高出力インパルス・マグネトロン・スパッタリング(HIPIMS)を用いたRF基板バイアス
マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として、基板上にコーティングを形成するためパルスが印加されるスパッタリングを発生させるための装置が提供される。本装置は、前記マグネトロンに動作可能に接続された電源と、前記電源に動作可能に接続された少なくとも一つのキャパシタとを備える。また、第1のスイッチを備える。この第1のスイッチは、前記マグネトロンを充電させるために前記マグネトロンに前記電源を動作可能に接続し、前記第1のスイッチは、第1のパルスにより前記マグネトロンを充電させるように構成される。電気的バイアス装置が、前記基板に動作可能に接続され、基板バイアスを印加するように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年12月14日出願の米国仮出願第60/869912号の利益を主張するものであり、その開示内容の全体が、参照することにより本明細書に組み込まれる。また、本出願は、2006年12月12日出願の米国仮出願第60/869566号の利益を主張するものであり、その開示内容の全体が、参照することにより本明細書に組み込まれる。また、本出願は、2006年12月12日出願の米国仮出願第60/869578号の利益を主張するものであり、その開示内容の全体が、参照することより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、スパッタリング(sputtering)に関し、更に詳しくは、高出力インパルス・マグネトロン・スパッタリング(HIPIMS; High Power Impulse Magnetron Sputtering)に関する。
【背景技術】
【0003】
スパッタリング(sputtering)は、エネルギーイオン(energetic ions)による材料の衝撃により固体のターゲット材(a solid target material)中の原子を気相(gas phase)中に放出させる物理的処理である。このスパッタリング処理は、一般に、薄膜フィルムの堆積(deposition)に使用される。スパッタリング処理のためのエネルギーイオンは、スパッタリング装置内に誘起されるプラズマによって供給される。実際には、最適なスパッタリング条件を実現するために、プラズマの特性、特にイオン密度を修正するのに種々の技術が用いられる。プラズマの特性を修正するために用いられる技術の幾つかは、RF(高周波)交流電流、AC電源、DC電源、DC及びAC電源の重畳(superposition)、双極または単極電源のようなパルスDC電源、磁界の利用、そしてターゲットに対するバイアス電圧の印加を含む。
【0004】
通常、スパッタリング源はマグネトロンであり、このマグネトロンは、ターゲットの表面近傍の閉プラズマループ(a closed plasma loop)に電子を捕獲するために磁界を利用する。この電子は、磁界周辺のループにおける螺旋状の経路(helical paths)をたどる。この電子は、発生するというよりも、ターゲット表面近くのガスの中性(gaseous neutrals)で更なる電離衝突(ionizing collisions)を受ける。スパッターガスは不活性(inert)であり、代表的にはアルゴンであるが、他のガスを使用することも可能である。これらの衝突の結果として生成される過剰なアルゴンイオンは、比較的高い堆積速度(deposition rate)をもたらす。このような磁界ループを形成するためにターゲットの向こう側に強永久磁石を配置することが知られている。ターゲットの表面上のプラズマループの位置では、レーストラック(racetrack)が形成され、それは、材料の好ましい侵食(erosion)の領域である。材料の利用を増すために、可動の磁気構成(movable magnetic arrangement)が使用され、それは、ターゲットの比較的大きな領域をプラズマループで掃引(sweep)することを可能にする。
【0005】
直流電流(DC; Direct Current)マグネトロン・スパッタリングは、交差電界と磁界(crossed electric and magnetic fields)を用いた公知の技術である。DCマグネトロン・スパッタリングの増強(enhancement)技術にはパルスDC(pulsed DC)がある。この技術は、いわゆる“チョッパー(chopper)”を使用し、DC電源を単極または双極パルスの電源に変更するためにインダクター・コイルLとスイッチが使用される(図1参照)。インダクター・コイルLはチョッパーであり、好ましくは、DC電源とマグネトロンのカソードとの間に配置されたタップを備える。電子スイッチSは、周期的に開閉してパルスを生成する。スイッチSのオン時間の期間では、コイルLのタップとマグネトロンのアノードとの間の実効的なショートカットが負のカソード電圧をオフに切り替え、好ましくは、コイルLの単巻トランス効果(auto transforming effect)により正の電圧にオーバーシュートする。スイッチSのオフ時間の期間では、DC電源からの電流がコイルLに継続して流れ込み、その磁界にエネルギーを蓄える。スイッチSが再びオフになると、短い負の高電圧のピークがマグネトロンのカソードに生じる。これは、マグネトロンプラズマの比較的速い再発生(reigniting)と、元の放電電流の回復(restoring)に役立つ。
【0006】
従来技術で述べた高出力インパルス・マグネトロン・スパッタリング(HIPIMS)技術は、パルス時間が20乃至500μsであって、典型的には5Hzから200Hzの比較的低い繰り返し周波数のパルスを使用する。放電ピーク電流は、比較的小さいカソードについての100Aから、比較的大きいカソードについての4kAまでの範囲をとり、それは、0.1乃至10A/cm2のオーダーのカソードでの電流密度に対応する。一般技術では、図1に示されるような配線(wiring)を使用する。ワークピース・ホルダー(work piece holder)は、DC電位のような外部電位とされるか、或いはプラズマにおける浮遊電位(floating potential)とされる。図1の従来技術は、ワークピース・ホルダーにDCバイアスを印加することを必要とする。
【0007】
標準のHIPIMS技術には多くの欠点が存在する。DCバイアスを使用することは、基板でのイオンエネルギーを定めるのに役立つが、アーク放電(arcing)が基板上で発生するかもしれないという欠点がある。基板上でのアーク放電は、ウェハ処理が使用されているときにウェハダメージの原因となる。もう一つの欠点は、DCバイアスは、また、酸化物材料を用いたビア及びトレンチのような、電気的絶縁表面には作用しないことである。
【0008】
図2は実験結果を示す。そのデータは、HIPIMS技術の放電の状態において周波数の関数として電流の立ち上がり時間の測定値を示す。この例でのターゲットは、タンタル(Ta)から構成され、その直径は300mmであり、また、この実験では回転磁石配置(rotating magnet array)を使用している。10Hz(100ms周期)の比較的低い繰り返し周波数では、電圧パルスの開始と電流の立ち上がりの開始との間に比較的長い遅延(約5μs)が存在する。この遅延は、100Hz(10ms周期)の繰り返し周波数が使用された場合には幾分短くなる(4μsを越える)。500Hz(2ms周期)の比較的高い周波数では、電流はさらに速く立ち上がり、ほんの約1.5μs以内である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ターゲットと基板との間に配置されたコイルの使用による高周波(RF; Radio Frequency)の誘導結合プラズマ(ICP; Inductively Coupled Plasma)を用いたプレ・イオン化(pre-ionization)は、HIPIMS応用における電流の立ち上がり時間を短縮するのに役立つことが知られている。にもかかわらず、大きなICPコイルをマグネトロンと基板の間に配置することは設計を複雑にし、粒子の発生の可能性を増加させ、そして、ターゲットと基板との間の間隔(spacing)の増加により堆積速度(deposition rate)を低下させる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、本発明の幾つかの態様例の基本的理解を提供するために、本発明の簡略化された概要を述べる。この概要は、本発明の広範な概説(overview)ではない。また、この概要は、本発明の決定的要素(critical element)を特定するものではなく、本発明の範囲を描くものでもない。この概要の唯一の目的は、後で述べられる更に詳細な説明の前置きとして、簡略化した形式で本発明の幾つかの概念を示すことである。
【0011】
本発明の一態様によれば、マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として基板上にコーティングを形成するためにターゲットのスパッタリングを発生させるための装置が提供される。本装置は、上記マグネトロンに動作可能に接続された電源と、上記電源に動作可能に接続された少なくとも一つのキャパシタとを備える。また、第1のスイッチが備えられる。上記第1のスイッチは、上記マグネトロンを充電させるために上記電源を上記マグネトロンに動作可能に接続し、上記第1のスイッチは、第1のパルスにより上記マグネトロンを充電させるように構成される。電気的バイアス装置が、上記基板に動作可能に接続され、基板バイアスを印加するように構成される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として基板上にコーティングを形成するためにターゲットのスパッタリングを発生させるための装置が提供される。本装置は、上記マグネトロンに動作可能に接続された電源と、上記電源に動作可能に接続された少なくとも一つのキャパシタを備える。また、第1のスイッチが備えられる。上記第1のスイッチは、上記マグネトロンを充電させるために上記電源を上記マグネトロンに動作可能に接続し、上記第1のスイッチは、第1のパルスにより上記マグネトロンを充電させるように構成される。電気的バイアス装置が、上記基板に動作可能に接続され、基板バイアスを印加するように構成される。チャック(chuck)が、上記電気的バイアス装置に動作可能に接続され、上記基板が上記チャック上に配置される。コイルが、上記少なくとも一つのキャパシタに動作可能に接続される。上記第2のスイッチは、上記マグネトロンを放電させるために動作可能に接続され、上記コイルに沿った点に接続される。上記第2のスイッチは、第2のパルスにより上記マグネトロンを放電させるように構成される。少なくとも一つの検出器が、上記マグネトロンに動作可能に接続され、上記少なくとも一つの検出器は、発生しているアークを検出するように構成される。上記第1のスイッチ及び上記第2のスイッチは、上記少なくとも一つの検出器による上記アークの検出に応答して制御され、上記アークの発生を抑制させる。
【0013】
本発明の他の態様によれば、マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として基板上にコーティングを形成するためにターゲットのスパッタリングを発生させるための装置が提供される。本装置は、上記マグネトロンを充電するために上記マグネトロンに動作可能に接続され、上記マグネトロンにパルスを供給するように構成された電源を備える。RF電気的バイアス装置が、上記基板に動作可能に接続され、バイアスパルスにより上記マグネトロンを放電させるように構成される。同期化装置(synchronization device)が、上記電源に動作可能に接続されると共に上記電気的バイアス装置に動作可能に接続される。上記同期化装置は、上記第1のパルスの遅延時間および周波数を上記バイアスパルスと同期させるように構成される。
【0014】
本発明の他の態様によれば、マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として基板上にコーティングを形成するためにターゲットのスパッタリングを発生させるための装置において基板バイアスを印加する方法が提供される。本方法は、電源からマグネトロンを充電させるために第1のパルスを第1のスイッチに印加するステップを含む。また、本方法は、上記基板に動作可能に接続された電気的バイアス装置から上記基板バイアスを印加するステップを含む。
【0015】
前述の内容および本発明の他の態様は、添付の図面を参照して以下の説明を読めば、本発明が関連する技術分野の当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】HIPIMS応用の従来技術を示す図である。
【0017】
【図2】典型的なパルス期間での従来技術におけるHIPIMS応用の電圧と電流を例示するプロット図である。
【0018】
【図3】RF発生器を備えた本発明の第1の例を示す図である。
【0019】
【図4】RFがオフの場合の典型的なパルス期間での従来技術におけるHIPIMS応用の電圧と電流を例示するプロット図である。
【0020】
【図5】図3のチャック上で低出力のRFが使用される場合の典型的なパルス期間でのHIPIMS応用の電圧と電流を例示するプロット図である。
【0021】
【図6】図3のチャック上で比較的高出力のRFが使用される場合の典型的なパルス期間でのHIPIMS応用の電圧と電流を例示するプロット図である。
【0022】
【図7】RFバイアスを使用しない場合の基板のボトム厚を示すHIPIMS応用の図である。
【0023】
【図8】RFバイアスを使用した場合の基板のボトム厚を示すHIPIMS応用の図である。
【0024】
【図9】異なるモードを適用するための2つのスイッチと組み合わせてRFバイアスを用いた本発明の第2の例を示す図である。
【0025】
【図10】図9と共に使用するための高周波モードの例を示す図である。
【0026】
【図11】図9と共に使用される主パルス内の複数の副パルスの例を示す図である。
【0027】
【図12】図9と共に使用するためのパルス・プレ・イオン化モードの例を示す図である。
【0028】
【図13】2つのスイッチ及びアーク検出構成と組み合わせてRFバイアスを用いた本発明の第3の例を示す図である。
【0029】
【図14】異なるモードを適用するための2つのスイッチ及びアーク検出構成と組み合わせてRFバイアスを用いた本発明の第4の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面を参照して、本発明の1又は2以上の態様を組み込んだ例を説明する。これらの例示的な例は、本発明に関する制限を意図するものではない。例えば、本発明の1又は2以上の態様は他の実施形態で利用可能であり、他のタイプの装置でも利用可能である。また、本明細書では、或る専門用語(terminology)は、便宜的に使用されるものであり、本発明を限定するものとして受け取られるべきではない。更にまた、図面では、同一の参照番号は同一の要素を示すものとして導入されている。
【0031】
図3は、本発明の第1の例を示す。例えば、本発明は、図1の配線のような、標準的なHIPIMS配線を使用することが可能であるが、加えて、RF発生器のような電気的バイアス装置10が基板14に接続される。例えば、この電気的バイアス装置は、基板14を保持するチャック(chuck)12に接続されることができる。この第1の例は、カソード及びアノードを具備するマグネトロン(magnetron)と、上記マグネトロンの近傍に配置され、上記基板上にコーティングを形成するために原子をスパッタするために使用されるターゲットと、上記マグネトロンに動作可能(operably)に接続された電源と、上記電源に動作可能に接続された少なくとも一つのキャパシタCと、上記マグネトロンを充電するために動作可能に接続され、上記マグネトロンに第1のパルスを供給するように構成された第1のスイッチS1とを備えることができる。従って、図3の例は、HIPIMSパルシング(HIPIMS pulsing)と一緒に、RF発生器のような電気的バイアス装置10を使用することを含む。一例において、HIPIMSパルシングは、マグネトロンのカソード上の電流密度が0.1と10A/cm2の間である場合に適用できる。この電流密度は面積平均であることができる。チャック12を備えた例では、このチャック12は、基板14を保持するウェハ台であることができる。この例における基板14はウェハであるが、他の応用については基板は他の材料であってもよい。マグネトロンとチャック12の間の距離は比較的小さく、概して20mm乃至100mmの間である。テスト実験は50mmで実施された。マグネトロンの磁力線は、好ましくは不平衡マグネトロン磁界の形式で、少なくとも10ガウスの磁界強度でチャック12に到達する。このように、磁気的制限(magnetic confinement)は、マグネトロン・プラズマがオフの場合にRF放電(RF discharge)の安定度(stability)を改善する。同時に、パルス間での残りのRF放電は、一例の方法では、HIPIMS放電についてのプレ・イオン化として作用する。HIPIMSパルスは、図3の例では、第1のスイッチS1を通じて供給され、この第1のスイッチS1は、マグネトロンを充電するために動作可能に接続され、上記第1のパルスにより上記マグネトロンを充電するように構成される。
【0032】
図3の更なる例においては、マッチングユニット(matching unit)16を、電気的バイアス装置10とチャック12との間に配置することができる。このマッチングユニット16は、基板及び/又はチャックでのプラズマのインピーダンスと基板のインピーダンスとをマッチングさせるように構成される。マッチングユニット16の位置として他の位置を使用することもできる。図3の他の例では、RFセルフバイアスモニタ装置20が、上記チャックと動作可能に接続されることができる。このモニタ装置20の位置として他の位置を使用することもできる。RFセルフバイアスモニタ装置20は、上記チャックでのRFセルフバイアスをモニタするように構成される。
【0033】
チャック12に接続された、RF発生器のような電気的バイアス装置10を組み合わせることは、通常、比較的高速で、より信頼性のあるHIPIMSパルスの発生(ignition)をもたらすことができる。パルス間の遅延時間がより短い場合、パルス間でキャパシタを充電するために供給されるエネルギーは比較的小さく、上記キャパシタは、より低い容量を持つことができ、それは、比較的、より小さな寸法と、より低いコストをもたらす。比較的高い周波数を有する短いパルスは、本発明の方法を用いて提供される。
【0034】
DCバイアスと比較して、容量性のRFバイアスのようなRFバイアスを用いることの他の利点は、RFバイアスが、通常、アーク放電と基板またはウェハのダメージを低減し、または除去さえすることである。また、RFバイアスは、酸化物材料を使用するビア及びトレンチでのような絶縁表面に作用する。ICPコイルにRFバイアスを用いることの追加の利点は、マグネトロンと基板との間にICPコイルを必要としないので、ターゲット−基板の距離をより短くすることができることである。また、反応炉(reactor)における粒子がより少ないことにより、また、より短いターゲット−基板の距離の結果、比較的高い堆積速度が得られる。
【0035】
図4−6のプロットは、チャックに接続された、RF発生器のような電気的バイアス装置を備えることの利点を例示している。図4−6は、カソードタイプがARQ151のOerlikon ClusterLine CL200を用いて得られたものである。これらのプロット例でのターゲットは、タンタル(Ta)から構成され、このターゲットの直径は300mmである。不活性ガスの一例として使用されるアルゴンガスが、概ね25sccm(standard cubic centimeter per minute)のガス流速で使用され、基板の温度制御を可能とするために、チャックと基板との間ではガス流速は概ね5sccmである。このガス流速は、ターゲットと基板を収容するチャンバに移動するガスの量である。この例では、低温ポンプ(cryogenic pump)である真空ポンプによる継続的なポンピングの効果は、概ね6×10−3mbarの定常状態の圧力をもたらす。このプロット例におけるパルスは、500Hzの周波数と、15μsのオン時間と、概ね1400Vの電圧を有する。従って、この周波数は、第1のパルスを通じて印加される。
【0036】
図4は、RF発生器のような電気的バイアス装置を使用しない典型的なパルス期間での従来技術におけるHIPIMS応用の電圧と電流を例示するプロットを示す。従って、図4は、従来技術の例であり、HIPIMSパルス期間で電流が立ち上がるための約10μsの典型的な遅延を示す。オン時間の最後の5μsにおいてのみ、電流が概ね980Aのピーク値に上昇している。
【0037】
図5は、図3のチャック上に10Vのセルフバイアスが使用された状態で、RF発生器が17Wの比較的低出力のRFロード(RF load)を印加するために使用される場合の典型的なパルス期間でのHIPIMS応用の電圧と電流を例示するプロットを示す。上述のRFロードとセルフバイアス電圧の両方とも、多数のパルス期間にわたって決定された時間平均値である。上記低出力RFは上記チャック上で使用され、第1のパルス期間のような、パルスの開始(start)と電流の立ち上がりの開始(beginning)との間の遅延は非常に短く、概ね1.8μsである。この例における電流は、RFを使用しない場合の980Aのピーク値に比較して、概ね1580Aの非常に高いピーク電流値にまで上昇する。この実験の他の例では、他の動作範囲が同様の結果を提供し得る。例えば、5V乃至50Vのセルフバイアスでの10W乃至50WのRFロードは、500Aを超える増加したピーク値の範囲では2μs未満の遅延をもたらす。
【0038】
図6は、103Vのセルフバイアスで132Wの比較的高出力のRFが図3のチャック上で使用され、時間平均として再度測定された場合の典型的なパルス期間でのHIPIMSの電圧と電流を例示するプロットである。比較的高出力のRFがチャック上で使用される場合、第1のパルス期間のような、パルスの開始と電流立ち上がりの開始との間で電流が立ち上がりを開始する遅延は、図5の低出力RF応用におけるものよりさえも短く、その遅延は約0.8μsである。この電流は、実に比較的速く立ち上がり、より高いRF出力は、通常、概ね103Vの比較的高いセルフバイアス電位をもたらす。この電流のピーク値は、この例では概ね1500Aである。セルフバイアス電圧を調整することにより、ウェハのような基板に衝突するイオンのエネルギーは制限(regulate)される。従って、セルフバイアス電圧は、基板に所望のコーティングを提供するように調整される。この実験の他の例では、他の動作範囲が同様の結果を提供し得る。例えば、50Vを超えるセルフバイアスでの50Wを超えるロード(load)は1μs未満の遅延をもたらす。
【0039】
また、RF出力(RF power)を提供することは、第1のスイッチS1によって印加されるHIPIMSパルスが比較的低い圧力範囲で開始することを可能にする。例えば、RF発生器のような電気的バイアス装置を使用しない場合でのほんの約15sccmのアルゴンガス流速を用いて実施された実験では、HIPIMSインパルスを生成することに失敗した。この流速に対応するガス圧は約3×10−3mbarである。しかしながら、HIPIMSインパルスは、同一のアルゴンガス流の条件下では50Wを上回るRF出力で発生することができる。50Wを上回るRF出力では、HIPIMSインパルスは繰り返し開始する。また、他の低圧力動作が可能であり、15sccmのアルゴンガス流は、本発明の応用の一例にすぎない。また、50Wを上回るRFロードは、20sccmを下回る任意のガス流速で発生することができる。同様に、50Wを上回るRFロードは多様なガス圧力で発生し得る。一例において、ガス圧力は、概ね2×10−4乃至5×10−3mbarの範囲であり、それは、2×10−2乃至5×10−1Paと等価である。
【0040】
RF出力を供給することの他の利点は、本発明を使用することにより、ターゲットのより良好なボトムカバレッジが得られることである。図7及び図8にその結果が示される実験は、ターゲットの改善されたボトムを示している。この実験では、深さが約180μmで幅が約50μmのトレンチの堆積のためにタンタル(Ta)ターゲットが使用された。図7は、RFバイアスを使用しない場合の基板上のカバレッジの結果を示す。図7は、約251nmのボトム厚が測定されたことを示す。加えて、トップ厚(top thickness)はほんの約1.7μmで測定され、ほんの約15%のボトムカバレッジという結果になっている。図8には、RFバイアスを使用した場合の結果が示されている。これは、ボトム厚が約410nmで、トップ厚が約2.0μmという結果になっており、概ね21%の改善されたボトムカバレッジを与えている。基板のボトムのカバレッジに生じるこの改善は、RFシース(RF sheath)によるものであり、このRFシースは、基板表面とチャックの表面の近傍に形成される。RFシースがチャックの表面の近傍に形成されると、それは、基板とチャックの表面に向かうイオン化された金属イオンの誘引(attraction)をもたらす。結果として、更なるイオンがシースに方向づけられるようになって表面に衝突し、及び/又は、それらの角拡散(angular spread)が狭くなる。
【0041】
本発明の方法の一例は、基板上にコーティングを形成するためにパルスが印加(apply)されるスパッタリングを発生させるための装置において基板バイアスを印加するステップを含む。この方法における一つのステップは、電源からマグネトロンを充電するために第1のスイッチに第1のパルスを印加することである。この方法の例における他のステップは、上記基板に動作可能に接続された電気的バイアス装置から基板バイアスを印加することである。また、本方法の例は、第1のパルスの期間、或いは、第1のパルスパターンで生じるパルス間で、RF発生器のRF放電を使用するステップを含むことができる。HIPIMSパルスのような、第1のパルスの期間でRF放電を使用することは、マグネトロンの放電のためのプレ・イオン化(pre-ionization)を実現するであろう。本発明の他の応用例では、RF出力は、堆積に先立って基板を事前洗浄(per-clean)およびエッチングするために利用することができる。表面酸化物のような最上層のスパッター洗浄または選択的スパッタリングのような基板のエッチングは、ターゲットの汚染(contamination)を回避するためにシャッターを閉じた状態で行われる。そして、基板の堆積は、シャッターが開かれてから開始することができる。本方法の他の応用例では、本方法は、基板に衝突するイオンのエネルギーを調節して基板に所望のコーティングを提供するために基板バイアスの電圧を調整するステップを更に含むことができる。
【0042】
本発明の他の応用例では、RF出力は、パルスモード(pulsed mode)の動作において印加される。この例では、200Wを上回るRFについての比較的高い出力を使用することが望ましく、好ましくは、500W乃至10kWのピーク出力である。パルスモードの動作においてRFを稼動させている間、本装置は、HIPIMSパルシング(HIPIMS pulsing)と同期化されることができる。好ましい動作では、RFパルスが最初に開始され、それから、HIPIMSマグネトロンパルスが、第1のスイッチS1の使用を通じて印加されることができる。RFパルスは、HIPIMS電圧パルスがオフに切り替わる前に、オフに切り替えられることができる。或いは、RFパルスは、HIPIMS電圧パルスがオフに切り替わった後に、オフに切り替えられることができる。RF出力をHIPIMSパルシングと同期化する例では、本装置は、マグネトロン、電源、RF電気的バイアス装置10、同期化装置18を備えることができる。電源は、マグネトロンを充電するためにマグネトロンに動作可能に接続され、上記マグネトロンに第1のパルスを供給するように構成される。パルス電源(pulsed power supply)は、電源をマグネトロンに動作可能に接続する第1のスイッチを備えることができ、上記第1のスイッチは、第1のパルスをマグネトロンに供給するように構成される。上記第1のパルスを供給するために他の構成を用いることもできる。RF電気的バイアス装置は、上記基板に動作可能に接続され、バイアスパルスにより上記マグネトロンを放電させるように構成される。同期化装置18は、図3の例に示されるように、電気的バイアス装置10に動作可能に接続されると共に、上記電源に動作可能に接続される。同期化装置18は、第1のパルスの遅延時間及び周波数を上記バイアスパルスに同期させるように構成される。例えば、第1のパルスの遅延時間及び周波数は、異なるタイプのバイアスパルスに基づいて様々に変えることができる。更なる例では、電源は、デューティ・サイクルが約0.01%と20%の間にあって周波数が約1Hz乃至20kHzの範囲にある第1のパルスをマグネトロンに供給するように構成される。更なる他の例では、電源は、デューティ・サイクルが約2%と50%の間にある第1のパルスをマグネトロンに供給するように構成される。他の例では、上記同期化装置は、第1のパルスが供給される前に、約0.1μs乃至500μsの遅延時間を設けてバイアスパルスを供給するように構成される。
【0043】
第2の例では、電気的バイアス装置10を備える本発明の方法と装置は、図9に示されるように、HIPIMSおよび高周波HIPIMSモードを含む種々のモードを印加するための2つのスイッと組み合わされる。RF発生器のような電気的バイアス装置10は、基板14を保持するチャック12へのように、基板14に動作可能に接続される。図9の本発明の例は、この構成において第1のスイッチS1と第2のスイッチS2を備える。第1のスイッチS1は、マグネトロンに動作可能に接続され、第1の電圧を供給すると共に第1のパルスによりマグネトロンを充電させることができるように構成される。第2のスイッチS2は、マグネトロンを放電させるために動作可能に接続され、第2のパルスによりマグネトロンを放電させるように構成されることができる。また、この例では、インダクタンスを備えることができ、このインダクタンスは、少なくとも一つのキャパシタと動作可能に接続される。この例では、インダクタンスはコイルLであるが、当然ながら、そのインダクタンスを提供するために他の構成を使用することもできる。コイルLは、マグネトロン放電電流の立ち上がりの傾きを制限する。また、コイルLは、アークが発生した場合にピーク電流を制限する。
【0044】
図9の例を用いた多くの動作モードが存在する。図9の例についての動作モードの一つでは、図10に示されるように、第1のスイッチS1についてのパルスフォーム、即ち第1のパルスは高い周波数を有している。第1のスイッチS1の第1のパルスについてのパルスフォームと、第2のスイッチS2の第2のパルスについてのパルスフォームの例は、この高周波モードについて図10に示されている。図10の高周波モードは、200Hz−100kHzの高周波パルス動作を含む異なるレベルで動作されることができ、好ましい例は、1kHz乃至20kHzの間で生じる。また、低出力損失の比較的低い実効デューティ・サイクル(0.1%乃至10%)は、このモードで実現され得る。0.2μs乃至100μsのオン時間(t1−t0の期間)は、この例で使用されることができ、好ましい例は、2μs乃至40μsで生じる。
【0045】
高周波モードは、時刻t0で、充電されたキャパシタCをコイルLに接続することから開始する。当然ながら、充電されたキャパシタは、少なくとも一つのキャパシタであることができ、図は複数のキャパシタを示すことができる。時刻t2で開かれるようにスイッチ2を活性化することにより、遅延時間(t2−t0)の後にプラズマを発生させる。コイルLに蓄えられたエネルギーは電圧オーバーシュートをもたらし、この電圧オーバーシュートは、図10の例に示されるように、マグネトロン電流の比較的速い立ち上がり時間で、マグネトロンのカソード上にほとんど即座に発生する。このマグネトロンの放電電流は、時刻t1(S1がオフ)と時刻t3(S2がオン)の間に減衰する。時刻t3は、期間の残りを含んで、時刻t1の後の短い時間から比較的長い時間までの間で選ぶことができる。図10のモード例における各第1のパルスは、(t2−t0)の同一の初期期間で比較的速い立ち上がりの電流と電圧オーバーシュートを伴って開始する。エネルギー効率は、キャパシタCを充電するために使用される第1のスイッチS1についての比較的長いオフ時間によって達成される。この期間は、時刻t0が生じる前の期間により示される。初期期間(t2−t0)は比較的短く、コイルLにエネルギーを蓄えるために使用される。この比較的短い時間は、第2のパルスが第2のスイッチS2を活性化する前に第1のスイッチS1が活性化されてコイルLにエネルギーを蓄えるときに経過(elapse)する。第2のスイッチS2の活性化は、マグネトロンの放電を生じさせる。時刻t0−t1から、キャパシタCの充電はコイルLをロード(load)させ、マグネトロンの電流の放電が発生する。具体的には、マグネトロン放電は時刻t2−t3から発生する。時刻t1−t3から、コイルLからの残りのエネルギーがマグネトロンへ放電される。
【0046】
図9の例についての第2の動作モードが図11に示される。このモードでは、第2のパルスは、第1のパルスの一つの主HIPIMSパルス内に形成される複数の副パルスを与える(exert)。第1のパルスは、マグネトロンに電圧を供給するための単一で比較的長いパルスであることができ、第1のパルスは、期間t1−t0の期間で、第1のスイッチS1を使用することにより形成される。第2のパルスは、複数の副パルスであることができ、または、より短い1組の副パルスであることができ、それらは、図11のモードの例において示されるように、スイッチS2で形成される。図11のモードは、1Hz−10kHzの主周波数を含む異なるレベルで動作されることができ、好ましい例は、10Hz乃至1kHzの間で生じる。第1のパルスは、このモードで使用することができるデューティ・サイクル(0.1%乃至10%)を有する。このモードでは、0.2μs乃至100μsのオン時間(t1−t0の期間)が使用され、好ましくは2μs乃至20μsが使用されることができる。第2のパルスのオン時間(t3−t2の期間、それは、Δtonに等しい)は、0.2μs乃至100μsであることができ、好ましい例は、2μs乃至20μsである。同様に、第2のパルスのオフ時間(Δtoffの期間)は、0.2μs乃至100μsであることができ、好ましい例は、2μs乃至20μsである。第2のパルスのデューティは広い範囲の値をとることができるので、多くのモードの例が存在する。例えば、第2のパルスのデューティ・サイクル(Δton)/(Δton+Δtoff)は、30%乃至99%の範囲をとり得る。当然ながら、第2のパルスについての多様な期間および異なるタイプの定数を含んで、多くの異なるタイプのパルス構成が案出され得る。例えば、Δtonでさえも、S1の単一の主HIPIMSパルス内の各第2のパルスの期間の異なる値の時間を有することができる。
【0047】
図11の第2のモード例の動作中に、期間t1−t0は、キャパシタCを充電し、コイルLをロード(load)させ、そしてマグネトロンの電流を放電させるために使用される。第2のパルス、または第1の副パルスは、スイッチS2が開いたときにに適切な遅延を伴って開始することができる。時間t0−t2の期間、キャパシタCの充電はコイルLをロード(load)させるのみである。コイルLに蓄えられたエネルギーは、マグネトロンのカソード上に電圧オーバーシュートをもたらすと共に、マグネトロン電流の比較的速い立ち上がり時間をもたらす。そして、第2のパルスは、スイッチS2を開及び閉にスイッチングさせることにより、より短いパルスのシーケンスを与える。第2のパルス内の各パルスは、電圧オーバーシュートと、比較的速い電流の立ち上がりを伴って開始することができる。具体的には、マグネトロン放電は、スイッチS2がターンオンするたびに、時刻t2−t3から発生する。期間t1−t3の間、コイルLからのエネルギーがマグネトロンへ放電される。第2のパルスの副パルスの組の終端で、マグネトロン放電電流は、スイッチS1がターンオフする時刻t1の後、コイルLに蓄えられたエネルギーの残りが放電されるまで減衰する。時刻t0の前のスイッチS1のオフ時間の期間でキャパシタCは充電され、エネルギー入力がない状態でプラズマ密度は減衰する。
【0048】
図9の第3のモードが図12に示されている。このモードは、パルス・プレ・イオン化(pulsed pre-ionization)モードと称される。このモードは、図10の第1のモードと図11の第2のモードとの交互シーケンスであり、第2のパルスの複数の副パルスは、図10のモードによる第1のパルス内に形成され、主HIPIMSパルスである。このように、平均放電出力を低く保つことによりプラズマ密度の減衰が急激すぎないことを確保するために、スイッチS1の第1のパルスの期間で使用することができる第2のパルス内に第1のモードと同様のパルスが存在する。従って、この例のモードは、最初の二つの例のモードの要素を組み合わせたものと考えることができる。図12の例におけるS1のグラフでは、第1の長いパルスは、第2のモードの動作によるパルスに対応し、一方、3つの後続のパルスは、第1のモード、即ち“高周波”モードの動作を示す(図10参照)。二つのモード間のレートは、技術的な必要性に応じて選択される。従って、一つの例では、第1のパルスと第2のパルスは、第1のモード(図10)と第2のモード(図11)との間で周期的に変わることができる。従って、図12のモードは、前述したように、第1のモードの特性と入れ替わる第2のモードの周波数(“主周波数”)によって特徴づけられる。何れのモードでも第1のパルスの主周波数は1Hz−10kHzであり、好ましい例は、10Hz乃至1kHzで生じる。或るモードでは、0.2μs乃至100μsのオン時間(t1−t0の期間)が使用され、好ましくは、2μs乃至20μsが使用される。第1のパルスのオフ時間の期間での第2のパルスの副パルスのオン時間は、0.2μs乃至10μsであり、好ましい例は、1μs乃至5μsの間である。第1のパルスのデューティ・サイクルは、このモードでは0.1%と10%の間であることができる。第1のスイッチS1のオフ時間の期間での第2のパルスの副パルスのデューティ・サイクルが広い範囲の値を有することができるので、何れのモードでも多くの例が存在する。例えば、オフ時間の期間での第2のパルスについての副パルスのデューティ・サイクル(Δton)/(Δton+Δtoff)は0.01%乃至20%の範囲であることができる。また、他のタイプのパルスを、第1のモード例における要素とは異なる第2のパルス内で使用することができる。
【0049】
図10−12の例のいずれも、基板上にコーティングを形成するために電圧パルスが印加されるスパッタリングを発生させるための装置において基板バイアスを印加する方法として使用することができる。この方法の例では、第1のパルスは、電源からマグネトロンを充電するために第1のスイッチに印加される。また、この方法の例は、基板に動作可能に接続された電気的バイアス装置から基板バイアスを印加するステップを含む。この方法の例では、第1のパルスは、図10−12の例を含むことができる。RF発生器のような電気的バイアス装置は、基板に動作可能に接続され、基板バイアスを印加するように構成される。
【0050】
図9の第1の例におけるように、高電圧、大電流で、比較的速いスイッチを有する追加の電子装置を実装することの技術的な複雑さにもかかわらず、本発明の発生器自体は、より小さく、より安価で、より高速である。パルス間の遅延時間がより短い場合、パルス間でキャパシタを充電するために供給されるエネルギーは比較的小さく、キャパシタは、比較的低い容量を有することができ、そのことは、比較的、より小さい寸法と、より低いコストをもたらす。コイルLの変換効率は、電源での低電圧の使用を可能にする。従って、電源のコストを低減することができる。また、より小さなキャパシタは、フィードバックループを調節する遅延を、より少なくすることを可能にする。
【0051】
いずれの利点も、信頼性があって繰り返し可能でアークのない処理に寄与し、それは、半導体ウェハ、薄膜ヘッド、MEMS、光データ記憶装置、磁気データ記憶媒体、またはフラットパネルディスプレイの処理のような、粒子の影響を受けやすい基板の短処理(200ms乃至10min)に重要な特徴である。本発明の他の利点は、チョッパースイッチS2がターンオンするときのチョッパー・オフ時間の有益な効果に関する。スイッチS2は、コイルLに沿った点に動作可能に接続された場合にチョッパースイッチとして使用されることができる。スイッチS2が接続されないチョッパー・オフ時間の期間、ターゲット電圧は正の値に切り替わる。プラズマからの或る電子はターゲット上で終了し、そしてプラズマ電位は正の値に達する。シース(sheath)、プレシース(pre-sheath)、およびプラズマ中に存在していたイオンは、いまや、ターゲットから基板および壁に向けて加速される。単一のパルスについての効果は、パルスのオフ時間とターゲット電圧に依存する。最終的な効果は、繰り返し周波数に部分的に依存する。また、効果は、コイルLに沿ったスイッチS2の接続点に依存する。この接続点はタップ(tap)と呼ぶことができる。タップとコイルLのマグネトロン端との間に存在する更なる巻線は、より高い電圧変換効率、オフ時間の期間でのターゲット上でのより高い正電圧、および、より高いイオンエネルギーと近ターゲット領域からのイオンの比較的速い減少(depletion)をもたらす。
【0052】
RFバイアス及びスイッチング方法を含む第2の例を用いた膜堆積(film deposition)の方法は、フロントエンドの半導体ウェハの処理においてビア及びトレンチのメタル形成に使用することができる。また、本方法は、一般的なメタル形成(metallization)、スルー/ウェハビアのための、シリコンにおけるディープビアにおけるシード層またはウエッティング(wetting)層に使用することができる。例えば、第2のパルスと、インダクター・コイルに沿った第2のスイッチの位置は、両方とも、基板に所望のコーティングを提供するために調整することができるほか、基板上に1又は2以上の層を形成するために調整することもできる。追加の層の例は、ウエッティング層またはシード層であり得る。また、本方法は、チョッパー・オフ時間及び/又はコイルタップの位置によりトレンチ及び/又はビアにおけるボトム及び/又はサイドウォールのカバレッジを最適化するために使用できる。他の例では、本方法は、チョッパー・オフ時間及び/又はコイルタップの位置を調整することにより基板に対するイオン束を最適化するのに使用することができる。また、堆積速度(deposition rate)は、第2のパルスのオフ時間(即ち、チョッパー・オフ時間)の調整及び/又はインダクター・コイルに沿った第2のスイッチの位置の調整により最適化することができる。従って、多くの応用に望ましい比較的高い複数の異なる堆積速度が得られる。スイッチS2との接続点が調整可能なコイルのように、より多くの切り替え可能なタブを有するコイルを使用すること、またはコイルLを変更することは、装置にとって最適なレベルを見つけ出すのに役立つ。このような効果は、基板に対するイオン束のほか、イオンエネルギーを最適化するのに使用することができる。半導体ウェハにおけるビア及びトレンチ或いは基板上の他の構造のボトムおよびサイドウォールのカバレッジも同様に最適化することができる。さらに、パルシング(pulsing)と共にRF発生器を使用する本方法は、第2のパルス(即ちチョッパー・オフ時間)の調整、及び/又は、インダクター・コイルに沿った第2のスイッチの調整のようなコイルタップの位置の調整により、コーティングの、膜応力(film stress)、微細構造(microstructure)、力学的特性(mechanical property)、電気的特性、光学的特性、および他の特性を最適化するために使用することができる。
【0053】
DCマグネトロン・スパッタリングと比較した場合のHIPIMS応用における低い比速度(a low specific rate)という前述の欠点は、本発明のパルスシング方法により一部埋め合わせることができる。チョッパー・オン時間の区間が、ターゲット・シース及びプレシースを横切るイオンの飛翔時間(概ね0.2μs乃至5μsの範囲)に匹敵すれば、イオン化されスパッタ(spatter)された粒子のほとんどがターゲットに引き戻されないように抑制することが可能である。この粒子は、イオンがターゲットに到達する前に、逆方向の電界と加速度を生じるチョッパー・オフ時間によりターゲットに引き戻されることが抑制される。
【0054】
第3の例では、本発明の方法および装置は、図13に示されるように、アーク検出構成と組み合わされる。電気的バイアス装置10は、基板14を保持するチャック12に接続されるようにして、基板14に動作可能に接続される。その基本的な概念は、アークが発生し又は発生し始めているときにアークが検出された後にマグネトロンのカソードの近傍の位置でのアークの発生を防止(prevent)または抑制(inhibit)することである。図13の例は、少なくとも一つの検出器を備えている。この検出器は、電圧計(V)または電流系(A)のような計測器(meter)を備えることができる。他の例では、検出器は、アンペア(amps)、ボルト(volts)、またはアークが発生していることを検出するための複数の指標(indicators)をモニタすることができるデバイスであり得る。図13の例では、二つの検出器、即ち電圧計(V)および電流計(A)がマグネトロンの近傍に配置されている。電圧計(V)と電流計(A)は、アークが発生していること又は発生し始めていることを検出するように構成される。当然ながら、他の例では、一つの検出器のみを備えもよく、他の例では、マグネトロンの近くの位置を含む種々の位置に更なる検出器を備えてもよい。一つの検出器を備える場合、それは、アークが発生していることを検出するように構成された電圧計または電流計の何れかであり得る。図13の例は、また、カソード及びアノードを具備するマグネトロンと、上記マグネトロンの近傍に配置され、基板上にコーティングを形成するために原子をスパッタするために使用されるターゲットと、上記マグネトロンに動作可能に接続された電源と、上記電源に動作可能に接続された少なくとも一つのキャパシタCと、上記マグネトロンを充電させるために動作可能に接続され、第1のパルスにより上記マグネトロンを充電させるように構成された第1のスイッチS1とを備えることができる。上記電源はDC電源であり得る。
【0055】
第2のスイッチS2は、図13の例では、マグネトロンのカソードの近傍に配置される。第2のスイッチS2は、マグネトロンに動作可能に接続され、少なくとも一つの検出器によりアークの発生が検出されると、マグネトロンを放電させ、アークの発生を抑制するように構成される。第2のスイッチS2は、通常は開放しており、パルスシング動作(pulsing operation)を可能にする。アークが検出された場合、第2のスイッチS2はオンに切り替わり、マグネトロンのカソードとアノードとの間に実効的なショートカット(shortcut)を形成する。第2のスイッチS2がショートカットを形成すると同時に、第1のスイッチS1がオフに切り替わる。或いは、第2のスイッチS2がターンオンされてエネルギーのためのショートカットを形成したときに、第1のスイッチS1は、第2のスイッチS2が活性化される前または後の短い期間でターンオンすることができる。従って、第1のスイッチS1は、また、少なくとも一つの検出器によるアーク発生の検出に応答して制御されることができる。スイッチS1は、上記アークの発生を抑制または制限するように制御されることができる。第2のスイッチに加えて第1のスイッチを制御することは、装置におけるエネルギーの追加の制御を提供する。また、コイルLのようなインダクタンスは、図13の例のアーク検出例と共に使用することもでき、ここで、上記コイルは、上記少なくとも一つのキャパシタCと動作可能に接続され、このコイルは、アークが発生したときにピーク電流を制限すると共に、マグネトロンの放電電流の立ち上がり時間を制限するように構成される。
【0056】
第4の例では、本発明の方法および装置は、図14に示されるように、比較的速いアーク抑制構成と共に、高周波HIPIMSにおける比較的速いスイッチング電源と組み合わせることができる。この例はコイルL2を使用し、それは、図13に示されるスキームに加えて、チョッパー効果を生じさせるためにコイルLに沿った点に接続されたスイッチS2を備えることができる。この例では、スイッチS2は、第2のパルスを供給するように構成され、また、装置における少なくとも一つの検出器によりアークの発生が検出されると、活性化されてアークの発生を抑制するように構成される。図14において、電源は、キャパシタCのバンクを開始電圧にまで充電し、それは或るインダクタンスLcabおよび抵抗Rcabを有するケーブルを通じてマグネトロンへ放電される。電源はDC電源であることができる。コイルL2は、従来技術と同様のHIPIMS動作期間での機能を有し、即ち、マグネトロン放電電流の立ち上がり時間を制限する。また、図14のコイルL2は、アークが発生したときにピーク電流を制限する。図14の例は、また、カソード及びアノードを具備するマグネトロンと、マグネトロン近傍に配置されたターゲットを備え、このターゲットは、基板上にコーティングを形成するために原子をスパッタリングするために使用される。図14は、図示されるように、電流と電圧を測定するアーク検出装置を備えるが、他の例では、アークを測定するのに一つの検出器のみが必要である。好ましくは遅延時間を最小化するために、カソードで直接的にアークが検出された後、スイッチS2はオンに切り替わり、そしてスイッチS2が接続されたコイルL2に沿った点とマグネトロンのアノードとの間に実効的なショートカットを形成する。アーク発生の検出は、第2のスイッチS2を活性化して、アークの発生を抑制する。従って、この検出は、アークの発生、またはアークが発生し始めていることの検出に装置を反応させることにより、アークの有害な影響を低減する。このことは、マグネトロンのカソード上での電圧がゼロである更に短い時間をもたらし、その後、コイルL2の単巻トランス効果(auto transforming effect)による正の電圧が続く。上記ショートカットは、比較的速くアークを消滅させるのに役立つ。
【0057】
また、図14の例は、図9について述べたパルシング方法を提供するように構成され、ここで、第1のスイッチS1は、第1のパルスによりマグネトロンを充電させ、第2のスイッチS2は、第2のパルスによりマグネトロンを放電させる。図9で使用された3つのモード例のいずれも、図14の2つのスイッチと共に使用することができる。さらにまた、この例は、基板14とチャック12についてRF発生器10を備える。
【0058】
本発明は、上述の実施形態を参照して説明された。当業者であれば、この明細書の解釈および理解に基づいて修正および変更が可能であろう。本発明の1又は2以上の態様を含む実施形態は、添付の請求項の範囲内から得られる限度において、このような全ての修正および変更を含む。
【符号の説明】
【0059】
C;キャパシタ
S1,S2;スイッチ
L,L2;コイル
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年12月14日出願の米国仮出願第60/869912号の利益を主張するものであり、その開示内容の全体が、参照することにより本明細書に組み込まれる。また、本出願は、2006年12月12日出願の米国仮出願第60/869566号の利益を主張するものであり、その開示内容の全体が、参照することにより本明細書に組み込まれる。また、本出願は、2006年12月12日出願の米国仮出願第60/869578号の利益を主張するものであり、その開示内容の全体が、参照することより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、スパッタリング(sputtering)に関し、更に詳しくは、高出力インパルス・マグネトロン・スパッタリング(HIPIMS; High Power Impulse Magnetron Sputtering)に関する。
【背景技術】
【0003】
スパッタリング(sputtering)は、エネルギーイオン(energetic ions)による材料の衝撃により固体のターゲット材(a solid target material)中の原子を気相(gas phase)中に放出させる物理的処理である。このスパッタリング処理は、一般に、薄膜フィルムの堆積(deposition)に使用される。スパッタリング処理のためのエネルギーイオンは、スパッタリング装置内に誘起されるプラズマによって供給される。実際には、最適なスパッタリング条件を実現するために、プラズマの特性、特にイオン密度を修正するのに種々の技術が用いられる。プラズマの特性を修正するために用いられる技術の幾つかは、RF(高周波)交流電流、AC電源、DC電源、DC及びAC電源の重畳(superposition)、双極または単極電源のようなパルスDC電源、磁界の利用、そしてターゲットに対するバイアス電圧の印加を含む。
【0004】
通常、スパッタリング源はマグネトロンであり、このマグネトロンは、ターゲットの表面近傍の閉プラズマループ(a closed plasma loop)に電子を捕獲するために磁界を利用する。この電子は、磁界周辺のループにおける螺旋状の経路(helical paths)をたどる。この電子は、発生するというよりも、ターゲット表面近くのガスの中性(gaseous neutrals)で更なる電離衝突(ionizing collisions)を受ける。スパッターガスは不活性(inert)であり、代表的にはアルゴンであるが、他のガスを使用することも可能である。これらの衝突の結果として生成される過剰なアルゴンイオンは、比較的高い堆積速度(deposition rate)をもたらす。このような磁界ループを形成するためにターゲットの向こう側に強永久磁石を配置することが知られている。ターゲットの表面上のプラズマループの位置では、レーストラック(racetrack)が形成され、それは、材料の好ましい侵食(erosion)の領域である。材料の利用を増すために、可動の磁気構成(movable magnetic arrangement)が使用され、それは、ターゲットの比較的大きな領域をプラズマループで掃引(sweep)することを可能にする。
【0005】
直流電流(DC; Direct Current)マグネトロン・スパッタリングは、交差電界と磁界(crossed electric and magnetic fields)を用いた公知の技術である。DCマグネトロン・スパッタリングの増強(enhancement)技術にはパルスDC(pulsed DC)がある。この技術は、いわゆる“チョッパー(chopper)”を使用し、DC電源を単極または双極パルスの電源に変更するためにインダクター・コイルLとスイッチが使用される(図1参照)。インダクター・コイルLはチョッパーであり、好ましくは、DC電源とマグネトロンのカソードとの間に配置されたタップを備える。電子スイッチSは、周期的に開閉してパルスを生成する。スイッチSのオン時間の期間では、コイルLのタップとマグネトロンのアノードとの間の実効的なショートカットが負のカソード電圧をオフに切り替え、好ましくは、コイルLの単巻トランス効果(auto transforming effect)により正の電圧にオーバーシュートする。スイッチSのオフ時間の期間では、DC電源からの電流がコイルLに継続して流れ込み、その磁界にエネルギーを蓄える。スイッチSが再びオフになると、短い負の高電圧のピークがマグネトロンのカソードに生じる。これは、マグネトロンプラズマの比較的速い再発生(reigniting)と、元の放電電流の回復(restoring)に役立つ。
【0006】
従来技術で述べた高出力インパルス・マグネトロン・スパッタリング(HIPIMS)技術は、パルス時間が20乃至500μsであって、典型的には5Hzから200Hzの比較的低い繰り返し周波数のパルスを使用する。放電ピーク電流は、比較的小さいカソードについての100Aから、比較的大きいカソードについての4kAまでの範囲をとり、それは、0.1乃至10A/cm2のオーダーのカソードでの電流密度に対応する。一般技術では、図1に示されるような配線(wiring)を使用する。ワークピース・ホルダー(work piece holder)は、DC電位のような外部電位とされるか、或いはプラズマにおける浮遊電位(floating potential)とされる。図1の従来技術は、ワークピース・ホルダーにDCバイアスを印加することを必要とする。
【0007】
標準のHIPIMS技術には多くの欠点が存在する。DCバイアスを使用することは、基板でのイオンエネルギーを定めるのに役立つが、アーク放電(arcing)が基板上で発生するかもしれないという欠点がある。基板上でのアーク放電は、ウェハ処理が使用されているときにウェハダメージの原因となる。もう一つの欠点は、DCバイアスは、また、酸化物材料を用いたビア及びトレンチのような、電気的絶縁表面には作用しないことである。
【0008】
図2は実験結果を示す。そのデータは、HIPIMS技術の放電の状態において周波数の関数として電流の立ち上がり時間の測定値を示す。この例でのターゲットは、タンタル(Ta)から構成され、その直径は300mmであり、また、この実験では回転磁石配置(rotating magnet array)を使用している。10Hz(100ms周期)の比較的低い繰り返し周波数では、電圧パルスの開始と電流の立ち上がりの開始との間に比較的長い遅延(約5μs)が存在する。この遅延は、100Hz(10ms周期)の繰り返し周波数が使用された場合には幾分短くなる(4μsを越える)。500Hz(2ms周期)の比較的高い周波数では、電流はさらに速く立ち上がり、ほんの約1.5μs以内である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ターゲットと基板との間に配置されたコイルの使用による高周波(RF; Radio Frequency)の誘導結合プラズマ(ICP; Inductively Coupled Plasma)を用いたプレ・イオン化(pre-ionization)は、HIPIMS応用における電流の立ち上がり時間を短縮するのに役立つことが知られている。にもかかわらず、大きなICPコイルをマグネトロンと基板の間に配置することは設計を複雑にし、粒子の発生の可能性を増加させ、そして、ターゲットと基板との間の間隔(spacing)の増加により堆積速度(deposition rate)を低下させる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、本発明の幾つかの態様例の基本的理解を提供するために、本発明の簡略化された概要を述べる。この概要は、本発明の広範な概説(overview)ではない。また、この概要は、本発明の決定的要素(critical element)を特定するものではなく、本発明の範囲を描くものでもない。この概要の唯一の目的は、後で述べられる更に詳細な説明の前置きとして、簡略化した形式で本発明の幾つかの概念を示すことである。
【0011】
本発明の一態様によれば、マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として基板上にコーティングを形成するためにターゲットのスパッタリングを発生させるための装置が提供される。本装置は、上記マグネトロンに動作可能に接続された電源と、上記電源に動作可能に接続された少なくとも一つのキャパシタとを備える。また、第1のスイッチが備えられる。上記第1のスイッチは、上記マグネトロンを充電させるために上記電源を上記マグネトロンに動作可能に接続し、上記第1のスイッチは、第1のパルスにより上記マグネトロンを充電させるように構成される。電気的バイアス装置が、上記基板に動作可能に接続され、基板バイアスを印加するように構成される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として基板上にコーティングを形成するためにターゲットのスパッタリングを発生させるための装置が提供される。本装置は、上記マグネトロンに動作可能に接続された電源と、上記電源に動作可能に接続された少なくとも一つのキャパシタを備える。また、第1のスイッチが備えられる。上記第1のスイッチは、上記マグネトロンを充電させるために上記電源を上記マグネトロンに動作可能に接続し、上記第1のスイッチは、第1のパルスにより上記マグネトロンを充電させるように構成される。電気的バイアス装置が、上記基板に動作可能に接続され、基板バイアスを印加するように構成される。チャック(chuck)が、上記電気的バイアス装置に動作可能に接続され、上記基板が上記チャック上に配置される。コイルが、上記少なくとも一つのキャパシタに動作可能に接続される。上記第2のスイッチは、上記マグネトロンを放電させるために動作可能に接続され、上記コイルに沿った点に接続される。上記第2のスイッチは、第2のパルスにより上記マグネトロンを放電させるように構成される。少なくとも一つの検出器が、上記マグネトロンに動作可能に接続され、上記少なくとも一つの検出器は、発生しているアークを検出するように構成される。上記第1のスイッチ及び上記第2のスイッチは、上記少なくとも一つの検出器による上記アークの検出に応答して制御され、上記アークの発生を抑制させる。
【0013】
本発明の他の態様によれば、マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として基板上にコーティングを形成するためにターゲットのスパッタリングを発生させるための装置が提供される。本装置は、上記マグネトロンを充電するために上記マグネトロンに動作可能に接続され、上記マグネトロンにパルスを供給するように構成された電源を備える。RF電気的バイアス装置が、上記基板に動作可能に接続され、バイアスパルスにより上記マグネトロンを放電させるように構成される。同期化装置(synchronization device)が、上記電源に動作可能に接続されると共に上記電気的バイアス装置に動作可能に接続される。上記同期化装置は、上記第1のパルスの遅延時間および周波数を上記バイアスパルスと同期させるように構成される。
【0014】
本発明の他の態様によれば、マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として基板上にコーティングを形成するためにターゲットのスパッタリングを発生させるための装置において基板バイアスを印加する方法が提供される。本方法は、電源からマグネトロンを充電させるために第1のパルスを第1のスイッチに印加するステップを含む。また、本方法は、上記基板に動作可能に接続された電気的バイアス装置から上記基板バイアスを印加するステップを含む。
【0015】
前述の内容および本発明の他の態様は、添付の図面を参照して以下の説明を読めば、本発明が関連する技術分野の当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】HIPIMS応用の従来技術を示す図である。
【0017】
【図2】典型的なパルス期間での従来技術におけるHIPIMS応用の電圧と電流を例示するプロット図である。
【0018】
【図3】RF発生器を備えた本発明の第1の例を示す図である。
【0019】
【図4】RFがオフの場合の典型的なパルス期間での従来技術におけるHIPIMS応用の電圧と電流を例示するプロット図である。
【0020】
【図5】図3のチャック上で低出力のRFが使用される場合の典型的なパルス期間でのHIPIMS応用の電圧と電流を例示するプロット図である。
【0021】
【図6】図3のチャック上で比較的高出力のRFが使用される場合の典型的なパルス期間でのHIPIMS応用の電圧と電流を例示するプロット図である。
【0022】
【図7】RFバイアスを使用しない場合の基板のボトム厚を示すHIPIMS応用の図である。
【0023】
【図8】RFバイアスを使用した場合の基板のボトム厚を示すHIPIMS応用の図である。
【0024】
【図9】異なるモードを適用するための2つのスイッチと組み合わせてRFバイアスを用いた本発明の第2の例を示す図である。
【0025】
【図10】図9と共に使用するための高周波モードの例を示す図である。
【0026】
【図11】図9と共に使用される主パルス内の複数の副パルスの例を示す図である。
【0027】
【図12】図9と共に使用するためのパルス・プレ・イオン化モードの例を示す図である。
【0028】
【図13】2つのスイッチ及びアーク検出構成と組み合わせてRFバイアスを用いた本発明の第3の例を示す図である。
【0029】
【図14】異なるモードを適用するための2つのスイッチ及びアーク検出構成と組み合わせてRFバイアスを用いた本発明の第4の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面を参照して、本発明の1又は2以上の態様を組み込んだ例を説明する。これらの例示的な例は、本発明に関する制限を意図するものではない。例えば、本発明の1又は2以上の態様は他の実施形態で利用可能であり、他のタイプの装置でも利用可能である。また、本明細書では、或る専門用語(terminology)は、便宜的に使用されるものであり、本発明を限定するものとして受け取られるべきではない。更にまた、図面では、同一の参照番号は同一の要素を示すものとして導入されている。
【0031】
図3は、本発明の第1の例を示す。例えば、本発明は、図1の配線のような、標準的なHIPIMS配線を使用することが可能であるが、加えて、RF発生器のような電気的バイアス装置10が基板14に接続される。例えば、この電気的バイアス装置は、基板14を保持するチャック(chuck)12に接続されることができる。この第1の例は、カソード及びアノードを具備するマグネトロン(magnetron)と、上記マグネトロンの近傍に配置され、上記基板上にコーティングを形成するために原子をスパッタするために使用されるターゲットと、上記マグネトロンに動作可能(operably)に接続された電源と、上記電源に動作可能に接続された少なくとも一つのキャパシタCと、上記マグネトロンを充電するために動作可能に接続され、上記マグネトロンに第1のパルスを供給するように構成された第1のスイッチS1とを備えることができる。従って、図3の例は、HIPIMSパルシング(HIPIMS pulsing)と一緒に、RF発生器のような電気的バイアス装置10を使用することを含む。一例において、HIPIMSパルシングは、マグネトロンのカソード上の電流密度が0.1と10A/cm2の間である場合に適用できる。この電流密度は面積平均であることができる。チャック12を備えた例では、このチャック12は、基板14を保持するウェハ台であることができる。この例における基板14はウェハであるが、他の応用については基板は他の材料であってもよい。マグネトロンとチャック12の間の距離は比較的小さく、概して20mm乃至100mmの間である。テスト実験は50mmで実施された。マグネトロンの磁力線は、好ましくは不平衡マグネトロン磁界の形式で、少なくとも10ガウスの磁界強度でチャック12に到達する。このように、磁気的制限(magnetic confinement)は、マグネトロン・プラズマがオフの場合にRF放電(RF discharge)の安定度(stability)を改善する。同時に、パルス間での残りのRF放電は、一例の方法では、HIPIMS放電についてのプレ・イオン化として作用する。HIPIMSパルスは、図3の例では、第1のスイッチS1を通じて供給され、この第1のスイッチS1は、マグネトロンを充電するために動作可能に接続され、上記第1のパルスにより上記マグネトロンを充電するように構成される。
【0032】
図3の更なる例においては、マッチングユニット(matching unit)16を、電気的バイアス装置10とチャック12との間に配置することができる。このマッチングユニット16は、基板及び/又はチャックでのプラズマのインピーダンスと基板のインピーダンスとをマッチングさせるように構成される。マッチングユニット16の位置として他の位置を使用することもできる。図3の他の例では、RFセルフバイアスモニタ装置20が、上記チャックと動作可能に接続されることができる。このモニタ装置20の位置として他の位置を使用することもできる。RFセルフバイアスモニタ装置20は、上記チャックでのRFセルフバイアスをモニタするように構成される。
【0033】
チャック12に接続された、RF発生器のような電気的バイアス装置10を組み合わせることは、通常、比較的高速で、より信頼性のあるHIPIMSパルスの発生(ignition)をもたらすことができる。パルス間の遅延時間がより短い場合、パルス間でキャパシタを充電するために供給されるエネルギーは比較的小さく、上記キャパシタは、より低い容量を持つことができ、それは、比較的、より小さな寸法と、より低いコストをもたらす。比較的高い周波数を有する短いパルスは、本発明の方法を用いて提供される。
【0034】
DCバイアスと比較して、容量性のRFバイアスのようなRFバイアスを用いることの他の利点は、RFバイアスが、通常、アーク放電と基板またはウェハのダメージを低減し、または除去さえすることである。また、RFバイアスは、酸化物材料を使用するビア及びトレンチでのような絶縁表面に作用する。ICPコイルにRFバイアスを用いることの追加の利点は、マグネトロンと基板との間にICPコイルを必要としないので、ターゲット−基板の距離をより短くすることができることである。また、反応炉(reactor)における粒子がより少ないことにより、また、より短いターゲット−基板の距離の結果、比較的高い堆積速度が得られる。
【0035】
図4−6のプロットは、チャックに接続された、RF発生器のような電気的バイアス装置を備えることの利点を例示している。図4−6は、カソードタイプがARQ151のOerlikon ClusterLine CL200を用いて得られたものである。これらのプロット例でのターゲットは、タンタル(Ta)から構成され、このターゲットの直径は300mmである。不活性ガスの一例として使用されるアルゴンガスが、概ね25sccm(standard cubic centimeter per minute)のガス流速で使用され、基板の温度制御を可能とするために、チャックと基板との間ではガス流速は概ね5sccmである。このガス流速は、ターゲットと基板を収容するチャンバに移動するガスの量である。この例では、低温ポンプ(cryogenic pump)である真空ポンプによる継続的なポンピングの効果は、概ね6×10−3mbarの定常状態の圧力をもたらす。このプロット例におけるパルスは、500Hzの周波数と、15μsのオン時間と、概ね1400Vの電圧を有する。従って、この周波数は、第1のパルスを通じて印加される。
【0036】
図4は、RF発生器のような電気的バイアス装置を使用しない典型的なパルス期間での従来技術におけるHIPIMS応用の電圧と電流を例示するプロットを示す。従って、図4は、従来技術の例であり、HIPIMSパルス期間で電流が立ち上がるための約10μsの典型的な遅延を示す。オン時間の最後の5μsにおいてのみ、電流が概ね980Aのピーク値に上昇している。
【0037】
図5は、図3のチャック上に10Vのセルフバイアスが使用された状態で、RF発生器が17Wの比較的低出力のRFロード(RF load)を印加するために使用される場合の典型的なパルス期間でのHIPIMS応用の電圧と電流を例示するプロットを示す。上述のRFロードとセルフバイアス電圧の両方とも、多数のパルス期間にわたって決定された時間平均値である。上記低出力RFは上記チャック上で使用され、第1のパルス期間のような、パルスの開始(start)と電流の立ち上がりの開始(beginning)との間の遅延は非常に短く、概ね1.8μsである。この例における電流は、RFを使用しない場合の980Aのピーク値に比較して、概ね1580Aの非常に高いピーク電流値にまで上昇する。この実験の他の例では、他の動作範囲が同様の結果を提供し得る。例えば、5V乃至50Vのセルフバイアスでの10W乃至50WのRFロードは、500Aを超える増加したピーク値の範囲では2μs未満の遅延をもたらす。
【0038】
図6は、103Vのセルフバイアスで132Wの比較的高出力のRFが図3のチャック上で使用され、時間平均として再度測定された場合の典型的なパルス期間でのHIPIMSの電圧と電流を例示するプロットである。比較的高出力のRFがチャック上で使用される場合、第1のパルス期間のような、パルスの開始と電流立ち上がりの開始との間で電流が立ち上がりを開始する遅延は、図5の低出力RF応用におけるものよりさえも短く、その遅延は約0.8μsである。この電流は、実に比較的速く立ち上がり、より高いRF出力は、通常、概ね103Vの比較的高いセルフバイアス電位をもたらす。この電流のピーク値は、この例では概ね1500Aである。セルフバイアス電圧を調整することにより、ウェハのような基板に衝突するイオンのエネルギーは制限(regulate)される。従って、セルフバイアス電圧は、基板に所望のコーティングを提供するように調整される。この実験の他の例では、他の動作範囲が同様の結果を提供し得る。例えば、50Vを超えるセルフバイアスでの50Wを超えるロード(load)は1μs未満の遅延をもたらす。
【0039】
また、RF出力(RF power)を提供することは、第1のスイッチS1によって印加されるHIPIMSパルスが比較的低い圧力範囲で開始することを可能にする。例えば、RF発生器のような電気的バイアス装置を使用しない場合でのほんの約15sccmのアルゴンガス流速を用いて実施された実験では、HIPIMSインパルスを生成することに失敗した。この流速に対応するガス圧は約3×10−3mbarである。しかしながら、HIPIMSインパルスは、同一のアルゴンガス流の条件下では50Wを上回るRF出力で発生することができる。50Wを上回るRF出力では、HIPIMSインパルスは繰り返し開始する。また、他の低圧力動作が可能であり、15sccmのアルゴンガス流は、本発明の応用の一例にすぎない。また、50Wを上回るRFロードは、20sccmを下回る任意のガス流速で発生することができる。同様に、50Wを上回るRFロードは多様なガス圧力で発生し得る。一例において、ガス圧力は、概ね2×10−4乃至5×10−3mbarの範囲であり、それは、2×10−2乃至5×10−1Paと等価である。
【0040】
RF出力を供給することの他の利点は、本発明を使用することにより、ターゲットのより良好なボトムカバレッジが得られることである。図7及び図8にその結果が示される実験は、ターゲットの改善されたボトムを示している。この実験では、深さが約180μmで幅が約50μmのトレンチの堆積のためにタンタル(Ta)ターゲットが使用された。図7は、RFバイアスを使用しない場合の基板上のカバレッジの結果を示す。図7は、約251nmのボトム厚が測定されたことを示す。加えて、トップ厚(top thickness)はほんの約1.7μmで測定され、ほんの約15%のボトムカバレッジという結果になっている。図8には、RFバイアスを使用した場合の結果が示されている。これは、ボトム厚が約410nmで、トップ厚が約2.0μmという結果になっており、概ね21%の改善されたボトムカバレッジを与えている。基板のボトムのカバレッジに生じるこの改善は、RFシース(RF sheath)によるものであり、このRFシースは、基板表面とチャックの表面の近傍に形成される。RFシースがチャックの表面の近傍に形成されると、それは、基板とチャックの表面に向かうイオン化された金属イオンの誘引(attraction)をもたらす。結果として、更なるイオンがシースに方向づけられるようになって表面に衝突し、及び/又は、それらの角拡散(angular spread)が狭くなる。
【0041】
本発明の方法の一例は、基板上にコーティングを形成するためにパルスが印加(apply)されるスパッタリングを発生させるための装置において基板バイアスを印加するステップを含む。この方法における一つのステップは、電源からマグネトロンを充電するために第1のスイッチに第1のパルスを印加することである。この方法の例における他のステップは、上記基板に動作可能に接続された電気的バイアス装置から基板バイアスを印加することである。また、本方法の例は、第1のパルスの期間、或いは、第1のパルスパターンで生じるパルス間で、RF発生器のRF放電を使用するステップを含むことができる。HIPIMSパルスのような、第1のパルスの期間でRF放電を使用することは、マグネトロンの放電のためのプレ・イオン化(pre-ionization)を実現するであろう。本発明の他の応用例では、RF出力は、堆積に先立って基板を事前洗浄(per-clean)およびエッチングするために利用することができる。表面酸化物のような最上層のスパッター洗浄または選択的スパッタリングのような基板のエッチングは、ターゲットの汚染(contamination)を回避するためにシャッターを閉じた状態で行われる。そして、基板の堆積は、シャッターが開かれてから開始することができる。本方法の他の応用例では、本方法は、基板に衝突するイオンのエネルギーを調節して基板に所望のコーティングを提供するために基板バイアスの電圧を調整するステップを更に含むことができる。
【0042】
本発明の他の応用例では、RF出力は、パルスモード(pulsed mode)の動作において印加される。この例では、200Wを上回るRFについての比較的高い出力を使用することが望ましく、好ましくは、500W乃至10kWのピーク出力である。パルスモードの動作においてRFを稼動させている間、本装置は、HIPIMSパルシング(HIPIMS pulsing)と同期化されることができる。好ましい動作では、RFパルスが最初に開始され、それから、HIPIMSマグネトロンパルスが、第1のスイッチS1の使用を通じて印加されることができる。RFパルスは、HIPIMS電圧パルスがオフに切り替わる前に、オフに切り替えられることができる。或いは、RFパルスは、HIPIMS電圧パルスがオフに切り替わった後に、オフに切り替えられることができる。RF出力をHIPIMSパルシングと同期化する例では、本装置は、マグネトロン、電源、RF電気的バイアス装置10、同期化装置18を備えることができる。電源は、マグネトロンを充電するためにマグネトロンに動作可能に接続され、上記マグネトロンに第1のパルスを供給するように構成される。パルス電源(pulsed power supply)は、電源をマグネトロンに動作可能に接続する第1のスイッチを備えることができ、上記第1のスイッチは、第1のパルスをマグネトロンに供給するように構成される。上記第1のパルスを供給するために他の構成を用いることもできる。RF電気的バイアス装置は、上記基板に動作可能に接続され、バイアスパルスにより上記マグネトロンを放電させるように構成される。同期化装置18は、図3の例に示されるように、電気的バイアス装置10に動作可能に接続されると共に、上記電源に動作可能に接続される。同期化装置18は、第1のパルスの遅延時間及び周波数を上記バイアスパルスに同期させるように構成される。例えば、第1のパルスの遅延時間及び周波数は、異なるタイプのバイアスパルスに基づいて様々に変えることができる。更なる例では、電源は、デューティ・サイクルが約0.01%と20%の間にあって周波数が約1Hz乃至20kHzの範囲にある第1のパルスをマグネトロンに供給するように構成される。更なる他の例では、電源は、デューティ・サイクルが約2%と50%の間にある第1のパルスをマグネトロンに供給するように構成される。他の例では、上記同期化装置は、第1のパルスが供給される前に、約0.1μs乃至500μsの遅延時間を設けてバイアスパルスを供給するように構成される。
【0043】
第2の例では、電気的バイアス装置10を備える本発明の方法と装置は、図9に示されるように、HIPIMSおよび高周波HIPIMSモードを含む種々のモードを印加するための2つのスイッと組み合わされる。RF発生器のような電気的バイアス装置10は、基板14を保持するチャック12へのように、基板14に動作可能に接続される。図9の本発明の例は、この構成において第1のスイッチS1と第2のスイッチS2を備える。第1のスイッチS1は、マグネトロンに動作可能に接続され、第1の電圧を供給すると共に第1のパルスによりマグネトロンを充電させることができるように構成される。第2のスイッチS2は、マグネトロンを放電させるために動作可能に接続され、第2のパルスによりマグネトロンを放電させるように構成されることができる。また、この例では、インダクタンスを備えることができ、このインダクタンスは、少なくとも一つのキャパシタと動作可能に接続される。この例では、インダクタンスはコイルLであるが、当然ながら、そのインダクタンスを提供するために他の構成を使用することもできる。コイルLは、マグネトロン放電電流の立ち上がりの傾きを制限する。また、コイルLは、アークが発生した場合にピーク電流を制限する。
【0044】
図9の例を用いた多くの動作モードが存在する。図9の例についての動作モードの一つでは、図10に示されるように、第1のスイッチS1についてのパルスフォーム、即ち第1のパルスは高い周波数を有している。第1のスイッチS1の第1のパルスについてのパルスフォームと、第2のスイッチS2の第2のパルスについてのパルスフォームの例は、この高周波モードについて図10に示されている。図10の高周波モードは、200Hz−100kHzの高周波パルス動作を含む異なるレベルで動作されることができ、好ましい例は、1kHz乃至20kHzの間で生じる。また、低出力損失の比較的低い実効デューティ・サイクル(0.1%乃至10%)は、このモードで実現され得る。0.2μs乃至100μsのオン時間(t1−t0の期間)は、この例で使用されることができ、好ましい例は、2μs乃至40μsで生じる。
【0045】
高周波モードは、時刻t0で、充電されたキャパシタCをコイルLに接続することから開始する。当然ながら、充電されたキャパシタは、少なくとも一つのキャパシタであることができ、図は複数のキャパシタを示すことができる。時刻t2で開かれるようにスイッチ2を活性化することにより、遅延時間(t2−t0)の後にプラズマを発生させる。コイルLに蓄えられたエネルギーは電圧オーバーシュートをもたらし、この電圧オーバーシュートは、図10の例に示されるように、マグネトロン電流の比較的速い立ち上がり時間で、マグネトロンのカソード上にほとんど即座に発生する。このマグネトロンの放電電流は、時刻t1(S1がオフ)と時刻t3(S2がオン)の間に減衰する。時刻t3は、期間の残りを含んで、時刻t1の後の短い時間から比較的長い時間までの間で選ぶことができる。図10のモード例における各第1のパルスは、(t2−t0)の同一の初期期間で比較的速い立ち上がりの電流と電圧オーバーシュートを伴って開始する。エネルギー効率は、キャパシタCを充電するために使用される第1のスイッチS1についての比較的長いオフ時間によって達成される。この期間は、時刻t0が生じる前の期間により示される。初期期間(t2−t0)は比較的短く、コイルLにエネルギーを蓄えるために使用される。この比較的短い時間は、第2のパルスが第2のスイッチS2を活性化する前に第1のスイッチS1が活性化されてコイルLにエネルギーを蓄えるときに経過(elapse)する。第2のスイッチS2の活性化は、マグネトロンの放電を生じさせる。時刻t0−t1から、キャパシタCの充電はコイルLをロード(load)させ、マグネトロンの電流の放電が発生する。具体的には、マグネトロン放電は時刻t2−t3から発生する。時刻t1−t3から、コイルLからの残りのエネルギーがマグネトロンへ放電される。
【0046】
図9の例についての第2の動作モードが図11に示される。このモードでは、第2のパルスは、第1のパルスの一つの主HIPIMSパルス内に形成される複数の副パルスを与える(exert)。第1のパルスは、マグネトロンに電圧を供給するための単一で比較的長いパルスであることができ、第1のパルスは、期間t1−t0の期間で、第1のスイッチS1を使用することにより形成される。第2のパルスは、複数の副パルスであることができ、または、より短い1組の副パルスであることができ、それらは、図11のモードの例において示されるように、スイッチS2で形成される。図11のモードは、1Hz−10kHzの主周波数を含む異なるレベルで動作されることができ、好ましい例は、10Hz乃至1kHzの間で生じる。第1のパルスは、このモードで使用することができるデューティ・サイクル(0.1%乃至10%)を有する。このモードでは、0.2μs乃至100μsのオン時間(t1−t0の期間)が使用され、好ましくは2μs乃至20μsが使用されることができる。第2のパルスのオン時間(t3−t2の期間、それは、Δtonに等しい)は、0.2μs乃至100μsであることができ、好ましい例は、2μs乃至20μsである。同様に、第2のパルスのオフ時間(Δtoffの期間)は、0.2μs乃至100μsであることができ、好ましい例は、2μs乃至20μsである。第2のパルスのデューティは広い範囲の値をとることができるので、多くのモードの例が存在する。例えば、第2のパルスのデューティ・サイクル(Δton)/(Δton+Δtoff)は、30%乃至99%の範囲をとり得る。当然ながら、第2のパルスについての多様な期間および異なるタイプの定数を含んで、多くの異なるタイプのパルス構成が案出され得る。例えば、Δtonでさえも、S1の単一の主HIPIMSパルス内の各第2のパルスの期間の異なる値の時間を有することができる。
【0047】
図11の第2のモード例の動作中に、期間t1−t0は、キャパシタCを充電し、コイルLをロード(load)させ、そしてマグネトロンの電流を放電させるために使用される。第2のパルス、または第1の副パルスは、スイッチS2が開いたときにに適切な遅延を伴って開始することができる。時間t0−t2の期間、キャパシタCの充電はコイルLをロード(load)させるのみである。コイルLに蓄えられたエネルギーは、マグネトロンのカソード上に電圧オーバーシュートをもたらすと共に、マグネトロン電流の比較的速い立ち上がり時間をもたらす。そして、第2のパルスは、スイッチS2を開及び閉にスイッチングさせることにより、より短いパルスのシーケンスを与える。第2のパルス内の各パルスは、電圧オーバーシュートと、比較的速い電流の立ち上がりを伴って開始することができる。具体的には、マグネトロン放電は、スイッチS2がターンオンするたびに、時刻t2−t3から発生する。期間t1−t3の間、コイルLからのエネルギーがマグネトロンへ放電される。第2のパルスの副パルスの組の終端で、マグネトロン放電電流は、スイッチS1がターンオフする時刻t1の後、コイルLに蓄えられたエネルギーの残りが放電されるまで減衰する。時刻t0の前のスイッチS1のオフ時間の期間でキャパシタCは充電され、エネルギー入力がない状態でプラズマ密度は減衰する。
【0048】
図9の第3のモードが図12に示されている。このモードは、パルス・プレ・イオン化(pulsed pre-ionization)モードと称される。このモードは、図10の第1のモードと図11の第2のモードとの交互シーケンスであり、第2のパルスの複数の副パルスは、図10のモードによる第1のパルス内に形成され、主HIPIMSパルスである。このように、平均放電出力を低く保つことによりプラズマ密度の減衰が急激すぎないことを確保するために、スイッチS1の第1のパルスの期間で使用することができる第2のパルス内に第1のモードと同様のパルスが存在する。従って、この例のモードは、最初の二つの例のモードの要素を組み合わせたものと考えることができる。図12の例におけるS1のグラフでは、第1の長いパルスは、第2のモードの動作によるパルスに対応し、一方、3つの後続のパルスは、第1のモード、即ち“高周波”モードの動作を示す(図10参照)。二つのモード間のレートは、技術的な必要性に応じて選択される。従って、一つの例では、第1のパルスと第2のパルスは、第1のモード(図10)と第2のモード(図11)との間で周期的に変わることができる。従って、図12のモードは、前述したように、第1のモードの特性と入れ替わる第2のモードの周波数(“主周波数”)によって特徴づけられる。何れのモードでも第1のパルスの主周波数は1Hz−10kHzであり、好ましい例は、10Hz乃至1kHzで生じる。或るモードでは、0.2μs乃至100μsのオン時間(t1−t0の期間)が使用され、好ましくは、2μs乃至20μsが使用される。第1のパルスのオフ時間の期間での第2のパルスの副パルスのオン時間は、0.2μs乃至10μsであり、好ましい例は、1μs乃至5μsの間である。第1のパルスのデューティ・サイクルは、このモードでは0.1%と10%の間であることができる。第1のスイッチS1のオフ時間の期間での第2のパルスの副パルスのデューティ・サイクルが広い範囲の値を有することができるので、何れのモードでも多くの例が存在する。例えば、オフ時間の期間での第2のパルスについての副パルスのデューティ・サイクル(Δton)/(Δton+Δtoff)は0.01%乃至20%の範囲であることができる。また、他のタイプのパルスを、第1のモード例における要素とは異なる第2のパルス内で使用することができる。
【0049】
図10−12の例のいずれも、基板上にコーティングを形成するために電圧パルスが印加されるスパッタリングを発生させるための装置において基板バイアスを印加する方法として使用することができる。この方法の例では、第1のパルスは、電源からマグネトロンを充電するために第1のスイッチに印加される。また、この方法の例は、基板に動作可能に接続された電気的バイアス装置から基板バイアスを印加するステップを含む。この方法の例では、第1のパルスは、図10−12の例を含むことができる。RF発生器のような電気的バイアス装置は、基板に動作可能に接続され、基板バイアスを印加するように構成される。
【0050】
図9の第1の例におけるように、高電圧、大電流で、比較的速いスイッチを有する追加の電子装置を実装することの技術的な複雑さにもかかわらず、本発明の発生器自体は、より小さく、より安価で、より高速である。パルス間の遅延時間がより短い場合、パルス間でキャパシタを充電するために供給されるエネルギーは比較的小さく、キャパシタは、比較的低い容量を有することができ、そのことは、比較的、より小さい寸法と、より低いコストをもたらす。コイルLの変換効率は、電源での低電圧の使用を可能にする。従って、電源のコストを低減することができる。また、より小さなキャパシタは、フィードバックループを調節する遅延を、より少なくすることを可能にする。
【0051】
いずれの利点も、信頼性があって繰り返し可能でアークのない処理に寄与し、それは、半導体ウェハ、薄膜ヘッド、MEMS、光データ記憶装置、磁気データ記憶媒体、またはフラットパネルディスプレイの処理のような、粒子の影響を受けやすい基板の短処理(200ms乃至10min)に重要な特徴である。本発明の他の利点は、チョッパースイッチS2がターンオンするときのチョッパー・オフ時間の有益な効果に関する。スイッチS2は、コイルLに沿った点に動作可能に接続された場合にチョッパースイッチとして使用されることができる。スイッチS2が接続されないチョッパー・オフ時間の期間、ターゲット電圧は正の値に切り替わる。プラズマからの或る電子はターゲット上で終了し、そしてプラズマ電位は正の値に達する。シース(sheath)、プレシース(pre-sheath)、およびプラズマ中に存在していたイオンは、いまや、ターゲットから基板および壁に向けて加速される。単一のパルスについての効果は、パルスのオフ時間とターゲット電圧に依存する。最終的な効果は、繰り返し周波数に部分的に依存する。また、効果は、コイルLに沿ったスイッチS2の接続点に依存する。この接続点はタップ(tap)と呼ぶことができる。タップとコイルLのマグネトロン端との間に存在する更なる巻線は、より高い電圧変換効率、オフ時間の期間でのターゲット上でのより高い正電圧、および、より高いイオンエネルギーと近ターゲット領域からのイオンの比較的速い減少(depletion)をもたらす。
【0052】
RFバイアス及びスイッチング方法を含む第2の例を用いた膜堆積(film deposition)の方法は、フロントエンドの半導体ウェハの処理においてビア及びトレンチのメタル形成に使用することができる。また、本方法は、一般的なメタル形成(metallization)、スルー/ウェハビアのための、シリコンにおけるディープビアにおけるシード層またはウエッティング(wetting)層に使用することができる。例えば、第2のパルスと、インダクター・コイルに沿った第2のスイッチの位置は、両方とも、基板に所望のコーティングを提供するために調整することができるほか、基板上に1又は2以上の層を形成するために調整することもできる。追加の層の例は、ウエッティング層またはシード層であり得る。また、本方法は、チョッパー・オフ時間及び/又はコイルタップの位置によりトレンチ及び/又はビアにおけるボトム及び/又はサイドウォールのカバレッジを最適化するために使用できる。他の例では、本方法は、チョッパー・オフ時間及び/又はコイルタップの位置を調整することにより基板に対するイオン束を最適化するのに使用することができる。また、堆積速度(deposition rate)は、第2のパルスのオフ時間(即ち、チョッパー・オフ時間)の調整及び/又はインダクター・コイルに沿った第2のスイッチの位置の調整により最適化することができる。従って、多くの応用に望ましい比較的高い複数の異なる堆積速度が得られる。スイッチS2との接続点が調整可能なコイルのように、より多くの切り替え可能なタブを有するコイルを使用すること、またはコイルLを変更することは、装置にとって最適なレベルを見つけ出すのに役立つ。このような効果は、基板に対するイオン束のほか、イオンエネルギーを最適化するのに使用することができる。半導体ウェハにおけるビア及びトレンチ或いは基板上の他の構造のボトムおよびサイドウォールのカバレッジも同様に最適化することができる。さらに、パルシング(pulsing)と共にRF発生器を使用する本方法は、第2のパルス(即ちチョッパー・オフ時間)の調整、及び/又は、インダクター・コイルに沿った第2のスイッチの調整のようなコイルタップの位置の調整により、コーティングの、膜応力(film stress)、微細構造(microstructure)、力学的特性(mechanical property)、電気的特性、光学的特性、および他の特性を最適化するために使用することができる。
【0053】
DCマグネトロン・スパッタリングと比較した場合のHIPIMS応用における低い比速度(a low specific rate)という前述の欠点は、本発明のパルスシング方法により一部埋め合わせることができる。チョッパー・オン時間の区間が、ターゲット・シース及びプレシースを横切るイオンの飛翔時間(概ね0.2μs乃至5μsの範囲)に匹敵すれば、イオン化されスパッタ(spatter)された粒子のほとんどがターゲットに引き戻されないように抑制することが可能である。この粒子は、イオンがターゲットに到達する前に、逆方向の電界と加速度を生じるチョッパー・オフ時間によりターゲットに引き戻されることが抑制される。
【0054】
第3の例では、本発明の方法および装置は、図13に示されるように、アーク検出構成と組み合わされる。電気的バイアス装置10は、基板14を保持するチャック12に接続されるようにして、基板14に動作可能に接続される。その基本的な概念は、アークが発生し又は発生し始めているときにアークが検出された後にマグネトロンのカソードの近傍の位置でのアークの発生を防止(prevent)または抑制(inhibit)することである。図13の例は、少なくとも一つの検出器を備えている。この検出器は、電圧計(V)または電流系(A)のような計測器(meter)を備えることができる。他の例では、検出器は、アンペア(amps)、ボルト(volts)、またはアークが発生していることを検出するための複数の指標(indicators)をモニタすることができるデバイスであり得る。図13の例では、二つの検出器、即ち電圧計(V)および電流計(A)がマグネトロンの近傍に配置されている。電圧計(V)と電流計(A)は、アークが発生していること又は発生し始めていることを検出するように構成される。当然ながら、他の例では、一つの検出器のみを備えもよく、他の例では、マグネトロンの近くの位置を含む種々の位置に更なる検出器を備えてもよい。一つの検出器を備える場合、それは、アークが発生していることを検出するように構成された電圧計または電流計の何れかであり得る。図13の例は、また、カソード及びアノードを具備するマグネトロンと、上記マグネトロンの近傍に配置され、基板上にコーティングを形成するために原子をスパッタするために使用されるターゲットと、上記マグネトロンに動作可能に接続された電源と、上記電源に動作可能に接続された少なくとも一つのキャパシタCと、上記マグネトロンを充電させるために動作可能に接続され、第1のパルスにより上記マグネトロンを充電させるように構成された第1のスイッチS1とを備えることができる。上記電源はDC電源であり得る。
【0055】
第2のスイッチS2は、図13の例では、マグネトロンのカソードの近傍に配置される。第2のスイッチS2は、マグネトロンに動作可能に接続され、少なくとも一つの検出器によりアークの発生が検出されると、マグネトロンを放電させ、アークの発生を抑制するように構成される。第2のスイッチS2は、通常は開放しており、パルスシング動作(pulsing operation)を可能にする。アークが検出された場合、第2のスイッチS2はオンに切り替わり、マグネトロンのカソードとアノードとの間に実効的なショートカット(shortcut)を形成する。第2のスイッチS2がショートカットを形成すると同時に、第1のスイッチS1がオフに切り替わる。或いは、第2のスイッチS2がターンオンされてエネルギーのためのショートカットを形成したときに、第1のスイッチS1は、第2のスイッチS2が活性化される前または後の短い期間でターンオンすることができる。従って、第1のスイッチS1は、また、少なくとも一つの検出器によるアーク発生の検出に応答して制御されることができる。スイッチS1は、上記アークの発生を抑制または制限するように制御されることができる。第2のスイッチに加えて第1のスイッチを制御することは、装置におけるエネルギーの追加の制御を提供する。また、コイルLのようなインダクタンスは、図13の例のアーク検出例と共に使用することもでき、ここで、上記コイルは、上記少なくとも一つのキャパシタCと動作可能に接続され、このコイルは、アークが発生したときにピーク電流を制限すると共に、マグネトロンの放電電流の立ち上がり時間を制限するように構成される。
【0056】
第4の例では、本発明の方法および装置は、図14に示されるように、比較的速いアーク抑制構成と共に、高周波HIPIMSにおける比較的速いスイッチング電源と組み合わせることができる。この例はコイルL2を使用し、それは、図13に示されるスキームに加えて、チョッパー効果を生じさせるためにコイルLに沿った点に接続されたスイッチS2を備えることができる。この例では、スイッチS2は、第2のパルスを供給するように構成され、また、装置における少なくとも一つの検出器によりアークの発生が検出されると、活性化されてアークの発生を抑制するように構成される。図14において、電源は、キャパシタCのバンクを開始電圧にまで充電し、それは或るインダクタンスLcabおよび抵抗Rcabを有するケーブルを通じてマグネトロンへ放電される。電源はDC電源であることができる。コイルL2は、従来技術と同様のHIPIMS動作期間での機能を有し、即ち、マグネトロン放電電流の立ち上がり時間を制限する。また、図14のコイルL2は、アークが発生したときにピーク電流を制限する。図14の例は、また、カソード及びアノードを具備するマグネトロンと、マグネトロン近傍に配置されたターゲットを備え、このターゲットは、基板上にコーティングを形成するために原子をスパッタリングするために使用される。図14は、図示されるように、電流と電圧を測定するアーク検出装置を備えるが、他の例では、アークを測定するのに一つの検出器のみが必要である。好ましくは遅延時間を最小化するために、カソードで直接的にアークが検出された後、スイッチS2はオンに切り替わり、そしてスイッチS2が接続されたコイルL2に沿った点とマグネトロンのアノードとの間に実効的なショートカットを形成する。アーク発生の検出は、第2のスイッチS2を活性化して、アークの発生を抑制する。従って、この検出は、アークの発生、またはアークが発生し始めていることの検出に装置を反応させることにより、アークの有害な影響を低減する。このことは、マグネトロンのカソード上での電圧がゼロである更に短い時間をもたらし、その後、コイルL2の単巻トランス効果(auto transforming effect)による正の電圧が続く。上記ショートカットは、比較的速くアークを消滅させるのに役立つ。
【0057】
また、図14の例は、図9について述べたパルシング方法を提供するように構成され、ここで、第1のスイッチS1は、第1のパルスによりマグネトロンを充電させ、第2のスイッチS2は、第2のパルスによりマグネトロンを放電させる。図9で使用された3つのモード例のいずれも、図14の2つのスイッチと共に使用することができる。さらにまた、この例は、基板14とチャック12についてRF発生器10を備える。
【0058】
本発明は、上述の実施形態を参照して説明された。当業者であれば、この明細書の解釈および理解に基づいて修正および変更が可能であろう。本発明の1又は2以上の態様を含む実施形態は、添付の請求項の範囲内から得られる限度において、このような全ての修正および変更を含む。
【符号の説明】
【0059】
C;キャパシタ
S1,S2;スイッチ
L,L2;コイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として、基板上にコーティングを形成するためにターゲットのスパッタリングを発生させるための装置であって、
前記マグネトロンに動作可能に接続された電源と、
前記電源に動作可能に接続された少なくとも一つのキャパシタと、
前記マグネトロンを充電させるために前記マグネトロンに前記電源を動作可能に接続し、前記マグネトロンに第1のパルスを供給するように構成された第1のスイッチと、
前記基板に動作可能に接続され、基板バイアスを印加するように構成された電気的バイアス装置と
を備えた装置。
【請求項2】
前記電気的バイアス装置に動作可能に接続されたチャックを更に備え、前記基板が前記チャック上に配置された請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記マグネトロンと前記チャックとの間の距離が20mm乃至100mmの間である請求項1又は2の何れか1項記載の装置。
【請求項4】
前記電気的バイアス装置と前記チャックとの間に配置されたマッチングユニットを更に備え、前記マッチングユニットは、前記基板及び/又は前記チャックでのプラズマのインピーダンスと前記基板のインピーダンスとをマッチングさせるように構成された請求項1乃至3の何れか1項記載の装置。
【請求項5】
前記チャックに動作可能に接続されたRFセルフバイアスモニタ装置を更に備え、前記RFセルフバイアスモニタ装置は、前記電気的バイアス装置のセルフバイアスをモニタするように構成され、前記電気的バイアス装置はRF発生器である請求項1乃至4の何れか1項記載の装置。
【請求項6】
前記電気的バイアス装置は、前記ターゲット及び前記基板を収容するチャンバーへの20sccmを下回るアルゴンガス流速で、50Wを上回るロードを印加する請求項1乃至5の何れか1項記載の装置。
【請求項7】
前記電気的バイアス装置は、前記ターゲット及び前記基板を収容するチャンバーへの2×10−4乃至5×10−3の範囲でのガス圧力で、50Wを上回るロードを印加する請求項1乃至6の何れか1項記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つのキャパシタに動作可能に接続されたコイルと、
前記マグネトロンを放電させるために動作可能に接続され、第2のパルスにより前記マグネトロンを放電させるように構成された第2のスイッチと
を更に備えた請求項1乃至7の何れか1項記載の装置。
【請求項9】
前記マグネトロンに動作可能に接続され、発生しているアークを検出するように構成された少なくとも一つの検出器と、
前記マグネトロンを放電させるために動作可能に接続され、前記少なくとも一つの検出器によりアークの発生が検出されると前記マグネトロンを放電させると共に前記アークの発生を抑制するように構成された第2のスイッチと
を更に備えた請求項1乃至8の何れか1項記載の装置。
【請求項10】
前記第1のスイッチは、前記少なくとも一つの検出器による前記アークの検出に応答して制御される請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも一つのキャパシタに動作可能に接続されたコイルを更に備え、
前記第2のスイッチは、前記コイルに沿った点に動作可能に接続され、前記第2のスイッチは、第2のパルスを供給するように構成された請求項9又は10の何れか1項記載の装置。
【請求項12】
マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として、基板上にコーティングを形成するためにターゲットのスパッタリングを発生させるための装置であって、
前記マグネトロンに動作可能に接続された電源と、
前記電源に動作可能に接続された少なくとも一つのキャパシタと、
前記マグネトロンを充電させるために前記マグネトロンに前記電源を動作可能に接続し、前記マグネトロンに第1のパルスを供給するように構成された第1のスイッチと、
前記基板に動作可能に接続され、基板バイアスを印加するように構成された電気的バイアス装置と、
前記電気的バイアス装置に動作可能に接続され、前記基板が配置されたチャックと、
前記少なくとも一つのキャパシタに動作可能に接続されたコイルと、
前記マグネトロンを放電させるために動作可能に接続され、前記コイルに沿った点に接続され、第2のパルスにより前記マグネトロンを放電させるように構成された第2のスイッチと、
前記マグネトロンに動作可能に接続され、発生しているアークを検出するように構成された少なくとも一つの検出器とを備え、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチは、前記少なくとも一つの検出器による前記アークの検出に応答して制御されて前記アークの発生を抑制する装置。
【請求項13】
マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として、基板上にコーティングを形成するためにターゲットのスパッタリングを発生させるための装置であって、
前記マグネトロンを充電させるために前記マグネトロンに動作可能に接続され、前記マグネトロンに第1のパルスを供給するように構成された電源と、
前記基板に動作可能に接続され、バイアスパルスにより前記マグネトロンを放電させるように構成されたRF電気的バイアス装置と、
前記電源と前記RF電気的バイアス装置に動作可能に接続され、前記第1のパルスの周波数と遅延時間を前記バイアスパルスに同期させるように構成された同期化装置と
を備えた装置。
【請求項14】
前記電源は、前記第1のパルスのデューティ・サイクルを0.01%と20%の間とすると共に周波数を1Hz乃至20kHzの範囲として、前記第1のパルスを前記マグネトロンに供給するように構成された請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記電源は、前記第1のパルスのデューティ・サイクルを2%と50%の間として、前記第1のパルスを前記マグネトロンに供給するように構成された請求項13又は14の何れか1項記載の装置。
【請求項16】
前記同期化装置は、遅延時間を0.1μs乃至500μsとして、前記第1のパルスの前に前記バイアスパルスを供給するように構成された請求項13乃至15の何れか1項記載の装置。
【請求項17】
マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として、基板上にコーティングを形成するためパルスが印加されるスパッタリングを発生させるための装置において基板バイアスを印加する方法であって、
電源から前記マグネトロンを充電させるために第1のスイッチに第1のパルスを印加するステップと、
前記基板に動作可能に接続された電気的バイアス装置から前記基板バイアスを印加するステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記マグネトロンの放電のためのプレ・イオン化として前記第1のパルスの期間で前記電気的バイアス装置を使用するステップを更に含む請求項17記載の方法。
【請求項19】
堆積に先だって、前記基板をエッチング及び事前洗浄するために前記電気的バイアス装置を使用するステップを更に含む請求項17又は18の何れか1項記載の方法。
【請求項20】
前記基板に衝突するイオンのエネルギーを調整して前記基板に所望のコーティングを提供するために、前記基板バイアスの電圧を調整するステップを更に含む請求項17乃至19の何れか1項記載の方法。
【請求項21】
前記マグネトロンを放電させるために第2のスイッチに第2のパルスを印加するステップを更に含む請求項17乃至20の何れか1項記載の方法。
【請求項22】
前記第1のパルスは、少なくとも一つのキャパシタが充電される期間であって、前記第1のスイッチについての比較的長いオフ時間を含み、
前記第2のパルスが前記第2のスイッチを活性化する前にコイルにエネルギーを蓄えるために前記第1のスイッチが活性化されるときに比較的短い時間が経過し、前記第2のスイッチの活性化は、前記マグネトロンの放電を引き起こす請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記第1のパルス及び前記第2のパルスは、第1のモードと第2のモードの間で周期的に変化し、
前記第1のモードは、キャパシタが充電される期間であって前記第1のスイッチについての比較的長いオフ時間を有する第1のパルスを含み、前記第2のパルスが前記第2のスイッチを活性化する前にコイルにエネルギーを蓄えるために第1のスイッチが活性化されるときに比較的短い時間が経過し、前記第2のスイッチの活性化は、前記マグネトロンの放電を引き起こし、
前記第2のモードは、前記マグネトロンに電圧を供給するために比較的長いパルスを含む第1のパルスを含み、前記第2のパルスは1組の短いパルスである請求項21又は22の何れか1項記載の方法。
【請求項24】
前記第1のパルスは、前記装置に電圧を供給するための比較的長いパルスであり、前記第2のパルスは、1組の短いパルスである請求項21乃至23の何れか1項記載の方法。
【請求項25】
少なくとも一つの検出器を用いてアークが発生していることを検出するステップと、前記アークの検出に応答して前記マグネトロンを放電させて前記アークの発生を抑制するために前記第2のスイッチを活性化するステップとを更に含む請求項21乃至24の何れか1項記載の方法。
【請求項26】
請求項17乃至25の何れか1項記載の方法を含む、コーティングされた基板を製造するための方法。
【請求項1】
マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として、基板上にコーティングを形成するためにターゲットのスパッタリングを発生させるための装置であって、
前記マグネトロンに動作可能に接続された電源と、
前記電源に動作可能に接続された少なくとも一つのキャパシタと、
前記マグネトロンを充電させるために前記マグネトロンに前記電源を動作可能に接続し、前記マグネトロンに第1のパルスを供給するように構成された第1のスイッチと、
前記基板に動作可能に接続され、基板バイアスを印加するように構成された電気的バイアス装置と
を備えた装置。
【請求項2】
前記電気的バイアス装置に動作可能に接続されたチャックを更に備え、前記基板が前記チャック上に配置された請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記マグネトロンと前記チャックとの間の距離が20mm乃至100mmの間である請求項1又は2の何れか1項記載の装置。
【請求項4】
前記電気的バイアス装置と前記チャックとの間に配置されたマッチングユニットを更に備え、前記マッチングユニットは、前記基板及び/又は前記チャックでのプラズマのインピーダンスと前記基板のインピーダンスとをマッチングさせるように構成された請求項1乃至3の何れか1項記載の装置。
【請求項5】
前記チャックに動作可能に接続されたRFセルフバイアスモニタ装置を更に備え、前記RFセルフバイアスモニタ装置は、前記電気的バイアス装置のセルフバイアスをモニタするように構成され、前記電気的バイアス装置はRF発生器である請求項1乃至4の何れか1項記載の装置。
【請求項6】
前記電気的バイアス装置は、前記ターゲット及び前記基板を収容するチャンバーへの20sccmを下回るアルゴンガス流速で、50Wを上回るロードを印加する請求項1乃至5の何れか1項記載の装置。
【請求項7】
前記電気的バイアス装置は、前記ターゲット及び前記基板を収容するチャンバーへの2×10−4乃至5×10−3の範囲でのガス圧力で、50Wを上回るロードを印加する請求項1乃至6の何れか1項記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つのキャパシタに動作可能に接続されたコイルと、
前記マグネトロンを放電させるために動作可能に接続され、第2のパルスにより前記マグネトロンを放電させるように構成された第2のスイッチと
を更に備えた請求項1乃至7の何れか1項記載の装置。
【請求項9】
前記マグネトロンに動作可能に接続され、発生しているアークを検出するように構成された少なくとも一つの検出器と、
前記マグネトロンを放電させるために動作可能に接続され、前記少なくとも一つの検出器によりアークの発生が検出されると前記マグネトロンを放電させると共に前記アークの発生を抑制するように構成された第2のスイッチと
を更に備えた請求項1乃至8の何れか1項記載の装置。
【請求項10】
前記第1のスイッチは、前記少なくとも一つの検出器による前記アークの検出に応答して制御される請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも一つのキャパシタに動作可能に接続されたコイルを更に備え、
前記第2のスイッチは、前記コイルに沿った点に動作可能に接続され、前記第2のスイッチは、第2のパルスを供給するように構成された請求項9又は10の何れか1項記載の装置。
【請求項12】
マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として、基板上にコーティングを形成するためにターゲットのスパッタリングを発生させるための装置であって、
前記マグネトロンに動作可能に接続された電源と、
前記電源に動作可能に接続された少なくとも一つのキャパシタと、
前記マグネトロンを充電させるために前記マグネトロンに前記電源を動作可能に接続し、前記マグネトロンに第1のパルスを供給するように構成された第1のスイッチと、
前記基板に動作可能に接続され、基板バイアスを印加するように構成された電気的バイアス装置と、
前記電気的バイアス装置に動作可能に接続され、前記基板が配置されたチャックと、
前記少なくとも一つのキャパシタに動作可能に接続されたコイルと、
前記マグネトロンを放電させるために動作可能に接続され、前記コイルに沿った点に接続され、第2のパルスにより前記マグネトロンを放電させるように構成された第2のスイッチと、
前記マグネトロンに動作可能に接続され、発生しているアークを検出するように構成された少なくとも一つの検出器とを備え、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチは、前記少なくとも一つの検出器による前記アークの検出に応答して制御されて前記アークの発生を抑制する装置。
【請求項13】
マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として、基板上にコーティングを形成するためにターゲットのスパッタリングを発生させるための装置であって、
前記マグネトロンを充電させるために前記マグネトロンに動作可能に接続され、前記マグネトロンに第1のパルスを供給するように構成された電源と、
前記基板に動作可能に接続され、バイアスパルスにより前記マグネトロンを放電させるように構成されたRF電気的バイアス装置と、
前記電源と前記RF電気的バイアス装置に動作可能に接続され、前記第1のパルスの周波数と遅延時間を前記バイアスパルスに同期させるように構成された同期化装置と
を備えた装置。
【請求項14】
前記電源は、前記第1のパルスのデューティ・サイクルを0.01%と20%の間とすると共に周波数を1Hz乃至20kHzの範囲として、前記第1のパルスを前記マグネトロンに供給するように構成された請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記電源は、前記第1のパルスのデューティ・サイクルを2%と50%の間として、前記第1のパルスを前記マグネトロンに供給するように構成された請求項13又は14の何れか1項記載の装置。
【請求項16】
前記同期化装置は、遅延時間を0.1μs乃至500μsとして、前記第1のパルスの前に前記バイアスパルスを供給するように構成された請求項13乃至15の何れか1項記載の装置。
【請求項17】
マグネトロンのカソード上での電流密度を0.1と10A/cm2の間として、基板上にコーティングを形成するためパルスが印加されるスパッタリングを発生させるための装置において基板バイアスを印加する方法であって、
電源から前記マグネトロンを充電させるために第1のスイッチに第1のパルスを印加するステップと、
前記基板に動作可能に接続された電気的バイアス装置から前記基板バイアスを印加するステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記マグネトロンの放電のためのプレ・イオン化として前記第1のパルスの期間で前記電気的バイアス装置を使用するステップを更に含む請求項17記載の方法。
【請求項19】
堆積に先だって、前記基板をエッチング及び事前洗浄するために前記電気的バイアス装置を使用するステップを更に含む請求項17又は18の何れか1項記載の方法。
【請求項20】
前記基板に衝突するイオンのエネルギーを調整して前記基板に所望のコーティングを提供するために、前記基板バイアスの電圧を調整するステップを更に含む請求項17乃至19の何れか1項記載の方法。
【請求項21】
前記マグネトロンを放電させるために第2のスイッチに第2のパルスを印加するステップを更に含む請求項17乃至20の何れか1項記載の方法。
【請求項22】
前記第1のパルスは、少なくとも一つのキャパシタが充電される期間であって、前記第1のスイッチについての比較的長いオフ時間を含み、
前記第2のパルスが前記第2のスイッチを活性化する前にコイルにエネルギーを蓄えるために前記第1のスイッチが活性化されるときに比較的短い時間が経過し、前記第2のスイッチの活性化は、前記マグネトロンの放電を引き起こす請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記第1のパルス及び前記第2のパルスは、第1のモードと第2のモードの間で周期的に変化し、
前記第1のモードは、キャパシタが充電される期間であって前記第1のスイッチについての比較的長いオフ時間を有する第1のパルスを含み、前記第2のパルスが前記第2のスイッチを活性化する前にコイルにエネルギーを蓄えるために第1のスイッチが活性化されるときに比較的短い時間が経過し、前記第2のスイッチの活性化は、前記マグネトロンの放電を引き起こし、
前記第2のモードは、前記マグネトロンに電圧を供給するために比較的長いパルスを含む第1のパルスを含み、前記第2のパルスは1組の短いパルスである請求項21又は22の何れか1項記載の方法。
【請求項24】
前記第1のパルスは、前記装置に電圧を供給するための比較的長いパルスであり、前記第2のパルスは、1組の短いパルスである請求項21乃至23の何れか1項記載の方法。
【請求項25】
少なくとも一つの検出器を用いてアークが発生していることを検出するステップと、前記アークの検出に応答して前記マグネトロンを放電させて前記アークの発生を抑制するために前記第2のスイッチを活性化するステップとを更に含む請求項21乃至24の何れか1項記載の方法。
【請求項26】
請求項17乃至25の何れか1項記載の方法を含む、コーティングされた基板を製造するための方法。
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1】
【図3】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1】
【図3】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−512458(P2010−512458A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540761(P2009−540761)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063778
【国際公開番号】WO2008/071732
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(507288730)オーツェー・エリコン・バルザース・アーゲー (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063778
【国際公開番号】WO2008/071732
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(507288730)オーツェー・エリコン・バルザース・アーゲー (9)
【Fターム(参考)】
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