説明

駆動方法、駆動機構及び撮像装置

【課題】 撮像装置の手振れ補正機構に好適な、ステッピングモータを駆動源としたサーボ制御方式の駆動機構を提供すること。
【解決手段】 駆動機構は、所定の駆動パルスにより駆動されるステッピングモータ3と、前記駆動パルスの発生条件を制御する駆動パルス発生制御部4とを備える。前記駆動パルス発生制御部4には、所定のサンプリング周期S0〜S5が設定されている。この駆動パルス発生制御部4は、前記サンプリング周期S0〜S5毎に、それまでの駆動パルスの発生条件をリセットすると共に、次のサンプリング周期までのサンプリング間隔内における駆動パルス発生条件を定める演算を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータをサーボ制御方式で駆動させる駆動方法、ステッピングモータを有する駆動機構、及びそのような駆動機構を具備する撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種駆動機構の駆動源として、所定の駆動パルスにより駆動されるステッピングモータが汎用されている。前記ステッピングモータは、入力した駆動パルスをカウントすることにより駆動状態が把握できることから、フィードバック制御等が不要で制御構成が簡易な所謂オープンループ制御で駆動できるという利点がある。このようなステッピングモータの駆動方法として、例えば特許文献1には、所望の回転速度に応じたクロックパルスをステッピングモータに与えて速度制御を行う駆動方法が開示されている。
【0003】
一方、各種駆動機構の駆動制御方式として、制御目標値を設定し、この制御目標値の任意の変化に追従するように駆動制御を行うサーボ制御方式が汎用されている。そして特許文献2には、遠心濃縮機という用途において、前記ステッピングモータをサーボ制御(オープンループ制御)方式で駆動させることに関する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−41989号公報
【特許文献2】特開2000−93846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年デジタルカメラ等においては、その撮像系(鏡胴や撮像素子など)を手振れ等に応じて揺動駆動させる手振れ補正機構が付加されるケースが増えている。このような手振れ補正機構における駆動機構としては、ムービングコイルや圧電素子等を用いたアクチュエータを、フィードバック制御を伴う所謂クローズドループのサーボ制御で駆動させる機構が一般に採用されている。すなわち、オープンループ制御が可能なステッピングモータを用いた手振れ補正機構は未だ提案されておらず、また特許文献2にはオープンループ制御方式が開示されているとはいえ、例えば前記手振れ補正機構のように時々刻々目標位置が変化するような機構に対して如何にして適用すれば好適な駆動制御が行えるのか未だ知られていないのが実情である。
【0005】
従って本発明は、サーボ制御方式の駆動機構(方法)において、制御構成を簡易化できるオープンループ制御で駆動可能なステッピングモータを駆動源として選定し、これを例えば手振れ補正機構における駆動機構等として用いる場合に適正な制御を行うことができる駆動方法、駆動機構及びこれを用いた撮像装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動方法は、所定の駆動パルスにより駆動されるステッピングモータを、サーボ制御方式で駆動させる駆動方法であって、所定のサンプリング周期を設定すると共に、該サンプリング周期毎に、前記ステッピングモータを駆動させる駆動パルスの発生条件の設定を行うことを特徴とする。
【0007】
この方法によれば、所定のサンプリング周期毎に駆動パルスの発生条件が設定されることから、駆動パルスの発生条件はサンプリング周期毎にリセットされ、新たにステッピングモータの駆動条件が設定可能となる。従って、サーボ制御を行うにあたり、所定のサンプリング周期毎に最も適した駆動条件を判定しつつステッピングモータを駆動させることができるようになる。
【0008】
上記駆動方法において、前記サンプリング周期で制御目標情報を取得し、取得された前記制御目標情報に応じて、前記サンプリング周期毎に、前記ステッピングモータを駆動させる駆動パルスの発生条件の設定を行うようにすることが望ましい(請求項2)。この場合、前記制御目標情報を、前記ステッピングモータにより駆動される駆動対象物の位置情報とすることができる(請求項3)。
【0009】
図1は、このような駆動方法を概略的に示す模式的なブロック図である。ステッピングモータ3は、目標値に対して現在値(出力値)を追従させるサーボ制御方式で駆動され、且つ入力された駆動パルス数をカウントすることで駆動状態(現在値情報)が把握されるオープンループ制御で駆動されている。駆動パルス発生制御部4は、ステッピングモータ3を駆動させる駆動パルスの発生条件の設定を行うものである。
【0010】
このような構成において、任意に変位する目標値(例えば駆動対象物の位置情報)に対して所定のサンプリング周期t1〜t5が設定される。そして駆動パルス発生制御部4は、このサンプリング周期t1〜t5毎に制御目標情報を取得し、この制御目標情報に応じて、前記サンプリング周期t1〜t5毎に駆動パルス発生条件のリセットと新たな駆動パルス発生条件の設定を行う。つまり、サンプリング周期t1において、それまでのサンプリング間隔S0において設定されていた駆動パルス発生条件を、目標位置に到達したか否かに拘わらずリセットすると共に、次のサンプリング間隔S1における新たな駆動パルス発生条件の設定を行うものである。以下、サンプリング周期t2〜t5についても、同様な動作が実行される。従って、ステッピングモータ3の駆動条件をサンプリング周期t1〜t5毎に目標値の変位に応じて適宜設定可能となり、目標値に現在値を追従させるサーボ制御を的確に実行できるようになる。
【0011】
上記サンプリング周期t1〜t5は、所望の駆動速度や分解能及びステッピングモータの性能に応じて適宜設定される。また、サンプリング周期t1〜t5毎に設定される駆動パルス発生条件は、例えば各々のサンプリング間隔S1〜S5において発生させる駆動パルスの数やパルスレートなどである。なお、本発明においてはクローズドループ制御を除外するものではなく、この場合は別途位置検出センサ等を設け、この位置検出センサ等からサンプリング周期t1〜t5毎に制御目標情報と比較するための現在値情報を取得するようにすればよい。
【0012】
本発明の駆動機構は、所定の駆動パルスにより駆動されるステッピングモータと、前記駆動パルスの発生条件を制御する駆動パルス発生制御部とを備える駆動機構であって、前記駆動パルス発生制御部には、所定のサンプリング周期が設定されており、前記駆動パルス発生制御部は、前記サンプリング周期毎に、それまでの駆動パルスの発生条件をリセットすると共に、次のサンプリング周期までのサンプリング間隔内における駆動パルス発生条件を定める演算を行うことを特徴とする(請求項4)。
【0013】
この構成によれば、駆動パルス発生制御部により、設定されたサンプリング周期毎に駆動パルスの発生条件が、目標位置に到達したか否かに拘わらずリセットされると共に、次のサンプリング周期までのサンプリング間隔内における駆動パルス発生条件が設定され、新たにステッピングモータの駆動条件が設定されるようになる。従って、サーボ制御を行うにあたり、所定のサンプリング周期毎に最も適した駆動条件を駆動パルス発生制御部にて設定しつつステッピングモータを駆動させることができるようになる。
【0014】
上記構成において、ステッピングモータの制御目標情報を設定する制御情報設定部を備え、前記駆動パルス発生制御部は、前記制御情報設定部から前記サンプリング周期毎に制御目標情報を取得し、取得された前記制御目標情報に応じて、前記サンプリング間隔内における駆動パルス発生条件を定める演算を行う構成とすることが望ましい(請求項5)。この構成によれば、駆動パルス発生制御部は、取得された制御目標情報とステッピングモータの現在値情報とを比較し、その比較値情報に基づいて最適な駆動パルス発生条件を定める演算を行えるようになる。
【0015】
この場合、前記制御情報設定部により設定される制御目標情報が、前記ステッピングモータにより駆動される駆動対象物の位置情報であり、駆動パルス発生制御部は、前記駆動対象物の単位時間当たりの移動距離を制御する構成とすることができる(請求項6)。この構成によれば、駆動対象物の位置を目標位置に追従させるサーボ制御を、ステッピングモータを用いて的確に行えるようになる。
【0016】
上記請求項4〜6のいずれかの駆動機構において、前記駆動パルスの発生間隔を所定間隔に設定可能とするウェイト時間設定部を備え、前記ウェイト時間設定部は、第1のサンプリング間隔内において最後に発せられる駆動パルスと、前記第1のサンプリング間隔に続く第2のサンプリング間隔内において最初に発せられる駆動パルスとの発生間隔を、所定のウェイト時間に設定する構成とすることが望ましい(請求項7)。
【0017】
ステッピングモータに与える駆動パルスの周期が所定周期よりも短くなると、ロータが駆動パルスの周期に追い付かなくなり、ロータとステータと位置関係にずれが生じて正常に回転しなくなる脱調現象が生じる。本発明のように、所定のサンプリング周期毎に駆動パルスの発生条件を設定する構成とした場合、第1のサンプリング間隔において最後に発せられる駆動パルスと、これに続く第2のサンプリング間隔内において最初に発せられる駆動パルスとの発生間隔が短くなり、両者の間隔のみを捉えると、あたかも駆動パルスの周期が所定周期よりも短く設定された如き状態が惹起される場合があり得る。かかる状態が発生すると、脱調の危険性が生じることとなり、特にオープンループ制御を採用している場合は正常駆動状態へ復帰させることが困難となる。そこで、ウェイト時間設定部により所定のウェイト時間が設定される構成とすることで、第1のサンプリング間隔において最後に発せられる駆動パルスと、これに続く第2のサンプリング間隔内において最初に発せられる駆動パルスとの間隔が異常に近接し得ないようにし、脱調の発生を抑止できるようにしたものである。
【0018】
この構成において、前記ウェイト時間内に、前記駆動パルス発生制御部による駆動パルス発生条件を定める演算が行われるようにすることが望ましい(請求項8)。この構成によれば、前記ウェイト時間を活用して駆動パルス発生条件を定める演算が行われる構成であるので、演算時間がウェイト時間となることから実質的にサンプリング周期を短くすることができる。
【0019】
上記請求項4〜8のいずれかの駆動機構において、前記サンプリング周期が一定周期とされており、前記駆動パルス発生制御部は、個々のサンプリング間隔内において発生させる駆動パルス数を演算で求めて出力する構成とすることができる(請求項9)。この構成によれば、ステッピングモータの駆動状態(駆動速度)を、個々のサンプリング間隔内において発生させる駆動パルス数に依存させて制御させることが可能となる。
【0020】
上記請求項4〜8のいずれかの駆動機構において、前記サンプリング周期が一定周期とされていると共に、前記駆動パルスのパルスレートが一定とされており、前記駆動パルス発生制御部は、個々のサンプリング間隔内において発生させる駆動パルスの数の上限及び下限を設定することで、駆動速度及び駆動分解能を設定可能とされている構成とすることができる(請求項10)。この構成によれば、駆動パルスの数の上限により駆動最高速度が定まり、駆動パルスの数の下限により駆動分解能が定まることとなる。従って、所望の最高速度及び位置決め分解能などに応じて駆動パルスの数の上限及び下限を設定しておけば、サンプリング周期毎に制御目標情報に応じて適宜な速度及び分解能でステッピングモータをサーボ制御できるようになる。
【0021】
上記請求項4〜10のいずれかの駆動機構において、該駆動機構により駆動される駆動対象物が一次遅れ系に近似され固有の折点周波数fを有している場合において、前記サンプリング周期が、1/f以下の短周期に設定される構成とすることが望ましい(請求項11)。一般に、ステッピングモータは、駆動パルスのパルスレートを変更すれば、駆動速度も変化する。例えば駆動パルスレートを大きくすると、速度が上昇することになる。しかし、この構成のようにサンプリング周期を1/f以下の短周期に設定した場合、つまり駆動対象物の応答速度以下にサンプリング周期を設定した場合、パルスレートに依存することなく、サンプリング間隔内において発生させる駆動パルスの数に依存して速度が変化することとなる。従って、自ずと個々のサンプリング間隔内において発生させる駆動パルス数のみに基づいて速度及び分解能を制御できるようになり、サーボ制御が実行し易くなる。
【0022】
本発明の撮像装置は、被写体の撮像動作を行う撮像手段と、該撮像手段による撮像動作の際に各種の駆動を行う駆動機構とを具備する撮像装置であって、前記駆動機構として、請求項4〜11のいずれかに記載の駆動機構が採用されていることを特徴とする(請求項12)。この構成によれば、撮像動作の際に駆動されるズーム系、絞り機構、手振れ補正機構などが、上記サーボ制御方式の駆動機構により駆動されることとなる。
【0023】
また本発明の他の撮像装置は、被写体の撮像動作を行う撮像手段と、該撮像手段による撮像動作の際に機械的な振れ補正を行う振れ補正手段とを具備する撮像装置であって、前記振れ補正手段は、サーボ制御されたステッピングモータを有する駆動機構を具備することを特徴とする(請求項13)。
【0024】
さらに本発明の撮像装置は、被写体の撮像動作を行う撮像手段と、所定の駆動機構を備え、前記撮像手段による撮像動作の際に機械的な振れ補正を行う振れ補正手段と、所定の振れ検出手段により検出される振れ量に基づいて、前記振れ補正手段による駆動目標位置を演算する制御目標位置演算部とを具備する撮像装置であって、前記振れ補正手段の駆動機構は、所定の駆動パルスにより駆動されるステッピングモータと、前記駆動パルスの発生条件を制御する駆動パルス発生制御部とを備え、前記駆動パルス発生制御部には、所定のサンプリング周期が設定されており、前記駆動パルス発生制御部は、前記サンプリング周期毎に、それまでの駆動パルスの発生条件をリセットすると共に、前記制御目標位置演算部から制御目標位置情報を取得し、取得された制御目標位置情報に応じて、次のサンプリング周期までのサンプリング間隔内における駆動パルス発生条件を定める演算を行う構成とすることができる(請求項14)。この構成によれば、制御目標位置演算部で求められる手振れ補正値等を目標値として、ステッピングモータを備えた駆動機構により、鏡胴や撮像素子などを追従揺動させるサーボ制御が実行される。
【0025】
上記構成において、撮像装置本体を一次遅れ系に近似したときの固有の折点周波数をfとするときに、前記サンプリング周期が、1/f以下の短周期に設定されていることが望ましい(請求項15)。
【発明の効果】
【0026】
請求項1にかかる駆動方法によれば、所定のサンプリング周期毎に最も適した駆動条件を判定しつつステッピングモータを駆動させることができる。すなわち、サンプリング周期毎にステッピングモータの駆動条件を変化させることができるので、駆動パルスで駆動されるステッピングモータを駆動源とした場合でも、適正なサーボ制御を実現することができるようになる。
【0027】
請求項2にかかる駆動方法によれば、取得された制御目標情報に応じた駆動パルスの発生条件の設定がサンプリング周期毎に行われるので、目標値の任意の変化に的確に追従できるサーボ制御を実現することができる。
【0028】
請求項3にかかる駆動方法によれば、駆動対象物の任意の変化に的確に追従できるサーボ制御を実現することができる。従って、例えば手振れ補正機能付きのデジタルカメラ等において、前記手振れ補正機能における駆動方式として当該駆動方法を採用した場合に、振れ量の変位(位置情報)に応じて的確に駆動させることができる。
【0029】
請求項4にかかる駆動機構によれば、所定のサンプリング周期毎に最も適した駆動条件を駆動パルス発生制御部にて設定しつつステッピングモータを駆動させることができる。すなわち、サンプリング周期毎にステッピングモータの駆動条件を変化させることができるので、駆動パルスで駆動されるステッピングモータを駆動源とした場合でも、適正なサーボ制御を実現することができるようになる。
【0030】
請求項5にかかる駆動機構によれば、取得された制御目標情報に応じた駆動パルスの発生条件を定める演算が、駆動パルス発生制御部によりサンプリング周期毎に行われるので、目標値の任意の変化に的確に追従できるサーボ制御を実現することができる。
【0031】
請求項6にかかる駆動機構によれば、駆動パルス発生制御部により単位時間当たりの移動距離が制御されるので、駆動対象物の任意の変化に的確に追従できるサーボ制御を実現することができる。従って、例えば手振れ補正機能付きのデジタルカメラ等において、前記手振れ補正機能における駆動機構として当該駆動機構を採用した場合に、振れ量の変位(位置情報)に応じて的確に鏡胴や撮像素子の移動距離を制御しつつ揺動させることができるようになる。
【0032】
請求項7にかかる駆動機構によれば、第1のサンプリング間隔において最後に発せられる駆動パルスと、これに続く第2のサンプリング間隔内において最初に発せられる駆動パルスとの間隔が異常に近接することに起因する脱調の発生を抑止できるので、安定的にステッピングモータをサーボ制御駆動することができ、特にオープンループ制御を採用した場合に、脱調により復帰不能となるような事態を回避できるようになる。
【0033】
請求項8にかかる駆動機構によれば、ウェイト時間を活用して駆動パルス発生条件を定める演算が行われるのでサンプリング周期を短くすることができ、制御目標値情報を取得する頻度を上げることができ、目標値に対する追従性をより向上させることが可能となる。
【0034】
請求項9にかかる駆動機構によれば、ステッピングモータを、個々のサンプリング間隔内において発生させる駆動パルス数に依存させて制御できるので、制御を簡素化でき、駆動パルス発生制御部における処理を高速化することができる。
【0035】
請求項10にかかる駆動機構によれば、個々のサンプリング間隔内において発生させる駆動パルス数のみに基づいて速度及び分解能を制御できるので、制御を簡素化しつつ、細やかな追従制御や高速追従制御が自在に設定可能となり、一層追従性に優れたサーボ制御が実行できるようになる。
【0036】
請求項11にかかる駆動機構によれば、駆動対象物の応答速度以下にサンプリング周期を設定するので、自ずと個々のサンプリング間隔内において発生させる駆動パルス数のみに基づいて速度及び分解能を制御できるようになり、サーボ制御が実行し易くなる。
【0037】
請求項12にかかる撮像装置によれば、請求項4〜11の駆動機構が具備する先の作用効果を享受できる撮像装置を提供できるようになる。
【0038】
請求項13にかかる撮像装置によれば、ステッピングモータが備える種々の利点、つまりオープンループ制御が可能であることから位置センサやフィードバック制御系が不要となり制御構成が簡素化できるという利点を生かし、振れ補正手段(撮像装置)の小型化、コストダウンを図ることができる。
【0039】
請求項14にかかる撮像装置によれば、制御目標位置演算部で求められる手振れ補正値等を目標値として、ステッピングモータを備えた駆動機構により、鏡胴や撮像素子などを追従揺動させるサーボ制御が的確に実行できるようになる。
【0040】
請求項15にかかる撮像装置によれば、撮像装置本体の応答速度以下にサンプリング周期毎を設定するので、自ずと個々のサンプリング間隔内において発生させる駆動パルス数のみに基づいて速度及び分解能を制御できるようになり、サーボ制御が実行し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、図面に基づいて、本発明にかかる駆動機構(駆動方法)が適用される鏡胴内蔵型のデジタルカメラ(撮像装置)を例示して、具体的実施態様につき詳細に説明する。
(カメラ構造の説明)
図2は、本実施形態にかかるデジタルカメラ1の外観を示す図であって、図2(a)はその正面図、(b)は背面図をそれぞれ示している。この鏡胴内蔵型のデジタルカメラ1は、カメラ本体ボディ10の頂面にはレリーズ釦101等が、正面側には撮影窓部102や閃光部103等が、また背面側には各種の操作ボタン104や液晶モニタ(LCD)等からなる表示部105、ファインダー106等がそれぞれ配置されている。
【0042】
そして本体ボディ10の内部には、前記撮影窓部102を通して対物レンズ21から被写体像を取り入れ、本体ボディ10の内部に配置されている固体撮像素子へ導くための撮影レンズ系を構成する屈曲型の鏡胴2が内蔵されている。この屈曲型の鏡胴2は、ズーミングやフォーカシング駆動時においてもその長さが変動しない、つまり本体ボディ10から外部に突出することのない鏡胴であって、その像面側に固体撮像素子が一体的に組み付けられている。さらに、本体ボディ10の内部には、当該カメラ1に与えられる振れを検出する振れ検出手段としてのピッチ(P)振れ検出ジャイロ11と、ヨー(Ya)振れ検出ジャイロ12とが内蔵されている。なお、カメラ1の水平方向(幅方向)をX軸方向と、カメラ1の垂直方向(高さ方向)をY軸方向として、X軸周りの回転方向をピッチ(P)方向とし、Y軸周りの回転方向をヨー(Ya)方向と定めるものとする。
【0043】
この屈曲型の鏡胴2は、カメラ本体ボディ10の内部に縦型に内蔵される(勿論、横型に内蔵される態様でも良い)筒型を呈しており、該鏡胴2を揺動駆動する駆動機構を備えた振れ補正手段が付設されている。そして、前記ピッチ振れ検出ジャイロ11及びヨー振れ検出ジャイロ12にて本体ボディ10の振れ振動が検出された場合に、鏡胴2は前記振れ補正手段により、その振れを打ち消すようにピッチ方向及びヨー方向に揺動駆動される構成とされている。
【0044】
図3は、このような鏡胴2の揺動駆動機構の一例を模式的に示した斜視図である。鏡胴2は、該鏡胴2を揺動可能に支持する支持点を備える支持手段にて保持される。図3に示す例では、鏡胴2を図中矢印A1の第1の方向に回動(揺動)可能とさせる第1の回転軸200a並びにその軸受け(図示省略)、及び鏡胴2を図中矢印A2の第2の方向に回動可能とさせる第2の回転軸200b並びにその軸受けにて支持されている例を示している。この支持手段は、鏡胴2を少なくとも2軸方向に揺動させ得るものであれば良く、その支持形態や支持点の数については特に限定はない。従って、一個又は複数個のボール軸受け等を用いて鏡胴2を揺動自在に支持する方式、あるいはコイルバネ等の弾性部材で鏡胴2を多点的に支持する方式等、種々の支持形態を採ることが可能である。
【0045】
鏡胴2のピッチ方向及びヨー方向への揺動駆動は、所定の駆動回路(ドライバ)で駆動されるステッピングモータからなるピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bによりそれぞれ行われる。これらピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bは、後記で詳述するようなサーボ制御方式で駆動される。
【0046】
ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bから鏡胴2への駆動力伝達機構は適宜設定することができる。図3に示す例では、第1の回転軸200aに固定されたギア201aと、ピッチ方向モータ3aの回転軸に固定されたギア202aとを歯合させることで、カメラ本体ボディ10の内部において第1の回転軸200aの軸回りに鏡胴2が矢印A1方向へ回動され、また第2の回転軸200bに固定されたギア201bと、ヨー方向モータ3bの回転軸に固定されたギア202bとを歯合させることで、第2の回転軸200bの軸回りに鏡胴2が矢印A2方向へ回動される構成を示している。なお、ステッピングモータは入力した駆動パルスの積分値で位置把握が可能(オープンループ制御)であるが、あえてクローズドループ制御を行う場合は、鏡胴2のホームポジションを検知するための位置センサ等が付設される。
【0047】
図4は、本実施形態におけるデジタルカメラ1の構成を、本発明にかかわる電気的構成の要部についてのみ概略的に示したブロック図である。このデジタルカメラ1の本体ボディ10内には、レリーズ釦101、該カメラ1に与えられる手振れ等を検出する振れ検出手段としてのピッチ振れ検出ジャイロ11及びヨー振れ検出ジャイロ12、各種の回路基板ブロックからなる回路装置部13、撮影レンズ系を構成する鏡胴2、及び該鏡胴2を振れ補正駆動する上述のステッピングモータからなるピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bが備えられている。また、前記回路装置部13は、制御目標位置演算部14、シーケンスコントロール回路15、制御回路4(駆動パルス発生制御部)、積分回路5及び駆動回路6を備えて構成されている。
【0048】
レリーズ釦101は、ユーザが撮影動作を行う際に押下する操作スイッチであり、このレリーズ釦101が半押し状態とされると撮影準備状態となる。かかる撮影準備状態では、被写体に自動的にピントを合わせるオートフォーカス(AF)、露出を自動的に決定するオートエクスポージャー(AE)及び手振れによる画像乱れを防止するための振れ補正機能が動作する。この振れ補正機能は、フレーミングを容易にするためにレリーズ釦101の押下中は連続して動作し続ける。また、レリーズ釦101がユーザによって全押し状態にされると、撮影が行われる。すなわち、AEで決定された露出状態に従って、固体撮像素子が適正露出になるように露光制御が行われる。
【0049】
ピッチ振れ検出ジャイロ11は、カメラ1のピッチ方向(図2参照)の振れを検出するジャイロセンサであり、ヨー振れ検出ジャイロ12は、カメラ1のヨー方向の振れを検出するジャイロセンサである。ここで用いられるジャイロセンサは、測定対象物(本実施形態ではカメラ本体ボディ10)が振れによって回転した場合における振れの角速度を検出するものである。このようなジャイロセンサとしては、例えば圧電素子に電圧を印加して振動状態とし、該圧電素子に回転運動による角速度が加わったときに生じるコリオリ力に起因する歪みを、電気信号として取り出すことで角速度を検出するタイプのものを用いることができる。
【0050】
制御目標位置演算部14は、所定のサンプリング周期で取得する制御目標情報を設定する。すなわち、ピッチ振れ検出ジャイロ11が検出したピッチ振れ角速度信号及びヨー振れ検出ジャイロ12が検出したヨー振れ角速度信号を取得し、サーボ制御における制御目標値(この場合、駆動対象物である鏡胴2の位置情報)を設定する。この制御目標位置演算部14は、振れ検出回路141、振れ量検出回路142及び係数変換回路143を備えている。
【0051】
振れ検出回路141は、ピッチ振れ検出ジャイロ11及びヨー振れ検出ジャイロ12により検出された各角速度信号から、ノイズ及びドリフトを低減するためのフィルタ回路(ローパスフィルタ及びハイパスフィルタ)及び各角速度信号を増幅するための増幅回路などの処理回路を備えて構成される。これら処理回路による処理後の各角速度信号は、振れ量検出回路142に入力される。
【0052】
振れ量検出回路142は、検出された各角速度信号を所定の時間間隔で取り込み、カメラ1のX軸方向の振れ量をdetx、Y軸方向の振れ量をdetyとして係数変換回路143に出力する。また、係数変換回路143は、振れ量検出回路142から出力される各方向の振れ量(detx,dety)を、各方向の移動量(px,py)、つまりピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bにより、鏡胴2を移動させるべき移動量に変換する。係数変換回路143から出力された各方向の移動量(px、py)を示す信号は、制御回路4に入力される。
【0053】
制御回路4(駆動パルス発生制御部)は、ステッピングモータからなるピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bを駆動させるための駆動パルスの発生制御を行う。制御回路4は、後述する積分回路5からの位置情報、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bの動作特性等を考慮して、各方向の移動量(px、py)を示す信号を実際の駆動パルス信号(drvx、drvy)に変換する。すなわち制御回路4は、ピッチ振れ検出ジャイロ11及びヨー振れ検出ジャイロ12からの検知信号に基づいて上記制御目標位置演算部14にて生成される制御目標値に追従する振れ補正制御(サーボ制御)を行うべく、鏡胴2を前記制御目標値に追従揺動させるために必要な駆動パルスの発生条件を演算する演算手段として機能する。この制御回路4の機能については、後記で詳述する。
【0054】
積分回路5は、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bをオープンループ制御するために設けられるもので、後記駆動回路6により発生される駆動パルス数を積分し、ステッピングモータの現在位置情報、つまり鏡胴2の揺動位置情報を生成して制御回路4へ向けて出力するものである。なお、クローズドループ制御を採用する場合は、位置センサ及び該位置センサからのセンシング情報を位置情報に置換する変換回路が、この積分回路5に代替して組み込まれることとなる。
【0055】
駆動回路6はパルス発生回路等を備え、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bを実際に駆動する駆動パルスを生成する。この駆動パルスは、前記制御回路4から与えられる駆動パルス発生制御信号に基づいて生成される。
【0056】
以上の振れ量検出回路142、係数変換回路143及び制御回路4の動作は、シーケンスコントロール回路15によって制御される。すなわち、シーケンスコントロール回路15は、レリーズ釦101が押下されると、振れ量検出回路142を制御することによって、前述した各方向の振れ量(detx,dety)に関するデータ信号を取り込ませる。次に、シーケンスコントロール回路15は、係数変換回路143を制御することによって、各方向の振れ量を各方向の移動量(px、py)に変換させる。そして、制御回路4を制御することにより、各方向の移動量に基づいて鏡胴2の補正移動量を所定のサンプリング周期毎に演算させる。このような動作が、鏡胴2の防振制御(手振れを補正)のために、レリーズ釦101が全押しされ露光が終了するまでの期間中、一定の時間間隔で繰り返し行われるものである。
【0057】
上記ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bを構成するステッピングモータとしては、ステータコアとロータコアを備える通常の小型ステッピングモータが適用可能であり、鏡胴2を直接的に防振駆動できるよう、前記ロータコアにスクリュー回転軸を直結し、該スクリュー回転軸上に移動片(ナット等)を取り付けた構成とすることが望ましい。なお、このような回転型のステッピングモータではなく、ロータがステータに対して直線的に移動するリニア型ステッピングモータを用いるようにしても良い。
【0058】
(駆動パルス発生制御部の詳細説明)
図5は、上記制御回路4(駆動パルス発生制御部)の機能を説明するための機能ブロック図である(本発明にかかる駆動機構Gの一実施形態を示すブロック図でもある)。この制御回路4は、所定のサンプリング周期毎に、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bを駆動させる駆動パルスの発生条件の設定を行うことを主な機能としている。前記制御回路4は、サンプリング周期設定部41、ウェイト時間設定部42、サンプリング部43、比較部44、駆動方向判別部45及び出力パルス数算出部46を備えている。
【0059】
サンプリング周期設定部41は、サーボ制御の制御目標値を前記制御目標位置演算部14から取得するサンプリング周期の設定を受け付ける。このサンプリング周期は任意に設定して良く、例えば0.1ms〜2ms程度の範囲から適宜選択することができる。一般に、サンプリング周期を短く設定すると、短い周期で制御目標値を取得することから追従性は良くなるが、制御演算能力やステッピングモータの性能を考慮して適正なサンプリング周期を設定すればよい。
【0060】
上記サンプリング周期の設定に当たって、駆動対象物が一次遅れ系に近似される場合、その固有の折点周波数fを考慮して設定を行うことができる。折点周波数fとは、振動等に対する応答特性が第1の関係から、前記第1の関係とは異なる第2の関係に変化する周波数である。例えば、対象物に所定の振動力Zinを入力したときの当該対象物の振動変位(出力)をZoutとすると、Zin=Zoutの関係となる振動領域(第1の関係)から、Zin>Zout若しくはZin<Zoutの関係となる振動領域(第2の関係)へ変移するポイントが折点周波数(振動数)fとなる。本実施形態に当てはめれば、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bによる鏡胴2の駆動応答特性が変移するポイントが、折点周波数fとなる。
【0061】
図6は、駆動応答特性の一例を示すグラフ図である。この場合、折点周波数fよりも低い周波数fで駆動力を鏡胴2に与えた場合、所定の駆動力Zinと、これによる鏡胴2の変位Zoutとの関係はZout/Zin=1となり、いわば入力した駆動力に1:1で対応して鏡胴2が揺動されることとなる(第1の関係)。ステッピングモータは、駆動パルスのパルスレートを変更することで速度制御することが可能であるが、この第1の関係領域では、Zout/Zin=1の応答関係が得られることから、パルスレートに依拠した鏡胴2の駆動制御(速度制御)が行えることとなる。従って、前記第1の関係の特性を活用する場合は、前記サンプリング周期を、1/f以上の長周期に設定すれば良い。ただ、パルスレートに依拠した駆動制御を行うと、サンプリング周期毎にパルスレートを定める演算を実行させる必要が生じることから、駆動処理が複雑化する傾向がある。
【0062】
一方、折点周波数fよりも高い周波数fで駆動力を鏡胴2に与えた場合、所定の駆動力Zinと、これによる鏡胴2の変位Zoutとの関係はZout/Zin<1となり、いわば入力した駆動力に1:1で対応して鏡胴2が揺動されなくなる(第2の関係)。すなわち、与えられる駆動力に間に合わなくなり、忠実に追従して鏡胴2が揺動されなくなる。この場合、パルスレートに依拠した鏡胴2の駆動制御は行えなくなるが、逆にどのような駆動パルスを入力しても実際には追従できる所定量しか駆動されないことになるので、駆動パルスの数のみに依拠して鏡胴2の駆動制御(速度制御)が行えるようになる。従って、駆動処理を簡素化できるという利点がある。このような利点を有する前記第2の関係の特性を活用する場合は、前記サンプリング周期を、1/f以下の短周期に設定すれば良い。
【0063】
ウェイト時間設定部42は、駆動パルスの発生間隔についての設定を受け付けるもので、具体的には、第1のサンプリング間隔内において最後に発せられる駆動パルスと、前記第1のサンプリング間隔に続く第2のサンプリング間隔内において最初に発せられる駆動パルスとの発生間隔を、所定のウェイト時間に設定する。すなわちウェイト時間設定部42は、第1のサンプリング間隔において最後に発せられる駆動パルスと、これに続く第2のサンプリング間隔内において最初に発せられる駆動パルスとの間隔が異常に近接し得ないよう所定のウェイト時間を設定し、脱調の発生を抑止するものである。
【0064】
サンプリング部43は、サンプリング周期設定部41に設定されたサンプリング周期毎に、制御目標位置演算部14からサーボ制御のための目標位置情報を取得する。具体的には、前記係数変換回路143から出力される各方向の移動量(px、py)を示す信号をサンプリング周期毎に取り入れる。
【0065】
比較部44は、前述の積分回路5から出力される積分値信号であるステッピングモータ(ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3b)のロータの現在位置情報、つまり鏡胴2の揺動位置情報と、前記サンプリング部43に取得された目標位置情報とを比較し、両者の位置偏差eを求める。この位置偏差eが可及的にゼロに近づくよう、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bにより鏡胴2が揺動駆動される。
【0066】
駆動方向判別部45は、比較部44にて求められた位置偏差eがプラス方向の偏差であるか、マイナス方向の偏差であるかに基づいて、ステッピングモータの回転方向を判別する。また駆動方向判別部45は、前記回転方向の判別結果に基づいて、ステータコイルへの通電順序を変更しロータを正転又は逆転させるための制御信号を発生する。
【0067】
出力パルス数算出部46は、比較部44にて求められた位置偏差eに応じて、サンプリング周期毎に、それまでの駆動パルスの発生条件をリセットすると共に、次のサンプリング周期までのサンプリング間隔内において発生させる駆動パルス発生条件(駆動パルスの数)を定める演算を行う。すなわち出力パルス数算出部46は、サンプリング周期毎に新たにステッピングモータの駆動条件の設定を行うものであり、サーボ制御を行うにあたり、所定のサンプリング周期毎に最も適した駆動パルスをステッピングモータに与えて駆動させるものである。
【0068】
上記駆動方向判別部45により生成されるロータの正転又は逆転に関する制御信号、及び出力パルス数算出部46により生成される駆動パルス数に関する制御信号は、駆動回路6へ出力される。駆動回路6はこのような制御信号を受けて、パルス発生回路により所定の駆動パルスを生成し、これをピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bに与えて駆動させるものである。
【0069】
(駆動パルス発生制御部の動作の説明)
続いて、制御回路4(駆動パルス発生制御部)により発生される駆動パルスの具体例及び動作について説明する。
【0070】
≪駆動パルス発生制御の第1実施形態≫
図7は、サンプリング間隔毎のウェイト時間を特段考慮せず、且つ駆動パルスのパルスレートにより速度制御を行うような場合の、駆動パルス発生状態を示すタイムチャートである。この場合、パルスレートにより速度制御を行うことから、前記サンプリング周期設定部41には、鏡胴2の折点周波数fに鑑み、1/f以上の長周期となるようなサンプリング周期t11〜t14が設定されている。
【0071】
図7に示すように、第1のサンプリング間隔S10において第1のパルスレートとされた駆動パルスP10が出力されている。そして第1サンプリング周期t11が到来すると、前記駆動パルスP10の発生条件がリセットされ、第1のサンプリング間隔S10に続く第2のサンプリング間隔S11において発生させる駆動パルスP11の発生条件が、制御回路4により求められる。具体的には、サンプリング部43により制御目標位置演算部14からサーボ制御のための目標位置情報が取得され、比較部44により位置偏差eが求められる。そして、前記位置偏差eがゼロに近づくように、駆動方向判別部45及び出力パルス数算出部46により、駆動パルスの発生条件が演算により求められる。この場合、出力パルス数算出部46は、専ら前記位置偏差eの大きさに応じてパルスレートを変更する演算を行うことになる。
【0072】
図示する通り、第2のサンプリング間隔S11の駆動パルスP11は、前記駆動パルスP10に比べてパルスレートが小さく設定されており、この場合ステッピングモータは第1のサンプリング間隔S10よりも低速で駆動されることとなる。以下同様にして、第2サンプリング周期t12で駆動パルスP11の発生条件がリセットされ、第3のサンプリング間隔S12において発生させる駆動パルスP12の発生条件が求められ、これに続く第3サンプリング周期t13で駆動パルスP12の発生条件がリセットされ、第4のサンプリング間隔S13において発生させる駆動パルスP13の発生条件が求められるものである。
【0073】
このような駆動パルス発生制御を行えば、取得された制御目標情報に応じた駆動パルスの発生条件の設定がサンプリング周期毎に行われるので、目標値の任意の変化に的確に追従できるサーボ制御を実現することができる。ただ、懸念される点として、第1のサンプリング間隔S10内において最後に発せられる駆動パルスP10eと、これに続く第2のサンプリング間隔S11内において最初に発せられる駆動パルスP11fとの発生間隔W11が、急激に狭くなってしまう状態が生じる場合があり、該発生間隔W11が所定値以下となるとステッピングモータが脱調してしまうことがあり得る。これは第2のサンプリング間隔S11内の最後発駆動パルスP11eと第3のサンプリング間隔S12内の最先発駆動パルスP12fとの発生間隔W12、及び第3のサンプリング間隔S12内の最後発駆動パルスP12eと第4のサンプリング間隔S13内の最先発駆動パルスP13fとの発生間隔W13においても同様である。
【0074】
この場合、オープンループ制御を行っているときは、脱調により制御不能に陥ってしまうことになる。一方、クローズドループ制御を行っていれば制御不能に陥ることはないが、サンプリング周期毎の動作が不安定になる危惧は残る。さらに、クローズドループ制御では位置検出センサ及びフィードバック制御系が必要になることから制御構成が複雑化すると共にコストアップが招来され、例えば小型デジタルカメラの手振れ補正機構として搭載するという用途に対しての適性度は低下する。
【0075】
≪駆動パルス発生制御の第2実施形態≫
図8は、以上の点に鑑みて、サンプリング間隔毎にウェイト時間を設定するものとし、且つ駆動パルスのパルスレートにより速度制御を行うような場合の、駆動パルス発生状態を示すタイムチャートである。この場合も、1/f以上の長周期となるようなサンプリング周期t21〜t24が設定されると共に、制御回路4のウェイト時間設定部42に所定のウェイト時間が設定される。
【0076】
図8に示すように、第1のサンプリング間隔S20において第1のパルスレートとされた駆動パルスP20が出力されている。そして第1サンプリング周期t21が到来すると、前記駆動パルスP20の発生条件がリセットされ、第1のサンプリング間隔S20に続く第2のサンプリング間隔S21において発生させる駆動パルスP21の発生条件が、制御回路4により求められる。図例では、第2のサンプリング間隔S21の駆動パルスP21は、前記駆動パルスP20に比べてパルスレートが小さく設定されており、この場合ステッピングモータは第1のサンプリング間隔S20よりも低速で駆動されることとなる。このような制御は、先の第1実施形態と同様である。
【0077】
しかし、この第2実施形態では、ウェイト時間設定部42に所定のウェイト時間が設定されていることから、第1のサンプリング間隔S20内の最後発駆動パルスP20eと第2のサンプリング間隔S21内の最先発駆動パルスP21fとの発生間隔W21は所定値以下の狭い間隔となることはなく、従って脱調が未然に抑止されることとなる。
【0078】
以下同様にして、第2サンプリング周期t22で駆動パルスP21の発生条件がリセットされ、第3のサンプリング間隔S22において発生させる駆動パルスP22の発生条件が求められ、これに続く第3サンプリング周期t23で駆動パルスP22の発生条件がリセットされ、第4のサンプリング間隔S23において発生させる駆動パルスP23の発生条件が求められるものである。同様に、第2のサンプリング間隔S21内の最後発駆動パルスP21eと第3のサンプリング間隔S22内の最先発駆動パルスP22fとの発生間隔W22、及び第3のサンプリング間隔S22内の最後発駆動パルスP22eと第4のサンプリング間隔S23内の最先発駆動パルスP23fとの発生間隔W23も、前記ウェイト時間の設定により所定値以下の狭い間隔となることはない。
【0079】
図9は、図8のような駆動パルス発生制御を行う場合における制御回路4(出力パルス数算出部46)の制御シーケンスを示すフローチャートである。制御目標値が取得され位置偏差eが求められると(ステップ#1)、この位置偏差eがゼロに近づくように、駆動方向判別部45及び出力パルス数算出部46により、駆動方向と駆動パルスレートが演算により求められる(ステップ#2)。
【0080】
そしてステップ#2で求められた駆動パルスレートが脱調しない値であるかが判定される(ステップ#3)。この判定ステップを図8に基づき説明すると、例えば第1サンプリング周期t21において求められた駆動パルスレートの駆動パルスP21を、当該第2のサンプリング間隔S21においてフル出力した場合に、次の第3のサンプリング間隔S22内における最先発駆動パルスP22fとの発生間隔W22が、脱調しない所定値を担保できるか(ウェイト時間設定部42に設定されているウェイト時間以上であるか)が確認される。
【0081】
この判定の結果、脱調が懸念される場合は(ステップ#3でNo)、所定のウェイト時間が担保されるよう、ウェイト時間を考慮した駆動パルス数が出力パルス数算出部46により求められる(ステップ#4)。このようにして算出された駆動パルスレート及び駆動パルス数が、第2のサンプリング間隔S21において発生させる駆動パルスの発生条件として決定される(ステップ#5)。もし脱調の恐れがない場合は(ステップ#3でYes)、ステップ#2で求められた駆動パルスレート(及び駆動パルス数)が駆動パルスの発生条件として決定されることになる。
【0082】
続いて、ステップ#5で決定された駆動パルスの発生条件に関する制御信号が制御回路4から駆動回路6へ出力され(ステップ#6)、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bが駆動される。また、出力された駆動パルス数が積分回路5における積分値に加算される処理が行われ(ステップ#7)、1ルーチンが完了するものである。
【0083】
≪駆動パルス発生制御の第3実施形態≫
図8に示した駆動パルス発生制御では、所定のウェイト時間が確保され、ステッピングモータの脱調の問題は解消できるという大きな利点があるが、サンプリング周期毎に算出した駆動パルスレートが脱調しないかの判定処理が必要となる(図9に示すフローチャートのステップ#3)ことから、処理が煩雑になるという点は否めない。また、駆動パルスレートを変更して速度制御するよりも、駆動パルスレートを一定とし、単純に各サンプリング間隔において出力する駆動パルスの数のみに依拠して速度制御を行う方が、制御処理をより簡素化できると言える。
【0084】
図10は、以上の点に鑑みて、駆動パルスの数のみに依拠して速度制御を行うと共に、サンプリング間隔毎にウェイト時間も考慮した制御を行うような場合の、駆動パルス発生状態を示すタイムチャートである。この場合、個々のサンプリング間隔における駆動速度が駆動パルス数の多少に依存して決定されるよう、前述の通り1/f以下の短周期(例えば2ms以下程度)となるようなサンプリング周期t31〜t34がサンプリング周期設定部41に設定されると共に、制御回路4のウェイト時間設定部42に所定のウェイト時間が設定される。
【0085】
サンプリング間隔内に発生させる駆動パルスの数は、要求される最高速度と位置決め分解能により決定される。但し、駆動パルスレートは、極端に小さくすると脱調が生じるので、脱調しない所定のパルスレートが選定される。ここで、サンプリング周期が一定周期であって、且つ駆動パルスレートが一定であると、最高速度、駆動パルス数及びサンプリング間隔の関係は次の通りとなる。
最高速度=(1パルス時の移動量×駆動パルス数)/サンプリング間隔
上記関係式から明らかな通り、最高速度はサンプリング間隔を短くすることで大きくすることができる。
【0086】
これを図11に基づき説明する。いま各サンプリング間隔あたり3個の駆動パルスを出力する場合を考えると、図11(a)に示すように1つのサンプリング間隔Swにおいて3個の駆動パルスPwを出力する場合、前記サンプリング間隔Swを単位時間とすると、3ppsの駆動パルスが単位時間当たりに出力されることとなる。これに対し、図11(b)に示すように、前記サンプリング間隔Swの1/2の間隔であるサンプリング間隔Snを設定した場合、6ppsの駆動パルスが単位時間当たりに出力されるようになる。従って、脱調しない所定の駆動パルスレートを基調として、サンプリング間隔の長さを適宜選定することで、最高速度を調節することができる。
【0087】
図10に示すように、この駆動パルス発生制御では、各々のサンプリング間隔において発生させる駆動パルス数を一定(図例では3個)とした場合を示している。なお、図10では、制御回路4による駆動パルス発生条件を定める演算が行われる演算タイミングm30〜m33もタイムチャートに含めている。図10において、第1のサンプリング間隔S30において所望のパルスレートとされた駆動パルスP30が出力されている。そして第1サンプリング周期t31が到来すると、前記駆動パルスP30の発生条件(この実施形態の場合、駆動パルス数は一定であるので専ら駆動方向)がリセットされ、次の第2のサンプリング間隔S31において発生させる駆動パルスP31の発生条件が、制御回路4(駆動方向を定める駆動方向判別部45)により求められる。
【0088】
ここで、各サンプリング間隔において発生させる駆動パルスの数は、速度を優先するならばなるべく多くの駆動パルスを発生させるようにし、位置決め分解能を優先するならば、駆動パルス数を少なく発生させるようにすればよい。図10に示す例では、各サンプリング間隔において発生させる駆動パルスを3個に固定した例を示したが、例えば高速モードと低速モードとを設定可能とし、出力パルス数算出部46が前記モードに基づいて、モードに応じた駆動パルス数を設定するようにしてもよい。
【0089】
この実施形態においても、ウェイト時間設定部42に所定のウェイト時間が設定されている。従って、第1のサンプリング間隔S30内の最後発駆動パルスP30eと第2のサンプリング間隔S31内の最先発駆動パルスP31fとの発生間隔W31は所定値以下の狭い間隔となることはない。換言すると、出力パルス数算出部46は、駆動パルスレートが一定であることから、前記ウェイト時間を考慮した駆動パルス数を予め把握して設定できるので、ステッピングモータの脱調が生じることがない発生間隔W31が担保されるようになる。なお、脱調が生じないパルスレートで、且つサンプリング間隔においてウェイト時間を除きフルに駆動パルスを発生させる設定とすれば、常時最高速度での駆動が行えるようになる。
【0090】
以下同様にして、第2サンプリング周期t32で駆動パルスP31の発生条件がリセットされ、第3のサンプリング間隔S32において発生させる駆動パルスP32の発生条件が求められ、これに続く第3サンプリング周期t33で駆動パルスP32の発生条件がリセットされ、第4のサンプリング間隔S33において発生させる駆動パルスP33の発生条件が求められる。同様に、第2のサンプリング間隔S31内の最後発駆動パルスP31eと第3のサンプリング間隔S32内の最先発駆動パルスP32fとの発生間隔W32、及び第3のサンプリング間隔S32内の最後発駆動パルスP32eと第4のサンプリング間隔S33内の最先発駆動パルスP33fとの発生間隔W33も、前記ウェイト時間の設定により所定値以下の狭い間隔となることはない。
【0091】
なお、前記ウェイト時間内W31〜W33の間に、前記制御回路4による駆動パルス発生条件を定める演算がなされるよう、演算タイミングm31〜m33が設定されている。図10に示す例では、各サンプリング間隔S31〜S33の冒頭部分に演算タイミングm31〜m33を設定し、ウェイト時間内W31〜W33と演算タイミングm31〜m33とがそれぞれオーバーラップするようにしている。このようなタイミング設定を行えば、脱調防止のために不可避的に必要となるウェイト時間W31〜W33を活用して駆動パルス発生条件を定める演算が行われるので、サンプリング周期を短くすることができる。つまり、駆動速度を上げることが可能となる。
【0092】
図12は、図10のタイムチャートに示した駆動パルス発生制御方法における、制御目標位置と移動軌跡との関係を模式的に示すグラフ図である。なお、図中に表示している位置決め分解能Δxは、1パルス時の移動量×駆動パルス数にて決定される。いま、制御目標値が駆動速度のmax値に相当する変位をするような目標位置A1が制御目標位置演算部14から取得されている場合、各々のサンプリング周期t31〜t38における位置偏差e1は常にプラス方向の偏差となることから、駆動方向判別部45は常にプラス方向の判定を行い、ステッピングモータはプラス方向に一定の速度(最高速度)で駆動されることとなる(移動軌跡A1)。
【0093】
一方、制御目標値が駆動速度のmax値以下の変位をするような目標位置A2が制御目標位置演算部14から取得されている場合、各々のサンプリング周期t31〜t40において駆動方向判別部45により駆動状態に応じて適宜駆動方向が変更されるようになる。例えばサンプリング周期t38に着目すると、この時点における位置偏差e2はプラス方向の偏差であることから、この位置偏差e2を埋めるべくプラス方向に分解能Δxだけ駆動される。逆に、サンプリング周期t40に着目すると、この時点における位置偏差e3はマイナス方向の偏差であることから、この位置偏差e3を埋めるべくマイナス方向に分解能Δxだけ駆動される。つまり、目標位置A2へなるべく沿うように、駆動方向判別部45が方向判定しながら分解能Δxに応じた移動軌跡を描くこととなる(移動軌跡A2)。
【0094】
なお、移動量の分解能Δxと位置偏差eとは、次式の関係が保たれていることが望ましい。
位置偏差e<2・Δx
すなわち、もし位置偏差eが2・Δxより大きくなってしまうと、最高速度でも目標位置への追随ができなくなり、サーボ制御が困難となるからである。
【0095】
この第3実施形態にかかる駆動パルス発生制御方法によれば、ステッピングモータを、個々のサンプリング間隔内において発生させる駆動パルス数で駆動速度を定めると共に、駆動方向判別部45による方向判定結果に基づいて制御できるので、制御を簡素化でき、制御回路4(駆動パルス発生制御部)における処理を高速化することができる。
【0096】
≪駆動パルス発生制御の第4実施形態≫
図13は、上記第3実施形態にかかる駆動パルス発生制御方法の変形実施形態にかかる第4実施形態のタイムチャートである。この第4実施形態は、駆動速度と位置決め分解能とを、各サンプリング周期t41〜t44において制御目標位置に応じて設定できるようにした駆動パルス発生制御方法である。
【0097】
この第4実施形態においても、個々のサンプリング間隔における駆動速度が駆動パルス数の多少に依存して決定されるよう、前述の通り1/f以下の短周期(例えば2ms以下程度)となるようなサンプリング周期t41〜t44がサンプリング周期設定部41に設定されると共に、制御回路4のウェイト時間設定部42に所定のウェイト時間が設定される。
【0098】
図13において、第1のサンプリング間隔S40において所望のパルスレートとされた駆動パルスP40が出力されている。そして第1サンプリング周期t41が到来すると、前記駆動パルスP40の発生条件(この実施形態の場合、駆動パルス数は可変であるので駆動方向と駆動パルス数)がリセットされ、次の第2のサンプリング間隔S41において発生させる駆動パルスP31の発生条件が、制御回路4(駆動方向を定める駆動方向判別部45、及び駆動パルス数を定める出力パルス数算出部46)により求められる。
【0099】
図示する通り、第2のサンプリング間隔S41の駆動パルスP41は、1個の駆動パルスであり、この場合ステッピングモータは第1のサンプリング間隔S10よりも低速であるが高分解能で駆動されることとなる。続く第2サンプリング周期t42で駆動パルスP41の発生条件がリセットされ、第3のサンプリング間隔S42において発生させる駆動パルスP42の発生条件が求められる。第3のサンプリング間隔S42の駆動パルスP42は、2個の駆動パルスであり、この場合ステッピングモータは中速で中程度の分解能で駆動されることとなる。以降、第3サンプリング周期t43以下において同様な処理が実行される。なお、各サンプリング間隔においてウェイト時間W41〜W43が設定されている点、及びこのウェイト時間W41〜W43と演算タイミングm41〜m43とがそれぞれオーバーラップするようにしている点は、上記第3実施形態と同様である。
【0100】
以上のような第4実施形態にかかる駆動パルス発生制御方法は、サンプリング周期を一定周期とし、且つ駆動パルスのパルスレートも一定とすることを前提として、個々のサンプリング間隔S40〜S43内において発生させる駆動パルスの数の上限及び下限を設定することで、駆動速度及び駆動分解能を設定可能とした制御であるということができる。つまり、所望の(或いは出力可能な)最高速度に応じて駆動パルス数の上限を、また所望の分解能に応じて駆動パルス数の下限を定めておくことで、駆動パルスの数の上限により駆動最高速度が定まり、駆動パルスの数の下限により駆動分解能が定まることとなる。従って、サンプリング周期毎に制御目標情報に応じて適宜な速度及び分解能でステッピングモータをサーボ制御できるようになる。
【0101】
図14は、図13のタイムチャートに示した駆動パルス発生制御方法における、制御目標位置と移動軌跡との関係を模式的に示すグラフ図である。図示する通り、制御目標値がsinカーブで変位をするような目標位置Bが制御目標位置演算部14から取得されている場合を考える。この場合、サンプリング周期t40〜t43までは目標位置Bとの位置偏差がプラス方向に大きいことから、駆動方向判別部45は常にプラス方向の判定を行うと共に、出力パルス数算出部46からは最高速度が出せるよう駆動パルス数を多く出力する制御信号が生成されることとなる(なお、図13のサンプリング周期t40〜t43と図14のサンプリング周期とは一致させてはいない)。
【0102】
これに続くサンプリング周期t44では、位置偏差は縮小されているので、出力パルス数算出部46は中程度の速度で分解能を上げた駆動パルス数を出力させる制御信号が生成される。さらに、次のサンプリング周期t45では、位置偏差はさらに縮小されているので、出力パルス数算出部46は低速度で高分解能の駆動パルス数を出力させる制御信号が生成される(駆動方向もマイナス方向に反転される)。このようにして、駆動速度と位置決め分解能とを、サンプリング周期毎に目標位置Bとの乖離度合いに応じて適宜調整しながらサーボ制御が行われる(移動軌跡B)ことから、より目標値に対する追従性の良いサーボ制御を実現させることができる。
【0103】
(変形実施形態)
以上、本発明にかかる駆動機構(駆動方法)をデジタルカメラ1の振れ補正機構に適用した場合について説明したが、本発明は撮像装置の他の駆動機構にも適用可能である。図15は、動体追尾撮影を行う移動体カメラ(パン・チルトカメラ)70の一例を概略的に示す図である。この移動体カメラ70は、結像部72を有する撮像装置71、パン用アクチュエータ73及びチルト用アクチュエータ74、動体追尾センサ75、パン方向振動検出器76a及びチルト方向振動検出器76bを備えて構成される。
【0104】
撮像装置71は、撮像素子を内部に備える球体を呈し、前記パン用アクチュエータ73及びチルト用アクチュエータ74により回動自在に支持されている。結像部72は、移動体の移動方向の光像を前記撮像素子の撮像面上に結像させるものである。パン用アクチュエータ73は、撮像装置71をパン方向(図15の矢印Paに示す方向)に駆動するものである。チルト用アクチュエータ74は、撮像装置71をチルト方向(図15の矢印Tiに示す方向)に駆動するものである。動体追尾センサ75は、ターゲットとなる被写体の動きをセンシングし、その位置情報を求めるものである。また、パン方向振動検出器76a及びチルト方向振動検出器76bは、それぞれ移動体カメラ70のパン方向の加速度及びチルト方向の加速度を検出するものである。
【0105】
図16は、移動体カメラ70のパン・チルト機構に関する主な電気的構成を示すブロック図である。図16に示すように移動体カメラ70は、図15に示した構成の他、パン・チルト制御部77を備える。また前記パン用アクチュエータ73は、パン用モータドライバ731とパン用駆動モータ732とで構成され、チルト用アクチュエータ74は、チルト用モータドライバ741とチルト用駆動モータ742とで構成されている。このような構成において、前記パン用駆動モータ732及びチルト用駆動モータ742として、ステッピングモータが用いられている。
【0106】
パン・チルト制御部77は、制御目標位置演算部771及び駆動パルス発生制御部772を備えている。ここで、前記制御目標位置演算部771としては、図4及び図5において説明した制御目標位置演算部14の構成を採用することができる。また前記駆動パルス発生制御部772については、同様に図4及び図5において説明した制御回路4を用いることができる。従って、これらの機能については説明を省略する。
【0107】
このような構成において、動体追尾撮影時に動体追尾センサ75は、ターゲットとなる被写体の動きを位置情報として検出し、その検出信号をパン・チルト制御部77の制御目標位置演算部771へ出力する。またパン方向振動検出器76aは、移動体カメラ70のパン方向の加速度を検出し、チルト方向振動検出器76bは、移動体カメラ70のチルト方向の加速度を検出し、その検出加速度信号をそれぞれパン・チルト制御部77の制御目標位置演算部771へ出力する。
【0108】
制御目標位置演算部771では、被写体の位置情報とパン方向及びチルト方向の加速度とに応じて、パン用駆動モータ732とチルト用駆動モータ742を構成するステッピングモータをサーボ制御するための制御目標値を設定する。すなわち、移動体カメラ70の振動を補正しつつ被写体の動きを追尾するような制御目標値を設定する。
【0109】
駆動パルス発生制御部772は、前記制御目標値を所定のサンプリング周期でサンプリングし、先に図7、図8、図10若しくは図13にて例示したような駆動パルス発生制御を行う。そして駆動パルス発生制御部772で生成された制御信号は、パン用モータドライバ731及びチルト用モータドライバ741へ出力され、パン用モータドライバ731及びチルト用モータドライバ741により実際にパン用駆動モータ732とチルト用駆動モータ742を駆動する駆動パルスが生成される。
【0110】
このように駆動制御されるパン用駆動モータ732とチルト用駆動モータ742により、撮像装置100は被写体を追尾するようにパン方向Pa及びチルト方向Tiに回転駆動される。この際、移動体カメラ70に振動が与えられたとしても、パン方向振動検出器76a及びチルト方向振動検出器76bの検出信号に基づき、振れ補正が加えられた制御目標値が設定されているので、画像の振れが抑制された状態で撮像を行うことができる。
【0111】
以上、本発明にかかる駆動機構(駆動方法)を撮像装置の手振れ補正機構等に適用した実施形態につき例示したが、撮像装置の他の駆動系、例えばズーム系や絞り機構などにも適用可能である。しかし、手振れ補正機構に適用した場合、ステッピングモータが備える種々の利点、つまりオープンループ制御が可能であることから位置センサやフィードバック制御系が不要となり制御構成が簡素化できるという利点を生かし、デジタルカメラの小型化やコストダウンに対応できることから特に好ましい。なお、手振れ補正機構による揺動対象は、上述の実施形態のように鏡胴であっても、撮像素子であっても良い。また、駆動対象とされる鏡胴は屈曲型のものに限られず、沈胴型の鏡胴であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明にかかる駆動機構(駆動方法)は、撮像装置以外の各種電気機器、機械装置、光学機器等の各種サーボ制御駆動系にも適用できる。例えば各種のロボット装置、計測装置、弁操作装置などにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明にかかる駆動方法を模式的に示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるデジタルカメラの外観を示す図であって、図2(a)はその正面図、(b)は背面図をそれぞれ示している。
【図3】鏡胴の揺動駆動機構の一例を模式的に示した斜視図である。
【図4】本実施形態におけるデジタルカメラの構成を、本発明にかかわる電気的構成の要部についてのみ概略的に示したブロック図である。
【図5】駆動パルス発生制御部の機能を説明するための機能ブロック図である(本発明にかかる駆動機構の一実施形態を示すブロック図でもある)。
【図6】駆動応答特性の一例を示すグラフ図である。
【図7】駆動パルス発生制御の一例を示すタイムチャートである。
【図8】駆動パルス発生制御の一例を示すタイムチャートである。
【図9】図8に示す駆動パルス発生制御を行う場合における制御回路の制御シーケンスを示すフローチャートである。
【図10】駆動パルス発生制御の一例を示すタイムチャートである。
【図11】駆動パルス数と速度との関係について説明するための説明図である。
【図12】図10のタイムチャートに示した駆動パルス発生制御方法における、制御目標位置と移動軌跡との関係を模式的に示すグラフ図である。
【図13】駆動パルス発生制御の一例を示すタイムチャートである。
【図14】図13のタイムチャートに示した駆動パルス発生制御方法における、制御目標位置と移動軌跡との関係を模式的に示すグラフ図である。
【図15】本発明の実施形態にかかる動体追尾撮影を行う移動体カメラ(パン・チルトカメラ)の一例を概略的に示す図である。
【図16】上記移動体カメラの電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0114】
1 デジタルカメラ(撮像装置)
11 ピッチ振れ検出ジャイロ(振れ検出手段)
12 ヨー振れ検出ジャイロ(振れ検出手段)
14 制御目標位置演算部(制御情報設定部)
2 鏡胴
3 ステッピングモータ
3a ピッチ方向モータ(ステッピングモータ)
3b ヨー方向モータ(ステッピングモータ)
4 制御回路(駆動パルス発生制御部)
41 サンプリング周期設定部
42 ウェイト時間設定部
43 サンプリング部
44 比較部
45 駆動方向判別部
46 出力パルス数算出部
5 積分回路
6 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の駆動パルスにより駆動されるステッピングモータを、サーボ制御方式で駆動させる駆動方法であって、
所定のサンプリング周期を設定すると共に、該サンプリング周期毎に、前記ステッピングモータを駆動させる駆動パルスの発生条件の設定を行うことを特徴とする駆動方法。
【請求項2】
前記サンプリング周期で制御目標情報を取得し、
取得された前記制御目標情報に応じて、前記サンプリング周期毎に、前記ステッピングモータを駆動させる駆動パルスの発生条件の設定を行うことを特徴とする請求項1記載の駆動方法。
【請求項3】
前記制御目標情報が、前記ステッピングモータにより駆動される駆動対象物の位置情報であることを特徴とする請求項2記載の駆動方法。
【請求項4】
所定の駆動パルスにより駆動されるステッピングモータと、前記駆動パルスの発生条件を制御する駆動パルス発生制御部とを備える駆動機構であって、
前記駆動パルス発生制御部には、所定のサンプリング周期が設定されており、
前記駆動パルス発生制御部は、前記サンプリング周期毎に、それまでの駆動パルスの発生条件をリセットすると共に、次のサンプリング周期までのサンプリング間隔内における駆動パルス発生条件を定める演算を行うことを特徴とする駆動機構。
【請求項5】
ステッピングモータの制御目標情報を設定する制御情報設定部を備え、
前記駆動パルス発生制御部は、前記制御情報設定部から前記サンプリング周期毎に制御目標情報を取得し、取得された前記制御目標情報に応じて、前記サンプリング間隔内における駆動パルス発生条件を定める演算を行うことを特徴とする請求項4記載の駆動機構。
【請求項6】
前記制御情報設定部により設定される制御目標情報が、前記ステッピングモータにより駆動される駆動対象物の位置情報であり、
駆動パルス発生制御部は、前記駆動対象物の単位時間当たりの移動距離を制御するものであることを特徴とする請求項5記載の駆動方法。
【請求項7】
前記駆動パルスの発生間隔を所定間隔に設定可能とするウェイト時間設定部を備え、
前記ウェイト時間設定部は、第1のサンプリング間隔内において最後に発せられる駆動パルスと、前記第1のサンプリング間隔に続く第2のサンプリング間隔内において最初に発せられる駆動パルスとの発生間隔を、所定のウェイト時間に設定するものであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の駆動機構。
【請求項8】
前記ウェイト時間内に、前記駆動パルス発生制御部による駆動パルス発生条件を定める演算が行われることを特徴とする請求項7記載の駆動機構。
【請求項9】
前記サンプリング周期が一定周期とされており、
前記駆動パルス発生制御部は、個々のサンプリング間隔内において発生させる駆動パルス数を演算で求めて出力するものであることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の駆動機構。
【請求項10】
前記サンプリング周期が一定周期とされていると共に、前記駆動パルスのパルスレートが一定とされており、
前記駆動パルス発生制御部は、個々のサンプリング間隔内において発生させる駆動パルスの数の上限及び下限を設定することで、駆動速度及び駆動分解能を設定可能とされていることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の駆動機構。
【請求項11】
請求項4〜10のいずれかに記載の駆動機構により駆動される駆動対象物が一次遅れ系に近似され固有の折点周波数fを有している場合において、
前記サンプリング周期が、1/f以下の短周期に設定されていることを特徴とする駆動機構。
【請求項12】
被写体の撮像動作を行う撮像手段と、該撮像手段による撮像動作の際に各種の駆動を行う駆動機構とを具備する撮像装置であって、
前記駆動機構として、請求項4〜11のいずれかに記載の駆動機構が採用されていることを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
被写体の撮像動作を行う撮像手段と、該撮像手段による撮像動作の際に機械的な振れ補正を行う振れ補正手段とを具備する撮像装置であって、
前記振れ補正手段は、サーボ制御されたステッピングモータを有する駆動機構を具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項14】
被写体の撮像動作を行う撮像手段と、
所定の駆動機構を備え、前記撮像手段による撮像動作の際に機械的な振れ補正を行う振れ補正手段と、
所定の振れ検出手段により検出される振れ量に基づいて、前記振れ補正手段による駆動目標位置を演算する制御目標位置演算部とを具備する撮像装置であって、
前記振れ補正手段の駆動機構は、
所定の駆動パルスにより駆動されるステッピングモータと、前記駆動パルスの発生条件を制御する駆動パルス発生制御部とを備え、
前記駆動パルス発生制御部には、所定のサンプリング周期が設定されており、
前記駆動パルス発生制御部は、前記サンプリング周期毎に、それまでの駆動パルスの発生条件をリセットすると共に、前記制御目標位置演算部から制御目標位置情報を取得し、取得された制御目標位置情報に応じて、次のサンプリング周期までのサンプリング間隔内における駆動パルス発生条件を定める演算を行う
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項15】
撮像装置本体を一次遅れ系に近似したときの固有の折点周波数をfとするときに、
前記サンプリング周期が、1/f以下の短周期に設定されていることを特徴とする請求項14記載の撮像装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−129597(P2006−129597A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313683(P2004−313683)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】