高周波伝送線路およびそれを用いた電子部品または電子装置
【課題】 高速信号を伝送する伝送線路において、特性インピーダンスの変化の少ない、伝送特性の良い高周波伝送線路を提供する。
【解決手段】 スルーホール近傍の信号導体の幅や、グラウンド導体の幅を変化させることにより特性インピーダンスを略一定に保つ。
【解決手段】 スルーホール近傍の信号導体の幅や、グラウンド導体の幅を変化させることにより特性インピーダンスを略一定に保つ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高周波伝送線路及びそれを用いた電子部品または電子装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の高周波伝送線路を、図2〜図4を用いて説明する。図2は従来の高周波伝送線路の構成図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は側面図である。図2に示すように、回路基板や高周波の電気信号を伝送する伝送線路としては、誘電体203上に信号導体201を設け、その信号導体201の両側にグラウンド導体203a、203bを設けたものがある。この伝送線路は、図2(b)に示すように、信号導体201とグラウンド導体203a、203bの間に電磁界を閉じ込めて信号を伝搬するコプレーナ線路である。電気力線204は信号導体201とグランド導体302a、信号導体201と302bの間に発生する。
【0003】図3は従来の他の高周波伝送線路の構成図であり、図3(a)は斜視図、図3(b)は側面図である。図3に示すように、信号導体301に対して誘電体302を挟んで反対の面にグラウンド導体303を有し、その信号導体301とグラウンド導体303の間に電磁界を閉じ込めて信号を伝搬するマイクロストリップ線路が示されている。電気力線304は図3(b)に示すように、信号導体301とグランド導体303間に発生する。
【0004】図4は従来の更に他の高周波伝送線路の構成図であり、図4(a)は斜視図、図4(b)は側面図である。図4に示すように信号導体401に対して誘電体402を挟んで両側の面にグラウンド導体403a、403bを有し、その信号導体401とグラウンド導体403a、403bの間に電磁界を閉じ込めて信号を伝搬するストリップ線路示されている。電気力線404は図4(b)に示すように、信号導体401とグランド導体403a、信号導体401とグランド導体403bとの間に発生する。
【0005】図5は従来の更に他の高周波伝送線路の構成図であり、図5(a)は斜視図、図5(b)は側面図である。図5に示すように、信号導体501の両側に、グラウンド導体502a、502bを有し、さらに誘電体503を挟んだ反対側にもグラウンド導体504を有し、信号導体501と3つのグラウンド導体502a、502b及びグラウンド導体504との間に電磁界を閉じ込めて信号を伝搬するグラウンデッドコプレーナ線路が示されている。電気力線505は信号導体501とグランド導体502a、信号導体501とグランド導体502b、信号導体501とグランド導体504間に発生する。
【0006】図2〜図5に示されている高周波伝送線路ではそれぞれの構造によって決まる特性インピーダンスを一定に保って信号を伝搬することが重要である。特性インピーダンスが異なる伝送線路を接続すると、その接続部分で信号の反射が起こる。
【0007】図6は特性インピーダンスの異なる伝送線路を接続した場合の模式図であり、例えば、特性インピーダンスがZ1の伝送線路1と特性インピーダンスがZ2の伝送線路2を接続して、伝送線路1から伝送線路2に信号を伝搬したとき、その反射係数は(数1)で表される。
【0008】
【数1】
したがって、特性インピーダンスを伝送線路のすべての位置で一定にすることが重要である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】実際の基板は複数の層からなり、各層間の電気的導通をとるためのスルーホールが多数存在する。伝送線路の近傍にスルーホールがあると、その影響により、インピーダンスが変化する。このインピーダンスの変化により信号の反射が起こり、伝送特性が悪化する。
【0010】本発明の目的は上記従来技術の問題点を解決し、特性インピーダンスの変化の少ないまた、伝送特性の良い高周波伝送線路を提供することにある。本発明の他の目的は、本発明による高周波伝送線路を用いた、高周波特性の良い、電子部品または電子装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的はスルーホール近傍の信号線あるいはグラウンド導体の幅を変化させることにより実現されるもので、以下詳細に説明する。
【0012】第1の発明では、高周波伝送線路は、誘電体と、該誘電体を挟んで両側に配置された複数のグランド導体と、該両側に配置されたグランド導体間を電気的に接続するスルーホールと、該スルーホールの近傍に配置された信号導体とを備え、該スルーホールによる信号導体の特性インピーダンスが変化することを抑圧するために、該スルーホール近傍において、該グランド導体及び信号導体のいずれか一方又は両方の形状を変化させる。
【0013】第1の発明において、該複数のグランド導体は、該誘電体の一面に配置された第1のグランド導体及び第2のグランド導体と、該誘電体の他面に配置された第3のグランド導体とから構成され、該信号導体は該第1及び該第2のグランド導体の間に配置される。また、該グランド導体は該誘電体の一面に配置された第1のグランド導体と該誘電体の他の面に配置された第2のグランド導体とから構成され、該信号導体は該誘電体を構成する第1の層と第2の層の間に配置される。また、該グランド導体は該誘電体の一面に配置された第1のグランド導体と該誘電体の他の面に配置された第2のグランド導体とから構成され、該信号導体は該第1のグランド電極上に設けられた他の誘電体を介して該スルーホールの近傍に配置される。また、該信号導体は該スルーホールの近傍において、該信号導体の幅が狭くなるように凹みが形成される。また、この発明で、該信号導体は該凹み部分を除いて略同じ幅を有する。また、この発明で、該信号導体は該凹み部分を除いて徐々に変化する幅を有する。
【0014】第1の発明において、該グランド導体は該スルーホールの近傍において、該グランド導体の幅が狭くなるように凹みが形成される。また、この発明で、該複数のグランド導体は該凹み部分を除いて略同じ幅を有する。
【0015】第1の発明において、該信号導体は該スルーホールの近傍で、該信号導体の幅が狭くなるように凹みが形成され、該グランド導体は該スルーホールの近傍において、該グランド導体の幅が狭くなるように凹みが形成される。
【0016】第2の発明では、誘電体と、該誘電体の一面に配置された第1のグランド導体と、該誘電体の他の面に配置された第2の誘電体と、該第1のグランド導体と該第2のグランド導体との間を接続するスルーホールと、該第1のグランド導体及び該スルーホールに隣接して配置された信号導体とを備え、該スルーホールの近傍において、該信号導体の幅又は該グランド導体の幅のいずれか一方が狭くなるように構成する。
【0017】第2の発明において、高周波伝送線路は、該誘電体の一面に第3のグランド導体を設け、該第1のグランド導体との間で該信号導体を挟み込むように該第3のグランド導体を配置する。
【0018】第3の発明では、高周波伝送線路は、信号導体と、複数のグラウンド導体と、複数のグラウンド導体間を電気的に接続するスルーホールとを備え、複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍の信号導体幅を細くする。
【0019】第4の発明では、1本の信号導体と、複数のグラウンド導体と、複数のグラウンド導体間を電気的に接続するスルーホールとを備え、複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍のグラウンド導体幅を細くする。
【0020】第5の発明では、高周波伝送線路は、1本の信号導体と、複数のグラウンド導体と、複数のグラウンド導体間を電気的に接続するスルーホールとを備え、複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍の信号導体幅とグラウンド導体幅を細くする。
【0021】第6の発明では、高周波伝送線路は、1本の信号導体と、複数のグラウンド導体と、複数のグラウンド導体間を電気的に接続するスルーホールとを備え、複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍の信号導体幅を細くし、グラウンド導体幅を太くする。
【0022】第7の発明では、電子部品は、上記の高周波伝送線路の構造を有する。
【0023】第8の発明では、電子装置は、上記の高周波伝送線路の構造を有する。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を幾つかの実施例を用い、図を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明による高周波伝送線路の第1の実施例を示す構成図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図、図1(c)は図1(a)のB−B断面図である。本実施例の伝送線路は、図1に示すように、信号導体101と、その両側に配置されたグラウンド導体102a、102bと、誘電体基板103と、誘電体基板103を挟んで信号導体101の反対側の面にあるグラウンド導体104と、信号導体101の両側に配置されたグラウンド導体102a、102bと信号導体101の反対側の面にあるグラウンド導体104の間の電気的導通を取るためのスルーホール105a、105b、105c、105dからなる。本実施例ではスルーホール105a、105b、105c、105dの影響でこの近傍の特性インピーダンスが変化する。
【0025】以下、スルーホールにより特性インピーダンスが変化する理由について説明する。伝送線路の信号導体101及びグラウンド導体102a、102b、104はその幅や厚さ等によって決まるインダクタンス成分Lを持つ。また信号導体101とグラウンド導体グラウンド導体102a、102bの距離や誘電体材料等によって決まる容量成分Cを持つ。伝送線路の特性インピーダンスZは、伝送線路のロスが無いとすると、インダクタンスLと容量を用いて、(数2)のように表すことができる。
【0026】
【数2】
スルーホール105a、105b、105c、105dがない部分に比べ、スルーホール105a、105b、105c、105dがある部分では、信号導体の近傍のグラウンド導体が増えるため、容量Cが増大する。したがって、(数2)から明らかなようにインピーダンスが下がる。従って、スルーホール近傍のインダクタンスを増加あるいは、スルーホール近傍の容量を低減することで、特性インピーダンスを一定に保ち、伝送特性を向上させることができる。スルーホール近傍のインダクタンスを増加させるためには、信号線の線幅を狭くすればよく、また、容量の低減は信号線とグラウンド導体の距離を広くすることで実現できる。本実施例では、伝送線路における信号導体101の幅はスルーホールの近傍において細くなっている。又は、表現を変えると、信号導体101はスルーホールの近傍において凹んでへこんでいる。また、スルーホール105a、105b、又はスルーホール105c、105dの外側の両端を結んだ線の中に信号導体101の幅が狭くなっている部分が存在するといえる。また、スルーホール105a、105bとスルーホール105c、105dの間で信号導体101は狭い幅と広い幅とを持っている。
【0027】本実施例では、スルーホール105a、105b、105c、105dによって容量が増え、特性インピーダンスが低下することをキャンセルするために、信号導体101の幅を細くして凹みを持たせている。これによって、インダクタンス成分を上げ、特性インピーダンスを一定に保つことができる。また、本実施例では、信号導体101と、その両側に配置されたグラウンド導体102の間の間隔が広くなるため、この間の容量成分を低減する効果もある。
【0028】図7は信号導体の幅と特性インピーダンスの関係を電磁界解析により求めた結果を示す特性図であり、横軸に伝送線路における信号線幅(μm)を示し、縦軸に特性インピーダンス(Ω)を示す。また、図8は電磁界解析を行うためのスルーホールを用いた伝送線路の断面図であり、図9は電磁界解析を行うためのスルーホールなしの伝送線路の断面図である。図8において、801は信号導体、802a、802b、804はグランド導体、803は誘電体、805a、805bはスルーホールである。グランド導体802a、802bの幅は675μm、厚さは2.2μm、グランド導体804の幅は1500μm、厚さは2.2μm、誘電体803の厚さは245μmであり、信号導体801の厚さは2.2μmであり、スルーホール805a、805b近傍の信号導体801の幅d1を変えた場合の特性インピーダンス(Ω)を図7の特性線701で示す。図9において、グランド導体902a、902bの幅は675μm、厚さは2.2μmである。誘電体903の厚さは254μm、グランド導体904の幅は1500μm、厚さは2.2である。また、信号導体901の幅はd2、厚さは2.2μmであり、d2を変えた場合の特性インピーダンス(Ω)を図7の特性線702で示す。本解析は図8および、図9に示す構造で解析を行った。本解析構造は光モジュールの内部で高周波信号を伝送するために使用されることを想定した場合に実現性の高いサイズである。伝送線路の特性インピーダンスを50Ωで設計した場合、スルーホールの無い部分では図7の特性線702から分かるように信号導体の幅を97μmとする必要があるが、その幅で近傍にスルーホール805a、805bが存在した場合、特性インピーダンスは41Ωと約20%も低くなってしまう。スルーホール805a、805bが存在する場合、特性インピーダンスを50Ωにするためには図7の特性線701から分かるように、信号導体の幅を72μmにすれば良い。したがって、本実施例の構造の伝送線路では、信号導体の幅は、スルーホール805a、805bがないところでは97μmと広くし、スルーホール805a、805bのあるところでは72μmと狭くすることによって、特性インピーダンスを50Ωと一定の値とすることができる。
【0029】以下、本発明の第2の実施例について、図10を用いて説明する。図10は本発明による高周波伝送線路の第2の実施例を示す平面図である。図において、図1の同じ構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。本実施例においては、信号導体111の幅を一定とし、グラウンド導体112a、112bの幅を変化させている。スルーホール105a、105b、105c、105d近傍で、グラウンド導体112a、112bの幅を狭くし、信号導体111とグラウンド導体112a、112bの間の距離を遠くすることで信号導体111とグラウンド導体112a、112b間の容量成分を低減できる。これにより、スルーホール付加による容量成分の増加を打ち消し、特性インピーダンスを一定に保つことができる。
【0030】以下、本発明の第3の実施例について、図11を用いて説明する。図11は本発明による高周波伝送線路の第3の実施例を示す平面図である。本実施では信号導体101の幅と、グラウンド導体122a、122bの幅の両方を細くしている。即ちスルーホール105a、105b、105c、105d近傍で、信号導体101に凹みを設けてその幅を狭くして、インダクタンス成分を増やし、さらに、グラウンド導体122a、122bに凹みを設けてその幅を狭くして信号導体101からグラウンド導体122a又はグランド導体122bの距離を遠くすることで、容量成分を低減できる。この2つの効果により、特性インピーダンスを一定に保つことができる。
【0031】以下、本発明の第4の実施例について、図12を用いて説明する。図12は本発明による高周波伝送線路の第4の実施例を示す平面図である。本実施では信号導体101は図11の場合と同様にその幅を狭く(又は細く)し、グラウンド導体132a、132bの幅を広くしている。スルーホール近傍で、信号導体101の幅を狭くし、インダクタンス成分を増やす。グラウンド導体132a、132bの幅を広くすることで信号導体からグラウンド導体132a、132bの距離が近くなり、容量成分が更に増加してしまうが、グラウンド導体132a、132bの幅を狭くすることでそれを打ち消す。本構造では、信号導体101とグラウンド導体132a、132bの間のギャップを一定に保つことも可能であり、ギャップが変化することによる電磁界のモード変化を最小限に抑えることができるという利点がある。
【0032】以上、2層構造のグラウンデットコプレーナ線路について複数の実施例を挙げて述べたが、本発明は2層構造のものに限られるものでは無い。より多層の基板においても、基板の一部にでもグラウンデットコプレーナ構造の伝送線路があれば、本実施例の効果は得られる。また、本発明はグラウンデットコプレーナ線路に限られる発明ではない。
【0033】以下、各種伝送線路における実施例について説明する。図13は本発明による高周波伝送線路の第4の実施例を示す構成図であり、図13(a)は斜視図、図13(b)は平面図、図13(c)は図13(b)のA−A断面図、図13(d)は図13(b)のB−B断面図である。本実施例の伝送線路は信号導体1301と、誘電体1302と、その誘電体1302を挟んで両側に配置されたグラウンド導体1303a、1303bと、そのグラウンド導体1303a、1303bの間の電気的導通を取るためのスルーホール1304a〜1304dからなる。
【0034】本実施例の伝送線路における信号導体1301の幅はスルーホール1304a〜1304dの近傍において細くなっている。スルーホールによって容量成分が増え、特性インピーダンスが低下することをキャンセルするために信号導体1301の幅を細くすることでインダクタンス成分を上げ、特性インピーダンスを一定に保つことができる。また、本実施例では、信号導体1301と、スルーホール1304a〜1304dの間隔が広くなるため、容量成分を低減する効果もある。
【0035】マイクロストリップ線路に関する実施例を、図14を用いて説明する。図14は本発明による高周波伝送線路の第5の実施例を示す構成図であり、図14(a)は斜視図、図14(b)は平面図、図14(c)は図14(b)のA−A断面図、図14(d)は図14(b)のB−B断面図である。本実施例の伝送線路は信号導体1401と、誘電体1402と、その誘電体1402を挟んで信号導体1401両側に配置されたグラウンド導体1403と、それとは別のグラウンド導体1404と、それら複数のグラウンド層の間を電気的に接続するための貫通型のスルーホール1405a〜1405dからなる。
【0036】本実施例の伝送線路における信号導体1401の幅はスルーホール1405a〜1405dの近傍において細くなっている。スルーホール1405a〜1405dによって容量成分が増え、特性インピーダンスが低下することをキャンセルするために信号導体1401の幅を細くすることでインダクタンス成分を上げ、特性インピーダンスを一定に保つことができる。また、本実施例では、信号導体1401と、スルーホール1405a〜1405dの間隔が広くなるため、容量成分を低減する効果もある。以上、スルーホールが信号導体から等距離の位置に左右対称に、周期的にある場合の実施例について述べてきたが、本発明はこれに限るものではない。
【0037】以下、図15を用いて、信号導体からスルーホールまでの距離が一定でない場合の実施例について説明する。図15は本発明による高周波伝送線路の第6の実施例を示す平面図である。本実施例では、スルーホール1503aとスルーホール1503b間の距離はスルーホール1504aとスルーホール1504b間の距離より長い。信号導体501からスルーホール1503a、1503bまでの距離が遠い場合、スルーホール1503a、1503bのよる容量値の増加はスルーホール1504aとスルーホール1504bによる容量の増加より少ないため、スルーホール1503a、1503b近傍の信号導体1501の幅はスルーホール1504aとスルーホール1504b近傍の信号導体1501の幅より広くする。
【0038】信号導体からスルーホールまでの距離が一定でない場合の実施例としてグラウンデットコプレーナ線路について信号導体を細くした場合の実施例を示したが、マイクロストリップ線路、ストリップ線路等でも同様の議論ができることは言うまでもない。
【0039】次に、信号導体の幅を徐々に狭くしていった場合に特性インピーダンスが一定になる場合、例えば、誘電体の厚さが徐々に異ならしめた場合や電界の方向を90度変更するために、徐々に信号導体とグランド導体の距離を離す場合の実施例である。図16は本発明による高周波伝送線路の第7の実施例を示す平面図である。本実施例において、信号導体1601の幅は図の下方に行くに従って狭くなっているが、この場合でも、スルーホール1602a、1602bが設けられている近傍の信号導体1601の幅は狭く、又は細くなるように凹みが設けられ、上述した効果を得ている。
【0040】以下、スルーホールが対になって構成されていない場合の例について図17を用いて説明する。図17は本発明による高周波伝送線路の第8の実施例を示す平面図である。図において、グランド導体1702aに設けられたスルーホール1703とグランド導体1702bに設けられたスルーホール1704とが対になっていいない場合でも、スルーホール1703、1704近傍の信号導体1701の幅は狭く、又は細くなるように凹みが設けられている。
【0041】本発明は高周波信号を伝搬する装置として、光モジュールの高速信号伝送基板や、パーソナルコンピュータ、携帯端末、通信機器などに適用できる。また、本実施例では、基板上の伝送線路の例を示したが、本発明はこれに限られるものではない。LSIチップ内の伝送線路において本発明を利用することで、より高周波特性の良いLSIを作製可能となる。その他、基板間を接続するフレキシブルケーブル当にも適用可能である。
【0042】以上述べたように、本発明によれば、少なくとも1本の信号導体と、複数のグラウンド導体と、複数のグラウンド導体間を電気的に接続するスルーホールを有する伝送線路に関し、信号導体とスルーホールの間の容量が増えることにより伝送線路の特性インピーダンスが下がり、信号の反射が生じて伝送特性が悪くなるという問題点を克服するために、信号導体、グラウンド導体の幅を広げたり狭めたりすることでインダクタンスを増加させ、あるいは容量を低減してインピーダンスを一定に保っている。また、本発明を適用することにより、より伝送特性のよい伝送線路を提供できる。
【0043】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、信号導体と、複数のグラウンド導体とを有する伝送線路にスルーホールを設けても、インダクタンスを増加させ、あるいは容量を低減してインピーダンスを一定に保つことができる。また、本発明を適用することにより、より伝送特性のよい伝送線路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による高周波伝送線路の第1の実施例を示す構成図である。
【図2】従来の高周波伝送線路の構成図である。
【図3】従来の他の高周波伝送線路の構成図である。
【図4】従来の更に他の高周波伝送線路の構成図である。
【図5】従来の更に他の高周波伝送線路の構成図である。
【図6】特性インピーダンスの異なる伝送線路を接続した場合の模式図である。
【図7】信号導体の幅と特性インピーダンスの関係を電磁界解析により求めた結果を示す特性図である。
【図8】電磁界解析を行うためのスルーホールを用いた伝送線路の断面図である。
【図9】電磁界解析を行うためのスルーホールなしの伝送線路の断面図である。
【図10】本発明による高周波伝送線路の第2の実施例を示す平面図である。
【図11】本発明による高周波伝送線路の第3の実施例を示す平面図である。
【図12】本発明による高周波伝送線路の第4の実施例を示す平面図である。
【図13】本発明による高周波伝送線路の第4の実施例を示す構成図である。
【図14】本発明による高周波伝送線路の第5の実施例を示す構成図である。
【図15】本発明による高周波伝送線路の第6の実施例を示す平面図である。
【図16】本発明による高周波伝送線路の第7の実施例を示す平面図である。
【図17】本発明による高周波伝送線路の第8の実施例を示す平面図である。
【符号の説明】
101…信号導体、102a、102b…グラウンド導体、103…誘電体基板、102a、102b、102c、102d…スルーホール、104…グラウンド導体。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高周波伝送線路及びそれを用いた電子部品または電子装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の高周波伝送線路を、図2〜図4を用いて説明する。図2は従来の高周波伝送線路の構成図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は側面図である。図2に示すように、回路基板や高周波の電気信号を伝送する伝送線路としては、誘電体203上に信号導体201を設け、その信号導体201の両側にグラウンド導体203a、203bを設けたものがある。この伝送線路は、図2(b)に示すように、信号導体201とグラウンド導体203a、203bの間に電磁界を閉じ込めて信号を伝搬するコプレーナ線路である。電気力線204は信号導体201とグランド導体302a、信号導体201と302bの間に発生する。
【0003】図3は従来の他の高周波伝送線路の構成図であり、図3(a)は斜視図、図3(b)は側面図である。図3に示すように、信号導体301に対して誘電体302を挟んで反対の面にグラウンド導体303を有し、その信号導体301とグラウンド導体303の間に電磁界を閉じ込めて信号を伝搬するマイクロストリップ線路が示されている。電気力線304は図3(b)に示すように、信号導体301とグランド導体303間に発生する。
【0004】図4は従来の更に他の高周波伝送線路の構成図であり、図4(a)は斜視図、図4(b)は側面図である。図4に示すように信号導体401に対して誘電体402を挟んで両側の面にグラウンド導体403a、403bを有し、その信号導体401とグラウンド導体403a、403bの間に電磁界を閉じ込めて信号を伝搬するストリップ線路示されている。電気力線404は図4(b)に示すように、信号導体401とグランド導体403a、信号導体401とグランド導体403bとの間に発生する。
【0005】図5は従来の更に他の高周波伝送線路の構成図であり、図5(a)は斜視図、図5(b)は側面図である。図5に示すように、信号導体501の両側に、グラウンド導体502a、502bを有し、さらに誘電体503を挟んだ反対側にもグラウンド導体504を有し、信号導体501と3つのグラウンド導体502a、502b及びグラウンド導体504との間に電磁界を閉じ込めて信号を伝搬するグラウンデッドコプレーナ線路が示されている。電気力線505は信号導体501とグランド導体502a、信号導体501とグランド導体502b、信号導体501とグランド導体504間に発生する。
【0006】図2〜図5に示されている高周波伝送線路ではそれぞれの構造によって決まる特性インピーダンスを一定に保って信号を伝搬することが重要である。特性インピーダンスが異なる伝送線路を接続すると、その接続部分で信号の反射が起こる。
【0007】図6は特性インピーダンスの異なる伝送線路を接続した場合の模式図であり、例えば、特性インピーダンスがZ1の伝送線路1と特性インピーダンスがZ2の伝送線路2を接続して、伝送線路1から伝送線路2に信号を伝搬したとき、その反射係数は(数1)で表される。
【0008】
【数1】
したがって、特性インピーダンスを伝送線路のすべての位置で一定にすることが重要である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】実際の基板は複数の層からなり、各層間の電気的導通をとるためのスルーホールが多数存在する。伝送線路の近傍にスルーホールがあると、その影響により、インピーダンスが変化する。このインピーダンスの変化により信号の反射が起こり、伝送特性が悪化する。
【0010】本発明の目的は上記従来技術の問題点を解決し、特性インピーダンスの変化の少ないまた、伝送特性の良い高周波伝送線路を提供することにある。本発明の他の目的は、本発明による高周波伝送線路を用いた、高周波特性の良い、電子部品または電子装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的はスルーホール近傍の信号線あるいはグラウンド導体の幅を変化させることにより実現されるもので、以下詳細に説明する。
【0012】第1の発明では、高周波伝送線路は、誘電体と、該誘電体を挟んで両側に配置された複数のグランド導体と、該両側に配置されたグランド導体間を電気的に接続するスルーホールと、該スルーホールの近傍に配置された信号導体とを備え、該スルーホールによる信号導体の特性インピーダンスが変化することを抑圧するために、該スルーホール近傍において、該グランド導体及び信号導体のいずれか一方又は両方の形状を変化させる。
【0013】第1の発明において、該複数のグランド導体は、該誘電体の一面に配置された第1のグランド導体及び第2のグランド導体と、該誘電体の他面に配置された第3のグランド導体とから構成され、該信号導体は該第1及び該第2のグランド導体の間に配置される。また、該グランド導体は該誘電体の一面に配置された第1のグランド導体と該誘電体の他の面に配置された第2のグランド導体とから構成され、該信号導体は該誘電体を構成する第1の層と第2の層の間に配置される。また、該グランド導体は該誘電体の一面に配置された第1のグランド導体と該誘電体の他の面に配置された第2のグランド導体とから構成され、該信号導体は該第1のグランド電極上に設けられた他の誘電体を介して該スルーホールの近傍に配置される。また、該信号導体は該スルーホールの近傍において、該信号導体の幅が狭くなるように凹みが形成される。また、この発明で、該信号導体は該凹み部分を除いて略同じ幅を有する。また、この発明で、該信号導体は該凹み部分を除いて徐々に変化する幅を有する。
【0014】第1の発明において、該グランド導体は該スルーホールの近傍において、該グランド導体の幅が狭くなるように凹みが形成される。また、この発明で、該複数のグランド導体は該凹み部分を除いて略同じ幅を有する。
【0015】第1の発明において、該信号導体は該スルーホールの近傍で、該信号導体の幅が狭くなるように凹みが形成され、該グランド導体は該スルーホールの近傍において、該グランド導体の幅が狭くなるように凹みが形成される。
【0016】第2の発明では、誘電体と、該誘電体の一面に配置された第1のグランド導体と、該誘電体の他の面に配置された第2の誘電体と、該第1のグランド導体と該第2のグランド導体との間を接続するスルーホールと、該第1のグランド導体及び該スルーホールに隣接して配置された信号導体とを備え、該スルーホールの近傍において、該信号導体の幅又は該グランド導体の幅のいずれか一方が狭くなるように構成する。
【0017】第2の発明において、高周波伝送線路は、該誘電体の一面に第3のグランド導体を設け、該第1のグランド導体との間で該信号導体を挟み込むように該第3のグランド導体を配置する。
【0018】第3の発明では、高周波伝送線路は、信号導体と、複数のグラウンド導体と、複数のグラウンド導体間を電気的に接続するスルーホールとを備え、複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍の信号導体幅を細くする。
【0019】第4の発明では、1本の信号導体と、複数のグラウンド導体と、複数のグラウンド導体間を電気的に接続するスルーホールとを備え、複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍のグラウンド導体幅を細くする。
【0020】第5の発明では、高周波伝送線路は、1本の信号導体と、複数のグラウンド導体と、複数のグラウンド導体間を電気的に接続するスルーホールとを備え、複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍の信号導体幅とグラウンド導体幅を細くする。
【0021】第6の発明では、高周波伝送線路は、1本の信号導体と、複数のグラウンド導体と、複数のグラウンド導体間を電気的に接続するスルーホールとを備え、複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍の信号導体幅を細くし、グラウンド導体幅を太くする。
【0022】第7の発明では、電子部品は、上記の高周波伝送線路の構造を有する。
【0023】第8の発明では、電子装置は、上記の高周波伝送線路の構造を有する。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を幾つかの実施例を用い、図を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明による高周波伝送線路の第1の実施例を示す構成図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図、図1(c)は図1(a)のB−B断面図である。本実施例の伝送線路は、図1に示すように、信号導体101と、その両側に配置されたグラウンド導体102a、102bと、誘電体基板103と、誘電体基板103を挟んで信号導体101の反対側の面にあるグラウンド導体104と、信号導体101の両側に配置されたグラウンド導体102a、102bと信号導体101の反対側の面にあるグラウンド導体104の間の電気的導通を取るためのスルーホール105a、105b、105c、105dからなる。本実施例ではスルーホール105a、105b、105c、105dの影響でこの近傍の特性インピーダンスが変化する。
【0025】以下、スルーホールにより特性インピーダンスが変化する理由について説明する。伝送線路の信号導体101及びグラウンド導体102a、102b、104はその幅や厚さ等によって決まるインダクタンス成分Lを持つ。また信号導体101とグラウンド導体グラウンド導体102a、102bの距離や誘電体材料等によって決まる容量成分Cを持つ。伝送線路の特性インピーダンスZは、伝送線路のロスが無いとすると、インダクタンスLと容量を用いて、(数2)のように表すことができる。
【0026】
【数2】
スルーホール105a、105b、105c、105dがない部分に比べ、スルーホール105a、105b、105c、105dがある部分では、信号導体の近傍のグラウンド導体が増えるため、容量Cが増大する。したがって、(数2)から明らかなようにインピーダンスが下がる。従って、スルーホール近傍のインダクタンスを増加あるいは、スルーホール近傍の容量を低減することで、特性インピーダンスを一定に保ち、伝送特性を向上させることができる。スルーホール近傍のインダクタンスを増加させるためには、信号線の線幅を狭くすればよく、また、容量の低減は信号線とグラウンド導体の距離を広くすることで実現できる。本実施例では、伝送線路における信号導体101の幅はスルーホールの近傍において細くなっている。又は、表現を変えると、信号導体101はスルーホールの近傍において凹んでへこんでいる。また、スルーホール105a、105b、又はスルーホール105c、105dの外側の両端を結んだ線の中に信号導体101の幅が狭くなっている部分が存在するといえる。また、スルーホール105a、105bとスルーホール105c、105dの間で信号導体101は狭い幅と広い幅とを持っている。
【0027】本実施例では、スルーホール105a、105b、105c、105dによって容量が増え、特性インピーダンスが低下することをキャンセルするために、信号導体101の幅を細くして凹みを持たせている。これによって、インダクタンス成分を上げ、特性インピーダンスを一定に保つことができる。また、本実施例では、信号導体101と、その両側に配置されたグラウンド導体102の間の間隔が広くなるため、この間の容量成分を低減する効果もある。
【0028】図7は信号導体の幅と特性インピーダンスの関係を電磁界解析により求めた結果を示す特性図であり、横軸に伝送線路における信号線幅(μm)を示し、縦軸に特性インピーダンス(Ω)を示す。また、図8は電磁界解析を行うためのスルーホールを用いた伝送線路の断面図であり、図9は電磁界解析を行うためのスルーホールなしの伝送線路の断面図である。図8において、801は信号導体、802a、802b、804はグランド導体、803は誘電体、805a、805bはスルーホールである。グランド導体802a、802bの幅は675μm、厚さは2.2μm、グランド導体804の幅は1500μm、厚さは2.2μm、誘電体803の厚さは245μmであり、信号導体801の厚さは2.2μmであり、スルーホール805a、805b近傍の信号導体801の幅d1を変えた場合の特性インピーダンス(Ω)を図7の特性線701で示す。図9において、グランド導体902a、902bの幅は675μm、厚さは2.2μmである。誘電体903の厚さは254μm、グランド導体904の幅は1500μm、厚さは2.2である。また、信号導体901の幅はd2、厚さは2.2μmであり、d2を変えた場合の特性インピーダンス(Ω)を図7の特性線702で示す。本解析は図8および、図9に示す構造で解析を行った。本解析構造は光モジュールの内部で高周波信号を伝送するために使用されることを想定した場合に実現性の高いサイズである。伝送線路の特性インピーダンスを50Ωで設計した場合、スルーホールの無い部分では図7の特性線702から分かるように信号導体の幅を97μmとする必要があるが、その幅で近傍にスルーホール805a、805bが存在した場合、特性インピーダンスは41Ωと約20%も低くなってしまう。スルーホール805a、805bが存在する場合、特性インピーダンスを50Ωにするためには図7の特性線701から分かるように、信号導体の幅を72μmにすれば良い。したがって、本実施例の構造の伝送線路では、信号導体の幅は、スルーホール805a、805bがないところでは97μmと広くし、スルーホール805a、805bのあるところでは72μmと狭くすることによって、特性インピーダンスを50Ωと一定の値とすることができる。
【0029】以下、本発明の第2の実施例について、図10を用いて説明する。図10は本発明による高周波伝送線路の第2の実施例を示す平面図である。図において、図1の同じ構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。本実施例においては、信号導体111の幅を一定とし、グラウンド導体112a、112bの幅を変化させている。スルーホール105a、105b、105c、105d近傍で、グラウンド導体112a、112bの幅を狭くし、信号導体111とグラウンド導体112a、112bの間の距離を遠くすることで信号導体111とグラウンド導体112a、112b間の容量成分を低減できる。これにより、スルーホール付加による容量成分の増加を打ち消し、特性インピーダンスを一定に保つことができる。
【0030】以下、本発明の第3の実施例について、図11を用いて説明する。図11は本発明による高周波伝送線路の第3の実施例を示す平面図である。本実施では信号導体101の幅と、グラウンド導体122a、122bの幅の両方を細くしている。即ちスルーホール105a、105b、105c、105d近傍で、信号導体101に凹みを設けてその幅を狭くして、インダクタンス成分を増やし、さらに、グラウンド導体122a、122bに凹みを設けてその幅を狭くして信号導体101からグラウンド導体122a又はグランド導体122bの距離を遠くすることで、容量成分を低減できる。この2つの効果により、特性インピーダンスを一定に保つことができる。
【0031】以下、本発明の第4の実施例について、図12を用いて説明する。図12は本発明による高周波伝送線路の第4の実施例を示す平面図である。本実施では信号導体101は図11の場合と同様にその幅を狭く(又は細く)し、グラウンド導体132a、132bの幅を広くしている。スルーホール近傍で、信号導体101の幅を狭くし、インダクタンス成分を増やす。グラウンド導体132a、132bの幅を広くすることで信号導体からグラウンド導体132a、132bの距離が近くなり、容量成分が更に増加してしまうが、グラウンド導体132a、132bの幅を狭くすることでそれを打ち消す。本構造では、信号導体101とグラウンド導体132a、132bの間のギャップを一定に保つことも可能であり、ギャップが変化することによる電磁界のモード変化を最小限に抑えることができるという利点がある。
【0032】以上、2層構造のグラウンデットコプレーナ線路について複数の実施例を挙げて述べたが、本発明は2層構造のものに限られるものでは無い。より多層の基板においても、基板の一部にでもグラウンデットコプレーナ構造の伝送線路があれば、本実施例の効果は得られる。また、本発明はグラウンデットコプレーナ線路に限られる発明ではない。
【0033】以下、各種伝送線路における実施例について説明する。図13は本発明による高周波伝送線路の第4の実施例を示す構成図であり、図13(a)は斜視図、図13(b)は平面図、図13(c)は図13(b)のA−A断面図、図13(d)は図13(b)のB−B断面図である。本実施例の伝送線路は信号導体1301と、誘電体1302と、その誘電体1302を挟んで両側に配置されたグラウンド導体1303a、1303bと、そのグラウンド導体1303a、1303bの間の電気的導通を取るためのスルーホール1304a〜1304dからなる。
【0034】本実施例の伝送線路における信号導体1301の幅はスルーホール1304a〜1304dの近傍において細くなっている。スルーホールによって容量成分が増え、特性インピーダンスが低下することをキャンセルするために信号導体1301の幅を細くすることでインダクタンス成分を上げ、特性インピーダンスを一定に保つことができる。また、本実施例では、信号導体1301と、スルーホール1304a〜1304dの間隔が広くなるため、容量成分を低減する効果もある。
【0035】マイクロストリップ線路に関する実施例を、図14を用いて説明する。図14は本発明による高周波伝送線路の第5の実施例を示す構成図であり、図14(a)は斜視図、図14(b)は平面図、図14(c)は図14(b)のA−A断面図、図14(d)は図14(b)のB−B断面図である。本実施例の伝送線路は信号導体1401と、誘電体1402と、その誘電体1402を挟んで信号導体1401両側に配置されたグラウンド導体1403と、それとは別のグラウンド導体1404と、それら複数のグラウンド層の間を電気的に接続するための貫通型のスルーホール1405a〜1405dからなる。
【0036】本実施例の伝送線路における信号導体1401の幅はスルーホール1405a〜1405dの近傍において細くなっている。スルーホール1405a〜1405dによって容量成分が増え、特性インピーダンスが低下することをキャンセルするために信号導体1401の幅を細くすることでインダクタンス成分を上げ、特性インピーダンスを一定に保つことができる。また、本実施例では、信号導体1401と、スルーホール1405a〜1405dの間隔が広くなるため、容量成分を低減する効果もある。以上、スルーホールが信号導体から等距離の位置に左右対称に、周期的にある場合の実施例について述べてきたが、本発明はこれに限るものではない。
【0037】以下、図15を用いて、信号導体からスルーホールまでの距離が一定でない場合の実施例について説明する。図15は本発明による高周波伝送線路の第6の実施例を示す平面図である。本実施例では、スルーホール1503aとスルーホール1503b間の距離はスルーホール1504aとスルーホール1504b間の距離より長い。信号導体501からスルーホール1503a、1503bまでの距離が遠い場合、スルーホール1503a、1503bのよる容量値の増加はスルーホール1504aとスルーホール1504bによる容量の増加より少ないため、スルーホール1503a、1503b近傍の信号導体1501の幅はスルーホール1504aとスルーホール1504b近傍の信号導体1501の幅より広くする。
【0038】信号導体からスルーホールまでの距離が一定でない場合の実施例としてグラウンデットコプレーナ線路について信号導体を細くした場合の実施例を示したが、マイクロストリップ線路、ストリップ線路等でも同様の議論ができることは言うまでもない。
【0039】次に、信号導体の幅を徐々に狭くしていった場合に特性インピーダンスが一定になる場合、例えば、誘電体の厚さが徐々に異ならしめた場合や電界の方向を90度変更するために、徐々に信号導体とグランド導体の距離を離す場合の実施例である。図16は本発明による高周波伝送線路の第7の実施例を示す平面図である。本実施例において、信号導体1601の幅は図の下方に行くに従って狭くなっているが、この場合でも、スルーホール1602a、1602bが設けられている近傍の信号導体1601の幅は狭く、又は細くなるように凹みが設けられ、上述した効果を得ている。
【0040】以下、スルーホールが対になって構成されていない場合の例について図17を用いて説明する。図17は本発明による高周波伝送線路の第8の実施例を示す平面図である。図において、グランド導体1702aに設けられたスルーホール1703とグランド導体1702bに設けられたスルーホール1704とが対になっていいない場合でも、スルーホール1703、1704近傍の信号導体1701の幅は狭く、又は細くなるように凹みが設けられている。
【0041】本発明は高周波信号を伝搬する装置として、光モジュールの高速信号伝送基板や、パーソナルコンピュータ、携帯端末、通信機器などに適用できる。また、本実施例では、基板上の伝送線路の例を示したが、本発明はこれに限られるものではない。LSIチップ内の伝送線路において本発明を利用することで、より高周波特性の良いLSIを作製可能となる。その他、基板間を接続するフレキシブルケーブル当にも適用可能である。
【0042】以上述べたように、本発明によれば、少なくとも1本の信号導体と、複数のグラウンド導体と、複数のグラウンド導体間を電気的に接続するスルーホールを有する伝送線路に関し、信号導体とスルーホールの間の容量が増えることにより伝送線路の特性インピーダンスが下がり、信号の反射が生じて伝送特性が悪くなるという問題点を克服するために、信号導体、グラウンド導体の幅を広げたり狭めたりすることでインダクタンスを増加させ、あるいは容量を低減してインピーダンスを一定に保っている。また、本発明を適用することにより、より伝送特性のよい伝送線路を提供できる。
【0043】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、信号導体と、複数のグラウンド導体とを有する伝送線路にスルーホールを設けても、インダクタンスを増加させ、あるいは容量を低減してインピーダンスを一定に保つことができる。また、本発明を適用することにより、より伝送特性のよい伝送線路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による高周波伝送線路の第1の実施例を示す構成図である。
【図2】従来の高周波伝送線路の構成図である。
【図3】従来の他の高周波伝送線路の構成図である。
【図4】従来の更に他の高周波伝送線路の構成図である。
【図5】従来の更に他の高周波伝送線路の構成図である。
【図6】特性インピーダンスの異なる伝送線路を接続した場合の模式図である。
【図7】信号導体の幅と特性インピーダンスの関係を電磁界解析により求めた結果を示す特性図である。
【図8】電磁界解析を行うためのスルーホールを用いた伝送線路の断面図である。
【図9】電磁界解析を行うためのスルーホールなしの伝送線路の断面図である。
【図10】本発明による高周波伝送線路の第2の実施例を示す平面図である。
【図11】本発明による高周波伝送線路の第3の実施例を示す平面図である。
【図12】本発明による高周波伝送線路の第4の実施例を示す平面図である。
【図13】本発明による高周波伝送線路の第4の実施例を示す構成図である。
【図14】本発明による高周波伝送線路の第5の実施例を示す構成図である。
【図15】本発明による高周波伝送線路の第6の実施例を示す平面図である。
【図16】本発明による高周波伝送線路の第7の実施例を示す平面図である。
【図17】本発明による高周波伝送線路の第8の実施例を示す平面図である。
【符号の説明】
101…信号導体、102a、102b…グラウンド導体、103…誘電体基板、102a、102b、102c、102d…スルーホール、104…グラウンド導体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】誘電体と、該誘電体を挟んで両側に配置された複数のグランド導体と、該両側に配置されたグランド導体間を電気的に接続するスルーホールと、該スルーホールの近傍に配置された信号導体とを備え、該スルーホールによる信号導体の特性インピーダンスが変化することを抑圧するために、該スルーホール近傍において、該グランド導体及び信号導体のいずれか一方又は両方の形状を変化させることを特徴とする高周波伝送線路。
【請求項2】誘電体と、該誘電体の一面に配置された第1のグランド導体と、該誘電体の他の面に配置された第2の誘電体と、該第1のグランド導体と該第2のグランド導体との間を接続するスルーホールと、該第1のグランド導体及び該スルーホールに隣接して配置された信号導体とを備え、該スルーホールの近傍において、該信号導体の幅又は該グランド導体の幅のいずれか一方が狭くなるように構成することを特徴とする高周波伝送線路。
【請求項3】信号導体と、複数のグラウンド導体と、複数のグラウンド導体間を電気的に接続するスルーホールとを備え、複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍における信号導体幅を細くする構成、及び複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍のグラウンド導体幅を細くする構成、複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍の信号導体幅とグラウンド導体幅を細くする構成、及び複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍の信号導体幅を細くしてグラウンド導体幅を太くする構成のいずれかであることを特徴とする高周波伝送線路。
【請求項4】請求項1乃至3のいずれかに記載の高周波伝送線路の構造を有することを特徴とする電子部品。
【請求項5】請求項1乃至3から請求項16記載の高周波伝送線路の構造を有することを特徴とする電子装置。
【請求項1】誘電体と、該誘電体を挟んで両側に配置された複数のグランド導体と、該両側に配置されたグランド導体間を電気的に接続するスルーホールと、該スルーホールの近傍に配置された信号導体とを備え、該スルーホールによる信号導体の特性インピーダンスが変化することを抑圧するために、該スルーホール近傍において、該グランド導体及び信号導体のいずれか一方又は両方の形状を変化させることを特徴とする高周波伝送線路。
【請求項2】誘電体と、該誘電体の一面に配置された第1のグランド導体と、該誘電体の他の面に配置された第2の誘電体と、該第1のグランド導体と該第2のグランド導体との間を接続するスルーホールと、該第1のグランド導体及び該スルーホールに隣接して配置された信号導体とを備え、該スルーホールの近傍において、該信号導体の幅又は該グランド導体の幅のいずれか一方が狭くなるように構成することを特徴とする高周波伝送線路。
【請求項3】信号導体と、複数のグラウンド導体と、複数のグラウンド導体間を電気的に接続するスルーホールとを備え、複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍における信号導体幅を細くする構成、及び複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍のグラウンド導体幅を細くする構成、複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍の信号導体幅とグラウンド導体幅を細くする構成、及び複数のグラウンド導体間を接続するスルーホールの近傍の信号導体幅を細くしてグラウンド導体幅を太くする構成のいずれかであることを特徴とする高周波伝送線路。
【請求項4】請求項1乃至3のいずれかに記載の高周波伝送線路の構造を有することを特徴とする電子部品。
【請求項5】請求項1乃至3から請求項16記載の高周波伝送線路の構造を有することを特徴とする電子装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図10】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図11】
【図7】
【図9】
【図12】
【図16】
【図13】
【図15】
【図14】
【図17】
【図2】
【図3】
【図10】
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【図14】
【図17】
【公開番号】特開2003−124712(P2003−124712A)
【公開日】平成15年4月25日(2003.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−319040(P2001−319040)
【出願日】平成13年10月17日(2001.10.17)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成15年4月25日(2003.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年10月17日(2001.10.17)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】
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