説明

骨ホメオスタシスを促進させる方法及び組成物

本発明は、骨芽細胞前駆細胞をLXRアゴニストと接触させることによって、骨形成を促進させる方法に関するものである。前記方法は、医薬として許容し得るキャリアーとの混合物中に効果的な骨形成刺激量のLXRアゴニストを含む、骨ホメオスタシス促進組成物を使用することで、対象の骨ホメオスタシスのアンバランスの治療又は予防に有用である。さらなる態様は、骨組織のマトリクス産生を刺激するのに十分な時間、インビトロで、LXRアゴニストを、基質上の骨芽細胞前駆細胞集団と接触させることによって骨組織を産生する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は骨代謝の分野、特に、ヒト及び他の動物における骨ホメオスタシスのアンバランス又は障害を伴う疾患の予防並びに治療の方法、治療法、及び組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨は、2つの異なる細胞系統:骨芽細胞として知られる骨形成細胞、及び破骨細胞として知られる骨再吸収細胞の間における複雑な相互作用によって、継続的に破壊(再吸収)され、かつ再生される動的組織である。前駆細胞から機能的破骨細胞への分化又は発達に関与する転写因子及び成長因子のカスケードは、かなり確立されている。対照的に、前駆細胞から骨芽細胞の発達に関与する因子については、ほとんど知られていない。間葉前駆体又は間葉幹細胞(MPC)は、破骨細胞及び骨芽細胞の両方の分化の開始点を意味する。インビボでの胚発生の間、骨形成は2つの異なる段階:膜内骨化、及び/又は軟骨内骨化(Nakashima及びde Crombruggheの文献,(2003)から抜粋した図1を参照されたい)を介して起こる。膜内骨化の間、頭蓋骨又は鎖骨などの扁平骨は、間葉細胞の凝集から直接的に形成される。軟骨内骨化の間、四肢骨などの長骨は、中間体が、さらに骨芽細胞及び骨細胞へと分化する内皮細胞、破骨細胞及び間葉細胞による、さらなる発達の間に浸潤される間充織凝集の間に形成される、軟骨中間体から形成される。この後者の骨芽細胞への分化の間、骨アルカリフォスファターゼ活性(BAP)は上方調節される。
【0003】
多くの疾患は、骨再吸収と骨形成との間の微調整されたバランスにおける障害の直接的な結果である。大部分のこれらの疾患は骨疾患であり、多くの患者を苦しめる。典型的な疾患は、悪性の低カルシウム血症、パジェット病、関節リウマチ及び歯周病などの炎症性骨疾患、骨格転移の間に起こる局所性骨形成、クロウゾン症候群、くる病、成熟遅延骨異形成症、濃化異骨症/トゥールーズ−ロートレック病、骨形成不全症、及び骨粗鬆症を含む。単独で最も一般的な骨疾患は、50歳以上の女性5人に1人、及び50歳以上の男性20人に1人を冒す、骨粗鬆症である。
【0004】
(報告された進展)
多くの治療法が開発され、骨粗鬆症、及び関連する骨疾患に苦しむ患者に提供されている。これらの治療的アプローチは正味の骨形成の増加を導き、かつ:ホルモン補充療法(HRT);選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM);ビスホスホネート;及びカルシトニンを含む。これらの治療は骨再吸収を減速させるが、失われた骨は十分には補充されないので、該治療は骨折を根絶しない。骨折は、骨形成が十分に増加した場合にのみ阻止される。それゆえ、治療的介入に関する基礎として、骨同化を強化する骨形成経路を同定することに、大きな利益がある。
【0005】
副甲状腺ホルモン(PTH)1-34は、骨粗鬆症治療市場の唯一の骨同化治療である。PTHは、断続的に投与された場合に骨同化作用を示すが、毎日注入する必要があり、また高用量のPTHを用いて治療した動物において腫瘍が形成されたという所見から、腫瘍原性の副作用があり得る。
骨形成タンパク質(BMP)は、骨同化治療学の別の分野であるが、ニッチ市場でのみ承認されてきた。骨形成タンパク質に対する受容体は、骨以外の多くの組織で同定されてきており、またBMP自身は、多種多様な組織において、特定の時間的かつ空間的パターンで発現する。これは、BMPが、全身的に投与された場合、治療的作用物質としてのそれらの有用性を潜在的に限定しながら、骨以外の多くの組織に効力を有し得ることを示唆する。
【0006】
骨形成を促進し、かつ新たな骨同化治療の開発に使用できるさらなる標的を同定することは、明らかに必要である。
本発明は、LXRタンパク質を含む、特定の既知のポリペプチドが、骨髄細胞における骨形成分化の上方調節及び/又は誘導因子であり、またこれらのポリペプチドに対する既知のアゴニストは、骨ホメオスタシスを促進するのに効果的であるという発見に基づいている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、骨ホメオスタシスを促進させる方法及び組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、骨芽細胞前駆細胞を含む細胞集団における骨形成を促進させる方法、すなわち、とりわけ特に、骨芽細胞を形成するための細胞分化の方法に関連し、骨芽細胞前駆細胞を、効果的な骨形成刺激量のLXRアゴニストと接触させることを含む。本方法を、前記アンバランスに苦しむ又は感受性である対象における骨ホメオスタシスのアンバランスの治療若しくは予防のために使用することが可能であり、効果的な骨形成刺激量のLXRアゴニストを、前記対象に投与することを含む。また、本発明は、骨ホメオスタシス促進組成物などの、前述の方法における使用用途組成物に関連し、医薬として許容し得るキャリアーとの混合物中の効果的な骨形成刺激量のLXRアゴニストを含む。さらなる態様は、インビトロで骨組織を産生する方法であり、効果的な骨形成刺激量のLXRアゴニストを、骨組織のマトリクス産生を刺激するのに十分な時間、基質上の骨芽細胞前駆細胞の集団と接触させることを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(詳細な説明)
下記の用語は、それをもって以下に示される意味を有することを意図し、かつ本発明の記載及び意図される範囲を理解することに有用である。
用語「アゴニスト」は、最も広い意味で、リガンドが結合する受容体を刺激するリガンドをさす。
【0010】
用語「有効量」は、医師、又は他の臨床医によって探求されている、対象の生物学的又は医学的反応を誘起させる、薬物若しくは医薬品の量を意味する。特に、骨ホメオスタシスのアンバランスの治療に関して、用語「効果的な骨形成刺激量」は、対象の骨組織において、破骨細胞に対する骨芽細胞の割合に、生物学的に重要な増加を引き起こす、有効量のLXRアゴニスト又はLXRアゴニストのプロドラッグを意味することを意図する。生物学的に重要な増加は、骨密度、骨強度、又は当業者に既知の診断的徴候を用いて、間接的に検出し得る増加である。
【0011】
用語「発現」は、内因性発現、及び、例えば形質移入又は安定的形質導入による過剰発現の両方に関するものである。
用語「LXR」は、先行技術で知られているようなこの受容体の全ての亜型、及びそのような亜型をコードする対応遺伝子を含む。具体的には、LXRは、LXR−アルファ及びLXR−ベータを含み、LXRのアゴニストは、LXR−アルファ又はLXR−ベータのアゴニストを含むことは理解されるべきである。LXR−アルファは、様々な名前に従属するものをさし、本出願の目的において、LXR−アルファは、LXR−アルファ、LXR、LXRα、RLD−1、NR1H3、又は登録番号U22662に相同性を有する遺伝子、若しくはそのようなポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質に相同性を有するタンパク質として言及される、任意の遺伝子を意味することは理解されるべきである。同様に、LXR−ベータは、LXR、LXR−ベータ、LXRベータ、NER、NER1、UR、OR−1、R1P15、NR1H2、又は登録番号U07132に相同性を有する遺伝子、若しくはそのようなポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質に相同性を有するタンパク質として言及される、任意の遺伝子を含むことは理解されるべきである。「相同性」は、ポリヌクレオチドの「相同」配列が、当業者に理解されるような、厳しいハイブリダイゼーション条件下で、LXR配列にハイブリダイズすることができる程度の配列類似性を意味する。
【0012】
用語「骨形成」は、いくつかの連続的事象からなる過程を意味し、細胞における骨アルカリフォスファターゼの初期の上方調節、及び過程の後期段階で起こるカルシウム沈着(石灰化)を含む。
用語「骨形成分化」は、骨関連細胞の系統における未分化細胞が、カルシウムの沈着、及び骨組織の形成をもたらす同化作用を示すことによってより特殊化されるようになる、任意の過程をさす。
【0013】
用語「医薬として許容し得るキャリアー」は、例えば、以下のような医薬として許容し得るキャリアー:ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、石膏、スクロース、滑石、ステアリン酸、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシアなどの固形キャリアー;及び、植物油、ラッカセイ油、及び滅菌水などの液体、を含む。しかしながら、医薬として許容し得るキャリアーのこのリスト化は、限定として解釈されるべきではない。
【0014】
本明細書で使用する用語「医薬として許容し得るプロドラッグ」は、信頼できる医学的判断の範囲内において、適切な損益割合に見合い、過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応がなく、患者の該組織との接触での使用に適し、かつ本発明の化合物の意図した使用に効果的な、本発明に有用な化合物のプロドラッグをさす。用語「プロドラッグ」は、インビボで変換され、本発明又はその医薬として許容し得る塩、水和物若しくは溶媒和物に有用な、有効化合物を生じる化合物を意味する。該変換は、血中での加水分解を介してなどの、様々な機構によって起こってもよい。代謝的に開裂可能な基を有する化合物は、代謝的に開裂可能な基の存在の効力によって親化合物に与えられた、強化された溶解度及び/又は吸収速度の結果として、改良された生体利用効率を示すことができる利点を有し、それゆえ、そのような化合物はプロドラッグとして機能する。徹底した議論が、『プロドラッグのデザイン』、H. Bundgaard, 編, Elsevier (1985);『酵素学における方法』;K. Widderら, 編, Academic Press, 42, 309-396 (1985);『ドラッグデザイン及び開発のテキスト』, Krogsgaard-Larsen and H. Bandaged, 編, 5章;『プロドラッグのデザイン及び応用』113-191 (1991);『上級薬物送達概論』, H. Bundgard, 8 , 1-38, (1992);J. Pharm. Sci., 77,285 (1988);Chem. Pharm. Bull., N. Nakeyaらの論文, 32, 692 (1984);『新規の送達システムとしてのプロドラッグ』, T. Higuchi及びV. Stella, 14 A.C.S. 『シンポジウムシリーズ』、及び『ドラッグデザインにおける生体可逆的キャリアー』, E.B. Roche, 編, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987の中に提供されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。プロドラッグの例は、エステルプロドラッグである。「エステルプロドラッグ」は、インビボにおける代謝的手段(例えば、加水分解によって)によって、LXRアゴニストへと変換可能である化合物を意味する。例えば、カルボキシ基を含む化合物のエステルプロドラッグは、インビボにおける加水分解によって、対応するカルボキシ基へと変換可能であり得る。
【0015】
用語「医薬として許容し得る塩」は、本発明の化合物の、非毒性の無機酸付加塩及び塩基付加塩、並びに非毒性の有機酸付加塩及び塩基付加塩をさす。これらの塩は、本発明に有用な化合物の最終的な単離及び精製の間に、インサイチュウで調製し得る。
用語「ポリヌクレオチド」は、二本鎖DNA、又は一本鎖DNA及び(メッセンジャー)RNA、並びに全ての型のオリゴヌクレオチドをさす。ポリヌクレオチドはまた、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、及び2'−O−(2−メトキシ)エチルホスホロチオエートなどの、修飾骨格を有する核酸を含む。「ポリヌクレオチドの誘導体」は、DNA分子、RNA分子、及びオリゴヌクレオチドを意味し、ポリヌクレオチドのストレッチ又は核酸残基、例えば、ポリヌクレオチドの天然存在型形態の核酸配列に比較して、核酸変異を有し得るポリヌクレオチドを含む。誘導体はさらに、PNA、ポリシロキサン、及び2'−O−(2−メトキシ)エチル−ホスホロチオエートなどの修飾骨格を有する核酸、非天然存在型核酸残基、又はメチル−、チオ−、硫酸、ベンゾイル−、フェニル−、アミノ−、プロピル−、クロロ−、及びメタノカルバヌクレオシドなどの1以上の核酸置換基、又はその検出を促進するためのレポーター分子を含む。「ポリヌクレオチドのフラグメント」は、完全な配列の活性に実質的に類似しているが、必ずしも同一ではないことを示す、連続した核酸残基のストレッチを含むオリゴヌクレオチドを意味する。
【0016】
用語「ポリペプチド」は、タンパク質、 タンパク質性分子、タンパク質の画分、ペプチド、オリゴペプチド、及び酵素(キナーゼ、プロテアーゼ、GCPRなど)をさす。「ポリペプチドの誘導体」は、ポリペプチドの連続的なアミノ酸残基のストレッチを含み、かつタンパク質の生物活性、例えば、ポリペプチドの天然存在型形態のアミノ酸配列に比較してアミノ酸変異を有するポリペプチドを保持する、それらのペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素をさす。誘導体はさらに、ポリペプチドの天然存在型のアミノ酸配列に比較して、付加的な天然存在型アミノ酸残基、変性アミノ酸残基、グリコシル化アミノ酸残基、アシル化アミノ酸残基、又は非天然存在型アミノ酸残基を含んでよい。誘導体はまた、天然存在型のポリペプチドのアミノ酸配列に比較して1以上の非アミノ酸置換基、例えば、アミノ酸配列に共有的に、又は非共有的に結合したレポーター分子、若しくは他のリガンドを含んでよい。「ポリペプチドのフラグメント」は、連続的なアミノ酸残基のストレッチを含み、必ずしも同一ではないが、完全な配列の機能的活性に実質的に類似する、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質及び酵素をさす。
【0017】
用語「溶媒和物」は、1以上の溶媒分子と、本発明に有用な化合物の、物理的な関連性を意味する。この物理的な関連性は、水素結合を含む。場合によっては、溶媒和物は、例えば、1以上の溶媒分子が、結晶性固体の結晶格子中に組み込まれる場合に単離することができる。「溶媒和物」は、液相溶媒和物、及び単離可能な溶媒和物の両方を含む。代表的な溶媒和物は、水和物、エタノラート、及びメタノラートを含む。
【0018】
用語「対象」は、ヒト、及び他の哺乳動物を含む。
用語「治療(treating)」は、用語「治療」を適用する障害又は病状を緩和させることをさし、そのような障害又は病状の1以上の症状を含む。本明細書で使用するように、関連する用語「治療(treatment)」は、用語「治療(treating)」が先に定義されたように、障害、症状又は病状を治療する行為をさす。
【0019】
(本発明の方法)
本発明は、骨形成分化を増加させる及び/又は誘導する方法に関するものであり、前記方法は、(1)NR1H3、又はその機能的フラグメント若しくは誘導体として下記の表1に特定されるLXR標的遺伝子によってコードされるポリペプチドを発現する細胞集団を;(2)LXRアゴニストと接触させることを含み;かつ、(3)それによって前記細胞集団における骨形成分化のレベルを増加させることを含む。本発明者は、さらに以下に記載した選別研究から得られた結果から、下記の表1を作成した。
【0020】
【表1】

【0021】
(LXRと骨形成分化との間の関連性を同定するために使用される方法)
先に特定した骨形成分化関連標的遺伝子は、下記の様式で、いわゆる「ノックイン」ライブラリーを使用して同定した。組換えアデノウイルスを使用することによって、本発明者は、細胞内に、特定の天然遺伝子及び遺伝子産物をコードするcDNA分子を導入した。細胞の各分離亜集団に導入した各cDNAは、細胞内で、対応遺伝子及び遺伝子産物の発現並びに活性を誘導した。骨形成分化を誘導又は増加させるcDNAを同定することによって、対応する標的遺伝子に直接的な関連ができる。次に、化合物を使用して、最大限で10マイクロモラーの結合親和性で、骨形成分化を活性化又は刺激させることができる化合物を同定する方法に、この標的遺伝子を使用する。実際に、この選別で使用する標的遺伝子に結合することが知られる化合物は、細胞の骨形成分化を増加させることが見出され、このことは、この過程におけるこれらの標的遺伝子の役割を示すものである。この方法を使用して、骨芽細胞分化の過程に関与するような、LXR受容体を含むポリペプチド、及び骨芽細胞分化を促進又は誘導するための、そのアゴニストの用途を特定する。
【0022】
骨芽細胞分化が促進されている細胞の集団は、好ましくは、任意の未分化細胞型である。未分化細胞とは、特殊化の初期段階、すなわち、それらの最終的な機能を未だ有していない多能性細胞であり、また誘導することで、ほぼ全ての与えられた細胞型を形成することができる。特にそのような細胞は、脂肪組織由来の細胞と同様に、血液細胞及び骨髄に存在する細胞である。加えて、さらに間葉前駆細胞へと分化し得る細胞、例えば、胚性幹細胞のような全能性細胞などを、本発明において検討する。
【0023】
ノックインライブラリーで使用するポリペプチド、及び(LXRアゴニストを使用する)本発明の基盤を提供するポリペプチドは、核ホルモン受容体(NHR)のクラスにある。背景として、ステロイド、レチノイド、チロイド及びビタミンDなどの脂溶性ホルモンは、細胞内での遺伝子転写を調節する。例えば、ステロイドホルモンは、細胞内に入り、その相補的受容体に結合し、諸現象の複雑なカスケードを開始させる。ホルモン−受容体複合体は、ホルモン応答配列(HRE)と呼ばれるDNA配列に結合する二量体を形成する。この結合は、適切な遺伝子の転写を活性化させ、又はいくつかの場合においては阻害する。そのようなものとして、NHRの活性もまた、適切なホルモン受容体配列(HRE)を含むプロモーターの制御下で、レポーター遺伝子を用いて測定することができる。
【0024】
ノックインライブラリーで使用するポリペプチドの別のクラスは、G−タンパク質共役受容体(GPCR)であり、ここで前記GPCRの発現及び/又は活性を、二次メッセンジャーである、サイクリックAMP、Ca2+、又はその両方の、任意の1つのレベルを定量することによって測定してよい。好ましくは、二次メッセンジャーに応答性のプロモーターの制御下で、レポーター遺伝子を用いて、二次メッセンジャーのレベルを測定する。より好ましくは、プロモーターは、サイクリックAMP応答性プロモーター、NF−ΚB応答性プロモーター、又はNF−AT応答性プロモーターである。別の好ましい実施態様において、レポーター遺伝子は:アルカリフォスファターゼ、GFP、eGFP、dGFP、ルシフェラーゼ、及びb−ガラクトシダーゼからなる群から選択される。
【0025】
骨形成分化を測定する方法、及び選別における有用性が見出された方法は、骨形態形成に関与し、かつアルカリフォスファターゼ、タイプ−1コラーゲン、オステオカルシン及びオステオポンチンなどの、分化過程の間に誘導される特定のタンパク質の発現レベルを決定する。これらのマーカータンパク質の活性レベルは、特異的基質を用いたアッセイを介して測定することができる。例えば、骨アルカリフォスファターゼ(BAP、又は骨AP)活性は、メチルウンベリフェリル7リン酸(MUP)溶液を細胞に添加することによって測定できる。AP活性によるMUP基質の切断によって生じる蛍光を、以下の実施例で概説するような、蛍光プレートリーダーで測定する。標的遺伝子の発現はまた、標的遺伝子に対して指示された特異抗体を用いるウエスタンブロッティング、又は標的遺伝子に対して指示された特異抗体を用いるELISAなどの、当業者に知られている方法によって測定することが可能である。あるいは、ノーザンブロッティング及び定量的リアルタイムPCRのような、当業者に知られている方法を用いて、細胞内におけるmRNA発現レベルを解析することができる。
【0026】
アゴニスト化合物とのインキュベーションと同時に、マーカータンパク質の発現又は活性のアゴニストの誘導による、骨形成の分化促進をモニターしてよい。タンパク質発現レベルの誘導は、数パーセントの増加から、2、3、又は4桁より高い振幅で変化し得るが、患者(インビボ)においては、少なくとも2倍(又はそれ以上)のタンパク質発現の誘導が、好ましいレベルである。それゆえ、前記発現及び/又は活性の好ましい誘導は、インビボでの100%(又はそれ以上)の誘導に匹敵する。しかしながら、アゴニスト化合物を治療的設定に適用した場合、インビトロでのわずかな減少レベルが、インビボにおいて、さらにより高い誘導をもたらし得るので、インビトロで見出されたレベルは、インビボで見出されたレベルに完全には相関しないことは排除できない。それゆえ、少なくとも20%、より好ましくは50%以上、さらにより好ましくは、骨形成マーカータンパク質の発現又は活性の2倍の誘導を意味する、100%以上のインビトロレベルを誘導することが好ましい。
【0027】
表1にリスト化した任意の標的ポリペプチド、又はその誘導体若しくはフラグメントに結合することによって、細胞の骨形成分化に影響を与える化合物の選別のために、ペプチドライブラリー(LOPAP(商標)、Sigma Aldrich社)、脂質ライブラリー(BioMol社)、合成化合物ライブラリー(LOPAC(商標)、Sigma Aldrich社)、又は天然化合物ライブラリー(Specs、TimTec社)などの化合物ライブラリーを使用することができる。
【0028】
テスト化合物と、ポリペプチド又はポリヌクレオチドとの結合親和性は、表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore)の使用などの当業者に知られた方法、標識化合物を用いた飽和結合解析(スキャッチャード及びリンドモ解析)、微分紫外分光光度計、蛍光偏光アッセイ、蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPRR)システム、蛍光共鳴エネルギー転移、及び生物発光共鳴エネルギー転移によって測定可能である。
【0029】
化合物の結合親和性はまた、解離定数(Kd)で、又はIC50若しくはEC50として表現することができる。IC50は、ポリペプチドに対する、別のリガンドの結合の50%阻害に必要とされる化合物の濃度を表す。EC50は、受容体機能を測定する任意のアッセイにおいて、最大効率の50%を得るために必要とされる濃度を表す。解離定数Kdは、ポリペプチドに対して、リガンドがどの程度結合するかの尺度であり、該ポリペプチド上の結合部位の正確に半分を飽和させるために必要とされるリガンド濃度に等しい。高い結合親和性を有する化合物は、低いKd、低いIC50値、及び低いEC50を有する、すなわち100nM〜1pMの範囲内であり;中程度から低親和性結合は、高いKd、高いIC50値、及び高いEC50値、すなわちマイクロモラーの範囲内に合致する。結合親和性は、インビトロでの設定と同様に、インビボでの設定でも測定してよい。
【0030】
細胞の骨形成分化の誘導は、様々な方法で達成されてよい。本発明において有用な化合物は、ポリペプチドを直接的に標的としてもよく、かつそれらの活性を誘導又は促進してもよい。これらの化合物はまた、ポリペプチドをコードする核酸からの該ポリペプチドの転写及び/又は翻訳に関与する、転写/翻訳機構を標的としてもよい。さらに、化合物は、その各DNA及び各mRNAを標的としてもよく、それによってポリペプチドの産生を誘導し、その結果それらの活性を誘導してもよい。それゆえ、本発明の方法を使用することによって同定する化合物が、異なるレベルでポリペプチドの発現及び/又は活性を標的とし、最終的に細胞の骨形成分化の変化を導き得ることが理解される。本発明のアゴニスト化合物は、これらの機構の任意の1つに従って機能してよい。
【0031】
本発明の好ましい態様は、前記細胞集団を、LXRアゴニスト又はその混合物と接触させることを含む。用語「LXRアゴニスト」は、細胞のLXR受容体活性及び/又はその濃度を上方調節(すなわち、活性化させる又は刺激する)する化合物を意味し、LXRのアゴニスト、又はLXRの部分アゴニストを含むことは理解されるべきである。アゴニストは、LXR−アルファ又はLXR−ベータに選択的であってよく、若しくは、アゴニストは、LXR−アルファ及びLXR−ベータの両方に対する混合結合親和性を有してもよい。特に、本発明の範囲内の化合物は、PPAR−アルファ受容体、PPAR−ガンマ受容体及びPPAR−デルタ受容体のそれぞれに対してよりも、LXR−アルファ受容体及び/又はLXR−ベータ受容体に対する結合親和性によって決定される、より大きな選択性を有するものを含む。より詳細には、本発明の範囲内に含まれる化合物は、LXR−アルファ受容体又はLXR−ベータ受容体の少なくともどちらか一方に対して、100nM未満又は100nMに等しいIC50を有し、PPAR−アルファ受容体、PPAR−ガンマ受容体、及びPPAR−デルタ受容体のそれぞれに対して1マイクロモラーに等しい、又はそれより大きなIC50を有し、また、さらにより詳細には、該化合物は、PPAR−アルファ受容体、PPAR−ガンマ受容体及びPPAR−デルタ受容体のそれぞれに対して10マイクロモラーに等しい、又はそれより大きなIC50を有する。例えば、適切なLXR受容体アゴニストの選択性は、公開された米国特許第20030086923号に記載される、LXR放射性標識アゴニスト競合シンチレーション近接アッセイを使用して得られたIC50の結果から、及び、引用によって本明細書にその全体が組み込まれる、Berger Jらの論文, 『新規ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR−ガンマ)アゴニスト及びPPAR−デルタアゴニストは、明らかな生物学的効果をもたらす』, J Biol Chem 274: 6718-6725 (1999)の中に記載される、PPAR競合結合アッセイから決定することができる。
【0032】
典型的なLXRアゴニストは、ジアリールアルキルアミノアルコキシ2−フェニル酢酸の誘導体、より具体的には、2−(3−(3−(N−(2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジル)−N−(2,2−ジフェニルエチル)アミノ)プロポキシ)フェニル)酢酸の誘導体を記載するPCT出版物WO224632及びWO03082198;PCT出版物WO0182917、及び、ベンゼンスルホンアミド、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−N−[4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]−ベンゼンスルホンアミド、並びにN−(メチル)−N−[4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]−ベンゼンスルホンアミドを開示するUA 20040018560;例えば、3−ベータ−ヒドロキシ−5−コレステン−25(R)−26−カルボン酸を含むステロイジルLXRアゴニストを開示する米国特許第6,645,955号;例えば、(4,5−ジヒドロ−1−(3−(3−トリフルオロメチル−7−プロピル−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ)プロピル)−2,6−ピリミジンジオン)を含むLXRアゴニストを開示するUA 20030086923;10β−ポドカルパンの誘導体、より具体的には、(4β,5α)−12−ヒドロキシ−N−[(1−フェニルシクロブチル)メチル]ポドカルパ−8,11,13−トリエン−16−アミドの誘導体を開示するUA 20030125357;置換アミノプロポキシアリ−ル誘導体、より具体的には、2−(3−{3−[[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジル](2,2−ジフェニルエチル)アミノ]プロポキシ}フェニル)アセトアミドを開示するUA 20040072868;置換アミノプロポキシアリ−ル誘導体、より具体的には2−(3−{3−[[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジル](2,2−ジフェニルエチル)アミノ]プロポキシ}フェニル)アセトアミドを開示するUA 20040072868;UA 20030073614、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−N−[4(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロ−キシ−1−トリフルオロメチルエチル)−フェニル]−ベンゼンスルホンアミド;PCT出版物WO2004001002、[6a−ヒドロキシ胆汁酸、又はオキシコレストロール化合物];モルフォリン−4−カルボチオ酸(4−シアノ−ブチル)−[4−(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−エチル)−フェニル]−アミド、及び、5−{(モルフォリン−4−カルボチオイル)−[4−(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−エチル)−フェニル]−アミノ}−ペンタン酸メチルエステルを含む化合物の属を開示するPCT出版物WO03090732;3−チアゾ−ル、より具体的には、N−(2−メルカプト−1,3−ベンゾチアゾ−ル−6−イル)−N−(2−メチルプロピル)−N'−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]尿素を開示するPCT出版物WO03090746;3−{[5−2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−エチル)−4,5−ジヒドロ−イソオキサゾ−ル−3−カルボニル]−アミノ} プロピオン酸 ter−ブチルエステル、3−メチル−2−{[5−2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−エチル)−4,5−ジヒドロ−イソオキサゾ−ル−3−カルボニル]−アミノ}−酪酸 tert−ブチルエステル、及び、N−ピリジン−4−イルメチル−N−[5−(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−エチル)−チアゾ−ル−2−イル]イソニコチンアミドを含む化合物のクラスを開示するPCT出版物WO03090869;三環系化合物、より具体的には、trans−8−ヒドロキシ−9−ヒドロ−1,2−[a,b][ (l−カルボキシエチル−2−N−ピロリジニル)ベンゾ−4,5−イル]−cis−10−メチルデカリン、また、5− ヒドロキシ−8a−メチル−2−ピロリジン−1−イル−4b, 5,6, 7,8, 8a, 9,10−オクタヒドロ−フェナントレン−3−カルボン酸エチルエステルと名づけられたもの;8−ケト−1,2−[a,b] [(1−カルボキシエチル−1−N−ピロリジニルベンゾ−4,5−イル]−10−メチルデカリン、また、8a−メチル−5−オキソ−2−ピロリジン−1−イル−4b, 5,6, 7,8, 8a, 9,10−オクタヒドロ−フェナントレン−3− カルボン酸エチルエステルと名づけられたもの;及び、8−ヒドロキシ−1,2−[a、b][(l−ヒドロキシメチル−l−N−ピロリジニル)ベンゾ−4,5−イル]−10−メチルデカリン、また、6,10a−ジメチル−7−ピロリジン−1−イル−1, 2,3, 4,4a, 9,10, 10a−オクタヒドロ−フェナントレン−4−オールと名づけられたもの、また、6−ヒドロキシメチル−10a−メチル−7−ピロリジン−1−イル−1, 2,3, 4,4a, 9,10, 10a−オクタヒドロ−フェナントレン−4−オールと名づけられたものを開示するPCT出版物WO03031408;プリン誘導体、より具体的には、7−(2−クロロ−6−フルオロベンジル)−1,3−ジエチル−8−ピペリジン−1−イル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオンを開示するPCT出版物WO2004009091;2−アミノ−4−オキソキナゾロン、より具体的には、TR1040001892、TR1040011382、TR1040002211及びTR1040002212としてその中に開示するPCT出版物WO2004024161;2−アミノ−4−キナゾロン、より具体的には [MOLNAMES 3252、6584、7459、及び7364]を開示するPCT出版物WO2004024162;より具体的に、1−(3−1[7−プロピル−3−(ネオペンチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イル]オキシ}プロピル)ピロリジン−2,5−ジオンを含む化合物のクラスを開示するPCT出版物WO2004011448;より具体的に、[N−メチル−N−(3−{[7−プロピル−3−(トリフルオロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イル]オキシ}プロピル)]イソフタル酸モノアミド;N−メチル−N−(3−{[7−プロピル−3−(トリフルオロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イル]オキシ}プロピル)コハク酸モノアミド;4−カルボキシ−3,3−ジメチル−[N−メチル−N−(3−f[7−プロピル−3−(トリフルオロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イル]オキシ}プロピル)]ブチルアミド;N−メチル−N−(3−{[7−プロピル−3−(トリフルオロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イル]オキシ}プロピル)アセトアミド;[N−メチル−N−(3−{[7−プロピル−3−(トリフルオロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イル]オキシ} プロピル)] チオフェン−1,5−ジカルボン酸モノアミド;[N−メチル−N−(3−{[7−プロピル−3−(トリフルオロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イル]オキシ}プロピル)]ピリジン 3,5−ジカルボン酸モノアミド;(N−メチル−N− (3−1[7−プロピル−3−(トリフルオロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イル]オキシ} プロピル)] 2,2−ジクロロシクロプロパン−1,3−ジカルボン酸モノアミド;及び、それらの医薬として許容し得る塩並びにエステルからなる群である、化合物のクラスを開示するPCT出版物WO03053352;N,N−ジメチル−4−{7−プロピル−3−(トリフルオロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;N−メチル−4−{7−プロピル−3−(トリフルオロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;N,N−ジメチル4−{7−プロピル−3−ネオペンチル−l、2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;N−メチル4−{7−プロピル−3−ネオペンチル−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;N−エチル,4−{7−プロピル−3−ネオペンチル−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;N,N−ジエチル,4−{7−プロピル−3−ネオペンチル−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;4−{7−プロピル−3−ネオペンチル−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−ブチル}ピペリジン;N−プロピル,4−{7−プロピル−3−ネオペンチル−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;N−(2−フリル)メチル,4−{7−プロピル−3−ネオペンチル−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;N−ブチル4−r7−プロピル−3−ネオペンチル−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;4−{[7−プロピル−3−(トリフルロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イル]オキシ}ブチルアミド;N−プロピル 4−{[7−プロピル−3−(トリフルロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;4−{7−プロピル−3−(トリフルロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチリルピペリジン;N−(4−カルボメトキシフェニル)メチル、4−{7−プロピル−3−(トリフルロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;N−(4−カルボキシフェニル)メチル、4−{−プロピル−3−(トリフルロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;N−メチル−N−(4−カルボキシフェニル)メチル 4−{7−プロピル−3−(トリフルロメチル)− 1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;N−(3−カルボ−t−ブチルオキシフェニル)メチル 4−{7−プロピル−3−(トリフルロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;N−メチル−N−(3−カルボキシフェニル)メチル 4−{[7−プロピル−3− (トリフルロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;N−(2−(カルボ−t−ブチルオキシ)メチルフェニル)メチル 4−{7−プロピル−3−(トリフルロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イル]オキシ}ブチルアミド;N−(3−カルボキシフェニル)メチル、4−{[7−プロピル−3−(トリフルロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;N−2−(カルボキシメチル)フェニルメチル、4−{7−プロピル−3−(トリフルロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イル]オキシ}ブチルアミド;N−メチル−N−2−(カルボキシメチル)フェニルメチル 4−{7−プロピル−3−(トリフルロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イル]オキシ}ブチルアミド;4−{7−プロピル−3−(トリフルロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}酪酸バリンアミドのt−ブチルエステル;rac 4−{7−プロピル−3−(トリフルロメチル)−1. 2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}酪酸バリンアミド;rac4−{7−プロピル−3−(トリフルロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}酪酸 N−メチルバリンアミド;N−メチル−N−(4−ピリジル)4−{7−プロピル−3−(トリフルロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;N−メチル−N−(2−ピリジル)4−{7−プロピル−3−(トリフルロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブチルアミド;N−(4−{7−プロピル−3−(トリフルオロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブタノイル)−L−アラニン−t−ブチルエステル;及び、N−メチル−N−(4−{7−プロピル−3−(トリフルオロメチル)−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イルオキシ}ブタノイル)−L−アラニンを含む化合物のクラスを開示するPCT出版物WO03045382;2−(3−{3−[[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジル](2,2−デフェニルエチル)アミノ]プロポキシ}フェニル)エタノ−ル; [3−[4−(t−ブチルジメチルシリルヒドロキシ) but−1−イニ
ル] フェニル}酢酸メチルエステル、{3−[4−ヒドロキシブチル]フェニル}酢酸メチルエステル、{3−[4−(トルエン−4−スルホニルオキシ)ブチル]フェニル}酢酸メチルエステル、(S)−(2−クロロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−(2−フェニル−プロピル)−アミン、(R)−(2−クロロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−(2−フェニル−プロピル)−アミン、(2−クロロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−(ナフタレン−1−イルメチル)−アミン,(2−クロロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)(フェネチル)−アミン、(2−クロロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)− (ベンジル)−アミン、(2−クロロ−3−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)−フェニル−エタノ−ル、3−(3−ベンジルオキシ−ベンジル)−1,2,4−トリアゾール,3−(3−ベンジルオキシ−ベンジル)−エトキシメチル−1,2,4−トリアゾール、[3−(エトキシメチル)−1,2,4−トリアゾール−3−イルメチル]−フェノ−ル、{3−[3−(3−ブロモ−プロポキシ)−ベンジル]}−(エトキシメチル)−1,2,4−トリアゾール,(2−クロロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−(2、2−ジフェニル−エチル)−{3−[3−(エトキシメチル)−1,2,4−トリアゾール−3−イルメチル−フェノキシ]−プロピル}−アミン、5−(3−ベンジルオキシ−ベンジル)−1,2,3,4−テトラゾ−ル、5−(3−ベンジルオキシ−ベンジル)−エトキシメチル−1,2,3,4−テトラゾ−ル、5−(3−ヒドロキシ−ベンジル)−エトキシメチル−1,2,3,4−テトラゾ−ル,5−[3−(3−ブロモ−プロポキシ)−ベンジル]−(エトキシメチル)−1,2,3,4−テトラゾ−ル、並びに(2−クロロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−(2,2−ジフェニル−エチル)−{3−[3−(エトキシメチル−1,2,3,4−テトラゾール−5−イルメチル)−フェノキシ]−プロピル}−アミン、及びそれらの医薬として許容し得る塩又は溶媒和物を含む化合物のクラスを開示するPCT出版物WO03082205;置換アミノアルキル複素環、より具体的には、2−[2−{[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)−ベンジル](2,2−ジフェニルエチル)アミノ}エチル]−5−ベンゾフラン酢酸を開示するPCT出版物WO03082192;(R)−2−(3−{3−[[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジル](2,2−ジフェニルエチル)アミノ]−2−メチル−プロポキシ}−フェニル)酢酸メチルエステルを含む化合物のクラスを開示するPCT出版物WO03082802;2−(3−{3−[(2−クロロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−ジフェニルエチル−アミノ]−プロポキシ}−フェニル)−N−(2−モルフォリン−4−イル−エチル)−アセトアミドを含む化合物のクラスを開示するPCT出版物WO2004043939;3−クロロ−4−(3−(7−プロピル−3−トリフルオロメチル−6−(4,5)−イソオキサゾリル)プロピルチオ)−フェニル酢酸を含む化合物のクラスを開示するPCT出版物WO2004058175;PCT出版物WO0054759及びWO03074101、PCT出版物WO0160818;及び、4−オキソ−キナゾリン、より具体的には、MOLNAME LN 7181として同定された化合物を開示する欧州特許出願第EP1398032号を開示し、LXRアゴニスト化合物の各開示及びそれらの調製方法は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0033】
(インビトロでの本発明の方法)
本発明の特別な実施態様は、骨組織のインビトロ産生の方法に関連し、基質上に骨芽細胞前駆細胞を適用すること、及び前記細胞を、骨組織のマトリクス産生を刺激するのに十分な時間、効果的な骨形成刺激量のLXRアゴニストと接触させることを含む。より具体的には、この方法は、基質上に哺乳動物骨芽細胞前駆細胞を適用すること;LXRアゴニストを添加すること;細胞が骨形成分化を起こし、骨組織を産生することができるようにさせることによって、骨組織のインビトロ産生に有用である。
【0034】
このインビトロで産生された骨組織は、人工股関節、人工膝関節、及び人工指関節などの人工関節、及び人工歯根などの顎顔面移植を含む、耐力移植の提供のために使用することができる。また、スペーサーなどの特別な外科的装置、又は骨充填剤用に、及び骨欠損、並びに骨損傷又は骨欠失の強化、除去、又は再構成における使用のために利用可能である。本発明の方法はまた、矯正手術との関連において、すなわち、先の外科的装置を交換しなければならない場合に非常に適する。この方法のさらなる態様は、耐力移植(先に記載したような、骨組織のマトリクスで好ましく被覆された)と、先に記載したようなマトリクスを含む骨充填組成物を混合することを含む。
【0035】
骨組織のインビトロ産生のための使用に好ましい細胞は、未分化細胞である。適切な未分化細胞は骨髄細胞であり、造血細胞、及び特に間質細胞を含む。骨髄細胞、及び特に間質細胞は、それらの本来の環境から採取した場合に、骨産生過程にきわめて効果的であることが見出される。未分化細胞はしばしば大量に入手でき、成熟骨細胞よりもより都合よく利用でき、回復期により低い罹患率を示す。さらに、未分化細胞は、移植する予定の患者から得ることができる。これらの細胞由来の骨は、患者に自家性であり、それゆえ免疫反応は誘導されない。
【0036】
未分化細胞は、基質に直接適用することができる、言い換えれば、未分化細胞は、基質上に適用する前に、基質不在下で有利に増殖させることができる。後者の様式において、未分化細胞は、未だ大部分が未分化である。その次に、未分化細胞は、本明細書に記載されるようなLXRアゴニスト、又は本明細書に記載したいずれかの方法を使用して同定された別の型のアゴニストを添加することによって分化させることができる。
【0037】
骨形成は、誘導処理及び伝導処理の両方による、石灰化の変動によって最適化できる。この方法で、100μmまでの厚さのマトリクスを産生できる。例えば、少なくとも0.5マイクロメートル(μm)、好ましくは1〜100μm、及びより好ましくは10〜50μmの厚さを有するマトリクス層を産生するのに十分な時間、未分化細胞を培養する。短時間でも、未分化細胞を該培地と接触させる。
【0038】
基質上に適用した場合、マトリクスの産生は、その表面積の少なくとも50%の基質を覆う、連続的な被覆、又は準連続的な被覆を生じる。未分化細胞を適用し得る基質は、チタン、コバルト/クロム合金、ステンレスなどの金属、リン酸カルシウムなどの生体活性表面、ポリエチレンなどのポリマー表面などであり得る。
別の実施態様において、本発明は、本明細書で開示され、本明細書に記載される任意の1つの方法に従って同定可能な化合物を用いた処理によって、骨芽細胞分化を起こす細胞に関するものである。
【0039】
(治療方法及び医薬組成物)
本発明者は、表1にリスト化したポリペプチドが、骨形成分化過程に関与することを発見した。したがって、本発明は、細胞内に存在する特定のポリペプチドと、細胞の骨形成分化との間の因果関係に関連し、そのいくつかは、発現、発生、代謝性骨疾患の実証に密接に関するものである。したがって、本発明は、これらのポリペプチド(当業者に知られている多くのポリペプチド)を標的化するために使用し得る化合物のみならず、骨代謝性疾患に関連した治療目的用の、そのような化合物の使用に関するものである。これらのポリペプチドに結合することがすでに知られている化合物に対して、本発明におけるその使用は、新たな(医学的)使用である。
【0040】
本発明の好ましい態様は、骨ホメオスタシスのアンバランスの治療方法、又は予防方法に関連し、効果的な骨形成刺激量のLXRアゴニストを、前記アンバランスに苦しむ又は感受性である対象に投与することを含む。そのようなアンバランスは、対象の骨組織中で、破骨細胞に対する骨芽細胞の割合の減少によって特徴付けられる。より詳細には、この減少は、骨塩、具体的にはカルシウムを効率的に再吸収する破骨細胞に比較して、骨マトリクスの石灰化に実効的である骨芽細胞の割合のうちにある。
【0041】
本方法は、(悪性の)低カルシウム血症、パジェット病、関節リウマチ、歯周病、骨格転移の間に起こる局所性骨形成、クロウゾン症候群、くる病、成熟遅延骨異形成症、濃化異骨症/トゥールーズ−ロートレック病、骨形成不全症、及び/又は骨粗鬆症に苦しむ、若しくは感受性である対象の治療に有用である。本発明の最も好ましい方法は、骨粗鬆症に感受性である、及び/又は骨粗鬆症に苦しむ対象への、医薬的に有効量のLXRアゴニストの投与を含む。
【0042】
本発明において有用なLXRアゴニストは、前記対象の骨髄中で、間葉幹細胞を含む骨芽細胞前駆細胞から骨芽細胞への分化を促進させることに効果的であり、それによって、破骨細胞に対する骨芽細胞の割合を増加させる。LXRアゴニストの好ましいクラスは、ジアリールアルキルアミノアルコキシ2−フェニル酢酸の誘導体、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物又は水和物を含む。典型的な好ましい化合物は、LXRアゴニストである、2−(3−(3−(N−(2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジル)−N−(2,2−ジフェニルエチル)アミノ)プロポキシ)フェニル)酢酸(GW3965)、そのプロドラッグ、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物である。別の好ましいLXRアゴニストは、N−(メチル)−N−[4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]−ベンゼンスルホンアミド、そのプロドラッグ、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物である。さらに好ましいLXRアゴニストは、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−N−[4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]−ベンゼンスルホンアミド(T0901317)、そのプロドラッグ、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物である。
【0043】
対象患者へのLXRアゴニストの投与は、自己投与、及び他人による投与の両方を含む。患者は、現存の疾患又は病状の治療を必要としていてもよく、又は骨代謝の障害に冒された疾患及び病状の危険性を防止又は減少させるための予防的治療を望んでいてもよい。対象患者に、経口的に、経皮的に、吸入、注入を介して、経鼻的に、直腸的に、又は徐放性製剤を介して、LXRアゴニストを送達してもよい。
【0044】
対象患者への投与に好ましい治療的有効量のLXRアゴニストは、約0.01mg/kg〜約10mg/kgで、1日あたり1回〜3回の投与である。例えば、本方法の効果的な投与計画は、1日あたり1回〜3回での、前記LXRアゴニストの約5mg〜約1000mgの投与であろう。しかしながら、任意の特定の対象患者に対する具体的な用量レベルは、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄率、薬剤の組み合わせ、及び特定の骨芽細胞欠損の重篤度を含む、様々な因子によることは理解されるべきである。これらの因子の考慮は、該状態の進行を予防、対抗又は阻止するために必要な、治療的に有効な用量若しくは予防的に有効な用量を投与する目的で、十分に一般的な技術を有する臨床医の権限の範囲内である。
【0045】
本方法の好ましい投与計画は、正常な骨ホメオスタシスを回復させるのに十分な時間、対象患者への効果的な骨芽細胞分化刺激量のLXRアゴニストの投与を含み、その後、そのようなホメオスタシスを維持することを含む。前記方法の特別な実施態様は、骨粗鬆症の進展に感受性である対象患者への効果的な骨芽細胞分化刺激量のLXRアゴニストを投与し、骨粗鬆症の発現を予防することを含む。
【0046】
本発明の別の態様は、医薬として許容し得るキャリアーとの混合物中に、効果的な骨形成刺激量のLXRアゴニストを含む、骨ホメオスタシス促進組成物に関するものである。
本発明は、骨関連疾患の治療用薬剤の製造における、LXRアゴニストの使用に関するものである。ある好ましい薬剤は、骨粗鬆症の治療に有用である。
本発明において有用なLXRアゴニストのいくつかは塩基性であり、そのようなアゴニストは遊離塩基の形態、又はその医薬として許容し得る酸付加塩の形態で有用である。酸付加塩は、使用にあたってさらに使いやすい形態である;かつ、実際に、塩形態の使用は、本質的に、遊離塩基形態の使用に等しい。酸付加塩を調製するために使用できる酸は、遊離塩基と混合した場合、医薬として許容し得る塩、すなわち、陰イオンが、該塩の医薬的用量において患者に非毒性である塩を好ましく含み、それにより遊離塩基に備わっている有益な阻害効果は、該陰イオンに起因する副作用によって価値を損なわれない。前記塩基性化合物の医薬として許容し得る塩は好ましいが、例えば、該塩が、それ自体、精製及び同定の目的のためにのみ形成される場合、又はイオン交換手順で医薬として許容し得る塩を調製することにおける中間体として使用する場合のような中間体産物としてのみ所望されるような特定の塩でさえも、遊離塩基形態の供給源として有用である。特に、酸付加塩は、適切な有機酸又は無機酸、及び単離し形成された塩と共に、その遊離塩基形態で精製化合物と別々に反応させることによって調製できる。本発明の範囲内の医薬として許容し得る塩は、鉱酸及び有機酸由来のものを含む。典型的な酸付加塩は、臭化水素塩、塩酸塩、硫酸塩、硫化水素塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、キナ酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクチオビオン酸塩、スルファミン酸塩、マロン酸塩、サリチル酸塩、プロピオン酸塩、メチレン−ビス−β−ヒドロキシナフトエ酸塩、ゲンチシン酸塩、イセチオン酸塩、ジ−p−トルオイル酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルホン酸塩及びラウリルスルホン酸塩を含む。例えば、引用によって本明細書に組み込まれる、S.M. Bergeらの文献『医薬品塩』J. Pharm. Sci.、66、1-19 (1977)を参照されたい。
【0047】
本発明において有用なLXRアゴニスト化合物を産生部分で置換したところにおいて、塩基付加塩を形成することができ、また単純に使用においてより使いやすい形態であり、かつ実用上、塩形態の使用は、本質的に遊離酸形態の使用に等しい。塩基付加塩を調製するために使用することができる塩基は、遊離塩基と混合した場合、医薬として許容し得る塩、すなわち、陽イオンが、該塩の医薬的用量において患者に非毒性である塩を好ましく含み、それにより遊離塩基に備わっている有益な阻害効果は、該陽イオンに起因する副作用によって価値を損なわれない。塩基付加塩はまた、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩由来の適切な有機塩基又は無機塩基、並びに単離し形成された塩と共に、その酸形態で精製化合物と別々に反応させることによって調製できる。塩基付加塩は、医薬として許容し得る金属塩及びアミン塩を含む。適切な金属塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩を含む。ナトリウム塩及びカリウム塩が好ましい。適切な無機塩基付加塩は、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などを含む金属塩から調製される。適切なアミン塩基付加塩は、適切な塩を形成するために十分な塩基性度を有するアミンから調製され、好ましくは、低毒性及び医薬的使用のための許容性のために、医薬品化学で頻繁に使用されるアミンを含む。アンモニア、エチレンジアミン、N−メチル−グルカミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、テトラメチル水酸化アンモニウム、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、エフェナミン、デヒドロアビエチルアミン、N−エチルピペリジン、ベンジルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、塩基性アミノ酸、例えば、リジン及びアルギニン、並びにジシクロヘキシルアミン。
【0048】
本発明に従って使用するLXRアゴニスト、又はLXRアゴニストのプロドラッグは、別々にであろうと本発明の医薬組成物としてであろうと、医薬として有用な組成物を調製する既知の方法に従って製剤化することができる。
LXRアゴニストに基づいた医薬組成物は様々な投与経路で処方してよく、例えば、錠剤、カプセルなどのような経口的に投与可能な形態、又は非経口、静脈内、筋肉内、経皮、口腔、皮下、坐薬若しくは他の経路を介した経路を含む。特定の医薬剤形において、本LXRアゴニストのいくつかは、投与経路及び患者内の標的部位に依存して、他の化合物よりもより適切であり得る。本発明の組成物は、当業者に知られている手順を使用することによって、患者への投与後の活性成分の急速放出、持続放出又は遅延放出を提供するために製剤できる。製剤設計は、当業者に周知でありかつ容易に利用可能な多くの情報源に記載されている。例えば、『レミングトンの薬学』(Martin E Wの文献 [1995] Easton Pa.、Mack Publishing Company、19.sup.th ed.)は、本発明に関連して使用され得る製剤を記載する。
【0049】
本発明に従った経口剤形で医薬組成物を調製することにおいて、任意の1以上の通常の医薬品媒質を使用してよい。それゆえ、懸濁液、エリキシル剤及び溶液などの液体経口製剤には、水、グリコール、オイル、アルコール、香料、作用物質、防腐剤、着色料などを含む、適切なキャリアー及び添加剤を使用してよい。粉末、錠剤、カプセルなどの固形経口剤形、及び坐薬などの固形剤形には、デンプン、ブドウ糖、マンニトール、ラクトース及び関連キャリアーなどの糖キャリアー、希釈剤、造粒剤、滑剤、結合剤、崩壊剤などを含む、適切なキャリアー及び添加剤を使用してよい。所望であれば、錠剤又はカプセルを、標準的技術で腸溶性又は徐放性であってよい。
【0050】
適切な場合には、経口投与用の用量単位製剤は、マイクロカプセル化したものであり得る。該剤形はまた、例えば、被覆剤、又はポリマー、ワックス若しくはそれらのようなものの中に埋め込まれた微粒子状物質によって、放出を延長又は持続させるように調製することができる。
非経口投与に適した製剤は、例えば、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤、及び、該製剤を意図された受容者の血液と等張性にさせる溶質を含んでよい水性滅菌注射液;及び、懸濁化剤並びに増粘剤を含んでよい、水性滅菌懸濁液及び非水性滅菌懸濁液を含む。製剤は、例えば、密封アンプル及びバイアルのような単位用量又は複数用量容器中にあってよく、また使用前に、例えば注射用水のような滅菌液体キャリアーの条件のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)で貯蔵してもよい。即席注射液及び懸濁液を、滅菌粉末、顆粒、錠剤などから調製してよい。特に、先に記載した成分に加えて、本発明の製剤は、問題となっている製剤の型に関連を有する、当業者に慣習的な他の作用物質を含み得ることは理解すべきである。
【0051】
局所的医薬組成物は、皮膚への適用に適合させた溶液、クリーム、軟膏、ムース、ジェル、ローション、粉末又はエアロゾル製剤の形態であってよい。LXRアゴニスト又はLXRアゴニストのプロドラッグを含む局所的製剤は、当業者に周知の様々なキャリアー物質又は医薬として許容し得る賦形剤と混合できる。賦形剤を希釈剤とした場合、該賦形剤は、活性成分の媒体、キャリアー又は媒質として機能する、固体、半固体若しくは液体であり得る。それゆえ、該組成物は、粉末、懸濁液、乳剤、溶液、シロップ、アルコール性溶液、軟膏、局所的洗剤、クレンジングクリーム、スキンジェル、スキンローション、ムース、ロールオン(roll-on)、クリーム又はゲル製剤中のエアロゾルスプレー若しくは非エアロゾルスプレー、及びソフトゼラチンカプセルの形態であり得る。
【0052】
非経口製剤として、キャリアーは、分散を助ける、エタノール及び他の医薬として許容し得る溶媒などの他の成分との組み合わせで、滅菌水又は水性塩化ナトリウムを含んでよい。もちろん、溶液を滅菌で使用し、かつ維持する場合、該組成物及びキャリアーもまた滅菌すべきである。また、注入可能な懸濁液を調製してよ、この場合、適切な液体キャリアー、懸濁化剤などを使用してもよい。
【実施例】
【0053】
(実施例A)経口錠剤の製剤
下記の重量部で成分を含む錠剤を調製する:
GW3865 (K+塩として) 10重量部
ラクトース一水和物 64重量部
コーンスターチ 20重量部
ポリビニルピロリドン 5重量部
(Polyvidone K 30)
ステアリン酸マグネシウム 1重量部
活性化合物であるラクトース一水和物及びコーンスターチを、0.63mmの篩を通して篩過し、10分間キューブブレンダーで混合し、水中のポリビニルピロリドン水溶液(200ml水中に50g)を用いて粒状化させ、乾燥させ、ステアリン酸マグネシウムと共に0.8mmの篩を通して大きさを分け、混合し、Korsch EK 0 eccentric pressなどの通常の錠剤プレス機を使用して、6mmの直径と100mgの平均重量を有する錠剤へとプレスする。
【0054】
(実施例B)経口液体製剤
下記の重量部で成分を含む、経口的に投与可能な液体製剤を調製する:
T0901317 10重量部
ソルビン酸カリウム 10重量部
クエン酸ナトリウム 6重量部
クエン酸 2重量部
塩化ナトリウム 2重量部
スクロース 200重量部
十分な量の水を使用して、溶液1リットルあたり10gのT0901317を含む液体体積を達成する。固体成分を全て水に溶かし、0.23ミクロンの膜を通して濾過し、ボトル中に満たす。その結果としてもたらされた溶液の1mlは、10mgのT0901317を含む。それぞれの投薬は、患者に、それぞれの体積の溶液を投与することによって達成できる。
【0055】
(実施例3)鼻内噴霧製剤
下記の重量部で成分を含む鼻内噴霧製剤を調製する:
T0901317 80重量部
塩化ベンザルコニウム 1重量部
ポリオキシエチレン (20) ソルビタン
モノオレエート (ポリソルベート 80) 80重量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 80重量部
(Tylose .(商標) C 30)
リン酸水素二ナトリウム 72重量部
リン酸二水素ナトリウム 32重量部
ブドウ糖 240重量部
十分に精製した水を使用して、1リットルの溶液あたり10gのT0901317を含む体積を達成する。固体成分を全て水に溶かし、0.5ミクロンの膜を通して濾過し、鼻腔投与用の100マイクロリットルの体積分注チャンバーを備える噴霧器をかぶせるボトル内に満たす。
【0056】
LXRアゴニスト又はLXRアゴニストのプロドラッグを含む坐薬は、市販の坐薬の基剤95gを、約40〜45℃で溶かし、3gのサリチル酸又はマンデル酸を添加し、その次に、攪拌しながら2gのLXRアゴニスト成分を添加し、該混合物を型中に注ぐことによって調製することができる。
【0057】
(LXRアゴニストと骨芽細胞分化との関連の詳細な実験的研究)
(実施例1):初代ヒトMPCにおける、内因性アルカリフォスファターゼのモジュレーターに関するFLeXSelectライブラリーの選別
(材料):
アデノウイルス構築物:
Ad-BMP2:WO 03/018799に記載されている。
Ad-eGFP:WO 02070744中のpIPspAdApt6-EGFPとして参照される。
Ad-LacZ:WO 02070744中のpIPspAdApt6-lacZとして参照される。
Ad-empty:WO 02070744中の空ウイルス(pIPspAdApt 6から生成される)として参照される。
Ad-hCAR:PCRの方法論を使用して、hCAR cDNAを単離する。下記のhCAR特異的プライマーを使用する:HuCAR_for 5'-GCGAAGCTTCCATGGCGCTCCTGCTGTGCTTCG-3'、及びHuCAR_rev 5'-GCGGGATCCATCTATACTATAGACCCATCCTTGCTC-3'。HeLa細胞cDNAライブラリー(Quick clone、Clontech社)から、hCAR cDNAをPCR増幅させる。1119bpの単一フラグメントが得られ、HindIII制限酵素、及びBamHI制限酵素で消化する。同じ酵素を用いてpIPspAdapt6ベクター(WO99/64582)を消化してゲル精製し、これを使用して、消化したPCR hCARフラグメントと連結させる。AdC20(Ad5/Ad51)ウイルスを、WO02/24933に記載されているように生成する。
H4-2:WO03/018799中のDLL4_v1として記載される。
H4-291:SPINT1_v1. cDNAを、ヒト胎盤から単離したRNAから調製しWO02/070744中に記載されているように、SalI−NotI制限酵素認識部位を使用して、pIPspAdapt 6プラスミド内にクローン化する。H4-291によってコードされたタンパク質は、NP_003701と同一である。
【0058】
(アッセイの原理)
間葉前駆細胞(MPC)は、適切な因子(例えば、BMP2)の存在下で、骨芽細胞へと分化する。そのような因子を選別するためのアッセイを、骨芽細胞分化プログラムにおける初期マーカーである、アルカリフォスファターゼ(AP)酵素の活性をモニタリングすることで構築する。MPCを384ウエルプレート内にまき、ヒトコクサッキー及びアデノウイルス受容体(hCAR;Ad-hCAR)をコードするアデノウイルス、並びにGPCR、キナーゼ、プロテアーゼ、ホスホジエステラーゼ、及び核ホルモン受容体(FLeXSelectコレクション)のような、「薬剤となり得る」クラスからの遺伝子に対応するcDNA配列を含む、配列されたアデノウイルスノックインコレクション由来のそれぞれのアデノウイルス(Ad-cDNA)を用いて、1日後に同時に共感染させる。PCRに基づいたアプローチによって、これらのcDNAの大部分を得る。手短に言うと、RefSeqデータベースに存在する配列データに基づき、薬剤となり得る遺伝子の、ATG開始コドンから終止コドンまでの完全な翻訳領域の増幅用に、PCRプライマーを設計する。96ウエルプレート中に、PCR使用準備済みの濃度で配列された型の中に、プライマーを混合する。PCR反応用のテンプレートとして、胎盤のcDNAライブラリー、胎児肝臓のcDNAライブラリー、胎児脳のcDNAライブラリー、及び脊髄のcDNAライブラリーを使用する(Invitrogen社、又はEdge Biosystems社から入手)。単一エキソンでコードされる遺伝子用に、PCR反応を、ヒトゲノムDNA上でも実行する。増幅反応後、PCR産物を、96ウエルPCR精製システム(Wizard magnesil、Promega社、Madison、WI、USA)で精製し、適切な制限酵素(AscI、NotI、又はSalI制限酵素認識部位は、プライマー中に含まれている)で消化し、そしてDNAライゲーションキットバージョン2(TaKaRa社、Berkeley、CA、USA)を使用して、アデノウイルスアダプタープラスミドpIspAdAdapt-10-Zeo(米国特許第6,340,595号に記載される)中に、直接的にクローン化する。形質転換、及び選別段階の後、その1つが配列確認された遺伝子につき複数のクローンを、プラスミドDNAの調製、及びWO99/64582に記載される方法に従う次のアデノウイルスの生成のために使用する。
【0059】
AdC20-hCAR(MOI 250)との共感染は、AdC01-cDNAの感染効率を増加させる。細胞のAP活性を、感染(又はリガンド添加後−以下を参照されたい)後6日目に測定する。アッセイの原理を、図2に示す。骨髄由来の間葉幹細胞に、Ad5C15-hCARウイルス又はAd5C20-hCARウイルスの存在下で、FLeXSelect(商標)cDNAライブラリーを用いて感染させる。感染、又はリガンド処理の開始後6日目に、4−メチルウンベリフェリル7リン酸(MUP)基質を加えた後に、内因性アルカリフォスファターゼ活性を測定する。
【0060】
(アッセイの開発)
インフォームドコンセントの得られた、健康な被験者の骨髄からMPCを単離する(Cambrex/Biowhittaker社、Verviers、Belgium)。
一連の実験を384ウエルプレート内で行い、いくつかのパラメータ:細胞播種密度、コントロールウイルス(Ad-BMP2又はAd-eGFP)の感染多重度(MOI)、Ad-hCARのMOI、感染継続期間、毒性、感染効率(Ad-eGFPを使用する)、及び読み取りの日程を最適化する。
【0061】
下記の手順は、バックグラウンドシグナル上で、最も低い標準偏差を用いるアッセイに対して、最も高いダイナミックレンジをもたらす:0日目に、384ウエルプレートのウエルあたり1000個のMPCを播種し、その翌日に、AdC20-hCAR及びAdコントロールウイルス 2μlの混合物を使用して共感染させる。Adコントロールウイルスのストックを、96ウエルプレート(コントロールプレート)に生成する。2μlの量は、理論的にMOI5000に一致する。コントロールは:P1=Ad-BMP2;P2=Ad-H4-2;P3=Ad-H4-291;N1=Ad-LacZ;N2=Ad-empty;N3=Ad-eGFPである。アルカリフォスファターゼの上方調節を、感染後6日目(6dpi)に読み取る:4−メチルウンベリフェリル−リン酸(MUP、Sigma社)15μlをそれぞれのウエルに添加し、プレートを37℃で15分間インキュベートし、蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用して、AP活性をモニターする。(コントロールウイルスを含む)96ウエルプレート、又は(FleXSelectウイルス(次段落を参照されたい)を含む)384ウエルプレートから、MPCを含む384ウエルプレートへの、ウイルスのピペット操作は、ロボット(TeMO96、TeMO384、及びRoMaを搭載した96/384 channel dispensor Tecan Freedom 200、Tecan AG社、Switzerland)で実行する。図3は、コントロールプレートを使用しての、自動化された選別手順の結果を示す。ネガティブコントロール(N1〜N3)の平均及び標準偏差を使用して、ヒット解析のカットオフを計算する。ポジティブコントロール(P1、P2、P3)は、常に感染させたウエルの80〜100%を記録した(図3)。ネガティブコントロールウイルスは、常に感染させたウエルの0〜5%を記録した(図3)。
【0062】
(FleXSelectライブラリー)
Galapagos Genomics NV(Galapagos社)は、ヒトゲノム中に存在する、薬剤となり得る遺伝子のほとんどをコードするアデノウイルスライブラリーを配列した、独自のノックイン(FLeXSelect)を構築した。アルカリフォスファターゼアッセイは、例えば、G−タンパク質共役受容体(GPCR)及び核ホルモン受容体(NHR)のような化合物によって活性化され得る、薬剤となり得る標的のそれらのクラスのFLeXSelectコレクション(Ad-cDNA)からウイルスを選別することに有用である。
【0063】
FLeXSelectライブラリーに存在するAd−GPCR用に、リガンドの適合コレクションを、MPCを含む384ウエルプレートの1つのウエル中のそれぞれのストックから、Ad−GPCR及びリガンドの適合対をロボットを使用してピペット操作できるような、96ウエルプレート及び384ウエルプレートを作成する。
(選別)
適合リガンドの存在下又は不在下において、FLeXSelectウイルスを、先に記載した手順に従い、それぞれの1つのサンプルを異なるプレート上に添加した2つの独立な選別で複数回選別する。リガンドが選別に含まれる場合、手順を変更する:Ad−cDNA感染を1日目に実施し、リガンドを2日目に添加し、内因性BAPレベルを8日目に測定する。384ウエルスクリーニングプレートの典型的な結果を、図4に示す。図4に示されているのは、X軸上の384ウエルプレートにおける位置、及びY軸上の相対的アルカリフォスファターゼシグナルである。与えられたサンプルの相対的アルカリフォスファターゼシグナルを、与えられた処理単位(又は実験)の全てのデータ点に対する、平均以上の標準偏差の数として計算する。
【0064】
(実施例2):APアッセイを使用した標的同定
下記の選別基準に従って標的を選別する:
1)APシグナルが、処理単位中の全てのサンプル(データ点)の標準偏差の3倍+平均よりも高い。それぞれの処理単位における2つの各データ点を独立に解析する。
2)2つの独立な実験で複数回選別される、少なくとも4つウイルスサンプルのうちの3つ、又は4つのウイルスサンプルのうちの3つ(ウイルス毎に合計4回の測定)に関して、基準1によって定義されたような陽性APシグナル。
【0065】
表1に、アルカリフォスファターゼアッセイにおける、上記の基準に従って同定された標的をリスト化している。
いくつかの標的に関して、アゴニストリガンドが知られている。これらを使用して、MPCにおける標的遺伝子の、骨形成潜在能力を確認することができる:MPCの培地に、高濃度のリガンドを添加することは(標的タンパク質を過剰発現させる)、内因性アルカリフォスファターゼ活性の上方調節を、用量依存的に増加させるであろう。これは例えば、MPCにAd-NR1H3を感染させ、かつT0901317で処理する場合、及びMPCにAd-GPR65を感染させ、かつ1−b−D−ガラクトシルスフィンゴシンで処理する場合、並びにMPCにAd-AVPR2を感染させ、かつ[デアミノ−Cys1、D−Arg8]−バソプレシンで処理する場合に観測される。
【0066】
(Ad-NR1H3及びT0901317)
これらの用量反応曲線を、図5に示す。MPCにAd-NR1H3を感染させ、かつT0901317で処理する場合のAP活性の用量反応曲線を示す(図5A)。MPCを、0日目に384ウエルプレートのウエルあたり1000個播種し、その翌日にAdC51-hCAR(MOI 250)、及び異なるMOIのAd5-NR1H3(MOI 12000、4000、1333、444)を使用して共感染させる。1日目に、一定の媒体濃度(媒体は、0.01%の濃度のDMSOである)と共に、5段階の濃度(1E-10M、1E-9M、1E-8M、1E-7M、1E-6M)の化合物T0901317(Cayman Chemical社、Michigan、USA、カタログ番号71810)をウエルに添加する。37℃、10%COの加湿インキュベータでの6日間のインキュベーションの後、アルカリフォスファターゼの上方調節を読み取る:MUP 15μlを各ウエルに添加し、該プレートを37℃で15分間インキュベートし、蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用してAP活性を測定する。
【0067】
Ad-GPR65を用いて感染させ、かつ1−b−D−ガラクトシルスフィンゴシンで処理するMPC(図5B);Ad-AVPR2を感染させ、かつ[デアミノ−Cys1、D−Arg8]−バソプレシン(DDAVP)で処理するMPC(図5C)に関して、AP活性の用量反応曲線を同様の方法で作成する。
活性型リガンドを異なる濃度で添加する場合、APアッセイおいて、AP活性の、用量依存的上方調節を示す3つの標的を同定する。
【0068】
(AdNR1H3及びGW3965)
MPCを、Ad-NR1H3を用いて感染させ、かつGW3965で処理する場合の、AP活性に対する用量反応的関連を観測する(図9)。0日目に、384ウエルプレートのウエルあたり1000個のMPCを播種し、その翌日に、AdC51-hCAR(MOI 250)及び異なるMOIのAd5-NR1H3(MOI 2000、666)を使用して共感染させる。1日目に、一定の媒体濃度(媒体は、終濃度0.1%のDMSO)と共に、8種類の濃度(3,43E-9M、1,34E-8M、5,35E-8M、1,60E-7M、4,81E-7M、1,43E-6M; 4,29E-6M、13E-6M)の化合物GW3965(Chemovation社、West Sussex)を、ウエルに添加する。6日後、培地を除去し、同濃度の化合物GW3965を含む新鮮培地に置換する。実験開始後、主として7日後、10日後、及び13日後の時間点で、AP活性の読み取りを実施する。アルカリフォスファターゼ活性の上方調節を、下記のように読み取る:単層から培地を除去し、MUP 15μlを各ウエルに添加して、該プレートを37℃で15分間インキュベートし、それから蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用して、AP活性を読み取る。図9は、Ad-NR1H3存在下における、GW3965の用量反応活性を示す。
【0069】
(AdNR1H2及びT0901317)
MPCを、Ad-NR1H2を用いて感染させ、かつT0901317で処理する場合の、AP活性に対する用量反応的関連を観測する(図10)。0日目に、384ウエルプレートの各ウエルに1000個のMPCを播種し、その翌日に、AdC51-hCAR(MOI 250)及び異なるMOIのAd5-NR1H3(MOI 2000、666)を使用して共感染させる。1日目に、一定の媒体濃度(媒体は、終濃度0.1%のDMSO)と共に、5種類の濃度(1E-9M、1E-8M、1E-7M、1E-6M、1E-5M)の化合物T0901317(Cayman Chemical社、Michigan、USA、カタログ番号71810)を、ウエルに添加する。6日後、培地を除去し、同濃度の化合物T0901317を含む新鮮培地に置換する。実験開始後、主として7日後、10日後、及び13日後の時間点で、AP活性の読み取りを実施する。アルカリフォスファターゼ活性の上方調節を、下記のように読み取る:単層から培地を除去し、MUP 15μlを各ウエルに添加して、該プレートを37℃で15分間インキュベートし、それから蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用して、AP活性を読み取る。図10は、Ad-NR1H2存在下における、T0901317の用量反応活性を示す。
結論として、APアッセイにおいて、LXRアゴニストであるGW3965及びT0901317それぞれを異なる濃度で細胞に添加する場合、AP活性は、用量依存的様式で、NR1H3又はNR1H2のどちらかを用いて形質導入した細胞内で上方調節される。
【0070】
(実施例3):同定した標的のmRNA及びタンパク質発現解析
実施例1に記載したアッセイは、過剰発現下での骨形成潜在能力を有するタンパク質の発見を明示する。これらのタンパク質が、MPC又は初代ヒト骨芽細胞(hOB)などの骨形成細胞で内因的に発現することを確認するために、これらの細胞からmRNAを抽出し、リアルタイムRT−PCRを使用して発現を解析する。
【0071】
標的遺伝子の発現レベルを、MPCの4つの異なる分離株、及びhOBの2つの異なる分離株で測定する。MPC(ヒト骨髄(Cambrex/Biowhittaker社、Verviers、Belgium)から得た)及びhOB(Cambrex/Biowhittaker社、Verviers、Belgiumから得た)を、3000個ずつ播種する。それらが80%の密集度になるまで、T180フラスコ中の5000細胞/cmを培養する。細胞を、氷冷PBSで洗浄し、SV RNA溶解緩衝液 1050μlをT180フラスコに添加することによって回収する。SV 総RNA isolation System(Promega社、カタログ番号Z3100)を使用して、総RNAを調製する。総RNAの濃度を、Ribogreen RNA Quantification kit(Molecular Probes社、Leiden、The Netherlands、カタログ番号R-11490)を使用して測定する。TaqMan Universal PCR Master Mix, No AmpErase UNG, kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号4324018)を利用し、1反応につき40ngの総RNAを使用して、cDNA合成を実施する。各逆転写(RT)反応に対して、マイナス−RT反応(ネガティブコントロール:反応中に酵素を含まない)を実施する。
【0072】
SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号 4309155)を使用して、cDNAサンプル及びマイナス−RTサンプルの両方で、遺伝子特異的プライマー(表2)を用いたリアルタイム逆転写酵素(rtRT)−PCR反応を実施する。ヒトゲノムDNA上、及び検討される遺伝子によってコードされるcDNAを含むプラスミド上でのPCR反応を実施することによって、プライマーを品質管理する。品質が不十分である場合、追加のプライマーを設計するか、又は確認プライマーセットを購入する(ABI社)。発現レベルの標準化のために、Human β-actin kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号4310881E)を使用して、ヒトβ−アクチン上で、RT−PCR反応を実施する。リアルタイムPCR装置(ABI PRISM 7000 Sequence Detection System)で、下記のプログラムを実施する:25℃で10分、48℃で30分、95℃で5分。複数のMPC分離株、及び複数のhOB分離株内の標的遺伝子の発現レベルを、β−アクチンの発現レベルに対して比較する。
【0073】
【表2】

【0074】
(実施例4):内因性骨AP mRNAの上方調節対胎盤のAP mRNA又は腸のAP mRNAの上方調節の解析
骨アルカリフォスファターゼ(BAP)は、骨形成に関与する、生理的に関連するアルカリフォスファターゼ(AP)である。測定されたAP活性が、BAP発現の上方調節のためであるか、又は別のAPの上方調節のためであるかを測定するために、全てのAP遺伝子のmRNAレベルを、MPCの感染後に解析する。
【0075】
前節で記載したように、mRNAレベルを測定する。差異は、使用したプライマーセットである(表3):1つのセットは、BAP ALPL(ヒトアルカリフォスファターゼ 肝臓/骨/腎臓)mRNA発現を検出する。別のセットは、3つの他のAP遺伝子(ALPI(ヒトアルカリフォスファターゼ 腸)、ALPP(ヒトアルカリフォスファターゼ 胎盤(PLAP)、ALPPL2(ヒトアルカリフォスファターゼ 胎盤様))の発現を検出する。ALPI、ALPP及びALPPL2はヌクレオチドレベルで高度に類似しており、それゆえ、1つのプライマー対を使用して増幅できる。
【0076】
【表3】

【0077】
はじめに、Ad-eGFP及びAd-BMP2を感染させたMPCから単離したRNAで、プライマー対を確認する。図6は、Ad-BMP2によるBAP mRNAの強い上方調節、及び任意の他のAP遺伝子発現の上方調節がないことを示す。それから両方のプライマー対を使用して、Ad標的化感染MPCから単離したRNAで、全てのAP遺伝子のmRNAレベルを測定する。
【0078】
(実施例5):骨形成に関連する細胞型における、NR5A2、NR1H3、NR1H2、ESRRGの発現レベルの解析
同定された標的遺伝子が、骨形成に関連する細胞型において、内因的に発現しているかを確認するために、これらの遺伝子のmRNAレベルを、関連する細胞型で解析する。
初代細胞又は細胞株(図14A〜D:MPC分離株1〜4、頭蓋冠骨芽細胞(MCOst pop 1+2、3+4))、ヒト骨芽細胞細胞株(SaOS2、U20S)を培養する、又は頭蓋冠頭蓋骨(calvarial skull)組織を、5日齢のマウスから回収する。単層又は頭蓋骨組織を回収して、総RNAを抽出し(SV 総RNA isolation System、Promega社 番号Z3100)、定量する(Ribogreen RNA Quantification kit、Molecular Probes社、Leiden)。TaqMan Universal PCR Master Mix, No AmpErase UNG, kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号 4324018)を利用し、1反応あたり20ngの総RNAを使用して、cDNA合成を実施する。各逆転写(RT)反応に対して、マイナス−RT反応(ネガティブコントロール:反応中に酵素を含まない)を実施する。SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号 4309155)を使用して、cDNAサンプル及びマイナス−RTサンプルの両方で、遺伝子特異的プライマーを用いたリアルタイム逆転写酵素(rtRT)−PCR反応を実施する。可能な場合には、ヒトゲノムDNA上、及び検討される遺伝子によってコードされるcDNAを含むプラスミド上でのPCR反応を実施することによって、プライマーを品質管理する。品質が不十分である場合、追加のプライマーを設計する又は確認する、及びプライマーセットを購入する(ABI社)。発現レベルの標準化のために、Human s-actin kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号4310881E)を使用して、ヒトβ−アクチン上で、RT−PCR反応を実施する。リアルタイムPCR装置(ABI PRISM 7000 Sequence Detection System)で、下記のプログラムを実施する:25℃で10分、48℃で30分、95℃で5分。
【0079】
4つの遺伝子の発現レベルを、ベータアクチンの発現レベルに対して比較し、その結果を図14A〜Dに示す。図は、ベータアクチン又は4つの標的遺伝子の、異なる細胞型若しくは組織内のmRNA発現レベルを解析することで得たCt値を示す;n.a.:解析されず;「サイバーグリーン(Sybrgreen)」又は「ABIプライマー(ABI primer)」は、それぞれプライマーセットが組織内で開発されたかどうかを示し、市販のプライマーセットを使用して、mRNA発現を評価した。また、示しているのは、異なる発現レベルの標的遺伝子対ベータアクチン発現レベルの図解である(値はデータ表の左側の欄からとった)。
結論として、同定した標的遺伝子は、骨形成に関連する複数の細胞型において発現している。標的遺伝子ESRRGは、テストしたMPC分離株において発現していないことは注目すべきである。
【0080】
(実施例6):NR1H2又はNR1H3の過剰発現状態でのBAPアッセイにおけるLXRアゴニストの活性
(Ad-NR1H2及びGW3965)
MPCを、Ad-NR1H2を用いて感染させ、かつGW3965で処理する場合の、AP活性に対する用量反応的関連を観測する(図11)。0日目に、384ウエルプレートの各ウエルに1000個のMPCを播種し、その翌日に、AdC51-hCAR(MOI 250)及び異なるMOIのAd5-NR1H2(MOI 2000、666)を使用して共感染させる。1日目に、一定の媒体濃度(媒体は、終濃度0.161%のDMSO)と共に、9種類の濃度(1.52E-9M、4.57E-9M、1.37E-8M、4.12E-8M、1.23E-7M、3.7E-7M、1.11E-6M、3.33E-6M、1E-5M)の化合物GW3965を、ウエルに添加する。6日後、培地を除去し、同濃度の化合物GW3965を含む新鮮培地に置換する。実験開始後、主として7日後、10日後、及び13日後の時間点で、AP活性の読み取りを実施する。アルカリフォスファターゼ活性の上方調節を、下記のように読み取る:単層から培地を除去し、MUP 15μlを各ウエルに添加して、該プレートを37℃で15分間インキュベートし、それから蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用して、AP活性を読み取る。図11は、Ad-NR1H2存在下における、GW3965の用量反応活性を示す。
【0081】
(Ad-NR1H2、Ad-NR1H3及びアセチルポドカルピック二量体(acetyl-podocarpic dimer)(APD))
MPCを、Ad-NR1H2又はAd-NR1H3を用いて感染させ、かつアセチルポドカルピック二量体(APD−図12の化合物構造を参照されたい;APDは、公開されたUA2003/0086923A1において「化合物1」として記載され、そのAPDの調製は、引用により本明細書に組み込まれる)で処理する場合の、AP活性に対する用量反応的関連を観測する。0日目に、384ウエルプレートの各ウエルに1000個のMPCを播種し、その翌日に、AdC51-hCAR(MOI 250)及び異なるMOIのAd5-NR1H2又はAd-NR1H3(MOI 2000、6000)を使用して共感染させる。1日目に、一定の媒体濃度(媒体は、終濃度0.1%のDMSO)と共に、12種類の濃度(5.65E-11M、1.69E-10M、5.08E-10M、1.52E-9M、4.57E-9M、1.37E-8M、4.12E-8M、1.23E-7M、3.7E-7M、1.11E-6M、3.33E-6M、1E-5M)の化合物APDを、ウエルに添加する。6日後、培地を除去し、同濃度の化合物APDを含む新鮮培地に置換する。実験開始後、主として7日後、10日後、及び13日後の時間点で、AP活性の読み取りを実施する。アルカリフォスファターゼ活性の上方調節を、下記のように読み取る:単層から培地を除去し、MUP 15μlを各ウエルに添加して、該プレートを37℃で15分間インキュベートし、それから蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用して、AP活性を読み取る。図13は、Ad-NR1H2又はAd-NR1H3存在下における、APDの用量反応活性を示す。
結論として、APアッセイにおいて、LXRアゴニストであるAPD、GW3965及びT0901317それぞれを異なる濃度で細胞に添加する場合、AP活性は、用量依存的様式で、NR1H3又はNR1H2のどちらかを用いて形質導入した細胞内で上方調節される。
【0082】
(実施例7):骨形成経路解析:NR5A2及びNR1H3+T0901317は骨形成マーカーのmRNAレベルを上方調節する
MPCから骨芽細胞への骨形成分化は、骨形成タンパク質の上方調節を伴う。骨形成タンパク質の上方調節は、例えばリアルタイムRT−PCRを使用して、新規標的による骨形成分化の誘導を研究するのに有用である。この研究に使用するMPCを、BMP2による骨形成マーカーの限定されたセットの上方調節で特徴付ける。次に、BMP2の差次的発現を示すマーカーを、Ad-NR5A2感染細胞由来のmRNA、又はAd-NR1H3+T0901317処理細胞由来のmRNAに対してテストする。
【0083】
10%FCSを含むMPC培地2ml中の100,000個のMPCを、6ウエルプレートの各ウエルに播種する。加湿インキュベータ内において、37℃、10%COでインキュベーションしたその翌日、AdC15-hCAR(最終MOI 750)、及びAd-NR5A2、Ad-NR1H3+T0901317(1μM)又はAd-BMP2(ポジティブコントロール)、若しくはネガティブコントロールとしてAd-eGFP又は Ad-ルシフェラーゼ(最終MOI 1250及び2500)を用いて、細胞を共感染させる。RNA単離のために細胞を回収済みでない限り、さらに6日間、細胞を加湿インキュベータ内において、37℃、10%COでインキュベートする。ウイルスを除去し、新鮮OS培地(10%FCSを含む、商標登録された培地)2mlで置換する。以降3週にわたり、2週につき3回、培地を補給する。1回おきに、培地を半分又は完全に交換する。単層をいくつかの時間点(図15を参照されたい)で回収し、総RNAを回収して定量し、rtRT−PCRを下記のように実施する:単層を氷冷PBSで洗浄し、SV RNA溶解緩衝液を添加することによって回収する。SV Total RNA isolation System(Promega社、カタログ番号Z3100)を使用して、総RNAを調製する。総RNAの濃度を、Ribogreen RNA Quantification kit(Molecular Probes社、Leiden、The Netherlands、カタログ番号R-11490)を使用して測定する。TaqMan Universal PCR Master Mix, No AmpErase UNG, kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号4324018)を利用し、1反応につき20ngの総RNAを使用して、cDNA合成を実施する。各逆転写(RT)反応に対して、マイナス−RT反応(ネガティブコントロール:反応中に酵素を含まない)を実施する。SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号 4309155)を使用して、cDNAサンプル及びマイナス−RTサンプルの両方で、遺伝子特異的プライマーを用いたリアルタイム逆転写酵素(rtRT)−PCR反応を実施する。可能な場合、ヒトゲノムDNA上、及び検討される遺伝子によってコードされるcDNAを含むプラスミド上でのPCR反応を実施することによって、プライマーを品質管理する。品質が不十分である場合、追加のプライマーを設計するか、又は確認プライマーセットを購入する(ABI社)。発現レベルの標準化のために、Human β-actin kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号4310881E)を使用して、ヒトβ−アクチン上で、RT−PCR反応を実施する。リアルタイムPCR装置(ABI PRISM 7000 Sequence Detection System)で、下記のプログラムを実施する:25℃で10分、48℃で30分、95℃で5分。
【0084】
はじめに、骨形成マーカー遺伝子の発現レベルを、ベータアクチンのレベルに対して標準化する。それからAd-BMP2、Ad-NR5A2及びAd-NR1H3+T0901317(1μM)サンプルの結果データを、同じMOIで感染させた細胞に関して、同じ時間点で回収したAd-eGFP又はAd-ルシフェラーゼネガティブコントロールサンプルのものと比較する。NR5A2又はBMP2過剰発現によって誘導されるマーカー遺伝子mRNAの倍の上方調節を計算し、図15に提示する。BMP2、NR5A2又はNR1H3+T0901317が、ネガティブコントロールサンプル(Ad-eGFP又はAd-ルシフェラーゼ)のものよりも4倍高い場合、骨形成マーカーは、BMP2、NR5A2又はNR1H3+T0901317過剰発現によって上方調節されると考えられる。Ad-NR5A2は、1以上の時間点で調査したPTHR1、BAP、オステオポンチン、アロマターゼ及びRANKLの発現を上方調節した。Ad-NR1H3+T0901317は、1以上の時間点で調査したPTHR1、BAP、オステオポンチン、アロマターゼ及びRANKLの発現を上方調節した。
【0085】
(実施例8):骨形成経路解析:骨形成誘発によるNR5A2及びNR1H3 mRNAレベルの上方調節
確立された骨形成の誘導因子でMPCを処理し、NR5A2又はNR1H3 mRNAレベルを、既知の骨形成経路におけるNR5A2又はNR1H3を配置させるための試みで測定する。
10%FCSを含むMPC培地2ml中の100,000個のMPCを、6ウエルプレートの各ウエルに播種する。加湿インキュベータ内において、37℃、10%COでインキュベーションしたその翌日、AdC15-hCAR(最終MOI 750)、及びAd-BMP2、Ad-RUNX2、Ad-MSX2、Ad-PTHR1/PTHLH、若しくはネガティブコントロールとしてAd-eGFP又はAd-ルシフェラーゼ(最終MOI 1250及び2500)を用いて、細胞を共感染させる。あるいは、細胞を、デキサメタゾン(終濃度0.1μM)、VitD3(終濃度0.1μM)、又は媒体コントロール(0.1%EtOH又はDMSO)で処理する。RNA単離のために細胞を回収済みでない限り、さらに6日間、細胞を加湿インキュベータ内において、37℃、10%COでインキュベートする。ウイルスを除去し、新鮮OS培地(10%FCSを含む、商標登録された培地)2mlで置換する。以降18週にわたり、2週につき3回、培地を補給する。1回おきに、培地を半分又は完全に交換する。単層をいくつかの時間点(図16を参照されたい)で回収し、総RNAを回収して定量し、rtRT−PCRを先の実施例「NR5A2及びNR1H3+T0901317は骨形成マーカーのmRNAレベルを上方調節する」に記載されているように実施する。ネガティブコントロール(デキサメタゾン又はVitD3処理の媒体)又はAd-感染の)Ad-ルシフェラーゼに比較したNR5A2又はNR1H3 mRNAの倍の上方調節を計算する(図16)。
NR5A2 mRNAレベルは、いくつかの時間点でVitD3処理によって上方調節されるようになり、また、感染4日後の時間点でのAd-PTHR1/PTHLH感染によるNR1H3及びNR5A2レベル。
【0086】
(実施例9):石灰化アッセイ
骨形成の過程は、いくつかの連続的事象からなる。骨形成の初期段階の間、BAPは上方調節されるようになるが、石灰化は、骨形成の後期段階に起こる特異的事象である。
骨組織は、有機物質のマトリクス(例えば、コラーゲン)内に埋め込まれた細胞、及び無機物質(Ca2+及びリン酸)からなる。分化した骨細胞が沈着したマトリクスの該骨細胞を染色することによって、インビトロで骨石灰化を示す。Von Kossa染色及びアリザリンレッドS染色は、沈着したリン酸及びカルシウムのそれぞれの可視化を可能にさせる。
【0087】
1日目に、ウエルあたり50,000〜250,000個、通常はウエルあたり100,000個の細胞密度で、6ウエルプレート(Costar社又はNunc社)内に播種する。1日後、AdC15-hCAR(MOI 750)、及びAd-コントロール(eGFP又はBMP2)又はヒットウイルス(Ad5)(250〜20,000のMOI、通常は5000及び2500のMOIで)を用いて、MPCを共感染させる。Ad-GPCR又はAd-NHR実験に関しては、細胞をさらに特定のリガンドで処理することができる。これらを、EC50濃度、及び5〜10倍高い並びに低い濃度で添加する。リガンドを、1週につき2〜3回添加する。L−アスコルビン酸100μg/ml、及びベータ−グリセロリン酸10mMを補充した培地を、1週に2回補給する。実験開始後20〜30日に、Von Kossa染色又はアリザリンレッドS染色で細胞を染色する。
【0088】
アリザリンレッドS染色を下記のように行う:細胞をPBSで1回洗浄し、10%パラホルムアルデヒドを用いて4℃で45分間固定し、PBSで2回洗浄する。細胞を、40mM水性アリザリンレッドS溶液、pH4.1〜4.3を用いて10分間インキュベートした後、蒸留水で5回洗浄する。白色光を使用して、染色を評価し、撮影する。図7及び図8に実施例を示す。
【0089】
結論として、2つの標的が、それらのそれぞれのリガンド:NR5A2(図7)及びNR1H3(図8)の存在下又は不在下において、石灰化を誘導したことをすでに同定する。
頭蓋冠頭蓋骨組織を用いて実施した研究において、LXRアゴニスト単独の投与は骨形成を誘導し、それによって、前駆細胞を骨芽細胞へと分化させるための方法、骨組織形成を刺激する方法、及び骨粗鬆症を治療又は予防することを含む骨疾患を治療若しくは予防することを含む、本発明の方法に有用である。
【0090】
図9及び図10に提示したデータは、LXRアゴニストが、Ad-NR1H3又はAd-NR1H2の不在下では、Ad-NR1H3又はAd-NR1H2の存在下と同程度レベルのアルカリフォスファターゼ活性を誘導しないことを示す。頭蓋冠頭蓋骨組織での知見に一致しないような知見は、例えば、NR1H3タンパク質又はNR1H2タンパク質の過剰発現が、内因性NR1H3タンパク質又は内因性NR1H2タンパク質よりも、活性化補助因子タンパク質の異なる集合を補充し得るような、多くの因子の結果であり得る。
【0091】
(実施例10)頭蓋冠頭蓋骨アッセイ:NR1H3アゴニストT0901317の活性
成人の骨は、有機(例えば、タイプ−1コラーゲン)物質、及び無機(リン酸カルシウム)物質、骨形成細胞型(MPC、骨芽細胞及び骨細胞)、及び骨分解細胞型(破骨細胞)からなる。標的ヒットの同定及び最初の検証に使用したMPC単層は、インビボの多細胞3次元環境を模倣していないので、骨器官培養モデルを開発した。インビボの骨環境をよく模倣したすばらしいエクスビボモデルは、中足骨又は頭蓋冠頭蓋骨組織培養モデルなどの、骨器官培養である。前者のモデル(インビボ)では、軟骨内骨化によって形成される足骨を使用する。後者のモデル(エクスビボ)では、膜内骨化によって形成される頭蓋骨を使用する(再び図1を参照されたい)。本実施例は、頭蓋冠頭蓋骨を使用する後者のモデルを記載する。
【0092】
CD1メスマウス(該マウスが妊娠11日目のときに、Janvier社(Le Genest St Isle、France)から受け取った)から、出産前後のCD1仔を回収する。仔の頭部を切除し、頭蓋冠頭蓋骨を解剖し、2つの頭蓋冠半球に分割する。滅菌ガーゼを使用して頭蓋冠半球を拭い取って秤量し、24ウエルプレートで培養する(50μg/ml L−アスコルビン酸(Sigma社、A-4034)、5mM β−グリセロリン酸(Sigma社、G-9891)及びペニシリン−ストレプトマイシン(Invitrogen社 カタログ番号15140-122)を含む、MEMアルファ培地又はBGJb-Fitton-Jackson培地)。小分子(リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト)を、3種類の濃度の最小の少なくとも3倍でテストする。0日目に、各小分子を培地に添加し、培地を補給するとき(2〜3日毎)に再び添加する。実験開始3日〜16日後に、滅菌ガーゼを使用して、乾いた頭蓋骨から拭い取った後に、頭蓋骨を再び秤量する。重量差を計算してパーセント重量変化として表現し、平均及び標準偏差(SD)を3回の測定から計算する。スチューデントのt−検定を使用してデータを解析する。Ad-BMP2及びAd-BMP7ポジティブコントロールの重量増加を、図17に示す。
【0093】
新たな類骨の形成を、組織学的に下記のように解析する:頭蓋冠半球を、少なくとも2日間、緩衝化された10%ホルマリン中で固定し、10%EDTA中で一晩、脱石灰化し、等級付けされたアルコールを通して加工し、パラフィンろう中に包埋する。頭蓋冠の3〜10μmの切片を調製し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色する。正常細胞、死細胞、老骨及び新生骨、並びにコラーゲンを、それらの特徴的形態及びH&E染色後に観察される着色によって識別する。これらによって得られた表面を立体解析学的に測定し(μm読み取り)、それぞれ、骨芽細胞領域、残骸領域、天然型骨領域、及び新生骨領域、コラーゲン領域、並びに総領域(先の5領域の合計)と名づける。さらに、切片上を均等に間隔をあけた8箇所の位置で厚さを測定する(μM読み取り)。
【0094】
頭蓋冠頭蓋骨アッセイの組織学的読み取りを、既知の骨形成作用物質を使用して構築する。頭蓋冠半球を、組換えヒト副甲状腺ホルモン(rhPTH)で処理した。PTHは骨に対して二重作用を有する:断続的な治療計画は骨形成をもたらすが、継続的な治療計画は骨吸収をもたらすので、PTHはインビボで継続的によりはむしろ断続的に投与する必要性がある。二重作用はまた、予期したように、頭蓋冠頭蓋骨モデルにおいて認められる:10−7MのPTHは骨組織において吸収効果を有するが、10−11Mでは骨形成を誘導する。
【0095】
NR1H3及びT0901317は、AP及び石灰化アッセイにおいて良好な成績であるので、市販のNR1H3アゴニストであるT0901317を頭蓋冠頭蓋骨でテストし、さらにNR1H3活性化作用の骨形成潜在能力を示す。
T0901317を、いくつかの濃度(19.5、78.1及び313nM)で、4分割に解体した日に、解剖した頭蓋冠半球の培地に添加する。溶媒(媒体)であるDMSOの濃度を、終濃度0.05%に固定する。T0901317又は媒体コントロールを含む培地を、2〜3日毎に補給する。実験開始後7日目に頭蓋冠半球を回収し、先に記載した組織学的解析に供する。統計学的に明らかな増加が、骨芽細胞、コラーゲン及び新生骨の領域に観察される。該化合物の用量反応活性を、骨芽細胞、総領域(測定した全ての領域の合計)及び厚さの領域に対して認める(図18)。
【0096】
H&E染色とは別に、他の染色を規定通りに行う。ある方法において、AP活性を、下記のようにして可視化する:スライドを、4%パラホルムアルデヒドを使用して10分間固定し、PBS及びMilliQ水で洗浄する。スライドを、ALP緩衝液(ALP緩衝液:0.1M Tris-HCl pH 9.5、20 mM MgCl2、100 mM NaCl)で5分間インキュベートし、ティッシュペーパーを使用して拭い取り、基質(ALP緩衝液中のNBT/BCIP(塩化ニトロブルーテトラゾリウム/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸、Roche))とインキュベートする。染色は、色が黄色から茶色へと変わるとき、MilliQ水で洗浄することによって停止させる。
【0097】
(実施例11):優性阻害RUNX2変異体は、NR5A2、NR1H3 + T0901317及びESRRGによるAP上方調節に干渉する
RUNX2は、MPC又は骨芽細胞から受け取った多くの骨形成要因を、適切な骨形成の転写的出力へと中継する、重要な骨形成転写因子である。マウスにおけるノックアウト研究は、RUNX2が、発達期の骨格の骨化に重要であることを示す(Franceschi RT及びXiao Gの文献(2003))。
【0098】
RUNX2の生物学及びRUNX2が中継する骨形成シグナルを研究するための有用な手段は、変異体である。N末端のRunt相同性DNA結合ドメインは保持するが、C末端転写促進領域を欠く切断型RUNX2タンパク質は、優性阻害RUNX2(DN-RUNX2)タンパク質として作用する。この型の変異体は、インビトロ及びインビボで、RUNX2活性に干渉できる(Zhangらの文献、2000)。MPCは、有意水準のRUNX2 mRNAを発現する(レベルは、b−アクチン mRNAより、約10倍低い)。
【0099】
BMP2の骨形成活性は、RUNX2を介して機能することが知られているので、Ad-BMP2及びAd-DN-RUNX2ウイルスを使用して、DN-RUNX2アッセイを開発する。全長のヒトRUNX2 cDNAを、MPCから抽出した総RNAからのRT−PCRによって得る。アミノ酸1〜214をコードするcDNAの5'部分を、クローン化したRUNX2 cDNAからPCRで得て、アデノウイルスアダプタープラスミドにサブクローニングする。クローン化したフラグメントの同一性を、配列決定で検証する。このプラスミドを使用して、WO 9964582に記載されるようなアデノウイルスストックを作成する。
【0100】
384ウエルプレートのウエルにつき1000個のMPCを播種し、その翌日に、hCARをコードするアデノウイルス(MOI 250)、Ad-BMP2(MOI 6000、2000、666)及びAd-DN-RUNX2又はAd-ルシフェラーゼ(MOI 2000又は666)のうちの1つを使用して感染させる。アルカリフォスファターゼ活性を、感染後6日目に読み取る。図19(A)から、DN-RUNX2の過剰発現が、BMP2誘導性のAP活性の上方調節を減少させることは明白である。この結果は、使用したDN-RUNX2構築物の機能性を示す。
【0101】
DN-RUNX2アッセイを使用して、NR5A2、NR1H3、及びESRRGによるAP活性の上方調節におけるRUNX2の関与をテストする。384ウエルプレートのウエルにつき1000個のMPCを播種し、その翌日に、hCARをコードするアデノウイルス(MOI 250)、Ad-BMP2、Ad-ESRRG、Ad-NR5A2、Ad-NR1H3(MOI 6000、2000、666)及びAd-DN-RUNX2又はAd-ルシフェラーゼ(MOI 1000、又はMOI 2000及び666)のうちの1つを使用して感染させる(図19(C)を参照されたい)。アルカリフォスファターゼ活性を、感染後6日目に読み取り、生データを解析する。図19(B)から、DN-RUNX2の過剰発現が、ESRRG誘導性及びNR5A2誘導性のAP活性の上方調節を顕著に減少させることは明白である。図19(C)から、DN-RUNX2の過剰発現が、T0901317存在下において、NR1H3によって誘導されるAP活性の上方調節を顕著に減少させることは明白である。
【0102】
(実施例12):MPC分離株と無関係な、NR5A2、NR1H3 + T0901317、ESRRGによるアルカリフォスファターゼ活性の誘導
MPCは、インフォームドコンセントを得て、健常な提供者から分離した新鮮骨髄から単離できる(Cambrex Bioscience/Biowhittaker社、Verviers、Belgium)。MPCは、例えば、APアッセイ(実施例2を参照されたい)を使用して、インビトロで骨形成因子を単離するための、生理的に関連のある細胞である。ただ1つのMPC単離物(すなわち、1人の提供者由来)に機能する標的を除外するために、標的もまたいくつかの異なるMPC分離株でテストし、MPCを使用する標的の発見過程における、遺伝的背景の影響を除外する。
【0103】
骨形成因子NR5A2、NR1H3及びESRRGを、実施例2に記載した手順に従ったAPアッセイで、標的の発見のために使用したものとは異なる、3つの独立したMPC分離株でテストする。384ウエルプレートのウエルにつき1000個のMPCを播種し、その翌日に、hCARをコードするアデノウイルス(MOI 250)、Ad-BMP2、Ad-ESRRG、Ad-NR5A2、及びAd-NR1H3(MOI 10000、2500、625)を使用して感染させる。MOI 2500のAd-NR1H3ウイルスを用いて感染させたMPCも同様に、感染1日後に、異なる濃度のT0901317(図20)又は媒体を用いて処理する。4人の異なる提供者(A,B,C,D)から単離したMPCを、Ad-ルシフェラーゼ又はAd-DN-RUNX2と共に、Ad-hCAR、Ad-BMP2(ポジティブコントロール)、Ad-eGFP(ネガティブコントロール)、Ad-NR5A2、Ad-ESRRG(A,B,C,D の左側のパネルに示したデータ)及びAd-NR1H3 + T0901317(A,B,C,D の右側のパネルに示したデータ)を用いて感染させる。感染開始後6日目に、内因性AP活性を測定する。
図20から、NR5A2、NR1H3 + T0901317及びESRRGが、テストした全ての4つのMPC分離株において、似た範囲でAP活性を誘導することは明らかである。
【0104】
(実施例13):卵巣切除動物モデルにおける骨粗鬆症の治療用LXRアゴニストの解析
潜在的骨粗鬆症の薬物治療法の解析用の素晴らしい標準動物モデルは、卵巣切除モデルである。卵巣切除(OVX)は、骨粗鬆症の重要な原因因子であるエストロゲン産生の減少をもたらす。本実施例は、動物モデルとしてラットを使用するが、マウス又は霊長類などの他の動物モデルも、当業者に日常的に使用される。
【0105】
適宜、食物と水を得ることができる、温度(20±1℃)及び光(12時間の明暗サイクル)の不変条件下で、3月齢のメスのルイスラットを飼育する。ラットを偽手術する、又はケタミン及びキシラジンで麻酔した後に、両側の卵巣切除を実行した。子宮角の結紮の後に、卵巣を摘出する。
以下のグループを編成する:偽手術コントロールラット(N = 10)、生理食塩水のみを与える卵巣切除ラット(OVX、N = 12)、17β−エストラジオール(Sigma Chemical社、St. Louis、MO、USA)を、体重1kg当たり30μgの濃度になるようにオリーブオイルで調節した体積を少量のエタノールに溶かし、6週間毎日皮下的に投与した与える卵巣切除ラット(OVX-E、N = 11)、LXRアゴニストを、適切な媒体(例えば、水及びレシチン)に懸濁し、体重1kg当たり0.1〜100mgの用量で6週間毎日、経口で投与する卵巣切除ラット(OVX-A、N =8)。全てのラットを、6週間後に使用する。使用前の2日目、3日目及び28日目に、骨の標識用に20mg/kgの用量で筋肉内的に投与したキシテトラサイクリン(xytetracycline)(テラマイシン、Pfizer社)をラットに与える。石灰化した骨の組織学及び組織形態計測用に、大腿骨を得る。小動物での骨塩密度(BMD)の測定に適応する二重エネルギーX線吸収(例えば、CTI Concord Microsystems社からの装置、Knoxville TN)によって、BMDを測定する。大腿遠位の走査を実施する。約220gの重量の1匹のラットで、毎回、2つの異なる部位でラットを再配置して、5回のBMD測定の変動係数(CV=100×SD/平均)を測定することによって、インビボの再現性を評価する。大腿遠位において、変動は1.4%である。さらに、歯槽骨構造を評価する。全ての変数を、すなわち基線で、6週間後に2回測定する。
【0106】
右の大腿遠位を70%エタノールで固定し、脱水し、メチルメタクリル樹脂に包埋し、Policut S microtome(Reichert-Jung社、Heidelberg、Germany)を使用して、縦方向に薄切する。各検体の中心から、5μm及び10μmの切片を得る。5μmの切片を0.1%トルイジンブルー pH6.4で染色し、各サンプルの少なくとも2つの非連続切片を調査する。骨形成及び骨吸収の静的パラメータ並びに構造パラメータを、二次海綿質骨における成長板より下の標準化した部位で測定する。
【0107】
代謝ケージ中で尿を採取する。尿のデオキシピリジノリンを、第三者的診断研究機関を介して、ELISA及びクレアチニンによって測定する。オステオカルシン、骨シアロタンパク質、BMP(骨形態計測タンパク質)及び異化マーカーであるカルボキシ末端テロペプチドを含む他の血漿マーカーを、ELISAで評価する。
エーテル麻酔をしている間に、放血によってラットを犠牲にする。盲検法で全ての動物データを得る。データを、平均±標準偏差(SD)として報告する。対のスチューデントのt−検定を使用して、同じ群内の基線で、6週間後に値を解析する。ANOVAに続いて、ニューマン−クールズ事後検査を使用し、異なる群を比較する。組織形態計測的変数と非侵襲性骨質量測定との間の直線回帰を計算し、ピアソン検定を適用する。統計的有意性を、0.05より低いP値に設定する。
【0108】
(実施例13):卵巣切除動物モデルにおける骨粗鬆症の治療用標的アゴニストの解析
潜在的骨粗鬆症の薬物治療法の解析用の素晴らしい標準動物モデルは、卵巣切除モデルである。卵巣切除(OVX)は、骨粗鬆症の重要な原因因子であるエストロゲン産生の減少をもたらす。以下の実施例は、動物モデルとしてラットに関連するが、マウス又は霊長類などの他の動物モデルも、当業者によって行われるように規定通りに使用する。
【0109】
適宜、食物と水を得ることができる、温度(20±1℃)及び光(12時間の明暗サイクル)の不変条件下で、3月齢のメスのルイスラットを飼育する。ラットを偽手術する、又はケタミン及びキシラジンで麻酔した後に、両側の卵巣切除を実行した。子宮角の結紮の後に、卵巣を摘出する。
以下のグループを編成する:偽手術コントロールラット(N = 10)、生理食塩水のみを与える卵巣切除ラット(OVX、N = 12)、17β−エストラジオール(Sigma Chemical社、St. Louis、MO、USA)を、体重1kg当たり30μgの濃度になるようにオリーブオイルで調節した体積を少量のエタノールに溶かし、6週間毎日皮下的に投与した与える卵巣切除ラット(OVX-E、N = 11)、本出願の標的アゴニストを、適切な媒体(例えば、水及びレシチン)に懸濁し、体重1kg当たり0.1〜100mgの用量で6週間毎日、経口で投与する卵巣切除ラット(OVX-A、N =8)。全てのラットを、6週間後に使用する。使用前の2日目、3日目及び28日目に、骨の標識用に20mg/kgの用量で筋肉内的に投与したキシテトラサイクリン(xytetracycline)(テラマイシン、Pfizer社)をラットに与える。それから、石灰化した骨の組織学及び組織形態計測用に、大腿骨を得る。小動物での骨塩密度(BMD)の測定に適応する二重エネルギーX線吸収(例えば、CTI Concord Microsystems社からの装置、Knoxville TN)によって、BMDを測定する。大腿遠位の走査を実施する。220gの重量の1匹のラットで、毎回、2つの異なる部位でラットを再配置し、5回のBMD測定の変動係数(CV=100×SD/平均)を測定することによって、インビボの再現性を評価する。大腿遠位において、変動は1.4%である。さらに、歯槽骨構造を評価する。全ての変数を、すなわち基線で、6週間後に2回測定する。
【0110】
右の大腿遠位を70%エタノールで固定し、脱水し、メチルメタクリル樹脂に包埋し、Policut S microtome(Reichert-Jung社、Heidelberg、Germany)を使用して、縦方向に薄切する。各検体の中心から、5μm及び10μmの切片を得る。5μmの切片を0.1%トルイジンブルー pH6.4で染色し、各サンプルの少なくとも2つの非連続切片を調査する。骨形成及び骨吸収の静的パラメータ並びに構造パラメータを、二次海綿質骨における成長板より下の標準化した部位で測定した。
【0111】
代謝ケージ中で尿を採取する。尿のデオキシピリジノリンを、第三者的診断研究機関を介して、ELISA及びクレアチニンによって測定する。オステオカルシン、骨シアロタンパク質、BMP(骨形態計測タンパク質)及び異化マーカーであるカルボキシ末端テロペプチドを含む他の血漿マーカーを、ELISAで評価する。
その後、エーテル麻酔をしている間に、放血によってラットを犠牲にする。盲検法で全ての動物データを得る。データを、平均±標準偏差(SD)として報告する。対のスチューデントのt−検定を使用して、同じ群内の基線で、6週間後に値を解析する。ANOVAに続いて、ニューマン−クールズ事後検査を使用し、異なる群を比較する。組織形態計測的変数と非侵襲性骨質量測定との間の直線回帰を計算し、ピアソン検定を適用する。統計的有意性を、0.05より低いP値に設定する。
【0112】
(参考文献)
Cortez-Retamozoらの論文(2004). Cancer Res 64: 2853-7
Lipinsky、CAらの論文、(2001). Adv Drug Deliv Rev 46: 3-26
Nakashima K及びde Crombrugghe Bの論文、(2003). Trends Genet 19(8): 458-66
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】膜内骨化及び軟骨内骨化。
【図2】骨芽細胞分化アッセイの原理。
【図3】APアッセイにおけるノックインコントロールプレートの成績。
【図4】1つのフレックスセレクトスクリーニングプレート(FLeXeSelect screening plate)での生データのドットプロット表示。
【図5】選別した化合物による、AP活性の用量依存的上方調節。
【図6】BAP−mRNAの上方調節対PLAP−mRNA又はIAP−mRNAの上方調節の解析。
【図7】初代ヒトMPCの石灰化。
【図8】初代ヒトMPCの石灰化。
【図9】Ad-NR1H3の存在下における、LXRアゴニストGW3965によるAP活性の用量依存的上方調節。
【図10】Ad-NR1H2の存在下における、LXRアゴニストT0901317によるAP活性の用量依存的上方調節。
【図11】Ad-NR1H2の存在下における、LXRアゴニストGW3965によるAP活性の用量依存的上方調節。
【図12】本出願において使用したアセチルポドカルピック二量体(APD)の構造。
【図13】Ad-NR1H2又はAd-NR1H3の存在下における、LXRアゴニストAPDによるAP活性の用量依存的上方調節。
【図14A−14D】骨形成に関連する細胞型のベータアクチンに比較した、本発明の遺伝子のCt値及び相対的発現レベル。
【図15】NR5A2及びNR1H3+T0901317は、骨形成マーカーのmRNAレベルを上方調節する。
【図16】骨形成誘発による、NR5A2 mRNA及びNR1H3 mRNAレベルの上方調節。
【図17】ポジティブコントロールAd-BMP2及びAd-BMP7によって誘導される、頭蓋冠頭蓋骨外植片の重量増加。
【図18】T0901317によって誘導される、頭蓋冠頭蓋骨外植片の重量増加。
【図19】DN-RUNX2は、NR5A2、NR1H3 + T0901317及びESRRGによるAP活性の誘導に干渉する。
【図20】NR5A2、NR1H3 + T0901317及びESRRGは、MPC単離物とは無関係にAP活性を誘導する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨芽細胞前駆細胞を含む脊椎動物細胞集団における骨形成を促進させる方法であって、骨芽細胞前駆細胞を、効果的な骨形成刺激量のLXRアゴニストと接触させることを含む、前記方法。
【請求項2】
骨ホメオスタシスのアンバランスの治療又は予防方法であって、効果的な骨形成刺激量のLXRアゴニストを、前記アンバランスに苦しむ又は感受性である対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項3】
前記骨ホメオスタシスのアンバランスが、前記対象の骨組織中での、破骨細胞に対する骨芽細胞の割合の減少によって特徴付けられる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記LXRアゴニストが、前記対象の骨髄内で、間葉幹細胞から骨芽細胞への分化を促進し、それによって、破骨細胞に対する骨芽細胞の割合が増加する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、(悪性の)低カルシウム血症、パジェット病、関節リウマチ、歯周病、骨格転移の間に起こる局所性骨形成、クロウゾン症候群、くる病、成熟遅延骨異形成症、濃化異骨症/トゥールーズ−ロートレック病、骨形成不全症、又は骨粗鬆症に感受性である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記治療が、骨粗鬆症に苦しむ対象への投与を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記LXRアゴニストが、ジアリールアルキルアミノアルコキシ2−フェニル酢酸の誘導体、そのプロドラッグ、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記LXRアゴニストが、2−(3−(3−(N−(2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジル)−N−(2,2−ジフェニルエチル)アミノ)プロポキシ)フェニル)酢酸、そのプロドラッグ、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記LXRアゴニストが、N−(メチル)−N−[4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]−ベンゼンスルホンアミド、そのプロドラッグ、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記LXRアゴニストが、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−N−[4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]−ベンゼンスルホンアミド、そのプロドラッグ、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
約0.01mg〜約10mgの前記LXRアゴニストを、1日あたり1回〜3回投与する、請求項4記載の方法。
【請求項12】
約5mg〜約1000mgの前記LXRアゴニストを、1日あたり1回〜3回投与する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記LXRアゴニストを、経口的に、経皮的に、吸入を介して、注入、経鼻的に、直腸的に又は徐放性製剤を介して投与する、請求項4記載の方法。
【請求項14】
LXRアゴニストを、正常な骨ホメオスタシスを回復するのに十分な期間、前記患者に投与し、その後、そのようなホメオスタシスを維持する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記LXRアゴニストを、骨粗鬆症の進行に感受性な患者に投与し、骨粗鬆症の発症を阻止する、請求項13記載の方法。
【請求項16】
医薬として許容し得るキャリアーとの混合物中に、効果的な骨形成刺激量のLXRアゴニストを含む、骨ホメオスタシス促進組成物。
【請求項17】
前記LXRアゴニストが、2−(3−(3−(N−(2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジル)−N−(2,2−ジフェニルエチル)アミノ)プロポキシ)フェニル)酢酸、そのプロドラッグ、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記LXRアゴニストが、N−(メチル)−N−[4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]−ベンゼンスルホンアミド、そのプロドラッグ、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記LXRアゴニストが、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−N−[4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]−ベンゼンスルホンアミド、そのプロドラッグ、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物である、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記LXRアゴニストが、アセチルポドカルピック二量体、そのプロドラッグ、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物である、請求項16記載の方法。
【請求項21】
骨組織のインビトロ産生を含み、基質上に骨芽細胞前駆細胞を適用すること、骨組織のマトリクス産生を刺激するのに十分な時間、前記細胞を効果的な骨形成刺激量のLXRアゴニストと接触させることを含む、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−503547(P2008−503547A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517304(P2007−517304)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052971
【国際公開番号】WO2006/000577
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(504064364)ガラパゴス・ナムローゼ・フェンノートシャップ (27)
【氏名又は名称原語表記】Galapagos N.V.
【Fターム(参考)】