説明

高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法

【課題】 高分子発光ダイオードのエレクトロルミネセンスとフォトルミネセンスの効率を高めることのできる高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法を提供する。
【解決手段】 チオフェノールの化学官能モディファイヤーによって硫化カドミウムの表面を改質してチオフェノール-硫化カドミウムのナノ粒子を得るとともに、樹枝状構造のモノマーを合成し、得られたモノマーを鈴木カップリング(Suzuki
coupling)によりジボラン化合物モノマーと重合し、それぞれの化合物をπ-π相互作用で反応させて結合して側鎖が樹枝状で、かつ化学構造がPF−GXであるコポリフルオレンを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光ダイオードに関し、特に高分子発光ダイオードを製造するためのナノコンポジットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機半導体発光ダイオードは、その製造に高い真空度と高温の環境を必要とする。これに比して、高分子発光ダイオードは、簡易な製造工程で製造することができる。しかも、発光面積を容易に大面積化することができ、且つ可撓性を必要とする素子の製造に適するといった特徴を具える。このため、業界においては将来の発展性を有する素材とされている。
【0003】
しかしながら、高分子発光ダイオードにおける蛍光の発光効率は、25%程度にしかならない。
【0004】
高分子発光ダイオードにおける低発光効率の問題を改善するために、例えば、燐光材料を利用した高分子発光ダイオードのように、高分子と無機材料とを結合する技術が開発され、注目を浴びている。但し、係る技術は化合物を合成する場合、重金属を用いるが、現状では生産に対する重金属の供給が安定していない。従って、高分子と無機材料とを結合する技術は、その生産性が問題となる。
【0005】
高分子と無機材料とを結合する技術は、次に掲げる文献などに公開されている。
【0006】
1998年に発行された期刊誌である「Journal of Applied
Physics」第83号によれば、硫化亜鉛(ZnS)で無機セレン化カドミウム(CdSe)と有機n−トリオクチル基燐/n−トリオクチル基酸化燐(TOP/TOPO)を被覆して保護層とし、量子ドットと発光ポリマー(light
emitting polymer)とを異なる階層にしたエレメントの構造(アルミニウム/ナノ粒子(CdSe)/有機ホール伝導層/金属酸化物(Organic HTL/ITO)が開示されている。また、同文献の記載によれば、これに電界を印加して測定を行った結果、高い操作電圧の場合は発生する光のほとんどがセレン化カドミウムから発生し(600nm)、発光ポリマーであるポリフェニレンビニレン(Poly(phenylene
vinylene)、PPV)(500〜550nm)(HTL)の作用によって発光した光は少なかった。係るエレメントの特性((P)v.s.(I) slope)は、主に量子ドット層(dot
layer)の厚さによって決まる。
【0007】
また、使用寿命についてテストを行った結果、かなり高い安定性がみられ、エレメントの操作時間は50〜100時間を越えた。さらに、外部量子効率は0.1%とかなり高い数値がみられた。
【0008】
また、1995年に発行された期刊誌「Applied Physics Letters」第66号には、例えば、アルミニウム/セレン化カドミウム/ポリビニルカルバゾール(Poly(vinylcarbazole)、PVK)/ポリブタジエン(PBD)/金属酸化物などの異なる層を有する構造のエレメントについて、室温下で、それぞれ異なる大きさの量子ドットを利用して、エレクトロルミネセンスとフォトルミネセンスの波長を、それぞれに、〜530nmと〜650nmに転換できると記載されている。また、係る記載に基づいて行われた実験によれば、低電圧(77k)の場合、電界発光が量子ドットだけで発生したが、高電圧にした場合、量子ドットとポリビニルカルバゾールのいずれにおいても発光した。また、高温でアニールした薄膜は、好ましい電界発光の効果が得られたと記載されている。
【0009】
また、2003年に発行された期刊誌「Applied Physics Letters」第82号には、硫化鉛(PbS)と共役高分子(例えば、MEHPPV、CNPPV)で素子を構成した場合、ナノ顆粒の異なるサイズに基づいてに光の色を調整できる(1000-1600nm)と記載されている。また、異なる長さで被覆した保護層を有する配位子(capping
ligand)を形成して比較したと記載されている。
【0010】
上述するそれぞれの技術によれば、いずれも高分子発光ダイオードを製造することができる。しかしながら、同一の種類の材料で製造することができないため、製造工程が複雑になる。このため、実用的でなく、実際に生産する場合に必要とする要件にそぐわない。
【非特許文献1】1998年、Journal of Applied Physics、第83号
【非特許文献2】1995年、Applied Physics Letters、第66号
【非特許文献3】2003年、Applied Physics Letters、第82号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述するように、目下業界においてはエレクトロルミネセンスとフォトルミネセンスの効率が高く、かつ製造工程を簡易化できる高分子発光ダイオードの開発が望まれている。
【0012】
そこで、この発明は、高発光率を有する量子ドットと、高分子材料とを結合してなり、高分子発光ダイオードのエレクトロルミネセンスとフォトルミネセンスの効率を高めることのできる高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法を提供することを課題とする。
【0013】
また、この発明は、量子ドットの粒径を制御して発生する光の波長を調整できるとともに、素子の効率、耐熱度、使用寿命などを高めることのできる高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明者は従来の技術に見られる欠点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、チオフェノールの化学官能モディファイヤーによって硫化カドミウムの表面を改質してチオフェノール-硫化カドミウムのナノ粒子を得るとともに、樹枝状構造のモノマーを合成し、得られたモノマーを鈴木カップリング(Suzuki
coupling)によりジボラン化合物モノマーと重合し、それぞれの化合物をπ-π相互作用で反応させて結合して側鎖が樹枝状で、かつ化学構造がPF−GXであるコポリフルオレンを得るステップを含む高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法によって、本発明の課題を解決できる点に着眼し、かかる知見に基づいて本発明を完成させた。
【0015】
また、上述する高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法において、該コポリフルオレンの化学構造であるPF−GXにおけるXが該化学構造の状態を表わし、かつ0か、1か、もしくは2から選択することによって、量子ドットの粒径を制御して発生する光の波長を調整する目的を達成する。即ち、0を選択した場合、該コポリフルオレンの化学構造はPF-G0であり、その側鎖構造が、-CHとなる。また、1を選択した場合、該コポリフルオレンは化学構造がPF-G1である単層の樹枝状コポリフルオレンであって、その側鎖構造が、単層樹枝状であるアニリン酸素基となる。さらに、2を選択した場合、該コポリフルオレンは化学構造がPF-G2であって二つの単層の樹枝状コポリフルオレンであり、その側鎖構造が二重の樹枝状であるアニリン酸素基となり、それぞれ異なる量子ドットの粒半が得られる。
【0016】
以下、この発明について具体的に説明する。
請求項1に記載する高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法は、(a)チオフェノールの化学官能モディファイヤーによって硫化カドミウムの表面を改質してチオフェノール-硫化カドミウムのナノ粒子を得るステップと、
(b)樹枝状構造を有するモノマーを合成し、得られたモノマーを鈴木カップリング(Suzuki coupling)によりジボラン化合物モノマーと重合するステップと、
(c)該(a)のステップと(b)のステップとによって得た化合物をπ-π相互作用で反応させて結合し、側鎖が樹枝状で、かつ化学構造がPF−GXであるコポリフルオレンのナノコンポジットを得るステップと、を含み、
かつ、該コポリフルオレンの化学構造であるPF−GXにおけるXが該化学構造の状態を表わし、0か、1か、もしくは2から選択される。
【0017】
請求項2に記載する高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法は、請求項1における(b)のステップにおいて合成するモノマーが、樹枝状構造を有するジブロムフルオレンモノマーか、もしくはジ-n-オクチル-ジボラン酸フルオレンモノマーを含むグループから選択される。
【0018】
請求項3に記載する高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法は、請求項1における(b)のステップによって形成される化合物が、側鎖に樹枝状の化学構造を有するアルキル基ポリフルオレン共重合体である。
【0019】
請求項4に記載する高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法は、請求項1におけるコポリフルオレンの化学構造であるPF−GXにおけるXが0である場合、該コポリフルオレンの化学構造がPF-G0であり、その側鎖構造が、-CHである。
【0020】
請求項5に記載する高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法は、請求項1におけるコポリフルオレンの化学構造であるPF−GXにおけるXが1である場合、該コポリフルオレンは化学構造がPF-G1である単層の樹枝状コポリフルオレンであり、その側鎖構造が単層樹枝状であるアニリン酸素基である。
【0021】
請求項6に記載する高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法は、請求項1におけるコポリフルオレンの化学構造であるPF−GXにおけるXが2である場合、該コポリフルオレンは化学構造がPF-G2であって二つの単層の樹枝状コポリフルオレンであり、その側鎖構造が二重の樹枝状であるアニリン酸素基である。
【発明の効果】
【0022】
この発明の製造方法によって得られる高分子発光ダイオード用ナノコンポジットは、従来の技術に比して高分子発光ダイオードのエレクトロルミネセンスとフォトルミネセンスの効率を大幅に高めることができるとともに、素子の効率、耐熱度、使用寿命などを高めることができ、かつ高い生産性が得られるという利点を有する。また、その製造方法は、従来の技術において達成し得る発生する光の波長の調整をさらに容易に行うことができるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1Aは、この発明の製造方法で得られるナノコンポジットの化学構造を示した概念図であって、図1Bは、この発明の製造方法で得られるナノコンポジットの化学構造がPF−G1である場合の側鎖構造の説明図である。図1Cは、に、この発明の製造方法で得られるナノコンポジットの化学構造がPF−G2である場合の側鎖構造説明図である。
【0024】
この発明は、高分子発光ダイオードの材料となるナノコンポジットの製造方法を提供するものであって、この発明の方法によって得られるナノコンポジットを材料とする高分子発光ダイオードは、半導体の粒子ドットの作用によって高い発光効率を有する。図面に開示するように、ナノコンポジット(1)は、化学構造がPF−GXである樹枝状のコポリフルオレン発光高分子(12)と、樹枝状チオフェノール−硫化カドミウウムナノ粒(11)(量子ドット)とを結合してなる。また、コポリフルオレン発光高分子(12)の化学構造におけるXが該化学構造の状態を表わし、かつ該Xは、0か、1か、もしくは2から選択する。
【0025】
該Xが0である場合、化学構造がPF−G0になり、側鎖構造が−CHとなる。
【0026】
該Xが1である場合、単層の樹枝状コポリフルオレン(PF-G1)になり、図1Bに開示するように、その側鎖構造(121a)が単層の単層樹枝状のアニリン酸素基となる。
【0027】
該Xが2である場合、二つの単層の樹枝状であるコポリフルオレン(PF-G2)になり、図1Cに開示するように、その側鎖構造(121b)が二重樹枝状であるアニリン酸素基になる。
【0028】
図2に、この発明の製造方法で得られるナノコンポジットの製造工程を開示し、図2Aに、この発明の製造方法におけるaのステップにおける化学反応概念図を開示し、図2Bに、この発明の製造方法におけるbのステップの化学反応概念図を開示する。
【0029】
この発明の方法は、aのステップにおいて硫化カドミウム(21)(量子ドット)をチオフェノールの化学官能モディファイヤー(22)で表面改質し、図2Aに開示するチオフェノール-硫化カドミウムナノ粒(23)を形成する。
【0030】
次いで、bのステップにおいてジブロムフルオレンモノマー(311)とジ-n-オクチル-ジボラン酸フルオレンモノマー(312)などの樹枝状構造を含有するモノマーを合成し、鈴木カップリングによって、ジボラン化合物モノマー(32)と重合し、図2Bに開示する側鎖が樹枝状のアルキル基ポリフルオレン共重合体(33)を得る。
【0031】
次に、cのステップにおいて、上述するaのステップによって得られたチオフェノール-硫化カドミウムナノ粒(23)と、上述するbのステップによって得られた側鎖が樹枝状のアルキル基ポリフルオレン共重合体(33)とを物理的に混合し、π-π相互作用(π-π interaction)で反応させて結合し、さらに、熱処理を加えて構造が安定したナノコンポジット(1)を得る。
【0032】
この発明の製造方法で得られるナノコンポジットを材料とする高分子発光ダイオードは、該ナノコンポジットが高発光効率を有するチオフェノール-硫化カドミウムナノ粒(23)と、側鎖樹枝状であるアルキル基ポリフルオレン共重合体(33)とを結合してなるため、高分子発光ダイオードのエレクトロルミネセンスの効率が向上するとともに、素子の耐熱度、使用寿命を大幅に高めることができる。さらに、チオフェノール-硫化カドミウムナノ粒(23)の粒径の大きさの変更することによって、発光する光の波長を容易に調整することができる。
【0033】
図3は、固態にある本発明のナノコンポジットの吸収とフォトルミネセンスの対照図である。図示するように、本発明の樹枝状コポリフルオレンPF-GXの吸光係数εa(51)と、固態吸収の光学密度O.D.b(52)と、薄膜厚さLc(53)と、発色団濃度Md(54)と、量子効率ηe(55)などのパラメータ値を測定すると、Xが1である場合、量子ドット(チオフェノール-硫化カドミウムナノ粒)を含有しない単層の樹枝状コポリフルオレンPF-G1(41)と、子ドット濃度含量が3wt%であるPF-G1(42)と、ドット濃度含量が4wt%であるPF-G1(43)と、量子ドット濃度含量が8wt%であるPF-G1(44)とを含むことが分かる。
【0034】
また、Xが2である場合は、量子ドットを含有しない二つの単層の樹枝状コポリフルオレンPF-G2(45)と、量子ドット濃度含量が3wt%であるPF-G2(46)と、量子ドット濃度含量が4wt%であるPF-G2(47)とを含むことがわかる。
【0035】
以上から分かるように、単層の樹枝状であるコポリフルオレンPF−G1(41)や二つの単層の樹枝状であるコポリフルオレン(45)などの高分子発光材に、量子ドットを混合すると、高分子の蛍光効率が向上する。
【0036】
図4は、本発明の方法によって得られるナノコンポジットを材料としてなる高分子発光ダイオードのエレクトロルミネッセンスによって得られたスペクトログラムであって、第1のスペクトログラム曲線(61)と、第2のスペクトログラム曲線(62)と、第3のスペクトログラム曲線(63)と、及び第4のスペクトログラム曲線(64)とを含む。
【0037】
第1のスペクトログラム曲線(61)は、量子ドット(チオフェノール-硫化カドミウムナノ粒)を含有しない単層の樹枝状であるコポリフルオレン(PF-G1)のエレクトロルミネッセンスのスペクトログラム曲線である。ここから分かるように、強度が最も強い光は、波長範囲が426nm〜465nmの範囲にあるため、青緑色の光になる。
【0038】
第2のスペクトログラム曲線(62)は、量子ドットの濃度が3%であるPF-G1のエレクトロルミネッセンスのスペクトログラム曲線であり、第3のスペクトログラム曲線(63)は、量子ドットの濃度が4%であるPF-G1のエレクトロルミネッセンスのスペクトログラム曲線である。第4のスペクトログラム曲線(64)は、量子ドットの濃度が8%であるPF-G1のエレクトロルミネッセンスのスペクトログラム曲線である。
【0039】
第2のスペクトログラム曲線(62)と、第3のスペクトログラム曲線(63)と、及び第4のスペクトログラム曲線(64)から明らかなように、PF-G1に所定の濃度の量子ドットを結合させると、半値全幅(full width half mazimum、 FWHM)が、本来の第1のスペクトログラム曲線上の半値全幅A点から、第4のスペクトログラム曲線上の半値全幅B点まで低下し、急激な減少が見られる、このため、エクシマー(excimer)の生成を抑制し、光源色の純度が量子ドットを含有しないPF-G1より高くなる。
【0040】
図5Aは、本発明の方法によって得られるナノコンポジットを材料としてなる高分子発光ダイオードの電流密度と電圧の関係を示した概念図であり、図5Bは、該高分子発光ダイオードの輝度と電圧との関係を示した概念図である。電流密度と電圧との関係の概念図には、第1の電流密度と電圧との関係の曲線(71)と、第2の電流密度と電圧との関係の曲線(72)と、第3の電流密度と電圧との関係の曲線(73)と、第4の電流密度と電圧との関係の曲線(74)とを開示する、また、輝度と電圧との関係の概念図には、第1の輝度と電圧との関係の曲線(81)と、第2の輝度と電圧との関係の曲線(82)と、第3の輝度と電圧との関係の曲線(83)と、及び第4の輝度と電圧との関係の曲線(84)とを開示する。
【0041】
第1の電流密度と電圧との関係の曲線(71)と、第1の輝度と電圧との関係の曲線(81)は、量子ドット(チオフェノール-硫化カドミウムナノ粒)を含有しない単層の樹枝状コポリフルオレン(PF-G1)の電圧変化によって発生する電圧密度と輝度を表す曲線である。
【0042】
第2の電流密度と電圧との関係の曲線(72)と、第2の輝度と電圧との関係の曲線(82)は、量子ドット濃度が3%であるPF-G1の電圧変化によって発生する電圧密度と輝度を表す曲線である。
【0043】
第3の電流密度と電圧との関係の曲線(73)と、第3の輝度と電圧との関係の曲線(83)は、量子ドット濃度が4%であるPF-G1の電圧変化によって発生する電圧密度と輝度を表す曲線である。
【0044】
第4の電流密度と電圧との関係の曲線(74)と、第4の輝度と電圧との関係の曲線(84)は、量子ドット濃度が8%であるPF-G1の電圧変化によって発生する電圧密度と輝度を表す曲線である。
【0045】
上述する電圧と、電流密度と、輝度との関係を表すそれぞれの曲線から明らかなように、単層の樹枝状コポリフルオレンに量子ドットを結合して得られるナノコンポジットを材料として製造される高分子発光ダイオードが負荷する電流値が上昇し、量子ドット濃度が8%であるPF-G1の最大輝度は約1196cd/m2に至り、量子ドットを含有しないPF-G1の最大輝度は約298cd/m2に至る。即ち、輝度が最大4倍となる。
【0046】
この発明は、高分子発光ダイオードの材料でなるナノコンポジットの製造方法を提供するものであって、この発明の方法によって得られるナノコンポジットはドットで蛍光効率を強化する高分子発光ダイオードであり、発光ダイオード素子を作製するためのナノ複合材は、量子ドットを導入していない高分子発光材料により、電界発光効率と蛍光効率が向上され、発光ダイオード素子に作製されると、当該素子の安定性と電気特性が向上され、そのため、本発明は、より実用的なものであって、法に従って、特許登録請求を出願する。
【0047】
以上は、この発明の好ましい実施例であって、この発明の実施の範囲を限定するものではない。よって、当業者のなし得る修正、もしくは変更であって、この発明の精神の下においてなされ、この発明に対して均等の効果を有するものは、いずれもこの発明の特許請求の範囲に属するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1A】本発明のナノ複合材の化学構造概念図である。
【図1B】本発明のPF-G1の側鎖構造の拡大概念図である。
【図1C】本発明のPF-G2の側鎖構造の拡大概念図である。
【図2】本発明の実施例のナノ複合材の工程概念図である。
【図2A】本発明の実施例のステップaの化学反応概念図である。
【図2B】本発明の実施例のステップbの化学反応概念図である。
【図3】本発明の固態のナノコンポジットの吸收と光誘起及び量子効率の対照図である。
【図4】本発明の高分子発光ダイオードの電界発光スペクトログラムである。
【図5A】本発明の高分子発光ダイオードの電流密度と電圧との関係概念図である。
【図5B】本発明の高分子発光ダイオードの輝度と電圧との関係概念図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ナノコンポジット
11 チオフェノール-硫化カドミウムナノ粒
12 樹枝状のコポリフルオレン発光高分子
121、121a、121b 側鎖構造
21 硫化カドミウム
22 チオフェノールの化学官能モディファイヤー
23 チオフェノール−硫化カドミウムナノ粒
311 ジオロムフルオレンモノマー
312 ジ-n-オクチル-ジボラン酸フルオレンモノマー
32 ジボラン化合物モノマー
33 アルキル基ポリフルオレン共重合体
41 コポリフルオレンPF-G1
42 量子ドット濃度含量が3wt%であるPF-G1
43 量子ドット濃度含量が4wt%であるPF-G1
44 量子ドット濃度含量が8wt%であるPF-G1
45 コポリフルオレンPF−G2
46 量子ドット濃度含量が3wt%であるPF-G2
47 量子ドット濃度含量が4wt%であるPF-G2
51 吸光係数
52 光学密度
53 薄膜厚さ
54 発色団濃度
55 量子効率
61 第1のスペクトログラム曲線
62 第2のスペクトログラム曲線
63 第3のスペクトログラム曲線
64 第4のスペクトログラム曲線
71 第1の電流密度と電圧との関係の曲線
72 第2の電流密度と電圧との関係の曲線
73 第3の電流密度と電圧との関係の曲線
74 第4の電流密度と電圧との関係の曲線
81 第1の輝度と電圧との関係の曲線
82 第2の輝度と電圧との関係の曲線
83 第3の輝度と電圧との関係の曲線
84 第4の輝度と電圧との関係の曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)チオフェノールの化学官能モディファイヤーによって硫化カドミウムの表面を改質してチオフェノール-硫化カドミウムのナノ粒子を得るステップと、
(b)樹枝状構造を有するモノマーを合成し、得られたモノマーを鈴木カップリング(Suzuki coupling)によりジボラン化合物モノマーと重合するステップと、
(c)該(a)のステップと(b)のステップとによって得た化合物をπ-π相互作用で反応させて結合し、側鎖が樹枝状で、かつ化学構造がPF−GXであるコポリフルオレンのナノコンポジットを得るステップと、を含み、
かつ、該コポリフルオレンの化学構造であるPF−GXにおけるXが該化学構造の状態を表わし、0か.1か、もしくは2から選択されることを特徴とする高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法。
【請求項2】
前記(b)のステップにおいて合成するモノマーが、樹枝状構造を有するジブロムフルオレンモノマーか、もしくはジ-n-オクチル-ジボラン酸フルオレンモノマーを含むグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法。
【請求項3】
前記(b)のステップによって形成される化合物が、側鎖に樹枝状の化学構造を有するアルキル基ポリフルオレン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法。
【請求項4】
前記コポリフルオレンの化学構造であるPF−GXにおけるXが0である場合、該コポリフルオレンの化学構造が、PF-G0であり、その側鎖構造が、-CHであることを特徴とする請求項1に記載の高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法。
【請求項5】
前記コポリフルオレンの化学構造であるPF−GXにおけるXが1である場合、該コポリフルオレンは化学構造がPF-G1である単層の樹枝状コポリフルオレンであり、その側鎖構造が単層樹枝状であるアニリン酸素基であることを特徴とする請求項1に記載の高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法。
【請求項6】
前記コポリフルオレンの化学構造であるPF−GXにおけるXが2である場合、該コポリフルオレンは化学構造がPF-G2であって二つの単層の樹枝状コポリフルオレンであり、その側鎖構造が二重の樹枝状であるアニリン酸素基であることを特徴とする請求項1に記載の高分子発光ダイオード用ナノコンポジットの製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2007−184516(P2007−184516A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141531(P2006−141531)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(598139748)國立交通大學 (92)
【Fターム(参考)】