説明

駆動水噴射ノズル、およびそれを備えた揚砂装置

【課題】駆動水管の配設により沈砂ピットの底部にデッドスペース(沈砂が溜まりやすい場所)が形成されたとしても、沈砂の揚砂効率低下を防止することができる駆動水噴射ノズル、およびそれを備えた揚砂装置(ジェットポンプ)を提供すること。
【解決手段】駆動水管5の先端部に設けられる駆動水噴射ノズル1を、下方向への流れを水平方向に変える第1曲がり部12と、第1曲がり部12の下流側端部から延在し上流側から下流側へ向かうにつれて径が縮小する偏心レデューサ部13と、偏心レデューサ部13の下流側端部から延在し水平方向への流れを上方向に変える第2曲がり部14と、第2曲がり部14の下流側端部から延在し吸込管2の吸込口2aに対向して開口する吐出口1aを先端に形成するノズル部15とを具備する構造としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場やポンプ場の沈砂池に設置され、その池底に沈降した沈砂を揚砂するための揚砂装置に関する。特にジェットポンプ方式の揚砂装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場などの沈砂池から沈砂を揚砂するための揚砂装置としてはバケットコンベア方式のものが従来多用されていたが、近年、臭気対策・維持管理の簡略化・設備費低減対策などの観点から、ジェットポンプ方式の揚砂装置の採用が増加してきている。ジェットポンプ方式の揚砂装置とは、ノズル(駆動水噴射ノズル)から高圧で水を噴出させ、このとき生じる負圧を利用して沈砂の吸い込み・吐き出しをおこなう方式の揚砂装置のことをいう。
【0003】
ここで、ジェットポンプ方式の揚砂装置に関する技術としては、例えば特許文献1に記載された技術がある。特許文献1に記載された揚砂装置(ジェットポンプ)では、砂などのポンプアップ対象物を吸い込む受管の中に、ジェット水流を噴射するジェットノズルが存在しないように、当該受管の開口端とジェットノズルの開口端とを管軸心方向において一定距離を隔てて配置している。そして特許文献1の中において、「受管の構造も簡単で、砂、夾雑物等の詰まりも少なく、受管とジェットノズルとが上記のごとく一定の間隔を隔てて対向して配設されているので装置各部の補修等を極めて容易に行うことができる」と称されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2755382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ジェットポンプ方式の揚砂装置では、沈砂ピットに配設されたその吸込口近傍以外の場所に位置する沈砂の吸引力は小さく、沈砂ピットに溜まった沈砂の一部しか除去することができないという問題が従来からある。ここで、前記の特許文献1に記載された技術によると、たしかに、砂・夾雑物などによる受管の閉塞を防止できるとともに装置各部の補修を容易に行うことができる。しかしながら、特許文献1に記載のジェットポンプでは、曲がりの多い駆動水管が受管の下に配設されることを避けることはできない。このため、沈砂が溜まりやすい(沈砂に対して吸引力が作用しにくい)デッドスペースが駆動水管の配設により沈砂ピットの底部に形成されてしまう。すなわち、特許文献1に記載されたジェットポンプは、従来よりもその維持管理性が向上するものとなってはいるが、一方、沈砂ピットの底部に溜まった沈砂の除去という観点からは従来よりも劣ったものとなっている。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、駆動水管の配設により沈砂ピットの底部にデッドスペース(沈砂が溜まりやすい場所)が形成されたとしても、沈砂の揚砂効率低下を防止することができる駆動水噴射ノズル、およびそれを備えた揚砂装置(ジェットポンプ)を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、駆動水管の先端部に設けられる駆動水噴射ノズルのうち、沈砂ピットの底面に対して並行させる部分を、上流側から下流側へ向かうにつれて径が縮小するレデューサ部とすることにより、駆動水管の配管圧損を低く保ったままで駆動水管の吐出口の位置(レベル)を低くでき、これにより前記課題を解決できることを見出し、この知見に基づき本発明が完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、上記課題を解決するために本発明は、沈砂を固液混合状態で吸い込んで揚砂する揚砂装置の駆動水管の先端部に設けられる駆動水噴射ノズルであって、下方向への流れを水平方向に変える第1曲がり部と、前記第1曲がり部の下流側端部から延在し、上流側から下流側へ向かうにつれて径が縮小するレデューサ部と、前記レデューサ部の下流側端部から延在し、水平方向への流れを上方向に変える第2曲がり部と、前記第2曲がり部の下流側端部から延在し、吸込管の吸込口に対向して開口する吐出口を先端に形成するノズル部と、を備える駆動水噴射ノズルを提供する。
【0009】
この構成によると、上流側から下流側へ向かうにつれて径が縮小する上記レデューサ部により、駆動水管の配管圧損を低く保ったままで吐出口の位置(レベル)を低くできる。ここで、駆動水管の配管圧損を低く保てることで、その吐出口から吸込管の吸込口へ向けて噴射する駆動水管からのジェット水流の勢いは落ちない(勢いを高く保つことができる)。また、駆動水管の吐出口の位置(レベル)を低くできることで、吸込管の吸込口の位置(レベル)も低くすることができ、これにより、沈砂ピットの底面と吸込管の吸込口との間の距離を短くできる。これらにより、駆動水管を吸込管の下方に配設して沈砂ピットの底部にデッドスペース(沈砂が溜まりやすい場所)が形成されたとしても、沈砂の揚砂効率低下を防止することができる。
【0010】
なお、沈砂ピットの底面と吸込管の吸込口との間の距離を短くすることにより沈砂ピットのより深い位置まで吸引力がおよぶので、沈砂ピットの底部にデッドスペースがあってもなくても、より多くの沈砂を吸い込むことができる。
【0011】
また本発明において、前記レデューサ部は、上流側から下流側へ向かうにつれて開口中心が下方向へずれる偏心レデューサ部であることが好ましい。
【0012】
この構成によると、駆動水管の吐出口の位置(レベル)をより低くすることができる。そのため、沈砂ピットの底面と吸込管の吸込口との間の距離をより短くすることができる。
【0013】
さらに本発明において、前記ノズル部の先端部に取り付けられ、上方向に向かうにつれて開口径が縮小する絞り部を有する空気供給ノズルを備えることが好ましい。
【0014】
この構成によると、当該空気供給ノズルから上向きに噴射する空気は、斜め上方に広がることが抑えられ、吸込管の吸込口中心に集中するような流れで上昇するので、圧力水の吐出口と吸込口との間およびその周辺の沈砂の層を崩しやすく、すなわち沈砂の揚砂効率低下をより防止することができる。また、空気供給ノズルからの空気の供給により、吸込管に吸引されて移送される過程で沈砂は洗浄され、かつ吸込管などの揚砂管における管内抵抗が減少し揚砂効率が向上する。
【0015】
さらに本発明において、前記第2曲がり部と前記ノズル部との間に配置され、上流側から下流側へ向かうにつれて径が縮小する第2レデューサ部をさらに備えることが好ましい。
【0016】
この構成によると、駆動水噴射ノズルの径は二段階で縮小される(絞られる)ことになる。これより、駆動水管の配管圧損をより低く保つことができる。
【0017】
また本発明は、その第2の態様によれば、本発明の駆動水噴射ノズルを備える揚砂装置を提供する。この揚砂装置によると、駆動水管を吸込管の下に配設して沈砂ピットの底部にデッドスペース(沈砂が溜まりやすい場所)が形成されたとしても、沈砂の揚砂効率低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る駆動水噴射ノズルを備えた揚砂装置の側面図である。
【図2】図1の駆動水噴射ノズルまわりの拡大図である。
【図3】図2のB−B矢視図およびA−A断面図である。
【図4】他の実施形態に係る駆動水噴射ノズルまわりの拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、ジェットポンプ方式の揚砂装置のことを「ジェットポンプ」と呼ぶこととする。
【0020】
(ジェットポンプの構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る駆動水噴射ノズル1を備えたジェットポンプ10(揚砂装置)の側面図である。図2は、図1の駆動水噴射ノズル1まわりの拡大図である。図3は、図2のB−B矢視図およびA−A断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のジェットポンプ10は、沈砂ピット3の中央に配置された吸込管2と、吸込管2の吸込口2aに対向して開口する吐出口1aを有する駆動水管5とを備えている。駆動水管5は、吸込管2の吸込口2aに向けて高圧水を噴射するためのものであり、その先端部に駆動水噴射ノズル1が設けられている。また、ジェットポンプ10は、空気供給管4、圧力水ポンプ(不図示)、集砂装置(不図示)なども備えている。
【0022】
ここで、沈砂ピット3は、下水処理場やポンプ場に設けられた沈砂池の底に形成されるものである。沈砂池とは、下水処理場やポンプ場に到達した下水が最初に流れ込むコンクリート製の池で、下水に含まれる砂および夾雑物を除去するために設けられる。水よりも比重が大きい砂は、下水をゆっくり流すことで沈砂池の底に沈み、そして集砂装置(不図示)により、沈砂ピット3に流し込まれる。
【0023】
沈砂ピット3は、コンクリート製であり、断面視において、図1に示したように、上方が開口した台形状(下方に向かうにつれて狭くなる形状)となっている。なお、沈砂ピット3の形状は、図1に示したものに限られるものではない。例えば、断面視において、上方が開口した長方形状であってもよい。
【0024】
(吸込管)
沈砂ピット3の中央に配置された吸込管2は、その先端の吸込口2aから沈砂ピット3に溜まった沈砂20を固液混合状態で吸引し、当該吸込管2に接続された沈砂移送管(不図示)を介して沈砂分離機(不図示)へ沈砂20を排出するためのものである。吸込管2は、ステンレス製の管であり、その長手方向を鉛直方向に合わせて、沈砂ピット3の中央に配置されている。
【0025】
(駆動水管)
図2に示すように、駆動水管5は、吸込管2の吸込口2aに向けて圧力水を噴射するためのものであり、その内部を圧力水が流れる。そして、駆動水管5は、直管11と、当該直管11に対して溶接により接続した駆動水噴射ノズル1とを備えている。直管11および駆動水噴射ノズル1は、いずれもステンレス製である。また、駆動水管5は、その上流側で圧力水ポンプ(不図示)に接続されている。なお、圧力水ポンプ(不図示)は、ジェットポンプ10を構成する機器の一つである。
【0026】
(駆動水噴射ノズル)
直管11は、その長手方向を鉛直方向に合わせて配管されている。そして、当該直管11の下流側端部に溶接して取り付けた駆動水噴射ノズル1は、下方向への流れを水平方向に変える第1曲がり部12と、第1曲がり部12の下流側端部から延在し上流側から下流側へ向かうにつれて径が縮小する偏心レデューサ部13(レデューサ部)と、偏心レデューサ部13の下流側端部から延在し水平方向への流れを上方向に変える第2曲がり部14と、第2曲がり部14の下流側端部から延在し吸込管2の吸込口2aに対向して開口する吐出口1aを先端に形成するノズル部15とを備えている。
【0027】
ここで、直管11、第1曲がり部12、偏心レデューサ部13、第2曲がり部14、およびノズル部15は、いずれも相互に溶接(突き合せ溶接)により接続(溶接接続)されている。図2において、溶接線をwで示している。なお、これら部材は、相互にフランジを介して接続(フランジ接続)されてもよいし、螺合(ネジ接続)されてもよい(後述する他の実施形態においても同様)。
【0028】
(第1曲がり部)
第1曲がり部12は、鉛直下向きの流れを水平方向に変えるエルボ部材(90°エルボ)であり、直管11の下流側端部に溶接接続されている。直管11の管径と、第1曲がり部12の管径とは等しい。なお、直管11は、その長手方向を鉛直方向に合わせて配管されるものに限られず、例えば、斜め下向きなどの角度で配管されるものも含まれる。この場合、第1曲がり部12は斜め下向きの流れを水平方向に変える部材(管)であるため、当該第1曲がり部12も90°エルボに限られるものではなく、45°エルボなどとなる場合もある。
【0029】
(偏心レデューサ部)
偏心レデューサ部13は、その長手方向が沈砂ピット3の底面に対して並行配置される部材であり、第1曲がり部12の下流側端部に溶接接続されている。また、偏心レデューサ部13は、第1曲がり部12の管径から、後述する第2曲がり部14の管径へ、駆動水管5の管径を縮小させている。ここで、本実施形態では、偏心レデューサ部13の側面視において、その円錐台の上側の母線13bと、水平線との間の傾斜角αは、30度とされている。なお、傾斜角αは、20度以上60度以下であることが好ましい。傾斜角αを小さくしすぎると、管のレベルを下げるには偏心レデューサ部13を長くしなければならないので沈砂ピット3の底面を広くする必要があり、一方、傾斜角αを大きくしすぎると、駆動水管5の配管圧損が大きくなってしまうからである。
【0030】
また、偏心レデューサ部13の断面形状は円形であり、その開口中心は、上流側から下流側へ向かうにつれて下方向へずれている。ここで、図2において、偏心レデューサ部13の開口中心を結ぶ線を開口中心線βとして示している。開口中心線βは、右下がりの線となっている。また、本実施形態では、偏心レデューサ部13の側面視において、その円錐台の下側の母線13aが水平(沈砂ピット3の底面と平行)となる状態を維持するように、第1曲がり部12の管径から、後述する第2曲がり部14の管径へその管径を縮小させている。
【0031】
なお、開口中心線βは、水平であってもよい。すなわち、上流側から下流側へ向かうにつれて開口中心が同じ高さの同心のレデューサ部であってもよい。また、偏心レデューサ部13の断面形状は楕円形などであってもよい(後述する他の実施形態においても同様)。
【0032】
また、図3(a)に、図2のB−B矢視図を示したように、偏心レデューサ部13の平面視において、その円錐台の両側の母線13c・13dは、当該偏心レデューサ部13の軸線に対して左右対称となっている(後述する他の実施形態においても同様)。
【0033】
(第2曲がり部)
第2曲がり部14は、水平方向の流れを鉛直上向きの流れに変えるエルボ部材(90°エルボ)であり、偏心レデューサ部13の下流側端部に溶接接続されている。第2曲がり部14の管径は、第1曲がり部12の管径よりも小さい。
【0034】
(ノズル部)
ノズル部15は、第2曲がり部14の管径と同径の筒状部材であり、第2曲がり部14の下流側端部に溶接接続されている。ノズル部15の先端の吐出口1aから吸込管2の吸込口2aに向けて圧力水が噴射される。なお、ノズル部15と第2曲がり部14とは管の曲げ加工により一体成形することもできる。
【0035】
また、ノズル部15の先端部には、空気供給ノズル6がネジ込みまたは溶接により取り付けられている。この空気供給ノズル6は、筒状部6aと絞り部6bとを有している。筒状部6aの内径は、ノズル部15の外径よりも大きく、絞り部6bは、上方向に向かうにつれてその開口径が絞られている。また、絞り部6bの上端は、吐出口1aの上端よりも上方に位置する。また、筒状部6aの側面には、空気供給管4の下流側端部が接続されている。空気供給管4には、その上流側において図示しない空気供給装置(空気圧縮機)が接続されている。空気供給ノズル6はステンレス製である。また、空気供給ノズル6の外径は、吸込管2の吸込口2aの内径よりも小さい。また、空気供給管4は、駆動水管5に沿わせて配管されている。なお、空気供給管4に空気供給装置が接続されておらず、空気供給管4の上流側端部が大気開放されていてもよい。
【0036】
(ジェットポンプの作動)
次に、ジェットポンプ10の作動について説明する。
【0037】
ジェットポンプ1の圧力水ポンプ(不図示)を起動させて、駆動水管5に圧力水を供給し、その吐出口1aから吸込管2の吸込口2aに向けて圧力水を噴射させる。噴射された圧力水は、沈砂ピット3内の沈砂20とともに吸込口2aから吸込管2内に吸引される。このようにして吸込管2内に吸引された沈砂20は、当該吸込管2に接続された沈砂移送管(不図示)を経由して沈砂分離機(不図示)へ排出される。
【0038】
ここで、駆動水管5の吐出口1aから吸込管2の吸込口2aに向けて圧力水を噴射させるとともに、空気供給装置(不図示)を起動させて、空気供給ノズル6から吸込管2の吸込口2aに向けて空気を供給する。空気供給ノズル6からの空気の供給により、吐出口1aと吸込口2aとの間およびその周辺の沈砂20の層が崩されやすくなって、起動初期の揚砂の助けとなる。空気供給ノズル6からの空気の供給は、圧力水ポンプ(不図示)の起動初期だけでもよいし、圧力水ポンプ(不図示)の運転中、連続して行ってもよい。図3(b)に示したように、空気供給ノズル6の先端を絞っているので(絞り部6b)、当該空気供給ノズル6から上向きに噴射する空気は、斜め上方に広がることが抑えられ、吸込管2の吸込口2a中心に集中するような流れで上昇するので、吐出口1aと吸込口2aとの間およびその周辺の沈砂20の層を崩しやすく、すなわち沈砂20の揚砂効率低下を防止することができる。
【0039】
また、空気供給ノズル6から吸込管2への空気の供給により、吸込管2に吸引され沈砂移送管内を移送される沈砂20は洗浄される。また、吸込管2および沈砂移送管における管内抵抗が減少し揚砂効率が向上するという効果もある。
【0040】
また、吸込管2の吸込口2aに対向して開口する吐出口1aとなるように、吸込管2の下方に駆動水管5を配設することにより、沈砂ピットの底部(駆動水管5の下など)にデッドスペース(沈砂が溜まりやすい場所)が形成されてしまう。しかしながら、本実施形態のジェットポンプ10によると、上流側から下流側へ向かうにつれて径が縮小する偏心レデューサ部13により、駆動水管5の配管圧損を低く保ったままで吐出口1aの位置(レベル)を低くできる。ここで、駆動水管5の配管圧損を低く保てることで、その吐出口1aから吸込管2の吸込口2aへ向けて噴射する駆動水管5からのジェット水流の勢いは落ちない(勢いを高く保つことができる)。また、駆動水管5の吐出口1aの位置(レベル)を低くできることで、吸込管2の吸込口2aの位置(レベル)も低くすることができ、これにより、沈砂ピット3の底面と吸込管2の吸込口2aとの間の距離を短くできる。これらにより、駆動水管5を吸込管2の下方に配設して沈砂ピット3の底部にデッドスペース(沈砂が溜まりやすい場所)が形成されたとしても、沈砂20の揚砂効率低下を防止することができる。
【0041】
なお、沈砂ピット3の底面と吸込管2の吸込口2aとの間の距離を短くすることにより沈砂ピット3のより深い位置まで吸引力がおよぶので、沈砂ピット3の底部にデッドスペースがあってもなくても、より多くの沈砂20を吸い込むことができる(ジェットポンプ1運転後の沈砂20の吸い残しを少なくできる)。
【0042】
また、本実施形態では、偏心レデューサ部13の側面視において、その円錐台の下側の母線13aが水平とるように径を縮小させているので、駆動水管5の吐出口1aの位置(レベル)をより低くすることができている。
【0043】
(駆動水噴射ノズルの他の実施形態)
図4は、他の実施形態に係る駆動水噴射ノズル21まわりの側面図である。なお、図4は、前記実施形態の図2に対応する図である。以下の説明においては、前記した駆動水噴射ノズル1との相違点について主に説明することとする。前記のジェットポンプ10を構成する部材と同一の部材については同一の符号を付している。
【0044】
(偏心レデューサ部)
本実施形態の偏心レデューサ部23(第1レデューサ部)と、前記の偏心レデューサ部13との相違点は、下流側端部の管径および管の長さである。本実施形態の偏心レデューサ部23は、前記の偏心レデューサ部13よりも、下流側端部の管径は大きくされており、その結果、管長さは短くなっている。なお、傾斜角αに関しては、偏心レデューサ部13と同様に30度とされている。また、偏心レデューサ部13と同様に、傾斜角αは20度以上60度以下であることが好ましい。傾斜角αを小さくしすぎると、管のレベルを下げるには偏心レデューサ部23を長くしなければならないので沈砂ピット3の底面を広くする必要があり、一方、傾斜角αを大きくしすぎると、駆動水管25の配管圧損が大きくなってしまうからである。
【0045】
なお、本実施形態によると、沈砂ピット3の底面に対して並行配置される偏心レデューサ部23の管長さが、前記したように偏心レデューサ部13の管長さよりも短くなるので、平面視においてよりコンパクトな駆動水噴射ノズル21となる。
【0046】
(第2曲がり部)
本実施形態の第2曲がり部24と、前記の第2曲がり部14との相違点は、管径である。本実施形態の第2曲がり部24の管径は、第1曲がり部12の管径よりも小さく、前記の第2曲がり部14の管径よりも大きい。
【0047】
(第2レデューサ部)
本実施形態の駆動水噴射ノズル21は、第2レデューサ部22をさらに備えている。第2レデューサ部22は、その軸心方向が鉛直方向に配置される部材であり、第2曲がり部24の下流側端部に溶接接続されている。また、第2レデューサ部22は、第2曲がり部24の管径から後述するノズル部25の管径へ、駆動水噴射ノズルの管径を縮小させている。ここで、第2レデューサ部22は同心のレデューサ部(同心レデューサ)である。第2レデューサ部22の側面視において、その円錐台の母線22a(22b)と軸心方向(鉛直方向)との間の傾斜角γは、25度とされている。なお、傾斜角γは、20度以上40度以下であることが好ましい。傾斜角γを小さくしすぎると、ノズル部25の位置が高くなってしまうからであり、傾斜角γを大きくしすぎると、駆動水管25の配管圧損が大きくなってしまうからである。
【0048】
なお、第2レデューサ部22は、同心レデューサではなく偏心レデューサ(第2偏心レデューサ部)であってもよい。この場合、駆動水噴射ノズル21の外側に位置する側の母線22bを鉛直方向に合わせ、内側に位置する側の母線22aを傾斜させることが好ましい。内側に位置する側の母線22aの鉛直方向に対する傾斜角γは、25度以上55度以下とすることが好ましい。これらにより、第2レデューサ部の水の流れがよりスムーズになって配管圧損をより低く抑えることができる。
【0049】
(ノズル部)
ノズル部25は、第2曲がり部24の下流側端部から第2レデューサ部22を介して延在し、吸込管2の吸込口2aに対向して開口する吐出口1aを先端に形成するノズル部である。また、ノズル部25は第2レデューサ部22の下流側端部の管径と同径の筒状部材であり、第2レデューサ部22の下流側端部に溶接接続されている。なお、ノズル部25と第2レデューサ部22とは絞り加工により一体成形することもできる。また、ノズル部25の先端部に、図2に示したような空気供給ノズル6を取り付けるなどして、空気を供給できる構造にしてもよい。
【0050】
(実験結果)
本実施形態に係る駆動水噴射ノズル21と比較例に係る駆動水噴射ノズルとを試作し、性能比較試験を行った。
【0051】
駆動水噴射ノズル21は、上流側から順に、150Aの直管11(鉛直管)、150A・90°エルボの第1曲がり部12、150A−80Aの第1偏心レデューサ部23、80A・90°エルボの第2曲がり部24、80A−36mmの第2同心レデューサ部22、および口径36mmのノズル部25からなるノズルとした。
【0052】
これに対し、比較例に係る駆動水噴射ノズルは、上流側から順に、150Aの直管(鉛直管)、150A・90°エルボ、150Aの直管(水平配置の短管)、150A・90°エルボ、150A−36mmの同心レデューサ、および口径36mmのノズル部からなるノズルとした。
【0053】
そして、試作した上記2種類の駆動水噴射ノズルの圧力損失を測定した。その結果、駆動水噴射ノズル21によると、その圧力損失を十分に低く保つことができることがわかった。なお、本実施形態の駆動水噴射ノズル21によると、比較例に係る駆動水噴射ノズルよりも、その吐出口1aのレベルを少なくとも100mm低くすることができる。
【0054】
すなわち、本実施形態のように駆動水噴射ノズル21の径を二段階で縮小する(絞る)ことにより、その吐出口1aのレベルを低くしつつも駆動水管の配管圧損を十分に低く保つことができる。
【0055】
なお、駆動水噴射ノズルの径を三段階以上に分けて縮小する(絞る)ことも検討したが、本実施形態のように二段階で縮小する(絞る)場合に比して配管圧損の大きな低下は認められなかった。一方、径の絞り回数を増加させていくと吐出口1aのレベルは徐々に高くなる傾向にある。すなわち、吐出口1aのレベルを低くすることも考慮すると、複数段階で径を縮小させる場合は、駆動水噴射ノズルの径を二段階で縮小させる(絞る)ことが好ましい。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【0057】
駆動水管の先端部に設けられる駆動水噴射ノズルのうち、沈砂ピットの底面に対して並行させる部分を、上流側から下流側へ向かうにつれて径が縮小するレデューサ部とすることにより、駆動水管の配管圧損を低く保ったままで駆動水管の吐出口の位置(レベル)を低くできるのであり、すなわち、本発明は、三段階以上の複数段階で径が絞られる形態の駆動水噴射ノズルをも含む。
【符号の説明】
【0058】
1:駆動水噴射ノズル
2:吸込管
2a:吸込口
3:沈砂ピット
5:駆動水管
5a:吐出口
6:空気供給ノズル
10:ジェットポンプ(揚砂装置)
12:第1曲がり部
13:偏心レデューサ部(レデューサ部)
14:第2曲がり部
15:ノズル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈砂を固液混合状態で吸い込んで揚砂する揚砂装置の駆動水管の先端部に設けられる駆動水噴射ノズルであって、
下方向への流れを水平方向に変える第1曲がり部と、
前記第1曲がり部の下流側端部から延在し、上流側から下流側へ向かうにつれて径が縮小するレデューサ部と、
前記レデューサ部の下流側端部から延在し、水平方向への流れを上方向に変える第2曲がり部と、
前記第2曲がり部の下流側端部から延在し、吸込管の吸込口に対向して開口する吐出口を先端に形成するノズル部と、
を備えることを特徴とする、駆動水噴射ノズル。
【請求項2】
前記レデューサ部は、上流側から下流側へ向かうにつれて開口中心が下方向へずれる偏心レデューサ部であることを特徴とする、請求項1に記載の駆動水噴射ノズル。
【請求項3】
前記ノズル部の先端部に取り付けられ、上方向に向かうにつれて開口径が縮小する絞り部を有する空気供給ノズルを備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の駆動水噴射ノズル。
【請求項4】
前記第2曲がり部と前記ノズル部との間に配置され、上流側から下流側へ向かうにつれて径が縮小する第2レデューサ部をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の駆動水噴射ノズル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の駆動水噴射ノズルを備える揚砂装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−90888(P2010−90888A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59878(P2009−59878)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】