高出力カスケード型ラマン・ファイバ・レーザでの逆方向発振を抑制するためのシステムおよび技術
光増幅システムおよび技術では、励起光源は、励起パワーを光源波長で提供する。励起パワーは、カスケード型ラマン共振器への入力として送り出される。波長依存損失要素は、それがカスケード型ラマン共振器に先行するように接続される。波長依存損失要素は、光源波長での光パワーを低損失で伝送し、第1のストークス・シフトで高損失を提供するように構成される。波長依存損失要素は、励起光源とカスケード型ラマン共振器との間での光パワーの蓄積を防止し、それによって励起光源に戻る光パワーの後方伝播を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本出願の譲受人によって所有され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2009年5月11日に出願された米国仮特許出願第61/177,058号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は一般に、光ファイバ・デバイスおよび方法に関し、詳細には、高出力カスケード型ラマン・ファイバ・レーザでの逆方向発振(backward lasing)を抑制するための改善されたシステムおよび技術に関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバでの誘導ラマン散乱は、希土類添加ファイバが動作しない波長領域で非線形利得を提供するために使用できる有用な効果である。クラッド励起Yb添加ファイバは、915nmまたは975nmでの高出力マルチモード・ダイオードを1.0から1.2マイクロメートルの領域の単一モード放射に変換するための輝度変換器としての機能を果たすことができる。これは次いで、多重ストークス・シフトを使用することによって、カスケード型ラマン共振器を励起してYbレーザ出力の波長を広範囲にわたってシフトさせるために使用できる。このようにして、高出力単一モード放射を、例えば1480nmで生成することができ、次いでそれを使用し、高出力エルビウム添加ファイバ増幅器を基本モードで励起することができる。この技術は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、J.C.Jasapara、M.J.Andrejco、A.D.Yablon、J.W.Nicholson、C.Headley、およびD.DiGiovanni、「Picosecond Pulse Amplification in a Core−Pumped Large−Mode−Area Erbium Fiber」、Opt.Lett.32、2429〜2431頁(2007年)で述べられている。
【0004】
図1は、Yb添加ファイバ・レーザがカスケード型ラマン共振器を励起するために使用される、例となる40W1480nmシステム20の図を示す。複数のマルチモード915または975nmダイオード・レーザは、テーパー状ファイバ束(TFB)を通じて混ぜ合わされ、二重クラッドYb添加ファイバに送り出される。二重クラッドYb添加ファイバは、信号光を単一モード・コアでおよび励起光を内部クラッドで案内する。ファイバ・ブラッグ回折格子は、Ybファイバ・レーザ共振器内で高反射体(HR)および出力カプラ(OC)を形成する。
【0005】
Ybファイバ・レーザの出力は、ラマン・ファイバ共振器に送り出される。ラマン・ファイバは、正常分散を持つ小有効面積ファイバを備える。正常分散は、高出力でスーパーコンティニューム(supercontinuum)発生につながることになる変調不安定性を防止する。小有効面積は、高ラマン利得につながり、その結果複数のより高次のストークス・シフトを、複数の共振器がラマン・ストークス・シフトだけ波長で分離された複数のファイバ・ブラッグ回折格子で構成されているカスケード型ラマン共振器(CRR)で生成することができる。最終的な所望のストークス・シフトでの出力カプラは、放射をファイバから外へ結合し、追加の励起反射体は、効率向上のために未使用のYb放射を再循環させる。図1で与えられる波長は、例示のためだけのものであり、使用される正確な波長は、最終的な所望の波長に依存することになることに留意されたい。
【0006】
図1の概略図でのさまざまな波長および位置での複数の反射体は、組み合わされて結合空胴を作り出す。例えば、ラマン入力回折格子(RIG)セットは、1117nmの第1のストークス・シフトである1175nmでの高反射体を有することに留意されたい。この反射体は、ラマン・ファイバの内部で1175nm放射の循環を提供することが意図されているが、1175nm放射は、1117nm放射からのYbイオン利得およびラマン利得の両方の帯域幅内にあるので、1117nmパワーが十分高くなる場合、それはまた、二重クラッドYb添加ファイバで1175nmでのレーザ発振を引き起こす可能性もある。この逆方向発振1175nmはその結果、Yb添加ファイバ・レーザを不安定にする可能性がある。最終的に、それは、構成要素の故障につながる可能性があるレーザの脈動を引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.C.Jasapara、M.J.Andrejco、A.D.Yablon、J.W.Nicholson、C.Headley、およびD.DiGiovanni、「Picosecond Pulse Amplification in a Core−Pumped Large−Mode−Area Erbium Fiber」、Opt.Lett.32、2429〜2431頁(2007年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来技術のこれらのおよび他の問題は、本発明によって対処され、その一態様は、逆方向発振が抑制される光増幅システムおよび技術を提供する。
【0009】
本発明の一実施によると、励起光源(pump source)は、励起パワーを光源波長で提供する。励起パワーは、カスケード型ラマン共振器への入力として送り出される。波長依存損失要素は、カスケード型ラマン共振器に先行するように接続される。波長依存損失要素は、光源波長での光パワーを低損失で伝送し、第1のストークス・シフトで高損失を提供するように構成される。波長依存損失要素は、励起光源とカスケード型ラマン共振器との間での光パワーの蓄積を防止し、それによって励起光源に戻る光パワーの後方伝播を防止する。
【0010】
本発明のさらなる態様は、より大きなモード・フィールド直径を持つ増幅器ファイバ、およびより広い帯域幅を持つ波長依存損失要素の使用を通じてより高いパワーへのスケーリングのためのシステムおよび技術を対象にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来技術によるカスケード型ラマン共振器の図である。
【図2】本発明の第1の態様によるシステムの一般的な図である。
【図3】図2で示されるシステムの全体構造を組み込む例となるシステムの図である。
【図4】図3で示されるシステムでのカスケード型ラマン共振器のより詳細な図である。
【図5A】図3および4で示されるMOPA構成に基づく試験セットアップを示す図である。
【図5B】図3および4で示されるMOPA構成に基づく試験セットアップを示す図である。
【図6A】図5A〜5Bで示される試験セットアップを使用して取得される測定結果の一連のグラフである。
【図6B】図5A〜5Bで示される試験セットアップを使用して取得される測定結果の一連のグラフである。
【図6C】図5A〜5Bで示される試験セットアップを使用して取得される測定結果の一連のグラフである。
【図6D】図5A〜5Bで示される試験セットアップを使用して取得される測定結果の一連のグラフである。
【図7】図5A〜5Bで示される試験セットアップで使用される長周期回折格子の測定された挿入損失を例示するグラフである。
【図8A】より高いパワーでの後方ストークス・レーザ発振および脈動を試験するための試験セットアップを示す図である。
【図8B】より高いパワーでの後方ストークス・レーザ発振および脈動を試験するための試験セットアップを示す図である。
【図9A】図8A〜8Bで示される試験セットアップについて1480nm出力パワーの関数として後方伝播パワーを例示するグラフである。
【図9B】図8A〜8Bで示される試験セットアップについて異なる出力パワーに対する発振器時間トレースを示すグラフである。
【図9C】図8A〜8Bで示される試験セットアップのクラッド励起ファイバ・レーザおよびカスケード型ラマン共振器の出力パワーを示す図である。
【図9D】図8A〜8Bで示される試験セットアップのクラッド励起ファイバ・レーザおよびカスケード型ラマン共振器の出力パワーを示す図である。
【図10】LPG挿入損失を78Wの最大ラマン出力パワーでの後方伝播ストークス波長のスペクトルと比較するグラフである。
【図11】本発明のさまざまな述べられる態様による一般的技術の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の態様は、高出力カスケード型ラマン・ファイバ・レーザでの逆方向発振を抑制するためのシステムおよび技術を提供する。本明細書で述べるように、逆方向発振の抑制は、逆方向発振の始まりを示す兆候を識別することによって行われる。これらの兆候の識別は、非常に強力な技術である。逆方向発振によって引き起こされる時間的な擾乱は、脈動につながる可能性があり、脈動は、より高いパワーで構成要素を破壊する可能性がある。
【0013】
本発明のさらなる態様は、波長依存損失要素が、第1のストークス・シフトでの放射の蓄積を妨げることによって逆方向発振をカスケード型ラマン共振器から排除するために使用される、ラマン・レーザ発振システムを提供する。上で論じられた図1のシステムなどの従来技術によるシステムが、より高いパワーで動作するときは、この放射蓄積および逆方向発振は、例えば外部デバイスが接続されるとき励起レーザ高反射体(HR)の破損を結果的にもたらすこともある。本発明の態様によると、Ybシステムとラマン・レーザとの間に接続される適切なファイバに基づく損失要素は、システム信頼性を大幅に改善するために使用される。
【0014】
本発明のさらなる態様によると、大きなモード・フィールド直径(MFD)のファイバは、ラマン閾値を増加させるためにラマン・レーザ発振システムで使用される。大きなMFDのファイバは、潜在的帰還源を低減するために波長選択フィルタリングと組み合わされる。
【0015】
逆方向発振に関する上述の問題は、他の方法で対処されてもよいことに留意されたい。1つの代替手法では、ディプレスト・クラッド(depressed−clad)W形屈折率プロファイルは、第1のストークス・シフトで高損失および増幅器出力で低損失を生じさせる基本モード・カットオフを達成するためにYb増幅器ファイバと併せて使用される。この手法は、本出願の譲受人によって所有され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2009年5月11日に出願された米国仮特許出願第61/177,058号で述べられている。
【0016】
図2は、本発明によるシステム100の一般的な図を示し、励起パワー121を波長選択損失要素140を通じてカスケード型ラマン共振器(CRR)160に送り出し、所望の波長でシステム出力180を生じさせるラマン励起光源120を含む。
【0017】
励起光源120は、図1で示されるものなどの単一発振器構成、および以下で論じられる主発振器パワー増幅器(MOPA)構成を含む、多数の異なる構造を使用して実装されてもよい。励起光源120は、指定波長で励起パワー121を提供し、本例では、1117nmである。
【0018】
励起パワー121は、CRR160への励起パワー入力として送り出される前に、損失要素140を通って進む。以下でより詳細に論じるように、波長選択損失要素140は、励起波長で低損失および第1のストークス・シフトで高損失を有する。
【0019】
CRR160は、1本のラマン活性ファイバ162、ラマン入力回折格子セットRIG1、およびラマン出力回折格子セットROG1を備え、それらは一緒に、レーザ空胴の入れ子状並び164を形成する。光は、入れ子状レーザ空胴164を通って伝播するとき、所望の波長を有するシステム出力180を生じさせるように一連のストークス・シフトを受ける。ラマン共振器は、WDMループ・ミラーを構築するための溶融ファイバWDMカプラまたは薄膜フィルタの使用などの、代替アーキテクチャおよび波長選択要素を使用して構築されてもよいことが当業者には周知である。CRRは、直線状空胴でまたは一方向性リング状空胴としてもしくは双方向性リング状空胴として構成されることがあり得ることもまた理解されよう。CRRは、レーザとして動作するように構成でき、または反射体の最終組を削除し、代わりに信号をCRRに最終波長で注入することによって、CRRは、増幅器として動作するように構成できることもまた理解されよう。本議論は、例示のためだけのものにブラッグ回折格子反射体を使用して構築される直線状共振器に焦点を合わせるが、CRR160から励起光源120への後方伝播光を抑制する基本的特徴は、不変である。
【0020】
波長選択損失要素140は、励起入力光については低損失を維持しながら、一次のストークス光については高損失を有するように構成されている波長選択損失要素140を使用して、第1のストークス・シフトでの放射の蓄積を妨げることによって第1のストークス・シフトでの逆方向発振を実質的に排除する。このようにして、ラマン入力回折格子セットRIG1は、ラマン・レーザに対しては高反射性を提供しながら、Yb添加レーザ・システムには見えなくなる。
【0021】
本例では、損失要素140は、長周期回折格子LPG1によって提供される。長周期回折格子は、光をある波長で導波モードからより高次のクラッド・モードに結合する波長依存デバイスであり、そこで光は、吸収および散乱に起因して失われる。
【0022】
この例では、LPG1は、光を励起波長、すなわち1117nmでほとんど、または、まったく損失なく伝送するように構成される。回折格子LPG1はさらに、第1のストークス・シフト、すなわち1175nmで高損失を提供するように構成される。
【0023】
1117nm励起パワー入力は、CRR160への入力として送り出されると、1つまたは複数のストークス・シフトを受け、その第1は、1175nmである。励起光源120とCRR160との間を伝播するすべての光は、損失要素140を通ることが図2からわかる。損失要素140は、第1のストークス・シフト、すなわち1175nmで高損失を提供するように構成されるので、1175nmでの放射蓄積の著しい低減が、したがって励起パワー源120への後方伝播放射の著しい低減があることになるのがわかる。
【0024】
長周期回折格子は、図2のシステムで例示されるが、傾斜ファイバ・ブラッグ回折格子、溶融ファイバ波長分割マルチプレクサ(WDM)、一本の基本モード・カットオフ・ファイバ、または同様のものなどの、他の波長依存デバイスがまた、使用されることもあり得る。そのようなデバイスはどれも、高出力を扱う能力がなければならない。原理上は光アイソレータは、この応用で同様に有効に働くことになるが、しかし実際には、現行技術では、CRRからの高出力出力に達するのに必要とされる高励起パワー(>100W)を扱うことができるファイバ結合光アイソレータは、存在しない。
【0025】
RIGでの反射体回折格子の波長に整合する中心波長を有する狭帯域幅LPGは、後方ストークス・レーザ発振の閾値を増加させるのに非常に有効に働くことが見いだされている。望ましくない帰還は、周知の特定波長応答、すなわちストークス・シフトを有するCRR160から来るので、波長依存損失要素140についての広帯域動作は、必要でない。
【0026】
図3は、図2で示されるシステム100の全体構造を組み込む例となるシステム200の図を示す。システム200は、励起パワー源220、波長感受性損失要素240、およびカスケード型ラマン共振器260を含む。システム200は、所望の波長で高出力出力280を提供し、この場合は、1480nmである。
【0027】
励起パワー源220は、増幅器構成要素が発振器レーザから光学的に分離される、主発振器パワー増幅器(MOPA)構成を使用して実装される。そのような構成は、本出願の譲受人によって所有され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2009年5月11日に出願された米国仮特許出願第61/177,058号で述べられている。
【0028】
システム200では、励起光源220は、主発振器221およびパワー増幅器230を備え、それらは、発振器221を増幅器230またはCRR260からの後方伝播放射から分離する、波長分割マルチプレクサまたは類似のデバイスなどの、適切なカプラ225によって一緒に光学的に接続される。この分離は、主発振器221が低パワーで動作し、増幅器230が高出力で動作することを可能にし、それによって主発振器221の構成要素を損傷から保護する。
【0029】
励起光源220からの励起パワーは次いで、波長依存損失要素240を通じてカスケード型ラマン共振器260に送り出される。CRR260は、ラマン入力回折格子セットRIG2、一本のラマン活性ファイバ262、およびラマン出力回折格子セットROG2によって形成されるラマン空胴の入れ子状並び264を備える。
【0030】
図4は、カスケード型ラマン共振器260のより詳細な図を示す。図3で示されるように、ラマン入力回折格子セットRIG2は、高反射体HR21〜HR25を備え、ROG2は、高反射体HR26〜HR30および出力カプラOC21を備える。RIG2での回折格子HR21〜HR25ならびにROG2での対応する回折格子HR27〜HR30およびOC21は、ストークス・シフトに対応する波長を持つレーザ空胴の入れ子状並びを作り出す波長整合回折格子対の入れ子状並びを形成し、励起パワー入力波長から所望の出力波長までの段階的推移を生成する。
【0031】
図5A〜5Bは、図3および4で示されるMOPA構成に基づく試験セットアップ300の図を示し、試験セットアップ300は、RIGを高出力Ybファイバ・レーザ・システムに追加する影響を測定するために使用された。試験セットアップ300は、主発振器320(図5A)およびパワー増幅器340(図5B)を備える。長周期回折格子LPG3は、増幅器340の出力に接続される。
【0032】
試験セットアップの性能を特徴づけるために、3組のパワー・メータおよび光学スペクトル分析器PM31/OSA31、PM32/OSA32、PM33/OSA33が、試験セットアップ300に接続される。第1の組PM31/OSA31は、システム出力に接続される。第2および第3の組PM32/OSA32およびPM33/OSA33は、1117/1480タップWDM330に接続されて、発振器320と増幅器340との間の前方および後方伝播をそれぞれ測定する。
【0033】
図5Aで示されるように、PM32/OSA32は、入射光の10%をOSA32に、90%をPM32に向けるカプラC32を使用してタップWDM330に接続され、PM33/OSA33は、入射光の1%をOSA33に、99%をPM33に向けるカプラC33を使用してタップWDM330に接続される。
【0034】
システム300へのRIG3の影響を分析するために、測定結果は、最初にRIG3がシステムに接続されない状態で取得された。さらなる測定結果は、RIG3がLPG3とPM31/OSA31との間に接続された状態で取得された。図6A〜6Dは、これらの測定結果の一連のグラフ410〜440である。
【0035】
図6Aは、増幅器電流(A)のレベルが増加するときに第3のパワー・メータPM33で取得されたパワー測定結果(mW)のグラフ410である。トレース411は、RIG3がシステムに接続されない状態で取得された測定結果を示し、トレース412は、RIG3がシステムに接続された状態で取得された測定結果を示す。
【0036】
図6Bは、増幅器電流(A)のレベルが増加するときに第1のパワー・メータPM31で取得されたパワー測定結果(mW)のグラフ420である。トレース421は、RIG3がシステムに接続されない状態で取得された測定結果を示し、トレース422は、RIG3がシステムに接続された状態で取得された測定結果を示す。
【0037】
図6Cおよび6Dは、RIG3がシステムに接続された状態で、第3および第2の光学スペクトル分析器OSA33およびOSA32にそれぞれ発生するスペクトルのグラフ430および440であり、パワー(dB)と波長(nm)との間の関係を示す。スペクトル431および441は、0Aの増幅器駆動電流で発生し、スペクトル432および442は、10Aで発生し、スペクトル433および443は、20Aで発生し、スペクトル434および444は、30Aで発生した。
【0038】
図6Aでのトレース411および6Bでのトレース421によって示されるように、RIG3が適当な位置にない状態では、Yb増幅器の出力パワーは、利用可能な励起電流によって制限されるだけである。非常にわずかの後方伝播パワーしか、観測できず、増幅器電流を上げても、発振器スペクトルに測定できるほどの影響を有さない(図示されず)。したがって、RIG3がない状態では、0Aから約45Aに及ぶ増幅器電流について一般に途切れない出力パワーの増加がある。
【0039】
しかしながら、RIG3がシステム出力に追加されるときは、状況は、実質的に変わる。図6Aでのトレース412によって示されるように、25〜30Aの励起電流では、後方伝播パワーがスパイク(spike)し、30Aで約300mWに達する。図6Bでのトレース422によって示されるように、増幅器電流が30Aに達するときは、出力パワーの実質的な減少がある。
【0040】
図6Cでのスペクトル431〜434から、図6Aで示されるパワーのスパイク(spike)は、1175nm後方伝播成分の大きな増加に対応することがわかる。第2のストークス次数へのカスケード・レーザ発振がまた、図6Dで示される前方伝播発振器スペクトル441〜444で観察されることもあり得る。観察される他の効果は、30℃より大きい増幅器テーパー状ファイバ束での大きな温度増加を含んでいた。
【0041】
これらの結果から、RIGは、Ybレーザからの1117nm光を直接反射しないが、1175nmの第1のストークス・シフトでの光の逆方向発振は、高励起パワーで生じる可能性があると結論できる。この後方伝播1175光は本質的に、Yb発振器の安定動作をなお維持しながら増幅器から達成可能な出力パワーの量を制限する。
【0042】
したがって、図2および3に関して上で述べたように、この制限を克服するために、波長依存損失要素、例えば図2でのフィルタ140および図3でのフィルタ240は、カスケード型ラマン共振器260に先行するようにシステムに接続される。本発明の態様によると、波長依存損失要素は、励起光源とカスケード型ラマン共振器との間に個別要素を備える。本発明のさらなる態様によると、波長依存損失要素は、他の種類の構造を備える。例えば、本発明の一実施では、波長依存損失要素は、第1のストークス・シフトで高損失のフィルタ・ファイバを備える。
【0043】
図2および3では、長周期回折格子(LPG)が、示されるが、傾斜ファイバ・ブラッグ回折格子、溶融ファイバWDM、適切に添加された減衰ファイバ、または同様のものなどの、他の波長依存フィルタがまた、使用されてもよい。理論上は、光アイソレータがまた、使用されることもあり得る。しかしながら、現在の市販アイソレータは、所要のパワー・レベルを扱うことができず、Ybレーザ波長で容認できない損失を導入することもある。
【0044】
上で述べたように、フィルタリングのための別の可能性は、長波長での基本モード・カットオフのために、Yb増幅器ファイバ232、または励起光源220をラマン共振器260に接続するファイバでディプレスト・クラッド屈折率プロファイルを使用することになる。例えば、Yb増幅器ファイバ232はその結果、1175nmで高損失および1117nmで低損失を有することになる。損失フィルタの重要な構成要素は、それが、RIGで使用される第1のストークス波長と同じ波長で高損失を有し、Ybレーザ波長で低損失を有することである。
【0045】
描写されるシステムでは、長周期回折格子(LPG)は、融着接続機の電気アークを使用して製造されたが、他の技術がまた、使用されてもよい。LPGは、位相整合によってファイバの2つの異なるモード間の結合を提供するように設計された。
【0046】
図7は、LPGの測定された挿入損失を例示するグラフ450である。トレース451によって示されるように、1175nmで約20dBおよび1117nmで0.1dB未満の損失があることがわかる。LPGが適当な位置にある状態では、増幅器がオフの状態で測定されるスペクトルと比較して、発振器スペクトルの変化が観察されない状態で、増幅器が、フル・パワーまで上げられてもよいことが観察された。その上、いったんLPGがシステムに挿入されると、後方伝播パワーのスパイクは、観察されなかった。この実験は、システム安定性を高めるためにRIGをYbファイバ・レーザ・システムから分離することの重要性を確かめる。
【0047】
本発明のさらなる態様は、さらにより高い出力パワーへのスケーリングのための追加のシステムおよび技術を対象にする。RIGでの反射体に整合する狭帯域幅LPGは、後方ストークス・レーザ発振の閾値を増加させるのに非常に有効に働くことが見いだされている。しかしながら、ラマン・レーザの出力パワーが、あるレベルを超えて増加すると、狭帯域幅LPGは、もはや十分でなく、後方ストークス・レーザ発振が再び、観察される。
【0048】
図8A〜8Bは、より高出力での後方ストークス・レーザ発振および脈動を試験するための試験セットアップ500を示す。セットアップ500は、励起パワーをカスケード型ラマン共振器560に提供するクラッド励起ファイバ・レーザ(CPFL)520および増幅器530を含む。波長選択損失要素540は、増幅器530とCRR560との間に接続される。
【0049】
測定結果は、(1)CRR560の出力に接続される光学スペクトル分析器OSA51およびパワー・メータPM51、(2)前方伝播放射を測定するためにタップWDM525に結合される光学スペクトル分析器OSA52ならびに高速フォトダイオードおよびオシロスコープ531、(3)後方伝播放射を測定するためにタップWDM525に結合される光学スペクトル分析器OSA53およびパワー・メータPM52、ならびに(4)CPFL520の入力に接続されるパワー・メータPM53を使用して取得された。
【0050】
最初の組の測定結果については、発振器および増幅器の両方は、6μmモード・フィールド直径(MFD)を持つYb添加ファイバを使用して構築された。
【0051】
図9Aは、1480nm出力パワーの関数として後方伝播パワーを例示するグラフ610である。トレース611は、PM52での、すなわちタップWDM525を通る後方伝播パワーを示し、トレース612は、PM53での、すなわち主発振器520を通る後方伝播パワーを示し、トレース613は、全後方伝播パワーを示す。
【0052】
図9Bは、異なるCPFL出力パワーについて、高速フォトダイオードおよびオシロスコープ531で取得される発振器時間トレースを示すグラフ620である。時間トレース621は、44Wで取得され、時間トレース622は、55Wで取得され、時間トレース623は、58Wで取得された。
【0053】
図9Aおよび9Bで示されるように、約58Wの1480nm出力パワーで、後方ストークス・レーザ発振の2つの明確な兆候がわかる。第1に、図9Aで示されるように、後方伝播パワーは、急速に増加し始める。第2に、図9Bで示されるように、Yb発振器は、時間トレースで脈動挙動を示し始める。したがって、逆方向発振は、比較的高いパワーに至るまで抑制されるが、ある点で、狭帯域幅LPGは、もはや十分でない。
【0054】
したがって、本発明のさらなる態様は、より高いパワーへのスケーリングを可能にする設計変更を対象にする。1175nmでYbからのある量のイオン利得があるので、Ybレーザのモード・フィールド直径のスケーリングが、逆方向発振のための閾値を増加させることを可能にすることになるとは、すぐには明白ではない。実際には、しかしながら、Ybパワー増幅器では1175nmでのラマン利得およびイオン利得の組合せがある。従って、パワー増幅器は、11μmの増加したモード・フィールド直径(MFD)を持つYb添加二重クラッド・ファイバを使用して実装された。このMFDは、Yb添加ファイバについては比較的大きいが、それはなお、単一モード動作を支援する。したがって、逆方向発振閾値は、基本モード伝播を維持しながら最大にされる。
【0055】
図9Cおよび9Dは、クラッド励起ファイバ・レーザ(CPFL)およびカスケード型ラマン共振器(CRR)の出力パワーを示し、ここでMOPA励起光源は、11μmのMFDを持つ26mのYb増幅器ファイバを使用して構築された。1480nm出力パワーは、後方ストークス・レーザ発振が観察される前に、73Wまで増加された。この結果は、逆方向発振が観察される前に1480nmで58Wが達成された6μmMFD直径増幅器ファイバを使用するシステムと比べて勝るとも劣らない。図9Cおよび9Dでは、出力パワーの関数としての後方伝播パワーのプロットはまた、約70〜75W出力パワーで後方伝播パワーの急速な増加も示すことに留意されたい。このパワーでは、発振器時間トレース(図示されず)はまた、時間的な脈動の兆候も示した。
【0056】
さらにより高いパワーへのスケーリングは、後方ストークス・レーザ発振閾値のさらなる増加を必要とすることになる。大幅な改善は、より良好なLPGフィルタから得ることができる。ラマン空胴でのレーザ発振線は、非線形プロセスによって著しく広げられ、実際に中間ストークス次数からの出力放射は、FBG高反射体よりもはるかに広い。
【0057】
図10は、LPG挿入損失(トレース651)を78Wの最大ラマン出力パワーでの後方伝播ストークス波長のスペクトル(トレース652)と比較するグラフ650である。LPGの10dB帯域幅は、2nmだけであり、一方1175nmピークの10dB帯域幅は、10nmより大きい。実際には、後方伝播放射は、LPG損失ピークから離れて、1176nmでピークに達する。従って、狭いフィルタは、RIG1175nmHRからの反射を抑制するのには有効であるが、より広いフィルタは、HRの近くで漏れるラマン空胴からの放射を抑制するために必要とされる。
【0058】
図11は、本明細書で述べられる本発明のさまざまな態様による全体技術700の流れ図である。
ボックス701:励起光源を使用して励起パワーを光源波長で提供する。
ボックス702:励起パワーが入力として送り込まれるカスケード型ラマン共振器に励起パワーを送り出す。カスケード型ラマン共振器は、励起パワー入力に第1のストークス・シフトを生じさせ、その後に一連のより高次のストークス・シフトが続くラマン空胴の入れ子状並びを規定する入力および出力回折格子の組を備え、それによって光源波長から出力波長までの段階的推移を提供する。
ボックス703:励起光源とカスケード型ラマン共振器との間に波長依存損失要素を接続する。
ボックス704:光源波長での光パワーを低損失で伝送し、第1のストークス・シフトで高損失を提供するように波長依存損失要素を構成する。それによって波長依存損失要素は、励起光源とカスケード型ラマン共振器との間での光パワーの蓄積を防止し、それによって励起光源に戻る光パワーの後方伝播を防止する。
【0059】
ラマン利得帯域幅は、かなり大きく、反射体は、必ずしも利得のピークにではなく、利得帯域幅内のどこにでも位置決めできることに留意されたい。
【0060】
上述のシステムおよび技術は、直線状およびリング状ラマン共振器の両方、ラマン増幅器アーキテクチャ、ラマン空胴のいずれとも共振しないが、しかしなおラマン利得帯域幅内にある第2のポンプを含む二重ポンプ・システム、そのために狭帯域幅を持つ偏光出力が有益である、周波数倍増結晶への衝突、例えばパラメトリック・システムで使用されるようなパルス状または変調動作、ならびに同様のものを含むが限定されない、多数の他の文脈で適用可能である。
【0061】
ラマン増幅器に関しては、それらのアーキテクチャは典型的には、増幅器ラマン空胴が最後のストークス・シフトおよび出力カプラなしで構築されることを除いては、ラマン・レーザのそれらと似ていることに留意されたい。また、シード・レーザも、最後のストークス・シフトでラマン空胴に結合される。シード光源からのシード入力は、いろいろな場所で増幅器に注入できる。シード・レーザは、偏光出力、狭帯域幅、同調性、および同様のものなどの、多数の増幅器特性を制御する。
【0062】
前の記述は、当業者が本発明を実施することを可能にすることになる詳細を含むが、その記述は、本来説明に役立つものであり、その多くの変更および変形は、これらの教示の利益を有する当業者には明らかとなることを理解されたい。したがって、本明細書での本発明が、もっぱら本明細書に添付される特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲が、従来技術によって容認されるのと同じほどに広く解釈されることが意図されている。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本出願の譲受人によって所有され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2009年5月11日に出願された米国仮特許出願第61/177,058号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は一般に、光ファイバ・デバイスおよび方法に関し、詳細には、高出力カスケード型ラマン・ファイバ・レーザでの逆方向発振(backward lasing)を抑制するための改善されたシステムおよび技術に関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバでの誘導ラマン散乱は、希土類添加ファイバが動作しない波長領域で非線形利得を提供するために使用できる有用な効果である。クラッド励起Yb添加ファイバは、915nmまたは975nmでの高出力マルチモード・ダイオードを1.0から1.2マイクロメートルの領域の単一モード放射に変換するための輝度変換器としての機能を果たすことができる。これは次いで、多重ストークス・シフトを使用することによって、カスケード型ラマン共振器を励起してYbレーザ出力の波長を広範囲にわたってシフトさせるために使用できる。このようにして、高出力単一モード放射を、例えば1480nmで生成することができ、次いでそれを使用し、高出力エルビウム添加ファイバ増幅器を基本モードで励起することができる。この技術は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、J.C.Jasapara、M.J.Andrejco、A.D.Yablon、J.W.Nicholson、C.Headley、およびD.DiGiovanni、「Picosecond Pulse Amplification in a Core−Pumped Large−Mode−Area Erbium Fiber」、Opt.Lett.32、2429〜2431頁(2007年)で述べられている。
【0004】
図1は、Yb添加ファイバ・レーザがカスケード型ラマン共振器を励起するために使用される、例となる40W1480nmシステム20の図を示す。複数のマルチモード915または975nmダイオード・レーザは、テーパー状ファイバ束(TFB)を通じて混ぜ合わされ、二重クラッドYb添加ファイバに送り出される。二重クラッドYb添加ファイバは、信号光を単一モード・コアでおよび励起光を内部クラッドで案内する。ファイバ・ブラッグ回折格子は、Ybファイバ・レーザ共振器内で高反射体(HR)および出力カプラ(OC)を形成する。
【0005】
Ybファイバ・レーザの出力は、ラマン・ファイバ共振器に送り出される。ラマン・ファイバは、正常分散を持つ小有効面積ファイバを備える。正常分散は、高出力でスーパーコンティニューム(supercontinuum)発生につながることになる変調不安定性を防止する。小有効面積は、高ラマン利得につながり、その結果複数のより高次のストークス・シフトを、複数の共振器がラマン・ストークス・シフトだけ波長で分離された複数のファイバ・ブラッグ回折格子で構成されているカスケード型ラマン共振器(CRR)で生成することができる。最終的な所望のストークス・シフトでの出力カプラは、放射をファイバから外へ結合し、追加の励起反射体は、効率向上のために未使用のYb放射を再循環させる。図1で与えられる波長は、例示のためだけのものであり、使用される正確な波長は、最終的な所望の波長に依存することになることに留意されたい。
【0006】
図1の概略図でのさまざまな波長および位置での複数の反射体は、組み合わされて結合空胴を作り出す。例えば、ラマン入力回折格子(RIG)セットは、1117nmの第1のストークス・シフトである1175nmでの高反射体を有することに留意されたい。この反射体は、ラマン・ファイバの内部で1175nm放射の循環を提供することが意図されているが、1175nm放射は、1117nm放射からのYbイオン利得およびラマン利得の両方の帯域幅内にあるので、1117nmパワーが十分高くなる場合、それはまた、二重クラッドYb添加ファイバで1175nmでのレーザ発振を引き起こす可能性もある。この逆方向発振1175nmはその結果、Yb添加ファイバ・レーザを不安定にする可能性がある。最終的に、それは、構成要素の故障につながる可能性があるレーザの脈動を引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.C.Jasapara、M.J.Andrejco、A.D.Yablon、J.W.Nicholson、C.Headley、およびD.DiGiovanni、「Picosecond Pulse Amplification in a Core−Pumped Large−Mode−Area Erbium Fiber」、Opt.Lett.32、2429〜2431頁(2007年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来技術のこれらのおよび他の問題は、本発明によって対処され、その一態様は、逆方向発振が抑制される光増幅システムおよび技術を提供する。
【0009】
本発明の一実施によると、励起光源(pump source)は、励起パワーを光源波長で提供する。励起パワーは、カスケード型ラマン共振器への入力として送り出される。波長依存損失要素は、カスケード型ラマン共振器に先行するように接続される。波長依存損失要素は、光源波長での光パワーを低損失で伝送し、第1のストークス・シフトで高損失を提供するように構成される。波長依存損失要素は、励起光源とカスケード型ラマン共振器との間での光パワーの蓄積を防止し、それによって励起光源に戻る光パワーの後方伝播を防止する。
【0010】
本発明のさらなる態様は、より大きなモード・フィールド直径を持つ増幅器ファイバ、およびより広い帯域幅を持つ波長依存損失要素の使用を通じてより高いパワーへのスケーリングのためのシステムおよび技術を対象にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来技術によるカスケード型ラマン共振器の図である。
【図2】本発明の第1の態様によるシステムの一般的な図である。
【図3】図2で示されるシステムの全体構造を組み込む例となるシステムの図である。
【図4】図3で示されるシステムでのカスケード型ラマン共振器のより詳細な図である。
【図5A】図3および4で示されるMOPA構成に基づく試験セットアップを示す図である。
【図5B】図3および4で示されるMOPA構成に基づく試験セットアップを示す図である。
【図6A】図5A〜5Bで示される試験セットアップを使用して取得される測定結果の一連のグラフである。
【図6B】図5A〜5Bで示される試験セットアップを使用して取得される測定結果の一連のグラフである。
【図6C】図5A〜5Bで示される試験セットアップを使用して取得される測定結果の一連のグラフである。
【図6D】図5A〜5Bで示される試験セットアップを使用して取得される測定結果の一連のグラフである。
【図7】図5A〜5Bで示される試験セットアップで使用される長周期回折格子の測定された挿入損失を例示するグラフである。
【図8A】より高いパワーでの後方ストークス・レーザ発振および脈動を試験するための試験セットアップを示す図である。
【図8B】より高いパワーでの後方ストークス・レーザ発振および脈動を試験するための試験セットアップを示す図である。
【図9A】図8A〜8Bで示される試験セットアップについて1480nm出力パワーの関数として後方伝播パワーを例示するグラフである。
【図9B】図8A〜8Bで示される試験セットアップについて異なる出力パワーに対する発振器時間トレースを示すグラフである。
【図9C】図8A〜8Bで示される試験セットアップのクラッド励起ファイバ・レーザおよびカスケード型ラマン共振器の出力パワーを示す図である。
【図9D】図8A〜8Bで示される試験セットアップのクラッド励起ファイバ・レーザおよびカスケード型ラマン共振器の出力パワーを示す図である。
【図10】LPG挿入損失を78Wの最大ラマン出力パワーでの後方伝播ストークス波長のスペクトルと比較するグラフである。
【図11】本発明のさまざまな述べられる態様による一般的技術の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の態様は、高出力カスケード型ラマン・ファイバ・レーザでの逆方向発振を抑制するためのシステムおよび技術を提供する。本明細書で述べるように、逆方向発振の抑制は、逆方向発振の始まりを示す兆候を識別することによって行われる。これらの兆候の識別は、非常に強力な技術である。逆方向発振によって引き起こされる時間的な擾乱は、脈動につながる可能性があり、脈動は、より高いパワーで構成要素を破壊する可能性がある。
【0013】
本発明のさらなる態様は、波長依存損失要素が、第1のストークス・シフトでの放射の蓄積を妨げることによって逆方向発振をカスケード型ラマン共振器から排除するために使用される、ラマン・レーザ発振システムを提供する。上で論じられた図1のシステムなどの従来技術によるシステムが、より高いパワーで動作するときは、この放射蓄積および逆方向発振は、例えば外部デバイスが接続されるとき励起レーザ高反射体(HR)の破損を結果的にもたらすこともある。本発明の態様によると、Ybシステムとラマン・レーザとの間に接続される適切なファイバに基づく損失要素は、システム信頼性を大幅に改善するために使用される。
【0014】
本発明のさらなる態様によると、大きなモード・フィールド直径(MFD)のファイバは、ラマン閾値を増加させるためにラマン・レーザ発振システムで使用される。大きなMFDのファイバは、潜在的帰還源を低減するために波長選択フィルタリングと組み合わされる。
【0015】
逆方向発振に関する上述の問題は、他の方法で対処されてもよいことに留意されたい。1つの代替手法では、ディプレスト・クラッド(depressed−clad)W形屈折率プロファイルは、第1のストークス・シフトで高損失および増幅器出力で低損失を生じさせる基本モード・カットオフを達成するためにYb増幅器ファイバと併せて使用される。この手法は、本出願の譲受人によって所有され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2009年5月11日に出願された米国仮特許出願第61/177,058号で述べられている。
【0016】
図2は、本発明によるシステム100の一般的な図を示し、励起パワー121を波長選択損失要素140を通じてカスケード型ラマン共振器(CRR)160に送り出し、所望の波長でシステム出力180を生じさせるラマン励起光源120を含む。
【0017】
励起光源120は、図1で示されるものなどの単一発振器構成、および以下で論じられる主発振器パワー増幅器(MOPA)構成を含む、多数の異なる構造を使用して実装されてもよい。励起光源120は、指定波長で励起パワー121を提供し、本例では、1117nmである。
【0018】
励起パワー121は、CRR160への励起パワー入力として送り出される前に、損失要素140を通って進む。以下でより詳細に論じるように、波長選択損失要素140は、励起波長で低損失および第1のストークス・シフトで高損失を有する。
【0019】
CRR160は、1本のラマン活性ファイバ162、ラマン入力回折格子セットRIG1、およびラマン出力回折格子セットROG1を備え、それらは一緒に、レーザ空胴の入れ子状並び164を形成する。光は、入れ子状レーザ空胴164を通って伝播するとき、所望の波長を有するシステム出力180を生じさせるように一連のストークス・シフトを受ける。ラマン共振器は、WDMループ・ミラーを構築するための溶融ファイバWDMカプラまたは薄膜フィルタの使用などの、代替アーキテクチャおよび波長選択要素を使用して構築されてもよいことが当業者には周知である。CRRは、直線状空胴でまたは一方向性リング状空胴としてもしくは双方向性リング状空胴として構成されることがあり得ることもまた理解されよう。CRRは、レーザとして動作するように構成でき、または反射体の最終組を削除し、代わりに信号をCRRに最終波長で注入することによって、CRRは、増幅器として動作するように構成できることもまた理解されよう。本議論は、例示のためだけのものにブラッグ回折格子反射体を使用して構築される直線状共振器に焦点を合わせるが、CRR160から励起光源120への後方伝播光を抑制する基本的特徴は、不変である。
【0020】
波長選択損失要素140は、励起入力光については低損失を維持しながら、一次のストークス光については高損失を有するように構成されている波長選択損失要素140を使用して、第1のストークス・シフトでの放射の蓄積を妨げることによって第1のストークス・シフトでの逆方向発振を実質的に排除する。このようにして、ラマン入力回折格子セットRIG1は、ラマン・レーザに対しては高反射性を提供しながら、Yb添加レーザ・システムには見えなくなる。
【0021】
本例では、損失要素140は、長周期回折格子LPG1によって提供される。長周期回折格子は、光をある波長で導波モードからより高次のクラッド・モードに結合する波長依存デバイスであり、そこで光は、吸収および散乱に起因して失われる。
【0022】
この例では、LPG1は、光を励起波長、すなわち1117nmでほとんど、または、まったく損失なく伝送するように構成される。回折格子LPG1はさらに、第1のストークス・シフト、すなわち1175nmで高損失を提供するように構成される。
【0023】
1117nm励起パワー入力は、CRR160への入力として送り出されると、1つまたは複数のストークス・シフトを受け、その第1は、1175nmである。励起光源120とCRR160との間を伝播するすべての光は、損失要素140を通ることが図2からわかる。損失要素140は、第1のストークス・シフト、すなわち1175nmで高損失を提供するように構成されるので、1175nmでの放射蓄積の著しい低減が、したがって励起パワー源120への後方伝播放射の著しい低減があることになるのがわかる。
【0024】
長周期回折格子は、図2のシステムで例示されるが、傾斜ファイバ・ブラッグ回折格子、溶融ファイバ波長分割マルチプレクサ(WDM)、一本の基本モード・カットオフ・ファイバ、または同様のものなどの、他の波長依存デバイスがまた、使用されることもあり得る。そのようなデバイスはどれも、高出力を扱う能力がなければならない。原理上は光アイソレータは、この応用で同様に有効に働くことになるが、しかし実際には、現行技術では、CRRからの高出力出力に達するのに必要とされる高励起パワー(>100W)を扱うことができるファイバ結合光アイソレータは、存在しない。
【0025】
RIGでの反射体回折格子の波長に整合する中心波長を有する狭帯域幅LPGは、後方ストークス・レーザ発振の閾値を増加させるのに非常に有効に働くことが見いだされている。望ましくない帰還は、周知の特定波長応答、すなわちストークス・シフトを有するCRR160から来るので、波長依存損失要素140についての広帯域動作は、必要でない。
【0026】
図3は、図2で示されるシステム100の全体構造を組み込む例となるシステム200の図を示す。システム200は、励起パワー源220、波長感受性損失要素240、およびカスケード型ラマン共振器260を含む。システム200は、所望の波長で高出力出力280を提供し、この場合は、1480nmである。
【0027】
励起パワー源220は、増幅器構成要素が発振器レーザから光学的に分離される、主発振器パワー増幅器(MOPA)構成を使用して実装される。そのような構成は、本出願の譲受人によって所有され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2009年5月11日に出願された米国仮特許出願第61/177,058号で述べられている。
【0028】
システム200では、励起光源220は、主発振器221およびパワー増幅器230を備え、それらは、発振器221を増幅器230またはCRR260からの後方伝播放射から分離する、波長分割マルチプレクサまたは類似のデバイスなどの、適切なカプラ225によって一緒に光学的に接続される。この分離は、主発振器221が低パワーで動作し、増幅器230が高出力で動作することを可能にし、それによって主発振器221の構成要素を損傷から保護する。
【0029】
励起光源220からの励起パワーは次いで、波長依存損失要素240を通じてカスケード型ラマン共振器260に送り出される。CRR260は、ラマン入力回折格子セットRIG2、一本のラマン活性ファイバ262、およびラマン出力回折格子セットROG2によって形成されるラマン空胴の入れ子状並び264を備える。
【0030】
図4は、カスケード型ラマン共振器260のより詳細な図を示す。図3で示されるように、ラマン入力回折格子セットRIG2は、高反射体HR21〜HR25を備え、ROG2は、高反射体HR26〜HR30および出力カプラOC21を備える。RIG2での回折格子HR21〜HR25ならびにROG2での対応する回折格子HR27〜HR30およびOC21は、ストークス・シフトに対応する波長を持つレーザ空胴の入れ子状並びを作り出す波長整合回折格子対の入れ子状並びを形成し、励起パワー入力波長から所望の出力波長までの段階的推移を生成する。
【0031】
図5A〜5Bは、図3および4で示されるMOPA構成に基づく試験セットアップ300の図を示し、試験セットアップ300は、RIGを高出力Ybファイバ・レーザ・システムに追加する影響を測定するために使用された。試験セットアップ300は、主発振器320(図5A)およびパワー増幅器340(図5B)を備える。長周期回折格子LPG3は、増幅器340の出力に接続される。
【0032】
試験セットアップの性能を特徴づけるために、3組のパワー・メータおよび光学スペクトル分析器PM31/OSA31、PM32/OSA32、PM33/OSA33が、試験セットアップ300に接続される。第1の組PM31/OSA31は、システム出力に接続される。第2および第3の組PM32/OSA32およびPM33/OSA33は、1117/1480タップWDM330に接続されて、発振器320と増幅器340との間の前方および後方伝播をそれぞれ測定する。
【0033】
図5Aで示されるように、PM32/OSA32は、入射光の10%をOSA32に、90%をPM32に向けるカプラC32を使用してタップWDM330に接続され、PM33/OSA33は、入射光の1%をOSA33に、99%をPM33に向けるカプラC33を使用してタップWDM330に接続される。
【0034】
システム300へのRIG3の影響を分析するために、測定結果は、最初にRIG3がシステムに接続されない状態で取得された。さらなる測定結果は、RIG3がLPG3とPM31/OSA31との間に接続された状態で取得された。図6A〜6Dは、これらの測定結果の一連のグラフ410〜440である。
【0035】
図6Aは、増幅器電流(A)のレベルが増加するときに第3のパワー・メータPM33で取得されたパワー測定結果(mW)のグラフ410である。トレース411は、RIG3がシステムに接続されない状態で取得された測定結果を示し、トレース412は、RIG3がシステムに接続された状態で取得された測定結果を示す。
【0036】
図6Bは、増幅器電流(A)のレベルが増加するときに第1のパワー・メータPM31で取得されたパワー測定結果(mW)のグラフ420である。トレース421は、RIG3がシステムに接続されない状態で取得された測定結果を示し、トレース422は、RIG3がシステムに接続された状態で取得された測定結果を示す。
【0037】
図6Cおよび6Dは、RIG3がシステムに接続された状態で、第3および第2の光学スペクトル分析器OSA33およびOSA32にそれぞれ発生するスペクトルのグラフ430および440であり、パワー(dB)と波長(nm)との間の関係を示す。スペクトル431および441は、0Aの増幅器駆動電流で発生し、スペクトル432および442は、10Aで発生し、スペクトル433および443は、20Aで発生し、スペクトル434および444は、30Aで発生した。
【0038】
図6Aでのトレース411および6Bでのトレース421によって示されるように、RIG3が適当な位置にない状態では、Yb増幅器の出力パワーは、利用可能な励起電流によって制限されるだけである。非常にわずかの後方伝播パワーしか、観測できず、増幅器電流を上げても、発振器スペクトルに測定できるほどの影響を有さない(図示されず)。したがって、RIG3がない状態では、0Aから約45Aに及ぶ増幅器電流について一般に途切れない出力パワーの増加がある。
【0039】
しかしながら、RIG3がシステム出力に追加されるときは、状況は、実質的に変わる。図6Aでのトレース412によって示されるように、25〜30Aの励起電流では、後方伝播パワーがスパイク(spike)し、30Aで約300mWに達する。図6Bでのトレース422によって示されるように、増幅器電流が30Aに達するときは、出力パワーの実質的な減少がある。
【0040】
図6Cでのスペクトル431〜434から、図6Aで示されるパワーのスパイク(spike)は、1175nm後方伝播成分の大きな増加に対応することがわかる。第2のストークス次数へのカスケード・レーザ発振がまた、図6Dで示される前方伝播発振器スペクトル441〜444で観察されることもあり得る。観察される他の効果は、30℃より大きい増幅器テーパー状ファイバ束での大きな温度増加を含んでいた。
【0041】
これらの結果から、RIGは、Ybレーザからの1117nm光を直接反射しないが、1175nmの第1のストークス・シフトでの光の逆方向発振は、高励起パワーで生じる可能性があると結論できる。この後方伝播1175光は本質的に、Yb発振器の安定動作をなお維持しながら増幅器から達成可能な出力パワーの量を制限する。
【0042】
したがって、図2および3に関して上で述べたように、この制限を克服するために、波長依存損失要素、例えば図2でのフィルタ140および図3でのフィルタ240は、カスケード型ラマン共振器260に先行するようにシステムに接続される。本発明の態様によると、波長依存損失要素は、励起光源とカスケード型ラマン共振器との間に個別要素を備える。本発明のさらなる態様によると、波長依存損失要素は、他の種類の構造を備える。例えば、本発明の一実施では、波長依存損失要素は、第1のストークス・シフトで高損失のフィルタ・ファイバを備える。
【0043】
図2および3では、長周期回折格子(LPG)が、示されるが、傾斜ファイバ・ブラッグ回折格子、溶融ファイバWDM、適切に添加された減衰ファイバ、または同様のものなどの、他の波長依存フィルタがまた、使用されてもよい。理論上は、光アイソレータがまた、使用されることもあり得る。しかしながら、現在の市販アイソレータは、所要のパワー・レベルを扱うことができず、Ybレーザ波長で容認できない損失を導入することもある。
【0044】
上で述べたように、フィルタリングのための別の可能性は、長波長での基本モード・カットオフのために、Yb増幅器ファイバ232、または励起光源220をラマン共振器260に接続するファイバでディプレスト・クラッド屈折率プロファイルを使用することになる。例えば、Yb増幅器ファイバ232はその結果、1175nmで高損失および1117nmで低損失を有することになる。損失フィルタの重要な構成要素は、それが、RIGで使用される第1のストークス波長と同じ波長で高損失を有し、Ybレーザ波長で低損失を有することである。
【0045】
描写されるシステムでは、長周期回折格子(LPG)は、融着接続機の電気アークを使用して製造されたが、他の技術がまた、使用されてもよい。LPGは、位相整合によってファイバの2つの異なるモード間の結合を提供するように設計された。
【0046】
図7は、LPGの測定された挿入損失を例示するグラフ450である。トレース451によって示されるように、1175nmで約20dBおよび1117nmで0.1dB未満の損失があることがわかる。LPGが適当な位置にある状態では、増幅器がオフの状態で測定されるスペクトルと比較して、発振器スペクトルの変化が観察されない状態で、増幅器が、フル・パワーまで上げられてもよいことが観察された。その上、いったんLPGがシステムに挿入されると、後方伝播パワーのスパイクは、観察されなかった。この実験は、システム安定性を高めるためにRIGをYbファイバ・レーザ・システムから分離することの重要性を確かめる。
【0047】
本発明のさらなる態様は、さらにより高い出力パワーへのスケーリングのための追加のシステムおよび技術を対象にする。RIGでの反射体に整合する狭帯域幅LPGは、後方ストークス・レーザ発振の閾値を増加させるのに非常に有効に働くことが見いだされている。しかしながら、ラマン・レーザの出力パワーが、あるレベルを超えて増加すると、狭帯域幅LPGは、もはや十分でなく、後方ストークス・レーザ発振が再び、観察される。
【0048】
図8A〜8Bは、より高出力での後方ストークス・レーザ発振および脈動を試験するための試験セットアップ500を示す。セットアップ500は、励起パワーをカスケード型ラマン共振器560に提供するクラッド励起ファイバ・レーザ(CPFL)520および増幅器530を含む。波長選択損失要素540は、増幅器530とCRR560との間に接続される。
【0049】
測定結果は、(1)CRR560の出力に接続される光学スペクトル分析器OSA51およびパワー・メータPM51、(2)前方伝播放射を測定するためにタップWDM525に結合される光学スペクトル分析器OSA52ならびに高速フォトダイオードおよびオシロスコープ531、(3)後方伝播放射を測定するためにタップWDM525に結合される光学スペクトル分析器OSA53およびパワー・メータPM52、ならびに(4)CPFL520の入力に接続されるパワー・メータPM53を使用して取得された。
【0050】
最初の組の測定結果については、発振器および増幅器の両方は、6μmモード・フィールド直径(MFD)を持つYb添加ファイバを使用して構築された。
【0051】
図9Aは、1480nm出力パワーの関数として後方伝播パワーを例示するグラフ610である。トレース611は、PM52での、すなわちタップWDM525を通る後方伝播パワーを示し、トレース612は、PM53での、すなわち主発振器520を通る後方伝播パワーを示し、トレース613は、全後方伝播パワーを示す。
【0052】
図9Bは、異なるCPFL出力パワーについて、高速フォトダイオードおよびオシロスコープ531で取得される発振器時間トレースを示すグラフ620である。時間トレース621は、44Wで取得され、時間トレース622は、55Wで取得され、時間トレース623は、58Wで取得された。
【0053】
図9Aおよび9Bで示されるように、約58Wの1480nm出力パワーで、後方ストークス・レーザ発振の2つの明確な兆候がわかる。第1に、図9Aで示されるように、後方伝播パワーは、急速に増加し始める。第2に、図9Bで示されるように、Yb発振器は、時間トレースで脈動挙動を示し始める。したがって、逆方向発振は、比較的高いパワーに至るまで抑制されるが、ある点で、狭帯域幅LPGは、もはや十分でない。
【0054】
したがって、本発明のさらなる態様は、より高いパワーへのスケーリングを可能にする設計変更を対象にする。1175nmでYbからのある量のイオン利得があるので、Ybレーザのモード・フィールド直径のスケーリングが、逆方向発振のための閾値を増加させることを可能にすることになるとは、すぐには明白ではない。実際には、しかしながら、Ybパワー増幅器では1175nmでのラマン利得およびイオン利得の組合せがある。従って、パワー増幅器は、11μmの増加したモード・フィールド直径(MFD)を持つYb添加二重クラッド・ファイバを使用して実装された。このMFDは、Yb添加ファイバについては比較的大きいが、それはなお、単一モード動作を支援する。したがって、逆方向発振閾値は、基本モード伝播を維持しながら最大にされる。
【0055】
図9Cおよび9Dは、クラッド励起ファイバ・レーザ(CPFL)およびカスケード型ラマン共振器(CRR)の出力パワーを示し、ここでMOPA励起光源は、11μmのMFDを持つ26mのYb増幅器ファイバを使用して構築された。1480nm出力パワーは、後方ストークス・レーザ発振が観察される前に、73Wまで増加された。この結果は、逆方向発振が観察される前に1480nmで58Wが達成された6μmMFD直径増幅器ファイバを使用するシステムと比べて勝るとも劣らない。図9Cおよび9Dでは、出力パワーの関数としての後方伝播パワーのプロットはまた、約70〜75W出力パワーで後方伝播パワーの急速な増加も示すことに留意されたい。このパワーでは、発振器時間トレース(図示されず)はまた、時間的な脈動の兆候も示した。
【0056】
さらにより高いパワーへのスケーリングは、後方ストークス・レーザ発振閾値のさらなる増加を必要とすることになる。大幅な改善は、より良好なLPGフィルタから得ることができる。ラマン空胴でのレーザ発振線は、非線形プロセスによって著しく広げられ、実際に中間ストークス次数からの出力放射は、FBG高反射体よりもはるかに広い。
【0057】
図10は、LPG挿入損失(トレース651)を78Wの最大ラマン出力パワーでの後方伝播ストークス波長のスペクトル(トレース652)と比較するグラフ650である。LPGの10dB帯域幅は、2nmだけであり、一方1175nmピークの10dB帯域幅は、10nmより大きい。実際には、後方伝播放射は、LPG損失ピークから離れて、1176nmでピークに達する。従って、狭いフィルタは、RIG1175nmHRからの反射を抑制するのには有効であるが、より広いフィルタは、HRの近くで漏れるラマン空胴からの放射を抑制するために必要とされる。
【0058】
図11は、本明細書で述べられる本発明のさまざまな態様による全体技術700の流れ図である。
ボックス701:励起光源を使用して励起パワーを光源波長で提供する。
ボックス702:励起パワーが入力として送り込まれるカスケード型ラマン共振器に励起パワーを送り出す。カスケード型ラマン共振器は、励起パワー入力に第1のストークス・シフトを生じさせ、その後に一連のより高次のストークス・シフトが続くラマン空胴の入れ子状並びを規定する入力および出力回折格子の組を備え、それによって光源波長から出力波長までの段階的推移を提供する。
ボックス703:励起光源とカスケード型ラマン共振器との間に波長依存損失要素を接続する。
ボックス704:光源波長での光パワーを低損失で伝送し、第1のストークス・シフトで高損失を提供するように波長依存損失要素を構成する。それによって波長依存損失要素は、励起光源とカスケード型ラマン共振器との間での光パワーの蓄積を防止し、それによって励起光源に戻る光パワーの後方伝播を防止する。
【0059】
ラマン利得帯域幅は、かなり大きく、反射体は、必ずしも利得のピークにではなく、利得帯域幅内のどこにでも位置決めできることに留意されたい。
【0060】
上述のシステムおよび技術は、直線状およびリング状ラマン共振器の両方、ラマン増幅器アーキテクチャ、ラマン空胴のいずれとも共振しないが、しかしなおラマン利得帯域幅内にある第2のポンプを含む二重ポンプ・システム、そのために狭帯域幅を持つ偏光出力が有益である、周波数倍増結晶への衝突、例えばパラメトリック・システムで使用されるようなパルス状または変調動作、ならびに同様のものを含むが限定されない、多数の他の文脈で適用可能である。
【0061】
ラマン増幅器に関しては、それらのアーキテクチャは典型的には、増幅器ラマン空胴が最後のストークス・シフトおよび出力カプラなしで構築されることを除いては、ラマン・レーザのそれらと似ていることに留意されたい。また、シード・レーザも、最後のストークス・シフトでラマン空胴に結合される。シード光源からのシード入力は、いろいろな場所で増幅器に注入できる。シード・レーザは、偏光出力、狭帯域幅、同調性、および同様のものなどの、多数の増幅器特性を制御する。
【0062】
前の記述は、当業者が本発明を実施することを可能にすることになる詳細を含むが、その記述は、本来説明に役立つものであり、その多くの変更および変形は、これらの教示の利益を有する当業者には明らかとなることを理解されたい。したがって、本明細書での本発明が、もっぱら本明細書に添付される特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲が、従来技術によって容認されるのと同じほどに広く解釈されることが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光増幅システムであって、
励起パワーを光源波長で提供する励起光源と、
前記励起パワーが入力として送り込まれるカスケード型ラマン共振器とを備え、前記カスケード型ラマン共振器は前記励起パワーに第1のストークス・シフトを生成する1つまたは複数の入れ子状ラマン空胴を備え、それによって前記光源波長から出力波長までの段階的推移を提供し、さらに、
前記カスケード型ラマン共振器に先行する波長依存損失要素を備え、
前記波長依存損失要素は、前記光源波長での光パワーを低損失で伝送し、前記ラマン共振器での前記第1のストークス・シフト反射体の波長にほぼ等しい波長で高損失を提供するように構成され、
前記波長依存損失要素は、前記励起光源に戻る光パワーの後方伝播を低減する、光増幅システム。
【請求項2】
前記波長依存損失要素は、前記カスケード型ラマン共振器での第1の入力回折格子の波長に整合する中心波長と、前記励起波長で低損失を維持しながら、より高次のストークス・シフトでの放射を抑制するのに十分に広い帯域幅と有する、請求項1に記載の光増幅システム。
【請求項3】
前記波長依存損失要素は、前記第1のストークス・シフトで高損失のフィルタ・ファイバを備える、請求項1に記載の光増幅システム。
【請求項4】
前記励起光源は、主発振器パワー増幅器として構成される、請求項1に記載の光増幅システム。
【請求項5】
前記パワー増幅器は、1またはそれ以上のモードでの動作を支援しながら、逆方向発振閾値を最大にするモード・フィールド直径を有する二重クラッド・ファイバを備える、請求項4に記載の光増幅システム。
【請求項6】
光増幅方法であって、
(a)励起光源を使用して励起パワーを光源波長で提供し、
(b)前記励起光パワーをカスケード型ラマン共振器に送り出すことを含み、前記カスケード型ラマン共振器は、前記励起パワーに第1のストークス・シフトを生成し、その後に一連のより高次のストークス・シフトが続くための1つまたは複数のラマン空胴を備え、それによって前記光源波長から出力波長までの段階的推移を提供し、前記方法はさらに、
(c)波長依存損失要素をそれが前記カスケード型ラマン共振器に先行するように接続し、および
(d)前記光源波長での光パワーを低損失で伝送し、前記第1のストークス・シフトで高損失を提供するように前記波長依存損失要素を構成することを含み、
前記波長依存損失要素は、前記励起光源と前記カスケード型ラマン共振器との間での光パワーの蓄積を防止し、それによって前記励起光源に戻る光パワーの後方伝播を防止する、光増幅方法。
【請求項7】
前記波長依存損失要素は、前記カスケード型ラマン共振器での第1の入力回折格子の波長に整合する中心波長と、前記励起波長で低損失を維持しながら、より高次のストークス・シフトでの放射を抑制するのに十分に広い帯域幅と有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記波長依存損失要素は、前記第1のストークス・シフトで高損失のフィルタ・ファイバを備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記励起光源は、主発振器パワー増幅器として構成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記パワー増幅器は、1またはそれ以上のモードでの動作を支援しながら、逆方向発振閾値を最大にするモード・フィールド直径を有する二重クラッド・ファイバを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項1】
光増幅システムであって、
励起パワーを光源波長で提供する励起光源と、
前記励起パワーが入力として送り込まれるカスケード型ラマン共振器とを備え、前記カスケード型ラマン共振器は前記励起パワーに第1のストークス・シフトを生成する1つまたは複数の入れ子状ラマン空胴を備え、それによって前記光源波長から出力波長までの段階的推移を提供し、さらに、
前記カスケード型ラマン共振器に先行する波長依存損失要素を備え、
前記波長依存損失要素は、前記光源波長での光パワーを低損失で伝送し、前記ラマン共振器での前記第1のストークス・シフト反射体の波長にほぼ等しい波長で高損失を提供するように構成され、
前記波長依存損失要素は、前記励起光源に戻る光パワーの後方伝播を低減する、光増幅システム。
【請求項2】
前記波長依存損失要素は、前記カスケード型ラマン共振器での第1の入力回折格子の波長に整合する中心波長と、前記励起波長で低損失を維持しながら、より高次のストークス・シフトでの放射を抑制するのに十分に広い帯域幅と有する、請求項1に記載の光増幅システム。
【請求項3】
前記波長依存損失要素は、前記第1のストークス・シフトで高損失のフィルタ・ファイバを備える、請求項1に記載の光増幅システム。
【請求項4】
前記励起光源は、主発振器パワー増幅器として構成される、請求項1に記載の光増幅システム。
【請求項5】
前記パワー増幅器は、1またはそれ以上のモードでの動作を支援しながら、逆方向発振閾値を最大にするモード・フィールド直径を有する二重クラッド・ファイバを備える、請求項4に記載の光増幅システム。
【請求項6】
光増幅方法であって、
(a)励起光源を使用して励起パワーを光源波長で提供し、
(b)前記励起光パワーをカスケード型ラマン共振器に送り出すことを含み、前記カスケード型ラマン共振器は、前記励起パワーに第1のストークス・シフトを生成し、その後に一連のより高次のストークス・シフトが続くための1つまたは複数のラマン空胴を備え、それによって前記光源波長から出力波長までの段階的推移を提供し、前記方法はさらに、
(c)波長依存損失要素をそれが前記カスケード型ラマン共振器に先行するように接続し、および
(d)前記光源波長での光パワーを低損失で伝送し、前記第1のストークス・シフトで高損失を提供するように前記波長依存損失要素を構成することを含み、
前記波長依存損失要素は、前記励起光源と前記カスケード型ラマン共振器との間での光パワーの蓄積を防止し、それによって前記励起光源に戻る光パワーの後方伝播を防止する、光増幅方法。
【請求項7】
前記波長依存損失要素は、前記カスケード型ラマン共振器での第1の入力回折格子の波長に整合する中心波長と、前記励起波長で低損失を維持しながら、より高次のストークス・シフトでの放射を抑制するのに十分に広い帯域幅と有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記波長依存損失要素は、前記第1のストークス・シフトで高損失のフィルタ・ファイバを備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記励起光源は、主発振器パワー増幅器として構成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記パワー増幅器は、1またはそれ以上のモードでの動作を支援しながら、逆方向発振閾値を最大にするモード・フィールド直径を有する二重クラッド・ファイバを備える、請求項9に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−527019(P2012−527019A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510955(P2012−510955)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/034435
【国際公開番号】WO2010/132493
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(509094034)オーエフエス ファイテル,エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/034435
【国際公開番号】WO2010/132493
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(509094034)オーエフエス ファイテル,エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】
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