高められたエフェクター機能をもつ抗体定常領域の製造用の宿主細胞株
抗体、抗体フラグメント、若しくは抗体由来融合タンパク質の生物医薬品製造のための宿主細胞株は、改良された細胞のエフェクター機能、例えばFc媒介性エフェクター機能を誘導する能力を有するために選択される。該宿主細胞はラット骨髄腫細胞株YB2/0由来であり、そして既知組成培地中での増殖に適応される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えDNA技術において、および細胞培養物でのタンパク質の産生に有用な細胞、細胞株および細胞培養物に関する。より具体的には、本発明は、高められた抗体エフェクター機能を提供する、既知組成培地中で増殖することが可能なクローン性骨髄腫細胞株に向けられる。
【背景技術】
【0002】
抗体は、しばしば、体液性および細胞性免疫機構を結び付けるアダプター分子と称される。すなわち、体液性応答は、可変ドメインの固有の特異性により賦与されるところの標的抗原への高アフィニティー結合が可能な成熟した分泌型の循環抗体に主として帰される。細胞性応答は、抗体−抗原(ab−ag)複合体の結合、およびエフェクター細胞へのab−ag複合体結合の結果としての細胞メディエーターの遊離により引き起こされる下流の結果による細胞の活性化の結果に帰される。これらの細胞応答は、標的の中和、オプソニン化および感作(抗原が細胞の表面上に表示される場合)、肥満細胞の感作ならびに補体の活性化を包含する。細胞表面抗原である細胞標的について、これらのエフェクター機能は、抗体に指図される細胞傷害(ADCC)および補体媒介性の細胞傷害(CDC)として一般に知られるものに至る。
【0003】
特異的抗原認識の原因であるのが、抗体のいわゆる可変領域および超可変ドメイン、ならびに、抗体取り込みおよび細胞傷害性の機構すなわちADCC、CDCを包含するある種の機能に影響を及ぼしかつC1qタンパク質への結合を包含する多様な受容体への抗体結合にもまた影響を及ぼすように細胞を刺激することが可能な、多様な、通常は高度に移動性の細胞上に存在するこれらのFc受容体と相互作用するのが、ヘテロ二量体のH鎖部分のいわゆる定常領域すなわちFc部分である。これらの受容体はFc受容体として知られる。
【0004】
抗体アイソタイプ(例えばIgA、IgE、IgD、IgGおよびIgM)のなかでIgGが最も豊富であり、IgG1サブクラスは最も有意の程度および範囲のエフェクター機能を表す。IgG1タイプの抗体は癌免疫療法で最も一般に使用される抗体である。構造上、IgGヒンジ領域およびCH2ドメインは抗体のエフェクター機能において主要な役割を演じている。(ヒンジ、CH2およびCH3ドメインの二量体化により形成される)Fc領域に存在するN結合したオリゴ糖がエフェクター機能に影響を及ぼす(図1)。全部の天然に存在する抗体のFc部分は、H鎖中の保存された位置で炭水化物鎖でさらに修飾される。IgGアイソタイプでは、N結合したグリコシル化部位は各CH2ドメイン中に存するAsn297でである。定常領域がアイソタイプとともに変動するため、各アイソタイプは異なる多数のN結合した炭水化物構造を有し、それらはタンパク質の集成、分泌若しくは機能的活性に多様に影響を及ぼす(非特許文献1)。結合されたN結合した炭水化物の構造はプロセシングの程度に依存してかなり変動し、そして、高マンノースの、複雑に分岐した、ならびに二分岐の複雑なオリゴ糖、ならびに図2に示される末端糖としてシアル酸(N−アセチルノイラミン酸すなわちNANA)、フコース、ガラクトースおよびGlcNac(N−アセチルグルコサミン)残基を包含し得る。宿主細胞のエフェクター機能および抗体のオリゴ糖含量に対する影響は認識されている(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献1;非特許文献4)。さらに、抗体中の糖鎖に関して、抗体のN−グリコシド結合した糖鎖の還元端の近位のN−アセチルグルコサミンでのフコースの付加若しくは修飾が該抗体のADCC活性を有意に変化させることが報告されている(特許文献1)。
【0005】
加えて、安定に工作された宿主細胞を使用する組換え治療タンパク質製造は、伝統的に、血清若しくは器官抽出物のような化学的に定義されない動物由来成分を補充した培地の使用を必要とした。バッチごとの変動性の問題のほかに、これらの汚染物質から生成物を精製する必要性、およびヒト病原体の伝播の可能性が、これらの成分を使用する場合に上昇する。この感受性は、狂牛病としてもまた知られる畜牛の神経変性疾患、牛海綿状脳症(BSE)が、ヒトを冒す疾患の病原体であると考えられる(非特許文献5)クロイツフェルト−ヤコブ(vCJD)と識別不可能であるという発見とともに、近年、より重大となった。従って、多くの規制当局は、細胞培地中での動物由来物質の中断若しくは制限された使用を強く推奨している。従って、無血清(SF)でありかつ/若しくは動物由来タンパク質を含まない(APF)哺乳動物細胞の増殖および維持のための既知組成(「CD」)培地が現在使用可能である。CD培地の欠点は、ほとんどの産生細胞株がそれ中での増殖に適応しないか、若しくはゆっくりと増殖しかつ乏しく産生することである。結果、グリコシル化が至適化された治療タンパク質の製造のための理想的産生細胞株は、CD培地中で増殖しつつ大スケールの商業的容量で組換えタンパク質を産生することもまた可能であることができる。
【0006】
従って、治療的組換えタンパク質の工業的製造では、タンパク質の有効性を改良しかつ至適化されたグリコシル化パターンを達成するための例えば酵素的手段による収集後処理に対する必要性を回避する、無血清および/若しくは無タンパク質培地中で増殖される、発現かつプロセシングされたタンパク質の至適化された炭水化物パターンに影響を及ぼすことが可能な細胞株に対する必要性が存在する(例えば特許文献2を参照されたい)。
【0007】
【特許文献1】第WO00/61739号明細書
【特許文献2】米国特許第6,399,336号明細書
【非特許文献1】Wright,A.とMorrison,S.L.、Trends Biotech.15:26−32(1997)
【非特許文献2】Lifely,M.R.ら、1995 Glycobiology 5:813−822
【非特許文献3】Jefferis,R.ら、1998 Immunol Rev.163:59−76
【非特許文献4】Presta L.2003.Curr Opin Struct Biol.13(4):519−25
【非特許文献5】Bruceら Nature 389:498−501、1997
【発明の開示】
【0008】
[発明の要約]
本発明は、既知組成の動物タンパク質を含まない培地中での増殖、および至適にグリコシル化された免疫グロブリン由来治療タンパク質を産生することが可能な細胞、細胞株および細胞培養物に関する。好ましい一態様において、該細胞株は、CD培地中で増殖するよう適応されたYB2/0ラット骨髄腫由来細胞株である。
【0009】
好ましい一態様において、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物は、組換えタンパク質を約10mg/Lないし約10,000mg/L培地で産生する。別の態様において、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物は、組換えタンパク質を約0.1pg/細胞/日ないし約100ng/細胞/日の濃度で産生する。
【0010】
本発明は、本発明の培養宿主細胞からの最低1種のタンパク質、例えば抗体若しくはFc含有タンパク質の製造方法をさらに提供する。好ましい一態様において、最低1種の所望のタンパク質を発現する本発明の細胞は既知組成培地で培養され、そしてタンパク質は
既知組成培地若しくは細胞それら自身から単離される。
【0011】
本発明の別の態様は、本発明の細胞株により産生される抗体若しくはFc含有治療タンパク質を含んでなる。本発明の抗体若しくはFc含有治療タンパク質は、限定されるものでないがヒト、マウス、ウサギ、ラット、げっ歯類、霊長類を挙げることができるいずれかの哺乳動物若しくはそれらのいずれかの組合せを包含し得るか若しくはそれらに由来し得、そして、単離されたヒト、霊長類、げっ歯類、哺乳動物、キメラ、ヒト化および/若しくはCDR移植抗体、免疫グロブリン、切断生成物、ならびにそれらの他の指定される部分およびバリアントを包含する。
【0012】
本発明の一局面において、抗体は、抗インテグリン抗体、抗組織因子抗体、または、それによりin vivoで被験体内の細胞の増殖を低下若しくは予防することが望ましくかつその活性が本発明の細胞株での抗体の産生により賦与されるか若しくは高められる、被験体内の細胞の表面で表示される抗原を結合することが可能な他の抗体である。
【0013】
[発明の詳細な記述]
略語
Ab=抗体、ポリクローナル若しくはモノクローナル;APF=動物タンパク質を含まない;CD=既知組成;CDR=相補性決定領域;Ig=免疫グロブリン;IgG=免疫グロブリンG;Mab=モノクローナル抗体;TF=組織因子。糖残基について:Fuc=フコシル;Gal=ガラクトシル;Glc=グルコシル;GlcNAc=N−アセチルグルコサミニル;Man=マンノシル;およびNANA=シアリル(N−アセチルノイラミニル、しかし5−N−アセチルノイラミン酸(NeuAc)若しくは5−N−グリコリルノイラミン酸(NeuGc、NGNA)もまた「シアル酸」として包含し得る;Mab=モノクローナル抗体;MALDI−TOF−MS=マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析。
【0014】
定義
「ADCC活性」という用語は、抗体依存性の細胞媒介性細胞傷害を表し、そして感作されないエフェクター細胞による抗体媒介性標的細胞破壊の現象を意味している。標的細胞の同一性は変動するが、しかし、それは、Fcドメイン、若しくはFc受容体活性化が可能なFcドメイン部分を有する結合された表面免疫グロブリンGを有しなければならない。エフェクター細胞はFc受容体を有する「キラー」細胞である。それは、例えば標的細胞の同一性に依存して慣習的B若しくはT細胞マーカーを欠くリンパ球、または単球、マクロファージ若しくは多核白血球でありうる。該反応は補体に依存しない。本発明の抗体若しくは他のFc含有タンパク質のADCC活性は、ADCC媒介性の細胞死滅を示すその能力が、代替宿主細胞により産生される実質的に類似の配列の抗体若しくはタンパク質およびFcドメインの能力を凌ぐ場合に「高められる」。ADCC活性は、本明細書で論考されるアッセイのような細胞死滅の標準的in vivo若しくはin vitroアッセイで測定しうる。好ましくは、高められたADCC活性を有する本発明の抗体は、代替宿主細胞で産生された参照抗体より低用量かつ/若しくは短時間で同一の効果(腫瘍細胞増殖の予防若しくは阻害)を達成する。好ましくは、本発明の範囲内の抗体および参照抗体の効力の間の差違は、例えば選択される標準的クロム遊離ADCCアッセイでの並列比較により決定されるところの最低約1.5倍、より好ましくは最低約2倍、なおより好ましくは最低約3倍、最も好ましくは最低約5倍である。
【0015】
「抗体」は、抗体分子全体、抗体フラグメント、若しくは免疫グロブリンのFc領域に同等な領域を包含する融合タンパク質を包含することを意図している。
【0016】
「抗体フラグメント」は、完全長抗体の一部分、一般にはその抗原結合すなわち可変ド
メインを含んでなる。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメント;二重特異性抗体;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子;ならびに抗体フラグメントから形成される多特異性抗体を包含する。こうした抗体フラグメントは、同一若しくは異なる種からの抗体のFcドメイン領域、または抗体の改変されたFcドメイン若しくはCH2ドメインに融合しうる(図1はこうした抗体の基礎構造を示す)。
【0017】
本明細書で使用されるところの「クローン化された」、「クローン的に派生した」若しくは「クローン性細胞株」という用語は、単一祖先細胞に由来する特定の細胞株からの遺伝的に同一の細胞の増殖する集団を意味している。YB2/0由来宿主細胞について、親細胞株は、米国特許第4,472,500号明細書に記述されかつATCC CRL 1662として寄託されたラット骨髄腫細胞株である。
【0018】
それが本明細書で使用されるところの抗体若しくは抗体アナログの「エフェクター機能」は、病原体若しくは異常な細胞例えば腫瘍細胞が破壊されかつ身体から除去される過程である。自然および獲得免疫応答は、病原体を排除するのにADCC、CA(補体活性化)、C1q結合およびオプソニン化を包含する同一のエフェクター機構の大部分を使用する。
【0019】
本明細書で使用されるところの「Fc」、「Fc含有タンパク質」若しくは「Fc含有分子」という用語は、最低1個の免疫グロブリンCH2ドメインを有する二量体若しくはヘテロ二量体タンパク質を指す。CH2ドメインは該タンパク質/分子(例えば抗体)の二量体領域の少なくとも一部分を形成し得る。
【0020】
フコシルトランスフェラーゼまたは「fut8」若しくは「fudase」は、fut8として知られる遺伝子、およびα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する遺伝子産物を指す。
【0021】
「Fc含有治療タンパク質」は、抗原結合ドメイン、Fc領域を有するか若しくは最低1個の免疫グロブリンCH2ドメインを含んでなる二量体若しくはヘテロ二量体タンパク質を意味することを意図しており、抗体のFc若しくはCH2を含んでなる部分は、グリコシル化されることが可能なアスパラギン残基を含有する。
【0022】
本明細書で使用されるところの「宿主細胞」という用語は、抗体および抗体フラグメントを包含する目的のタンパク質、タンパク質フラグメント若しくはペプチドを生成するように工作し得るいかなる種類の細胞系も包括する。宿主細胞は、限定されるものでないが、培養細胞、例えば、CHO、BHK、NSO、SP2/0、YB2/0のようなげっ歯類(ラット、マウス、モルモット若しくはハムスター)由来の哺乳動物培養細胞;またはヒト組織若しくはハイブリドーマ細胞、酵母細胞および昆虫細胞、しかしまたトランスジェニック動物若しくは培養組織内に含まれる細胞も挙げることができる。
【0023】
本明細書で使用されるところの「モノクローナル抗体」若しくは「モノクローナル抗体組成物」または「Mab」という用語は、実質的に単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定の1エピトープに対する単一の結合特異性およびアフィニティーを表す。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一抗原部位に向けられる。さらに、多様な決定子(エピトープ)に向けられた多様な抗体を典型的に包含する慣習的(ポリクローナル)抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一決定子に向けられる。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均質な集団から得られるところの抗体の特徴を示し、そしていずれかの特定の方法による抗体の製造を必要とすると解釈されるべきでない。例えば、本発明で使用されるべきモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature 256:495(1975)により最初に記述
されたハイブリドーマ法により作成しうるか、若しくは組換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)により作成しうる。「モノクローナル抗体」はまた、例えばClarksonら、Nature 352:624−628(1991)およびMarksら、J.Mol.Biol.222:581−597(1991)に記述される技術を使用してファージ抗体ライブラリーからも単離しうる。
【0024】
モノクローナル抗体は、本明細書で、Hおよび/若しくはL鎖の一部分が、特定の1種由来または特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一若しくはそれに相同である一方、該鎖(1本若しくは複数)の残部が、別の種由来または別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体、ならびにそれらが所望の生物学的活性を表す限りはこうした抗体のフラグメント中の対応する配列と同一若しくはそれに相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)をとりわけ包含する(米国特許第4,816,567号明細書およびMorrisonら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA
81:6851−6855(1984))。
【0025】
「ヒト化」形態のヒト以外(例えばマウス)抗体は、ヒト以外の免疫グロブリンに由来した実質的に置換された配列部分を有するキメラ抗体である。ほとんどの部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域(相補性決定領域すなわちCDRとしてもまた知られる)残基が、所望の特異性、アフィニティーおよび能力を有するマウス、ラット、ウサギ若しくはヒト以外の霊長類のようなヒト以外の種からの超可変領域残基(ドナー抗体)により置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンの枠組み領域(FR)残基は対応するヒト以外の残基により置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体若しくはドナー抗体中で見出されない残基を含みうる。これらの改変は抗体の性能をさらに改良するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、最低1および典型的には2個の可変ドメインの実質的に全部を含むことができ、ここで、超可変領域の全部若しくは実質的に全部がヒト以外の免疫グロブリンのものに対応し、また、FRの全部若しくは実質的に全部がヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、場合によっては、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトIgG免疫グロブリンのものの少なくとも一部分もまた含むことができる。さらなる詳細については、Jonesら、Nature 321:522−525(1986);Reichmannら、Nature 332:323−329(1988);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。
【0026】
本明細書で使用されるところの「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変および/若しくは定常領域を有するアミノ酸配列を有する抗体を指す。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列を使用して、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを免疫すること、若しくはヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによりある系から該抗体が得られる場合に、特定の一生殖系列配列「に由来し」、そして、ここで、選択されるヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列にアミノ酸配列が最低90%、より好ましくは最低95%、なおより好ましくは最低96%、97%、98%若しくは99%同一である。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸配列(例えばin vitroで無作為若しくは部位特異的突然変異誘発により、またはin vivoで体細胞突然変異により導入される突然変異)を包含することができ、そして、超可変配列若しくは相補性決定領域(CDR)配列が抗体特異性の独特の決定子でありかつ生殖系列中でコードされない限りは、これらの領域は配列同一性分析から除外すべきである。
【0027】
本明細書で使用されるところの「組換え抗体」という用語は、(a)ヒト免疫グロブリ
ン遺伝子に対しトランスジェニック若しくは導入染色体(transchromosomal)である動物(例えばマウス)またはそれから調製したハイブリドーマ(さらに下述する)から単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマ(transfectoma)から単離された抗体、(c)組換えのコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを必要とするいずれかの他の手段により製造、発現、創製若しくは単離された抗体、のような組換え手段により製造、発現、創製若しくは単離される全部の抗体を包含する。組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変および定常領域を有する。ある態様においては、しかしながら、こうした組換えヒト抗体はin vitro突然変異誘発(若しくは、ヒトIg配列についてトランスジェニックの動物を使用する場合にはin vivo体細胞突然変異)にかけることができ、そして、従って、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列由来かつそれらに関係しつつ、in vivoでのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しなくともよい配列である。
【0028】
本明細書で使用されるところの「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことを意図している(例えば、組織因子に特異的に結合する単離された抗体は、組織因子以外の抗原を特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。ヒト組織因子の1エピトープ、アイソフォーム若しくはバリアントに特異的に結合する単離された抗体は、しかしながら、例えば他の種からの他の関連した抗原(例えば組織因子種ホモログ)に対する交差反応性を有しうる。さらに、単離された抗体は他の細胞物質および/若しくは化学物質を実質的に含まないことができる。本発明の一態様において、異なる特異性を有する「単離された」モノクローナル抗体の組合せは、十分に定義された組成物中で組合せられる。
【0029】
「二特異性分子」という用語は、2種の異なる結合特異性を有するいかなる剤、例えばタンパク質、ペプチド、またはタンパク質若しくはペプチド複合体も包含することを意図している。例えば、該分子は(a)細胞表面抗原および(b)エフェクター細胞の表面上のFc受容体に結合若しくはそれらと相互作用しうる。「多特異性分子」若しくは「異種特異性分子」という用語は、2種以上の異なる結合特異性を有するいかなる剤、例えばタンパク質、ペプチド、またはタンパク質若しくはペプチド複合体も包含することを意図している。例えば、該分子は(a)細胞表面抗原、(b)エフェクター細胞の表面上のFc受容体、および(c)最低1種の他の成分に結合若しくはそれらと相互作用しうる。従って、本発明は、限定されるものでないが、細胞表面受容体若しくはこうした受容体のリガンドでありうる標的タンパク質、およびエフェクター細胞上のFc受容体のような他の標的に向けられる、二特異性、三特異性、四特異性および他の多特異性分子を挙げることができる。
【0030】
本明細書で使用されるところの「異種抗体」という用語は、それらの最低2種が異なる特異性を有する、一緒に連結された2種若しくはそれ以上の抗体、抗体の結合フラグメント(例えばFab)、それらからの誘導体、若しくは抗原結合領域を指す。これらの異なる特異性は、エフェクター細胞上のFc受容体に対する結合特異性、および標的細胞例えば腫瘍細胞上の抗原若しくはエピトープに対する結合特異性を包含する。
【0031】
至適にグリコシル化された免疫グロブリン由来治療タンパク質は、N結合グリコシル化部位を有するヒト若しくはヒト由来CH2領域を含んでなる組換えタンパク質を含んでなり、それらの部位は、エフェクター機能として集合的に知られる、細胞免疫機構をin vivoで導き出す前記治療タンパク質の変えられた(相対的に高められた若しくは減少された)能力を賦与するグリカンにより占有される。
【0032】
生物製薬学的製品を製造するために、組換えポリペプチド(1種若しくは複数)の効率的かつ再現可能な発現が可能な産生細胞株が必要とされる。該細胞株は安定かつ貯蔵可能(bankable)である。該細胞株は、1mlあたり500,000(5×105)細胞以上、好ましくは培養物1ml若しくはそれ以上あたり百万(1×106)以上の濃度でである高密度での増殖が可能である。多様な宿主細胞株を本目的上使用し得る。細胞の機構が生物治療生成物の最終量および組成にどのように影響するかの複雑さの理解として、必要とされる属性を生成物の製造法および組成に与えることができる宿主細胞株の選択がより明らかになる。
【0033】
米国特許第4,472,500号明細書は、ハイブリドーマ融合パートナーとして有用かつ優れた安定性および生産能力をもつラット骨髄腫細胞株を教示する。後者の細胞株は、Y0、YB2、Ag0、YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞、若しくはYB2/0(ATCC CRL 1662)と多様に呼称され、そして下でYB2/0と称するであろう。Lifelyら(1995 Glycobiology 5:813−822)は、CHO細胞株、NS0細胞若しくはラット骨髄腫Y0(YB2/0)細胞により産生されたCDR移植ヒトIgG1抗体CAMPATH−1Hに結合された糖鎖の組成を比較した。加えてADCC活性を評価した。Y0細胞により産生されたCAMPATH−1Hは最高のADCC活性を示し、そしてN結合したオリゴ糖の分岐位置でN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の最高含量を有したことが報告された(図2A−E)。これは、多様な型のN結合したオリゴ糖に分岐GlcNAcを付加するグリコシルトランスフェラーゼ、GlcNAc−トランスフェラーゼIII(GnT III)が通常はCHO細胞に存在しないためである(StanleyとCampell、1984、J.Biol.Chem.261:13370−13378)。C2B8、リツキシマブのような治療抗体のADCC能力を増大させるための他の努力は、至適化されたレベルのGnT酵素をもつ宿主細胞株を工作することに焦点を当てた(Umanaら 米国特許第6602684号明細書)。後者の発明者は、GnT IIIの高レベルまでの過剰発現が増殖阻害につながり、そして異なるグリコシルトランスフェラーゼGnT Vの過剰発現がそうであったように細胞に対し毒性であったことをさらに発見した。従って、低下された細胞生存率および生産性は、糖タンパク質を修飾するグリコシルトランスフェラーゼの過剰発現の一般的特徴でありうる。
【0034】
多様な細胞宿主により産生されたMabのオリゴ糖組成についての第二の観察結果(Lifely 上記)は、CHOおよびNSOが産生したMabは優先的にフコシル化されたオリゴ糖を有した(図2C〜D、構造16−30)一方、YB2/0が産生したMabは、より多くのフコシル化されない構造を包含したより複雑なパターンを有した(図2A、BおよびE;構造1−15および31−36)ことであった。
【0035】
この観察結果の後、N結合したオリゴ糖構造をフコシル化する原因である酵素、すなわちfut8の遺伝子産物かつ「fuダーゼ」ともまた称されるα−1,6−フコシルトランスフェラーゼが、CHO若しくはNSO細胞株でよりYB2/0細胞中でより低かったことが示された。従って、fut8遺伝子は類似の効果を伴い、宿主細胞株中で操作し得る(Shinkawaら 2003 J.Biol.Chem.、278:3466−3473;欧州特許第EP1176195A1号明細書)。さらに、二分岐オリゴ糖のガラクトシル化の相対的寄与、分岐GlcNAcの存在、およびフコシル化は、フコシル化されないMabが、N結合した二分岐オリゴ糖構造への他の修飾よりも、in vitroおよびin vivoで測定されるところのADCCを高めるより大きな能力を表すことを示す(Shieldsら 2002.J Biol Chem.277:26733−40;Ninwaら 2004.Cancer Res.64:2127−2133)。
【0036】
目的に駆動される細胞株の開発
産生細胞株の開発は、典型的に、(マウス骨髄腫Sp2/0、CDを適応させたSp2/0(C463)およびNS/0のような)宿主細胞株への抗体遺伝子のトランスフェクション、ならびに高レベルの所望の抗体を発現するトランスフェクトーマを単離することを必要とする。いくつかの例、例えば、治療抗体が生物学的標的分子を中和するよう作用するcA2抗体において、抗体は、循環TNF−αを結合しかつその後枯渇させることにより機能する。他の例において、抗体は、特定の抗原、例えば組織因子を過剰発現する癌細胞を標的とすることにより機能する。組織因子への抗体の結合は組織因子活性を中和する一方、癌細胞は、結合されたFcの認識により活性化される抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)経路により死滅される。抗体が標的とする細胞への溶解攻撃であるADCCは、抗体の定常領域(Fc)へのリンパ球受容体FcγRの結合に際して誘発される。
【0037】
本発明の組成物
本発明は、CD培地中で継続的に増殖する能力を有するクローン性骨髄腫細胞株に関する。一態様において、クローン性骨髄腫細胞株は、FBS補充したCD−Hyb(CD−hybridoma、Gibco)培地から6継代にわたり培養物を徐々に離脱する(wean)ことにより、YB2/0細胞バンクからクローン化される自然突然変異体である。本態様において、クローン性骨髄腫細胞株をC1083Bと称する。C1083Bの特徴付けは、該細胞株が親YB2/0細胞と関連しない多数の独特の増殖の特徴を有することを示した。例えば、C1083Bは血清(YB2/0親細胞株の必要な低温保存剤)の非存在下で凍結かつ融解しうる。加えて、親株と異なり、C1083BはCD培地中で高細胞密度まで増殖し得る。さらなる特徴付けは、CD培地中で増殖させたC1083Bが、血清を補充した増殖培地中で細胞を維持する場合に観察されるものと同様若しくはより優れている、生存可能細胞密度および倍加時間を包含する増殖パラメータを表すことを示した。C1083Eと称されるC1083Aの第二のサブクローンを、6mMグルタミンのみを補充したCD−Hyb培地中へ直接の3週間のC1083A細胞培養物の増殖により選択した。
【0038】
別の態様において、クローン性骨髄腫細胞株は、レクチンを補充したCD培地を用いる選択によりC1083B細胞バンクから派生される。この場合に使用するレクチンはレンズマメ(Lens culinaris)アグルチニン(LCA)であるが;しかしながら、2種のフコース特異的レクチンのいずれも選択に使用しうる。本態様において、クローン性骨髄腫細胞株をC1083CおよびC1083Dと称する。C1083CおよびC1083Dの増殖の特徴付けは、それらがCD−Hyb中でC1083Bに比較可能であったことを示した。
【0039】
従って、C1083B細胞および誘導体は、in vitroで無限の維持、成長および増殖が可能である。C1083B細胞は、増殖し、継代培養し得(すなわち新たな培養容器に繰り返し継代し得)、そして長期間低温保存し(例えば、10%ジメチルスルホキシド若しくはグリセロールのような低温保存剤とともに液体窒素の蒸気相中に保存し)得る。C1083B細胞は細胞株として長期培養物で維持し得る。
【0040】
ほとんどの部分について、本発明の細胞は、ガス交換が可能な適して無菌の環境を提供する、細胞を培養するのに使用されるいかなる容器、フラスコ、組織培養皿若しくは装置中でも増殖される。典型的には、本発明で使用される基礎(foundative)培養物は、細胞を既存の親C1083B細胞ストックから取り出し、血清含有および無血清培地中で培養容器中に入れ、そしてその後本明細書に詳細に記述されるとおり無血清状態に継代するものである。
【0041】
好ましい一態様において、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物は、げっ歯類若しく
は霊長類由来の免疫グロブリン若しくはそのフラグメントを産生しうる。より具体的には、免疫グロブリン若しくはそのフラグメントはマウス若しくはヒト由来でありうる。あるいは、免疫グロブリン若しくはそのフラグメントはキメラでありうるか若しくは工作されていることができる。事実、本発明は、ヒト化、CDR移植、ファージに表示、トランスジェニックマウスに産生、至適化、突然変異誘発、無作為化され若しくは組換えられている免疫グロブリン若しくはそのフラグメントを産生する細胞、細胞株および細胞培養物をさらに企図している。
【0042】
抗体のクラス若しくはアイソタイプ(IgA、IgD、IgE、IgG若しくはIgM)は、H鎖定常領域遺伝子によりコードされる定常領域により与えられる。ヒトIgGクラスのなかに、4種のサブクラス若しくはサブタイプ、すなわち最高から出発して最低への血清中のその天然の豊富さの順序で命名されたIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4が存在する。IgA抗体は2種のサブクラスIgA1およびIgA2として見出される。本明細書で使用されるところの「アイソタイプスイッチ」は、IgGサブクラス若しくはサブタイプ間の変化もまた指す。
【0043】
本発明の細胞、細胞株および細胞培養物は、限定されるものでないがIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、slgA、IgD、IgE、およびそれらのいずれかの構造若しくは機能アナログを挙げることができる、免疫グロブリン若しくはそのフラグメントを産生しうる。特定の一態様において、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物で発現される免疫グロブリンはCNTO860(ヒトhuIgG1由来定常ドメインに融合されたcCLB8可変ドメイン)である。
【0044】
本発明は、抗原、サイトカイン、インテグリン、抗体、増殖因子、細胞周期タンパク質、ホルモン、神経伝達物質、受容体若しくはそれらの融合タンパク質、血液タンパク質、それらのいずれかのフラグメント、および前述のいずれかのいかなる構造若しくは機能アナログも結合する、CH2ドメイン中のグリコシル化が可能な免疫グロブリン若しくはそのフラグメントを発現する細胞、細胞株および細胞培養物をさらに提供する。好ましい一態様において、免疫グロブリン、そのフラグメント若しくは誘導体は標的細胞の表面上の抗原を結合する。とりわけ好ましい一態様において、標的細胞は腫瘍細胞、腫瘍脈管構造の細胞若しくは免疫細胞である。特定の一態様において、免疫グロブリン、そのフラグメント若しくは誘導体は組織因子に結合する。本発明の抗組織因子抗体の一例は、C1261と称される細胞株により産生されるCNTO860である。
【0045】
なお別の態様において、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物は、増殖因子若しくはホルモンを含んでなる融合タンパク質を検出可能に発現しうる。本発明により企図される増殖因子の例は、限定されるものでないが、ヒト成長因子、血小板由来増殖因子、上皮細胞成長因子、線維芽細胞増殖因子、神経成長因子、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、骨形成タンパク質、トランスフォーミング増殖因子、インスリン様増殖因子、若しくはグルカゴン様ペプチド、およびそれらのいずれかの構造若しくは機能アナログを挙げることができる。
【0046】
本発明の単離された抗体は、ADCC活性をもつ抗体アイソタイプ、とりわけヒトIgG1(例えばIgG1κおよびIgG1λ)を有するものを包含し、そして、IgG2およびIgG3がより少なく好ましいか、若しくはFcドメイン中の特定の残基に変えられた残基を含有するハイブリッドアイソタイプが他の種からのそれらの対照物である。抗体は完全長抗体(例えばIgG1)であり得るか、または、抗原結合部分、ならびにADCC、補体活性化およびC1q結合を包含するエフェクター機能を導き出すことが可能なFcの部分若しくはドメインのみを包含し得る。
【0047】
さらに、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物により産生される免疫グロブリンフラグメントは、限定されるものでないが、Fc若しくは他のCH2ドメイン含有構造およびそれらのいずれかの構造若しくは機能アナログを挙げることができる。一態様において、免疫グロブリンフラグメントは二量体の受容体ドメイン融合ポリペプチドである。特定の一態様において、二量体受容体ドメイン融合ポリペプチドはエタネルセプトである。エタネルセプトは、皮下に投与されかつ患者の血清中のTNFαに結合してそれを生物学的に不活性にする、組換えの可溶性TNFα受容体分子である。エタネルセプトは、ヒトIgG1のFc部分に連結されたヒト75キロダルトン(p75)腫瘍壊死因子受容体(TNFR)の細胞外リガンド結合部分よりなる二量体融合タンパク質である。エタネルセプトのFc成分はCH2ドメイン、CH3ドメインおよびヒンジ領域を含有するが、しかしIgG1のCH1ドメインを含有しない。
【0048】
本発明の細胞株を使用する製造に従いやすい他の生成物は、他の型の動物細胞株により現在製造されかつグリコシル化されることが可能なCH2を有する治療若しくは予防タンパク質を包含する。細胞表面上の標的抗原に結合する治療的なグリコシル化されたCH2ドメイン含有タンパク質がとりわけ好ましく、その細胞型は能力を奪うか若しくは身体から排除することが望ましい。多数のこうした治療抗体が、ヒトIgG1、とりわけヒトCH1、CH2およびCH3ドメインを含んでなるIgG1κ、H鎖を含有するよう工作されている。こうした治療タンパク質は、限定されるものでないが:
【0049】
現在REMICADE(R)として販売されるインフリキシマブ。インフリキシマブは、149,000ダルトンのおよその分子量をもつキメラIgG1κモノクローナル抗体である。それはヒト定常およびマウス可変領域から構成される。インフリキシマブは1010M−1の会合定数でヒト腫瘍壊死因子α(TNF(α))に特異的に結合する。インフリキシマブは、可溶性および膜貫通の形態のTNF(α)に高アフィニティーで結合することによりTNF(α)の生物学的活性を中和し、そしてTNF(α)のその受容体との結合を阻害する。インフリキシマブにより結合された膜貫通TNF(α)を発現する細胞はin vitro若しくはin vivoで溶解され得る。インフリキシマブは、関節リウマチ、クローン病および強直性脊椎炎の処置に指示される。インフリキシマブは、静脈内注入として与えられる3ないし5mg/kgの用量、次いで処置されるべき疾患に依存してその後2、6および/若しくは8週の、ならびに8週ごとの間隔での付加的な類似の用量として与えられる。
【0050】
ダクリズマブ(ZENAPAX(R)として販売される)は、活性化されたリンパ球の表面上で発現されるヒト高アフィニティーインターロイキン−2(IL−2)受容体のαサブユニット(p55 α、CD25若しくはTacサブユニット)に特異的に結合する、組換えDNA技術により製造された免疫抑制性ヒト化IgG1モノクローナル抗体である。ダクリズマブは、相補性決定領域(CDR)移植されたマウス−ヒトキメラ抗体である。ヒト配列は、ヒトIgG1の定常ドメインおよびEu骨髄腫抗体の可変枠組み領域由来であった。マウス配列はマウス抗Tac抗体のCDR由来であった。ダクリズマブは、腎移植を受領する患者での急性臓器拒絶の予防に指示され、また、一般に、シクロスポリンおよびコルチコステロイドを包含する免疫抑制レジメンの一部として使用される。
【0051】
バシリキシマブ(SIMULECT(R)として販売される)は、活性化されたTリンパ球の表面上のインターロイキン−2受容体(α)−鎖(IL−2R(α)、CD25抗原としてもまた知られる)に特異的に結合しかつ阻害する免疫抑制剤として機能する、組換えDNA技術により製造されるキメラ(マウス/ヒト)モノクローナル抗体である。アミノ酸配列に基づき、該タンパク質の計算される分子量は144キロダルトンである。それは、ヒトHおよびL鎖定常領域遺伝子(IgG1)、ならびにIL−2R(α)に選択的に結合するRFT5抗体をコードするマウスHおよびL鎖可変領域遺伝子を含有するプラスミドを発現するよう遺伝子的に工作された、樹立マウス骨髄腫細胞株の醗酵から得ら
れる糖タンパク質である。バシリキシマブは、シクロスポリンおよびコルチコステロイドを包含する免疫抑制レジメンの一部として使用される場合に、腎移植を受領する患者での急性臓器拒絶の予防に指示される。
【0052】
アダリムマブ(HUMIRA(R)として販売される)は、ヒト腫瘍壊死因子(TNF)に特異的な組換えヒトIgG1モノクローナル抗体である。アダリムマブは、ヒト由来HおよびL鎖可変領域ならびにヒトIgG1 κ定常領域をもつ抗体をもたらすファージディスプレイ技術を使用して創製された。HUMIRA(R)は、1種若しくはそれ以上のDMARDに対する不十分な応答を有した、中程度ないし重度に活動性の関節リウマチを伴う成人患者での構造の損傷の徴候および症状を低下させかつその進行を阻害するために指示される。HUMIRA(R)は単独でまたはMTX若しくは他のDMARDと組合せで使用し得る。
【0053】
リツキシマブ(RITUXAN(R)として販売される)は、正常および悪性Bリンパ球の表面上で見出されるCD20抗原に向けられた、遺伝子的に工作されたキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体である。該抗体は、マウスLおよびH鎖可変領域配列ならびにヒト定常領域配列を含有するIgG1 κ免疫グロブリンである。リツキシマブは、およそ8.0nMのCD20抗原に対する結合アフィニティーを有する。リツキシマブは再発性若しくは難治性の低グレード若しくは濾胞性CD20陽性B細胞非ホジキンリンパ腫を伴う患者の処置に指示される。RITUXAN(R)は4若しくは8用量にわたり週1回375mg/m 2 IV注入で与えられる。
【0054】
トラスツズマブ(HERCEPTIN(R)として販売される)は、ヒト上皮細胞成長因子受容体2タンパク質HER2の細胞外ドメインに、細胞に基づくアッセイで高アフィニティー(Kd=5nM)で選択的に結合する、組換えDNA由来ヒト化モノクローナル抗体である。該抗体は、HER2に結合するマウス抗体(4D5)の相補性決定領域とともにヒト枠組み領域を含有するIgG 1 κである。HERCEPTINは、その腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現しかつ彼らの転移性疾患に対し1種若しくはそれ以上の化学療法レジメンを受領した転移性乳癌を伴う患者の処置のための単剤療法として指示される。パクリタキセルと組合せのHERCEPTIN(R)は、その腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現しかつ彼らの転移性疾患に対し化学療法を受領したことがない転移性乳癌を伴う患者の処置に指示される。推奨される投薬量は、90分注入として投与される4mg/kgトラスツズマブの初期負荷用量、および初期負荷用量が十分に耐えられた場合に30分注入として投与し得る2mg/kgトラスツズマブの週1回維持用量である。
【0055】
アレムツズマブ(CAMPATH(R)として販売される)は、21〜28kDの細胞表面糖タンパク質CD52に向けられる組換えDNA由来ヒト化モノクローナル抗体(Campath−1H)である。アレムツズマブは、本質的に全部のBおよびTリンパ球、単球、マクロファージおよびNK細胞の大多数、顆粒球の一亜集団、ならびに男性生殖器官の組織の表面上に存在する非調節抗原CD52に結合する。Campath−1H抗体は、ヒト可変枠組みおよび定常領域、ならびにマウス(ラット)モノクローナル抗体(Campath−1G)からの相補性決定領域をもつIgG1 κである。Campathは、アルキル化剤で処置されかつフルダラビン療法に失敗した患者でのB細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)の処置に指示される。Campathの有効性の決定は全体奏功率に基づく。Campathは、当初1日に2時間のIV注入として投与される3mgで与えられ;一旦耐えられれば、1日用量を10mgに増加させかつ耐えられるまで継続すべきである。この用量レベルが一旦耐えられれば、Campath 30mgの維持用量を開始することができ、そして12週まで週あたり3回投与しうる。大部分の患者で、30mgへの増加は3〜7日で達成し得る。
【0056】
オマリズマブ(XOLAIR(R)として販売される)は、ヒト免疫グロブリンE(IgE)に選択的に結合する組換えヒト化IgG1(κ)モノクローナル抗体である。オマリズマブは、肥満細胞および好塩基球の表面上の高アフィニティーIgE受容体(Fc(ε)RI)へのIgEの結合を阻害する。Fc(ε)RIを持つ細胞上の表面に結合したIgEの減少は、アレルギー応答のメディエーターの遊離の程度を制限する。オマリズマブでの処置はまた、アトピー患者での好塩基球上のFc(ε)RI受容体の数も減少させる。オマリズマブは、通年性空気アレルゲンに対する陽性の皮膚試験若しくはin vitro反応性を有しかつその症状が吸入コルチコステロイドで不十分に制御される、中等度ないし重度の持続性喘息を伴う成人および青年(12歳およびより上)に指示される。オマリズマブは150ないし375mgの用量で2若しくは4週ごとにSC投与する。
【0057】
エファリズマブ(RAPTIVA(R))は、ヒトCD11aに結合する免疫抑制性組換えヒト化IgG1 κアイソタイプモノクローナル抗体である。エファリズマブは、全白血球上で発現される白血球機能抗原−1(LFA−1)の(α)サブユニットCD11aに結合し、そしてCD11aの細胞表面発現を減少させる。エファリズマブは、細胞内接着分子−1(ICAM−1)へのLFA−1の結合を阻害して、それにより他の細胞型への白血球の接着を阻害する。LFA−1とICAM−1の間の相互作用は、Tリンパ球の活性化、内皮細胞へのTリンパ球の接着、および乾癬の皮膚を包含する炎症の部位へのTリンパ球の移動を包含する複数の過程の開始および維持に寄与する。リンパ球の活性化および皮膚への輸送は慢性の尋常性乾癬の病態生理学である役割を演じている。乾癬の皮膚では、ICAM−1の細胞表面発現が内皮およびケラチノサイト上で上方制御されている。CD11aは、Bリンパ球、単球、好中球、ナチュラルキラー細胞および他の白血球の表面上でもまた発現されている。従って、エファリズマブがTリンパ球以外の細胞の活性化、接着、移動および数に影響を及ぼす可能性が存在する。RAPTIVA(R)の推奨用量は、単回の0.7mg/kg SC馴化用量、次いで1mg/kgの週1回のSC用量(合計200mgを超えない最大単回用量)である。
を挙げることができる。
【0058】
別の態様において、本発明の細胞株は、免疫グロブリンに由来しないポリペプチドを発現するように安定にトランスフェクト若しくは別の方法で工作されている。
【0059】
なお別の態様において、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物は、組換え血液タンパク質若しくは他の結合組織タンパク質を検出可能に発現しうる。こうした組換えタンパク質は、限定されるものでないが、エリスロポエチン、トロンボポエチン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、フィブリノーゲン、ヘモグロビン、トランスフェリン、アルブミン、プロテインc、コラーゲン、およびそれらのいずれかの構造若しくは機能アナログを挙げることができる。特定の一態様において、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物は組織プラスミノーゲンアクチベーターを発現する。
【0060】
本発明の抗体およびタンパク質をコードする核酸は、当該技術分野で公知のいくつかの方法で派生させ得る。一局面において、抗体は、マウスを本発明のペプチドで免疫することにより製造されるハイブリドーマから便宜的に得られる。抗体は従って、当該技術分野で公知のハイブリドーマ技術(例えば、Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons,Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク(1987−2001);Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989);HarlowとLane、antibodies,a Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989);Colliganら編、Current Protocols in Immunology、John Wiley &
Sons,Inc.、ニューヨーク(1994−2001);Colliganら、Current Protocols in Protein Science、John Wiley & Sons、ニューヨーク州ニューヨーク(1997−2001)(それぞれそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい)のいずれを使用しても得ることができる。
【0061】
抗体の標的結合部分、典型的には抗体の可変Hおよび/若しくは可変Lドメインの別の便宜的派生方法において、例えばファージライブラリーで創製されるこうした結合ドメインのライブラリーからこれらの部分を選択する。ファージライブラリーは、無作為オリゴヌクレオチドのライブラリー、または免疫した動物若しくはヒトのB細胞からのような目的の配列を含有するポリヌクレオチドのライブラリー(Smith,G.P.1985.Science 228:1315−1317)を挿入することにより創製し得る。抗体ファージライブラリーは、1ファージ中にHおよびL鎖可変領域対を含有し、一本鎖Fvフラグメント若しくはFabフラグメントの発現を可能にする(Hoogenboomら
2000、Immunol.Today 21(8)371−8)。ファージミドライブラリーの多様性は、付加的な所望のヒトモノクローナル抗体を製造しかつその後同定するようにライブラリーのモノクローナル抗体の免疫特異性を増大しかつ/若しくは変えるように操作し得る。例えば、H鎖およびL鎖免疫グロブリン分子をコードする遺伝子を、集成された免疫グロブリン分子中で新たなHL対を創製するように無作為に混合(シャッフル)し得る。加えて、HおよびL鎖をコードする遺伝子のいずれか若しくは双方を、免疫グロブリンポリペプチドの可変領域の相補性決定領域(CDR)中で突然変異誘発し得、そしてその後、所望のアフィニティーおよび中和能力についてスクリーニングし得る。抗体ライブラリーは、1種若しくはそれ以上のヒト枠組み配列を選択すること、およびヒト抗体レパートリー由来のCDRカセットの集合物を導入することにより、または設計された変動(Kretzschmarとvon Ruden 2000、Current Opinion in Biotechnology、13:598−602)によってもまた合成で創製し得る。多様性の位置はCDRに制限されないが、しかし、可変領域の枠組みセグメントもまた包含し得るか、若しくはペプチドのような抗体可変領域以外を包含しうる。
【0062】
抗体可変領域以外を包含しうる標的結合成分の他のライブラリーは、リボソームディスプレイ、酵母ディスプレイおよび細菌ディスプレイである。リボソームディスプレイは、タンパク質をRNAに結合されたまま保ちながらのmRNAのそれらの同族のタンパク質への翻訳方法である。核酸のコーディング配列はRT−PCRにより回収される(Mattheakis,L.C.ら 1994.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91、9022)。酵母ディスプレイは、膜結合α−アグルチニン酵母接着受容体aga1およびaga2(接合型系の一部)の融合タンパク質の構築に基づく(Broderら 1997.Nature Biotechnology、15:553−7)。細菌ディスプレイは、細胞膜若しくは細胞壁と会合する輸送された細菌タンパク質への標的の融合に基づく(ChenとGeorgiou 2002.Biotechnol Bioeng、79:496−503)。
【0063】
ハイブリドーマ技術に比較して、ファージおよび他の抗体ディスプレイ法は、in vitroでかつ抗原に対する宿主の影響の可能性の制限なしに、若しくはその逆で、抗原標的に対する選択を操作する機会を提供する。
【0064】
製造方法
安定にトランスフェクトされたとして一旦樹立されれば、本発明のYB2/0細胞株を低温保存しかつ製造操作を開始するために再生し得る。典型的には、該細胞株は10%DMSOを補充したCD−Hybridoma培地中、バイアルあたり1×107細胞で貯
蔵する。製造操作の開始時に、細胞のバイアルを融解し、10mlのCD−Hybridoma培地を含有するフラスコに内容物を移し、そしてフラスコを37℃/5%CO2でインキュベートする、その後、培養物をより大きな容器中で増殖させ、それを順に所望の容量の灌流バイオリアクターに移す(Deoら 1996.Biotechnol.Prog.12:57−64)。
【0065】
例えば、本発明のクローン性骨髄腫細胞株は、約0.01mg/Lないし約10,000mg/L培地の濃度で組換えタンパク質を産生するよう操作しうる。別の態様において、本発明のクローン性骨髄腫細胞株は、約0.1pg/細胞/日ないし約100ng/細胞/日の濃度で組換えタンパク質を産生するよう操作しうる。
【0066】
本発明のC1083B〜E細胞の増殖および維持を支援するために本発明で有用な培地若しくは増殖培地は、無血清培地(SFM)、無タンパク質培地(PF)、動物由来成分を含まない(ADCF)培地、および既知組成(CD)処方を包含する。本発明で使用されるところのCD培地は、血清、血清タンパク質、加水分解物、若しくは未知組成の化合物を包含する動物起源のいかなる成分も欠く増殖培地を含んでなる。CD培地の全成分は既知の化学構造を有し、以前に論考されたバッチごとの変動性の排除をもたらす。
【0067】
本発明で使用されるCD培地は、限定されるものでないが、Invitrogen Corp.、カリフォルニア州カールズバッドにより製造されるCD培地、CD−Hybridoma(カタログ番号11279)を挙げることができる。CD Hybridoma培地は、多様なハイブリドーマおよび骨髄腫の増殖、ならびに静止若しくは攪拌懸濁系でのモノクローナル抗体の製造に至適化された既知組成の無タンパク質培地である。CD
Hybridoma培地は動物、植物若しくは合成起源のタンパク質を含有しない。処方中に、定義されないライセート若しくは加水分解物もまた存在しない。CD Hybridoma培地は、増大された安定性のためL−グルタミンを含まず処方される。グルタミンは、使用前の培地1,000mlあたり40mlの200mM L−グルタミン若しくは40mlのGlutaMAXTM−I補充物(またInvitrogenから入手可能)として添加しうる。Hybridoma培地のマスターファイルがFDAに提出されている。CD Hybridoma培地は、NSO由来株のような脂質依存性若しくはコレステロール依存性の培養物に対し至適化されていない。
【0068】
増殖プロファイルのため、CD−Hybridoma培地に1g/L NaHCO3、および6mMの最終濃度までのL−グルタミンを補充した。本発明は、「Chemically Defined Medium For Cultured Mammalian Cells(培養哺乳動物細胞のための既知組成培地)」と題されたPCT公開第WO 02/066603号明細書(引用することにより明らかに組み込まれる)に記述される「CDM培地」を包含する既知組成培地の使用もまた企図している。
【0069】
エフェクター機能の評価方法
治療的Fc含有タンパク質の消失および従って薬物動態における抗体グリコシル化の役割は不明である。すなわち、循環からのIgG除去の原因と考えられる新生児Fc受容体(FcRn)への結合は、抗体のFc部分のN結合したオリゴ糖の欠如により破壊されないようである。
【0070】
細胞のエフェクター機能とIgG抗体媒介性免疫応答を結びつけるIgG Fc受容体(FcR)は、Fcγ受容体、すなわちFcRI(CD64)、FcRII(CD32)およびFcRIII(CD16)を包含する。全3種は単球上に表示されて見出される。しかしながら、多様な標的細胞上のこれらの受容体の生成は差別的にかつ他の因子に応答して起こるようである。従って、Fcγ受容体に対するグリコシル化が改変されたFc含有生物学的治療薬のアフィニティーの測定は、高められたエフェクター機能を予測するた
めの1つの適切な測定である。
【0071】
それらのFcグリカン中の低レベルのフコースを伴うヒトIgG1 Abは、ヒトCD16 FcRに対するより大きいアフィニティー、および、ヒトPBMCエフェクター細胞を使用するADCCアッセイで劇的に高められたin vitro活性を有することが報告された(Shinkawaら J Biol Chem 278(5):3466−3473、2003;Shieldsら J Biol Chem 277(30):26733−26740、2002;Umanaら、Nat Biotech 17:176−180、1999)。しかしながら、マウスCD16およびCD32 FcRに対するこうしたAbのアフィニティーは高フコースAbのものより高くなかったという報告(Shieldsら、2002)後は、マウスで低フコースAbを研究するより少ない動機が存在した。にもかかわらず、CCケモカイン受容体4に対するキメラヒトIgG1 Abの高フコースおよび低フコースバージョンの抗腫瘍活性を比較した場合に、それらのin vitro ADCC活性の差違は観察されなかった(マウスエフェクター細胞を使用して)が、しかしながら、低フコースAbはin vivoでより強力な有効性を示した。ヒトエフェクター細胞は提供されず、そしてマウスは内因性NK細胞を保持する(Niwaら Cancer Res 64:2127−2133、2004)。
【0072】
ヒトNK細胞上のCD16受容体は、IgG1 Abのフコースレベルに対する高められた感受性を示したため、これらのデータは、ヒトエフェクター細胞で研究されたものと異なる機構がマウスで作動していることを示唆する。1つの可能性は、より最近発見されたマウスCD16−2受容体である(Mechetinaら Immunogen 54:463−468、2002)。マウスCD16−2の細胞外ドメインは、より良好に知られているマウスCD16受容体が有するよりもヒトCD16Aに対する有意により高い配列同一性(65%)を有し、それが結合するIgGのフコースレベルに対しマウスCD16よりもそれがより感受性でありうることを示唆する。マウスマクロファージ様J774細胞でのその報告された発現は、CD16−2を発現するマウスマクロファージが、Niwaら(2004)により記述された低フコースAbによるより大きな抗腫瘍活性の原因でありうる可能性と矛盾しない。従って、マウスエフェクター細胞へのヒトIgG1型Fc含有タンパク質によるFc受容体の結合の研究は予測的でない。
【0073】
エフェクター機能の別の評価方法は、in vitro ADCCアッセイを定量的様式で使用することによる。従って、標的およびエフェクター細胞株の正しい選択、ならびに駆動することを継続することの細胞の不能若しくは内的含有物の遊離、例えば51クロム遊離のいずれかにより細胞の「死滅」を評価することにより、その同族のリガンドを表示する細胞の破壊を引き起こす結合した抗体の能力を測定するように、in vitroアッセイを設計し得る。標的細胞は、本発明の抗体、抗体フラグメント若しくは融合タンパク質の標的リガンドを通常発現する細胞株でありうるか、または標的タンパク質をその表面上で発現しかつ保持するよう工作しうる。こうした工作された細胞株の一例がK2細胞、すなわち成熟サイトカインのアミノ酸1−12の欠失の導入により膜貫通形態として留まる組換えヒトTNFをその表面上で安定に発現するSp2/0マウス骨髄腫細胞株である(Perezら、Cell 63:251−258、1990)。この細胞株は、抗TNF抗体、抗体フラグメント、またはFcドメイン若しくはFcドメイン活性を有する工作された抗TNFαを標的とする融合タンパク質のADCC活性の変化を評価するのに有用である。
【0074】
in vitro ADCC活性アッセイのためのエフェクター細胞は、ヒト若しくは他の哺乳動物供給源のPBMC(末梢血単球細胞)でありうる。PBMCエフェクター細胞は、承認された方法によりドナーから血液を収集した後から新たに単離し得る。使用しうる他の単球若しくはマクロファージ細胞は、腹腔滲出液のような滲出液由来からのもの
でありうる。
【0075】
本発明を全般的条件で記述した一方、本発明の態様は以下の実施例にさらに開示されるであろう。
【0076】
実施例
【実施例1】
【0077】
APF−YB2/0細胞株の適応およびクローニング
5%FBSを補充したDMEM(DMEM+5%FBS)中で培養したラットハイブリドーマ細胞株YB2/0(C1083A)を、2種の異なる方法により、APF培地CD−HybすなわちCD−Hybridoma(Gibco)中で増殖するように適応させた:
【0078】
方法1.細胞を、6mMグルタミンを補充したCD−Hyb培地中で1:1で繰り返し継代することにより、FBS含有培地からゆっくり離脱させた。6継代後に該細胞はAPF培地中での増殖が可能となった。この細胞株をC1083Bと称した(表I)。CD−HybおよびDMEM+5%FBS中でのC1083Bの増殖の特徴は比較可能であった(図3)。C1083Bからの個々のクローンを、DMEM+5%FBSを使用する限界希釈法により単離した。24個のクローンをスケールアップのため移し、そしてこの実験からの8クローンをさらなる研究のため選択した。これらの8クローンの選択の基準は、平均倍加時間(MDT)、振とうフラスコ培養物中で高細胞密度に達する能力、および複数の継代にわたる安定性を包含した。
【0079】
【表1】
【0080】
方法2.200、500、1000若しくは5000個のC1083A細胞を、6mMグルタミンを補充したCD−Hyb培地中で96ウェルプレート(各範疇について5プレート)のウェルにつきプレーティングした。3週のインキュベーション後、5000細胞/ウェルを含むプレートのみがおよそ10ウェル/プレートのコロニーを有した。24個のクローンを増殖のため24ウェルプレートに移した。平均倍加時間、振とうフラスコ培養物中で高細胞密度に達する能力、および複数の継代にわたる安定性に基づき、4クローンをさらなる研究のため採った。
【0081】
方法1により生成された8個および方法2により生成された4個の12クローンを、CD−Hyb培地中での増殖の特徴、すなわち平均倍加時間、振とうフラスコ培養物中で高細胞密度に達する能力、および複数の継代にわたる安定性について比較した。4クローンを、さらなる研究のためこの実験から選択した(C1083B−1、C1083B−12
、C1083−H18およびC1083−H21)。全4種は比較可能な増殖の特徴を有した。それらのMDTはおよそ22時間であり、また、それらは振とうフラスコ培養物中で高細胞密度(>2×106/ml)に達することが可能であった(図4)。該4種の細胞株のうち3種(C1083B−1、C1083B−12およびC1083−H21)をその後、AMAXA電気穿孔装置、および骨髄腫細胞株のトランスフェクションについて以前に至適化された設定を使用して、それらのトランスフェクション効率を決定するため試験した。細胞株C1083B−12を、所望の特徴をもつAPF−YB2/0細胞株としてこの試験から選び、そしてC1083Bに加えて代替のトランスフェクション宿主細胞株としてはたらくことができる。それをC1083Eと称した。
【実施例2】
【0082】
フコース特異的レクチンに耐性のYB2/0クローンの単離
レクチンは特定の1つの型のオリゴ糖を発現する細胞株を選択するのに使用し得る(RipkaとStanley、1986.Somatic Cell Mol Gen 12:51−62)。利用可能な2種のフコース特異的レクチンのうち、レンズマメ(Lens culinaris)アグルチニン(LCA)を、C1083Bを使用する(棒グラフの形態の)死滅曲線(図5)を生成するため選択した。(DMEM+5%FBS中で培養した)C1083B細胞を、多様な濃度のLCAレクチンの存在下に96ウェルプレートに5000細胞/ウェルでプレーティングした。5日後に、Alamar Blueアッセイ(Vybrant細胞代謝アッセイキット、Molecular Probes,Inc.)により生存率を測定した。
【0083】
低下されたレベルのfut8 mRNA(配列番号1)を発現するC1083Bのまれな天然のバリアントを、50μg/mlのLCAの存在下に96ウェルプレート中で5細胞/ウェルをプレーティングすることにより選択した。3週後に17個の耐性クローン(プレーティングした2×104細胞から)を同定した。これらをスケールアップし、そしてCD−Hyb培地中で複数回継代した。17クローンのうち8個を、確実な増殖、振とうフラスコ培養物中で高細胞密度に達する能力、および複数回の継代にわたる培養物の安定性に基づき選択した。全RNAをこれらのクローンから単離した。2組のラット特異的fut8 Taqmanプローブ(下線を付ける)およびプライマー(斜体にする)(配列番号2〜7、図6A)を使用する定量的PCR実験。
【0084】
これらの分析は、1クローン(A4)が6倍より少ないfut8 mRNAを有した一方、2種の他のクローン(A8およびA9)がおよそ2倍より少ないfut8 mRNAを有したことを示した(図6B)。クローンA4をC1083Cと称し、また、クローンA9をC1083Dと称した。図7AおよびBからのデータは、CD−Hyb中でのC1083CおよびC1083Dの増殖の特徴が、培地容量あたりの生存可能細胞(図7A)および全細胞生存率(図7B)に基づき、親株C1083Bのものに匹敵することを示す。
【実施例3】
【0085】
抗組織因子抗体DNAでのC1083B細胞のトランスフェクション
抗ヒト組織因子抗体CNTO 860は、マウスでの癌のヒト異種移植モデルで試験されたところの腫瘍増殖を低下若しくは予防することにおけるその有効性のため選択した。図8に示されるところのCNTO 860 HおよびL鎖をコードする発現ベクター(p2401およびp2402)は第WO/04110363号および米国特許出願第11/010,797号明細書にさらに記述される)をpSV2DHFR(Promega)とコトランスフェクトし、そして、選択マーカーMHX、(ミコフェノール酸、ヒポキサンチンおよびキサンチン)に耐性のクローンを、抗体発現についてELISAにより分析した。1個の高発現細胞株C1261Aをさらなる研究のため選択した。それは振とうフラ
スコ培養物でCD−Hyb培地中で45〜50mg/Lを産生し、そして複数の継代にわたる発現の安定性を示した(図9)。増殖および抗体力価を1×Lipid(Gibco)の非存在および存在下でモニターした。
【実施例4】
【0086】
C1083B由来の抗組織因子抗体のADCC活性の測定
一連のin vitro 51Cr遊離細胞傷害性アッセイを、数種の抗組織因子抗体、すなわち、ヒトIgG4 Fcを含有するCNTO859(欧州特許第EP833911B1号明細書に記述される);CNTO859と同一の抗原結合領域を有するがしかしヒトIgG1枠組みにクローン化されており、そして従ってH鎖について配列番号8およびL鎖について配列番号9の配列を有するヒト化抗体を産生するCNTO860(2004年12月13日出願の米国特許出願第11/010797号明細書に記述されるところの);ならびにYB2/0 CD−Hybに適応させた細胞株でCNTO860抗体を産生することの結果としてのグリコシル化バリアント、若しくはfut8欠損バリアントのADCC活性の増強を示すために使用した。
【0087】
組織因子を発現するヒト結腸癌細胞HCT 116を標的細胞として使用した。細胞は、10%熱不活性化FBSおよび1%LNNを補充したマッコイ5A培地(M5A−10)中で維持した。アッセイの日に細胞をトリプシン処理し、収集し、そして1mLのM5A−10中37℃で200μCiのNa51CrO4(PerkinElmer Life Science、マサチューセッツ州ボストン)あたり10×106細胞で2時間標識した。標識した細胞は、50mLのカルシウム若しくはマグネシウムを含まないPBS(PBS−)で2回洗浄し、そして4×105細胞/mL M5A−10に再懸濁した。
【0088】
PBMCは健康ドナーから単離した。静脈血をヘパリン化シリンジに収集し、そして等容量のPBS−で50mLコニカルチューブに希釈した(20mL:20mL)。この血液溶液の上に13mLのFicoll−Paque(Amersham、スウェーデン・ウプサラ)を置き、そして室温(RT)で2200rpmで30分間遠心分離した。上の血漿層を吸引し、そしてPBMCを含有する界面(バフィ層)を収集した。エフェクター細胞をPBS−で3回洗浄し、そしてその後5×106細胞/mLでM5A−10に再懸濁した。25:1というエフェクター対標的比を全実験に使用した。
【0089】
第一の実験で、組織因子に対するモノクローナル抗体すなわちCNTO 859、CNTO 860およびCNTO 860 YB2/0のADCC活性を、2名の異なるドナーからのPBMCを使用して特徴付けした(図10A)。特異的溶解を4時間後に測定し、そして各棒は双方のドナーからの3検体の平均を代表する。自発および最大遊離の対照サンプルは、それぞれ、2μg/mLの抗体の存在下しかしエフェクター細胞の非存在下で培地単独で処理したか、若しくは0.5% Triton X−100で処理した。各サンプル中の特異的溶解の比率は、自然に遊離したcpmにより補正したTriton X−100により遊離されたcpm(最大遊離)に基づき計算した。
【0090】
IgG4サブタイプ、CNTO 859は、マウス骨髄腫宿主細胞株C463により産生されるIgG1サブタイプ、CNTO 860に比較して最小のADCC活性を有する。対照的に、YB2/0宿主細胞株C1083B由来のCNTO 860は、それらのEC50および最大溶解値を比較した場合に、C463由来のものよりおよそ20〜60倍より強力であった(図10A)。YB2/0由来のCNTO 860は、99%フコシル化されたC463由来のCNTO 860に比較して、40%フコシル化された。
【0091】
第二の実験で、3種の細胞株由来のCNTO 860、すなわちC463;無動物タンパク質に適応させたYB2/0細胞株C1083B、およびfut8枯渇YB2/0細胞
株C1083Cを、それらの相対ADCC効力について比較した。特異的溶解を4時間後に測定し、そして、棒は単一ドナーからの3検体の平均を表す。
【0092】
C1083B細胞株由来のCNTO 860は、マウス骨髄腫宿主細胞株C463由来のものよりおよそ10倍より強力であった(図10B)。
【0093】
親YB2/0由来細胞株C1083Bおよびfut8枯渇クローンA4−2、C1083C由来のCNTO 860の間で、ADCC活性の差違は観察されなかった。これらの結果は、フコースレベルをさらに低下させることによるADCC活性のさらなる増大はin vitroアッセイ法を使用して測定可能でなかったことを示す。
【実施例5】
【0094】
抗体グリコシル化の分析
C463および多様なトランスフェクション宿主細胞株で生成されたCNTO 860のMALDI−TOF−MS分析を実施した。
【0095】
C463(図11A)、APFに適応させたラット骨髄腫YB2/0宿主細胞株C1083B(図11B)およびfut8枯渇YB2/0宿主細胞株C1083C(図11C)で生成されたCNTO 860を、公表されたプロトコル(Papacら、1996;Papacら、1998;Rajuら、2000)に従ってMALDI−TOF−MS分析にかけた。
【0096】
試験Abを多様な方法により構造解析した。無傷のIgG AbのMALDI−TOF−MS分析を実施するため、IgGサンプルを10mMトリス−HCl緩衝液、pH7.0中にもたらし、そして濃度を約1mg/mL緩衝液に調節した。約2μlのIgG溶液を2μlのマトリックス溶液(マトリックス溶液は、0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水中50%アセトニトリル1.0mlに10mgのシナピン酸を溶解することにより調製した)と混合し、そしてこの溶液2mlを標的に負荷しかつ風乾させた。MALDI−TOF−MSはApplied BioSystems(カリフォルニア州フォスターシティ)からのVoyager DE装置を使用して取得した。
【0097】
遊離されたFcグリカンのMALDI−TOF−MS分析を実施するため、IgGサンプル(約50μg)を10mMトリス−HCl緩衝液(50μl)pH7.0中でPNGアーゼFで37℃で4時間消化した。反応混合物を50%酢酸(約5μl)で酸性化することにより消化を停止し、そしてその後、以前に記述された(Papacら、1996;Papacら、1998;Rajuら、2000)とおり陽イオン交換樹脂カラムを通過させた。酸性および中性のオリゴ糖の混合物を含有するこれらのサンプルを、Applied BioSystems(カリフォルニア州フォスターシティ)からのVoyager DE装置を使用して、別の場所(Papacら、1996;Papacら、1998;Rajuら、2000)に記述されたとおり、MALDI−TOF−MSにより陽および陰イオンモードで分析した。
【0098】
多様なYB2/0細胞で産生された抗体サンプルからの遊離されたグリカンのMALDI−TOF−MS分析を図11A〜Cに示し、また、該オリゴ糖の構造を図2A〜Eに描く。オリゴ糖は、コアフコース、分岐GlcNAcの存在、シアル酸、ガラクトースなどのような末端糖の存在若しくは非存在に基づき配列中で番号付けする。MALDI−TOF−MSデータは、YB2/0細胞で産生された抗体サンプルが増大された量のフコシル化されていないオリゴ糖を含有することを示唆する(図2A〜B、構造1−15)。フコシル化されていないオリゴ糖の量は、ある種の抗体サンプルについて50%から95%まで変動する。加えて、分岐GlcNAcを含有するフコシル化されていないオリゴ糖の増
大もまた、YB2/0由来抗体サンプルで観察された。さらに、YB2/0細胞由来の抗体サンプルは、フコシル化されずかつ分岐GlcNAcを含有するオリゴ糖の存在により、増大された均質性および/若しくはより均質な構造いずれかを含有する。対照的に、他の細胞型で産生された抗体サンプルは、オリゴ糖のより不均質な構造を含有する傾向があり(図2A〜E、構造1−36)、より規定されかつ均質なオリゴ糖構造の存在による増大された活性を伴う治療抗体サンプルを産生するYB2/0細胞の価値を示す。さらに、YB2/0細胞で産生された抗体サンプルは、HEK若しくはNS/0のような他の細胞株で産生された抗体サンプルに比較して、より低い比率の高マンノース含量を伴う構造を含有する傾向がある(図2E、構造31−36)。
【実施例6】
【0099】
抗TNFα MabのC1083B/C発現
数種の骨髄腫宿主細胞株(Sp2/0、NS0およびYB2/0)でのCNTO 860発現レベルの検査は、これらの細胞株で産生される他の抗体に比較して比較的より低レベルの抗体産生を示した。従って、本発明のYB2/0由来宿主細胞株での発現に代替抗体を選択した。C1083B YB2/0細胞およびC1083C YB2/0細胞を、記述される(Knightら、Mol Immunol 30:1443−1453、1993;第WO02/012502号明細書)ところの電気穿孔法により、CNTO 148と称されるヒト抗TNFα Mab(Glimumab)をコードする、H(これの可変領域は配列番号10である)およびL鎖(これの可変領域は配列番号11である)をコードするプラスミド(それぞれプラスミドp1783およびp1776)でトランスフェクトした。トランスフェクトしたYB2/0由来細胞のミコフェノール酸耐性コロニーを、記述される(Knightら、1993)ところのヒトIgGについてのELISAにより、それらの培養上清中のCNTO 148の存在についてアッセイした。トランスフェクタント(#14 C1083Bトランスフェクタントおよび#1 C1083Cトランスフェクタント)を、IMDM、5%FBS、1%グルタミン、1×MHX選択(0.5μg/mlミコフェノール酸、2.5μg/mlヒポキサンチン、50μg/mlキサンチン)中で1リットルの容量までスケールアップし、細胞生存率が<20%になるまで培養物を過剰増殖させた。標準的プロテインAクロマトグラフィーはCNTO 148の2サンプルを精製するために使用した。該精製は、C1083Bトランスフェクト細胞から1.3mgのCNTO 148およびC1083Cトランスフェクト細胞から3.2mgのCNTO 148を生じた。
【0100】
C1083B−148−14および別のクローンC1083B−148−33をハロ(Halo)サブクローニングにかけた。21個のハロをクローン33の第1回のハロ(Halo)から採り、その1サブクローンC1083B−148−33−19が振とうフラスコ中で約89μg/mLを発現した。増殖および2回目のハロ(Halo)に際して、サブクローンC1083B−148−33−19−42が振とうフラスコ中で約105μg/mLの力価を表した。このクローンはAPF培地に適応されている。
【0101】
YB2/0由来CNTO 148の生物分析的特徴付け
PNGアーゼFに遊離されるオリゴ糖のMALDI−TOF−MS分析(図12A〜C)は、YB2/)由来宿主細胞C1083BおよびC1083Bからのオリゴ糖の80%以上がフコシル化されていなかったことを示した。予期しないことに、C1083C由来CNTO 148のフコース含量は、C1083B由来CNTO 148のものより低くないことが見出された(図12BおよびC)。これらの抗体サンプルからのオリゴ糖は、増大された量のフコースを伴わない分岐GlcNAcもまた含有し、NS/0宿主細胞で産生された抗体からのオリゴ糖よりもより均質であるようである(図12A)。
【0102】
YB2/0由来CNTO 148を用いるin vitro ADCCアッセイ。K2
若しくはC480A細胞と称される標的細胞は、成熟サイトカインのアミノ酸1−12の欠失の導入により膜貫通形態として留まる組換えヒトTNFをその表面上で安定に発現するSp2/0マウス骨髄腫細胞株である(Perezら、1990 上記)。K2細胞を、熱不活性化FBS、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸および1×MHX選択を含有するイスコフ培地中で培養した。K2細胞は2〜3日ごとに1:5で継代した。
【0103】
アッセイの日に、K2細胞を遠心分離しかつPBSで1回洗浄した。細胞を培地で約1×106細胞/mlに調節し、そして、15マイクロリットルのBATDA蛍光標識試薬(Delfia EuTDA細胞傷害性試薬キット中、Perkin−Elmer Life Sciences中)を5mlの細胞に添加した(Blombergら、J Immunol Methods 193:199−206、1996)。細胞を37℃で30分間インキュベートし、その後PBSで1000rpmで5分間2回洗浄した。PBMCエフェクター細胞と混合する直前に標的細胞を遠心分離し、そして1%BSAを含有するイスコフ培地に2×105細胞/mlで再懸濁した。
【0104】
PBMCエフェクター細胞は、ヘパリン化ヴァキュテーナーに血液を収集しかつPBSで2倍に希釈した後に健康ドナーから単離した。30mlの希釈血液を、50mlコニカルチューブ中で15mlのFicoll−Paque(Amersham、スウェーデン・ウプサラ)の上に重ね、そして室温RTで1500rpmで30分遠心分離した。PBMCを含有する界面(バフィ層)を収集しかつPBSで2回洗浄し、そして1200rpm、10分間RTで遠心分離した。細胞を、5%熱不活性化FBS、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムおよび0.1mM非必須アミノ酸を含有するイスコフ培地に再懸濁した。OKT3(PBS中10μg/ml、Ortho Pharmaceutical)で4℃で一夜被覆しかつPBSですすいだ100mm組織培養皿上でインキュベートすることにより、PBMCを37℃、5%CO2でおよそ4時間活性化した。PBMCを収集し、1%BSAを含有するイスコフ培地で1回洗浄し、計数しかつおよそ1×107細胞/mlに再懸濁した。
【0105】
CNTO 148試験サンプルをイスコフ、1%BSA培地で連続希釈した。50マイクロリットルの標的細胞(約10,000)および100マイクロリットルの抗体を丸底96ウェルプレートに添加した。50マイクロリットルのエフェクター細胞(約500,000細胞)を混合物に添加し、そしてプレートを1000rpm、5分間、RTで遠心分離した。エフェクター細胞対標的細胞比(E:T)は50:1であった。バックグラウンド蛍光を測定するため、ウェルを、抗体を含まない、培地中のエフェクター細胞および標的細胞の混合物とインキュベートした。最大蛍光を確立するため、10マイクロリットルの溶解溶液(Delfia EuTDA細胞傷害性キットから)をバックグラウンドウェルに添加した。ADCCアッセイのため、細胞を37℃、5%CO2でおよそ2時間インキュベートした。20マイクロリットルの上清を96ウェル平底プレートに移した。200マイクロリットルのユーロピウム溶液(Delfia EuTDA細胞傷害性キット)を添加し、そしてプレートをプレート振とう器上にRTで10分間置いた。時間分解蛍光計EnVision装置(Perkin−Elmer Life Sciences)で蛍光を測定した。各サンプル中の特異的溶解の比率を、以下の式すなわち%特異的遊離=([実験遊離−自発遊離]÷[最大遊離−自発遊離])×100に従って計算した。
【0106】
ADCCアッセイの結果は、C1083B由来CNTO 148が参照物質すなわちマウス骨髄腫細胞からのCNTO 148よりおよそ70倍より強力であったことを示した(図13)。C1083C由来CNTO 148は、それらが非常に類似のフコースレベルを有したことを示した生物分析データと一致して、C1083B由来CNTO 148と実質的に同一の効力を示した。フコースレベルの予期されない類似性の結果として、こ
れらのAbロットは、超低レベルのフコース(10〜20%)が、in vitroでCNTO 860(およびin vivoで2C11)で観察されたところの中程度のレベルのフコース(40〜50%)を有することに比較してADCC活性のさらなる増強に変わったかどうかを試験するための手段を提供しなかった。にもかかわらず、これらの結果は、代替宿主細胞で発現された同一Abに関して顕著に高められたADCC活性を示す、C1083B若しくはC1083Cいずれかで発現されたAbの別の例を提供する。
【実施例7】
【0107】
HEK 293E細胞、C1083A細胞およびC1083C細胞で発現された抗CD3Abのin vivoアゴニスト活性
抗CD3モノクローナルAbによるT細胞活性化が、Fcγ受容体(FcγR)を結合するそれらのAbの能力に依存することを示す以前の報告に基づき、単純なモデル系を使用して、マウスが、そのFcグリカン中の異なるレベルのフコースを伴うヒトIgG1 Abに対する異なる程度のFc依存性応答を示すかどうかを試験した。組換えハムスター抗マウスCD3 ε鎖Ab、145−2C11(2C11)をこれらの研究に使用した。一本鎖Fcバージョン2C11をコードするプラスミドはJeffrey Bluestone博士(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)により恵与された。このプラスミド中のHおよびL鎖可変(V)領域コーディング配列を事前にPCR増幅し、そして該増幅されたDNAフラグメントを最初にゲノムHおよびL鎖V領域ベクターに、ならびにその後それぞれマウスIgG2aおよびκ鎖のゲノム定常領域発現ベクターにクローン化した。
【0108】
2C11のヒトIgG1バリアントを製造するため、H鎖可変領域をコードするDNAは、以前に製造したプラスミドの1種p2213から増幅し、そしてヒトG1定常領域コーディング配列を含有する2種の異なる発現ベクターにクローン化した。これは、Ab遺伝子転写がCMVプロモーターにより駆動された発現プラスミドp2648、および転写がマウス免疫グロブリンプロモーターにより駆動されたp2694の生成をもたらした。2C11 L鎖可変領域はプラスミドp2208から増幅し、そしてCMVプロモーター若しくは免疫グロブリンプロモーターいずれかにより駆動されるヒトκ定常領域を含有する発現ベクターにクローン化した。これは、Ab遺伝子転写がCMVプロモーターにより駆動された発現プラスミドp2623、および転写が免疫グロブリンプロモーターにより駆動されたp2669の生成をもたらした。CMVプロモーター含有プラスミドをHEK
293E細胞で一過性に発現させた。およそ3.5×108細胞を、10層の細胞スタック(cell stack)(Corning)中、増殖培地(10%FBS中を含むDMEM)中で5%CO2中37℃で一夜増殖させた。40mlのOptimem(Invitrogen,Inc.)中で1.4mlのLipofectamine 2000を各300μgのプラスミドp2648若しくはp2622およびp2623と混合することにより調製したトランスフェクションカクテルを細胞スタックに添加し、そして37℃で一夜インキュベートした。翌日、トランスフェクションカクテルを含む培地を1リットルの293 SFMII(Invitrogen,Inc.)+4mM酪酸ナトリウムで置換し、そして細胞を37℃で4日間インキュベートした。発現された抗体を含有する上清を収集し、遠心分離および0.8ミクロン濾過により澄明にした。発現された抗体は標準的プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。
【0109】
免疫グロブリンプロモーター含有プラスミドを、安定なトランスフェクションを介してC1083AおよびC1083C YB2/0細胞に導入した。およそ2×107のYB2/0細胞を、電気穿孔法により各10μgのプラスミドp2694およびp2669でトランスフェクトし、そして、10%FBS、NEAA、L−グルタミンおよびピルビン酸ナトリウムを補充したαMEMを含有する増殖培地中、96ウェル細胞培養皿にプレーティングした。ミコフェノール酸を用いてプラスミドの安定な組込みについて細胞を選択
した。抗体を分泌するミコフェノール酸耐性のクローンを抗ヒトIgG ELISAによりスクリーニングした。高発現の安定なクローンを、5%FBSを含有する培地中でスケールアップした。発現された抗体は標準的プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。
【0110】
C1083A YB2/0細胞中で発現された、製造された2C11 huG1 Abを、上の実施例5および6に記述されたところのMALDI−TOF−MSにかけた(図14)。この分析は、該細胞株が、血清の存在下で培養されたとは言え、支配的な種がフコシル化されていない(図2中のような構造2)グリコシル化生成物Abを産生することを継続したことを示した。2C11調製物を、FcγR結合能力を欠いた対照Abを製造するために酵素で脱グリコシル化した。該脱グリコシル化は、Abを1000単位のPNGアーゼFで37℃で24時間処理することにより行った(緩衝液1.0mL中約10mgのAb)。酵素の別のアリコートを添加し、そしてインキュベーションを追加の24時間継続した。脱グリコシル化されたIgGサンプルをHiTrapプロテインAカラムを使用して精製し、そしてリン酸緩衝生理的食塩水、pH7.0に処方した。2C11 Gnoと命名された生じる糖形態は、徹底的に脱グリコシル化されていたことがMALDI−TOF−MSにより示された(示されない)。
【0111】
各Abサンプルの濃度を、分光光度法によりOD280を測定すること、ならびにSDS−ポリアクリルアミドゲルの染色により測定した。汚染するエンドトキシンレベルを測定するために全試験AbでLALアッセイを実施した。上述されたとおり実施したMALDI−TOF−MSおよびHPLC分析は、HEK 293E由来Ab(2C11 huG1、HEK)、C1083A由来Ab(2C11 huG1、C1083A)およびC1083C由来Ab(2C11 huG1、C1083C)中のFcグリカンがそれぞれおよそ95%、40%および15%フコシル化されていたことを示した。新たに単離したマウス脾細胞上のCD3に対する定量的結合分析は、該3種の異なるAb調製物の抗原アフィニティーの検出可能な差違を示さなかった(データは示されない)。
【0112】
該3種のAbがそれらのin vivo T細胞活性化特性に関して相互にどのように匹敵したかを評価するため、正常雌性Balb/cマウス(Charles River
Laboratories)に変動する量の試験Abの単一腹腔内注入を投与した。試験Ab注入のおよそ24時間後に全マウスをC02窒息により安楽死させ、心穿刺を介して終末血サンプルを収集し、そして脾を収集しかつ冷収集培地(RPMI 1640、5%熱不活性化ウシ胎児血清、1%L−グルタミン)を含有するチューブに入れた。100μmナイロンメッシュ篩を通して脾を穏やかに押すこと、およびRPMI−1640培地で1回洗浄することにより、脾細胞の単細胞懸濁液を調製した。該単細胞懸濁液をその後、製造元の説明書(Pharmingen)に従ってNH4Cl低張溶解溶液を使用して無核化(anucleated)赤血球を枯渇させた。脾細胞を2回洗浄し、そして0.2%アジ化ナトリウムを含むPBS、0.5%BSAに再懸濁した。CD4 PE+/CD25 APC+/CD8および7−AAD生存率色素を使用して脾細胞を免疫染色しかつフローサイトメトリーにより分析した。全染色は、Fc受容体結合により媒介される染色を遮断するために抗CD16/CD32 mAb、2.4G2の存在下で行った。
【0113】
該結果は、高フコースバリアントに比較して中程度フコースバリアントを投与したマウスでのより大きなT細胞活性化を示し、高フコースバリアントは同一程度のT細胞活性化を達成するためにおよそ4倍より多いAbを投与することを必要とした(図15)。しかしながら、低フコースバリアントは中程度フコースバリアントより活性でなく、フコースの完全な非存在が、マウスで低フコースバリアントの最大に高められたFc機能を達成するために必要でないことを示唆した。ヒト低アフィニティーFcγRの1種、FcγRIIIAがFcフコースレベルに感受性であることを考えれば、これらの知見は、マウスが
以前に考えられたよりもヒト細胞によるFc依存性応答をより緊密に模倣しうることを示唆する。
【0114】
本明細書で挙げられる全部の刊行物および特許は、例えば現在記述される発明に関して使用されうる、該刊行物で記述される構築物および方法論を記述かつ開示する目的上、引用することにより本明細書に組み込まれる。上でおよび本文を通じて論考される刊行物は、単に本出願の出願日前のそれらの開示のため提供される。本明細書の何物も、本発明が以前の発明によってこうした開示を見越す権利を与えられないことの承認として解釈されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】典型的なIgGサブクラスの哺乳動物抗体、ドメインおよびグリコシル化点を描く図である。
【図2A−2E】天然の若しくは哺乳動物細胞由来の組換え抗体と関連する支配的な二分岐オリゴ糖構造を示す。すなわち、略記される糖構造 Fuc=フコース;Gal=ガラクトース;Glc=グルコース;GlcNAc=N−アセチルグルコサミン;Man=マンノース;およびNANA*=シアリル(N−アセチルノイラミン酸)が同定される。
【図3A−3B】無血清および血清含有培地中で培養したAPF−YB2/0(C1083B)細胞株の複数世代にわたる増殖および生存率の比較を示す。C1083Bを、DMEM+5%FBS、および6mMグルタミンを補充したCD−Hyb培地中で培養した。細胞は2〜3×105細胞/mlの播種密度を使用して週あたり3回継代した。すなわち(A)増殖曲線および(B)生存率。
【図4】C1083B由来の4種のAPF−YB2/0細胞株の相対増殖特性を示す。CD−Hybに適応させたクローンを2方法すなわち離脱(C1083B−1およびC1083B−12)ならびに直接選択(C1083−H18およびC1083−H21)により単離した。細胞を、6mMグルタミンを補充したCD−Hyb中で培養した。細胞は2〜3×105細胞/mlの播種密度を使用して週あたり3回継代した。
【図5】5日後のC1083Bに対するLCAレクチンの毒性を示すグラフである。
【図6A−6B】(A)プローブおよびプライマー組の位置を伴うラットfut8 mRNA(Genbank(NM_001002289)のヌクレオチド配列、ならびに印を付けた(「Primer Express」ソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して設計したプライマー(下線を付ける)およびプローブ(斜体にする))C1083Bのバリアントでのfut8 mRNAの発現、ならびに(B)C1083B由来の8種のレクチン耐性細胞株のQPCR分析。各細胞株はDMEM+5%FBS中で培養し、そして1×107細胞を指数増殖期に収集した。各クローンのfut8 mRNAのレベルをQPCRにより分析した。を示す。
【図7A−7B】C1083B由来のフコース枯渇クローンの(A)生存可能細胞密度および(B)生存率のグラフを表す。細胞株は6mMグルタミンを補充したCD−Hyb培地中で培養した。
【図8A−8B】細胞株生成に使用したCNTO 860発現ベクターの図解である。すなわち(A)p2401はH鎖発現ベクターであり、および(B)p2402はL鎖発現ベクターである。
【図9A−9B】C1083Bから工作した、抗組織因子抗体CNTO 860を発現する細胞株C1261Aの時間にわたる安定性を示すグラフである。継代11の細胞を振とうフラスコ培養物中、CD−Hyb培地(Gibco)中で2検体で(2×105/mlで)播種した。増殖および抗体力価を1×Lipid(Gibco)の非存在および存在下でモニターした。
【図10A−10B】(A)マウス骨髄腫株C463およびラットYB2/0宿主細胞株C1083Bで生成されるCNTO 859およびCNTO 860により導き出される用量依存性の抗体特異的細胞溶解を示す棒グラフ。(B)C1083Bおよびfut8枯渇YB2/0細胞株C1083C(A4−3)と比較したC463からのCNTO 860の間のADCCの差違を示す棒グラフ。である。
【図11A−11C】多様な細胞株により産生されるCNTO860のMALDI−TOF−MS分析からのレコーダ出力波形を示し;(A)C463すなわちAPFに適応させたラット骨髄腫YB2/0宿主細胞株、(B)C1083B、および(C)fut8欠乏YB2/0宿主細胞株C1083C。
【図12A−12C】多様な細胞株により産生されるCNTO148のMALDI−TOF−MS分析からのレコーダ出力波形を示し;(A)C463すなわちAPFに適応させたラット骨髄腫YB2/0宿主細胞株、(B)C1083B、および(C)fut8欠乏YB2/0宿主細胞株C1083C。
【図13】多様な宿主細胞で発現された数バッチの抗TNFα Mab、CNTO 148の濃度依存性および(標的細胞特異的溶解により測定されるところの)相対ADCC活性を示すグラフである。
【図14】YB2/0宿主細胞株C1083Aにより産生される2C11 抗CD3 MabのMALDI−TOF−MS分析からのレコーダ出力波形を示す。
【図15】示されるところの多様な抗体調製物を投与したマウスから収集した脾細胞上の脾細胞マーカーにより測定されるところのT細胞活性化を示すグラフである。
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えDNA技術において、および細胞培養物でのタンパク質の産生に有用な細胞、細胞株および細胞培養物に関する。より具体的には、本発明は、高められた抗体エフェクター機能を提供する、既知組成培地中で増殖することが可能なクローン性骨髄腫細胞株に向けられる。
【背景技術】
【0002】
抗体は、しばしば、体液性および細胞性免疫機構を結び付けるアダプター分子と称される。すなわち、体液性応答は、可変ドメインの固有の特異性により賦与されるところの標的抗原への高アフィニティー結合が可能な成熟した分泌型の循環抗体に主として帰される。細胞性応答は、抗体−抗原(ab−ag)複合体の結合、およびエフェクター細胞へのab−ag複合体結合の結果としての細胞メディエーターの遊離により引き起こされる下流の結果による細胞の活性化の結果に帰される。これらの細胞応答は、標的の中和、オプソニン化および感作(抗原が細胞の表面上に表示される場合)、肥満細胞の感作ならびに補体の活性化を包含する。細胞表面抗原である細胞標的について、これらのエフェクター機能は、抗体に指図される細胞傷害(ADCC)および補体媒介性の細胞傷害(CDC)として一般に知られるものに至る。
【0003】
特異的抗原認識の原因であるのが、抗体のいわゆる可変領域および超可変ドメイン、ならびに、抗体取り込みおよび細胞傷害性の機構すなわちADCC、CDCを包含するある種の機能に影響を及ぼしかつC1qタンパク質への結合を包含する多様な受容体への抗体結合にもまた影響を及ぼすように細胞を刺激することが可能な、多様な、通常は高度に移動性の細胞上に存在するこれらのFc受容体と相互作用するのが、ヘテロ二量体のH鎖部分のいわゆる定常領域すなわちFc部分である。これらの受容体はFc受容体として知られる。
【0004】
抗体アイソタイプ(例えばIgA、IgE、IgD、IgGおよびIgM)のなかでIgGが最も豊富であり、IgG1サブクラスは最も有意の程度および範囲のエフェクター機能を表す。IgG1タイプの抗体は癌免疫療法で最も一般に使用される抗体である。構造上、IgGヒンジ領域およびCH2ドメインは抗体のエフェクター機能において主要な役割を演じている。(ヒンジ、CH2およびCH3ドメインの二量体化により形成される)Fc領域に存在するN結合したオリゴ糖がエフェクター機能に影響を及ぼす(図1)。全部の天然に存在する抗体のFc部分は、H鎖中の保存された位置で炭水化物鎖でさらに修飾される。IgGアイソタイプでは、N結合したグリコシル化部位は各CH2ドメイン中に存するAsn297でである。定常領域がアイソタイプとともに変動するため、各アイソタイプは異なる多数のN結合した炭水化物構造を有し、それらはタンパク質の集成、分泌若しくは機能的活性に多様に影響を及ぼす(非特許文献1)。結合されたN結合した炭水化物の構造はプロセシングの程度に依存してかなり変動し、そして、高マンノースの、複雑に分岐した、ならびに二分岐の複雑なオリゴ糖、ならびに図2に示される末端糖としてシアル酸(N−アセチルノイラミン酸すなわちNANA)、フコース、ガラクトースおよびGlcNac(N−アセチルグルコサミン)残基を包含し得る。宿主細胞のエフェクター機能および抗体のオリゴ糖含量に対する影響は認識されている(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献1;非特許文献4)。さらに、抗体中の糖鎖に関して、抗体のN−グリコシド結合した糖鎖の還元端の近位のN−アセチルグルコサミンでのフコースの付加若しくは修飾が該抗体のADCC活性を有意に変化させることが報告されている(特許文献1)。
【0005】
加えて、安定に工作された宿主細胞を使用する組換え治療タンパク質製造は、伝統的に、血清若しくは器官抽出物のような化学的に定義されない動物由来成分を補充した培地の使用を必要とした。バッチごとの変動性の問題のほかに、これらの汚染物質から生成物を精製する必要性、およびヒト病原体の伝播の可能性が、これらの成分を使用する場合に上昇する。この感受性は、狂牛病としてもまた知られる畜牛の神経変性疾患、牛海綿状脳症(BSE)が、ヒトを冒す疾患の病原体であると考えられる(非特許文献5)クロイツフェルト−ヤコブ(vCJD)と識別不可能であるという発見とともに、近年、より重大となった。従って、多くの規制当局は、細胞培地中での動物由来物質の中断若しくは制限された使用を強く推奨している。従って、無血清(SF)でありかつ/若しくは動物由来タンパク質を含まない(APF)哺乳動物細胞の増殖および維持のための既知組成(「CD」)培地が現在使用可能である。CD培地の欠点は、ほとんどの産生細胞株がそれ中での増殖に適応しないか、若しくはゆっくりと増殖しかつ乏しく産生することである。結果、グリコシル化が至適化された治療タンパク質の製造のための理想的産生細胞株は、CD培地中で増殖しつつ大スケールの商業的容量で組換えタンパク質を産生することもまた可能であることができる。
【0006】
従って、治療的組換えタンパク質の工業的製造では、タンパク質の有効性を改良しかつ至適化されたグリコシル化パターンを達成するための例えば酵素的手段による収集後処理に対する必要性を回避する、無血清および/若しくは無タンパク質培地中で増殖される、発現かつプロセシングされたタンパク質の至適化された炭水化物パターンに影響を及ぼすことが可能な細胞株に対する必要性が存在する(例えば特許文献2を参照されたい)。
【0007】
【特許文献1】第WO00/61739号明細書
【特許文献2】米国特許第6,399,336号明細書
【非特許文献1】Wright,A.とMorrison,S.L.、Trends Biotech.15:26−32(1997)
【非特許文献2】Lifely,M.R.ら、1995 Glycobiology 5:813−822
【非特許文献3】Jefferis,R.ら、1998 Immunol Rev.163:59−76
【非特許文献4】Presta L.2003.Curr Opin Struct Biol.13(4):519−25
【非特許文献5】Bruceら Nature 389:498−501、1997
【発明の開示】
【0008】
[発明の要約]
本発明は、既知組成の動物タンパク質を含まない培地中での増殖、および至適にグリコシル化された免疫グロブリン由来治療タンパク質を産生することが可能な細胞、細胞株および細胞培養物に関する。好ましい一態様において、該細胞株は、CD培地中で増殖するよう適応されたYB2/0ラット骨髄腫由来細胞株である。
【0009】
好ましい一態様において、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物は、組換えタンパク質を約10mg/Lないし約10,000mg/L培地で産生する。別の態様において、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物は、組換えタンパク質を約0.1pg/細胞/日ないし約100ng/細胞/日の濃度で産生する。
【0010】
本発明は、本発明の培養宿主細胞からの最低1種のタンパク質、例えば抗体若しくはFc含有タンパク質の製造方法をさらに提供する。好ましい一態様において、最低1種の所望のタンパク質を発現する本発明の細胞は既知組成培地で培養され、そしてタンパク質は
既知組成培地若しくは細胞それら自身から単離される。
【0011】
本発明の別の態様は、本発明の細胞株により産生される抗体若しくはFc含有治療タンパク質を含んでなる。本発明の抗体若しくはFc含有治療タンパク質は、限定されるものでないがヒト、マウス、ウサギ、ラット、げっ歯類、霊長類を挙げることができるいずれかの哺乳動物若しくはそれらのいずれかの組合せを包含し得るか若しくはそれらに由来し得、そして、単離されたヒト、霊長類、げっ歯類、哺乳動物、キメラ、ヒト化および/若しくはCDR移植抗体、免疫グロブリン、切断生成物、ならびにそれらの他の指定される部分およびバリアントを包含する。
【0012】
本発明の一局面において、抗体は、抗インテグリン抗体、抗組織因子抗体、または、それによりin vivoで被験体内の細胞の増殖を低下若しくは予防することが望ましくかつその活性が本発明の細胞株での抗体の産生により賦与されるか若しくは高められる、被験体内の細胞の表面で表示される抗原を結合することが可能な他の抗体である。
【0013】
[発明の詳細な記述]
略語
Ab=抗体、ポリクローナル若しくはモノクローナル;APF=動物タンパク質を含まない;CD=既知組成;CDR=相補性決定領域;Ig=免疫グロブリン;IgG=免疫グロブリンG;Mab=モノクローナル抗体;TF=組織因子。糖残基について:Fuc=フコシル;Gal=ガラクトシル;Glc=グルコシル;GlcNAc=N−アセチルグルコサミニル;Man=マンノシル;およびNANA=シアリル(N−アセチルノイラミニル、しかし5−N−アセチルノイラミン酸(NeuAc)若しくは5−N−グリコリルノイラミン酸(NeuGc、NGNA)もまた「シアル酸」として包含し得る;Mab=モノクローナル抗体;MALDI−TOF−MS=マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析。
【0014】
定義
「ADCC活性」という用語は、抗体依存性の細胞媒介性細胞傷害を表し、そして感作されないエフェクター細胞による抗体媒介性標的細胞破壊の現象を意味している。標的細胞の同一性は変動するが、しかし、それは、Fcドメイン、若しくはFc受容体活性化が可能なFcドメイン部分を有する結合された表面免疫グロブリンGを有しなければならない。エフェクター細胞はFc受容体を有する「キラー」細胞である。それは、例えば標的細胞の同一性に依存して慣習的B若しくはT細胞マーカーを欠くリンパ球、または単球、マクロファージ若しくは多核白血球でありうる。該反応は補体に依存しない。本発明の抗体若しくは他のFc含有タンパク質のADCC活性は、ADCC媒介性の細胞死滅を示すその能力が、代替宿主細胞により産生される実質的に類似の配列の抗体若しくはタンパク質およびFcドメインの能力を凌ぐ場合に「高められる」。ADCC活性は、本明細書で論考されるアッセイのような細胞死滅の標準的in vivo若しくはin vitroアッセイで測定しうる。好ましくは、高められたADCC活性を有する本発明の抗体は、代替宿主細胞で産生された参照抗体より低用量かつ/若しくは短時間で同一の効果(腫瘍細胞増殖の予防若しくは阻害)を達成する。好ましくは、本発明の範囲内の抗体および参照抗体の効力の間の差違は、例えば選択される標準的クロム遊離ADCCアッセイでの並列比較により決定されるところの最低約1.5倍、より好ましくは最低約2倍、なおより好ましくは最低約3倍、最も好ましくは最低約5倍である。
【0015】
「抗体」は、抗体分子全体、抗体フラグメント、若しくは免疫グロブリンのFc領域に同等な領域を包含する融合タンパク質を包含することを意図している。
【0016】
「抗体フラグメント」は、完全長抗体の一部分、一般にはその抗原結合すなわち可変ド
メインを含んでなる。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメント;二重特異性抗体;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子;ならびに抗体フラグメントから形成される多特異性抗体を包含する。こうした抗体フラグメントは、同一若しくは異なる種からの抗体のFcドメイン領域、または抗体の改変されたFcドメイン若しくはCH2ドメインに融合しうる(図1はこうした抗体の基礎構造を示す)。
【0017】
本明細書で使用されるところの「クローン化された」、「クローン的に派生した」若しくは「クローン性細胞株」という用語は、単一祖先細胞に由来する特定の細胞株からの遺伝的に同一の細胞の増殖する集団を意味している。YB2/0由来宿主細胞について、親細胞株は、米国特許第4,472,500号明細書に記述されかつATCC CRL 1662として寄託されたラット骨髄腫細胞株である。
【0018】
それが本明細書で使用されるところの抗体若しくは抗体アナログの「エフェクター機能」は、病原体若しくは異常な細胞例えば腫瘍細胞が破壊されかつ身体から除去される過程である。自然および獲得免疫応答は、病原体を排除するのにADCC、CA(補体活性化)、C1q結合およびオプソニン化を包含する同一のエフェクター機構の大部分を使用する。
【0019】
本明細書で使用されるところの「Fc」、「Fc含有タンパク質」若しくは「Fc含有分子」という用語は、最低1個の免疫グロブリンCH2ドメインを有する二量体若しくはヘテロ二量体タンパク質を指す。CH2ドメインは該タンパク質/分子(例えば抗体)の二量体領域の少なくとも一部分を形成し得る。
【0020】
フコシルトランスフェラーゼまたは「fut8」若しくは「fudase」は、fut8として知られる遺伝子、およびα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する遺伝子産物を指す。
【0021】
「Fc含有治療タンパク質」は、抗原結合ドメイン、Fc領域を有するか若しくは最低1個の免疫グロブリンCH2ドメインを含んでなる二量体若しくはヘテロ二量体タンパク質を意味することを意図しており、抗体のFc若しくはCH2を含んでなる部分は、グリコシル化されることが可能なアスパラギン残基を含有する。
【0022】
本明細書で使用されるところの「宿主細胞」という用語は、抗体および抗体フラグメントを包含する目的のタンパク質、タンパク質フラグメント若しくはペプチドを生成するように工作し得るいかなる種類の細胞系も包括する。宿主細胞は、限定されるものでないが、培養細胞、例えば、CHO、BHK、NSO、SP2/0、YB2/0のようなげっ歯類(ラット、マウス、モルモット若しくはハムスター)由来の哺乳動物培養細胞;またはヒト組織若しくはハイブリドーマ細胞、酵母細胞および昆虫細胞、しかしまたトランスジェニック動物若しくは培養組織内に含まれる細胞も挙げることができる。
【0023】
本明細書で使用されるところの「モノクローナル抗体」若しくは「モノクローナル抗体組成物」または「Mab」という用語は、実質的に単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定の1エピトープに対する単一の結合特異性およびアフィニティーを表す。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一抗原部位に向けられる。さらに、多様な決定子(エピトープ)に向けられた多様な抗体を典型的に包含する慣習的(ポリクローナル)抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一決定子に向けられる。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均質な集団から得られるところの抗体の特徴を示し、そしていずれかの特定の方法による抗体の製造を必要とすると解釈されるべきでない。例えば、本発明で使用されるべきモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature 256:495(1975)により最初に記述
されたハイブリドーマ法により作成しうるか、若しくは組換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)により作成しうる。「モノクローナル抗体」はまた、例えばClarksonら、Nature 352:624−628(1991)およびMarksら、J.Mol.Biol.222:581−597(1991)に記述される技術を使用してファージ抗体ライブラリーからも単離しうる。
【0024】
モノクローナル抗体は、本明細書で、Hおよび/若しくはL鎖の一部分が、特定の1種由来または特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一若しくはそれに相同である一方、該鎖(1本若しくは複数)の残部が、別の種由来または別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体、ならびにそれらが所望の生物学的活性を表す限りはこうした抗体のフラグメント中の対応する配列と同一若しくはそれに相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)をとりわけ包含する(米国特許第4,816,567号明細書およびMorrisonら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA
81:6851−6855(1984))。
【0025】
「ヒト化」形態のヒト以外(例えばマウス)抗体は、ヒト以外の免疫グロブリンに由来した実質的に置換された配列部分を有するキメラ抗体である。ほとんどの部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域(相補性決定領域すなわちCDRとしてもまた知られる)残基が、所望の特異性、アフィニティーおよび能力を有するマウス、ラット、ウサギ若しくはヒト以外の霊長類のようなヒト以外の種からの超可変領域残基(ドナー抗体)により置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンの枠組み領域(FR)残基は対応するヒト以外の残基により置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体若しくはドナー抗体中で見出されない残基を含みうる。これらの改変は抗体の性能をさらに改良するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、最低1および典型的には2個の可変ドメインの実質的に全部を含むことができ、ここで、超可変領域の全部若しくは実質的に全部がヒト以外の免疫グロブリンのものに対応し、また、FRの全部若しくは実質的に全部がヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、場合によっては、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトIgG免疫グロブリンのものの少なくとも一部分もまた含むことができる。さらなる詳細については、Jonesら、Nature 321:522−525(1986);Reichmannら、Nature 332:323−329(1988);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。
【0026】
本明細書で使用されるところの「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変および/若しくは定常領域を有するアミノ酸配列を有する抗体を指す。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列を使用して、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを免疫すること、若しくはヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによりある系から該抗体が得られる場合に、特定の一生殖系列配列「に由来し」、そして、ここで、選択されるヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列にアミノ酸配列が最低90%、より好ましくは最低95%、なおより好ましくは最低96%、97%、98%若しくは99%同一である。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸配列(例えばin vitroで無作為若しくは部位特異的突然変異誘発により、またはin vivoで体細胞突然変異により導入される突然変異)を包含することができ、そして、超可変配列若しくは相補性決定領域(CDR)配列が抗体特異性の独特の決定子でありかつ生殖系列中でコードされない限りは、これらの領域は配列同一性分析から除外すべきである。
【0027】
本明細書で使用されるところの「組換え抗体」という用語は、(a)ヒト免疫グロブリ
ン遺伝子に対しトランスジェニック若しくは導入染色体(transchromosomal)である動物(例えばマウス)またはそれから調製したハイブリドーマ(さらに下述する)から単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマ(transfectoma)から単離された抗体、(c)組換えのコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを必要とするいずれかの他の手段により製造、発現、創製若しくは単離された抗体、のような組換え手段により製造、発現、創製若しくは単離される全部の抗体を包含する。組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変および定常領域を有する。ある態様においては、しかしながら、こうした組換えヒト抗体はin vitro突然変異誘発(若しくは、ヒトIg配列についてトランスジェニックの動物を使用する場合にはin vivo体細胞突然変異)にかけることができ、そして、従って、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列由来かつそれらに関係しつつ、in vivoでのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しなくともよい配列である。
【0028】
本明細書で使用されるところの「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことを意図している(例えば、組織因子に特異的に結合する単離された抗体は、組織因子以外の抗原を特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。ヒト組織因子の1エピトープ、アイソフォーム若しくはバリアントに特異的に結合する単離された抗体は、しかしながら、例えば他の種からの他の関連した抗原(例えば組織因子種ホモログ)に対する交差反応性を有しうる。さらに、単離された抗体は他の細胞物質および/若しくは化学物質を実質的に含まないことができる。本発明の一態様において、異なる特異性を有する「単離された」モノクローナル抗体の組合せは、十分に定義された組成物中で組合せられる。
【0029】
「二特異性分子」という用語は、2種の異なる結合特異性を有するいかなる剤、例えばタンパク質、ペプチド、またはタンパク質若しくはペプチド複合体も包含することを意図している。例えば、該分子は(a)細胞表面抗原および(b)エフェクター細胞の表面上のFc受容体に結合若しくはそれらと相互作用しうる。「多特異性分子」若しくは「異種特異性分子」という用語は、2種以上の異なる結合特異性を有するいかなる剤、例えばタンパク質、ペプチド、またはタンパク質若しくはペプチド複合体も包含することを意図している。例えば、該分子は(a)細胞表面抗原、(b)エフェクター細胞の表面上のFc受容体、および(c)最低1種の他の成分に結合若しくはそれらと相互作用しうる。従って、本発明は、限定されるものでないが、細胞表面受容体若しくはこうした受容体のリガンドでありうる標的タンパク質、およびエフェクター細胞上のFc受容体のような他の標的に向けられる、二特異性、三特異性、四特異性および他の多特異性分子を挙げることができる。
【0030】
本明細書で使用されるところの「異種抗体」という用語は、それらの最低2種が異なる特異性を有する、一緒に連結された2種若しくはそれ以上の抗体、抗体の結合フラグメント(例えばFab)、それらからの誘導体、若しくは抗原結合領域を指す。これらの異なる特異性は、エフェクター細胞上のFc受容体に対する結合特異性、および標的細胞例えば腫瘍細胞上の抗原若しくはエピトープに対する結合特異性を包含する。
【0031】
至適にグリコシル化された免疫グロブリン由来治療タンパク質は、N結合グリコシル化部位を有するヒト若しくはヒト由来CH2領域を含んでなる組換えタンパク質を含んでなり、それらの部位は、エフェクター機能として集合的に知られる、細胞免疫機構をin vivoで導き出す前記治療タンパク質の変えられた(相対的に高められた若しくは減少された)能力を賦与するグリカンにより占有される。
【0032】
生物製薬学的製品を製造するために、組換えポリペプチド(1種若しくは複数)の効率的かつ再現可能な発現が可能な産生細胞株が必要とされる。該細胞株は安定かつ貯蔵可能(bankable)である。該細胞株は、1mlあたり500,000(5×105)細胞以上、好ましくは培養物1ml若しくはそれ以上あたり百万(1×106)以上の濃度でである高密度での増殖が可能である。多様な宿主細胞株を本目的上使用し得る。細胞の機構が生物治療生成物の最終量および組成にどのように影響するかの複雑さの理解として、必要とされる属性を生成物の製造法および組成に与えることができる宿主細胞株の選択がより明らかになる。
【0033】
米国特許第4,472,500号明細書は、ハイブリドーマ融合パートナーとして有用かつ優れた安定性および生産能力をもつラット骨髄腫細胞株を教示する。後者の細胞株は、Y0、YB2、Ag0、YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞、若しくはYB2/0(ATCC CRL 1662)と多様に呼称され、そして下でYB2/0と称するであろう。Lifelyら(1995 Glycobiology 5:813−822)は、CHO細胞株、NS0細胞若しくはラット骨髄腫Y0(YB2/0)細胞により産生されたCDR移植ヒトIgG1抗体CAMPATH−1Hに結合された糖鎖の組成を比較した。加えてADCC活性を評価した。Y0細胞により産生されたCAMPATH−1Hは最高のADCC活性を示し、そしてN結合したオリゴ糖の分岐位置でN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の最高含量を有したことが報告された(図2A−E)。これは、多様な型のN結合したオリゴ糖に分岐GlcNAcを付加するグリコシルトランスフェラーゼ、GlcNAc−トランスフェラーゼIII(GnT III)が通常はCHO細胞に存在しないためである(StanleyとCampell、1984、J.Biol.Chem.261:13370−13378)。C2B8、リツキシマブのような治療抗体のADCC能力を増大させるための他の努力は、至適化されたレベルのGnT酵素をもつ宿主細胞株を工作することに焦点を当てた(Umanaら 米国特許第6602684号明細書)。後者の発明者は、GnT IIIの高レベルまでの過剰発現が増殖阻害につながり、そして異なるグリコシルトランスフェラーゼGnT Vの過剰発現がそうであったように細胞に対し毒性であったことをさらに発見した。従って、低下された細胞生存率および生産性は、糖タンパク質を修飾するグリコシルトランスフェラーゼの過剰発現の一般的特徴でありうる。
【0034】
多様な細胞宿主により産生されたMabのオリゴ糖組成についての第二の観察結果(Lifely 上記)は、CHOおよびNSOが産生したMabは優先的にフコシル化されたオリゴ糖を有した(図2C〜D、構造16−30)一方、YB2/0が産生したMabは、より多くのフコシル化されない構造を包含したより複雑なパターンを有した(図2A、BおよびE;構造1−15および31−36)ことであった。
【0035】
この観察結果の後、N結合したオリゴ糖構造をフコシル化する原因である酵素、すなわちfut8の遺伝子産物かつ「fuダーゼ」ともまた称されるα−1,6−フコシルトランスフェラーゼが、CHO若しくはNSO細胞株でよりYB2/0細胞中でより低かったことが示された。従って、fut8遺伝子は類似の効果を伴い、宿主細胞株中で操作し得る(Shinkawaら 2003 J.Biol.Chem.、278:3466−3473;欧州特許第EP1176195A1号明細書)。さらに、二分岐オリゴ糖のガラクトシル化の相対的寄与、分岐GlcNAcの存在、およびフコシル化は、フコシル化されないMabが、N結合した二分岐オリゴ糖構造への他の修飾よりも、in vitroおよびin vivoで測定されるところのADCCを高めるより大きな能力を表すことを示す(Shieldsら 2002.J Biol Chem.277:26733−40;Ninwaら 2004.Cancer Res.64:2127−2133)。
【0036】
目的に駆動される細胞株の開発
産生細胞株の開発は、典型的に、(マウス骨髄腫Sp2/0、CDを適応させたSp2/0(C463)およびNS/0のような)宿主細胞株への抗体遺伝子のトランスフェクション、ならびに高レベルの所望の抗体を発現するトランスフェクトーマを単離することを必要とする。いくつかの例、例えば、治療抗体が生物学的標的分子を中和するよう作用するcA2抗体において、抗体は、循環TNF−αを結合しかつその後枯渇させることにより機能する。他の例において、抗体は、特定の抗原、例えば組織因子を過剰発現する癌細胞を標的とすることにより機能する。組織因子への抗体の結合は組織因子活性を中和する一方、癌細胞は、結合されたFcの認識により活性化される抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)経路により死滅される。抗体が標的とする細胞への溶解攻撃であるADCCは、抗体の定常領域(Fc)へのリンパ球受容体FcγRの結合に際して誘発される。
【0037】
本発明の組成物
本発明は、CD培地中で継続的に増殖する能力を有するクローン性骨髄腫細胞株に関する。一態様において、クローン性骨髄腫細胞株は、FBS補充したCD−Hyb(CD−hybridoma、Gibco)培地から6継代にわたり培養物を徐々に離脱する(wean)ことにより、YB2/0細胞バンクからクローン化される自然突然変異体である。本態様において、クローン性骨髄腫細胞株をC1083Bと称する。C1083Bの特徴付けは、該細胞株が親YB2/0細胞と関連しない多数の独特の増殖の特徴を有することを示した。例えば、C1083Bは血清(YB2/0親細胞株の必要な低温保存剤)の非存在下で凍結かつ融解しうる。加えて、親株と異なり、C1083BはCD培地中で高細胞密度まで増殖し得る。さらなる特徴付けは、CD培地中で増殖させたC1083Bが、血清を補充した増殖培地中で細胞を維持する場合に観察されるものと同様若しくはより優れている、生存可能細胞密度および倍加時間を包含する増殖パラメータを表すことを示した。C1083Eと称されるC1083Aの第二のサブクローンを、6mMグルタミンのみを補充したCD−Hyb培地中へ直接の3週間のC1083A細胞培養物の増殖により選択した。
【0038】
別の態様において、クローン性骨髄腫細胞株は、レクチンを補充したCD培地を用いる選択によりC1083B細胞バンクから派生される。この場合に使用するレクチンはレンズマメ(Lens culinaris)アグルチニン(LCA)であるが;しかしながら、2種のフコース特異的レクチンのいずれも選択に使用しうる。本態様において、クローン性骨髄腫細胞株をC1083CおよびC1083Dと称する。C1083CおよびC1083Dの増殖の特徴付けは、それらがCD−Hyb中でC1083Bに比較可能であったことを示した。
【0039】
従って、C1083B細胞および誘導体は、in vitroで無限の維持、成長および増殖が可能である。C1083B細胞は、増殖し、継代培養し得(すなわち新たな培養容器に繰り返し継代し得)、そして長期間低温保存し(例えば、10%ジメチルスルホキシド若しくはグリセロールのような低温保存剤とともに液体窒素の蒸気相中に保存し)得る。C1083B細胞は細胞株として長期培養物で維持し得る。
【0040】
ほとんどの部分について、本発明の細胞は、ガス交換が可能な適して無菌の環境を提供する、細胞を培養するのに使用されるいかなる容器、フラスコ、組織培養皿若しくは装置中でも増殖される。典型的には、本発明で使用される基礎(foundative)培養物は、細胞を既存の親C1083B細胞ストックから取り出し、血清含有および無血清培地中で培養容器中に入れ、そしてその後本明細書に詳細に記述されるとおり無血清状態に継代するものである。
【0041】
好ましい一態様において、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物は、げっ歯類若しく
は霊長類由来の免疫グロブリン若しくはそのフラグメントを産生しうる。より具体的には、免疫グロブリン若しくはそのフラグメントはマウス若しくはヒト由来でありうる。あるいは、免疫グロブリン若しくはそのフラグメントはキメラでありうるか若しくは工作されていることができる。事実、本発明は、ヒト化、CDR移植、ファージに表示、トランスジェニックマウスに産生、至適化、突然変異誘発、無作為化され若しくは組換えられている免疫グロブリン若しくはそのフラグメントを産生する細胞、細胞株および細胞培養物をさらに企図している。
【0042】
抗体のクラス若しくはアイソタイプ(IgA、IgD、IgE、IgG若しくはIgM)は、H鎖定常領域遺伝子によりコードされる定常領域により与えられる。ヒトIgGクラスのなかに、4種のサブクラス若しくはサブタイプ、すなわち最高から出発して最低への血清中のその天然の豊富さの順序で命名されたIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4が存在する。IgA抗体は2種のサブクラスIgA1およびIgA2として見出される。本明細書で使用されるところの「アイソタイプスイッチ」は、IgGサブクラス若しくはサブタイプ間の変化もまた指す。
【0043】
本発明の細胞、細胞株および細胞培養物は、限定されるものでないがIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、slgA、IgD、IgE、およびそれらのいずれかの構造若しくは機能アナログを挙げることができる、免疫グロブリン若しくはそのフラグメントを産生しうる。特定の一態様において、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物で発現される免疫グロブリンはCNTO860(ヒトhuIgG1由来定常ドメインに融合されたcCLB8可変ドメイン)である。
【0044】
本発明は、抗原、サイトカイン、インテグリン、抗体、増殖因子、細胞周期タンパク質、ホルモン、神経伝達物質、受容体若しくはそれらの融合タンパク質、血液タンパク質、それらのいずれかのフラグメント、および前述のいずれかのいかなる構造若しくは機能アナログも結合する、CH2ドメイン中のグリコシル化が可能な免疫グロブリン若しくはそのフラグメントを発現する細胞、細胞株および細胞培養物をさらに提供する。好ましい一態様において、免疫グロブリン、そのフラグメント若しくは誘導体は標的細胞の表面上の抗原を結合する。とりわけ好ましい一態様において、標的細胞は腫瘍細胞、腫瘍脈管構造の細胞若しくは免疫細胞である。特定の一態様において、免疫グロブリン、そのフラグメント若しくは誘導体は組織因子に結合する。本発明の抗組織因子抗体の一例は、C1261と称される細胞株により産生されるCNTO860である。
【0045】
なお別の態様において、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物は、増殖因子若しくはホルモンを含んでなる融合タンパク質を検出可能に発現しうる。本発明により企図される増殖因子の例は、限定されるものでないが、ヒト成長因子、血小板由来増殖因子、上皮細胞成長因子、線維芽細胞増殖因子、神経成長因子、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、骨形成タンパク質、トランスフォーミング増殖因子、インスリン様増殖因子、若しくはグルカゴン様ペプチド、およびそれらのいずれかの構造若しくは機能アナログを挙げることができる。
【0046】
本発明の単離された抗体は、ADCC活性をもつ抗体アイソタイプ、とりわけヒトIgG1(例えばIgG1κおよびIgG1λ)を有するものを包含し、そして、IgG2およびIgG3がより少なく好ましいか、若しくはFcドメイン中の特定の残基に変えられた残基を含有するハイブリッドアイソタイプが他の種からのそれらの対照物である。抗体は完全長抗体(例えばIgG1)であり得るか、または、抗原結合部分、ならびにADCC、補体活性化およびC1q結合を包含するエフェクター機能を導き出すことが可能なFcの部分若しくはドメインのみを包含し得る。
【0047】
さらに、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物により産生される免疫グロブリンフラグメントは、限定されるものでないが、Fc若しくは他のCH2ドメイン含有構造およびそれらのいずれかの構造若しくは機能アナログを挙げることができる。一態様において、免疫グロブリンフラグメントは二量体の受容体ドメイン融合ポリペプチドである。特定の一態様において、二量体受容体ドメイン融合ポリペプチドはエタネルセプトである。エタネルセプトは、皮下に投与されかつ患者の血清中のTNFαに結合してそれを生物学的に不活性にする、組換えの可溶性TNFα受容体分子である。エタネルセプトは、ヒトIgG1のFc部分に連結されたヒト75キロダルトン(p75)腫瘍壊死因子受容体(TNFR)の細胞外リガンド結合部分よりなる二量体融合タンパク質である。エタネルセプトのFc成分はCH2ドメイン、CH3ドメインおよびヒンジ領域を含有するが、しかしIgG1のCH1ドメインを含有しない。
【0048】
本発明の細胞株を使用する製造に従いやすい他の生成物は、他の型の動物細胞株により現在製造されかつグリコシル化されることが可能なCH2を有する治療若しくは予防タンパク質を包含する。細胞表面上の標的抗原に結合する治療的なグリコシル化されたCH2ドメイン含有タンパク質がとりわけ好ましく、その細胞型は能力を奪うか若しくは身体から排除することが望ましい。多数のこうした治療抗体が、ヒトIgG1、とりわけヒトCH1、CH2およびCH3ドメインを含んでなるIgG1κ、H鎖を含有するよう工作されている。こうした治療タンパク質は、限定されるものでないが:
【0049】
現在REMICADE(R)として販売されるインフリキシマブ。インフリキシマブは、149,000ダルトンのおよその分子量をもつキメラIgG1κモノクローナル抗体である。それはヒト定常およびマウス可変領域から構成される。インフリキシマブは1010M−1の会合定数でヒト腫瘍壊死因子α(TNF(α))に特異的に結合する。インフリキシマブは、可溶性および膜貫通の形態のTNF(α)に高アフィニティーで結合することによりTNF(α)の生物学的活性を中和し、そしてTNF(α)のその受容体との結合を阻害する。インフリキシマブにより結合された膜貫通TNF(α)を発現する細胞はin vitro若しくはin vivoで溶解され得る。インフリキシマブは、関節リウマチ、クローン病および強直性脊椎炎の処置に指示される。インフリキシマブは、静脈内注入として与えられる3ないし5mg/kgの用量、次いで処置されるべき疾患に依存してその後2、6および/若しくは8週の、ならびに8週ごとの間隔での付加的な類似の用量として与えられる。
【0050】
ダクリズマブ(ZENAPAX(R)として販売される)は、活性化されたリンパ球の表面上で発現されるヒト高アフィニティーインターロイキン−2(IL−2)受容体のαサブユニット(p55 α、CD25若しくはTacサブユニット)に特異的に結合する、組換えDNA技術により製造された免疫抑制性ヒト化IgG1モノクローナル抗体である。ダクリズマブは、相補性決定領域(CDR)移植されたマウス−ヒトキメラ抗体である。ヒト配列は、ヒトIgG1の定常ドメインおよびEu骨髄腫抗体の可変枠組み領域由来であった。マウス配列はマウス抗Tac抗体のCDR由来であった。ダクリズマブは、腎移植を受領する患者での急性臓器拒絶の予防に指示され、また、一般に、シクロスポリンおよびコルチコステロイドを包含する免疫抑制レジメンの一部として使用される。
【0051】
バシリキシマブ(SIMULECT(R)として販売される)は、活性化されたTリンパ球の表面上のインターロイキン−2受容体(α)−鎖(IL−2R(α)、CD25抗原としてもまた知られる)に特異的に結合しかつ阻害する免疫抑制剤として機能する、組換えDNA技術により製造されるキメラ(マウス/ヒト)モノクローナル抗体である。アミノ酸配列に基づき、該タンパク質の計算される分子量は144キロダルトンである。それは、ヒトHおよびL鎖定常領域遺伝子(IgG1)、ならびにIL−2R(α)に選択的に結合するRFT5抗体をコードするマウスHおよびL鎖可変領域遺伝子を含有するプラスミドを発現するよう遺伝子的に工作された、樹立マウス骨髄腫細胞株の醗酵から得ら
れる糖タンパク質である。バシリキシマブは、シクロスポリンおよびコルチコステロイドを包含する免疫抑制レジメンの一部として使用される場合に、腎移植を受領する患者での急性臓器拒絶の予防に指示される。
【0052】
アダリムマブ(HUMIRA(R)として販売される)は、ヒト腫瘍壊死因子(TNF)に特異的な組換えヒトIgG1モノクローナル抗体である。アダリムマブは、ヒト由来HおよびL鎖可変領域ならびにヒトIgG1 κ定常領域をもつ抗体をもたらすファージディスプレイ技術を使用して創製された。HUMIRA(R)は、1種若しくはそれ以上のDMARDに対する不十分な応答を有した、中程度ないし重度に活動性の関節リウマチを伴う成人患者での構造の損傷の徴候および症状を低下させかつその進行を阻害するために指示される。HUMIRA(R)は単独でまたはMTX若しくは他のDMARDと組合せで使用し得る。
【0053】
リツキシマブ(RITUXAN(R)として販売される)は、正常および悪性Bリンパ球の表面上で見出されるCD20抗原に向けられた、遺伝子的に工作されたキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体である。該抗体は、マウスLおよびH鎖可変領域配列ならびにヒト定常領域配列を含有するIgG1 κ免疫グロブリンである。リツキシマブは、およそ8.0nMのCD20抗原に対する結合アフィニティーを有する。リツキシマブは再発性若しくは難治性の低グレード若しくは濾胞性CD20陽性B細胞非ホジキンリンパ腫を伴う患者の処置に指示される。RITUXAN(R)は4若しくは8用量にわたり週1回375mg/m 2 IV注入で与えられる。
【0054】
トラスツズマブ(HERCEPTIN(R)として販売される)は、ヒト上皮細胞成長因子受容体2タンパク質HER2の細胞外ドメインに、細胞に基づくアッセイで高アフィニティー(Kd=5nM)で選択的に結合する、組換えDNA由来ヒト化モノクローナル抗体である。該抗体は、HER2に結合するマウス抗体(4D5)の相補性決定領域とともにヒト枠組み領域を含有するIgG 1 κである。HERCEPTINは、その腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現しかつ彼らの転移性疾患に対し1種若しくはそれ以上の化学療法レジメンを受領した転移性乳癌を伴う患者の処置のための単剤療法として指示される。パクリタキセルと組合せのHERCEPTIN(R)は、その腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現しかつ彼らの転移性疾患に対し化学療法を受領したことがない転移性乳癌を伴う患者の処置に指示される。推奨される投薬量は、90分注入として投与される4mg/kgトラスツズマブの初期負荷用量、および初期負荷用量が十分に耐えられた場合に30分注入として投与し得る2mg/kgトラスツズマブの週1回維持用量である。
【0055】
アレムツズマブ(CAMPATH(R)として販売される)は、21〜28kDの細胞表面糖タンパク質CD52に向けられる組換えDNA由来ヒト化モノクローナル抗体(Campath−1H)である。アレムツズマブは、本質的に全部のBおよびTリンパ球、単球、マクロファージおよびNK細胞の大多数、顆粒球の一亜集団、ならびに男性生殖器官の組織の表面上に存在する非調節抗原CD52に結合する。Campath−1H抗体は、ヒト可変枠組みおよび定常領域、ならびにマウス(ラット)モノクローナル抗体(Campath−1G)からの相補性決定領域をもつIgG1 κである。Campathは、アルキル化剤で処置されかつフルダラビン療法に失敗した患者でのB細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)の処置に指示される。Campathの有効性の決定は全体奏功率に基づく。Campathは、当初1日に2時間のIV注入として投与される3mgで与えられ;一旦耐えられれば、1日用量を10mgに増加させかつ耐えられるまで継続すべきである。この用量レベルが一旦耐えられれば、Campath 30mgの維持用量を開始することができ、そして12週まで週あたり3回投与しうる。大部分の患者で、30mgへの増加は3〜7日で達成し得る。
【0056】
オマリズマブ(XOLAIR(R)として販売される)は、ヒト免疫グロブリンE(IgE)に選択的に結合する組換えヒト化IgG1(κ)モノクローナル抗体である。オマリズマブは、肥満細胞および好塩基球の表面上の高アフィニティーIgE受容体(Fc(ε)RI)へのIgEの結合を阻害する。Fc(ε)RIを持つ細胞上の表面に結合したIgEの減少は、アレルギー応答のメディエーターの遊離の程度を制限する。オマリズマブでの処置はまた、アトピー患者での好塩基球上のFc(ε)RI受容体の数も減少させる。オマリズマブは、通年性空気アレルゲンに対する陽性の皮膚試験若しくはin vitro反応性を有しかつその症状が吸入コルチコステロイドで不十分に制御される、中等度ないし重度の持続性喘息を伴う成人および青年(12歳およびより上)に指示される。オマリズマブは150ないし375mgの用量で2若しくは4週ごとにSC投与する。
【0057】
エファリズマブ(RAPTIVA(R))は、ヒトCD11aに結合する免疫抑制性組換えヒト化IgG1 κアイソタイプモノクローナル抗体である。エファリズマブは、全白血球上で発現される白血球機能抗原−1(LFA−1)の(α)サブユニットCD11aに結合し、そしてCD11aの細胞表面発現を減少させる。エファリズマブは、細胞内接着分子−1(ICAM−1)へのLFA−1の結合を阻害して、それにより他の細胞型への白血球の接着を阻害する。LFA−1とICAM−1の間の相互作用は、Tリンパ球の活性化、内皮細胞へのTリンパ球の接着、および乾癬の皮膚を包含する炎症の部位へのTリンパ球の移動を包含する複数の過程の開始および維持に寄与する。リンパ球の活性化および皮膚への輸送は慢性の尋常性乾癬の病態生理学である役割を演じている。乾癬の皮膚では、ICAM−1の細胞表面発現が内皮およびケラチノサイト上で上方制御されている。CD11aは、Bリンパ球、単球、好中球、ナチュラルキラー細胞および他の白血球の表面上でもまた発現されている。従って、エファリズマブがTリンパ球以外の細胞の活性化、接着、移動および数に影響を及ぼす可能性が存在する。RAPTIVA(R)の推奨用量は、単回の0.7mg/kg SC馴化用量、次いで1mg/kgの週1回のSC用量(合計200mgを超えない最大単回用量)である。
を挙げることができる。
【0058】
別の態様において、本発明の細胞株は、免疫グロブリンに由来しないポリペプチドを発現するように安定にトランスフェクト若しくは別の方法で工作されている。
【0059】
なお別の態様において、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物は、組換え血液タンパク質若しくは他の結合組織タンパク質を検出可能に発現しうる。こうした組換えタンパク質は、限定されるものでないが、エリスロポエチン、トロンボポエチン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、フィブリノーゲン、ヘモグロビン、トランスフェリン、アルブミン、プロテインc、コラーゲン、およびそれらのいずれかの構造若しくは機能アナログを挙げることができる。特定の一態様において、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物は組織プラスミノーゲンアクチベーターを発現する。
【0060】
本発明の抗体およびタンパク質をコードする核酸は、当該技術分野で公知のいくつかの方法で派生させ得る。一局面において、抗体は、マウスを本発明のペプチドで免疫することにより製造されるハイブリドーマから便宜的に得られる。抗体は従って、当該技術分野で公知のハイブリドーマ技術(例えば、Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons,Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク(1987−2001);Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989);HarlowとLane、antibodies,a Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989);Colliganら編、Current Protocols in Immunology、John Wiley &
Sons,Inc.、ニューヨーク(1994−2001);Colliganら、Current Protocols in Protein Science、John Wiley & Sons、ニューヨーク州ニューヨーク(1997−2001)(それぞれそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい)のいずれを使用しても得ることができる。
【0061】
抗体の標的結合部分、典型的には抗体の可変Hおよび/若しくは可変Lドメインの別の便宜的派生方法において、例えばファージライブラリーで創製されるこうした結合ドメインのライブラリーからこれらの部分を選択する。ファージライブラリーは、無作為オリゴヌクレオチドのライブラリー、または免疫した動物若しくはヒトのB細胞からのような目的の配列を含有するポリヌクレオチドのライブラリー(Smith,G.P.1985.Science 228:1315−1317)を挿入することにより創製し得る。抗体ファージライブラリーは、1ファージ中にHおよびL鎖可変領域対を含有し、一本鎖Fvフラグメント若しくはFabフラグメントの発現を可能にする(Hoogenboomら
2000、Immunol.Today 21(8)371−8)。ファージミドライブラリーの多様性は、付加的な所望のヒトモノクローナル抗体を製造しかつその後同定するようにライブラリーのモノクローナル抗体の免疫特異性を増大しかつ/若しくは変えるように操作し得る。例えば、H鎖およびL鎖免疫グロブリン分子をコードする遺伝子を、集成された免疫グロブリン分子中で新たなHL対を創製するように無作為に混合(シャッフル)し得る。加えて、HおよびL鎖をコードする遺伝子のいずれか若しくは双方を、免疫グロブリンポリペプチドの可変領域の相補性決定領域(CDR)中で突然変異誘発し得、そしてその後、所望のアフィニティーおよび中和能力についてスクリーニングし得る。抗体ライブラリーは、1種若しくはそれ以上のヒト枠組み配列を選択すること、およびヒト抗体レパートリー由来のCDRカセットの集合物を導入することにより、または設計された変動(Kretzschmarとvon Ruden 2000、Current Opinion in Biotechnology、13:598−602)によってもまた合成で創製し得る。多様性の位置はCDRに制限されないが、しかし、可変領域の枠組みセグメントもまた包含し得るか、若しくはペプチドのような抗体可変領域以外を包含しうる。
【0062】
抗体可変領域以外を包含しうる標的結合成分の他のライブラリーは、リボソームディスプレイ、酵母ディスプレイおよび細菌ディスプレイである。リボソームディスプレイは、タンパク質をRNAに結合されたまま保ちながらのmRNAのそれらの同族のタンパク質への翻訳方法である。核酸のコーディング配列はRT−PCRにより回収される(Mattheakis,L.C.ら 1994.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91、9022)。酵母ディスプレイは、膜結合α−アグルチニン酵母接着受容体aga1およびaga2(接合型系の一部)の融合タンパク質の構築に基づく(Broderら 1997.Nature Biotechnology、15:553−7)。細菌ディスプレイは、細胞膜若しくは細胞壁と会合する輸送された細菌タンパク質への標的の融合に基づく(ChenとGeorgiou 2002.Biotechnol Bioeng、79:496−503)。
【0063】
ハイブリドーマ技術に比較して、ファージおよび他の抗体ディスプレイ法は、in vitroでかつ抗原に対する宿主の影響の可能性の制限なしに、若しくはその逆で、抗原標的に対する選択を操作する機会を提供する。
【0064】
製造方法
安定にトランスフェクトされたとして一旦樹立されれば、本発明のYB2/0細胞株を低温保存しかつ製造操作を開始するために再生し得る。典型的には、該細胞株は10%DMSOを補充したCD−Hybridoma培地中、バイアルあたり1×107細胞で貯
蔵する。製造操作の開始時に、細胞のバイアルを融解し、10mlのCD−Hybridoma培地を含有するフラスコに内容物を移し、そしてフラスコを37℃/5%CO2でインキュベートする、その後、培養物をより大きな容器中で増殖させ、それを順に所望の容量の灌流バイオリアクターに移す(Deoら 1996.Biotechnol.Prog.12:57−64)。
【0065】
例えば、本発明のクローン性骨髄腫細胞株は、約0.01mg/Lないし約10,000mg/L培地の濃度で組換えタンパク質を産生するよう操作しうる。別の態様において、本発明のクローン性骨髄腫細胞株は、約0.1pg/細胞/日ないし約100ng/細胞/日の濃度で組換えタンパク質を産生するよう操作しうる。
【0066】
本発明のC1083B〜E細胞の増殖および維持を支援するために本発明で有用な培地若しくは増殖培地は、無血清培地(SFM)、無タンパク質培地(PF)、動物由来成分を含まない(ADCF)培地、および既知組成(CD)処方を包含する。本発明で使用されるところのCD培地は、血清、血清タンパク質、加水分解物、若しくは未知組成の化合物を包含する動物起源のいかなる成分も欠く増殖培地を含んでなる。CD培地の全成分は既知の化学構造を有し、以前に論考されたバッチごとの変動性の排除をもたらす。
【0067】
本発明で使用されるCD培地は、限定されるものでないが、Invitrogen Corp.、カリフォルニア州カールズバッドにより製造されるCD培地、CD−Hybridoma(カタログ番号11279)を挙げることができる。CD Hybridoma培地は、多様なハイブリドーマおよび骨髄腫の増殖、ならびに静止若しくは攪拌懸濁系でのモノクローナル抗体の製造に至適化された既知組成の無タンパク質培地である。CD
Hybridoma培地は動物、植物若しくは合成起源のタンパク質を含有しない。処方中に、定義されないライセート若しくは加水分解物もまた存在しない。CD Hybridoma培地は、増大された安定性のためL−グルタミンを含まず処方される。グルタミンは、使用前の培地1,000mlあたり40mlの200mM L−グルタミン若しくは40mlのGlutaMAXTM−I補充物(またInvitrogenから入手可能)として添加しうる。Hybridoma培地のマスターファイルがFDAに提出されている。CD Hybridoma培地は、NSO由来株のような脂質依存性若しくはコレステロール依存性の培養物に対し至適化されていない。
【0068】
増殖プロファイルのため、CD−Hybridoma培地に1g/L NaHCO3、および6mMの最終濃度までのL−グルタミンを補充した。本発明は、「Chemically Defined Medium For Cultured Mammalian Cells(培養哺乳動物細胞のための既知組成培地)」と題されたPCT公開第WO 02/066603号明細書(引用することにより明らかに組み込まれる)に記述される「CDM培地」を包含する既知組成培地の使用もまた企図している。
【0069】
エフェクター機能の評価方法
治療的Fc含有タンパク質の消失および従って薬物動態における抗体グリコシル化の役割は不明である。すなわち、循環からのIgG除去の原因と考えられる新生児Fc受容体(FcRn)への結合は、抗体のFc部分のN結合したオリゴ糖の欠如により破壊されないようである。
【0070】
細胞のエフェクター機能とIgG抗体媒介性免疫応答を結びつけるIgG Fc受容体(FcR)は、Fcγ受容体、すなわちFcRI(CD64)、FcRII(CD32)およびFcRIII(CD16)を包含する。全3種は単球上に表示されて見出される。しかしながら、多様な標的細胞上のこれらの受容体の生成は差別的にかつ他の因子に応答して起こるようである。従って、Fcγ受容体に対するグリコシル化が改変されたFc含有生物学的治療薬のアフィニティーの測定は、高められたエフェクター機能を予測するた
めの1つの適切な測定である。
【0071】
それらのFcグリカン中の低レベルのフコースを伴うヒトIgG1 Abは、ヒトCD16 FcRに対するより大きいアフィニティー、および、ヒトPBMCエフェクター細胞を使用するADCCアッセイで劇的に高められたin vitro活性を有することが報告された(Shinkawaら J Biol Chem 278(5):3466−3473、2003;Shieldsら J Biol Chem 277(30):26733−26740、2002;Umanaら、Nat Biotech 17:176−180、1999)。しかしながら、マウスCD16およびCD32 FcRに対するこうしたAbのアフィニティーは高フコースAbのものより高くなかったという報告(Shieldsら、2002)後は、マウスで低フコースAbを研究するより少ない動機が存在した。にもかかわらず、CCケモカイン受容体4に対するキメラヒトIgG1 Abの高フコースおよび低フコースバージョンの抗腫瘍活性を比較した場合に、それらのin vitro ADCC活性の差違は観察されなかった(マウスエフェクター細胞を使用して)が、しかしながら、低フコースAbはin vivoでより強力な有効性を示した。ヒトエフェクター細胞は提供されず、そしてマウスは内因性NK細胞を保持する(Niwaら Cancer Res 64:2127−2133、2004)。
【0072】
ヒトNK細胞上のCD16受容体は、IgG1 Abのフコースレベルに対する高められた感受性を示したため、これらのデータは、ヒトエフェクター細胞で研究されたものと異なる機構がマウスで作動していることを示唆する。1つの可能性は、より最近発見されたマウスCD16−2受容体である(Mechetinaら Immunogen 54:463−468、2002)。マウスCD16−2の細胞外ドメインは、より良好に知られているマウスCD16受容体が有するよりもヒトCD16Aに対する有意により高い配列同一性(65%)を有し、それが結合するIgGのフコースレベルに対しマウスCD16よりもそれがより感受性でありうることを示唆する。マウスマクロファージ様J774細胞でのその報告された発現は、CD16−2を発現するマウスマクロファージが、Niwaら(2004)により記述された低フコースAbによるより大きな抗腫瘍活性の原因でありうる可能性と矛盾しない。従って、マウスエフェクター細胞へのヒトIgG1型Fc含有タンパク質によるFc受容体の結合の研究は予測的でない。
【0073】
エフェクター機能の別の評価方法は、in vitro ADCCアッセイを定量的様式で使用することによる。従って、標的およびエフェクター細胞株の正しい選択、ならびに駆動することを継続することの細胞の不能若しくは内的含有物の遊離、例えば51クロム遊離のいずれかにより細胞の「死滅」を評価することにより、その同族のリガンドを表示する細胞の破壊を引き起こす結合した抗体の能力を測定するように、in vitroアッセイを設計し得る。標的細胞は、本発明の抗体、抗体フラグメント若しくは融合タンパク質の標的リガンドを通常発現する細胞株でありうるか、または標的タンパク質をその表面上で発現しかつ保持するよう工作しうる。こうした工作された細胞株の一例がK2細胞、すなわち成熟サイトカインのアミノ酸1−12の欠失の導入により膜貫通形態として留まる組換えヒトTNFをその表面上で安定に発現するSp2/0マウス骨髄腫細胞株である(Perezら、Cell 63:251−258、1990)。この細胞株は、抗TNF抗体、抗体フラグメント、またはFcドメイン若しくはFcドメイン活性を有する工作された抗TNFαを標的とする融合タンパク質のADCC活性の変化を評価するのに有用である。
【0074】
in vitro ADCC活性アッセイのためのエフェクター細胞は、ヒト若しくは他の哺乳動物供給源のPBMC(末梢血単球細胞)でありうる。PBMCエフェクター細胞は、承認された方法によりドナーから血液を収集した後から新たに単離し得る。使用しうる他の単球若しくはマクロファージ細胞は、腹腔滲出液のような滲出液由来からのもの
でありうる。
【0075】
本発明を全般的条件で記述した一方、本発明の態様は以下の実施例にさらに開示されるであろう。
【0076】
実施例
【実施例1】
【0077】
APF−YB2/0細胞株の適応およびクローニング
5%FBSを補充したDMEM(DMEM+5%FBS)中で培養したラットハイブリドーマ細胞株YB2/0(C1083A)を、2種の異なる方法により、APF培地CD−HybすなわちCD−Hybridoma(Gibco)中で増殖するように適応させた:
【0078】
方法1.細胞を、6mMグルタミンを補充したCD−Hyb培地中で1:1で繰り返し継代することにより、FBS含有培地からゆっくり離脱させた。6継代後に該細胞はAPF培地中での増殖が可能となった。この細胞株をC1083Bと称した(表I)。CD−HybおよびDMEM+5%FBS中でのC1083Bの増殖の特徴は比較可能であった(図3)。C1083Bからの個々のクローンを、DMEM+5%FBSを使用する限界希釈法により単離した。24個のクローンをスケールアップのため移し、そしてこの実験からの8クローンをさらなる研究のため選択した。これらの8クローンの選択の基準は、平均倍加時間(MDT)、振とうフラスコ培養物中で高細胞密度に達する能力、および複数の継代にわたる安定性を包含した。
【0079】
【表1】
【0080】
方法2.200、500、1000若しくは5000個のC1083A細胞を、6mMグルタミンを補充したCD−Hyb培地中で96ウェルプレート(各範疇について5プレート)のウェルにつきプレーティングした。3週のインキュベーション後、5000細胞/ウェルを含むプレートのみがおよそ10ウェル/プレートのコロニーを有した。24個のクローンを増殖のため24ウェルプレートに移した。平均倍加時間、振とうフラスコ培養物中で高細胞密度に達する能力、および複数の継代にわたる安定性に基づき、4クローンをさらなる研究のため採った。
【0081】
方法1により生成された8個および方法2により生成された4個の12クローンを、CD−Hyb培地中での増殖の特徴、すなわち平均倍加時間、振とうフラスコ培養物中で高細胞密度に達する能力、および複数の継代にわたる安定性について比較した。4クローンを、さらなる研究のためこの実験から選択した(C1083B−1、C1083B−12
、C1083−H18およびC1083−H21)。全4種は比較可能な増殖の特徴を有した。それらのMDTはおよそ22時間であり、また、それらは振とうフラスコ培養物中で高細胞密度(>2×106/ml)に達することが可能であった(図4)。該4種の細胞株のうち3種(C1083B−1、C1083B−12およびC1083−H21)をその後、AMAXA電気穿孔装置、および骨髄腫細胞株のトランスフェクションについて以前に至適化された設定を使用して、それらのトランスフェクション効率を決定するため試験した。細胞株C1083B−12を、所望の特徴をもつAPF−YB2/0細胞株としてこの試験から選び、そしてC1083Bに加えて代替のトランスフェクション宿主細胞株としてはたらくことができる。それをC1083Eと称した。
【実施例2】
【0082】
フコース特異的レクチンに耐性のYB2/0クローンの単離
レクチンは特定の1つの型のオリゴ糖を発現する細胞株を選択するのに使用し得る(RipkaとStanley、1986.Somatic Cell Mol Gen 12:51−62)。利用可能な2種のフコース特異的レクチンのうち、レンズマメ(Lens culinaris)アグルチニン(LCA)を、C1083Bを使用する(棒グラフの形態の)死滅曲線(図5)を生成するため選択した。(DMEM+5%FBS中で培養した)C1083B細胞を、多様な濃度のLCAレクチンの存在下に96ウェルプレートに5000細胞/ウェルでプレーティングした。5日後に、Alamar Blueアッセイ(Vybrant細胞代謝アッセイキット、Molecular Probes,Inc.)により生存率を測定した。
【0083】
低下されたレベルのfut8 mRNA(配列番号1)を発現するC1083Bのまれな天然のバリアントを、50μg/mlのLCAの存在下に96ウェルプレート中で5細胞/ウェルをプレーティングすることにより選択した。3週後に17個の耐性クローン(プレーティングした2×104細胞から)を同定した。これらをスケールアップし、そしてCD−Hyb培地中で複数回継代した。17クローンのうち8個を、確実な増殖、振とうフラスコ培養物中で高細胞密度に達する能力、および複数回の継代にわたる培養物の安定性に基づき選択した。全RNAをこれらのクローンから単離した。2組のラット特異的fut8 Taqmanプローブ(下線を付ける)およびプライマー(斜体にする)(配列番号2〜7、図6A)を使用する定量的PCR実験。
【0084】
これらの分析は、1クローン(A4)が6倍より少ないfut8 mRNAを有した一方、2種の他のクローン(A8およびA9)がおよそ2倍より少ないfut8 mRNAを有したことを示した(図6B)。クローンA4をC1083Cと称し、また、クローンA9をC1083Dと称した。図7AおよびBからのデータは、CD−Hyb中でのC1083CおよびC1083Dの増殖の特徴が、培地容量あたりの生存可能細胞(図7A)および全細胞生存率(図7B)に基づき、親株C1083Bのものに匹敵することを示す。
【実施例3】
【0085】
抗組織因子抗体DNAでのC1083B細胞のトランスフェクション
抗ヒト組織因子抗体CNTO 860は、マウスでの癌のヒト異種移植モデルで試験されたところの腫瘍増殖を低下若しくは予防することにおけるその有効性のため選択した。図8に示されるところのCNTO 860 HおよびL鎖をコードする発現ベクター(p2401およびp2402)は第WO/04110363号および米国特許出願第11/010,797号明細書にさらに記述される)をpSV2DHFR(Promega)とコトランスフェクトし、そして、選択マーカーMHX、(ミコフェノール酸、ヒポキサンチンおよびキサンチン)に耐性のクローンを、抗体発現についてELISAにより分析した。1個の高発現細胞株C1261Aをさらなる研究のため選択した。それは振とうフラ
スコ培養物でCD−Hyb培地中で45〜50mg/Lを産生し、そして複数の継代にわたる発現の安定性を示した(図9)。増殖および抗体力価を1×Lipid(Gibco)の非存在および存在下でモニターした。
【実施例4】
【0086】
C1083B由来の抗組織因子抗体のADCC活性の測定
一連のin vitro 51Cr遊離細胞傷害性アッセイを、数種の抗組織因子抗体、すなわち、ヒトIgG4 Fcを含有するCNTO859(欧州特許第EP833911B1号明細書に記述される);CNTO859と同一の抗原結合領域を有するがしかしヒトIgG1枠組みにクローン化されており、そして従ってH鎖について配列番号8およびL鎖について配列番号9の配列を有するヒト化抗体を産生するCNTO860(2004年12月13日出願の米国特許出願第11/010797号明細書に記述されるところの);ならびにYB2/0 CD−Hybに適応させた細胞株でCNTO860抗体を産生することの結果としてのグリコシル化バリアント、若しくはfut8欠損バリアントのADCC活性の増強を示すために使用した。
【0087】
組織因子を発現するヒト結腸癌細胞HCT 116を標的細胞として使用した。細胞は、10%熱不活性化FBSおよび1%LNNを補充したマッコイ5A培地(M5A−10)中で維持した。アッセイの日に細胞をトリプシン処理し、収集し、そして1mLのM5A−10中37℃で200μCiのNa51CrO4(PerkinElmer Life Science、マサチューセッツ州ボストン)あたり10×106細胞で2時間標識した。標識した細胞は、50mLのカルシウム若しくはマグネシウムを含まないPBS(PBS−)で2回洗浄し、そして4×105細胞/mL M5A−10に再懸濁した。
【0088】
PBMCは健康ドナーから単離した。静脈血をヘパリン化シリンジに収集し、そして等容量のPBS−で50mLコニカルチューブに希釈した(20mL:20mL)。この血液溶液の上に13mLのFicoll−Paque(Amersham、スウェーデン・ウプサラ)を置き、そして室温(RT)で2200rpmで30分間遠心分離した。上の血漿層を吸引し、そしてPBMCを含有する界面(バフィ層)を収集した。エフェクター細胞をPBS−で3回洗浄し、そしてその後5×106細胞/mLでM5A−10に再懸濁した。25:1というエフェクター対標的比を全実験に使用した。
【0089】
第一の実験で、組織因子に対するモノクローナル抗体すなわちCNTO 859、CNTO 860およびCNTO 860 YB2/0のADCC活性を、2名の異なるドナーからのPBMCを使用して特徴付けした(図10A)。特異的溶解を4時間後に測定し、そして各棒は双方のドナーからの3検体の平均を代表する。自発および最大遊離の対照サンプルは、それぞれ、2μg/mLの抗体の存在下しかしエフェクター細胞の非存在下で培地単独で処理したか、若しくは0.5% Triton X−100で処理した。各サンプル中の特異的溶解の比率は、自然に遊離したcpmにより補正したTriton X−100により遊離されたcpm(最大遊離)に基づき計算した。
【0090】
IgG4サブタイプ、CNTO 859は、マウス骨髄腫宿主細胞株C463により産生されるIgG1サブタイプ、CNTO 860に比較して最小のADCC活性を有する。対照的に、YB2/0宿主細胞株C1083B由来のCNTO 860は、それらのEC50および最大溶解値を比較した場合に、C463由来のものよりおよそ20〜60倍より強力であった(図10A)。YB2/0由来のCNTO 860は、99%フコシル化されたC463由来のCNTO 860に比較して、40%フコシル化された。
【0091】
第二の実験で、3種の細胞株由来のCNTO 860、すなわちC463;無動物タンパク質に適応させたYB2/0細胞株C1083B、およびfut8枯渇YB2/0細胞
株C1083Cを、それらの相対ADCC効力について比較した。特異的溶解を4時間後に測定し、そして、棒は単一ドナーからの3検体の平均を表す。
【0092】
C1083B細胞株由来のCNTO 860は、マウス骨髄腫宿主細胞株C463由来のものよりおよそ10倍より強力であった(図10B)。
【0093】
親YB2/0由来細胞株C1083Bおよびfut8枯渇クローンA4−2、C1083C由来のCNTO 860の間で、ADCC活性の差違は観察されなかった。これらの結果は、フコースレベルをさらに低下させることによるADCC活性のさらなる増大はin vitroアッセイ法を使用して測定可能でなかったことを示す。
【実施例5】
【0094】
抗体グリコシル化の分析
C463および多様なトランスフェクション宿主細胞株で生成されたCNTO 860のMALDI−TOF−MS分析を実施した。
【0095】
C463(図11A)、APFに適応させたラット骨髄腫YB2/0宿主細胞株C1083B(図11B)およびfut8枯渇YB2/0宿主細胞株C1083C(図11C)で生成されたCNTO 860を、公表されたプロトコル(Papacら、1996;Papacら、1998;Rajuら、2000)に従ってMALDI−TOF−MS分析にかけた。
【0096】
試験Abを多様な方法により構造解析した。無傷のIgG AbのMALDI−TOF−MS分析を実施するため、IgGサンプルを10mMトリス−HCl緩衝液、pH7.0中にもたらし、そして濃度を約1mg/mL緩衝液に調節した。約2μlのIgG溶液を2μlのマトリックス溶液(マトリックス溶液は、0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水中50%アセトニトリル1.0mlに10mgのシナピン酸を溶解することにより調製した)と混合し、そしてこの溶液2mlを標的に負荷しかつ風乾させた。MALDI−TOF−MSはApplied BioSystems(カリフォルニア州フォスターシティ)からのVoyager DE装置を使用して取得した。
【0097】
遊離されたFcグリカンのMALDI−TOF−MS分析を実施するため、IgGサンプル(約50μg)を10mMトリス−HCl緩衝液(50μl)pH7.0中でPNGアーゼFで37℃で4時間消化した。反応混合物を50%酢酸(約5μl)で酸性化することにより消化を停止し、そしてその後、以前に記述された(Papacら、1996;Papacら、1998;Rajuら、2000)とおり陽イオン交換樹脂カラムを通過させた。酸性および中性のオリゴ糖の混合物を含有するこれらのサンプルを、Applied BioSystems(カリフォルニア州フォスターシティ)からのVoyager DE装置を使用して、別の場所(Papacら、1996;Papacら、1998;Rajuら、2000)に記述されたとおり、MALDI−TOF−MSにより陽および陰イオンモードで分析した。
【0098】
多様なYB2/0細胞で産生された抗体サンプルからの遊離されたグリカンのMALDI−TOF−MS分析を図11A〜Cに示し、また、該オリゴ糖の構造を図2A〜Eに描く。オリゴ糖は、コアフコース、分岐GlcNAcの存在、シアル酸、ガラクトースなどのような末端糖の存在若しくは非存在に基づき配列中で番号付けする。MALDI−TOF−MSデータは、YB2/0細胞で産生された抗体サンプルが増大された量のフコシル化されていないオリゴ糖を含有することを示唆する(図2A〜B、構造1−15)。フコシル化されていないオリゴ糖の量は、ある種の抗体サンプルについて50%から95%まで変動する。加えて、分岐GlcNAcを含有するフコシル化されていないオリゴ糖の増
大もまた、YB2/0由来抗体サンプルで観察された。さらに、YB2/0細胞由来の抗体サンプルは、フコシル化されずかつ分岐GlcNAcを含有するオリゴ糖の存在により、増大された均質性および/若しくはより均質な構造いずれかを含有する。対照的に、他の細胞型で産生された抗体サンプルは、オリゴ糖のより不均質な構造を含有する傾向があり(図2A〜E、構造1−36)、より規定されかつ均質なオリゴ糖構造の存在による増大された活性を伴う治療抗体サンプルを産生するYB2/0細胞の価値を示す。さらに、YB2/0細胞で産生された抗体サンプルは、HEK若しくはNS/0のような他の細胞株で産生された抗体サンプルに比較して、より低い比率の高マンノース含量を伴う構造を含有する傾向がある(図2E、構造31−36)。
【実施例6】
【0099】
抗TNFα MabのC1083B/C発現
数種の骨髄腫宿主細胞株(Sp2/0、NS0およびYB2/0)でのCNTO 860発現レベルの検査は、これらの細胞株で産生される他の抗体に比較して比較的より低レベルの抗体産生を示した。従って、本発明のYB2/0由来宿主細胞株での発現に代替抗体を選択した。C1083B YB2/0細胞およびC1083C YB2/0細胞を、記述される(Knightら、Mol Immunol 30:1443−1453、1993;第WO02/012502号明細書)ところの電気穿孔法により、CNTO 148と称されるヒト抗TNFα Mab(Glimumab)をコードする、H(これの可変領域は配列番号10である)およびL鎖(これの可変領域は配列番号11である)をコードするプラスミド(それぞれプラスミドp1783およびp1776)でトランスフェクトした。トランスフェクトしたYB2/0由来細胞のミコフェノール酸耐性コロニーを、記述される(Knightら、1993)ところのヒトIgGについてのELISAにより、それらの培養上清中のCNTO 148の存在についてアッセイした。トランスフェクタント(#14 C1083Bトランスフェクタントおよび#1 C1083Cトランスフェクタント)を、IMDM、5%FBS、1%グルタミン、1×MHX選択(0.5μg/mlミコフェノール酸、2.5μg/mlヒポキサンチン、50μg/mlキサンチン)中で1リットルの容量までスケールアップし、細胞生存率が<20%になるまで培養物を過剰増殖させた。標準的プロテインAクロマトグラフィーはCNTO 148の2サンプルを精製するために使用した。該精製は、C1083Bトランスフェクト細胞から1.3mgのCNTO 148およびC1083Cトランスフェクト細胞から3.2mgのCNTO 148を生じた。
【0100】
C1083B−148−14および別のクローンC1083B−148−33をハロ(Halo)サブクローニングにかけた。21個のハロをクローン33の第1回のハロ(Halo)から採り、その1サブクローンC1083B−148−33−19が振とうフラスコ中で約89μg/mLを発現した。増殖および2回目のハロ(Halo)に際して、サブクローンC1083B−148−33−19−42が振とうフラスコ中で約105μg/mLの力価を表した。このクローンはAPF培地に適応されている。
【0101】
YB2/0由来CNTO 148の生物分析的特徴付け
PNGアーゼFに遊離されるオリゴ糖のMALDI−TOF−MS分析(図12A〜C)は、YB2/)由来宿主細胞C1083BおよびC1083Bからのオリゴ糖の80%以上がフコシル化されていなかったことを示した。予期しないことに、C1083C由来CNTO 148のフコース含量は、C1083B由来CNTO 148のものより低くないことが見出された(図12BおよびC)。これらの抗体サンプルからのオリゴ糖は、増大された量のフコースを伴わない分岐GlcNAcもまた含有し、NS/0宿主細胞で産生された抗体からのオリゴ糖よりもより均質であるようである(図12A)。
【0102】
YB2/0由来CNTO 148を用いるin vitro ADCCアッセイ。K2
若しくはC480A細胞と称される標的細胞は、成熟サイトカインのアミノ酸1−12の欠失の導入により膜貫通形態として留まる組換えヒトTNFをその表面上で安定に発現するSp2/0マウス骨髄腫細胞株である(Perezら、1990 上記)。K2細胞を、熱不活性化FBS、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸および1×MHX選択を含有するイスコフ培地中で培養した。K2細胞は2〜3日ごとに1:5で継代した。
【0103】
アッセイの日に、K2細胞を遠心分離しかつPBSで1回洗浄した。細胞を培地で約1×106細胞/mlに調節し、そして、15マイクロリットルのBATDA蛍光標識試薬(Delfia EuTDA細胞傷害性試薬キット中、Perkin−Elmer Life Sciences中)を5mlの細胞に添加した(Blombergら、J Immunol Methods 193:199−206、1996)。細胞を37℃で30分間インキュベートし、その後PBSで1000rpmで5分間2回洗浄した。PBMCエフェクター細胞と混合する直前に標的細胞を遠心分離し、そして1%BSAを含有するイスコフ培地に2×105細胞/mlで再懸濁した。
【0104】
PBMCエフェクター細胞は、ヘパリン化ヴァキュテーナーに血液を収集しかつPBSで2倍に希釈した後に健康ドナーから単離した。30mlの希釈血液を、50mlコニカルチューブ中で15mlのFicoll−Paque(Amersham、スウェーデン・ウプサラ)の上に重ね、そして室温RTで1500rpmで30分遠心分離した。PBMCを含有する界面(バフィ層)を収集しかつPBSで2回洗浄し、そして1200rpm、10分間RTで遠心分離した。細胞を、5%熱不活性化FBS、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムおよび0.1mM非必須アミノ酸を含有するイスコフ培地に再懸濁した。OKT3(PBS中10μg/ml、Ortho Pharmaceutical)で4℃で一夜被覆しかつPBSですすいだ100mm組織培養皿上でインキュベートすることにより、PBMCを37℃、5%CO2でおよそ4時間活性化した。PBMCを収集し、1%BSAを含有するイスコフ培地で1回洗浄し、計数しかつおよそ1×107細胞/mlに再懸濁した。
【0105】
CNTO 148試験サンプルをイスコフ、1%BSA培地で連続希釈した。50マイクロリットルの標的細胞(約10,000)および100マイクロリットルの抗体を丸底96ウェルプレートに添加した。50マイクロリットルのエフェクター細胞(約500,000細胞)を混合物に添加し、そしてプレートを1000rpm、5分間、RTで遠心分離した。エフェクター細胞対標的細胞比(E:T)は50:1であった。バックグラウンド蛍光を測定するため、ウェルを、抗体を含まない、培地中のエフェクター細胞および標的細胞の混合物とインキュベートした。最大蛍光を確立するため、10マイクロリットルの溶解溶液(Delfia EuTDA細胞傷害性キットから)をバックグラウンドウェルに添加した。ADCCアッセイのため、細胞を37℃、5%CO2でおよそ2時間インキュベートした。20マイクロリットルの上清を96ウェル平底プレートに移した。200マイクロリットルのユーロピウム溶液(Delfia EuTDA細胞傷害性キット)を添加し、そしてプレートをプレート振とう器上にRTで10分間置いた。時間分解蛍光計EnVision装置(Perkin−Elmer Life Sciences)で蛍光を測定した。各サンプル中の特異的溶解の比率を、以下の式すなわち%特異的遊離=([実験遊離−自発遊離]÷[最大遊離−自発遊離])×100に従って計算した。
【0106】
ADCCアッセイの結果は、C1083B由来CNTO 148が参照物質すなわちマウス骨髄腫細胞からのCNTO 148よりおよそ70倍より強力であったことを示した(図13)。C1083C由来CNTO 148は、それらが非常に類似のフコースレベルを有したことを示した生物分析データと一致して、C1083B由来CNTO 148と実質的に同一の効力を示した。フコースレベルの予期されない類似性の結果として、こ
れらのAbロットは、超低レベルのフコース(10〜20%)が、in vitroでCNTO 860(およびin vivoで2C11)で観察されたところの中程度のレベルのフコース(40〜50%)を有することに比較してADCC活性のさらなる増強に変わったかどうかを試験するための手段を提供しなかった。にもかかわらず、これらの結果は、代替宿主細胞で発現された同一Abに関して顕著に高められたADCC活性を示す、C1083B若しくはC1083Cいずれかで発現されたAbの別の例を提供する。
【実施例7】
【0107】
HEK 293E細胞、C1083A細胞およびC1083C細胞で発現された抗CD3Abのin vivoアゴニスト活性
抗CD3モノクローナルAbによるT細胞活性化が、Fcγ受容体(FcγR)を結合するそれらのAbの能力に依存することを示す以前の報告に基づき、単純なモデル系を使用して、マウスが、そのFcグリカン中の異なるレベルのフコースを伴うヒトIgG1 Abに対する異なる程度のFc依存性応答を示すかどうかを試験した。組換えハムスター抗マウスCD3 ε鎖Ab、145−2C11(2C11)をこれらの研究に使用した。一本鎖Fcバージョン2C11をコードするプラスミドはJeffrey Bluestone博士(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)により恵与された。このプラスミド中のHおよびL鎖可変(V)領域コーディング配列を事前にPCR増幅し、そして該増幅されたDNAフラグメントを最初にゲノムHおよびL鎖V領域ベクターに、ならびにその後それぞれマウスIgG2aおよびκ鎖のゲノム定常領域発現ベクターにクローン化した。
【0108】
2C11のヒトIgG1バリアントを製造するため、H鎖可変領域をコードするDNAは、以前に製造したプラスミドの1種p2213から増幅し、そしてヒトG1定常領域コーディング配列を含有する2種の異なる発現ベクターにクローン化した。これは、Ab遺伝子転写がCMVプロモーターにより駆動された発現プラスミドp2648、および転写がマウス免疫グロブリンプロモーターにより駆動されたp2694の生成をもたらした。2C11 L鎖可変領域はプラスミドp2208から増幅し、そしてCMVプロモーター若しくは免疫グロブリンプロモーターいずれかにより駆動されるヒトκ定常領域を含有する発現ベクターにクローン化した。これは、Ab遺伝子転写がCMVプロモーターにより駆動された発現プラスミドp2623、および転写が免疫グロブリンプロモーターにより駆動されたp2669の生成をもたらした。CMVプロモーター含有プラスミドをHEK
293E細胞で一過性に発現させた。およそ3.5×108細胞を、10層の細胞スタック(cell stack)(Corning)中、増殖培地(10%FBS中を含むDMEM)中で5%CO2中37℃で一夜増殖させた。40mlのOptimem(Invitrogen,Inc.)中で1.4mlのLipofectamine 2000を各300μgのプラスミドp2648若しくはp2622およびp2623と混合することにより調製したトランスフェクションカクテルを細胞スタックに添加し、そして37℃で一夜インキュベートした。翌日、トランスフェクションカクテルを含む培地を1リットルの293 SFMII(Invitrogen,Inc.)+4mM酪酸ナトリウムで置換し、そして細胞を37℃で4日間インキュベートした。発現された抗体を含有する上清を収集し、遠心分離および0.8ミクロン濾過により澄明にした。発現された抗体は標準的プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。
【0109】
免疫グロブリンプロモーター含有プラスミドを、安定なトランスフェクションを介してC1083AおよびC1083C YB2/0細胞に導入した。およそ2×107のYB2/0細胞を、電気穿孔法により各10μgのプラスミドp2694およびp2669でトランスフェクトし、そして、10%FBS、NEAA、L−グルタミンおよびピルビン酸ナトリウムを補充したαMEMを含有する増殖培地中、96ウェル細胞培養皿にプレーティングした。ミコフェノール酸を用いてプラスミドの安定な組込みについて細胞を選択
した。抗体を分泌するミコフェノール酸耐性のクローンを抗ヒトIgG ELISAによりスクリーニングした。高発現の安定なクローンを、5%FBSを含有する培地中でスケールアップした。発現された抗体は標準的プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。
【0110】
C1083A YB2/0細胞中で発現された、製造された2C11 huG1 Abを、上の実施例5および6に記述されたところのMALDI−TOF−MSにかけた(図14)。この分析は、該細胞株が、血清の存在下で培養されたとは言え、支配的な種がフコシル化されていない(図2中のような構造2)グリコシル化生成物Abを産生することを継続したことを示した。2C11調製物を、FcγR結合能力を欠いた対照Abを製造するために酵素で脱グリコシル化した。該脱グリコシル化は、Abを1000単位のPNGアーゼFで37℃で24時間処理することにより行った(緩衝液1.0mL中約10mgのAb)。酵素の別のアリコートを添加し、そしてインキュベーションを追加の24時間継続した。脱グリコシル化されたIgGサンプルをHiTrapプロテインAカラムを使用して精製し、そしてリン酸緩衝生理的食塩水、pH7.0に処方した。2C11 Gnoと命名された生じる糖形態は、徹底的に脱グリコシル化されていたことがMALDI−TOF−MSにより示された(示されない)。
【0111】
各Abサンプルの濃度を、分光光度法によりOD280を測定すること、ならびにSDS−ポリアクリルアミドゲルの染色により測定した。汚染するエンドトキシンレベルを測定するために全試験AbでLALアッセイを実施した。上述されたとおり実施したMALDI−TOF−MSおよびHPLC分析は、HEK 293E由来Ab(2C11 huG1、HEK)、C1083A由来Ab(2C11 huG1、C1083A)およびC1083C由来Ab(2C11 huG1、C1083C)中のFcグリカンがそれぞれおよそ95%、40%および15%フコシル化されていたことを示した。新たに単離したマウス脾細胞上のCD3に対する定量的結合分析は、該3種の異なるAb調製物の抗原アフィニティーの検出可能な差違を示さなかった(データは示されない)。
【0112】
該3種のAbがそれらのin vivo T細胞活性化特性に関して相互にどのように匹敵したかを評価するため、正常雌性Balb/cマウス(Charles River
Laboratories)に変動する量の試験Abの単一腹腔内注入を投与した。試験Ab注入のおよそ24時間後に全マウスをC02窒息により安楽死させ、心穿刺を介して終末血サンプルを収集し、そして脾を収集しかつ冷収集培地(RPMI 1640、5%熱不活性化ウシ胎児血清、1%L−グルタミン)を含有するチューブに入れた。100μmナイロンメッシュ篩を通して脾を穏やかに押すこと、およびRPMI−1640培地で1回洗浄することにより、脾細胞の単細胞懸濁液を調製した。該単細胞懸濁液をその後、製造元の説明書(Pharmingen)に従ってNH4Cl低張溶解溶液を使用して無核化(anucleated)赤血球を枯渇させた。脾細胞を2回洗浄し、そして0.2%アジ化ナトリウムを含むPBS、0.5%BSAに再懸濁した。CD4 PE+/CD25 APC+/CD8および7−AAD生存率色素を使用して脾細胞を免疫染色しかつフローサイトメトリーにより分析した。全染色は、Fc受容体結合により媒介される染色を遮断するために抗CD16/CD32 mAb、2.4G2の存在下で行った。
【0113】
該結果は、高フコースバリアントに比較して中程度フコースバリアントを投与したマウスでのより大きなT細胞活性化を示し、高フコースバリアントは同一程度のT細胞活性化を達成するためにおよそ4倍より多いAbを投与することを必要とした(図15)。しかしながら、低フコースバリアントは中程度フコースバリアントより活性でなく、フコースの完全な非存在が、マウスで低フコースバリアントの最大に高められたFc機能を達成するために必要でないことを示唆した。ヒト低アフィニティーFcγRの1種、FcγRIIIAがFcフコースレベルに感受性であることを考えれば、これらの知見は、マウスが
以前に考えられたよりもヒト細胞によるFc依存性応答をより緊密に模倣しうることを示唆する。
【0114】
本明細書で挙げられる全部の刊行物および特許は、例えば現在記述される発明に関して使用されうる、該刊行物で記述される構築物および方法論を記述かつ開示する目的上、引用することにより本明細書に組み込まれる。上でおよび本文を通じて論考される刊行物は、単に本出願の出願日前のそれらの開示のため提供される。本明細書の何物も、本発明が以前の発明によってこうした開示を見越す権利を与えられないことの承認として解釈されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】典型的なIgGサブクラスの哺乳動物抗体、ドメインおよびグリコシル化点を描く図である。
【図2A−2E】天然の若しくは哺乳動物細胞由来の組換え抗体と関連する支配的な二分岐オリゴ糖構造を示す。すなわち、略記される糖構造 Fuc=フコース;Gal=ガラクトース;Glc=グルコース;GlcNAc=N−アセチルグルコサミン;Man=マンノース;およびNANA*=シアリル(N−アセチルノイラミン酸)が同定される。
【図3A−3B】無血清および血清含有培地中で培養したAPF−YB2/0(C1083B)細胞株の複数世代にわたる増殖および生存率の比較を示す。C1083Bを、DMEM+5%FBS、および6mMグルタミンを補充したCD−Hyb培地中で培養した。細胞は2〜3×105細胞/mlの播種密度を使用して週あたり3回継代した。すなわち(A)増殖曲線および(B)生存率。
【図4】C1083B由来の4種のAPF−YB2/0細胞株の相対増殖特性を示す。CD−Hybに適応させたクローンを2方法すなわち離脱(C1083B−1およびC1083B−12)ならびに直接選択(C1083−H18およびC1083−H21)により単離した。細胞を、6mMグルタミンを補充したCD−Hyb中で培養した。細胞は2〜3×105細胞/mlの播種密度を使用して週あたり3回継代した。
【図5】5日後のC1083Bに対するLCAレクチンの毒性を示すグラフである。
【図6A−6B】(A)プローブおよびプライマー組の位置を伴うラットfut8 mRNA(Genbank(NM_001002289)のヌクレオチド配列、ならびに印を付けた(「Primer Express」ソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して設計したプライマー(下線を付ける)およびプローブ(斜体にする))C1083Bのバリアントでのfut8 mRNAの発現、ならびに(B)C1083B由来の8種のレクチン耐性細胞株のQPCR分析。各細胞株はDMEM+5%FBS中で培養し、そして1×107細胞を指数増殖期に収集した。各クローンのfut8 mRNAのレベルをQPCRにより分析した。を示す。
【図7A−7B】C1083B由来のフコース枯渇クローンの(A)生存可能細胞密度および(B)生存率のグラフを表す。細胞株は6mMグルタミンを補充したCD−Hyb培地中で培養した。
【図8A−8B】細胞株生成に使用したCNTO 860発現ベクターの図解である。すなわち(A)p2401はH鎖発現ベクターであり、および(B)p2402はL鎖発現ベクターである。
【図9A−9B】C1083Bから工作した、抗組織因子抗体CNTO 860を発現する細胞株C1261Aの時間にわたる安定性を示すグラフである。継代11の細胞を振とうフラスコ培養物中、CD−Hyb培地(Gibco)中で2検体で(2×105/mlで)播種した。増殖および抗体力価を1×Lipid(Gibco)の非存在および存在下でモニターした。
【図10A−10B】(A)マウス骨髄腫株C463およびラットYB2/0宿主細胞株C1083Bで生成されるCNTO 859およびCNTO 860により導き出される用量依存性の抗体特異的細胞溶解を示す棒グラフ。(B)C1083Bおよびfut8枯渇YB2/0細胞株C1083C(A4−3)と比較したC463からのCNTO 860の間のADCCの差違を示す棒グラフ。である。
【図11A−11C】多様な細胞株により産生されるCNTO860のMALDI−TOF−MS分析からのレコーダ出力波形を示し;(A)C463すなわちAPFに適応させたラット骨髄腫YB2/0宿主細胞株、(B)C1083B、および(C)fut8欠乏YB2/0宿主細胞株C1083C。
【図12A−12C】多様な細胞株により産生されるCNTO148のMALDI−TOF−MS分析からのレコーダ出力波形を示し;(A)C463すなわちAPFに適応させたラット骨髄腫YB2/0宿主細胞株、(B)C1083B、および(C)fut8欠乏YB2/0宿主細胞株C1083C。
【図13】多様な宿主細胞で発現された数バッチの抗TNFα Mab、CNTO 148の濃度依存性および(標的細胞特異的溶解により測定されるところの)相対ADCC活性を示すグラフである。
【図14】YB2/0宿主細胞株C1083Aにより産生される2C11 抗CD3 MabのMALDI−TOF−MS分析からのレコーダ出力波形を示す。
【図15】示されるところの多様な抗体調製物を投与したマウスから収集した脾細胞上の脾細胞マーカーにより測定されるところのT細胞活性化を示すグラフである。
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体の製造に有用なラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC 1662)由来の単離された細胞株であって、YB2/0(ATCC 1662)を使用して製造されるポリペプチドに比較して有意に低下されたフコース含量を有することを特徴とするグリコシル化ポリペプチドを産生する、上記細胞株。
【請求項2】
細胞株が、動物タンパク質を含まない培地、CD−Hybridoma(CD−Hyb)中で増殖するようにラットハイブリドーマ細胞株YB2/0(C1083A)を適応させることにより該細胞株から発生され、そしてC1083Bと称される、請求項1に記載の細胞株。
【請求項3】
細胞株が、高トランスフェクション効率、短い平均倍加時間、およびCD−Hyb中で高細胞密度に達する能力の最低1つに基づき選択されるC1083Bのサブクローンであり、かつ、該細胞株がC1083Eと称される、請求項1に記載の細胞株。
【請求項4】
fut8 mRNAレベルが野生型YB2/0細胞株のレベルより低い、請求項1に記載の細胞株。
【請求項5】
細胞株がレクチンに対する耐性について選択される、請求項1に記載の細胞株。
【請求項6】
細胞株のグリコシル化ペプチドが、野生型骨髄腫細胞株およびCHO細胞株により産生されるペプチドに比較して実質的に低下されたフコース含量を有する、請求項2に記載の細胞株。
【請求項7】
分子が、優先的にフコシル化されないN結合オリゴ糖基を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のトランスフェクトした宿主細胞株により産生される抗体。
【請求項8】
抗体が、野生型YB2/0細胞株で産生された抗組織因子抗体に比較して増大されたADCC活性を有する、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
製薬学的に許容できる担体と組合さった請求項7に記載の抗体を含んでなる生物製薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の細胞株に、抗体をコードするポリヌクレオチド配列をトランスフェクトすること;および
該抗体を検出可能若しくは回収可能な量で発現すること
を含んでなる、抗体の製造方法。
【請求項11】
ポリヌクレオチド配列によりコードされる抗体がヒト抗体である、請求項10に記載の抗体の製造方法。
【請求項12】
ポリヌクレオチド配列によりコードされる抗体がヒト化抗体である、請求項10に記載の抗体の製造方法。
【請求項13】
ポリヌクレオチド配列によりコードされる抗体が、細胞の表面に結合されうるヒトポリペプチドの一領域に結合する、請求項11若しくは12に記載の抗体の製造方法。
【請求項14】
ポリヌクレオチド配列によりコードされる回収された抗体が、優先的にフコシル化されないN結合オリゴ糖基を有することを特徴とする、請求項10に記載の方法により製造さ
れた抗体。
【請求項15】
配列番号9のL鎖アミノ酸配列および配列番号8のH鎖アミノ酸配列を含んでなる、請求項10に記載の方法により製造された抗体。
【請求項16】
配列番号11のL鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号10のH鎖可変領域アミノ酸配列を含んでなる、請求項10に記載の方法により製造された抗体。
【請求項17】
被験体、細胞若しくは組織に、請求項14〜16のいずれかに記載の抗体を投与もしくはそれらと接触させることを含んでなる、疾患若しくは状態の処置方法。
【請求項18】
疾患若しくは状態が、該抗体が結合することが可能であるポリペプチドを表示する細胞の破壊が望ましい腫瘍性疾患若しくは免疫媒介性障害である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
抗体が結合することが可能であるポリペプチドが、ヒト組織因子若しくはヒトTNFαである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
疾患若しくは状態が、関節リウマチ、黄斑変性、乾癬および糖尿病性網膜症よりなる群から選択される異常な血管新生を特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
疾患若しくは状態が、前記細胞からの前記ポリペプチドの遊離を特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
本明細書に開示されるいずれかの発明。
【請求項1】
抗体の製造に有用なラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC 1662)由来の単離された細胞株であって、YB2/0(ATCC 1662)を使用して製造されるポリペプチドに比較して有意に低下されたフコース含量を有することを特徴とするグリコシル化ポリペプチドを産生する、上記細胞株。
【請求項2】
細胞株が、動物タンパク質を含まない培地、CD−Hybridoma(CD−Hyb)中で増殖するようにラットハイブリドーマ細胞株YB2/0(C1083A)を適応させることにより該細胞株から発生され、そしてC1083Bと称される、請求項1に記載の細胞株。
【請求項3】
細胞株が、高トランスフェクション効率、短い平均倍加時間、およびCD−Hyb中で高細胞密度に達する能力の最低1つに基づき選択されるC1083Bのサブクローンであり、かつ、該細胞株がC1083Eと称される、請求項1に記載の細胞株。
【請求項4】
fut8 mRNAレベルが野生型YB2/0細胞株のレベルより低い、請求項1に記載の細胞株。
【請求項5】
細胞株がレクチンに対する耐性について選択される、請求項1に記載の細胞株。
【請求項6】
細胞株のグリコシル化ペプチドが、野生型骨髄腫細胞株およびCHO細胞株により産生されるペプチドに比較して実質的に低下されたフコース含量を有する、請求項2に記載の細胞株。
【請求項7】
分子が、優先的にフコシル化されないN結合オリゴ糖基を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のトランスフェクトした宿主細胞株により産生される抗体。
【請求項8】
抗体が、野生型YB2/0細胞株で産生された抗組織因子抗体に比較して増大されたADCC活性を有する、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
製薬学的に許容できる担体と組合さった請求項7に記載の抗体を含んでなる生物製薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の細胞株に、抗体をコードするポリヌクレオチド配列をトランスフェクトすること;および
該抗体を検出可能若しくは回収可能な量で発現すること
を含んでなる、抗体の製造方法。
【請求項11】
ポリヌクレオチド配列によりコードされる抗体がヒト抗体である、請求項10に記載の抗体の製造方法。
【請求項12】
ポリヌクレオチド配列によりコードされる抗体がヒト化抗体である、請求項10に記載の抗体の製造方法。
【請求項13】
ポリヌクレオチド配列によりコードされる抗体が、細胞の表面に結合されうるヒトポリペプチドの一領域に結合する、請求項11若しくは12に記載の抗体の製造方法。
【請求項14】
ポリヌクレオチド配列によりコードされる回収された抗体が、優先的にフコシル化されないN結合オリゴ糖基を有することを特徴とする、請求項10に記載の方法により製造さ
れた抗体。
【請求項15】
配列番号9のL鎖アミノ酸配列および配列番号8のH鎖アミノ酸配列を含んでなる、請求項10に記載の方法により製造された抗体。
【請求項16】
配列番号11のL鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号10のH鎖可変領域アミノ酸配列を含んでなる、請求項10に記載の方法により製造された抗体。
【請求項17】
被験体、細胞若しくは組織に、請求項14〜16のいずれかに記載の抗体を投与もしくはそれらと接触させることを含んでなる、疾患若しくは状態の処置方法。
【請求項18】
疾患若しくは状態が、該抗体が結合することが可能であるポリペプチドを表示する細胞の破壊が望ましい腫瘍性疾患若しくは免疫媒介性障害である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
抗体が結合することが可能であるポリペプチドが、ヒト組織因子若しくはヒトTNFαである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
疾患若しくは状態が、関節リウマチ、黄斑変性、乾癬および糖尿病性網膜症よりなる群から選択される異常な血管新生を特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
疾患若しくは状態が、前記細胞からの前記ポリペプチドの遊離を特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
本明細書に開示されるいずれかの発明。
【図4】
【図5】
【図15】
【図1】
【図3A−3B】
【図6A−6B】
【図7A−7B】
【図8A−8B】
【図9A−9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14】
【図5】
【図15】
【図1】
【図3A−3B】
【図6A−6B】
【図7A−7B】
【図8A−8B】
【図9A−9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2009−508476(P2009−508476A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529350(P2008−529350)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/034382
【国際公開番号】WO2007/028106
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(503054122)セントカー・インコーポレーテツド (74)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/034382
【国際公開番号】WO2007/028106
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(503054122)セントカー・インコーポレーテツド (74)
【Fターム(参考)】
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