説明

高吸油性非晶質シリカ粒子

本発明は、高い吸油性を有する非晶質シリカ粒子、該粒子の製造方法および該粒子の使用に関する。本発明による非晶質シリカ粒子は、少なくとも、200〜990℃で焼成することによって、JIS K 6217−4法によって測定した吸油量が400ml/100gをこえることを特徴とする非晶質シリカ粒子が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い吸油性能を有する非晶質シリカ粒子、該シリカ粒子の製造方法および該シリカ粒子の使用に関する。より具体的には本発明は、JIS K 6217−4法(ゴム用カーボンブラック−基本特性)によって測定した吸油量が400ml/100gをこえる非晶質シリカ粒子に関する。窒素吸着等温線法により得た細孔分布曲線において、ΔVp/ΔlogRp値(但し、Vpは細孔容積[mm/g]、Rpは細孔半径[nm])の最大値は250mm/nm・g以上である。ΔVp/ΔlogRp値が最大値であるときの細孔ピーク半径は3nm以上である。
【0002】
シリカは、その物理的および化学的特性に応じて、ゴム補強充填剤、農薬用担体、薬品吸収剤、製紙用充填剤、特殊紙用コーティング剤、樹脂配合剤、塗料用艶消し剤等を含む広範囲の分野で使用されており、物理的および化学的特性はそれぞれの適用に応じて異なるため、多種類のシリカを入手できることが必要とされる。
【0003】
これらの適用の中でも、医薬、農薬および動物用医薬品、浴用剤等の薬品吸収(吸着・吸油)剤、製紙用充填剤、特殊紙用コーティング剤、樹脂配合剤、塗料用艶消し剤等については、吸油性能の高いことが要求される。
【0004】
吸油性能が高い非晶質シリカ粒子の例として、特開昭58−88117号公報(1983)では、pH6から7で剪断力をかけながら、珪酸ナトリウム水溶液と硫酸を同時に添加し、噴霧乾燥することにより、比表面積400から600m/g、DBP値340から380%の非晶質シリカ製造されることが開示されている。Kuhlmann等の特開2002−255534号公報では、ろ過ケーキ水分および乾燥法(スピンフラッシュ乾燥機)の改良により、吸油量が380〜420g/100g(ml/100gに単位換算すれば、362〜400ml/100g)の非晶質シリカ粒子が開示されている。また、特開平1−320215号公報(1989)では、珪酸ナトリウム水溶液と鉱酸との第一段階の反応後の熟成時に剪断力をかけながら粒子の成長および適度な凝集を促し、シリカスラリーをカチオン性の界面活性剤と混合し、噴霧乾燥させることによりシリカが製造される、比表面積150から350m/g、吸油量が300から400ml/100gの高吸油性シリカが開示されている。
【0005】
しかしながら、医薬、農薬、動物用医薬、浴用剤等の薬剤の吸着(吸収・吸油)剤は、さらにコンパクトなサイズおよび高い機能が求められるため、吸着剤としての非晶質シリカ粒子の吸油性能をさらに増大させることが重要課題となっている。つまり、非晶質シリカへの液状薬剤の吸着量が増大することにより、有効成分の増量や同一の薬剤量でのコンパクト化が達成でき、管理費または物流費の削減および消費者の取扱性の向上が期待できる。上記シリカ粒子において、これらのシリカ粒子は全て吸油量が400ml/100g以下であるが、しかし高吸油性シリカという観点からは更なる改良が望まれていた。
【0006】
また、非晶質シリカ、とりわけ、沈降シリカは嵩高く、製紙用充填剤、特殊紙用コーティング剤、塗料用艶消し剤として、紙または塗料中に混合するのに労力を要する。さらに混合量にも制限があり、これらの問題の解決が求められていた。
【0007】
従って本発明の課題は、上記の問題を少なくともいくつか解決することができるシリカを提供することであった。本発明は同様に、シリカの製造方法を提供することも意図している。
【0008】
上記の問題を解決するために、発明者ら鋭意検討を重ねた結果、吸油量340ml/100g以上の非晶質シリカ粒子を製造し、当該シリカ粒子を200〜990℃で焼成処理することによって、吸油量400ml/100gを超える非晶質シリカ粒子を製造できることを見出した。
【0009】
従って本発明は特許請求の範囲および発明の詳細な説明に定義されている非晶質シリカ粒子および該シリカ粒子の製造方法を提供する。
【0010】
本発明は特にJIS K 6217−4法(ゴム用カーボンブラック−基本特性)によって測定した吸油量が400ml/100gをこえ、窒素吸着等温線法により得た細孔分布曲線において、ΔVp/ΔlogRp値(但し、Vpは細孔容積[mm/g]、Rpは細孔半径[nm])の最大値が250mm/nm・g以上であり、上記ΔVp/ΔlogRp値が最大値であるときに、細孔ピーク半径が3nm以上である非晶質シリカ粒子を提供する。
【0011】
本発明はまた、シリカ粒子を200〜990℃で、有利には200〜900℃で焼成する非晶質シリカの製造方法にも関する。
【0012】
本発明はまた、たとえば艶消し剤、吸着剤(医薬品または農薬のための担体)、種々のゴム等の増量剤または充填剤としての本発明による非晶質シリカの使用も提供する。
【0013】
本発明はさらに、本発明の非晶質シリカ粒子を含有する艶消し剤ならびに医薬および農薬のための吸着剤を提供する。
【0014】
JIS K 6217−4法(ゴム用カーボンブラック−基本特性)によって測定した吸油量が400ml/100gをこえ、窒素吸着等温線法により得た細孔分布曲線において、ΔVp/ΔlogRp値(但し、Vpは細孔容積[mm/g]、Rpは細孔半径[nm])の最大値が250mm/nm・g以上であり、かつΔVp/ΔlogRp値が最大であるときの細孔ピーク半径が3nm以上である非晶質シリカ粒子を発明した。本非晶質シリカ粒子は、吸油量が高いので、医薬、農薬の吸着剤または塗料用艶消し剤等として用いる場合、少量で医薬もしくは農薬の吸着効果または艶消し効果を高めることができる。
【0015】
本発明の非晶質シリカ粒子の原料であるケイ酸アルカリは、特に限定されないが、例えば、工業製品としてJISに規格されている水ガラス等のケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウム、反応性シリカを酸性白土等の粘土質原料より回収した易反応性のシリカと、アルカリ金属の水酸化物溶液とを反応させることにより製造されるケイ酸アルカリ等を使用することができる。上記のケイ酸アルカリを水溶液として使用する場合、当該水溶液におけるシリカ濃度は、特に限定されないが、一般に1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは2.5〜10重量%である。濃度が1質量%よりも低ければ、製造効率が悪く経済的な不利益が増加する。濃度が30質量%より高ければ、反応溶液の粘性が高くなり、反応が不均一になり、かつ反応後のシリカスラリーの取り扱いが非常に困難となる。また、SiO:MO(Mはアルカリ金属である)のモル比は、一般に2:1〜4:1、好ましくは2.5:1〜3.5:1である。これらのモル比は通常2号ケイ藻、3号ケイ藻、4号ケイ藻、などと呼ばれている。一般には、コストパフォーマンスの問題から3号珪曹が汎用される。
【0016】
非晶質シリカ粒子の製造における中和反応に用いる鉱酸は、特に限定されないが、炭酸水、炭酸ガス、酢酸、ルイス酸、塩酸、硫酸、硝酸等を使用することができる。とりわけ、設備上、経済上の観点から、硫酸が多く使われる。上記鉱酸水溶液の濃度は一般に5〜75重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは10〜45重量%である。
【0017】
本発明の非晶質シリカ粒子を製造する方法としては、特に限定されないが、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液を酸により中和する通常の非晶質シリカを製造する公知の方法を使用することができる。
【0018】
例えば、ゲル法、沈降法、またはこれらの方法の組合わせを使用することができる。これらの方法を一緒に使用する場合、第一段階の反応で生成される核として使用される非晶質シリカ粒子、およびこの生成後の熟成によるシリカ粒子の成長と凝集を制御する必要がある。すなわち、核として使用されるシリカ粒子の粒径および細孔サイズならびに熟成後の粒径および細孔サイズを考慮してシリカの製造条件を決める必要がある。両原料の接触による中和方法として2つの方法、つまり両原料のどちらか一方の原料をもう一方の原料の水溶液中に撹拌下に添加する方法および両原料溶液を一定条件下に同時に接触させる方法があるが、特に限定されるものではない。以下にシリカの製造例をいくつか示す。
【0019】
本発明の有利な1実施態様では、本発明の非晶質シリカ粒子は、まずケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸水溶液とをpH2〜10で中和反応させて、シリカ濃度が2〜10質量%のシリカスラリーを直接製造する方法によって製造される。あるいは、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸水溶液との中和により、シリカスラリーを一般に30分以上放置することによってシリカ濃度が5〜30重量%の生成させる。中和反応の温度は、特に制限はないが、均一な組織のシリカを形成させるためには、有利には50℃以下である。また、必要に応じて、湿式粉砕機等で剪断力をかけながら、中和反応させてもよい。
【0020】
得られたシリカヒドロゲルを洗浄した後に、必要に応じ、水分調節・細孔調節のために熱処理を行なってもよい。この熱処理の温度は、一般には40〜200℃の範囲であり、好ましくは70〜190℃、より好ましくは100〜170℃である。上記熱処理は、例えばオートクレーブ中で行うことができ、熱処理のための時間は、細孔ピーク半径に応じて調節すればよい。この時間は通常、5分〜30時間、好ましくは30分〜20時間、より好ましくは1時間〜15時間である。
【0021】
その後、必要に応じ平均粒径が500μm以下、好ましくは2〜200μm、より好ましくは、3〜100μmとなるようにシリカスラリーを湿式粉砕してもよい。場合に応じ、熱処理前または熱処理中にシリカスラリーを粗粉砕してもよいが、ろ過効率が不十分であり、ろ過時に圧搾する場合にはシリカスラリーが再度凝集することがあるので、その場合はシリカスラリーをろ過後に再粉砕した方がよい。
【0022】
湿式粉砕には、それ自体公知の方法を適用することができる。例えば、WAB(ウィリー・A・バッコーフェン)社製のダイノーミルのようなビーズミル、シルバーソン社製のハイシェアミキサー、特殊機化社製のホモミキサーやラインミル等が好適である。高速剪断力が可能であれば、他の湿式粉砕機を使用することもできる。湿式粉砕時の温度は特に限定されないが、反応または熱処理中に実施する場合には、同じ温度で実施することができる。しかし細孔サイズの調節終了後に粉砕を実施する場合には、粒子間の凝集を少なくするために、スラリーの温度は50℃を越えてはならない。
【0023】
その後、このシリカスラリーをろ過し、乾燥することにより所定の非晶質シリカを得ることができる。乾燥法として、通気乾燥や噴霧乾燥のような公知の方法を使用することができる。一般に高吸油性のシリカを得たい場合は、短時間で乾燥できる噴霧乾燥機またはスピンフラッシュ乾燥機が好ましい。噴霧乾燥機の場合、一般に2つの方法、つまり噴霧デイスク(アトマイザー)によって、スラリーを微粒子化する方法と、二流体ノズルを使用してするスラリーを微粒子化する方法があるが特に拘らない。また、噴霧乾燥機でスラリーを乾燥する場合、ほぼ球形の固体粒子を製造することができる。噴霧乾燥機の熱風温度は、80〜600℃、好ましくは100〜500℃、より好ましくは120〜450℃である。吸油量を向上するためには、熱風の温度は高い方が有利であるが、温度が600℃以上では耐熱性並びに特殊な設備設計のためにコストが膨大になる。一方、温度が100℃以下では製造効率が不十分である。実際には、噴霧乾燥機の性能と噴霧速度の関係で最適化すればよいが、通常上記温度範囲が有利である。さらに、必要に応じて乾燥前のスラリーにアルキルジメチルベンジル−アンモニウムクロリド等のカチオン性界面活性剤を添加することにより、水相中で粒子の表面から水分を排除しやすくし、乾燥工程での非晶質シリカ粒子の収縮を効果的に抑制することができ、吸油量を向上させることができる。
【0024】
上記製法により、吸油量340ml/100g以上の非晶質シリカ粒子を得ることができる。一般に吸油量と水分含量には相関関係が有り、同一の非晶質シリカでは水分含量が低い程吸油量も高い。しかし、水分を除去するだけでは、吸油量の増大は不十分である。鋭意検討の結果、このようにして得られた非晶質シリカ粒子を焼成処理することにより、吸油量が大きく増大し、吸油量が400ml/100gを超える非晶質シリカ粒子を製造することができることが判明した。焼成温度は、200〜990℃、好ましくは200〜950℃、より好ましくは200〜900℃、およびさらに好ましくは300〜900℃である。また、焼成時間は、焼成温度によっても異なるが、好ましくは、1分〜10時間、より好ましくは、10分〜5時間である。焼成処理によって、吸油量が大きく増大した理由は明らかでない。しかし焼成処理することによって、非晶質シリカ粒子の基本構造を維持したままで、細孔が凝集し、比較的大きな孔が増大したためと考えられる。焼成のための装置としては、焼成炉、ロータリーキルン等の通常の装置を使用することができる。
【0025】
本発明の第二の有利な実施態様では、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸水溶液とをpH5〜10で中和反応させて、シリカ濃度2〜10質量%のシリカスラリーを製造する方法により本発明の非晶質シリカ粒子を製造する。この場合、ケイ酸アルカリおよび鉱酸の種類や濃度ならびに中和の方法は前記の方法と同様である。中和温度は、特に限定はないが、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは70℃以上である。30℃未満の温度では、反応が遅く効率的ではない。また、必要に応じて、先に挙げた湿式粉砕機等を使用して剪断力をかけながら、中和を実施してもよい。その後、生成したシリカスラリーをその物性に応じて、熟成すればよい。本発明の方法による中和率、中和温度およびケイ酸ナトリウム水溶液濃度の条件と熟成条件とは、複雑に相関しており、条件の決定は一概に容易ではない。
【0026】
一般的な熟成の条件として、pHは6〜12、温度は50〜130℃および反応時間は3〜180分間である。好ましくはpHは7〜11.5、温度は60〜110℃および反応時間は3〜165分間である。より好ましくはpHは8〜11、温度は65〜100℃および反応時間は5〜150分間である。特に好ましくはpHは8〜11、温度は70〜100℃および反応時間は5〜140分間である。また、必要に応じて、先に挙げた湿式粉砕機等で剪断力をかけながら熟成させてもよい。
【0027】
さらに、第二段階の反応として、第一段階の反応で製造されたスラリーにケイ酸ナトリウム水溶液溶液を加えながら鉱酸を同時に添加してもよい。この場合、第二段階の反応のために添加する鉱酸の濃度は第一段階の反応の前期記載の濃度範囲と同様であるが、ケイ酸ナトリウム水溶液の濃度は、第一段階の反応の濃度と同じかそれよりも低濃度のものが好ましい。更に、第二段階の反応時のpHは一般にpH4〜10で一定している方が好ましく、好ましくはpH6〜10、より好ましくはpH7〜9.5である。
【0028】
その後、得られたシリカスラリーのpHを4以下、好ましくは3以下にして第二段階の反応をとめる。必要に応じ、スラリーを水で希釈し、場合によりロータリーポンプ、および、ハイドロサイクロンで粗粒子を分離した後、該スラリーをろ過および洗浄する。ろ過および洗浄は、フィルタープレスやロータリーフィルター等の公知の機器を用いて実施できる。
【0029】
こうして得られたフィルターケーキを適当な大きさに粉砕し、通気乾燥するか、または水を添加しながら撹拌して、再度スラリー化する。その後、そのスラリー溶液を噴霧乾燥機またはノズル乾燥機によって、乾燥してもよい。乾燥機を使用することによって、特定の粒度分布を調整することができる。この分布は乾燥機の種類および適用する噴霧圧力の選択により調整することができる。特に高吸油量のシリカを得るには、噴霧乾燥機で乾燥をおこなうことが好ましい。噴霧乾燥機を使用する場合、前記と同様の条件で乾燥すればよい。
【0030】
上記製法により、吸油量340ml/100g以上の非晶質シリカ粒子を得ることができる。得られた非晶質シリカ粒子を焼成処理することにより、吸油量が400ml/100gを超える非晶質シリカ粒子を製造することができる。焼成温度は200〜990℃、有利には200〜950℃、さらに有利には200〜900℃、およびより一層有利には300〜900℃、とりわけ有利には400〜900℃である。さらに焼成時間は有利には1分〜10時間、およびさらに有利には10分〜5時間であるが、これは焼成温度により変化する。
【0031】
また、得られるシリカのpHに関しては、用途に応じ適正pHが異なる。より具体的には医薬品または農薬の吸着剤として使用する際には、pHはビタミンEなどの医薬有効成分または有機リン剤などの農薬有効成分の安定性にも影響し、きわめて重要である。医薬品または農薬の吸着剤として使用する場合の非晶質シリカ粒子のpHは、一般にpH3〜10、好ましくは4〜9、より好ましくは5〜8である。しかし場合に応じて、酸性で安定な化合物では酸性に、アルカリ性で安定な化合物ではアルカリ性に調節したシリカを適用すれば、シリカに吸着される医薬品または農薬を安定化することができる。pHを調節する方法としては、2つの方法、つまり乾燥前のシリカスラリーのpHを調節する方法と、乾燥後にアンモニアガス等の添加により調節する方法とがある。
【0032】
本発明の非晶質シリカ粒子は上記の方法により得られ、かつJIS K 6217−4法(ゴム用カーボンブラック−基本特性)によって測定されるその吸油量が400ml/100gをこえ、窒素吸着等温線法により得られた細孔分布曲線において、ΔVp/ΔlogRp値(但し、Vpは細孔容積[mm/g]、Rpは細孔半径[nm])の最大値が250mm/nm・g以上であり、かつΔVp/ΔlogRp値が最大であるときの細孔ピーク半径が3nm以上であることにより特徴付けられる。
【0033】
窒素吸着等温線法より得られた細孔分布曲線において、ΔVp/ΔlogRp値(但し、Vpは細孔容積[mm/g]、Rpは細孔半径[nm])の最大値が250mm/nm・g以上、好ましくは、500mm/nm・g以上、より好ましくは1000mm/nm・g以上、さらに好ましくは1500mm/nm・g以上、もっとも好ましくは2000mm/nm・g以上、とりわけ有利には2500mm/nm・g以上である。ΔVp/ΔlogRp値(但し、Vpは細孔容積[mm/g]、Rpは細孔半径[nm])の最大値が250mm/nm・g未満であると、非常に高いオープン構造が存在するので、焼成による吸油量向上の効果は低い。
【0034】
また、細孔ピーク半径は3nm以上、好ましくは、10nm以上、より好ましくは、15nm以上、さらに好ましくは20nm以上、もっとも有利には25nm以上、とりわけ有利には30nm以上である。細孔ピーク半径が3nm未満である場合は、粒子径が小さく、焼成中に細孔が消失する恐れがある。また、測定上細孔ピーク半径の最大値は100nmである。
【0035】
本発明の非晶質シリカ粒子の吸油量は、例えばDBP(ジブチルフタレート)の吸油量を測定するJIS K 6217−4(ブラベンダー法)法によって測定される吸油量を示す。本発明の非晶質シリカの吸油量(滴下速度4ml/分)は非晶質シリカ粒子100gあたり400ml(400ml/100g)以上、好ましくは405ml(405ml/100g)以上、より好ましくは410ml(410ml/100g)以上である。
【0036】
BET比表面積は、非晶質シリカの基本物性の一つであり、吸油量、粒子の透明性および非晶質シリカ粒子のハンドリングに影響する。本発明の非晶質シリカは、50〜800m/g、好ましくは100〜700m/g、より好ましくは140〜650m/g、さらに好ましくは、150〜600m/gの範囲のBET比表面積を示す。BET比表面積が50m/g未満であれば、大きい細孔が少量存在し、非晶質シリカ粒子の透明性が低下するので、艶消し効果が低減する恐れがある。一方、BET比表面積が800m/gよりも大きければ、細孔径が非常に小さくなり、透明性は向上するが吸油能が低下する。
【0037】
上記の方法により得られた非晶質シリカをそのまま商品化してもよいし、用途に合わせてシリカの粒度調節することもできる。通常、粒度調節は、粉砕後、乾式分級して実施できる。粉砕機は特に限定されず、ジェット−O−マイザー等の気流衝撃式粉砕機、アトマイザー等のハンマーミル、遠心粉砕機のようなピンミル等の公知の全ての粉砕機が使用できる。分級機も得に限定されないが、精密な分級を要する場合には、ミクロプレックスやターボクラシファイア等の乾式分級機が好適である。一方、洗浄後のシリカスラリーを沈降分級機、水力分級機、機械分級機、遠心分級機等の湿式分級機で分級後、乾燥してもよい。本発明においては、噴霧乾燥法が効果的である。
【0038】
特に、インクジェット記録用紙用填剤、艶消し剤、アンチブロッキング剤等としてシリカを使用する場合、多くの特許公報、文献でも述べられているとおり、粒度調節が重要である。
【0039】
従って本発明の非晶質シリカ粒子は、体積基準のメジアン径を示し、平均粒径は0.5〜40μm、好ましくは0.75〜30μm、より好ましくは1〜25μm、さらに好ましくは1〜20μm、もっとも有利には1〜15μm、とりわけ有利には1〜9μmの範囲にある。
【0040】
かさ密度は、非晶質シリカ粒子のハンドリングにおいて非常に重要な物性である。従って本発明のシリカは、20〜200g/l、好ましくは30〜150g/l、より好ましくは40〜125g/l、さらに好ましくは50〜120g/lの範囲のかさ密度により特徴付けられる。かさ密度が20g/l未満であれば、非常にかさ高くなるためにハンドリングが困難であり、またかさ密度が200g/lよりも大きければ、吸油量が低下する恐れがある。
【0041】
本発明の非晶質シリカの前記の物理的および化学的特性は独立して組み合わせてもよい。特に有利な組み合わせを以下の段落に記載する。
【0042】
本発明の非晶質シリカ粒子の物性は以下のとおりである。つまりJIS K 6217−4法(ゴム用カーボンブラック−基本特性)により限定される吸油量は400ml/100gを超え、窒素吸着等温線法により得られた細孔分布曲線において、ΔVp/ΔlogRp値(但し、Vpは細孔容積[mm/g]、Rpは細孔半径[nm])の最大値が250mm/nm・g以上で、細孔ピーク半径が3nm以上である。より好ましくは、吸油量が405ml/100g以上で、ΔVp/ΔlogRp値の最大値が500mm/nm・g以上であり、細孔ピーク半径が10nm以上である。さらに好ましくは、吸油量が410ml/100g以上で、ΔVp/ΔlogRp値の最大値が1000mm/nm・g以上であり、細孔ピーク半径が15nm以上である。
【0043】
本発明の非晶質シリカ粒子の物性はより詳しくは次のとおりである。つまり、JIS K 6217−4法(ゴム用カーボンブラック−基本特性)による吸油量が400ml/100gをこえ、ΔVp/ΔlogRp値(但し、Vpは細孔容積[mm/g]、Rpは細孔半径[nm])の最大値が250mm/nm・g以上で、細孔ピーク半径が3nm以上であり、BET比表面積が50〜800m/g、平均粒子径が0.5〜40μm、かさ密度が20〜200g/lである。好ましくは、吸油量が405ml/100g以上で、ΔVp/ΔlogRp値の最大値が500mm/nm・g以上であり、細孔ピーク半径が10nm以上で、BET比表面積が100〜700m/g、平均粒子径が0.75〜30μm、かさ密度が30〜150g/lである。より好ましくは、吸油量が410ml/100g以上で、ΔVp/ΔlogRp値の最大値が1000mm/nm・g以上であり、細孔ピーク半径が15nm以上で、BET比表面積が140〜650m/g、平均粒子径が1〜25μm、かさ密度が40〜125g/lである。さらに好ましくは、吸油量が410ml/100g以上で、ΔVp/ΔlogRp値の最大値が1500mm/nm・g以上であり、細孔ピーク半径が20nm以上で、BET比表面積が150〜600m/g、平均粒子径が1〜20μm、かさ密度が50〜100g/lである。
【0044】
本発明のシリカは特に医薬、農薬および浴用剤分野において、ビタミンAやビタミンE、ピレスロイドや有機リン剤、生薬抽出成分等の液状成分の粉末化、増量剤、固結防止剤、流動性改善剤、粉砕助剤として使用することができる。例えば、ビタミンEを粉末化する場合、100gの本非晶質シリカ粒子に対し、重量比で好ましくは2.4倍以上、より好ましくは2.6倍以上、さらに好ましくは2.8倍以上のビタミンEが吸着できる。また、有効成分の安定性に応じてシリカのpHを調節することで、シリカ粒子は安定化剤としても使用される。シリカ粒子は農薬分野においては、上記の医薬および浴用剤での使用に加え、各種浮選剤での沈降防止剤および場合によっては効力増強剤としても使用される。
【0045】
また、界面活性剤の粉末化、流動性改善剤、固結防止剤として、バッテリーセパレーターの内填剤、接着剤の助剤、歯磨き粉中の増粘剤および助剤、ケイ酸ナトリウムのモル比調整用基材、ゴム薬品の粉末化、耐火物の粉流性改善剤、固結防止剤または断熱材、そのままで、或いは壁中への被覆剤としての湿度調節剤または食品中の噴流性改善剤、固結防止剤、触感改善剤等として該シリカ粒子を使用できる。
【0046】
さらに、本発明の非晶質シリカはまた、クロマトグラフ担体、化粧料基剤、電子部品用塗料、電子部品用吸湿剤およびその他の非晶質シリカ粒子の用途に用いることができる。
【0047】
本発明の非晶質シリカ粒子を農薬用担体として使用する場合、農薬原体と本シリカを混合し、公知の全ての剤形に適用でき、特に規定されない。かつ従来の沈降性シリカが使用される分野で非晶質シリカ粒子を問題無く使用可能である。例えば、粉末顆粒、湿潤可能な顆粒、粉剤、水和剤等の微粉状製剤、粒剤、粉粒剤、顆粒水和剤等の粒状製剤や錠剤等の固形製剤、或いは、液剤、油剤、乳剤、マイクロエマルジョン剤等の均一溶液状製剤、水中懸濁剤、油中懸濁剤、水中エマルジョン剤、油中エマルジョン剤、マイクロカプセル剤のような乳化もしくは懸濁状製剤等の液体製剤が挙げられる。各々の製剤は、公知の組成物および公知の製造法により製造できる。
【0048】
例えば固体製剤の場合、農薬原体が固体であり、かつ他の補助成分が固体であるときには、シリカ粒子を例えば粉砕助剤や流動性改善剤、粉塵爆発低減剤、固結防止剤等として使用することができる。農薬原体が液体や半固体のとき、もしくは製剤中に溶剤等を含有するときは、シリカ粒子は例えば、農薬原体や溶剤の吸着剤等として使用することができる。また例えば、液体製剤の場合には、シリカ粒子を例えば沈降防止用の粘度調節剤として、或いは液体中に混合される固形成分の流動性改善剤として使用することができる。さらに、固形成分を粉砕後混合する場合、シリカ粒子を例えば粉砕助剤や流動性改善剤、粉塵爆発低減剤等として使用することができる。
【0049】
本発明のもう1つの特に有利な使用は、艶消し剤としてである。非晶質シリカ粒子は、それ自体公知の塗料中に配合して、艶消し塗料組成物とすることができる。塗料としては公知の塗料であり、たとえば油性塗料、ニトロセルロース塗料、アルキッド樹脂塗料、アミノアルキッド塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、塩化ゴム系塗料等を使用することができる。さらにこれらの塗料の他に、ロジン、エステルガム、ペンタレジン、クマロン・インデンレジン、フェノール系レジン、変性フェノール系レジン、マレイン系レジン、アルキド系レジン、アミノ系レジン、ビニル系レジン、石油レジン、エポキシ系レジン、ポリエステル系レジン、スチレン系レジン、アルキル系レジン、シリコーン系レジン、ゴムベース系レジン、塩素化物系レジン、ウレタン系レジン、ポリアミド系レジン、ポリイミド系レジン、フッ素系レジン、天然あるいは合成のウルシ等の1種あるいは2種以上を使用することができる。
【0050】
また、用いる塗料に関しては、その用い方によって、溶液型塗料、水性塗料、紫外線硬化型塗料、粉体塗料等の任意のものであってよいが、本発明は溶液型塗料、水性塗料に特に適している。
【0051】
この溶液型塗料の有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ヘプタン、n−ヘキサン、アイソバー等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;エタノール、プロパノール、ブタノール、ダイアセトンアルコール等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等の1種または2種以上を用いることができる。原料溶液中の樹脂分濃度は、一般に5〜70重量%、特に10〜60重量%の範囲にあるのが適当である。
【0052】
また、水性塗料としては、水溶液型の塗料の他、自己乳化型或いは界面活性剤乳化型の塗料が使用される。水性塗料の樹脂としては、水性溶媒に水溶化された或いは自己乳化されたアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂或いはこれらの樹脂の2種以上の組み合わせを使用することができる。自己乳化型樹脂では、カルボキシル基をアンモニア或いはアミン類で中和することにより、或いは含有されるアミンを4級化することにより自己乳化性が付与される。また、種々のラテックス樹脂も使用される。樹脂分濃度は一般に10〜70重量%、特に20〜60重量%の範囲にあるのが適当である。
【0053】
紫外線(UV)硬化型塗料としては、ハイソリッドレジン、例えばUV硬化型のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等を使用することができる。これらの樹脂は単独或いは2種以上の組み合わせで使用される。
【0054】
粉体塗料としてはポリアミド、ポリエステル、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、セルロース誘導体、ポリエーテル、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂の他、エポキシ樹脂、エポキシ/ノボラック樹脂、イソシアネート或いはエポキシ硬化型ポリエステル樹脂等を使用することができる。
【0055】
本発明に用いる非晶質シリカ粒子は、シリカ粒子の表面を無機酸化物、例えば酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、;シラン系、チタニウム系或いはジルコニウム系のカップリング剤で被覆し或いは表面処理しておくことができる。
【0056】
また、本発明の非晶質シリカは、金属石鹸、樹脂酸石鹸または各種樹脂を使用してワックス類のコーティングを所望により施すことができる。特に、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸変性ポリエチレンワックス等オレフィン系樹脂ワックスや、動植物系ワックス、鉱物系ワックス等によるワックス処理が、艶消し効果増大や耐擦傷性向上に有効である。このコーティング処理は、洗浄した非晶質シリカのケーキにワックスの水性エマルジョンを添加し混合することにより容易に行うことができる。非晶質シリカ粒子100重量%あたり1〜20重量%、好ましくは、3〜15重量%のワックスで表面処理されていることが好ましい。
【0057】
本発明においては、前述した非晶質シリカ粒子を単独で艶消し剤として使用するほか、他の充填剤や顔料と組合せて塗料の配合に使用しうる。塗料に配合される無機成分としては、アルミナ、アタパルガイト、カオリン、カーボンブラック、グラファイト、微粉ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイソウ土、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、スレート粉、セリサイト、フリント、炭酸カルシウム、タルク、長石粉、二硫化モリブデン、バライト、ひる石、ホワイティング、マイカ、葉ろう石クレイ、石こう、炭化ケイ素、ジルコン、ガラスビーズ、シラスバルーン、アスベスト、ガラス繊維、カーボン繊維、ロックウール、スラグウール、ボロンウスイカ、ステンレススチール繊維、チタン白、亜鉛華、ベンガラ、鉄黒、黄色酸化鉄、ゼオライト、ハイドロタルサイト、リチウム、アルミニウム、カーボネート、チタンエロー、酸化クロムグリーン、群青、紺青等を使用することができる。
【0058】
また、本発明の非晶質シリカ粒子は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂或いは各種ゴム配合用の充填剤、特にアンチブロッキング剤としても有用である。非晶質シリカがアンチブロッキング剤として配合される熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂が好適であり、特に低、中あるいは高密度のポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、これらのエチレンとα−オレフィンとの共重合体であるポリプロピレン系重合体、線状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は単独でも或いは2種以上を混合することによってブレンド物の形でも使用できる。本発明の非晶質シリカ粒子は、メタロセン触媒を用いて製造したオレフィン系樹脂フィルムのアンチブロッキング剤として有用であり、従来のアンチブロッキング剤に見られた着色傾向を解消することができる。
【0059】
勿論、本発明のアンチブロッキング剤は、その他の公知の他の樹脂フィルムにも配合することができる。例えば該アンチブロッキング剤は、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、塩化ビニール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂等に配合することもできる。
【0060】
アンチブロッキング剤としての用途の場合、シリカ粒子を、熱可塑性樹脂100重量%あたり、0.005〜10重量%、好ましくは0.05〜3.0重量%、より好ましくは0.1〜1.0重量%の割合で配合する。
【0061】
本発明の非晶質シリカ粒子は、充填剤として、上記熱可塑性樹脂や、各種ゴム、或いは熱硬化性樹脂に配合することができる。
【0062】
ゴム用のエラストマー重合体としては、例えばニトリル−ブタジエンゴム(NBR),スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IIB)、ブチルゴム、天然ゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリウレタン、シリコーンゴム、アクリルゴム等;さらに熱可塑性エラストマー、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等を使用することができる。
【0063】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、フラン−ホルムアルデヒド樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、或いはこれらの2種以上の組み合わせを使用することができる。
【0064】
非晶質シリカ粒子を強化剤として使用する場合、上記熱硬化性樹脂或いはエラストマー100重量%あたり、0.5〜20重量%、好ましくは2〜10重量%の範囲で熱硬化性樹脂あるいはエラストマーを配合することができる。
【0065】
上記の適用以外に本発明の非晶質シリカは、消泡材用の消泡効果向上剤、粉末消火剤の流動性改善剤または固結防止剤、各種粉体の流動性改善剤または固結防止等の貯蔵安定性改善剤、印刷インキのフィラー、新聞インキのにじみ防止、浄化吸着剤、ビール等の蛋白吸着用ろ過助剤、飼料中の液状成分の粉体化、ミルク増量剤、脂肪コンク、粉乳、飲料用尿素、天然混合物等の固結性物質の固結防止剤、魚用飼料の油分または脂肪分の吸着剤、焼結防止剤、プラスチック工業またはポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、HTVシリコーンゴム、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フェノール−メラミン樹脂等のブローフィルムのブロッキング防止剤、プレートアウト防止剤、ポリクロロプレンゴム、熱可塑性ゴム、シリコーンゴムまたは上記樹脂用のフィラー、これらの床材の機械的特性の改善剤、これらの成形コンパウンドの計量特性の改善剤または固結防止剤、接着助剤、耐摩耗性の改善剤、TRクレープソールの耐熱性/寸法安定性の改善剤、発泡ポリスチレングラニュール予備成形材料の固結防止剤、および発泡スチロールの二次成形フィルムの模様構成の核形成剤として使用してもよい。また、ラッカー、ワニスペイントおよびこれらの混合物において、本発明の非晶質シリカ粒子は、エマルジョンペイントまたは装飾ペイント中の酸化チタンまたは白色顔料の一部代替品、塗料、インキ等の艶消し剤、沈降防止剤、粘度調節剤、固結防止剤としても使用される。
【0066】
また製紙工業では、非晶質シリカは二酸化チタンの一部代替品、ブループリンティングペーパーのコントラストの改善剤、紙用コート剤、および特にインクジェット記録紙用填剤および製紙用裏抜け防止剤として有用である。
【0067】
実施例
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
実施例1
剪断力をかけながら95℃で3.8%の珪酸ナトリウム溶液9000Lに20%の硫酸を21.5l/分の速度で30分間滴下した後90分間熟成させ、シリカスラリーが得られ、該スラリーに9.8%の珪酸ナトリウム溶液を38.3l/分、20%の硫酸を8.3l/分で75分間同時に添加し、30分間95℃で保ち、直ちにpH4に調整した。得られたシリカスラリーをろ過し、かつ洗浄して、10%程度のスラリーに調整し、大川原化工製のスプレードライヤー型の噴霧器で噴霧乾燥し、サイクロン回収粒子を得た。得られたサイクロン回収粒子を400℃で1時間焼成した。
【0069】
実施例2
実施例1の噴霧乾燥後、洗浄した集塵機から試料を採取し、採取したシリカ粒子を700℃で1時間焼成した。
【0070】
比較例1
実施例1において、焼成しなかったサイクロン回収粒子を用いた。
【0071】
比較例2
比較例1の非晶質シリカ粒子を115℃で終夜乾燥させて用いた。
【0072】
比較例3
実施例2において、焼成しなかった試料品を用いた。
【0073】
比較例4
比較例3の非晶質シリカ粒子を115℃で終夜乾燥させて用いた。
【0074】
比較例5
市販のサイシリア350(富士シリシア社製)を用いた。
【0075】
比較例6
市販のシペルナート50S(デグサ社製)を用いた。
次に、諸物性の測定方法を示す。
【0076】
試験例1
吸油量測定法
JIS K 6217−4法(ゴム用カーボンブラック−基本特性)に準拠して吸油量を測定した。JIS K 6217−4による吸油量は無水の乾燥したシリカに関する。しかし本発明では吸油量は市販品のサイクルのために乾燥処理を実施した後に得られる湿ったシリカ粒子(乾燥損失を含む)に関する。その意図は実使用時の特性を知るためである。
【0077】
(試験例2)
窒素吸着等温線測定法
窒素吸着等温線の測定に関しては、160℃で90分間真空脱気した試料を、日本ベル(株)製全自動比表面積/細孔分布測定装置BELSORP 28を用いて、窒素ガスの吸着等温線を測定した。
・測定温度:−196℃
・吸着平衡時間: 5分間
・細孔径解析範囲(ドリモア・ヒールの解析法):1.0〜100.0nm
・細孔分布曲線の解析
上記測定法により、窒素の吸着等温線を求め、吸着側データをJIS−K1150に準拠して ドリモア・ヒールの解析法[D.Dollimore,G.R.Heal,J.Appl.Chem.,14.109 (1964)]により細孔分布曲線が得られた。
・細孔ピ−クおよび細孔ピーク半径の測定:
細孔分布曲線において、ΔVp/ΔlogRpの最大値を示す部分を細孔ピークとし、その細孔ピークでの半径を細孔ピーク半径としてnm表示で表す。
【0078】
試験例3
比表面積測定法[窒素吸着法]
本発明の非晶質シリカ粒子の細孔構造を決定するために、窒素吸着等温法により細孔ピークを測定した。
【0079】
比表面積は以下に示した窒素吸着法により測定した。
【0080】
160℃で90分間真空脱気した試料を、日本ベル(株)製全自動比表面積/細孔分布測定装置BELSORP 28を用いて、窒素ガスの吸着等温線を測定し、BET法より比表面積を算出する。(参考文献:S.Brunauer,P.H.Emmett,E.Teller, J.Amer.Chem.Soc., 60,309 (1938))
【0081】
試験例4
平均粒径[体積平均径]測定法
コールター社のマルチサイザー−IIを用い、適当なアパーチャーチューブを選択して平均粒径を測定した。
【0082】
表1に実施例1、2および比較例1〜4の吸油量、細孔ピーク半径、比表面積、平均粒径の測定結果を示す。図1〜3には、実施例1、2および比較例1の非晶質シリカ粒子の吸着等温線を示す。
【0083】
【表1】

【0084】
上記試験の結果、比較例2で乾燥により比較例1を無水化することで吸油量は増大したが、実施例1で同一の試料を焼成することにより、更に吸油量が増大している。また、比較例4で乾燥により比較例3を無水化することで吸油量は増大したが、実施例2で同一の材料を焼成することにより、更に吸油量が増大している。その結果、実施例1、2の吸油量は400ml/100gを超えるものであった。
【0085】
試験例5
ビタミンE吸油量測定法
全容量2Lを有するBENCH KNEADER(入江商会製)に直径1mmの孔を開けたビタミンE滴下用のパイプを装着する。次に約1Lのシリカをニーダー内に充填し、約60℃に加温して粘度を低下させたビタミンEをシリカに滴下しながら撹拌して、吸油させる。吸油時に生じたダマの解砕のため、吸油後のシリカをジューサーミキサーで30〜60秒間撹拌する。
【0086】
評価方法:柴田科学社製の小型粉砕機(パーソナルミル、SCM−40A型)にビタミンEを吸収した粒子を2〜5g入れ、約30秒撹拌した。粒子の状態を観察し、粒子の外観が微粉末から微粒状、若しくは、白色から黄白色に変化する直前の吸油値を最大吸油量とした。
【0087】
次いでビタミンEの吸油量を次の式から計算した。
最大吸着油量=ビタミンE吸収量(g)/吸収前のシリカ重量(g)。
【0088】
試験例5の結果を第2表に記載する:
【0089】
【表2】

【0090】
ビタミンEの吸収量に関しても、比較例1、5、6の非晶質シリカ粒子に比べ、焼成した実施例2の非晶質シリカ粒子のビタミンE吸収量は、高かった。
【0091】
試験例6:
「かさ密度」の測定
機器
1.ステンレス鋼ふるい(JIS標準認証ふるい)メッシュ幅:850ミクロン、直径:200mm、
2.ふるいホルダー(ステンレスまたはプラスチック)側面:250mm、長さ:250mm、高さ:150mm、
3.受け器(プラスチック)側面:330mm、長さ:270mm、深さ:10mm、
4.測定カップ(透明、プラスチック)容量:100±1mL、口径:50.0±10.2mm、深さ:51.0±0.2mm、厚さ:5mm、
5.スパチュラ(プラスチック)側面:120cm、長さ:40mm、厚さ:5mm、
6.スパチュラ(ステンレス)長さ:230mm。
【0092】
受け器を設置する。ふるいホルダーを受け器の上部に設置する。ふるいをふるいホルダー上に設置する。既知の質量の測定カップを受け器の中央に設置する。試料をふるいに移す。試料をスパチュラ(ステンレス)で滴加する。(幅:60〜70mm、速度:毎秒2回)。試料は測定カップ中で円すい形に堆積する。試料の測定カップのレベルを天秤により秤量する。
かさ密度=S/100 S:試料の質量
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施例1の非晶質シリカ粒子の窒素吸着等温線を示す図
【図2】実施例2の非晶質シリカ粒子の窒素吸着等温線を示す図
【図3】比較例1の非晶質シリカ粒子の窒素吸着等温線を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質シリカにおいて、JIS K 6217−4法(ゴム用カーボンブラック−基本特性)によって測定した吸油量が400ml/100gをこえ、窒素吸着等温線法により得た細孔分布曲線において、ΔVp/ΔlogRp値(但し、Vpは細孔容積[mm/g]、Rpは細孔半径[nm])の最大値が250mm/nm・g以上であり、ΔVp/ΔlogRp値が最大であるときの細孔ピーク半径が3nm以上であることを特徴とする非晶質シリカ粒子。
【請求項2】
窒素吸着等温線法により得た細孔分布曲線において、ΔVp/ΔlogRp値(但し、Vpは細孔容積[mm/g]、Rpは細孔半径[nm])の最大値が500mm/nm・g以上であり、ΔVp/ΔlogRp値が最大であるときの細孔ピーク半径が10nm以上であることを特徴とする請求項1記載の非晶質シリカ粒子。
【請求項3】
窒素吸着等温線法により得た細孔分布曲線において、ΔVp/ΔlogRp値(但し、Vpは細孔容積[mm/g]、Rpは細孔半径[nm])の最大値が1000mm/nm・g以上であり、ΔVp/ΔlogRp値が最大であるときの細孔ピーク半径が15nm以上であることを特徴とする請求項2記載の非晶質シリカ粒子。
【請求項4】
平均粒径が0.5〜40μmであることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の非晶質シリカ粒子。
【請求項5】
かさ密度が20〜200g/lであることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の非晶質シリカ粒子。
【請求項6】
焼成処理することによって得られる請求項1から5までのいずれか1項に記載の非晶質シリカ粒子。
【請求項7】
シリカ粒子を200〜990℃で焼成することを特徴とする非晶質シリカの製造方法。
【請求項8】
少なくとも340ml/100gの吸油量を有する少なくとも1種の非晶質シリカを200〜990℃で焼成することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
焼成時間が10分〜5時間であることを特徴とする請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
得られる非晶質シリカが400ml/100gをこえる吸油量を有することを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種のアルカリ金属ケイ酸塩と、少なくとも1種の鉱酸とを反応させる工程を含む、請求項7から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
シリカスラリーの乾燥前または乾燥後に最終シリカのpH値を3〜10に調整する工程を含む、請求項7から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
艶消し剤として、または医薬もしくは農薬のための担体として、または種々のゴムのための強化剤としての請求項1から6までのいずれか1項記載のシリカの使用。
【請求項14】
請求項1から6までのいずれか1項記載の非晶質シリカ粒子を含有する医薬、農薬のための吸着剤。
【請求項15】
請求項1から6までのいずれか1項記載の非晶質シリカ粒子を含有する艶消し剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−501180(P2007−501180A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522434(P2006−522434)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002541
【国際公開番号】WO2005/012176
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(303061362)DSL.ジャパン株式会社 (2)
【Fターム(参考)】