説明

駆動装置及びロボット装置

【課題】単純な構成とすることができ、小型化が可能であり、低コスト化を実現可能な駆動装置及びロボット装置を提供すること。
【解決手段】所定の駆動方向に駆動される可動子と、互いに反対方向に分極された一対の圧電層が一体化された圧電層対を有し、前記可動子への近接方向に振動すると共に前記可動子の駆動方向に振動するように形成された電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子に対して、前記近接方向の振動と前記駆動方向の振動とを選択的に行わせる制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置及びロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば超音波モータのようなモータ装置として、縦振動モードと捩り振動モードとを組み合わせた複合振動型の超音波モータ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このモータ装置においては、縦振動モード用の圧電素子と、捩り振動モード用の圧電素子とを組み合わせて用いる構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−121777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のモータ装置のように2種類の振動モードの圧電素子を組み合わせる構成とする場合、構造が複雑になってしまい、小型化が難しいという問題がある。
【0005】
上記のような事情に鑑み、本発明は、単純な構成とすることができ、小型化が可能な駆動装置及びロボット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る駆動装置(1)は、所定の駆動方向に駆動される可動子(2)と、互いに反対方向に分極された一対の圧電層(31)が一体化された圧電層対(35)を有し、前記可動子への近接方向に振動すると共に前記可動子の駆動方向に振動するように形成された電気機械変換素子(30)と、前記電気機械変換素子に対して、前記近接方向の振動と前記駆動方向の振動とを選択的に行わせる制御部(CONT)とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るロボット装置(RBT)は、移動部材(104a)と、前記移動部材を駆動させる駆動装置(ACT)とを備え、前記駆動装置として、上記の駆動装置(1)が用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明よれば、単純な構成とすることができ、小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る駆動装置の構成を示す概略図。
【図2】本実施形態に係る駆動装置の一部の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係る圧電素子の構成を示す図。
【図4】本実施形態に係る圧電素子の一部の構成を示す図。
【図5】本実施形態に係る圧電層対の振動の様子を示す図。
【図6】本実施形態に係る圧電素子の一部の構成を示す図。
【図7】本実施形態に係る圧電素子の動作の一例を示す図。
【図8】本発明の第2実施形態に係る駆動装置の一部の構成を示す概略図。
【図9】本実施形態に係る駆動装置の一部の構成を示す図。
【図10】本発明の第3実施形態に係るロボット装置の一部の構成を示す図。
【図11】本発明の実施形態に係る駆動装置の他の構成を示す図。
【図12】本発明の実施形態に係る駆動装置の他の構成を示す図。
【図13】本発明の実施形態に係る駆動装置の他の構成を示す図。
【図14】本発明の実施形態に係る駆動装置の他の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る駆動装置の第1実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。本実施形態では、駆動装置の回転軸方向(及び当該回転軸方向に平行な方向)をZ軸方向とし、当該Z軸方向に直交する水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向とする。また、駆動装置の回転方向、すなわち、Z軸まわりの回転方向をθZ方向とする。
【0011】
図1は、本実施形態に係る駆動装置1の構成を示す斜視図である。
図1に示すように、駆動装置1は、ロータ2、駆動部3、保持部4及び制御部CONTを有している。駆動装置1は、ロータ2及び駆動部3が保持部4によって保持された構成になっている。
【0012】
ロータ2は、駆動装置1のZ方向のほぼ中央に配置されており、平面視で円環状に形成されている。図1においては、駆動装置1の構成を判別しやすくするため、ロータ2を透過させて示している。ロータ2は、本発明における回転子である。
【0013】
駆動部3は、ロータ2の−Z側に配置されている。駆動部3は、複数の圧電素子30を有している。圧電素子30は、駆動装置1の回転方向(θZ方向)に沿って例えば3つ設けられている。
【0014】
保持部4は、台座部41、ロータ側支持部42、軸部43及び押圧部44を有している。台座部41は、各圧電素子30を載置させる載置部である。台座部41は、圧電素子30を載置させる面(+Z側の面)が平坦に形成されている。ロータ側支持部42は、ロータ2を+Z側から支持する。駆動部側支持部41及びロータ側支持部42は、駆動部3及びロータ2を挟む位置に配置されている。
【0015】
軸部43は、台座部41とロータ側支持部42とを接続するように一体的に形成されている。軸部43は、ロータ2及び駆動部3のZ方向視中央部を貫通するように形成されている。軸部43とロータ2との間には、例えば不図示のベアリング機構が設けられている。
【0016】
押圧部44は、ロータ側支持部42とロータ2との間に配置されている。押圧部44は、ロータ側支持部42からロータ2へ−Z方向の力を加える。押圧部44によってロータ2を−Z側へ押圧することで、駆動部3の駆動力がロータ2に伝達されやすくなっている。
【0017】
制御部CONTは、図1に示すように、駆動部3の各圧電素子30に接続されている。制御部CONTは、駆動部3による駆動動作を制御する。
【0018】
図2は、Z方向に見たときの圧電素子30の配置を示す図である。
同図に示すように、3つの圧電素子30は、θZ方向に例えば120°ずつずれた位置に配置されている。図2内に矢印で示した方向は、各圧電素子30の駆動方向である。圧電素子30は、それぞれが当該矢印で示した方向にロータ2を駆動するようになっている。各圧電素子30は、軸部43から径方向に延在するように配置されている。
【0019】
図3は、圧電素子30の構成を示す斜視図である。
圧電素子30は、圧電層31、電極32及び接触子33を有している。圧電素子30は、電圧を印加されることで振動する電気機械振動子である。圧電層31は、例えば矩形の板状に形成されている。本実施形態における圧電層31は、例えば、ピエゾなどであって、圧電体を含む構成となっている。
【0020】
電極32は、圧電層31に電圧を印加する。電極32は、制御部CONTに接続されている。圧電素子30は、圧電層31と電極32とが互いに交互に積層された構成(積層構造体34)を有している。接触子33は、例えば円筒状に形成されており、積層構造体34の+Z側端面上に固定されている。接触子33は、ロータ2に接触し、圧電素子30の駆動力をロータ2に直接伝達する部分である。
【0021】
図4は、本実施形態における圧電層31の構成を示す図である。
図4(a)に示すように、各圧電層31は、板の厚さ方向に分極されている。圧電層31に対して分極方向と反対方向に電界を発生させた場合、圧電層31の分極方向に変位して伸長する振動(d33モード)や、当該分極方向の垂直方向に変位して伸長する振動(d31モード)などが生じる。これらの振動モードのうち、本実施形態では、d31モードの振動を利用する。したがって、圧電層31は、d31モードの振動方向である分極方向の垂直方向がロータ2への近接方向となるように配置されている。したがって、本実施形態では、圧電層31の分極方向の直交方向と、圧電層31の振動方向と、ロータ2への近接方向とが一致した構成となっている。これらの各方向は、本実施形態におけるZ方向に該当する。
【0022】
本実施形態では、このような構成を有する圧電層31を図4(b)に示すように、圧電層対35として組み合わせた構成となっている。図4(b)に示すように、圧電層対35は、2つの圧電層31が互いの分極方向が対向するように接着されている。2つの圧電層31の間には電極32が配置されている。この電極32は、2つの圧電層31に挟持されるように設けられている。また、各圧電層31について対向面とは反対面にもそれぞれ電極32が形成されている。
【0023】
以下の説明においては、圧電層対35を構成する2つの圧電層31のうち一方(例えば図中左側)を圧電層31Aと表記し、他方(例えば図中右側)を圧電層31Bと表記する。また、電極32については、各圧電層31A及び31Bの対向面と反対側に形成された電極については、圧電素子の符号と対応するように電極32A、電極32Bと表記する。また、圧電層31A及び圧電層31Bによって挟持される電極を電極32Cと表記する。
【0024】
図4(b)に示すように、電極32Cを正極とし電極32A及び電極32Bを負極として圧電層31A及び圧電層31Bに電圧を印加すると、圧電層31A及び圧電層31Bは同時に分極方向の垂直方向に伸長する。図示を省略するが、電極Cを負極とし電極32A及び電極32Bを正極として圧電層31A及び圧電層31Bに電圧を印加すると、圧電層31A及び圧電層31Bは同時に分極方向の垂直方向に収縮する。
【0025】
図4(c)に示すように、圧電層31A及び圧電層31Bが同時に伸長している状態から、一方の圧電層31(例えば圧電層31A)に印加する電圧のみを反転させると、当該圧電層31Aのみが収縮方向に振動する。この結果、圧電層対35は、圧電層31Aの収縮に引っ張られ、図中左側へ屈曲する。
【0026】
図示を省略するが、図4(b)の状態から、圧電層31Bに印加する電圧のみを反転させると、圧電層対35は、図中右側へ屈曲する。また、2つの圧電層31が収縮している状態から一方の圧電層31を伸長させる場合においても同様に、圧電層対35は収縮している圧電層31に引っ張られるように屈曲する。このように、2つの圧電層31について、一方を伸長させ、他方を収縮させるように電圧を印加すると、圧電層対35は、収縮する圧電層31側に引っ張られるように屈曲する。
【0027】
この性質を用いて、本実施形態では、例えば図4(d)に示すように、圧電層31A及び圧電層31Bのそれぞれに位相の異なる正弦波電圧を印加するように構成されている。図4(d)では、圧電層31Aには電源D1を用いてサイン波の電圧を印加し、圧電層31Bには電源D2を用いてコサイン波の電圧を印加するように構成されている。
【0028】
図5は、図4(d)に示す構成を用いて2つの圧電層31に電圧を印加したときの圧電層対35の形状の変化を示す概念図である。図5においては、電源D1及び電源D2の電圧波形と圧電層対35の形状とを対応させて示している。また、図5においては、電極32Cへ電圧を印加する場合を正の電圧として示している。
【0029】
図5に示すように、時刻0〜π/2の間、電源D1及び電源D2が共に正の電圧を印加する。したがって、圧電層31A及び圧電層31Bが共に伸長するように電圧が印加されることになる。この場合、圧電層対35は分極方向の直交方向に伸長することになる。
【0030】
時刻π/2〜πの間、電源D1は正の電圧を印加した状態であり、電源D2は負の電圧を印加した状態である。したがって、圧電層31Aが伸長し圧電層31Bが収縮するように電圧が印加されることになる。この場合、圧電層対35は、収縮する圧電層31Bに引っ張られるように屈曲するため、図5に示すように、図中右側に屈曲することになる。
【0031】
時刻π〜3π/2の間、電源D1は負の電圧を印加した状態であり、電源D2は負の電圧を印加した状態である。したがって、圧電層31A及び圧電層31Bが共に収縮するように電圧が印加されることになる。この場合、圧電層対35は、分極方向の直交方向に収縮することになる。
【0032】
時刻3π/2〜2πの間、電源D1は負の電圧を印加した状態であり、電源D2は正の電圧を印加した状態である。したがって、圧電層31Aが収縮し圧電層31Bが伸長するように電圧が印加されることになる。この場合、圧電層対35は、収縮する圧電層31Aに引っ張られるように屈曲するため、図5に示すように、図中左側に屈曲することになる。
【0033】
このような動作を周期的に繰り返すことにより、圧電層対35の図中上端は、例えば図中時計回りの方向に回転運動することになる。また、電源D1及び電源D2の電圧を正負反転させることにより、圧電層対35の図中上端を反時計回りの方向に回転運動させることもできる。
【0034】
図6は、このような圧電層対35を複数組み合わせた積層構造体34の構成を示している。
図6に示す積層構造体34は、一例として、8つの圧電層31が積層された構成になっている。8つの圧電層31のうち、図中左側4つの圧電層31は、上記圧電層31Aに対応する圧電素子である。図中右側4つの圧電層31は、上記圧電層31Bに対応する圧電素子である。
【0035】
一般に、圧電層31は積層数を増すことよって電圧対歪量が増す効果がある。これを利用して、本実施形態では、8つの圧電層31に対して図中左側4つの圧電層31Aにサイン波の電圧信号を供給し、図中右側4つの圧電層31Bにコサイン波の電圧信号を供給する構成としている。上記の電圧信号の制御は、例えば制御部CONTにおいて行われるようになっている。
【0036】
図7は、圧電素子30の駆動動作を示す図である。
まず、制御部CONTは、図7(a)に示すように、積層構造体34が回転方向の上流側に屈曲した状態となるように電圧信号を供給する。この状態から、制御部CONTは、積層構造体34をロータ2側へ伸長させるように電圧信号を供給する。この動作により、接触子33がロータ2側へZ方向に近づきながら当該ロータ2の回転方向へ移動する。積層構造体34が最も伸長する状態において、図7(b)に示すように、接触子33の上面がロータ2に当接する。
【0037】
この状態から、制御部CONTは、図7(c)に示すように、積層構造体34が回転方向の下流側に屈曲した状態となるように電圧信号を供給する。この動作により、接触子33がロータ2の回転方向に移動する。この移動時に、接触子33とロータ2との間に摩擦が生じ、当該摩擦力によってロータ2が回転する。
【0038】
このように、本実施形態によれば、互いに反対方向に分極された一対の圧電層31A及び31Bが一体化された圧電層対35を用いて圧電素子30を構成し、制御部CONTによって、当該圧電素子30をロータ2への近接方向に振動させると共にロータ2の回転方向に振動させることで、ロータ2を回転させることとしたので、縦振動用及び捩り振動用の2種類の振動モードの圧電素子を用いる必要が無くなる。これにより、駆動部3を単純な構成とすることができるため、駆動装置1の小型化が可能であり、低コスト化を実現可能となる。また、本実施形態によれば、小型で高トルクの駆動装置1を実現可能となる。
【0039】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態では、第1実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付して説明する。本実施形態では、圧電素子の配置及び台座部の形状が第1実施形態とは異なっており、他の部分については第1実施形態とほぼ同一の構成となっている。以下、当該相違点を中心に説明する。本実施形態においては、第1実施形態と共通のXYZ座標系を用いて説明する。
【0040】
図8は、Z方向に見たときの圧電素子130の配置を示す図である。
図8(a)に示すように、圧電素子130は、ロータの回転方向に沿って延在するように形成されている。圧電素子130は、ロータの回転方向に120°ずれて配置されており、この点については第1実施形態と同様である。
【0041】
図8(b)に示すように、各圧電素子130は、例えばネジなどの固定部材48を介して台座部41の側部に固定されている。本実施形態の圧電素子130は、延在方向にロータを回転させる構成になっている。圧電素子130は、積層体131A及び積層体131Bを含む圧電層対135を有している。積層体131A及び積層体131Bは、ロータの回転方向に隣接して配置されている。
【0042】
図9は、本実施形態に係る圧電素子130の構成を示す図である。図9(a)は圧電素子130の全体構成を示す模式図であり、図9(b)は圧電素子130の断面構成を示す図である。
【0043】
図9(a)及び図9(b)に示すように、圧電素子130は、積層体131A、積層体131B、電極132A、電極132B、電極132Cを有している。積層体131Aは、ロータの回転方向の直交方向に積層された4層の圧電層136A〜139Aを有している。積層体131Bは、ロータの回転方向の直交方向に積層された4層の圧電層136B〜139Bを有している。積層体131Aと積層体131Bとの間は、接着材などによって固定されている。
【0044】
積層体131Aは、圧電層136A及び圧電層137Aの分極方向が対向するように配置されると共に、圧電層138A及び圧電層139Aの分極方向が対向するように配置されている。積層体131Bは、圧電層136B及び圧電層137Bの分極方向が対向すると共に、圧電層138B及び圧電層139Bの分極方向が対向するように配置されている。
【0045】
電極132Aは、圧電層136Aと圧電層137Aとの間に配置される部分と、圧電層138Aと圧電層139Aとの間に配置される部分とを有しており、2つの部分が接続された構成になっている。同様に、電極132Bは、圧電層136Bと圧電層137Bとの間に配置される部分と、圧電層138Bと圧電層139Bとの間に配置される部分とを有しており、2つの部分が接続された構成になっている。電極132A及び電極132Bは、例えばサイン波の電圧信号を供給する電源D1に接続されている。
【0046】
電極132Cは、圧電層136A〜139A、圧電層136B〜圧電層139Bのうち、電極132A及び電極132Bが設けられていない面に配置されている。電極132Cは、例えばコサイン波の電圧信号を供給する電源D2に接続されている。
【0047】
上記のように構成された圧電素子130においても、電源D1及び電源D2を用いて積層体131A及び積層体131Bに電圧信号を供給することにより、積層体131Aと積層体131Bとをそれぞれ図中上下方向に振動させることができる。このため、第1実施形態と同様、一方の圧電素子を伸長させ、他方の圧電素子を収縮させることにより、収縮する圧電素子側に屈曲させることができる。
【0048】
この動作を用いることにより、圧電素子130をロータの回転方向に沿って延在させる場合であっても、当該圧電素子130をロータへの近接方向に振動させると共にロータの回転方向に振動させることで、ロータを回転させることができる。本実施形態では、圧電層136A〜139Aと、圧電層136B〜139Bとがそれぞれ圧電層対を成す構成となる。
【0049】
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、圧電層136A〜139A及び圧電層136B〜圧電層139Bの振動モードとして、当該分極方向の垂直方向について伸長する振動モード(d31モード)を用いている。また、第1実施形態と同様に、圧電層136A〜139A及び圧電層136B〜圧電層139Bの振動方向がロータ2への近接方向となるように積層体131A及び積層体131Bが配置されている。
【0050】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図10は、第1実施形態に記載の駆動装置1を備えるロボット装置RBTの一部(指部分の先端)の構成を示す図である。
【0051】
同図に示すように、ロボット装置RBTは、末節部101、中節部102及び関節部103を有しており、末節部101と中節部102とが関節部103を介して接続された構成になっている。関節部103には軸支持部103a及び軸部103bが設けられている。軸支持部103aは中節部102に固定されている。軸部103bは、軸支持部103aによって固定された状態で支持されている。
【0052】
末節部101は、接続部101a及び歯車101bを有している。接続部101aには、関節部103の軸部103bが貫通した状態になっており、当該軸部103bを回転軸として末節部101が回転可能になっている。この歯車101bは、接続部101aに固定されたベベルギアである。接続部101aは、歯車101bと一体的に回転するようになっている。
【0053】
中節部102は、筐体102a及びモータ装置ACTを有している。モータ装置ACTは、上記実施形態に記載の駆動装置1を用いることができる。モータ装置ACTは、筐体102a内に設けられている。モータ装置ACTには、回転軸部材104aが取り付けられている。回転軸部材104aの先端には、歯車104bが設けられている。この歯車104bは、回転軸部材104aに固定されたベベルギアである。歯車104bは、上記の歯車101bとの間で噛み合った状態になっている。
【0054】
上記のように構成されたロボット装置RBTは、モータ装置ACTの駆動によって回転軸部材104aが回転し、当該回転軸部材104aと一体的に歯車104bが回転する。歯車104bの回転は、当該歯車104bと噛み合った歯車101bに伝達され、歯車101bが回転する。当該歯車101bが回転することで接続部101aも回転し、これにより末節部101が軸部103bを中心に回転する。
【0055】
このように、本実施形態によれば、低電圧で低速高トルクの回転を出力することができるモータ装置ACTを搭載することにより、例えば減速器を介することなく直接末節部101を回転させることができる。さらに本実施形態では、モータ装置ACTが非共振に駆動される構成になっているため、樹脂など軽量な材料で大部分を構成することが可能になる。
【0056】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記第1実施形態においては、圧電素子30における圧電層31A及び圧電層31Bの配置について、図6に示すように、図中左側4つの圧電層31を圧電層31Aに対応する圧電素子とし、図中右側4つの圧電層31を圧電層31Bに対応する圧電素子としたが、これに限られることは無い。
【0057】
例えば図11に示すように、8つの圧電層31のうち中央の4つの圧電素子を圧電層31Bに対応させ、左右2つずつの圧電素子を圧電層31Aに対応させる構成としても構わない。この場合、例えば中央の4つの圧電層31B層にコサイン波の電圧信号が供給され、図中左側の2つの圧電層31Aにサイン波の電圧信号が供給され、図中右側の2つの圧電層31Aにはサイン波の電圧信号を正負反転させた信号が供給されるようにする。これにより積層構造体34の上端を回転運動させることができる。
【0058】
この場合、制御部CONTは、中央の4つの圧電層31Bにロータ2への近接方向への振動を行わせるようにし、左右2つずつの圧電層31Aに屈曲方向の振動を行わせるように電圧信号を制御しても構わない。曲げモーメントは(応力×曲げ中心までの距離)によって与えられる。屈曲用の圧電層31Aを積層方向の外側に配置することにより、曲げ中心である積層方向の中央から応力発生部分である圧電層31Aまでの距離が大きくなる。このため、大きな曲げを発生することができる。
【0059】
また、図12に示すように、図中右側の2つの圧電層31Aの分極方向を他の組とは逆方向、すなわち、互いにの分極方向が対向方向とは逆方向となるようにしても構わない。この場合、当該2つの圧電層31Aにはサイン波の電圧信号が供給されるようにする。これにより、回路構成を単純にすることができる。
【0060】
また、上記第1実施形態においては、圧電層31の積層数を2層、4層、2層の計8層としたが、勿論これに限られることは無く、例えば4層、10層、4層の計18層とする場合など、印加電圧と振幅に応じて積層数を増やすようにしても構わない。
【0061】
また、例えば上記第2実施形態においては、積層体131A及び積層体131Bがロータの回転方向に隣接して配置されている構成としたが、これに限られることは無い。例えば図13に示すように、ロータの回転方向に沿って2つの積層体131Aと1つの積層体131Bとを配列し、2つの積層体131Aによって積層体131Bが挟まれるように接合させる構成としても構わない。この場合、中央に配置される積層体131Bにロータへの近接方向への振動を行わせるようにし、左右の積層体131Aに屈曲方向の振動を行わせるように電圧信号を制御しても構わない。これにより、上記同様に大きな曲げを発生することができる。
【0062】
また、上記各実施形態においては、圧電層31の電界による歪効果によって振動する例を説明したが、これに限られることは無い。例えば圧電層31に機械的な共振を発生させることによって当該圧電層31の振動振幅を拡大し、駆動効率を向上させることも可能である。
【0063】
圧電層31自体には機械的な縦振動モードと屈曲モードが存在することが知られている。圧電層31の機械的な形状・寸法を調整し、当該圧電層31の縦振動モードの周波数と圧電層31の1次屈曲モード(あるいは2次屈曲モード)の周波数とがほぼ同一になるようにする。
【0064】
このように形成した圧電層31を当該周波数で駆動すると、機械共振が発生し、接触子33の振動振幅が増大する。この結果、小さい電力で大きな回転を得ることができる。また、縦振動モードと屈曲モードの周波数を近づけず、どちらか片方の周波数のみを用いて機械共振を発生させることも可能であるし、機械共振を発生させずに駆動させることも可能である。
【0065】
また、上記各実施形態では、圧電層に対して分極方向と反対方向に電圧を印加した場合において、当該分極方向の垂直方向について伸長する振動モード(d31モード)を用いる構成としたが、これに限られることは無い。例えば分極方向と反対方向に電圧を印加した場合に、当該分極方向に伸長する振動モード(d33モード)を用いる構成としても構わない。
【0066】
このような構成として、例えば図14に示す構成とすることができる。
図14に示す積層構造体34は、圧電層31A及び圧電層31BがZ方向に積層された構成となっている。圧電層31A側については、1対の圧電層31Aが4組積層されており、各組の圧電層31Aは、分極方向が対向するように配置されている。同様に、圧電層31B側についても、1対の圧電層31Bが4組積層されており、各組の圧電層31Bは、分極方向が対向するように配置されている。
【0067】
電極32Aは、圧電層31A側において、一対の圧電層31Aの間に挟持される部分が各組について設けられており、これらの部分が接続されている。電極32Bは、圧電層31B側において、一対の圧電層31Bの間に挟持される部分が各組について設けられており、これらの部分が接続されている。電極32Cは、圧電層31Aの各組、圧電層31Bの各組の間に設けられている。
【0068】
電極32Aと電極32Cとの間には電源D1が接続されている。電源D1は、電極32Aと電極32Cとの間にサイン波の電圧信号を供給可能になっている。電極32Bと電極32Cとの間には電源D2が接続されている。電源D2は、電極32Bと電極32Cとの間にコサイン波の電圧信号を供給可能になっている。
【0069】
このような構成において、電源D1及び電源D2から電圧信号を供給することにより、例えば圧電層31A及び圧電層31Bを分極方向(積層方向、Z方向)に伸長振動させることができ、当該振動を用いて積層構造体34を屈曲させることができるようになっている。このように、圧電層31A及び圧電層31Bのどの振動モードを用いる場合であっても、本発明の適用は可能である。
【0070】
また、上記実施形態においては、駆動装置1を用いてロータを回転させる構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、例えば可動子を直進移動させる場合や、曲線移動させる場合など、回転移動以外の移動を行わせる場合であっても、本発明の適用は可能である。
【符号の説明】
【0071】
CONT…制御部 1…駆動装置 2…ロータ(回転子) 3…駆動部 30…圧電素子(電気機械振動子) 31、31A、31B、136A〜139A、136B〜139B…圧電層 34…積層構造体 35…圧電層対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の駆動方向に駆動される可動子と、
互いに反対方向に分極された一対の圧電層が一体化された圧電層対を有し、前記可動子への近接方向に振動すると共に前記可動子の駆動方向に振動するように形成された電気機械変換素子と、
前記電気機械変換素子に対して、前記近接方向の振動と前記駆動方向の振動とを選択的に行わせる制御部と
を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記電気機械変換素子は、前記圧電層対が複数積層されて形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、複数の前記圧電層対のうち一部の前記圧電層対に対しては前記近接方向に振動させ、他の前記圧電層対に対しては前記駆動方向に振動させる
ことを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、複数の前記圧電層対のうち積層方向の端部側に配置される圧電層対には前記駆動方向に振動させる
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記電気機械変換素子に対して前記近接方向の振動及び前記駆動方向の振動を交互に繰り返させる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記電気機械変換素子に対して位相の異なる正弦波信号を供給する
ことを特徴とする請求項5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記可動子と前記電気機械変換素子との間に接触子を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記電気機械変換素子は、前記駆動方向に沿って複数配置されている
ことを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記駆動方向は、前記可動子を回転させる方向である
ことを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記駆動方向は、前記可動子を直進させる方向である
ことを特徴とする請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記電気機械変換素子は、前記圧電層の分極方向と直交する方向又は該直交する方向と平行な方向に、前記圧電層対が複数積層されて形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記近接方向は、前記圧電層の分極方向と直交する方向又は該直交する方向と平行な方向である
ことを特徴とする請求項1から請求項11のうちいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記電気機械変換素子は、前記圧電層の分極方向又は該分極方向と平行な方向に、前記圧電層対が複数積層されて形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記近接方向は、前記圧電層の分極方向又は該分極方向と平行な方向である
ことを特徴とする請求項1から請求項10、請求項13のうちいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項15】
移動部材と、
前記移動部材を駆動させる駆動装置と
を備え、
前記駆動装置として、請求項1から請求項14のうちいずれか一項に記載の駆動装置が用いられている
ことを特徴とするロボット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−259193(P2010−259193A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105215(P2009−105215)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】