説明

高分子化合物と薬剤の回収方法及び装置

【課題】 高分子化合物をアルコール類等の薬剤を用いてリサイクル処理する際に、薬剤として使用したアルコール類をほぼそのまま回収できる高分子化合物と薬剤の回収方法及び装置を提供する。
【解決手段】 高分子化合物をアルコール類等の薬剤を用いて反応用押出機1と反応容器100で超臨界状態で反応させる。反応容器100からの高分子処理物を減圧してベント付押出機2に導入し、そのベント付押出機2で、高分子処理物を押し出しながら、その高分子処理物からガス分として不純物を含む薬剤を分離し、その分離されたガス分をトラッパー16に導入すると共に、そのトラッパー16内を真空ポンプ19で吸引してガス分中に含まれる不純物を分離した後、真空ポンプ19で吸引したガスをコンデンサー20を通して冷却して薬剤を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物をアルコール等の薬剤を用いて、変性反応、分解反応或いは架橋点や分子鎖を切断して高分子処理物を生成する際に、反応処理後の高分子化合物と薬剤とを、それぞれ分離回収するための高分子化合物と薬剤の回収方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年になって、環境問題が重要視されるようになるにつれ、リサイクルの気運が高まってきている。ポリマーに関しても例外ではなく、これまでに多くのポリマーがマテリアルリサイクル、サーマルリサイクルなど様々な方法によるリサイクルが検討されている。
【0003】
そのなかで、超臨界あるいは亜臨界流体等の高温高圧流体のポリマー類に対する特異な反応に関する研究が進み、たとえば、シラン架橋ポリエチレンのシラノール縮合による架橋点のみを、超臨界あるいは亜臨界流体中で選択的に切断して、熱可塑性ポリマーに復元させてリサイクルする方法が開発されている(特許文献1)。
【0004】
この技術は、架橋ポリマーを油状物に分解してサーマルリサイクルする方法とは異なり、ポリマーとしてマテリアルリサイクルできる点が特長であり、各種成形物の原料として利用できることから資源の有効活用に有用な技術として注目されている。
【0005】
このような技術を実用化するために、押出機の中で架橋ポリマーと超臨界あるいは亜臨界流体を混合して反応させ、再生材料を回収するまでを連続的に行う方法が検討されている。
【0006】
この技術は、超臨界流体、亜臨界流体あるいは高温高圧にされたガス状態の薬剤と架橋ポリマーを反応容器又は反応用押出機内で反応させた後に、生成した再生材料と薬剤に分離するためにベント付押出機の利用が検討されている。
【0007】
一般的な方法としては、ベント付押出機のベント部分から排出される薬剤を、真空ポンプ(オイルポンプ)による吸引力でトラッパーに送り、不純物を取り除いた後に、真空ポンプから外部へと排出する方法があげられる。
【0008】
【特許文献1】特開2002−187976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし上記の方法においては、真空ポンプのみで超臨界流体、亜臨界流体あるいは高温高圧にされたガス状態の薬剤を十分に回収することは困難であった。
【0010】
そのため、薬剤として用いる物質が環境負荷の高い物質である場合、外部へそのまま排出することになり、環境配慮の面から問題となっていた。
【0011】
そこで本発明の目的は、前記超臨界流体、亜臨界流体あるいは高温高圧にされたガス等の高温高圧流体と架橋ポリマーを反応させ、これをベント付押出機を用いて分離処理する際に、薬剤として使用したアルコール類やアルコール類の混合物、あるいは一般に環境負荷の高い物質を外部へそのまま排出させずに、回収してリサイクルすることができる高分子化合物と薬剤の回収方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、高分子化合物と、該高分子化合物とを反応させる薬剤と反応させて高分子処理物を生成する方法において、反応容器からの高分子処理物を減圧してベント付押出機に導入し、そのベント付押出機で、高分子処理物を押し出しながら、その高分子処理物からガス分として不純物を含む薬剤を分離し、その分離されたガス分をトラッパーに導入すると共に、そのトラッパー内を真空ポンプで吸引してガス分中に含まれる不純物を分離した後、真空ポンプで吸引したガスをコンデンサーを通して冷却して薬剤を回収するようにした高分子化合物と薬剤の回収方法である。
【0013】
これにより、真空ポンプの吸引力によりベント付押出機より薬剤及び高分子化合物の混合物をトラッパーに導き該高分子化合物またはその他不純物を除去して薬剤のみを真空ポンプに吸引し、該薬剤をコンデンサーに凝縮貯蔵する高分子化合物と薬剤を回収することができる。
【0014】
請求項2の発明は、真空ポンプに、ドライ真空ポンプを用いてトラッパー内のガスを吸引排気する請求項1記載の高分子化合物と薬剤の回収方法である。
【0015】
これにより、従来一般的であったオイル真空ポンプではなくドライポンプを真空ポンプとして採用することにより、真空ポンプを通過した薬剤がオイルなど不純物と混合することなく、コンデンサーにそのまま凝縮貯蔵され、再利用することが可能となる。
【0016】
請求項3の発明は、前記高分子化合物と前記薬剤を、反応用押出機で、超臨界または亜臨界状態で反応容器に供給すると共に反応させ、その反応容器から排出された高分子処理物を、前記ベント付押出機の前段に供給し、そのベント付押出機の押出側後方より、不純物を含む薬剤をガス分として分離する請求項1又は2記載の高分子化合物と薬剤の回収方法である。
【0017】
請求項4の発明は、前記ベント付押出機の押出側後方に、前記反応容器の1倍以上の体積を有するバックベントボックスを接続し、そのバックベントボックスで分離した不純物を含む薬剤のガスを前記トラッパーに供給し、そのトラッパー内のガスを真空ポンプで吸引して、ガス中の不純物を分離し、不純物が分離された薬剤のガスをコンデンサーで冷却する請求項1〜3いずれかに記載の高分子化合物と薬剤の回収方法である。
【0018】
このように大きな体積をもったバックベントボックスを接続させることにより高温、高圧下でも安全に高分子化合物と薬剤の分離を行うことが可能である。
【0019】
請求項5の発明は、前記高分子化合物が、分子中にシロキサン結合を有するポリマーであり、前記薬剤がアルコール類またはアルコール類を含む混合物である請求項1〜4のいずれかに記載の高分子化合物と薬剤の回収方法である。
【0020】
請求項6の発明は、高分子化合物と、該高分子化合物と反応させる薬剤とを反応させて高分子処理物を生成する装置において、
反応容器から減圧されて排出され高分子処理物を導入すると共に高分子処理物を押し出しながら、その高分子処理物からガス分として不純物を含む薬剤を分離するベント付押出機と、
そのベント付押出機で、その分離されたガス分を導入し、ガス中の不純物を分離するトラッパーと、
トラッパー内を吸引排気する真空ポンプと、
真空ポンプの排気側に接続されると共にその排気されたガスを冷却して薬剤を回収するコンデンサーと
を備えた高分子化合物と薬剤の回収装置である。
【0021】
請求項7の発明は、真空ポンプが、ドライ真空ポンプである請求項6記載の高分子化合物と薬剤の回収装置である。
【0022】
請求項8の発明は、前記高分子化合物と前記薬剤を混練して超臨界または亜臨界状態で押し出す反応用押出機と、その反応押出機から高分子化合物と薬剤を反応する反応容器とを備え、反応容器と前記ベント付押出機の前段の間には、高分子処理物を減圧して供給する減圧手段を有する請求項6又は7記載の高分子化合物と薬剤の回収装置である。
【0023】
請求項9の発明は、前記ベント付押出機の押出側後方に、前記反応容器の1倍以上の体積を有するバックベントボックスが接続され、そのバックベントボックスに前記トラッパーが接続されると共にそのトラッパーに真空ポンプが接続され、真空ポンプの排気側にコンデンサーが接続される請求項6〜8のいずれかに記載の高分子化合物と薬剤の回収装置である。
【0024】
バックベントボックスに、トラッパー、真空ポンプ、コンデンサーの順番に組み合わせることにより薬剤の吸引、不純物除去、凝縮回収を連続的かつ高精度に行うことができる。ただし、効率やコストの面などから、組み合わせの順番を変更したり、新たに装置を組み入れたりする可能性はある。
【0025】
以上のように本発明は、ベント付押出機に設けられたバックベントボックスに、トラッパー、真空ポンプ、コンデンサーを組み合わせた装置を接続することによって、ベント付押出機に搬送されてきた高分子化合物と薬剤が分離された後に、薬剤はドライ真空ポンプの吸引力によりトラッパーヘと送られて不純物が除去された後に、オイルと混合されることなくコンデンサーヘと送られる。その後、薬剤はコンデンサーにより擬縮されて貯蔵される。
【0026】
また、コンデンサーに貯蔵された薬剤は、高分子化合物、オイル等の不純物が除去されて回収されたものであり、直接又は用途に応じて精製された後、再利用することが可能である。
【0027】
トラッパーとは、大気や真空中で蒸発またはガス化された全てのエアゾール(空気中に拡散している液体・オイル・粉塵)を捕捉するためのものであり、ここでは、ベント付押出機により高分子化合物と分離された後に、ベントやバックベントボックスより吸引された薬剤中に拡散している不純物を捕捉するものである。
【0028】
ドライ真空ポンプとは、オイル真空ポンプや水封式真空ポンプと違いポンプ油や水を使用しない真空ポンプのことであり、廃油や排水が発生、混入しないためドライなガスを得ることができる。前記トラッパーとドライ真空ポンプを組み合わせることにより、油、水が混入しないかつポンプ内部のダスト滞留を防止した排気を行うことができる。
【0029】
コンデンサーとは普通、高温・高圧の冷媒ガスを冷却し液化させる装置を指す。ここでは、ドライ真空ポンプの下流に接続することにより、ドライ真空ポンプより排気される不純物が除去された薬剤を液化して、貯蔵する目的で使用される。コンデンサー内に貯蔵された薬剤は不純物が少ないため再利用することができる。
【0030】
本発明でいう高分子化合物とは、架橋ポリマー、プラスチックやゴム等の熱硬化性樹脂の合成高分子に加えて、リグニン、セルロース、タンパク質等の天然高分子、更には合成高分子と天然高分子との混合物を含んでいる。また、シュレッダーダストのように高分子化合物を主として、これに他の材料が混合したものでもよい。
【0031】
特に、高分子化合物として、架橋ポリマー、薬剤としてアルコール類を含む混合物を用いた場合に、このような装置構成が有効に機能する。また、このような装置構成は、薬剤による反応を容易にするために、超臨界状態のような高圧とする場合において、圧力変動を抑える上で極めて有効である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、架橋ポリマーなどの高分子化合物を薬剤にて、超臨界流体、亜臨界流体あるいは高温高圧にされたガス等の高温高圧流体として反応させてリサイクル処理する際に、薬剤として使用したアルコール類やアルコール類の混合物、あるいは一般に環境負荷の高い物質を外部へそのまま排出させずに、回収してリサイクルすることができるという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0034】
図1は、本発明における架橋ポリエチレンのリサイクル処理装置の一例を示すフロー図である。
【0035】
図1において、ペレット状又はナゲット状に粉砕された架橋ポリエチレンは、ホッパ13を介して反応用押出機1に投入される。一方、反応に要する薬剤としてのエタノールは、薬剤タンク18から薬剤タンクバルブ17を通り、薬剤注入ポンプ15で加圧されると共に、薬剤加熱ヒータ14によって加熱されて反応用押出機1に注入される。その注入位置は、架橋ポリエチレンが反応用押出機1内で十分に高密度化された位置よりも下流であることが好ましく、それにより薬剤の気化による上流側への漏れが防止できる。
【0036】
反応用押出機1は、高温高圧の薬剤が逆流しないように、また混練が充分行なわれるように2本のスクリュー1aを有する二軸押出機を用いた。薬剤注入ポンプ15ではエタノールを反応用押出機1の内部の圧力以上に加圧することが必要であり、また、薬剤加熱ヒータ14により、反応用押出機1で昇温した架橋ポリエチレンの温度が下がらない程度に昇温することが望ましい。反応用押出機1内では、投入した架橋ポリエチレンと注入した薬剤であるエタノールがスクリュー1aにより混合攪拌される。この際、少なくとも反応用押出機1の一部分において、薬剤であるエタノールが超臨界状態となる温度、圧力条件になるようにすると、架橋ポリエチレンとエタノールとの架橋切断反応が充分に進み、良好な高分子処理物が得られる。ここでは、反応時間を十分確保するために、容積50Lの流通式反応容器100を押出機1に接続した。
【0037】
反応用押出機1および流通式反応容器100で可塑化された架橋ポリエチレンの高分子処理物及び薬剤であるエタノールの混合物は、減圧手段としての減圧バルブ11(或いはディスチャージ弁)で減圧され、さらに段階的に圧力を下げるために複数の穴の空いた抵抗体としてブレーカプレート31を取り付けて樹脂の減圧を段階的に行う。
【0038】
さらに後段の排出ライン23が、ベント付押出機2に接続され、ベント付押出機2に導入された粘稠な液体の高分子処理物はスクリュー2aによってベント付押出機2の吐出方向へ押出すと共に、気体は圧力の低いバックベントのベントボックス8へと流れることにより、高分子処理物とエタノールが分離される。
【0039】
ベントボックス8は電熱ヒータによるベントボックスヒータ10によって熱せられ、高分子処理物が流動性を示す温度に保たれる。
【0040】
またベントボックスヒータ10の代わりに、図には示していないがベントボックス8の高分子処理物貯蔵部の外周部に設けられた熱媒体が循環するジャケットと、熱媒体をジャケットに供給する熱媒体循環装置でベントボックス8を加熱するようにしてもよい。
【0041】
ベントボックス8は、反応容器100の体積の2倍、100Lとした。このように流通式反応容器100の体積よりもベントボックス8を大きくすることにより、樹脂とエタノールガスの吐出が断続的になった場合もベントボックス8内部の圧力を流通式反応容器100の圧力の1/2以下に下げることができる。このベントボックス8には、ベントボックス8内の圧力が異常に上昇したときに、その圧を開放する安全弁21が接続されている。
【0042】
ベントボックス8内部は常圧よりやや高くかつ反応容器100よりは低い圧力に維持されており、これによって、高分子処理物が容易にベントボックス8外にライン24を介して排出される。ベントボックス8では軽いエタノールガスは槽の上方から分離され、槽の下には溶融状態の高分子処理物が溜まっており、槽の下部に設けられた穴から自重でベント付押出機2に送られ、スクリュー2aによって先端部のダイ3側に押し出される。
【0043】
ベント付押出機2は一軸、二軸いずれのタイプの押出機も使用可能である。ここでは、ダイ3により、糸状のストランド5として成形され、冷却器4によってほぼ常温に冷却固化される。ストランド5はストランドカッタ6によってペレット7となる。
【0044】
ベント付押出機2の吐出側には、樹脂からエタノールを完全に除去するためにベント9が設けられ、そのベント9から排出されるエタノール等のガスがライン25、そのライン25に接続した調整バルブ91を介して後述するトラッパー16に送られるようにされ、またベント9からのガス圧が異常に高いときは安全弁22から放出される。
【0045】
一方、ベントボックス8で高分子処理物と分離された薬剤であるエタノールは、槽圧調整手段としての槽圧調整バルブ12を介して常圧となり、ドライ真空ポンプ19の吸引力によりトラッパー16に送られる。また同時に、ベント9から適宜排出されるエタノール等のガスが、調整バルブ91で常圧とされてトラッパー16に送られる。
【0046】
トラッパー16では、反応中に生成し、薬剤であるエタノール中に混入した不純物で沸点の高いものや樹脂粉末などを捕集する。トラッパー16で不純物が除去されたエタノールは、ドライ真空ポンプ19に吸引され、コンデンサー20に送られる。
【0047】
コンデンサー20ではガス化したエタノールを冷却し液化させることにより貯蔵する。貯蔵されたエタノールはドレンバルブ(図示せず)より回収された後、再利用される。この際、トラッパー16内のエタノールをドライ真空ポンプ19で吸引排気するため、エタノール中に油が混入することがなく、コンデンサー20で回収した薬剤は、薬剤タンク18に投入して繰り返し使用することができる。
【0048】
このような装置を用い、架橋ポリエチレンの処理量を押出機の吐出能力が許す単位時間あたり2〜500kgの範囲で連続安定運転による処理を行った結果、薬剤であるエタノールは反応用押出機1に注入した量の95.05%がコンデンサー20内に貯蔵された。
【0049】
その結果、エタノールを再利用することができた。
【0050】
次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0051】
上述の実施の形態の架橋ポリエチレンのリサイクル処理においては、薬剤としてエタノールを用いたが、本実施の形態ではエタノールではなく、メタノールを使用して同様に処理した。
【0052】
この結果、図1の装置を用いた場合、架橋ポリエチレンの処理量は押出機の吐出能力が許す単位時間あたり2〜500kgの範囲で連続安定運転による処理が可能であり、薬剤であるメタノールは反応用押出機1に注入された量の90.09%がコンデンサー20に貯蔵された。その結果、回収されたメタノールは再利用することができた。
【0053】
また、さらに他の実施の形態として、架橋ポリエチレンのリサイクル処理において、薬剤としてエタノールではなく、n−プロパノールを使用して同様に処理した。
【0054】
この結果、図1の装置を用いた場合、架橋ポリエチレンの処理量は押出機の吐出能力が許す単位時間あたり2〜500kgの範囲で連続安定運転による処理が可能であり、薬剤であるn−プロパノールは反応用押出機1に注入された量の99.89%がコンデンサー20に貯蔵された。その結果、回収されたn−プロパノールは再利用することができた。
【0055】
次に、上述の実施の形態と比較して、図2〜図4に示す薬剤の回収装置を用いた比較例を説明する。
【0056】
比較例1
図2は、ベント付押出機2に設けられたバックベントのベントボックス8にトラッパー16、ドライ真空ポンプ19を組み合わせて接続した薬剤の回収装置であり、他の構成は図1の実施の形態と同じである。
【0057】
この方法を用いると、ベント付押出機2に搬送されてきた高分子化合物と薬剤は安定して分離され、ドライ真空ポンプ19の吸引力により薬剤がトラッパー16へと送られる。トラッパー16では、反応中に生成し、薬剤であるアルコール類中に混入した不純物のうち沸点の高いものが捕集され、ドライ真空ポンプ19へと薬剤が送られる。油、水フリーである薬剤はそのまま外部へと排出される。
【0058】
このような装置であると、薬剤としてメタノール、エタノール、n−プロパノール等のアルコール類を使用した場合、薬剤の外部への排出は環境面で問題である。
【0059】
比較例2
図3は、ベント付押出機2に設けられたバックベントのベントボックス8にドライ真空ポンプ19、コンデンサー20を組み合わせて接続した薬剤の回収装置である。
【0060】
この方法を用いると、ベント付押出機2に搬送されてきた高分子化合物と薬剤は安定して分離され、薬剤はドライ真空ポンプ19へと吸引されて送られる。ここで、反応中に生成し、薬剤であるアルコール類中に、混入した不純物はそのままドライ真空ポンプ19へと送られるため、不純物である樹脂粉末や油成分がドライ真空ポンプ19内部に滞留したり、そのままアルコール類とともにコンデンサー20へと送られる。このためドライ真空ポンプ19が故障しやすくなる問題やコンデンサー20内には不純物を含んだままのアルコール類が貯蔵されるので、そのまま再利用することは難しい。
【0061】
比較例3
図4は、ベント付押出機2に設けられたバックベントのベントボックス8にドライ真空ポンプ19を接続した薬剤の回収装置である。
【0062】
この方法を用いると、ベント付押出機2に搬送されてきた高分子化合物と薬剤は安定して分離され、薬剤はドライ真空ポンプ19へと吸引されて送られる。ここで、反応中に生成し、薬剤であるアルコール類中に混入した不純物はそのままドライ真空ポンプ19へと送られるため、不純物である樹脂粉末や油成分がドライ真空ポンプ19内部に滞留したり、そのままアルコール類とともに外部へ排出される。
【0063】
これは、図2のような薬剤の回収装置を持つ比較例1と同様、薬剤の外部への排出は環境面で問題である。
【0064】
これらの比較例1〜3に示すように、ベント付押出機2に設けられたバックベントのベントボックス8へは、トラッパー16、ドライ真空ポンプ19、コンデンサー20を組み合わせて接続する本発明が最適であることが分かる。
【0065】
以上本発明は、高分子処理物と薬剤が混入したベント付押出機より薬剤のみを安定して分離し、不純物である樹脂粉末や油成分などが混合していない薬剤の回収を可能とさせるものである。これにより、有害な薬剤を外部へ排出することを防ぐとともに薬剤のリサイクルを可能とさせる環境的に価値の高い効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【図2】薬剤の回収装置としての比較例を示す図である。
【図3】同じく薬剤の回収装置としての比較例を示す図である。
【図4】同じく薬剤の回収装置としての比較例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 反応用押出機
2 ベント付押出機
8 ベントボックス
16 トラッパー
18 薬剤タンク
19 真空ポンプ
20 コンデンサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子化合物と、該高分子化合物と反応させる薬剤とを反応させて高分子処理物を生成する方法において、反応容器からの高分子処理物を減圧してベント付押出機に導入し、そのベント付押出機で、高分子処理物を押し出しながら、その高分子処理物からガス分として不純物を含む薬剤を分離し、その分離されたガス分をトラッパーに導入すると共に、そのトラッパー内を真空ポンプで吸引してガス分中に含まれる不純物を分離した後、真空ポンプで吸引したガスをコンデンサーを通して冷却して薬剤を回収することを特徴とする高分子化合物と薬剤の回収方法。
【請求項2】
真空ポンプに、ドライ真空ポンプを用いてトラッパー内のガスを吸引排気する請求項1記載の高分子化合物と薬剤の回収方法。
【請求項3】
前記高分子化合物と前記薬剤を、反応用押出機で、超臨界または亜臨界状態で反応容器に供給すると共に反応させ、その反応容器から排出された高分子処理物を、前記ベント付押出機の前段に供給し、そのベント付押出機の押出側後方より、不純物を含む薬剤をガス分として分離する請求項1又は2記載の高分子化合物と薬剤の回収方法。
【請求項4】
前記ベント付押出機の押出側後方に、前記反応容器の1倍以上の体積を有するバックベントボックスを接続し、そのバックベントボックスで分離した不純物を含む薬剤のガスを前記トラッパーに供給し、そのトラッパー内のガスを真空ポンプで吸引して、ガス中の不純物を分離し、不純物が分離された薬剤のガスをコンデンサーで冷却する請求項1〜3のいずれかに記載の高分子化合物と薬剤の回収方法。
【請求項5】
前記高分子化合物が、分子中にシロキサン結合を有するポリマーであり、前記薬剤がアルコール類またはアルコール類を含む混合物である請求項1〜3のいずれかに記載の高分子化合物と薬剤の回収方法。
【請求項6】
高分子化合物と、該高分子化合物と反応させる薬剤とを反応させて高分子処理物を生成する装置において、
反応容器から減圧されて排出され高分子処理物を導入すると共に高分子処理物を押し出しながら、その高分子処理物からガス分として不純物を含む薬剤を分離するベント付押出機と、
そのベント付押出機で、その分離されたガス分を導入し、ガス中の不純物を分離するトラッパーと、
トラッパー内を吸引排気する真空ポンプと、
真空ポンプの排気側に接続されると共にその排気されたガスを冷却して薬剤を回収するコンデンサーと
を備えたことを特徴とする高分子化合物と薬剤の回収装置。
【請求項7】
真空ポンプが、ドライ真空ポンプである請求項6記載の高分子化合物と薬剤の回収装置。
【請求項8】
前記高分子化合物と前記薬剤を混練して超臨界または亜臨界状態で押し出す反応用押出機と、その反応押出機から高分子化合物と薬剤を反応する反応容器とを備え、反応容器と前記ベント付押出機の前段の間には、高分子処理物を減圧して供給する減圧手段を有する請求項6又は7記載の高分子化合物と薬剤の回収装置。
【請求項9】
前記ベント付押出機の押出側後方に、前記反応容器の1倍以上の体積を有するバックベントボックスが接続され、そのバックベントボックスに前記トラッパーが接続されると共にそのトラッパーに真空ポンプが接続され、真空ポンプの排気側にコンデンサーが接続される請求項6〜8のいずれかに記載の高分子化合物と薬剤の回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−84748(P2007−84748A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277597(P2005−277597)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)/超臨界流体における架橋ポリマーのクローズドリサイクル技術の開発」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】