説明

高さ調整用脚金具

【課題】地震の振動等に伴う被支持物の移動を阻止し、緩衝を図る防振効果を損なうことなく、被支持物の位置を横方向にずらして容易に調整できるようにする。
【解決手段】被支持物に下方からねじ込まれるボルト軸1と、これを頂部から立ち上がらせて保持する台座2とを備え、台座2の下面に粘着性及び弾力性を有する粘着シート4を装着し、粘着シート4により被支持物を床面に緩衝固定すると共に、ボルト軸1とこれに螺合する部材の相対回転に伴い、被支持物の高さを調整する高さ調整用脚金具において、前記ボルト軸1を台座2に上下方向にスライド自在に挿通し、台座2の頂部に、ボルト軸1に螺合する台座操作ナット6を回転自在に設け、台座操作ナット6を回すと、台座2がボルト軸1に対して昇降し、台座2を上昇させて粘着シート4を床面から離反させた状態で、ボルト軸1の下端側を床面に当接させ、被支持物を仮支持できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械や計測機器等の被支持物の設置に際し、その水平レベル調整等のため、被支持物の支持高さを調整できるようにした脚金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の高さ調整用脚金具として、下記特許文献1には、図5に示すようなものが記載されている。この脚金具は、被支持物Mの雌ねじ部Sに下方からねじ込まれるボルト軸51と、これを頂部から立ち上がらせて保持するドーム状の台座52とを備え、台座52の底部を閉塞する基盤53の下面には、粘着性及び弾力性を有する粘着シート54が装着されている。
【0003】
ボルト軸51には、台座52の上側に位置してボルト軸51と一体に回転する軸操作ナット56と、台座52の内部に位置してボルト軸51を台座52から抜け止めする抜止ナット57とが設けられ、軸操作ナット56の上方に締付ナット58がねじ込まれている。
【0004】
この脚金具では、被支持物Mを設置する際、被支持物Mの下部にボルト軸51をねじ込んで脚金具を取り付けておき、被支持物Mと共に脚金具を床面Fに降ろして、粘着シート54を床面Fに密着させる。これにより、地震の振動等に伴う被支持物Mの移動を阻止すると共に、被支持物Mに作用する衝撃を緩和する防振効果を得ることができる。
【0005】
そして、軸操作ナット56を適宜回して、被支持物Mの雌ねじ部Sへのボルト軸51のねじ込み量を変化させることにより、被支持物Mの水平レベルを調整することができ、その状態で、締付ナット58を被支持物Mへ向けて緊締することにより、被支持物Mの高さ位置を固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−194406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような高さ調整用脚金具では、被支持物に取り付けて一旦床面に降ろすと、粘着シートが床面に強力に吸着するので、被支持物を横方向にずらすことができず、設置位置の微調整を行なうことができないという問題がある。
【0008】
そこで、この発明は、地震の振動等に伴う被支持物の移動を阻止し、緩衝を図る防振効果を損なうことなく、被支持物の位置を横方向にずらして容易に調整できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明は、被支持物に下方からねじ込まれるボルト軸と、これを頂部から立ち上がらせて保持する台座とを備え、台座の下面に粘着性及び弾力性を有する粘着シートを装着し、粘着シートにより被支持物を床面に緩衝固定すると共に、ボルト軸とこれに螺合する部材の相対回転に伴い、被支持物の高さを調整する高さ調整用脚金具において、前記ボルト軸を台座に上下方向にスライド自在に挿通し、台座の頂部に、ボルト軸に螺合する台座操作ナットを回転自在に設け、台座操作ナットを回すと、台座がボルト軸に対して昇降し、台座を上昇させて粘着シートを床面から離反させた状態で、ボルト軸の下端側を床面に当接させ、被支持物を仮支持できるようにしたのである。
【0010】
また、前記ボルト軸の下端部に床当部材を相対回転自在に設け、床当部材が床面に当接した状態でボルト軸を回しても、床当部材は回転しないようにしたのである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る脚金具では、被支持物を設置する際、ボルト軸のねじ込みにより被支持物の下部に脚金具を取り付け、台座をボルト軸に対して上昇させた状態で、被支持物と共に脚金具を床面に降ろすと、ボルト軸の下端側が床面に当接し、被支持物は仮に支持された状態となる。
【0012】
この時点では、まだ台座の下面の粘着シートは床面に当接していないので、被支持物を横方向にずらして設置位置の微調整を行なうことができ、ボルト軸を回転させて被支持物の支持高さを調整することもできる。
【0013】
その後、台座操作ナットを回して、台座を下降させ、粘着シートを床面に押し付けるように密着させると、被支持物を所定の位置に緩衝固定でき、防振性能が発揮される。
【0014】
また、ボルト軸の下端部に床当部材を相対回転自在に設け、床当部材が床面に当接した状態でボルト軸を回しても、床当部材が回転しないようにすると、高さ調整時にボルト軸で床面が傷付く現象が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施形態に係る高さ調整用脚金具を示す斜視図
【図2】同上の高さ調整用脚金具の正面図
【図3】同上の台座を上昇させて被支持物を仮支持した状態を示す正面図
【図4】同上の台座を下降させて被支持物を緩衝固定した状態を示す正面図
【図5】従来の高さ調整用脚金具により被支持物を緩衝固定した状態を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
この高さ調整用脚金具は、図1及び図2に示すように、ボルト軸1と台座2とを備え、台座2は、ボルト軸1を頂部から立ち上がらせて保持するドーム状とされている。台座2のフランジ部分の下方へ曲がった外周部により、円盤状の基盤3が抱持され、基盤3の下面には、ウレタン系ゴム等の粘着性及び弾力性を有する粘着シート4が装着されている。
【0018】
ボルト軸1の外周には雄ねじが形成され、ボルト軸1の下端部には、相対回転自在に円筒状の金属から成る床当部材5が取り付けられている。そして、ボルト軸1が台座2、基盤3及び粘着シート4の中央部に形成された貫穴2a,3a,4aに上下方向にスライド自在に挿通されて、台座2は、ボルト軸1に対し昇降自在とされている。
【0019】
台座2の頂部には、ボルト軸1に螺合して、回転に伴い台座2を昇降させる台座操作ナット6が設けられている。台座操作ナット6は、下方へ延びるスリーブ6aを有し、スリーブ6aが貫穴2aに挿通され、台座2の内部でスリーブ6aに抜止環6bを嵌めて、スリーブ6aの下端部をかしめることにより、貫穴2aから抜け止めされ、台座2に対して相対回転可能とされている。
【0020】
ボルト軸1には、台座操作ナット6の上方に、軸操作ナット7及び締付ナット8が順次ねじ込まれている。
【0021】
上記のような脚金具では、図3に示すように、被支持物Mを設置する際、ボルト軸1の上端部を被支持物Mの雌ねじ部Sに下方からねじ込み、被支持物Mの下部に脚金具を取り付ける。このとき、軸操作ナット7と締付ナット8とを密着させると、軸操作ナット7と共にボルト軸1を回すことができる。
【0022】
次に、台座操作ナット6を適宜回し、台座2をボルト軸1に対して上昇させた状態で、被支持物Mと共に脚金具を床面Fに降ろすと、ボルト軸1の下端側が床当部材5を介して床面Fに当接し、被支持物Mは仮に支持された状態となる。
【0023】
この時点では、まだ台座2の下面の粘着シート4が床面Fに当接していないので、被支持物Mを横方向にずらして設置位置の微調整を行なうことができる。
【0024】
その後、軸操作ナット7を締付ナット8に密着させた状態で回して、ボルト軸1を適宜回転させ、被支持物Mの雌ねじ部Sへのボルト軸1のねじ込み量を変化させて、被支持物Mの脚金具による支持高さを調整し、被支持物Mの水平レベルを調整した状態で、締付ナット8を被支持物Mへ向けて緊締することにより、被支持物Mの高さ位置を固定する。
【0025】
このとき、床当部材5が床面Fに当接した状態でボルト軸1を回しても、床当部材5は回転しないので、被支持物Mの高さ調整時にボルト軸1で床面Fが傷付くことがない。
【0026】
そして、図4に示すように、台座操作ナット6を回して、台座2を下降させ、粘着シート4を床面Fに押し付けるように密着させると、地震の振動等に伴う被支持物Mの移動を阻止すると共に、被支持物Mに作用する衝撃を緩和する防振効果を得ることができる。
【0027】
さらに、軸操作ナット7を回して下降させ、台座操作ナット6に密着させると、ボルト軸1に対して台座操作ナット6を固定することができる。
【0028】
ところで、被支持物Mの雌ねじ部Sにボルト軸1をねじ込むのではなく、雌ねじ部Sのない被支持物Mの貫穴にボルト軸1を差し込んで、締付ナット8で被支持物Mの荷重を受け止める場合には、ボルト軸1を回すのではなく、締付ナット8を回すことにより、被支持物Mの高さ調整を行なうことができる。この場合、ボルト軸1に上端から固定ナットをねじ込んで、被支持物Mを固定する必要がある。
【0029】
なお、上記実施形態では、台座2として、基盤3を抱持する形式のものを例示しているが、台座2と基盤3とをボルトにより結合するようにしてもよく、台座2に粘着シート4の粘着面積を十分に確保できるのであれば、基盤3を省略してもよい。
【0030】
また、床面Fの傷付きを特に防止する必要がない場合には、床当部材5を省略し、ボルト軸1として、通常の六角ボルト等を使用し、その頭部が直接床面Fに当接するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 ボルト軸
2 台座
2a 貫穴
3 基盤
3a 貫穴
4 粘着シート
4a 貫穴
5 床当部材
6 台座操作ナット
6a スリーブ
6b 抜止環
7 軸操作ナット
8 締付ナット
M 被支持物
S 雌ねじ部
F 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被支持物に下方からねじ込まれるボルト軸(1)と、これを頂部から立ち上がらせて保持する台座(2)とを備え、台座(2)の下面に粘着性及び弾力性を有する粘着シート(4)を装着し、粘着シート(4)により被支持物を床面に緩衝固定すると共に、ボルト軸(1)とこれに螺合する部材の相対回転に伴い、被支持物の高さを調整する高さ調整用脚金具において、前記ボルト軸(1)を台座(2)に上下方向にスライド自在に挿通し、台座(2)の頂部に、ボルト軸(1)に螺合する台座操作ナット(6)を回転自在に設け、台座操作ナット(6)を回すと、台座(2)がボルト軸(1)に対して昇降し、台座(2)を上昇させて粘着シート(4)を床面から離反させた状態で、ボルト軸(1)の下端側を床面に当接させ、被支持物を仮支持できるようにしたことを特徴とする高さ調整用脚金具。
【請求項2】
前記ボルト軸(1)の下端部に床当部材(5)を相対回転自在に設け、床当部材(5)が床面に当接した状態でボルト軸(1)を回しても、床当部材(5)は回転しないようにしたことを特徴とする請求項1に記載の高さ調整用脚金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−179675(P2011−179675A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47476(P2010−47476)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(591222083)株式会社枚方技研 (8)
【出願人】(302030712)サン・ファスナー部品株式会社 (3)
【Fターム(参考)】