説明

高さ検査装置

【課題】シース管や鉄筋等の検査対象物の設置高さを容易に計測することができる高さ検査装置の提供
【解決手段】長尺の基準尺11と、基準尺11に対しその長手方向でスライド可能なスライド尺12と、スライド尺12の側面下端部に外向きに突設された当て具13と、基準尺11又はスライド尺12にその長手方向に沿って付され、基準尺11下端に対するスライド尺12下端の相対距離を計測するための目盛り24とを備え、当て具13は、スライド尺12の下端から任意の高さの位置に着脱可能に固定できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプレストレストコンクリート床板を施工する際、配置したシース管各位置の設置高さの確認に使用される高さ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポストテンション方式によりプレストレストが導入されるコンクリート床板等のPC構造物の構築においては、PC緊張材を挿通させるシース管1が例えば図4に示す概略図のように湾曲した配置に型枠2内に設置されている。
【0003】
このシース管1の設置においては、シース管1の各位置が所定の高さに設置されていないと設計通りにプレストレスが導入されず、完成後の構造物の応力状態に多大な影響を及ぼすことになるため、コンクリート打設前にシース管1各位置の設置高さ、即ち基準面3よりシース管1中心までの距離x1、x2…を高精度で検査管理することが望まれる。
【0004】
また、コンクリート構造物内に配置される鉄筋や配管等が設計どおりに配置設置されているかの確認もコンクリート打設前に行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の如き従来の技術では、PC構造物内に配置される鉄筋の配筋及びPC構造物の上面を覆うスラブ内に配置されるスラブ筋の配筋がなされた後に検査が行われるため、型枠内に体を入れて直接計測することや箱尺等を用いて計測することが困難であるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上述の従来技術の問題を鑑み、シース管や鉄筋等の検査対象物の設置高さを容易に計測することができる高さ検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、長尺の基準尺と、該基準尺に対しその長手方向でスライド可能なスライド尺と、該スライド尺の側面下端部に外向きに突設された当て具と、前記基準尺又は前記スライド尺にその長手方向に沿って付され、前記基準尺下端に対するスライド尺下端の相対距離を計測するための目盛りとを備え、前記当て具は、前記スライド尺の下端から任意の高さの位置に着脱可能に固定できるようにした高さ検査装置であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成に加え、前記基準尺は、前記スライド尺が長手方向にスライド可能に嵌まり込むスライド溝を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成に加え、前記基準尺と前記スライド尺とは、同じ長さに形成され、前記目盛りを前記スライド尺の側面に付したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る高さ検査装置は、長尺の基準尺と、該基準尺に対しその長手方向でスライド可能なスライド尺と、該スライド尺の側面下端部に外向きに突設された当て具と、前記基準尺又は前記スライド尺にその長手方向に沿って付され、前記基準尺下端に対するスライド尺下端の相対距離を計測するための目盛りとを備えたことによって、作業員や箱尺等を入れることが困難な箇所であっても容易に基準面から検査対象物の中心軸までの高さを計測し検査することができ、また、前記当て具は、前記スライド尺の下端から任意の高さの位置に着脱可能に固定できるようにしたことによって、様々な径の検査対象物に対応することができる。
【0011】
前記基準尺は、前記スライド尺が長手方向にスライド可能に嵌まり込むスライド溝を有することにより、スライド尺を基準尺内に収容でき、小型化かが可能である。
【0012】
前記基準尺と前記スライド尺とは、同じ長さに形成され、前記目盛りを前記スライド尺の側面に付したことにより、スライド尺の基準尺上端より突出した量を読み取ることにより計測できるので手元部分で計測が可能となり便利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明に係る高さ検査装置の実施形態について説明する。尚、上述の従来例と同一の部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明に係る高さ検査装置の一例を示す斜視図である。
【0015】
高さ検査装置10は、長尺の基準尺11と、基準尺11に対してスライド可能なスライド尺12と、スライド尺12の側面に突設された当て具13とを備え、基準尺11の下端を基準面3につけた状態で当て具13をシース管1等の検査対象物であるシース管1の上縁に当接させ、その際の基準尺11の下端よりスライド尺12下端までの相対距離を計測することによりシース管等の検査対象物の設置高さを検査することができるようになっている。
【0016】
基準尺11は、細長状の基板部14と、該基板部14の両側縁より立ち上げ配置された側板部15,15とをもって断面コ字状に形成され、両側板部15,15間にスライド尺12がスライド可能に嵌め込まれるスライド溝16が形成されている。
【0017】
側板部15,15の前縁部には、互いに他方の側板側に向けて突出した突出片17が一体に突設され、この突出片17がスライド尺12の前縁部に当接され、スライド尺12が基準尺11に対し長手方向と交差する方向への離脱が不能とし、長手方向のみにスライド可能となっている。
【0018】
また、基準尺11の下縁には、金属製の金具18が嵌め込まれ、基準尺11の下縁部が摩耗するのを防止している。
【0019】
スライド尺12は、縦細長状の固定板20と、固定板20の両側部に配置された側壁部21,21と、側壁部21の前縁部に内側に向けて突出した張り出し部22,22とを備え、基準尺11と同じ長さに形成されている。
【0020】
固定板20は、その下端部に長穴状のボルト挿通孔23,23が形成されている。
【0021】
側壁部21には、その全面に上端を零とした目盛り24が付され、基準尺11及びスライド尺12が同じ長さであることから基準尺11の上端から突出した距離yを計測すること、即ち基準尺11上縁が指す目盛りを読み取ることにより、基準尺11下端に対するスライド尺12下端の相対距離xを計測できるようになっている。
【0022】
尚、目盛り24は、薄板状のスケールを側壁部21に貼り付けてもよく、側壁部21に直接付してもよい。
【0023】
当て具13は、スライド尺12に固定される固定部30と、固定部30の下端より直立配置に突出した当接部31とを一体に備え、両端をそれぞれ固定部30及び当接部31に固定させた突っ張り部材32により互いに直立配置が保たれている。
【0024】
固定部30は、上下に間隔おいて固定用ボルト33が挿通されるボルト挿通孔34,34が形成され、図2に示すように、このボルト挿通孔23の裏側からボルト33を挿し込み、両張り出し部22,22間及びボルト挿通孔34を通して固定部30の表面部に突出させ、この固定部30表面に突出したボルト33に蝶ナット35を締め込むことによりスライド尺12に固定されるようになっている。
【0025】
また、当て具13は、ボルト挿通孔23の長さ分だけスライド尺12に対してスライドさせることができ、スライド尺12の下端より任意の位置、即ちスライド尺12の下端より検査対象物径の1/2分だけ高い位置に固定することができるようになっている。
【0026】
図3は本発明に係る高さ検査装置10を使用したシース管1の高さ検査の状態を示し、図中符号1は検査対象物であるシース管、符号3は基準面である型枠底面である。
【0027】
この高さ検査装置10を使用して型枠内に設置されたシース管1の高さを検査するには、まず、蝶ナット35を緩めて当て具13をスライド尺12に対してスライド可能な状態にし、当接部31をシース管1半径r分だけスライド尺12の下端より離れた位置に合わせ、その位置で蝶ナット35を締め付けてスライド尺12に当て具13を固定する。
【0028】
次に、基準尺11とスライド尺12の下端を揃え、検査するシース管1位置において垂直に降ろして行き、当て具13の当接部31をシース管1の上縁に当接させる。
【0029】
この状態、即ち、当て具13をシース管1に当接させた状態で基準尺11のみを下端が基準面3、即ち型枠底面に到達するまで降下させる。
【0030】
このとき、基準尺11及びスライド尺12が同じ長さであるので、基準尺11の下端とスライド尺12の下端との間の相対距離分だけ、スライド尺12の上端部が基準尺11の上端より上方に突出する。
【0031】
また、当て具13がスライド尺12の下端よりシース管1の半径r分だけ離れた位置に設置されているので、当て具13をシース管1上縁に当接させるとスライド尺12の下端は、シース管1の中心軸高さに位置するようになっている。
【0032】
従って、基準尺11上端位置の目盛りを読み取ることにより、シース管1の設置高さ、即ち基準面3よりシース管1の中心軸高さまでの距離xを正確に計測することができ、その値と設計値とを比較して検査することができる。
【0033】
尚、上述の実施例では、目盛り24をスライド尺12の側面に付した例について説明したが、基準尺11のスライド溝底面部に設けてもよく、スライド尺12及び基準尺11の双方に目盛りを付して併用してもよい。
【0034】
また、上述の実施例では、本発明に係る高さ検査装置10を、ポストテンション方式によるPC構造物に使用されるシース管1の設置高さ検査に用いた例について説明したが、通常の鉄筋コンクリート構造物における鉄筋の設置高さや小径配管等の高さ検査にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る高さ検査装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1中の当て具の取付状態を示す部分拡大断面図である。
【図3】本発明に係る高さ検査装置を使用したシース管の設置高さ検査の概略を示す正面図である。
【図4】ポストテンション方式のPC構造物におけるシース管の設置状態の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 高さ検査装置
11 基準尺
12 スライド尺
13 当て具
14 基板部
15 側板部
16 スライド溝
17 突出片
18 金具
20 固定板
21 側壁部
22 張出し部
23 ボルト挿通孔
24 目盛り
30 固定部
31 当接部
32 突っ張り部材
33 固定用ボルト
34 ボルト挿通孔
35 蝶ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の基準尺と、該基準尺に対しその長手方向でスライド可能なスライド尺と、該スライド尺の側面下端部に外向きに突設された当て具と、前記基準尺又は前記スライド尺にその長手方向に沿って付され、前記基準尺下端に対するスライド尺下端の相対距離を計測するための目盛りとを備え、
前記当て具は、前記スライド尺の下端から任意の高さの位置に着脱可能に固定できるようにしたことを特徴としてなる高さ検査装置。
【請求項2】
前記基準尺は、前記スライド尺が長手方向にスライド可能に嵌まり込むスライド溝を有する請求項1に記載の高さ検査装置。
【請求項3】
前記基準尺と前記スライド尺とは、同じ長さに形成され、前記目盛りを前記スライド尺の側面に付した請求項1又は2に記載の高さ検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−58330(P2008−58330A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294059(P2007−294059)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3115662号
【原出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【Fターム(参考)】