟んで前記静電型スピーカの振動体と対向する導電膜に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサに掛かる電圧を測定する測定手段と、
前記測定手段で測定した電圧が予め定められた閾値を超えた場合、前記固定極への前記音響信号の出力を停止する制御手段と
を有する駆動回路。
【請求項2】
前記制御手段は、前記増幅手段から前記昇圧手段への前記音響信号の供給を遮断することにより、前記固定極への前記音響信号の出力を停止すること
を特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
静電型マイクロフォンの固定極から出力された信号から音響信号を生成する音響信号生成手段と、
予め定められた振幅及び周波数の信号を生成する信号生成手段と、
一端に前記信号生成手段が生成した信号が入力され、他端は、前記静電型マイクロフォンの固定極を挟んで前記静電型マイクロフォンの振動体と対向する導電膜に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサに掛かる電圧を測定する測定手段と、
前記測定手段で測定した電圧が予め定められた閾値を超えた場合、前記振動体への電圧の印加を停止する制御手段と
を有する駆動回路。
【請求項4】
導電性を有する振動体と、
前記振動体と間隔をあけて対向する固定極と、
前記固定極を挟んで前記振動体と対向し、前記固定極と間隔を空けて配置され、導電性を有する導電膜と
を有する静電型スピーカと、
請求項1又は請求項2に記載の駆動回路
を備える静電型電気音響変換システム。
【請求項5】
導電性を有する振動体と、
前記振動体と間隔をあけて対向する固定極と、
前記固定極を挟んで前記振動体と対向し、前記固定極と間隔を空けて配置され、導電性を有する導電膜と
を有する静電型マイクロフォンと、
請求項3に記載の駆動回路
を備える静電型電気音響変換システム。
【請求項1】
入力される音響信号を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段で増幅された音響信号を昇圧する昇圧手段と、
前記昇圧手段で昇圧された音響信号を静電型スピーカの固定極へ出力する出力手段と、
予め定められた振幅及び周波数の信号を生成する信号生成手段と、
一端に前記信号生成手段が生成した信号が入力され、他端は、前記固定極を挟んで前記静電型スピーカの振動体と対向する導電膜に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサに掛かる電圧を測定する測定手段と、
前記測定手段で測定した電圧が予め定められた閾値を超えた場合、前記固定極への前記音響信号の出力を停止する制御手段と
を有する駆動回路。
【請求項2】
前記制御手段は、前記増幅手段から前記昇圧手段への前記音響信号の供給を遮断することにより、前記固定極への前記音響信号の出力を停止すること
を特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
静電型マイクロフォンの固定極から出力された信号から音響信号を生成する音響信号生成手段と、
予め定められた振幅及び周波数の信号を生成する信号生成手段と、
一端に前記信号生成手段が生成した信号が入力され、他端は、前記静電型マイクロフォンの固定極を挟んで前記静電型マイクロフォンの振動体と対向する導電膜に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサに掛かる電圧を測定する測定手段と、
前記測定手段で測定した電圧が予め定められた閾値を超えた場合、前記振動体への電圧の印加を停止する制御手段と
を有する駆動回路。
【請求項4】
導電性を有する振動体と、
前記振動体と間隔をあけて対向する固定極と、
前記固定極を挟んで前記振動体と対向し、前記固定極と間隔を空けて配置され、導電性を有する導電膜と
を有する静電型スピーカと、
請求項1又は請求項2に記載の駆動回路
を備える静電型電気音響変換システム。
【請求項5】
導電性を有する振動体と、
前記振動体と間隔をあけて対向する固定極と、
前記固定極を挟んで前記振動体と対向し、前記固定極と間隔を空けて配置され、導電性を有する導電膜と
を有する静電型マイクロフォンと、
請求項3に記載の駆動回路
を備える静電型電気音響変換システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−13058(P2013−13058A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−84037(P2012−84037)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
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