説明

高分子化合物及びそれを用いた光電変換素子

【課題】最も低エネルギー側の極大吸収波長がより長波長である高分子化合物の提供。
【解決手段】下記式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。


(式中、Arは、2価の複素環基を表す。Arは、金属原子を含む2価の基を表す。A及びAは、同一又は相異なり、=C(CN)で表される基又は=Ar=C(CN)で表される基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物、及び、太陽電池、光センサーなどの光電デバイスに用いられる光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に設けられる活性層とを備える素子である。光電変換素子では、いずれかの電極を透明又は半透明の材料から構成し、透明又は半透明とした電極側から活性層に光を入射させる。活性層に入射した光のエネルギー(hν)によって、活性層において電荷(正孔及び電子)が生成し、生成した正孔は陽極に向かい、電子は陰極に向かう。電極に外部回路を接続することにより、外部回路に電流(I)が供給される。
【0003】
上記活性層は、電子受容性化合物(n型半導体)と電子供与性化合物(p型半導体)とから構成されている。電子受容性化合物(n型半導体)と電子供与性化合物(p型半導体)とが混合されて用いられている活性層はバルクへテロ活性層と呼称される。
【0004】
光電変換素子の活性層に用いられる高分子化合物としては、例えば、チオフェンジイル基と金属原子を含む2価の基とを有する下記式(1)で表される高分子化合物が記載されている(非特許文献1)。
【0005】
【化1】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ジャーナル オブ ケミカル フィジックス(J. Chem. Phys.)、1999年、第110巻、p.4963−4970
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記高分子化合物の最も低エネルギー側の極大吸収波長(λmax)は407nm(3.05eV)であり、最も低エネルギー側の極大吸収波長が短波長であるという課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、最も低エネルギー側の極大吸収波長が長波長である高分子化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は第一に、下記式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を提供する。
【0010】
【化2】

【0011】
式中、Arは、2価の複素環基を表す。Arは、金属原子を含む2価の基を表す。A及びAは、同一又は相異なり、=C(CN)で表される基又は下記式(II)で表される基を表す。
【0012】
【化3】

【0013】
式中、Arは、4価の有機基を表す。
【0014】
本発明は第二に、陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられる活性層とを有し、活性層中に電子供与性化合物と電子受容性化合物とを有し、該電子供与性化合物及び該電子受容性化合物のうちの少なくとも一方が、前記高分子化合物である光電変換素子を提供する。
【0015】
本発明は第三に、陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられる活性層とを有し、活性層中に電子供与性化合物と電子受容性化合物とを有し、該電子供与性化合物及び該電子受容性化合物のうちの少なくとも一方が、式(VIII)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物である光電変換素子を提供する。
【0016】
【化4】

【0017】
式中、Arは、カルバゾールジイル基を表す。Arは、金属原子を含む2価の基を表す。
【発明の効果】
【0018】
(高分子化合物)
本発明の高分子化合物は、最も低エネルギー側の極大吸収波長が長波長であるため、本発明は極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の高分子化合物は、下記式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物である。
【0020】
【化5】

【0021】
式中、Arは、2価の複素環基を表す。Arは、金属原子を含む2価の基を表す。A及びAは、同一又は相異なり、=C(CN)で表される基又は下記式(II)で表される基を表す。
【0022】
【化6】

【0023】
式中、Arは、4価の有機基を表す。
【0024】
Arで表される2価の複素環基は、通常、その炭素数が2〜50であり、置換基を有していてもよい。2価の複素環基の具体例としては、カルバゾールジイル基、チオフェンジイル基、チアゾールジイル基、ピロールジイル基、ピリジンジイル基が挙げられる。2価の複素環基としては、ヘテロアリーレン基が好ましい。
【0025】
2価の複素環基の中でも、カルバゾールジイル基、チオフェンジイル基が好ましい。
【0026】
Arで表される金属原子を含む2価の基としては、下記式(IX)で表される基が挙げられる。
【0027】
【化7】

【0028】
式中、Mは金属原子を表す。R9はアルキル基を表す。6個あるR9は、同一でも相異なってもよい。
【0029】
金属原子を含む2価の基は、遷移金属原子を含む2価の基であることが好ましく、遷移金属原子が、白金原子、金原子、パラジウム原子又は水銀原子であることがより好ましい。
【0030】
で表されるアルキル基は、通常、その炭素数が1〜20である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基が挙げられる。アルキル基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0031】
金属原子を含む2価の基の好ましい一態様としては、下記式(IV)で表される基である。
【0032】
【化8】

【0033】
式中、Rはアルキル基を表す。6個あるRは、同一でも相異なってもよい。
【0034】
で表されるアルキル基は、通常、その炭素数が1〜20である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基が挙げられる。アルキル基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0035】
Arで表される4価の有機基は、通常、その炭素数が6〜50である。4価の有機基としては、下記式(Ar3−1)で表される基、下記式(Ar3−2)で表される基、下記式(Ar3−3)で表される基が挙げられる。
【0036】
【化9】

【0037】
式(Ar3−1)〜(Ar3−3)中、R10、R11及びR12は、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基又はアルキル基を表す。4個あるR10は、同一でも相異なってもよい。6個あるR11は、同一でも相異なってもよい。6個あるR12は、同一でも相異なってもよい。
【0038】
10〜R12で表されるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
10〜R12で表されるアルキル基の具体例としては、Rで表されるアルキル基の具体例と同じ基が挙げられる。
10〜R12で表されるアルコキシ基は、通常、その炭素数が1〜20である。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘプチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基が挙げられる。アルコキシ基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0039】
4価の有機基は、キノイド構造を有する基であることが好ましい。
【0040】
式(I)で表される繰り返し単位の好ましい一態様は、A及びAがともに=C(CN)で表される基である。
【0041】
本発明の高分子化合物は、下記式(III)で表される繰り返し単位をさらに有していてもよい。
【0042】
【化10】

【0043】
本発明の高分子化合物は、さらに、他の繰り返し単位を有していてもよい。該他の繰り返し単位としては、下記式(B−1)〜下記式(B−15)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0044】
【化11】

【0045】
【化12】

【0046】
式(B−1)〜(B−15)中、R21〜R34は、同一又は相異なり、水素原子又は置換基を表す。6個あるR21は、同一でも相異なってもよい。5個あるR22は、同一でも相異なってもよい。6個あるR23は、同一でも相異なってもよい。4個あるR24は、同一でも相異なってもよい。2個あるR25は、同一でも相異なってもよい。4個あるR27は、同一でも相異なってもよい。3個あるR28は、同一でも相異なってもよい。4個あるR29は、同一でも相異なってもよい。2個あるR30は、同一でも相異なってもよい。4個あるR31は、同一でも相異なってもよい。2個あるR32は、同一でも相異なってもよい。2個あるR33は、同一でも相異なってもよい。2個あるR34は、同一でも相異なってもよい。
【0047】
21〜R34で表される置換基としては、アルキル基、アルコキシ基が挙げられる。
【0048】
本発明の高分子化合物が有する繰り返し単位の数の合計を100とした場合、式(I)で表される繰り返し単位の数は、1〜100であることが好ましい。また、式(III)で表される構造単位(繰り返し単位)の数は、0〜99であることが好ましい。
【0049】
本発明の高分子化合物は、ポリスチレン換算の数平均分子量が、10〜10であることが好ましく、10〜107であることがより好ましい。
【0050】
本発明において、高分子化合物の最も低エネルギー側の極大吸収波長は、高分子化合物の吸光度が極大値をとる最も低エネルギー側の波長を表す。極大吸収波長が長波長の高分子化合物を活性層に含む光電変換素子は、電気に変換できる光の波長の範囲が広がり、短絡電流密度、光電変換効率などの素子特性が高くなる。
【0051】
(高分子化合物の製造方法)
本発明の高分子化合物を製造する方法としては、下記式(III)で表される構造単位を有する高分子化合物と、下記式(V)で表される化合物又は下記式(VI)で表される化合物とを反応させて下記式(VII)で表される構造単位を有する高分子化合物を製造する方法が挙げられる。
【0052】
【化13】

【0053】
【化14】

【0054】
【化15】

【0055】
式中、Arは、4価の有機基を表す。
【0056】
【化16】

【0057】
及びAは、同一又は相異なり、=C(CN)で表される基又は下記式(II)で表される基を表す。
【0058】
【化17】

【0059】
式中、Arは、4価の有機基を表す。
【0060】
式(III)で表される構造単位は、高分子化合物の主鎖中に含まれていても側鎖中に含まれていてもよいが、主鎖中に含まれることが好ましい。
【0061】
本発明の高分子化合物が有する式(I)で表される繰り返し単位は、式(VII)で表される構造単位を含む。式(VII)で表される構造単位を有する高分子化合物としては、本発明の高分子化合物が挙げられる。
【0062】
式(VI)で表される化合物としては、下記式(VI−1)で表される化合物、下記式(VI−2)で表される化合物、下記式(VI−3)で表される化合物が挙げられる。
【0063】
【化18】

【0064】
式(VI−1)〜(VI−3)中、R61、R62及びR63は、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基又はアルキル基を表す。4個あるR61は、同一でも相異なってもよい。8個あるR62は、同一でも相異なってもよい。6個あるR63は、同一でも相異なってもよい。
【0065】
61〜R63で表されるハロゲン原子の具体例としては、R10で表されるハロゲン原子の具体例と同じ原子が挙げられる。
61〜R63で表されるアルキル基の具体例としては、R10で表されるアルキル基の具体例と同じ基が挙げられる。
61〜R63で表されるアルコキシ基の具体例としては、R10で表されるアルコキシ基の具体例と同じ基が挙げられる。
【0066】
反応温度は、通常、室温から高分子化合物の熱分解温度以下の範囲であり、好ましくは20℃〜150℃の範囲である。反応時間は、通常、1分〜7日である。反応は、大気開放下で実施しても不活性雰囲気下で実施しても構わないが、好ましくはNガスやArガスなどの不活性雰囲気下で実施される。式(III)で表わされる構造単位1モル部に対し、反応に用いる式(V)、式(VI−1)、式(VI−2)、式(VI−3)で表わされる化合物の比率は、0.1モル部以上である。これらの化合物を1モル部以上用いる場合、過剰量の式(V)、式(VI−1)、式(VI−2)、式(VI−3)で表わされる化合物は、式(VII)で表わされる構造単位を有する高分子化合物から昇華、再沈澱、クロマトグラフィーなどの手法を用いて分離することができる。反応溶媒としては、式(III)で表わされる構造単位を有する高分子化合物、式(V)、式(VI−1)、式(VI−2)、式(VI−3)で表わされる化合物を完全に溶解する溶媒を用いることが望ましいが、一部分が溶解しない溶媒を用いてもよい。
【0067】
式(III)で表される構造単位を有する高分子化合物の一態様は、下記式(VIII)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物である。
【0068】
【化19】

【0069】
式中、Arは、カルバゾールジイル基を表す。Arは、金属原子を含む2価の基を表す。
【0070】
Arで表される金属原子を含む2価の基の具体例としては、Arで表される金属原子を含む2価の基の具体例と同じ基が挙げられる。
【0071】
(光電変換素子)
本発明の光電変換素子は、陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられる活性層とを有し、活性層中に電子供与性化合物と電子受容性化合物とを有し、該電子供与性化合物及び該電子受容性化合物のうちの少なくとも一方が、前記高分子化合物である光電変換素子である。
【0072】
本発明の光電変換素子の他の態様は、陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられる活性層とを有し、活性層中に電子供与性化合物と電子受容性化合物とを有し、該電子供与性化合物及び該電子受容性化合物のうちの少なくとも一方が、下記式(VIII)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物である光電変換素子である。
【0073】
【化20】

【0074】
式中、Arは、カルバゾールジイル基を表す。Arは、金属原子を含む2価の基を表す。
【0075】
本発明に係る光電変換素子を構成する、陽極、活性層、活性層を構成する電子供与性化合物及び電子受容性化合物、陰極、及び必要に応じて形成される他の構成要素について、以下に詳しく説明する。
【0076】
(光電変換素子の基本的形態)
本発明の光電変換素子の基本的形態としては、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、電子供与性化合物(p型の有機半導体)と電子受容性化合物(n型の有機半導体など)との有機組成物から形成されるバルクへテロ型活性層もしくはp/n積層型活性層を有する。
【0077】
(光電変換素子の基本動作)
透明又は半透明の電極から入射した光エネルギーが電子受容性化合物及び/又は電子供与性化合物で吸収され、電子と正孔がクーロン結合してなる励起子を生成する。生成した励起子が移動して、電子受容性化合物と電子供与性化合物が隣接しているヘテロ接合界面に達すると、界面でのそれぞれの最高占有分子軌道(HOMO)エネルギー及び最低空分子軌道(LUMO)エネルギーの違いにより電子と正孔が分離し、独立に動くことができる電荷(電子と正孔)が発生する。
発生したそれぞれの電荷は、それぞれ電極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
本発明の高分子化合物を用いた光電変換素子では、長波長域に吸収を持ち広範囲の波長を光電変換できるため、光電変換効率が高くなる。
【0078】
(基板)
本発明の光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に化学的に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0079】
(電極)
前記の透明又は半透明の電極材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド(IZO)、NESA等の導電性材料を用いて作製された膜や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。透明又は半透明の電極は、陽極であっても陰極であってもよい。
【0080】
他方の電極は透明でなくてもよく、該電極の電極材料としては、金属、導電性高分子等を用いることができる。電極材料の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又は、1種以上の前記金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン及び錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体が挙げられる。合金としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
【0081】
(バッファー層)
光電変換効率を向上させるための手段として活性層以外の付加的な中間層(電荷輸送層など)を使用してもよい。中間層に用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物又は酸化物等が挙げられ、具体的にはフッ化リチウムが挙げられる。
また、酸化チタン等の無機半導体の微粒子、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))とPSS(ポリ(4−スチレンスルホネート))との混合物(PEDOT:PSS)などを中間層に用いられる材料として用いてもよい。
【0082】
(活性層)
本発明の光電変換素子に含まれる活性層は、電子供与性化合物及び電子受容性化合物のうちの少なくとも一方として、式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含む。なお、前記電子供与性化合物、前記電子受容性化合物は、これらの化合物のHOMOまたはLUMOのエネルギー準位から相対的に決定される。
【0083】
(電子供与性化合物)
電子供与性化合物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよいが、高分子化合物が好ましい。電子供与性化合物としては、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、チオフェンを部分骨格として持つ高分子化合物、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が挙げられ、中でも、高分子化合物が好ましい。
電子供与性化合物としては、置換基を有していてもよいポリチオフェン(ポリチオフェン及びその誘導体)、チオフェンの2〜5量体を含む構造又はチオフェンの誘導体の2〜5量体を含む構造を有する高分子化合物、およびチオフェンを部分骨格として持つ高分子化合物が好ましく、ポリチオフェン及びその誘導体がより好ましい。ここで、ポリチオフェン誘導体とは、置換基を有するチオフェンジイル基を有する高分子化合物である。
ポリチオフェン及びその誘導体としては、ホモポリマーであることが好ましい。ホモポリマーとは、チオフェンジイル基及び置換基を有するチオフェンジイル基からなる群から選ばれる基のみが複数個結合してなるポリマーである。チオフェンジイル基としては、チオフェン−2,5−ジイル基が好ましく、置換基を有するチオフェンジイル基としては、アルキルチオフェン−2、5−ジイル基が好ましい。ホモポリマーであるポリチオフェン及びその誘導体の具体例としては、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(P3HT)、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−ジイル)、ポリ(3−ドデシルチオフェン−2,5−ジイル)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン−2,5−ジイル)が挙げられる。ホモポリマーであるポリチオフェン及びその誘導体の中では、炭素数6〜30のアルキル基が置換したチオフェンジイル基からなるポリチオフェンホモポリマーが好ましい。
【0084】
チオフェンを部分骨格として持つ高分子化合物としては、下記式(2)で表される高分子化合物が挙げられる。式中、nは繰り返しの数を表す。
【0085】
【化21】

【0086】
式中、R71及びR72は、同一又は相異なり、水素原子又は置換基を表す。2個あるR71は、同一でも相異なってもよい。6個あるR72は、同一でも相異なってもよい。
【0087】
71、R72で表される置換基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
【0088】
式(2)で表される高分子化合物は、R71がアルキル基であり、R72が水素原子である高分子化合物が好ましい。式(2)で表される高分子化合物の具体例としては、下記式(2−1)で表される高分子化合物が挙げられる。
【0089】
【化22】

【0090】
(電子受容性化合物)
前記電子受容性化合物としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン及びその誘導体、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体、酸化チタンなどの金属酸化物、カーボンナノチューブが挙げられる。電子受容性化合物としては、好ましくは、ベンゾチアジアゾール構造を含む化合物、繰り返し単位にベンゾチアジアゾール構造を含む高分子化合物、キノキサリン構造を含む化合物、繰り返し単位にキノキサリン構造を含む高分子化合物、酸化チタン、カーボンナノチューブ、フラーレン、フラーレン誘導体であり、より好ましくは、フラーレン、フラーレン誘導体、ベンゾチアジアゾール構造を含む化合物、繰り返し単位にベンゾチアジアゾール構造を含む高分子化合物、キノキサリン構造を含む化合物、繰り返し単位にキノキサリン構造を含む高分子化合物であり、さらに好ましくは、ベンゾチアジアゾール構造を含む化合物、繰り返し単位にベンゾチアジアゾール構造を含む高分子化合物、キノキサリン構造を含む化合物、繰り返し単位にキノキサリン構造を含む高分子化合物であり、特に好ましくは、繰り返し単位にベンゾチアジアゾール構造を含む高分子化合物、繰り返し単位にキノキサリン構造を含む高分子化合物である。
n型半導体としては、フラーレンおよび置換基を有するフラーレン(フラーレン誘導体)であることが好ましい。
【0091】
繰り返し単位にベンゾチアジアゾール構造を含む高分子化合物の例としては、下記式(2)で表される高分子化合物が挙げられる。式中、nは繰り返しの数を表す。
【0092】
【化23】

【0093】
式中、R71及びR72は、同一又は相異なり、水素原子又は置換基を表す。2個あるR71は、同一でも相異なってもよい。6個あるR72は、同一でも相異なってもよい。
【0094】
71、R72で表される置換基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
【0095】
式(2)で表される高分子化合物は、R71がアルキル基であり、R72が水素原子である高分子化合物が好ましい。式(2)で表される高分子化合物の具体例としては、下記式(2−1)で表される高分子化合物が挙げられる。
【0096】
【化24】

【0097】
フラーレンの例としては、C60フラーレン、C70フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、C84フラーレンが挙げられる。
フラーレン誘導体としては、C60フラーレン、C70フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、C84フラーレンの誘導体が挙げられる。
【0098】
60フラーレンの誘導体の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
【0099】
【化25】

【0100】
70フラーレンの誘導体の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
【0101】
【化26】

【0102】
また、フラーレン誘導体の例としては、[6,6]フェニル−C61酪酸メチルエステル(C60PCBM、[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C71酪酸メチルエステル(C70PCBM、[6,6]-Phenyl C71 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C85酪酸メチルエステル(C84PCBM、[6,6]-Phenyl C85 butyric acid methyl ester)、[6,6]チェニル−C61酪酸メチルエステル([6,6]-Thienyl C61 butyric acid methyl ester)が挙げられる。
【0103】
活性層において、電子供与性化合物に対する電子受容性化合物の使用割合は、電子供与性化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、20〜500重量部であることがより好ましい。
【0104】
活性層の厚さは、通常、1nm〜100μmが好ましく、より好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、特に好ましくは20nm〜200nmである。
【0105】
(その他の成分)
活性層には、種々の機能を発現させるために、必要に応じて他の成分を含有させてもよい。例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するためのため増感剤、紫外線からの安定性を増すための光安定剤、等が挙げられる。
【0106】
活性層を構成する電子供与性化合物及び電子受容性化合物以外の成分は、電子供与性化合物及び電子受容性化合物の合計量100重量部に対し、それぞれ5重量部以下、特に、0.01〜3重量部の割合で配合するのが効果的である。
また、活性層は、機械的特性を高めるため、電子供与性化合物及び電子受容性化合物以外の高分子化合物を高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。前記高分子バインダーとしては、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5-チェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーポネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0107】
(活性層の製造方法)
本願発明の光電変換素子が有する活性層は、バルクへテロ型の場合、上記電子供与性化合物、電子受容性化合物、及び必要に応じて配合される他の成分を含む溶液からの成膜により形成することができる。例えば、該溶液を陽極又は陰極上に塗布し、活性層を形成することができる。その後、活性層上に他の電極を形成し、光電変換素子を製造することができる。
【0108】
溶液からの成膜に用いる溶媒は、本発明の上述の電子供与性化合物及び電子受容性化合物を溶解させるものであれば、特に制限はないが、複数の溶媒を混合してもよい。かかる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒等が挙げられる。活性層を構成する有機材料は、通常、前記溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0109】
成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0110】
(素子の用途)
本発明の光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0111】
また、電極間に電圧を印加した状態、あるいは無印加の状態で、透明又は半透明の電極から光を入射させることにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【0112】
(太陽電池モジュール)
有機薄膜太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池などで用いられる基板一体型モジュール構造等が知られている。本発明の有機光電変換素子を適用した有機薄膜太陽電池でも使用目的や使用場所 及び環境により、適宜これらのモジュール構造を選択できる。
【0113】
代表的なスーパーストレートタイプあるいはサブストレートタイプのモジュールは、片側又は両側が透明で反射防止処理を施された支持基板の間に一定間隔にセルが配置され、隣り合うセル同士が金属リード又はフレキシブル配線等によって接続され、外縁部に集電電極が配置されており、発生した電力を外部に取り出す構造となっている。基板とセルの間には、セルの保護や集電効率向上のため、目的に応じエチレンビニルアセテート(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフィルム又は充填樹脂の形で用いてもよい。また、外部からの衝撃が少ないところなど表面を硬い素材で覆う必要のない場所において使用する場合には、表面保護層を透明プラスチックフィルムで構成し、又は上記充填樹脂を硬化させることによって保護機能を付与し、片側の支持基板をなくすことが可能である。支持基板の周囲は、内部の密封及びモジュールの剛性を確保するため金属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板とフレームの間は封止材料で密封シールする。また、セルそのものや支持基板、充填材料及び封止材料に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太陽電池を構成することもできる。
【0114】
ポリマーフィルム等のフレキシブル支持体を用いた太陽電池の場合、ロール状の支持体を送り出しながら順次セルを形成し、所望のサイズに切断した後、周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールすることにより電池本体を作製できる。また、Solar Energy Materials and Solar Cells, 48,p383-391記載の「SCAF」とよばれるモジュール構造とすることもできる。更に、フレキシブル支持体を用いた太陽電池は曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
【実施例】
【0115】
以下、本発明の実施例を説明する。以下に示す実施例は、本発明を説明するための好適な例示であり、本発明を限定するものではない。
【0116】
合成例1
(高分子化合物P1の合成)
モノマーの合成は、Macromolecules,2009年,第42巻,p.8172(T. Michinobu, H. Osako, K. Shigehara)及びMacromolecules,1992年,第25巻,p.2294 (1992)(D. R. Rutherford, J. K. Stille, C. M. Elliott, V. R. Reichert)に記載の方法で行った。白金アセチリド錯体高分子である高分子化合物P1の合成方法を以下に示す。
【0117】
【化27】

【0118】
20mLのナシ型フラスコに、3,6-ジエチニル-9-ヘキサデシルカルバゾール(化合物1)を105mg(0.238mmol)、PtCl(PEtを123mg(0.239mmol)、CuIを3.6mg(0.019mmol)、ジイソプロピルアミンを0.390mL、脱水ジクロロメタンを0.390mL加えた。ナシ型フラスコを真空ラインに接続して脱気した後、室温(25℃)で15時間攪拌した。攪拌を止めた後、シリカゲルカラムに反応液を通して触媒を除去した。反応液中の溶媒を減圧除去して高分子化合物P1を142mg得た。高分子化合物P1の収率は68%であった。
【0119】
1H NMR (400 MHz, C6D6): 0.93-1.35 (m, 47n H), 2.13-2.19 (m, 12n H), 3.77 (s, 2n H), 7.86 (d, J = 9.2 Hz, 2n H), 8.54 (s, 2n H) ppm、
IR (neat): 3216, 3057, 3036, 2961, 2924, 2874, 2852, 2729, 2686, 2099, 1854, 1748, 1731, 1621, 1601, 1565, 1480, 1471, 1455, 1412, 1376, 1348, 1309, 1276, 1240, 1196, 1145, 1129, 1034, 923, 876, 802, 767, 732, 652, 630 cm-1
【0120】
合成例2
(高分子化合物2の合成)
【0121】
【化28】

【0122】
20mLのナシ型フラスコに、3,6-ジ-tert-ブチル-1,8-ジエチニル-9-ヘキサデシルカルバゾール(化合物2)を132mg(0.239mmol)、PtCl(PEtを122mg(0.239mmol)、CuIを3.6mg(0.019mmol)、ジイソプロピルアミンを0.375mL、脱水ジクロロメタンを0.376mL加えた。ナシ型フラスコを真空ラインに接続して脱気した後、室温(25℃)で15時間攪拌した。攪拌を止めた後、シリカゲルカラムに反応液を通して触媒を除去した。生成物であるジクロロメタン溶液を、ヘキサンで再沈澱して精製した。沈殿物をろ集し、高分子化合物P2を173mg得た。高分子化合物P2の収率は99%であった。
【0123】
1H NMR (400 MHz, C6D6): 0.90 (t, J = 6.8 Hz, 3n H), 1.11-1.68 (m, 64n H), 2.31 (s, 12n H), 6.32 (s, 2n H), 7.96 (s, 2n H), 8.24 (s, 2n H) ppm、
IR (neat): 3193, 3060, 2961, 2924, 2873, 2732, 2681, 2091, 1742, 1611, 1588, 1573, 1483, 1463, 1455, 1417, 1391, 1376, 1362, 1324, 1270, 1201, 1153, 1132, 1098, 1077, 1050, 1035, 1006, 919, 879, 862, 840, 829, 766, 743, 732, 712, 694, 668, 645 cm-1
【0124】
合成例3
(高分子化合物P3の合成)
【0125】
【化29】

【0126】
20mLのナシ型フラスコに、2,7-ジエチニル-9-ヘキサデシルカルバゾール(化合物3)を106mg(0.241mmol)、PtCl(PEtを123mg(0.239mmol)、CuIを3.9mg(0.020mmol)、ジイソプロピルアミンを1.28mL、脱水ジクロロメタンを1.28mL加えた。ナシ型フラスコを真空ラインに接続して脱気した後、室温(25℃)で15時間攪拌した。攪拌を止めた後、シリカゲルカラムに反応液を通して触媒を除去した。生成物であるジクロロメタン溶液を、ヘキサンで再沈澱して精製した。沈殿物をろ集し、高分子化合物P3を139mg得た。高分子化合物P3の収率は74%であった。
【0127】
1H NMR (400 MHz, C6D6): 0.87-1.61 (m, 49n H), 2.18-2.21 (m, 11n H), 3.80 (s, 2n H), 7.66 (s, 3n H), 7.99 (d, J = 7.6 Hz, 2n H) ppm、
IR (neat): 3054, 2960, 2925, 2874, 2853, 2736, 2681, 2095, 1597, 1455, 1431, 1412, 1375, 1353, 1319, 1266, 1240, 1173, 1155, 1127, 1051, 1036, 846, 819, 805, 768, 741, 733 cm-1
【0128】
合成例4
(高分子化合物P4の合成)
【0129】
【化30】

【0130】
20mLのナシ型フラスコに、2,5-ジエチニル-3-ヘキシルチオフェン(化合物4) 100mg(0.46mmol)、PtCl(PEtを231mg(0.46mmol)、CuIを2.3mg(0.012mmol)、ジイソプロピルアミンを30mL、脱水ジクロロメタンを1.28mL加えた。ナシ型フラスコ内をアルゴンガスで脱気した後、室温(25℃)で15時間攪拌した。攪拌を止めた後、アルミナカラムに反応液を通して触媒を除去した。反応液中の溶媒を除去した後、メタノールで洗浄し、高分子化合物P4を得た。高分子化合物P4の収率は70%であった。
【0131】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 0.85-2.15 (m, 41n H), 6.53 (s, n H) ppm、
IR (KBr): 2965, 2933, 2877, 2088, 1527, 1455, 1412, 1256, 1189, 1038, 830, 767, 735, 711 cm-1
Td5% 295℃。
【0132】
実施例1
(高分子化合物P5の合成)
白金アセチリド錯体高分子にテトラシアノエチレン(TCNE)を付加する反応は以下の方法に従い実施した。
【0133】
【化31】

【0134】
50mLのフラスコに、高分子化合物P1を15mg(繰り返し単位の量は17mol)、TCNEを2.2mg(17mol)、1,2-ジクロロベンゼンを2mL加えた。窒素雰囲気下、70℃で1時間反応させた。室温(25℃)に冷却した後、反応液中の溶媒を減圧除去し、高分子化合物P5を得た。高分子化合物P5の収率は100%であった。
【0135】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 0.87 (s, 15n H), 1.25-2.35 (m, 40n H), 4.31 (s, 2n H), 7.25-7.93 (m, 6n H) ppm、
IR (KBr): 2964, 2924, 2851, 2214, 2189, 2112, 1595, 1477, 1458, 1416, 1377, 1351, 1280, 1259, 1098, 1083, 1069, 1034, 993, 813, 802, 764 cm-1
【0136】
実施例2
(高分子化合物P7の合成)
【0137】
【化32】

【0138】
50mLのフラスコに、高分子化合物P2を15mg(繰り返し単位の量は15mol)、TCNEを2.0mg(15mol)、1,2-ジクロロベンゼンを2mL加えた。窒素雰囲気下、70℃で1時間反応させた。室温(25℃)に冷却した後、反応液中の溶媒を減圧除去し、高分子化合物P7を得た。高分子化合物P7の収率は100%であった。
【0139】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 0.74-2.22 (m, 79n H), 4.20 (s, 2n H), 7.45-8.15 (m, 4n H) ppm、
IR (KBr): 2961, 2927, 2853, 2203, 2156, 2093, 1484, 1457, 1416, 1378, 1363, 1270, 1036, 863, 768, 642 cm-1
【0140】
実施例3
(高分子化合物P9の合成)
【0141】
【化33】

【0142】
50mLのフラスコに、高分子化合物P3を15mg(繰り返し単位の量は17mol)、TCNEを2.2mg(17mol)、1,2-ジクロロベンゼンを2mL加えた。窒素雰囲気下、70℃で1時間反応させた。室温(25℃)に冷却した後、反応液中の溶媒を減圧除去し、高分子化合物P9を得た。高分子化合物P9の収率は100%であった。
【0143】
1H NMR (300 MHz, C6D6): 0.89-1.35 (m, 61n H), 2.86 (s, 2n H), 3.58 (s, 2n H), 7.03-7.16 (m, 6n H) ppm、
IR (KBr): 2925, 2851, 2787, 2160, 2107, 1604, 1454, 1320, 1252, 1037, 812, 766, 741 cm-1
【0144】
実施例4
(高分子化合物P11の合成)
【0145】
【化34】

【0146】
50mLのフラスコに、高分子化合物P4を23.2mg(繰り返し単位の量は35.9mol)、TCNEを4.6mg(36mol)、1,2-ジクロロベンゼンを5mL加えた。窒素雰囲気下、70℃で2時間反応させた。室温(25℃)に冷却した後、反応液中の溶媒を減圧除去し、高分子化合物P11を得た。高分子化合物P11の収率は100%であった。
【0147】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 0.89-2.06 (m, 41n H), 2.61 (br s, 2n H), 6.67 (m, n H) ppm、
IR (KBr): 2993, 2933, 2875, 2854, 2217, 2084, 1495, 1455, 1410, 1383, 1255, 1035, 766, 733 cm-1
【0148】
実施例5
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板をオゾンUV処理して表面処理を行った。ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene))とポリ(4−スチレンスルホネート)(poly(4-styrenesulfonate))との混合物(PEDOT:PSS)(H.C.Starck社製、AI4093)を約60nmの膜厚になるようにITO膜上にスピンコートし、大気中、200℃のホットプレート上にて10分加熱し、PEDOT:PSS層を形成した。次に、高分子化合物P11を含むオルトジクロロベンゼン溶液を用い、PEDOT:PSS層上にスピンコートにより塗布した。高分子化合物P11の膜厚は約20nmであった。その後、真空蒸着機により、フラーレンC60を厚さ20nmで蒸着し、次いで、フッ化リチウムを厚さ4nmで蒸着し、次いでAlを厚さ100nmで蒸着した。得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた有機薄膜太陽電池にIPCE測定装置(分光計器製、商品名CEP-2000型分光感度測定装置)を用いて、各波長ごとの分光感度を測定した。その結果、550nm、600nmにおいて分光感度が認められ発電していることが確認された。
膜厚20nmの高分子化合物P11層の吸収度は、550nmにおいて0.05であり、600nmにおいて0.03であった。
高分子化合物P11の薄膜をガラス上に形成し、その薄膜の吸収スペクトルを、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社、商品名Jasco V-670)で測定した。その結果、高分子化合物P11の薄膜の吸収スペクトルは、512nmの波長において、最も低エネルギー側の極大値を示した。
【0149】
実施例6
(吸収スペクトルの測定)
高分子化合物P5を1,2−ジクロロエタン中に溶解した溶液の吸収スペクトルを測定した。その結果、高分子化合物P5の溶液の吸収スペクトルは、450nmの波長において、最も低エネルギー側の極大値を示した。
【0150】
実施例7
(吸収スペクトルの測定)
高分子化合物P9を1,2−ジクロロエタン中に溶解した溶液の吸収スペクトルを測定した。その結果、高分子化合物P9の溶液の吸収スペクトルは、804nmの波長において、最も低エネルギー側の極大値を示した。
【0151】
比較例1
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
高分子化合物としてP11の代わりにP4を用いる以外は、実施例1と同様に有機薄膜太陽電池を製造し、IPCEを測定した。その結果、550nm、600nmの分光感度は測定限界以下であり、発電は確認できなかった。
膜厚20nmの高分子化合物P4層の吸収度は、550nmにおいて0.00であり600nmにおいて0.00であった。
高分子化合物P4の薄膜の吸収スペクトルは、414nmの波長において、最も低エネルギー側の極大値を示した。
【0152】
実施例8
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板をオゾンUV処理して表面処理を行った。ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene))とポリ(4−スチレンスルホネート)(poly(4-styrenesulfonate))との混合物(PEDOT:PSS)(H.C.Starck社製、AI4093)を約60nmの膜厚になるようにITO膜上にスピンコートし、大気中、200℃のホットプレート上にて10分加熱し、PEDOT:PSS層を形成した。次に、高分子化合物P11及びフラーレン誘導体である[6,6]フェニル−C61酪酸メチルエステル(C60PCBM)(phenyl C61-butyric acid methyl ester、フロンティアカーボン社製)を含むオルトジクロロベンゼン溶液を作製した。C60PCBMに対する高分子化合物P11の重量比は、1/3であった。C60PCBMの重量と高分子化合物P11の重量の合計は、オルトジクロロベンゼン溶液の重量に対して2重量%であった。該オルトジクロロベンゼン溶液を、PEDOT:PSS層上にスピンコートにより塗布して光活性層を作製した。光活性層の膜厚は約100nmであった。その後、真空蒸着機によりフッ化リチウムを厚さ4nmで蒸着し、次いでAlを厚さ70nmで蒸着した。得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた有機薄膜太陽電池にソーラシミュレーター(分光計器株式会社、商品名CEP-2000型分光感度測定装置、AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて一定の光を照射したところ、発電していることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。
【化1】


(式中、Arは、2価の複素環基を表す。Arは、金属原子を含む2価の基を表す。A及びAは、同一又は相異なり、=C(CN)で表される基又は下記式(II)で表される基を表す。)
【化2】


(式中、Arは、4価の有機基を表す。)
【請求項2】
下記式(III)で表される構造単位をさらに含む、請求項1に記載の高分子化合物。
【化3】

【請求項3】
前記Arが、カルバゾールジイル基又はチオフェンジイル基である、請求項1又は2に記載の高分子化合物。
【請求項4】
前記Arが、遷移金属原子を含む2価の基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項5】
前記遷移金属原子が、白金原子、金原子、パラジウム原子又は水銀原子である、請求項4に記載の高分子化合物。
【請求項6】
前記Arが、下記式(IV)で表される基である、請求項5に記載の高分子化合物。
【化4】


(式中、Rはアルキル基を表す。6個あるRは、同一でも相異なってもよい。)
【請求項7】
前記Arが、キノイド構造を有する基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項8】
前記A及び前記Aが、=C(CN)で表される基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項9】
ポリスチレン換算の数平均分子量が、10〜10である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項10】
陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられる活性層とを有し、該活性層中に電子供与性化合物と電子受容性化合物とを有し、該電子供与性化合物及び該電子受容性化合物のうちの少なくとも一方が、請求項1〜9のいずれか一項に記載の高分子化合物である、光電変換素子。
【請求項11】
陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられる活性層とを有し、該活性層中に電子供与性化合物と電子受容性化合物とを有し、該電子供与性化合物及び該電子受容性化合物のうちの少なくとも一方が、下記式(VIII)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物である光電変換素子。
【化5】


(式中、Arは、カルバゾールジイル基を表す。Arは、金属原子を含む2価の基を表す。)
【請求項12】
前記活性層が、置換基を有していてもよいフラーレンを含む、請求項10又は11に記載の光電変換素子。
【請求項13】
前記電子供与性化合物と前記電子受容性化合物とが、ともに高分子化合物である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項14】
前記電子供与性化合物が、置換基を有していてもよいポリチオフェンである、請求項10〜13のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項15】
前記電子受容性化合物が、ベンゾチアジアゾール構造を有する高分子化合物であるか、又はキノキサリン構造を有する高分子化合物である、請求項10〜14のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれか一項に記載の光電変換素子を含む、太陽電池モジュール。
【請求項17】
請求項10〜15のいずれか一項に記載の光電変換素子を含む、イメージセンサー。

【公開番号】特開2011−246594(P2011−246594A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120819(P2010−120819)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業個人型研究(さきがけ)、「クリック型反応による有機光電子機能材料の創製」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】