高密度プラズマを生成する方法および装置
強電離プラズマを生成する方法および装置が記載されている。本発明による強電離プラズマを生成する装置には、アノードとカソードとが含まれており、カソードはアノードに隣接して配置され、アノードとカソードとの間にギャップが形成される。イオン源は、カソードの近傍に弱電離プラズマを生成する。電源は、アノードとカソードとの間のギャップに電場を生成する。電場は、弱電離プラズマ内に励起原子を生成し、カソードから二次電子を生成する。二次電子は励起原子を電離することにより、強電離プラズマを生成する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プラズマは、第4の物質の状態と考えられている。プラズマは、不規則な方向に動く荷電粒子の集まりである。プラズマは、平均して電気的に中性である。プラズマを生成する1つの方法は、2つの並列な導電性電極の間の低圧気体に電流を印加することである。あるパラメータが満たされると、気体は「破壊」してプラズマを形成する。例えば、プラズマは、約10−1Torrと10−2Torrとの間にある圧力で希ガス雰囲気(例えば、アルゴン)において2つの並列な導電性電極の間の数キロボルトの電位を適用することによって生成され得る。
【0002】
プラズマ処理は、半導体製造産業などの多くの産業において広く用いられている。例えば、プラズマエッチングは、電子工学において基板材料および基板上に堆積した膜をエッチングするのに広く用いられている。表面から材料を除去するために用いられるプラズマエッチング処理には、スパッタエッチング、純化学的エッチング(pure chemical etching)、イオンエネルギー誘起エッチング(ion energy driven etching)およびイオンインヒビターエッチング(ion inhibitor etching)の4つの基本的な典型がある。
【0003】
プラズマスパッタリングとは、基板上に膜を堆積させるのに広く用いられる技術である。スパッタリングは、ターゲット表面から原子を物理的に取り出すものであり、物理気相成長(PVD)と呼ばれることがある。アルゴンイオンといったイオンが生成されて、プラズマから引き出されて、陰極暗部を越えて加速される。ターゲットは、プラズマが形成される領域よりも低い電位を有する。従って、ターゲットは正イオンを誘引する。正イオンは高速でターゲットに向かって移動する。正イオンはターゲットに衝撃を与え、原子をターゲットから物理的に取り除きまたはスパッタさせる。スパッタ原子はそれから、スパッタターゲット材料の膜を堆積する基板に伝播する。プラズマは、ターゲット表面で生成された二次電子とともに中性分子の衝突によって形成された電子−イオンペアによって補充される。
【0004】
マグネトロンスパッタリングシステムは、ターゲット表面のイオン衝撃によって生成される二次電子を閉じ込め、濃縮するように成形された磁場を使用する。マグネトロンスパッタリングシステムによって生成されたプラズマ放電はターゲットの表面の近傍に位置し、高い電子密度を有する。高い電子密度は、ターゲット表面に近い領域においてスパッタリングガスのイオン化を引き起こす。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、特に、詳細な説明において記載される。添付の図面とともに以下の記載を参照することによって、本発明の上記の利点およびさらなる利点はより良く理解され得る。図面において、類似した数字は、様々な図における類似した構造要素および特徴を示す。図面は必ずしもその縮尺である必要はなく、本発明の原理の図示を重視したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(詳細な説明)
図1は、無線周波数(RF)電源102を有する周知のプラズマ発生装置100の断面図を示す。周知のプラズマ発生装置100には真空チャンバ104が含まれ、ここでプラズマ105が生成される。真空チャンバ104は、管108を介して真空ポンプ106と流動的に位置づけられる。真空ポンプ106は、真空チャンバ104を高真空に真空引きするように適合される。真空チャンバ104内の圧力は、一般的に10−1Torrを下回る。アルゴンガス供給源などの原料ガス供給源109からの原料ガスは、ガス注入口110を介して真空チャンバ104に導入される。ガス流量はバルブ112によって制御される。
【0007】
プラズマ発生装置100にはカソード114も含まれる。カソード114は、通常、円板の形をしている。カソード114は、伝送線122によって、ブロッキングコンデンサ120の第1の電極118に電気接続される。ブロッキングコンデンサ120の第2の電極124は、RF電源102の第1の出力126に結合される。絶縁体128は、カソード114を真空チャンバ104と電気的に絶縁させるために、真空チャンバ104の壁に伝送線122を貫通させるために用いられ得る。
【0008】
アノード130は、真空チャンバ104においてカソード114の近傍に配置される。アノード130は、通常、伝送線132を用いてグランドに結合される。RF電源102の第2の出力134も通常グランドに結合される。アノード130を真空チャンバ104と絶縁するために、絶縁体136を用いることにより、真空チャンバ104の壁に伝送線132を貫通させ得る。真空チャンバ104は、グランドにも電気的にも結合され得る。
【0009】
動作中に、RF電源102はカソード114とアノード130との間にRF電圧パルスを印加する。このRF電圧パルスは、真空チャンバ104においてアルゴン原料ガスをイオン化するのに十分な振幅を有する。典型的なRF駆動電圧は100V〜1000Vの間にあり、カソード114とアノードとの間隔138は、約2cm〜10cmの間である。典型的な圧力は、10mTorrから100mTorrの範囲内にある。典型的な電力密度は、0.1W/cm2〜1W/cm2の範囲にある。駆動周波数は典型的に13.56MHzである。典型的なプラズマ密度は、109cm−3〜1011cm−3の範囲にあり、電子温度は、3eVのオーダーである。
【0010】
電離プロセスは、電子衝突による直接電離または原子電離と呼ばれ、以下のように記述し得る。
【0011】
Ar+e−→Ar++2e−
ここで、Arは、原料ガス中の中性のアルゴン原子を表し、e−は、カソード114とアノード130との間に印加される電圧に応答して生成されるイオン化用電子を表す。中性のアルゴン原子とイオン化用電子との衝突によって、アルゴンイオン(Ar+)と2つの電子が得られる。
【0012】
プラズマ放電は、少なくとも部分的にカソードからの二次電子放出によって保持される。しかしながら、典型的な動作圧力が比較的高い必要があるために、二次電子はアノード130またはチャンバ104の壁から離れない。このような圧力は大抵のプラズマ処理において最適ではない。
【0013】
プラズマ放電は、従来のグロー放電において得られ得るものより高い電流密度、より低い電圧およびより低い圧力において動作することが所望される。これにより、カソード114の近くのDC磁場を使用することにより二次電子を閉じ込めることになる。二次電子を閉じ込めることにより、実質的にチャンバ104の場所(図示せず)にプラズマが閉じ込められ、それによって、所与の入力電力でその場所におけるプラズマ密度が高められ、その一方で、ロスエリアが削減される。
【0014】
磁気閉込めは主に、比較的低い磁界強度がある閉込め領域(図示せず)において生じる。閉込め領域の形および場所は、磁石のデザインによって決定される。一般的に、閉込め領域におけるプラズマ内の正に帯電したイオンの濃度は、チャンバ104内のどの領域におけるその濃度よりも高い。その結果、プラズマの均一性は磁気強化システムにおいて大幅に減ぜられ得る。
【0015】
マグネトロンスパッタリングシステムにおけるプラズマの不均一性により、望ましくないターゲット材料の不均一な侵食と、そして、比較的低いターゲットの利用率とが導かれ得る。マグネトロンスパッタリングシステムにおけるプラズマの不均一性により、基板の不均一なエッチングが導かれ得る。
【0016】
プラズマに印加するRF電力を激増することだけでは、より均一でより密度の高いプラズマの形成は得られない。その上、均一性および密度のまさに斬新的な増加の達成に必要な電力量を印加することによって、チャンバ104内に望ましくない放電(アーク放電)を引き起こす絶縁破壊状態を発生させる可能性が増し得る。
【0017】
比較的高電力のパルスを周期的に印加するが、放出電力の平均を比較的低いままにし得るために、プラズマに印加される直流(DC)電力をパルス状にすることは、有利であり得る。その上、望ましくない電気放電をもたらす絶縁破壊状態が成立する可能性を低減するように、このような大きい電圧パルスの幅を事前設定し得る。望ましくない電気放電は、エッチング処理を阻害し、真空チャンバ104の汚染を引き起し得る。しかしながら、非常に大きい電力パルスはそれでもやはり、電圧パルスの幅とは関係なく、望ましくない電気放電を結果として招き得る。
【0018】
図2A〜図2Dは、本発明の一実施形態によるパルス電源202を有するパルス生成装置200の断面図を示す。例えば、図2Aは、パルス電源202が起動する前の時におけるパルス電源202を有するパルス生成装置200の断面図を示す。一実施形態において、プラズマ発生装置200には、プラズマを支持する真空チャンバなどのチャンバ(図示せず)が含まれる。チャンバは、真空システム(図示せず)に結合され得る。
【0019】
プラズマ発生装置200には、カソード204も含まれる。一実施形態において、カソード204は、ステンレス鋼などの金属材料または反応性ガスと化学的に反応しない他の材料から成り得る。他の実施形態では、カソード204には、スパッタリングに用いられ得るターゲットが含まれる。カソード204は整合器208の出力206に結合される。整合器208の入力210はパルス電源202の第1の出力212に結合される。パルス電源202の第2の出力214はアノード216に結合される。絶縁体218は、アノード216をカソード204と絶縁する。
【0020】
一実施形態において、パルス電源202の第1の出力212はカソード204(図示せず)に直接結合される。一実施形態(図示せず)において、パルス電源202の第2の出力214はグランドに結合される。この実施形態において、アノード216もまたグランドに結合される。
【0021】
一実施形態(図示せず)において、パルス電源202の第1の出力212は、負電圧のインパルスをカソード204に結合する。別の実施形態(図示せず)において、パルス電源202の第2の出力214は、正電圧のインパルスをアノード216に結合する。
【0022】
一実施形態において、パルス電源202は約30,000Vまでのピーク電圧レベルを生成する。典型的な動作電圧は、一般的に約50V〜30kVの間にある。一実施形態において、パルス電源202は、プラズマの体積に応じて、約1A〜約5,000A以上のピーク電流レベルを生成する。典型的な動作電流は、プラズマの体積に応じて変わり得、100A未満の電流から数千Aよりも大きな電流の間にある。一実施形態において、パルス電源202により生成されるパルスの繰返し率は1kHz未満である。一実施形態において、パルス電源202により生成されるパルスのパルス幅は、実質的に、約1マイクロ秒〜数秒の間にある。
【0023】
アノード216とカソード204との間に形成されるギャップ220、アノード216とカソード204との間の領域222に電流が流れ得るに十分であるように、アノード216は配置される。一実施形態において、ギャップ220の幅は、約0.3cm〜約10cmの間にある。カソード204の表面積から領域222の体積が決定される。ギャップ220および領域222の総体積は、本明細書に記載する電離プロセスにおけるパラメータである。
【0024】
一実施形態において、プラズマ発生装置200には、真空チャンバなどのチャンバ(図示せず)が含まれる。チャンバは、真空バルブ(図示せず)を介して真空ポンプ(図示せず)と流動的に結合される。一実施形態において、チャンバ(図示せず)はグランド電位に電気的に結合される。1つまたは複数のガスライン224は、原料ガス供給源(図示せず)から原料ガス226をチャンバに提供する。一実施形態において、ガスライン224は、絶縁体228によって、チャンバおよび他の構成要素と絶縁される。他の実施形態において、直列絶縁カプラー(図示せず)を用いて、ガスライン224を原料ガス供給源と絶縁し得る。ガス供給源は、アルゴンが含まれるがこれに限定されない任意の原料ガス226であり得る。実施形態によっては、原料ガス226は、異なるガス、反応性ガスまたは純反応性ガスの混合ガスを含み得る。実施形態によっては、原料ガス226は希ガスまたはガスの混合ガスを含む。
【0025】
動作中において、ガス供給源から原料ガス226が、ガス流制御システム(図示せず)によりチャンバに供給される。好ましくは、原料ガス226はカソード204とアノード216との間に供給される。カソード204とアノード216との間に原料ガス226を直接注入することにより、原料ガス226の流速が増加し得る。これにより、カソード204とアノード216との間の領域222において急速な体積交換が引き起こされ、より長い幅を有する高電力パルスがギャップ220全体に印加されることを可能にする。より長い幅を有する高電力パルスは、より高密度のプラズマの形成をもたらす。この体積交換は本明細書により詳細に記載する。
【0026】
一実施形態において、パルス電源202は、弱電離プラズマ232を発生させるイオン源の構成要素である。図2Bを参照すると、原料ガスがカソード204とアノード216との間に供給された後、パルス電源202はカソード204とアノード216との間に電圧パルスを印加する。一実施形態において、パルス電源202は、カソード204に負の電圧パルスを印加する。電界230がカソード204とアノード216との間において展開するように、電圧パルスの大きさおよび形状が選択される。弱電離プラズマ232がアノード216とカソード204との間の領域222において発生するように、電界230の大きさおよび形状が選択される。
【0027】
弱電離プラズマ232は、予備電離プラズマとも呼ばれる。一実施形態において、予備電離プラズマのプラズマ密度のピークは、アルゴン原料ガスに対して、約106cm−3〜1012cm−3の間にある。チャンバ内の圧力は約10−3Torrから10Torrまたはそれより高くへと変化し得る。圧力は、カソード204に近傍の磁場の存在といった種々のシステムパラメータに依存して変化し得る。弱電離プラズマ232のプラズマ密度のピークは、特定のプラズマ生成システムの特性に依存しており、弱電離プラズマ232における測定場所の関数である。
【0028】
一実施形態において、弱電離プラズマ232を生成するためにパルス電源202は、約0.1A〜100Aの間の放電電流を伴う約100V〜5kVの間の初期電圧を有する低電力パルスを生成する。実施形態によっては、パルス幅は約0.1マイクロ秒〜約100秒のオーダーであり得る。パルスの特定のパラメータについて、本明細書により詳細に記載する。
【0029】
一実施形態において、弱電離プラズマ232を生成する前に、パルス電源202は、原料ガス226をカソード204とアノード216との間に供給する前に、カソード204とアノード216との間に電位差を生成する。別の実施形態において、原料ガス226をカソード204とアノード216との間に供給した後に、パルス電源202は、ギャップ220を流れる電流を生成する。
【0030】
一実施形態において、直流(DC)電源(図示せず)をイオン源において用いることにより、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマ232を生成し、保持する。この実施形態において、DC電源は、弱電離プラズマ232を点火するに十分高い電圧を生成するように適合される。一実施形態において、DC電源は、弱電離プラズマ232を生成し、保持するために、カソード204とアノード216との間に約0.1A〜100Aの範囲にある放電電流を伴う約100V〜1kVのオーダーでプラズマ放電電圧を生成する数キロボルトの初期電圧を生成する。放電電流の値は、電源の電力レベルに依存し、弱電離プラズマ232の体積の関数である。さらに、領域222に磁場(図示せず)があることにより、弱電離プラズマ232を生成するのに要求される印加電圧と印加電流との値に劇的効果を与えられ得る。
【0031】
実施形態(図示せず)によっては、DC電源はプラズマ生成システムの大きさと領域234内の磁場の強さとに応じて約1mA〜100Aの間にある電流を生成する。一実施形態において、弱電離プラズマ232を生成する前に、DC電源は、原料ガス226の導入前に、カソード204とアノード216との間に初期ピーク電圧を生成し、保持するように適合される。
【0032】
別の実施形態において、交流(AC)電源(図示せず)を用いて、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマ232を生成し、保持する。例えば、電子サイクロトロン共鳴(ECR)、容量結合プラズマ放電(CCP)または誘導結合プラズマ(ICP)放電を用いて、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマ232を生成し得、または保持し得る。
【0033】
AC電源は、弱電離プラズマを生成し、保持するためにDC電源よりも小さい電力を必要とし得る。その上、予備電離プラズマまたは弱電離プラズマ232は、紫外線法、X線法、電子ビーム法、イオンビーム法、または電離フィラメント法などの多数の他の方法を用いても生成され得る。これら方法には、本発明によるイオン源において用いられる構成要素が含まれる。実施形態によっては、弱電離プラズマは領域222の外側に形成され、次いで、領域222へと拡散する。
【0034】
弱電離プラズマまたは予備電離プラズマ232を形成することによって、カソード204とアノード216との間に高電力パルスを印加するときにチャンバ内が破壊状態になる可能性は実質的になくなる。破壊状態になる可能性は実質的になくなる。これは、弱電離プラズマ232が、プラズマを介する電気伝導を提供する低レベルの電離を有するためである。この伝導によって、プラズマに高電力を印加するときにでさえ、破壊状態になることは実質的に防止される。
【0035】
一実施形態において、原料ガス226が領域222内を通過する様に、弱電離プラズマ232は、いくらか均一に領域234へと拡散する。この均一な拡散により、領域234に非常に均一な強電離プラズマの生成を促す傾向になる。
【0036】
一実施形態(図示せず)において、弱電離プラズマ232は、磁場によってカソード204の近傍に閉じ込められ得る。特に、弱電離プラズマ232内の電子がカソード204の近傍に生成される磁場によって閉じ込められ得る。一実施形態において、磁場の強さは約50ガウス〜約2,000ガウスの間にある。
【0037】
一実施形態において、磁石系(図示せず)は、カソード204の近傍に磁場を生成する。磁石系は、永久磁石(図示せず)が含まれ得、またはその代わりに電磁石(図示せず)が含まれ得る。磁石系の配置は、磁場の所望の形状および強さに応じて変更され得る。別の実施形態において、磁石系はバランスのとれた配置、またはバランスの取れていない配置を取り得る。一実施形態において、磁石系には切り替え可能な電磁石が含まれ、切り替え可能な電磁石は、カソード204の近傍にパルス状の磁場を生成する。実施形態によっては、チャンバ(図示せず)の周囲およびチャンバのいたる所の様々な位置に、追加の磁石系(図示せず)が配置され得る。
【0038】
図2Cを参照して、弱電離プラズマ232が形成されるとすぐに、パルス電源202はカソード204とアノード216との間に高電力パルスを生成する(図2C)。高電力パルスの所望の電力レベルは、例えば、弱電離プラズマ232の密度とプラズマの体積とを含むいくつかの要因に依存する。一実施形態において、高電力パルスの電力レベルは、約1kW〜約10MWまたはそれより高くまでの範囲にある。
【0039】
各高電力パルスは所定の時間保たれ、実施形態によっては、その時間は約1マイクロ秒〜10秒の間にある。高電力パルスの繰返し周波数または繰返し率は、実施形態によっては、約0.1Hz〜1kHzの範囲にある。パルス電源202により生成される平均電力は、プラズマの体積に応じて1MW未満であり得る。一実施形態において、カソード204および/またはアノード216の熱エネルギーは、ヘリウム冷却などの液体冷却またはガス冷却によって持去られるか、もしくは分散される(図示せず)。
【0040】
高電力パルスにより、カソード204とアノード216との間に強電場236が生成される。この強電場236は実質的に、カソード204とアノード216との間の領域222に存在する。一実施形態において、電場236はパルス状の電場である。他の実施形態において、電場236は準静的な電場である。本明細書において、準静的な電場とは、電子の中性ガス粒子との衝突時間と比べてかなり長い電場変動の特性時間を有する電場のことを指す。上記の電場変動の時間は、10秒のオーダーであり得る。強電場236の強さおよび位置について、本明細書により詳細に記載する。
【0041】
図2Dを参照して、高電力パルスにより、弱電離プラズマ232から高電離プラズマまたは強電離プラズマ238が発生する(図2C)。強電離プラズマ238は高密度プラズマとも呼ばれる。圧力が約100mTorr〜10Torrのオーダーである場合には、この強電離プラズマ238から形成される放電電流は約5kA以上のオーダーであり得、放電電圧は約50V〜500Vの範囲にある。
【0042】
一実施形態において、強電離プラズマ238は、領域234に均一に拡散する傾向にある。均一な拡散により、より均一なプラズマボリュームが生成される。均一な拡散については、図5A〜図5Dを参照しながらより詳細に記載される。
【0043】
均一な拡散は、多くのプラズマ処理に有利である。例えば、均一な拡散を有するプラズマエッチング処理は、従来のプラズマエッチングと比べてより均一な方法でエッチングされる基板の表面(図示せず)に向けて強電離プラズマ238内のイオンを加速する。結果として、基板の表面はより均一にエッチングされる。均一な拡散を有するプラズマ処理により、基板を回転させる必要なく高い均一性が得られ得る。
【0044】
また、均一な拡散を有するマグネトロンスパッタリングシステムも、従来のマグネトロンスパッタリングと比べてより均一な方法でスパッタリングターゲットの表面に向けて強電離プラズマ238内のイオンを加速する。結果として、ターゲット材料は、基板およびまたはマグネトロンを回転させる必要なくより均一に基板上に堆積される。また、スパッタリングターゲットの表面はより均等に侵食されており、より高いターゲットの利用が達成される。
【0045】
一実施形態において、本発明のプラズマ発生装置200は、比較的高い電子温度と比較的高密度のプラズマとを生成する。本発明の強電離プラズマ238の一用途は、電離物理気相成長(IPVD)(図示せず)であり、電離物理気相成長は、中性スパッタ原子を正イオンに変換することによりスパッタリング処理を強化する技術である。
【0046】
再度、図2Dを参照して、強電場236は強電離プラズマ238が形成される速度を実質的に上げる原料ガス226の多段階電離プロセスを促進する。一実施形態において、原料ガスは分子性気体であり、強電場236はプラズマ内のイオン形成を強化する。多段階または段階的な電離プロセスは以下のように記載される。
【0047】
原料ガス226をまたぎカソード204とアノード216との間に予備電離電圧を印加し、弱電離プラズマ232を形成する。弱電離プラズマ232は、通常、領域222内に形成され、原料ガス226が引続き流れるように、領域234へと拡散する。一実施形態(図示せず)において、磁場が領域222内に生成され、カソード204の中心に広がる。この磁場は、電子の領域222から領域234への拡散を促進する傾向がある。弱電離プラズマ232内の電子は実質的に、磁場により領域234内に閉じ込められる。一実施形態において、領域222における弱電離プラズマの体積は、原料ガス226の新しい体積と急速に交換される。
【0048】
弱電離プラズマ232の形成の後(図2C)、パルス電源202はカソード204とアノード216との間に高電力パルスを印加する。この高電力パルスはカソード204とアノード216との間の領域222における強電場236を生成する。強電場236により、弱電離プラズマ232内において中性原子240、電子(図示せず)およびイオン242間で生じる衝突が引き起こされる。これら衝突により弱電離プラズマ232内に励起原子244が多数生成される。
【0049】
弱電離プラズマ232における励起原子244の蓄積は、電離プロセスを変える。一実施形態において、強電場236は、原子原料ガスの多段階電離プロセスを促進する。多段階電離プロセスは、強電離プラズマ238が形成される速度を有意に増加させる。多段階電離プロセスの効率は、弱電離プラズマ232における励起原子244の密度の増加に伴い上がる。他の実施形態において、強電場236は、分子または原子の原料ガスのイオンの形成を強化する。
【0050】
一実施形態において、原子の励起速度を最大化にするように、カソード204とアノード216との間の距離またはギャップ220が選択される。領域222内の電場236の値は、パルス電源202により印加される電圧レベル、および、アノード216とカソード204との間のギャップ220の大きさに依存する。実施形態によっては、種々のシステムのパラメータおよびプラズマシステムの動作条件に応じて、電場236の強さは約2V/cm〜105V/cmの間を変化し得る。
【0051】
実施形態によっては、所望のプラズマの種々のパラメータに応じて、ギャップ220は約0.30cm〜約10cmの間にあり得る。一実施形態において、領域222内の電場236は、予備電離プラズマまたは弱電離プラズマ232に急激に加えられる。実施形態によっては、急激に印加される電場236は、立上り時間が約0.1ミリ秒〜10秒の間にある電圧パルスを印加することにより生成される。
【0052】
一実施形態において、ギャップ220の大きさ、および、印加電場236のパラメータは、領域222内の原子240の励起速度が比較的速い速度となる最適条件を決定するために変動する。例えば、アルゴン原子を励起させるには約11.55eVのエネルギーが必要である。従って、原料ガス226が領域222を介して流れるときに、弱電離プラズマ232が形成され、弱電離プラズマ内232の原子240は、段階的な電離プロセスを受ける。
【0053】
弱電離プラズマ232内の励起原子244は、領域234内にある電子(図示せず)に衝突する。中性原子240を電離させるには約15.76eVのエネルギーが必要であるのに対して、励起原子244を電離させるには約4eVのエネルギーしか必要でない。従って、励起原子244は中性原子240よりもかなり高い速度で電離する。一実施形態において、強電離プラズマ238内のイオン242はカソード204に衝突し、それにより、カソード204から二次電子放出を引き起こす。その二次電子は、強電離プラズマ238内の全ての中性原子240または励起原子244と相互作用する。このプロセスにより、原料ガス226が交換されるときに、強電離プラズマ238内のイオン242密度がさらに増加する。
【0054】
電場236の急激な印加に対応する多段階電離プロセスは次のように記述し得る。
【0055】
Ar+e−→Ar☆+e−
Ar☆+e−→Ar++2e−
ここで、Arは原料ガス226内の中性のアルゴン原子240を表し、e−は、カソード204とアノード216との間に十分な電圧が印加される場合に、予備電離プラズマ232に応答して生成されるイオン化用電子を表す。また、Ar☆は、弱電離プラズマ232内の励起したアルゴン原子244を表す。励起したアルゴン原子244とイオン化用電子との衝突により、アルゴンイオン(Ar+)と2つの電子とが得られる。
【0056】
励起したアルゴン原子244を電離させるために必要なエネルギーは、通常、中性のアルゴン原子240の場合よりも少ない。従って、中性のアルゴン原子240と比べて、その励起原子244は、カソード204の表面近傍においてより速く電離する傾向にある。プラズマ内の励起原子244の密度が増えるにつれ、電離プロセスの効率は急激に上がる。この効率の増大により、最終的に、強電離プラズマ238の密度がアバランシェのように増加する。適切な励起条件下において、励起原子244に変換される弱電離プラズマ232に加えられるエネルギーの割合は、原料ガス226内のパルス放電に対して非常に高い。
【0057】
従って、本発明の一局面において、ギャップ220全体に弱電離プラズマ232に高電力パルスを印加することにより、アノード216とカソード204との間に強電場236が生成される。この強電場236により、弱電離プラズマ232内に励起原子244が生成される。励起原子244はカソード204により放出される二次電子との相互作用によって急激に電離される。その急激な電離の結果、カソード204の近傍領域234に形成されているイオン密度の高い強電離プラズマ238が得られる。強電離プラズマ238はまた高密度プラズマとも呼ばれる。
【0058】
本発明の一実施形態において、領域222における原料ガス226の流量を制御することによって、より高い密度のプラズマが生成される。この実施形態において、原料ガス226の第1のボリュームは領域222に供給される。次いで、原料ガス226の第1のボリュームが電離さることにより、領域222内に弱電離プラズマ232が形成される。次いで、パルス電源202は、弱電離プラズマ232全体に高電力電気パルスを印加する。その高電力電気パルスにより、弱電離プラズマ232から強電離プラズマ238が生成される。
【0059】
高電力電気パルスのレベルおよび持続時間は、高電力放電が縮小し、終結する前に強電離プラズマ238が吸収し得る電力レベルおよび持続時間に制限される。一実施形態において、原料ガス226の流速を増加させることにより、高電力電気パルスの強度および持続時間が増加され、強電離プラズマ238の密度が増加する。
【0060】
一実施形態において、原料ガス226のボリュームの速い交換により、領域222を介して強電離プラズマ238を移動させる。原料ガス226が領域222を介して移動すると、原料ガス226は、移動する強電離プラズマ238と相互作用し、印加された高電力電気パルスを受けて強電離状態になる。電離プロセスは、先に記載のように、直接電離および/または段階的電離を組み合わせたものであり得る。原料ガス226のボリュームの速い交換による領域222を介する強電離プラズマ238の移動により、強電離プラズマ238に印加され得る電力レベルおよび持続時間は増加される。従って、領域234内に高密度の強電離プラズマ238が生成される。
【0061】
電離プロセスの効率性は、ここに記載するように、カソード204の近傍の磁場(図示せず)を加えることによって高められ得る。磁場は、弱電離プラズマ232内に電子を閉じ込める傾向にあり、またカソード204の近傍に二次電子を閉じ込める傾向にある。閉じ込められた電子は、励起原子244を電離し、強電離プラズマ238を生成する。一実施形態において、磁場は領域222内に生成されることにより、弱電離プラズマ232が点火される領域に電子を実質的に閉じ込める。
【0062】
一実施形態において、プラズマ発生システム200はプラズマエッチングのために構成され得る。別の実施形態において、プラズマ発生システム200はプラズマスパッタリングのために構成され得る。特に、プラズマ発生装置200は磁性材をスパッタリングするのに用いられ得る。周知のマグネトロンスパッタリングシステムは、一般的に、磁性材をスパッタすることに適していない。これは、マグネトロンにより生成される磁場は、磁性ターゲット材によって吸収され得るからである。RFダイオードスパッタリングを用いて磁性材をスパッタすることがある。しかしながら、RFダイオードスパッタリングは一般的に、質の悪い膜の厚さの均一性と比較的低い堆積速度を有する。
【0063】
プラズマ発生システム200は、磁性ターゲット材を有するターゲット集合体を含むことによって、かつ、そのターゲット集合体をRF電源(図示せず)で駆動することによって磁性材をスパッタするように適合され得る。例えば、RF電源は、約10kWのオーダーであるRF電力を提供し得る。実質的に均一な弱電離プラズマは、ターゲット集合体の近傍に位置する原料ガス全体にRF電力を印加することによって生成され得る。強電離プラズマは、ここに記載するように、弱電離プラズマ全体に強電場を加えることによって生成される。RF電源は、負のバイアス電圧をターゲット集合体に印加する。強電離プラズマ内のイオンは、ターゲット材を衝撃し、それによりスパッタリングを引き起こす。
【0064】
プラズマ生成システム200はまた、誘電体をスパッタするようにも適合され得る。誘電体は、誘電性ターゲット材を含むターゲット集合体をRF電源(図示せず)で駆動することによってスパッタされ得る。例えば、RF電源は約10kWのオーダーであるRF電力を提供し得る。実質的に均一な弱電離プラズマは、ターゲット集合の近傍に位置する原料ガス全体にRF電力を印加することによって生成され得る。
【0065】
他の実施形態において、DC電源(図示せず)を用いて、本発明による弱電離プラズマ232を生成する。この実施形態においては、誘電性ターゲット材は、カソード204の領域がアノード216とカソード204との間に直流電流を伝導し得るようにカソード204に関して配置される。
【0066】
一実施形態において、磁場は弱電離プラズマ内に電子を閉じ込めるためにターゲット集合体の近傍に生成される。強電離プラズマは、ここに記載するように弱電離プラズマ全体に強電場を加えることによって生成される。RF電源は、負のバイアス電圧をターゲット集合体に印加する。強電離プラズマ内のイオンは、ターゲット材を衝撃し、それによりスパッタリングする。
【0067】
一実施形態において、本発明による強電離プラズマ238を用いてイオンビームを生成する。本発明によるイオンビーム源は、ここに記載したプラズマ発生装置とプラズマにおいてイオンを加速させるのに用いられる追加の電極(図示せず)とを含む。一実施形態において、外部電極はグリッドである。本発明によるイオンビーム源は、非常に高い密度のイオンフラックスを生成し得る。例えば、イオンビーム源は、オゾンフラックスを生成し得る。オゾンは非常に反応性のある酸化剤であり、これは、チャンバーをクリーニングする処理、空気を脱臭する、水を清浄する、および産業廃棄物を処置するといった多くの用途で用いられ得る。
【0068】
図3は、図2Aのプラズマ発生装置200においてプラズマに印加される周期的なパルスに対するパルス電力を時間の関数としてグラフ表示したものを示す。時刻t0において、パルス電源202を作動させる前に、原料ガス226をカソード204とアノード216との間に流入させる。カソード204とアノード216との間を流れる十分な量のガス226の流入に要する時間は、様々な要因に依存し、その要因には、ガス226の流速および領域222内の所望の圧力が含まれる。
【0069】
一実施形態(図示せず)において、原料ガス226を領域222に流入させる前に、パルス電源202を作動させる。この実施形態において、アノード216とカソード204との間に原料ガス226を注入し、ここで、パルス電源202により原料ガス226が点火されることによって、弱電離プラズマ232が生成される。
【0070】
一実施形態において、時刻t0〜時刻t1において、原料ガス226はアノード216とカソード204との間を流れる。時刻t1において、パルス電源202は、カソード204とアノード216との間にパルス302を生成し、パルス302の電力は、プラズマの体積に応じて、約0.01kW〜100kWの間にある。パルス302は原料ガス226を点火するに十分であり、弱電離プラズマ232を生成する。
【0071】
一実施形態(図示していない)において、原料ガス226が領域222内に配送される前に、パルス電源202は、カソード204とアノード216との間に電位差を加える。この実施形態において、原料ガス226がカソード204とアノード216との間に流れるときに、原料ガス226は点火される。他の実施形態において、原料ガス226が領域222に到達する間、または、到達した後に、パルス電源202は、カソード204とアノード216との間にパルス302を生成する。
【0072】
パルス電源202により生成される電力は、カソード204アノード216との間の領域222に存在する原料ガス226を部分的に電離させる。その部分的に電離したガスは、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマ232(図2B)とも呼ばれる。先に記載のとおり、弱電離プラズマ232の形成により、高電力パルスを弱電離プラズマ232に印加するときに破壊状態が作り出される可能性は実質的になくなる。
【0073】
一実施形態において、約1マイクロ秒〜100秒の間の時間、連続的にその電力を加えることにより、予備電離プラズマ232は十分なプラズマ密度を形成し得、保持し得る。一実施形態において、弱電離プラズマ232を保持するために、弱電離プラズマ232の点火の後に、パルス電源202から電力を連続的に加える。パルス電源202により高電力パルスが供給されるまでに弱電離プラズマ232を生成し、保持するために、パルス電源202は、連続的にわずかな電力を出力するように設計され得る。
【0074】
時刻t2において、パルス電源202は、弱電離プラズマ232全体に高電力パルス304を供給する。実施形態によっては、プラズマ発生装置200のパラメータに応じて、高電力パルス304の電力は、約1kW〜10MWの範囲内にある。高電力パルスは、立上り時間が約0.1マイクロ秒〜10秒の間にある立上りエッジ306を有する。
【0075】
高電力パルス304の電力およびパルス幅は、弱電離プラズマ232を強電離プラズマ238に変えるに十分である(図2D)。強電離プラズマ238は、高密度プラズマとも呼ばれる。一実施形態において、約10マイクロ秒〜10秒の範囲内の時間、高電力パルス304を加える。時刻t4において、高電力パルス304の印加を終了させる。
【0076】
高電力パルス304の供給後に、バックグランド電力を加えることにより、電源202は弱電離プラズマ232を保持する。そのバックグランド電力は、一実施形態において、約0.01kW〜約100kWの間にある。バックグランド電力は、パルス状、または、連続的に印加される電力であり得るが、パルス電源202が他の高電力パルス308の供給の準備をする間に、その電力はプラズマ内の予備電離状態を保持する。
【0077】
時刻t5において、パルス電源202は他の高電力パルス308を供給する。一実施形態において、高電力パルス304と高電力パルス308との間の繰返し率は、約0.1Hz〜1kHzの間にある。高電力パルス304および高電力パルス308の具体的な大きさ、形状、幅、および、周波数は、様々な要因に依存し、その要因には、パルス電源202の設計、プラズマ発生装置200の設計、プラズマの堆積およびチャンバにおける圧力が含まれる。強電離プラズマ238の電離速度を制御するが、弱電離プラズマ232を保持するように、高電力パルス304の立上りエッジ306および立下がりエッジ310の形状および持続時間は選択される。
【0078】
一実施形態において、強電離プラズマ238の密度を制御するように、高電力パルス304の具体的な大きさ、形状、幅、および、周波数は選択される。一実施形態において、基板(図示せず)のエッチング速度を制御するように、高電力パルス304の具体的な大きさ、形状、幅、および、周波数は選択される。一実施形態において、スパッタリングターゲット(図示せず)のスパッタリング速度を制御するように、高電力パルス304の具体的な大きさ、形状、幅、および、周波数は選択される。
【0079】
図4は、図2Aのプラズマ発生装置200におけるプラズマに周期的なパルスを印加する場合における、時間の関数としての、印加電圧の絶対値のグラフ表示320、印加電流の絶対値のグラフ表示322、および印加電力の絶対値のグラフ表示324を示す。一実施形態において、時刻t0(図示せず)において、パルス電源202が作動する前に、原料ガス226をカソード204近傍に流入させる。カソード204近傍に十分な量の原料ガス226が流れるのに要する時間は、様々な要因に依存し、その要因には、原料ガス226の流速と領域222内の所望の圧力とが含まれる。
【0080】
図4に示される実施形態において、電源202は定電力を生成する。時刻t1において、パルス電源202は、アノード216およびカソード204全体に電圧326を生成する。一実施形態において、電圧326は、約100V〜5kVの間にある。時刻t0と時刻t1との間隔(図示せず)は、数マイクロ秒〜数ミリ秒のオーダーであり得る。時刻t1において、電流328および電力330は一定値である。
【0081】
時刻t1〜時刻t2において、弱電離プラズマ232(図2B)が生成されるように、電圧326、電流328および電力330は一定のままである。時刻t2における電圧332は、約100V〜5kVの間にある。時刻t2における電流334は、約0.1A〜100Aの間にある。時刻t2において供給される電力336は、約0.01kW〜100kWの間にある。
【0082】
パルス電源202により生成される電力336は、カソード204とアノード216との間の領域222に位置するガス226を部分的に電離させる。その部分的に電離したガスは、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマ232とも呼ばれる。先に記載のとおり、弱電離プラズマ232の形成により、高電力パルスを弱電離プラズマ232に印加するときに破壊状態が作り出される可能性は実質的になくなる。この破壊状態の抑制により、アノード216とカソード204との間の望ましくないアーク放電の発生は実質的になくなる。
【0083】
一実施形態において、時刻t1と時刻t2との間隔は約1マイクロ秒〜100秒の間であり、それにより、予備電離プラズマ232は十分なプラズマ密度を形成し得、保持し得る。一実施形態において、弱電離プラズマ232を保持するために、パルス電源202から電力336を連続的に加える。弱電離プラズマ232を保持するために、パルス電源202は、連続的にわずかな電力を出力するように設計され得る。
【0084】
時刻t2〜時刻t3において、パルス電源202は、弱電離プラズマ232全体に高電圧パルス338を供給する。実施形態によっては、高電圧パルス338の電圧は、200V〜30kVの範囲内にある。実施形態によっては、時刻t2と時刻t3との間隔は、約0.1マイクロ秒〜10秒の間にある。弱電離プラズマ232をまたぐ電流が増加しだす前に、時刻t3〜時刻t4において高電圧パルス338を印加する。一実施形態において、時刻t3と時刻t4との間隔は、約10ナノ秒〜1マイクロ秒の間にあり得る。
【0085】
時刻t4〜時刻t5において、電圧340は下げられ、電流342は増加する。電力344も、電圧346と電流348との間に準静的な状態が存在するまで、時刻t4〜時刻t5において増加する。時刻t4と時刻t5との間隔は、数百ナノ秒のオーダーであり得る。
【0086】
一実施形態において、時刻t5において、電圧346は約50V〜30kV(1000V)の間にあり、電流348は約10A〜5kAの間にあり、電力350は約1kW〜10MWの間にある。時刻t6まで、電力350はプラズマに連続的に印加される。一実施形態において、時刻t5と時刻t6との間隔は、約1マイクロ秒〜10秒の間にある。
【0087】
パルス電源202は、最大電力350およびパルス幅が弱電離プラズマ232を強電離プラズマ238(図2D)に変えるに十分である高電力パルスを供給する。時刻t6において、最大電力350の印加を終了させる。一実施形態において、時刻t6の後に、パルス電源202は、プラズマを保持するに十分なバックグランド電力を供給し続ける。
【0088】
一実施形態において、高電力パルスの供給後に、約0.01kW〜100kWの間にあり得る電力352をプラズマに連続的に加えることにより、電源202はプラズマを保持する。パルス電源202が次の高電力パルスの供給の準備をする間に、連続的に生成される電力はプラズマ内の予備電離状態を保持する。
【0089】
時刻t7において、パルス電源202は次の高電力パルス(図示せず)を供給する。一実施形態において、高電力パルス間の繰返し率は、約0.1Hz〜1kHzの間にある。高電力パルスの具体的な大きさ、形状、幅および周波数は、様々な要因に依存し、その要因には、パルス電源202の設計、プラズマ発生装置200の設計、プラズマの堆積および強電離プラズマ238の密度および領域222における圧力が含まれる。
【0090】
他の実施形態(図示せず)において、電源202は定電圧を生成する。この実施形態において、時刻t2から時刻t6まで電圧320を連続的に印加する。電流322および電力324は、定電圧レベルを保持するために、時刻t6まで増大し、電圧320の印加が終了する。電流、電力および電圧のパラメータが最適化されて励起原子が生成される。
【0091】
本発明の一実施形態において、電離プロセスの効率性はカソード204の近傍に磁場を生成することによって大きくなる。磁場は、カソード204近傍の弱電離プラズマ232内に電子を閉じ込める傾向にある。閉じ込められた電子は、励起原子244を電離し、それにより強電離プラズマ238が生成される。この実施形態において、磁気強化プラズマは強反磁性の性質を有する。「強反磁性の性質」という用語は、磁気強化高密度プラズマ放電が外部の磁場をプラズマボリュームから排除する傾向にあることを意味する。
【0092】
図5A〜図5Dは、本発明の一実施形態による磁気強化プラズマ発生装置における種々の電子のE×Bドリフト電流に対してシミュレートしたカソード204近傍における磁場分布400、磁場分布402、磁場分布404および磁場分布406を示す。磁気強化プラズマ発生装置には、カソード204近傍に位置する磁石系407が含まれる。磁石系407は、カソード204近傍に磁場を生成する。一実施形態において、磁場の強さは約50ガウス〜2,000ガウスの間である。シミュレートされた磁場分布400、磁場分布402、磁場分布404および磁場分布406は、大電流を有する高電力プラズマが、磁気強化プラズマ発生装置の領域234’に均一に拡散する傾向にあることを示す。
【0093】
カソード204とアノード216との間の高電力パルスは、カソード204から二次電子を生成し、その二次電子は交差した電場と磁場とに従ってカソード204の近傍で実質的に円運動する。電子の実質的な円運動により、電子のE×Bドリフト電流が生成される。電子のE×Bドリフト電流の大きさは、プラズマ内の放電電流の大きさに比例し、一実施形態において、放電電流の大きさの約3倍〜10倍の範囲にほぼある。
【0094】
一実施形態において、実質的に円形の電子E×Bドリフト電流により磁場が生成されるが、その磁場は磁石系407により生成される磁場と交差する。一実施形態において、電子のE×Bドリフト電流により生成される磁場の向きは、磁石系407により生成される磁場の向きと実質的に反対である。電子のE×Bドリフト電流により生成される磁場の大きさは、電子のE×Bドリフト電流の増加とともに増加する。磁石系407により生成される磁場と、電子のE×Bドリフト電流により生成される磁場との相互作用により、領域234’内の少なくとも一部に強電離プラズマの均一な拡散が引き起こされる。
【0095】
一実施形態において、電子E×Bドリフト電流は、低電流密度プラズマの場合には、実質的に円形な形状を定める。しかしながら、プラズマの電流密度が増加するにつれ、実質的に円形の電子E×Bドリフト電流は、より複雑な形状を表す傾向にある。これは、磁石系407により生成される磁場と、高電力パルスにより生成される磁場と、電子E×Bドリフト電流により生成される磁場との相互作用が強くなるためである。例えば、一実施形態において、電子E×Bドリフト電流の形状は実質的にサイクロイドである。電子E×Bドリフト電流の正確な形状は非常に複雑であり得、様々な要因に依存する。
【0096】
例えば、図5Aは、磁石系407により生成される磁場と、実質的に円形な輪により示される電子E×Bドリフト電流410により生成される磁場との相互作用により生成される磁力線408を示す。電子E×Bドリフト電流410は、カソード204近傍に生成される。
【0097】
図5Aに示される例において、電子E×Bドリフト電流410は約100Aである。本発明の一実施形態において、電子E×Bドリフト電流410は、放電電流の約3倍〜10倍である。従って、図5Aに示される例において、放電電流はほぼ10A〜30Aの間にある。磁石系407により生成される磁場は、比較的小さな電子E×Bドリフト電流410により生成される比較的小さな磁場によって、実質的には乱されないということを、図5Aに示される磁力線408は示す。
【0098】
図5Bは、磁石系407により生成される磁場と、電子E×Bドリフト電流414により生成される磁場との相互作用により生成される磁力線412を示す。電子E×Bドリフト電流414は、カソード204近傍に生成される。図5Bに示される例において、電子E×Bドリフト電流414は約300Aである。電子E×Bドリフト電流414は、通常、放電電流の約3倍〜10倍であるため、この例における放電電流はほぼ30A〜100Aである。
【0099】
磁石系407により生成される磁力線412は、比較的小さな電子E×Bドリフト電流414により生成される比較的小さな磁場によって実質的には乱されない。しかしながら、電子E×Bドリフト電流414に最近接する磁力線416は、電子E×Bドリフト電流414により生成される磁場によっていくぶんか歪められる。より大きな電子E×Bドリフト電流により、磁石系407により生成される磁場とより強く相互作用するより強い磁場が生成されるということを、この歪みは示唆する。
【0100】
図5Cは、磁石系407により生成される磁場と、電子E×Bドリフト電流420により生成される磁場との相互作用により生成される磁力線418を示す。電子E×Bドリフト電流420はカソード204の近傍に生成される。図5Cに示される例において、電子E×Bドリフト電流420は約1,000Aである。電子E×Bドリフト電流420は、通常、放電電流の約3倍〜10倍であるため、この例における放電電流はほぼ100A〜300Aである。
【0101】
磁石系407により生成される磁力線418は相当な歪みを示し、その歪みは比較的大きな電子E×Bドリフト電流420により生成される比較的強い磁場により引き起こされる。従って、より大きな電子E×Bドリフト電流420は、より強い磁場を生成し、そのより強い磁場は磁石系407により生成される磁場と強く相互作用し、その磁場を支配し始め得る。
【0102】
磁石系407により生成される磁場と、電子E×Bドリフト電流420により生成される磁場との相互作用は磁力線422を生成するが、磁力線422は図5Aの磁力線408ならびに図5Bの磁力線412および磁力線416よりも、カソード204の表面に対して幾らかより平行である。磁力線422は、強電離プラズマ238を領域234’内においてより均一に分布させる。従って、強電離プラズマ238は領域234’内において実質的に均一に拡散する。
【0103】
図5Dは、磁石系407により生成される磁場と、電子E×Bドリフト電流426により生成される磁場との相互作用により生成される磁力線424を示す。電子E×Bドリフト電流426はカソード204の近傍に生成される。図5Dに示される例において、電子E×Bドリフト電流426は約5kAである。この例における放電電流はほぼ500A〜1,700Aである。
【0104】
比較的大きな電子E×Bドリフト電流426により生成される比較的強い磁場と相互作用するために、磁石系407により生成される磁力線424は比較的強く歪められる。従って、この実施形態において、比較的大きな電子E×Bドリフト電流426は非常に強い磁場を生成し、その磁場は磁石系407により生成される磁場と比べてより強い。
【0105】
図6A〜図6Dは、本発明によるプラズマ発生システム200’、200’’、200’’’および200’’’’の代わりの実施形態の断面図を示す。図6Aのプラズマ発生システム200’は、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマを生成する電極452を含む。電極452は、予備電離フィラメント電極とも呼ばれ、弱電離プラズマを生成するイオン源の構成要素である。
【0106】
一実施形態において、電極452は電源456の出力454に結合される。電源456はDC電源またはAC電源であり得る。絶縁体458は、電極452をアノード216と絶縁する。一実施形態において、電極452は実質的に円形の電極である。他の実施形態において、電極452は実質的に直線の形状であるか、または、プラズマを予備電離するに適する形状である。
【0107】
一実施形態において、電源456の第2の出力460はカソード204に結合される。絶縁体218はカソード204をアノード216と絶縁する。一実施形態において、電源456は、平均が約0.01kW〜100kWの範囲にある出力電力を生成する。そのような出力電力は、電極452とカソード204との間に、電極452の近傍に存在する原料ガス226を予備電離するに適する電流を生成するに十分である。
【0108】
動作中において、プラズマ発生装置200’は、図2Aのプラズマ発生装置200と類似した態様で機能するが、動作上の相違をいくらか有する。一実施形態(図示せず)において、磁場はカソード204の近傍に生成される。一実施形態において、磁場の強さは約50ガウス〜2,000ガウスである。原料ガス226は、電極452とカソード204との近傍に供給される。
【0109】
電源456は、カソード204と電極452との間に適切な電流を印加する。電極452近傍の領域234に弱電離プラズマを発生させるように、電流のパラメータは選択される。一実施形態において、電源456はシステムの大きさに応じて、約100V〜5kVの電圧を生成し、約0.1A〜100Aの放電電流を伴う。電圧の特定のパラメータの例について、図7とともに以下により詳細に記載する。
【0110】
一実施形態において、アルゴンスパッタリングガスに対して、結果として生じる予備電離プラズマ密度は、約106cm−3〜1012cm−3の間にある。一実施形態において、領域234内の圧力は、約10−3Torr〜10Torrもしくはそれ以上の範囲にある。圧力は、カソード204近傍の磁場の存在といった種々のシステムパラメータに応じて変動し得る。上述したように、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマにより、プラズマに高電力パルスを印加するときにカソード204とアノード216との間が破壊状態になる可能性は実質的になくなる。
【0111】
次いで、パルス電源202はカソード204とアノード216との間に高電力パルスを生成する。高電力パルスは、弱電離プラズマから強電離プラズマを生成する。高電力パルスのパラメータは様々なパラメータに依存し、そのパラメータにはプラズマの体積、所望のプラズマ密度および領域234内の圧力が含まれる。
【0112】
一実施形態において、カソード204とアノード216との間の高電力パルスは約1kW〜10MWの範囲内にある。一実施形態において、約10mTorrの圧力に対して、強電離プラズマから生成され得る放電電流密度は約1A/cm2よりも大きい。
【0113】
一実施形態において、高電力パルスのパルス幅は、約1マイクロ秒から数秒の範囲内にある。一実施形態において、高電力放電の繰返し率は、約0.1Hz〜10kHzの範囲内にある。一実施形態において、パルス電源により生成される電力の平均は、システムの大きさに応じて1MW未満である。一実施形態において、カソード204および/またはアノード216における熱エネルギーは、液体冷却またはガス冷却(図示せず)によって持去られるか、もしくは分散され得る。
【0114】
一実施形態(図示せず)において、磁場はカソード204近傍に生成される。強電離プラズマは、図5A〜図5Dとともに記載したように、生成された磁場の相互作用のために領域234内に均一に拡散する傾向にある。
【0115】
図6Bは、本発明によるプラズマ発生装置200’’の他の実施形態の断面図である。この実施形態は図6Aのプラズマ発生装置200’に類似する。しかしながら、この実施形態において、イオン源の構成要素である電極452’はカソード204を実質的に取り囲む。カソード204に対する電極452’の位置は、アノード216とカソード204との間のギャップ220における特定の電気的条件を得られるように選ばれる。
【0116】
例えば、電極452’とカソード204との間の距離462は、電極452’の直径を変化させることによって変動し得る。一実施形態において、距離462は約0.1cmから約10cmまで変動し得る。距離462は、領域234内に持続可能な弱電離プラズマを生成するように最適化され得る。カソード204に対する電極452’の縦方向の位置もまた変動し得る。
【0117】
予備電離電極452’は、アノード216とカソード204との間の領域222内に物理的に位置していない。従って、予備電離電極452’は、パルス電源202からの高電力パルスがアノード216とカソード204との間に加えられると生じる強電場を干渉しない。さらに、予備電離電極452’の位置により、領域234内により均一に分散した弱電離プラズマがもたらされる。
【0118】
動作中において、電源456はカソード204と電極452’との間に電圧を印加する。電圧は、電極452’およびカソード204の近傍に弱電離プラズマまたは予備電離プラズマを生成する。予備電離プラズマは、パルス電源202からの高電力パルスがプラズマに加えられると、破壊状態になる可能性を実質的になくす。
【0119】
一実施形態において、電源456は約0.1A〜100Aの範囲にある放電電流を伴う約100V〜5kVの範囲にあるDC電圧を生成するDC電源である。他の実施形態において、電源456はカソード204と電極452’との間の電圧パルスを生成するAC電源である。
【0120】
図6Cは、本発明によるプラズマ発生装置200’’’の他の実施形態の断面図である。電極452とカソード204’との構成により、電極452とカソード204’との間に生成される電場のパラメータに影響が及び得る。電場のパラメータは、予備電離プラズマの点火ならびに予備電離プロセス全般に影響を及ぼし得る。この実施形態は、アノード216とカソード204’との間の領域222内の原料ガスの破壊と弱電離プラズマの点火とに必要な状態を生成する。
【0121】
図6Cで図示される実施形態において、カソード204’と電極452との間に生成される電気力線(図示せず)はカソード204’上の点470において、カソード204’と実質的に直交する。電極452とカソード204’との間のギャップ472における電場は、ギャップ472を介して流れる原料ガス226からのプラズマを点火するように適合される。予備電離プロセスの効率性は、磁場の強さおよびカソード204’の近傍領域の圧力などのパラメータに依存して、この実施形態を用いて上げられ得る。
【0122】
図6Dは、本発明によるプラズマ発生装置200’’’’の他の実施形態の断面図である。この実施形態において、カソード204’’と電極452との間に生成される電気力線(図示せず)は点474においてカソード204’’と実質的に直交する。電極452とカソード204’’との間のギャップ476における電場は、ギャップ476を介して流れる原料ガス226からのプラズマを点火するように適合される。予備電離プロセスの効率性は、磁場の強さおよびカソード204’’の近傍領域の圧力などのパラメータに依存して、この実施形態を用いて上げられ得る。
【0123】
図7は、図6Aのプラズマ発生システム200’におけるプラズマに周期的なパルスを加える場合における、時間の関数としてのパルス電力のグラフ表示500を示す。一実施形態において、電源456またはパルス電源202のどちらか一方を作動させる前に、時刻t0において、原料ガス226を電極452に近傍の領域222に流入させる。
【0124】
別の実施形態において、ガス226を電極452に近傍の領域222に流入する前に、時刻t0において、電源456および/またはパルス電源202を作動させる。この実施形態において、原料ガス226は、電極452とカソード204との間に注入され、電極452とカソード204との間において、原料ガス226は電源456により点火されて、弱電離プラズマを生成する。
【0125】
十分な量のガス226を領域222に流入させる所要時間は様々な要因に依存し、その要因には、ガス226の流速と所望の動作圧力とが含まれる。時刻t1において、電源456は、電極452とカソード204との間に、約0.01kW〜約100kWの範囲にある電力502を生成する。電力502により、電極452近傍のガス226が部分的に電離し、それにより、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマが生成される。
【0126】
時刻t2において、パルス電源202はプラズマの体積と動作圧力とに応じて、1kW未満〜約10MWのオーダーの高電力パルス504を弱電離プラズマに供給する。高電力パルス504は、弱電離プラズマを強電離プラズマに変えるに十分である。その高電力パルスの立上りエッジ506の立上り時間は約0.1マイクロ秒〜10秒の間にある。
【0127】
一実施形態において、高電力パルス504のパルス幅は、約1マイクロ秒〜10秒の範囲にある。時刻t4において、高電力パルス504の印加を終了させる。高電力パルス504の供給の後においても、パルス電源202が他の高電力パルス508の供給の準備をする間に、電源456からの電力502は連続的に印加されて、予備電離プラズマを保持する。他の実施形態(図示せず)において、電源456はAC電源であり、適切な電力パルスを供給することにより、弱電離プラズマを点火し、かつ保持する。
【0128】
時刻t5において、パルス電源202は他の高電力パルス508を供給する。一実施形態において、高電力パルスの繰返し率は、約0.1Hz〜10kHzである。高電力パルスの具体的な大きさ、形状、幅および周波数は、動作圧力、パルス電源202の設計、カソード204近傍の磁場の存在、プラズマの体積といったプロセスパラメータに依存する。高電力パルス504の立上りエッジ506および立下がりエッジ510の形状および持続時間は、強電離プラズマの電離速度を制御するように選択される。
【0129】
図8は、本発明による高密度電離プラズマまたは強電離プラズマの実例となるプロセスのフローチャート600である。そのプロセスは、図2Aのプラズマ発生装置200内の様々なシステムを起動することにより開始する(工程602)。例えば、チャンバ(図示せず)を最初に特定の圧力まで真空引きする(工程604)。次いで、チャンバ内の圧力を評価する(工程606)。一実施形態においては、次いで、チャンバに原料ガス226を供給する(工程608)。ガス圧を評価する(工程610)。ガス圧が適当である場合には、チャンバ内の圧力を再び評価する(工程612)
チャンバ内の圧力が適当であるときに、適切な磁場が原料ガス226(図示せず)の近傍に生成される。一実施形態において、磁石系(図示せず)には少なくとも1つの永久磁石を含まれ得るので、プロセスが開始される前であっても、磁場は絶え間なく生成される。他の実施形態において、磁石系(図示せず)には少なくとも1つの電磁石が含まれているので、電磁石が動作しているときのみ磁場が生成される。
【0130】
原料ガス226は電離して、弱電離プラズマ232を生成する(工程614)。一実施形態において、図2Aのカソード204とアノード216との間のギャップ220に比較的低い電流放電を作り出すことによって、弱電離プラズマ232が生成され得る。他の実施形態において、図6Aの電極452とカソード204との間に比較的低い電流放電を作り出すことによって、弱電離プラズマ232が生成され得る。さらに他の実施形態(図示せず)において、電極が加熱されて、カソード204の近傍に電子を放出する。この実施形態において、弱電離プラズマ232を生成するために、比較的低い電流放電がアノード216と電極との間に作り出される。
【0131】
図2Aに示される実施形態において、原料ガス226を導入する前に、カソード204とアノード216との間のギャップ220に電位を加えることによって、弱電離プラズマ232が生成される。図6Aに示される実施形態において、弱電離プラズマ232を生成する原料ガス226を導入する前に、電極452とカソード204との間に電位差を加えることによって、弱電離プラズマ232が生成される。
【0132】
ガスが弱電離した後(工程616)、強電離プラズマ238(図2D)が弱電離プラズマ232から生成される(工程618)。一実施形態において、カソード204とアノード216との間に高電力パルスを印加することによって、強電離プラズマ238が生成される。ここに記載したように、高電力パルスによって、アノード216とカソード204との間のギャップ220に強電場236が生成される結果がもたらされる。その強電場236によって、原料ガス226の段階的な電離プロセスが引き起こされる。一実施形態において、強電場236は、強電離プラズマ238を強化するイオン形成を促進する。一実施形態において、強電離プラズマ238は図2Dの領域234内において実質的に均一である。
【0133】
強電離プラズマ238が形成された後(工程620)、強電離プラズマ238はプラズマ処理の必要に応じて維持される(工程622)。プラズマ処理が完了すると(工程624)、プラズマ処理を終了させる(工程626)。
【0134】
(均等物)
特に、特定の好ましい実施形態を参照しながら本発明を示し、記載してきたが、本明細書に定められる本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な形態および詳細の変更がなされ得ることは、当業者には理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】無線周波数(RF)電源を有する周知のプラズマ発生装置の断面図を示す。
【図2A】本発明の一実施形態によるパルス電源を有するプラズマ発生装置の断面図を示す。
【図2B】本発明の一実施形態によるパルス電源を有するプラズマ発生装置の断面図を示す。
【図2C】本発明の一実施形態によるパルス電源を有するプラズマ発生装置の断面図を示す。
【図2D】本発明の一実施形態によるパルス電源を有するプラズマ発生装置の断面図を示す。
【図3】図2Aのプラズマ発生装置においてプラズマに印加される周期的なパルスに対するパルス電力を時間の関数としてグラフ表示したものを示す。
【図4】図2Aのプラズマ発生装置においてプラズマに加えられる周期的なパルスの印加電圧、印加電流、および、印加電力を時間の関数としてグラフ表示したものを示す。
【図5】図5A〜5Dは、本発明による、種々の電子E×Bドリフト電流に対する、カソード近傍の種々のシミュレートされた磁場分布を示す。
【図6A】本発明によるプラズマ生成システムの種々の実施形態の断面図を示す。
【図6B】本発明によるプラズマ生成システムの種々の実施形態の断面図を示す。
【図6C】本発明によるプラズマ生成システムの種々の実施形態の断面図を示す。
【図6D】本発明によるプラズマ生成システムの種々の実施形態の断面図を示す。
【図7】図6Aのプラズマ生成システムにおいてプラズマに加えられる周期的なパルスに対して、パルス電力を時間の関数としてグラフ表示したものを示す。
【図8】本発明による高密度プラズマを生成する実例となる方法のフローチャートである。
【背景技術】
【0001】
プラズマは、第4の物質の状態と考えられている。プラズマは、不規則な方向に動く荷電粒子の集まりである。プラズマは、平均して電気的に中性である。プラズマを生成する1つの方法は、2つの並列な導電性電極の間の低圧気体に電流を印加することである。あるパラメータが満たされると、気体は「破壊」してプラズマを形成する。例えば、プラズマは、約10−1Torrと10−2Torrとの間にある圧力で希ガス雰囲気(例えば、アルゴン)において2つの並列な導電性電極の間の数キロボルトの電位を適用することによって生成され得る。
【0002】
プラズマ処理は、半導体製造産業などの多くの産業において広く用いられている。例えば、プラズマエッチングは、電子工学において基板材料および基板上に堆積した膜をエッチングするのに広く用いられている。表面から材料を除去するために用いられるプラズマエッチング処理には、スパッタエッチング、純化学的エッチング(pure chemical etching)、イオンエネルギー誘起エッチング(ion energy driven etching)およびイオンインヒビターエッチング(ion inhibitor etching)の4つの基本的な典型がある。
【0003】
プラズマスパッタリングとは、基板上に膜を堆積させるのに広く用いられる技術である。スパッタリングは、ターゲット表面から原子を物理的に取り出すものであり、物理気相成長(PVD)と呼ばれることがある。アルゴンイオンといったイオンが生成されて、プラズマから引き出されて、陰極暗部を越えて加速される。ターゲットは、プラズマが形成される領域よりも低い電位を有する。従って、ターゲットは正イオンを誘引する。正イオンは高速でターゲットに向かって移動する。正イオンはターゲットに衝撃を与え、原子をターゲットから物理的に取り除きまたはスパッタさせる。スパッタ原子はそれから、スパッタターゲット材料の膜を堆積する基板に伝播する。プラズマは、ターゲット表面で生成された二次電子とともに中性分子の衝突によって形成された電子−イオンペアによって補充される。
【0004】
マグネトロンスパッタリングシステムは、ターゲット表面のイオン衝撃によって生成される二次電子を閉じ込め、濃縮するように成形された磁場を使用する。マグネトロンスパッタリングシステムによって生成されたプラズマ放電はターゲットの表面の近傍に位置し、高い電子密度を有する。高い電子密度は、ターゲット表面に近い領域においてスパッタリングガスのイオン化を引き起こす。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、特に、詳細な説明において記載される。添付の図面とともに以下の記載を参照することによって、本発明の上記の利点およびさらなる利点はより良く理解され得る。図面において、類似した数字は、様々な図における類似した構造要素および特徴を示す。図面は必ずしもその縮尺である必要はなく、本発明の原理の図示を重視したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(詳細な説明)
図1は、無線周波数(RF)電源102を有する周知のプラズマ発生装置100の断面図を示す。周知のプラズマ発生装置100には真空チャンバ104が含まれ、ここでプラズマ105が生成される。真空チャンバ104は、管108を介して真空ポンプ106と流動的に位置づけられる。真空ポンプ106は、真空チャンバ104を高真空に真空引きするように適合される。真空チャンバ104内の圧力は、一般的に10−1Torrを下回る。アルゴンガス供給源などの原料ガス供給源109からの原料ガスは、ガス注入口110を介して真空チャンバ104に導入される。ガス流量はバルブ112によって制御される。
【0007】
プラズマ発生装置100にはカソード114も含まれる。カソード114は、通常、円板の形をしている。カソード114は、伝送線122によって、ブロッキングコンデンサ120の第1の電極118に電気接続される。ブロッキングコンデンサ120の第2の電極124は、RF電源102の第1の出力126に結合される。絶縁体128は、カソード114を真空チャンバ104と電気的に絶縁させるために、真空チャンバ104の壁に伝送線122を貫通させるために用いられ得る。
【0008】
アノード130は、真空チャンバ104においてカソード114の近傍に配置される。アノード130は、通常、伝送線132を用いてグランドに結合される。RF電源102の第2の出力134も通常グランドに結合される。アノード130を真空チャンバ104と絶縁するために、絶縁体136を用いることにより、真空チャンバ104の壁に伝送線132を貫通させ得る。真空チャンバ104は、グランドにも電気的にも結合され得る。
【0009】
動作中に、RF電源102はカソード114とアノード130との間にRF電圧パルスを印加する。このRF電圧パルスは、真空チャンバ104においてアルゴン原料ガスをイオン化するのに十分な振幅を有する。典型的なRF駆動電圧は100V〜1000Vの間にあり、カソード114とアノードとの間隔138は、約2cm〜10cmの間である。典型的な圧力は、10mTorrから100mTorrの範囲内にある。典型的な電力密度は、0.1W/cm2〜1W/cm2の範囲にある。駆動周波数は典型的に13.56MHzである。典型的なプラズマ密度は、109cm−3〜1011cm−3の範囲にあり、電子温度は、3eVのオーダーである。
【0010】
電離プロセスは、電子衝突による直接電離または原子電離と呼ばれ、以下のように記述し得る。
【0011】
Ar+e−→Ar++2e−
ここで、Arは、原料ガス中の中性のアルゴン原子を表し、e−は、カソード114とアノード130との間に印加される電圧に応答して生成されるイオン化用電子を表す。中性のアルゴン原子とイオン化用電子との衝突によって、アルゴンイオン(Ar+)と2つの電子が得られる。
【0012】
プラズマ放電は、少なくとも部分的にカソードからの二次電子放出によって保持される。しかしながら、典型的な動作圧力が比較的高い必要があるために、二次電子はアノード130またはチャンバ104の壁から離れない。このような圧力は大抵のプラズマ処理において最適ではない。
【0013】
プラズマ放電は、従来のグロー放電において得られ得るものより高い電流密度、より低い電圧およびより低い圧力において動作することが所望される。これにより、カソード114の近くのDC磁場を使用することにより二次電子を閉じ込めることになる。二次電子を閉じ込めることにより、実質的にチャンバ104の場所(図示せず)にプラズマが閉じ込められ、それによって、所与の入力電力でその場所におけるプラズマ密度が高められ、その一方で、ロスエリアが削減される。
【0014】
磁気閉込めは主に、比較的低い磁界強度がある閉込め領域(図示せず)において生じる。閉込め領域の形および場所は、磁石のデザインによって決定される。一般的に、閉込め領域におけるプラズマ内の正に帯電したイオンの濃度は、チャンバ104内のどの領域におけるその濃度よりも高い。その結果、プラズマの均一性は磁気強化システムにおいて大幅に減ぜられ得る。
【0015】
マグネトロンスパッタリングシステムにおけるプラズマの不均一性により、望ましくないターゲット材料の不均一な侵食と、そして、比較的低いターゲットの利用率とが導かれ得る。マグネトロンスパッタリングシステムにおけるプラズマの不均一性により、基板の不均一なエッチングが導かれ得る。
【0016】
プラズマに印加するRF電力を激増することだけでは、より均一でより密度の高いプラズマの形成は得られない。その上、均一性および密度のまさに斬新的な増加の達成に必要な電力量を印加することによって、チャンバ104内に望ましくない放電(アーク放電)を引き起こす絶縁破壊状態を発生させる可能性が増し得る。
【0017】
比較的高電力のパルスを周期的に印加するが、放出電力の平均を比較的低いままにし得るために、プラズマに印加される直流(DC)電力をパルス状にすることは、有利であり得る。その上、望ましくない電気放電をもたらす絶縁破壊状態が成立する可能性を低減するように、このような大きい電圧パルスの幅を事前設定し得る。望ましくない電気放電は、エッチング処理を阻害し、真空チャンバ104の汚染を引き起し得る。しかしながら、非常に大きい電力パルスはそれでもやはり、電圧パルスの幅とは関係なく、望ましくない電気放電を結果として招き得る。
【0018】
図2A〜図2Dは、本発明の一実施形態によるパルス電源202を有するパルス生成装置200の断面図を示す。例えば、図2Aは、パルス電源202が起動する前の時におけるパルス電源202を有するパルス生成装置200の断面図を示す。一実施形態において、プラズマ発生装置200には、プラズマを支持する真空チャンバなどのチャンバ(図示せず)が含まれる。チャンバは、真空システム(図示せず)に結合され得る。
【0019】
プラズマ発生装置200には、カソード204も含まれる。一実施形態において、カソード204は、ステンレス鋼などの金属材料または反応性ガスと化学的に反応しない他の材料から成り得る。他の実施形態では、カソード204には、スパッタリングに用いられ得るターゲットが含まれる。カソード204は整合器208の出力206に結合される。整合器208の入力210はパルス電源202の第1の出力212に結合される。パルス電源202の第2の出力214はアノード216に結合される。絶縁体218は、アノード216をカソード204と絶縁する。
【0020】
一実施形態において、パルス電源202の第1の出力212はカソード204(図示せず)に直接結合される。一実施形態(図示せず)において、パルス電源202の第2の出力214はグランドに結合される。この実施形態において、アノード216もまたグランドに結合される。
【0021】
一実施形態(図示せず)において、パルス電源202の第1の出力212は、負電圧のインパルスをカソード204に結合する。別の実施形態(図示せず)において、パルス電源202の第2の出力214は、正電圧のインパルスをアノード216に結合する。
【0022】
一実施形態において、パルス電源202は約30,000Vまでのピーク電圧レベルを生成する。典型的な動作電圧は、一般的に約50V〜30kVの間にある。一実施形態において、パルス電源202は、プラズマの体積に応じて、約1A〜約5,000A以上のピーク電流レベルを生成する。典型的な動作電流は、プラズマの体積に応じて変わり得、100A未満の電流から数千Aよりも大きな電流の間にある。一実施形態において、パルス電源202により生成されるパルスの繰返し率は1kHz未満である。一実施形態において、パルス電源202により生成されるパルスのパルス幅は、実質的に、約1マイクロ秒〜数秒の間にある。
【0023】
アノード216とカソード204との間に形成されるギャップ220、アノード216とカソード204との間の領域222に電流が流れ得るに十分であるように、アノード216は配置される。一実施形態において、ギャップ220の幅は、約0.3cm〜約10cmの間にある。カソード204の表面積から領域222の体積が決定される。ギャップ220および領域222の総体積は、本明細書に記載する電離プロセスにおけるパラメータである。
【0024】
一実施形態において、プラズマ発生装置200には、真空チャンバなどのチャンバ(図示せず)が含まれる。チャンバは、真空バルブ(図示せず)を介して真空ポンプ(図示せず)と流動的に結合される。一実施形態において、チャンバ(図示せず)はグランド電位に電気的に結合される。1つまたは複数のガスライン224は、原料ガス供給源(図示せず)から原料ガス226をチャンバに提供する。一実施形態において、ガスライン224は、絶縁体228によって、チャンバおよび他の構成要素と絶縁される。他の実施形態において、直列絶縁カプラー(図示せず)を用いて、ガスライン224を原料ガス供給源と絶縁し得る。ガス供給源は、アルゴンが含まれるがこれに限定されない任意の原料ガス226であり得る。実施形態によっては、原料ガス226は、異なるガス、反応性ガスまたは純反応性ガスの混合ガスを含み得る。実施形態によっては、原料ガス226は希ガスまたはガスの混合ガスを含む。
【0025】
動作中において、ガス供給源から原料ガス226が、ガス流制御システム(図示せず)によりチャンバに供給される。好ましくは、原料ガス226はカソード204とアノード216との間に供給される。カソード204とアノード216との間に原料ガス226を直接注入することにより、原料ガス226の流速が増加し得る。これにより、カソード204とアノード216との間の領域222において急速な体積交換が引き起こされ、より長い幅を有する高電力パルスがギャップ220全体に印加されることを可能にする。より長い幅を有する高電力パルスは、より高密度のプラズマの形成をもたらす。この体積交換は本明細書により詳細に記載する。
【0026】
一実施形態において、パルス電源202は、弱電離プラズマ232を発生させるイオン源の構成要素である。図2Bを参照すると、原料ガスがカソード204とアノード216との間に供給された後、パルス電源202はカソード204とアノード216との間に電圧パルスを印加する。一実施形態において、パルス電源202は、カソード204に負の電圧パルスを印加する。電界230がカソード204とアノード216との間において展開するように、電圧パルスの大きさおよび形状が選択される。弱電離プラズマ232がアノード216とカソード204との間の領域222において発生するように、電界230の大きさおよび形状が選択される。
【0027】
弱電離プラズマ232は、予備電離プラズマとも呼ばれる。一実施形態において、予備電離プラズマのプラズマ密度のピークは、アルゴン原料ガスに対して、約106cm−3〜1012cm−3の間にある。チャンバ内の圧力は約10−3Torrから10Torrまたはそれより高くへと変化し得る。圧力は、カソード204に近傍の磁場の存在といった種々のシステムパラメータに依存して変化し得る。弱電離プラズマ232のプラズマ密度のピークは、特定のプラズマ生成システムの特性に依存しており、弱電離プラズマ232における測定場所の関数である。
【0028】
一実施形態において、弱電離プラズマ232を生成するためにパルス電源202は、約0.1A〜100Aの間の放電電流を伴う約100V〜5kVの間の初期電圧を有する低電力パルスを生成する。実施形態によっては、パルス幅は約0.1マイクロ秒〜約100秒のオーダーであり得る。パルスの特定のパラメータについて、本明細書により詳細に記載する。
【0029】
一実施形態において、弱電離プラズマ232を生成する前に、パルス電源202は、原料ガス226をカソード204とアノード216との間に供給する前に、カソード204とアノード216との間に電位差を生成する。別の実施形態において、原料ガス226をカソード204とアノード216との間に供給した後に、パルス電源202は、ギャップ220を流れる電流を生成する。
【0030】
一実施形態において、直流(DC)電源(図示せず)をイオン源において用いることにより、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマ232を生成し、保持する。この実施形態において、DC電源は、弱電離プラズマ232を点火するに十分高い電圧を生成するように適合される。一実施形態において、DC電源は、弱電離プラズマ232を生成し、保持するために、カソード204とアノード216との間に約0.1A〜100Aの範囲にある放電電流を伴う約100V〜1kVのオーダーでプラズマ放電電圧を生成する数キロボルトの初期電圧を生成する。放電電流の値は、電源の電力レベルに依存し、弱電離プラズマ232の体積の関数である。さらに、領域222に磁場(図示せず)があることにより、弱電離プラズマ232を生成するのに要求される印加電圧と印加電流との値に劇的効果を与えられ得る。
【0031】
実施形態(図示せず)によっては、DC電源はプラズマ生成システムの大きさと領域234内の磁場の強さとに応じて約1mA〜100Aの間にある電流を生成する。一実施形態において、弱電離プラズマ232を生成する前に、DC電源は、原料ガス226の導入前に、カソード204とアノード216との間に初期ピーク電圧を生成し、保持するように適合される。
【0032】
別の実施形態において、交流(AC)電源(図示せず)を用いて、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマ232を生成し、保持する。例えば、電子サイクロトロン共鳴(ECR)、容量結合プラズマ放電(CCP)または誘導結合プラズマ(ICP)放電を用いて、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマ232を生成し得、または保持し得る。
【0033】
AC電源は、弱電離プラズマを生成し、保持するためにDC電源よりも小さい電力を必要とし得る。その上、予備電離プラズマまたは弱電離プラズマ232は、紫外線法、X線法、電子ビーム法、イオンビーム法、または電離フィラメント法などの多数の他の方法を用いても生成され得る。これら方法には、本発明によるイオン源において用いられる構成要素が含まれる。実施形態によっては、弱電離プラズマは領域222の外側に形成され、次いで、領域222へと拡散する。
【0034】
弱電離プラズマまたは予備電離プラズマ232を形成することによって、カソード204とアノード216との間に高電力パルスを印加するときにチャンバ内が破壊状態になる可能性は実質的になくなる。破壊状態になる可能性は実質的になくなる。これは、弱電離プラズマ232が、プラズマを介する電気伝導を提供する低レベルの電離を有するためである。この伝導によって、プラズマに高電力を印加するときにでさえ、破壊状態になることは実質的に防止される。
【0035】
一実施形態において、原料ガス226が領域222内を通過する様に、弱電離プラズマ232は、いくらか均一に領域234へと拡散する。この均一な拡散により、領域234に非常に均一な強電離プラズマの生成を促す傾向になる。
【0036】
一実施形態(図示せず)において、弱電離プラズマ232は、磁場によってカソード204の近傍に閉じ込められ得る。特に、弱電離プラズマ232内の電子がカソード204の近傍に生成される磁場によって閉じ込められ得る。一実施形態において、磁場の強さは約50ガウス〜約2,000ガウスの間にある。
【0037】
一実施形態において、磁石系(図示せず)は、カソード204の近傍に磁場を生成する。磁石系は、永久磁石(図示せず)が含まれ得、またはその代わりに電磁石(図示せず)が含まれ得る。磁石系の配置は、磁場の所望の形状および強さに応じて変更され得る。別の実施形態において、磁石系はバランスのとれた配置、またはバランスの取れていない配置を取り得る。一実施形態において、磁石系には切り替え可能な電磁石が含まれ、切り替え可能な電磁石は、カソード204の近傍にパルス状の磁場を生成する。実施形態によっては、チャンバ(図示せず)の周囲およびチャンバのいたる所の様々な位置に、追加の磁石系(図示せず)が配置され得る。
【0038】
図2Cを参照して、弱電離プラズマ232が形成されるとすぐに、パルス電源202はカソード204とアノード216との間に高電力パルスを生成する(図2C)。高電力パルスの所望の電力レベルは、例えば、弱電離プラズマ232の密度とプラズマの体積とを含むいくつかの要因に依存する。一実施形態において、高電力パルスの電力レベルは、約1kW〜約10MWまたはそれより高くまでの範囲にある。
【0039】
各高電力パルスは所定の時間保たれ、実施形態によっては、その時間は約1マイクロ秒〜10秒の間にある。高電力パルスの繰返し周波数または繰返し率は、実施形態によっては、約0.1Hz〜1kHzの範囲にある。パルス電源202により生成される平均電力は、プラズマの体積に応じて1MW未満であり得る。一実施形態において、カソード204および/またはアノード216の熱エネルギーは、ヘリウム冷却などの液体冷却またはガス冷却によって持去られるか、もしくは分散される(図示せず)。
【0040】
高電力パルスにより、カソード204とアノード216との間に強電場236が生成される。この強電場236は実質的に、カソード204とアノード216との間の領域222に存在する。一実施形態において、電場236はパルス状の電場である。他の実施形態において、電場236は準静的な電場である。本明細書において、準静的な電場とは、電子の中性ガス粒子との衝突時間と比べてかなり長い電場変動の特性時間を有する電場のことを指す。上記の電場変動の時間は、10秒のオーダーであり得る。強電場236の強さおよび位置について、本明細書により詳細に記載する。
【0041】
図2Dを参照して、高電力パルスにより、弱電離プラズマ232から高電離プラズマまたは強電離プラズマ238が発生する(図2C)。強電離プラズマ238は高密度プラズマとも呼ばれる。圧力が約100mTorr〜10Torrのオーダーである場合には、この強電離プラズマ238から形成される放電電流は約5kA以上のオーダーであり得、放電電圧は約50V〜500Vの範囲にある。
【0042】
一実施形態において、強電離プラズマ238は、領域234に均一に拡散する傾向にある。均一な拡散により、より均一なプラズマボリュームが生成される。均一な拡散については、図5A〜図5Dを参照しながらより詳細に記載される。
【0043】
均一な拡散は、多くのプラズマ処理に有利である。例えば、均一な拡散を有するプラズマエッチング処理は、従来のプラズマエッチングと比べてより均一な方法でエッチングされる基板の表面(図示せず)に向けて強電離プラズマ238内のイオンを加速する。結果として、基板の表面はより均一にエッチングされる。均一な拡散を有するプラズマ処理により、基板を回転させる必要なく高い均一性が得られ得る。
【0044】
また、均一な拡散を有するマグネトロンスパッタリングシステムも、従来のマグネトロンスパッタリングと比べてより均一な方法でスパッタリングターゲットの表面に向けて強電離プラズマ238内のイオンを加速する。結果として、ターゲット材料は、基板およびまたはマグネトロンを回転させる必要なくより均一に基板上に堆積される。また、スパッタリングターゲットの表面はより均等に侵食されており、より高いターゲットの利用が達成される。
【0045】
一実施形態において、本発明のプラズマ発生装置200は、比較的高い電子温度と比較的高密度のプラズマとを生成する。本発明の強電離プラズマ238の一用途は、電離物理気相成長(IPVD)(図示せず)であり、電離物理気相成長は、中性スパッタ原子を正イオンに変換することによりスパッタリング処理を強化する技術である。
【0046】
再度、図2Dを参照して、強電場236は強電離プラズマ238が形成される速度を実質的に上げる原料ガス226の多段階電離プロセスを促進する。一実施形態において、原料ガスは分子性気体であり、強電場236はプラズマ内のイオン形成を強化する。多段階または段階的な電離プロセスは以下のように記載される。
【0047】
原料ガス226をまたぎカソード204とアノード216との間に予備電離電圧を印加し、弱電離プラズマ232を形成する。弱電離プラズマ232は、通常、領域222内に形成され、原料ガス226が引続き流れるように、領域234へと拡散する。一実施形態(図示せず)において、磁場が領域222内に生成され、カソード204の中心に広がる。この磁場は、電子の領域222から領域234への拡散を促進する傾向がある。弱電離プラズマ232内の電子は実質的に、磁場により領域234内に閉じ込められる。一実施形態において、領域222における弱電離プラズマの体積は、原料ガス226の新しい体積と急速に交換される。
【0048】
弱電離プラズマ232の形成の後(図2C)、パルス電源202はカソード204とアノード216との間に高電力パルスを印加する。この高電力パルスはカソード204とアノード216との間の領域222における強電場236を生成する。強電場236により、弱電離プラズマ232内において中性原子240、電子(図示せず)およびイオン242間で生じる衝突が引き起こされる。これら衝突により弱電離プラズマ232内に励起原子244が多数生成される。
【0049】
弱電離プラズマ232における励起原子244の蓄積は、電離プロセスを変える。一実施形態において、強電場236は、原子原料ガスの多段階電離プロセスを促進する。多段階電離プロセスは、強電離プラズマ238が形成される速度を有意に増加させる。多段階電離プロセスの効率は、弱電離プラズマ232における励起原子244の密度の増加に伴い上がる。他の実施形態において、強電場236は、分子または原子の原料ガスのイオンの形成を強化する。
【0050】
一実施形態において、原子の励起速度を最大化にするように、カソード204とアノード216との間の距離またはギャップ220が選択される。領域222内の電場236の値は、パルス電源202により印加される電圧レベル、および、アノード216とカソード204との間のギャップ220の大きさに依存する。実施形態によっては、種々のシステムのパラメータおよびプラズマシステムの動作条件に応じて、電場236の強さは約2V/cm〜105V/cmの間を変化し得る。
【0051】
実施形態によっては、所望のプラズマの種々のパラメータに応じて、ギャップ220は約0.30cm〜約10cmの間にあり得る。一実施形態において、領域222内の電場236は、予備電離プラズマまたは弱電離プラズマ232に急激に加えられる。実施形態によっては、急激に印加される電場236は、立上り時間が約0.1ミリ秒〜10秒の間にある電圧パルスを印加することにより生成される。
【0052】
一実施形態において、ギャップ220の大きさ、および、印加電場236のパラメータは、領域222内の原子240の励起速度が比較的速い速度となる最適条件を決定するために変動する。例えば、アルゴン原子を励起させるには約11.55eVのエネルギーが必要である。従って、原料ガス226が領域222を介して流れるときに、弱電離プラズマ232が形成され、弱電離プラズマ内232の原子240は、段階的な電離プロセスを受ける。
【0053】
弱電離プラズマ232内の励起原子244は、領域234内にある電子(図示せず)に衝突する。中性原子240を電離させるには約15.76eVのエネルギーが必要であるのに対して、励起原子244を電離させるには約4eVのエネルギーしか必要でない。従って、励起原子244は中性原子240よりもかなり高い速度で電離する。一実施形態において、強電離プラズマ238内のイオン242はカソード204に衝突し、それにより、カソード204から二次電子放出を引き起こす。その二次電子は、強電離プラズマ238内の全ての中性原子240または励起原子244と相互作用する。このプロセスにより、原料ガス226が交換されるときに、強電離プラズマ238内のイオン242密度がさらに増加する。
【0054】
電場236の急激な印加に対応する多段階電離プロセスは次のように記述し得る。
【0055】
Ar+e−→Ar☆+e−
Ar☆+e−→Ar++2e−
ここで、Arは原料ガス226内の中性のアルゴン原子240を表し、e−は、カソード204とアノード216との間に十分な電圧が印加される場合に、予備電離プラズマ232に応答して生成されるイオン化用電子を表す。また、Ar☆は、弱電離プラズマ232内の励起したアルゴン原子244を表す。励起したアルゴン原子244とイオン化用電子との衝突により、アルゴンイオン(Ar+)と2つの電子とが得られる。
【0056】
励起したアルゴン原子244を電離させるために必要なエネルギーは、通常、中性のアルゴン原子240の場合よりも少ない。従って、中性のアルゴン原子240と比べて、その励起原子244は、カソード204の表面近傍においてより速く電離する傾向にある。プラズマ内の励起原子244の密度が増えるにつれ、電離プロセスの効率は急激に上がる。この効率の増大により、最終的に、強電離プラズマ238の密度がアバランシェのように増加する。適切な励起条件下において、励起原子244に変換される弱電離プラズマ232に加えられるエネルギーの割合は、原料ガス226内のパルス放電に対して非常に高い。
【0057】
従って、本発明の一局面において、ギャップ220全体に弱電離プラズマ232に高電力パルスを印加することにより、アノード216とカソード204との間に強電場236が生成される。この強電場236により、弱電離プラズマ232内に励起原子244が生成される。励起原子244はカソード204により放出される二次電子との相互作用によって急激に電離される。その急激な電離の結果、カソード204の近傍領域234に形成されているイオン密度の高い強電離プラズマ238が得られる。強電離プラズマ238はまた高密度プラズマとも呼ばれる。
【0058】
本発明の一実施形態において、領域222における原料ガス226の流量を制御することによって、より高い密度のプラズマが生成される。この実施形態において、原料ガス226の第1のボリュームは領域222に供給される。次いで、原料ガス226の第1のボリュームが電離さることにより、領域222内に弱電離プラズマ232が形成される。次いで、パルス電源202は、弱電離プラズマ232全体に高電力電気パルスを印加する。その高電力電気パルスにより、弱電離プラズマ232から強電離プラズマ238が生成される。
【0059】
高電力電気パルスのレベルおよび持続時間は、高電力放電が縮小し、終結する前に強電離プラズマ238が吸収し得る電力レベルおよび持続時間に制限される。一実施形態において、原料ガス226の流速を増加させることにより、高電力電気パルスの強度および持続時間が増加され、強電離プラズマ238の密度が増加する。
【0060】
一実施形態において、原料ガス226のボリュームの速い交換により、領域222を介して強電離プラズマ238を移動させる。原料ガス226が領域222を介して移動すると、原料ガス226は、移動する強電離プラズマ238と相互作用し、印加された高電力電気パルスを受けて強電離状態になる。電離プロセスは、先に記載のように、直接電離および/または段階的電離を組み合わせたものであり得る。原料ガス226のボリュームの速い交換による領域222を介する強電離プラズマ238の移動により、強電離プラズマ238に印加され得る電力レベルおよび持続時間は増加される。従って、領域234内に高密度の強電離プラズマ238が生成される。
【0061】
電離プロセスの効率性は、ここに記載するように、カソード204の近傍の磁場(図示せず)を加えることによって高められ得る。磁場は、弱電離プラズマ232内に電子を閉じ込める傾向にあり、またカソード204の近傍に二次電子を閉じ込める傾向にある。閉じ込められた電子は、励起原子244を電離し、強電離プラズマ238を生成する。一実施形態において、磁場は領域222内に生成されることにより、弱電離プラズマ232が点火される領域に電子を実質的に閉じ込める。
【0062】
一実施形態において、プラズマ発生システム200はプラズマエッチングのために構成され得る。別の実施形態において、プラズマ発生システム200はプラズマスパッタリングのために構成され得る。特に、プラズマ発生装置200は磁性材をスパッタリングするのに用いられ得る。周知のマグネトロンスパッタリングシステムは、一般的に、磁性材をスパッタすることに適していない。これは、マグネトロンにより生成される磁場は、磁性ターゲット材によって吸収され得るからである。RFダイオードスパッタリングを用いて磁性材をスパッタすることがある。しかしながら、RFダイオードスパッタリングは一般的に、質の悪い膜の厚さの均一性と比較的低い堆積速度を有する。
【0063】
プラズマ発生システム200は、磁性ターゲット材を有するターゲット集合体を含むことによって、かつ、そのターゲット集合体をRF電源(図示せず)で駆動することによって磁性材をスパッタするように適合され得る。例えば、RF電源は、約10kWのオーダーであるRF電力を提供し得る。実質的に均一な弱電離プラズマは、ターゲット集合体の近傍に位置する原料ガス全体にRF電力を印加することによって生成され得る。強電離プラズマは、ここに記載するように、弱電離プラズマ全体に強電場を加えることによって生成される。RF電源は、負のバイアス電圧をターゲット集合体に印加する。強電離プラズマ内のイオンは、ターゲット材を衝撃し、それによりスパッタリングを引き起こす。
【0064】
プラズマ生成システム200はまた、誘電体をスパッタするようにも適合され得る。誘電体は、誘電性ターゲット材を含むターゲット集合体をRF電源(図示せず)で駆動することによってスパッタされ得る。例えば、RF電源は約10kWのオーダーであるRF電力を提供し得る。実質的に均一な弱電離プラズマは、ターゲット集合の近傍に位置する原料ガス全体にRF電力を印加することによって生成され得る。
【0065】
他の実施形態において、DC電源(図示せず)を用いて、本発明による弱電離プラズマ232を生成する。この実施形態においては、誘電性ターゲット材は、カソード204の領域がアノード216とカソード204との間に直流電流を伝導し得るようにカソード204に関して配置される。
【0066】
一実施形態において、磁場は弱電離プラズマ内に電子を閉じ込めるためにターゲット集合体の近傍に生成される。強電離プラズマは、ここに記載するように弱電離プラズマ全体に強電場を加えることによって生成される。RF電源は、負のバイアス電圧をターゲット集合体に印加する。強電離プラズマ内のイオンは、ターゲット材を衝撃し、それによりスパッタリングする。
【0067】
一実施形態において、本発明による強電離プラズマ238を用いてイオンビームを生成する。本発明によるイオンビーム源は、ここに記載したプラズマ発生装置とプラズマにおいてイオンを加速させるのに用いられる追加の電極(図示せず)とを含む。一実施形態において、外部電極はグリッドである。本発明によるイオンビーム源は、非常に高い密度のイオンフラックスを生成し得る。例えば、イオンビーム源は、オゾンフラックスを生成し得る。オゾンは非常に反応性のある酸化剤であり、これは、チャンバーをクリーニングする処理、空気を脱臭する、水を清浄する、および産業廃棄物を処置するといった多くの用途で用いられ得る。
【0068】
図3は、図2Aのプラズマ発生装置200においてプラズマに印加される周期的なパルスに対するパルス電力を時間の関数としてグラフ表示したものを示す。時刻t0において、パルス電源202を作動させる前に、原料ガス226をカソード204とアノード216との間に流入させる。カソード204とアノード216との間を流れる十分な量のガス226の流入に要する時間は、様々な要因に依存し、その要因には、ガス226の流速および領域222内の所望の圧力が含まれる。
【0069】
一実施形態(図示せず)において、原料ガス226を領域222に流入させる前に、パルス電源202を作動させる。この実施形態において、アノード216とカソード204との間に原料ガス226を注入し、ここで、パルス電源202により原料ガス226が点火されることによって、弱電離プラズマ232が生成される。
【0070】
一実施形態において、時刻t0〜時刻t1において、原料ガス226はアノード216とカソード204との間を流れる。時刻t1において、パルス電源202は、カソード204とアノード216との間にパルス302を生成し、パルス302の電力は、プラズマの体積に応じて、約0.01kW〜100kWの間にある。パルス302は原料ガス226を点火するに十分であり、弱電離プラズマ232を生成する。
【0071】
一実施形態(図示していない)において、原料ガス226が領域222内に配送される前に、パルス電源202は、カソード204とアノード216との間に電位差を加える。この実施形態において、原料ガス226がカソード204とアノード216との間に流れるときに、原料ガス226は点火される。他の実施形態において、原料ガス226が領域222に到達する間、または、到達した後に、パルス電源202は、カソード204とアノード216との間にパルス302を生成する。
【0072】
パルス電源202により生成される電力は、カソード204アノード216との間の領域222に存在する原料ガス226を部分的に電離させる。その部分的に電離したガスは、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマ232(図2B)とも呼ばれる。先に記載のとおり、弱電離プラズマ232の形成により、高電力パルスを弱電離プラズマ232に印加するときに破壊状態が作り出される可能性は実質的になくなる。
【0073】
一実施形態において、約1マイクロ秒〜100秒の間の時間、連続的にその電力を加えることにより、予備電離プラズマ232は十分なプラズマ密度を形成し得、保持し得る。一実施形態において、弱電離プラズマ232を保持するために、弱電離プラズマ232の点火の後に、パルス電源202から電力を連続的に加える。パルス電源202により高電力パルスが供給されるまでに弱電離プラズマ232を生成し、保持するために、パルス電源202は、連続的にわずかな電力を出力するように設計され得る。
【0074】
時刻t2において、パルス電源202は、弱電離プラズマ232全体に高電力パルス304を供給する。実施形態によっては、プラズマ発生装置200のパラメータに応じて、高電力パルス304の電力は、約1kW〜10MWの範囲内にある。高電力パルスは、立上り時間が約0.1マイクロ秒〜10秒の間にある立上りエッジ306を有する。
【0075】
高電力パルス304の電力およびパルス幅は、弱電離プラズマ232を強電離プラズマ238に変えるに十分である(図2D)。強電離プラズマ238は、高密度プラズマとも呼ばれる。一実施形態において、約10マイクロ秒〜10秒の範囲内の時間、高電力パルス304を加える。時刻t4において、高電力パルス304の印加を終了させる。
【0076】
高電力パルス304の供給後に、バックグランド電力を加えることにより、電源202は弱電離プラズマ232を保持する。そのバックグランド電力は、一実施形態において、約0.01kW〜約100kWの間にある。バックグランド電力は、パルス状、または、連続的に印加される電力であり得るが、パルス電源202が他の高電力パルス308の供給の準備をする間に、その電力はプラズマ内の予備電離状態を保持する。
【0077】
時刻t5において、パルス電源202は他の高電力パルス308を供給する。一実施形態において、高電力パルス304と高電力パルス308との間の繰返し率は、約0.1Hz〜1kHzの間にある。高電力パルス304および高電力パルス308の具体的な大きさ、形状、幅、および、周波数は、様々な要因に依存し、その要因には、パルス電源202の設計、プラズマ発生装置200の設計、プラズマの堆積およびチャンバにおける圧力が含まれる。強電離プラズマ238の電離速度を制御するが、弱電離プラズマ232を保持するように、高電力パルス304の立上りエッジ306および立下がりエッジ310の形状および持続時間は選択される。
【0078】
一実施形態において、強電離プラズマ238の密度を制御するように、高電力パルス304の具体的な大きさ、形状、幅、および、周波数は選択される。一実施形態において、基板(図示せず)のエッチング速度を制御するように、高電力パルス304の具体的な大きさ、形状、幅、および、周波数は選択される。一実施形態において、スパッタリングターゲット(図示せず)のスパッタリング速度を制御するように、高電力パルス304の具体的な大きさ、形状、幅、および、周波数は選択される。
【0079】
図4は、図2Aのプラズマ発生装置200におけるプラズマに周期的なパルスを印加する場合における、時間の関数としての、印加電圧の絶対値のグラフ表示320、印加電流の絶対値のグラフ表示322、および印加電力の絶対値のグラフ表示324を示す。一実施形態において、時刻t0(図示せず)において、パルス電源202が作動する前に、原料ガス226をカソード204近傍に流入させる。カソード204近傍に十分な量の原料ガス226が流れるのに要する時間は、様々な要因に依存し、その要因には、原料ガス226の流速と領域222内の所望の圧力とが含まれる。
【0080】
図4に示される実施形態において、電源202は定電力を生成する。時刻t1において、パルス電源202は、アノード216およびカソード204全体に電圧326を生成する。一実施形態において、電圧326は、約100V〜5kVの間にある。時刻t0と時刻t1との間隔(図示せず)は、数マイクロ秒〜数ミリ秒のオーダーであり得る。時刻t1において、電流328および電力330は一定値である。
【0081】
時刻t1〜時刻t2において、弱電離プラズマ232(図2B)が生成されるように、電圧326、電流328および電力330は一定のままである。時刻t2における電圧332は、約100V〜5kVの間にある。時刻t2における電流334は、約0.1A〜100Aの間にある。時刻t2において供給される電力336は、約0.01kW〜100kWの間にある。
【0082】
パルス電源202により生成される電力336は、カソード204とアノード216との間の領域222に位置するガス226を部分的に電離させる。その部分的に電離したガスは、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマ232とも呼ばれる。先に記載のとおり、弱電離プラズマ232の形成により、高電力パルスを弱電離プラズマ232に印加するときに破壊状態が作り出される可能性は実質的になくなる。この破壊状態の抑制により、アノード216とカソード204との間の望ましくないアーク放電の発生は実質的になくなる。
【0083】
一実施形態において、時刻t1と時刻t2との間隔は約1マイクロ秒〜100秒の間であり、それにより、予備電離プラズマ232は十分なプラズマ密度を形成し得、保持し得る。一実施形態において、弱電離プラズマ232を保持するために、パルス電源202から電力336を連続的に加える。弱電離プラズマ232を保持するために、パルス電源202は、連続的にわずかな電力を出力するように設計され得る。
【0084】
時刻t2〜時刻t3において、パルス電源202は、弱電離プラズマ232全体に高電圧パルス338を供給する。実施形態によっては、高電圧パルス338の電圧は、200V〜30kVの範囲内にある。実施形態によっては、時刻t2と時刻t3との間隔は、約0.1マイクロ秒〜10秒の間にある。弱電離プラズマ232をまたぐ電流が増加しだす前に、時刻t3〜時刻t4において高電圧パルス338を印加する。一実施形態において、時刻t3と時刻t4との間隔は、約10ナノ秒〜1マイクロ秒の間にあり得る。
【0085】
時刻t4〜時刻t5において、電圧340は下げられ、電流342は増加する。電力344も、電圧346と電流348との間に準静的な状態が存在するまで、時刻t4〜時刻t5において増加する。時刻t4と時刻t5との間隔は、数百ナノ秒のオーダーであり得る。
【0086】
一実施形態において、時刻t5において、電圧346は約50V〜30kV(1000V)の間にあり、電流348は約10A〜5kAの間にあり、電力350は約1kW〜10MWの間にある。時刻t6まで、電力350はプラズマに連続的に印加される。一実施形態において、時刻t5と時刻t6との間隔は、約1マイクロ秒〜10秒の間にある。
【0087】
パルス電源202は、最大電力350およびパルス幅が弱電離プラズマ232を強電離プラズマ238(図2D)に変えるに十分である高電力パルスを供給する。時刻t6において、最大電力350の印加を終了させる。一実施形態において、時刻t6の後に、パルス電源202は、プラズマを保持するに十分なバックグランド電力を供給し続ける。
【0088】
一実施形態において、高電力パルスの供給後に、約0.01kW〜100kWの間にあり得る電力352をプラズマに連続的に加えることにより、電源202はプラズマを保持する。パルス電源202が次の高電力パルスの供給の準備をする間に、連続的に生成される電力はプラズマ内の予備電離状態を保持する。
【0089】
時刻t7において、パルス電源202は次の高電力パルス(図示せず)を供給する。一実施形態において、高電力パルス間の繰返し率は、約0.1Hz〜1kHzの間にある。高電力パルスの具体的な大きさ、形状、幅および周波数は、様々な要因に依存し、その要因には、パルス電源202の設計、プラズマ発生装置200の設計、プラズマの堆積および強電離プラズマ238の密度および領域222における圧力が含まれる。
【0090】
他の実施形態(図示せず)において、電源202は定電圧を生成する。この実施形態において、時刻t2から時刻t6まで電圧320を連続的に印加する。電流322および電力324は、定電圧レベルを保持するために、時刻t6まで増大し、電圧320の印加が終了する。電流、電力および電圧のパラメータが最適化されて励起原子が生成される。
【0091】
本発明の一実施形態において、電離プロセスの効率性はカソード204の近傍に磁場を生成することによって大きくなる。磁場は、カソード204近傍の弱電離プラズマ232内に電子を閉じ込める傾向にある。閉じ込められた電子は、励起原子244を電離し、それにより強電離プラズマ238が生成される。この実施形態において、磁気強化プラズマは強反磁性の性質を有する。「強反磁性の性質」という用語は、磁気強化高密度プラズマ放電が外部の磁場をプラズマボリュームから排除する傾向にあることを意味する。
【0092】
図5A〜図5Dは、本発明の一実施形態による磁気強化プラズマ発生装置における種々の電子のE×Bドリフト電流に対してシミュレートしたカソード204近傍における磁場分布400、磁場分布402、磁場分布404および磁場分布406を示す。磁気強化プラズマ発生装置には、カソード204近傍に位置する磁石系407が含まれる。磁石系407は、カソード204近傍に磁場を生成する。一実施形態において、磁場の強さは約50ガウス〜2,000ガウスの間である。シミュレートされた磁場分布400、磁場分布402、磁場分布404および磁場分布406は、大電流を有する高電力プラズマが、磁気強化プラズマ発生装置の領域234’に均一に拡散する傾向にあることを示す。
【0093】
カソード204とアノード216との間の高電力パルスは、カソード204から二次電子を生成し、その二次電子は交差した電場と磁場とに従ってカソード204の近傍で実質的に円運動する。電子の実質的な円運動により、電子のE×Bドリフト電流が生成される。電子のE×Bドリフト電流の大きさは、プラズマ内の放電電流の大きさに比例し、一実施形態において、放電電流の大きさの約3倍〜10倍の範囲にほぼある。
【0094】
一実施形態において、実質的に円形の電子E×Bドリフト電流により磁場が生成されるが、その磁場は磁石系407により生成される磁場と交差する。一実施形態において、電子のE×Bドリフト電流により生成される磁場の向きは、磁石系407により生成される磁場の向きと実質的に反対である。電子のE×Bドリフト電流により生成される磁場の大きさは、電子のE×Bドリフト電流の増加とともに増加する。磁石系407により生成される磁場と、電子のE×Bドリフト電流により生成される磁場との相互作用により、領域234’内の少なくとも一部に強電離プラズマの均一な拡散が引き起こされる。
【0095】
一実施形態において、電子E×Bドリフト電流は、低電流密度プラズマの場合には、実質的に円形な形状を定める。しかしながら、プラズマの電流密度が増加するにつれ、実質的に円形の電子E×Bドリフト電流は、より複雑な形状を表す傾向にある。これは、磁石系407により生成される磁場と、高電力パルスにより生成される磁場と、電子E×Bドリフト電流により生成される磁場との相互作用が強くなるためである。例えば、一実施形態において、電子E×Bドリフト電流の形状は実質的にサイクロイドである。電子E×Bドリフト電流の正確な形状は非常に複雑であり得、様々な要因に依存する。
【0096】
例えば、図5Aは、磁石系407により生成される磁場と、実質的に円形な輪により示される電子E×Bドリフト電流410により生成される磁場との相互作用により生成される磁力線408を示す。電子E×Bドリフト電流410は、カソード204近傍に生成される。
【0097】
図5Aに示される例において、電子E×Bドリフト電流410は約100Aである。本発明の一実施形態において、電子E×Bドリフト電流410は、放電電流の約3倍〜10倍である。従って、図5Aに示される例において、放電電流はほぼ10A〜30Aの間にある。磁石系407により生成される磁場は、比較的小さな電子E×Bドリフト電流410により生成される比較的小さな磁場によって、実質的には乱されないということを、図5Aに示される磁力線408は示す。
【0098】
図5Bは、磁石系407により生成される磁場と、電子E×Bドリフト電流414により生成される磁場との相互作用により生成される磁力線412を示す。電子E×Bドリフト電流414は、カソード204近傍に生成される。図5Bに示される例において、電子E×Bドリフト電流414は約300Aである。電子E×Bドリフト電流414は、通常、放電電流の約3倍〜10倍であるため、この例における放電電流はほぼ30A〜100Aである。
【0099】
磁石系407により生成される磁力線412は、比較的小さな電子E×Bドリフト電流414により生成される比較的小さな磁場によって実質的には乱されない。しかしながら、電子E×Bドリフト電流414に最近接する磁力線416は、電子E×Bドリフト電流414により生成される磁場によっていくぶんか歪められる。より大きな電子E×Bドリフト電流により、磁石系407により生成される磁場とより強く相互作用するより強い磁場が生成されるということを、この歪みは示唆する。
【0100】
図5Cは、磁石系407により生成される磁場と、電子E×Bドリフト電流420により生成される磁場との相互作用により生成される磁力線418を示す。電子E×Bドリフト電流420はカソード204の近傍に生成される。図5Cに示される例において、電子E×Bドリフト電流420は約1,000Aである。電子E×Bドリフト電流420は、通常、放電電流の約3倍〜10倍であるため、この例における放電電流はほぼ100A〜300Aである。
【0101】
磁石系407により生成される磁力線418は相当な歪みを示し、その歪みは比較的大きな電子E×Bドリフト電流420により生成される比較的強い磁場により引き起こされる。従って、より大きな電子E×Bドリフト電流420は、より強い磁場を生成し、そのより強い磁場は磁石系407により生成される磁場と強く相互作用し、その磁場を支配し始め得る。
【0102】
磁石系407により生成される磁場と、電子E×Bドリフト電流420により生成される磁場との相互作用は磁力線422を生成するが、磁力線422は図5Aの磁力線408ならびに図5Bの磁力線412および磁力線416よりも、カソード204の表面に対して幾らかより平行である。磁力線422は、強電離プラズマ238を領域234’内においてより均一に分布させる。従って、強電離プラズマ238は領域234’内において実質的に均一に拡散する。
【0103】
図5Dは、磁石系407により生成される磁場と、電子E×Bドリフト電流426により生成される磁場との相互作用により生成される磁力線424を示す。電子E×Bドリフト電流426はカソード204の近傍に生成される。図5Dに示される例において、電子E×Bドリフト電流426は約5kAである。この例における放電電流はほぼ500A〜1,700Aである。
【0104】
比較的大きな電子E×Bドリフト電流426により生成される比較的強い磁場と相互作用するために、磁石系407により生成される磁力線424は比較的強く歪められる。従って、この実施形態において、比較的大きな電子E×Bドリフト電流426は非常に強い磁場を生成し、その磁場は磁石系407により生成される磁場と比べてより強い。
【0105】
図6A〜図6Dは、本発明によるプラズマ発生システム200’、200’’、200’’’および200’’’’の代わりの実施形態の断面図を示す。図6Aのプラズマ発生システム200’は、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマを生成する電極452を含む。電極452は、予備電離フィラメント電極とも呼ばれ、弱電離プラズマを生成するイオン源の構成要素である。
【0106】
一実施形態において、電極452は電源456の出力454に結合される。電源456はDC電源またはAC電源であり得る。絶縁体458は、電極452をアノード216と絶縁する。一実施形態において、電極452は実質的に円形の電極である。他の実施形態において、電極452は実質的に直線の形状であるか、または、プラズマを予備電離するに適する形状である。
【0107】
一実施形態において、電源456の第2の出力460はカソード204に結合される。絶縁体218はカソード204をアノード216と絶縁する。一実施形態において、電源456は、平均が約0.01kW〜100kWの範囲にある出力電力を生成する。そのような出力電力は、電極452とカソード204との間に、電極452の近傍に存在する原料ガス226を予備電離するに適する電流を生成するに十分である。
【0108】
動作中において、プラズマ発生装置200’は、図2Aのプラズマ発生装置200と類似した態様で機能するが、動作上の相違をいくらか有する。一実施形態(図示せず)において、磁場はカソード204の近傍に生成される。一実施形態において、磁場の強さは約50ガウス〜2,000ガウスである。原料ガス226は、電極452とカソード204との近傍に供給される。
【0109】
電源456は、カソード204と電極452との間に適切な電流を印加する。電極452近傍の領域234に弱電離プラズマを発生させるように、電流のパラメータは選択される。一実施形態において、電源456はシステムの大きさに応じて、約100V〜5kVの電圧を生成し、約0.1A〜100Aの放電電流を伴う。電圧の特定のパラメータの例について、図7とともに以下により詳細に記載する。
【0110】
一実施形態において、アルゴンスパッタリングガスに対して、結果として生じる予備電離プラズマ密度は、約106cm−3〜1012cm−3の間にある。一実施形態において、領域234内の圧力は、約10−3Torr〜10Torrもしくはそれ以上の範囲にある。圧力は、カソード204近傍の磁場の存在といった種々のシステムパラメータに応じて変動し得る。上述したように、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマにより、プラズマに高電力パルスを印加するときにカソード204とアノード216との間が破壊状態になる可能性は実質的になくなる。
【0111】
次いで、パルス電源202はカソード204とアノード216との間に高電力パルスを生成する。高電力パルスは、弱電離プラズマから強電離プラズマを生成する。高電力パルスのパラメータは様々なパラメータに依存し、そのパラメータにはプラズマの体積、所望のプラズマ密度および領域234内の圧力が含まれる。
【0112】
一実施形態において、カソード204とアノード216との間の高電力パルスは約1kW〜10MWの範囲内にある。一実施形態において、約10mTorrの圧力に対して、強電離プラズマから生成され得る放電電流密度は約1A/cm2よりも大きい。
【0113】
一実施形態において、高電力パルスのパルス幅は、約1マイクロ秒から数秒の範囲内にある。一実施形態において、高電力放電の繰返し率は、約0.1Hz〜10kHzの範囲内にある。一実施形態において、パルス電源により生成される電力の平均は、システムの大きさに応じて1MW未満である。一実施形態において、カソード204および/またはアノード216における熱エネルギーは、液体冷却またはガス冷却(図示せず)によって持去られるか、もしくは分散され得る。
【0114】
一実施形態(図示せず)において、磁場はカソード204近傍に生成される。強電離プラズマは、図5A〜図5Dとともに記載したように、生成された磁場の相互作用のために領域234内に均一に拡散する傾向にある。
【0115】
図6Bは、本発明によるプラズマ発生装置200’’の他の実施形態の断面図である。この実施形態は図6Aのプラズマ発生装置200’に類似する。しかしながら、この実施形態において、イオン源の構成要素である電極452’はカソード204を実質的に取り囲む。カソード204に対する電極452’の位置は、アノード216とカソード204との間のギャップ220における特定の電気的条件を得られるように選ばれる。
【0116】
例えば、電極452’とカソード204との間の距離462は、電極452’の直径を変化させることによって変動し得る。一実施形態において、距離462は約0.1cmから約10cmまで変動し得る。距離462は、領域234内に持続可能な弱電離プラズマを生成するように最適化され得る。カソード204に対する電極452’の縦方向の位置もまた変動し得る。
【0117】
予備電離電極452’は、アノード216とカソード204との間の領域222内に物理的に位置していない。従って、予備電離電極452’は、パルス電源202からの高電力パルスがアノード216とカソード204との間に加えられると生じる強電場を干渉しない。さらに、予備電離電極452’の位置により、領域234内により均一に分散した弱電離プラズマがもたらされる。
【0118】
動作中において、電源456はカソード204と電極452’との間に電圧を印加する。電圧は、電極452’およびカソード204の近傍に弱電離プラズマまたは予備電離プラズマを生成する。予備電離プラズマは、パルス電源202からの高電力パルスがプラズマに加えられると、破壊状態になる可能性を実質的になくす。
【0119】
一実施形態において、電源456は約0.1A〜100Aの範囲にある放電電流を伴う約100V〜5kVの範囲にあるDC電圧を生成するDC電源である。他の実施形態において、電源456はカソード204と電極452’との間の電圧パルスを生成するAC電源である。
【0120】
図6Cは、本発明によるプラズマ発生装置200’’’の他の実施形態の断面図である。電極452とカソード204’との構成により、電極452とカソード204’との間に生成される電場のパラメータに影響が及び得る。電場のパラメータは、予備電離プラズマの点火ならびに予備電離プロセス全般に影響を及ぼし得る。この実施形態は、アノード216とカソード204’との間の領域222内の原料ガスの破壊と弱電離プラズマの点火とに必要な状態を生成する。
【0121】
図6Cで図示される実施形態において、カソード204’と電極452との間に生成される電気力線(図示せず)はカソード204’上の点470において、カソード204’と実質的に直交する。電極452とカソード204’との間のギャップ472における電場は、ギャップ472を介して流れる原料ガス226からのプラズマを点火するように適合される。予備電離プロセスの効率性は、磁場の強さおよびカソード204’の近傍領域の圧力などのパラメータに依存して、この実施形態を用いて上げられ得る。
【0122】
図6Dは、本発明によるプラズマ発生装置200’’’’の他の実施形態の断面図である。この実施形態において、カソード204’’と電極452との間に生成される電気力線(図示せず)は点474においてカソード204’’と実質的に直交する。電極452とカソード204’’との間のギャップ476における電場は、ギャップ476を介して流れる原料ガス226からのプラズマを点火するように適合される。予備電離プロセスの効率性は、磁場の強さおよびカソード204’’の近傍領域の圧力などのパラメータに依存して、この実施形態を用いて上げられ得る。
【0123】
図7は、図6Aのプラズマ発生システム200’におけるプラズマに周期的なパルスを加える場合における、時間の関数としてのパルス電力のグラフ表示500を示す。一実施形態において、電源456またはパルス電源202のどちらか一方を作動させる前に、時刻t0において、原料ガス226を電極452に近傍の領域222に流入させる。
【0124】
別の実施形態において、ガス226を電極452に近傍の領域222に流入する前に、時刻t0において、電源456および/またはパルス電源202を作動させる。この実施形態において、原料ガス226は、電極452とカソード204との間に注入され、電極452とカソード204との間において、原料ガス226は電源456により点火されて、弱電離プラズマを生成する。
【0125】
十分な量のガス226を領域222に流入させる所要時間は様々な要因に依存し、その要因には、ガス226の流速と所望の動作圧力とが含まれる。時刻t1において、電源456は、電極452とカソード204との間に、約0.01kW〜約100kWの範囲にある電力502を生成する。電力502により、電極452近傍のガス226が部分的に電離し、それにより、弱電離プラズマまたは予備電離プラズマが生成される。
【0126】
時刻t2において、パルス電源202はプラズマの体積と動作圧力とに応じて、1kW未満〜約10MWのオーダーの高電力パルス504を弱電離プラズマに供給する。高電力パルス504は、弱電離プラズマを強電離プラズマに変えるに十分である。その高電力パルスの立上りエッジ506の立上り時間は約0.1マイクロ秒〜10秒の間にある。
【0127】
一実施形態において、高電力パルス504のパルス幅は、約1マイクロ秒〜10秒の範囲にある。時刻t4において、高電力パルス504の印加を終了させる。高電力パルス504の供給の後においても、パルス電源202が他の高電力パルス508の供給の準備をする間に、電源456からの電力502は連続的に印加されて、予備電離プラズマを保持する。他の実施形態(図示せず)において、電源456はAC電源であり、適切な電力パルスを供給することにより、弱電離プラズマを点火し、かつ保持する。
【0128】
時刻t5において、パルス電源202は他の高電力パルス508を供給する。一実施形態において、高電力パルスの繰返し率は、約0.1Hz〜10kHzである。高電力パルスの具体的な大きさ、形状、幅および周波数は、動作圧力、パルス電源202の設計、カソード204近傍の磁場の存在、プラズマの体積といったプロセスパラメータに依存する。高電力パルス504の立上りエッジ506および立下がりエッジ510の形状および持続時間は、強電離プラズマの電離速度を制御するように選択される。
【0129】
図8は、本発明による高密度電離プラズマまたは強電離プラズマの実例となるプロセスのフローチャート600である。そのプロセスは、図2Aのプラズマ発生装置200内の様々なシステムを起動することにより開始する(工程602)。例えば、チャンバ(図示せず)を最初に特定の圧力まで真空引きする(工程604)。次いで、チャンバ内の圧力を評価する(工程606)。一実施形態においては、次いで、チャンバに原料ガス226を供給する(工程608)。ガス圧を評価する(工程610)。ガス圧が適当である場合には、チャンバ内の圧力を再び評価する(工程612)
チャンバ内の圧力が適当であるときに、適切な磁場が原料ガス226(図示せず)の近傍に生成される。一実施形態において、磁石系(図示せず)には少なくとも1つの永久磁石を含まれ得るので、プロセスが開始される前であっても、磁場は絶え間なく生成される。他の実施形態において、磁石系(図示せず)には少なくとも1つの電磁石が含まれているので、電磁石が動作しているときのみ磁場が生成される。
【0130】
原料ガス226は電離して、弱電離プラズマ232を生成する(工程614)。一実施形態において、図2Aのカソード204とアノード216との間のギャップ220に比較的低い電流放電を作り出すことによって、弱電離プラズマ232が生成され得る。他の実施形態において、図6Aの電極452とカソード204との間に比較的低い電流放電を作り出すことによって、弱電離プラズマ232が生成され得る。さらに他の実施形態(図示せず)において、電極が加熱されて、カソード204の近傍に電子を放出する。この実施形態において、弱電離プラズマ232を生成するために、比較的低い電流放電がアノード216と電極との間に作り出される。
【0131】
図2Aに示される実施形態において、原料ガス226を導入する前に、カソード204とアノード216との間のギャップ220に電位を加えることによって、弱電離プラズマ232が生成される。図6Aに示される実施形態において、弱電離プラズマ232を生成する原料ガス226を導入する前に、電極452とカソード204との間に電位差を加えることによって、弱電離プラズマ232が生成される。
【0132】
ガスが弱電離した後(工程616)、強電離プラズマ238(図2D)が弱電離プラズマ232から生成される(工程618)。一実施形態において、カソード204とアノード216との間に高電力パルスを印加することによって、強電離プラズマ238が生成される。ここに記載したように、高電力パルスによって、アノード216とカソード204との間のギャップ220に強電場236が生成される結果がもたらされる。その強電場236によって、原料ガス226の段階的な電離プロセスが引き起こされる。一実施形態において、強電場236は、強電離プラズマ238を強化するイオン形成を促進する。一実施形態において、強電離プラズマ238は図2Dの領域234内において実質的に均一である。
【0133】
強電離プラズマ238が形成された後(工程620)、強電離プラズマ238はプラズマ処理の必要に応じて維持される(工程622)。プラズマ処理が完了すると(工程624)、プラズマ処理を終了させる(工程626)。
【0134】
(均等物)
特に、特定の好ましい実施形態を参照しながら本発明を示し、記載してきたが、本明細書に定められる本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な形態および詳細の変更がなされ得ることは、当業者には理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】無線周波数(RF)電源を有する周知のプラズマ発生装置の断面図を示す。
【図2A】本発明の一実施形態によるパルス電源を有するプラズマ発生装置の断面図を示す。
【図2B】本発明の一実施形態によるパルス電源を有するプラズマ発生装置の断面図を示す。
【図2C】本発明の一実施形態によるパルス電源を有するプラズマ発生装置の断面図を示す。
【図2D】本発明の一実施形態によるパルス電源を有するプラズマ発生装置の断面図を示す。
【図3】図2Aのプラズマ発生装置においてプラズマに印加される周期的なパルスに対するパルス電力を時間の関数としてグラフ表示したものを示す。
【図4】図2Aのプラズマ発生装置においてプラズマに加えられる周期的なパルスの印加電圧、印加電流、および、印加電力を時間の関数としてグラフ表示したものを示す。
【図5】図5A〜5Dは、本発明による、種々の電子E×Bドリフト電流に対する、カソード近傍の種々のシミュレートされた磁場分布を示す。
【図6A】本発明によるプラズマ生成システムの種々の実施形態の断面図を示す。
【図6B】本発明によるプラズマ生成システムの種々の実施形態の断面図を示す。
【図6C】本発明によるプラズマ生成システムの種々の実施形態の断面図を示す。
【図6D】本発明によるプラズマ生成システムの種々の実施形態の断面図を示す。
【図7】図6Aのプラズマ生成システムにおいてプラズマに加えられる周期的なパルスに対して、パルス電力を時間の関数としてグラフ表示したものを示す。
【図8】本発明による高密度プラズマを生成する実例となる方法のフローチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強電離プラズマを生成する装置であって、
原料ガスのボリュームから弱電離プラズマを生成するイオン源と、
該弱電離プラズマ全体に電気パルスを印加することにより、該強電離プラズマを生成する電源と、
該電気パルスを第2の原料ガスのボリューム全体に印加することにより、さらなる強電離プラズマを生成しながら、該強電離プラズマを該第2の原料ガスのボリュームと交換する手段と
を備える、装置。
【請求項2】
前記電源は、前記電気パルスを前記弱電離プラズマ全体に印加することにより、弱電離プラズマ内の原子を励起させ、かつ、二次電子を生成し、該二次電子は該励起原子を電離し、それにより前記強電離プラズマを生成する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第3の原料ガスのボリューム全体に前記電気パルスを印加しながら、前記弱電離プラズマを第3の原料ガスのボリュームと交換するガス交換手段をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記電源は定電力を生成する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記電源は定電圧を生成する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記イオン源が、DC電源に結合された電極と、AC電源に結合された電極と、UV源と、X線源と、電子ビーム源と、イオンビーム源と、誘導結合プラズマ源と、容量結合プラズマ源と、マイクロ波プラズマ源とを含む群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記弱電離プラズマの近傍に磁場を生成するように配置される磁石であって、該磁場は該弱電離プラズマ内に電子を閉じ込める、磁石をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記磁石は電磁石を備える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記磁石は可動である、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
強電離プラズマを生成する方法であって、
原料ガスのボリュームを電離することにより、弱電離プラズマを形成することと、
該弱電離プラズマ全体に電気パルスを印加することにより、該強電離プラズマを生成することと、
第2の原料ガスのボリューム全体に該電気パルスを印加することにより、さらなる強電離プラズマを生成しながら、該強電離プラズマを該第2の原料ガスのボリュームと交換することと
を包含する、方法。
【請求項11】
前記弱電離プラズマ全体に前記電気パルスを印加することは、該弱電離プラズマ内の原子を励起させ、かつ、二次電子を生成し、該二次電子は該励起原子を電離し、それにより強電離プラズマを生成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第3の原料ガスのボリューム全体に前記電気パルスを印加しながら、前記弱電離プラズマを該第3の原料ガスのボリュームと交換することをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記電気パルスを印加することは、準静的な電場を前記弱電離プラズマ全体に印加することを包含する、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記強電離プラズマの電離速度を増加させるために、前記電気パルスのパルス振幅とパルス幅とのうちの少なくとも1つを選択することをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記強電離プラズマを実質的に均一にさせるために、前記電気パルスのパルス振幅とパルス幅とのうちの少なくとも1つを選択することをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記電気パルスは、約0.1マイクロ秒〜10秒の間である立上り時間を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記弱電離プラズマのピークプラズマ密度が約1012cm−3未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記強電離プラズマのピークプラズマ密度が約1012cm−3よりも高い、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記原料ガスを電離することが、静電場と、パルス電場と、紫外線と、X線放射と、電子ビーム放射と、イオンビームとのうちの1つに該原料ガスをさらすことを包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
磁場を前記弱電離プラズマの近傍に生成することであって、該磁場は該弱電離プラズマ内に電子を閉じ込める、ことをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記弱電離プラズマが、絶縁破壊状態を生み出す可能性を低減させる、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
強電離プラズマを生成する装置であって、
アノードと、
該アノードに隣接して配置され、該アノードとの間にギャップを形成するカソードと、
該カソードの近傍に弱電離プラズマを生成するイオン源と、
該ギャップ全体に電場を生成する電源であって、該電場は該弱電離プラズマ内に励起原子を生成し、該カソードから二次電子を生成し、該二次電子は該励起原子を電離することにより、該強電離プラズマを生成する、電源と
を備える、装置。
【請求項23】
前記電源は定電力を生成する、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記電源は定電圧を生成する、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記電場は準静的な電場を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項26】
前記電場がパルス状の電場を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項27】
前記電場の立上り時間を選択することにより、前記弱電離プラズマ内の前記励起原子の電離速度を増加させる、請求項22に記載の装置。
【請求項28】
前記弱電離プラズマが、前記アノードと前記カソードとの間に絶縁破壊状態を生み出す可能性を低減させる、請求項22に記載の装置。
【請求項29】
前記強電離プラズマは前記カソードの近傍で実質的に均一である、請求項22に記載の装置。
【請求項30】
前記アノードと前記カソードとの間のギャップの大きさは、前記弱電離プラズマ内の前記励起原子の電離速度を増加させるように選択される、請求項22に記載の装置。
【請求項31】
前記イオン源が、DC電源に結合された電極と、AC電源に結合された電極と、UV源と、X線源と、電子ビーム源と、イオンビーム源と、誘導結合プラズマ源と、容量結合プラズマ源と、マイクロ波プラズマ源とを含む群から選択される、請求項22に記載の装置。
【請求項32】
前記弱電離プラズマの近傍に磁場を生成するように配置される磁石であって、該磁場は前記カソード近傍の該弱電離プラズマ内に電子を閉じ込める、磁石をさらに備える、請求項22に記載の装置。
【請求項33】
強電離プラズマを生成する方法であって、
原料ガスを電離することにより、カソードの近傍に弱電離プラズマを生成することと、
該弱電離プラズマ内の原子を励起し、かつ、該カソードから二次電子を生成するために該弱電離プラズマ全体に電場を印加することであって、該二次電子は該励起原子を電離し、これにより該強電離プラズマを生成する、ことと
を包含する、方法。
【請求項34】
前記電場を印加することは、準静的な電場を印加することを包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記場を印加することが、定電力で該電場を印加することを包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記電場を印加することが、定電圧で該電場を印加することを包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記電場を印加することが、前記弱電離プラズマ全体に電気パルスを印加することを包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記強電離プラズマの電離速度を増加させるために、前記電気パルスのパルス振幅とパルス幅とのうちの少なくとも1つを選択することをさらに包含する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記カソードの表面に隣接する領域において前記強電離プラズマを実質的に均一にさせるために、前記電気パルスのパルス振幅とパルス幅とのうちの少なくとも1つを選択することをさらに包含する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記強電離プラズマは、前記カソードの近傍において実質的に均一である、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記弱電離プラズマの近傍に磁場を生成することであって、該磁場は該弱電離プラズマ内に電子を閉じ込める、ことをさらに包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記弱電離プラズマが、前記アノードと前記カソードとの間に絶縁破壊状態を生み出す可能性を低減させる、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
強電離プラズマを生成する装置であって、
原料ガスのボリュームを電離することにより、弱電離プラズマを形成する手段と、
該弱電離プラズマ全体に電気パルスを印加することにより、該強電離プラズマを生成する手段と、
該電気パルスを第2の原料ガスのボリューム全体に印加することにより、さらなる強電離プラズマを生成するしながら、該強電離プラズマを該第2の原料ガスのボリュームと交換する手段と
を備える、装置。
【請求項44】
強電離プラズマを生成する装置であって、
原料ガスを電離することにより、カソードの近傍に弱電離プラズマを生成する手段と、
該弱電離プラズマ内の原子を励起させるために該弱電離プラズマ全体に電場を印加することにより、該カソードから二次電子を生成する手段であって、該二次電子は該励起原子を電離することにより該強電離プラズマを生成する手段と
を備える、装置。
【請求項1】
強電離プラズマを生成する装置であって、
原料ガスのボリュームから弱電離プラズマを生成するイオン源と、
該弱電離プラズマ全体に電気パルスを印加することにより、該強電離プラズマを生成する電源と、
該電気パルスを第2の原料ガスのボリューム全体に印加することにより、さらなる強電離プラズマを生成しながら、該強電離プラズマを該第2の原料ガスのボリュームと交換する手段と
を備える、装置。
【請求項2】
前記電源は、前記電気パルスを前記弱電離プラズマ全体に印加することにより、弱電離プラズマ内の原子を励起させ、かつ、二次電子を生成し、該二次電子は該励起原子を電離し、それにより前記強電離プラズマを生成する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第3の原料ガスのボリューム全体に前記電気パルスを印加しながら、前記弱電離プラズマを第3の原料ガスのボリュームと交換するガス交換手段をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記電源は定電力を生成する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記電源は定電圧を生成する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記イオン源が、DC電源に結合された電極と、AC電源に結合された電極と、UV源と、X線源と、電子ビーム源と、イオンビーム源と、誘導結合プラズマ源と、容量結合プラズマ源と、マイクロ波プラズマ源とを含む群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記弱電離プラズマの近傍に磁場を生成するように配置される磁石であって、該磁場は該弱電離プラズマ内に電子を閉じ込める、磁石をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記磁石は電磁石を備える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記磁石は可動である、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
強電離プラズマを生成する方法であって、
原料ガスのボリュームを電離することにより、弱電離プラズマを形成することと、
該弱電離プラズマ全体に電気パルスを印加することにより、該強電離プラズマを生成することと、
第2の原料ガスのボリューム全体に該電気パルスを印加することにより、さらなる強電離プラズマを生成しながら、該強電離プラズマを該第2の原料ガスのボリュームと交換することと
を包含する、方法。
【請求項11】
前記弱電離プラズマ全体に前記電気パルスを印加することは、該弱電離プラズマ内の原子を励起させ、かつ、二次電子を生成し、該二次電子は該励起原子を電離し、それにより強電離プラズマを生成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第3の原料ガスのボリューム全体に前記電気パルスを印加しながら、前記弱電離プラズマを該第3の原料ガスのボリュームと交換することをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記電気パルスを印加することは、準静的な電場を前記弱電離プラズマ全体に印加することを包含する、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記強電離プラズマの電離速度を増加させるために、前記電気パルスのパルス振幅とパルス幅とのうちの少なくとも1つを選択することをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記強電離プラズマを実質的に均一にさせるために、前記電気パルスのパルス振幅とパルス幅とのうちの少なくとも1つを選択することをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記電気パルスは、約0.1マイクロ秒〜10秒の間である立上り時間を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記弱電離プラズマのピークプラズマ密度が約1012cm−3未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記強電離プラズマのピークプラズマ密度が約1012cm−3よりも高い、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記原料ガスを電離することが、静電場と、パルス電場と、紫外線と、X線放射と、電子ビーム放射と、イオンビームとのうちの1つに該原料ガスをさらすことを包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
磁場を前記弱電離プラズマの近傍に生成することであって、該磁場は該弱電離プラズマ内に電子を閉じ込める、ことをさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記弱電離プラズマが、絶縁破壊状態を生み出す可能性を低減させる、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
強電離プラズマを生成する装置であって、
アノードと、
該アノードに隣接して配置され、該アノードとの間にギャップを形成するカソードと、
該カソードの近傍に弱電離プラズマを生成するイオン源と、
該ギャップ全体に電場を生成する電源であって、該電場は該弱電離プラズマ内に励起原子を生成し、該カソードから二次電子を生成し、該二次電子は該励起原子を電離することにより、該強電離プラズマを生成する、電源と
を備える、装置。
【請求項23】
前記電源は定電力を生成する、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記電源は定電圧を生成する、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記電場は準静的な電場を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項26】
前記電場がパルス状の電場を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項27】
前記電場の立上り時間を選択することにより、前記弱電離プラズマ内の前記励起原子の電離速度を増加させる、請求項22に記載の装置。
【請求項28】
前記弱電離プラズマが、前記アノードと前記カソードとの間に絶縁破壊状態を生み出す可能性を低減させる、請求項22に記載の装置。
【請求項29】
前記強電離プラズマは前記カソードの近傍で実質的に均一である、請求項22に記載の装置。
【請求項30】
前記アノードと前記カソードとの間のギャップの大きさは、前記弱電離プラズマ内の前記励起原子の電離速度を増加させるように選択される、請求項22に記載の装置。
【請求項31】
前記イオン源が、DC電源に結合された電極と、AC電源に結合された電極と、UV源と、X線源と、電子ビーム源と、イオンビーム源と、誘導結合プラズマ源と、容量結合プラズマ源と、マイクロ波プラズマ源とを含む群から選択される、請求項22に記載の装置。
【請求項32】
前記弱電離プラズマの近傍に磁場を生成するように配置される磁石であって、該磁場は前記カソード近傍の該弱電離プラズマ内に電子を閉じ込める、磁石をさらに備える、請求項22に記載の装置。
【請求項33】
強電離プラズマを生成する方法であって、
原料ガスを電離することにより、カソードの近傍に弱電離プラズマを生成することと、
該弱電離プラズマ内の原子を励起し、かつ、該カソードから二次電子を生成するために該弱電離プラズマ全体に電場を印加することであって、該二次電子は該励起原子を電離し、これにより該強電離プラズマを生成する、ことと
を包含する、方法。
【請求項34】
前記電場を印加することは、準静的な電場を印加することを包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記場を印加することが、定電力で該電場を印加することを包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記電場を印加することが、定電圧で該電場を印加することを包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記電場を印加することが、前記弱電離プラズマ全体に電気パルスを印加することを包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記強電離プラズマの電離速度を増加させるために、前記電気パルスのパルス振幅とパルス幅とのうちの少なくとも1つを選択することをさらに包含する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記カソードの表面に隣接する領域において前記強電離プラズマを実質的に均一にさせるために、前記電気パルスのパルス振幅とパルス幅とのうちの少なくとも1つを選択することをさらに包含する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記強電離プラズマは、前記カソードの近傍において実質的に均一である、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記弱電離プラズマの近傍に磁場を生成することであって、該磁場は該弱電離プラズマ内に電子を閉じ込める、ことをさらに包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記弱電離プラズマが、前記アノードと前記カソードとの間に絶縁破壊状態を生み出す可能性を低減させる、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
強電離プラズマを生成する装置であって、
原料ガスのボリュームを電離することにより、弱電離プラズマを形成する手段と、
該弱電離プラズマ全体に電気パルスを印加することにより、該強電離プラズマを生成する手段と、
該電気パルスを第2の原料ガスのボリューム全体に印加することにより、さらなる強電離プラズマを生成するしながら、該強電離プラズマを該第2の原料ガスのボリュームと交換する手段と
を備える、装置。
【請求項44】
強電離プラズマを生成する装置であって、
原料ガスを電離することにより、カソードの近傍に弱電離プラズマを生成する手段と、
該弱電離プラズマ内の原子を励起させるために該弱電離プラズマ全体に電場を印加することにより、該カソードから二次電子を生成する手段であって、該二次電子は該励起原子を電離することにより該強電離プラズマを生成する手段と
を備える、装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2006−505906(P2006−505906A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550251(P2004−550251)
【出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/034483
【国際公開番号】WO2004/042774
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(505154060)ゾンド, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/034483
【国際公開番号】WO2004/042774
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(505154060)ゾンド, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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