高周波送受信器およびそれを具備するレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶
【課題】 送信用高周波信号をスイッチングする過渡的な状態においてノイズを含む不要な中間周波信号が受信系に出力されるのを良好に遮断できるようにすること。
【解決手段】 高周波発振器1と分岐器2とRFスイッチ3とハイブリッド4と送受信アンテナ5とミキサー6とを設けた高周波送受信器において、ミキサー6の出力端に、開状態で中間周波信号を遮断し、送信用高周波信号RFtが非出力状態で安定したときに閉状態となって中間周波信号を通過させるIFスイッチ7を設けた高周波送受信器である。ミキサー6に混入した送信用高周波信号RFtによるノイズを含む中間周波信号がミキサー6の後段に漏れることがなく、所望の中間周波信号を出力させることができる。
【解決手段】 高周波発振器1と分岐器2とRFスイッチ3とハイブリッド4と送受信アンテナ5とミキサー6とを設けた高周波送受信器において、ミキサー6の出力端に、開状態で中間周波信号を遮断し、送信用高周波信号RFtが非出力状態で安定したときに閉状態となって中間周波信号を通過させるIFスイッチ7を設けた高周波送受信器である。ミキサー6に混入した送信用高周波信号RFtによるノイズを含む中間周波信号がミキサー6の後段に漏れることがなく、所望の中間周波信号を出力させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波レーダモジュールやミリ波無線通信機等に使用される高周波送受信器に関するものであり、送信用高周波信号の一部が受信側に漏洩しそれに対応するノイズとしての中間周波信号が受信系に出力されるのを遮断できる開閉器を有する高周波送受信器およびそれを具備するレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ミリ波レーダモジュールやミリ波無線通信機等への応用が期待される高周波送受信器として、例えば、特許文献1に開示されているようなものが知られている。
【0003】
しかしながら、このような高周波送受信器では、送信用の高周波信号の一部が高周波送受信器の中間周波回路において送信用高周波信号の一部が受信側に漏洩しそれに対応するノイズとしての中間周波信号が受信系に不要な信号として出力され、これが受信性能に悪影響を及ぼすという問題点があった。
【0004】
本発明者は既にこの問題点に対する解決策を提案している(特許文献2を参照。)。その構成の例を、図10および図11にそれぞれ平面図で示す。なお、これらの構成の例において用いられる非放射性誘電体線路の基本的な構成は図9に部分破断斜視図で示すようなものであり、平板導体41,42間に誘電体線路43が平行に挟まれた構成である。
【0005】
図10に示す例の高周波送受信器は、送信アンテナと受信アンテナとが一体化されたものの例であり、ミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置された平行平板導体51間に、第1の誘電体線路53に付設され、高周波ダイオードから出力されたミリ波信号を周波数変調するとともにミリ波信号として第1の誘電体線路53を伝搬させるミリ波信号発振部52と、第1の誘電体線路53の途中に介在し、ミリ波信号をパルス化して送信用のミリ波信号として第1の誘電体線路53から出力させるパルス変調器(図示せず)と、第1の誘電体線路53に一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは第1の誘電体線路53に一端が接合されて、ミリ波信号の一部をミキサー59側へ伝搬させる第2の誘電体線路58と、平行平板導体51に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置され、かつそれぞれミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部54aと第2の接続部54bと第3の接続部54cとを有し、一つの接続部から入力されたミリ波信号をフェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力するサーキュレータ54であって、第1の誘電体線路53のミリ波信号の出力端に第1の接続部54aが接続されるサーキュレータ54と、サーキュレータ54の第2の接続部54bに接続され、ミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送受信アンテナ56を有する第3の誘電体線路55と、サーキュレータ54の第3の接続部54cに接続され、送受信アンテナ56で受信されて第3の誘電体線路55を伝搬し第2の接続部54bを通って第3の接続部54cから出力された受信波をミキサー59へ伝搬させる第4の誘電体線路57と、第2の誘電体線路58の中途と第4の誘電体線路57の中途とを電磁結合するように近接させるかまたは接合させて成り、ミリ波信号の一部と受信波とを混合させて中間周波信号を発生させるミキサー59と、を設けた高周波送受信器である。そして、この例において、ミキサー59の出力端に、パルス変調された送信用のミリ波信号がパルス変調器から出力されたときに出力端を開状態とするスイッチング制御部(図示せず)を設けることにより、パルス変調器のパルス化動作を開始するためのパルス化信号がパルス変調器に入力されるのとほとんど同時に、不要信号がミキサー59よりも後段の受信系に出力されるのを防ぐことができる。
【0006】
図11に示す例の高周波送受信器は、送信アンテナと受信アンテナとを独立させたものの例であり、ミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置された平行平板導体61間に、第1の誘電体線路63に付設され、高周波ダイオードから出力された高周波信号を周波数変調するとともにミリ波信号として第1の誘電体線路63を伝搬させるミリ波信号発振部62と、第1の誘電体線路63の途中に介在し、ミリ波信号をパルス化して送信用のミリ波信号として第1の誘電体線路63から出力させるパルス変調器(図示せず)と、第1の誘電体線路63に一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは第1の誘電体線路63に一端が接合されて、ミリ波信号の一部をミキサー71側へ伝搬させる第2の誘電体線路68と、平行平板導体61に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置され、かつそれぞれミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部64aと第2の接続部64bと第3の接続部64cとを有し、一つの接続部から入力されたミリ波信号をフェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力するサーキュレータ64であって、第1の誘電体線路63のミリ波信号の出力端に第1の接続部64aが接続されるサーキュレータ64と、サーキュレータ64の第2の接続部64bに接続され、ミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送信アンテナ66を有する第3の誘電体線路65と、先端部に受信アンテナ70、他端部にミキサー71が設けられた第4の誘電体線路69と、サーキュレータ64の第3の接続部64cに接続され、送信アンテナ66で受信混入したミリ波信号を減衰させる、無反射終端部67aが先端に設けられた第5の誘電体線路67と、第2の誘電体線路68の中途と第4の誘電体線路69の中途とを電磁結合するように近接させるかまたは接合させて成り、ミリ波信号の一部と受信波とを混合させて中間周波信号を発生させるミキサー71と、を設けた高周波送受信器である。そして、この例において、ミキサー71の出力端に、パルス変調された送信用のミリ波信号がパルス変調器から出力されたときに出力端を開状態とするスイッチング制御部(図示せず)を設けることにより、パルス変調器のパルス化動作を開始するためのパルス化信号がパルス変調器に入力されるのとほとんど同時に、送信アンテナ66から受信アンテナ70へ直接混入した不要信号がミキサー71よりも後段の受信系に出力されるのを防ぐことができる。
【0007】
次に、図8は図10に示す高周波送受信器をミリ波レーダとして用いたときの各部の構成をブロック回路図で示したものである。
【0008】
図8において、111は、ガンダイオードおよびバラクターダイオードを具備したVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)であり、その変調信号入力用のIN−2端子に信号が入力されて動作する。このVCO111の出力信号を、IN−1端子に入力されたパルス化信号をパルス変調器112に入力することにより、パルス変調器112によってパルス変調させる。このパルス変調器112は、図10においては、第1の誘電体線路53の途中に介在するものであり、図12にその構成を斜視図で示すようなスイッチ(RFスイッチ)である。
【0009】
図12に示すパルス変調器の構成は、配線基板88の一主面にチョーク型バイアス供給線路90を形成して、その中途に形成された接続用の電極81,81間に、半田実装されたビームリードタイプのPINダイオードやショットキーバリアダイオード80を設けたスイッチである。このようなスイッチが、PINダイオードやショットキーバリアダイオード80が第1の誘電体線路53の途中の端面間に、そのバイアス印加電圧方向が横方向になるように設置されて、パルス変調器112として使用される。
【0010】
113は、送信時にはミリ波信号をアンテナ114側へ伝送させ、受信時には受信波をミキサー115側へ伝送させるサーキュレータ、114はミリ波信号の送受信用のアンテナであり、アンテナ114は、サーキュレータ113とは金属導波管または金属導波管に誘電体を充填した誘電体導波管等を介して接続された、例えばホーンアンテナ等である。また、115は、VCO111から出力されたミリ波信号とアンテナ114で受信した受信信号とを混合することにより、目標物までの距離等を検出するための中間周波信号を出力するミキサーである。
【0011】
116は、ミキサー115から出力された中間周波信号を遮断したり通過させたりする開閉器としてのスイッチである。また、119はスイッチ116の開閉(オン−オフ)のタイミングを制御する制御部である。これらスイッチ116および制御部119からスイッチング制御部が構成される。
【0012】
制御部119は、パルス変調器112と連動するようにIN−1端子のパルス化信号が入力されて、パルス変調器112でパルス変調された送信用のミリ波信号が、NRDガイドと誘電体導波管との接続部で反射されたりサーキュレータ113から漏れてミキサー115を介して不要信号となって出力されたりして増幅器118に入力される前に、スイッチ116により遮断するようにその開閉のタイミングを制御する。
【0013】
なお、117はスイッチ116と増幅器118とを交流結合するためのコンデンサである。
【0014】
なお、図10に示す高周波送受信器では、送受一体のアンテナを構成するための構成要素としてサーキュレータ54を用いる例を示しているが、そのようなサーキュレータ54に替わるものとしては、ラットレース型ハイブリッド(例えば、特許文献4を参照。)またはブランチライン型ハイブリッド(例えば、特許文献5を参照。)があることが広く知られている。
【0015】
以上の構成により、パルス変調された送信用のミリ波信号がミキサー115に混入して後段の受信系に漏れないように遮断できるため、ミリ波レーダシステムの探知精度を高めることが可能となる。
【0016】
また、特許文献3には、上記のような高周波送受信器においてVCOに送受切替えスイッチを接続した例も開示されている。このような例では、VCOで発生させたミリ波信号を送受切替えスイッチで送信側に送信用ミリ波信号として出力するかまたは受信側にローカル信号として出力するかをスイッチングして、同様にパルス化されたミリ波信号を送信用として出力することができる。
【特許文献1】特開2000−258525号公報
【特許文献2】特開2003−198421号公報
【特許文献3】特開2001−264426号公報
【特許文献4】特開2002−100910号公報
【特許文献5】特開2003−179414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特許文献2において提案した構成においても、本発明者らがさらに高周波送受信器の性能を高めるべく鋭意検討を重ねた結果、次に述べるようなさらに改善が望まれる問題点を見いだした。
【0018】
まず、そのような問題点の一つとして、スイッチ116の少なくとも閉(オン)のタイミングを緻密に制御する必要があるという点があった。
【0019】
一般に、高周波ダイオードを用いたパルス変調器112は、ゼロバイアス容量等の高周波ダイオードに固有の特性を有しているため、駆動用に理想的なパルス信号を入力したとしても、変調電流にリンギングノイズ等の歪みが大なり小なり生じることがある。また、駆動用のパルス信号自身にも大なり小なり同様の歪みが存在することがある。これらのため、パルス変調器112から出力されるミリ波信号の出力強度が信号の1周期内において定常状態に安定するまでに、ある一定時間が必要である。その結果、IN−1端子の信号を開(オフ)状態にして、ミリ波信号の出力を開(オフ)状態にした後、スイッチ116を閉(オン)状態にすると、そのタイミングによっては、まだミリ波信号の出力強度の変動が残っていて、これが不要な信号(ノイズ)としてミキサー115に出力されてしまい、本来検出すべき信号と混信して、レーダ探知性能を悪化させる場合があるという問題点があった。
【0020】
本発明は以上のような改善が望まれる問題点を解決すべく案出されたものであり、その目的は、送信用高周波信号の一部が受信側に漏洩し、その送信用高周波信号のスイッチング等に起因するノイズとしての中間周波信号が受信系に出力されるのを遮断できる開閉器を有した高周波送受信器において、送信用高周波信号をスイッチングする過渡的な状態においてもそのようなノイズとしての中間周波信号を確実に遮断することができる高周波送受信器を提供することにある。
【0021】
また、本発明の他の目的は、上記本発明の高周波送受信器を用いた高性能なレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、第1,第2および第3の端子を有し前記一方の出力端に前記第1の端子が接続された、前記第1の端子から前記第2の端子に前記高周波信号を送信用高周波信号として通過させ、前記第2の端子から前記第3の端子に高周波信号を通過させるハイブリッドと、このハイブリッドの前記第2の端子に接続された送受信アンテナと、前記高周波発振器と前記分岐器との間または前記分岐器と前記ハイブリッドとの間に接続された前記送信用高周波信号を間欠的に通過させるスイッチと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記ハイブリッドの前記第3の端子との間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とするものである。
【0023】
本発明の第2の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された送信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記高周波発振器と前記分岐器との間または前記分岐器と前記送信アンテナとの間に接続された前記送信用高周波信号を間欠的に通過させるスイッチと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とするものである。
【0024】
本発明の第3の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を切り替えて一方の出力端に送信用高周波信号として出力するかまたは他方の出力端にローカル信号として出力する切替えスイッチと、入力端,出力端および入出力端を有し前記一方の出力端に前記入力端が接続された、前記入力端または前記出力端に前記入出力端を切り替えて接続する第2の切替えスイッチと、この第2の切替えスイッチの前記入出力端に接続された送受信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端と前記第2の切替えスイッチの前記出力端との間に接続された、前記他方の出力端に出力されたローカル信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とするものである。
【0025】
本発明の第4の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を切り替えて一方の出力端に送信用高周波信号として出力するかまたは他方の出力端にローカル信号として出力する切替えスイッチと、前記一方の出力端に接続された送信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に出力されたローカル信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明の第1または第2の高周波送受信器は、上記各構成において、前記スイッチは、III−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子が用いられていることを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明の第3または第4の高周波送受信器は、上記各構成において、前記切替えスイッチは、入力された高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端および前記他方の出力端のそれぞれに接続された第1および第2のPINダイオードとを具備しており、これら第1および第2のPINダイオードの少なくとも一方に順方向バイアス電圧を印加するバイアス回路が接続されていることを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明のレーダ装置は、上記本発明の第1乃至第4のいずれかの高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される前記中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを具備することを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明のレーダ装置搭載車両は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするものである。
【0030】
また、本発明のレーダ装置搭載船舶は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明の第1の高周波送受信器によれば、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、第1,第2および第3の端子を有し前記一方の出力端に前記第1の端子が接続された、前記第1の端子から前記第2の端子に前記高周波信号を送信用高周波信号として通過させ、前記第2の端子から前記第3の端子に高周波信号を通過させるハイブリッドと、このハイブリッドの前記第2の端子に接続された送受信アンテナと、前記高周波発振器と前記分岐器との間または前記分岐器と前記ハイブリッドとの間に接続された前記送信用高周波信号を間欠的に通過させるスイッチと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記ハイブリッドの前記第3の端子との間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することから、送信用高周波信号を間欠的に送信する際に、この送信用高周波信号の強度が不安定な時に開閉器が中間周波信号を遮断するように開(オフ)状態となるため、スイッチに入力される開閉信号にパルス波形歪み等のノイズが含まれていて、このノイズが送信用高周波信号に混入し、さらにこのようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部がミキサー側に漏洩したとしても、開閉器が、このようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部に対応する中間周波信号を適切に遮断するように働くので、S/N(信号対ノイズ)比を高くすることができ、受信性能を高くすることができる高周波送受信器となる。
【0032】
本発明の第2の高周波送受信器によれば、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された送信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記高周波発振器と前記分岐器との間または前記分岐器と前記送信アンテナとの間に接続された前記送信用高周波信号を間欠的に通過させるスイッチと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することから、送受別体のアンテナを用いた高周波送受信器においても、送信用高周波信号を間欠的に送信する際に、この送信用高周波信号の強度が不安定な時に開閉器が中間周波信号を遮断するように開(オフ)状態となるため、スイッチに入力される開閉信号にパルス波形歪み等のノイズが含まれていて、このノイズが送信用高周波信号に混入し、さらにこのようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部がミキサー側に漏洩したとしても、開閉器が、このようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部に対応する中間周波信号を適切に遮断するように働くので、S/N(信号対ノイズ)比を高くすることができ、受信性能を高くすることができる高周波送受信器となる。
【0033】
本発明の第3の高周波送受信器によれば、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を切り替えて一方の出力端に送信用高周波信号として出力するかまたは他方の出力端にローカル信号として出力する切替えスイッチと、入力端,出力端および入出力端を有し前記一方の出力端に前記入力端が接続された、前記入力端または前記出力端に前記入出力端を切り替えて接続する第2の切替えスイッチと、この第2の切替えスイッチの前記入出力端に接続された送受信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端と前記第2の切替えスイッチの前記出力端との間に接続された、前記他方の出力端に出力されたローカル信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することから、高周波信号を切替えスイッチにより送信用高周波信号とローカル信号とに切り替えて送信用高周波信号を間欠的に送信する際に、この送信用高周波信号の強度が不安定な時に開閉器が中間周波信号を遮断するように開(オフ)状態となるため、切替えスイッチに入力される開閉信号にパルス波形歪み等のノイズが含まれていて、このノイズが送信用高周波信号に混入し、さらにこのようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部がミキサー側に漏洩したとしても、開閉器が、このようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部に対応する中間周波信号を適切に遮断するように働くので、S/N(信号対ノイズ)比を高くすることができ、受信性能を高くすることができる高周波送受信器となる。
【0034】
本発明の第4の高周波送受信器によれば、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を切り替えて一方の出力端に送信用高周波信号として出力するかまたは他方の出力端にローカル信号として出力する切替えスイッチと、前記一方の出力端に接続された送信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に出力されたローカル信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することから、高周波信号を切替えスイッチにより送信用高周波信号とローカル信号とに切り替えて送信用高周波信号を間欠的に送信する際に、この送信用高周波信号の強度が不安定な時に開閉器が中間周波信号を遮断するように開(オフ)状態となるため、切替えスイッチに入力される開閉信号にパルス波形歪み等のノイズが含まれていて、このノイズが送信用高周波信号に混入し、さらにこのようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部がミキサー側に漏洩したとしても、開閉器が、このようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部に対応する中間周波信号を適切に遮断するように働くので、S/N(信号対ノイズ)比を高くすることができ、受信性能を高くすることができる高周波送受信器となる。
【0035】
また、本発明の第1または第2の高周波送受信器によれば、前記スイッチは、III−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子が用いられているときには、III−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子は、キャリアの移動度が大きくてライフタイムが短いため、スイッチにおいて、この半導体素子に変調電流を流す際にこの変調電流を過渡状態から速やかに定常状態に収束させることができるので、この変調電流に対応するパルス化された送信用高周波信号を速やかに定常状態に収束させることができ、パルス化された送信用高周波信号を出力した後、早いタイミングで開閉器を閉(オン)状態にしても、パルスの立ち上がり直後に発生する不要な信号が混入した送信用高周波信号に対応する中間周波信号がミキサーの後段に出力されることがなくなり、中間周波信号が遮断されることにより送受信することができなくなる時間を減らすことができる高周波送受信器となる。
【0036】
また、本発明の第3または第4の高周波送受信器によれば、前記切替えスイッチは、入力された高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端および前記他方の出力端のそれぞれに接続された第1および第2のPINダイオードとを具備しており、これら第1および第2のPINダイオードの少なくとも一方に順方向バイアス電圧を印加するバイアス回路が接続されているときには、第1および第2のPINダイオードの少なくとも一方が低インピーダンスとなるため、第1および第2のPINダイオードをスイッチングしても高周波信号の入力側から見たインピーダンスを常に低くかつ安定にすることができるので、高周波発振器の負荷変動を抑制し、高周波信号の発振周波数を安定にすることができるとともに、このような構成であるために送信用高周波信号が送信されると同時にローカル信号がミキサーに入力されてノイズとしての中間周波信号を発生させてしまうことがあってもノイズとしての中間周波信号は開閉器により遮断されるので、全体として送信周波数を安定にすることができて、かつ受信のS/N(信号対ノイズ)比を高くすることができる高性能な高周波送受信器となる。
【0037】
また、本発明のレーダ装置によれば、上記本発明の第1乃至第4のいずれかの高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される前記中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを具備することから、高周波送受信器の受信性能が高いため、早く確実に探知対象物を探知することができるとともに至近距離や遠方の探知対象物をも探知することができるレーダ装置となる。
【0038】
また、本発明のレーダ装置搭載車両によれば、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることから、レーダ装置が早く確実に探知対象物である他の車両を探知するため、急激な挙動を車両に起こさせることなく、車両の適切な制御や運転者への適切な警告をすることができるレーダ装置搭載車両となる。
【0039】
また、本発明のレーダ装置搭載船舶によれば、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることから、レーダ装置が早く確実に探知対象物である他の小型船舶を探知するため、急激な挙動を小型船舶に起こさせることなく、小型船舶の適切な制御や操縦者への適切な警告をすることができるレーダ装置搭載小型船舶となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の第1〜第4の高周波送受信器およびそれらを用いたレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶について、以下に詳細に説明する。
【0041】
図1〜図4はそれぞれ本発明の第1〜第4の高周波送受信器の実施の形態の一例を模式的に示すブロック回路図である。また、図5は本発明の第3の高周波送受信器の実施の形態の他の例を模式的に示すブロック回路図である。また、図6は本発明の第4の高周波送受信器の実施の形態の他の例を模式的に示すブロック回路図である。また、図7は図6に示す高周波送受信器の高周波伝送部の例を模式的に示す平面図である。
【0042】
図1〜図7において、1は高周波発振器、2は分岐器、2a,2b,2cは入力端,一方の出力端,他方の出力端、3,3’,3”はそれぞれスイッチ,第1のスイッチ,第2のスイッチとしてのRFスイッチ,第1のRFスイッチ,第2のRFスイッチ、4はハイブリッド、4a,4b,4cは第1の端子,第2の端子,第3の端子、5は送受信アンテナ、6はミキサー、7は開閉器としてのIFスイッチ、8は切替えスイッチとしてのRFスイッチ、8aは入力端,8bは一方の出力端,8cは他方の出力端、9は送信アンテナ、10は受信アンテナ、11は下側の平板導体(上側の平板導体は図示せず)である。
【0043】
図1に示す本発明の第1の高周波送受信器の実施の形態の一例は、高周波信号を発生する高周波発振器1と、この高周波発振器1に接続された、その高周波信号を分岐して一方の出力端2bと他方の出力端2cとに出力する分岐器2と、第1,第2および第3の端子4a,4b,4cを有し一方の出力端2bに第1の端子4aが接続された、第1の端子4aから第2の端子4bに高周波信号を送信用高周波信号RFtとして通過させ、第2の端子4bから第3の端子4cに高周波信号を通過させるハイブリッド4と、このハイブリッド4の第2の端子4bに接続された送受信アンテナ5と、高周波発振器1と分岐器2との間または分岐器2とハイブリッド4との間(この例では分岐器2とハイブリッド4との間)に接続された送信用高周波信号RFtを間欠的に通過させるRFスイッチ3と、分岐器2の他方の出力端2cとハイブリッド4の第3の端子4cとの間に接続された、他方の出力端2cに分岐された高周波信号と送受信アンテナ5で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー6と、このミキサー6の出力端に接続された、開状態で中間周波信号を遮断し、送信用高周波信号RFtが非出力状態で安定したときに閉状態となって中間周波信号を通過させるIFスイッチ7とを備えている構成である。
【0044】
また、図2に示す本発明の第2の高周波送受信器の実施の形態の一例は、高周波信号を発生する高周波発振器1と、この高周波発振器1に接続された、高周波信号を分岐して一方の出力端2bと他方の出力端2cとに出力する分岐器2と、一方の出力端2bに接続された送信アンテナ9と、分岐器2の他方の出力端2c側に接続された受信アンテナ10と、高周波発振器1と分岐器2との間または分岐器2と送信アンテナ9との間(この例では分岐器2と送信アンテナ9との間)に接続された送信用高周波信号RFtを間欠的に通過させるRFスイッチ3と、分岐器2の他方の出力端2cと受信アンテナ10との間に接続された、他方の出力端2cに分岐された高周波信号と受信アンテナ10で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー6と、このミキサー6の出力端に接続された、開状態で中間周波信号を遮断し、送信用高周波信号RFtが非出力状態で安定したときに閉状態となって中間周波信号を通過させるIFスイッチ7とを備えている構成である。
【0045】
上記構成において、IFスイッチ7は、送信用高周波信号RFtを間欠的に送信する前後で、その送信用高周波信号RFtの出力状態が不安定な時には開状態となって中間周波信号を遮断し、その出力状態が安定してから閉状態となって中間周波信号を通過させるように動作する。このようにIFスイッチ7を動作させるためには、具体的には、IFスイッチ7の開閉を制御するスイッチング制御部(図示せず)に遅延線路もしくは遅延回路要素を設け、RFスイッチ3の開閉信号から一定時間だけ遅延させたタイミングで、そのスイッチング制御部においてIFスイッチ7の開閉を制御する信号を発生させるようにすればよい。また、IFスイッチ7としては、具体的には、CMOS,TTL等の半導体論理素子、アナログIC、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)、メカニカルスイッチまたはMEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ)スイッチ等を用いればよい。
【0046】
また、RFスイッチ3としては、例えば砒化ガリウム(GaAs)製電界効果トランジスタ(MESFET)や砒化ガリウム(GaAs)製PINダイオード等の半導体素子から成るスイッチを用いればよい。また、このようなRFスイッチ3は高周波発振器1と分岐器2との間および分岐器2とハイブリッド4もしくは送信アンテナ9との間に接続された高周波信号を伝送する高周波用伝送線路のいずれか一方の途中に挿入すればよい。その際、高周波用伝送線路としてマイクロストリップ線路やコプレーナ線路等のTEM伝送線路を用いる場合には、ストリップ導体(接地導体から一定距離だけ離隔させた信号線路である。)に直列にRFスイッチ3を接続すればよい。また、高周波用伝送線路として導波管や非放射性誘電体線路を用いる場合には、導波管または非放射性誘電体線路を構成する誘電体線路の中途に図12に示すものと同様のPINダイオード等を実装した基板を、そのPINダイオード等に流れる電流の方向がその高周波用伝送線路に伝送される高周波信号の電界の方向に平行になるように設ければよい。
【0047】
なお、非放射性誘電体線路等を用いたこのようなRFスイッチ3は、PINダイオード等に順方向バイアス電圧ならびに無バイアス電圧および逆方向バイアス電圧のいずれかを印加することにより高周波信号を通過させたり反射したりすることができることは言うまでもない。
【0048】
また、高周波発振器1とRFスイッチ3との(好ましくは分岐器2の入力端2a側の)間には、RFスイッチ3をオフ状態にしたときにRFスイッチ3で反射して高周波発振器1に戻る高周波信号を抑制するためのアイソレータを設けることが好ましい。
【0049】
図1および図2にブロック回路図で示す本発明の第1および第2の高周波送受信器の実施の形態の例は、上記構成とすることから、送信用高周波信号RFtを間欠的に送信する際に、この送信用高周波信号RFtの強度が不安定な時にIFスイッチ7が中間周波信号を遮断するように開(オフ)状態となるため、RFスイッチ3に入力されるスイッチング制御信号にパルス波形歪み等のノイズが含まれていて、このノイズが送信用高周波信号RFtに混入し、さらにこのようなノイズを含んだ送信用高周波信号RFtの一部がミキサー6側に漏洩したとしても、IFスイッチ7が、このようなノイズを含んだ送信用高周波信号RFtの一部に対応する中間周波信号を適切に遮断するように働くので、S/N(信号対ノイズ)比を高くすることができ、受信性能を高くすることができる。
【0050】
さらに、これら本発明の第1および第2の高周波送受信器の実施の形態の例において、好ましくは次のように構成するとよい。
【0051】
IFスイッチ7は、閉状態となった後、RFスイッチ3から次の送信用高周波信号RFtが出力される前に開状態とするとよい。このようにするには、スイッチング制御部に上記遅延線路もしくは遅延回路要素とは別にさらに同様の遅延線路もしくは遅延回路要素を設けるか、または別の開閉制御用の信号を入力するようにすればよい。これにより、次の中間周波信号が出力される前に、ノイズを含むパルス化された送信用高周波信号がミキサー6に混入してミキサー6の後段に接続される受信系にノイズを含む中間周波信号が漏れることがないようにその信号をIFスイッチ7で良好に遮断することができるので、さらにS/N比を高くすることができ、すなわち受信性能を高くすることができる。
【0052】
また、RFスイッチ3は、主要な構成要素としてIII−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子を用いるとよい。III−V族化合物半導体を含む材料としては、砒化ガリウム(GaAs)、インジウム・燐(InP)およびインジウム・アンチモン(InSb)の他、砒化ガリウム(GaAs)にインジウム(In)もしくはアルミニウム(Al)を含んだ砒化インジウム・ガリウム(InGaAs)、砒化ガリウム・アルミニウム(GaAlAs)、砒化インジウム・ガリウム・アルミニウム(InGaAlAs)もしくは砒化インジウム・アルミニウム・ガリウム(InAlGaAs)、またはこれら、砒化インジウム(InAs)、砒化アルミニウム(AlAs)および砒化インジウム・アルミニウム(InAlAs)の混晶もしくは多層超格子(MQW)を用いればよい。また、これらのいずれかの材料から成る半導体素子としては、ダイオード、バイポーラトランジスタまたは電界効果トランジスタ(FET)を用いればよい。この場合には、このようなIII−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子は、キャリアの移動度が大きくてライフタイムが短いため、RFスイッチ3において、この半導体素子に変調電流を流す際、RFスイッチ3の変調電流を過渡状態から速やかに定常状態に収束させることができるので、この変調電流に対応するパルス化された送信用高周波信号も速やかに定常状態に収束させることができ、パルス化された送信用高周波信号を出力した後、早いタイミングでIFスイッチ7を閉(オン)状態にしても、送信用高周波信号にパルスの立ち上がり直後に発生する不要な信号が混入した中間周波信号がミキサー6の後段に出力されることがなくなり、中間周波信号が遮断されることにより送受信することができなくなる時間を短縮することができる。
【0053】
なお、RFスイッチ3の動作に特に高速が要求されない場合には、III−V族化合物半導体の他に、シリコン(Si)やシリコン・ゲルマニウム(SiGe)混晶等を用いても構わない。
【0054】
IFスイッチ7の後段には、このIFスイッチ7の開閉時に中間周波信号に加わる雑音を阻止するとともに中間周波信号を通過させるフィルタを設けるとよい。このときには、IFスイッチ7が開閉動作するときに発生して中間周波信号に加わる雑音であるスイッチングノイズをその後段のフィルタで除去することができるので、不要な雑音信号が周囲の別の回路系に混入するのを確実に抑制することができる。また、不要な雑音信号がフィルタにより除去されるので、受信すべき中間周波信号の識別が容易に、かつ確実に行なえるようになる。
【0055】
また、その場合に、ミキサー6の出力端とIFスイッチ7との間にそのフィルタの3dBカットオフ周波数よりも低い周波数の試験用信号が入力されるときには、この試験用信号は中間周波信号よりも周波数が低く、IFスイッチ7の開閉時に中間周波信号に加わる雑音は中間周波信号よりも周波数が高いので、これら中間周波信号および雑音とは別にIFスイッチ7を通過しフィルタで除去されることなく出力させることができるので、この試験用信号がIFスイッチ7およびフィルタを通して出力されることを確認することにより、スイッチングノイズ除去に影響を与えることなく高周波送受信器に効果的な自己診断機能を簡単に備えることができる。
【0056】
また、IFスイッチ7にスイッチングノイズを発生させるための試験用開閉信号が入力されるとともに、IFスイッチ7とそのフィルタとの間にスイッチングノイズの検出端子を設けてもよい。このときには、試験用開閉信号が入力されることによってIFスイッチ7が微弱なスイッチングノイズを発生するため、試験用信号を改めて減衰器等で減衰させたりしなくても、このスイッチングノイズを減衰された試験用信号として利用して後段の回路に入力して、その後段の回路に接続された増幅器等の能動回路を飽和させることなく、IFスイッチ7とフィルタとの間に設けた検出端子で検出することができるので、簡便に自己診断機能を備えたものとすることができる。
【0057】
また、このような構成においてRFスイッチ3に例えばパルス状のスイッチング制御信号を入力する入力部に、スイッチング制御用信号とは別に直流状の信号を切り替えて入力する信号切り替え用スイッチ(例えば後述する切替えRFスイッチ8のようなもの)を設けてもよい。このような信号切り替え用スイッチとしては、例えばSPDTと称される機能を有したCMOS半導体スイッチ等やIFスイッチ7と同種で2系統切り替え可能なものを用いればよい。このときには、この信号切り替え用スイッチが、スイッチング制御用信号をRFスイッチ3に入力するのとは別に、RFスイッチ3で用いられる入力信号の信号経路を切り替えるように動作することにより、動作試験用信号源として例えば直流電源によって発生された直流状の信号をRFスイッチ3に入力することができるので、RFスイッチ3にパルス状のスイッチング制御用信号を入力できるだけではなく、この高周波送受信器の送信系の動作試験用として、直流電圧等の直流状の信号を入力することができ、それに対応したRFスイッチ3の出力を後段の送信回路に出力させることによって送信回路の動作試験(故障診断)を行なわせることができる、送信回路の故障診断機能をも備えたものとすることができる。
【0058】
また、その際は、信号切り替え用スイッチに並列にコンデンサを接続するとよい。このときには、このコンデンサが、信号切り替え用スイッチの内部に存在する寄生容量(寄生キャパシタンス)を打ち消して、信号切り替え用スイッチの寄生容量によって発生する信号切り替え用スイッチでのパルス状のスイッチング制御信号の高周波成分の反射を小さくするように働くので、歪みの少ないスイッチング制御信号をRFスイッチ3に入力できるものとなる。また、RFスイッチ3から送出される例えばパルス状の送信用高周波信号の信号レベルが安定するため、送信用高周波信号の一部がミキサー6に混入して後段の受信系に漏れないように遮断するIFスイッチ7を、送信用高周波信号を送出後、すぐに閉(オン)にしても、不要な中間周波信号を出力することがなく、送信用高周波信号を送出後、すぐに受信を行なうことができる。
【0059】
次に、図3に示す本発明の第3の高周波送受信器の実施の形態の一例は、高周波信号を発生する高周波発振器1と、この高周波発振器1に接続された、高周波信号を切り替えて一方の出力端2bに送信用高周波信号RFtとして出力するかまたは他方の出力端2cにローカル信号LOとして出力する切替えRFスイッチ8’と、入力端8”b,出力端8”cおよび入出力端8”aを有し一方の出力端8’bに入力端8”bが接続された、入力端8”bまたは出力端8”cに入出力端8”aを切り替えて接続する第2の切替えRFスイッチ8”と、この第2の切替えRFスイッチ8”の入出力端8”aに接続された送受信アンテナ5と、切替えRFスイッチ8’の他方の出力端8’cと第2の切替えRFスイッチ8”の出力端8”cとの間に接続された、他方の出力端8’cに出力されたローカル信号LOと送受信アンテナ5で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー6と、このミキサー6の出力端に接続された、開状態で中間周波信号を遮断し、送信用高周波信号RFtが非出力状態で安定したときに閉状態となって中間周波信号を通過させるIFスイッチ7とを備えている構成である。
【0060】
また、図4に示す本発明の第4の高周波送受信器の実施の形態の一例は、高周波信号を発生する高周波発振器1と、この高周波発振器1に接続された、高周波信号を切り替えて一方の出力端8bに送信用高周波信号として出力するかまたは他方の出力端8cにローカル信号LOとして出力する切替えRFスイッチ8と、一方の出力端8bに接続された送信アンテナ9と、切替えRFスイッチ8の他方の出力端8c側に接続された受信アンテナ10と、切替えRFスイッチ8の他方の出力端8cと受信アンテナ10との間に接続された、他方の出力端8cに出力されたローカル信号LOと受信アンテナ10で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー6と、このミキサー6の出力端に接続された、開状態で中間周波信号を遮断し、送信用高周波信号RFtが非出力状態で安定したときに閉状態となって中間周波信号を通過させるIFスイッチ7とを備えている構成である。
【0061】
上記構成において、切替えRFスイッチ8,8’および第2の切替えスイッチ8”としては、例えば砒化ガリウム(GaAs)製電界効果トランジスタ(MESFET)や砒化ガリウム(GaAs)製PINダイオード等の半導体素子から成るいわゆるSPDT(Single Port Double Throw)スイッチを用いればよい。このような切替えRFスイッチ8,8’の入力端8a,8’aを高周波発振器1に接続し、切替えRFスイッチ8,8’をスイッチングさせることにより高周波発振器1で発生した高周波信号を、一方の出力端8b,8’bに送信用高周波信号RFtとして出力するかまたは他方の出力端8c,8’cにローカル信号LOとして出力するようにすればよい。
【0062】
このような切替えRFスイッチ8,8’は、送信用高周波信号RFtからローカル信号LOに出力が切り替わった瞬間に送信用高周波信号RFtを完全に遮断し、一方の出力端8b,8’b側にノイズを発生させないことが理想であるが、実際には切替えRFスイッチ8,8’に入力されるスイッチング制御信号が持つ歪みや切替えRFスイッチ8,8’自身が持つスイッチング特性のために、送信用高周波信号RFtからローカル信号LOに出力が切り替わった後に一方の出力端8b,8’bにスイッチングの際のノイズが出力され、これが十分に減衰するまでに一定時間を要する。そして、このようなノイズがミキサー6に漏洩するとミキサー6からノイズとしての不要な中間周波信号が出力されることとなる。そこで、本発明の第3および第4の高周波送受信器においても、上記本発明の第1および第2の高周波送受信器の場合と同様にIFスイッチ7を用いることが有効である。
【0063】
すなわち、上記構成において、IFスイッチ7は、送信用高周波信号RFtを間欠的に送信する前後で、その送信用高周波信号RFtの出力状態が不安定な時には開状態となって中間周波信号を遮断し、その出力状態が安定してから閉状態となって中間周波信号を通過させるように動作する。このようにIFスイッチ7を動作させるためには、具体的には、IFスイッチ7の開閉を制御するスイッチング制御部(図示せず)に遅延線路もしくは遅延回路要素を設け、RFスイッチ3の開閉信号から一定時間だけ遅延させたタイミングで、そのスイッチング制御部においてIFスイッチ7の開閉を制御する信号を発生させるようにすればよい。また、IFスイッチ7としては、具体的には、CMOS,TTL等の半導体論理素子、アナログIC、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)、メカニカルスイッチまたはMEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ)スイッチ等を用いればよい。
【0064】
本発明の第3および第4の高周波送受信器によれば、上記構成とすることから、高周波信号を切替えRFスイッチ8’(切替えRFスイッチ8)により送信用高周波信号RFtとローカル信号LOとに切り替えて送信用高周波信号RFtを間欠的に送信する際に、この送信用高周波信号RFtの強度が不安定な時にIFスイッチ7が中間周波信号を遮断するように開(オフ)状態となるため、切替えRFスイッチ8’(切替えRFスイッチ8)に入力される開閉信号にパルス波形歪み等のノイズが含まれていて、このノイズが送信用高周波信号RFtに混入し、さらにこのようなノイズを含んだ送信用高周波信号RFtの一部がミキサー6側に漏洩したとしても、IFスイッチ7が、このようなノイズを含んだ送信用高周波信号RFtの一部に対応する中間周波信号を適切に遮断するように働くので、S/N(信号対ノイズ)比を高くすることができ、受信性能を高くすることができる。
【0065】
また、本発明の第3および第4の高周波送受信器においても、切替えRFスイッチ8’(切替えRFスイッチ8)は、III−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子が用いられるとよい。前述の理由と同様に送受信することができなくなる時間を減らすことができるからである。
【0066】
次に、図5および図6のそれぞれにブロック回路図で示す本発明の第3および第4の高周波送受信器の実施の形態の他の例は、好ましい構成として、図3および図4のそれぞれにブロック回路図で示す高周波送受信器に対して、切替えRFスイッチ8’(切替えRFスイッチ8)は、入力された高周波信号を分岐して一方の出力端2bと他方の出力端2cとに出力する分岐器2と、一方の出力端2bおよび他方の出力端2cのそれぞれに接続された第1および第2のPINダイオード3’,3”とを備えており、それら第1および第2のPINダイオード3’,3”の少なくとも一方に順方向バイアス電圧を印加するバイアス回路(図示せず)が接続されている構成である。
【0067】
また、このような高周波送受信器の高周波伝送部には、例えば図6に示す高周波送受信器の場合において図7に平面図で示すように、各構成要素間を接続する高周波用伝送線路としては非放射性誘電体線路を用い、その中途にRFスイッチ3’,3”として図12に示すものと同様のPINダイオードを実装した基板を挿入すると、非放射性誘電体線路およびRFスイッチ3’,3”は高周波の通過の損失が小さいため、例えば周波数が76GHz程度のミリ波信号に対して高い送受信性能が得られる点で有利である。
【0068】
図5および図6のそれぞれにブロック回路図で示す本発明の第3および第4の高周波送受信器の実施の形態の他の例によれば、上記図3および図4に示す高周波送受信器と同様の作用効果を有する他に、第1および第2のPINダイオード3’,3”の少なくとも一方が低インピーダンスとなるため、第1および第2のPINダイオード3’,3”をスイッチングしても高周波信号の入力側(高周波発振器1側)から見たインピーダンスを常に低くかつ安定にすることができるのでアイソレータ等を用いなくても高周波発振器1の負荷変動を抑制し、高周波信号の発振周波数を安定にすることができる利点がある。
【0069】
また、このような構成では、送信用高周波信号RFtが送信されると同時にローカル信号LOがミキサー6に入力される時間帯が存在するために、その時間帯において送信用高周波信号RFtの一部がミキサー6に漏洩することに起因するノイズとしての中間周波信号が発生してしまうことがあるが、そのようなノイズとしての中間周波信号はIFスイッチ7により遮断されるので、全体として送信周波数を安定にすることができて、かつ受信のS/N(信号対ノイズ)比を高くすることができる。
【0070】
次に、上記本発明の第1〜第4の高周波送受信器において、各構成要素は、上記以外に詳細には、次のように構成すればよい。
【0071】
非放射性誘電体線路の構成要素である誘電体線路の材質には、四フッ化エチレン,ポリスチレン等の樹脂、または低比誘電率のコーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)セラミックス,アルミナ(Al2O3)セラミックス,ガラスセラミックス等のセラミックスが好ましく、これらはミリ波帯域において低損失である。また、誘電体線路の断面形状は基本的には矩形状であるが、矩形の角部をまるめた形状であってもよく、ミリ波信号の伝送に使用される種々の断面形状のものを使用することができる。
【0072】
また、平板導体11の材質には、高い電気伝導度および良好な加工性等の点で、Cu,Al,Fe,Ag,Au,Pt,SUS(ステンレススチール),真鍮(Cu−Zn合金)等の導体板が好適である。あるいは、セラミックス,樹脂等から成る絶縁板の表面にこれらの導体層を形成したものでもよい。
【0073】
また、基板88は、四フッ化エチレン,ポリスチレン,ガラスセラミックス,ガラスエポキシ樹脂,エポキシ樹脂等から成る板状の基体の一主面に、アルミニウム(Al),金(Au),銅(Cu)等から成るストリップ導体等によるチョーク型バイアス供給線路90を形成したものが使用される。
【0074】
また、各回路要素間を接続し高周波信号を伝送する高周波用伝送線路としては、非放射性誘電体線路の他にも、導波管,誘電体導波管,誘電体導波管線路,ストリップ線路,マイクロストリップ線路,コプレーナ線路,スロット線路,同軸線路等の高周波用伝送線路を、使用する周波数帯域や用途に応じて選択して用いても構わない。また、使用する周波数帯域は、ミリ波帯以外に、マイクロ波帯またはそれ以下の周波数帯であっても有効である。
【0075】
次に、本発明の高周波送受信器を用いたレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶について説明する。
【0076】
本発明のレーダ装置の実施の形態の一例は、上記本発明の第1〜第4のいずれかの高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを備えている構成である。
【0077】
上記構成において、距離情報検出器は、検出した中間周波信号の信号処理をして、このレーダ装置から探知対象物までの距離および方向を含む距離情報を出力するためのものである。例えば、距離情報検出器は、中間周波信号を、位置情報として演算する微分回路,積分回路,二乗回路等を備えた演算回路と、この演算回路の出力を判別する判別回路と、これら演算回路および判別回路と高周波送受信器とを一連のシーケンスに従って動作させるコンピュータとを具備するようなものである。演算回路や判別回路には、演算増幅器(オペアンプ)やコンパレータ等を組み合わせた回路を用いればよい。また、必要に応じて、スイッチ,増幅器またはフィルタ等を用いればよい。また、それらの演算や判別の過程において、アナログ信号を一端ディジタル信号に変換し、ディジタル信号でそれらの演算や判別を処理し、必要に応じてディジタル信号をアナログ信号に変換する、A−D変換器およびD−A変換器を用いてもよい。その際、A−D変換されたディジタル信号を演算する演算回路には、例えば、高速フーリエ変換(FFT)等をするディジタルシグナルプロセッサ(DSP)を用いればよい。
【0078】
このような本発明のレーダ装置の実施の形態の一例によれば、構成要素である高周波送受信器に本発明の第1〜第4のいずれかの高周波送受信器を用いており、その受信性能が高いため、早く確実に探知対象物を探知することができるとともに至近距離や遠方の探知対象物をも探知することができる。なお、本発明の高周波送受信器は、レーダ装置の他にも、例えば、このような高周波送受信器を、例えば無線LANで使用される無線装置の物理層(フィジカルレイヤー)である、いわゆるフィジカル・メディア・ディペンダント(PMD)装置として用い、このPMD装置と、さらにその上位層の装置であるフィジカル・メディア・アタッチメント(PMA)装置,メディア・アクセス・コントローラ(MAC)装置,その他の装置とからなる構成として無線装置に用いてもよい。
【0079】
また、本発明のレーダ装置搭載車両は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いる構成である。
【0080】
本発明のレーダ装置搭載車両は、このような構成としたことから、従来のレーダ装置搭載車両と同様に、レーダ装置で検出された距離情報に基づいて車両の挙動を制御したり、運転者に例えば路上の障害物や他の車両等を探知したことを音,光もしくは振動で警告したりすることができるが、本発明のレーダ装置搭載車両においては、探知対象物である路上の障害物や他の車両等をレーダ装置が早く確実に探知するため、急激な挙動を車両に起こさせることなく、車両の適切な制御や運転者への適切な警告をすることができる。
【0081】
なお、本発明のレーダ装置搭載車両は、具体的には、汽車,電車,自動車等旅客や貨物を輸送するための車はもちろんのこと、自転車,原動機付き自転車,遊園地の乗り物,ゴルフ場のカート等にも用いることができる。
【0082】
また、本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いる構成である。
【0083】
本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、このような構成としたことから、従来のレーダ装置搭載車両と同様に、小型船舶において、レーダ装置で検出された距離情報に基づいて小型船舶の挙動を制御したり、操縦者に例えば暗礁等の障害物,他の船舶もしくは他の小型船舶等を探知したことを音,光もしくは振動で警告したりするように動作するが、本発明のレーダ装置搭載小型船舶においては、探知対象物である暗礁等の障害物,他の船舶もしくは他の小型船舶等をレーダ装置が早く確実に探知するため、急激な挙動を小型船舶に起こさせることなく、小型船舶の適切な制御や操縦者への適切な警告をすることができる。
【0084】
なお、本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、具体的には、小型船舶の免許もしくは免許なしで操縦することができる船舶であって、総トン数20トン未満の船舶である手漕ぎボート,ディンギー,水上オートバイ,船外機搭載の小型バスボート,船外機搭載のインフレータブルボート(ゴムボート),漁船,遊漁船,作業船,屋形船,トーイングボート,スポーツボート,フィッシングボート,ヨット,外洋ヨット,クルーザーまたは総トン数20トン以上のプレジャーボートに用いることができる。
【0085】
かくして、本発明によれば、送信用高周波信号の一部が受信側に漏洩し、その送信用高周波信号のスイッチング等に起因するノイズとしての中間周波信号が受信系に出力されるのを遮断できる開閉器を有した高周波送受信器において、送信用高周波信号をスイッチングする過渡的な状態においてもそのようなノイズとしての中間周波信号を確実に遮断することができる受信性能の高い高周波送受信器、およびそれを用いた、探知対象物を早く確実に探知することができる高性能なレーダ装置、ならびにその高性能なレーダ装置を搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶を提供することができる。
【0086】
なお、本発明は上記実施の形態の例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。例えば、本発明の高周波送受信器においてIFスイッチ7の出力端に高速で動作する演算増幅器(オペアンプ)の一方の入力端子を接続し、この演算増幅器の他方の入力端子および出力端子のそれぞれに、そのIFスイッチと同種であって、なるべく特性の等しいもう一つのIFスイッチおよび受信系の後段の回路を接続してもよい。この場合には、演算増幅器が、IFスイッチ自身が発生させるスイッチングノイズ等の不要な信号を、もう一つのIFスイッチが発生させる同様の信号で相殺するように動作するため、そのような不要な信号が受信系の後段の回路に入力されることが抑制される高周波送受信器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1の高周波送受信器の実施の形態の一例を模式的に示すブロック回路図である。
【図2】本発明の第2の高周波送受信器の実施の形態の一例を模式的に示すブロック回路図である。
【図3】本発明の第3の高周波送受信器の実施の形態の一例を模式的に示すブロック回路図である。
【図4】本発明の第4の高周波送受信器の実施の形態の一例を模式的に示すブロック回路図である。
【図5】本発明の第3の高周波送受信器の実施の形態の他の例を模式的に示すブロック回路図である。
【図6】本発明の第4の高周波送受信器の実施の形態の他の例を模式的に示すブロック回路図である。
【図7】図6に示す高周波送受信器の高周波伝送部の例を模式的に示す平面図である。
【図8】従来の高周波送受信器をミリ波レーダとして用いたときの各部の構成を示すブロック回路図である。
【図9】非放射性誘電体線路の基本的な構成を示す部分破断斜視図である。
【図10】送受信アンテナを有する高周波送受信器の平面図である。
【図11】送信アンテナおよび受信アンテナを有する高周波送受信器の平面図である。
【図12】高周波送受信器のパルス変調器の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0088】
1:高周波発振器
2:分岐器
3,3’,3”:RFスイッチ(スイッチ)
4:ハイブリッド
5:送受信アンテナ
6:ミキサー
7:IFスイッチ(開閉器)
8,8’:切替えRFスイッチ(切替えスイッチ:単極2方向切り替え型)
8”:第2の切替えRFスイッチ(第2の切替えスイッチ:単極2方向切り替え型)
9:送信アンテナ
10:受信アンテナ
11:下側の平板導体(上側の平板導体は図示せず)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波レーダモジュールやミリ波無線通信機等に使用される高周波送受信器に関するものであり、送信用高周波信号の一部が受信側に漏洩しそれに対応するノイズとしての中間周波信号が受信系に出力されるのを遮断できる開閉器を有する高周波送受信器およびそれを具備するレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ミリ波レーダモジュールやミリ波無線通信機等への応用が期待される高周波送受信器として、例えば、特許文献1に開示されているようなものが知られている。
【0003】
しかしながら、このような高周波送受信器では、送信用の高周波信号の一部が高周波送受信器の中間周波回路において送信用高周波信号の一部が受信側に漏洩しそれに対応するノイズとしての中間周波信号が受信系に不要な信号として出力され、これが受信性能に悪影響を及ぼすという問題点があった。
【0004】
本発明者は既にこの問題点に対する解決策を提案している(特許文献2を参照。)。その構成の例を、図10および図11にそれぞれ平面図で示す。なお、これらの構成の例において用いられる非放射性誘電体線路の基本的な構成は図9に部分破断斜視図で示すようなものであり、平板導体41,42間に誘電体線路43が平行に挟まれた構成である。
【0005】
図10に示す例の高周波送受信器は、送信アンテナと受信アンテナとが一体化されたものの例であり、ミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置された平行平板導体51間に、第1の誘電体線路53に付設され、高周波ダイオードから出力されたミリ波信号を周波数変調するとともにミリ波信号として第1の誘電体線路53を伝搬させるミリ波信号発振部52と、第1の誘電体線路53の途中に介在し、ミリ波信号をパルス化して送信用のミリ波信号として第1の誘電体線路53から出力させるパルス変調器(図示せず)と、第1の誘電体線路53に一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは第1の誘電体線路53に一端が接合されて、ミリ波信号の一部をミキサー59側へ伝搬させる第2の誘電体線路58と、平行平板導体51に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置され、かつそれぞれミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部54aと第2の接続部54bと第3の接続部54cとを有し、一つの接続部から入力されたミリ波信号をフェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力するサーキュレータ54であって、第1の誘電体線路53のミリ波信号の出力端に第1の接続部54aが接続されるサーキュレータ54と、サーキュレータ54の第2の接続部54bに接続され、ミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送受信アンテナ56を有する第3の誘電体線路55と、サーキュレータ54の第3の接続部54cに接続され、送受信アンテナ56で受信されて第3の誘電体線路55を伝搬し第2の接続部54bを通って第3の接続部54cから出力された受信波をミキサー59へ伝搬させる第4の誘電体線路57と、第2の誘電体線路58の中途と第4の誘電体線路57の中途とを電磁結合するように近接させるかまたは接合させて成り、ミリ波信号の一部と受信波とを混合させて中間周波信号を発生させるミキサー59と、を設けた高周波送受信器である。そして、この例において、ミキサー59の出力端に、パルス変調された送信用のミリ波信号がパルス変調器から出力されたときに出力端を開状態とするスイッチング制御部(図示せず)を設けることにより、パルス変調器のパルス化動作を開始するためのパルス化信号がパルス変調器に入力されるのとほとんど同時に、不要信号がミキサー59よりも後段の受信系に出力されるのを防ぐことができる。
【0006】
図11に示す例の高周波送受信器は、送信アンテナと受信アンテナとを独立させたものの例であり、ミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置された平行平板導体61間に、第1の誘電体線路63に付設され、高周波ダイオードから出力された高周波信号を周波数変調するとともにミリ波信号として第1の誘電体線路63を伝搬させるミリ波信号発振部62と、第1の誘電体線路63の途中に介在し、ミリ波信号をパルス化して送信用のミリ波信号として第1の誘電体線路63から出力させるパルス変調器(図示せず)と、第1の誘電体線路63に一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは第1の誘電体線路63に一端が接合されて、ミリ波信号の一部をミキサー71側へ伝搬させる第2の誘電体線路68と、平行平板導体61に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置され、かつそれぞれミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部64aと第2の接続部64bと第3の接続部64cとを有し、一つの接続部から入力されたミリ波信号をフェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力するサーキュレータ64であって、第1の誘電体線路63のミリ波信号の出力端に第1の接続部64aが接続されるサーキュレータ64と、サーキュレータ64の第2の接続部64bに接続され、ミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送信アンテナ66を有する第3の誘電体線路65と、先端部に受信アンテナ70、他端部にミキサー71が設けられた第4の誘電体線路69と、サーキュレータ64の第3の接続部64cに接続され、送信アンテナ66で受信混入したミリ波信号を減衰させる、無反射終端部67aが先端に設けられた第5の誘電体線路67と、第2の誘電体線路68の中途と第4の誘電体線路69の中途とを電磁結合するように近接させるかまたは接合させて成り、ミリ波信号の一部と受信波とを混合させて中間周波信号を発生させるミキサー71と、を設けた高周波送受信器である。そして、この例において、ミキサー71の出力端に、パルス変調された送信用のミリ波信号がパルス変調器から出力されたときに出力端を開状態とするスイッチング制御部(図示せず)を設けることにより、パルス変調器のパルス化動作を開始するためのパルス化信号がパルス変調器に入力されるのとほとんど同時に、送信アンテナ66から受信アンテナ70へ直接混入した不要信号がミキサー71よりも後段の受信系に出力されるのを防ぐことができる。
【0007】
次に、図8は図10に示す高周波送受信器をミリ波レーダとして用いたときの各部の構成をブロック回路図で示したものである。
【0008】
図8において、111は、ガンダイオードおよびバラクターダイオードを具備したVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)であり、その変調信号入力用のIN−2端子に信号が入力されて動作する。このVCO111の出力信号を、IN−1端子に入力されたパルス化信号をパルス変調器112に入力することにより、パルス変調器112によってパルス変調させる。このパルス変調器112は、図10においては、第1の誘電体線路53の途中に介在するものであり、図12にその構成を斜視図で示すようなスイッチ(RFスイッチ)である。
【0009】
図12に示すパルス変調器の構成は、配線基板88の一主面にチョーク型バイアス供給線路90を形成して、その中途に形成された接続用の電極81,81間に、半田実装されたビームリードタイプのPINダイオードやショットキーバリアダイオード80を設けたスイッチである。このようなスイッチが、PINダイオードやショットキーバリアダイオード80が第1の誘電体線路53の途中の端面間に、そのバイアス印加電圧方向が横方向になるように設置されて、パルス変調器112として使用される。
【0010】
113は、送信時にはミリ波信号をアンテナ114側へ伝送させ、受信時には受信波をミキサー115側へ伝送させるサーキュレータ、114はミリ波信号の送受信用のアンテナであり、アンテナ114は、サーキュレータ113とは金属導波管または金属導波管に誘電体を充填した誘電体導波管等を介して接続された、例えばホーンアンテナ等である。また、115は、VCO111から出力されたミリ波信号とアンテナ114で受信した受信信号とを混合することにより、目標物までの距離等を検出するための中間周波信号を出力するミキサーである。
【0011】
116は、ミキサー115から出力された中間周波信号を遮断したり通過させたりする開閉器としてのスイッチである。また、119はスイッチ116の開閉(オン−オフ)のタイミングを制御する制御部である。これらスイッチ116および制御部119からスイッチング制御部が構成される。
【0012】
制御部119は、パルス変調器112と連動するようにIN−1端子のパルス化信号が入力されて、パルス変調器112でパルス変調された送信用のミリ波信号が、NRDガイドと誘電体導波管との接続部で反射されたりサーキュレータ113から漏れてミキサー115を介して不要信号となって出力されたりして増幅器118に入力される前に、スイッチ116により遮断するようにその開閉のタイミングを制御する。
【0013】
なお、117はスイッチ116と増幅器118とを交流結合するためのコンデンサである。
【0014】
なお、図10に示す高周波送受信器では、送受一体のアンテナを構成するための構成要素としてサーキュレータ54を用いる例を示しているが、そのようなサーキュレータ54に替わるものとしては、ラットレース型ハイブリッド(例えば、特許文献4を参照。)またはブランチライン型ハイブリッド(例えば、特許文献5を参照。)があることが広く知られている。
【0015】
以上の構成により、パルス変調された送信用のミリ波信号がミキサー115に混入して後段の受信系に漏れないように遮断できるため、ミリ波レーダシステムの探知精度を高めることが可能となる。
【0016】
また、特許文献3には、上記のような高周波送受信器においてVCOに送受切替えスイッチを接続した例も開示されている。このような例では、VCOで発生させたミリ波信号を送受切替えスイッチで送信側に送信用ミリ波信号として出力するかまたは受信側にローカル信号として出力するかをスイッチングして、同様にパルス化されたミリ波信号を送信用として出力することができる。
【特許文献1】特開2000−258525号公報
【特許文献2】特開2003−198421号公報
【特許文献3】特開2001−264426号公報
【特許文献4】特開2002−100910号公報
【特許文献5】特開2003−179414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特許文献2において提案した構成においても、本発明者らがさらに高周波送受信器の性能を高めるべく鋭意検討を重ねた結果、次に述べるようなさらに改善が望まれる問題点を見いだした。
【0018】
まず、そのような問題点の一つとして、スイッチ116の少なくとも閉(オン)のタイミングを緻密に制御する必要があるという点があった。
【0019】
一般に、高周波ダイオードを用いたパルス変調器112は、ゼロバイアス容量等の高周波ダイオードに固有の特性を有しているため、駆動用に理想的なパルス信号を入力したとしても、変調電流にリンギングノイズ等の歪みが大なり小なり生じることがある。また、駆動用のパルス信号自身にも大なり小なり同様の歪みが存在することがある。これらのため、パルス変調器112から出力されるミリ波信号の出力強度が信号の1周期内において定常状態に安定するまでに、ある一定時間が必要である。その結果、IN−1端子の信号を開(オフ)状態にして、ミリ波信号の出力を開(オフ)状態にした後、スイッチ116を閉(オン)状態にすると、そのタイミングによっては、まだミリ波信号の出力強度の変動が残っていて、これが不要な信号(ノイズ)としてミキサー115に出力されてしまい、本来検出すべき信号と混信して、レーダ探知性能を悪化させる場合があるという問題点があった。
【0020】
本発明は以上のような改善が望まれる問題点を解決すべく案出されたものであり、その目的は、送信用高周波信号の一部が受信側に漏洩し、その送信用高周波信号のスイッチング等に起因するノイズとしての中間周波信号が受信系に出力されるのを遮断できる開閉器を有した高周波送受信器において、送信用高周波信号をスイッチングする過渡的な状態においてもそのようなノイズとしての中間周波信号を確実に遮断することができる高周波送受信器を提供することにある。
【0021】
また、本発明の他の目的は、上記本発明の高周波送受信器を用いた高性能なレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、第1,第2および第3の端子を有し前記一方の出力端に前記第1の端子が接続された、前記第1の端子から前記第2の端子に前記高周波信号を送信用高周波信号として通過させ、前記第2の端子から前記第3の端子に高周波信号を通過させるハイブリッドと、このハイブリッドの前記第2の端子に接続された送受信アンテナと、前記高周波発振器と前記分岐器との間または前記分岐器と前記ハイブリッドとの間に接続された前記送信用高周波信号を間欠的に通過させるスイッチと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記ハイブリッドの前記第3の端子との間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とするものである。
【0023】
本発明の第2の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された送信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記高周波発振器と前記分岐器との間または前記分岐器と前記送信アンテナとの間に接続された前記送信用高周波信号を間欠的に通過させるスイッチと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とするものである。
【0024】
本発明の第3の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を切り替えて一方の出力端に送信用高周波信号として出力するかまたは他方の出力端にローカル信号として出力する切替えスイッチと、入力端,出力端および入出力端を有し前記一方の出力端に前記入力端が接続された、前記入力端または前記出力端に前記入出力端を切り替えて接続する第2の切替えスイッチと、この第2の切替えスイッチの前記入出力端に接続された送受信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端と前記第2の切替えスイッチの前記出力端との間に接続された、前記他方の出力端に出力されたローカル信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とするものである。
【0025】
本発明の第4の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を切り替えて一方の出力端に送信用高周波信号として出力するかまたは他方の出力端にローカル信号として出力する切替えスイッチと、前記一方の出力端に接続された送信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に出力されたローカル信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明の第1または第2の高周波送受信器は、上記各構成において、前記スイッチは、III−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子が用いられていることを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明の第3または第4の高周波送受信器は、上記各構成において、前記切替えスイッチは、入力された高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端および前記他方の出力端のそれぞれに接続された第1および第2のPINダイオードとを具備しており、これら第1および第2のPINダイオードの少なくとも一方に順方向バイアス電圧を印加するバイアス回路が接続されていることを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明のレーダ装置は、上記本発明の第1乃至第4のいずれかの高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される前記中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを具備することを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明のレーダ装置搭載車両は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするものである。
【0030】
また、本発明のレーダ装置搭載船舶は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明の第1の高周波送受信器によれば、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、第1,第2および第3の端子を有し前記一方の出力端に前記第1の端子が接続された、前記第1の端子から前記第2の端子に前記高周波信号を送信用高周波信号として通過させ、前記第2の端子から前記第3の端子に高周波信号を通過させるハイブリッドと、このハイブリッドの前記第2の端子に接続された送受信アンテナと、前記高周波発振器と前記分岐器との間または前記分岐器と前記ハイブリッドとの間に接続された前記送信用高周波信号を間欠的に通過させるスイッチと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記ハイブリッドの前記第3の端子との間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することから、送信用高周波信号を間欠的に送信する際に、この送信用高周波信号の強度が不安定な時に開閉器が中間周波信号を遮断するように開(オフ)状態となるため、スイッチに入力される開閉信号にパルス波形歪み等のノイズが含まれていて、このノイズが送信用高周波信号に混入し、さらにこのようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部がミキサー側に漏洩したとしても、開閉器が、このようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部に対応する中間周波信号を適切に遮断するように働くので、S/N(信号対ノイズ)比を高くすることができ、受信性能を高くすることができる高周波送受信器となる。
【0032】
本発明の第2の高周波送受信器によれば、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された送信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記高周波発振器と前記分岐器との間または前記分岐器と前記送信アンテナとの間に接続された前記送信用高周波信号を間欠的に通過させるスイッチと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することから、送受別体のアンテナを用いた高周波送受信器においても、送信用高周波信号を間欠的に送信する際に、この送信用高周波信号の強度が不安定な時に開閉器が中間周波信号を遮断するように開(オフ)状態となるため、スイッチに入力される開閉信号にパルス波形歪み等のノイズが含まれていて、このノイズが送信用高周波信号に混入し、さらにこのようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部がミキサー側に漏洩したとしても、開閉器が、このようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部に対応する中間周波信号を適切に遮断するように働くので、S/N(信号対ノイズ)比を高くすることができ、受信性能を高くすることができる高周波送受信器となる。
【0033】
本発明の第3の高周波送受信器によれば、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を切り替えて一方の出力端に送信用高周波信号として出力するかまたは他方の出力端にローカル信号として出力する切替えスイッチと、入力端,出力端および入出力端を有し前記一方の出力端に前記入力端が接続された、前記入力端または前記出力端に前記入出力端を切り替えて接続する第2の切替えスイッチと、この第2の切替えスイッチの前記入出力端に接続された送受信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端と前記第2の切替えスイッチの前記出力端との間に接続された、前記他方の出力端に出力されたローカル信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することから、高周波信号を切替えスイッチにより送信用高周波信号とローカル信号とに切り替えて送信用高周波信号を間欠的に送信する際に、この送信用高周波信号の強度が不安定な時に開閉器が中間周波信号を遮断するように開(オフ)状態となるため、切替えスイッチに入力される開閉信号にパルス波形歪み等のノイズが含まれていて、このノイズが送信用高周波信号に混入し、さらにこのようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部がミキサー側に漏洩したとしても、開閉器が、このようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部に対応する中間周波信号を適切に遮断するように働くので、S/N(信号対ノイズ)比を高くすることができ、受信性能を高くすることができる高周波送受信器となる。
【0034】
本発明の第4の高周波送受信器によれば、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を切り替えて一方の出力端に送信用高周波信号として出力するかまたは他方の出力端にローカル信号として出力する切替えスイッチと、前記一方の出力端に接続された送信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に出力されたローカル信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することから、高周波信号を切替えスイッチにより送信用高周波信号とローカル信号とに切り替えて送信用高周波信号を間欠的に送信する際に、この送信用高周波信号の強度が不安定な時に開閉器が中間周波信号を遮断するように開(オフ)状態となるため、切替えスイッチに入力される開閉信号にパルス波形歪み等のノイズが含まれていて、このノイズが送信用高周波信号に混入し、さらにこのようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部がミキサー側に漏洩したとしても、開閉器が、このようなノイズを含んだ送信用高周波信号の一部に対応する中間周波信号を適切に遮断するように働くので、S/N(信号対ノイズ)比を高くすることができ、受信性能を高くすることができる高周波送受信器となる。
【0035】
また、本発明の第1または第2の高周波送受信器によれば、前記スイッチは、III−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子が用いられているときには、III−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子は、キャリアの移動度が大きくてライフタイムが短いため、スイッチにおいて、この半導体素子に変調電流を流す際にこの変調電流を過渡状態から速やかに定常状態に収束させることができるので、この変調電流に対応するパルス化された送信用高周波信号を速やかに定常状態に収束させることができ、パルス化された送信用高周波信号を出力した後、早いタイミングで開閉器を閉(オン)状態にしても、パルスの立ち上がり直後に発生する不要な信号が混入した送信用高周波信号に対応する中間周波信号がミキサーの後段に出力されることがなくなり、中間周波信号が遮断されることにより送受信することができなくなる時間を減らすことができる高周波送受信器となる。
【0036】
また、本発明の第3または第4の高周波送受信器によれば、前記切替えスイッチは、入力された高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端および前記他方の出力端のそれぞれに接続された第1および第2のPINダイオードとを具備しており、これら第1および第2のPINダイオードの少なくとも一方に順方向バイアス電圧を印加するバイアス回路が接続されているときには、第1および第2のPINダイオードの少なくとも一方が低インピーダンスとなるため、第1および第2のPINダイオードをスイッチングしても高周波信号の入力側から見たインピーダンスを常に低くかつ安定にすることができるので、高周波発振器の負荷変動を抑制し、高周波信号の発振周波数を安定にすることができるとともに、このような構成であるために送信用高周波信号が送信されると同時にローカル信号がミキサーに入力されてノイズとしての中間周波信号を発生させてしまうことがあってもノイズとしての中間周波信号は開閉器により遮断されるので、全体として送信周波数を安定にすることができて、かつ受信のS/N(信号対ノイズ)比を高くすることができる高性能な高周波送受信器となる。
【0037】
また、本発明のレーダ装置によれば、上記本発明の第1乃至第4のいずれかの高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される前記中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを具備することから、高周波送受信器の受信性能が高いため、早く確実に探知対象物を探知することができるとともに至近距離や遠方の探知対象物をも探知することができるレーダ装置となる。
【0038】
また、本発明のレーダ装置搭載車両によれば、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることから、レーダ装置が早く確実に探知対象物である他の車両を探知するため、急激な挙動を車両に起こさせることなく、車両の適切な制御や運転者への適切な警告をすることができるレーダ装置搭載車両となる。
【0039】
また、本発明のレーダ装置搭載船舶によれば、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることから、レーダ装置が早く確実に探知対象物である他の小型船舶を探知するため、急激な挙動を小型船舶に起こさせることなく、小型船舶の適切な制御や操縦者への適切な警告をすることができるレーダ装置搭載小型船舶となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の第1〜第4の高周波送受信器およびそれらを用いたレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶について、以下に詳細に説明する。
【0041】
図1〜図4はそれぞれ本発明の第1〜第4の高周波送受信器の実施の形態の一例を模式的に示すブロック回路図である。また、図5は本発明の第3の高周波送受信器の実施の形態の他の例を模式的に示すブロック回路図である。また、図6は本発明の第4の高周波送受信器の実施の形態の他の例を模式的に示すブロック回路図である。また、図7は図6に示す高周波送受信器の高周波伝送部の例を模式的に示す平面図である。
【0042】
図1〜図7において、1は高周波発振器、2は分岐器、2a,2b,2cは入力端,一方の出力端,他方の出力端、3,3’,3”はそれぞれスイッチ,第1のスイッチ,第2のスイッチとしてのRFスイッチ,第1のRFスイッチ,第2のRFスイッチ、4はハイブリッド、4a,4b,4cは第1の端子,第2の端子,第3の端子、5は送受信アンテナ、6はミキサー、7は開閉器としてのIFスイッチ、8は切替えスイッチとしてのRFスイッチ、8aは入力端,8bは一方の出力端,8cは他方の出力端、9は送信アンテナ、10は受信アンテナ、11は下側の平板導体(上側の平板導体は図示せず)である。
【0043】
図1に示す本発明の第1の高周波送受信器の実施の形態の一例は、高周波信号を発生する高周波発振器1と、この高周波発振器1に接続された、その高周波信号を分岐して一方の出力端2bと他方の出力端2cとに出力する分岐器2と、第1,第2および第3の端子4a,4b,4cを有し一方の出力端2bに第1の端子4aが接続された、第1の端子4aから第2の端子4bに高周波信号を送信用高周波信号RFtとして通過させ、第2の端子4bから第3の端子4cに高周波信号を通過させるハイブリッド4と、このハイブリッド4の第2の端子4bに接続された送受信アンテナ5と、高周波発振器1と分岐器2との間または分岐器2とハイブリッド4との間(この例では分岐器2とハイブリッド4との間)に接続された送信用高周波信号RFtを間欠的に通過させるRFスイッチ3と、分岐器2の他方の出力端2cとハイブリッド4の第3の端子4cとの間に接続された、他方の出力端2cに分岐された高周波信号と送受信アンテナ5で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー6と、このミキサー6の出力端に接続された、開状態で中間周波信号を遮断し、送信用高周波信号RFtが非出力状態で安定したときに閉状態となって中間周波信号を通過させるIFスイッチ7とを備えている構成である。
【0044】
また、図2に示す本発明の第2の高周波送受信器の実施の形態の一例は、高周波信号を発生する高周波発振器1と、この高周波発振器1に接続された、高周波信号を分岐して一方の出力端2bと他方の出力端2cとに出力する分岐器2と、一方の出力端2bに接続された送信アンテナ9と、分岐器2の他方の出力端2c側に接続された受信アンテナ10と、高周波発振器1と分岐器2との間または分岐器2と送信アンテナ9との間(この例では分岐器2と送信アンテナ9との間)に接続された送信用高周波信号RFtを間欠的に通過させるRFスイッチ3と、分岐器2の他方の出力端2cと受信アンテナ10との間に接続された、他方の出力端2cに分岐された高周波信号と受信アンテナ10で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー6と、このミキサー6の出力端に接続された、開状態で中間周波信号を遮断し、送信用高周波信号RFtが非出力状態で安定したときに閉状態となって中間周波信号を通過させるIFスイッチ7とを備えている構成である。
【0045】
上記構成において、IFスイッチ7は、送信用高周波信号RFtを間欠的に送信する前後で、その送信用高周波信号RFtの出力状態が不安定な時には開状態となって中間周波信号を遮断し、その出力状態が安定してから閉状態となって中間周波信号を通過させるように動作する。このようにIFスイッチ7を動作させるためには、具体的には、IFスイッチ7の開閉を制御するスイッチング制御部(図示せず)に遅延線路もしくは遅延回路要素を設け、RFスイッチ3の開閉信号から一定時間だけ遅延させたタイミングで、そのスイッチング制御部においてIFスイッチ7の開閉を制御する信号を発生させるようにすればよい。また、IFスイッチ7としては、具体的には、CMOS,TTL等の半導体論理素子、アナログIC、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)、メカニカルスイッチまたはMEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ)スイッチ等を用いればよい。
【0046】
また、RFスイッチ3としては、例えば砒化ガリウム(GaAs)製電界効果トランジスタ(MESFET)や砒化ガリウム(GaAs)製PINダイオード等の半導体素子から成るスイッチを用いればよい。また、このようなRFスイッチ3は高周波発振器1と分岐器2との間および分岐器2とハイブリッド4もしくは送信アンテナ9との間に接続された高周波信号を伝送する高周波用伝送線路のいずれか一方の途中に挿入すればよい。その際、高周波用伝送線路としてマイクロストリップ線路やコプレーナ線路等のTEM伝送線路を用いる場合には、ストリップ導体(接地導体から一定距離だけ離隔させた信号線路である。)に直列にRFスイッチ3を接続すればよい。また、高周波用伝送線路として導波管や非放射性誘電体線路を用いる場合には、導波管または非放射性誘電体線路を構成する誘電体線路の中途に図12に示すものと同様のPINダイオード等を実装した基板を、そのPINダイオード等に流れる電流の方向がその高周波用伝送線路に伝送される高周波信号の電界の方向に平行になるように設ければよい。
【0047】
なお、非放射性誘電体線路等を用いたこのようなRFスイッチ3は、PINダイオード等に順方向バイアス電圧ならびに無バイアス電圧および逆方向バイアス電圧のいずれかを印加することにより高周波信号を通過させたり反射したりすることができることは言うまでもない。
【0048】
また、高周波発振器1とRFスイッチ3との(好ましくは分岐器2の入力端2a側の)間には、RFスイッチ3をオフ状態にしたときにRFスイッチ3で反射して高周波発振器1に戻る高周波信号を抑制するためのアイソレータを設けることが好ましい。
【0049】
図1および図2にブロック回路図で示す本発明の第1および第2の高周波送受信器の実施の形態の例は、上記構成とすることから、送信用高周波信号RFtを間欠的に送信する際に、この送信用高周波信号RFtの強度が不安定な時にIFスイッチ7が中間周波信号を遮断するように開(オフ)状態となるため、RFスイッチ3に入力されるスイッチング制御信号にパルス波形歪み等のノイズが含まれていて、このノイズが送信用高周波信号RFtに混入し、さらにこのようなノイズを含んだ送信用高周波信号RFtの一部がミキサー6側に漏洩したとしても、IFスイッチ7が、このようなノイズを含んだ送信用高周波信号RFtの一部に対応する中間周波信号を適切に遮断するように働くので、S/N(信号対ノイズ)比を高くすることができ、受信性能を高くすることができる。
【0050】
さらに、これら本発明の第1および第2の高周波送受信器の実施の形態の例において、好ましくは次のように構成するとよい。
【0051】
IFスイッチ7は、閉状態となった後、RFスイッチ3から次の送信用高周波信号RFtが出力される前に開状態とするとよい。このようにするには、スイッチング制御部に上記遅延線路もしくは遅延回路要素とは別にさらに同様の遅延線路もしくは遅延回路要素を設けるか、または別の開閉制御用の信号を入力するようにすればよい。これにより、次の中間周波信号が出力される前に、ノイズを含むパルス化された送信用高周波信号がミキサー6に混入してミキサー6の後段に接続される受信系にノイズを含む中間周波信号が漏れることがないようにその信号をIFスイッチ7で良好に遮断することができるので、さらにS/N比を高くすることができ、すなわち受信性能を高くすることができる。
【0052】
また、RFスイッチ3は、主要な構成要素としてIII−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子を用いるとよい。III−V族化合物半導体を含む材料としては、砒化ガリウム(GaAs)、インジウム・燐(InP)およびインジウム・アンチモン(InSb)の他、砒化ガリウム(GaAs)にインジウム(In)もしくはアルミニウム(Al)を含んだ砒化インジウム・ガリウム(InGaAs)、砒化ガリウム・アルミニウム(GaAlAs)、砒化インジウム・ガリウム・アルミニウム(InGaAlAs)もしくは砒化インジウム・アルミニウム・ガリウム(InAlGaAs)、またはこれら、砒化インジウム(InAs)、砒化アルミニウム(AlAs)および砒化インジウム・アルミニウム(InAlAs)の混晶もしくは多層超格子(MQW)を用いればよい。また、これらのいずれかの材料から成る半導体素子としては、ダイオード、バイポーラトランジスタまたは電界効果トランジスタ(FET)を用いればよい。この場合には、このようなIII−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子は、キャリアの移動度が大きくてライフタイムが短いため、RFスイッチ3において、この半導体素子に変調電流を流す際、RFスイッチ3の変調電流を過渡状態から速やかに定常状態に収束させることができるので、この変調電流に対応するパルス化された送信用高周波信号も速やかに定常状態に収束させることができ、パルス化された送信用高周波信号を出力した後、早いタイミングでIFスイッチ7を閉(オン)状態にしても、送信用高周波信号にパルスの立ち上がり直後に発生する不要な信号が混入した中間周波信号がミキサー6の後段に出力されることがなくなり、中間周波信号が遮断されることにより送受信することができなくなる時間を短縮することができる。
【0053】
なお、RFスイッチ3の動作に特に高速が要求されない場合には、III−V族化合物半導体の他に、シリコン(Si)やシリコン・ゲルマニウム(SiGe)混晶等を用いても構わない。
【0054】
IFスイッチ7の後段には、このIFスイッチ7の開閉時に中間周波信号に加わる雑音を阻止するとともに中間周波信号を通過させるフィルタを設けるとよい。このときには、IFスイッチ7が開閉動作するときに発生して中間周波信号に加わる雑音であるスイッチングノイズをその後段のフィルタで除去することができるので、不要な雑音信号が周囲の別の回路系に混入するのを確実に抑制することができる。また、不要な雑音信号がフィルタにより除去されるので、受信すべき中間周波信号の識別が容易に、かつ確実に行なえるようになる。
【0055】
また、その場合に、ミキサー6の出力端とIFスイッチ7との間にそのフィルタの3dBカットオフ周波数よりも低い周波数の試験用信号が入力されるときには、この試験用信号は中間周波信号よりも周波数が低く、IFスイッチ7の開閉時に中間周波信号に加わる雑音は中間周波信号よりも周波数が高いので、これら中間周波信号および雑音とは別にIFスイッチ7を通過しフィルタで除去されることなく出力させることができるので、この試験用信号がIFスイッチ7およびフィルタを通して出力されることを確認することにより、スイッチングノイズ除去に影響を与えることなく高周波送受信器に効果的な自己診断機能を簡単に備えることができる。
【0056】
また、IFスイッチ7にスイッチングノイズを発生させるための試験用開閉信号が入力されるとともに、IFスイッチ7とそのフィルタとの間にスイッチングノイズの検出端子を設けてもよい。このときには、試験用開閉信号が入力されることによってIFスイッチ7が微弱なスイッチングノイズを発生するため、試験用信号を改めて減衰器等で減衰させたりしなくても、このスイッチングノイズを減衰された試験用信号として利用して後段の回路に入力して、その後段の回路に接続された増幅器等の能動回路を飽和させることなく、IFスイッチ7とフィルタとの間に設けた検出端子で検出することができるので、簡便に自己診断機能を備えたものとすることができる。
【0057】
また、このような構成においてRFスイッチ3に例えばパルス状のスイッチング制御信号を入力する入力部に、スイッチング制御用信号とは別に直流状の信号を切り替えて入力する信号切り替え用スイッチ(例えば後述する切替えRFスイッチ8のようなもの)を設けてもよい。このような信号切り替え用スイッチとしては、例えばSPDTと称される機能を有したCMOS半導体スイッチ等やIFスイッチ7と同種で2系統切り替え可能なものを用いればよい。このときには、この信号切り替え用スイッチが、スイッチング制御用信号をRFスイッチ3に入力するのとは別に、RFスイッチ3で用いられる入力信号の信号経路を切り替えるように動作することにより、動作試験用信号源として例えば直流電源によって発生された直流状の信号をRFスイッチ3に入力することができるので、RFスイッチ3にパルス状のスイッチング制御用信号を入力できるだけではなく、この高周波送受信器の送信系の動作試験用として、直流電圧等の直流状の信号を入力することができ、それに対応したRFスイッチ3の出力を後段の送信回路に出力させることによって送信回路の動作試験(故障診断)を行なわせることができる、送信回路の故障診断機能をも備えたものとすることができる。
【0058】
また、その際は、信号切り替え用スイッチに並列にコンデンサを接続するとよい。このときには、このコンデンサが、信号切り替え用スイッチの内部に存在する寄生容量(寄生キャパシタンス)を打ち消して、信号切り替え用スイッチの寄生容量によって発生する信号切り替え用スイッチでのパルス状のスイッチング制御信号の高周波成分の反射を小さくするように働くので、歪みの少ないスイッチング制御信号をRFスイッチ3に入力できるものとなる。また、RFスイッチ3から送出される例えばパルス状の送信用高周波信号の信号レベルが安定するため、送信用高周波信号の一部がミキサー6に混入して後段の受信系に漏れないように遮断するIFスイッチ7を、送信用高周波信号を送出後、すぐに閉(オン)にしても、不要な中間周波信号を出力することがなく、送信用高周波信号を送出後、すぐに受信を行なうことができる。
【0059】
次に、図3に示す本発明の第3の高周波送受信器の実施の形態の一例は、高周波信号を発生する高周波発振器1と、この高周波発振器1に接続された、高周波信号を切り替えて一方の出力端2bに送信用高周波信号RFtとして出力するかまたは他方の出力端2cにローカル信号LOとして出力する切替えRFスイッチ8’と、入力端8”b,出力端8”cおよび入出力端8”aを有し一方の出力端8’bに入力端8”bが接続された、入力端8”bまたは出力端8”cに入出力端8”aを切り替えて接続する第2の切替えRFスイッチ8”と、この第2の切替えRFスイッチ8”の入出力端8”aに接続された送受信アンテナ5と、切替えRFスイッチ8’の他方の出力端8’cと第2の切替えRFスイッチ8”の出力端8”cとの間に接続された、他方の出力端8’cに出力されたローカル信号LOと送受信アンテナ5で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー6と、このミキサー6の出力端に接続された、開状態で中間周波信号を遮断し、送信用高周波信号RFtが非出力状態で安定したときに閉状態となって中間周波信号を通過させるIFスイッチ7とを備えている構成である。
【0060】
また、図4に示す本発明の第4の高周波送受信器の実施の形態の一例は、高周波信号を発生する高周波発振器1と、この高周波発振器1に接続された、高周波信号を切り替えて一方の出力端8bに送信用高周波信号として出力するかまたは他方の出力端8cにローカル信号LOとして出力する切替えRFスイッチ8と、一方の出力端8bに接続された送信アンテナ9と、切替えRFスイッチ8の他方の出力端8c側に接続された受信アンテナ10と、切替えRFスイッチ8の他方の出力端8cと受信アンテナ10との間に接続された、他方の出力端8cに出力されたローカル信号LOと受信アンテナ10で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー6と、このミキサー6の出力端に接続された、開状態で中間周波信号を遮断し、送信用高周波信号RFtが非出力状態で安定したときに閉状態となって中間周波信号を通過させるIFスイッチ7とを備えている構成である。
【0061】
上記構成において、切替えRFスイッチ8,8’および第2の切替えスイッチ8”としては、例えば砒化ガリウム(GaAs)製電界効果トランジスタ(MESFET)や砒化ガリウム(GaAs)製PINダイオード等の半導体素子から成るいわゆるSPDT(Single Port Double Throw)スイッチを用いればよい。このような切替えRFスイッチ8,8’の入力端8a,8’aを高周波発振器1に接続し、切替えRFスイッチ8,8’をスイッチングさせることにより高周波発振器1で発生した高周波信号を、一方の出力端8b,8’bに送信用高周波信号RFtとして出力するかまたは他方の出力端8c,8’cにローカル信号LOとして出力するようにすればよい。
【0062】
このような切替えRFスイッチ8,8’は、送信用高周波信号RFtからローカル信号LOに出力が切り替わった瞬間に送信用高周波信号RFtを完全に遮断し、一方の出力端8b,8’b側にノイズを発生させないことが理想であるが、実際には切替えRFスイッチ8,8’に入力されるスイッチング制御信号が持つ歪みや切替えRFスイッチ8,8’自身が持つスイッチング特性のために、送信用高周波信号RFtからローカル信号LOに出力が切り替わった後に一方の出力端8b,8’bにスイッチングの際のノイズが出力され、これが十分に減衰するまでに一定時間を要する。そして、このようなノイズがミキサー6に漏洩するとミキサー6からノイズとしての不要な中間周波信号が出力されることとなる。そこで、本発明の第3および第4の高周波送受信器においても、上記本発明の第1および第2の高周波送受信器の場合と同様にIFスイッチ7を用いることが有効である。
【0063】
すなわち、上記構成において、IFスイッチ7は、送信用高周波信号RFtを間欠的に送信する前後で、その送信用高周波信号RFtの出力状態が不安定な時には開状態となって中間周波信号を遮断し、その出力状態が安定してから閉状態となって中間周波信号を通過させるように動作する。このようにIFスイッチ7を動作させるためには、具体的には、IFスイッチ7の開閉を制御するスイッチング制御部(図示せず)に遅延線路もしくは遅延回路要素を設け、RFスイッチ3の開閉信号から一定時間だけ遅延させたタイミングで、そのスイッチング制御部においてIFスイッチ7の開閉を制御する信号を発生させるようにすればよい。また、IFスイッチ7としては、具体的には、CMOS,TTL等の半導体論理素子、アナログIC、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)、メカニカルスイッチまたはMEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ)スイッチ等を用いればよい。
【0064】
本発明の第3および第4の高周波送受信器によれば、上記構成とすることから、高周波信号を切替えRFスイッチ8’(切替えRFスイッチ8)により送信用高周波信号RFtとローカル信号LOとに切り替えて送信用高周波信号RFtを間欠的に送信する際に、この送信用高周波信号RFtの強度が不安定な時にIFスイッチ7が中間周波信号を遮断するように開(オフ)状態となるため、切替えRFスイッチ8’(切替えRFスイッチ8)に入力される開閉信号にパルス波形歪み等のノイズが含まれていて、このノイズが送信用高周波信号RFtに混入し、さらにこのようなノイズを含んだ送信用高周波信号RFtの一部がミキサー6側に漏洩したとしても、IFスイッチ7が、このようなノイズを含んだ送信用高周波信号RFtの一部に対応する中間周波信号を適切に遮断するように働くので、S/N(信号対ノイズ)比を高くすることができ、受信性能を高くすることができる。
【0065】
また、本発明の第3および第4の高周波送受信器においても、切替えRFスイッチ8’(切替えRFスイッチ8)は、III−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子が用いられるとよい。前述の理由と同様に送受信することができなくなる時間を減らすことができるからである。
【0066】
次に、図5および図6のそれぞれにブロック回路図で示す本発明の第3および第4の高周波送受信器の実施の形態の他の例は、好ましい構成として、図3および図4のそれぞれにブロック回路図で示す高周波送受信器に対して、切替えRFスイッチ8’(切替えRFスイッチ8)は、入力された高周波信号を分岐して一方の出力端2bと他方の出力端2cとに出力する分岐器2と、一方の出力端2bおよび他方の出力端2cのそれぞれに接続された第1および第2のPINダイオード3’,3”とを備えており、それら第1および第2のPINダイオード3’,3”の少なくとも一方に順方向バイアス電圧を印加するバイアス回路(図示せず)が接続されている構成である。
【0067】
また、このような高周波送受信器の高周波伝送部には、例えば図6に示す高周波送受信器の場合において図7に平面図で示すように、各構成要素間を接続する高周波用伝送線路としては非放射性誘電体線路を用い、その中途にRFスイッチ3’,3”として図12に示すものと同様のPINダイオードを実装した基板を挿入すると、非放射性誘電体線路およびRFスイッチ3’,3”は高周波の通過の損失が小さいため、例えば周波数が76GHz程度のミリ波信号に対して高い送受信性能が得られる点で有利である。
【0068】
図5および図6のそれぞれにブロック回路図で示す本発明の第3および第4の高周波送受信器の実施の形態の他の例によれば、上記図3および図4に示す高周波送受信器と同様の作用効果を有する他に、第1および第2のPINダイオード3’,3”の少なくとも一方が低インピーダンスとなるため、第1および第2のPINダイオード3’,3”をスイッチングしても高周波信号の入力側(高周波発振器1側)から見たインピーダンスを常に低くかつ安定にすることができるのでアイソレータ等を用いなくても高周波発振器1の負荷変動を抑制し、高周波信号の発振周波数を安定にすることができる利点がある。
【0069】
また、このような構成では、送信用高周波信号RFtが送信されると同時にローカル信号LOがミキサー6に入力される時間帯が存在するために、その時間帯において送信用高周波信号RFtの一部がミキサー6に漏洩することに起因するノイズとしての中間周波信号が発生してしまうことがあるが、そのようなノイズとしての中間周波信号はIFスイッチ7により遮断されるので、全体として送信周波数を安定にすることができて、かつ受信のS/N(信号対ノイズ)比を高くすることができる。
【0070】
次に、上記本発明の第1〜第4の高周波送受信器において、各構成要素は、上記以外に詳細には、次のように構成すればよい。
【0071】
非放射性誘電体線路の構成要素である誘電体線路の材質には、四フッ化エチレン,ポリスチレン等の樹脂、または低比誘電率のコーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)セラミックス,アルミナ(Al2O3)セラミックス,ガラスセラミックス等のセラミックスが好ましく、これらはミリ波帯域において低損失である。また、誘電体線路の断面形状は基本的には矩形状であるが、矩形の角部をまるめた形状であってもよく、ミリ波信号の伝送に使用される種々の断面形状のものを使用することができる。
【0072】
また、平板導体11の材質には、高い電気伝導度および良好な加工性等の点で、Cu,Al,Fe,Ag,Au,Pt,SUS(ステンレススチール),真鍮(Cu−Zn合金)等の導体板が好適である。あるいは、セラミックス,樹脂等から成る絶縁板の表面にこれらの導体層を形成したものでもよい。
【0073】
また、基板88は、四フッ化エチレン,ポリスチレン,ガラスセラミックス,ガラスエポキシ樹脂,エポキシ樹脂等から成る板状の基体の一主面に、アルミニウム(Al),金(Au),銅(Cu)等から成るストリップ導体等によるチョーク型バイアス供給線路90を形成したものが使用される。
【0074】
また、各回路要素間を接続し高周波信号を伝送する高周波用伝送線路としては、非放射性誘電体線路の他にも、導波管,誘電体導波管,誘電体導波管線路,ストリップ線路,マイクロストリップ線路,コプレーナ線路,スロット線路,同軸線路等の高周波用伝送線路を、使用する周波数帯域や用途に応じて選択して用いても構わない。また、使用する周波数帯域は、ミリ波帯以外に、マイクロ波帯またはそれ以下の周波数帯であっても有効である。
【0075】
次に、本発明の高周波送受信器を用いたレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶について説明する。
【0076】
本発明のレーダ装置の実施の形態の一例は、上記本発明の第1〜第4のいずれかの高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを備えている構成である。
【0077】
上記構成において、距離情報検出器は、検出した中間周波信号の信号処理をして、このレーダ装置から探知対象物までの距離および方向を含む距離情報を出力するためのものである。例えば、距離情報検出器は、中間周波信号を、位置情報として演算する微分回路,積分回路,二乗回路等を備えた演算回路と、この演算回路の出力を判別する判別回路と、これら演算回路および判別回路と高周波送受信器とを一連のシーケンスに従って動作させるコンピュータとを具備するようなものである。演算回路や判別回路には、演算増幅器(オペアンプ)やコンパレータ等を組み合わせた回路を用いればよい。また、必要に応じて、スイッチ,増幅器またはフィルタ等を用いればよい。また、それらの演算や判別の過程において、アナログ信号を一端ディジタル信号に変換し、ディジタル信号でそれらの演算や判別を処理し、必要に応じてディジタル信号をアナログ信号に変換する、A−D変換器およびD−A変換器を用いてもよい。その際、A−D変換されたディジタル信号を演算する演算回路には、例えば、高速フーリエ変換(FFT)等をするディジタルシグナルプロセッサ(DSP)を用いればよい。
【0078】
このような本発明のレーダ装置の実施の形態の一例によれば、構成要素である高周波送受信器に本発明の第1〜第4のいずれかの高周波送受信器を用いており、その受信性能が高いため、早く確実に探知対象物を探知することができるとともに至近距離や遠方の探知対象物をも探知することができる。なお、本発明の高周波送受信器は、レーダ装置の他にも、例えば、このような高周波送受信器を、例えば無線LANで使用される無線装置の物理層(フィジカルレイヤー)である、いわゆるフィジカル・メディア・ディペンダント(PMD)装置として用い、このPMD装置と、さらにその上位層の装置であるフィジカル・メディア・アタッチメント(PMA)装置,メディア・アクセス・コントローラ(MAC)装置,その他の装置とからなる構成として無線装置に用いてもよい。
【0079】
また、本発明のレーダ装置搭載車両は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いる構成である。
【0080】
本発明のレーダ装置搭載車両は、このような構成としたことから、従来のレーダ装置搭載車両と同様に、レーダ装置で検出された距離情報に基づいて車両の挙動を制御したり、運転者に例えば路上の障害物や他の車両等を探知したことを音,光もしくは振動で警告したりすることができるが、本発明のレーダ装置搭載車両においては、探知対象物である路上の障害物や他の車両等をレーダ装置が早く確実に探知するため、急激な挙動を車両に起こさせることなく、車両の適切な制御や運転者への適切な警告をすることができる。
【0081】
なお、本発明のレーダ装置搭載車両は、具体的には、汽車,電車,自動車等旅客や貨物を輸送するための車はもちろんのこと、自転車,原動機付き自転車,遊園地の乗り物,ゴルフ場のカート等にも用いることができる。
【0082】
また、本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いる構成である。
【0083】
本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、このような構成としたことから、従来のレーダ装置搭載車両と同様に、小型船舶において、レーダ装置で検出された距離情報に基づいて小型船舶の挙動を制御したり、操縦者に例えば暗礁等の障害物,他の船舶もしくは他の小型船舶等を探知したことを音,光もしくは振動で警告したりするように動作するが、本発明のレーダ装置搭載小型船舶においては、探知対象物である暗礁等の障害物,他の船舶もしくは他の小型船舶等をレーダ装置が早く確実に探知するため、急激な挙動を小型船舶に起こさせることなく、小型船舶の適切な制御や操縦者への適切な警告をすることができる。
【0084】
なお、本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、具体的には、小型船舶の免許もしくは免許なしで操縦することができる船舶であって、総トン数20トン未満の船舶である手漕ぎボート,ディンギー,水上オートバイ,船外機搭載の小型バスボート,船外機搭載のインフレータブルボート(ゴムボート),漁船,遊漁船,作業船,屋形船,トーイングボート,スポーツボート,フィッシングボート,ヨット,外洋ヨット,クルーザーまたは総トン数20トン以上のプレジャーボートに用いることができる。
【0085】
かくして、本発明によれば、送信用高周波信号の一部が受信側に漏洩し、その送信用高周波信号のスイッチング等に起因するノイズとしての中間周波信号が受信系に出力されるのを遮断できる開閉器を有した高周波送受信器において、送信用高周波信号をスイッチングする過渡的な状態においてもそのようなノイズとしての中間周波信号を確実に遮断することができる受信性能の高い高周波送受信器、およびそれを用いた、探知対象物を早く確実に探知することができる高性能なレーダ装置、ならびにその高性能なレーダ装置を搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶を提供することができる。
【0086】
なお、本発明は上記実施の形態の例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。例えば、本発明の高周波送受信器においてIFスイッチ7の出力端に高速で動作する演算増幅器(オペアンプ)の一方の入力端子を接続し、この演算増幅器の他方の入力端子および出力端子のそれぞれに、そのIFスイッチと同種であって、なるべく特性の等しいもう一つのIFスイッチおよび受信系の後段の回路を接続してもよい。この場合には、演算増幅器が、IFスイッチ自身が発生させるスイッチングノイズ等の不要な信号を、もう一つのIFスイッチが発生させる同様の信号で相殺するように動作するため、そのような不要な信号が受信系の後段の回路に入力されることが抑制される高周波送受信器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1の高周波送受信器の実施の形態の一例を模式的に示すブロック回路図である。
【図2】本発明の第2の高周波送受信器の実施の形態の一例を模式的に示すブロック回路図である。
【図3】本発明の第3の高周波送受信器の実施の形態の一例を模式的に示すブロック回路図である。
【図4】本発明の第4の高周波送受信器の実施の形態の一例を模式的に示すブロック回路図である。
【図5】本発明の第3の高周波送受信器の実施の形態の他の例を模式的に示すブロック回路図である。
【図6】本発明の第4の高周波送受信器の実施の形態の他の例を模式的に示すブロック回路図である。
【図7】図6に示す高周波送受信器の高周波伝送部の例を模式的に示す平面図である。
【図8】従来の高周波送受信器をミリ波レーダとして用いたときの各部の構成を示すブロック回路図である。
【図9】非放射性誘電体線路の基本的な構成を示す部分破断斜視図である。
【図10】送受信アンテナを有する高周波送受信器の平面図である。
【図11】送信アンテナおよび受信アンテナを有する高周波送受信器の平面図である。
【図12】高周波送受信器のパルス変調器の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0088】
1:高周波発振器
2:分岐器
3,3’,3”:RFスイッチ(スイッチ)
4:ハイブリッド
5:送受信アンテナ
6:ミキサー
7:IFスイッチ(開閉器)
8,8’:切替えRFスイッチ(切替えスイッチ:単極2方向切り替え型)
8”:第2の切替えRFスイッチ(第2の切替えスイッチ:単極2方向切り替え型)
9:送信アンテナ
10:受信アンテナ
11:下側の平板導体(上側の平板導体は図示せず)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、第1,第2および第3の端子を有し前記一方の出力端に前記第1の端子が接続された、前記第1の端子から前記第2の端子に前記高周波信号を送信用高周波信号として通過させ、前記第2の端子から前記第3の端子に高周波信号を通過させるハイブリッドと、このハイブリッドの前記第2の端子に接続された送受信アンテナと、前記高周波発振器と前記分岐器との間または前記分岐器と前記ハイブリッドとの間に接続された前記送信用高周波信号を間欠的に通過させるスイッチと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記ハイブリッドの前記第3の端子との間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とする高周波送受信器。
【請求項2】
高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された送信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記高周波発振器と前記分岐器との間または前記分岐器と前記送信アンテナとの間に接続された前記送信用高周波信号を間欠的に通過させるスイッチと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とする高周波送受信器。
【請求項3】
高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を切り替えて一方の出力端に送信用高周波信号として出力するかまたは他方の出力端にローカル信号として出力する切替えスイッチと、入力端,出力端および入出力端を有し前記一方の出力端に前記入力端が接続された、前記入力端または前記出力端に前記入出力端を切り替えて接続する第2の切替えスイッチと、この第2の切替えスイッチの前記入出力端に接続された送受信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端と前記第2の切替えスイッチの前記出力端との間に接続された、前記他方の出力端に出力されたローカル信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とする高周波送受信器。
【請求項4】
高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を切り替えて一方の出力端に送信用高周波信号として出力するかまたは他方の出力端にローカル信号として出力する切替えスイッチと、前記一方の出力端に接続された送信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に出力されたローカル信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とする高周波送受信器。
【請求項5】
前記スイッチは、III−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子が用いられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高周波送受信器。
【請求項6】
前記切替えスイッチは、入力された高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端および前記他方の出力端のそれぞれに接続された第1および第2のPINダイオードとを具備しており、これら第1および第2のPINダイオードの少なくとも一方に順方向バイアス電圧を印加するバイアス回路が接続されていることを特徴とする請求項3または請求項4記載の高周波送受信器。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される前記中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを具備することを特徴とするレーダ装置。
【請求項8】
請求項7記載のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするレーダ装置搭載車両。
【請求項9】
請求項7記載のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするレーダ装置搭載小型船舶。
【請求項1】
高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、第1,第2および第3の端子を有し前記一方の出力端に前記第1の端子が接続された、前記第1の端子から前記第2の端子に前記高周波信号を送信用高周波信号として通過させ、前記第2の端子から前記第3の端子に高周波信号を通過させるハイブリッドと、このハイブリッドの前記第2の端子に接続された送受信アンテナと、前記高周波発振器と前記分岐器との間または前記分岐器と前記ハイブリッドとの間に接続された前記送信用高周波信号を間欠的に通過させるスイッチと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記ハイブリッドの前記第3の端子との間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とする高周波送受信器。
【請求項2】
高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された送信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記高周波発振器と前記分岐器との間または前記分岐器と前記送信アンテナとの間に接続された前記送信用高周波信号を間欠的に通過させるスイッチと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とする高周波送受信器。
【請求項3】
高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を切り替えて一方の出力端に送信用高周波信号として出力するかまたは他方の出力端にローカル信号として出力する切替えスイッチと、入力端,出力端および入出力端を有し前記一方の出力端に前記入力端が接続された、前記入力端または前記出力端に前記入出力端を切り替えて接続する第2の切替えスイッチと、この第2の切替えスイッチの前記入出力端に接続された送受信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端と前記第2の切替えスイッチの前記出力端との間に接続された、前記他方の出力端に出力されたローカル信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とする高周波送受信器。
【請求項4】
高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を切り替えて一方の出力端に送信用高周波信号として出力するかまたは他方の出力端にローカル信号として出力する切替えスイッチと、前記一方の出力端に接続された送信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記切替えスイッチの前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に出力されたローカル信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、このミキサーの出力端に接続された、開状態で前記中間周波信号を遮断し、前記送信用高周波信号が非出力状態で安定したときに閉状態となって前記中間周波信号を通過させる開閉器とを具備することを特徴とする高周波送受信器。
【請求項5】
前記スイッチは、III−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子が用いられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高周波送受信器。
【請求項6】
前記切替えスイッチは、入力された高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端および前記他方の出力端のそれぞれに接続された第1および第2のPINダイオードとを具備しており、これら第1および第2のPINダイオードの少なくとも一方に順方向バイアス電圧を印加するバイアス回路が接続されていることを特徴とする請求項3または請求項4記載の高周波送受信器。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される前記中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを具備することを特徴とするレーダ装置。
【請求項8】
請求項7記載のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするレーダ装置搭載車両。
【請求項9】
請求項7記載のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするレーダ装置搭載小型船舶。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−242687(P2006−242687A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57221(P2005−57221)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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