説明

高圧導電路及びワイヤハーネス

【課題】小径化を図ることが可能な高圧導電路と、外装部材の小径化を図ることが可能なワイヤハーネスとを提供する。
【解決手段】高圧導電路15は、プラス極導体19及びマイナス極導体22のいずれか一方と、このいずれか一方の外側に設けられる第一絶縁体20と、第一絶縁体20の外側に設けられるプラス極導体19及びマイナス極導体22のいずれか他方と、このいずれか他方の外側に設けられる第二絶縁体23とを備え、このいずれか他方を金属パイプにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧導電路及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車の例えばバッテリーとインバータユニットとの間を電気的に接続するためとして、高圧のワイヤハーネスが用いられている。上記バッテリーとインバータユニットとの間を接続するワイヤハーネスは、プラス回路及びマイナス回路となる二本の高圧導電路と、これらを保護するための外装部材とを含んで構成されている。
【0003】
上記外装部材として例えば下記特許文献1に開示された金属パイプ(金属製のパイプとなる外装部材)を採用すると、二本の高圧導電路は、金属パイプ内で並んだ状態に収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−171952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記高圧導電路にあっては、駆動系の電力の送電を担うことから太物の電線となる。このため、上記金属パイプをワイヤハーネスにおける外装部材として採用する場合には、外装部材内に太物の電線が二本並んだ状態に収容されることから、径の大きな外装部材になってしまうという問題点を有している。外装部材の径が大きくなってしまうと、例えばワイヤハーネスの配索が自動車の床下であれば、ワイヤハーネスは地面に対し距離を稼いだ配索にすることができず、損傷等を起こしかねないという問題点に繋がってしまう。
【0006】
尚、地面に対し距離を稼いだ配索にすることができないのであれば、十分な保護機能を確保するためとして外装部材の材質を金属に限定することが考えられるが、材質の限定は、外装部材のバリエーションを制約してしまうという虞がある。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、小径化を図ることが可能な高圧導電路と、外装部材の小径化を図ることが可能なワイヤハーネスとを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明の高圧導電路は、プラス極導体及びマイナス極導体のいずれか一方と、該いずれか一方の外側に設けられる第一絶縁体と、該第一絶縁体の外側に設けられる前記プラス極導体及び前記マイナス極導体のいずれか他方と、該いずれか他方の外側に設けられる第二絶縁体とを備え、前記いずれか他方を金属パイプにするとともに、前記いずれか他方の導体断面積を前記いずれか一方の導体断面積に応じて設定し、さらに、前記いずれか他方の外面を被覆する状態に前記第二絶縁体を設けてなることを特徴とする。
【0009】
このような特徴を有する本発明によれば、プラス回路及びマイナス回路を二本でなく一本で構成する高圧導電路となる。具体的には、プラス極導体及びマイナス極導体のいずれか一方と第一絶縁体とで、プラス回路及びマイナス回路のいずれか一方を構成するとともに、プラス極導体及びマイナス極導体のいずれか他方と第二絶縁体とで、プラス回路及びマイナス回路のいずれか他方を構成する高圧導電路となる。本発明は、上記の如く二本を一本で構成するようにした高圧導電路であることから、二本を並べた状態の幅よりも一本で構成された高圧導電路の径の方が格段に小さくなる。本発明は、上記の如く二本を一本で構成していることから、複合導電路や複合電線、同軸複合導電路や同軸複合電線、或いは、同軸導電路や同軸電線などと呼ぶことができるものとする。
【0010】
また、本発明によれば、第一絶縁体の外側に金属パイプを設ける構成の高圧導電路となる。金属パイプを採用することにより、必要十分な導体断面積を確保することが可能になる。また、例えば製造性を良好にしたりすることも可能になる。具体的には、プラス極導体及びマイナス極導体のいずれか一方と第一絶縁体とからなる電線を金属パイプ内に収容すれば、本発明の高圧導電路の製造を簡単に行うことが可能になる。第二絶縁体は、予め金属パイプの外面を被覆する状態に設けておいてもよいし、上記電線の収容後に外面を被覆する状態に設けてもよい。外面を被覆する状態に第二絶縁体を設けることにより、本発明の高圧導電路に対しシールド構造を付加しようとする場合、この付加をし易くすることができる。尚、金属パイプは、市販品を採用するとコスト面でも効果的である。
【0011】
また、本発明によれば、プラス極導体及びマイナス極導体のいずれか他方は、この導体断面積をいずれか一方の導体断面積に合うように設定することから、いずれか他方が金属パイプであるとしても、この厚み(肉厚)や径は大きくならず、高圧導電路用の外装部材と比べて格段に薄肉で小径になるのは勿論である。
【0012】
請求項2に記載の本発明の高圧導電路は、請求項1に記載の高圧導電路に係り、前記いずれか他方自身に配索経路に沿った形状保持機能を持たせてなることを特徴とする。
【0013】
このような特徴を有する本発明によれば、形状保持機能を持たせた金属パイプを採用する高圧導電路となる。形状保持機能を持たせるにあたっては、曲げると塑性変形をする金属パイプを採用すればよい。具体的には、プラス極導体及びマイナス極導体のいずれか一方、第一絶縁体、及び第二絶縁体の曲げに対する復元力に勝る金属パイプを採用すればよい。
【0014】
請求項3に記載の本発明の高圧導電路は、請求項1又は2に記載の高圧導電路に係り、前記いずれか他方の端末に導電部材又は端子金具を接続させてなることを特徴とする。
【0015】
このような特徴を有する本発明によれば、プラス極導体及びマイナス極導体のいずれか他方として金属パイプを採用し、この金属パイプの端末を接続対象に接続するにあたって導電部材又は端子金具を用いる高圧導電路となる。本発明によれば、金属パイプを採用しても、接続対象との電気的な接続を良好に行うことが可能となる。
【0016】
また、上記課題を解決するためになされた請求項4に記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1、2、又は3に記載の高圧導電路と、該高圧導電路を保護する外装部材とを含むことを特徴とする。
【0017】
このような特徴を有する本発明によれば、高圧導電路を外装部材で保護する構成のワイヤハーネスとなる。高圧導電路の径を小さくしていることから、これを保護する外装部材の径も小さくなる。すなわち、小径化を図ったワイヤハーネスとなる。本発明によれば、外装部材の小径化を図っていることから、例えば地面に対して距離を稼いだ配索のワイヤハーネスとなり、保護機能の確保が可能となる。従って、外装部材の材質を必ずしも金属としなくてもよくなる。
【0018】
請求項5に記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項4に記載のワイヤハーネスに係り、前記高圧導電路と前記外装部材との間に設けられる電磁シールド部材を更に含むことを特徴とする。
【0019】
このような特徴を有する本発明によれば、プラス極導体、マイナス極導体、及び電磁シールド部材を実質的に同軸三層構造にすることから、高圧導電路に対しシールド効果の得られるワイヤハーネスとなる。
【0020】
本発明によれば、シールド効果の得られるワイヤハーネスとなることから、これに近接する他の導電路や機器に対してノイズの影響を与えるようなことはない。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載された本発明によれば、プラス回路及びマイナス回路を二本でなく一本で構成することから、小径の高圧導電路を提供することができるという効果を奏する。従って、このような小径の高圧導電路を採用すれば、これを保護する外装部材の小径化も図ることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、金属パイプを採用する高圧導電路であることから、必要十分な導体断面積を確保することができるという効果や、製造性を良好にしたりすることができるという効果を奏する。さらに、本発明によれば、プラス極導体及びマイナス極導体のいずれか他方に相当する金属パイプの外面を被覆する状態に第二絶縁体を設けていることから、本発明の高圧導電路に対しシールド構造を付加しようとする場合、この付加をし易くすることができるという効果を奏する。
【0022】
請求項2に記載された本発明によれば、請求項1の効果に加え次のような効果も奏する。すなわち、配索経路に沿った形状保持をすることができるという効果や、配索経路に沿った形状保持をするための部材を別に備えなくてもよいという効果を奏する。
【0023】
請求項3に記載された本発明によれば、請求項1又は2の効果に加え次のような効果も奏する。すなわち、金属パイプを採用してもこの端末に導電部材又は端子金具を接続させることで、接続対象との電気的な接続を良好に行うことができるという効果を奏する。
【0024】
請求項4に記載された本発明によれば、外装部材の小径化を図ったワイヤハーネスの提供をすることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、例えば自動車の床下にワイヤハーネスを配索する場合、地面に対し距離を稼いだ配索にすることができ、以て外装部材の材質を金属以外にすることができるという効果も奏する。
【0025】
請求項5に記載された本発明によれば、シールド効果の得られるワイヤハーネスを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の高圧導電路及びワイヤハーネスの実施形態を示す図であり、(a)はワイヤハーネスの配索状態を示す概略図、(b)はワイヤハーネス及び高圧導電路の構成図である。
【図2】図1におけるワイヤハーネスの両端末を含む断面図である。
【図3】図2におけるワイヤハーネスの端末の断面拡大図である。
【図4】マイナス極導体の端末に対する導電部材の取り付け方法説明図である。
【図5】マイナス極導体の端末に対する端子金具の取り付け方法説明図である。
【図6】ワイヤハーネスに屈曲部を形成した状態を示す斜視図である。
【図7】ワイヤハーネスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態を説明する。図1は本発明に係る高圧導電路及びワイヤハーネスの図であり、(a)はワイヤハーネスの配索状態を示す概略図、(b)はワイヤハーネス及び高圧導電路の構成図である、また、図2は図1におけるワイヤハーネスの両端末を含む断面図である。図3は図2におけるワイヤハーネスの端末の断面拡大図である、図4はマイナス極導体の端末に対する導電部材の取り付け方法説明図である、図5はマイナス極導体の端末に対する端子金具の取り付け方法説明図である、図6はワイヤハーネスに屈曲部を形成した状態を示す斜視図である、図7はワイヤハーネスの断面図であり、(a)は本発明の実施例におけるワイヤハーネスの断面図、(b)は比較例のワイヤハーネスの断面図である。
【0028】
以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができるものとする。
【0029】
本実施形態においてはハイブリッド自動車(電気自動車であってもよいものとする)に本発明のワイヤハーネスを採用する例を挙げて説明するものとする。
【0030】
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施形態において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載されている。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載されている(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0031】
モータユニット3とインバータユニット4は、公知の高圧ワイヤハーネス8により接続されている。また、バッテリー5とインバータユニット4は、本発明のワイヤハーネス9により接続されている。ワイヤハーネス9は、高圧用のものとして構成されている。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車体床下11の地面側に配索されている。また、車体床下11に沿って略平行に配索されている。車体床下11は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔(符号省略)が形成されている。この貫通孔には、ワイヤハーネス9が挿通されている。
【0032】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続されている。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端13がコネクタ接続されている。ワイヤハーネス9の前端14側は、インバータユニット4にコネクタ接続されている。
【0033】
ここで本実施形態での補足説明をすると、モータユニット3はモータ及びジェネレータを構成に含んでいるものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んでいるものとする。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0034】
先ず、ワイヤハーネス9の構成及び構造について説明をする。
【0035】
ワイヤハーネス9は、高圧導電路15と、この高圧導電路15の端末に設けられる端子16、17(図4参照)と、高圧導電路15に対する外装部材18と、高圧導電路15と外装部材18との間に設けられる電磁シールド部材24とを備えて構成されている。
【0036】
高圧導電路15は、プラス極導体19及び第一絶縁体20を有する高圧電線21と、この高圧電線21を覆うように設けられるマイナス極導体22と、マイナス極導体22を被覆する第二絶縁体23とを備えて構成されている。
【0037】
プラス極導体19は、特許請求の範囲に記載された「プラス極導体及びマイナス極導体のいずれか一方」に相当するものとする。また、マイナス極導体22は同じく特許請求の範囲に記載された「プラス極導体及びマイナス極導体のいずれか他方」に相当するものとする。本実施形態においては高圧電線21の導体に相当するものをプラス極導体19(プラス回路)、高圧電線21が収容される金属パイプをマイナス極導体22(マイナス回路)とするが、この逆であってもよいものとする。
【0038】
プラス極導体19は、この材質として、撚り線導体となる構造のものや、例えば丸棒線(丸単心となる導体構造)、角棒線(四角形の単心となる導体構造)又はバスバー形状となる導体構造のものが挙げられるものとする。本実施形態においては撚り線導体となる構造のものを用いるものとする。また、材質に関しては、特に限定されないものとする。すなわち、アルミニウム又はアルミニウム合金製のものであっても銅や銅合金製であってもよいものとする。
【0039】
第一絶縁体20は、プラス極導体19に対する被覆であって、公知の樹脂材料を押し出し成形することにより形成されている。
【0040】
以上のような高圧電線21は、マイナス極導体22の内部である中空部分に収容されている。高圧電線21は、マイナス極導体22の内面に接することで、自身に生じた熱をマイナス極導体22に吸収させるようになっている。一方、マイナス極導体22では、吸収した熱を分散させることができるようになっている。
【0041】
マイナス極導体22は、断面円形となる金属製のパイプであって、高圧電線21を挿通・収容することができるように形成されている。本実施形態におけるマイナス極導体22は、高圧電線21をほぼこの全長にわたって挿通・収容することができるように形成されている。マイナス極導体22は、これ自身にてワイヤハーネス9の形状保持を可能とする剛性を有している。すなわち、例えば直線の状態から曲げを施すと元に戻らずに曲げの形状を維持することが可能な剛性を有している。
【0042】
マイナス極導体22は、プラス極導体19のサイズ(導体断面積)に対して同じか大きくなるように形成されている。すなわち、例えばプラス導体19のサイズが15sqの場合、マイナス極導体22ではこのサイズが15sq以上となるように形成されている(理由としては、電気的安定度を向上させることができるというメリットを有するからである)。マイナス極導体22は、この導体断面積がプラス極導体19の導体断面積に合うように設定されることから、金属パイプであるとしても厚み(肉厚)は大きくならず、従来より外装部材として用いられる金属パイプと比べると、格段に薄肉で小径となるのは勿論である。
【0043】
マイナス極導体22の材質は、プラス極導体19の材質やコスト等に配慮して選定されるものとする。本実施形態におけるマイナス極導体22は、アルミニウム又はアルミニウム合金であるが、銅や銅合金であってもよいものとする。
【0044】
第二絶縁体23は、マイナス極導体22に対する被覆であって、公知の樹脂材料を用いて押出成型や塗布により、或いは絶縁テープを所定厚まで巻き付ける等により形成されている。第二絶縁体23は、予めマイナス極導体22の外面を被覆する状態に設けておいてもよいし、高圧電線21をマイナス極導体22の内部に収容した後、マイナス極導体22の外面を被覆する状態に設けてもよいものとする。第二絶縁体23は、マイナス極導体22の外面を被覆する状態に設けられることから、次のような効果を奏する。すなわち、高圧導電路15に対して電磁シールド部材24を付加しようとする場合、特別な絶縁部材を設けなくともマイナス極導体22との絶縁を図ることができ、以て電磁シールド部材24を簡単に設けることができるという効果を奏する。
【0045】
図1乃至図3において、外装部材18は、公知のものであって、具体的にはコルゲートチューブや金属パイプ等が一例として挙げられるものとする。本実施形態における外装部材18は、コルゲートチューブを用いるものとする。外装部材18は、耐熱性、耐摩耗性、耐候性、耐衝撃性等の各種特性が良好な樹脂材料を選定して形成されている。外装部材18は、この表面がワイヤハーネス9の外面に相当するようなものに形成されている。外装部材18は、石跳ねや水跳ねから高圧導電路15を保護することができるように形成されている。外装部材18は、コルゲートチューブ等の管体形状となる部材により、内部に収容されている高圧導電路15が保護されるものとする。
【0046】
電磁シールド部材24は、電磁シールド用の部材(電磁波対策用の部材)であって、本実施形態においては、極細の素線を多数有する編組にて筒状に形成されている。尚、電磁シールド部材24は、電磁波対策をすることが可能であれば、例えば、導電性の金属箔単体を用いてもよいものとする(金属箔は、編組と比べて格段に軽量化を図ることができるという利点を有している)。
【0047】
電磁シールド部材24は、プラス極導体19及びマイナス極導体22と同心円に配置されている。また、電磁シールド部材24は、プラス極導体19及びマイナス極導体22とともに同軸三層構造を構成するように配置されている。
【0048】
次に、図4を参照しながらマイナス極導体22の端末25に導電部材26を接続することについて説明する。
【0049】
図4(a)は、図2におけるワイヤハーネス9の端末の一つを示している。先ず、ワイヤハーネス9の端末において、マイナス極導体22の端末25や高圧電線21を覆っている電磁シールド部材24をめくり(又はスライドさせて)、マイナス極導体22の端末25を露出させる(マイナス極導体22の端末25は、特許請求の範囲に記載された「いずれか他方の端末」に相当するものである)。そして、マイナス極導体22の端末25にこのマイナス極導体22を高圧導電路15から分岐させるための導電部材26が電気的に接続されている。導電部材26は、特に限定するものではないが、本実施形態においては導体と、導体を被覆する絶縁体とからなる高圧電線が用いられている(一例であるものとする。この他に例えば後述する端子金具27等を用いてもよいものとする)。マイナス極導体22と導電部材26との接続の方法については、特に限定するものではないが、本実施形態においては溶接によりおこなわれている(一例であるものとする。この他に例えば加締め等によりおこなわれてもよいものとする)。
【0050】
次に、図4(b)に示す如く、マイナス極導体22と導電部材26とが電気的に接続された箇所に絶縁性を有する部材を用いて絶縁処理がおこなわれる。本実施形態においては絶縁テープ28を接続箇所に巻回することによりおこなわれている。(一例であるものとする。絶縁処理の方法はこれに限定されるものではなく、例えば絶縁性を有する樹脂によって接続箇所を被覆するなどしてもよいものとする)。
【0051】
また、上記以外にマイナス極導体22の端末25に端子金具27を接続する場合について説明する。
【0052】
図5(a)は、図4と同じく図2におけるワイヤハーネス9の端末の一つを示している。先ず、図示の如く、電磁シールド部材24をめくり(又はスライドさせて)、マイナス極導体22の端末25を露出させる。端子金具27は、マイナス極導体22の端末25に設けられる電気的な接続部材であって、導電性を有する金属板をプレス加工することにより形成されている。端子金具27は、電気接触部29と電線接続部30とを有している。
【0053】
図5(b)に示す如く、端子金具27は、マイナス極導体22の端末25に電線接続部30が電気的に接続されている。接続の方法は、特に限定するものではないが、本実施形態においては加締めによりおこなわれるものとする。
【0054】
次に、図5(c)に示す如く、端子金具27の電気接触部29に導電部材26が電気的に接続される。導電部材26は、マイナス極導体22を高圧導電路15から分岐させるための部材である。導電部材26は、本実施形態においては、導体と、導体を被覆する絶縁体とからなる高圧電線が用いられている(一例であるものとする)。接続の方法は、特に限定するものではないが、本実施形態においては加締めによりおこなわれるものとする。さらに、マイナス極導体22の端末25と端子金具27と導電部材26とが電気的に接続された箇所に絶縁性を有する部材を用いて絶縁処理がおこなわれている。本実施形態においては絶縁テープ28を接続箇所に巻回することによりおこなわれている(一例であるものとする。この他に例えば絶縁性を有する樹脂によって接続箇所を被覆する等の絶縁処理をおこなわれてもよいものとする)。
【0055】
図2及び図4において、端子16、17は、ワイヤハーネス9の端末に設けられる電気的な接続部材であって、導電性を有する金属板をプレス加工することにより形成されている。端子16はプラス極導体19用として、また、端子17はマイナス極導体22用として設けられている。
【0056】
端子16、17のプラス極導体19及びマイナス極導体22に対する取り付け方法は、特に限定するものではないが、本実施形態においては、加締めによりおこなわれている(一例であるものとする。この他に溶接等によりおこなわれてもよいものとする)。
【0057】
以上のようなワイヤハーネス9は、これを製造した後、図示しないベンダー機を用いて所定位置(例えば図6の矢印Aの位置)に曲げを施すと、図6に示す如く屈曲部31が形成されるようになっている。屈曲部31が形成されると、ワイヤハーネス9は、高圧導電路15の剛性により配索経路に沿った形状に保持されるようになっている(屈曲部31が形成されると、マイナス極導体22の剛性によって、元に戻らずに曲げの形状が維持される)。
【0058】
尚、引用符号32は固定用のクランプを示している。ワイヤハーネス9に収容されている高圧導電路15は、形状保持をすることができることから、固定に関し、クランプ32のような小さなものでも十分となっている。
【0059】
上記図示しないベンダー機に関し、この機械設置位置は特に限定されないものとする。すなわち、ワイヤハーネス製造現場であってもよいし、ワイヤハーネス配索現場等であってもよいものとする。作業性等に配慮して適宜設置位置を決めればよいものとする。
【0060】
図1(a)において、インバータ側接続部33は、高圧導電路15におけるプラス極導体19及びマイナス極導体22をインバータユニット4のプラス回路及びマイナス回路にそれぞれ接続することができるように構成されている。また、インバータ側接続部33は、高圧導電路15における電磁シールド部材24をインバータユニット4のシールドケースに接続することもできるように構成されている。インバータ側接続部33は、例えば図4に示す如く、絶縁性のハウジング35と、端子16、17と、電磁シールド部材24の端末に設けられるシールドシェル36及びシールドリング37とを備えて構成されている。尚、バッテリー側接続部34もインバータ側接続部33と同様に構成されるものとしてここでの説明を省略するものとする。
【0061】
ワイヤハーネス9の配索位置は、本実施形態において車体床下11等であるが、このような配索位置に限定されないものとする。
【0062】
次に、本発明の実施例と比較例との比較について説明する。
【0063】
図7において、(a)は本発明の実施例におけるワイヤハーネス9の断面図、(b)は比較例におけるワイヤハーネス101の断面図である。
【0064】
図7(a)の本発明の実施例は、上記本発明の一実施の形態におけるワイヤハーネス9及び高圧導電路15である。実施例におけるワイヤハーネス9及び高圧導電路15の構成は、上記本発明の一実施の形態におけるものと同じであるので説明を省略する。
【0065】
図7(b)の比較例は、プラス回路及びマイナス回路の二本の高圧導電路102、103を備え、この二本の高圧導電路102、103を外装部材104(金属パイプ)に挿通してなるワイヤハーネス101である。比較例における高圧導電路102、103は、導体105と、導体105を被覆する絶縁体106とからなる。この高圧導電路102、103の導体105及び絶縁体106のサイズは、上記実施例における高圧電線21のプラス極導体19及び第一絶縁体20のサイズと同じであるものとする。
【0066】
比較例は、高圧導電路102、103を二本並べた状態で、外装部材104に収容されることから、この外装部材104の径D2が大きくなってしまう。外装部材104の径D2が大きくなってしまうと、例えばワイヤハーネス101の配索が車体床下であれば、ワイヤハーネス101は地面に対し距離を稼いだ配索にすることができない。
【0067】
これに対して、本発明の実施例は、プラス回路及びマイナス回路を二本ではなく一本で構成するようにした高圧導電路15であることから、高圧導電路15を小径化することができる。また、係る高圧導電路15を採用してワイヤハーネス9を製造することにより、これを保護する外装部材18も小径化することができる(D1<D2)。
【0068】
以上より、本発明の実施例によれば、比較例に比して高圧導電路15やワイヤハーネス9の外装部材18の径D1を小径化することができることが分かる
【0069】
以上、図1乃至図7までを参照しながら説明してきたように、本発明によれば、プラス回路及びマイナス回路を二本でなく一本で構成する高圧導電路15となる。具体的には、プラス極導体19と第一絶縁体20とで、プラス回路及びマイナス回路のいずれか一方を構成するとともに、マイナス極導体22と第二絶縁体23とで、プラス回路及びマイナス回路のいずれか他方を構成する高圧導電路15となることから、プラス回路及びマイナス回路を二本でなく一本で構成する小径の高圧導電路15を提供することができるという効果を奏する。
【0070】
また、本発明によれば、マイナス極導体22として金属パイプを採用する構成の高圧導電路15となることから、必要十分な導体断面積を確保することができるという効果を奏する。また、例えば製造性を良好にしたりすることも可能になる。具体的には、プラス極導体19と第一絶縁体20とからなる高圧電線21を金属パイプ内に収容すれば、本発明の高圧導電路15の製造を簡単に行うことが可能になることから、製造性を良好にしたりすることができるという効果を奏する。
【0071】
また、本発明によれば、形状保持機能を持たせた金属パイプをマイナス極導体22として採用する高圧導電路15となることから、配索経路に沿った形状保持をすることができるという効果や、配索経路に沿った形状保持をするための部材を別に備えなくてもよいという効果を奏する。
【0072】
また、本発明によれば、マイナス極導体22として金属パイプを採用し、この金属パイプの端末25を接続対象に接続するにあたって導電部材26又は端子金具27を用いる高圧導電路15となることから、接続対象との電気的な接続を良好に行うことができるという効果を奏する。
【0073】
また、本発明によれば、高圧導電路15を外装部材18で保護する構成のワイヤハーネス9となる。高圧導電路15の径を小さくしていることから、これを保護する外装部材18の径D1も小さくなる。すなわち、小径化を図ったワイヤハーネス9となる。本発明によれば、外装部材18の小径化を図っていることから、例えば地面に対して距離を稼いだ配索のワイヤハーネス9となり、保護機能の確保が可能となる。従って、外装部材18の材質を必ずしも金属製としなくてもよくなる。
【0074】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
1…ハイブリッド自動車、 2…エンジン、 3…モータユニット、 4…インバータユニット、 5…バッテリー、 6…エンジンルーム、 7…自動車後部、 8…高圧ワイヤハーネス、 9…ワイヤハーネス、 10…中間部、 11…車体床下、 12…ジャンクションブロック、 13…後端、 14…前端、 15…高圧導電路、 16、17…端子、 18…外装部材、 19…プラス極導体、 20…第一絶縁体、 21…高圧電線、 22…マイナス極導体、 23…第二絶縁体、 24…電磁シールド部材、 25…端末、 26…導電部材、 27…端子金具、 28…絶縁テープ、 29…電気接触部、 30…電線接続部、 31…屈曲部、 32…クランプ、 33…インバータ側接続部、 34…バッテリー側接続部、 35…ハウジング、 36…シールドシェル、 37…シールドリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラス極導体及びマイナス極導体のいずれか一方と、該いずれか一方の外側に設けられる第一絶縁体と、該第一絶縁体の外側に設けられる前記プラス極導体及び前記マイナス極導体のいずれか他方と、該いずれか他方の外側に設けられる第二絶縁体とを備え、
前記いずれか他方を金属パイプにするとともに、前記いずれか他方の導体断面積を前記いずれか一方の導体断面積に応じて設定し、
さらに、前記いずれか他方の外面を被覆する状態に前記第二絶縁体を設けてなる
ことを特徴とする高圧導電路。
【請求項2】
請求項1に記載の高圧導電路において、
前記いずれか他方自身に配索経路に沿った形状保持機能を持たせてなる
ことを特徴とする高圧導電路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高圧導電路において、
前記いずれか他方の端末に導電部材又は端子金具を接続させてなる
ことを特徴とする高圧導電路。
【請求項4】
請求項1、2、又は3に記載の高圧導電路と、該高圧導電路を保護する外装部材とを含む
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項5】
請求項4に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記高圧導電路と前記外装部材との間に設けられる電磁シールド部材を更に含む
ことを特徴とするワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−109935(P2013−109935A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253417(P2011−253417)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】