説明

高圧プラズマ処理方法および装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コンタクトホールおよび/またはビア(via:スルーホール)が形成された最上層を有する半導体ウエハを予備洗浄(precleaning )するためのスパッタエッチング処理に関する。
【0002】
【従来の技術】高アスペクト比(すなわち幅に対する深さの比が2より大)を有するサブ(0.5)ミクロンの直線的な壁で囲まれたコンタクト(straight walled contact)は、コリメート(collimated)Ti/TiN PVD(物理的蒸気堆積)技術を用い、その後CVD−W(タングステンを用いた化学的蒸気堆積)、PVDAl/リフローまたはコールド/ホットPVD Alを用いて金属被覆することによって前記コンタクトを完全に埋め込んでもよい。しかしながら、図1に示すように、直線的なコンタクト(コンタクトホール)の側壁10および鋭い上側の角12は、コヒーレントTi/TiN堆積において内曲(re-entrant)した構造すなわち張り出し部(overhang)14を引き起こす。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】コリメートPVDは垂直な側壁を有するコンタクトの底面全体を被覆可能であることは判明しているが、上記のコンタクトの側壁が(部分的に)内曲しているとコンタクトの壁および基底部の部分に材料のボイドが実際的に残存する可能性がある。そのことから、デバイスの大量生産において、コンタクトホール内に内曲した構造が完全に存在しないことを保証することは困難なことが証明されるものである。例えば、Si、ケイ化物または誘電性スタック上で等方性エッチング成分を有するエッチングを用いることによって内曲した壁が発生する可能性がある。コンタクト外縁付近の小さな領域でTiコンタクト層がより薄いかあるいは完全になかったとしてもデバイス性能への重大な影響はないようであるが、これらの領域におけるバリヤ材料の欠如あるいは前記バリヤの微細構造における不連続性はWF化学作用(WF chemistry)またはAl金属被覆法との相互作用によって突発的な接合不良の原因となる可能性がある。この理由から、コンタクトの底部の領域に堆積されるTiNには、前記コンタクトの信頼性の高い保護を確実に得るために少なくとも200オングストローム(20ナノメーター)の厚さを有することが一般的に要求される。典型的なコリメートPVD法並びに2/1アスペクト比のコンタクトに対しては、これは約700オングストローム(70ナノメーター)の上記領域上のTiN厚さに対応するものである。ここで注意すべき点は、コリメートPVD層それ自体がコンタクトの上部領域で内曲した状態となり、その厚みがコンタクトの幅のかなりの部分を占めることになるであろうということである。これが、続いて行なわれるAl堆積またはWプラグ充填中におけるボイド形成を導く可能性がある。
【0004】上記の内曲した構造はまた、続いて行なわれるW堆積中における他の困難性をも引き起こす。例えば、上記の内曲した構造の下方の狭い領域で始まるウエハからのTiN層の剥離とみなされる“ヴァルケイノ(volcano )”が上記の内曲した構造によって引き起こされる可能性がある。上記の内曲した構造はまた、PVD Al/リフローまたはコールド/ホットPVD Alによってコンタクトを埋め込むことをより困難にする。
【0005】コンタクトホールの上側の角を面取り(facetting )すなわち丸めることによって、コリメートTi/TiN PVD堆積の後の内曲した外形の形成を防止または大いに低減することが可能なことが知られている(例えば、A.Ohsakiらによる“Collimated Sputtering of TiN/Ti for ULSI”,Proc.2d International Symposium on ISSP '93,Tokyo(1993)が参照される)。また、コンタクトの底部の領域を洗浄するのにしばしば使用されるような低圧Arスパッタエッチングによってもコンタクトの上方の角が面取りされるであろうことも知られている。しかしながら、低圧Arスパッタエッチングを用いると、コンタクトの底部でエッチングされる材料の量をなお制限しつつ上記の上方の角の十分な面取りを達成することは実際問題として不可能であることを本発明者らは見出している。このことは、高度の生産量が要求される生産操業には特に当てはまる。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明は、コンタクトの底部の領域から相当量の材料を除去することなくコンタクトの上方の角の効率的な面取りを可能とするものである。本発明に係る面取りは、コリメートTi/TiN PVD層およびその後のWまたはAl埋め込みの十分な適用を容易にする。
【0007】概して本発明は、その一方の面において、ウエハの予備洗浄の方法である。この方法は、プラズマチャンバー内にウエハを配置するステップ;前記プラズマチャンバーの中にガスを流すステップ;その中が第一の圧力を有する前記チャンバー中にプラズマを生じさせるステップ;前記プラズマを生じさせた後に前記第一の圧力でウエハを第一の期間プラズマエッチングするステップ;前記チャンバー内の圧力を前記第一の圧力と相違する第二の圧力に移行させるステップ;前記第二の圧力でウエハを第二の期間プラズマエッチングするステップ;および前記第二の期間が経過した後に前記第二の圧力でのプラズマエッチングを停止するステップを含む。
【0008】前記第一の圧力は、好ましくは10ミリトールより高く、より好ましくは約50ミリトールより高く、特に好ましくは100ミリトールより高い。また、前記第二の圧力は、好ましくは10ミリトールより低く、より好ましくは1ミリトールより低い。
【0009】好ましい実施態様は以下の諸特徴を含むものである。前記第一の圧力の大きさが前記第二の圧力の大きさと少なくとも1桁相違する(例えば、前記第一の圧力の大きさが1桁高い)。より具体的には、前記第一の圧力が10ミリトールより高く、かつ前記第二の圧力が1ミリトールより低い。上記のガスは無反応性のガス、例えばアルゴンである。上記の方法はまた、前記第二の圧力に移行する間にチャンバー内にプラズマを維持するステップ、並びに前記第二の圧力でのプラズマエッチングを停止した後にプラズマチャンバーへの供給電力を低下するステップをも包含する。上記の方法はさらに、前記第二の圧力でのプラズマエッチングステップを完了した後に、前記最上層の頂部および上記コンタクトホールおよび/またはビア内に金属層を堆積させる蒸気堆積処理を用いるステップも含む。
【0010】また、好ましい実施態様においては、前記2つの圧力の一方で行なうプラズマエッチングステップが主としてコンタクトホールおよび/またはビアの上端の面取りのためであり、他方の圧力で行なうプラズマエッチングステップが主としてコンタクトホールおよび/またはビアの底部の洗浄のためである。
【0011】概して本発明は、その他方の面において、ウエハに2段階プラズマエッチング処理を施すための装置である。この装置は、チャンバー本体と;プラズマエッチング中にウエハを保持するためのチャンバー本体内のプラットホームと;前記プラットホームの周囲に囲いを形成するためにチャンバー本体上に取り付けられる石英ベルジャー(quartz bell jar )と;前記石英ベルジャーを包囲しているコイルと;ウエハの上方にプラズマを発生させるために前記コイルに接続された第一の高周波供給器(RF supply )と;プラズマエッチング中にウエハにバイアスをかけるために前記プラットホームに電力を供給する第二の高周波電力供給器と;低圧段階のプラズマエッチング中にチャンバーへのガス流を制御するための第一の質量流量制御装置と;高圧段階のプラズマエッチング中にチャンバーへのガス流を制御するための第二の質量流量制御装置とを含む。第一の質量流量制御装置は、第二の質量流量制御装置より速い流速に設定される。
【0012】他の有利な点および特徴は、以下の好適な実施態様の説明および特許請求の範囲から明らかとなるところである。
【0013】ガスの圧力が増加するとプラズマ中のイオンの拡散もまた増加する。その結果、ウエハ表面に到達するイオンの角分布が広がることとなる。低圧では、上記の拡散は少なく、ウエハの表面に打ち当たるイオンの大半はウエハに直交する方向に沿って近付く。圧力が増加してイオンの拡散が増加すると、入射イオンの全量のうちのほんの少しの割合がウエハ表面に直交する方向に沿って到達する、コサイン分布の入射角を持つようになる。ウエハ表面に直交する軌跡に沿っているイオンだけはコンタクト開口部の底部に着くであろう。高圧の予備洗浄処理においてはより高い割合のイオンを構成する、上記の直交方向からそれた角度で到達するイオンは、コンタクトの底部に到達する前にコンタクトの側壁に衝突する。コンタクトのアスペクト比がより高いと、コンタクトの底部に到達するイオンの数はより少なくなる。
【0014】また、フィールド層(field layer )の上面からあるいはコンタクトの底部からスパッタされた材料は、後方散乱してそれが出てきた表面上に再堆積する。スパッタされた材料の幾分かのこの再堆積によって有効エッチング速度が減少する。他方、コンタクトホールの上部で側壁に沿って、それが出てきたコンタクトホールの側壁の範囲に戻るスパッタされた材料はより少ない。
【0015】
【実施例】本発明の主題である予備洗浄操作は、様々なプラズマエッチングシステムのいずれでも実施することが可能である。ここに記載する実施態様では、プレクリーンIIチャンバー(Preclean II Chamber )を具備したエンデュラPVDシステム(Endura PVD System )が使用され、両者ともカリフォルニア州サンタクララのアプライドマテリアルズインコーポレイテッドによって製造および販売されている。そのプラズマシステムの基本的な構成要素を図2に概略的に示す。
【0016】上記の予備洗浄システムは、チャンバー本体10およびベルジャー12(場合によりドームと呼ばれる)を具備している。ベルジャー12はチャンバー本体10上に取り付けられ、真空を維持するための密封スパッタリングキャビティ16を形成し、その中でプラズマが発生され得る。ベルジャー12は処理で消耗され得る材料である石英で作製され、内面は粒子の密着を促進するためにビード−ブラスト処理(bead-blast)される。
【0017】キャビティ16内にはペディスタル18が設けられ、ペディスタル18はチャンバー本体の下に配置されているリフト機構20によって昇降される。エッチングされるべきウエハ22は、ペディスタル18の頂部に載せられる。上記のウエハ/ペディスタルがスパッタリングするための位置に持ち上げられている時には、チャンバー本体10に付されている環状シールド24にウエハ22の外側の境目が接触させられる。シールド24は処理で消耗され得るアルミニウムで作製され、上記ベルジャー内のペディスタル上方にプラズマを包入(contain )しかつチャンバー本体のスパッタリングを防止するのに役立つ。シールド24はまた、粒子キャッチャーとして作用し、ウエハ22からエッチングされる酸化物粒子を捕捉する。
【0018】ベルジャー12の上方に、接地された金属保護カバー26内に配置された高周波共振器が存在する。この高周波共振器は、ベルジャー12の外側を巻回する銅コイル28を含む。上記の共振器の外側の金属保護カバーは、隣接したプラズマPVDチャンバーによって発生されるであろう磁場から上記のプラズマエッチング処理を保護し、そしてそれが処理の均一性を改善する傾向がある。コイル28からの高周波エネルギーはベルジャー12を貫通してキャビティー16内にプラズマを生ぜしめる(strike)。
【0019】絞り弁32を含む配管を通じてチャンバー10に接続された真空ポンプ30が、プラズマスパッタリング予備洗浄の準備として前記チャンバーを排気する。加圧アルゴンガスのボトル34が、質量流量制御装置36aを通して前記チャンバーにアルゴンを供給する。チャンバーへのアルゴンの流速と真空ポンプへの絞り弁とを適宜設定することによって所望の運転圧力が得られる。
【0020】デュアル高周波電力供給器(dual RF power supplies)すなわち発生器40および42が上記キャビティーに電力を独立して供給する。高周波発生器42は、容量的に連結された高周波数の電力(例えば13.56MHz)をペディスタル18に供給する(すなわち、ウエハバイアス電力)。それは、使用者が調整可能な全固体ウエハ冷却式電源(all solid-state,wafer-cooled power source )(例えば、Comdel Inc. によるModel CPS-1000/1356 )であり、疑似抵抗に1kW供給することが可能でありかつドリフティングを避けるために具体的に調整される。高周波発生器42は、高周波ケーブル44を介して高周波整合ネットワーク(RF match network)46に接続され、高周波整合ネットワーク46は他のケーブル48を介してペディスタル18に順次接続される。高周波整合ネットワーク46は、高周波発生器42からの高周波ケーブル(50オーム)のインピーダンスに整合させるために上記ペディスタルのインピーダンスを調整する。
【0021】高周波発生器40は、誘導的に連結された共振器のために低周波数の電力(例えば450kHz)を供給する(例えば、プラズマ電力)。高周波発生器40は、全固体空気冷却式プラズマ電源(all solid-state,air-cooled plasma powersource)(例えば、RF Power Products Inc.によるModel LF-10 )であり、内部コンピュータを用いて1kWの自己同調された(350〜450kHz)電力を供給する。コンデンサが前記コイルに連続して付され、50オームにできるだけ近付くようにインピーダンスを整合させる。より低い周波数では前記発生器が高周波数を僅かに変化させることによって自己同調させることが可能なので、整合ネットワークは必要とされない。
【0022】コイル28に約450kHzの低周波数電力が供給され、キャビティー16内にプラズマが生ぜしめられる。コイル28への電力を増加させることによって、ベルジャー12内のプラズマの密度が増加する。
【0023】如何なる予備洗浄処理においても重要なパラメータは、エッチング速度とエッチングの均一性である。概してこれらは、与えられる高周波電力、時間、チャンバー圧力、およびチャンバー内のウエハ位置による公知の方法で制御される。この特定の予備洗浄システムにおいては、エッチング速度と直流オフセット電圧とが独立して制御される。これは、ベルジャー12内にプラズマを生じさせる高周波供給器40を使用すること、並びに独立したイオン源として作用している、ウエハ上方に第二のプラズマを生じさせるウエハバイアス供給器42を使用することによってなされる。
【0024】本発明は、コンタクトホールの底部から相当量の材料を除去することなく前記コンタクトホールへの入口を面取りすることが可能な、2段階の予備洗浄技術である。概して、直線的な壁で囲まれたコンタクトホールを有するウエハは先ず、高圧下でアルゴンプラズマ中でのイオン衝撃に供される。上記の高圧アルゴンスパッタエッチングの後に続いてその位置で低圧スパッタエッチングを行い、良好な電気的特性を確保するためにコンタクトの底部に清浄な表面を生じさせる。
【0025】従来の低圧(典型的には1ミリトール(mTorr )未満)アルゴンスパッタエッチングにおいては、イオン衝撃がウエハ表面に対して垂直をなしており、それ故コンタクトの底部領域から除去される材料の量は、上側の角から除去される材料の量とほぼ等しく(>50%)なり得る。かなりより高い圧力(0.1トール〜500トール)では、上記底部領域から除去される材料の量は、前記コンタクトホールの上側の角ないしはたとえフィールドの酸化物層(field oxide layer )から除去される材料の量よりさえかなり少なくなるものである。それ故、コンタクトの底部からの除去を100オングストローム未満としつつ相当量の面取り(例えば1000〜2000オングストローム)を上側の角の領域にもたらすことが可能である。
【0026】上記の2段階の予備洗浄操作の諸工程を図3R>3の流れ図により詳細に示す。先ず、ウエハを処理チャンバー内に配置し(ステップ60)、そして質量流量制御装置を作動させて、チャンバーキャビティーを通る無反応性ガス(例えばアルゴン)を所望の流速に設定する(ステップ62)。典型的な処理においては、上記の流速は約20sccm(標準立方センチメーター毎秒)である。
【0027】続いての予備洗浄処理は、2つの異なった圧力P0 およびP1 でのエッチングステップを含む。P1 が先ずある水準に設定される。P0 はP1 より高い。典型的には、P0 は10ミリトールより上の圧力に設定され、P1 はP0 よりかなり低い圧力、例えば0.1〜2.0ミリトールに設定される。P0 をより高く設定するほど、生じる面取りがより効率的になるものである。
【0028】ここに記載の実施態様においては、高圧の段階が先ず行なわれる。それ故、チャンバー圧力をP0 に設定する(ステップ64)。アルゴンガスについて所望の動作圧力が達成されると、コイルへの高周波電力を供給開始してキャビティー内にプラズマを生ぜしめる(ステップ66)。(代わりに、ペディスタルへの高周波電力を用いてプラズマを生ぜしめることも可能であろう。)いずれにしても、ウエハ上のデバイスの損傷を避けかつプラズマ発生(striking)を容易にするために、低減した電力水準でプラズマを発生させ始める(ignite)こともまた好ましいものである。プラズマが発生してきた後に、ペディスタルへの高周波電力を供給開始して、双方の高周波供給器を最大処理電力水準にもっていき、第一段階の予備洗浄エッチングを開始させる(ステップ68)。
【0029】より高い圧力での第一段階のエッチングを、コンタクトホールの上側の角が十分に面取りすなわち丸められるまで続ける(ステップ70)。上記の第一段階のエッチングが完了した後、第二段階のエッチングが行なわれるP1 に圧力を下げる(ステップ72)。ここに記載する予備洗浄システムにおいては、低圧への移行をほんの数秒で行なうことが可能であり、それ故、新しい操作条件へ移行する間にエッチング処理を中断する必要がない。より低い圧力P1 が達成されかつ他の操作条件への何らかの所望の調節が実施されると、第二段階のエッチングを開始し、所望量の材料がコンタクトの底部から除去されるまで、すなわちコンタクトの底部が続いての金属被覆処理のための準備として清浄化されるまで続ける(ステップ74)。
【0030】第二段階のエッチングの終わりに、プラズマを停止して続いての処理のためにウエハを除去することが可能である。好適な実施態様においては、プラズマへの電力を直ちに停止するよりもむしろ、システムの運転停止は段階的になされる。プラズマをなお維持しながら、双方の高周波供給器からのプラズマへの電力を著しく低下させる(ステップ76)。この移行は、粒子制御処理(particle control measure)として役立つ。その後、高周波数(例えば13.56MHz)の高周波電力供給器を停止する(ステップ77)。それから、中位の流速(例えば20sccmのアルゴン)をT3 秒(例えば約10秒)間チャンバーを通して生じさせ、その間プラズマがウエハ表面から残留静電荷を抜き取る(ステップ78)。静電荷が除去されることによって、ウエハを除去した時におけるデバイスへの静電的損傷の可能性が減少し、かつペディスタルからのウエハの脱離が容易になる。10秒後、プラズマが停止され、続いての処理のためにウエハが除去される(ステップ80)。ここに記載の処理においては、続いてのステップは、ウエハ上に金属層を堆積させる金属被覆ステップである(ステップ82)。
【0031】上記操作の正確な詳細は、勿論、この処理が行なわれるシステム、エッチングされる誘電層のタイプ(例えばSiO2 またはSi3 4 )、エッチング処理中に使用される雰囲気ガスのタイプ(例えば無反応性または反応性)、並びに所望の処理条件に応じて変化するものである。加えて、ここに記載の実施態様においては低圧段階の前に高圧段階が配置されているが、その順序は逆でもよい。
【0032】上記高圧エッチングの有効性を例証するために、3種類の予備洗浄操作の結果を以下に示す。それらの操作の各々は、異なったアルゴン圧力において異なったシリコンウエハ上に施した。これらのウエハは、それらの上にSiO2 フィールドの酸化物層を有しており、前記酸化物に形成されたコンタクトホールを有していた。上記のコンタクトホールは直線的な側壁および1:1アスペクト比を有していた。全ての3種類の予備洗浄操業において、プラズマ電力および直流バイアス電力はそれぞれ約300ワットおよび125ワットに設定した。これらの操業の目的は、ウエハの頂部のフィールド酸化物層からほぼ同量の材料を除去することであった。
【0033】第一の操業においては、チャンバー内のアルゴン流速を約5sccmに設定しかつポンプ圧を約0.4ミリトールとした。ウエハ上の直流バイアスは約−251ボルトであった。プラズマエッチングを約60秒間行ない、上記フィールド酸化物層を約395オングストローム(39.5ナノメーター)除去した。この操業は標準的な予備洗浄処理に対応する。SEM(走査型電子顕微鏡)を用いてコンタクトホールを検査したところ、ホールの上側の角の僅かな丸まりすなわち面取りと、コンタクトの底部における幾つかの溝発生が見出された。上記の面取りは、側壁の高さの20〜25%未満の範囲にわたっていた。明らかに、この予備洗浄処理下で実質的な面取りを達成するためには、コンタクトホールの底部でデバイスに重大な損傷が結果的に生じていたであろう。
【0034】第二の操業においては、アルゴン圧を約11.7ミリトールに設定し、直流バイアス電圧は約−216ボルトであった。より高い圧力にしたことによってこの操業ではエッチング速度が低下したので、第一の操業で除去されたのと同量の除去を達成するためにより長期間(すなわち約93秒間)ウエハをエッチングした。上記フィールド酸化物から除去された全量は約456オングストローム(45.6ナノメーター)であった。コンタクトの側壁のさらに下方(すなわち約50%)まで面取りがわたっており、第一の操業で生じたものより僅かに少ない溝発生が存在した。
【0035】第三の操業は、約63ミリトールおよび約−124ボルトの直流バイアスで行なった。上記の増大した圧力にしたことによってエッチング速度がなおさらに減少したので、他の操業と同等の酸化物量を除去するためにエッチング時間は約189秒に増えた。測定によって、約487オングストローム(48.7ナノメーター)のフィールド酸化物が除去されたことが示された。しかしながら、この場合、コンタクトホールの側壁の80%を超えて面取りされており、コンタクトの底部に溝発生の兆候はなかった。
【0036】上記の諸操業から、より高い圧力では面取りがより効率的になるが、フィールド酸化物層の頂部とコンタクトの底部との双方からの酸化物の除去は低効率になることが確認された。なおさらに侵略的(aggressive)なアスペクト比を有するコンタクトホール(すなわち、より深くより狭いホール)においては、コンタクトの底部からの除去の速さは、これらの操業において使用した1:1アスペクト比のコンタクトの場合よりいっそう低効率になるであろう。また、張り出し部を除去するのに必要な面取り量は到底80%の大きさには及ばないことが経験から示される。それ故、高圧の予備洗浄は短時間行なうだけでよい。
【0037】以下の機構が、コンタクトの底部に比較してコンタクトホールの上部で優先的にエッチングが生じることを説明すると思われる。アルゴンガスの圧力が増加するとプラズマ中のイオンの拡散もまた増加する。その結果、ウエハ表面に到達するイオンの角分布が広がることとなる。低圧では、上記の拡散は少なく、ウエハの表面に打ち当たるイオンの大半はウエハに直交する方向に沿って近付く。圧力が増加してイオンの拡散が増加すると、入射イオンの全量のうちのほんの少しの割合がウエハ表面に直交する方向に沿って到達する、コサイン分布の入射角を持つようになる。ウエハ表面に直交する軌跡に沿っているイオンだけはコンタクト開口部の底部に着くであろう。高圧の予備洗浄処理においてはより高い割合のイオンを構成する、上記の直交方向からそれた角度で到達するイオンは、コンタクトの底部に到達する前にコンタクトの側壁に衝突する。コンタクトのアスペクト比がより高いと、コンタクトの底部に到達するイオンの数はより少なくなる。
【0038】高圧の予備洗浄中に頂部フィールド層(top field layer )およびコンタクトの底部の侵食を制限する他の機構には、再堆積がある。フィールドの層の上面からあるいはコンタクトの底部からスパッタされた材料が、後方散乱してそれが出てきた表面上に再堆積する。スパッタされた材料の幾分かのこの再堆積によって有効エッチング速度が減少する。コンタクトホールの上部で側壁に沿って、それが出てきたコンタクトホールの側壁の範囲に戻るスパッタされた材料はより少ない。
【0039】他の実施態様が、特許請求の範囲内にある。例えば、図2のシステムは、第二の質量流量制御装置36bを含むように変形することができた。上記の結果が示唆しているように、2つのエッチング段階中の圧力の差がより大きいと、上記の効果がより明白になる。それ故、高圧エッチングを100ミリトールで行ない、低圧エッチングを1ミリトールで行なうことが好ましかった。単一の質量流量制御装置は、これらの2つの圧力を伴う広範囲の流速の運転にはあまり適さない。さらに、単一の質量流量制御装置の制限された運転範囲を補うために真空ポンプの配管に絞り弁を使用することは、製造の目的に対しては最適の解決手段ではない。それ故、代わりの実施態様においては、第一の質量流量制御装置36a(例えば約20sccmの流速)がチャンバー内に低圧(例えば1ミリトール未満)を作るために使用され、第二の質量流量制御装置36b(例えば300sccmより高い流速)がチャンバー内に高圧を作るために使用される。
【0040】
【発明の効果】このように本発明によれば、特定の領域から相当量の材料を除去することなく他の領域からの効率的な材料除去が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、半導体デバイスの作製の間にビアまたはコンタクトホールに生じる“張り出し”の問題を示す模式図である。
【図2】図2は、ウエハをスパッタエッチングするためのシステムの概略図である。
【図3】図3は、本発明に係る2段階のスパッタエッチング処理の流れ図である。
【符号の説明】
10…チャンバー本体、12…ベルジャー、16…キャビティ、18…ペディスタル、20…リフト機構、22…ウエハ、24…環状シールド、26…金属保護カバー、28…コイル、30…真空ポンプ、32…絞り弁、34…加圧アルゴンガスボトル、36a、36b…質量流量制御装置、40、42…高周波発生器、44…高周波ケーブル、46…高周波整合ネットワーク、48…ケーブル、60、62、64、66、68、70、72、74、76、77、78、80、82…本発明に係る2段階の予備洗浄操作の諸工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 コンタクトホールおよび/またはビア(via)が形成されている最上層を有するウエハを予備洗浄する方法であって、プラズマチャンバー内に上記ウエハを配置するステップ;
上記プラズマチャンバーを通して予め選択されたガスを流すステップであって、前記予め選択されたガスはウエハをスパッタエッチングすることができる、前記ステッ
前記チャンバーを通して流す予め選択されたガスを用いて前記チャンバー内に第一の圧力を達成するステップ;
前記チャンバー中にプラズマを生ぜしめる(strike)ステップ;
上記プラズマを生ぜしめた後に、上記第一の圧力で前記ウエハを第一の期間スパッタエッチングするステップ;
上記プラズマチャンバーの中に前記予め選択されたガスを継続して流し、上記チャンバーに高周波電力を継続して供給しながら、前記第一の圧力と異なる第二の圧力を前記チャンバー内に達成するステップ;
上記第二の圧力で前記ウエハを第二の期間プラズマスパッタエッチングするステップ;
および上記第二の期間が経過した後に、前記第二の圧力でのプラズマスパッタエッチングを停止するステップあって、前記第一および第二の圧力の一方は前記コンタクトホールおよび/またはビアの上方の角が面取り(facet)されるよう選択され、前記第一および第二の圧力の他方は前記コンタクトホールおよび/またはビアの底部が洗浄されるよう選択される、前記ステップを含む方法。
【請求項2】 前記第一の圧力の大きさが前記第二の圧力の大きさと少なくとも1桁相違する、請求項1記載の方法。
【請求項3】 前記第一の圧力が前記第二の圧力より高い、請求項2記載の方法。
【請求項4】 前記第一の圧力が10ミリトールより高い、請求項3記載の方法。
【請求項5】 前記第一の圧力が約50ミリトールより高い、請求項4記載の方法。
【請求項6】 前記第一の圧力が100ミリトールより高い、請求項5記載の方法。
【請求項7】 前記第二の圧力が10ミリトールより低い、請求項3記載の方法。
【請求項8】 前記第二の圧力が1ミリトールより低い、請求項7記載の方法。
【請求項9】 前記第一の圧力が10ミリトールより高く、かつ前記第二の圧力が1ミリトールより低い、請求項2記載の方法。
【請求項10】 前記ガスがアルゴンである、請求項記載の方法。
【請求項11】 前記第二の圧力でのプラズマエッチングを停止した後に前記チャンバー内にプラズマを維持すステップをさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項12】 前記第二の圧力でのプラズマエッチングステップを完了した後に、上記最上層の頂部および前記コンタクトホールおよび/またはビア内に金属層を堆積させる、蒸気堆積処理を用いるステップをさらに含む、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3384641号(P3384641)
【登録日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【発行日】平成15年3月10日(2003.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−39939
【出願日】平成7年2月28日(1995.2.28)
【公開番号】特開平8−55829
【公開日】平成8年2月27日(1996.2.27)
【審査請求日】平成12年2月28日(2000.2.28)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【参考文献】
【文献】特開 平4−23323(JP,A)
【文献】特開 平4−107920(JP,A)
【文献】特開 平4−102320(JP,A)
【文献】国際公開90/12641(WO,A1)