説明

高圧側負荷の両端の電圧を調節するための電子装置

本発明は、システム接地を基準とし、正の高圧側電源電圧へ反映される制御電圧(V1)を有する高圧側負荷の両端の電圧を調節するための、特に自動車両内のファンを調節するための電子制御装置であって、制御電圧(V1)は、共通エミッタ接続で動作する第1のトランジスタ(Q1)のベースに供給され、トランジスタ(Q1)は、エミッタ回路内に第1の抵抗器(R1)を有し、コレクタ回路内に、第2の抵抗器(R2)、及び、第2の抵抗器(R2)と直列の第2のトランジスタ(Q2)のベース−エミッタダイオードを有する電子制御装置に関する。本発明は、比較的少数の個別部品を用いて、特にファン用の制御装置を構成することを可能にする。制御装置は、良好な調節特性及び極めて小さな閉回路電流消費を有するという特徴がある。第1のトランジスタのベース−エミッタ電圧の温度効果に対する補償は、第1のトランジスタと直列の同じ導電型の第2のトランジスタのベース−エミッタ経路によって行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧側負荷の両端の電圧を調節するための電子装置に関し、特に自動車両内のファンを調節するための電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本制御装置は、自動車両での使用により一般に知られている。
【0003】
特開平1−302409号公報又は独国特許第2708021(C3)号明細書により、正の高圧側電源電圧を基準とする制御電圧が、調節のためのコマンド変数として用いられる電子制御装置が既知の。
【0004】
制御装置の重要な基本的機能は、制御信号に従ってモータ電圧を調節することである。この制御信号は、アナログ制御電圧、アナログ制御電流、又はディジタル信号でもよい。従来技術の教示によるファン用の制御装置は、原理上、モータ電圧を制御電圧の関数として調節する制御回路が常に存在するように、制御電流及びディジタル制御信号を内部的に制御電圧に変換する。
【0005】
既知のファン用の線形制御装置は、一般に図2に示される回路トポロジーを用いる。車両電池V2は、構成全体のために電源を供給する。V1は、制御電圧を供給する。Umotは、モータ電圧である。演算増幅器U1Aは、U+がU−にほぼ等しくなるように、その出力電圧、従って、MOSトランジスタM1のゲート−ソース電圧を設定する。この構成は、適切な式によって説明することができる。R1/R2=R3/R4となるように選択された場合は、制御電圧V1とモータ電圧Umotに対して、次の関係が得られる。
【0006】
【数1】

【0007】
ファン用の制御装置が満たすべき重要な要件は、オンボード電圧変動の補正である。Umotは、V2に無関係であるべきである。これは、R1/R2=R3/R4の場合にだけ当てはまる。従って、図2に示される制御装置の作動は、オンボード電圧変動dV2の場合に、分圧器R1/R2及びR3/R4の整合許容差に依存する。
【0008】
理想的な構成部品、及びR1/R2=R3/R4の理想的な整合許容差を仮定すると、Umot=f(V1)の関係は、抵抗比R1/R2のみによって決まる。Umotは、概ねV2に無関係である。演算増幅器は、オンボード電圧変動を補正する。スタンバイ動作においては、V1=0である。この場合、この構成の電流消費Ibは閉回路電流として示され、電池V2を放電させないようにできるだけ低くすべきである。
【0009】
V1=0の場合は、Umot=0であり、従って、Id=0である(最新のMOSFETのカットオフ電流は非常に小さい)。従って、Ib=I1+I2+I3である。I3は、超低電力オペアンプを使用することによって非常に低くすることができる。
【0010】
コスト上の理由からコントローラ電子回路をケースに入れないで済ませることが望ましい場合は、高抵抗の抵抗器を使用することには問題がある。車両内で起きる、印刷回路基板表面上の結露及び付随する汚染は、高いインピーダンスに範囲設定された回路の機能に影響を及ぼすトラッキング電流につながる。従って、R1からR4は、任意の高程度まで高抵抗とすることはできない。従ってI1及びI2は、スタンバイ動作において電池に対して負荷となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の基礎をなす課題は、コマンド変数への温度の影響に対して補償しながら、低い閉回路電流消費の場合においても、比較的低い抵抗の抵抗器を用いることを可能にする制御装置を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
課題は、請求項1による制御装置によって解決される。本発明の有利な発展形態は特許請求項2から4に記載される。
【0013】
本発明は、比較的少数の個別部品を用いて、特にファン用の制御装置を構成することを可能にする。制御装置は、良好な調節特性及び極めて小さな閉回路電流消費を有するという点により際立っている。
【0014】
第1のトランジスタのベース−エミッタ電圧の温度効果に対する補償は、第1のトランジスタと直列の同じ導電型の第2のトランジスタのベース−エミッタ経路によって行われる。
【0015】
本発明の好ましい例示的実施形態は図面に概略的に示され、図面の図を参照しながら以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に示されるように、本構成では、接地を基準とする制御電圧V1は、既知の制御装置の回路図のように(図2参照)、接地を基準として制御増幅器に印加されるのではなく正電源電圧へ反映される。制御演算増幅器の入力電圧U+及びU−は、図2のように接地を基準とするのではなく、電源電圧V2の正電位を基準とする。
【0017】
制御電圧V1は、共通エミッタ接続で動作するトランジスタQ1のベースに供給される。そのエミッタ回路内に接続された抵抗器R1があり、そのコレクタ回路内には、抵抗器R2、及び、抵抗器R2と直列のもう1つのトランジスタQ2のベース−エミッタダイオードがある。R2とQ2の間で降下する電圧U−は、U−=Ube(Q2)+(R2/R1)×(V1−Ube(Q1))によって与えられる。電圧U−は、ほぼR2/R1だけ増幅された入力電圧V1に相当する。
【0018】
R1=R2とし、整合した特性を有するQ1/Q2を選択することにより、U−はV1の正確な鏡像となる。2つのトランジスタQ1及びQ2が熱的に結合されることは特に有利であり、その場合は、温度変動の場合においても条件Ube(Q1)=Ube(Q2)が良い近似で満足される。V1は接地を基準とし、U−はV2の正電位を基準とする。従ってこの構成により、V1が接地基準電位から正電源電位に反映される。
【0019】
コントローラU1Aの2つの入力電圧を、正電源電圧U2を基準とするものにすることができる。従って、図1に示される回路図により、Umotは、
【0020】
【数2】

である。従って、Umotは、V2に無関係である。
【0021】
dUmot=f(dV2)の関係には、図2に示される回路図とは異なり、抵抗整合許容差は含まれない。
【0022】
従って本発明の教示により、より優れたオンボード電圧変動の補正が実現される。
【0023】
回路の閉回路電流は、コントローラU1Aの閉回路電流のみによって与えられるようにすることができる。V1=0の場合は、Q1は非導通となる。従って、これにより、I1=0、U−=U+=0、Id=0、I2=0、及びIb=I3となる。
【0024】
低抵抗に範囲設定された場合でも、閉回路動作では、I1及びI2は電池V2に対して負荷とならない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る制御装置の回路図である。
【図2】既知の制御装置の回路図である。
【符号の説明】
【0026】
U1A 演算増幅器
M モータ
Q1,Q2 トランジスタ
M1 MOSトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム接地を基準とし、正の高圧側電源電圧へ反映される制御電圧(V1)を有する高圧側負荷の両端の電圧を調節するための、特に自動車両内のファンを調節するための電子制御装置であって、
前記制御電圧(V1)は、共通エミッタ接続で動作する第1のトランジスタ(Q1)のベースに供給され、前記トランジスタ(Q1)は、エミッタ回路内に第1の抵抗器(R1)を有し、コレクタ回路内に、第2の抵抗器(R2)、及び、第2の抵抗器(R2)と直列の第2のトランジスタ(Q2)のベース−エミッタダイオードを有し、
前記第2のトランジスタ(Q2)は、前記第1のトランジスタ(Q1)と同じ導電型であり、
前記第1及び第2のトランジスタ(Q1、Q2)は、パラメータが整合していると共に同じ導電型の熱的に結合されたトランジスタであり、
前記第2のトランジスタ(Q2)のベース−エミッタダイオードは、前記第1のトランジスタ(Q1)のベース−エミッタダイオードの影響を補償し、これにより、前記第2のトランジスタ(Q2)のベース−エミッタ経路と前記第2の抵抗器(R2)から構成される直列接続の両端の電圧降下は、前記第1のトランジスタ(Q1)のベース−エミッタ経路と前記第1の抵抗器(R1)から構成される直列接続の両端の電圧降下の所定の鏡像となり、
前記第2のトランジスタ(Q2)のベース−エミッタ部分と前記第2の抵抗器(R2)から構成される直列接続の両端の電圧降下は、調節のためのコマンド変数として働く電子制御装置。
【請求項2】
コントローラ(U1A)に供給される入力電圧が、負荷が供給される正電源電位を基準とすることを特徴とする請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
電源電圧変動の場合に、前記負荷電圧の調節は、抵抗の整合に無関係であることを特徴とする請求項1又は2記載の制御装置。
【請求項4】
前記構成は、閉回路電流消費が前記抵抗器(R1からR4)の範囲設定に無関係であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−528007(P2009−528007A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555610(P2008−555610)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000268
【国際公開番号】WO2007/095898
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(503145110)シトリニック ゲス フュール エレクトロテクニッシュ オウスルゥスタング エム ベー ハー ウント コー カー ゲー (12)
【氏名又は名称原語表記】sitronic Ges.  fur elektrotechnische Ausrustung mbH & Co. KG
【Fターム(参考)】