説明

駐車支援装置

【課題】撮影画像に含まれる駐車枠を高精度に検出することができる技術を提供する。
【解決手段】算出手段による投票数の和が最も大きなθの組における複数の点(図4中の△、○で示される点)について、ρθ空間のρにより表される距離lが各仕切線SL間の距離と同一を示す点の組が駐車枠Pとして検出手段により検出されることで、上方視画像に含まれる所定以上の長さを有する直線を示すエッジのうち、駐車枠を形成する直線Lおよび仕切線SLとは異なる直線を示すエッジを形成する各画素について、前記θの組と異なるθ座標上の点(図4中の×で示される点)に投票が行われることにより検出される直線が、駐車枠であると誤って検出されることが防止されるので、撮影画像に含まれる駐車枠を高精度に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、路面に描かれた少なくとも1本の直線と、該直線に交差して路面に描かれた複数の仕切線とにより形成される駐車枠への自車両の駐車を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載カメラにより撮影された撮影画像に、例えばSobelフィルタによる微分処理を施すことで撮影画像に含まれるエッジを検出し、検出されたエッジから駐車枠を形成する白線をハフ変換により検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。一般的なハフ変換においては、撮影画像に含まれる直線を、任意に設定した原点から直線までの法線の長さρおよび角度θを用いて、
ρ=x・cosθ+y・sinθ(x,y:直線を形成する画素の座標) …式(1)
と表したときに、ρθ空間における座標(ρ,θ)により表される各点は、それぞれ撮影画像に含まれる直線を示すものとなる。
【0003】
そして、ハフ変換では、撮影画像に含まれるエッジを形成する各画素について、各画素を通る任意の直線を式(1)で表したときに、各直線ごとにそれぞれの(ρ,θ)で表されるρθ空間の座標に対して投票が行われる。例えば、0°≦θ<180°の範囲で1°ずつθを変動させれば、各θに対してρが一意に定まり、各画素ごとに式(1)で表される直線が180本存在するため、各画素ごとに180回のρθ空間への投票が行われる。
【0004】
このとき、式(1)で表される直線が、撮影画像に含まれる直線を示すエッジを表す直線であれば、この直線は当該エッジを形成する全ての画素を通る直線であるため、ρθ空間においてこの直線を示す点(座標)に対しては当該エッジを形成する全ての画素からハフ変換による投票が行われるので、ρθ空間においてこの直線を示す点への投票数は他の点への投票数よりも多くなる。したがって、撮影画像に含まれる直線を示すエッジを形成する各画素についてハフ変換によるρθ空間への投票が行われた結果、所定数以上の投票が行われたρθ空間における点が示す直線を、撮影画像に含まれる所定以上の長さを有する直線を示すエッジ、すなわち、撮影画像に含まれる所定数以上の画素により形成されたエッジを表す直線と認識することができる。
【0005】
したがって、駐車枠を形成する白線のうち、駐車車両の両側の仕切線は規定の間隔(約2.5m)で路面に描かれているため、撮影画像に微分処理を施すことにより得られたエッジ画像からハフ変換により所定以上の長さを有する直線(白線)を検出し、検出された直線のうち、前記規定の間隔を有する2本の直線を、駐車枠を形成する仕切線として検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−161193号公報(段落[0032]、図3,6など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般的に、ハフ変換により撮影画像に含まれる直線を検出する際には、ρθ空間の各点に対する投票数について所定の閾値を設けることにより、所定数以上の投票が行われた直線、すなわち、所定以上の長さを有する直線が検出される。したがって、ρθ空間の各点への投票数の閾値が、例えば駐車枠を形成する仕切線とほぼ同じ長さに相当する値に設定されていると、撮影画像に含まれる仕切線の一部が駐車車両などにより隠れて仕切線の長さが短くなっているときには、仕切線を示すエッジを形成する画素の数が少なくなるため、仕切線を示すエッジに対応するρθ空間の点に対する投票数が減って閾値に達しない場合があり、仕切線を検出できないおそれがある。
【0008】
また、ρθ空間の各点への投票数の閾値を小さくすれば、撮影画像に含まれる短いエッジ(直線)を検出することができるため、撮影画像に含まれる仕切線の一部が駐車車両などにより隠れて仕切線の長さが短くなっている場合であっても、短くなった仕切線をハフ変換により検出することができる。しかしながら、ρθ空間への投票数の閾値を小さくすると、撮影画像に含まれる短い直線が全て検出されるため、撮影画像に含まれる駐車枠とは異なる短い直線を示すエッジが全て検出されて、所謂、ノイズ成分が大きくなり、撮影画像に含まれる駐車枠を検出することが困難となる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、撮影画像に含まれる駐車枠を高精度に検出することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明者は種々の検討を繰返した結果、一般的な駐車場では、路面に描かれた少なくとも1本の直線と、該直線に所定の角度を成すように交差して路面に描かれた複数の仕切線とにより駐車枠が形成されており、駐車場を撮影した撮影画像には駐車枠を形成する直線および仕切線を示すエッジが最も多く含まれることに着目して本発明を完成した。
【0011】
本発明の駐車支援装置は、路面に描かれた少なくとも1本の直線と、該直線に交差して路面に描かれた複数の仕切線とにより形成される駐車枠への自車両の駐車を支援する駐車支援装置において、前記自車両に搭載されて自車両周辺を撮影する撮影手段と、前記撮影手段による撮影画像を上方視画像に射影変換する射影変換手段と、前記上方視画像に含まれるエッジを形成する各画素についてハフ変換によるρθ空間への投票を行うハフ変換手段と、前記ハフ変換手段により所定数以上の投票が行われたρθ空間における複数の点を抽出し、抽出した前記複数の点それぞれへの投票数について、前記直線および前記仕切線が成す角度と同じ角度だけずれているθの組ごとに投票数の和を算出する算出手段と、前記算出手段による前記投票数の和が最も大きな前記θの組における前記複数の点について、ρθ空間のρにより表される距離が前記各仕切線間の距離と同一を示す点の組を前記駐車枠として検出する検出手段とを備えることを特徴としている(請求項1)。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、路面に描かれた少なくとも1本の直線と、該直線に交差して路面に描かれた複数の仕切線とにより駐車枠が形成されているが、自車両に搭載されて自車両周辺を撮影する撮影手段により駐車場が撮影された場合に、撮影画像には駐車枠を形成する直線および仕切線が最も多く含まれる。そして、撮影画像が射影変換手段により上方視画像に射影変換されることにより、上方視画像に含まれる前記直線および仕切線を示すエッジが、前記直線および仕切線が実際に成す角度と同じ角度を成して交差した状態となる。
【0013】
そして、上方視画像に含まれるエッジを形成する各画素についてハフ変換によるρθ空間への投票がハフ変換手段により行われると、ρθ空間において、駐車枠を形成する直線を示すエッジを表す点のθおよび駐車枠を形成する仕切線を示すエッジを表す点のθの両θ座標上に最も多くの投票が行われ、両θは、前記直線および仕切線が成す角度と同じ角度だけずれている。
【0014】
そのため、ハフ変換手段により所定数以上の投票が行われたρθ空間における複数の点、すなわち、上方視画像に含まれる所定以上の長さを有する直線を示すエッジを形成する各画素についての投票が行われることによるρθ空間における複数の点が抽出され、抽出された複数の点それぞれへの投票数について、駐車枠を形成する直線および仕切線が成す角度と同じ角度だけずれているθの組ごとに投票数の和が算出手段により算出されると、算出手段による投票数の和が最も大きなθの組における複数の点それぞれが、駐車枠を形成する直線および仕切線を示すエッジを表す直線を示すものであると推定することができる。
【0015】
したがって、算出手段による投票数の和が最も大きなθの組における複数の点について、ρθ空間のρにより表される距離が各仕切線間の距離と同一を示す点の組が駐車枠として検出手段により検出されることで、上方視画像に含まれる所定以上の長さを有する直線を示すエッジのうち、駐車枠を形成する直線および仕切線とは異なる直線を示すエッジを形成する各画素について前記θの組と異なるθに投票が行われることにより検出される直線が、駐車枠であると誤って検出されることが防止されるので、撮影画像に含まれる駐車枠を高精度に検出することができる。
【0016】
また、ハフ変換手段により投票が行われたρθ空間における複数の点のうち、駐車枠を形成する直線および仕切線の長さよりも短い直線を示すエッジを表す点を抽出して駐車枠の検出を行っても、算出手段による投票数の和が最も大きなθの組における複数の点は駐車枠を形成する直線および仕切線を示すエッジを表すものである蓋然性が非常に高く、これらの複数の点についてのみ駐車枠の検出が行われるため、例えば撮影画像に含まれる仕切線が部分的に駐車車両によって隠れて短くなっている場合であっても、当該仕切線を高精度に検出することができると共に、路面に描かれた駐車枠以外の路面標示や、ポールなどの固定物による短い直線を示すエッジを誤って駐車枠として検出するおそれが無い。
【0017】
また、所定数以上の投票が行われたρθ空間における複数の点のうち、算出手段による投票数の和が最も大きなθの組における複数の点についてのみ駐車枠の検出が行われて、前記θの組と異なるθ座標上の点については駐車枠の検出が行われないため、撮影画像に含まれる駐車枠を検出する処理時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態のブロック図である。
【図2】撮影画像の一例を示す図である。
【図3】図2の撮影画像が射影変換された上方視画像を示す図である。
【図4】図3の上方視画像に含まれるエッジを形成する各画素についてハフ変換によるρθ空間への投票が行われた例を示す図である。
【図5】図1の動作説明用のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明の駐車支援装置2の一実施形態のブロック図である。図2は車載カメラ3による撮影画像Fの一例を示す図である。図3は図2の撮影画像Fが射影変換された上方視画像tFを示す図である。図4は図3の上方視画像tFに含まれるエッジを形成する各画素についてハフ変換によるρθ空間への投票が行われた例を示す図である。図5は図1の動作説明用のフローチャートである。
【0021】
1.構成
図1に示す駐車支援装置2は、路面Rに描かれた少なくとも1本の直線Lと、該直線Lに交差して路面Rに描かれた複数の仕切線SLとにより形成される駐車枠Pへの自車両1の駐車を支援するものであって、車載カメラ3と、車載カメラ3の撮影画像Fや種々のデータを記憶する記憶手段4と、車載カメラ3の撮影画像Fを処理するマイクロコンピュータ構成のECU6と、例えばインストルメントパネルなどに取付けられたCRT、液晶ディスプレイなどの走行モニタ7と、スピーカ8とを備えている。
【0022】
車載カメラ3(本発明の「撮影手段」に相当)は、自車両1に搭載されて自車両1の周辺を撮影するものであって、この実施形態では自車両1の前方の撮影が可能なモノクロあるいはカラー撮影が可能なカメラから成り、連続的に時々刻々と撮影した撮影画像Fの信号を出力する(図2参照)。また、自車両1の前方の路面撮影を行なうため、車載カメラ3は、自車両1の車内の前方の上部位置に、上方から適当な角度で斜め下の路面をねらうように設けられている。
【0023】
記憶手段4は、各種メモリやハードディスクドライブなどを備え、車載カメラ3から時々刻々と出力される撮影画像Fに対してECU6により種々の処理を施す際に使用される各種データ、撮影画像Fに対してECU6により種々の処理が施されることにより得られた各種データなどを格納する。
【0024】
ECU6は、例えば、駐車支援を実行するための操作スイッチ(図示省略)がドライバにより操作されたり、ナビゲーション装置において自車両1が設定された駐車場PAに到着し、自車両1の速度が所定速度以下になったときなどに、予め設定された駐車支援のプログラムを実行することにより以下の各手段を備えている。
【0025】
(1)取得手段6a
取得手段6aは、車載カメラ3により時々刻々と撮影された撮影画像Fを取得する。例えば、図2に示すように、車載カメラ3により撮影された撮影画像Fには、路面Rに描かれた直線Lおよび仕切線SLにより駐車枠Pが形成された駐車場PAが撮影されており、取得手段6aはこの撮影画像Fを取得する。なお、この実施形態の撮影画像Fは、例えば480本のライン画像により形成されており、各ライン画像は例えば640画素により形成されている。
【0026】
(2)エッジ抽出手段6b
エッジ抽出手段6bは、微分フィルタおよびエッジヒストグラムなどを利用した周知のエッジ検出処理により撮影画像Fに含まれる各被撮影物のエッジを抽出する。すなわち、撮影画像Fには、路面Rに描かれた直線Lおよび仕切線SL、駐車枠Pに駐車された車両C、駐車場PAの路面Rに描かれた駐車枠P以外の路面標示(図示省略)、駐車場PAに設けられたポール(図示省略)等の固定物などが被撮影物として含まれており、これらの被撮影物の輪郭を示すエッジや、車両Cに設けられた窓枠およびバンパの輪郭を示すエッジなどが抽出される。
【0027】
(3)射影変換手段6c
射影変換手段6cは、車載カメラ3により時々刻々と撮影された各時刻における撮影画像Fを、路面に仮想面を設定し、図3に示す上方視画像tFに射影変換する。そして、車載カメラ3により時系列に撮影されて射影変換手段6cにより射影変換される各フレームの撮影画像Fに関する種々のデータは記憶手段4に記憶される。なお、この実施形態では、撮影画像Fに含まれるエッジがエッジ抽出手段6bにより抽出された撮影画像Fが射影変換手段6cにより射影変換される。また、車載カメラ3の撮影画像Fが路面に設定された仮想面に射影変換された上方視画像tFでは、立体物の上端側が歪んだ画像となる。
【0028】
また、駐車場PAの路面Rには、直線Lと仕切線SLとがほぼ直交して描かれて駐車枠Pが形成されているが、カメラ視点の撮影画像Fが射影変換手段6cにより上方視画像tFに射影変換されることにより、駐車枠Pを形成する直線Lおよび仕切線SLは、実際に路面Rに描かれた状態と同じように上方視画像tF中で直交した状態となる。したがって、上方視画像tFに含まれる直線Lおよび仕切線SLの輪郭を示すエッジが成す角度は、直線Lおよび仕切線SLが成す角度とほぼ同じ角度(約90°)となる。
【0029】
(4)ハフ変換手段6d
ハフ変換手段6dは、図4に示すように、エッジ抽出手段6bにより抽出されて上方視画像tFに含まれるエッジを形成する各画素について、ハフ変換によるρθ空間への投票を行う。また、上方視画像tF(撮影画像F)には駐車枠Pを形成する直線Lおよび仕切線SLが最も多く含まれており、各直線Lおよび各仕切線SLはそれぞれ平行に路面Rに描かれている。したがって、上方視画像tFに含まれるエッジを形成する各画素についてハフ変換によるρθ空間への投票がハフ変換手段6dにより行われると、各直線Lを示すエッジを表すρθ空間における各点のθの値は同じ値となり、各仕切線SLを示すエッジを表すρθ空間における各点のθの値は同じ値となるため、直線Lおよび仕切線SLを示す各エッジについての投票が行われるρθ空間の両θ座標上に最も多くの投票が行われる。また、ρθ空間において直線Lおよび仕切線SLを表す点の両θの値は、上方視画像tF中で直線Lおよび仕切線SLが成す角に依存するものであり、上方視画像tF中で直線Lおよび仕切線SLが成す角度と同じ角度(約90°)だけずれたものとなる。
【0030】
なお、図4では、ハフ変換手段6dにより所定数以上の投票が行われたρθ空間における複数の点、すなわち、上方視画像tFに含まれる所定以上の長さを有する直線を示すエッジを形成する各画素についての投票が行われることによるρθ空間における複数の点が抽出されて示されており、△は各直線Lを示すエッジによる投票結果を表し、○は各仕切線SLを示すエッジによる投票結果を表し、×はその他の直線を示すエッジによる投票結果を表す。また、仕切線SLは、駐車場PAの路面Rにほぼ一定の間隔(約2.5m)で描かれているため、ρθ空間において各仕切線SLを表す点(同図中の○で示される点)は、ρにより表される距離lがほぼ一定となる。
【0031】
また、ハフ変換手段6dによりρθ空間への投票が行われた後、ρθ空間の各点への投票数に閾値を設定し、投票数が設定された閾値以上であるρθ空間における点を抽出することで、上方視画像tFに含まれる所定以上の長さを有する直線(エッジ)を抽出することができる。すなわち、閾値を大きくすれば(投票数大)、上方視画像tFに含まれる比較的長い直線を抽出することができ、閾値を小さくすれば(投票数小)、上方視画像tFに含まれる比較的短い直線を抽出することができる。この実施形態では、例えば、図2および図3中の点線で囲まれた部分に示すように、駐車車両Cの一部に隠れることで短くなった仕切線SLを表すρθ空間の点を抽出するために、実際の仕切線SLの長さよりも短い直線が抽出されるようにρθ空間への投票数の閾値が設定されている。
【0032】
(5)算出手段6e
算出手段6eは、ハフ変換手段6dにより所定数以上の投票が行われたρθ空間における複数の点(図4中の△、○、×で示される点)を抽出し、抽出した複数の点それぞれへの投票数について、θについての投票数のヒストグラムを算出するとともに、駐車枠Pを形成する直線Lおよび仕切線SLが成す角度(約90°)と同じ角度だけずれているθの組ごとに投票数の和を算出する。
【0033】
このようにすると、上記したように、各直線Lを示すエッジおよび各仕切線SLを示すエッジについての投票が行われるρθ空間の両θ座標上に最も多くの投票が行われると共に、両θは、直線Lおよび仕切線SLが成す角度と同じ角度(約90°)だけずれていることから、算出手段6eによる投票数の和が最も大きなθの組における複数の点それぞれが、駐車枠Pを形成する各直線Lおよび各仕切線SLを示すエッジを表すものであると推定することができる。
【0034】
(6)検出手段6f
検出手段6fは、ハフ変換手段6dにより所定数以上の投票が行われることにより抽出されたρθ空間における複数の点のうち、算出手段6eによる投票数の和が最も大きなθの組における複数の点について(図4中の△、○で示される点)、ρθ空間のρにより表される距離lが各仕切線SL間の距離(約2.5m)と同一を示す図4中の○で示される点の組を、駐車枠Pを形成する仕切線SLとして検出する。そして、検出された駐車枠Pの撮影画像F内における撮影位置や、車載カメラ3の自車両1への取付状態などに基づいて、検出された駐車枠Pの自車両1に対する方向および自車両1からの距離などが検出される。
【0035】
この実施形態では、上方視画像tFに含まれる仕切線SLよりも短い直線もρθ空間において抽出されるように投票数の閾値が設定されているため、ハフ変換手段6dにより所定数以上の投票が行われることにより抽出されたρθ空間における複数の点には、上方視画像tFに含まれる所定以上の長さを有する直線を示すエッジであって、駐車枠Pを形成する直線Lおよび仕切線SLとは異なる直線を示すエッジを表すものも多数含まれている。
【0036】
しかしながら、算出手段6eによる投票数の和が最も大きなθの組における複数の点であって、駐車枠Pを形成する各直線Lおよび各仕切線SLを示すエッジを表すものであると推定することができる複数の点についてのみから検出手段6fによる駐車枠Pの検出が行われることで、上方視画像tFに含まれる所定以上の長さを有する直線を示すエッジのうち、駐車枠Pを形成する直線Lおよび仕切線SLとは異なる直線を示すエッジが、駐車枠Pを形成する直線であると誤って検出されることが防止される。なお、上方視画像tF中で所定以上の長さを有する直線であって、駐車枠Pを形成する直線Lおよび仕切線SLとは異なる直線を示すエッジを形成する各画素についてハフ変換によるρθ空間への投票が行われると、図4中に×で示すように、上記θの組と異なるθ座標上の各点に所定数以上の投票が行われる。
【0037】
なお、この実施形態では、算出手段6eによる投票数の算出が行われる際に、所定数以上の投票が行われたρθ空間における複数の点を抽出するときの投票数の閾値と、検出手段6fによる駐車枠Pの検出が行われる際に、所定数以上の投票が行われたρθ空間における複数の点を抽出するときの投票数の閾値とが同じに設定されているが、例えば、検出手段6fによる駐車枠Pの検出が行われる際の投票数の閾値を大きくすることにより、上方視画像tFに含まれる直線のうち、より長い直線を抽出して駐車枠Pの検出が行われるようにしてもよい。すなわち、算出手段6eによる投票数の算出および検出手段6fによる駐車枠Pの検出が行われる際の、所定数以上の投票が行われたρθ空間における複数の点を抽出するときの投票数の閾値は、実験を繰り返すことにより得られた最適な値にそれぞれ適宜設定することができる。
【0038】
(7)報知手段6g
報知手段6gは、検出手段6fにより検出された駐車枠Pを形成する仕切線SLを走行モニタ7に表示したり、スピーカ8から、検出手段6fにより検出された駐車枠Pの位置を示す音声メッセージを発生したり、自車両1の駐車枠Pに対する方向を示す音声メッセージを発生したりして、駐車枠Pの存在をドライバに報知する。これらの視覚的または聴覚的なドライバに対する報知により、ドライバの駐車支援を行う。
【0039】
(8)駐車手段6h
駐車手段6hは、例えば、自車両1を駐車枠P内に自動駐車するための操作スイッチ(図示省略)がドライバにより操作されると、検出手段6fにより検出された駐車枠Pの自車両1に対する方向および自車両1からの距離などに基づいて、自車両1のハンドルおよびアクセルを自動操縦することにより、自車両1を検出された駐車枠P内に自動駐車する。
【0040】
2.動作
次に、上記したように構成された駐車支援装置2の動作について図5を参照して説明する。図5に示す処理は、駐車支援を実行するための操作スイッチ(図示省略)がドライバにより操作されたり、自車両1が登録された駐車場に到着したときなどに実行される処理であって、まず、路面Rに直線Lおよび仕切線SLにより駐車枠Pが形成された駐車場PAが撮影された撮影画像Fが取得手段6aにより取得され(ステップS1)、撮影画像Fに含まれる各被撮影物のエッジがエッジ抽出手段6bにより抽出されて(ステップS2)、エッジが抽出された撮影画像Fが上方視画像tFに射影変換手段6cにより射影変換される(ステップS3)。
【0041】
そして、上方視画像tFに含まれるエッジを形成する各画素についてハフ変換によるρθ空間への投票がハフ変換手段6dにより行われ(ステップS4)、算出手段6eにより、ハフ変換手段6dにより所定数以上の投票が行われたρθ空間における複数の点(図4中の△、○、×で示される点)が抽出されて、抽出された複数の点それぞれへの投票数について、θについての投票数のヒストグラムが算出されると共に(ステップ5)、駐車枠Pを形成する直線Lおよび仕切線SLが成す角度(約90°)と同じ角度だけずれているθの組ごとに投票数の和が算出される(ステップS6)。
【0042】
続いて、検出手段6fにより、算出手段6eによる投票数の和が最も大きなθの組における複数の点(図4中の△、○で示される点)から駐車枠Pを形成する仕切線SLの候補となる一の点が選択され(ステップS7)、選択された点との距離lが各仕切線SL間の距離と同一を示す点が存在しなければ、再度、算出手段6eによる投票数の和が最も大きなθの組におけるρθ空間の複数の点のうち、未選択の一の点が選択される(ステップS8でNO)。
【0043】
一方、検出手段6fにより選択された点との距離lが各仕切線SL間の距離と同一を示す点が存在すれば(ステップS8でYES)、これらの点の組により示される直線が駐車枠Pを形成する仕切線SLとして検出手段6fにより検出され(ステップS9)、検出された駐車枠Pが報知手段6gにより走行モニタ7に表示される(ステップS10)。次に、検出手段6fにより未選択のρθ空間における点が存在すれば(ステップS11でYES)、ステップS7〜ステップS11の処理が、検出手段6fにより選択可能なρθ空間における点が存在しなくなるまで繰り返し実行される(ステップS11でNO)。
【0044】
以上のように、この実施形態によれば、算出手段6eによる投票数の和が最も大きなθの組における複数の点(図4中の△、○で示される点)について、ρθ空間のρにより表される距離lが各仕切線SL間の距離と同一を示す点の組が駐車枠Pとして検出手段6fにより検出されることで、上方視画像tFに含まれる所定以上の長さを有する直線を示すエッジのうち、駐車枠Pを形成する直線Lおよび仕切線SLとは異なる直線を示すエッジを形成する各画素について、前記θの組と異なるθ座標上の点(図4中の×で示される点)に投票が行われることにより検出される直線が、駐車枠Pであると誤って検出されることが防止されるので、撮影画像Fに含まれる駐車枠Pを高精度に検出することができる。
【0045】
また、ハフ変換手段6dにより投票が行われたρθ空間における複数の点のうち、駐車枠Pを形成する直線Lおよび仕切線SLの長さよりも短い直線を示すエッジを表す点を抽出して駐車枠Pの検出を行っても、算出手段6eによる投票数の和が最も大きなθの組における複数の点は駐車枠Pを形成する直線Lおよび仕切線SLを示すエッジを表すものである蓋然性が非常に高く、これらの複数の点についてのみ駐車枠Pの検出が行われるため、例えば撮影画像Fに含まれる仕切線SLが部分的に駐車車両によって隠れて短くなっている場合であっても、当該仕切線SLを高精度に検出することができると共に、路面Rに描かれた駐車枠P以外の路面標示や、ポールなどの固定物による短い直線を示すエッジを誤って駐車枠Pとして検出するおそれが無い。
【0046】
また、所定数以上の投票が行われたρθ空間における複数の点のうち、算出手段6eによる投票数の和が最も大きなθの組における複数の点についてのみ駐車枠Pの検出が行われて、投票数の和が最も大きなθの組と異なるθ座標上の点については駐車枠Pの検出が行われないため、撮影画像Fに含まれる駐車枠Pを検出する処理時間の短縮を図ることができる。
【0047】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能であり、例えば、車載カメラ3を、後方を撮影可能に自車両1の後部に取付けてもよい。このように構成したときには、ドライバによりバックギアにシフトチェンジされたときに上記した駐車支援を実行するようにするとよい。
【0048】
また、駐車枠Pを形成する直線Lおよび仕切線SLが成す角度は約90°に限られるものではなく、当該角度が約90°でない場合には、算出手段6eは、投票数の和を算出するθの組を、直線Lおよび仕切線SLが成す角度に基づいて上記した実施形態によるθの組とは異なるθの組を選択すればよい。
【0049】
また、駐車枠Pを形成する仕切線SLの間隔は約2.5mに限られるものではなく、当該間隔が2.5mでない場合には、検出手段6fは、仕切線SLを検出するときのρθ空間のρにより表される距離lを各仕切線SL間の距離に応じて設定すればよい。
【0050】
また、検出手段6fは、ρθ空間のρにより表される距離lが各仕切線SL間の距離と同一を示す点の組を駐車枠Pとして検出する際に、投票数の和が最も大きなθの組それぞれのθを中心とする所定の角度幅△θで表される角度((θ−△θ)〜(θ+△θ)内に存在する複数の点について、駐車枠Pの検出を行うようにしてもよい。
【0051】
また、本発明は種々の車両の駐車支援に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 自車両
2 駐車支援装置
3 車載カメラ(撮影手段)
6c 射影変換手段
6d ハフ変換手段
6e 算出手段
6f 検出手段
F 撮影画像
L 直線
P 駐車枠
R 路面
SL 仕切線
tF 上方視画像
l ρにより表される距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に描かれた少なくとも1本の直線と、該直線に交差して路面に描かれた複数の仕切線とにより形成される駐車枠への自車両の駐車を支援する駐車支援装置において、
前記自車両に搭載されて自車両周辺を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段による撮影画像を上方視画像に射影変換する射影変換手段と、
前記上方視画像に含まれるエッジを形成する各画素についてハフ変換によるρθ空間への投票を行うハフ変換手段と、
前記ハフ変換手段により所定数以上の投票が行われたρθ空間における複数の点を抽出し、抽出した前記複数の点それぞれへの投票数について、前記直線および前記仕切線が成す角度と同じ角度だけずれているθの組ごとに投票数の和を算出する算出手段と、
前記算出手段による前記投票数の和が最も大きな前記θの組における前記複数の点について、ρθ空間のρにより表される距離が前記各仕切線間の距離と同一を示す点の組を前記駐車枠として検出する検出手段と
を備えることを特徴とする駐車支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−6554(P2012−6554A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146386(P2010−146386)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】