説明

高い反応性および改善された安定性を有するα−アミノメチル−アルコキシシラン

本発明の対象は、一般式[2](その際、Rは、場合により置換された炭化水素基または=N−CR基、Rは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基または計2〜10個の炭素原子を有するω−オキサアルキル−アルキル基、Rは、水素または場合により置換された炭化水素基であり、かつaは、0、1、2または3の値をとってよい)の少なくとも1つの構造エレメントを有するアルコキシシラン(A)であって、ただし、一般式[2]中の窒素原子は第三級窒素原子であり、アルコキシシラン(A)は少なくとも1つのさらに他の反応性官能基(F)を有し、該基を介してそれは有機の反応相手に結合されえ、その際、式[1]のシランは除外される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノメチル官能性アルコキシシラン、およびその使用に関する。
【0002】
有機官能性アルコキシシランは、非常に種々の分野において用いられる。例えばこれは無機−有機結合系におけるカップリング剤として使用されうる。これは有機の構造エレメントおよび無機の構造エレメントもしくはシリコーンを含有する構造エレメントを有するハイブリッド材料の製造のために用いられる。さらにこれは(ナノ)粒子に有機官能基を付与するために用いられ、該有機官能基によりそれは例えば有機マトリックス中に導入されうる。加えて、非常に重要な適用は、大気(湿分)との接触に際して硬化し固体の塊状物になるプレポリマーの製造である。
【0003】
反応性アルコキシシリル基を有するこの種のプレポリマー系は久しい以前から公知でありかつ工業および建築分野における弾性シーラントおよび接着剤の製造のために幅広く用いられる。大気湿分および適切な触媒の存在においてこれらのアルコキシシラン末端プレポリマーは、すでに室温でアルコキシ基の脱離およびSi−O−Si結合の形成下で互いに縮合しうる。従って、これらのプレポリマーはとりわけ空気により硬化する一成分系として用いることができ、該系は第2の成分を計量供給しかつ混合する必要がないことから取り扱いが容易であるという利点を有する。
【0004】
アルコキシシラン末端プレポリマーのさらに他の一利点は、硬化に際して、酸と同様オキシムまたはアミンも遊離しないという事実にある。イソシアネートベースの接着剤またはシーラントの場合とは異なり、ガス状の成分としてブリスタリングをもたらしうるCOも発生しない。イソシアネートをベースとする系とは異なり、アルコキシシラン末端プレポリマー混合物は毒物学的にも懸念がない。
【0005】
アルコキシシラン基の含有量および該基の構造に従って、主としてこのプレポリマー型の硬化に際して、長鎖ポリマー(熱可塑性樹脂)、比較的メッシュ幅の広い三次元網目構造(エラストマー)または一方で高度に架橋した系(熱硬化性樹脂)が形成される。
【0006】
アルコキシシラン官能性プレポリマーは、様々な構成単位から構成されていてよい。通常これは有機骨格を有する。つまりこれは、とりわけUS6,207,766およびUS3,971,751に記載されているように、例えばポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルエステル、エチレン−オレフィンコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマーまたはポリオレフィンから構成されている。しかしその他に、US5,254,657に記載されているように、その骨格が全てまたは少なくとも部分的に有機シロキサンからなる系も広く行きわたっている。
【0007】
しかしながら、プレポリマー製造に際して最も重要なのはアルコキシシランモノマーであって、該アルコキシシランモノマーによってプレポリマーに、必要なアルコキシシラン官能基が付与される。その際、原則的に、非常に種々のシランおよびカップリング反応、例えば不飽和プレポリマーへのSi−H−官能性アルコキシシランの添加または不飽和有機シランと他の不飽和モノマーとの共重合が用いられうる。同様に、カルボニル官能基を有するアルコキシシランの求核付加反応または置換反応が考えられうる。
【0008】
他の一方法においては、OH官能性プレポリマーとイソシアネート官能性アルコキシシランとの反応によりアルコキシシラン末端プレポリマーが製造される。この種の系は、例えばUS5,068,304に記載されている。その結果生じるプレポリマーはしばしば、とりわけプラスの特性、例えば硬化した塊状物の非常に良好な機械的特性により特徴づけられる。しかしながら欠点なのは、イソシアネート官能性シランの複雑かつ費用のかかる製造ならびにこれらのシランが毒物学的に極めて懸念されるという事実である。
【0009】
この場合、しばしばより有利であるのは、ポリオールから、例えばポリエーテルポリオールからかまたはポリエステルポリオールから出発するアルコキシシラン末端プレポリマーの製造法である。これらは第一の反応工程中で過剰のジイソシアネートまたはポリイソシアネートと反応する。引き続き、その際に得られたイソシアネート末端プレポリマーは、アミノ官能性アルコキシシランと反応して所望されたアルコキシシラン末端プレポリマーとなる。この種の系は、例えばEP1256595またはEP1245601に記載されている。殊にこの系の利点は、結果生じるプレポリマーのとりわけプラスの特性にある。例えばこれらは硬化した塊状物の良好な引張強さによりたいてい特徴づけられるが、それは−少なくとも部分的に−これらのポリマー中に含有されたウレタン−および尿素単位および水素架橋結合を形成するための前記単位の能力に起因している。これらのプレポリマー系のさらに他の一利点は、出発物質として必要とされるアミノ官能性シランが容易かつ安価な方法により得られ、また毒物学的にほとんど懸念がないという事実である。
【0010】
しかしながら、大多数に公知のかつ現在用いられる系の欠点は、大気湿分の形においてのみならずまた−場合により添加された−水の形においても、湿分に対する該系の中程度にしか過ぎない反応性(maessige Reaktivitaet)である。室温でも十分な硬化速度を達成するために、それゆえ触媒の添加が絶対に必要である。殊にこれは、ふつう触媒として使用される有機スズ化合物が毒物学的に懸念されることから問題である。加えて、しばしばスズ触媒はまたさらに毒性の高い微量のトリブチルスズ誘導体も含有している。
【0011】
とりわけ問題なのは、メトキシシリル基ではなく、さらにあまり反応しないエトキシシリル基が用いられる場合に、アルコキシシリル官能性プレポリマー系の反応性が比較的低いことである。しかしながら、特にエトキシシリル官能性プレポリマーは、その硬化に際してエタノールのみが分解生成物として遊離することから、たいていの場合とりわけ有利である。
【0012】
毒性のスズ触媒による問題を回避するために、すでにスズ不含触媒が探し求められていた。この場合、考えられうるのは殊にチタン含有触媒、例えばチタンテトライソプロポキシレートまたはビス−(アセチルアセトナト)−ジイソブチルチタネートであって、これらは例えばEP885933Aに記載されている。ただし、これらのチタン触媒は、それがたいてい窒素含有化合物との組み合わせにおいて使用できないという欠点を有する。それというのも前記窒素含有化合物は、この場合、触媒毒として作用するからである。しかしながら、例えば接着剤としての窒素含有化合物の使用は、たいていの場合において回避することができない。加えて、窒素化合物、例えばアミノシランは、たいていの場合においてシラン末端プレポリマーの製造における出発物質として用いられるので、該化合物はほとんど回避することができない不純物としてまたプレポリマー自体にも含有されている。
【0013】
それゆえ、DE10142050AまたはDE10139132Aに記載されているようなアルコキシシラン末端プレポリマー系は大きい利点を表しうる。これらのプレポリマーは、メチルスペーサーによってのみ自由電子対を有する窒素原子から分離されているアルコキシシリル基を含有することにより特徴づけられる。それによりこれらのプレポリマーは(大気)湿分に対して極端に高い反応性を有するので、該プレポリマーはプレポリマーブレンドに加工することができ、これは金属含有触媒なしでもなんとかなりうるにもかかわらず室温において、部分的には極度に短い不粘着時間もしくは非常に高い速度で硬化する。これらのプレポリマーはそれゆえシリル基に対してのα位置においてアミン官能基を有するので、該プレポリマーはα−アルコキシシラン末端プレポリマーとも呼ばれる。
【0014】
これらのα−アルコキシシラン末端プレポリマーは、一般にα−アミノシラン、つまりアミノメチル官能性アルコキシシランと、イソシアネート官能性プレポリマーまたはプレポリマーのイソシアネート官能性前駆体との反応により製造される。
【0015】
α−アミノシランのための通常の例は、N−シクロヘキシルアミノメチル−トリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチル−メチルジメトキシシラン、N−エチルアミノメチル−トリメトキシシラン、N−エチルアミノメチル−メチルジメトキシシラン、N−ブチルアミノメチル−トリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチル−トリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチル−メチルジエトキシシラン等である。
【0016】
しかしながら、これらのα−アルコキシシラン官能性プレポリマー系の決定的な欠点は、その合成のために必要とされるα−アミノシランの安定性が中程度にしか過ぎないことである。例えば、殊にこれらのシランのSi−C結合は、部分的に非常に容易に開裂しうる。比較可能な安定性の問題は、従来のγ−アミノプロピル−アルコキシシランにおいて公知ではない。
【0017】
とりわけ明らかに、アルコールまたは水の存在におけるα−アミノシランのこの不安定性が示される。そうして例えば、メタノールの存在におけるアミノメチル−トリメトキシシランはわずか数時間以内に定量的に分解しテトラメトキシシランとなる。それは水と反応して、テトラヒドロキシシランもしくはこのシランの比較的高い縮合生成物となる。相応して、アミノメチル−メチルジメトキシシランはメタノールと反応してメチルトリメトキシシランとなりかつ水と反応してメチルトリヒドロキシシランもしくはこのシランの比較的高い縮合生成物となる。幾分安定性があるのは、N−置換α−アミノシラン、例えばN−シクロヘキシルアミノメチル−メチルジメメトキシシランまたはN−シクロヘキシルアミノメチル−トリメトキシシランである。それでも微量の触媒または酸ならびに塩基性不純物の存在において、これらのシランもまたわずか数時間以内にメタノールから定量的に分解しN−メチル−シクロヘキシルアミンおよびメチルトリメトキシシランもしくはテトラメトキシシランとなる。それらは水と反応して、N−メチル−シクロヘキシルアミンおよびメチルトリヒドロキシシランもしくはテトラヒドロキシシランまたはこれらのシランの高度に縮合した同族体となる。公知技術に相応する第二級窒素原子を有するたいていの他のN−置換α−アミノシランもまた同じ分解反応を示す。
【0018】
しかしメタノールまたは水の存在においても、これらのα−アミノシランは中程度にしか安定でない。例えば、殊に高められた温度でかつ触媒または触媒活性不純物の存在において同様にSi−C結合の開裂下でα−シランの分解が生じる。
【0019】
α−アミノシランの中程度に過ぎない安定性は、これらがプレポリマー合成の反応条件下においても少なくとも部分的に分解しうることから、たいていまたマイナスに強く作用する。これはプレポリマー合成を困難にするだけではなく、ふつう−部分的にはかなりの−ポリマー特性の悪化をもたらす。それというのも、その際、アミノシランによってではなく該アミノシランの分解生成物により末端化されたプレポリマーも発生するからである。
【0020】
幾分安定性があるのは、窒素原子上で電子求引性の置換基を有する、第二級窒素原子を有するα−アミノシラン、例えばN−フェニルアミノメチル−トリメトキシシランまたはO−メチル−カルバマトメチル−トリメトキシシランだけである。しかしながら、これらのシランのアミノ官能基はイソシアネート基に対しても明らかに反応性は低く、そのために該基はふつうイソシアネート官能性前駆体からのシラン末端プレポリマーの製造に適していない。例えば、前記O−メチル−カルバマトメチル−トリメトキシシランは非常に反応が緩慢なので、このシランと、脂肪族イソシアネート基を有するプレポリマーとの数時間の沸騰後も実際にはどんな反応も確認することができない。その際、ジブチルスズジラウレートのような触媒もたいした改善をもたらさない。ただN−フェニルアミノメチル−トリメトキシシランのようなN−フェニル−置換シランのみがイソシアネート官能基に対してある程度(しばしば依然として不十分ではあるけれども)の反応性を有する。しかしながら、その際、それらは反応して芳香族置換された尿素単位となり、該尿素単位は光フリース転位しえ、それゆえ極めてUV不安定である。それゆえ相応する生成物は、大部分の適用において全く適していない。
【0021】
E.Lukevics,E.P.Popova,Latv.PSR Zinat.Akad.Vestis,Kim.Ser.1978,(2),207−11に、式[1〕
【化1】

に相応するピペラジノシランが記載されている。
ただし、そこではこの化合物の分光学的および毒物学的データのみが記載されている。例えばこの刊行物中では、化合物[1]のようなα−ピペラジノメチル−アルコキシシランは、たしかにα−アミノメチル−アルコキシシランにおける典型的な高い反応性を有するが、しかし同時に、明らかに改善された安定性により特徴づけられるというどんな根拠も見つけられない。
【0022】
さらに、ピペラジノシランはなお多数のさらに他の文献部分、例えばEP0441530にも記載されている。ただし、そこではもっぱら、そのアルコキシシリル基がプロピルスペーサーによってピペラジン環から分離している従来のγ−シランのみが記載されている。これらの化合物は−全てのγ−アミノプロピルシランのように−たしかに比較的安定であるが、しかし(大気)湿分に対して通常の、非常に中程度の反応性しか有さない。
【0023】
それゆえ、一方では改善された安定性により特徴づけられ、他方ではしかし、有機系、有利には有機プレポリマーに結合されうる反応性官能基も有する、(大気)湿分に対して高い反応性を有するα−アミノメチル官能性アルコキシシランを提供する課題があった。
【0024】
本発明の対象は、一般式[2]
【化2】

[式中、
は、場合により置換された炭化水素基または=N−CR基、
は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基または計2〜10個の炭素原子を有するω−オキサアルキル−アルキル基、
は、水素または場合により置換された炭化水素基であり、かつ
aは、0、1、2または3の値をとってよい]
の少なくとも1つの構造エレメントを有するアルコキシシラン(A)であって、ただし、一般式[2]中の窒素原子は第三級窒素原子であり、かつアルコキシシラン(A)は少なくとも1つのさらに他の反応性官能基(F)を有し、該基を介してそれは有機の反応相手に結合されえ、その際、式[1]
【化3】

のシランは除外される。
【0025】
本発明は、シリル基に対してのα位置において第三級窒素原子を有するα−アミノメチルシランが、Si−C結合開裂に関連して(大気)湿分に対し完全に安定しているという発見に基づく。しかしながら、反応官能基(F)が欠けているために多くの反応において用いることができない、第三級窒素原子を有する従来のα−アミノシラン、例えばN,N−ジエチルアミノメチル−トリメトキシシラン、N,N−ジブチルアミノメチル−トリメトキシシラン、N,N−ジエチルアミノメチル−トリエトキシシラン、N,N−ジブチルアミノメチル−トリエトキシシラン等は、例えばイソシアネート官能性前駆体により処理してα−アルコキシシラン官能性プレポリマーにすることができない。
【0026】
本発明によるα−アミノシラン(A)は、シリル基に対してのα位置において第一級または第二級アミノ官能基を有する従来のα−アミノシランより明らかに安定している。そうして例えば、本発明によるシランN−(メチルジエトキシシリルメチル)−ピペラジン、N−(メチルジメトキシシリルメチル)−ピペラジンまたはN−(トリメトキシシリルメチル)−ピペラジンは、メタノール溶液(10質量%)中でも数週間にわたり安定している。
【0027】
第一級または第二級アミン官能基を有する、従来の、本発明によらないアミノメチル官能性アルコキシシランは、同じ条件下ですでに短時間後にはほとんど分解する。以下に、従来のα−アミノシランの幾つかの典型的な半減期がリストにされている:
アミノメチル−メチルジメトキシシラン:t1/2=6時間
シクロヘキシルアミノメチル−メチルジメトキシシラン:t1/2=1週間
アミノメチル−トリメトキシシラン:t1/2=19時間
シクロヘキシルアミノメチル−トリメトキシシラン:t1/2=3日
i−ブチルアミノメチル−トリメトキシシラン:t1/2=1週間
その際、α−アミノメチルシランの分解はNMR分光法により検出された。
基Rは、有利には1〜12個、殊に1〜16個のC原子を有する。該基は、有利にはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基である。基Rとして、メチル基、エチル基またはフェニル基が有利であり、とりわけ有利なのはメチル基である。基Rは、有利にはメチル基またはエチル基である。基Rは、有利には水素または、1〜6個のC原子を有する、場合により塩素−またはフッ素置換された炭化水素基であり、殊に水素である。aは、有利には0、1または2の値をとる。
【0028】
本発明の有利な一実施態様において、シラン(A)の反応性官能基(F)は、カルボキシル基またはカルボニル基、とりわけ有利にはアルデヒド基またはケト基である。
【0029】
本発明のさらに他の一実施態様において、シラン(A)の反応性官能基(F)は、NH官能基、OH官能基またはSH官能基、とりわけ有利にはNH官能基である。これらの官能基はイソシアネートに対して反応性である。
【0030】
有利なのは、一般式[3]および[4]
【化4】

[式中、
は、少なくとも1つのカルボキシル基、カルボニル基またはイソシアネートに対して反応性のOH基、SH基またはNHR基を有する、場合により置換されたアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基、その際、アルキル鎖は場合により酸素、カルボニル基、硫黄またはNR基により中断されていてよい、
は、場合により置換されたアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基、その際、アルキル鎖は場合により酸素、カルボニル基、硫黄またはNR基により中断されていてよい、または基R
は、アルキル鎖中でカルボニル基またはイソシアネートに対して反応性のNH官能基またはNR官能基を有するかまたはイソシアネートに対して反応性の少なくとも1つのOH基、SH基またはNHR基により置換されている、二官能性の、場合により置換されたアルキル基またはアリールアルキル基、その際、アルキル鎖は場合により酸素、硫黄、NR基またはカルボニル基により中断されていてよい、
は、水素または場合により置換されたアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基であり、
かつR、Rおよびaは、一般式[2]において記載された意味を有する]
のアルコキシシラン(A)である。
【0031】
アルキル基Rは、分枝鎖状、非分枝鎖状または環状であってよい。OH官能基またはモノアルキルアミノ基を有する、2〜10個の炭素原子を有するアルキル基が有利であり、その際、モノアルキルアミノ基がとりわけ有利である。アルキル基Rは、分枝鎖状または非分枝鎖状であってよい。基Rとして、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基が有利である。アルキル基またはアリールアルキル基Rは、分枝鎖状または非分枝鎖状であってよい。アルキル基Rとして、アルキル鎖中でカルボニル官能基またはNH官能基を有する、2〜10個の炭素原子を有する二官能性アルキル基が有利である。アルキル基またはアリールアルキル基Rは、分枝鎖状または非分枝鎖状であってよい。基Rとして、1〜6個の炭素原子を有する水素およびアルキル基が有利である。
【0032】
有利なのはまた、一般式[5]
【化5】

[式中、
は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、有利にはメチル基またはエチル基、および
は、2〜10個、有利には2〜6個の炭素原子を有する二官能性アルキル基を意味し、
かつR、Rおよびaは、一般式[2]において記載された意味を有する]
のアルコキシシラン(A)である。
【0033】
有利なのはまた、一般式[6]および[7]
【化6】

[式中、
、Rおよびaは、一般式[2]において記載された意味を有する]
のアルコキシシラン(A)である。
【0034】
有利なのはまた、一般式[8]
【化7】

[式中、
xおよびyは、そのつど0〜4の整数を意味しかつ
、Rおよびaは、一般式[2]において記載された意味を有する]
のアルコキシシラン(A)である。
【0035】
有利には、シラン(A)は相応するα−ハロゲンメチルアルコキシシラン、とりわけ有利にはα−クロロメチルアルコキシシランと、第二級アミンとの反応により製造される。その際、α−クロロシランの塩素原子はそのつどの第二級アミンにより置換される。これは触媒を用いても用いなくても行われうるが、有利には反応はしかし触媒を用いずに実施される。反応は、物質中でも溶媒中でも実施されうる。その際、アミンを同時に酸捕捉剤として、求核置換反応に際して遊離したハロゲン化水素のために用いてよい。しかしながら、この場合、他の酸捕捉剤も添加してよい。シラン製造の有利な一変法では、シランが過剰に使用される。
【0036】
一般式[5]の有利に使用されるアルコキシシラン(A)は、その際、とりわけ有利な一方法において、一般式[9]
【化8】

[式中、RおよびRは、一般式[5]において記載された意味を有する]
のジアミンを、相応するα−ハロゲンメチルシランと反応させることにより製造されうる。
【0037】
一般式[8]のとりわけ有利なシランの製造のために、一般式[10]
【化9】

[式中、xおよびyは、一般式[8]において記載された意味を有する]
の化合物が使用されるのに対して、一般式[6]または[7]のとりわけ有利なシランの製造のために、相応する反応においてピペラジンからもしくはテトラヒドロイミダゾールから出発してよい。
【0038】
一般式[2]〜[8]のシランの以下の使用は、式[1]のシランを用いてかまたは式[1]のシランを用いずに行ってもよい。
【0039】
有利には、一般式[2]〜[8]のシランは、シラン官能性プレポリマー(P)の合成のために使用される。その際、有利にはプレポリマー(P)は、一般式[2]〜[8]のシランを
a)イソシアネート末端プレポリマー(P1)と反応させるか、または
b)NCO基を含有するプレポリマー(P)の前駆物質と反応させ、その後さらに他の反応工程において反応させられ完全プレポリマー(P)となる、シリル基を含有する前駆物質にする
ことにより製造される。
【0040】
その際、有利には、反応混合物中に存在する全てのイソシアネート基が反応し尽くすように個々の成分の量比が選択される。それゆえ有利には、結果生じるプレポリマー(P)はイソシアネート不含である。
【0041】
記載されているようにシラン官能性プレポリマー(P)は、(大気)湿分との接触に際して、一般式[2]〜[8]のシランの高反応性アルコキシシリル基の加水分解および縮合により硬化してよい。プレポリマー(P)は、接着剤、シーラントおよびジョイントシーラント、表面コーティングの分野における多数の異なった適用のためにならびにまた成形品の製造に際して適用されうる。
【0042】
一般式[2]〜[8]のシランの他の使用分野は、アクリレートまたはエポキシドの変性である。その際、少なくとも1つのアクリレート官能基またはエポキシド官能基を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマー化合物が、一般式[2]〜[8]のシランと反応し、その際、シラン単位の加水分解および縮合により硬化しうる生成物が得られる。つまり、そのつどの系のアクリレート硬化もしくはエポキシド硬化は、全てもしくはまたただ部分的にシラン硬化により置き換えられる。その際、とりわけ有利なのは、一般式[2]〜[8]のシランとエポキシ官能性化合物との反応である。
【0043】
一般式[2]〜[8]のシランのさらに他の有利な使用分野は、シラン変性粒子(Pa)、殊に無機粒子(Pa)の製造である。この目的のために、シラン(A)は無機粒子(Pal)と反応させられる。
【0044】
粒子(Pal)として、その際、全ての金属酸化物粒子および金属混合酸化物粒子(例えば、コランダムのような酸化アルミニウム、他の金属および/またはケイ素を有するアルミニウム混合酸化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄等)またはケイ素酸化物粒子(例えば、コロイド状ケイ酸、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカゾル)が適している。粒子(Pal)はさらに、その表面上に、金属水酸化物(MeOH)、ケイ素水酸化物(SiOH)、Me−O−Me、Me−O−Si、Si−O−Si、Me−ORおよびSi−ORから選択される官能基を有し、該官能基を介して一般式[2]〜[8]のシランとの反応が行われてよい。有利には、粒子(Pal)は、1000nmより小さい、とりわけ有利には100nmより小さい平均直径を有する(その際、粒径は透過型電子顕微鏡法により測定される)。
【0045】
本発明のとりわけ有利な一実施態様において、粒子(Pal)はヒュームドシリカからなる。本発明のさらに他の有利な一実施態様において、粒子(Pal)として、一般的にサブミクロンサイズの相応する酸化物粒子の分散液として水性または有機溶媒中に存在するコロイド状ケイ素酸化物または金属酸化物が使用される。その際、とりわけ金属のアルミニウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、ハフニウム、スズの酸化物を使用してよい。
【0046】
粒子(Pal)の官能基化に際して、一般式[2]〜[8]のシランの高反応性アルコキシシリル官能基が、アルコール分子(ROH)の開裂下で、遊離したMeOH官能基またはSiOH官能基と粒子表面上で反応する。その際、モノアルコキシシラン、つまりa=2の一般式[2]〜[8]のシランが使用される場合、粒子(Pal)の官能基化に際して、場合によりとりわけ所望されうる水の添加は必要ではない。粒子(Pal)の官能基化のためにジアルコキシシランまたはトリアルコキシシラン、つまりa=0もしくは1の一般式[2]〜[8]のシランが使用される場合、一般式[2]〜[8]のシランのアルコキシシリル基の加水分解および縮合は水の添加なしではふつう不完全である。それゆえ、アルコキシシリル基の完全な加水分解および縮合が所望される限りにおいて、水の添加は必要である。
【0047】
一般式[2]〜[8]のシランの高い反応性に基づき、これらの化合物は、公知技術に相応する従来の明らかに反応が緩慢なシランよりシラン変性粒子(Pa)の製造のために本質的に適している。これは殊に、粒子変性のためにしばしばとりわけ有利な−しかしたいてい反応性が低い−モノアルコキシシラン、つまりa=2の一般式[2]〜[8]のシランが使用される場合に適用される。粒子(Pal)と一般式[2]〜[8]の高反応性シランとの反応は、迅速にかつ完全に進行する。公知技術に相応する、他の同様に高反応性のα−アミノメチルシランに対して、その際、一般式[2]〜[8]のシランは比較的高い安定性の利点を有する。
【0048】
一般式[2]〜[8]のシランによる粒子変性に際して、触媒も添加してよい。その際、有機スズ化合物のようなこの目的のために通常使用される全ての触媒、例えばジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジブチルスズジアセテートまたはジブチルスズジオクトエート等、有機チタネート、例えばチタン(IV)イソプロピレート、鉄(III)化合物、例えば鉄(III)アセチルアセトネート、もしくはまたアミン、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、N,N−ビス−(N,N−ジメチル−2−アミノエチル)−メチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルフェニルアミン、N−エチルモルホリン等を使用してよい。有機または無機のブロンステッド酸、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、リン酸およびそのモノエステルおよび/またはジエステル、例えばブチルホスフェート、(イソ−)プロピルホスフェート、ジブチルホスフェート等および酸塩化物、例えば塩化ベンゾイルも触媒として適している。しかしながら、とりわけ有利なのは重金属不含の触媒もしくは触媒の完全な放棄である。
【0049】
一般式[2]〜[8]のシランによる粒子(Pal)の官能基化により、例えば全く新しい特性を有する粒子(Pa)が得られる。例えばとりわけ、相応する粒子の相容性および分散性を有機マトリックス中で著しく高めることができる。加えて、変性された粒子(Pa)は、変性により導入された反応性官能基(F)を介してしばしばまた化学的に相応するマトリックス中に組み込むことができる。例えば、本発明により変性された粒子(Pa)は、とりわけ有機ポリマー中で機械的特性の改善のために使用してよい。
【0050】
さらに他の有利な一適用において、一般式[2]〜[8]のシランをシリコーン樹脂(H1)と反応させて有機シラン変性シリコーン樹脂(H)にする。その際、とりわけ有利なのは、一般式[11]
【化10】

[式中、
10は、OR11官能基、OH官能基、場合によりハロゲン−、ヒドロキシル−、アミノ−、エポキシ−、ホスホナト−、チオール−、(メタ)アクリル−、もしくはまたNCO置換された、1〜18個の炭素原子を有する炭化水素(その際、炭素鎖は、隣接していない酸素−、硫黄−、またはNR4基により中断されていてよい)
11は、場合により置換された、1〜18個の炭素原子を有する1価の炭化水素基、
eは、0以上の値、
fは、0以上の値、
gは、0以上の値および
hは、0以上の値を意味する]
のシリコーン樹脂(H1)である。
【0051】
シリコーン樹脂(H1)の変性はまた、一般式[2]〜[8]のシランの高反応性アルコキシシリル基と、遊離したシリコーン樹脂(H1)のSiOH官能基との反応により成功する。その際、一般式[2]〜[8]のシランは公知技術に相応するシランに対して同じ利点を有しており、それらはすでに純粋な無機粒子(Pal)の官能基化のところで記載されている。
【0052】
有機シラン変性シリコーン樹脂(H)を製造するためのさらに他の一方法は、当然のことながら、一般式[2]〜[8]のシランをすでに樹脂製造の間に共縮合により直接樹脂の中に組み込むことによっても行われる。シリコーン樹脂(H)の合成のためのさらに他の一可能性は、樹脂(H)と一般式[2]〜[8]のシランおよび場合により水との平衡反応である。
【0053】
一般式[2]〜[8]のシランにより変性されたシリコーン樹脂(H)は、とりわけ有機ポリマーの特性改善のために使用することができる。
【0054】
一般式[2]〜[8]のシランのさらに他の有利な一使用分野は、一般式[2]〜[8]のシランとOH官能性シリコーン油(S1)との反応による有機変性シリコーン油(S)の製造である。その際、シロキサン(S1)は分枝鎖状または非分枝鎖状であってよい。しかしながら、とりわけ有利なのは、一般式[12]
【化11】

[式中、
12は、1〜12個の炭素原子を有する炭化水素基、有利にはメチル基、および
nは、1〜3000の数、有利には10〜1000の数である]
のシロキサン(S1)である。
【0055】
シロキサン(S1)の変性はまた、一般式[2]〜[8]のシランの高反応性アルコキシシリル基と、シロキサン(S1)の遊離したSiOH官能基との反応により行われる。
【0056】
オルガノシラン変性シロキサン(S)を製造するためのさらに他の一方法は、当然のことながら、一般式[2]〜[8]のシランをすでにシロキサン製造の間に共縮合により直接シロキサン鎖中に組み込むことにより行ってもよい。シロキサン(S)の合成のためのさらに他の一可能性は、シロキサン(S1)とシラン(A)および場合により水との平衡反応である。
【0057】
その際、有利にはモノアルコキシシラン、つまりa=2の一般式[2]〜[8]のシランが使用される。モノアルコキシシランの利点は、それらがシロキサン(S1)との反応の際に該シロキサンにたしかに有機官能基を付与しうるが、その際、しかし、シロキサン(S1)の鎖末端が、鎖延長することなくもっぱら末端基化するという事実である。
【0058】
同様に有利なのは、モノアルコキシシラン、つまりa=2の一般式[2]〜[8]のシラン、およびジアルコキシシラン、つまりa=1の一般式[2]〜[8]のシランからなる混合物の使用である。その際、前者は、後者が鎖延長をもたらす一方でシロキサン鎖末端の末端基化をもたらす。モノアルコキシシランおよびジアルコキシシランの量比の適切な選択ならびにシロキサン(S1)の適切な鎖長により、例えば平均鎖長のみならずまた結果生じる有機変性シロキサン(S)の平均官能基化度を任意に調整することができる。
【0059】
シロキサン(S1)の官能基化に際して、一般式[2]〜[8]のシランは公知技術に対して同じ利点を有しており、それらはすでに粒子(Pal)の官能基化のところで記載されている。
【0060】
その際、とりわけ有利には、その有機官能基(F)がNH基を包含する一般式[2]〜[7]のシランが使用される。その際、アミノ官能性シロキサン(S)が得られ、それに関して、シロキサン(S1)とシランとから公知技術に相応して製造されうる従来のアミノ官能性シロキサンと同様に、例えば繊維加工において多数の異なった適用が存在する。
【0061】
さらにアミノ官能性シロキサン(S)は、さらに他の有機化合物とも反応して、シロキサンの他にまた有機構造エレメントも有するコポリマーとなりうる。その際、有利には、有機化合物として、二官能性モノマー、オリゴマーまたはポリマー化合物が使用される。
【0062】
とりわけ有利には、有機化合物としてジイソシアネートまたはポリイソシアネートならびにイソシアネート官能性プレポリマーが使用される。これらはアミノ官能性シロキサン(S)と反応して、その有機構造エレメントにおいて尿素基および場合によりまたさらに付加的なウレタン基を有するコポリマーとなる。この種のシロキサン−尿素−コポリマーは、とりわけ興味深い特性により特徴づけられる。例えば、直鎖シロキサン−尿素−コポリマーは室温においてしばしばエラストマーの特性を有し、該特性は尿素単位および場合によりまた存在するウレタン単位の水素架橋結合によりもたらされる。しかしながら、比較的高い温度において水素架橋結合は崩壊するので、シロキサン−尿素−コポリマーは、次いで従来の熱可塑性ポリマーのように加工できるようになる。
【0063】
この種のシロキサン−尿素−コポリマーの製造のためのジイソシアネートまたはポリイソシアネートとして、原則的に、文献にたびたび記載されている従来の全てのイソシアネートが使用されうる。しかしながら、とりわけ有利なのは、上記の直鎖コポリマーを得るために用いられるジイソシアネートである。通常のジイソシアネートは、例えばジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジイソシアナトナフタリン(NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ペルヒドロ化MDI(H−MDI)もしくはまたヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)である。シロキサン−尿素−コポリマーのUV安定性がそのつどの適用に際して重要である場合、有利には脂肪族イソシアネートが用いられる。
【0064】
モノマーのジイソシアネートまたはポリイソシアネートの代わりに、オリゴマーまたはポリマーのイソシアネートプレポリマーもアミノ官能性シロキサン(S)のための反応相手として使用されうる。その際、比較的大きい有機構造エレメントを有するコポリマーが得られる。イソシアネートプレポリマーは、その際、ふつうジイソシアネートまたはポリイソシアネートおよびポリオール、例えばポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオール、ならびに少なくとも2つのOH基を有するモノマーのアルコールから得られる。その際、この種のシロキサン−尿素−ポリオール−コポリマーの製造に際しての反応工程の順番は原則的に任意である。つまり、アミノ官能性シロキサン(S)を第一の反応工程においてジイソシアネートまたはポリイソシアネートの過剰量と反応させ、かつ過剰のイソシアネート官能基を第二の反応工程において初めてモノマー、オリゴマーまたはポリマーのジオールまたはポリオールもしくはジアミンまたはポリアミンと反応させることも同様に可能である。
【0065】
全ての前記式の前記記号は、それらの意味をそのつど互いに無関係に有する。全ての式において、ケイ素原子は4価である。
【0066】
他に記載されていない限り、全ての量およびパーセントの記載値は質量に対してのものであり、全ての圧力は0.10MPa(abs.)でありかつ全ての温度は20℃である。
【0067】
例1:
N−[(メチルジエトキシシリル)−メチル]−ピペラジンの製造:
ピペラジン377g(4.4モル)およびジオキサン566gを溶媒として、2リットルの四つ口フラスコ内に装入し、引き続き窒素で不活性化する。ピペラジンが完全に溶けるまで90℃の温度に加熱する。引き続き80℃に冷却する。この温度で、クロロメチルメチルジエトキシシラン179.2g(0.88モル)を2時間にわたり滴下しかつさらに2時間のあいだ80℃で攪拌する。シラン量の約1/3の添加後、増大してピペラジン−ヒドロクロリドが塩として沈殿するが、しかしながら、懸濁液は反応の終了まで良好に攪拌し続けることができる。懸濁液を夜通しそのままにしておく。引き続き、沈殿塩を濾過しかつ溶媒ならびに過剰のピペラジンの分量を60〜70℃で蒸留により除去する。残留物を4℃に冷却し、その際、反応混合物中に残留したピペラジンが沈殿する。これを濾過する。濾液を蒸留により精製(8mbarで108〜114℃)する。123.4gの収率、つまり使用されたシラン量に対して約60%に達する。
【0068】
例2:
N−[(エトキシジメチルシリル)−メチル]−ピペラジンの製造:
ピペラジン482.0g(5.6モル)およびジオキサン723gを溶媒として、2リットルの四つ口フラスコ内に装入し、引き続き窒素で不活性化する。ピペラジンが完全に溶けるまで90℃の温度に加熱する。引き続き80℃に冷却する。この温度で、クロロメチルジメチルエトキシシラン155.3g(1.12モル)を2時間にわたり滴下しかつさらに2時間のあいだ80℃で攪拌する。シラン量の約1/3の添加後、増大してピペラジン−ヒドロクロリドが塩として沈殿するが、しかしながら、懸濁液は反応の終了まで良好に攪拌し続けることができる。懸濁液を夜通しそのままにしておく。引き続き、沈殿塩を濾過しかつ溶媒ならびに過剰のピペラジンの分量を60〜70℃で蒸留により除去する。残留物を4℃に冷却し、その際、反応混合物中に残留したピペラジンが沈殿する。これを濾過する。濾液を蒸留により精製(12mbarで93℃)する。109.4gの収率、つまり使用されたシラン量に対して52%に達する。
【0069】
例3:
N−[(トリエトキシシリル)−メチル]−ピペラジンの製造:
ピペラジン905.3g(10.5モル)およびキシレン945ml(水不含)を溶媒として、4リットルの四つ口フラスコ内に装入し、引き続き窒素で不活性化する。ピペラジンが完全に溶けるまで100℃の温度に加熱する。この温度で、クロロメチルトリエトキシシラン446.3g(2.1モル)を1時間以内に滴下しかつさらに15分のあいだ後攪拌する。シラン量の約1/3の添加後、増大してピペラジン−ヒドロクロリドが塩として沈殿するが、しかしながら、懸濁液は反応の終了まで良好に攪拌し続けることができる。引き続き、反応混合物を110℃に加熱しかつ沈殿塩を前加熱フィルターを介して濾過する。
約5℃に冷却しかつこの温度で沈殿したピペラジン過剰量を濾過する。引き続き溶媒を留去し、その際、場合によるピペラジン残分を同様に除去する。そのように得られた粗生成物を蒸留により精製(0.1mbarで84〜86℃)する。357.5g(1.36モル)の収率、つまり使用されたシラン量に対して約65%に達する。
【0070】
例4:
アミノ官能性ナノ粒子の製造:
IPA−ST30g(日産化学社のイソプロパノール中の30.5%のSiOゾル、12nm)を室温で装入しかつ、例2に従って製造されたN−[(エトキシジメチルシリル)−メチル]−ピペラジン2.0gと混合する。結果生じる混合物を、60℃で2時間のあいだかつ室温でさらに15時間のあいだ攪拌する。わずかなチンダルを示す、大部分が透明な分散液が結果として得られる。
H−および29Si−NMR分光法により、この分散液中にはもはや遊離シランは検出されえない。つまり、SiO粒子と完全に反応したことになる。
【0071】
例5:
アミノ官能性シリコーン油の製造
約3000g/モルの平均モル質量を有する直鎖OH末端シリコーン油15.0g(5.0ミリモル)を、例2に従って製造されたN−[(エトキシジメチルシリル)−メチル]−ピペラジン1.88g(10.0ミリモル)と混合する。室温で15時間のあいだ攪拌させる。引き続き、発生したメタノールを蒸留により除去する。H−および13C−NMR分光法により、使用されたシランの完全な反応が検出されうる。
【0072】
例6:
アルコキシシリル官能性エポキシド樹脂の製造
エタノール2.5ml中のエポキシド樹脂(Eponex(R)1510:水素化ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとからなる反応生成物、EEW=210〜220)2.5gの溶液に、N−[(トリエトキシシリル)−メチル]−ピペラジン1.5gを滴下しかつ混合物を攪拌下で2時間のあいだ60℃に加熱した。H−NMR分光法は、エポキシド官能基の完全な反応を示した。透明な低粘性溶液を、硬化のためにアルミニウムトレーに注入しかつそれは2分のスキンニング時間を示した(22℃、相対湿度45%)。滑らかな、透明な、無色の層が形成された。
【0073】
例7:
湿分に対するα−アミノメチルシランおよびγ−アミノプロピルシランの反応性の測定
本発明によるシランおよび本発明によらないシランの反応性のための基準として、α,ω−アルコキシシリル官能性シロキサンのスキンニング時間を引き合いに出した。そのために、直鎖α,ω−ヒドロキシ官能性シロキサン(平均モル質量:約3000g/モル)を、2.5当量のそのつどのシランとスピードミキサー(Hausschild社のDAC150FV)において27000rpmで20秒間混合し、得られた油を注ぎ出しかつスキンニング時間を、へらによる表面の接触により測定した。相対湿度は32%だった。
N−[(メチルジエトキシシリル)−メチル]−ピペラジンのスキンニング時間(本発明による):t<15分
γ−アミノプロピル−メチルジエトキシシランのスキンニング時間(本発明によらない):t>5時間
例8:メタノールの存在におけるα−アミノメチルシランの安定性の測定
一般規定:α−アミノシランをメタノール−D4中で溶解する(10質量%)。結果生じる溶液を、繰り返しH−NMR分光法により測定する。α−アミノシランのスキンニング時間(t1/2)の測定のために、分解されなかったα−アミノシラン中のメチレン−スペーサー=N−CH−Si[(O)R]の積分(δ約2.2ppm)ならびに分解生成物として(Si−C結合の開裂)得られたメチル基=NCHDの積分(δ約2.4ppm)を引き合いに出す。
【0074】
例1〜3に従って製造された本発明によるシランは、4週間後も分解を示さない。比較のために、公知技術に相応する幾つかのα−アミノメチルシランの分解の半減期を表す:
アミノメチル−メチルジメトキシシラン:t1/2=6時間
シクロヘキシルアミノメチル−メチルジメトキシシラン:t1/2=1週間
アミノメチル−トリメトキシシラン:t1/2=19時間
シクロヘキシルアミノメチル−トリメトキシシラン:t1/2=3日
i−ブチルアミノメチル−トリメトキシシラン:t1/2=1週間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[2]
【化1】

[式中、
は、置換されたまたは置換されなかった炭化水素基または=N−CR−基、
は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基または計2〜10個の炭素原子を有するω−オキサアルキル−アルキル基、
は、水素であるか、または置換されたまたは置換されなかった炭化水素基であり、かつ
aは、0、1、2または3の値をとってよい、]
の少なくとも1つの構造エレメントを有するアルコキシシラン(A)であって、ただし、一般式[2]中の窒素原子は第三級窒素原子であり、かつ該アルコキシシラン(A)は少なくとも1つのさらに他の反応性官能基(F)を有し、該基を介してそれは有機の反応相手に結合しえ、その際、式[1]
【化2】

のシランは除外される、アルコキシシラン(A)。
【請求項2】
反応性官能基(F)が、カルボニル基、NH−、OH−またはSH官能基から選択される、請求項1記載のアルコキシシラン(A)。
【請求項3】
基Rが、有利には1〜12個のC原子を有する、請求項1または2記載のアルコキシシラン(A)。
【請求項4】
炭化水素基Rが、1〜6個のC原子を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のアルコキシシラン(A)。
【請求項5】
一般式[3]および[4]
【化3】

[式中、
は、少なくとも1つのカルボキシル基、カルボニル基またはイソシナネートに対して反応性のOH基、SH基またはNHR基を有する、置換されたまたは置換されなかったアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基、その際、アルキル鎖は場合により酸素、カルボニル基、硫黄またはNR基により中断されていてよい、
は、置換されたまたは置換されなかったアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基、その際、アルキル鎖は場合により酸素、カルボニル基、硫黄またはNR基により中断されていてよい、または基R
は、アルキル鎖中でカルボニル基またはイソシナネートに対して反応性のNH官能基またはNR官能基を有するかまたはイソシアネートに対して反応性の少なくとも1つのOH基、SH基またはNHR基により置換されている、二官能性の、置換されたまたは置換されなかったアルキル基またはアリールアルキル基、その際、アルキル鎖は場合により酸素、硫黄、NR基またはカルボニル基により中断されていてよい、
は、水素であるか、または置換されたまたは置換されなかったアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基であり、
かつR、Rおよびaは、請求項1に記載の一般式[2]において記載された意味を有する]
を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のアルコキシシラン(A)。
【請求項6】
一般式[5]
【化4】

[式中、
は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、および
は、2〜10個の炭素原子を有する二官能性アルキル基を意味し、
かつR、Rおよびaは、請求項1に記載の一般式[2]において記載された意味を有する]
を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のアルコキシシラン(A)。
【請求項7】
一般式[6]および[7]
【化5】

[式中、R、Rおよびaは、請求項1に記載の一般式[2]において記載された意味を有する]を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のアルコキシシラン(A)。
【請求項8】
一般式[8]
【化6】

[式中、
xおよびyは、そのつど0〜4の整数を意味しかつ
、Rおよびaは、請求項1に従う一般式[2]において記載された意味を有する]
を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のアルコキシシラン(A)。
【請求項9】
シラン官能性プレポリマー(P)の合成のための、アクリレートまたはエポキシドの変性のための、シラン変性粒子(Pa)の製造のための、変性シリコーン樹脂(H)の製造のための、および有機変性シリコーン油(S)の製造のための、請求項1から8までのいずれか1項記載の一般式[1]〜[8]のシランの使用。

【公表番号】特表2008−522991(P2008−522991A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544763(P2007−544763)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012337
【国際公開番号】WO2006/061091
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】