説明

骨振動装置

【課題】小型の完全埋込型骨振動装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る骨振動装置は、励磁信号の強弱に応じた振動を骨に伝える骨振動装置100であって、U字形状の第1ヨーク252と、第1ヨーク252に巻き付けられたコイル250とを備え、前記励磁信号によって磁場を生成する励磁装置200と、励磁装置200が生成する磁場を受けることで磁場の強弱に応じて伸縮する延性磁歪材料からなる振動子310を備える振動装置300とを備えており、振動装置300は、コイルを備えず、体内で骨に対して固定され、励磁装置200は、体外で、振動装置300と対向する位置に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨振動装置に関し、特に、磁歪材料を用いた骨振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
聴覚障害者及び、建設現場等の騒音の激しい場所で働く作業者が音を聞くための装置として、従来、骨導補聴器が知られている。
【0003】
図9は骨導補聴器930の使用状態を示すイメージ図である。
図9に示されるように、骨導補聴器930は、頭骨910に対して直接振動を与えることにより、聴神経に音を伝える。これにより、例えば外耳道911が塞がっている伝音性難聴や、騒音源の付近など、空気を媒介して伝えられる振動を鼓膜912で感じることが困難な場合であっても、音を聞き取ることが可能となる。
【0004】
しかし、図9に示されるような接触型の骨導補聴器930では、マイクで集音した音に応じて振動する振動子を頭部(例えばこめかみ辺り)の皮膚に押し当てることにより、音の振動を、皮膚を介して頭骨910に伝えるため、エネルギーロスが生じやすく、音量や音質が劣化するという問題がある。
【0005】
また、装着位置によって聞こえ方が変化するため違和感を生じることや、振動子を押し当てることによる不快感等の課題も知られている。
【0006】
これらの課題を解決する手段として、BAHA(Bone-anchored hearing aid)と呼ばれる埋込型骨導補聴器が知られている。
【0007】
図10は、埋込型骨導補聴器940の使用状態を示すイメージ図である。
図10に示されるように、埋込型骨導補聴器940は、頭骨910に打ち込まれ、体外に露出しているボルト942に対して、直接振動を伝える。よって、エネルギーロスが少なく、また皮膚に押し当てる必要が無いため快適な装着感が得られるという利点がある。
【0008】
しかし、埋込型骨導補聴器940では、ボルト942が体外に露出しているため、見た目の違和感があり、使用に不便であるという課題がある。
【0009】
これらの課題の解決を試みるものとして、完全埋込型の骨導型補聴器に関する発明が開示されている(特許文献1を参照)。
【0010】
図11は、特許文献1で開示されている完全埋込型の骨導型補聴器の構成図である。
この発明に係る骨導型補聴器は、図11に示されるように、体外ユニットと体内ユニットの2つに分かれており、体内ユニットは体内(頭部)に完全に埋め込まれる。埋め込まれた体内ユニットに対し、体外ユニットは、磁場により音声信号を送る。一方、体内ユニットは、磁場の変化により伸縮する素材である超磁歪素子を振動子として備えており、受信した磁場に応じて骨を振動させることで、音を伝える。
【0011】
このように、ボルト942を露出させることなく、骨を直接振動させる骨導型補聴器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−75394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に示される発明では、体内ユニットの小型化に限界があり、体内に埋め込む際にユーザの負担が大きいという課題がある。
【0014】
体内ユニットを小さくできない理由として次の2点が挙げられる。
1点目の理由として、振動子として用いられている超磁歪素子は、Tb−Dy−Fe系合金が知られているが、これは脆性材料である。よって、引っ張り力を加えた場合、弾性変形の後に、ほとんど塑性変形を起こさずに材料が破断してしまうという性質を有する。
【0015】
その結果、体内で割れやすいという課題が生じる。
そのため、図11に示される加振部3Bのように、振動子をハウジングで囲うとともに、ハウジングにより上下から圧縮力をかけることにより、欠け・割れが生じにくくする等の工夫が必要となっている。こうした、振動子の割れを防止するための部品で、体内ユニットが大型化してしまう。
【0016】
さらに、2点目の理由として、超磁歪素子は透磁率が低いため、体外ユニットから送信される磁場により直接、振動子を振動させることができない。
【0017】
そのため、図11に示されるように、体内ユニット3は、振動子34を振動させるための磁場を生成するために、体外ユニット2から送信された磁場を、一旦、体内受信コイル32や磁気ヨーク42で受信する。ここで体外ユニット2から送信される磁場の変化が起電力に変換された後、この起電力によって振動駆動コイル35に電流が流れる。その結果発生する磁場を用いて、振動子34を振動させている。
【0018】
このように、体外ユニットからの磁場を、超磁歪素子を振動させるに足るまで増幅するための仕組みが体内ユニットに必要となる点も、体内ユニットが大型化する理由である。
【0019】
しかしながら、こうした理由で大型化する体内ユニットを、頭部に埋め込むことは、ユーザの負担が大きく、実用化の際に課題となる。
【0020】
そこで本発明は、体内に埋め込む際の負担が軽い、小型の完全埋込型骨振動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のある局面に係る骨振動装置は、励磁信号の強弱に応じた振動を骨に伝える骨振動装置であって、U字形状の第1ヨークと、前記第1ヨークに巻き付けられたコイルとを備え、前記励磁信号によって磁場を生成する励磁装置と、前記励磁装置が生成する磁場を受けることで前記磁場の強弱に応じて伸縮する延性磁歪材料からなる振動子を備える振動装置とを備えており、前記振動装置は、コイルを備えず、体内で前記骨に対して固定され、前記励磁装置は、体外で、前記振動装置と対向する位置に装着される。
【0022】
従来は、体外装置から頭皮越しに送られる磁場を振動子の周囲で増幅するためのコイル(磁場を受けて誘導起電力を発生させるためのコイルと、誘導起電力により電流を流すことで振動子の周囲に再度磁場を発生させるコイル)が体内の振動装置に必要であった。
【0023】
しかし、上記実施の形態に係る構成によると、振動子の材料として延性の磁歪材料を使用することで、振動子の形状を細長い柱状に加工することができる。その結果、振動子の反磁界係数を減少させ、さらに、高周波における渦電流損失を低減化させる。よって、振動子を振動させるのに必要な磁場の強度をより小さくすることが可能となる。その結果、体内の振動装置にコイルが不要となる。
【0024】
また、延性材料は割れにくいため、従来の振動装置では必要であった、振動子を保護するためのハウジング類も不要となる。その結果、振動装置をさらに小型化できる。
【0025】
よって、振動装置を体内に埋め込む利用者の負担を軽減することができる。
具体的には、前記磁歪材料は、鉄ガリウム合金又は鉄コバルト合金である。
【0026】
これらの合金は、延性の磁歪材料として利用でき、従来の鉄と希土類の合金による超磁歪材料と比較し、高い透磁率と延性を有する。
【0027】
また、前記振動子は柱状形状を有し、前記振動装置は、さらに、前記振動子の長手方向の両端にそれぞれ第2ヨークを備える。
【0028】
両端のヨークにより、体外から送られる磁場が無駄なく振動子を貫通するように、磁力線の流れを整えることが可能となる。
【0029】
また、前記振動装置は、前記振動子が前記骨の固定面に対して水平となるように固定され、前記第2ヨークは、L字状であり、L字の一辺が、前記振動子の長手方向の側面のうち前記骨と相対さない側の側面から前記振動子の長手方向へ張り出し、L字の他の一辺が前記振動子の各々の端部に機械的及び磁気的に連結されている。
【0030】
このように、励磁装置と向き合う、振動装置のヨークの端の面積を大きくすることにより、励磁装置と振動装置の間で磁場を送受信する際の磁気抵抗を減らすことができる。その結果、励磁装置が送信する磁場の出力を抑えることができ、例えば、励磁信号を生成する信号生成装置の節電に効果がある。
【0031】
また、前記振動子は、ボルトで前記骨に直接固定されるための1以上の貫通孔を有する。
【0032】
この構成によると、振動装置がさらに小型化され、体内に埋め込む際の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上より、本発明は、小型の完全埋込型骨振動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる骨振動装置の使用状態を示す概念図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態にかかる励磁装置及び振動装置の構成の概要を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態にかかる骨振動装置の使用時において、励磁装置と振動装置の間で形成される磁力線の流れを示す概念図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態にかかる励磁装置が備える磁場発生部の形状の一例を示す外観図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態にかかる振動装置の形状の一例を示す外観図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態にかかる励磁装置及び振動装置の機能ブロックを示すブロック図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態にかかる骨振動装置の変形例の外観を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態にかかる骨振動装置の別の変形例の外観を示す図である。
【図9】図9は骨導補聴器の使用状態を示すイメージ図である。
【図10】図10は、埋込型骨導補聴器の使用状態を示す概念図である。
【図11】図11は、特許文献1で開示されている完全埋込型の骨導型補聴器の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る骨振動装置の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
図1は、本発明の実施の形態にかかる骨振動装置100の使用状態を示す概念図である。
【0037】
図1に示されるように、骨振動装置100は、励磁装置200と、振動装置300とを備える。
【0038】
励磁装置200は、例えば図1に示されるように耳かけタイプであり、簡単に脱着が可能である。励磁装置200は、マイクロホン等で集音した音を、磁界の強弱に変換し、頭皮916を隔てて相対する振動装置300へ送信する。
【0039】
振動装置300は、体内に埋め込まれて使用される小型の装置である。振動装置300は、こめかみ付近の頭骨910に対してボルトで固定されており、励磁装置200から送信される磁場の強弱におうじて振動を発生する。その振動が頭骨910を介して聴神経915に届くことで、利用者は音を聞くことができる。
【0040】
図2は、本発明の実施の形態にかかる励磁装置200及び振動装置300の構成の概要を示す図である。
【0041】
図2に示されるように、励磁装置200は、磁場発生部228を備える。
磁場発生部228は、例えば、マイクロホン等で集音され、変調回路によって電気信号に変換された音の信号である励磁信号150を取得する。
【0042】
磁場発生部228が励磁信号150を取得する方法には、導電線や光ファイバー等の有線伝送路の他、各種の無線LAN、赤外線通信、Bluetooth等の無線伝送路を使用しても良い。
【0043】
磁場発生部228は、励磁信号150を取得すると、その信号の強さに応じて(すなわち、励磁信号150が強ければ強く、励磁信号150が弱ければ弱い)磁場を発生させる。
【0044】
具体的には、磁場発生部228は、コイル250と、ヨーク252とを備えている。
ヨーク252は、例えばU字型をした角柱状の磁性材料である。ヨーク252には角柱の外周にそってコイル250が巻き付けられている。よって、このコイル250に励磁信号150が導通されることにより、コイルが巻かれる面を垂直に貫く向きに磁界が発生する。
【0045】
その結果、コイルのヨークの一端から他端へ向かい、ヨークの中心部を通る磁場が生じる。この磁場の強さは、コイル250を流れる電流の大きさに比例するため、マイクロホンにより取得された音の信号が、磁場の強弱へと変換される。
【0046】
一方、振動装置300は、振動子310と、ヨーク312と、ボルト302とを備える。
【0047】
振動子310は、例えば鉄ガリウム合金等の、延性を有する磁歪材料からなる。振動子310の形状は、例えば1mm×1mm×10mmの直方体の棒状である。
【0048】
磁歪材料は、磁場を受けると、0.03%程度、長さが伸び、磁場が消えると元の長さに戻るという性質を有する材料である。
【0049】
超磁歪材料と言った場合、従来一般に利用されてきたものは、鉄と希土類の合金(Tb−Dy−Fe系合金)であるが、前述のとおり、この材料の性質として、(1)脆性材料であるため割れやすく、(2)透磁率が低いため振動させるには強い磁場が必要になる、という欠点があった。
【0050】
一方、鉄ガリウム合金(Galfenol)、鉄コバルト合金、鉄アルミニウム合金等、鉄と希土類以外の合金も、磁歪性を有する。これら希土類以外の合金では、延性材料としての性質を有するため、(1)割れにくく加工が容易であり、(2)鉄と希土類の合金よりも透磁率が高い、という利点がある。
【0051】
本発明は、後述するように、この延性の磁歪材料が有する以上の特徴に注目することで、体内へ埋め込む振動装置の構造をシンプルにした結果、装置の小型化を実現し、ユーザの負担を減少させるものである。
【0052】
ヨーク312は、図2に示されるように、棒状の振動子310の両端に物理的・磁気的に接合されており、励磁装置200から頭皮916を隔てて送信される磁場を、振動子310へ効率よく通すための磁性材料である。
【0053】
振動装置300は、ヨーク312の端部255を貫通するボルトで頭骨910に固定されるため、ヨーク312と振動子310とは、例えば溶接等で物理的に強固に接合されている必要がある。
【0054】
なお、振動装置300は、必ずしも端部255で固定される必要はない。振動子310に直接貫通孔を設け、ここにボルトを通すことで、振動装置300を頭骨910に固定してもよい。
【0055】
また、図2に示されるように、ヨーク312の端部のうち、励磁装置200に向き合う側(頭骨910とは反対側)の面積が、他の端部と比較して大きく形成された構造となっている。これにより、励磁装置200から送信される磁気を受ける際の磁気抵抗を減少させつつ、(ヨーク312の太さを一律に太いものとする場合と比較し)ヨーク312の軽量化を図ることができる。
【0056】
なお、励磁装置200においても、振動装置300の端部255と相対する位置にある
ヨーク252の端部254の面積を大きくすることにより、送信時の磁気抵抗を減少させつつ、ヨーク252の軽量化を図ることができる。
【0057】
ボルト302は、振動装置300を頭骨910に固定するための固定具であり、例えばチタンを材料としたチタンボルト等を使用することが考えられる。
【0058】
図3は、本発明の実施の形態にかかる骨振動装置100使用時において、励磁装置200と振動装置300の間で形成される磁力線の流れを示す概念図である。
【0059】
励磁装置200のコイル250で生成された磁場は、ヨーク252の端部254の一方から、頭皮916を挟んで向かい合うヨーク312の端部255へ送信される。頭皮916の厚さは、おおよそ2mm程度である。
【0060】
励磁装置200から送られた磁場は、さらに、振動子310を縦方向(長手方向)に貫くように流れ、磁場を受けたヨーク312とは反対側のヨーク312の端部255より、頭皮916を挟んで向かい合う端部254から励磁装置200へ戻る。
【0061】
振動子310は、縦方向の磁場の強弱に応じて、縦方向に伸縮する。振動子310はボルト302で頭骨910へ固定されているため、この振動子310の伸縮が、頭骨910を振動させる。
【0062】
その結果、励磁信号150として励磁装置200に入力された音が、頭骨910を介した振動として、聴神経915へ届けられる。
【0063】
図4は、本発明の実施の形態にかかる励磁装置200が備える磁場発生部228の形状の一例を示す外観図である。
【0064】
ここで、コイル250は、例えば銅線からなり、巻数は250巻である。コイル250の巻数により、磁場発生部228が発生する磁場の強さを調整することが可能である。
【0065】
また、磁場発生部228の大きさは、こめかみ周辺にベルトで固定したり、耳にかけたりし装着することに負担がない程度の縦横数センチ以内であり、重さも数グラム程度である。
【0066】
図5は、本発明の実施の形態にかかる振動装置300の形状の一例を示す外観図である。
【0067】
本願発明の特徴として、図5に示されるように、振動装置300が、誘導起電力を発生させるためのコイル及び、振動子310の割れを防ぐためのハウジングを備えていないことが挙げられる。
【0068】
前述のように、従来、一般に超磁歪材料として使用されてきた鉄と希土類の合金は、透磁率が低いため、頭皮916を挟んで体外で生成された磁場で、体内に埋め込まれた振動子を十分に振動させることができない。よって、(1)体内に埋め込む振動装置側に受信コイルを設け、体外から送られる磁場によって受信コイルに誘導起電力を生じさせ、(2)この誘導起電力を用いて振動子に巻き付けた駆動コイルに電流を流し、(3)この円電流により振動子の中心を貫く磁界を生成させる、という手段で、振動子を振動させざるを得ない。
【0069】
しかし、透磁率がより高い鉄コバルト合金等の延性の磁歪材料を振動子310に用いることにより、頭皮916を挟んで体外の励磁装置200により生成された磁場で、直接、体内に埋め込まれた振動子を振動させることが可能となる。
【0070】
さらに、延性の磁歪材料が有する、割れにくいという性質により、振動子を防護するハウジング類が不要となる。その結果、振動装置300の最小限の構成として、振動子310のみで骨振動装置100を構成することができる。
【0071】
すなわち、振動装置300は必ずしもヨーク312を備える必要はない。励磁装置200から送信される磁場を、ヨーク312と接合されていない振動子310で直接受けることでも、ヨーク312を備える場合と同様の効果を奏することができる。
【0072】
その場合、ヨーク312を備えない分、より小型・軽量化が可能となるという利点が生じる。一方、ヨーク312により振動子310に導かれる磁場を強化できない分、励磁装置200から送信される磁場の強さを強くする必要が生じるという欠点が生じる。
【0073】
なお、図5では、ヨーク312に、振動子310を頭骨910に固定するためのボルトを通す孔が開けられているが、振動子310に少なくとも1個の孔を開け、その孔に通したボルト302を用いて、振動子310を直接頭骨910に固定してもよい。
【0074】
図6は、本発明の実施の形態にかかる励磁装置200及び振動装置300の機能ブロックを示すブロック図である。
【0075】
図6には、励磁信号150を生成するための信号生成部400として、一般的な構成が示されている。
【0076】
信号生成部400と励磁装置200は分離型として別の筐体として実現されてもよく、一体型として実現されてもよい。前者の場合には、信号生成部400は無線又は有線で磁場発生部228へ励磁信号を送信することが考えられる。
【0077】
信号生成部400は、マイクロホン414と、搬送波発信部416と、アンプ部418と、変調回路420とを備える。
【0078】
マイクロホン414は、利用者の周囲の音をアナログ信号に変換する。次に、変調回路420において、このアナログ信号を用いて、搬送波発信部416が発信する搬送波が変調される。変調方式は、例えば振幅変調が好ましい。
【0079】
変調された搬送波は、アンプ部418において、適切なゲインで増幅された後、励磁装置200が備える磁場発生部228へ送られる。
【0080】
磁場発生部228が励磁信号150を取得して以降の励磁装置200及び振動装置300の処理は前述したため、ここでは省略する。
【0081】
以上述べたように、本発明の実施の形態に係る骨振動装置は、励磁信号の強弱に応じた振動を骨に伝える骨振動装置100であって、U字形状のヨーク252と、ヨーク252に巻き付けられたコイル250とを備え、励磁信号150によって磁場を生成する励磁装置200と、励磁装置200が生成する磁場を受けることで磁場の強弱に応じて伸縮する延性磁歪材料からなる振動子310を備える振動装置300とを備えている。振動装置300は、コイルを備えず、体内で骨に対して固定され、励磁装置200は、体外で、振動装置300と対向する位置に装着される。
【0082】
上記実施の形態に係る構成によると、振動子の材料として延性の磁歪材料を使用することで、振動子の形状を小型かつ細長にでき、その結果、反磁界係数や過電流損失が小さくなることで、振動子を振動させるのに必要な磁場の強度を小さくすることが可能となる。その結果、体内の振動装置にコイルが不要となる。
【0083】
また、延性材料は割れにくいため、従来の振動装置では必要であった、振動子を保護するためのハウジング類も不要となる。その結果、振動装置をさらに小型化できる。
【0084】
よって、振動装置を体内に埋め込む利用者の負担を軽減することができる。
ここで、磁歪材料としては、鉄ガリウム合金又は鉄コバルト合金が考えられる。
【0085】
これらの合金は、延性の磁歪材料として利用でき、従来の鉄と希土類の合金による磁歪材料と比較し、高い透磁率と延性を有する。
【0086】
また、振動子310は柱状形状を有し、振動装置300は、さらに、振動子310の長手方向の両端にそれぞれヨーク312を備える。
【0087】
この構成によると、両端のヨークにより、体外から送られる磁場が無駄なく振動子を貫通するように、磁力線の流れを整えることが可能となる。
【0088】
より詳細には、振動装置300は、振動子310が骨の固定面に対して水平となるように固定され、ヨーク312は、L字状であり、L字の一辺が、振動子310の長手方向の側面のうち骨と相対さない側の側面から振動子310の長手方向へ張り出し、L字の他の一辺が振動子310の各々の端部に機械的及び磁気的に連結されている。
【0089】
このように、励磁装置200と向き合う、振動装置300のヨークの端の面積を大きくすることにより、励磁装置200と振動装置300の間で磁場を送受信する際の磁気抵抗を減らすことができる。その結果、励磁装置200が送信する磁場の出力を抑えることができ、例えば、励磁信号150を生成する信号生成装置の節電に効果がある。
【0090】
以上、本発明の実施の形態に係る骨振動装置について述べた。
次に、本発明の実施の形態の変形例に係る骨振動装置について述べる。
【0091】
(変形例1)
図7は、本発明の実施の形態にかかる骨振動装置100の変形例の外観を示す図である。
【0092】
図7に示される変形例1に係る骨振動装置100と、実施の形態に係る骨振動装置100との違いは、振動装置300がヨークを備えていない点である。なお、変形例1において、実施の形態1と同一の構成要素については、同一の符号をつけ、詳細な説明を省略する。
【0093】
振動子310には2つの貫通孔が開けられ、ボルト302で直接、頭骨910へねじ止めされる。
【0094】
この場合、励磁装置200が備えるヨークの一端から送信された磁場は、振動子310の一方の端から他方の端まで振動子310を貫通し、その後、励磁装置200が備えるヨークの他の一端を通って一周するような磁力線の経路を有する。
【0095】
このように、本変形例に係る振動装置300が備える振動子310は、ボルトで骨に直接固定されるための1以上の貫通孔を有する。
【0096】
この構成によると、振動装置300がさらに小型化され、体内に埋め込む際の負担を軽減することができる。
【0097】
(変形例2)
図8は、本発明の実施の形態にかかる骨振動装置100の別の変形例の外観を示す図である。
【0098】
図8に示される本変形例に係る骨振動装置100と、実施の形態に係る骨振動装置100との違いは、振動装置300が備える振動子310が骨に対して垂直となるように固定される点にある。
【0099】
具体的には、図8に示される振動装置300は、2本のヨーク312と、2本のヨーク312の間にヨーク312と垂直方向に接合された振動子310とを備える。
【0100】
ヨーク312は、励磁装置200との間で効率よく磁力線のループを形成できるよう、互いに異なる方向を向くように接合されている。
【0101】
また、ヨーク312には2つの貫通孔が穿かれており、振動装置300は、この孔に通したボルトで骨に固定される。なお、振動装置300を確実に固定するため、ヨーク312と振動子310は、溶接等の手段により、物理的に強固に接合される必要がある。
【0102】
この構成によると、振動子310の振動をより効率よく骨に伝えることができ、また、体内に埋め込む部位に適した形状の振動装置300とすることができる。
【0103】
なお、上記実施の形態に係る信号生成部400では、マイクロホン414から入力された音声信号を、変調回路420によって変調した後に、アンプ部418に出力している。しかし、必ずしも変調回路420及び搬送波発信部416は必要ではなく、マイクロホン414から出力された音声信号を、直接アンプ部418へ入力し、増幅された信号を励磁信号150として、励磁装置200へ出力してもよい。
【0104】
なお、ヨーク252、ヨーク312の形状は、上記図4,図5及び図8に示されたものに限られない。例えば、その断面が円や楕円の柱状を加工したものでもよく、一部を円柱とし一部を角柱とする形状であってもよい。
【0105】
なお、振動子310の形状は、上記実施の形態で述べたものに限られない。例えば、円柱状であってもよく、一部を円柱とし一部を角柱とする形状であってもよい。
【0106】
なお、上記実施の形態及びその変形例1又は2において、振動装置300を頭骨に固定し、補聴器として使用する利用場面を記載したが、本発明に係る骨振動装置は、必ずしも補聴器としての利用に限定されず、人体の他の箇所に固定して利用されてもよい。
【0107】
たとえば、骨折箇所をボルト止めする際に、本発明に係る骨振動装置を患部付近に固定し、リハビリ時には外部から磁場を送り骨に振動を与えることで、骨折箇所の治癒を早めること等が期待される。
【0108】
また、上記図2〜図5において、各構成要素の角部及び辺を直線的に記載しているが、製造上の理由により、角部及び辺が丸みをおびたものも本発明に含まれる。
【0109】
また、上記実施の形態に係る、骨振動装置、及びその変形例の機能のうち少なくとも一部を組み合わせてもよい。
【0110】
また、上記で用いた数字は、すべて本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。
また、構成要素間の接続関係は、本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0111】
更に、本発明の主旨を逸脱しない限り、本実施の形態に対して当業者が思いつく範囲内の変更を施した各種変形例も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、骨振動装置に適用でき、特に、磁歪材料を用いた骨振動装置に適用できる。
【符号の説明】
【0113】
100 骨振動装置
150 励磁信号
200 励磁装置
228 磁場発生部
250 コイル
252、312 ヨーク
254、255 端部
302 ボルト
310 振動子
400 信号生成部
414 マイクロホン
416 搬送波発信部
418 アンプ部
420 変調回路
910 頭骨
914 蝸牛
916 頭皮
917 耳介
915 聴神経

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁信号の強弱に応じた振動を骨に伝える骨振動装置であって、
U字形状の第1ヨークと、前記第1ヨークに巻き付けられたコイルとを備え、前記励磁信号によって磁場を生成する励磁装置と、
前記励磁装置が生成する磁場を受けることで前記磁場の強弱に応じて伸縮する延性磁歪材料からなる振動子を備える振動装置とを備えており、
前記振動装置は、コイルを備えず、体内で前記骨に対して固定され、
前記励磁装置は、体外で、前記振動装置と対向する位置に装着される
骨振動装置。
【請求項2】
前記磁歪材料は、鉄ガリウム合金である
請求項1に記載の骨振動装置。
【請求項3】
前記磁歪材料は、鉄コバルト合金である
請求項1に記載の骨振動装置。
【請求項4】
前記振動子は柱状形状を有し、
前記振動装置は、さらに、前記振動子の長手方向の両端にそれぞれ第2ヨークを備える
請求項1〜3のいずれか1項に記載の骨振動装置。
【請求項5】
前記振動装置は、前記振動子が前記骨の固定面に対して水平となるように固定され、
前記第2ヨークは、L字状であり、L字の一辺が、前記振動子の長手方向の側面のうち前記骨と相対さない側の側面から前記振動子の長手方向へ張り出し、L字の他の一辺が前記振動子の各々の端部に機械的及び磁気的に連結されている
請求項4に記載の骨振動装置。
【請求項6】
前記振動子は、ボルトで前記骨に直接固定されるための1以上の貫通孔を有する
請求項1〜5のいずれか1項に記載の骨振動装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の振動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−54430(P2012−54430A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196235(P2010−196235)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【Fターム(参考)】