説明

高光透過率の模様付き透明パネル

【課題】電池の表面上に配置される透明パネルの少なくとも一表面を模様付けすることを提案し、結果として、後者の表面が多結晶質、特に多結晶質シリコンで出来ている場合の電池上に透過される光束を増加させるための唯一の解を提供する。
【解決手段】本発明は、集光または発光可能な素子に近接して配列された模様付き透明プレートに関し、そのプレートは、その表面の少なくとも一方の面上に角錐または円錐のような型押しされた多数幾何学パターンで模様が形成されている。ガラス製でも良い該プレートは、全方向の光について良好な光透過率を提供する。該プレートは、特に多結晶質シリコンで出来た光電池に結合され得て、特に液晶表示装置またはプラズマランプのための光拡散体として使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を捕捉することの出来る透明な反射防止パネルの分野に関するものである。本発明による透明パネルは、その表面の少なくとも1面に、模様(texturing)、すなわち起伏状の複数の幾何学的な特徴であって、そのパネルの模様付き表面の一般面に対する凹状または凸状であるものを含む。パネルの両面が、そのような特徴を有していても良い。その模様のため、パネルは改良された光透過特性を有する。本発明の脈絡内において、「反射防止」(antireflection)の語は、反射の減少(必ずしも反射を完全に無くすることではない)を表現するために用いられる。本発明によるパネルは、入射光の配向にかかわらず良好な光透過率を提供する。
【0002】
本発明によるパネルは、集光または発光可能な素子の付近(一般には素子から50cm未満)に配置される場合に有用である。特に、本発明によるパネルが光電池の表面(例えばシリコン製)の上に配置される場合に、本発明によるパネルは、前記電池で受け取る光の量を増加させる。効率向上のために光電池のシリコン表面に模様を付けることは思いつくことができるものではあるが、特に前記表面が多結晶質である場合、そのような表面をどのように模様付けすべきか、いまだ知られていない。本発明は、電池の表面上に配置される透明パネルの少なくとも一表面を模様付けすることを提案し、結果として、後者の表面が多結晶質、特に多結晶質シリコンで出来ている場合の電池上に透過される光束を増加させるための唯一の解を提供する。
【背景技術】
【0003】
米国特許第4411493号は、エネルギーを保存するため、および自然光を基礎として住居を加熱し、冷却し、そして照明するためのガラス張りパネルを教示している。その明細書では、夏には光を反射し、冬には出来るだけ多くの光を捕獲するガラス張りパネルを製造することが目的である。この目的は、ガラス張りパネルの単一方向に全長に渡って伸びている線形光学素子によって達成される。この場合、光透過の特性は、入射光の配向に強く依存する。
【0004】
米国特許第5994641号は、配列された太陽電池を備えたモジュールであって、多数の平行なV字型くぼみを有する熱可塑性フィルムを含み得るものを教示する。これらの構造は、直線で、同一のモジュールの配列された電池の間に配置される。フィルムは、一対の収束面で特定された多数のV字型起伏を含む。そのフィルムは、起伏側において光を反射する金属フィルムでコートされている。
【0005】
米国特許第4918030号は、光電池の製造のために意図された単結晶シリコン表面の上に、エッチングによって角錐型の特徴部を形成する方法を教示する。これらの角錐型の特徴は、約20μmの辺を有する。これらの表面は、光を捕捉するのにより有効である。
【0006】
英国特許第2066565号は、太陽エネルギーを収集する電池の製造のために意図されたシリコン表面上における凹状の通常の角錐形状(さかさになった角錐)の形成法を教示する。その調整方法は、Siをエッチングするためのエッチング剤に対する抵抗性のある孔付きの層(SiO2)を形成し、さらに必ず孔を含めてSiをエッチングすることを含む。そのように調整された表面は、より良好な光吸収(捕捉)と低い光反射を呈する。この方法は、シリコンがエッチングによる模様の形成を困難にする多結晶質であるという事実のために、複雑なものになっている。これは、エッチングが結晶質の配向性に非常に依存しているためである。
【0007】
フランス特許第2551267号は、光吸収特性を改善するために光路を長くし得る薄いフィルム状の光電気変換機に関する。その表面は、受光される面で平坦であって、反対側の面は粗い。光電気変換層(SnO2の)は、基材(ガラス製)の粗い面に適用される。その粗い起伏は、「角錐」型、「二つの斜面を有する屋根の形」または「円錐形状型」であっても良い。この形態の利点は、外側表面が平坦であるので、それがほこりの少ない状態のままにあることである。光電気変換効率は、入射光の光路を長くすることによって改善される。表面粗さは、粗粒を使用してガラスの表面を擦り合せ(第0045欄の19行)、次いでエッチングを行うことによって達成される。その特徴部の大きさは、約0.1μm〜1μmである。
【0008】
論文「Reduction of reflection losses of PV modules by structured surface」(Solar Energy 53巻、第2号、171〜176ページ、1994年)は、光電池のための反射防止ガラスコーティングを教示する。それは、最も簡単なものが「ランダム構造」であるが、そのような構造がほこりを保持し続けがちであると教示している。電池の全長に渡って伸びる平行な線のV字型構造を有する透明層が推奨されている。
【0009】
フランス特許出願第00/08842号は、疎水性/疎油性の表面仕上げを構成するために、ガラス基材の主面に対して垂直な円錐状または柱状のようなこぶを有する層のCVDによる形成を教示する。
【0010】
フランス特許第2792628号は、高さ0.01〜10μmに渡って高い表面レベルと低い表面レベルを含んだ起伏を有する疎水性/疎油性または親水性/親油性の基材を教示する。
【0011】
国際公開第98/23549号は、表面の不規則性として、サブミクロンの大きさの突起部およびくぼみを含む親水性または疎水性の基材を教示する。この表面は、少なくとも部分的に結晶化された酸化チタン(アナターゼ型)のような光触媒剤を備えても良い。
【0012】
欧州特許出願公開第0493202号は、六角錘または四角錘のクレータからなる起伏を刻する、熱間圧延によって拡散ガラス張りパネルの製造法を教示する。透過される光は、ガラス張りパネルが6m未満の距離で照明される場合に、裸眼でその構造体が見えないように均一に分布される。その形状の特徴部は、0.5〜1.7mmの直径を有する円に内接される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による透明パネルは、その表面の少なくとも1面において、起伏状の多数の幾何学的な特徴(feature)を含み、これらの特徴部は、パネルの模様付き面の一般面に関して凹状および/または凸状である。パネルの両側が、そのような特徴部を有しても良い。
【0014】
本発明による模様付き透明パネルが透過率を増加させるのに、二つの原理がある。第1に、その模様付き面上における反射の減少が、その表面上においてパネルに入るより多くの機会を光に提供する多重反射によって得られる。更に、その光は、平坦な表面では高い入射角を有していた光線についてその特徴部の表面上ではより小さい入射角を有する。例えば、頂点での半角が45度の角錐の場合に、0〜90度の間で変化する入射角で平坦な表面に当たる光線が、−45〜+45度の間の入射角で模様付き面にぶつかる。高い角度の範囲(90度に近い)が反射を助けるため、0〜90度の範囲が−45〜+45度の範囲に変わると、反射に相当な低下を伴う。第2に、パネルに入った後に反射された光は、その特徴部の表面で反射することによって捕捉されて、その光の大部分がパネルを透過する。従って、反射での損失がずっと小さい。
【0015】
前記特徴部の表面は、次のような点を少なくとも2点有している。すなわち、パネルの模様付き面の一般面に対して垂直である二つの平面の各々が、前記の表面に対して垂直であって、前記二つの点の内1点を通過する2本の直線の内1本を含み、そしてその二つの平面が、平行ではなくすなわち交差するように、特徴部の表面がそれらの点を有する。これら二つの平面は、例えば、互いに垂直であっても良い。好ましくは、これら二つの点が両方とも、特徴部の表面の平面領域にあっても良い。図1は、パネルの模様付き面の一般面2から突き出した正方形の基底部を有する正四角錐の形状をした特徴部1を示している。本出願の文脈内において、「正角錐」(regular pyramid)とは、その全ての面が平坦でそれぞれが同一である角錐を言う。その角錐は、そのパネルの模様付き面の一般面2に対して垂直であって、それぞれが点3,4でその特徴部の表面に垂直な直線7,8を含む平面5,6が平行でないように、少なくとも二つの点3,4を有することが明確に見えて良い。そのような正四角錐の場合には、これらの二つの平面5,6は互いに垂直である。
【0016】
従って、本発明は、模様付き透明パネルおよび集光または発光可能な素子を含むアセンブリーであって、前記パネルと前記素子間の距離が一般に最長で5mであり、前記パネルがその面の少なくとも一方の面上に前記面の一般面について起伏状の複数の幾何学的な特徴によって模様が付されており、該模様が付された面が光を受け取る側(すなわち光源と同じ側)に配置されており、前記特徴の表面の各々が、二つの互いに交差する平面が存在するように少なくとも2点を有し、その二つの互いに交差する平面の各々が、前記2点の内の1点を含み、そして次の二つの条件;
a)これらの平面の両方が、該パネルの該模様が付された面の該一般面に対して垂直であり、
b)これらの平面の各々が、前記表面に対して垂直で前記2点の内の1点を通過する2本の直線の内1本を含む、
を満たす、アセンブリーにも関する。
【0017】
これらの条件は、円錐または角錐の形状をした特徴部の場合に必ず満たされる。これらの条件は、先行技術における直線状のV字型特徴部の場合に満たされない。
【0018】
好ましくは、交差する平面が通過する点は、平坦な表面、例えば角錐の平坦な表面の上にある。円錐は、平坦な表面を有さない。一般に、特徴部は点で終了する。すなわち、円錐または角錐の場合なので、パネルの一般面から最も離れた特徴部の点が、頂点なる点である。
【0019】
前記特徴の表面は、次のように少なくとも3点を有しても良い。すなわち、パネルの模様付き面の一般面に対して垂直である種々の平面の各々が、前記の表面に対して垂直であって、前記3点の内1点を通過する3本の直線の内1本を含み、そしてその種々の平面が、平行でないように、特徴部の表面が少なくとも3点を有しても良い。好ましくは、これらの3点が、共に特徴部の表面の平坦領域にあっても良い。特に、基底部(パネルの模様付き面の一般面にある)が正三角形である正三角錐である場合の特徴部で、この状態が生じる。
【0020】
特徴部は、基底部を介して、パネルの模様付き面の一般面と一緒になる。その基底部について、一般に10mm未満、または7mm未満の直径の円に内接されることが可能である。好ましくは、前記特徴部の一つの基底部を含み得る最小の円が、最大で5mmの直径を有し、特に0.001〜5mmの範囲、例えば1〜5mmの範囲にある直径を有する。
【0021】
パネルの模様付き面の一般面は、特徴部の部分を形成しない模様付き面上のこれらの点(特徴部の間にある点)または特徴部のふち(特に接触する特徴部が一緒になる点)の上にある模様付き面上のこれらの点を含む平面である。
【0022】
一般に、パネルの模様付き面の一般面から最も遠く離れた特徴部の点は、前記一般面から0.1D〜2Dの範囲の距離だけ離されている。ここで、Dは、パネルの模様付き面の一般面に含まれ、前記特徴の基底部を含み得る、最小の円の直径を表す。
【0023】
例えば、特徴部が、円錐、または三角形、正方形、長方形、六角形または八角形の基底部のような多角形の基底部を有する角錐の形状を有する。尚、その特徴部は、凸状、すなわちパネルの模様付き面の一般面から突き出した形状、または凹状、すなわちパネルの厚さにおいてくぼみを形成した形状であり得る。
【0024】
特徴部が円錐または角錐の形状を有する場合、前記円錐または前記角錐の頂点での半角が、70度未満であることが好ましく、そして好ましくは60度未満、例えば25〜50度の範囲にある。特に模様付き表面が空気と接触する時に、この値が「反射防止」(antireflection)および「光捕捉」(light trapping)の二つの特性の良好な組合せを提供するので、45度が特に妥当な値である。
【0025】
円錐の場合、ゼロではない頂点半角は、一方側の円錐の頂点を通過するパネルに垂直な直線と、他方側の円錐の錐面の、双方の間の角度である。角錐の場合、ゼロでない頂点半角は、一方側の角錐の頂点を通過するパネルに垂直な直線と、他方側の前記角錐の一つの面における頂点での角の二等分線の、双方の間の角度である。頂点半角αが、特徴部が円錐形、または基底部が三角形または正方形の角錐形の場合について、図2に示される。これらの角度の値は、円錐または角錐が凹または凸状であっても有効である。角錐の基底部が正多角形(全ての辺は同じ長さである多角形)である場合、単一の頂点半角のみがある。角錐の基底部が、長方形のように正多角形でない多角形であれば、いくつかの頂点半角があり、この場合にはその全ての頂点半角について上記した値を有することが求められる。
【0026】
好ましくは、特徴部が、互いに可能な限り接近しており、例えば、それらの基底部を1mm未満、好ましくは0.5mm未満で離される。
【0027】
また、好ましくは、特徴部どうしは接触している。特徴部は、それらが少なくともそれらの表面の部分で互いに接触している場合に、接触していると言われる。それらの基底部を構成する円が互いに接触している場合に、円錐が接触しているとして良い。パネルの表面がさらに模様付けされて、光透過率がさらに改善されるので、その特徴部が接触していることが好ましい。ある特徴部は、特徴部間での完全な接合を許さない。これは、特に特徴部が円錐の場合であって、例えその円錐の基底部が互いに接触したとしても、その円の間に特徴部の部分を形成しないある領域が残るためである。「完全な接合」(complete join)の語は、一つの特徴部の基底部の輪郭が、隣の特徴部の輪郭のそっくり全部をも形成すると言う実態を意味すると理解される。パネルの全体の表面が少なくとも一つの特徴部の一部を形成するように、ある特徴部が完全に接触しても良い。特に、正方形、長方形または六角形の基底部を持つ角錐は、それらが全く同一であれば、完全に接触し得る。基底部が正方形(図3を参照)または長方形の場合、その特徴部が完全に接触するようにその基底部が配列されることが推奨される。六角形の基底部の場合、その基底部がハニカムを形成することが推奨される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】パネルの模様付き面の一般面2から突き出した正方形の基底部を有する正四角錐の形状をした特徴部1を示している。
【図2】特徴部が円錐形、または基底部が三角形または四角形の角錐形の場合について、頂点半角αが示されている。
【図3】基底部が正方形の角錐形状を有する配列された凹状特徴部を、その表面で完全に接触させた配列を備える模様付きパネルを示す。
【0029】
【図4】例示されるように、特徴部が部分的に凹状でそして部分的に凸状であっても良い。
【0030】
例えば、パネルは全体的にガラス製であっても良い。また、それは、ポリウレタン、ポリカーボネートまたはポリメチルメタクリレートのような熱可塑性ポリマーであっても良い。また、それは、例えば、両面が平坦で平行なガラスパネルを、起伏状の特徴部を有しそして前記ガラスパネルに固定されるポリマーシートまたはフィルムと組合せることによって、二つの材料で出来たものであっても良い。この種のガラス/ポリマーの組合せの場合、そのポリマーは、好ましくはガラスの屈折率およびポリマーの屈折率に近い屈折率を持った接着剤で、ガラスに接着結合されても良い。尚、その屈折率は、特に1.5〜1.54の間にあっても良い。
【0031】
好ましくは、パネルの質量の大部分(すなわち重量で少なくとも98%の場合)が、または全質量が、最良の可能な透明性を有し、応用に有用なスペクトル部分、一般には380〜1200nmの範囲のスペクトルにおいて、好ましくは0.01mm−1の線吸収を有する材料から成る。これは、特に、もし必要であれば、ある波長で拡散型または遮断型の1層以上の薄層、または防汚性または導電性の薄層を備えたような材料で、パネルが出来ている場合である。これらについては、以下に更に詳細に記載される。好ましくは、可能な最高の光透過率を維持するために、この線吸収が低いほど材料の厚みが大きい。
【0032】
パネルの構成を形成するのにガラスが使用される場合、特別に透明なガラス、すなわち380〜1200nmの波長スペクトル範囲内で0.008mm−1未満の線吸収を有するガラスを使用することが好ましい。従って、もし、パネルがガラスを含むならば、これが好ましくは380〜1200nmの波長スペクトル範囲内で0.008mm−1未満の線吸収を有する。パネルの質量の大部分(すなわち重量で少なくとも98%)または全質量が、そのようなガラスから成っても良い。これは、特に、適切である限り、ある波長で拡散型または遮断型の1層以上の薄層、または防汚性または導電性の薄層を備えたような材料でパネルが出来ている場合である。これらについては、以下に更に詳細に記載される。
【0033】
本発明によるパネルは、0.5〜10mmの範囲の全体厚みを有していても良い。これが光電池のための保護パネルとして使用されるとき、そのパネルは、好ましくは2〜6mmの範囲の全体厚みを有する。それが光拡散体として使用されるとき、そのパネルは、好ましくは1.5〜4.5mmの範囲の全体厚みを有する。
【0034】
本発明によるパネルは、模様付き表面側におよび/または模様なしの表面側に設置された反射防止コーティングを備えても良い。そのような反射防止コーティングは、例えば、特許出願PCT/FR01/01735に記載され、当業者に知られた方法で、例えばスパッター、好ましくは磁気的に強められたスパッターによって、ガラス上に付着されることによって得られるようなものであっても良い。好ましくは、パネルにその模様を付された後に、そのコーティングが付着される。
【0035】
本発明による模様付きパネルについて、特に、それが集光または発光が可能な素子と組合わされ、それから最大で5m、より一般的にはそれから50cm未満、またはそれと直接接してさえ、設置されるとき、多くの応用がある。本発明によるパネルの少なくとも一つの模様付き面が、光源を同じ側に設置される。従って、本発明によるアセンブリーにおいて、模様付き透明パネルと集光または発光が可能な素子の間の距離が、場合によるが、15cm未満、3cm未満、0〜10mmの範囲、または0〜5mmの範囲にあっても良い。
【0036】
光電池が透明パネルで覆われない場合、それらは環境からの種々のタイプの攻撃(塵、腐食性雰囲気、悪天候)に曝される。本発明によるパネルは、一方では外部の攻撃からそれを保護するために、そして他方では多くの量の光を集光表面に透過させるために、そのような電池の表面(一般に単結晶または多結晶質のシリコン、または窒化珪素で出来たもののような反射防止層でコートされたシリコンで出来た)の上に、直接置かれ、または固定されても良い。特に、本発明によるパネルは、多結晶質のシリコン基材を含む光電池上に置かれても良い。電池の集光表面は、特に単結晶シリコン製の場合に、例えば凹状角錐、すなわちシリコンの表面にくぼみを形成する角錐で模様付けにされても良い。本発明によるパネルは、エチレン/ビニルアセテートコポリマー(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)または妥当な他のポリマーの層を介して、電池に固定されても良い。このポリマーの存在は、そのパネルが電池に固定されることを可能にして、さらにパネルと電池の間から空気の排除をも行う。電池の表面は、一般に窒化珪素製の反射防止コーティングを有しても良い。
【0037】
本発明によるパネルは、また、太陽光集熱器からの光路内に設置されても良い。太陽光集熱器の機能は、加熱を目的として光を集めることである。この場合、光を集め熱に変換する素子(一般には黒色)が、光路に関して本発明によるパネルの後に設置される。パネルと集光表面間の距離は、一般に15cm未満、好ましくは3cm未満であっても良い。
【0038】
本発明によるパネルは、高光透過率を有する光拡散体として供しても良い。この場合、本発明によるパネルが光源の前に置かれるが、その機能は輝度を均一にすることである。光源と本発明によるパネルの間の距離は、例えば0〜10mmの範囲、または0〜5mmであっても良い。この応用のために、光源から反対側でパネルのその面に光拡散層を適用することが可能である。この拡散層は、例えばアルミナで出来ていても良い。この応用において、模様を付与することが、その拡散特性を維持または改良さえしたままで、拡散体の光透過率を改善させることを可能にする。特に、本発明によるパネルは、それがLCD(液晶表示装置)スクリーンのための光源とそのLCDスクリーンの間に配置される場合に、光拡散体として用いられても良い。本発明によるパネルは、また、それがフラットプラズマ放電ランプの前に配置される場合に、光拡散体として供しても良い。パネルとプラズマランプ間の距離は一般に0〜5mmである。
【0039】
本発明によるパネルは、また、観察者がパネルに関して投影機から反対側にいる、投影された像のためのスクリーンとして供しても良い。この場合にも、パネルの少なくとも模様付き面が、投光装置と同じ側にある。この応用のためには、光拡散層をパネルの観察者側で適用することが好ましい。この拡散層は、例えば、アルミナ製であっても良い。一般に、本発明によるパネルと投影装置の間の距離は、10m未満、より一般的には5m未満である。この応用では、本発明によるアセンブリーの素子が、画像投影装置である。
【0040】
意図される応用によっては、パネルの最も適した面が、パネルに特定の特性を付与する少なくとも1層を備えても良い。特に、ある波長、例えば紫外線の領域で遮蔽を形成する層が適用されても良い。TiO2の層のような汚れ防止層、特に欧州特許出願EP1087916の主題を形成する層、または国際公開第01/32578号に記載されるようなSiO2、Si酸炭化物、Si酸窒化物またはSi酸炭窒化物で出来た汚れ防止層が、パネルに、好ましくは少なくとも周囲の空気に直接接する側に、適用されても良い。
【0041】
模様を付与することは、圧延(または流延)熱成形、またはエッチング、特にポリマー材料の場合にレーザーエッチングによって実施されても良い。ガラス表面を模様付きにする場合、ロール塗プロセスが特に適する。このプロセスでは、その表面に形成されるべき模様の逆の形状を有する金属ロールのような固体物体を使用して、その表面を変形させることが可能な温度に過熱されたガラスの平坦な表面に、模様付けが適用される。
【0042】
意図される模様付けの形状によって、このプロセスは、必ずしも完全な幾何学的形状にしなくても良い。特に角錐の場合に、角錐の頂点および角が丸くても良い。
【0043】
パネルの一方側において特徴部を付与する模様付けに加えて、粗い層によって提供される模様付けがパネルの他方側に追加されても良い。粗い層を備えるそのようなパネルは、そのパネルが特に良好に光を透過すると言う実態により、光電池の保護に特に適する。この応用では、その粗い層が光電池(太陽電池の同義語)と同じ側に配置される。この粗い層は、例えば1種以上の金属酸化物に基づく透明導電性層であっても良く、その層は、少なくとも3nm、特に少なくとも5nmのRMS粗さおよび/または少なくとも50nmのこの粗さの特徴部の平均の大きさを有する。このタイプの導電性層は、TCO(Transparent Conductive Oxide透明導電性酸化物)層として知られている。それは、太陽電池の分野および電子分野で広く使用されている。
【0044】
RMS粗さは、自乗平均(root mean square)粗さを意味する。これは、粗さの自乗平均の値を測定することによって得られる量である。従って、特にこのRMS粗さは、平均の高さに関して、粗さのピークの平均高さを定量化する。
【0045】
導電層は、ドープ処理された金属酸化物のタイプについて知られた化学的性質を有する。他方、それは非常に粗いと言う特別な側面を有する。好ましくは、この粗さは精密な幾何学の特徴部を有さないと言う意味でランダムである。さらに、それは測定される表面の面積によって分散する。この特別の粗さは、その層とそれの側面にある材料との間の接触面で、後者を突き進む入射光の増加された拡散が、太陽電池を通る非常に長い光路を有することを可能にする。導電層は、スパッターまたは熱分解、特に化学蒸着によって析出されても良い。それは、ドープ酸化錫、特にフッ素‐またはアンチモン‐ドープ酸化錫、ドープ酸化亜鉛、特にアルミニウム‐ドープ酸化亜鉛、およびドープ酸化インジウム、特に亜鉛‐ドープ酸化インジウムから選ばれても良い。そのような層は、それがガラス基材上に析出される場合に特に適する。すなわち、この場合、本発明による模様付きの面に対して反対側のパネル面が、ガラス基材の面である。ガラス基材と導電層の間に、ガラスの外に拡散しがちな種、特にアルカリ金属類に関して遮蔽機能を持つ少なくとも1層を設けることが可能である。尚、その遮断層については、酸化珪素、酸炭化物、酸窒化物または窒化物に基づくことが可能であり、その遮断層は、熱分解またはスパッターによって特別に析出される。導電層は、一般に最大で30または20Ω/スクエアー、特に最大で15Ω/スクエアーのスクエアー当りの抵抗を有する。導電層は、一般に最大で700nm、特に最大で650nm、好ましくは400〜600nmの厚みを有する。導電層が直接的または間接的に析出されるガラス基材の面は、少なくとも1000nm、特に1000〜5000nmのRMS粗さおよび/または、特徴部の平均の大きさが少なくとも5μm、特に5μm〜100μmであるような粗さを有しても良い。導電層が直接的または間接的に配置されるガラス基材のその面の粗さは、不均一/ランダムであっても良い。導電層が直接的または間接的に配置されるガラス基材のその面は、透過された光の前方拡散を生じる粗さを有しても良く、その基材は特に、少なくとも40〜45%の拡散光透過率を含めて、少なくとも70〜75%の全光透過率を有する。
【実施例】
【0046】
本発明によるパネルは、380〜1200nmの範囲の波長スペクトルに渡って8×10−3mm−1未満の線吸収および4mmの厚みを有する、サン‐ゴバン グラス(Saint‐Gobain Glass)社によって販売された商標名DIAMANTの特別に透明な平板ガラスから、この平板上に、その変形温度での圧延によって、基底部の各辺が0.5mm、頂点での半角が45度、模様付与後のパネルの全体厚みが4mmである、正方形の基底部を有した接触する角錐のアセンブリーからなる凹状の模様を形成することによって製造されてもよい。このパネルは、樹脂を用いて、75nmの厚みの窒化珪素層でコートされた、光電池の多結晶質シリコン表面に固定されても良い。AM1.5スペクトルを使用してASTM規格892/87の条件下で、入射角を変えて、その模様付き表面を照らすことによって、光透過率を測定することが可能である。以下の表は、特に、同じタイプで模様を形成せず(両面が平坦)、そして模様を形成したパネルの全厚みに等しい全厚みを有するパネルと比較して、計算によって得られた結果を与える。入射角0度は、パネルの模様付き面の一般面に垂直な光の方向に対応している。
【0047】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
模様付き透明パネルおよび集光または発光可能な素子を含むアセンブリーであって、前記パネルと前記素子間の距離が一般に最長で5mであり、前記パネルがその面の少なくとも一方の面上に前記面の一般面に対して起伏状の複数の幾何学的な特徴によって模様が付されており、該模様が付された面が光を受ける側に配置されており、前記特徴の表面の各々が、二つの互いに交差する平面が存在するように少なくとも2点を有し、その二つの互いに交差する平面の各々が、前記2点の内の1点を含み、そして次の二つの条件;
−これらの平面の両方が、該パネルの該模様が付された面の該一般面に対して垂直であり、
−これらの平面の各々が、前記表面に対して垂直で前記2点の内の1点を通過する2本の直線の内1本を含む、
を満たす、アセンブリー。
【請求項2】
該点が、異なる平坦な表面上における各点である、請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項3】
該特徴が、ゼロでない頂点半角を有する角錐である、請求項2に記載のアセンブリー。
【請求項4】
該角錐の基底部が多角形である、請求項3に記載のアセンブリー。
【請求項5】
該角錐の基底部が、正方形、長方形または六角形である、請求項4に記載のアセンブリー。
【請求項6】
該特徴が、ゼロでない頂点半角を有する円錐である、請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項7】
いずれの頂点半角も70度未満である、請求項3〜6のいずれかに記載のアセンブリー。
【請求項8】
いずれの頂点半角も60度未満である、請求項7に記載のアセンブリー。
【請求項9】
いずれの頂点半角も25〜50度の範囲にある、請求項8に記載のアセンブリー。
【請求項10】
該特徴の該基底部を含み得る最小の円が、最大で5mmの直径を有する円に内接される、請求項1〜9のいずれかに記載のアセンブリー。
【請求項11】
該特徴の該基底部を含み得る最小の円が、1〜5mmの範囲の直径を有する円に内接される、請求項10に記載のアセンブリー。
【請求項12】
該パネルの該模様付き面の該一般面から最も離れた該特徴上の点が、前記一般面から0.1D〜2Dの範囲の距離だけ離されており、Dが、該パネルの該模様付き面の該一般面に含まれ、前記特徴の基底部を含み得る、最小の円の直径を表す、請求項1〜11のいずれかに記載のアセンブリー。
【請求項13】
該パネルが、接触する特徴を有する、請求項1〜12のいずれかに記載のアセンブリー。
【請求項14】
該パネルが、完全に接触する特徴を有する、請求項1〜5のいずれかに記載のアセンブリー。
【請求項15】
パネルの大部分が、本質的に380〜1200nmのスペクトル範囲内で線吸収が0.01mm−1未満である材料からなる、請求項1〜14のいずれかに記載のアセンブリー。
【請求項16】
パネルの大部分が、本質的に380〜1200nmのスペクトル範囲内で0.008mm−1未満の線吸収を有するガラスからなる、請求項15に記載のアセンブリー。
【請求項17】
該パネルと該素子の間の距離が15cm未満である、請求項1〜16のいずれかに記載のアセンブリー。
【請求項18】
該パネルと該素子の間の距離が3cm未満である、請求項17に記載のアセンブリー。
【請求項19】
該パネルと該素子の間の距離が0〜10mmの範囲にある、請求項18に記載のアセンブリー。
【請求項20】
該パネルと該素子の間の距離が0〜5mmの範囲にある、請求項19に記載のアセンブリー。
【請求項21】
該素子が光電池である、請求項1〜20のいずれかに記載のアセンブリー。
【請求項22】
該光電池が多結晶質のシリコン基材を有する、請求項21に記載のアセンブリー。
【請求項23】
該素子が画像投影装置である、請求項1〜16のいずれかに記載のアセンブリー。
【請求項24】
太陽光集熱器である、請求項1〜18のいずれかに記載のアセンブリー。
【請求項25】
該素子が光源であり、該パネルが光拡散体として作用する、請求項1〜20のいずれかに記載のアセンブリー。
【請求項26】
該パネルにおける該光源から反対側の該面上に光拡散層がある、請求項25に記載のアセンブリー。
【請求項27】
該層がアルミナ製である、請求項26に記載のアセンブリー。
【請求項28】
該素子がLCDスクリーンのための光源であり、該パネルが光拡散体として作用して該光源と前記LCDスクリーンの間に設置される、請求項25〜27のいずれかに記載のアセンブリー。
【請求項29】
該素子がフラットプラズマ放電ランプであり、該パネルが前記ランプのための光拡散体として作用する、請求項25〜27のいずれかに記載のアセンブリー。
【請求項30】
厚みの大部分に渡って、380〜1200nmのスペクトル範囲内で線吸収が0.01mm−1未満である材料からなる透明パネルであって、前記パネルが、その面の少なくとも一方の面上に前記面の一般面に関して起伏状の複数の幾何学的な特徴によって模様が付されており、前記特徴の表面の各々が、二つの互いに交差する平面が存在するように少なくとも2点を有し、その二つの互いに交差する平面の各々が、前記2点の内の1点を含み、そして次の二つの条件;
−これらの平面の両方が、該パネルの該模様が付された面の該一般面に対して垂直であり、
−これらの平面の各々が、前記表面に対して垂直で前記2点の内の1点を通過する2本の直線の内1本を含む、
を満たす、透明パネル。
【請求項31】
該特徴が、ゼロでない頂点半角を有する角錐である、請求項30に記載のパネル。
【請求項32】
該角錐の基底部が多角形である、請求項31に記載のパネル。
【請求項33】
該特徴が、ゼロでない頂点半角を有する円錐である、請求項30に記載のパネル。
【請求項34】
いずれの頂点半角も70度未満である、請求項30〜33のいずれかに記載のパネル。
【請求項35】
いずれの頂点半角も60度未満である、請求項34に記載のパネル。
【請求項36】
いずれの頂点半角も25〜50度の範囲にある、請求項35に記載のパネル。
【請求項37】
該特徴の該基底部を含み得る最小の円が、最大で5mmの直径を有する円に内接される、請求項30〜36のいずれかに記載のパネル。
【請求項38】
該特徴の該基底部を含み得る最小の円が、1〜5mmの範囲の直径を有する円に内接される、請求項37に記載のパネル。
【請求項39】
該パネルの該模様付き面の該一般面から最も離れた該特徴上の該点が、前記一般面から0.1D〜2Dの範囲の距離だけ離されており、Dが、該パネルの該模様付き面の該一般面に含まれ、前記特徴の基底部を含み得る、最小の円の直径を表す、請求項30〜38のいずれかに記載のパネル。
【請求項40】
接触する特徴を有する、請求項30〜39のいずれかに記載のパネル。
【請求項41】
完全に接触する特徴を有する、請求項30〜32のいずれかに記載のパネル。
【請求項42】
厚みの大部分に渡って、380〜1200nmのスペクトル範囲内で0.008mm−1未満の線吸収を有するガラスからなる、請求項30〜41のいずれかに記載のパネル。
【請求項43】
光電池によって集光を増加するための、請求項30〜42のいずれかに記載のパネルの使用。
【請求項44】
該電池が多結晶質のシリコン基材を有する、請求項43に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−271734(P2010−271734A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−172821(P2010−172821)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【分割の表示】特願2003−548001(P2003−548001)の分割
【原出願日】平成14年11月20日(2002.11.20)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】