説明

高周波増幅器のレベル調整回路及び高周波増幅器のレベル制御方法

【課題】積分器を使用することなく変調状態での出力信号のレベル検出を可能にして、レベル調整の収束時間が変調方式に依存しないようにした高周波増幅器のレベル調整回路を提供すること。
【解決手段】比較器120は、変調信号出力を取り出すサンプル回路113の出力信号のレベルと、外部への出力信号を取り出すサンプル回路119の出力信号のレベルとを比較し、外部に送出する出力信号のレベルを適正化するために過不足している分の信号レベルを、ホールド回路115に伝達する。ホールド回路115は、比較器115から伝達された前記過不足信号レベルが所定の値以下の微小レベルか否かを判断し、所定の値以下の微小レベルであれば無視するが、所定の値以下の微小レベルでなければ、前記過不足信号レベルを現時点の出力信号レベルに加減算して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高周波増幅器のレベル調整回路及び高周波増幅器のレベル制御方法に係り、特に、出力レベルの収束時間が変調方式に依存しないようにした高周波増幅器のレベル調整回路及び高周波増幅器のレベル制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高周波増幅器のレベル調整回路としては、例えば図6に例示するようなものがある。
図6に示す従来の高周波増幅器のレベル調整回路は、変調状態での高周波入力信号を可変ゲインで増幅して出力する可変ゲインアンプ901(レベル調整対象の増幅器)と、可変ゲインアンプ901が出力する高周波入力信号を外部に出力可能なパワーに変換するアンプ902と、可変ゲインアンプ901が出力する高周波入力信号を外部に出力すると共に、その一部を分岐出力するカプラ903と、カプラ903の分岐出力を取り出して出力する検出器904と、検出器904が出力する変調状態での出力信号のレベルを検出する積分器905と、出力信号の基準値906と、積分器905の出力と基準値906とを比較し、その差となる信号値を出力する比較器907と、比較器907の出力に時定数を持たせた信号を可変ゲインアンプ901のゲイン調整信号として出力するLPF(Low-Pass filter)908と、を備える。
【0003】
この従来の高周波増幅器のレベル調整回路は、積分器905が、可変ゲインアンプ901の変調状態での出力信号のレベルを検出し、比較器907において、当該検出された出力信号のレベルと、所望の出力信号のレベルとの差を出力して、LPF908を介して可変ゲインアンプ901に帰還することにより、この差が無くなるように可変ゲインアンプ901のゲインを増減させるものである。なお、LPF908は、比較器907の出力によって可変ゲインアンプ901が過剰に反応しないように時定数を持たせるものである。
【0004】
なお、この分野の先行技術として、例えば特許文献1には、自動レベル制御装置が、ベースバンド変調信号であるI,Qの各デジタル信号で変調された無線変調信号を演算処理部へ出力し、演算処理部が、この無線変調信号の振幅値データを比較信号として用いる技術が開示されている。
また、特許文献2には、受信入力の包絡線の瞬時値を所定周期で検出し、所定周期でサンプリングする技術、即ち、受信入力の包絡線の瞬時値を所定周期で検出し、受信信号の短区間又は長区間平均値と入力IF(Intermediate Frequency)信号との差を求め、この差と閾値とを比較し、サンプルホールドして、ゲイン制御を行う技術を開示している。
また、特許文献3には、自動利得制御回路を有した増幅器において、増幅器出力がサンプルホールド回路入力に供給され、映像IF信号のサンプリングがアンダーサンプリングされる技術を開示している。
【0005】
さらに、特許文献4には、自動電力制御装置において、送信波開始時、送信波の立ち上がり時に定常状態よりもサンプリング周期を短くし、定常状態ではサンプリング周期を遅くする技術、即ち、進行波検出回路の出力信号をサンプリングするためのサンプルホールド回路のサンプリング周期を、送信波開始時や周波数変更時の送信波立ち上がり時において、定常状態よりも早くする(短くする)技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−349738号公報
【特許文献2】特開2006−197654号公報
【特許文献3】特開平09−009101号公報
【特許文献4】特開平09−307601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記背景技術で述べた従来の高周波増幅器のレベル調整回路にあっては、検出器904が出力する変調状態での出力信号のレベルを検出する積分器905の出力信号を、各変調方式によってデータレート以上の時間で積分することで出力信号のレベルを判断していたため、変調方式毎にレベル調整に要する処理時間が異なったものになってしまうといった問題点を有していた。ここで、ループゲインを上げることによりレベル調整に要する時間を短くしようとすると、微小なレベル変動にも応答し、スプリアスを発生させることになる。このようなスプリアスは、高周波信号を増幅する増幅器の場合は特に発生し易い。
また、上記の問題点に関連したより根本的な問題点は、出力信号が変調波であるため、積分器905にて積分しないと正確なレベルを測定できないので、ゲイン調整に時間遅れが生じるということにあった。
また、変調方式毎に積分器905の積分時間を設定するため、新たに変調方式を追加することが容易にできないという問題点もあった。
【0008】
なお、前述の特許文献1〜4に示す各先行技術は、周知の技術要素においてのみ、本特許の一部の構成要素と同じ機能を有するものに過ぎない。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、積分器を使用することなく変調状態での出力信号のレベル検出を可能にして、レベル調整の収束時間が変調方式に依存しないようにした高周波増幅器のレベル調整回路を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、積分器を使用することなく変調状態での出力信号のレベル検出を可能にして、レベル調整を高速に行えるようにすることにある。
本発明の他の目的は、増幅回路の出力信号のレベルと基準値とのレベル差が所定値以下の場合は、レベル調整を省略することを可能にして、スプリアスの発生を低減できる高周波増幅器のレベル調整回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る高周波増幅器のレベル調整回路は、高周波出力信号を増幅する可変利得増幅回路を備え、前記可変利得増幅回路の利得を制御することによって前記高周波出力信号の出力レベルを調整する高周波増幅器のレベル調整回路であって、前記可変利得増幅回路に入力される前記高周波出力信号を変調した際に使用された変調信号の分岐成分の信号を取得してサンプリングする第1のサンプリング手段と、前記可変利得増幅回路から出力される前記高周波出力信号の分岐成分の信号を取得してサンプリングする第2のサンプリング手段と、前記可変利得増幅回路の利得を制御する利得制御パラメータとして、前記第1のサンプリング手段から供給される第1の信号の信号レベルと前記第2のサンプリング手段から供給される第2の信号の信号レベルとのレベル差を示す差信号を使用する利得制御手段と、を備えたことを特徴とする高周波増幅器のレベル調整回路を提供するものである。
【0010】
また、本発明に係る高周波増幅器のレベル調整回路は、高周波出力信号を増幅する可変利得増幅回路を備え、前記可変利得増幅回路の利得を制御することによって前記高周波出力信号の出力レベルを調整する高周波増幅器のレベル調整回路であって、前記可変利得増幅回路に入力される前記高周波出力信号を変調した際に使用された変調信号の分岐成分の信号を取得すると共に該信号から第1の振幅情報を抽出する振幅情報抽出手段と、前記可変利得増幅回路から出力される前記高周波出力信号の分岐成分の信号を取得してアンダーサンプリングして第2の振幅情報を抽出するアンダーサンプリング手段と、前記可変利得増幅回路の利得を制御する利得制御パラメータとして、前記振幅情報抽出手段から供給される第1の振幅情報と前記アンダーサンプリング手段から供給される第2の振幅情報とから算出されるレベル差を示す信号を使用する利得制御手段と、を備えたことを特徴とする高周波増幅器のレベル調整回路を提供するものである。
【0011】
さらに、本発明に係る高周波増幅器は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のレベル調整回路を備えた高周波増幅器であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の高周波増幅器のレベル調整回路及び高周波増幅器によれば、従来のレベル調整回路が必要としていた積分器を使用することなく、変調状態での出力信号のレベル検出を可能にすると共に、高周波増幅器の出力信号のレベルと基準値との微小なレベル差は無視するので、レベル調整の収束時間が変調方式に依存せずに高速となり、かつスプリアスの発生を低減できる高周波増幅器のレベル調整回路を提供することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る高周波増幅器のレベル調整回路を含む高周波回路の全体構成を示す回路構成図である。
【図2】本実施形態に係る高周波増幅器のレベル調整回路の比較器120を主体とする部分の詳細回路構成を示す回路構成図である。
【図3】本実施形態に係る高周波増幅器におけるレベル調整回路の、ホールド回路115の詳細な回路構成を示す回路構成図である。
【図4】本実施形態に係る高周波増幅器のレベル調整回路の動作特性を説明するためのグラフ図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る高周波増幅器のレベル調整回路を含む高周波回路の全体構成を示す回路構成図である。
【図6】従来の高周波増幅器のレベル調整回路の全体構成を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の高周波増幅器のレベル調整回路は、どのような変調信号であっても、可変ゲインアンプの入力変調信号(基準値)と外部に送出する出力信号との瞬間的な差信号を基にして両者のレベル差を判断することにより、可変ゲインアンプの出力変調信号を積分する積分器の設置を不要にしている。また、このレベル差が所定の値以下の微小変化か否かを判断し、微細なレベル調整は極力行わないように構成することで、スプリアスの発生を低減させている。
なお、原理的には、可変ゲインアンプの出力として外部に送出される出力信号のレベルは、可変ゲインアンプの入力変調信号のレベルが主体であり、搬送される信号のレベルは殆ど無視できることから、入力変調信号のレベルを基準レベルにとり、外部に送出される出力信号のレベルを、この入力変調信号のレベルと比較することで、出力信号のレベル調整を行うことを可能にしている。
【0015】
以下、本発明の高周波増幅器のレベル調整回路の最良の実施形態について、〔第1の実施形態〕、〔第2の実施形態〕の順に図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る高周波増幅器のレベル調整回路を含む高周波回路の全体構成を示す回路構成図である。
同図に示す高周波回路は、変調回路部分を含み、よって、例えば送信機等を構成する基本的な回路である。
【0016】
同図において、本実施形態の高周波増幅器のレベル調整回路を含む高周波回路は、レベル調整回路として、変調状態での高周波入力信号を可変ゲインで増幅して出力する可変ゲインアンプ103(レベル調整対象の増幅器)と、可変ゲインアンプ103が出力する高周波入力信号を外部に出力可能なパワーに変換するパワーアンプ104と、可変ゲインアンプ103が出力する高周波入力信号を外部に出力すると共に、その一部を分岐出力するカプラ105と、カプラ105の分岐出力を取り出して適当なレベル値に減衰する減衰器117と、減衰器117の出力を検出する検出器118と、を備え、
【0017】
さらに、検出器118が出力する変調状態での出力信号のレベルをサンプリングするサンプル回路119と、サンプル回路119の出力と後述するサンプル回路113の出力とを比較し、その差となる信号値を出力する比較器120と、比較器120の出力をホールドするホールド回路115と、ホールド回路115が保持すべき初期値116と、ホールド回路115がホールドする信号を可変ゲインアンプ901のゲイン調整信号として出力するLPF114(Low-Pass filter)と、後述する変調回路部分が備えるIF信号生成部110の出力を分岐する分配器111と、分配器111の出力を検出する検出器112と、検出器112のレベルをサンプリングするサンプル回路113と、を備える。
【0018】
また、変調回路部分として、本回路の外部に出力すべきデータ信号を出力するLOCAL信号出力部101と、LOCAL信号出力部101の出力信号と後述するIF(Intermediate Frequency)信号とを混合して変調するMIXER102(混合回路)と、IF信号を生成するIF信号生成部110と、IF信号生成部110の出力の分岐出力をMIXER102に送出する分配器111と、を備える。
図1に示す変調回路部分や増幅器部分は周知の回路要素を含む周知の構成であり、よって、この部分に既製品を使用しても構わない。
【0019】
以下、本実施形態の高周波増幅器のレベル調整回路が有する各構成要素の機能について説明する。
図1において、サンプル回路113は検出器112の出力を、また、サンプル回路119は検出器118の出力を、一定間隔のサンプリング周期で、それぞれサンプリングするが、このサンプリング周期は、送信起動時と収束後とで変えることができる。
初期値116は、ホールド回路115が保持して出力すべき信号の初期値としてのレベル値である。
減衰器117は、高周波アンプ部(即ち、可変ゲインアンプ103及びパワーアンプ104)が所望の出力レベルで出力した時に、カプラ105にて分配される信号のレベルが、検出器112に入力されるIF信号のレベルと同じになるように減衰する(即ち、このような減衰機能を有するように事前に調整されている)。
【0020】
比較器120は、サンプル回路113の出力信号のレベル(基準値)と、サンプル回路119の出力信号のレベルとを比較し、外部に送出する出力信号レベルの適正化を図るには、可変ゲインアンプのゲインをどの程度調整すれば良いかを判断し、所望の出力レベルを得るために過不足している分の信号レベル(過不足信号レベル)を、ホールド回路115に伝達する。
ホールド回路115は、比較器115から伝達された前記過不足信号レベルが所定のレベル値以下の微小レベルか否かを判断し、所定のレベル値以下の微小レベルであれば無視するが、所定のレベル値以下の微小レベルでなければ、前記過不足信号レベルを現時点の出力信号のレベルに加減算して出力する。
検出器112は、分配器111にて分配されたIF信号生成部110のIF信号レベルを検出する。
【0021】
図2は、本実施形態に係る高周波増幅器のレベル調整回路の比較器120を主体とする部分の詳細回路構成を示す回路構成図である。
図2に示すとおり、比較器120の比較部121は、サンプル回路113でサンプリングされた検出器112の出力信号と、サンプル回路119でサンプリングされた検出器118の出力信号との間に存在するレベル差を算出する。比較器120のデータ変換部122は比較部121が出力するレベル差の信号出力を、可変ゲインアンプ103のV−dB特性に合うようにデータ変換し、補正値として出力する。
【0022】
図3は、本実施形態に係る高周波増幅器におけるレベル調整回路の、ホールド回路115の詳細な回路構成を示す回路構成図である。
図3に示すとおり、比較器1151は補正値(即ち、比較器120のデータ変換部122の出力信号)が微小レベルか否かを基準値との比較により判断し、補正値が基準値と比べて微小な場合は零レベルの信号を出力し、その結果、出力部1152のデータは、ホールド回路1153により保持される。補正値が基準値と比べて所定のレベル値以下の微小ではない場合は、出力部1152のデータを更新するために、当該補正値と共に、ホールド回路1153用の出力データ保持パルス及び出力部1152のデータ更新パルスを出力し、その結果、出力部1152のデータは更新される。即ち、ホールド回路1153は、比較器1151からの補正値が有る場合は出力部1152が現在出力しているデータをデータ保持パルスにてラッチしているが、その後、出力部1152にて、比較器1151からの補正値と、前記ラッチしたデータ(または初期値)とを、データ更新パルスにて加減算して、出力する。
【0023】
図4は、本実施形態に係る高周波増幅器のレベル調整回路の動作特性を説明するためのグラフ図である。
以下、図4を参照して、本実施形態の高周波増幅器のレベル調整回路の動作特性を説明する。
同図に示すように、サンプル回路113によって検出器112の出力(基準値)がサンプルポイントにおいてサンプリングされ、また、サンプル回路119によって検出器118の出力がサンプルポイントにおいてサンプリングされて、それぞれ比較器120に送出されると、比較器120は、その瞬間のレベル差を可変ゲインアンプ103のゲインに変換し、ホールド回路115にて不足レベル分を上乗せしたレベル調整用の補正信号を、LPF114を介して可変ゲインアンプ103に供給する。これによって高周波増幅器部の出力信号が所望のレベルに調整される。
【0024】
本実施形態に係る高周波増幅器のレベル調整機能は、IF信号の信号レベルを基準として、所望の出力信号が得られた場合、カプラ105によって取り出された信号が、このIF信号レベルと同じになるようにしているため、どのような変調信号に対しても瞬時の信号レベル差を比較することによって高速レベル調整を行うことが可能となる効果がある。
また、ホールド回路115は、比較器115から伝達された前記過不足信号レベルが所定の値以下の微小レベルか否かを判断し、所定の値以下の微小レベルであれば無視するので、スプリアスの発生を低減させることができる効果がある。
さらに、入力信号が検出器118のダイナミックレンジ内に存在する限り、瞬時の比較が可能であるので、変調方式に依存することなくレベル調整に要する時間を同じにできる効果がある。
〔第2の実施形態〕
【0025】
本発明の第2の実施形態に係る高周波増幅器のレベル調整回路は、その基本的構成は本発明の第1の実施形態に係る高周波増幅器のレベル調整回路に準じるものであるが、検出器112,118に相当する回路構成についてさらに工夫している。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る高周波増幅器のレベル調整回路を含む高周波回路の全体構成を示す回路構成図である。
同図に示す高周波回路は、変調回路部分を含み、よって、例えば送信機等を構成する基本的な回路である。
同図において、本実施形態の高周波増幅器のレベル調整回路を含む高周波回路は、レベル調整回路として、変調状態での高周波入力信号を可変ゲインで増幅して出力する可変ゲインアンプ103(レベル調整対象の増幅器)と、可変ゲインアンプ103が出力する高周波入力信号を外部に出力可能なパワーに変換するパワーアンプ104と、可変ゲインアンプ103が出力する高周波入力信号を外部に出力すると共に、その一部を分岐出力するカプラ105と、カプラ105の分岐出力を取り出して適当なレベル値に減衰する減衰器117と、減衰器117の出力をアンダーサンプリングするアンダーサンプリング部214と、を備え、
【0026】
さらに、検出器118が出力する変調状態での出力信号のレベルをサンプリングするサンプル回路119と、サンプル回路119の出力と後述する振幅成分抽出部213の出力とを比較し、その差となる信号値を出力する比較器120と、比較器120の出力をホールドするホールド回路115と、ホールド回路115が保持すべき初期値116と、ホールド回路115がホールドする信号を可変ゲインアンプ901のゲイン調整信号として出力するLPF114と、後述する直交変調部212に入力される変調用信号(I_DATA及びQ_DATA)の振幅成分を抽出する振幅成分抽出部213と、を備える。
【0027】
また、変調回路部分として、直交変調部212と、本回路の外部に出力すべきデータ信号を出力するLOCAL信号出力部101と、LOCAL信号出力部101の出力信号と直交変調部212の出力信号とを混合して変調するMIXER102(混合回路)と、直交変調部212に入力される変調用信号(ベースバンド変調信号のI_DATA及びQ_DATA)を出力するI_DATA210及びQ_DATA211と、を備える。
図5に示す変調回路部分や増幅器部分は周知の回路要素を含む周知の構成であり、よって、この部分に既製品を使用しても構わない。また、直交変調部212は、直交振幅変調器で構成することが好ましい。
【0028】
以下、本実施形態の高周波増幅器のレベル調整回路が有する各構成要素の機能について説明するが、第1の実施の形態と重複する構成要素については、説明を省略する。
振幅成分抽出部213は、I_DATA210及びQ_DATA211の各信号を入力し、これらから振幅情報だけを抽出して比較器120に送出する。
アンダーサンプリング部214は、カプラ出力信号を減衰させた減衰器117の出力信号をアンダーサンプリングし、その振幅情報だけを抽出して、サンプル回路119を介して比較器120に送出する。
【0029】
なお、比較器120及びホールド回路115では、抽出された各振幅情報を基にして、これら信号間のレベル差が所定の値以下の微小レベルか否かを判断し、所定の値以下の微小レベルでなければ、ホールド回路115にて保持されている現在のデータに当該レベル差を加減算した結果を出力する。この出力は、次に出力信号レベルを分配して前述の各振幅情報を抽出し、かつ比較器120で比較した結果が零レベルになると予測される信号出力である。
【0030】
本実施形態に係る高周波増幅器のレベル調整回路は、外部に出力する出力信号と、変調用信号との各振幅情報を抽出し、比較器120において両信号出力における瞬時の振幅(瞬時値)を比較するので、出力信号レベルのレベル調整が一層高速に実行できるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、高周波増幅器のレベル調整回路の構築に適用可能であり、特に、出力レベルの収束時間が変調方式に依存しないようにした高周波増幅器のレベル調整回路の構築に好適である。
【符号の説明】
【0032】
101 LOCAL信号出力部
102 MIXER(混合回路)
103 可変ゲインアンプ
104 パワーアンプ
105 カプラ
110 IF(Intermediate Frequency)信号生成部
111 分配器
112,118 検出器
113,119 サンプル回路
114 LPF(Low-Pass filter)
115 ホールド回路
117 減衰器
120 比較器
212 直交変調部
213 振幅成分抽出部
214 アンダーサンプリング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波出力信号を増幅する可変利得増幅回路を備え、前記可変利得増幅回路の利得を制御することによって前記高周波出力信号の出力レベルを調整する高周波増幅器のレベル調整回路であって、
前記可変利得増幅回路に入力される前記高周波出力信号を変調した際に使用された変調信号の分岐成分の信号を取得してサンプリングする第1のサンプリング手段と、
前記可変利得増幅回路から出力される前記高周波出力信号の分岐成分の信号を取得してサンプリングする第2のサンプリング手段と、
前記可変利得増幅回路の利得を制御する利得制御パラメータとして、前記第1のサンプリング手段から供給される第1の信号の信号レベルと前記第2のサンプリング手段から供給される第2の信号の信号レベルとのレベル差を示す差信号を使用する利得制御手段と、
を備えたことを特徴とする高周波増幅器のレベル調整回路。
【請求項2】
前記利得制御手段が前記利得制御パラメータとして使用する前記差信号は、ホールド回路でホールドされたものであることを特徴とする請求項1記載の高周波増幅器のレベル調整回路。
【請求項3】
前記ホールド回路は、前記差信号が示す前記レベル差が所定のレベル値以下である場合は、前記差信号を利得制御パラメータとして出力しないことを特徴とする請求項2記載の高周波増幅器のレベル調整回路。
【請求項4】
高周波出力信号を増幅する可変利得増幅回路を備え、前記可変利得増幅回路の利得を制御することによって前記高周波出力信号の出力レベルを調整する高周波増幅器のレベル調整回路であって、
前記可変利得増幅回路に入力される前記高周波出力信号を変調した際に使用された変調信号の分岐成分の信号を取得すると共に該信号から第1の振幅情報を抽出する振幅情報抽出手段と、
前記可変利得増幅回路から出力される前記高周波出力信号の分岐成分の信号を取得してアンダーサンプリングして第2の振幅情報を抽出するアンダーサンプリング手段と、
前記可変利得増幅回路の利得を制御する利得制御パラメータとして、
前記振幅情報抽出手段から供給される第1の振幅情報と前記アンダーサンプリング手段から供給される第2の振幅情報とから算出されるレベル差を示す信号を使用する利得制御手段と、
を備えたことを特徴とする高周波増幅器のレベル調整回路。
【請求項5】
前記利得制御手段が前記利得制御パラメータとして使用する前記差信号は、ホールド回路でホールドされたものであることを特徴とする請求項4記載の高周波増幅器のレベル調整回路。
【請求項6】
前記ホールド回路は、前記差信号が示す前記レベル差が所定のレベル値以下である場合は、前記差信号を利得制御パラメータとして出力しないことを特徴とする請求項5記載の高周波増幅器のレベル調整回路。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のレベル調整回路を備えた高周波増幅器。
【請求項8】
高周波出力信号を増幅する可変利得増幅回路を備え、前記可変利得増幅回路の利得を制御することによって前記高周波出力信号の出力レベルを調整する高周波増幅器のレベル制御方法であって、
前記可変利得増幅回路に入力される前記高周波出力信号を変調した際に使用された変調信号の分岐成分の信号を取得してサンプリングする第1のサンプリングステップと、
前記可変利得増幅回路から出力される前記高周波出力信号の分岐成分の信号を取得してサンプリングする第2のサンプリングステップと、
前記可変利得増幅回路の利得を制御する利得制御パラメータとして、前記第1のサンプリングステップを介して供給される第1の信号の信号レベルと前記第2のサンプリングステップを介して供給される第2の信号の信号レベルとのレベル差を示す差信号を使用する利得制御ステップと、
を有することを特徴とする高周波増幅器のレベル制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−187274(P2010−187274A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31044(P2009−31044)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(599161890)NECネットワーク・センサ株式会社 (71)
【Fターム(参考)】