説明

高多孔性ハニカムおよびその製造方法

自動車の触媒コンバータ・システムに使用するためのセラミック・ハニカム基体であって、2.0ミル(0.0508mm)を超える、好ましくは2.5ミル(0.0635mm)〜7ミル(0.1778mm)の、より好ましくは2.5ミル(0.0635mm)〜3ミル(0.1778mm)の壁厚を保ちながら、45〜75%の高い気孔率によって
改良された着火特性を示す。細孔径中央値は2〜10μm、25〜800℃における熱膨張係数(CTE)は5×10−7/℃未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、自動車の触媒コンバータ・システムに用いるためのセラミック体に関し、特に低減された熱質量と、より迅速な着火(light-off)特性を示す高多孔性ハニカム基体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化水素ガス、ガソリンまたはディーゼル燃料のような炭化水素燃料を用いた内燃機関から発生する排気ガスは、深刻な大気汚染を惹起する可能性がある。これら排気ガスに含まれる多くの汚染物質の中に、炭化水素と、酸素を含む化合物とがあり、後者は酸化窒素(NO)と一酸化炭素(CO)とを含む。自動車産業界においては、自動車のエンジンから排出される汚染物質の量を低減する試みが永年に亘ってなされており、触媒コンバータ・システムを装着した自動車は1970年台半ばから導入されている。
【0003】
一般にハニカム構造の形態のコージェライト基体は、高い耐熱衝撃性を備えることから、触媒的に活性な成分を支持する基体として好んで使用されてきた。近年益々厳しくなってきた排ガス規制により、自動車市場のための触媒コンバータには、より高い変換効率が要求されてきている。自動車の有害排出物質は、着火時間を制御することによって顕著に低減することができる。自動車の有害排出物質の50%以上は、着火が生じる以前に発生する。
【0004】
基体の着火時間は、その熱質量によって大きく影響を受け、特に、熱質量が小さいほど着火時間は短くなる。熱質量を小さくする一つの方法は、セルの壁を薄くすることである。したがって、極めて薄いセル壁(すなわち2.5ミル(0.0635mm)未満)を備えた基体への要求が劇的に高まってきている。このような構造は、質量の低減に加えて、より低い背圧とともに、より大きい幾何学的表面積を有する。
【0005】
薄壁ハニカム構造が有利であるとしても、セル壁の厚さを薄くすると、基体の強度が顕著に低下する。このことは、触媒コンバータ基体を缶に入れる作業工程で問題を生じる。もし強度が著しく低下すると、缶入れ時に基体材料が欠けるという事態が発生する。さらに、このような構造体の製造には多くの課題がある。スクリーンとダイの詰まりを回避するためには、粒子径より小さく、不純物含有量のより少ない原料が必要である。また、極めて狭いダイスロットにバッチを通して押し出すのに必要な押出成形圧も押出成形機の限度に達している。
【0006】
触媒コンバータ基体の熱質量を低減する別の方法は、セル密度および壁の厚さをほぼ一定に保ちながら気孔率を高めることである。しかしながら、熱衝撃による破損を防止するためには熱膨張係数を低く保つこともやはり重要である。残念ながら、高レベルの気孔率と低い熱膨張係数とは、ハニカム基体の強度を低下させることが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述に鑑み、この分野においては、セル壁を極めて薄くすることなしに高い強度と低い熱膨張係数を保ちながら、高い気孔率によって優れた着火特性を備えた触媒コンバータ基体を提供することが要望されている。本発明は、このような構造体およびその製造法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自動車の触媒コンバータ・システムに使用するための、改良された着火特性を示す高多孔性セラミック・ハニカム基体に関するものである。一つの態様においては、入力端と、出力端と、多数のセルとを有する基体によって画成されたハニカム基体が、2.0ミル(0.0508mm)を超える、好ましくは2.5ミル(0.0635mm)〜7ミル(0.1778mm)の範囲内の壁厚によってさらに特徴付けられる。一つの態様においては、本発明の物品は、45〜75%の範囲内の、好ましくは50〜60%の、最も好ましくは55%の全体気孔率と、2〜10μmの範囲内の、好ましくは2〜4μmの、最も好ましくは3μmの細孔径中央値とを有する。本発明の別の態様においては、25〜800℃において15×10−7/℃未満の、好ましくは10×10−7/℃未満の熱膨張係数を有する。本発明の物品のさらに別の態様においては、多孔体の棒サンプルとして測定した破壊係数が200〜400psi(1379〜2758kPa)、好ましくは350psi(2413kPa)を示す。
【0009】
本発明はまた、下記に示すような、触媒コンバータ・システムに使用するための高多孔性セラミック・ハニカム基体の製造方法に関するものである。最初に、複数の成分からなるバッチを形成するが、このバッチは、セラミック粉末材料と、可塑化バインダ系と、1〜30μmの、好ましくは2〜18μmの平均粒子径を有する細孔形成材とから構成される。次に、上記成分は混合されて可塑化された混合物を形成する。この可塑化された混合物は、次にダイを通じて未焼成ハニカム体を形成し、次にこの構造体は或る温度で或る時間焼成されて、所望の特性を得る。本発明の好ましい製造方法の実施の形態について下記に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のセラミック・ハニカム基体は、2.0ミル(0.0508mm)を超える薄いセル壁を画成する通常の基体構造を有しながら、45〜75%の範囲内の高気孔率によって、着火時間が迅速であるという魅力的な特徴を併せ備えている。好ましい実施の形態においては、気孔率が50〜65%であることが好ましく、55%が最も好ましい。別の好ましい実施の形態においては、壁厚が2.5ミル(0.0635mm)〜7ミル(0.1778mm)で、2.5ミル(0.0635mm)〜3ミル(0.1778mm)の間がより好ましい。
【0011】
本発明のハニカムのセル密度は厳密なものではないが、独自の用途に左右される。本発明の目的に対しては、一般に400セル/平方インチ(62セル/cm)〜900セル/平方インチ(140セル/cm)のセル密度が適している。
【0012】
一つの実施の形態においては、本発明の構造体は、15×10−7/℃未満の、好ましくは10×10−7/℃未満の低い熱膨張係数(CTE)(25〜800℃)を有する。低い熱膨張係数は、過酷な環境で用いられるのに適した高い耐熱衝撃特性をハニカム体に与える。別の実施の形態においては、本発明の構造体は、多孔体の棒のサンプルとして測定した破壊係数(MOR)が200〜400psi(1379〜2758kPa)、好ましくは350psi(2413kPa)である。
【0013】
本発明のハニカム体を構成するセラミック材料は、厳密ではなく、珪酸塩、酸化物、アルミン酸塩、窒化物、硼酸塩、炭化物、硼化物、およびアルミニウム化合物のいずれをを含んでも差し支えない。本発明は、コージェライトおよび/またはムライトを含有するセラミック・ハニカム基体が特に適している。このような混合物を例示すると、0〜60重量%のムライトと、30〜100重量%のコージェライトとを含み、一般に10重量%までの他の相が許容される。
【0014】
化学反応用モデルで測定すると、本発明の基体は、従来製品に比較して、着火時間が約5.5秒だけ改善されることが予測される。図1を参照すると、本発明のコージェライト基体と、従来のコージェライト基体との比較が示されている。両基体ともに、900セル/平方インチ(140セル/cm)のセル密度と2.5ミル(0.0635mm)の壁厚というジオメトリーを有する。本発明の基体は、63%の気孔率を有するように設計されているが、比較された従来の基体の気孔率は25%である。本発明の基体には、図1から明らかなように、着火時間において5.5秒の改善が予測される。これは、より低い気孔率を有する従来の同様の基体よりも著しく早い。
【0015】
本発明はまた、本発明の基体の製造方法に関するものである。最初に、複数の成分からなるバッチが配合される。バッチの成分は、セラミック粉末材料と、可塑化バインダ系と、細孔形成材である。本発明は、珪酸塩、硼酸塩またはアルミン酸塩ガラスまたは、結晶質または半結晶質の珪酸塩、酸化物、アルミン酸塩、硼酸塩、炭化物、窒化物およびアルミニウム化合物からなる群から選択された非晶質、結晶質または半結晶質材料を含む種々の無機セラミック粉末を用いることができる。しかしながら、特に好適なセラミック粉末材料は、コージェライト、スピネル、クレイ、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカと、カルシウム、マグネシウム、硼素、チタン、ゲルマニウムの酸化物と、アルカリと、遷移金属である。
【0016】
本発明の実施に特に適しているコージェライトを形成するためのセラミック・バッチ材料の組成が、そのすべてが引例として本発明に組み入れられる米国特許第6,506,336号明細書に記載されている。焼成によって究極的にコージェライトを形成する一つの組成は、重量%で示すと下記の通りである。すなわち、33〜41%の酸化アルミニウムと、46〜53%のシリカと、11〜17%の酸化マグネシウムである。好適なコージェライト形成用無機セラミック粉末原材料は、クレイ、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、およびマグネシア(MgO)を生じる原材料である。好ましいコージェライト形成用粉末材料は、カオリナイト・クレイ、タルク、アルミナおよびシリカを含む。
【0017】
好ましいクレイは、KAOPAQUE-10(商標)(K10)クレイのような、平均粒子径が2μm未満の薄片に裂かれたカオリナイト生クレイと、Glomax LL(商標)のような、平均粒子径が2μm未満で、表面積が10m/gを超えるか焼されたクレイであり、すべて Dry Branch Kaolin 社から入手できる。好適なタルクは、形態学指数(米国特許第5,141,686号公報参照)が0.8を超え、平均粒子径が2μm未満(セディグラフ粒子分析装置で測定)で、表面積が5m/gを超える、例えば、Luzenac America 社から供給される Artic Mist(商標)のような材料である。
【0018】
アルミナ源は、5μm未満、好ましくは1μm未満の平均粒子径を有する。アルミナ源は、アルミナ、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、およびそれらの混合物で、このアルミナ源はベーマイトまたは擬似ベーマイトが好ましい。好適なアルミナ源は、Alcoa 社からのA100SGD(商標)および/またはは Sasol North America 社からのDispal(商標)アルミナを含む。好適なシリカは、例えば Unimin 社から販売されているIMSIL(商標)のような、5μm未満の平均粒子径と約4〜6m/gを超える表面積とを有するものである。
【0019】
本発明に用いられる可塑化バインダ系は、バッチのセラミック粉末材料の組成および形態学に部分的に左右される。コージェライト・ハニカムの製造のためには、セルロースを含む水性バインダ系、またはメチルセルロース、メチルセルロース誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択されたバインダと、ステアリン酸またはオレイン酸のような界面活性剤と、ポリαオレフィンのようなオイルまたは好ましくは低分子量オイルのようなオイルベースの成分と、水ビヒクルとが高可塑性バッチを提供することができる。好ましい実施の形態においては、バインダ系は、100重量部のセラミック粉末材料に対して、2〜25重量部のセルロース・エーテル・バインダと、0.5〜10重量部の界面活性剤と、2〜25重量部のオイルと、30から100重量部の水ビヒクルを含む。バインダ系の成分は、重量が(バインダ、界面活性剤、オイルまたは水の質量)/(セラミック材料の質量)×100%として計算されるように過剰添加(super-additions)として添加される。
【0020】
セラミック粉末材料および可塑化バインダ系に加えて、バッチはさらに大量の細孔形成材を含む。バインダ系の成分と同様に、細孔形成材は、重量が(バインダ、界面活性剤、オイルまたは水の質量)/(セラミック材料の質量)×100%として計算されるように過剰添加として添加される。本発明の実施に際しては、細孔形成材は15〜85重量%、好ましくは30〜70重量%の量が添加され、2〜18μmの、好ましくは3〜8μmの平均粒子径を有する。平均粒子径が2μm未満の細孔形成材は、所望の気孔率を発生させるのではなく収縮してしまうので効果がない。平均粒子径が18μmを超える細孔形成材は、得られる焼成体の強度を低下させる。
【0021】
細孔形成材は、焼成時の気化または分解によって細孔を形成することができるいかなる天然材料または合成材料であってもよく、炭素、グラファイト、澱粉、セルロース、天然ワックス、または合成ワックスを含む。細孔形成材は、パラフィン・ワックス、微結晶ワックス、ポリエチレン・ワックス、合成アマイド・ワックス、塩素化ワックス、およびそれらの分散体のような、少なくとも70℃の高融点を有するものが好ましい。「分散体」とは、固体添加量が50重量%未満の液体環境に存在する細孔形成材を意味する。最も好ましい細孔形成材はポリエチレン・ワックスまたはその分散体である。ワックス細孔形成材は、真空または不活性環境を用いて焼成以前に除去される。
【0022】
バッチ成分、すなわち、セラミック粉末材料、可塑化バインダおよび細孔形成材は、混合されて可塑化された混合物を形成する。一つの実施の形態においては、粉末化されたセラミック材料の一部が先ず細孔形成材分散体と混合されて、一様な混合物を形成する。その後、この混合物は乾燥され、かつ篩にかけられて、60〜85重量%の、好ましくは70重量%の細孔形成材と、5〜25重量%の、好ましくは15重量%のセラミック材料と、2〜20重量%の、好ましくは10重量%の水とからなる組成を有する微粒子細孔形成材量混合物を得る。残りの粉末化されたセラミック材料は、次にバインダと乾燥状態で混合され、得られた乾燥した混合物が上記微粒子細孔形成材量混合物に添加される。
【0023】
この得られた混合物に対し、次に可塑化バインダ系の残りの成分、すなわち、界面活性剤、オイルまたはオイルをベースとする成分、および水ビヒクルが添加される。理想的な取扱い特性および混合物内の他の成分との相溶性を得るために、水の含有量は材料の形式に応じて変えることができる。実際の観点から、本実施の形態の実施における水の含有量は通常、セラミック粉末材料100重量部に対して約30から00部、好ましくは43重量部である。次にこの水分を含む混合物は、バッチを可塑化する適当なミキサー内でせん断される。適当な細孔形成材分散体は、Michelman 社からMichem Guard(商標)10,15,20,25,55,60 の名前で販売されているポリエチレン・ワックス分散体である。
【0024】
別の実施の形態においては、焼結可能なセラミック材料と、バインダと粉末化された細孔形成材が、先ず乾燥状態で混合されて一様な混合物を形成する。次いで、この得られた混合物に、界面活性剤とオイルと水ビヒクルとが添加される。この混合物は、Littleford(商標)のようなミキサー内で混練される。水ビヒクルは、バッチを可塑化するのに必要な量、セラミック粉末材料100重量部に対して一般に30〜100部、好ましくは43部添加される。水の量は、一つの材料バッチから別のバッチへと変えることができ、したがって、そのバッチを押出し成形性に関して予めテストすることによって決定される。次にこの水分を含む混合物は既知の手段で可塑化される。適当な細孔形成材は、Michelman 社から Michem Wax(商標)410,411,436,437,439,492 の名前で販売されているポリエチレン・ワックスである。別の有用な細孔形成材は、Honeywell社から ACmist A6,A12,A18,B6,B9,B12,B18,C5,C12,C18,D5,D9,E6,E12,3105,3205,3305,1106,1109,1112,1204,1306,1309 の名前で販売されている微粒子ポリエチレン・ワックス粉末である。
【0025】
得られた可塑化されたバッチは次に、好ましくは押出成形によって、ハニカム押出ダイを通してハニカムのような未焼成体に造形される。押出成形技術は当業者に良く知られている。このハニカム構造体は、入力端面と、出力端面と、入出力端面間に延びる多数のセルとを備えている。本発明のハニカム体は、所望の用途に合わせた種々のセル密度をもって作成される。本発明は、厚さが2ミル(0.0508mm)を超える、好ましくは2.5ミル(0.0635mm)〜7ミル(0.1778mm)の範囲内の、より好ましくは2.5ミル(0.0635mm)〜3ミル(0.0762mm)の範囲内のセル壁を備えた、900セル/平方インチ(140セル/cm)もの極めて高いセル密度を有するハニカム体を形成するのに特に適している。
【0026】
焼成に先立って、細孔形成材が真空中または不活性雰囲気中での加熱によって未焼成体(必要に応じて最初に乾燥される)から除去される。一つの実施の形態においては、市販されている真空熱分解装置を用いて、細孔形成材がほぼ除去されるのに十分な温度と時間とをもって未焼成体が真空中で加熱される。あるいは、未焼成体が窒素ガス中で温度と時間とをかけて加熱されても、ほぼ同様の物が得られる。例えば、適当な温度は500〜600℃またはそれ以上であり、時間は12時間またはそれ以上である。
【0027】
その後、ハニカム体は、空気中で約1400℃の最高温度にまで加熱され、かつこの最高温度を8時間保持するというサイクルを合計48時間、必要であればそれ以上の時間をもって焼成される。バッチの成分がコージェライトおよび/またはムライトを形成するのは、計算量MgAlSi18に近似する相が優勢なセラミック構造の形成の結果である。
【0028】
本発明をより詳細に説明するために、下記に限定的でない具体例を示す。
【実施例】
【0029】
表1から選択された原料が表2に示された比率をもってともに混合することによって、比較例(従来例)と本発明の実施例とを調製した。比較例1は、米国特許第6,506,336号明細書の教示に従って調整したもので、細孔形成材が抜けている。本発明の実施例1〜4は、ポリエチレン・ワックスの分散体を用いることによって調製し、上述のような微粒子発泡材料混合物を形成している。実施例5は、細孔形成材として、粉末にされたポリエチレン・ワックスを用いることによって調製した。
【0030】
可塑化された混合物を、適切な条件の下に、ハニカム形成用ダイを通して押出し成形して、約640〜960セル/平方インチ(99〜149セル/cm)の範囲内のセル密度と、約2.8〜4.2ミル(0.0711〜0.1067mm)の範囲内のセル壁の厚さとを備えたモノリスを形成した。未焼成セラミック・ハニカムは十分に乾燥して、存在するかも知れない水分または他の液相を除去し、次いで先ず市販の真空熱分解装置内で室温から500℃まで12時間に亘って加熱し、次いで室温から1400℃まで加熱し、かつこの温度を8時間保つサイクルを全部で48時間以上反復する態様で焼成するという、コージェライト・セラミック体の形成に適した焼成条件の下に、最終的な製品構造を形成した。
【0031】
実施例の特性は表2に示されている。気孔率(%)および細孔径(μm)は水銀ポロシメータによって測定した。軸線方向(セル・チャンネルのに長手方向)に沿った熱膨張係数は膨張計によって測定した。破壊係数は、このフィルタの軸線方向に平行に切断した多孔性棒サンプルに対する4点法によって測定した。
【0032】
このコージェライト・ハニカム構造は、2.0ミル(0.0508mm)を超えるセル壁の厚さと、45〜75%の範囲内の全体気孔率と、2〜10μmの範囲内の細孔径中心値が、15×10−7/℃未満の熱膨張係数(CTE)(25〜800℃)と、200〜400 psi (1379〜2758kPa)の範囲内の破壊係数(MOR)とを有することが明らかである。
【0033】
図2を参照すると、実施例4の研磨した壁部分の487倍に拡大した電子顕微鏡写真が示されている。水銀ポロシメータによって測定されたように、図2の本発明の構造体は、55%もの高い気孔率と1.79μmの細孔径中心値を示している。図3は、33%の気孔率と1.3μmの細孔径中心値を示す市販のコージェライト・ハニカム体の研磨した壁部分の487倍に拡大した電子顕微鏡写真を比較したものである。
【0034】
以上、本発明の図示された特定の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の精神と、添付の請求の範囲から離れることなしに、別の方法を用いることが可能なことを理解すべきである。
【表1】

【表2】

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による高多孔性コージェライト・ハニカム基体において予測される改良された着火時間を示す化学反応モデルのグラフ
【図2】本発明による高多孔性コージェライト・ハニカム基体の487倍に拡大した顕微鏡写真
【図3】市販のコージェライト・ハニカム基体の487倍に拡大した顕微鏡写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の触媒コンバータ・システムに使用するための高多孔性セラミック・ハニカム基体であって、
改良された着火特性を示し、かつ入力端と、出力端と、壁厚が2.0ミル(0.0508mm)を超える多数のセルとを有し、45〜75%の範囲内の全体気孔率と、2〜10μmの範囲内の細孔径中央値と、25〜800℃において15×10−7/℃未満の熱膨張係数とを有することを特徴とするハニカム基体。
【請求項2】
前記壁厚が、2.5ミル(0.0635mm)〜7ミル(0.1778mm)の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載のハニカム基体。
【請求項3】
前記壁厚が、2.5ミル(0.0635mm)〜3ミル(0.0762mm)の範囲内にあることを特徴とする請求項2記載のハニカム基体。
【請求項4】
前記気孔率が50〜65%の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載のハニカム基体。
【請求項5】
前記細孔径中央値が2〜4μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1記載のハニカム基体。
【請求項6】
前記25〜800℃における熱膨張係数が10×10−7/℃未満であることを特徴とする請求項1記載のハニカム基体。
【請求項7】
多孔体の棒として測定した破壊係数(MOR)が200〜400psi(1379〜2758kPa)の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載のハニカム基体。
【請求項8】
触媒コンバータ・システムに使用するための高多孔性セラミック・ハニカム基体の製造方法であって、
a)
(イ)セラミック粉末材料と、
(ロ)可塑化バインダ系と、
(ハ)2〜18μmの平均粒子径を有する15〜85重量%の細孔形成材と、
を含む成分からなるバッチを作成し、
b)前記成分からなるバッチを混合して、可塑化された混合物を形成し、
c)該可塑化された混合物を、ダイに通して押出成形して未焼成ハニカム体を形成し、
d)該未焼成ハニカム体を、前記細孔形成材を除去するのに十分な温度および時間をもって加熱して、45〜75%の範囲内の全体気孔率と、2〜10μmの範囲内の細孔径中央値と、25〜800℃において15×10−7/℃未満の熱膨張係数とを有する構造体を形成することを特徴とする前記方法。
【請求項9】
前記バッチが、3〜8μmの粒子径中央値を有する30〜70重量%の細孔形成材を含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記セラミック粉末材料が、コージェライト、スピネル、クレイ、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカと、カルシウム、マグネシウム、硼素、チタン、ゲルマニウムの酸化物と、アルカリと、遷移金属からなる群から選択されたミネラルまたは精製された粉末を含むことを特徴とする請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−507667(P2007−507667A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533959(P2006−533959)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/031019
【国際公開番号】WO2005/033037
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】