説明

駐車制動調整器及び駐車制動調整器として制動調整器の使用

本発明は、車両の制動機能を制御するための駐車制動調整器1、このような駐車制動調整器1を制動調整器として使用する方法、およびこの駐車制動調整器1を持つ制動装置に関する。駐車制動調整器1は、駐車制動調整器1に圧縮空気を供給する圧縮空気入口2を持っている。更に駐車制動調整器1は、少なくとも1つの電磁的に操作可能な第1の弁装置23、電磁的に操作可能な第2の弁装置24及び電磁的に操作可能な第3の弁装置25を持っている。第1の弁装置23を経て駐車制動調整器1の第1の圧縮空気出口3において供給される空気圧力が、第1の圧縮空気導管30,34に出力可能である。第2の弁装置24を経て、駐車制動調整器1の第2の圧縮空気出口4において供給される空気圧力が、第2の圧縮空気導管31,35に出力可能である。第1の弁装置23が通電されず、第2の弁装置24も通電されないと、第1の圧縮空気導管30,34が第1の弁装置23を経て排気可能であり、第2の圧縮空気導管31,35が第2の弁装置24を経て排気可能である。これに反し第1の弁装置23が通電されず、第2の弁装置24も通電されず、同時に第3の弁装置25が通電されると、第1の圧縮空気導管31が第2の弁装置24を経て、給気可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の車両の制動機能を制御するための駐車制動調整器、及び請求項13に記載の駐車制動調整器として電子制動システムの制動調整器を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車制動調整器は、車両の制動機の駐車制動機能を制御するため少なくとも1つの空気圧力を出力するのに用いられる。従来の構成では、駐車制動調整器は2つの出力される圧力を供給する。この目的のため駐車制動調整器は、第1の圧縮空気出口へ至る第1の圧縮空気導管と、第2の圧縮空気出口へ至る第2の圧縮空気導管を持っている。更にこの公知の駐車制動調整器は、それぞれ電気的に制御可能で電磁的に操作可能な第1及び第2の弁装置を持っている。第1及び第2の弁装置が通電されないと、これら両方の弁装置が第1及び第2の圧縮空気出口を排気口に接続する。
【0003】
第1及び第2の弁装置は、第1又は第2の圧縮空気導管を駐車制動調整器の圧縮空気入口に接続するそれぞれ少なくとも1つの通電される切換え状態を持っている。従って第1及び第2の圧縮空気導管は、第1又は第2の通電される弁装置を経て、圧縮空気入口において供給される圧縮空気で給気可能である。
【0004】
第1の圧縮空気出口において供給される圧縮空気は、駐車制動機能を与えるばね制動シリンダへ供給される。第2の圧縮空気出口の圧縮空気は、同様にばね制動シリンダを備えたトレーラへ供給される。これらのばね制動シリンダの各々はばね部分を持っている。ばね部分の給気されない状態で、ばね制動シリンダが制動機を操作する。このような制動機は駐車制動機と称される。ばね部分が給気されると、この制動機が釈放される。車両が停止していると、制動機を投入せねばならない。ばね部分従って駐車制動調整器にある第1及び第2の圧縮空気導管は、車両が走行している場合給気され、車両が停止している場合排気される。この場合第1及び第2の弁装置が通電されない場合、排気されている。なぜならば、停電の場合も車両はなお制動可能でなければならないか、又は停止している車両の制動機は、例えば車両蓄電池が空になっている場合、釈放されてはならないからである。この車両の通常の走行作動中に、駐車制動調整器は制動を開始しないようにする。第1及び第2の弁装置は、第1及び第2の圧縮空気導管及び付属するばね制動シリンダのばね部分に給気する。これらのばね部分に給気するため、通常のように第1及び第2の弁装置に通電せねばならない。
【0005】
従って公知のこのような駐車制動調整器は、車両の走行作動中に即ち第1及び第2の圧縮空気導管の給気の際、比較的多くの電気エネルギを必要とする、という欠点を持っている。大きいエネルギ消費は車両の電池を負荷する、この電池は更に走行中に発電機により充電されねばならない。これにより車両の燃料消費が増大する。これは不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の基礎となっている問題は、走行作動中におけるこのような駐車制動調整器のエネルギ消費を少なくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、請求項1に記載の駐車制動調整器及び請求項13に記載の駐車制動機として制動調整器を使用する方法によってこの問題を解決する。
【0008】
本発明の駐車制動調整器は、最初にあげた2つの弁装置のほかに第3の弁装置を持っている。この第3の弁装置は、共通に使用される排気装置に至る。第1及び第2の弁装置は共通な接続部に設けられている。従って第1及び第2の圧縮空気導管は、通電されない第1又は第2の弁装置及び第3の弁装置を経て排気装置に接続可能であり、かつこれらの弁装置を経て排気可能である。この場合第3の弁装置は、停電の際第1及び第2の圧縮空気導管の排気を確実にするために、通電されない。
【0009】
本発明は、駐車制動調整器の電流消費が、走行作動中付加的な第3の弁装置により、公知の駐車制動調整器と比較して増大せず、むしろ減少することを知った。即ち第1及び第2の弁装置が依然として通電されない場合、通電される第3の弁装置が第1及び第2の圧縮空気導管を駐車制動調整器の圧縮空気入口に接続する。従って第1及び第2の弁装置が通電されず、第3の弁装置が通電される場合、特にこの第3の弁装置の弁のみが通電される場合、第1及び第2の圧縮空気導管が、駐車制動調整器の圧縮空気入口において供給される圧縮空気で給気可能である。その場合ばね制動シリンダのばね部分が給気される。車両の制動機は、ばね制動シリンダのばねによっては投入されず、車両は制動されず走行することができる。
【0010】
本発明は、通電されない第1又は第2の弁装置を経て種々の制動装置構成要素に給気できるけれども、この第1及び第2の弁装置の前に共通に第3の弁装置が接続されていると、停電の場合これらの制動回路の排気が可能であることを知った。
【0011】
第3の弁装置により、第1及び第2の圧縮空気導管を一緒に通気又は排気することができる。更に第1及び第2の弁装置により、第1及び第2の圧縮空気導管の空気圧力を互いに無関係に出力可能である。出力されるこれらの圧力は従って互いに相違していてもよい。
【0012】
第3の弁装置は3ポート2位置切換え電磁弁であってもよい。この3ポート2位置切換え電磁弁により、第1及び第2の弁装置を選択的に圧縮空気溜め又は排気装置に接続するために必要な第3の弁装置の機能を安価に与えることができる。3ポート2位置切換え電磁弁は1つのコイルのみ及び1つの電磁石接極子のみを持っている。従って第1及び第2の圧縮空気導管は、このコイルの簡単な通電に応答して給気可能である。この3ポート2位置切換え電磁弁の通電によるエネルギ消費は比較的少ない。従って3ポート2位置切換え電磁弁を第3の弁装置として使用すると、エネルギ及び費用が節約される。
【0013】
第1及び第2の圧縮空気導管が第3の弁装置を経て急速に排気されず、絞られて排気可能であると有利である。これは次の利点を持っている。即ち停電の場合、第1及び第2の圧縮空気導管が絞られて排気され、その結果ばね制動シリンダの制動機が比較的ゆっくり投入される。停電のためこの車両の車輪のロックが突然思いがけず起こるのを、絞られる排気によって防止することができる。従って本発明による駐車制動調整器にある絞られる排気装置は、この駐車制動調整器を持つ車両の走行作動中における安全性を高める。
【0014】
絞られる排気は、駐車制動調整器のハウジングにある小さい開口例えば穴又は間隙状絞りにより行われ、この開口を通って圧縮空気が排気口へ流れねばならない。流れる圧縮空気に対して抵抗を与えるため、この開口は比較的小さい断面を持っている。その代りに、排気される空気量が例えば場合によっては存在する中継弁の中継ピストンにある開口により増大される場合、開口は一層大きい断面を持つことができる。一層大きい開口は、ふさがることが少なく、従って排気の際故障し易さが少ない、という利点を持っている。
【0015】
第1又は第2の圧縮空気導管において空気圧力を出力するため、第1又は第2の弁装置がなるべく3ポート3位置切換え電磁弁として構成されて、1つの通電されない切換え状態及び異なる電流で通電される2つの切換え状態、即ち通電されない切換え状態“給気/排気”及び通電される切換え状態“保持”及び“排気”を持っている。これらの通電される切換え状態のうち第1の切換え状態において、第1又は第2の圧縮空気導管の空気圧力が保持され、通電されるこれら2つの切換え状態のうち第2の切換え状態において、第1又は第2の圧縮空気導管の排気により、第1又は第2の弁装置を経てこの空気圧力を低下させることができる。これらの通電される切換え状態により、圧縮空気入口に供給される空気圧力より下の空気圧力が出力されかつ保持される。それにより駐車制動機能を配分して開始することができる。その際出力される空気圧力は、圧縮空気を消費することなく保持される。
【0016】
3ポート3位置切換え電磁弁は2接極子電磁弁として有利に構成されている。即ち2接極子電磁弁は、比較的こじんまりした構造を持っている。3つの切換え状態即ち“給気/排気”、“保持”及び“排気”は、場所を節約しかつ材料を節約しかつエネルギを節約する2接極子電磁弁によって得られる。これにより駐車制動調整器を全体としてこじんまりしたものとして、比較的僅かな材料を使用して構成することができる。従って駐車制動調整器は安価に製造可能であり、比較的容易に車両において特に狭い場所的条件でも構成可能である。
【0017】
本発明の有利な展開では、駐車制動調整器は1つ又は複数の中継弁を持っている。中継弁は第1又は第2の圧縮空気導管にある。即ち第1又は第2の弁装置を経て、第1又は第2の圧縮空気導管に、出力される圧力を比較的僅かな空気量で供給可能である。即ち第1及び第2の弁装置も第1及び第2の圧縮空気導管も、比較的小さく構成され、特に第1及び第2の圧縮空気導管は比較的小さい断面しか持っていない。第1及び第2の弁装置と第1及び第2の圧縮空気導管は、それらを通る空気に対して比較的大きい抵抗を及ぼす。中継弁は、時間に関してこの第1又は第2の圧縮空気導管に存在する空気圧力で、この第1又は第2の圧縮空気導管より大きい空気量を供給する。従って中継弁によりばね部分に給気するため、単位時間当たり一層大きい空気量を供給することができる。ばね部分に必要な空気圧力を一層速く確立することができ、特に出力すべき所望の圧力からの起こり得る偏差が比較的少ない。
【0018】
トレーラへ供給される空気量を増大するために設けられている中継弁の別の利点は、トレーラのばね制動シリンダのばね膜への急速な給気及び排気のほかに、トレーラの圧縮空気貯蔵容器の初めての給気が著しく速く行われることである。しかし費用の理由から、この中継弁をやめることができる。場合によってはその場合駐車制動調整器に1つの中継弁だけが統合され、第2の中継弁のない所に場所ふさぎ片が設けられる。
【0019】
本発明の有利な展開では、駐車制動調整器が特に駐車制動調整器の蓋に統合される1つ又は複数特に2つの圧力センサを持っている。これらの圧力センサにより、駐車制動調整器の1つ又は複数の個所の空気圧力が測定可能である。特に1つの圧力センサにより、少なくとも1つの圧縮空気入口及び/又は第1及び/又は第2の圧縮空気出口の空気圧力が測定可能である。駐車制動調整器の圧縮空気出口の圧力を制御するため、少なくともこれらの圧力の測定値が存在せねばならない。このため圧力センサを設けねばならない。この圧力センサを駐車制動調整器に統合すると、分離された構造に比べて費用が節約される。即ちこれらの圧力センサへ至る圧縮空気導管を、駐車制動調整器外に敷設する必要がない。駐車制動調整器外にある制御装置へ測定値を伝送する電気導線のみを設ければよい。更に駐車制動調整器又は駐車制動調整器の蓋へ圧力センサを統合することにより、圧力測定の誤り易さが著しく少なくなり、システムの有用性が向上する。
【0020】
本発明による駐車制動調整器に複式逆止め弁が統合されるか、駐車制動調整器とは別に有利に設けられている。この複式逆止め弁は2つの入口と1つの出口を持っている。各入口は、場合によっては駐車制動調整器のそれぞれ1つの入口を経て圧縮空気貯蔵容器に接続されている。複式逆止め弁は、この複式逆止め弁を介して第1の圧縮空気貯蔵容器と第2の圧縮空気貯蔵容器との圧力平衡を防止する。なぜならば、その1つの入口を通る圧縮空気の逆流が阻止されるからである。この理由から、複式逆止め弁は、圧縮空気貯蔵容器の方へ第1又は第2の圧縮空気導管の排気も阻止する。従って複式逆止め弁を経て、第1及び第2の圧縮空気導管は、複式逆止め弁又は駐車制動調整器の両方の圧縮空気入口にかかる圧力のうち高い方の圧力で給気可能である。駐車制動調整器への複式逆止め弁の統合は、分離した構造と比較して費用を節約する。
【0021】
本発明の有利な展開では、駐車制動調整器は統合されるか又は別個に設けられるシャトル弁を持ち、このシャトル弁が、第1の空気圧力を導く第1の圧縮空気導管又は第2の空気圧力を導く第2の圧縮空気導管に接続されている。このシャトル弁には更に、常用制動機能を行うため出力される制動ペダル装置の圧力が供給される。この出力される圧力は、制動機を操作しかつ常用制動機を実現するため制動シリンダ又は組合わせばね−膜制動シリンダの膜部分へ供給される。シャトル弁は両方の圧力即ち出力される圧力及び第1又は第2の空気圧力のうち高い方の圧力を選択し、この高い方の圧力を少なくとも1つのばね制動シリンダへ供給する。従って圧力は制動機を操作する制動シリンダの膜部分へ供給される。
【0022】
この場合シャトル弁は、組合わせばね制動シリンダにより操作可能な制動機の過負荷を回避する役割を持っている。即ち組合わせばね制動シリンダはばね部分及び膜部分を持っている。この組合わせばね制動シリンダは、膜部分が給気される時、常用制動機能により制動機を操作し、ばね部分が排気される時、駐車制動機能により制動機を操作する。従ってばね部分の排気の際膜部分の給気は、膜部分を介して制動機に作用する力及びばね部分を介して制動機に作用する力を加算することになる。これに反しシャトル弁は、入口にかかる圧力のうち大きい方の圧力で制動シリンダのばね部分に給気する。それによりシャトル弁は、制動シリンダのばね部分の空気圧力が常に膜部分の空気圧力と少なくとも同じ大きさであるようにする。制動機を過負荷することがある力の加算はそれにより回避される。
【0023】
駐車制動調整器へシャトル弁を統合することにより、分離された構造に比べて費用が節約される。シャトル弁を統合される駐車制動調整器の製造は、駐車制動調整器及びシャトル弁の別々の製造より安価である。更にシャトル弁を統合される駐車制動調整器の組立て費は、分離された構造に比べて少ない。なぜならば、構成要素を一層短い時間で組立てできるからである。
【0024】
本発明の実施形態では、トラクタ保護弁が駐車制動調整器に統合されるか又は別個に設けられている。このトラクタ保護弁は第2の圧縮空気導管又は第2の圧縮空気出口に接続されている。更にそれは制動ペダル装置の出力される圧力に接続されている。
【0025】
この実施形態では、駐車制動調整器が制御圧力出口を持ち、トレーラの制動シリンダの膜部分に給気するため出力される圧力、即ちトレーラの常用制動機能を与えるための制御圧力が、この制御圧力出口において供給される。
【0026】
トラクタ保護弁は、駐車制動調整器の第2の圧縮空気出口の空気圧力が所定の閾値以下に低下すると、制動ペダル装置からトレーラへの接続を自動的に遮断する。この場合トラクタ保護弁は、例えば空気式又は電気空気式に切換え可能な弁特に2ポート2位置切換え弁とすることができる。
【0027】
トレーラは、制御圧力導管及び貯蔵圧力導管を経て、トラクタに設けられて駐車制動調整器に統合されるトラクタ保護弁に接続されている。これら両方の圧縮空気導管が破裂すると、駐車制動調整器の第2の圧縮空気出口の圧力低下に応答して、トラクタ保護弁が駐車制動調整器の制御圧力入口から制御圧力出口への接続を遮断する。その場合制動ペダル装置の出力される圧力が逃げるのはもはや不可能である。これによりトラクタの常用制動機能の消失が防止される。即ちトレーラの常用制動機能用圧縮空気が逃げると、トラクタの常用制動機能のための十分な空気圧力がもはや供給不可能になってしまう。
【0028】
駐車制動調整器へのトラクタ保護弁の統合は有利である。なぜならば、統合構造は分離構造と比較して費用を節約するからである。
【0029】
本発明は、駐車制動機能の制御のために従来の制動調整器を使用する。この制動調整器は、通常はトレーラの制動機の常用制動機能の制御に使用される。この制動調整器は電子制動システムの一部である。即ちこの場合第1及び第2の弁装置は、2つの常用制動回路用の空気圧力を制御する。この場合第3の弁装置は、停電の場合冗長回路への切換えに用いられる。即ち第1の弁装置が通電されず、第2の弁装置も通電されないと、第1の圧縮空気導管及び第2の圧縮空気導管は、第3の弁装置が通電されると、貯蔵圧縮空気入口に接続されるか、又は第3の弁装置が通電されないと、冗長圧力を供給する入力に接続される。この冗長圧力は主導で出力される圧力であり、この圧力により常用制動機能が、第1の圧縮空気出口に供給される圧力及び第2の圧縮空気出口に供給される空気圧力を用いて制動シリンダの膜部分に給気することによって可能である。
【0030】
制動調整器を駐車制動調整器として使用する際、この制動調整器が構造的に改造されて、通常は第3の弁装置の冗長圧力が供給される入口が、今や出口として使用される。この出口は排気装置として形成されている。これにより制動調整器の機能が変化して、それが停電の際駐車制動調整器として、冗長回路を経て第1の圧縮空気導管及び第2の圧縮空気導管の給気を維持するのではなく、排気出口に変更される冗長圧力用入口を経て、逆に第1の圧縮空気導管及び第2の圧縮空気導管が排気されるようにする。更に今や両方の圧縮空気出口は、制動調整器の最初の使用におけるように、制動シリンダの膜部分との接続のために設けられているのではない。むしろこれらの圧縮空気出口は、駐車制動調整器として使用する場合、ばね制動シリンダのばね部分の給気又は排気のために用いられる。
【0031】
制動調整器を駐車制動調整器として使用すると、制動調整器が高い開発段階に達して確実に動作する信頼できる部品である、という利点がある。僅かな変更で、この信頼できる制動調整器は有利に駐車制動調整器として使用される。公知の制動調整器の僅かな変更により、第1の弁装置、第2の弁装置及び第3の弁装置の前と変わらない接続で、制動調整器と比較して、駐車制動調整器の必然的に異なる機能が得られる。即ち制動調整器では、停電中にも常用制動機能を得るため、第1及び第2の圧縮空気導管が停電の場合にも給気可能であるようにする。これに反し駐車制動調整器では、停電の場合駐車制動機能が得られるようにする。しかしこの駐車制動機能は、第1及び第2の圧縮空気導管が排気される場合に得られる。従って駐車制動調整器では、停電の場合第1及び第2の圧縮空気導管が排気されるようにする。
【0032】
公知の駐車制動調整器の代わりに制動調整器を駐車制動調整器として使用すると、本発明による制動調整器を持つ車両の走行作動中に、1つの弁装置のみ即ち第3の弁装置が通電される、という利点がある。これにより走行作動中に、公知の駐車制動調整器の使用と比較して電気エネルギが節約される。これは作動中の費用を節約する。駐車制動調整器の製造の際、それ以外の費用が節約される。なぜならば、制動調整器は既に多数従って安価に製造されるからである。
【0033】
駐車制動調整器は完全に別々に製造される必要がない。冗長圧力が供給される制動調整器の入口に排気装置が取付けられると、制動調整器は駐車制動調整器として使用可能である。その代りにすでに制動調整器又は駐車制動調整器自体において変更を行うことができる。その場合例えば排気のために変更されたハウジングが使用されるか、又は排気のための付加的な部材がこのハウジングへ挿入される。しかし制動調整器の多数の部分は駐車制動調整器の部分と一致している。特に第1の弁装置、第2の弁装置及び第3の弁装置は、変更なしに制動調整器にも、駐車制動機として使用される制動調整器にも設けられる。変更される使用の場合、これらの弁装置の間の接続も変わらない。
【0034】
前述した駐車制動調整器は制動装置の一部である。この制動装置は、電気導線により制動調整器に接続されかつこれらの電気導線を介して駐車制動調整器を制御する制御装置を持っている。このため制御装置は入力装置から制御指令を受ける。特に制御装置は駐車制動機能を行う制御信号を受ける。
【0035】
制御装置は更に少なくとも1つの第1及び第2の圧縮空気貯蔵容器を持っている。これら第1及び第2の圧縮空気貯蔵容器から、すくなくとも1つの圧縮空気入口を経て圧縮空気が供給可能である。
【0036】
更に制動装置は、給気可能なばね部分を有するばね制動シリンダを持つ制動機を持っている。第1の制動機の少なくともばね部分は、第1の圧縮空気出口において供給される空気圧力により給気可能であり、第2の制動機の少なくともばね部分は、第2の圧縮空気出口において供給される空気圧力により給気可能である。更に第1の制動機のばね部分も第2の制動機のばね部分も、第1の圧縮空気出口又は第2の圧縮空気出口を経て排気可能である。
【0037】
第1の制動機はトラクタの制動機であり、第2の制動機はトラクタに連結されるトレーラの制動機であるのがよい。この場合トラクタ及びトレーラの駐車制動機能を実行する制動圧力は、第1の弁装置及び第2の弁装置により別々に出力可能である。これは、例えばトラクタのばね制動シリンダが異なる構造である時に有利である。例えばトレーラがばね制動シリンダの排気されるばね部分によりトラクタより強く停止されるか、又はこの駐車制動機能によりトラクタより強く制動されるようにすることも望まれる。更にトレーラは必ずしもトラクタに連結されていない。トレーラが本発明により制動装置を持つトラクタに連結されていないと、第1又は第2の圧縮空気導管の給気従って第1又は第2の圧縮空気出口を経て圧縮空気の排気を有利に回避することができる。この場合第3の弁装置従って少なくとも1つの圧縮空気入口への第1又は第2の圧縮空気導管の接続を遮断するために、第1又は第2の弁装置が通電される。
【0038】
それ以外の有利な実施形態は従属請求項及び添付図面により詳細に説明される実施例から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】 駐車制動調整器を持つ制動装置の一部を本発明の実施例による簡単化した概略図で示す。
【図2】 簡単化して示す駐車制動調整器を持つ制動装置の一部を本発明の実施例による簡単化した概略図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、トラクタ及び少なくとも1つのトレーラから成る車両列車用制動装置の一部を概略的に示す。この場合図は、駐車制動調整器1を、トラクタの制動機及びトレーラの制動機のために駐車制動機能を実行するために使用される制動装置のそれ以外の構成要素と共に示す。
【0041】
駐車制動調整器1は、圧縮空気入口2、第1の圧縮空気出口3及び第2の圧縮空気出口4を持っている。圧縮空気入口2を経て、駐車制動調整器1は第1の圧縮空気貯蔵容器5及び/又は第2の圧縮空気貯蔵容器6から圧縮空気を供給する。この場合第1の圧縮空気貯蔵容器5はまず圧縮空気導管7を経て、また第2の圧縮空気貯蔵容器6は圧縮空気導管8を経て、複式逆止め弁9に接続されている。この複式逆止め弁9を経て、駐車制動調整器1は圧縮空気貯蔵容器5又は6から圧縮空気を供給される。この場合複式逆止め弁9は、駐車制動調整器1の圧縮空気入口2との接続のために、高い方の圧力を持つ圧縮空気導管7又は8を選択する。従って圧縮空気入口2には、圧縮空気導管7及び8の空気圧力のうち高い方の圧力がかかる。圧縮空気導管7と8との間の圧力平衡は複式逆止め弁9を経て回避される。これにより、例えば技術的欠陥のため圧縮空気貯蔵容器5又は6における圧力低下の際、他方の圧縮空気貯蔵容器6又は5も駐車制動調整器1も複式逆止め弁9を経て排気されることがない。
【0042】
この実施例とは異なる本発明の実施形態では、複式逆止め弁が駐車制動調整器に統合されている。その場合駐車制動調整器は2つの圧縮空気入口を持ち、これらの圧縮空気入口を通して、2つの圧縮空気導管が複式逆止め弁9との接続のためそれぞれ圧縮空気貯蔵容器へ導かれている。
【0043】
駐車制動調整器1は、第1の空気圧力及び第2の空気圧力を出力する。第1の空気圧力は第1の圧縮空気出口3において、また第2の空気圧力は第2の圧縮空気出口4において供給される。
【0044】
第1の圧縮空気出口3を経て、ばね制動シリンダ12及び13(しばしばもっと正確に組合わせばね−膜制動シリンダと称される)のばね部分10及び11が給気及び排気可能である。これらのばね制動シリンダ12及び13はトラクタの制動機のために駐車制動機能を与える。トラクタのこれらの制動機は、ばね部分10及び11の給気の際釈放され、ばね部分10及び11の排気の際投入される。トラクタの走行作動中にこのトラクタの制動機は、駐車制動機能によっては投入されない。従って車両の走行作動中に、ばね制動シリンダ12及び13のばね部分10及び11は給気されている。この場合これらのばね部分は、第1の圧縮空気出口3、シャトル弁14及び圧縮空気導管15及び16を経て給気される。この場合シャトル弁14は圧縮空気導管17を経て制動ペダル装置18に接続されている。この制動ペダル装置18により、常用制動機能を介して制動機の操作が、特に走行する車両において規則正しく行われる。常用制動機能のために、ばね制動シリンダ12及び13は膜部分19及び20を持っている。膜部分19及び20が給気されると、ばね制動シリンダ12及び13はトラクタの制動機を操作する。
【0045】
シャトル弁14は、ばね制動シリンダ12及び13のばね部分10,13及び膜部分19,20の同時投入によるトラクタの制動機の過負荷を回避する。即ちシャトル弁14により、第1の圧縮空気出口3及び圧縮空気導管17を経て供給される空気圧力のうち高い方を、圧縮空気導管15及び16が受ける。常用制動機の出力される圧力である圧縮空気導管17の空気圧力は、ばね制動シリンダ12及び13の膜部分19及び20の空気圧力と同じなので、ばね部分10及び11の空気圧力はばね制動シリンダ12及び13の膜部分19及び20の空気圧力と常に少なくとも同じ高さである。従って駐車制動機が投入されると、即ちばね部分10及び11が排気されると、圧縮空気導管17への制御圧力の供給に応答して、ばね部分10及び11からトラクタの制動機へ及ぼされる力が、膜部分19及び20からこれらの制動機へ及ぼされる力の増大と同じ割合で減少される。
【0046】
この実施例とは異なり、シャトル弁を駐車制動調整器に統合することもできる。その場合駐車制動調整器は、シャトル弁へ導かれる圧縮空気導管が通される制御圧力入口を持っている。
【0047】
ここに示した実施例とは異なり、第2の圧縮空気出口4を経て、トラクタの別の制動機のばね制動シリンダのばね部分を給気又は排気することができる。その場合トラクタは、トレーラが連結されないか又は場合によってはトラクタが連結不可能な車両であってもよい。この場合別の制動機は、車両の別の車軸の車輪の制動機であってもよい。その場合駐車制動機能は、例えば前車軸の車輪にある制動機及び後車軸の車輪にある制動機に対して別々に与えられてもよい。
【0048】
しかしここに示す実施例では、第2の圧縮空気出口4を経てトレーラへ、このトレーラの制動機のばね制動シリンダの給気用圧縮空気が供給可能である。従って第2の圧縮空気出口4は、まずトラクタ保護弁21に接続されている。このトラクタ保護弁の役割は、トラクタの制動機の常用制動機能を実行するための圧縮空気が、トレーラに至る接続導管の破裂個所を経て逃げるのを、回避することである。即ちトラクタ保護弁21は、トレーラの制動機の常用制動機能を実行するために出力される空気圧力を持つ図示しない圧縮空気導管を遮断することができる。即ちトレーラへ至るこの圧縮空気導管の破裂の際、この図示しない導管がトラクタ保護弁21なしでは排気されることになる。その場合この圧縮空気導管を経て、トラクタの制動機へ常用制動機能のための圧縮空気を供給する圧縮空気導管も排気されることになる。従ってトラクタ保護弁21がないと、トラクタからトレーラへ至る圧縮空気導管が破裂する際、トラクタの制動機の常用制動機能がもはや保証されないか、又は限られた範囲でしか保証されない。第2の圧縮空気出口4とトレーラへの圧縮空気接続を行う圧縮空気接続口22との間にあるトラクタ保護弁21は、第2の圧縮空気出口4から圧縮空気接続口22へ至る圧縮空気導管の空気圧力が低下する際、出力される常用制動機能用圧力をトレーラへ供給する図示しない圧縮空気導管を遮断する。
【0049】
この実施例とは異なり、トラクタ保護弁を駐車制動機へ統合することもできる。その場合駐車制動調整器は制御圧力入口及び制御圧力出口を持ち、制御圧力出口が圧縮空気導管及びトラクタ保護弁を経て制御圧力出口に接続されている。
【0050】
駐車制動調整器1において、圧縮空気出口3及び4における圧力が、第1の弁装置24及び第3の弁装置により出力される。この場合第1の弁装置は3ポート3位置切換え弁23である。第2の弁装置は3ポート3位置切換え弁24である。第3の弁装置は3ポート2位置切換え弁25である。
【0051】
この3ポート2位置切換え弁25は、圧縮空気導管26を経て圧縮空気入口2に接続されている。圧縮空気導管27を経て、3ポート2位置切換え弁25は更に絞られる排気装置28に接続されている。3ポート2位置切換え弁25が通電されないと、圧縮空気導管29を圧縮空気導管27に接続する。これに反し3ポート2位置切換え弁25が通電されると、圧縮空気導管29を圧縮空気導管26に接続する。従って3ポート2位置切換え弁25が通電されないと、圧縮空気導管29が圧縮空気導管27及び絞られる排気装置28を経て絞られて排気可能である。これに反し3ポート2位置切換え弁25が通電されると、圧縮空気導管29が圧縮空気導管26を経て圧縮空気入口2から供給される圧縮空気で通気される。
【0052】
圧縮空気導管29は、3ポート2位置切換え弁25を3ポート3位置切換え弁23及び24に接続する。通電されない3ポート3位置切換え弁23は、圧縮空気導管29を第1の圧縮空気導管30に接続する。通電されない3ポート3位置切換え弁24は、圧縮空気導管29を第2の圧縮空気導管31に接続する。圧縮空気導管29が給気されると、通電されない3ポート3位置切換え弁23及び24は、それぞれ圧縮空気導管30又は31に対する通気機能を持つ。第1の電流で通電される第1の状態において、3ポート3位置切換え弁23及び24は“保持”機能を持つ。更に第2の電流で通電される第2の状態において、3ポート3位置切換え弁23及び24は“急速排気”機能を持ち、その際第2の電流は第1の電流より大きい。従って3ポート3位置切換え弁23又は24が第1の電流で通電されると、第1の圧縮空気導管30又は第2の圧縮空気導管31の空気圧力が、3ポート3位置切換え弁23及び24の第1の通電される状態に保持される。この3ポート3位置切換え弁23及び24の第2の通電される状態において、第1の圧縮空気導管30又は第2の圧縮空気導管31が、3ポート3位置切換え弁23又は24を経て急速に排気される。
【0053】
別の実施形態では、第1の通電される状態と第2の通電される状態とが取換えられている。即ち3ポート3位置切換え弁23又は24の第1の通電される状態において、第1の電流を使用して“急速排気”が行われる。3ポート3位置切換え弁23又は24の第2の通電される状態において、第2の電流を使用して“保持”機能が実行され、その際第2の電流は第1の電流より大きい。この実施形態では、“通気”状態と“排気”状態との間の一層急速な切換えが可能である。なぜならば、“保持”状態を通過する必要がないからである。
【0054】
従って弁装置又は弁23,24及び25により、第1の圧縮空気導管30及び第2の圧縮空気導管31においてそれぞれ空気圧力が出力される。圧縮空気導管30の空気圧力は、この圧縮空気導管30に接続される中継弁32において空気量を増大される。別の中継弁33が圧縮空気導管31に接続されて、この第2の圧縮空気導管31の空気圧力を一層大きい空気量で供給する。圧縮空気導管34及び35を経て中継弁32及び33は、第1の圧縮空気出口3及び第2の圧縮空気出口4において空気量を増大して、圧縮空気導管30及び31の空気圧力を供給する。この場合中継弁32及び33は、これらの中継弁32及び33を圧縮空気入口2に接続する圧縮空気導管36及び37を経て、一層大きい空気量を受ける。圧縮空気導管30又は31の排気に応答して圧縮空気導管34又は35を排気するため、中継弁32又は33は更に排気出口を持っている。
【0055】
図において、圧力センサ38,39,40,41及び42が駐車制動調整器1に統合されている。圧力センサ38及び39は圧縮空気導管43及び44を経て圧縮空気導管7及び8に接続されて、これらの圧縮空気導管7及び8の空気圧力をそれぞれ測定し、これらの圧力のうち高い方の圧力が圧縮空気入口2及び圧縮空気導管26の空気圧力に等しい。この圧力は、監視のため更に圧縮空気導管45を経て圧力センサ40により測定可能である。別の実施形態では、圧力センサ40はなくてもよい。なぜならば圧力センサ38及び39により、圧力センサ40により検出される圧力も実質的に求めることが可能だからである。圧力センサ41及び42は、圧縮空気導管46及び47を経て、圧縮空気導管34及び35又は第1の圧縮空気出口3及び第2の圧縮空気出口4の空気圧力を測定する。
【0056】
圧力センサ38,39,40,41及び42を駐車制動調整器1の蓋に統合することができる。更に駐車制動調整器1がもっと少数又は多数の圧力センサを持つこともできる。
【0057】
圧力センサ38,39,40,41及び42は、電気導線48を介して電気的に、駐車制動調整器1に統合されるか又は駐車制動調整器1とは別個に設けられる制御装置49に接続されている。この制御装置49は、電気導線48を介して圧力センサ38,39,40,41及び42へ電気エネルギを供給し、測定された圧力の測定結果を圧力センサ38,39,40,41及び42から受ける。
【0058】
制御装置49は駐車制動調整器1の第1、第2及び第3の弁装置23,24及び25を制御する。このため制御装置49は、電気導線50を介して弁装置又は3ポート3位置切換え弁23,24及び弁装置又は3ポート2位置切換え弁25に接続されている。これらの電気導線50は弁23,24及び25のコイルへ電気エネルギを供給し、それによりこれらの弁23,24及び25を切換える。
【0059】
入力装置51及び52により、トラクタ又はトレーラの駐車制動機能を実行するための信号が、制御装置49へ送信可能である。トレーラの駐車制動機能は、更に入力装置53を介して制御可能である。制動装置及び駐車制動調整器1へのエネルギ供給のため、制御装置49は第1及び第2の電源に接続するための電気導線54及び55を持っている。この場合2つの電源は、一方の電源の故障の際制動装置及び駐車制動調整器1の給電を保証する。
【0060】
それ以外の電気導線56,57及び58はトレーラにある装置とのデータの交換、CAN通信及びSAE通信のための通信導線である。
【0061】
この実施例の制動装置を持つ車両の走行作動中に、ばね制動シリンダ13及び13のばね部分10及び11が給気されている。弁23及び24は通電されず、弁25のみが通電されている。走行中における停電の際、弁25も通電されない。ばね部分10及び11が絞られる排気装置28を経て絞られて排気される。これにより駐車制動機能が徐々に動作せしめられる。車両が制動されて停止するに至る。
【0062】
通常車両又は車両列車は、制動シリンダの通気される膜部分により制動される。このような制動の際、特にばね制動シリンダ12及び13の膜部分19及び20が給気される。車両が制動されて停止するに至る。入力装置51により車両の運転者は、駐車制動機能によりトラクタを動かないようにする。この信号が制御装置49へ達し、この信号に応答して制御装置49が、電気導線50を介して3ポート3位置切換え弁23に第2段で通電する。それによりこの3ポート3位置切換え弁が、第1の圧縮空気導管30の急速な排気を行う第2の通電状態に切換わる。その結果中継弁32の圧縮空気出口を経て、圧縮空気導管34が排気されて、圧縮空気導管34の空気圧力が第1の圧縮空気導管30の空気圧力と同様に低下する。その結果圧縮空気導管15及び16の空気圧力が、圧縮空気導管17の空気圧力まで低下する。シャトル弁14のためそれ以上の低下が防止される。圧縮空気導管15及び16の圧力の低下により、ばね制動シリンダ12及び13により操作可能な制動機へばね部分10及び11から及ぼされる圧力が増大する。制動ペダル装置18により圧縮空気導管17の空気圧力が低下されると、この圧力は減少しない。即ちその場合ばね部分10及び11の空気圧力は、ばね部分10及び11も膜部分19及び20も排気されるまで、膜部分19及び20の空気圧力とちょうど同じように低下する。その場合ばね制動シリンダ12及び13により駐車制動機能のみが実行される。圧縮空気導管34が排気されると、電気エネルギを節約するため、3ポート3位置切換え弁23が再び通電されない状態に切換わることができる。この場合圧力センサ41を介して、圧縮空気導管34が排気されていることを確認することができる。
【0063】
図2は本発明による制動装置の一部を簡単化した概略図で示し、駐車制動調整器1はブラックボックスで示されている。特に図2は駐車制動機能を実行する制動装置だけでなく、常用制動機能を実行する制動装置の部分も示す。
【0064】
図2による実施例は図1による実施例と大幅に同じである。特に同じ符号は同じ部分を示す。従って図1による実施例に対する補足及び変更についてのみ以下に説明する。
【0065】
駐車制動調整器1には複式逆止め弁9が統合されている。従って駐車制動調整器1は、圧縮空気貯蔵容器5及び6から駐車制動調整器1へ圧縮空気を供給する2つの圧縮空気入口2を持っている。この場合圧縮空気貯蔵容器5及び6は、圧縮空気供給装置61特に圧縮機から圧縮空気を受ける。更に圧縮空気貯蔵容器5,6と圧縮空気供給装置との間に、圧縮空気貯蔵容器5及び6に付属する制動回路を保護するための(図示しない)逆止め弁がそれぞれ設けられている。
【0066】
常用制動機能の実行のため制動ペダル装置18は、圧縮空気導管62,63及び圧縮空気導管7,8を経て、第1の圧縮空気貯蔵容器5及び第2の圧縮空気貯蔵容器6から圧縮空気を供給される。制動ペダル装置18により、圧縮空気導管64及び65へ空気圧力が出力される。出力されるこの空気圧力は中継弁66又は67において空気量を増大される。この増大用圧縮空気を、中継弁66又は67は、圧縮空気導管68又は69及び圧縮空気導管63又は62を経て、第1の圧縮空気貯蔵容器5又は第2の圧縮空気貯蔵容器6から受ける。中継弁66又は67は、圧縮空気導管70,71又は72,73を経て、制動シリンダ12,13の給気又は排気を行う。この場合制動シリンダ74及び75はなるべく車両の前車軸の制動機を操作する。これに反しばね制動シリンダ12及び13は、車両の後車軸の車輪を制動するためなるべくこの後車軸に設けられている。
【0067】
圧縮空気導管70,71,72,73にはロック防止(ABS)弁76,77,78及び79があって、電気導線80,81,82及び83を介して制御装置49に接続され、この制御装置49により制御可能である。車両の車輪のロックは、例えば図示しない回転センサにより検出可能である。制動シリンダ74又は75の膜部分又はばね制動シリンダ12又は13の膜部分19又は20はABS弁76,77,78又は79を経て排気されて、ロックする車輪にあって制動シリンダ74又は75又はばね制動シリンダ12又は13により操作される制動機を釈放する。
【0068】
シャトル弁84を経て、制動ペダル装置18から出力されて圧縮空気導管64又は65に存在する空気圧力のうち高い方の圧力が、圧縮空気導管85を経てトラクタ保護弁21へ供給される。トラクタ保護弁21は出力されたこの圧力を、トレーラへの接続部の圧縮空気接続口86へ供給する。圧縮空気接続口86にかかる制御圧力としての空気圧力によりトレーラの制動機の常用制動機能を実行することができる。即ち圧縮空気接続口86にかかる空気圧力により、常用制動機能を実行するため、制動シリンダの膜部分が給気及び排気可能であり、一方圧縮空気接続口22を経て、制動シリンダのばね部分が給気及び排気可能であり、かつトレーラの圧縮空気溜めが充填される。
【0069】
全体として図2は、車両特に車両列車の常用制動機能及び駐車制動機能を実行する制動装置に、本発明による駐車制動調整器をどのようにして有利に統合できるかを示している。
【0070】
全体として本発明は、トラクタ及びトレーラのための駐車制動機能を持つ制動装置に使用可能であり、トラクタにあるばね用の空気圧力及びトレーラ用の空気圧力を別々に調整でき、かつ停電の場合これらの圧力を低下させて駐車制動機能を実行する駐車制動調整器1を提供する。従来の駐車制動調整器とは異なり、両方のばね制動回路に給気するために、1つの弁装置に通電しさえすればよい。車両の走行作動中にこれら両方の圧力は高いレベルにあることが必要なので、本発明は走行作動中に1つの弁に通電しさえすればよく、従って走行作動中に電気エネルギを節約する。
【0071】
上述した説明及び特許請求の範囲にあげられたすべての特徴は、本発明によれば単独でも任意の組合わせでも使用可能である。従って本発明は上述するか又は権利を請求される特徴の組合わせには限定されない。むしろ個々の特徴のすべての組合わせが開示されているものとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両特にトラクタとトレーラから成る車両列車の制動機の駐車制動機能を制御するための駐車制動調整器であって、少なくとも1つの圧縮空気入口(2)、少なくとも1つの第1及び第2の圧縮空気出口(3,4)、及び少なくとも1つの第1及び第2の電磁的に操作可能な弁装置(23,24)を持ち、第1の弁装置(23)を経て、第1の圧縮空気出口(3)へ至る第1の圧縮空気導管(30,34)が圧縮空気入口(2)に供給される圧縮空気により、第1の空気圧力を出力しながら給気可能であり、第2の弁装置(24)を経て、第2の圧縮空気出口(4)へ至る第2の圧縮空気導管(31,35)が、圧縮空気入口(2)に供給される圧縮空気により、第2の空気圧力を出力しながら給気可能であり、第1の弁装置(23)が通電されない場合、第1の圧縮空気導管(30,34)が第1の弁装置(23)を経て排気可能であり、第2の弁装置(24)が通電されない場合、第2の圧縮空気導管(31,35)が第2の弁装置(24)を経て排気可能であるものにおいて、第3の弁装置(25)が設けられ、第3の弁装置(25)を経て第1の弁装置(23)及び第2の弁装置(24)が圧縮空気入口(2)に接続可能であり、第1の弁装置(23)及び第2の弁装置(24)が通電されず、第3の弁装置(25)が通電される場合、第1の圧縮空気導管(30,34)が第1の弁装置(23)を経て給気可能であり、第2の圧縮空気導管(31,35)が第2の弁装置(24)を経て給気可能であることを特徴とする、駐車制動調整器。
【請求項2】
第3の弁装置(25)が3ポート2位置切換え電磁弁であることを特徴とする、請求項1に記載の駐車制動調整器。
【請求項3】
絞られて排気する装置(28)により、第1の弁装置(23)及び第3の弁装置(25)が通電されない場合、第1の圧縮空気導管(30)が絞られて排気可能であり、第2の弁装置(24)及び第3の弁装置(25)が通電されない場合、第2の圧縮空気導管(31)が絞られて排気可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の駐車制動調整器。
【請求項4】
第1の弁装置(23)及び/又は第2の弁装置(24)がそれぞれ3ポート3位置切換え電磁弁であり、通電されないこのような3ポート3位置切換え電磁弁(23;24)を経て、第1又は第2の圧縮空気導管(30,34;31,35)が、この圧縮空気導管(30,34;31,35)の排気又は給気のため第3の弁装置(25)に接続可能であり、第1の電流を通電されるこの切換え電磁弁(23;24)を経て、電気圧力がこの圧縮空気導管(30,34;31,35)に保持可能であり、第2の電流を通電されるこの切換え電磁弁(23;24)を経て、この圧縮空気導管(30,34;31,35)が排気可能であり、第1の電流が第2の電流より小さいことを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の駐車制動調整器。
【請求項5】
第1の弁装置(23)及び/又は第2の弁装置(24)がそれぞれ3ポート3位置切換え電磁弁であり、通電されないこのような3ポート3位置切換え電磁弁(23;24)を経て、第1又は第2の圧縮空気導管(30,34;31,35)が、この圧縮空気導管(30,34;31,35)の排気又は給気のため第3の弁装置(25)に接続可能であり、第1の電流を通電されるこの切換え電磁弁(23;24)を経て、この圧縮空気導管(30,34;31,35)が排気可能であり、第2の電流を通電されるこの切換え電磁弁(23;24)を経て、空気圧力がこの圧縮空気導管(30,34;31,35)に保持可能であり、第1の電流が第2の電流より小さいことを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の駐車制動調整器。
【請求項6】
3ポート3位置切換え電磁弁(23;24)が、2接極子電磁弁として構成されていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の駐車制動調整器。
【請求項7】
第1の圧縮空気導管(30,34)又は第2の圧縮空気導管(31,35)に中継弁(32;33)が設けられ、第1の圧縮空気導管(3)又は第2の圧縮空気導管(4)の空気圧力が、この中継弁(32;33)のより空気量を増大されて、第1の圧縮空気出口(3)又は第2の圧縮空気出口(4)において供給可能であることを特徴とする、請求項1〜6の1つに記載の駐車制動調整器。
【請求項8】
1つ又は複数特に2つの圧力センサ(38,39,40,41,42)が特に駐車制動調整器の蓋に統合され、各圧力センサ(38,39,40,41,42)により空気圧力特に少なくとも1つの圧縮空気入口(2)及び/又は第1の圧縮空気出口(3)及び/又は第2の圧縮空気出口(4)において測定可能であることを特徴とする、請求項1〜7の1つに記載の駐車制動調整器。
【請求項9】
統合されるか又は別個に設けられる複式逆止め弁(9)を経て、第3の弁装置(25)が、2つの圧縮空気入口の1つしかも高い方の圧力がかかる圧縮空気入口から給気可能であり、第3の弁装置(25)がこの複式逆止め弁(9)を経ては排気可能でないことを特徴とする、請求項1〜8の1つに記載の駐車制動調整器。
【請求項10】
統合されるか又は別個の設けられて第1の空気圧力を導く第1の圧縮空気導管(30,34)に接続されるシャトル弁(14)に、制動ペダル装置(18)の出力される圧力が供給可能であり、シャトル弁(14)を経て、これら両方の圧力即ち出力される圧力及び第1の空気圧力のうち高い方の圧力が、少なくとも1つのばね制動シリンダ(12,13)に供給可能であることを特徴とする、請求項1〜9の1つに記載の駐車制動調整器。
【請求項11】
統合されるか又は別個に設けられるトラクタ保護弁(21)が、第2の圧縮空気導管(31,35)又は第2の圧縮空気出口(4)に接続され、更にペダル装置(18)の出力される圧力に接続可能であり、かつ制御圧力出口を持ち、制御圧力出口において、トレーラの常用制動機能を操作するため出力される空気圧力が供給可能であり、第2の圧縮空気導管(31,35)又は第2の圧縮空気出口(4)の空気圧力が所定の閾値以下に低下する際、制動ペダル装置(18)の出力される圧力が自動的に遮断可能であることを特徴とする、請求項1〜10の1つに記載の駐車制動調整器。
【請求項12】
駐車制動調整器(1)を制御するため統合されるか別個に設けられる制御装置(49)を有することを特徴とする、請求項1〜11の1つに記載の駐車制動調整器。
【請求項13】
車両特にトラクタとトレーラから成る車両列車の制動機を制御するために制動調整器が使用され、
制動調整器が、
少なくとも1つの圧縮空気入口(2)、少なくとも1つの第1の圧縮空気出口(3)及び第2の圧縮空気出口(4)、
少なくとも1つの第1の電磁的に操作可能な弁装置(23)、第2の電磁的に操作可能な弁装置(24)及び第3の電磁的に操作可能な弁装置(25)を持ち、
第1の弁装置(23)を経て、第1の圧縮空気出口(3)へ至る第1の圧縮空気導管(30,34)が、圧縮空気入口(2)において供給される圧縮空気で給気可能であり、
第2の弁装置(24)を経て、第2の圧縮空気出口(4)へ至る第2の圧縮空気導管(31,35)が、圧縮空気入口(2)において供給される圧縮空気で給気可能であり、
第1の弁装置(23)が通電されず、第3の弁装置(25)が通電される場合、第1の圧縮空気導管(30,34)が第1の弁装置(23)を経て給気可能であり、第2の弁装置(24)が通電されず、第3の弁装置(25)が通電される場合、第2の圧縮空気導管(31,35)が第2の弁装置(24)を経て給気可能であり、
第1の弁装置(23)が通電されず、第3の弁装置(25)が通電されない場合、第1の圧縮空気導管(30,34)が第3の弁装置(25)を経て別の圧縮空気導管(27)に接続可能であり、第2の弁装置(24)が通電されず、第3の弁装置(25)が通電されない場合、第1の圧縮空気導管(30,34)が別の圧縮空気導管(27)に接続可能である、駐車制動機能を制御するため請求項1〜12に記載の駐車制動調整器として制動調整器を使用する方法。
【請求項14】
別の圧縮空気導管(27)が、第3の弁装置(25)を経て第1の圧縮空気導管(30)及び第2の圧縮空気導管(31)を排気するための排気導管として使用される、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−540352(P2010−540352A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529244(P2010−529244)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005218
【国際公開番号】WO2009/046779
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(596055475)ヴアブコ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (47)
【氏名又は名称原語表記】WABCO GmbH
【Fターム(参考)】