説明

駆動装置、およびこれを備えた撮像装置、電子機器

【課題】被駆動体の円滑な駆動が可能であり、かつ小型化が可能な駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置は、一端部が筐体に固定されており、電気的制御により屈曲変位が生じる電気機械変換素子と、一端部が上記電気機械変換素子に連結されており、他端部が被駆動体と摩擦接触している摩擦部材と、一端部が上記被駆動体に固定されるとともに他端部が上記筐体に固定されており、上記被駆動体を上記摩擦部材側へ付勢する予圧部材とを備えている。これにより、駆動装置の構造をより簡単に、かつ機能をより安定させることができる。即ち、被駆動体の円滑な駆動が可能であり、かつ小型化が可能な駆動装置を提供することができる。例えば、本発明に係る駆動装置をカメラ等の撮像装置のレンズ駆動に用いた場合には、より小型化された、駆動速度がより均一で、かつピント調整の精度がより優れた製品を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、およびこれを備えた撮像装置、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機械変換素子(圧電素子)を用いて被駆動体を駆動するための駆動装置が提案されている。このような駆動装置は、例えば、カメラの撮影レンズ等、光学装置におけるレンズの駆動に用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、電圧印加により屈曲する圧電素子と、圧電素子の一端を保持する保持部材と、圧電素子の自由端と摩擦接触する被駆動体と、圧電素子と被駆動体とを一定の力で押し付けるための予圧機構とを備え、圧電素子の屈曲変位によって摩擦接触している被駆動体を移動させる駆動装置に係る発明が開示されている。
【特許文献1】特開2007−252103号公報(平成19(2007)年 9月27日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示の駆動装置は、被駆動体を円滑に移動させるには、ばね等の予圧発生部材とベアリング等の摺動用部材とが必要であるため、装置の小型化が困難であった。また、特許文献1では、予圧機構についての詳細な説明がなされていない。さらに、特許文献1に開示の駆動装置内には、予圧機構を設ける充分なスペースもなかった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被駆動体の円滑な駆動が可能であり、かつ小型化が可能な駆動装置を提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の目的は、簡便な予圧機構を小スペースに設けることが可能であり、駆動部材と被駆動体との間で作用する摩擦力、および被駆動体の駆動速度が安定した駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る駆動装置は、上記の課題を解決するために、一端部が筐体に固定されており、電気的制御により屈曲変位が生じる電気機械変換素子と、一端部が上記電気機械変換素子に連結されており、他端部が被駆動体と摩擦接触している摩擦部材と、一端部が上記被駆動体に固定されるとともに他端部が上記筐体に固定されており、上記被駆動体を上記摩擦部材と当接する方向へ付勢する予圧部材とを備えていることを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、電気的制御によって電気機械変換素子を屈曲させ、摩擦部材を介して被駆動体を一定方向へ移動させることができる。また、予圧部材の一端部が上記被駆動体に固定されるとともに他端部が筐体に固定されているため、上記被駆動体が移動することによって上記予圧部材が変位する。これにより、駆動装置の構造をより簡単に、かつ機能をより安定させることができる。即ち、被駆動体の円滑な駆動が可能であり、かつ小型化が可能な駆動装置を提供することができる。
【0009】
本発明に係る駆動装置は、上記予圧部材がコイルばねであることがより好ましい。
【0010】
上記の構成によれば、コイルばねが優れた弾性を有するため、被駆動体の移動過程において、より安定した予圧効果を果たすことができる。また、被駆動体が駆動する方向への負荷を低減することが可能となり、安定した駆動が可能となる。
【0011】
また、本発明に係る駆動装置は、コイルばねの一端または両端が弾性の無い密着巻きにされていることがより好ましい。
【0012】
上記の構成によれば、コイルばねの両端部を被駆動体および筐体に固定するとき、固定面に当たるコイルばねの部分をより安定させることができる。例えば、接着剤等を使用して固定する場合には、より広くて安定な状態の接着面を確保することができる。また、コイルばねの変位によって生じる牽引力の固定部分に対する影響を緩和することができる。
【0013】
本発明に係る駆動装置は、上記予圧部材が動作最大点に達したときの当該予圧部材の長さ方向が、被駆動体の移動方向に対して垂直ではないことがより好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、被駆動体の移動過程において、予圧部材の変位によって生じる力が被駆動体の移動動作に対する抵抗要因になることを回避することができる。
【0015】
本発明に係る駆動装置は、上記予圧部材における被駆動体に固定されている一端部は、上記被駆動体の移動に伴って移動し、その最大移動範囲内に、上記一端部が、上記摩擦部材を通り上記被駆動体の移動方向に垂直な予圧垂線上に位置する箇所があることがより好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、予圧部材による被駆動体に対する予圧荷重を、より安定させることができる。
【0017】
本発明に係る駆動装置は、上記予圧部材を複数備えていることがより好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、被駆動体を電気機械変換素子側へより安定して付勢させることができる。
【0019】
本発明に係る駆動装置は、上記予圧部材が全てコイルばねであり、被駆動体の移動範囲内における任意の位置において、上記コイルばねの長さ方向が互いに平行にならないことがより好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、被駆動体の移動動作に対する、複数備えられているコイルばねによる抵抗力の極値が重なることがないので、より安定した被駆動体の移動動作を行うことができる。
【0021】
本発明に係る駆動装置は、上記被駆動体を支持するとともに被駆動体を移動方向に付勢する支持弾性部材をさらに備え、上記予圧部材の静止状態から変形を伴う被駆動体の移動方向と、上記支持弾性部材の付勢方向とが互いに異なっていることがより好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、被駆動体に対する予圧部材による付勢力と支持弾性部材による付勢力とを互いに打ち消す方向に、上記予圧部材および支持弾性部材が配置されているので、被駆動体の往復での移動速度が異なる状況を緩和することができる。
【0023】
本発明に係る駆動装置は、上記電気機械変換素子と上記摩擦部材との間に固定部材を設けていることがより好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、予圧部材による被駆動体に対する予圧荷重を、より安定させることができる。
【0025】
本発明に係る駆動装置は、上記固定部材は、摩擦部材の移動方向を電気機械変換素子の駆動方向と異ならせるようになっていることがより好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、筐体内における電気機械変換素子の配置に自由度が増すので、筐体の外形サイズ、即ち、駆動装置の大きさをより小さくすることができる。
【0027】
本発明に係る撮像装置は、上記の課題を解決するために、上記駆動装置を備えていることを特徴としている。
【0028】
上記の構成によれば、駆動速度がより安定した、より精度の高い撮像装置を提供することができる。
【0029】
本発明に係る電子機器は、上記の課題を解決するために、上記駆動装置または撮像装置を備えていることを特徴としている。
【0030】
上記の構成によれば、駆動速度がより安定した、より精度の高い、より小型化された電子機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る駆動装置は、一端部が筐体に固定されており、電気的制御により屈曲変位が生じる電気機械変換素子と、一端部が上記電気機械変換素子に連結されており、他端部が被駆動体と摩擦接触している摩擦部材と、一端部が上記被駆動体に固定されるとともに他端部が上記筐体に固定されており、上記被駆動体を上記摩擦部材と当接する方向へ付勢する予圧部材とを備えていることを特徴としている。
【0032】
これにより、駆動装置の構造をより簡単に、かつ機能をより安定させることができる。つまり、ベアリング等の摺動用部材を用いなくても、従来技術と比べて被駆動体に対する予圧荷重の変動や、被駆動体の移動動作に対する抵抗変化が少ない構造を実現することができる。即ち、被駆動体の円滑な駆動が可能であり、かつ小型化が可能な駆動装置を提供することができる。例えば、本発明に係る駆動装置をカメラ等の撮像装置のレンズ駆動に用いた場合には、より小型化された、駆動速度がより均一で、かつピント調整の精度がより優れた製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の実施の形態を、図1乃至図15に基づいて説明すると以下の通りである。
【0034】
〔実施の形態1〕
図1は、実施の形態1における駆動装置の構成を示す概略の平面図であり、図2は、上記駆動装置の構成を示す概略の側面図である。
【0035】
以下の説明においては、被駆動体の移動方向をz方向とし、z方向に垂直で静止状態のときにおける電気機械変換素子の長さ方向をy方向とし、y方向およびz方向に垂直な方向をx方向とする。
【0036】
本実施の形態における駆動装置は、図1および図2に示すように、被駆動体2と、一端部が筐体6に固定されており、電気的制御により屈曲変位が生じる電気機械変換素子5と、一端部が上記電気機械変換素子5に連結されており、他端部が被駆動体2の被駆動体接触部2aと摩擦接触している摩擦部材3と、上記電気機械変換素子5と上記摩擦部材3との間に設けられた固定部材4と、一端部が上記被駆動体接触部2aに固定されるとともに他端部が上記筐体6に固定されており、上記被駆動体接触部2aを上記摩擦部材3と当接する方向へ付勢する予圧部材1とを備えている。
【0037】
筐体6は、予圧部材1や電気機械変換素子5等をその内部に備える枠構造であり、駆動装置の強度や機能を確保するためのものである。例えば、本発明の駆動装置が電子機器等に内蔵され、電子機器本体に直接予圧部材1や電気機械変換素子5等が設けられている場合には、電子機器本体を筐体6と見なすことができる。
【0038】
電気機械変換素子5は、筐体6の側壁に垂直に配置されている。電気機械変換素子5の固定端(一端部)や予圧部材1の他端部は筐体6に固定されている。従って、被駆動体2の移動によって、被駆動体2と筐体6との相対位置が変化するとともに、被駆動体2と電気機械変換素子5および予圧部材1との相対位置も変化する。
【0039】
筐体6に設けられた案内部材6aは、被駆動体2をz方向に沿って円滑に移動させるためのガイド構造を備えている。尚、案内部材6aは、例えば、筐体6の底面に対して垂直に設けられた軸を被駆動体2に設けられた軸孔に通した構成であってもよい。
【0040】
被駆動体2は、予圧部材1によって電気機械変換素子5側へ常時付勢されるようになっている。このため、被駆動体2は、安定した位置を保つことができる。例えば、本発明に係る駆動装置を携帯電話等の携帯型の電子機器に応用する場合には、当該電子機器は落下等による衝撃を受けるおそれが高い。このため、本発明の駆動装置をそのような電子機器に使用する場合には、案内部材6aを利用して被駆動体2の位置を安定に保つこと、つまり、被駆動体2が筐体6から外れることを防止することがより効果的である。
【0041】
摩擦部材3、固定部材4および電気機械変換素子5で駆動機構が構成されており、電気機械変換素子5が屈曲することによって、筐体6に設けられた案内部材6aに従い、被駆動体2がz方向に移動するようになっている。
【0042】
予圧部材1と摩擦部材3とは、被駆動体接触部2aを挟んで配置されており、予圧部材1によって被駆動体2の被駆動体接触部2aが摩擦部材3と当接する方向へ常時付勢されている。
【0043】
予圧部材1は、その一端部が上記被駆動体2の被駆動体接触部2aに固定されるとともに他端部が上記筐体6に固定されている。このため、被駆動体2が移動するとそれに伴い予圧部材1も連帯して移動し、変形する。
【0044】
予圧部材1は、コイルばねや、コイルばねのように弾性を有する部材であることが好ましく、コイルばねである場合にはその一端または両端が弾性の無い密着巻きにされていることがより好ましい。
【0045】
コイルばねが密着巻きにされている場合の効果は以下の通りである。
【0046】
コイルばねの一端または両端を弾性の無い密着巻きにすると、接着剤等を利用して上記コイルばねを筐体6または被駆動体2に固定するときに、接着剤の塗布面積を大きく確保することができる。また、密着巻きにすることにより、固定される範囲が製造公差等によりばらつくことが無いので、安定した予圧荷重を得ることができる。
【0047】
密着巻きにされているコイルばねを筐体6または被駆動体2に固定する他の構成として、被駆動体2にコイルばねを固定するための凹部または凸部を設けるとともに筐体6にコイルばねを固定するための凹部または孔部を設けておき、これら各部にてコイルばねを固定するとともにその押圧力(予圧荷重)をネジ等によって調整する調整機構を設けた構成とすることもできる。本発明に係る駆動装置を量産するためには、予圧部材1の押圧力を適宜調整する必要がある。このため、ネジ等によって予圧部材1の押圧力を調整する構成とすれば、生産性の高い駆動装置を実現することができる。
【0048】
摩擦部材3は、電気機械変換素子5の自由端側に連結されており、電気機械変換素子5が屈曲すると、それに伴って移動する。そして、摩擦部材3と被駆動体接触部2aとの間で作用する摩擦力の働きによって被駆動体2が移動するようになっている。摩擦部材3の材料は、被駆動体接触部2aとの摩擦係数を考慮して適した材料を選択すればよく、例えば、金属、樹脂、カーボン等が挙げられる。
【0049】
固定部材4は、電気機械変換素子5と摩擦部材3の間に設けられており、予圧部材1と比較して弾性の低い材料や形状であることが好ましく、例えば、金属や樹脂等が挙げられる。固定部材4の弾力効果を予圧部材1よりも低くすることによって、被駆動体接触部2aの摩擦部材3と当接する方向への付勢が均一に行われるので、被駆動体2を安定して移動させることができる。
【0050】
電気機械変換素子5は、バイモルフ型の圧電素子であり、例えば、金属板の両面或いは片面に積層圧電素子を形成することにより構成されている。電気機械変換素子5は、駆動装置が備えるべき正常機能を維持するために必要な屈曲変位度を有していればよい。従って、電気機械変換素子5の構成や形状は特定の構成や形状に限定されるものではない。
【0051】
電気機械変換素子5の一端部は筐体6に接着または嵌込まれて固定端になっており、他端部は自由端になっており、摩擦部材3が設けられた固定部材4に連結されている。電気機械変換素子5に電圧を印加すると、電気機械変換素子5の自由端はz方向に屈曲変位し、これに伴い摩擦部材3もz方向に変位する。そして、予圧部材1の予圧荷重によって生じる被駆動体接触部2aと摩擦部材3との間の摩擦力により、被駆動体2がz方向に移動する。
【0052】
そして、本発明に係る駆動装置をカメラモジュール(カメラ等の撮像装置のレンズ駆動)に応用する場合には、被駆動体2は、その中央部に円環状のレンズ取り付け部を有するレンズバレルとなり、摩擦部材3および電気機械変換素子5を含む駆動機構によって光軸方向(z方向)に駆動されることにより、レンズ取り付け部に取り付けられたレンズのAF(オートフォーカス)動作を実現することになる。
【0053】
ここで、図2に示すように、摩擦部材3の中心を通りy方向に平行な線を予圧垂線と定義する。予圧部材1によって生じる力は、予圧垂線と同方向において被駆動体2へ印加され、摩擦部材3と被駆動体2との間の予圧荷重となる。また、被駆動体2がz方向に移動すると、予圧部材1は、静止状態のときから、自身の中心軸方向(長さ方向)とz方向とにおいて同時に変形する。そして、予圧部材1(コイルばね)がその中心軸方向において最も圧縮された状態を最圧縮状態、予圧部材1がその中心軸方向において最も伸長された状態を最伸長状態と定義する。予圧部材1は、最伸長状態(動作最大点)に達したときの当該予圧部材1の長さ方向がz方向に対して垂直とならないように固定されている。また、上記予圧部材1における被駆動体2の被駆動体接触部2aに固定されている一端部は、上記被駆動体2の移動に伴って移動し、その最大移動範囲内(駆動ストローク)に上記一端部が上記予圧垂線上に位置する箇所があるように固定されている。
【0054】
本発明に係る駆動装置における被駆動体2の駆動方法を説明すると以下の通りである。
【0055】
本発明の駆動装置においては、電気機械変換素子5の往復屈曲速度が異なるように、電気機械変換素子5に印加する電圧を制御し、被駆動体2と摩擦部材3との間に作用する摩擦力を速度差によって変化させることにより摩擦移動差を生じさせて、被駆動体2のz方向における変位量(移動量)を変化させる構成となっている。そして、被駆動体2は、予圧部材1(コイルばね)が最圧縮状態となっている下死点と、予圧部材1が最伸長状態となっている上死点(動作最大点)との間(移動範囲内)を往復移動する。
【0056】
図2(a)は、被駆動体2が最大移動範囲内(駆動ストローク)の下死点にある状態を示し、図2(b)は、被駆動体2が駆動ストロークの上死点にある状態を示す。
【0057】
例えば、被駆動体2が下死点にある状態(図2(a)の状態)を初期状態とすると、被駆動体2は、電気機械変換素子5の屈曲変位により、図2(a)および図2(b)の間で適宜移動することになる。尚、図2(b)の状態において被駆動体2が駆動ストロークを越えてさらに移動しないように、筐体6に被駆動体2と当接する当接部を設けてもよい。
【0058】
固定部材4を設けることによって奏する効果を説明すると以下の通りである。
【0059】
コイルばね(予圧部材1)が最圧縮状態のとき、予圧荷重は最も大きくなる(図2(a))。予圧荷重が大きくなると、同時に、案内部材6aと被駆動体2との間の摩擦力も増加するので、被駆動体2の移動抵抗が増大する。ここで、被駆動体2の駆動速度や推力の安定化を図るためには、予圧荷重の変動は少ないほうが望ましい。
【0060】
予圧荷重の変動は、コイルばねのばね定数に関係する。ここで、弾性を有する固定部材4を摩擦部材3と電気機械変換素子5との間に配置することで、固定部材4のばね定数に応じて、予圧荷重の変動を緩和する効果を得ることができる。
【0061】
コイルばねのばね定数をk1、固定部材4のばね定数をk4としたとき、予圧荷重の変動は、新しいばね定数k’とすると、
1/k’=(1/k1)+(1/k4)
で表される。
【0062】
図1および図2等においては、固定部材4と電気機械変換素子5とは別部材として構成している。しかしながら、別部材とした場合には、接着剤等による固定が必要となり、この固定箇所が比較的不安定であるため、駆動回数を重ねたり、予圧荷重が増大したりした場合等には、固定箇所が破損するおそれがある。そこで、電気機械変換素子5の自由端側における金属板を固定部材4と同様の構成に変形させることにより、固定部材と電気機械変換素子とを一体的に構成してもよい。同一部材とした場合には、駆動回数に関わらず、安定した駆動を維持することができるとともに、予圧荷重の大小に関わらず安定した駆動を維持することができる。
【0063】
また、本実施の形態においては、被駆動体接触部2aは被駆動体2の一部として構成されている。しかしながら、被駆動体接触部2aは被駆動体2と別部材であってもよい。つまり、被駆動体2に別部材である被駆動体接触部2aが取り付けられた構成であってもよい。一般に、被駆動体2は樹脂によって形成されている。ところが、被駆動体接触部2aを別部材とすることにより、被駆動体2の材質に関わり無く、摩擦部材3との摩擦係数を考慮して適した材料を選択することができる。具体的には、例えば、被駆動体接触部2aの材料として、金属、カーボン等を選択することができる。
【0064】
ところで、前記最圧縮状態の前後においては、コイルばねのz方向における予圧荷重の向きが反転するので、被駆動体2の同一方向の移動中に、移動速度が急激に変化する点が生まれる。それゆえ、この駆動装置をカメラモジュールに応用すると、レンズのAF動作に不都合を生じることになる。
【0065】
そこで、予圧部材1としてコイルばねを用いた場合には、以下のように固定すればよい。即ち、コイルばねは、被駆動体2の移動ストロークの上死点または下死点において、最圧縮状態となるように、被駆動体2の被駆動体接触部2aおよび筐体6に固定すればよい。
【0066】
また、コイルばねは、横剛性(本実施の形態の場合には、略z方向に対する剛性)が充分に小さい(柔らかい)方が好ましい。コイルばねは、平均径と線径とが同一の場合には、自由長が長いほど、ばね定数および横剛性がともに小さくなる。しかし、横剛性が小さすぎる場合には、被駆動体2の移動に伴ってコイルばねが変形するときに、その変形量によって座屈を生じてしまう。座屈を生じたり、座屈のモードが変化したり、予圧荷重の急激な変化が起こったりすると、被駆動体2の同一方向の移動中に、移動速度が急激に変化する点が生まれる。それゆえ、この駆動装置をカメラモジュールに応用すると、レンズのAF動作に不都合を生じることになる。従って、予圧部材1がコイルばねの場合には、以下の条件式
δ×L0/(D) ≦ 7
(但し、コイルばねの自由長:L0、コイルばねの平均径:D、最圧縮状態におけるコイルばねの中心軸方向の変形量:δ)
を満たすコイルばねを用いることが望ましい。
【0067】
また、コイルばねは、上死点または下死点の何れか(本実施の形態の場合には下死点)で最圧縮状態となるときに、予圧垂線に対して中心軸方向が平行とならないように、コイルばねのどちらか一端をオフセットさせることによって傾けられていることがより好ましい。そのオフセットの方向は、コイルばねが上死点で最圧縮状態となる場合は、筐体6に固定されるコイルばねの端部のオフセットを上にし、コイルばねが下死点で最圧縮状態となる場合は、筐体6に固定されるコイルばねの端部のオフセットを下にするとよい。オフセットさせることにより、各部材に製造誤差や組立誤差がある場合でも、コイルばねが被駆動体2の移動に伴って移動し、変形したときに、最圧縮状態を超えてさらに移動し、変形することを確実に防止することができる。また、仮に座屈が生じたとしても、座屈する方向を一定にすることで、座屈の影響を最小限に抑えることができる。
【0068】
コイルばねの一端部は、被駆動体2とともに移動することから、予圧荷重の大きさは、予圧垂線とコイルばねの中心軸線とがなす角度の変化に伴い変動する。しかしながら、予圧荷重の大きさは、被駆動体2の移動に伴う変動が少ない(変動率10%以下)方が好ましい。そのためには、以下の条件式
L0×0.35 ≧ s
(但し、コイルばねの自由長:L0、被駆動体2の移動ストローク:s)
を満たすコイルばねを用い、以下の条件式
L0×0.15 ≧ d
(但し、コイルばねの自由長:L0、コイルばねの端部のオフセット量:d)
を満たすようにコイルばねを被駆動体2に固定することが望ましい。
【0069】
〔実施の形態2〕
図3は、実施の形態2における駆動装置の構成を示す概略の平面図であり、図4および図5は、上記駆動装置の構成を示す概略の側面図である。
【0070】
以下の説明においては、被駆動体の移動方向をz方向とし、z方向に垂直で静止状態のときにおける電気機械変換素子の長さ方向をx方向とし、z方向およびx方向に垂直な方向をy方向とする。
【0071】
図5(a)は、被駆動体2が駆動ストロークの下死点にある状態を示し、図5(b)は、被駆動体2が駆動ストロークの上死点にある状態を示す。
【0072】
本実施の形態における駆動装置は、図3〜5に示すように、被駆動体2と、電気機械変換素子5と、摩擦部材3と、固定部材4と、予圧部材1と、筐体6とを備えている。摩擦部材3、固定部材4および電気機械変換素子5で駆動機構が構成されており、摩擦部材3および固定部材4で駆動方向変換部材が構成されている。そして、電気機械変換素子5が屈曲することによって、筐体6に設けられた案内部材6aに従い、被駆動体2がz方向に移動するようになっている。
【0073】
尚、図3〜5等においては、摩擦部材3と固定部材4とは別部材として構成している。しかしながら、摩擦部材と固定部材とを一体的に構成してもよい。
【0074】
本実施の形態における駆動装置の電気機械変換素子5は、筐体6の側壁に平行に配置されている。筐体6の側壁に沿って電気機械変換素子5が配置されていることより、筐体6の外形サイズ、即ち、駆動装置の大きさをより小さくすることができる。
【0075】
電気機械変換素子5は、その自由端がy方向に平行な方向に屈曲変位するようになっている。固定部材4は、電気機械変換素子5に連結されているとともに、摩擦部材3に連結されている。上記固定部材4は、摩擦部材3の移動方向を電気機械変換素子5の駆動方向と異ならせるようになっている。つまり、固定部材4は、電気機械変換素子5の駆動方向を変換して摩擦部材3の移動方向がz方向に平行な方向になるようにし、これにより、摩擦部材3は被駆動体2をz方向に駆動するようになっている。本実施の形態においては、固定部材4は、板ばねからなっていることが好ましい。
【0076】
固定部材4は、図4に示すように、例えば「L」字状に形成されており、電気機械変換素子5の自由端に固定されている。また、摩擦部材3は、固定部材4におけるz方向の先端部に固定されている。
【0077】
本実施の形態における駆動装置のその他の構成は、実施の形態1における駆動装置の構成と同じであるので、その説明を省略する。
【0078】
本発明に係る駆動装置における被駆動体2の駆動方法を説明すると以下の通りである。
【0079】
電気機械変換素子5の屈曲変位に伴って、摩擦部材3と被駆動体2とが接触したまま、固定部材4は、電機機械変換素子5の屈曲変位の方向(y方向)に垂直な方向(z方向)に屈曲変位する。その結果、摩擦部材3は、被駆動体2に対してx方向を軸に回転するように動作し、被駆動体2はz方向に移動する。
【0080】
本発明に係る駆動装置の予圧部材1は、実施の形態1における駆動装置の予圧部材1と同じく、被駆動体2の移動ストロークの上死点または下死点において、最圧縮状態となるように、被駆動体2の被駆動体接触部2aおよび筐体6に固定されているとともに、予圧垂線の線上に位置しないように、被駆動体2に固定されるコイルばねの端部を傾けて配置する方がより好ましい。
【0081】
〔実施の形態3〕
図6は、実施の形態3における駆動装置の構成を示す概略の平面図であり、図7は、上記駆動装置の構成を示す概略の側面図である。
【0082】
以下の説明においては、被駆動体の移動方向をz方向とし、z方向に垂直で静止状態のときにおける電気機械変換素子の長さ方向をx方向とし、z方向およびx方向に垂直な方向をy方向とする。
【0083】
図7(a)は、被駆動体2が駆動ストロークの下死点にある状態を示し、図7(b)は、被駆動体2が駆動ストロークの上死点にある状態を示す。
【0084】
本実施の形態における駆動装置は、図6,7に示すように、被駆動体2と、電気機械変換素子5と、摩擦部材3と、固定部材4と、予圧部材1と、筐体6とを備えるとともに、支持弾性部材7を備えている。
【0085】
支持弾性部材7は、被駆動体2に対して回転対称となるようにして筐体6に複数取り付けられており、上記被駆動体2を支持するとともに被駆動体2を移動方向(z方向)に付勢するようになっている。支持弾性部材7は、板ばねからなっている。
【0086】
本実施の形態における駆動装置のその他の構成は、実施の形態1における駆動装置の構成と同じであるので、その説明を省略する。
【0087】
板ばね(支持弾性部材7)は、被駆動体2が下死点から上死点に移動するに従い(図7(a)の位置から図7(b)の位置に移動するとき)、その移動に対して抵抗するようなz方向の力を被駆動体2に与え、被駆動体2が上死点から下死点に移動するに従い(図7(b)の位置から図7(a)の位置に移動するとき)、その移動を促進するようなz方向の力を被駆動体2に与える。即ち、コイルばね(予圧部材1)の静止状態から変形を伴う被駆動体2の移動方向と、板ばね(支持弾性部材7)の付勢方向とは、互いに異なっている。この力は、単独では、被駆動体2の往復での移動速度差を生じる原因となる。
【0088】
一方、コイルばね(予圧部材1)は、被駆動体2が下死点から上死点に移動するに従い(図7(a)の位置から図7(b)の位置に移動するとき)、最圧縮状態から最伸長状態に移行するので、その移動を促進するようなz方向の力を被駆動体2に与え、被駆動体2が上死点から下死点に移動するに従い(図7(b)の位置から図7(a)の位置に移動するとき)、最伸長状態から最圧縮状態に移行するので、その移動に対して抵抗するようなz方向の力を被駆動体2に与える。
【0089】
つまり、本実施の形態における駆動装置では、コイルばねが被駆動体2に与える力と、板ばねが被駆動体2に与える力とが互いに打ち消すように、コイルばねおよび板ばねを配置している。これにより、被駆動体2の往復での移動速度が異なる状況を緩和することができる。但し、被駆動体2を任意に移動させることができるように、板ばねの弾力は、コイルばねの弾力と比較して充分に弱いことが好ましい。
【0090】
また、被駆動体2の往復での移動速度が異なる要因は、コイルばね(予圧部材1)が被駆動体2に与える力の変化によるものだけとは限らない。例えば、本発明に係る駆動装置を監視カメラ等の撮像装置に応用する場合には、当該撮像装置は、常時一定方向に重力の影響を受けることになる。従って、この場合には、重力の影響による被駆動体2の往復での移動速度の差を考慮して、コイルばねが被駆動体2に与える力と、板ばねが被駆動体2に与える力とを調節することが望ましい。
【0091】
尚、本実施の形態においては、予圧部材1がコイルばねである場合を例示したが、予圧部材1は板ばねであってもよい。また、支持弾性部材7が予圧部材1の機能を兼ね備えている構成とすることもできる。つまり、予圧部材1と支持弾性部材7とを一つの板ばねで構成することもできる。具体的には、板ばね(予圧部材1,支持弾性部材7)を、被駆動体2を移動方向(z方向)に付勢するとともに摩擦部材3と当接する方向へ付勢することができるように、筐体6に回動可能に取り付けることにより実現することができる。この構成にすることにより、コイルばねを不要とすることができるため、予圧部材の構成を簡便にすることができるとともに、板ばねの回動量を調節することによって被駆動体2に与える力を調整することができるため、より量産性に優れた駆動装置を提供することができる。
【0092】
〔実施の形態4〕
図8は、実施の形態4における駆動装置の構成を示す概略の平面図であり、図9は、上記駆動装置の構成を示す概略の側面図である。
【0093】
以下の説明においては、被駆動体の移動方向をz方向とし、z方向に垂直で静止状態のときにおける電気機械変換素子の長さ方向をx方向とし、z方向およびx方向に垂直な方向をy方向とする。
【0094】
図9(a)は、被駆動体2が駆動ストロークの下死点にある状態を示し、図9(b)は、被駆動体2が駆動ストロークの上死点にある状態を示す。
【0095】
本実施の形態における駆動装置は、予圧部材を複数備えている。つまり、本実施の形態における駆動装置は、2つのコイルばね(予圧部材)1a,1bを備えており、これらコイルばね1a,1bを被駆動体2の移動方向(z方向)に並べた構造を有している。従って、コイルばねが1つのときに比べて、予圧を安定させることができる。また、被駆動体2の移動ストロークを長くすることができる。
【0096】
本実施の形態における駆動装置のその他の構成は、実施の形態1における駆動装置の構成と同じであるので、その説明を省略する。
【0097】
コイルばね1a,1bは、被駆動体2の移動ストロークにおける任意の位置において、互いの中心軸方向(長さ方向)が平行にならないように、かつ、予圧垂線の線上に位置しないように、被駆動体2に固定されるコイルばねの端部を傾けて配置する方がより好ましい。これにより、コイルばね1a,1bによる荷重の変動、および被駆動体2の移動方向に対する力の変動を緩和することができる。つまり、被駆動体2の移動動作に対して、コイルばね1a,1bによる抵抗力の極値が重なることがないので、より安定した被駆動体2の移動動作を行うことができる。
【0098】
〔実施の形態5〕
図10は、実施の形態5における駆動装置の構成を示す概略の平面図であり、図11は、上記駆動装置の構成を示す概略の斜視図である。
【0099】
以下の説明においては、被駆動体の移動方向をz方向とし、z方向に垂直で静止状態のときにおける電気機械変換素子の長さ方向をx方向とし、x方向およびz方向に垂直な方向をy方向とする。
【0100】
本実施の形態における駆動装置は、図10および図11に示すように、実施の形態2における予圧部材1に代えて、引張コイルばねからなる予圧部材21を備えている。また、電気機械変換素子5は、その一端部が筐体6の案内部材6aに固定されている。
【0101】
上記予圧部材21は、その中央部に伸縮性を有する有効ばね部21aを備えており、上記有効ばね部21aの両端部に、当該有効ばね部21aの直径よりも小さい直径を有する密着巻き部(第一端部)21b・21bを備えており、さらにその端部(外側)に、有効ばね部21aの直径と同程度の直径を有する密着巻き部(第二端部)21c・21cを備えている。尚、密着巻き部21c・21cの直径は、密着巻き部21b・21bの直径よりも大きく、有効ばね部21aの直径以下であればよい。また、密着巻き部21bおよび密着巻き部21cは、有効ばね部21aの一端部だけに形成されている構成であってもよい。
【0102】
一方、筐体6は予圧部材21の一端部を固定(保持)するばね固定部6bを有しており、被駆動体2は予圧部材21の他端部を固定(保持)する突出部(保持部)2bを有している。そして、筐体6のばね固定部6bおよび被駆動体2の突出部2bは、上記予圧部材21の密着巻き部21b・21bを嵌め込むことができ、これにより密着巻き部21c・21cを引っ掛けて固定することが可能な形状に形成されている。
【0103】
つまり、上記予圧部材21は、その一端部が被駆動体2の突出部2bに固定されるとともに他端部が筐体6のばね固定部6bに固定されており、その引張力(予圧荷重)によって、被駆動体2の被駆動体接触部(摩擦接触部)2aを摩擦部材3と当接する方向へ常時付勢するようになっている。上記の構成によれば、両端部にフック部を形成することができないような小径の引張コイルばねを予圧部材21として用いた場合でも、簡単な構成で容易に駆動装置を組み立てることができる。また、被駆動体2が突出部2bを有することにより、駆動装置内のスペースを有効に活用することができる。即ち、駆動装置をより小型化することが可能となる。
【0104】
また、図10に示すように、予圧部材21は、摩擦部材3と被駆動体2の被駆動体接触部2aとの接触部分に対して垂直な直線上に、その中心軸が位置するように配置されている。
【0105】
さらに、予圧部材21と摩擦部材3とは、上記被駆動体接触部2aを挟んで配置されている。このため、被駆動体2の被駆動体接触部2aは、予圧部材21によって摩擦部材3と当接する方向へ常時付勢されている。また、図10および図11に示すように、被駆動体2には案内孔2cが設けられており、筐体6には上記案内孔2cに嵌合する案内部材6cが設けられている。従って、被駆動体2は、摩擦部材3との間に作用する摩擦力により、上記案内部材6cに案内されてz方向に円滑に移動するようになっている。そして、被駆動体2が移動すると、それに伴い予圧部材21も連帯して移動し、変形するようになっている。
【0106】
本実施の形態においては、優れた弾性を有する引張コイルばねを予圧部材21として用いているため、被駆動体2の移動過程において、より安定した予圧効果を果たすことができる。また、被駆動体2が駆動する方向への負荷を低減することが可能となり、安定した駆動が可能となる。
【0107】
図12は、上記駆動装置の駆動機構の構成を示す概略の斜視図である。駆動機構は、摩擦部材3、固定部材4および電気機械変換素子5で構成されており、摩擦部材3および固定部材4で駆動方向変換部材が構成されている。
【0108】
本実施の形態における駆動装置のその他の構成は、実施の形態1,2における駆動装置の構成と同じであるので、その説明を省略する。
【0109】
上記の構成によれば、電気的制御によって電気機械変換素子5を屈曲させ、摩擦部材3を介して被駆動体2を一定方向へ移動させることができる。また、予圧部材21の一端部(密着巻き部21c)が上記被駆動体2の突出部2bに固定されるとともに他端部(密着巻き部21c)が筐体6のばね固定部6bに固定されているため、上記被駆動体2が移動することによって上記予圧部材21が変位する。これにより、駆動装置の構造をより簡単に、かつ機能をより安定させることができる。
【0110】
〔実施の形態6〕
図13は、実施の形態6における駆動装置の構成を示す概略の平面図である。
【0111】
本実施の形態における駆動装置は、図13に示すように、実施の形態5における予圧部材21に代えて、ねじりコイルばねからなる予圧部材31を備えている。上記予圧部材31は、ねじりコイル部の両端に固定アーム31aと可動アーム31bとを備えたねじりコイルばねである。一方、筐体6には、予圧部材31のねじりコイル部に嵌合するピン6dと、予圧部材31の固定アーム31aを当接することによって固定(保持)するばね当て部6eとが形成されている。
【0112】
つまり、上記予圧部材31は、ねじりコイル部が筐体6のピン6dに嵌合されるとともに固定アーム31aが筐体6のばね当て部6eに当接することによって固定(保持)されており、可動アーム31bがy方向に可動するようになっている。また、予圧部材31の可動アーム11bは、被駆動体2の突出部2bに常時当接している。これにより、予圧部材31は、被駆動体2の被駆動体接触部2aを摩擦部材3と当接する方向へ常時付勢するようになっている。
【0113】
また、予圧部材31は、当該予圧部材31による予圧荷重の方向が、摩擦部材3と被駆動体2の被駆動体接触部2aとの接触部分に対して垂直な方向と平行になるように配置されている。
【0114】
本実施の形態における駆動装置のその他の構成は、実施の形態5における駆動装置の構成と同じであるので、その説明を省略する。
【0115】
本実施の形態においては、優れた弾性を有するねじりコイルばねを予圧部材31として用いているため、被駆動体2の移動過程において、より安定した予圧効果を果たすことができる。また、実施の形態5における駆動装置と比較して、予圧部材の直径寸法を考慮する必要が無くなるため、駆動装置のx方向(電気機械変換素子の長さ方向)の寸法を小さくすることが可能となる。即ち、駆動装置をより小型化することが可能となる。
【0116】
〔実施の形態7〕
図14は、実施の形態7における駆動装置の構成を示す概略の平面図であり、図15は、上記駆動装置の構成を示す概略の斜視図である。
【0117】
本実施の形態における駆動装置は、図14および図15に示すように、実施の形態5における予圧部材21に代えて、引張コイルばねからなる予圧部材41を備えている。また、筐体6は予圧部材41の一端部を固定(保持)するばね固定部6fを有しており、被駆動体2は予圧部材41の他端部を固定(保持)するばね固定部(保持部)2dを有している。つまり、上記予圧部材41は、その一端部が筐体6のばね固定部6fに固定されるとともに他端部が被駆動体2のばね固定部2dに固定されている。
【0118】
さらに、被駆動体2の被駆動体接触部2eは、上記ばね固定部2dと一体的に、摩擦部材3を跨ぐようにして設けられている。つまり、被駆動体2の被駆動体接触部(摩擦接触部)2eおよびばね固定部2dは、摩擦部材3を挟むようにして形成されており、上記被駆動体接触部2eは、ばね固定部2dと対向する面側で摩擦部材3と当接するようになっている。そして、予圧部材41は、その引張力(予圧荷重)によって、被駆動体2の被駆動体接触部2eを摩擦部材3と当接する方向へ常時付勢するようになっている。
【0119】
また、予圧部材41は、摩擦部材3と被駆動体2の被駆動体接触部2eとの接触部分に対して垂直な直線上に、その中心軸が位置するように配置されている。
【0120】
本実施の形態における駆動装置のその他の構成は、実施の形態5における駆動装置の構成と同じであるので、その説明を省略する。
【0121】
上記の構成によれば、被駆動体2に対して、摩擦部材3による摩擦力がかかる動作位置と、予圧部材41による引張力(予圧荷重)がかかる動作位置とを近接して設けることが可能となる。従って、被駆動体2の駆動を安定化させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明に係る駆動装置を例えばカメラ等の撮像装置のレンズ駆動に用いた場合には、より小型化された、駆動速度がより均一で、かつピント調整の精度がより優れた製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の実施の形態1における駆動装置の構成を示す概略の平面図である。
【図2】上記駆動装置の構成を示す概略の側面図であり、(a)は、被駆動体が駆動ストロークの下死点にある状態を示し、(b)は、被駆動体が駆動ストロークの上死点にある状態を示す。
【図3】本発明の実施の形態2における駆動装置の構成を示す概略の平面図である。
【図4】図3の駆動装置の構成を示す概略の側面図である。
【図5】図3の駆動装置の構成を示す概略の側面図であり、(a)は、被駆動体が駆動ストロークの下死点にある状態を示し、(b)は、被駆動体が駆動ストロークの上死点にある状態を示す。
【図6】本発明の実施の形態3における駆動装置の構成を示す概略の平面図である。
【図7】図6の駆動装置の構成を示す概略の側面図であり、(a)は、被駆動体が駆動ストロークの下死点にある状態を示し、(b)は、被駆動体が駆動ストロークの上死点にある状態を示す。
【図8】本発明の実施の形態4における駆動装置の構成を示す概略の平面図である。
【図9】図8の駆動装置の構成を示す概略の側面図であり、(a)は、被駆動体が駆動ストロークの下死点にある状態を示し、(b)は、被駆動体が駆動ストロークの上死点にある状態を示す。
【図10】本発明の実施の形態5における駆動装置の構成を示す概略の平面図である。
【図11】図10の駆動装置の構成を示す概略の斜視図である。
【図12】図10の駆動装置の構成を示す概略の斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態6における駆動装置の構成を示す概略の平面図である。
【図14】本発明の実施の形態7における駆動装置の構成を示す概略の平面図である。
【図15】図14の駆動装置の構成を示す概略の斜視図である。
【符号の説明】
【0124】
1 予圧部材
2 被駆動体
2a 被駆動体接触部
2b 突出部
2c 案内孔
2d ばね固定部
2e 被駆動体接触部
3 摩擦部材
4 固定部材
5 電気機械変換素子
6 筐体
6a 案内部材
6b ばね固定部
6c 案内部材
6d ピン
6e ばね当て部
6f ばね固定部
7 支持弾性部材
21 予圧部材
21a 有効ばね部
21b 密着巻き部
21c 密着巻き部
31 予圧部材
31a 固定アーム
31b 可動アーム
41 予圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が筐体に固定されており、電気的制御により屈曲変位が生じる電気機械変換素子と、
一端部が上記電気機械変換素子に連結されており、他端部が被駆動体と摩擦接触している摩擦部材と、
一端部が上記被駆動体に固定されるとともに他端部が上記筐体に固定されており、上記被駆動体を上記摩擦部材と当接する方向へ付勢する予圧部材とを備えていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
上記予圧部材がコイルばねであることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
コイルばねの一端または両端が弾性の無い密着巻きにされていることを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
上記予圧部材が動作最大点に達したときの当該予圧部材の長さ方向が、被駆動体の移動方向に対して垂直ではないことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
上記予圧部材における被駆動体に固定されている一端部は、上記被駆動体の移動に伴って移動し、その最大移動範囲内に、上記一端部が、上記摩擦部材を通り上記被駆動体の移動方向に垂直な予圧垂線上に位置する箇所があることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
上記予圧部材を複数備えていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の駆動装置。
【請求項7】
上記予圧部材が全てコイルばねであり、被駆動体の移動範囲内における任意の位置において、上記コイルばねの長さ方向が互いに平行にならないことを特徴とする請求項6に記載の駆動装置。
【請求項8】
上記被駆動体を支持するとともに被駆動体を移動方向に付勢する支持弾性部材をさらに備え、
上記予圧部材の静止状態から変形を伴う被駆動体の移動方向と、上記支持弾性部材の付勢方向とが互いに異なっていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の駆動装置。
【請求項9】
上記電気機械変換素子と上記摩擦部材との間に固定部材を設けていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の駆動装置。
【請求項10】
上記固定部材は、摩擦部材の移動方向を電気機械変換素子の駆動方向と異ならせるようになっていることを特徴とする請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の駆動装置を備えていることを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の駆動装置または請求項11に記載の撮像装置を備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−41801(P2010−41801A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200998(P2008−200998)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】