説明

高分子ゲル

【課題】吸油性のゲルにおいてより大きく膨潤するゲルを提供する。
【解決手段】配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンをカウンターアニオンとして有する第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、第4級ピリジニウム、第4級イミダゾリニウムのいずれか一種を有する高分子ゲルとする。第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、第4級ピリジニウム、または第4級イミダゾリニウムの長鎖アルキルの長さを長くして、有機溶媒中での膨潤度を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子ゲルに関するものであり、特に、有機溶媒中で大きな膨潤を示す高分子ゲルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水の保持剤や紙おむつのような吸水剤などとして、自重の数百倍に及ぶ水を吸収して膨潤する高吸水性ゲルが用いられている。
【0003】
このような高吸水性ゲルでは、ゲルを構成する高分子鎖に結合していた塩が水中に溶け出すことにより生じた電荷密度の差に起因する浸透圧を利用して、ゲル内に多量の水を取り込むことにより大きな膨潤を示しているものである。
【0004】
さらに、昨今では、吸水した吸水性ゲルの廃棄処理を容易とするために、例えばカルボキシメチルデンプン(CMS)とデンプンとをブレンドし、水を加えて練り合わせてペースト状態とした後に、電離性放射線を照射して生成した高吸水性デンプンゲルなども知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、吸油性を備えた樹脂で構成した高分子ゲルも提案されており、例えば吸油性樹脂と、基油であるポリブテンと、このポリブテンに相溶するアルキル変性シリコーンオイルとで形成した高分子ゲルが提案されており、この高分子ゲルを筆記具用インキ追従体として用いたりしている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−048997号公報
【特許文献2】特開2002−274094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の吸油性を有したゲルでは、ゲルを構成する高分子鎖の溶媒との相溶性を利用して膨潤を生じさせることにより吸油しているものであり、吸収量が少なく、より大きく膨潤して高吸収性としたゲルが求められていた。
【0007】
そこで、本発明者らは、吸油性のゲルにおいてより大きく膨潤するゲルを開発すべく研究を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高分子ゲルでは、配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンをカウンターアニオンとして有する第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、第4級ピリジニウム、第4級イミダゾリニウムのいずれか一種を有する高分子ゲルとした。
【0009】
また、本発明の高分子ゲルでは、配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンを有する第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、第4級ピリジニウム、第4級イミダゾリニウムのいずれか一種と、共重合モノマーと、架橋剤とからなる高分子ゲルとした。
【0010】
さらに、本発明の高分子ゲルでは、以下の点にも特徴を有するものである。すなわち、
(1)配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンは、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、トリフルオロメタン酢酸アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、テトラフェニルボレートアニオン、テトラキス(4-クロロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(4-フルオロフェニル)ボレートアニオン、パーフルオロテトラフェニルボレートアニオン、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)-フェニル]ボレートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、過塩素酸アニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン、カルボラン酸アニオンおよびその誘導体アニオンから選ばれる一種であること。
(2)第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、第4級ピリジニウム、または第4級イミダゾリニウムの長鎖アルキルの長さを長くして、有機溶媒中での膨潤度を大きくしたこと。
(3)共重合モノマーの主鎖を長くして、有機溶媒中での膨潤度を大きくしたこと。
(4)架橋剤の配分量を小さくして、有機溶媒中での膨潤度を大きくしたこと。
(5)架橋剤の配分量を大きくして、高硬度化したこと。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンをカウンターアニオンとして有する第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、第4級ピリジニウム、第4級イミダゾリニウムのいずれか一種を有する高分子ゲルとしたことによって、有機溶媒に対して高い吸収性を示して大きく膨潤する高分子ゲルを提供できる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンを有する第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、第4級ピリジニウム、第4級イミダゾリニウムのいずれか一種と、共重合モノマーと、架橋剤とからなる高分子ゲルとしたことによって、有機溶媒に対して高い吸収性を示して大きく膨潤する高分子ゲルを提供できる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の高分子ゲルにおいて、配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンを、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、トリフルオロメタン酢酸アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、テトラフェニルボレートアニオン、テトラキス(4-クロロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(4-フルオロフェニル)ボレートアニオン、パーフルオロテトラフェニルボレートアニオン、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)-フェニル]ボレートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、過塩素酸アニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン、カルボラン酸アニオンおよびその誘導体アニオンから選ばれる一種とすることによって、有機溶媒に対して高い吸収性を示して大きく膨潤する比較的安価な高分子ゲルを提供できる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子ゲルにおいて、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、第4級ピリジニウム、または第4級イミダゾリニウムの長鎖アルキルの長さを長くしたことによって、有機溶媒中での膨潤度を大きくして有機溶媒に対してより高い吸収性を示す高分子ゲルを提供できる。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、請求項2記載の高分子ゲルにおいて、共重合モノマーの主鎖を長くしたことによって、有機溶媒中での膨潤度を大きくして有機溶媒に対してさらに高い吸収性を示す高分子ゲルを提供できる。
【0016】
請求項6記載の発明によれば、請求項2または請求項5に記載の高分子ゲルにおいて、架橋剤の配分量を小さくして有機溶媒中での膨潤度を大きくしたことによって、有機溶媒に対してさらに高い吸収性を示す高分子ゲルを提供できる。
【0017】
請求項7記載の発明によれば、請求項2または請求項5に記載の高分子ゲルにおいて、架橋剤の配分量を大きくして高硬度化したことによって、有機溶媒中での膨潤度は若干低下するが、所定形状の高分子ゲルを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の高分子ゲルは、配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンをカウンターアニオンとして有する第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、第4級ピリジニウム、第4級イミダゾリニウムのいずれか一種を有する高分子ゲルである。ここで、「疎水性の高い」とは、「親油性の高い」または「親水性の低い」と同義である。
【0019】
すなわち、高分子ゲルにおける吸油性を、ゲルを構成する高分子鎖の溶媒との相溶性に基づくものとするのではなく、ゲルを構成する高分子鎖に結合していた塩を油などの有機溶媒中に溶け出させることにより電荷密度の差を生じさせて、この電荷密度の差に起因する浸透圧を利用してゲル内に多量の有機溶媒を取り込むことによって大きな膨潤を可能としているものである。
【0020】
つまり、カウンターアニオンとして配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンを備えていることにより、有機溶媒中において配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンを容易に遊離させることができ、このアニオンの遊離によって生じた電荷密度の差に起因する浸透圧を利用してゲル内に多量の有機溶媒を取り込んでいるものである。
【0021】
このように、アニオンの遊離によって生じた電荷密度の差に起因する浸透圧を利用することにより、従来のようにゲルを構成する高分子鎖の有機溶媒との相溶性を利用して生じていた膨潤が最大で自重の30倍程度までであったのに対し、80〜130倍程度にまで向上させることができる。
【0022】
特に、配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンを、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、トリフルオロメタン酢酸アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、テトラフェニルボレートアニオン、テトラキス(4-クロロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(4-フルオロフェニル)ボレートアニオン、パーフルオロテトラフェニルボレートアニオン、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)-フェニル]ボレートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、過塩素酸アニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン、カルボラン酸アニオンおよびその誘導体アニオンから選ばれる一種とすることによって、有機溶媒に対して高い吸収性を示すとともに、気温や湿度などの環境条件の影響を受けにくく、かつ比較的安価な高分子ゲルとすることができる。
【0023】
また、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、第4級ピリジニウム、または第4級イミダゾリニウムではそれぞれ長鎖アルキルを備えており、この長鎖アルキルの長さをできるだけ長くすることにより親油性を向上させることができ、有機溶媒中での膨潤度を大きくして有機溶媒に対してより高い吸収性を示す高分子ゲルとすることができる。このように、親油性を向上させるためには、長鎖アルキルはC6以上の長さを有していることが望ましい。
【0024】
一方、長鎖アルキルを短くした場合には、親水性を向上させることができるので、水やアルコールなどに対しての膨潤度を向上させることができる。
【0025】
本発明の高分子ゲルは、特に、配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンを有する第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、第4級ピリジニウム、第4級イミダゾリニウムのいずれか一種と、共重合モノマーと、架橋剤とで構成しており、前記の長鎖アルキルの長さ調整によって親油性と親水性を調整するだけでなく、共重合モノマーの長さ調整によっても親油性と親水性を調整することができる。
【0026】
すなわち、共重合モノマーの主鎖を長くした場合には親油性を向上させることができるので、有機溶媒などの極性の低い溶媒に対する膨潤度を向上させることができる。親油性を向上させるためには、共重合モノマーの主鎖はC6以上の長さを有していることが望ましい。
【0027】
一方、共重合モノマーの主鎖を短くした場合には親油性を向上させることができるので、水やアルコールなどの極性の高い溶媒に対する膨潤度を向上させることができる。
【0028】
ここで、共重合モノマーとしては、塩化ビニル、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン誘導体、ブタジエン、エチレン、プロピレン、イソプレン、ビニルピリジン誘導体などを用いることができる。
【0029】
さらに、架橋剤の配分量を調整することにより高分子ゲルの硬さを調整することができ、架橋剤の配分量を小さくした場合には、高分子ゲルの変形性が高い軟らかい状態とすることができ、有機溶媒の吸収による変形を容易とすることができるので、有機溶媒中での膨潤度が大きく、有機溶媒に対して高い吸収性を示す高分子ゲルとすることができる。
【0030】
一方、架橋剤の配分量を大きくした場合には、高分子ゲルの変形性が小さい硬い状態となるので、有機溶媒の吸収による変形に対する抵抗が大きくなりやすく、有機溶媒中での膨潤が阻害されることとなる。したがって、架橋剤の配分量の調整によって高分子ゲルによる有機溶媒の吸収量を容易に調整できる。
【実施例1】
【0031】
本実施例では、長鎖アルキルを有する第4級アンモニウムカチオンと、カウンターアニオンとして配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンであるテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)-フェニル]ボレートアニオン(Tetrakis[3,5-bis(trifluoromethy)-phenyl]borate(TFPB))を用い、疎水性イオン対THA-TFPBを導入した高分子電解質ゲルを作成した。第4級アンモニウムの代わりに、第4級ホスホニウム、第4級ピリジニウム、または第4級イミダゾリニウムを用いてもよい。
【0032】
疎水性イオン対THA-TFPBは、以下の化学式に基づいて作成した。
【0033】
【化1】


すなわち、三角フラスコにTetrakis[3,5-bis(l)-phenyl]borate,sodium salt dehydrate(1.47g,1.66mmol)を入れてメタノール−水混合溶媒に溶解させ、この溶液にTHA-Br(0.74g,1.60mmol)のメタノール−水混合溶媒を加えて室温にて撹拌した。12時間後に沈殿をろ別し、メタノール−水混合溶媒で固液洗浄して減圧乾燥して生成した。収量は1.36g(収率68%)であった。1H-NMRによる同定結果を下表に示す。
【0034】
【表1】


第1のサンプルとして、疎水性イオン対THA-TFPBと、中性モノマーであるオクタデシルアクリレート(Octd)との架橋共重合体(THA-TFPB-co-Octd gel)を生成した。すなわち、THA-TFPB-co-Octd gelは、以下の化学式に基づいて作成した。
【0035】
【化2】


また、第2のサンプルとして、疎水性イオン対THA-TFPBと、2エチルヘキシルアクリルレート(EH)との架橋共重合体(THA-TFPB-co-EH gel)を生成した。すなわち、THA-TFPB-co-EH gelは、以下の化学式に基づいて作成した。
【0036】
【化3】


特に、第1のサンプル及び第2のサンプルでは、それぞれ下表に示す条件で、疎水性イオン対THA-TFPBの有無のサンプルを作成した。すなわち、第1のサンプルで疎水性イオン対THA-TFPBを含有しないOctd gelと、中性モノマー(Octd)に対して仕込み比で疎水性イオン対THA-TFPBを5%導入したTHA-TFPB-co-Octd 5/95 gelと、第2のサンプルで疎水性イオン対THA-TFPBを含有しないEH gelと、中性モノマー(EH)に対して仕込み比で疎水性イオン対THA-TFPBを5%導入したTHA-TFPB-co-EH 5/95 gelとを作成した。
【0037】
【表2】


上記のサンプル作成では、表2に示した条件でそれぞれ調整したサンプルをアンプル管に入れて脱気封管し、60℃で24時間加熱し、ゲル化させた。ゲル化後、アンプル管を割ることにより均一な円柱状のゲルを得て、バキュームオーブンにて乾燥し、直径4mm、厚み約1mmの円盤状に切断した。
【0038】
このように円盤状とした乾燥ゲルの重量を計測し、この乾燥ゲルに過剰の溶媒を加えて平衡状態に達するまで放置し、溶媒を吸収して膨潤した膨潤ゲルの重量を計測した。ここで、乾燥ゲルの重量をWdry、膨潤ゲルの重量をWwetとし、膨潤ゲルの重量と乾燥ゲルの重量との差である(Wwet−Wdry)を乾燥ゲルが吸収した溶媒量として算出した。
【0039】
さらに、膨潤度Swを次式により定義した。
【0040】
Sw=(Wwet−Wdry)/Wdry
溶媒を、ヘキサン(Hexane)、トルエン(Toluene)、クロロホルム(Chloroform)、クロロベンゼン(ChloroBenzene)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(Dichloromethane)とした場合の、Octd gelとTHA-TFPB-co-Octd 5/95 gelの膨潤度の評価結果を図1のグラフに示す。
【0041】
疎水性イオン対THA-TFPBを含有しないOctd gelでは、膨潤度が20倍程度であるのに対して、疎水性イオン対THA-TFPBを含有したTHA-TFPB-co-Octd 5/95 gelでは、約60倍以上の高い膨潤度を示すことがわかる。なお、THA-TFPB-co-Octd 5/95 gelでもヘキサン及びトルエンでは膨潤度の向上が見られなかったが、これは、ヘキサン及びトルエンでは疎水性イオン対THA-TFPBの解離があまり起こらず、電荷密度の差が生じないことによって、電荷密度の差に起因する浸透圧が発生しなかったためだと考えられる。
【0042】
図1に示すように、架橋剤として用いたエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)の配合量が約1%の場合、THA-TFPB-co-Octd 5/95 gelは、クロロホルムにおける膨潤度は84倍、テトラヒドロフランにおける膨潤度は77倍、ジクロロメタンにおける膨潤度は137倍であるが、架橋剤の配合量が約0.5%とした場合には、クロロホルムにおける膨潤度は144倍、テトラヒドロフランにおける膨潤度は163倍、ジクロロメタンにおける膨潤度は188倍で、さらに、架橋剤の配合量が約0.2%とした場合には、クロロホルムにおける膨潤度は297倍、テトラヒドロフランにおける膨潤度は384倍、ジクロロメタンにおける膨潤度は482倍であった。
【0043】
すなわち、THA-TFPB-co-Octd 5/95 gelでは、架橋密度を減少させることにより、膨潤度を向上させることができることがわかる。
【0044】
溶媒を、トルエン(Toluene)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(Dichloromethane)、アセトン(Acetone)、n-ブチロニトリル(n-Butyronitrile)とした場合の、EH gelと、THA-TFPB-co-EH 5/95 gelの膨潤度の評価結果を図2のグラフに示す。
【0045】
疎水性イオン対THA-TFPBを含有しないEH gelでは、膨潤度が10倍以下であるのに対して、疎水性イオン対THA-TFPBを含有したTHA-TFPB-co-EH 5/95 gelでは、約45倍以上の高い膨潤度を示すことがわかる。なお、THA-TFPB-co-EH 5/95 gelでもトルエンでは膨潤度の向上が見られなかったが、これは、トルエンでは疎水性イオン対THA-TFPBの解離があまり起こらず、電荷密度の差が生じないことによって、電荷密度の差に起因する浸透圧が発生しなかったためだと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の高分子ゲルは、有機溶媒に対して大きい膨潤を示すため、高性能なオイルフェンスとして利用できるだけでなく、食用油の廃棄に用いるための吸着剤あるいは固化剤として利用でき、さらには有機溶媒を固化して貯蔵する固化剤として利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】各種溶媒に対するOctd gelとTHA-TFPB-co-Octd 5/95 gelの膨潤度の評価結果を示すグラフである。
【図2】各種溶媒に対するEH gelとTHA-TFPB-co-EH 5/95 gelの膨潤度の評価結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンをカウンターアニオンとして有する第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、第4級ピリジニウム、第4級イミダゾリニウムのいずれか一種を有する高分子ゲル。
【請求項2】
配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンを有する第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、第4級ピリジニウム、第4級イミダゾリニウムのいずれか一種と、共重合モノマーと、架橋剤とからなる高分子ゲル。
【請求項3】
前記の配位性の低いまたは疎水性の高いアニオンは、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、トリフルオロメタン酢酸アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、テトラフェニルボレートアニオン、テトラキス(4-クロロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(4-フルオロフェニル)ボレートアニオン、パーフルオロテトラフェニルボレートアニオン、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)-フェニル]ボレートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、過塩素酸アニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン、カルボラン酸アニオンおよびその誘導体アニオンから選ばれる一種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高分子ゲル。
【請求項4】
前記の第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、第4級ピリジニウム、または第4級イミダゾリニウムの長鎖アルキルの長さを長くして、有機溶媒中での膨潤度を大きくしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子ゲル。
【請求項5】
前記共重合モノマーの主鎖を長くして、有機溶媒中での膨潤度を大きくしたことを特徴とする請求項2記載の高分子ゲル。
【請求項6】
前記架橋剤の配分量を小さくして、有機溶媒中での膨潤度を大きくしたことを特徴とする請求項2または請求項5に記載の高分子ゲル。
【請求項7】
前記架橋剤の配分量を大きくして、高硬度化したことを特徴とする請求項2または請求項5に記載の高分子ゲル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−69206(P2008−69206A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247078(P2006−247078)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年3月13日 社団法人 日本化学会発行の「日本化学会第86春季年会(2006)講演予稿集CD−ROM」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年9月5日 社団法人 高分子学会発行の「高分子学会予稿集 55巻 2号[2006]」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年5月10日 社団法人 高分子学会発行の「高分子学会予稿集 55巻 1号[2006]」に発表
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】