説明

高周波及びマイクロ波領域用のアンテナモジュール

アンテナモジュール、特に、高周波及びマイクロ波領域での通信用であり、その放射特性に関して制御されることができ、特にその効率に関して最適化されることができるものに関する説明が与えられる。これは、基本的に、アンテナモジュールが、少なくとも第1の端子(11)と第2の端子(12)とを持つ少なくとも1つのアンテナ(1)と、アンテナ(1)に対するHF接続を、アンテナ(1)の第1及び第2の端子(11,12)にそれぞれ接続される少なくとも第1の分岐及び第2の分岐へ切り替え可能に分割する回路装置とを有することで達成される。本発明はこのようなアンテナモジュールを有する回路基板及び通信デバイス、特に、移動体通信デバイスにも関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナモジュール、特に、高周波及びマイクロ波領域における通信用で、その放射特性に関して制御されることができるものに関する。本発明は、通信デバイスにも関連し、特に、このようなアンテナモジュールを有する移動体通信デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
通信デバイス、特に、移動体通信デバイスを用いて情報を送信するため、通常は高周波又はマイクロ波領域の電磁波が使用される。これらの波を送信及び受信するため、それぞれの場合において十分広い帯域幅を持つ多数の周波数帯域で動作されることができるアンテナの必要性が増加する。
【0003】
携帯電話の標準規格では、例えば、このような周波数帯域は、880と960 MHz(GSM900)の間に、1710と1880 MHz(GSM-又はDCS1800)の間に、特に米国では、824と894 MHz(AMPS)の間に、及び1850と1990 MHz(D-AMPS、PCS又はGSM1900)の間に存在する。そのような周波数帯域は、UMTS帯域(1880から2200 MHz)と、特にワイドバンドCDMA(1920から1980 MHz及び2110から2170 MHz)と、1880から1900 MHzの周波数帯域であるコードレス電話に対するDECT標準規格と、様々な電子デバイス、例えば、携帯電話、コンピュータ、娯楽機器などの間でデータを交換するのに使用される、2400から2483.5 MHzの周波数帯域であるBluetooth(登録商標)標準規格(BT)とをも含む。
【0004】
また、少なくとも移行期間において、携帯電話をGSM周波数領域の少なくとも1つと、UMTS周波数領域との両方において動作させることを可能にする必要性も存在する。
【0005】
欧州と米国とを頻繁に旅行するユーザが2つの携帯電話を持たなくて済むように、携帯電話を2つあるヨーロピアン(GSM)帯域と、2つあるUS帯域(AMPSとPCS)との両方で動作させることを可能にする必要性も存在する。
【0006】
情報の送信だけでなく、例えば、衛星ナビゲーション目的といった追加的な機能及び用途が、知られたGPS帯域又はアンテナが動作可能でなければならないであろう別の周波数帯域での移動体通信デバイスで実現される場合もある。
【0007】
そこで原理上は、この種の近代通信デバイスが、できるだけ多くの周波数領域で動作されることができることの必要性が存在し、これらの周波数領域をカバーするマルチバンドアンテナ又はブロードバンドアンテナがそれに応じて必要とされる。
【0008】
携帯電話におけるこれら及び他の機能の一体化が増え、同時に、これらのデバイスをできるだけ小さくしようとする試みが行われるにつれ、筐体において利用可能な空間が一層小さくなるため、できるだけ容量が小さい、又はできるだけサイズの小さいアンテナの必要性が更に増している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
放出される放射線の所与の波長でアンテナのサイズを最小化するため、誘電率
【数1】

を持つ誘電体が、アンテナの基本構成要素として使用されることができる。これは、誘電体における放射線の波長が係数
【数2】

分、短くされることをもたらす。従って、このような誘電体に基づいてデザインされるアンテナは、サイズの面でも、この係数により小さくなる。しかしながら、1つ不利な点は、誘電率が増加するにつれ、それに従ってアンテナの帯域幅が狭くなることである。
【0010】
この種のアンテナは、例えば、誘電物質で作られる基板を持ち、その基板の表面には、所望の1つ又は複数の動作周波数帯域に応じて、1つ又は複数のレゾナントな(resonant:共振)メタライズ構造体(metallization structure)が適用される。共振周波数の値は、プリントされるメタライズ構造体の寸法(dimension)とその基板の誘電率の値とに依存する。個別の共振周波数の値は、メタライズ構造体の長さが長くなるにつれ、及び誘電率の値が上昇することによっても、減少する。このようなアンテナは、また、「プリントされた配線アンテナ(Printed Wire Antenna)」(PWA)又は「誘電ブロックアンテナ(Dielectric Block Antenna)」(DBA)とも呼ばれる。
【0011】
これらのアンテナの1つの特有の利点は、アンテナが表面実装(SMD技術)によってプリント回路基板(PCB)に直接に適用されることができる点である。つまり、電磁力を供給又は放散するのに必要とされる追加的な取り付けデバイス(ピン)なしで - 可能であれば他の部品と共に- フラットな(flat)半田付けと接点処理(contacting)とを行うことによってである。しかしながら、もし望むなら又は必要であるなら、これらのアンテナは、スプリングピンを用いて若しくはいくつか知られている別の方法により回路基板に取り付けられ、それから接点処理が行われるか、又は、プリント回路基板の側面に若しくはその上に適用されてももちろん構わない。
【0012】
それでも、特に、このようなアンテナが、多数の周波数帯域で動作すべき場合には、メタライズ構造体の寸法が問題となり、困難な場合がある。これは、メタライズ構造体はお互いに双方で影響を及ぼしあうため、アンテナが必要な周波数領域の1つに最適に適応することが、他の周波数領域でのアンテナのパフォーマンスが減少することを意味するためである。
【0013】
移動体通信デバイスで同様に使用される別の種類のアンテナは、メタライズ構造体が接地メタライズ(ground metallization)の上に配置される、いわゆる「板状逆Fアンテナ」(PIFA)である。そのアンテナは、ボリューム共振器(volume resonator)として動作する。これらの種類のアンテナでは、ある一定の方向に走る、又はある一定の方向に形成される1つ又は複数のスリットがメタライズ構造体に作られることにより、マルチバンド機能が実現されることができる。結果として、アンテナは、異なる周波数帯域をカバーする少なくとも2つの異なるモードで動作されることができる。しかしながら、これらのアンテナの1つ不利な点は、特に、サイズが小さくされるとき、メタライズ構造体の異なる部分間での高い相互作用が原因で、アンテナがとても狭い帯域しかカバーせず、従って、不本意な態様でしか上述した要件を満たすことができないことである。更に不利な点は、アンテナが比較的大きな量の空間を必要とし、誘電物質を使用しても限られた程度までしか削減することができないことである。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上述した用途に十分な帯域幅を備え、少なくとも2つの上述した周波数帯域で動作されることができる特に高周波及びマイクロ波領域での通信用のアンテナを提供することにある。
【0015】
更に、本発明の目的は、多数の周波数帯域で動作されることができるだけでなく、その機能の面で拡張されることができ、比較的大きな程度まで小型化されることもできる上述した種類のアンテナを提供することにある。
【0016】
アンテナは、また、その放射特性が制御可能なものが提供される。
【0017】
最後に、本発明の別の目的は、このようなアンテナの効率も増加させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的は、請求項1の記載によれば、少なくとも第1の端子及び第2の端子を持つ少なくとも1つのアンテナと、アンテナに対するHF接続を、アンテナの第1及び第2の端子にそれぞれ接続される少なくとも第1の分岐及び第2の分岐へ分割する回路装置とを有する、特に高周波及びマイクロ波領域用のアンテナモジュールにより達成される。
【0019】
アンテナが少なくとも2つのHF端子を持ち、アンテナに対するHF接続がこれらの端子に接続される少なくとも2つの分岐に分割されるという事実の結果として、HF信号のこれらの分岐への分割の本質としてアンテナの放射特性に影響を与える点に関して多数の可能性が広がる(特にHF信号間のパワー分割及び/又は位相シフト)。そして、所望の要件に対応する寸法(dimensioning)が上述した周波数帯域又はこれらの周波数帯域の組み合わせのほぼすべてに対し見つけられることができ、こうして、デュアルバンド又はマルチバンドアンテナが実現されることができる。
【0020】
このソリューションの追加的な利点は、それが、原理上は、上述されたすべてのアンテナ種類及び上述されたすべての周波数帯域又は領域に対して実現されることができる点にある。
【0021】
この時点で、例えば、米国特許番号6,320,574B1号により、多数のセラミック層と、多数の金属層と、複数の放射素子と、複数の制御回路とを持つ切り替え可能なアンテナが知られていることに留意するべきである。しかしながら、これらは位相配列アンテナ(phased array antenna)であるため、一般的とはみなされない。
【0022】
従属項は、本発明の有利な進歩を含む。
【0023】
請求項2から4は、後者を介して与えられるHF接続又はHF信号の分割の好ましい種類に関連する。
【0024】
請求項5から9は、本発明によるアンテナモジュールの一部として使用されることができ、特有の利点を備えるアンテナの好ましい実施形態に関連する。そのアンテナを用いて効率をかなり増加させることを達成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、図面に示される実施形態の例示を参照して更に説明されるであろう。しかしながら、本発明はその実施形態の例示に限定されるものではない。
【0026】
図1は、接地電位を形成する接地メタライズ31を有するプリント回路基板(PCB)30の前面の一部である平面図を示す。その接地メタライズは、好ましくは、背面に適用される。接地メタライズ31が除外された回路基板30の1つの角には、本発明によるアンテナモジュールの一部を形成するアンテナ1が存在する。
【0027】
アンテナ1は、誘電ブロックアンテナ(DBA)又はプリントされた配線アンテナ(PWA)である。しかしながら、本発明によるアンテナモジュールは、特に冒頭で述べられたような他のアンテナタイプを用いて作り出されることもできる。更に、以下に述べられる周波数領域だけではなく、例えば特に冒頭で述べられたような周波数領域のような他の周波数領域のための寸法とする(dimension)ことができる。
【0028】
図1に示されるように、アンテナ1は、放射される(又は受信される)HFパワーへの直接かつ一定のHF入力(又は出力)として与えられる第1の端子11を持つ。アンテナ1は、更に、制御入力である第2の端子12であって、その端子を介して可変制御信号をアンテナ1に与える第2の端子12と、接地メタライズ31に接続され、従って接地電位にある第3の端子13とをも有する。
【0029】
アンテナ1は、更に、基本的に四角いブロックの形状を取り、その長さ又は幅が、その高さの約3から40倍である基板10を有する。以下の説明において、図1に示される(グレーで影付きの)基板10の上側の(大きな)表面は、上部主表面と呼ばれ、反対側の表面は、下部主表面と呼ばれ、それらに垂直な表面は、基板10の側面と呼ばれる。
【0030】
四角い基板10の代わりに、特定の用途及び利用可能な空間に応じて、異なる幾何学的な形状が選択されることもできる。例えば、円柱、三角柱、又は多角柱形状などである。更に、基板10は、例えば、材料及び高さを節約するため空洞又はリセスを有することもできる。
【0031】
基板10は、例えば、セラミック素材及び/又は1つ若しくは複数の高周波プラスチックから作られ、又はポリマ・マトリクス(polymer matrix)にセラミックパウダを埋め込むことにより作られることができる。純粋なポリマ基板を用いることも可能である。材料は、できるだけ損失が低くあるべきであり、高周波特性において温度への依存性が低くあるべきである(NP0又はいわゆるSL素材)。
【0032】
アンテナのサイズを減らすために、基板10は、好ましくは、誘電率
【数3】

及び/又は比透磁率
【数4】

を持つ。しかしながら、基板が、高い又は上昇する誘電率及び/又は比透磁率を持つ場合、達成可能な帯域幅が減少するという事実が考慮されるべきである。
【0033】
図1に示されるアンテナ1の場合、基板10は、誘電率が約21.5であるNP0セラミックでできており、長さは約15ミリ、幅は約15ミリ、そして高さは約2ミリである。
【0034】
基板10は、その表面に、非常に電気的に導電性のある材料、例えば、銀、銅、金、アルミニウム又は超電導体のような材料から形成される多数のメタライズ構造体を持つ。個別のメタライズ構造体又は多数のこのようなメタライズ構造体は、適切な接点と共に基板10に埋め込まれていてもよい。
【0035】
図1に示されるように、基板10は、少なくとも1つのレゾナントな(resonant)第1のメタライズ構造体14を持つ。その構造体は、基板10の下部主表面、1つの側面及び上部主表面に沿って、多数の直線区分の形式で広がる。この第1のメタライズ構造体14の方向及び電気的に有効な長さL’、それは
【数5】

(ここでLは、自由空間における信号の波長である。)で表されるが、それは、知られた方法で選択され、基本的に(つまり、基板の誘電率と共に)アンテナの最低モードを決定する。ここで、Lは自由空間における信号の波長である。第1のメタライズ構造体14は、アンテナが最低モードにあるとき放射及び受信する電磁力の波長のほぼ半分にその長さが対応するよう、寸法が取られる。この最低モードは、同時にアンテナモジュールの最低動作周波数(通常、GSM900又はAMPS帯域である)を規定する。
【0036】
第1メタライズ構造体14は、接地メタライズ31にアンテナの第3の端子13を介して接続される。
【0037】
基板10の下部主表面及び上部主表面上のこのメタライズ構造体14(そして可能であれば更なるメタライズ構造体)の一部間の結合機構を用いて、アンテナモジュールの第1の倍振動(harmony)が、例えば、所望の第2の周波数帯域、例えば、DCS1800及び/又はPCS1900帯域へシフトされることができる。デュアルバンド又はマルチバンドアンテナは、その結果、それ自体知られた態様で作り出されることができる。
【0038】
図1に見られるように、基板10には第2のメタライズ構造体15が存在する。この第2のメタライズ構造体は、比較的短い直線区分を形成し、第1のメタライズ構造体14の端の反対側に配置され、アンテナ1の第1の端子11に接続される。
【0039】
図1に示されるように、基板10には最後に第3のメタライズ構造体16が存在する。この第3のメタライズ構造体は、比較的短い直線区分を形成するようデザインされ、アンテナ1の第2の端子12に接続される。
【0040】
第1及び第2の(機能的な)端子11、12(又はそれぞれの場合にそれらに接続されるメタライズ構造体15、16)と、第1の(レゾナントな)メタライズ構造体14との間の容量結合機構を用いて、アンテナ1の入力インピーダンスは、それ自体知られた方法により、所望の値に、通常50オームであるが、セットされることができる。
【0041】
このような基板アンテナの代替手段として、特に周波数約2 GHz又はそれ以上において、基板10を省き、アンテナ、即ちメタライズ構造体を、例えば回路基板30に直接に適用し、容量結合機構を介して、例えば、回路基板30上のSMD容量を用いて、端子を作り出すことも可能である。約10である誘電率を持つ回路基板用の素材も知られているが、回路基板30の素材は、通常誘電率が約4であるので、レゾナントなメタライズ構造体は、ほとんどわずかに変更され、特に拡張される必要があるだけである。
【0042】
図2は、図1に示されるアンテナ1の外部配線なしでの様々なレゾナンススペクトルを示す。即ち、アンテナ1の端子11、12、13は、各場合において作動しない端子は50オームの抵抗を用いてカットオフ(cut off)されるという交互的な態様で、それぞれの場合において動かされる。
【0043】
詳しく言えば、曲線Aは、第2の端子12(散乱端子)に関する散乱パラメタs11の経過を示し、曲線Bは、第1の端子11(HF入力又は出力)に関する散乱パラメタs22の経過を示し、曲線Cは、第1の端子11及び第2の端子12間の送信の散乱パラメタs21又はs12を示す。各場合において、周波数の関数として示される。
【0044】
レゾナンス曲線の比較的高いインピーダンス帯域幅が図2に見られることができる。これは、原理上は、GSM900、DCS1800及びPCS1900の3つの帯域でのアンテナの動作を許容する。
【0045】
更に、第2の端子12(制御入力)と第1の端子11(HF入力)とを以下に説明されるように動作させることにより、アンテナ1の効率がかなり増大又は最適化されることが分かった。
【0046】
もし、例えば、周波数920 MHz(GSM900又はAMPS)において、高周波信号が第2の端子12に独占的に適用される場合、32.9パーセントの効率が得られる。もし、高周波信号が第1の端子11に独占的に適用される場合、37.2パーセントの効率が得られる。もし、他方、高周波信号がそのパワーの観点から分割され、第1の端子11及び第2の端子12にそれぞれ50パーセントの割合で適用されると、2つの信号成分間の位相シフトが0度であるとすれば、69.2パーセントの効率が得られる。これは、効率がほぼ100パーセント増加することに対応する。
【0047】
しかしながら、もし、2つの信号成分間の位相シフトが180度である場合、それらと比較すると、1.92パーセントの効率しか得られない。
【0048】
追加的な例として、1820 MHzの周波数(DCS1800/PCS1900)に対するものが与えられる。この場合、高周波信号が第2の端子12に独占的に適用されるとき、31.1パーセントの効率が得られる。しかしながら、もし、高周波信号が第1の端子11に独占的に適用される場合には、63.9パーセントの効率が得られる。もし、高周波信号のパワーが2つの端子11、12に関しそれぞれ50パーセントの割合で分割されると、その2つの高周波信号間の位相シフトが0度であるとすれば、15.9パーセントの効率しか得られない。一方で、位相が180度シフトされる場合には、79.0パーセントの効率が測定された(つまり、効率が約66パーセント増加したことになる)。
【0049】
従って、第1の(低)周波数の場合、効率の増加は位相シフト0度で達成されるのに対し、第2の(高)周波数の場合、180度の位相シフトが必要になる。
【0050】
更に、アンテナ1の第1及び第2の端子11、12間のアイソレーション(isolation)が、5 dB付近の特定の値をはっきり下回りもせず又は超えるのでもない場合、効率は特にかなり増大されることができることがわかった。
【0051】
効率における改善は、このアイソレーションが 5 dB プラス/マイナス 2 dBの領域にあるとき、特に高い。
【0052】
図3は、例示のために、本発明によるアンテナモジュールのブロック図を示す。
【0053】
モジュールは、その第1、第2及び第3の端子11、12、13を伴う図1に示されるアンテナ1を含み、アンテナ1の第3の端子13がここでも回路基板の接地メタライズに接続される。
【0054】
アンテナモジュールは、その入力側にHF接続Eに接続されるパワースプリッタ2を有する。そのHF接続Eには、放射されるHFパワーが供給され、又はHF接続Eを介して、受信されたHFパワーが放散される。
【0055】
パワースプリッタ2を用いて、HFパワーは好ましくは50対50の割合で分割される。パワースプリッタ2の第1の出力は、アンテナ1の第1の端子(HF入力)11に接続される第1の分岐1aに接続される。
【0056】
パワースプリッタ2の第2の出力は、アンテナ1の第2の端子(制御入力)12へ導き、かつ、第1の切り替えスイッチ3と、第2の切り替えスイッチ4と、位相シフタ5とを有する第2の分岐1bへ接続される。位相シフタ5を用いて、適用された信号はその位相に関して、好ましくは180度シフトされることができる。
【0057】
詳細には、パワースプリッタ2の第2の出力は、第1の切り替えスイッチ3のスイッチング接点に接続される。第1の切り替えスイッチ3の第1の出力は、第2の切り替えスイッチ4の第1の入力に接続される。一方、第1の切り替えスイッチ3の第2の出力は、位相シフタ5の入力に接続される。位相シフタ5の出力は、第2の切り替えスイッチ4の第2の入力に接続される。第2の切り替えスイッチ4のスイッチング接点は、最終的にアンテナ1の第2の端子12に接続される。
【0058】
この回路を用いて、第1及び第2の切り替え回路3、4を連帯して動かすことにより、パワースプリッタ2の第2の出力に存在するHFパワーを、アンテナ1の第2の端子12(制御入力)に、直接に(第1の切り替え位置)又は180度位相シフトされた態様で(第2の切り替え位置)のいずれかの態様で導くことができる。
【0059】
第1又は第2の切り替え位置の選択は、各場合において、アンテナ1の最適な効率が得られるように、上述したように使用される周波数領域の関数としてなされる。従って、GSM900帯域(920 MHz)の場合、第1の切り替え位置が選択され、DCS1800/PCS1900帯域(1820 MHz)の場合、第2の切り替え位置が選択されるであろう。
【0060】
図4及び図5は、アンテナ1の第1の端子11で測定される散乱パラメタ(反射)の経過を、これら2つの周波数帯域に対する周波数の関数として示す。図4は、第1の切り替え位置(位相シフトなし)に対して生じる経過を示し、図5は、第2の切り替え位置(180度位相シフト)に対して生じる経過を示す。
【0061】
図は、第1の切り替え位置において、明白な最小が、約920 MHzと約1320 MHzとで得られることを示す。一方、第2の切り替え位置において、最小が、約1320 MHzと約1800 MHzとで見られることができる。本発明によるアンテナモジュールは、こうして3周波数帯域で動作されることができ、2つの切り替えスイッチ3、4は、下位及び上位周波数帯域を選択するために動作されなければならない。
【0062】
図3に示される回路は、もちろん、上述された機能を得るための異なる態様で実現されることもできることは指摘されるべきである。
【0063】
最後に、多数のアンテナ又はアンテナモジュールを結合し、送信されるHF信号を用いて位相シフトされた態様でそれらを動かすことにより、全体配置の指向性がセット又は変更されることも可能になることも指摘されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明によるアンテナモジュールの一部であるアンテナの概略図である。
【図2】アンテナのさまざまな散乱パラメタの経過を示す図である。
【図3】アンテナモジュールのブロック図である。
【図4】第1の周波数帯域でのアンテナモジュールの散乱パラメタの経過を示す図である。
【図5】第2の周波数帯域でのアンテナモジュールの散乱パラメタの経過を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナモジュール、特に高周波及びマイクロ波領域用のものにおいて、少なくとも第1の端子及び第2の端子を持つ少なくとも1つのアンテナと、前記アンテナの前記第1及び第2の端子にそれぞれ接続される少なくとも第1の分岐及び第2の分岐へ、前記アンテナに対するHF接続を分割する回路構成とを有するアンテナモジュール。
【請求項2】
前記回路構成は、前記第1及び第2の分岐へ前記HF接続に存在するHFパワーを分割するパワースプリッタを持つ、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項3】
前記存在するHFパワーは、前記パワースプリッタを用いて、約100対0又は約50対50の割合で選択的に分割されることができる、請求項2に記載のアンテナモジュール。
【請求項4】
前記第1及び第2の分岐に与えられる前記HF信号間の位相シフトを作り出す位相シフタが、前記分岐の1つにおいて接続されることができる、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項5】
前記アンテナは、少なくとも1つのレゾナントな第1のメタライズ構造体を備えるセラミック基板を持つ、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項6】
前記アンテナは、前記第1の端子を前記第1のメタライズ構造体に容量的に結合させる第2のメタライズ構造体を持つ、請求項5に記載のアンテナモジュール。
【請求項7】
前記アンテナは、前記第2の端子を前記第1のメタライズ構造体に容量的に結合させる第3のメタライズ構造体を持つ、請求項5に記載のアンテナモジュール。
【請求項8】
前記第1の端子と前記第2の端子との間のアイソレーションが約 5 dBである、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項9】
前記アンテナは、少なくとも1つのレゾナントなプリントされた線構造体の形式で作り出され、前記回路装置と共に回路基板に適用される、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のアンテナモジュールを有し、特に電子部品の表面実装のためのプリント回路基板。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかに記載のアンテナモジュールを有する移動体通信デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−504701(P2007−504701A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524500(P2006−524500)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051531
【国際公開番号】WO2005/022685
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】