説明

高反応性硬化性ペーストインク組成物

【課題】必要なエネルギーが小さく、硬化性能が優れている固体インクおよびペーストインク、さらに、高品質画像形成性を与えることが可能なプロセスを提供する。
【解決手段】遊離ラジカル重合によって硬化させることが可能な少なくとも1つの硬化性ワックスと;約20〜約25℃の温度で液体であり、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として約20重量%未満の量で存在する、少なくとも1つの硬化性液体成分と;場合により、少なくとも1つの非硬化性ワックスと;少なくとも1つの遊離ラジカル光開始剤または光開始部分と;少なくとも1つの硬化性ゲル化剤と;場合により、着色剤とを含み、この成分は、第1の温度でペーストである硬化性インク組成物を形成し、第1の温度は、約20〜約25℃であり、この成分は、第2の温度で液体組成物を形成し、第2の温度は、約40℃より高い、放射線硬化性ペーストインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
一般的に、固体インク(転相インクまたはホットメルトインクとも呼ばれる)は、周囲温度では固相であるが、インクジェット印刷デバイスの高温での操作温度では液相で存在する。吐出操作温度では、液体インクの液滴が印刷デバイスから放出され、インクの液滴が、記録基板表面と直接接するか、または加熱した中間転写ベルトまたはドラムを介して間接的に接すると、インクの液滴はすみやかに固化し、固化したインク液滴が所定の模様を形成する。また、転相インクは、グラビア印刷のような他の印刷技術でも使用されている。
【0002】
カラー印刷のための転相インクは、典型的には、転相インクと相溶性の着色剤と組み合わせた転相インクキャリア組成物を含む。インクキャリア組成物と、相溶性の減法混色着色剤とを合わせることによって、一連の着色した転相インクを作ることができる。減法混色の転相インクは、4種類の成分染料(つまり、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)を含み得るが、インクは、これら4色に限定されない。これらの減法混色インクは、1種類の染料、1種類の顔料、染料混合物、顔料混合物、またはこれらの組み合わせを用いることによって作ることができる。
【0003】
Marcel P.Bretonらの米国特許出願第12/704,194号、名称「Curable Solid Ink Compositions」は、その内容全体が本明細書に参考として組み込まれるが、硬化性成分と、エトキシル化オクチルフェノール誘導体を含む非硬化性成分と、光開始剤と、着色剤とを含む硬化性固体インク組成物を記載している。この硬化性固体インク組成物は、90℃での粘度が10cPs未満であり、縮み値が3%未満であり、既存の硬化性固体インク組成物と比べ、硬化速度が優れている。エトキシル化オクチルフェノール誘導体は、エトキシル化オクチルフェノール、直鎖アルコールと、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートを反応させることによって調製してもよい。
【0004】
Marcel P.Bretonらの米国特許出願第12/642,538号、名称「Curable Solid Ink Compositions」は、その内容全体が本明細書に参考として組み込まれるが、遊離ラジカル重合によって硬化可能な少なくとも1つの硬化性ワックスと;少なくとも1つのモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーと;少なくとも1つの非硬化性ワックスと;少なくとも1つの遊離ラジカル光開始剤または光開始部分と;着色剤とを含む放射線硬化性固体インク組成物を記載しており、これらの成分が、約20〜約25℃の第1の温度では固体の硬化性インク組成物を形成し、約40℃よりも高い第2の温度では液体組成物を形成する。
【0005】
Marcel P.Bretonらの米国特許出願第12/835,198号、名称「Radiation Curable Solid Ink Compositions Suitable For Transfuse Printing Applications」は、その内容全体が本明細書に参考として組み込まれるが、放射線硬化性固体インクのような硬化性固体インク、および画像形成への使用、例えば、硬化性ワックスと非硬化性ワックスとを含む、紫外線硬化性転相インクのような放射線硬化性固体インクを含む、転送融合印刷を介する使用を記載している。
【0006】
現時点で入手可能なインク組成物は、その意図する目的に適してはいるが、吐出温度がもっと低く、もっとすばやく転相する性質をもち、展着し、印刷するのに必要なエネルギーが低く、硬化性能が優れており、硬化後の硬度が大きく、縮みが小さい性質をもつ硬化性固体インクおよびペーストインクが依然として必要とされている。さらに、エネルギーが小さく、所有者の全体的な費用が安い固体インクおよびペーストインクや、さらに、高品質画像形成性を与えるようなプロセスも依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
遊離ラジカル重合によって硬化させることが可能な少なくとも1つの硬化性ワックスと;約20〜約25℃の温度で液体であり、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として約20重量%未満の量で存在する、少なくとも1つの硬化性液体成分と;場合により、非硬化性ワックスと;少なくとも1つの遊離ラジカル光開始剤または光開始部分と;少なくとも1つの硬化性ゲル化剤と;場合により、着色剤とを含み、この成分は、第1の温度でペーストである硬化性インク組成物を形成し、第1の温度は、約20〜約25℃であり;この成分は、第2の温度で液体組成物を形成し、第2の温度は、約40℃より高い、放射線硬化性ペーストインク組成物が記載されている。
【0008】
さらに、(1)遊離ラジカル重合によって硬化させることが可能な少なくとも1つの硬化性ワックスと;約20〜約25℃の温度で液体であり、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として約20重量%未満の量で存在する、少なくとも1つの硬化性液体成分と;場合により、少なくとも1つの非硬化性ワックスと;少なくとも1つの遊離ラジカル光開始剤または光開始部分と;少なくとも1つの硬化性ゲル化剤と;場合により、着色剤とを含み、この成分は、第1の温度でペーストである硬化性インク組成物を形成し、第1の温度は、約20〜約25℃であり;この成分は、第2の温度で液体組成物を形成し、第2の温度は、約40℃より高い硬化性ペーストインク組成物を、インクジェット印刷装置に組み込むことと;(2)このインクを溶融させることと;(3)溶融インクの液滴が、画像を受け入れる基材の上に画像の模様に吐出され、画像を受け入れる基材が、中間転写体または最終的な画像を受け入れる基材であることと;(4)場合により、中間転写体から最終的な画像を受け入れる基材にインク画像を転写することと;(5)最終的な記録基材の上にある画像の模様に紫外線をあてることとを含む、プロセスが記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本開示の3種類の例示的な硬化性ペーストインクについて、露光時間(x軸、秒/フィート)に対する硬度(y軸)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
防汚性も高めつつ、基材に直接印刷するという課題を達成することができる放射線硬化性ペーストインク組成物が記載されている。「ペースト」は、インク混合物が、柔らかく、展性のある稠度をもつことを意味する。硬化性ペーストインクは、通常は固体転相インクに関連する取り扱い性、安全性、印刷品質といった利点を保持しつつ、100℃未満の温度での吐出性、温度変化にともなってほとんど縮まないこと、用途の要求事項および市場の需要に迅速に適応することが可能な設計の柔軟性、例えば、光沢の変更、硬度の調節、接着性の調節、多くの用途で必要とされる融合/光沢化後工程を必要としないこと、以前から入手可能なワックス系インクと比較して硬度が優れていること、汚れがないこと、印刷物を再生利用できることといった能力のような特徴を可能にする画期的な性能をさらに付与する。
【0011】
高反応性放射線硬化性ペーストインク組成物は、遊離ラジカル重合によって硬化させることが可能な少なくとも1つの硬化性ワックスと;20〜25℃の温度で液体であり、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として20重量%未満の量で存在する、少なくとも1つの硬化性液体成分と;場合により、非硬化性ワックスと;少なくとも1つの遊離ラジカル光開始剤または光開始部分と;少なくとも1つの硬化性ゲル化剤と;場合により、着色剤とを含み、この成分は、第1の温度でペーストである硬化性インク組成物を形成し、第1の温度は、20〜25℃であり、この成分は、第2の温度で液体組成物を形成し、第2の温度は、40℃より高く、この成分は、20〜25℃の第1の温度でペーストである硬化性ペースト組成物を形成し、この成分は、40℃よりも高い第2の温度で、いくつかの実施形態では、40℃よりも高く95℃までの温度で、または45〜80℃、または50〜60℃の温度で液体組成物を形成する。
【0012】
硬化性ペースト組成物は、硬化性ワックス、固体および液体のモノマー、硬化性ゲル化剤、着色剤、遊離ラジカル光開始剤のブレンドであり、この組成物は、40℃未満ではペースト状の物質であり、においがほとんどないか、またはまったくなく、場合により、40重量%までの非硬化性樹脂を含み、この樹脂は、粘度調節剤および/または相溶化剤として使用されることが多い。選択された成分は、70℃〜100℃の範囲の温度で吐出することができる(70〜100℃の吐出範囲で粘度が10〜15センチポイズ)。硬化性ペーストインク組成物は、室温で柔らかいペーストであり、印刷された液滴が多孔性基材に過度に移動するのを防ぎ、最終的な硬化の前に、低いエネルギーで広げることができる。印刷した後、この組成物を硬化し、堅牢性の高い画像を得る。
【0013】
予測できないことに、本発明のインクは、室温(25℃)で0.1〜25の範囲の硬化前硬度をもつように配合することができ(固体インクの硬度は、典型的には67)、硬化性ペースト組成物を、室温でさえ高い効率で光化学によって硬化させ、防汚性に優れ、硬化後に、現時点で入手可能な固体インクよりも大きな硬度をもつ画像を生成することができることがわかった。本明細書の硬化性ペーストインク組成物は、硬化後の硬度が50〜95、または65〜95である。いくつかの実施形態では、硬化性ペーストインク組成物は、硬化後の硬度が70〜95である。別の実施形態では、本明細書の硬化性ペーストインク組成物は、硬化後の硬度が78.4〜84.5である。これらの性質を組み合わせることで、本発明の硬化性ペースト組成物は、既存の用途および/または新しい用途および印刷システムで所定の役割を果たすことができる。
【0014】
硬化性ワックスは、遊離ラジカル重合によって硬化させることが可能であり、アクリレート、メタクリレート、アルケン、ビニル、アリルエーテルを含む硬化性基で官能基化される。放射線硬化性ペーストインク組成物は、少なくとも1つの硬化性ワックスを含有し、少なくとも1つの硬化性ワックスは、アクリレート、メタクリレート、アルケン、ビニル、またはアリルエーテルといった官能基を含む。これらのワックスは、カルボン酸またはヒドロキシルのような変換可能な官能基が接続したワックスを反応させることによって合成することができる。
【0015】
硬化性基で官能基化されてもよい、末端がヒドロキシルのポリエチレンワックスの例としては、CH−(CH−CHOH構造を有する炭素鎖(鎖長nの混合物が存在する場合、平均鎖長は、約16〜約50の範囲である)と同様の平均鎖長を有する直鎖低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。2,2−ジアルキル−1−エタノールであると特徴づけられるGuerbetアルコールは、例えば、以下の式の異性体
【化1】


と、不飽和部および環状基を含んでいてもよい他の分岐した異性体とを含むC−36ダイマージオール混合物を含む、炭素を16〜36個含むGuerbetアルコールなどの適切な化合物でもある。これらのアルコールを、UV硬化性部分が接続したカルボン酸と反応させ、反応性エステルを作成してもよい。これらの酸の例としては、アクリル酸およびメタクリル酸が挙げられる。特定の硬化性モノマーとしては、アクリレートが挙げられる。
【0016】
硬化性基で官能基化されてもよい、末端がカルボン酸のポリエチレンワックスの適切な例としては、CH−(CH−COOH構造を有する炭素鎖(鎖長nの混合物が存在する場合、平均鎖長は、16〜約50の範囲である)と同様の平均鎖長を有する直鎖低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。
【0017】
硬化性ワックスは、融点が50〜60℃の硬化性アクリレートワックスであってもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、硬化性ワックスは、Unilin(登録商標)350アクリレート、硬化性アクリレートワックス(C22、C23、C24の混合物、融点が約50〜約60℃)、硬化性ポリプロピレンワックス、またはこれらの組み合わせである。
【0019】
硬化性ワックスは、任意の適切な量で存在していてもよく、例えば、硬化性固体インク組成物の合計重量を基準として、1〜25重量%の量で存在していてもよい。
【0020】
放射線硬化性ペーストインク組成物は、室温(20〜25℃)で液体である任意の硬化性液体成分を含んでいてもよく、硬化性液体成分は、一官能モノマー、二官能モノマー、三官能モノマー、五官能モノマーおよびこれらの組み合わせから選択される液体硬化性モノマー化合物を含む。いくつかの実施形態では、液体硬化性成分は、多官能モノマー、または少なくとも官能基を3個含む液体硬化性モノマー(つまり、三官能モノマー)を含む。
【0021】
少なくとも1つの硬化性液体成分は、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸カプロラクトン、2−フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、アクリル酸ブチル、これらの混合物および組み合わせを含む、非極性液体アクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマーを含んでいてもよい。放射線硬化性ペーストインク組成物は、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸カプロラクトン、2−フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、アクリル酸ブチル、またはこれらの混合物または組み合わせからなる群から選択される非極性液体アクリレートモノマーまたはメタクリレートモノマーである少なくとも1つのモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーを含んでいてもよい。
【0022】
多官能のアクリレートおよびメタクリレートのモノマーおよびオリゴマーが、少なくとも1つの硬化性液体成分として選択されてもよい。適切な多官能のアクリレートおよびメタクリレートのモノマーおよびオリゴマーの例としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、1,2−エチレングリコールジアクリレート、1,2−エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,12−ドデカノールジアクリレート、1,12−ドデカノールジメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アミン修飾されたポリエーテル、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、およびこれらの混合物および組み合わせが挙げられる。
【0023】
液体硬化性成分は、以下の式を有するジトリメチロールプロパンテトラアクリレート化合物
【化2】

以下の式を有するプロポキシル化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート化合物
【化3】

以下の式を有するエトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート化合物
【化4】

以下の式を有するジペンタエリスリトールペンタアクリレート化合物
【化5】

およびこれらの混合物および組み合わせから選択される。
【0024】
少なくとも1つの硬化性液体成分は、任意の適切な量で存在していてもよく、例えば、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として、10〜約25重量%の量で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの硬化性成分は、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として、20重量%未満、16重量%未満、または13.5〜16重量%の量で存在する。
【0025】
少なくとも1つの液体成分は、二官能モノマーと五官能モノマーが比率1:1〜1.5:1で存在し、二官能モノマーと五官能モノマーを合わせた合計量が、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として、約13.5〜約16重量%であるような二官能モノマーと五官能モノマーの組み合わせを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの液体成分は、三官能モノマーと五官能モノマーが比率1:1〜1.5:1で存在し、三官能モノマーと五官能モノマーを合わせた合計量が、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として、約13.5〜約16重量%であるような三官能モノマーと五官能モノマーの組み合わせを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの液体成分は、二官能モノマーと五官能モノマーが比率1:1で存在し、二官能モノマーと五官能モノマーを合わせた合計量が、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として、約13.5重量%であるような二官能モノマーと五官能モノマーの組み合わせを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの液体成分は、三官能モノマーと五官能モノマーが比率1:1で存在し、三官能モノマーと五官能モノマーを合わせた合計量が、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として、約13.5〜16重量%であるような三官能モノマーと五官能モノマーの組み合わせを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、本明細書の硬化性ペーストインク組成物は、90℃で吐出する場合の粘度の要求事項を満たし、初期の硬化速度が200フィート/秒を超えているか、または300フィート/秒を超えているか、または350フィート/秒を超えている。
【0030】
本明細書の非硬化性ワックスは、室温で固体である任意の適切な非硬化性ワックス成分であってもよい。非硬化性成分は、この成分が遊離ラジカル重合によって反応しないか、または、放射線硬化性ではないか、または、顕著に放射線硬化性ではないことを意味する。非硬化性ワックスは、一価アルコールまたは多価アルコールでエステル化された酸ワックス、またはエステル化度が異なる酸ワックスのブレンド、およびこれらの組み合わせからなる群のひとつであってもよい。
【0031】
非硬化性ワックスは、エステルワックス、モンタンワックス誘導体、またはエステルワックスであるLicoWax(登録商標)KFOであってもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、放射線硬化性固体インク組成物は、融点が40〜95℃のエステルワックスを含む非硬化性ワックスを含有する。
【0033】
非硬化性ワックスは、インク組成物に可溶性であり、および/または、吐出温度より5℃〜10℃低い融点をもつ(70〜100℃の範囲であってもよい)エトキシ化オクチルフェノール誘導体から選択されてもよく、その結果、非硬化性ワックスがインク組成物の他の成分と均一に混合する。エトキシ化オクチルフェノール誘導体の分子量(M)は、600〜5,000グラム/モルの範囲である。本明細書のいくつかの実施形態では、エトキシ化オクチルフェノール誘導体の混合物および組み合わせが選択されてもよい。
【0034】
エトキシ化オクチルフェノール誘導体は、以下の式を有する「誘導体A」を含んでいてもよい。
【化6】

【0035】
誘導体Aは、以下の反応スキームによって調製することができる。
【化7】

【0036】
エトキシ化オクチルフェノール誘導体は、以下の式を有する「誘導体B」を含んでいてもよい。
【化8】

【0037】
誘導体Bは、以下の反応スキームによって調製することができる。
【化9】

【0038】
エトキシ化オクチルフェノール誘導体は、以下の式を有する「誘導体C」を含んでいてもよい。
【化10】

【0039】
誘導体Cは、以下の反応スキームによって調製することができる。
【化11】

【0040】
「誘導体D」は、以下の式を有する。
【化12】

【0041】
誘導体Dは、以下の反応スキームによって調製することができる。
【化13】

【0042】
誘導体A、B、CおよびDに関する上の式において、Rは、炭素原子の数が18〜48である炭化水素鎖である。誘導体A、B、CおよびDに関する式において、Rは、CH−(CH−であり、nは、17〜47の整数である。エトキシ化オクチルフェノール誘導体は、誘導体A、B、CおよびDに関する上の式のエトキシ化オクチルフェノール誘導体の1つ以上、例えば、2個、3個または4個の混合物であってもよく、ここで、Rは、CH−(CH−であり、混合物中に存在する誘導体は、nの整数値の範囲を含む。
【0043】
非硬化性ワックスは、硬化性固体オーバーコート組成物の合計重量を基準として、任意の適切な量で、例えば、1〜50重量%の量で存在していてもよい。
【0044】
放射線硬化性固体インク組成物は、吐出温度と基材温度との間の中間温度で半固体状態を形成し、放射線硬化性固体インク組成物は、基材の上で固化させるまでの期間、液体状態または半固体状態のままである。本明細書の放射線硬化性固体インク組成物は、溶融温度から冷却されるとゆっくりと固化し、吐出温度と基材温度との間の中間温度で半固体状態を形成し、印刷時の組成物の広がりまたは加圧融合を制御することができる。
【0045】
室温では、ペーストは、50ポンド/平方インチ(psi)の最小応力で、または35psiの最小応力で、または10psiの最小応力で変形させることができる。いくつかの実施形態では、放射線硬化性固体インク組成物は、中間温度で、室温で必要な応力よりも2psi小さい最小応力によって変形させることが可能な半固体状態を形成し、ここで、中間温度は、吐出温度(50℃〜110℃、または60℃〜100℃)と基材温度(80℃以下、または0℃〜50℃、基材の温度は、吐出温度より低い)の間の温度であり、放射線硬化性固体インク組成物は、基材の上で固化させるまでの期間、液体状態または半固体状態のままである。
【0046】
混合物中で成分の結晶化速度または固化速度を変えることができ、したがって、放射線硬化性固体インク組成物が、固化させるまでの期間、液体状態または半固体状態のままであるような条件を与えることができ、それによって、吐出することができるように溶融させることができ、インクが紙の上で半固体状態のままであるようなゆっくりとした結晶化速度をもち、それによって、硬化性能に良い影響を及ぼす固体インクを与えることができる。
【0047】
例となる放射線硬化経路としては、紫外(UV)光、またはもっと稀には可視光を用い、好ましくは光開始剤存在下で硬化させること、光開始剤が存在しない状態で電子線を用いて硬化させること、高温熱開始剤が存在する状態、または存在しない状態で熱硬化を用いて硬化させること、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
放射線硬化性ペーストインク組成物は、インクの硬化性成分(硬化性モノマーおよび硬化性ワックスを含む)の重合を開始させる光開始剤を含む。開始剤は、室温で固体であり、吐出温度で、組成物に可溶性でなければならない。特定の実施形態では、開始剤は、紫外線放射によって活性化される光開始剤である。
【0049】
いくつかの実施形態では、開始剤は、ラジカル開始剤である。適切なラジカル光開始剤の例としては、ケトン、例えば、ベンジルケトン、ヒドロキシルケトンモノマー、ヒドロキシルケトンポリマー、α−アミノケトン;アシルホスフィンオキシド、メタロセン、ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンおよび4−メチルベンゾフェノン;チオキサンテノン、例えば、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オンが挙げられる。
【0050】
他の実施形態では、開始剤は、カチオン系開始剤である。
【0051】
この開始剤は、硬化性固体インク組成物の合計重量を基準として、任意の有効な量で、例えば、0.5〜15重量%の量で存在していてもよい。
【0052】
ゲル化剤は、硬化性アミドと、硬化性ポリアミド−エポキシアクリレート成分と、ポリアミド成分とを含む硬化性ゲル化剤であってもよい。他の実施形態では、ゲル化剤は、硬化性エポキシ樹脂とポリアミド樹脂とを含む硬化性コンポジットゲル化剤である。硬化性ペーストインク組成物にゲル化剤が含まれることで、この組成物は塗布した後に冷却するにつれて固体またはペーストになり、組成物の粘度がすばやく増加するため、組成物を基材に過剰に浸透することなく、基材の上、例えば、基材の1つ以上の部分の上および/または基材の上にすでに形成されている画像の1つ以上の部分の上に塗布することができる。溶融した硬化性固体インクが多孔性基材(例えば、紙)に過剰に浸透すると、基材の不透明度が望ましくない程度まで低下することがある。また、硬化性ゲル化剤は、組成物のモノマーの硬化にも関与していてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、ゲル化剤は、ポリフェノール系エポキシ樹脂、ポリオール系エポキシ樹脂、または脂肪酸エポキシドおよびポリアミド成分のうち少なくとも1つを含むエポキシ基含有成分から誘導される硬化性エポキシ−ポリアミドコンポジットゲル化剤を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、ゲル化剤は、以下の式の化合物を含み、
【化14】

式中、Rは、(i)アルキレン基、(ii)アリーレン基、(iii)アリールアルキレン基、または(iv)アルキルアリーレン基であり、RおよびR’は、それぞれ互いに独立して、(i)アルキレン基、(ii)アリーレン基、(iii)アリールアルキレン基、または(iv)アルキルアリーレン基であり、RおよびR’は、それぞれ互いに独立して、(a)光開始基であるか、または、(b)(i)アルキル基、(ii)アリール基、(iii)アリールアルキル基、または(iv)アルキルアリール基である基のいずれかであり、XおよびX’は、それぞれ互いに独立して、酸素原子であるか、または式−NR−の基であり、ここで、Rは、(i)水素原子、(ii)アルキル基、(iii)アリール基、(iv)アリールアルキル基であるか、または(v)アルキルアリール基である。例えば、米国特許第7,279,587号を参照。また、米国特許公開第2010/0242790A1号も参照。
【0055】
いくつかの実施形態では、ゲル化剤は、
【化15】

【化16】

および
【化17】

の混合物であり、−C3456+a−は、分岐アルキレン基をあらわし、aは、0〜12の整数である。
【0056】
いくつかの実施形態では、ゲル化剤は、以下の式の化合物であり、
【化18】

式中、RおよびR’は、それぞれ互いに独立して、(i)少なくとも1個のエチレン不飽和部を中に含むアルキル基、(ii)少なくとも1個のエチレン不飽和部を中に含むアリールアルキル基、または(iii)少なくとも1個のエチレン不飽和部を中に含むアルキルアリール基であり、RおよびR’は、それぞれ互いに独立して、(i)アルキレン基、(ii)アリーレン基、(iii)アリールアルキレン基、または(iv)アルキルアリーレン基であり、Rは、(i)直鎖または分岐のアルキレン基、(ii)アリーレン基、(iii)アリールアルキレン基、または(iv)アルキルアリーレン基であり、nは、繰り返しアミド単位の数をあらわす整数であり、少なくとも1である。
【0057】
いくつかの実施形態では、ゲル化剤は、以下の式の化合物の混合物であり、
【化19】

ここで、いくつかの実施形態では、Rは、以下の式の化合物Aであり、
【化20】

ここで、Rは、以下の式の化合物Bであり、
【化21】

式中、nは、約1〜約4の整数である。
【0058】
いくつかの実施形態では、ゲル化剤は、以下の式の化合物を含んでいてもよく、
【化22】

式中、RおよびR’は、同じであっても異なっていてもよく、RおよびR’は、それぞれ互いに独立して、(i)少なくとも1個のエチレン不飽和部を中に含むアルキル基、(ii)少なくとも1個のエチレン不飽和部を中に含むアリールアルキル基、(iii)少なくとも1個のエチレン不飽和部を中に含むアルキルアリール基、または(iv)芳香族基であり、但し、RおよびR’のうち、少なくとも1つは芳香族基であり、但し、RおよびR’はどちらも光開始基ではなく、
およびR’は、同じであっても異なっていてもよく、RおよびR’は、それぞれ独立して、(i)アルキレン基;(ii)アリーレン基;(iii)アリールアルキレン基;または(iv)アルキルアリーレン基から選択され、
は、(i)直鎖または分岐のアルキレン基;(ii)アリーレン基;(iii)アリールアルキレン基;または(iv)アルキルアリーレン基である。
【0059】
いくつかの実施形態では、インクのゲル化剤は、以下
【化23】

【化24】

【化25】

、または
【化26】

の一般的な構造を有する化合物であってもよい。
【0060】
ゲル化剤は、任意の適切な量または任意の望ましい量で、例えば、インクの1重量%〜50重量%の量で存在していてもよい。
【0061】
染料、顔料、これらの混合物を含め、任意の望ましい着色剤または有効な着色剤をインクに使用してもよい。
【0062】
着色剤は、任意の望ましい量または有効な量で存在し、例えば、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として、約0.1〜約15重量%の量で存在する。
【0063】
本明細書に記載のインクを基材に塗布し、画像を作成してもよい。いくつかの実施形態では、この方法は、第1の温度で硬化性ペーストインク組成物を提供することと;放射線硬化性インクを画像の様式になるように基材に塗布(例えば、吐出)し、画像を作成し、ここで、基材は、第1の温度よりも低い第2の温度であることと;放射線硬化性インクに放射線をあて、インクを硬化させることとを含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、組成物をインクジェット印刷によって塗布する。本明細書のインクは、好ましくは、50℃〜110℃、または60℃〜100℃の温度で吐出される。
【0065】
インクが適用される基材は、インクが例えば、10〜10mPa−sの高い粘度を有する温度になっていてもよい。基材は、80℃以下の温度、特定的には、0℃〜50℃の温度に維持されてもよく、基材の温度は、吐出温度よりも低い。いくつかの実施形態では、基材の温度は、第1の温度よりも少なくとも10℃低いか、または、基材の温度は、吐出温度よりも10〜50℃低い。
【0066】
インクが液体である温度でインクを吐出し、インクが高い粘度を有する温度の基材を含むことによって、転相を行うことができる。この転相によって、組成物が基材にすばやく染みこむのを防ぎ、しみ通ってしまわないようにするか、少なくとも最小限にすることができる。基材表面にあるインクに放射線をあて、硬化性モノマーの重合を開始させ、堅牢性の高い画像が得られる。
【0067】
いくつかの実施形態では、溶融したインクの液滴を記録基材の上に画像の様式で吐出し、記録基材が最終的な記録基材である場合、例えば、紙に直接塗布する場合、硬化性ペーストインク組成物を、直接的に印刷するインクジェットプロセスの装置で使用することができる。基板は、紙、ボール紙、厚紙、布地、透明物、プラスチック、ガラス、木材などの任意の適切な材料であってもよいが、上述のインクは、最も特定的には、紙上で画像を作成するのに用いられる。
【0068】
または、インクを、間接的な(オフセット)印刷のインクジェット用途で使用してもよく、融解したインクの液滴が、記録基板上で画像の様式になるように放出される場合、記録基板は中間転写体であり、次いで、画像の模様になったインクが、中間転写体から最終的な記録基板に転写される。
【0069】
基材に転写した後、基材の上の画像に放射線をあて、インクの硬化反応を開始させる。放射線を0.05〜10秒間露光する。これらの露光時間は、インクがUVランプの下を通過する基材速度としてあらわされることが多い。マイクロ波によってエネルギーが与えられ、ドープされた水銀球を、幅10cmの楕円形の鏡を整列させたものの中に置き、複数のユニットを直列に配置してもよい。したがって、ベルト速度0.1ms−1だと、画像のある一点が1個のユニットの下を通過するのに1秒間必要であり、一方、ベルト速度4.0ms−1だと、4個の球が整列したものの下を通るのに0.2秒必要であろう。
【0070】
硬化性ペーストインク組成物を、以下に列挙した成分を表1、2および3に列挙した量で合わせることによって調製した。350mlの褐色ガラス瓶に、表1、2および3に与えられている割合で、以下の順番でCD406(登録商標)、SR368(登録商標)、CD587(登録商標)、Unilin 350(登録商標)アクリレート、誘導体A、Irgacure(登録商標)819、Irgacure(登録商標)379、Irgacure(登録商標)907、次いで、液体モノマー(SR335(登録商標)、SR9003(登録商標)、SR454(登録商標)、SR399(登録商標))のインク成分を加え、合計で10グラムのインクを得た。この10グラムの混合物に撹拌棒を加え、この混合物をVariomag反応ブロックに入れた。インク混合物を約90℃まで加熱し、300rpmで少なくとも20分間撹拌するか、または、混合物が均質な外観になるまで撹拌した。温度を5分間で100℃まで上げた。混合物を90℃に戻し、90分間撹拌した。もっと多量のインクについて、同様の手順を用いることができる。
【0071】
CD406(登録商標)は、Sartomer Company,Inc.の二官能脂環式アクリレートモノマー(シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、融点が約78℃)の硬化性固体成分であり;
【0072】
SR368(登録商標)は、Sartomer Company,Inc.の三官能モノマー(トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、融点が50〜55℃)の硬化性固体成分であり;
【0073】
CD587(登録商標)は、Sartomer Company,Inc.のベヘニルアクリレート一官能基モノマー(C18、C20、C22の混合物、融点が55℃)の硬化性固体成分であり;
【0074】
SR335(登録商標)は、以下の式を有するSartomer Co.Inc.の揮発性が低く、長鎖脂肪族疎水性骨格をもつ硬化性液体一官能モノマーであるラウリルアクリレートである。
【化27】

【0075】
SR9003(登録商標)は、以下の式を有するSartomer Co.Inc.の液体硬化性二官能モノマーであるプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートである。
【化28】

【0076】
SR454(登録商標)は、以下の式を有するSartomer Co.Inc.の液体硬化性三官能モノマーである3モルのエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートである。
【化29】

【0077】
SR399(登録商標)は、以下の式を有するSartomer Co.Inc.の液体硬化性五官能モノマーであるジペンタエリスリトールペンタアクリレートである。
【化30】

【0078】
Unilin(登録商標)350アクリレートは、Baker Petroliteの硬化性一官能アクリレートワックスである(C22、C23、C24の混合物、融点が約78〜約83℃)。
【0079】
誘導体Aは、上に記載され、以下のように調製されるエトキシ化オクチルフェノール誘導体である。250ミリリットルのフラスコに撹拌マグネットを取り付け、これに、エトキシ化オクチルフェノールであるIGEPAL(登録商標)CA210(MW=261)70グラム、完全に飽和な長鎖線形一級アルコールであるUnilin(登録商標)425(OH #95.3、MW=589)80グラムのあらかじめ溶融しておいた混合物を加えた。このフラスコを、温度計を取り付けた140℃の油浴に入れ、加熱し、撹拌した。約5分後、以下の式のIPDI(MW=222)30グラム
【化31】

を加え、次いで、式BuSn(OOC1223のFascat(登録商標)4202ジブチルスズジラウレート触媒3滴を加えた。発熱が観察された。約1.5時間後、IRスペクトルから、反応生成物が得られ、イソシアネートのピーク(約2230cm−1)は観察されなかった。内容物をアルミニウム缶に注ぎ、冷却し、固化させた。
【0080】
米国特許公開第2010/0242790A1号に記載されるようなアミドゲル化剤を、以下のように調製した。
【0081】
有機アミドの合成。有機アミドを、以下の反応スキームにしたがって調製した。
【化32】

【0082】
2リットルのケトルに4枚刃のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)インペラ、滴下漏斗、Dean−Starkトラップ、環流凝縮器、検証された熱電対を取り付け、これに、上に示すような式C3670のPripol(登録商標)1009ダイマー二酸1,035.33グラム(1790ミリモル)を加えた。[酸価は、194ミリグラムKOH/gであり、計算された分子量(MW)は、1000/[0.5[(酸価/MW KOH)]=578.03であり、つまり、有効成分が98%]次に、混合しつつ、Irgafos(登録商標)168(0.2重量%)トリスアリールホスファイト処理安定化剤2.07グラムを加え、ケトルにアルゴンをパージした。このケトルを90℃まで加熱した。エチレンジアミン60.4ミリリットル(895ミリモル)を滴下漏斗に加え、Pripol(登録商標)1009ダイマー二酸にゆっくりと30分かけて滴下した。ケトルを150℃まで加熱し、綿ウールおよび箔で包み、温度を維持した。水がトラップに集まり始め(15ミリリットル)、蒸気は、凝縮器の上部から出ているようであった。150℃で2時間後、加熱をやめ、溶融した有機アミドをアルミニウムパイ皿に注ぎ、冷却させ、硬化させた。1,043.6グラムの有機アミドが単離された。
【0083】
ゲル化剤の合成。アミドゲル化剤を、以下の反応スキームにしたがって調製した。
【化33】

【0084】
20リットルの反応フラスコにオーバーヘッドスターラー(金属スパイラルミキサー)を取り付け、これに上述の有機アミド936グラム(808ミリモル)を加え、熱い空気銃を用いることによって移動を助け、材料を溶融させ、流動可能な状態にする。次いで、ジクロロメタン15リットルを加え、混合物を混合しつつ、一晩浸し、有機アミド出発物質を完全に溶解させた。次いで、室温で混合しつつ、400グラム(1,940ミリモル)のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、カップリング剤)、14.81グラム(121ミリモル)の4−ジメチルアミノピリジン(DMAP、触媒)、278グラム(808ミリモル)のSR495B(登録商標)(カプロラクトンアクリレート)、181グラム(808ミリモル)のIrgacure(登録商標)2959(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン光開始剤)を加えた。18時間後、DCHU(ジシクロヘキシル尿素)副生成物を濾別し、回転蒸発によってジクロロメタン溶媒を除去した。生成物を大きな箔製の皿に移し、減圧下、50℃で3時間乾燥させた。酸価:0.65。アミン価:3.87。この生成物を50℃でさらに8時間減圧乾燥させた。固体分析の割合(80℃で30分)から、2重量%のジクロロメタンが存在していることが示される。1,438.3グラムのアミドゲル化剤が単離された。
【0085】
Irgacure(登録商標)819は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドを含むビスアシルホスフィン光開始剤であり、融点は127〜133℃である。
【0086】
Irgacure(登録商標)184は、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを含むα−ヒドロキシケトン光開始剤であり、融点は45〜49℃である。
【0087】
Irgacure(登録商標)907は、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オンを含むα−アミノ−ケトン光開始剤であり、融点は70〜75℃である。
【表1】

【表2】

【表3】

【0088】
(実施例33)
まず、123.4グラムのCD406(登録商標)を、EFKA(登録商標)4340(メトキシプロパノール中のアクリルブロックコポリマー分散剤、固体含有量約56%で92.3グラム)の溶液に加えて固体マゼンタ顔料濃縮物を調製し、混合物Aを与えた。混合物Aを加熱し、回転蒸発させ、メトキシプロパノールを除去し、CD406(登録商標)中のEFKA(登録商標)4340の混合物B(178.9グラム、31% EFKA(登録商標)4340)を得た。次いで、混合物Bを用い、178.9グラムの混合物B、158グラムのCD406(登録商標)、86.5グラムのMicrolith(登録商標)Magenta JET 2B(BASF)を合わせ、温度90℃で15分間、Polytron(登録商標)を用いて10,000rpmで均質化してマゼンタ濃縮物を調製し、21%マゼンタ顔料、66.4%CD406(登録商標)、12.6%分散剤を含むマゼンタ顔料濃縮物を得た。
【0089】
(実施例34〜66)
0.2グラム(約2重量%)の実施例33の固体マゼンタ顔料濃縮物を、実施例1〜32のそれぞれのインク組成物10グラムに加え、実施例34〜66の着色したマゼンタ硬化性ペーストインクを得た。
【0090】
実施例1〜32の硬化前および硬化後の硬度の測定を、PTC(登録商標)Durometerを用いて得た。本発明の実施例の比較として、Xerox Phaser(登録商標)シリーズのプリンタで使用するために販売されている従来の固体インクの市販サンプルの硬度は、67である。
【0091】
表4に示されるように、実施例1〜32の硬化前または初期の硬度、硬化速度(初期の勾配)、硬化後の硬度(最終的な硬度)は、硬化前の硬度について、約0.1〜約24.76、硬化後の硬度について約72.24〜約84.26、初期の勾配(硬化速度)について、約162.77〜約356.05の範囲である。
【表4】

【0092】
以下の数式を用い、硬度 対 露光時間(秒/フィート(s/ft))のプロットから、硬度および硬化速度のデータを得た。
y=m+m・(1 exp(−m・x));
初期の硬度(硬化前の硬度)=m
初期の勾配(硬化速度)=m・m
最終的な硬度(硬化後の硬度)=m+m
【0093】
紫外線露光に対する硬度の変分を測定することによって硬化速度を得た。600W Fusion UV Systems,Inc.のLighthammer(登録商標)にD球を取り付けたものを使用し、実施例1〜32のインク組成物に照射し、特定の露光時間の後、硬度を測定した。硬度 対 硬化速度(s/ft)のプロットを用い、インク媒剤の初期硬化速度を得た。
【0094】
図1は、実施例3、13および14について、露光時間(x軸)に対する硬度(y軸)を示したものである。本明細書のインクは、硬化前に低いエネルギーでインクを広げることができる。本明細書のインクは、転写融合プロセス中にインクを広げるのに必要なエネルギーが顕著に低い。このことは、硬化前の硬度が、従来のインクと比較して非常に低く、同時に硬化後の硬度が高いという事実と関連がある。インクは、従来の転相インクに対し手必要とされるエネルギーよりも低いエネルギーで広げることができる。本明細書の放射線硬化性固体インク組成物は、吐出温度と基材温度の間の中間温度で、室温で変形させるのに必要な応力よりも最低で2psi低い最低限の応力で変形させることが可能な半固体状態を形成し、放射線硬化性ペーストインク組成物は、基材の上で固化させるまでの期間、液体または半固体のままである。室温で、ペーストは、最低で50ポンド/平方インチ(psi)の応力で、または最低で35psiの応力で、または最低で10psiの応力で変形させることができる。本明細書のインクは、露光時間に対する硬度の自由度を示し、UV露光によって固定し(インクを部分的に硬化させ)、最終的な硬化の前にインクの性質を制御することができ、画像の広がりおよび最終的な光沢を制御するための方法として用いてもよい。変形応力は、初期の応力よりも大きい。
【0095】
本開示のモデルインクおよび着色したインクは、Xerox(登録商標)Phaser(登録商標)プリンタの吐出性に関する粘度の要求を満たしている。本開示のモデルインクおよび着色したインクは、印刷ヘッドの周波数が36Khzであり、吐出温度が95℃、印刷速度が355×464ドット/インチであるXerox(登録商標)Phaser(登録商標)プリンタの吐出性に関する粘度の要求を満たしている。
【0096】
本開示の硬化性固体インクおよびペーストインクは、固体転相インクに関連する取り扱い性および安全性の利点と、初期に提案された硬化性固体インクの利点を保持している。本発明の硬化性インクおよび固体ペーストインクは、そのほかに、堅牢性、初期の硬化速度、最低限の縮み、従来の固体インクよりも硬化度の硬度が高いこと、およびインクを広げるのに必要なエネルギーが小さいこと、以前の硬化性固体インクに比べ、これらを「環境に優しい」インクにすることといったさらなる画期的な性能を与える。本明細書で選択された液体モノマーとともにゲル化薬剤を加えると、硬化工程の前に簡単に広げられる材料を与えつつ、最終的な硬化の前の広がりを制御する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離ラジカル重合によって硬化させることが可能な少なくとも1つの硬化性ワックスと;
約20〜約25℃の温度で液体であり、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として約20重量%未満の量で存在する、少なくとも1つの硬化性液体成分と;
場合により、非硬化性ワックスと;
少なくとも1つの遊離ラジカル光開始剤または光開始部分と;
少なくとも1つの硬化性ゲル化剤と;
場合により、着色剤とを含み、
この成分は、第1の温度でペーストである硬化性インク組成物を形成し、第1の温度は、約20〜約25℃であり;
この成分は、第2の温度で液体組成物を形成し、第2の温度は、約40℃より高く;少なくとも1つの硬化性ワックスは、アクリレート、メタクリレート、アルケン、ビニル、アリルエーテルの官能基を含み、少なくとも1つの液体成分は、一官能モノマー、二官能モノマー、三官能モノマー、五官能モノマーおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、放射線硬化性ペーストインク組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの液体成分は、少なくとも3個の官能基を含むモノマーを含む、請求項1に記載の放射線硬化性ペーストインク組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの液体成分が、二官能モノマーと五官能モノマーが比率1:1〜1.5:1で存在し、二官能モノマーと五官能モノマーを合わせた合計量が、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として、約13.5〜約16重量%であるような二官能モノマーと五官能モノマーの組み合わせを含むか、または、
前記少なくとも1つの液体成分が、三官能モノマーと五官能モノマーが比率1:1〜1.5:1で存在し、三官能モノマーと五官能モノマーを合わせた合計量が、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として、約13.5〜約16重量%であるような三官能モノマーと五官能モノマーの組み合わせを含む、請求項1に記載の放射線硬化性ペーストインク組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの液体成分が、五官能モノマーと二官能モノマーを比率1:1で含み、五官能モノマーと二官能モノマーを合わせた合計量が、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として、約13.5〜約16重量%であるか、または、
前記少なくとも1つの液体成分が、三官能モノマーと五官能モノマーが比率1:1で存在し、三官能モノマーと五官能モノマーを合わせた合計量が、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として、約13.5重量%であるような三官能モノマーと五官能モノマーの組み合わせを含む、請求項1に記載の放射線硬化性ペーストインク組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの液体成分が、以下の式
【化34】

【化35】

【化36】

、または
【化37】

の化合物、およびこれらの混合物および組み合わせである、請求項1に記載の放射線硬化性ペーストインク組成物。
【請求項6】
前記非硬化性ワックスがエステルワックスである、請求項1に記載の放射線硬化性ペーストインク組成物。
【請求項7】
前記非硬化性ワックスが、
【化38】

【化39】

【化40】

、または
【化41】

およびこれらの混合物および組み合わせからなる群から選択されるエトキシ化オクチルフェノール誘導体である、請求項1に記載の放射線硬化性ペーストインク組成物。
【請求項8】
前記硬化性ペーストインク組成物は、硬化後の硬度が約70〜約95である、請求項1に記載の放射線硬化性ペーストインク組成物。
【請求項9】
前記組成物は、室温での硬化前の硬度が約0.1〜約25の範囲である、請求項1に記載の放射線硬化性ペーストインク組成物。
【請求項10】
(1)遊離ラジカル重合によって硬化させることが可能な少なくとも1つの硬化性ワックスと;約20〜約25℃の温度で液体であり、硬化性ペーストインク組成物の合計重量を基準として約20重量%未満の量で存在する、少なくとも1つの硬化性液体成分と;場合により、非硬化性ワックスと;少なくとも1つの遊離ラジカル光開始剤または光開始部分と;少なくとも1つの硬化性ゲル化剤と;場合により、着色剤とを含み、この成分は、第1の温度でペーストである硬化性インク組成物を形成し、第1の温度は、約20〜約25℃であり、この成分は、第2の温度で液体組成物を形成し、第2の温度は、約40℃より高い硬化性ペーストインク組成物を、インクジェット印刷装置に組み込むことと;
(2)このインクを溶融させることと;
(3)溶融インクの液滴が、画像を受け入れる基材の上に画像の模様に吐出され、画像を受け入れる基材が、中間転写体または最終的な画像を受け入れる基材であることと;
(4)場合により、中間転写体から最終的な画像を受け入れる基材にインク画像を転写することと;
(5)最終的な記録基材の上にある画像の模様に紫外線をあてることとを含む、プロセス。

【図1】
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【公開番号】特開2012−236998(P2012−236998A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108708(P2012−108708)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】