説明

高分子量ハロゲン化ゴムを製造するための共通溶媒法

本発明は、溶液重合およびゴムのその後のハロゲン化の両方のために特有の組成の共通脂肪族媒体を使用する、ハロゲン化ゴム、特にクロロ−およびブロモブチルゴムのエネルギー効率の良い、環境上好ましい製造方法に関する。より具体的には、本発明は、未反応モノマーの中間除去を伴う溶液重合およびゴムのハロゲン化の両方のために共通脂肪族媒体を用いる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液重合およびその後のゴムのハロゲン化の両方のために、特有の組成の共通脂肪族媒体を用いる、ハロゲン化ゴム、特にクロロ−およびブロモブチルゴムのエネルギー効率の良い、環境上好ましい製造方法に関する。より具体的には、本発明は、未反応モノマーの中間除去を伴う、ゴムの溶液重合およびハロゲン化の両方のために共通の脂肪族媒体を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
用語「ブチルゴム」は本明細書で用いるとき、一般に、別途定義がされていない場合は、C〜Cイソオレフィン、C〜C14共役ジエン、および任意選択で場合によってはその他の共重合性モノマー、のコポリマーを意味し且つそれを包含する。用語「ハロブチルゴム」は本明細書で用いるとき、一般に、別途定義がされていない場合は、ハロゲン化ブチルゴム、特に塩素化および臭素化ブチルゴムを意味し、且つそれを包含する。ブチルゴムの例示的なおよび好ましい例は、イソプレンおよびイソブチレンの共重合によって得られるゴムであり、それは本明細書においては以下IIRともいう。その臭素化類縁体はBIIRとも言われ、その塩素化類縁体は本明細書においては以下CIIRともいう。
【0003】
ハロブチルゴム(BIIR)の従来の製造方法においては、イソブチレンおよびイソプレンモノマーが、アルミニウムベースの開始系、典型的には三塩化アルミニウム(AlCl)かエチルアルミニウムジクロリド(EtAlCl)のどちらかを使って塩化メチルなどの極性ハロ炭化水素媒体中で先ず重合させられる。ブチルゴムは、この極性媒体にはほとんど溶解せず、懸濁粒子として存在するため、この方法はスラリー法と通常言われる。残存モノマーおよび重合媒体は次に、ブチルゴムがハロゲン化媒体、典型的にはヘキサンなどの非極性媒体に溶解させられる前に、ブチルゴムからスチームを用いてストリッピングされる。ハロゲン化プロセスは、最終ハロゲン化生成物を究極的には生成する。したがって、従来法は、2つの異なる媒体を用いる別個の重合およびハロゲン化工程を用いている。重合のための極性媒体およびハロゲン化のための非極性媒体の使用は、中間のストリッピングおよび溶解工程を必要とし、エネルギーの観点から非効率的である。
【0004】
ブチルゴムからモノマーおよび塩化メチルを分離する工程は、臭素と残存モノマーとの反応による高毒性副生成物の形成を回避するためにハロゲン化の前に行われる。この方法に使用される成分の標準沸点は、塩化メチル、−24℃;イソブチレン、−7℃;およびイソプレン、34℃である。残存モノマーのより重質物(イソプレン)を除去する任意のストリッピング法は、塩化メチルおよびイソブチレンの実質的にすべてをも除去するであろう。未反応成分のすべてをゴムスラリーから除去するプロセスは、かなりの量のエネルギーを必要とする。ハロゲン化モノマーのより大きい分子量(およびそれ故より高い沸点)は、ハロゲン化プロセス後でのこれら化学種の除去をも妨げる。
【0005】
ブチルゴムの重合のための溶液法は長年にわたって知られており、ロシアで商業的に実施されている。溶液法の例は、(特許文献1)に記載されており、それは、好ましい重合媒体としてのイソペンタンの使用を開示している。上記の方法を用いて製造されたポリマーはハロゲン化されていない。ハロゲン化はイソペンタン中で理論的には行うことができるだろうが、残存モノマー(イソブチレンおよびイソプレン)の存在は、臭素化中に前述の望ましくない副生成物の形成をもたらすであろう。未反応モノマーの除去は、そのような方法にとっての課題であり、まだ解決されていない。モノマーを蒸留によって除去することが望ましいであろうが、イソペンタンの沸点(28℃)がより重質の残存イソプレンモノマーの沸点(34℃)より低く、それ故この種の分離は不可能である。たとえ純n−ペンタン(沸点36℃)が媒体として使用されたとしても、沸点の差は、蒸留法を用いてイソプレンの効果的な除去を可能にするには不十分であろう。結果として、残存モノマーおよび媒体は、すべて、スラリー法におけるように、ブチルゴムから一緒にストリッピングされ、それとともにゴムが臭素化のためにその後再溶解されなければならないであろう。これは、実際に、従来のスラリー法による臭素化よりもエネルギー集約型である。ハロブチルゴム(XIIR)を製造するための共通媒体としてのイソペンタンの使用はそれ故、従来の溶液法を用いては実用的ではない。
【0006】
ヘキサン、すなわちC6媒体を溶液法において重合媒体として使用することは当技術分野において公知である。しかし、ポリマー溶液の粘度は、使用される媒体の粘度に大きく左右される。C6媒体の粘度は、ある分子量およびポリマー固形分レベルに対して、C5媒体の粘度よりはるかに高いので、その結果得られるポリマー溶液粘度もはるかに高い。このことは、C6が溶媒として使用される場合、ポリマー固形分を比較的低いレベルに制限し、なぜなら、さもなければ、良好な伝熱、ポンプ送液および取り扱いのためには溶液が余りにも粘稠になるためである。プロセスの全体経済性は、重合反応器から出てくる溶液または懸濁液中のポリマー固形分のレベルに大きく左右される。すなわち、固形分レベルが高いほど、転化率が高く且つ経済性が向上することを意味する。商業目的のために十分に高い分子量を有する材料を製造するためには、比較的低い温度、多くの場合−80℃未満を用いることがブチル重合において必要である。これらの低温は、高い溶液粘度の問題を悪化させ、さらにより低い固形分レベルにつながる。溶液法においては、したがって、ヘキサンを溶媒として使用するときには、高い粘度のために所望の温度(分子量)で経済的な固形分レベル(転化率)を達成することは極めて困難である。
【0007】
(特許文献2)には、従来のスラリー重合法による生成物が、粗ゴム溶液またはゴムのりを製造するためにヘキサンと混合される方法が開示されている。ゴムをヘキサンに溶解させるために、ゴムがまだ塩化メチル/モノマー混合物中に細分され且つ懸濁されている間に、重合反応器を出た後の塩化メチル−ゴムスラリーにヘキサンが添加される。次に蒸留プロセスを用いて、リサイクル用の塩化メチルならびに残存イソブテンおよびイソプレンモノマーを除去し、ゴムだけをハロゲン化の準備ができたヘキサン溶液に残す。このいわゆる「溶媒置換」法は、重合段階後にゴムとともに残された元の媒体のすべてが除去されることを依然として必要とする。そのエネルギー必要量は、従来法におけるものと実質的に同じである。重合およびハロゲン化の両方のための共通溶媒は全く用いられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】カナダ特許第1,019,095号明細書
【特許文献2】米国特許第5,021,509号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、エネルギー消費および原材料消費を著しく減らし、そして所望の分子量において高いゴム固形分レベルを可能にするために、粘度の許容される範囲内で実施される、ハロブチルゴムの効率の良い、環境上好ましい製造方法が依然として必要とされている。この方法は、望ましくない副生成物の形成を低減するために、ハロゲン化の前に、溶媒から残存モノマーを分離することをさらに可能にしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
a)・1013hPaの圧力で45℃〜80℃の範囲の沸点を有する1種以上の脂肪族炭化水素を少なくとも50重量%含む共通脂肪族媒体であって、さらに、25重量%未満、好ましくは20重量%未満の環状脂肪族炭化水素含有率を有する共通脂肪族媒体、ならびに
・少なくとも1種のイソオレフィンモノマー、及び少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーを含み、且つその他の共重合性モノマーを全く含まないか又は少なくとも1種含むモノマー混合物
を、40:60〜99:1、好ましくは50:50〜85:15、さらにより好ましくは61:39〜80:20のモノマー混合物対共通脂肪族媒体の質量比で含む反応媒体を準備する工程と、
b)モノマー混合物を反応媒体内で重合させて、共通脂肪族媒体およびモノマー混合物の残存モノマーを含む媒体中に少なくとも実質的に溶解しているゴムポリマーを含むゴム溶液を形成させる工程と;
c)モノマー混合物の残存モノマーをゴム溶液から分離して、ゴムおよび共通脂肪族媒体を含む分離されたゴム溶液を形成させる工程と、
d)分離されたゴム溶液中のゴムを、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化する工程(ハロゲン化剤が臭素化剤の場合には、任意選択で場合によってはハロゲン化剤が酸化剤によって少なくとも部分的に再生されてもよい)と
を少なくとも含む、ハロゲン化ゴムの製造方法をここに提供する。
【0011】
本発明の範囲は、一般的であろうと好ましい領域内であろうと、本明細書においてあげられている定義、パラメーター、および説明のあらゆる可能な組み合わせを包含する。
【0012】
本明細書では用語「少なくとも実質的に溶解している」は、工程b)により得られたゴムポリマーの少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%が媒体に溶解していることを意味する。
【0013】
本発明のある実施形態においては、工程b)による重合および工程a)による溶液の準備は、溶液重合反応器を用いて達成される。好適な反応器は、当業者に公知のものであり、一般に知られているフロースルー重合反応器を含む。
【0014】
本方法の工程c)は、未反応の残存モノマー、すなわちイソオレフィンモノマーおよびマルチオレフィンモノマーを媒体から分離するために蒸留を用いてもよい。これは、未反応モノマーからの望ましくないハロゲン化副生物の形成を低減する。本方法は、モノマー対共通脂肪族媒体の中程度のまたは比較的高い比で行われる。典型的には、イソオレフィンモノマーは共通脂肪族媒体よりかなり低い粘度を有し、したがって、より高いモノマーレベルはより低い全体粘度をもたらす。本方法の全体エネルギー効率および原材料利用率は、重合のために使用された第1希釈剤または溶媒からゴムを分離し、次にそれをハロゲン化のための第2溶媒に再溶解させる必要性を取り除くことによって改善される。本発明による統合プロセスは、したがって、ハロゲン化ゴム、特にハロブチルゴムを製造するための従来の非統合プロセスと比べて改善されたエネルギーおよび原材料効率ならびにプロセス工程数の減少をもたらす。
【0015】
本発明のある実施形態において、工程d)によるハロゲン化は、連続プロセス、たとえば、一般に知られているフロースルーハロゲン化反応器を用いて行われる。
【0016】
本発明をまとめると、本発明の好ましい実施形態は、図1を参照して以下に例示的に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ポリマー溶液からの分離後の未反応モノマーの精製および場合によりリサイクルを用いる本発明による方法についてのプロセスフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照すると、溶液重合反応器40は、任意選択により場合によっては熱交換器10、好ましくは復熱式(recuperative)熱交換器、および供給物クーラー20を通して、イソプレンおよびイソブチレンを含むモノマーM供給物(モノマーMフィード)、ならびに共通脂肪族媒体S供給物(共通脂肪族媒体Sフィード)を供給される。モノマーは、共通脂肪族媒体とプレミックスされても、重合反応器40内で混合されてもよい。ブチルゴム重合のために使用されるタイプのカルボカチオン開始剤−活性化剤系(たとえば、アルミニウム(オルガノ)ハロゲン化物などの、三価金属化学種、および少量の水)を含む触媒溶液は、触媒調製装置30において共通脂肪族媒体Sとプレミックスされ、そしてまた反応器40に導入される。次に、溶液重合を、重合反応器40内で起こさせる。本統合プロセスにおける使用に好適なタイプの溶液重合反応器40は、そのような反応器のプロセス制御および運転パラメーターと一緒に、たとえば、参照により本明細書に援用する欧州特許出願公開第0 053 585 A号明細書に記載されている。転化は、所望する程度まで進められ、次に反応停止剤Q、たとえば水またはメタノールなどのアルコールが、ミキサー50において、共通脂肪族媒体S、未反応モノマーM、およびブチルゴムIIRを含む反応器排出流れ中へ添加され、且つ混ぜ込まれる。未反応モノマーM、すなわちイソプレンおよびイソブチレン、共通脂肪族媒体S、ならびにブチルゴムIIRを含んだ、生じたポリマー溶液は、復熱式熱交換器10を通過させられ、そこでそれは、反応器への入ってくる供給物によって温められる一方で、同時に、これらの供給物を、それらが最終供給物クーラー20に入る前に冷却するのを助ける。温められたポリマー溶液は次に、未反応モノマーを除去するために蒸留塔60に導かれる。未反応モノマーがリサイクリング流れMとして分離されると、それらは塔60の塔頂から出ていき、分離されたポリマー溶液(S,IIR)は塔60の塔底から出て、溶液臭素化反応器70に入る。追加の共通脂肪族媒体Sおよび/または水Wが、ハロゲン化のための所望の条件をもたらすためにハロゲン化反応器70に供給されてもよい。重合のために使用された同じ共通脂肪族媒体がハロゲン化までのプロセスを通してブチルゴムに同伴すること、およびハロゲン化前にポリマーを溶媒から分離する必要性が全くないことに注意を向けることは重要である。ハロゲン化剤Xの供給物(フィード)も、ハロゲン化反応器70に供給される。ハロブチルゴム(XIIR)は、溶液(S,XIIR)で反応器を出て、次に、従来から知られているように、仕上げ装置80を使用して仕上げられる。仕上げ工程中に除去された共通脂肪族媒体は、溶媒精製セクション120導入される前に溶媒回収110にリサイクリング流れSとして送られる。追加の共通脂肪族媒体Sが精製120の前かまたは、媒体がすでに前もって精製されている場合には、後で添加されてもよい。精製された共通脂肪族媒体は、本方法で再使用するために復熱式熱交換器10および最終供給物クーラー20にリサイクルして戻される。蒸留塔60においてポリマー溶液から分離された未反応モノマーは、モノマー回収装置90にリサイクル流れMとして送られ、次に、復熱式熱交換器10および供給物クーラー20にリサイクルして戻される前にモノマー精製セクション100において精製される。追加の新しいモノマーMがモノマー精製100の前か、モノマーが前もって精製されている場合には後、のどちらかで添加されてもよい。重合およびハロゲン化の両方のための共通脂肪族媒体の使用は、従来のアプローチと比べて本統合プロセスの環境影響を低減し、経済的成果を向上させる。
【0019】
本明細書において上に示したプロセスの説明は例示であり、本明細書において言及される全ての共通脂肪族媒体組成物並びに全てのモノマーおよび生成物組成物に適用することができる。
【0020】
共通脂肪族媒体の組成が、その成分の異なる沸点のために未反応モノマーの除去の前後でわずかに変動した組成を有しうることは本発明の範囲内である。
【0021】
溶液重合によってブチルゴムを製造するために用いられるモノマー混合物は、個々のモノマーが1013hPaの圧力で45℃〜80℃の範囲の沸点を有する脂肪族炭化水素から選択される共通脂肪族媒体の脂肪族炭化水素よりも低い沸点を有するという条件で、特定のイソオレフィンもしくは特定のマルチオレフィンに、または特定のその他の共重合性モノマーに限定されない。共通脂肪族媒体の脂肪族炭化水素が、それらの沸点がモノマー混合物の最も高い沸点成分の沸点よりも高いけれども1013hPaの圧力でなお80℃より低いようにして選択される場合は、モノマーの沸点が1013hPaの圧力で45℃よりも高くてもよいことは明らかである。
【0022】
好ましくは、個々のモノマーは、1013hPaで45℃より低い沸点、好ましくは1013hPaで40℃より低い沸点を有する。
【0023】
好ましいイソオレフィンは、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、またはそれらの混合物である。最も好ましいイソオレフィンはイソブテンである。
【0024】
好ましいマルチオレフィンは、イソプレン、ブタジエン、またはそれらの混合物である。最も好ましいマルチオレフィンはイソプレンである。
【0025】
一実施形態においては、モノマー混合物は、80.0重量%〜99.9重量%の範囲で、好ましくは92.0重量%〜99.5重量%の範囲で少なくとも1種、好ましくは1種のイソオレフィンモノマーと、0.1重量%〜20.0重量%、好ましくは0.5重量%〜8.0重量%の範囲で少なくとも1種、好ましくは1種のマルチオレフィンモノマーを含んでもよい。より好ましくは、モノマー混合物は、95.0重量%〜98.5重量%の範囲で少なくとも1種、好ましくは1種のイソオレフィンモノマーと、1.5重量%〜5.0重量%の範囲で少なくとも1種、好ましくは1種のマルチオレフィンモノマーを含む。最も好ましくは、モノマー混合物は、97.0重量%〜98.5重量%の範囲で少なくとも1種、好ましくは1種のイソオレフィンモノマーと、1.5重量%〜3.0重量%の範囲で少なくとも1種、好ましくは1種のマルチオレフィンモノマーを含む。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、上に示された範囲は、イソオレフィンがイソブテンであり、且つマルチオレフィンがイソプレンであるモノマー混合物に適用される。
【0027】
一実施形態においては、本発明により製造されるブチルゴムのマルチオレフィン含有率は、たとえば、0.1モル%〜20.0モル%の範囲に、好ましくは0.5モル%〜8.0モル%の範囲に、より好ましくは1.0モル%〜5.0モル%の範囲に、さらにより好ましくは1.5モル%〜5モル%の範囲に、さらにより好ましくは1.8モル%〜2.2モル%の範囲である。
【0028】
前述の粘度問題を克服する方法の1つは、重合工程において溶媒に対するモノマーの高い比を選択することによるものである。高々60:40のモノマー対脂肪族炭化水素溶媒の質量比が先行技術においては用いられてきたが、一態様において、本発明は、たとえば61:39〜80:20、好ましくは65:35〜70:30の、より高い比を利用する。主としてC4化合物であり、且つ共通脂肪族媒体よりも低い粘度を有する、より高いモノマーレベルの存在は、許容できる限度まで溶液粘度を下げ、且つ、より高い固形分レベルも重合時に達成されることを可能にする。より高いモノマーレベルの使用は、より低いレベルのモノマーが用いられるときよりも高い温度において、許容される分子量に達することを可能にする。より高い温度の使用は、溶液粘度を低下させ、且つ溶液中のより大きなポリマー固形分レベルを可能にする。
【0029】
前述した粘度問題を克服する別の方法は、共通脂肪族媒体を溶媒として選択することによるものである。1013hPaで45℃以下未満の沸点を有する化合物のより高い含有率を有するか又はそれらの化合物のみからなる溶媒は、溶液からのモノマーの分離がかなりの溶媒除去をももたらすほど、モノマーに近い沸点を有するであろう。
【0030】
1013hPaで80℃より高い沸点を有する化合物の高い含有率を有するか又はそれらの化合物のみからなる溶媒の使用は、臭素化後のゴムからの分離を困難にするであろう。そのような溶媒の使用によってもたらされる溶液粘度は、上述した高いモノマー対溶媒比を有するときでさえ、共通脂肪族媒体を用いるよりも著しく高く、溶液を取り扱うことをより困難にし、且つ反応器における伝熱を妨げる。
【0031】
さらに、25重量%未満、好ましくは20重量%未満の環状脂肪族炭化水素の含有率の共通脂肪族媒体を用いると粘度がかなり低下することが分かった。
【0032】
環状脂肪族炭化水素としては、たとえば、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、およびシクロヘキサンが挙げられる。
【0033】
本発明の別の実施形態において、共通脂肪族媒体は、5重量%未満、好ましくは2.5重量%未満のシクロヘキサン(沸点:1013hPaにおいて80.9℃)の含有率を有する。シクロヘキサンがより高い量で存在する場合は粘度を増大させることが分かった。
【0034】
本発明の別の実施形態においては、共通脂肪族媒体は、少なくとも30重量%の、1013hPaの圧力で45〜80℃の範囲に沸点を有する分枝状の非環状脂肪族炭化水素の含有率を有し、これが粘度をさらに低下させることが分かった。
【0035】
1013hPaの圧力にて45℃〜80℃の範囲に沸点を有する分枝状の非環状脂肪族炭化水素としては、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、および2,2−ジメチルペンタンが挙げられる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、共通脂肪族媒体は、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%、その上さらにより好ましくは少なくとも97重量%の、1013hPaの圧力で45℃〜80℃の範囲に沸点を有する1種以上の脂肪族炭化水素を含む。1013hPaの圧力で45℃〜80℃の範囲に沸点を有する脂肪族炭化水素としては、シクロペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン、メチルシクロペンタン、および2,2−ジメチルペンタンが挙げられる。
【0037】
共通脂肪族媒体は、たとえば、1013hPaの圧力で80℃より高い沸点を有するヘプタンおよびオクタン、プロパン、ブタン類、ペンタン類、シクロヘキサンなどのその他の脂肪族炭化水素などの重合条件下で少なくとも実質的に不活性であるその他の化合物、ならびに、反応条件下で少なくとも実質的に不活性である塩化メチルおよびその他の塩素化脂肪族炭化水素などのハロ炭化水素、ならびにたとえば、式C(式中、xは1〜20、あるいは1〜好ましくは1〜3の整数であり、式中、yおよびzは整数であり、少なくとも1である)で表されるものであるハイドロフルオロカーボンをたとえばさらに含んでもよい。
【0038】
本発明の別の好ましい実施形態においては、共通脂肪族媒体はハロ炭化水素を実質的に含まない。
【0039】
本明細書において先に用いたように、用語「ハロ炭化水素を実質的に含まない」は、2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の、共通脂肪族媒体内のハロ炭化水素の含有率を意味し、さらにより好ましくはハロ炭化水素が存在しないことを意味する。
【0040】
モノマー対炭化水素溶媒の好ましい比は、予め計算することはできないが、ごくわずかな通常行われる実験によって容易に決定することができる。モノマーの量を増加させることは溶液粘度を低下させるはずであるが、その低下の程度の正確な理論的予測をすることは、本方法において用いられる濃度および温度における溶液の様々な成分の相互作用が粘度及ぼす複雑な影響にある程度起因して、実現可能ではない。
【0041】
一実施形態においては、工程b)のプロセス温度は、−100℃〜−40℃の範囲に、好ましくは−95℃〜−65℃の範囲に、より好ましくは−85℃〜−75℃の範囲に、さらにより好ましくは−80℃〜−75℃の範囲にある。
【0042】
冷却およびポンプ送液のためのエネルギー使用量が(より高い温度における、より低い粘度のために)低下するという点において、より高い温度が望ましいが、これは、商業的に望ましくはない、より低い分子量のポリマーを通常はもたらす。しかし、本発明における高いモノマー対溶媒比の使用によって、低下してはいるが、なお許容される分子量をより高い温度で得ることができる。
【0043】
したがって、代わりの実施形態においては、−50℃〜−75℃未満、好ましくは−55℃〜−72℃、より好ましくは−59℃〜−70℃、さらにより好ましくは−61℃〜−69℃の範囲の温度が用いられ、なお同時に所望の分子量のブチルゴムが得られる。
【0044】
本発明による方法を用いて製造されるブチルゴムポリマーの重量平均分子量は、ハロゲン化の前に測定して、典型的には200〜1000kg/モル、好ましくは200〜700kg/モル、より好ましくは325〜650kg/モル、さらにより好ましくは350〜600kg/モル、さらにより好ましくは375〜550kg/モル、さらにより好ましくは400〜500kg/モルの範囲にある。別段の言及がない場合、分子量は、ポリスチレン分子量標準品を使用して、テトラヒドロフラン(THF)溶液におけるゲル浸透クロマトグラフィーを用いて得られる。
【0045】
反応器40からの排出時の溶液の粘度は、典型的にはおよび好ましくは2000cP未満、好ましくは1500cP未満、より好ましくは1000cP未満である。粘度の最も好ましい範囲は、500〜1000cPである。別段の言及がない場合、粘度は、コーン−プレート型の回転式レオメーター(Haake)で測定される。すべての示される粘度は、外挿したゼロ剪断粘度を意味する。
【0046】
重合後に得られた溶液の固形分は、好ましくは3〜25重量%、より好ましくは10〜20重量%、さらにより好ましくは12〜18重量%、さらにより好ましくは14〜18重量%、さらにより好ましくは14.5〜18重量%、なおより好ましくは15〜18重量%、最も好ましくは16〜18重量%の範囲にある。先に述べたように、固形分が高いほど好ましいが、増大した溶液粘度を伴う。本方法に用いられる高いモノマー対溶媒比は、過去におけるよりも高い固形分が達成されることを可能にし、且つ、有利には重合および臭素化の両方のための共通脂肪族媒体の使用をも可能にする。
【0047】
本明細書で用いる場合、用語「固形分」は、工程b)により、すなわち、重合において得られ、且つゴム溶液中に存在するポリマーの重量パーセントをいう。
【0048】
工程c)において、未反応の残存モノマーは、好ましくは蒸留プロセスを用いて重合後の溶液から除去される。異なる沸点の液体を分離するための蒸留プロセスは、当技術分野において周知であり、たとえば、Encyclopedia of Chemical Technology,Kirk Othmer,4th Edition,pp.8−311(参照により本明細書に援用する)に記載されている。
【0049】
分離度は、塔に用いられるトレイ(tray)の数に大きく左右される。分離後の溶液中の残存モノマーの許容され且つ好ましいレベルは、重量で百万分の20部未満である。約40トレイがこの分離度を達成するのに十分であることが分かった。モノマーからの共通脂肪族媒体の分離は、決定的に重要であるようなものではなく、たとえば10重量%以下の含有率の共通脂肪族媒体の成分は、蒸留プロセスからのオーバーヘッド流れ中において許容される。好ましい実施形態においては、蒸留プロセスからのオーバーヘッド流れ中の共通脂肪族媒体の成分の含有率は、5重量%未満、より好ましくは1重量%未満である。
【0050】
図1を参照すると、本発明の方法は、蒸留塔60を用いて、重合溶液から分離された未反応モノマーの精製を含むことが好ましい。精製装置100をこの目的のために備えてもよく;あるいは、精製は、別個の精製装置においてオフサイトで行うことができる。精製されたモノマーは、普通はプロセスへリサイクルして戻され、未使用のモノマーと混合される;しかし、それらはあるいは、異なるプロセスで利用されてもまたは別個に販売されてもよい。本方法の好ましい実施形態は、有利な全体プロセス経済性を達成するためにこれらの任意選択による精製およびリサイクリング工程を含む。
【0051】
モノマーの精製は、好適なモレキュラーシーブまたはアルミナベースの吸着剤を含む吸着剤塔を通過させることによって実施されてもよい。重合反応の妨害を最小限にするために、この反応に対して害として働く水ならびにアルコールおよびその他の有機オキシジェネート(oxygenate)などの物質の総濃度は好ましくは、重量基準で百万分の約10部未満に下げられる。リサイクルのために利用可能であるモノマーの割合は、重合プロセス中に得られる転化の程度に左右される。たとえば、66:34というモノマー対共通脂肪族媒体の比を例として挙げると、生成したゴム溶液中の固形分レベルが10%である場合、モノマーの85%がリサイクル流れに戻されるために利用可能である。固形分レベルが18%に増やされる場合、モノマーの73%がリサイクルのために利用可能である。
【0052】
未反応の残存モノマーの除去後に、ゴムは工程d)においてハロゲン化される。ハロブチルゴムは、溶液相法を用いて製造される。本明細書において以下「ゴムのり(cement)」とも言われる、ゴムおよび共通脂肪族媒体を含む分離されたゴム溶液はハロゲン化剤で処理され、ハロゲン化剤は、臭素化剤を使用する場合には、酸化剤によって任意選択により場合によっては少なくとも部分的に再生される。
【0053】
追加溶媒(これは未使用の共通脂肪族媒体をたとえば含む)および/または水が、ハロゲン化のための所望の特性を有するゴムのりを形成させるために上記の分離されたゴム溶液に添加されてもよい。
【0054】
重合工程中に使用された共通脂肪族媒体中でのハロゲン化は、ポリマーを重合媒体から分離し、次にそれをハロゲン化のための異なる媒体中に再溶解させる必要性を排除することによって従来のスラリー法と比べてエネルギーを有利に節約する。
【0055】
好ましくは、ハロゲン化剤の量は、ゴムの0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜8重量%、より好ましくは0.5重量%〜4重量%、さらにより好ましくは0.8重量%〜3重量%、その上さらにより好ましくは1.2〜2.5重量%、さらになおより好ましくは約1.5重量%〜約2.5重量%、そして最も好ましくは1.5〜2.5重量%の範囲にある。
【0056】
別の実施形態において、ハロゲン化剤の量は、ゴム、好ましくはブチルゴム中に含まれる二重結合のモル量の0.2〜1.2倍、好ましくはそのモル量の0.3〜0.8倍、より好ましくは0.4〜0.6倍である。
【0057】
好適なハロゲン化剤としては、臭素化剤および塩素化剤が挙げられる。
【0058】
好適な臭素化剤には、元素状臭素(Br)、塩化臭素(BrCl)などのハロゲン間化合物、および/またはそれらの有機ハロゲン化物前駆体、たとえばジブロモ−ジメチルヒダントイン、N−ブロモスクシンイミドなどが含まれうる。最も好ましい臭素化剤は分子状臭素(Br)である。
【0059】
好適な塩素化剤には、分子状塩素(Cl)を含まれうる。最も好ましい塩素化剤は、分子状塩素(Cl)である。
【0060】
臭素化剤を酸化剤と組み合わせて使用する場合、好適な酸化剤は、酸素を含有する水溶性物質であることが分かった。好ましい酸化剤は、次の物質で例示されるような過酸化物および過酸化物形成物質である:過酸化水素、塩素酸ナトリウム、臭素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムもしくは次亜臭素酸ナトリウム、酸素、窒素酸化物、オゾン、ウレアペルオキシデート、過チタン酸、過ジルコン酸、過クロム酸、過モリブデン酸、過タングステン酸、過ホウ酸、過リン酸、過ピロリン酸、過硫酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩および過ヨウ素酸などの酸。
【0061】
そのような酸化剤は、界面活性剤と組み合わせて使用されても組み合わせずに使用されてもよい。好ましい実施形態においては界面活性剤は全く添加されない。
【0062】
好適な界面活性剤は、たとえばC〜C24アルキル−またはC〜C14アリールスルホン酸塩、脂肪アルコールおよびエトキシル化脂肪アルコールならびに類縁物質である。
【0063】
好ましい酸化剤は、過酸化水素、ならびに、過酸および過酸化ナトリウムなどの、過酸化水素形成化合物であり、ここで、過酸化水素がさらにより好ましい。
【0064】
安全上の理由で、過酸化水素は、その水溶液の形態で、特に、25〜50重量%、好ましくは28〜35重量%、より好ましくは約30重量%の過酸化水素を含むその水溶液で、好ましくは適用される。
【0065】
本発明に従って使用される酸化剤の量は、使用される臭素化剤の量および種類に左右される。たとえば、臭素化剤1モル当たり0.2〜約5モル、好ましくは0.5〜3モル、より好ましくは0.8〜1.2モルの酸化剤が使用されてもよい。
【0066】
酸化剤は、臭素化反応の開始時に反応域へ導入されてもよいし、それは、臭素化剤の添加の前に、添加と当時に、または添加の後に添加されてもよい。
【0067】
好ましい実施形態において、酸化剤は、反応媒体の全体にわたってその分散を可能にするために臭素化剤の前に加えられ、酸化剤は、臭素化剤と同時にまたはその前に添加される。
【0068】
別の実施形態において、酸化剤は、臭素化剤の少なくとも約50%が臭素化反応に消費される後まで反応混合物に添加されない。
【0069】
ハロゲン化プロセスは、0℃〜90℃、好ましくは20℃〜80℃の温度で行われてもよく、反応時間はたとえば、1分〜1時間、好ましくは1〜30分であってもよい。臭素化反応器中の圧力は、0.8〜10バールであってもよい。
【0070】
この手順中のハロゲン化のレベルは、最終ポリマーが本明細書において上に記載された好ましい量のハロゲンを有するように制御されてもよい。ハロゲンをポリマー結合させる具体的なモードは特に制限されず、当業者は、上記のもの以外のモードが、本発明の利益を達成しながら用いられてもよいことを認めるであろう。溶液相臭素化プロセスの追加の詳細および代替の実施形態については、たとえば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(Fifth,Completely Revised Edition,Volume A231 Editors Elversら)および/またはMaurice Mortonによる「Rubber Technology」(Third Edition),Chapter 10(Van Nostrand Reinhold Company(著作権)1987)(参照により本明細書に援用する)、特にpp.297−300を参照されたい。
【0071】
ハロゲン化反応の完了後に、ゴムは、従来法、たとえば、希苛性溶液での中和、水洗および水蒸気蒸留によるなどの溶媒の除去、またはイソプロパノールなどの低級アルコールを用いた沈澱、引き続いての乾燥によって回収されてもよい。加工助剤および酸化防止剤が、溶媒をストリッピングする前にまたはその後にハロゲン化ゴム生成物と混合されてもよい。
【0072】
ハロゲン化ゴムは、さらなる工程において硬化させられてもよい。ハロゲン化ゴムの硬化は周知である。
【0073】
本発明の生成物とともに用いるための好適な硬化系は、ハロゲン化ゴム、特にハロブチルゴムとともに用いることが当技術分野において既に公知のものであり、硫黄、樹脂、および過酸化物硬化系などの従来の硬化系を一般に含む。
【0074】
本発明による方法を用いて得られるハロゲン化ゴムおよび硬化されたハロゲン化ゴムは、インナーライナー、トレッド、側壁(サイドウォール)、接着剤を含むが、それらに限定されないタイヤの一部として、熱可塑性エラストマー、履物、貯蔵膜、保護衣、製薬ストッパー、内張り、およびバリアコーティングの一部として使用されてもよい。
【実施例】
【0075】
実施例1−重合および蒸留
図1に記載されるプロセスの重要な要素を、連続モードで運転する2リットルの総容量の反応器を使ってパイロット規模で操作した。反応器への供給物は、66:34のモノマー/共通脂肪族媒体の質量比を与える3.87kg/hのイソブテン、0.09kg/hのイソプレン、および2.0kg/hの下記のとおりの共通脂肪族媒体であった。用いた反応温度は−65℃であり、16重量%の固形分を有する溶液が生成した。この材料は、約440kg/モルの重量平均分子量および約1.7モル%のイソプレン含有率を有していた。反応器からの溶液を40トレイの蒸留塔に供給し、ゴム溶液からのモノマーの分離を行った。溶液を42℃に予熱し、リボイラーを塔底で用いて113℃の塔底温度を維持した。還流冷却器を用いてオーバーヘッド流れの一部を、36℃のそこでの温度を維持する塔頂に戻した。塔で達成される分離は、分離されたゴム溶液中に10ppm未満の残存イソプレンモノマー、そしてオーバーヘッドモノマー流れ中に約1%の共通脂肪族媒体の成分を残した。分離されたモノマーを精製し、次に溶液重合反応器に再導入した。共通脂肪族媒体中の分離されたゴム溶液は、追加の共通脂肪族媒体を添加して従来法によって臭素化を成し遂げることができるようなものであった。
【0076】
上記共通脂肪族媒体は、
・1013hPaの圧力で45℃より低い沸点を有する0.1重量%未満のブタンおよびペンタン、
・1013hPaの圧力で45℃〜80℃の範囲の沸点を有する98.7重量%のペンタンおよびヘキサン、
・1013hPaの圧力で80℃より高い沸点を有する100.0重量%までの残りの量のヘキサン、ヘプタンおよびオクタン
からなっていた。
【0077】
溶媒中に存在する環状脂肪族炭化水素の総量は18.7重量%(メチルシクロペンタン、シクロペンタン、およびシクロヘキサン)であった。溶媒中に存在するシクロヘキサンの総量は1.4重量%であった。溶媒中に存在する分枝状の、非環状脂肪族炭化水素の総量は34.4重量%(2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン)であった。
【0078】
有機金属触媒、エチルアルミニウムセスキクロリドを、上記の共通脂肪族媒体に溶解させ、痕跡量の水で活性化させた。
【0079】
実施例2−ハロゲン化
分離したゴム溶液を、パイロット規模の臭素化装置を用いてハロゲン化した。10%の追加の共通脂肪族媒体を分離されたゴム溶液に添加し、元素状臭素を使用することによって臭素化を達成した。それによって、1.8%臭素を含む臭素化ブチルポリマーを製造した。そのブロモブチルゴム溶液を、次に従来の乾燥および処理法を用いて仕上げた。
【0080】
前述の事項は、ある種の好ましい実施形態を記載するにすぎず、本発明のその他の特徴および態様は当業者に明らかであろう。同様に機能する記載された要素の変形形態および均等物は、本発明が機能する方法に影響を及ぼすことなく、置き換えられてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) ・ 1013hPaの圧力で45℃〜80℃の範囲に沸点を有する1種以上の脂肪族炭化水素を少なくとも50重量%含む共通脂肪族媒体であって、さらに、25重量%未満の環状脂肪族炭化水素含有率を有する共通脂肪族媒体、ならびに
・ 少なくとも1種のイソオレフィンモノマー、及び少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーを含み、且つその他の共重合性モノマーを全く含まないか又は少なくとも1種含むモノマー混合物
を、40:60〜99:1のモノマー混合物対共通脂肪族媒体の質量比でを含む反応媒体を準備する工程と、
b)前記モノマー混合物を前記反応媒体内で重合させて、前記共通脂肪族媒体および前記モノマー混合物の残存モノマーを含む前記媒体中に少なくとも実質的に溶解しているゴムポリマーを含むゴム溶液を形成させる工程と;
c)前記モノマー混合物の残存モノマーを前記ゴム溶液から分離して、前記ゴムおよび前記共通脂肪族媒体を含む分離されたゴム溶液を形成させる工程と、
d)前記分離されたゴム溶液中のゴムを、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化する工程と
を少なくとも含む、ハロゲン化ゴムの製造方法。
【請求項2】
前記ゴムがブチルゴムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モノマー混合物が、80.0重量%〜99.9重量%の範囲の少なくとも1種のイソオレフィンモノマーおよび0.1重量%〜20.0重量%の範囲の少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記イソオレフィンモノマーがイソブテンであり、前記マルチオレフィンモノマーがイソプレンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記共通脂肪族媒体が、1013hPaの圧力で45℃〜80℃の範囲に沸点を有する少なくとも80重量%の1種以上の脂肪族炭化水素を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記共通脂肪族媒体が20重量%未満の環状脂肪族炭化水素含有率を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記共通脂肪族媒体が2.5重量%未満のシクロヘキサン含有率を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記共通脂肪族媒体が、少なくとも30重量%の、1013hPaの圧力で45℃〜80℃の範囲に沸点を有する分枝状の非環状脂肪族炭化水素含有率を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応が重合反応器で行われ、そして前記重合反応器からの排出時の前記溶液の粘度が2000cP未満である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)での後に得られる前記ゴム溶液の固形分が3〜25重量%の範囲にある、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
分子状の臭素または塩素がハロゲン化剤として使用される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
使用されるハロゲン化剤の量が前記ゴムの0.1〜20重量%の範囲にある、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ハロゲン化剤が臭素化剤であり、且つ酸化剤と組み合わせて使用される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程d)において得られた前記ハロゲン化ゴムの硬化をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
硬化ハロゲン化ゴムを製造するための、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法によって製造されたハロゲン化ゴムの使用。
【請求項16】
タイヤの一部としての、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法によって製造されたハロゲン化ゴム、または請求項15に記載の方法によって製造された硬化ハロゲン化ゴムの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2013−517362(P2013−517362A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549323(P2012−549323)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050530
【国際公開番号】WO2011/089092
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(511013418)ランクセス・インターナショナル・ソシエテ・アノニム (12)
【Fターム(参考)】