高密度内蔵型生物学的分析
閉鎖環境において、生物学的分析を実行するためのデバイス、容器、及び方法を提供する。例示的な生物学的分析としては、高密度核酸増幅及び検出、並びにイムノPCRがあげられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の所有権
本発明は、米国国立衛生研究所により付与された助成金番号U01AI061611号及びR43AI063695号で、政府の援助を得て行われた。政府は本発明において、特定の権利がある。
【背景技術】
【0002】
米国、カナダ、及び西欧では、感染性疾患はヒト死亡率のおよそ7%を占める一方、発展途上地域では、感染性疾患はヒト死亡率の40%以上を占める。感染性疾患は、多様な臨床的徴候を招く。一般的な明白な徴候には、熱、肺炎、髄膜炎、下痢、及び血液含有下痢がある。身体的徴候により、何らかの病原体が示唆され、そして他のものが病原因子としては排除される一方、多様な潜在的原因因子が残り、そして明白に診断するには、しばしば、多様なアッセイを行わなければならない。病原体を診断するための伝統的な微生物学技術は、数日又は数週間かかる場合もあり、適当な治療過程が遅れる場合がある。
【0003】
近年、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が感染性因子の迅速な診断のために選択される方法となっている。PCRは、感染性疾患を診断する、迅速、高感度、かつ特異的なツールでありうる。診断の主な手段としてPCRを用いる際、多様な原因生物が存在する可能性があり、かつ病理標本のいくつかは、存在する生物が低レベルである点で困難である。大部分が陰性であると予想される場合に、各々の可能性のある原因生物に関して1つずつ、大規模な一連のPCRアッセイを実行するのは非現実的な場合がある。病原体核酸が低濃度であり、かつ適当な反応鋳型を収集するために多量の試料が必要な場合、問題は悪化する。可能性のある原因因子全てについてアッセイするのが不適当な試料がある場合がある。解決法は、単一の反応で、多数の標的について同時に試料をアッセイする「多重PCR」を行うことである。多重PCRはいくつかの系では価値があることが証明されているが、高レベル多重反応の安定性に欠き、かつ多数の産物の明確な分析が困難である。当該問題を解決するため、その後、アッセイを多数の二次PCRに分割してもよい。初代産物内で二次反応を入れ子にする(nesting)と安定性が高まる。しかし、この他の処理は高価である場合もあり、かつ、混入又は他の問題が生じうる。
【0004】
同様に、イムノPCR(「iPCR」)は、非常に多様な抗原の高感度検出のための潜在能力がある。しかし、iPCRには伝統的ELISA技術が適用されており、iPCRは、PCRに基づく検出法を用いる場合に問題となる混入の問題がおこる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生物学的分析において、混入の多様な問題に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、生物を含む多数の生物学的物質に関して同時にアッセイする迅速高感度アッセイを提供する。内蔵系は、内蔵形式の安価な使い捨てプラスチックパウチを例示的に使用し、例として混入を最小限にして、そして頑強な増幅を提供しつつ、入れ子PCR及び他の手段が生物分子を同定するのを可能にする。
【0007】
したがって、本発明の1の側面では、閉鎖系において、試料に対して2段階増幅を実行するための容器を提供し、該容器は、試料の第1段階増幅のために設定された第1段階反応ブリスターを含む第1段階反応ゾーン、第1段階反応ブリスターに流動的に連結された他のリザーバー、試料に他の流体を提供するように設定された他のリザーバー、及び第1段階反応ゾーンに流動的に連結された第2段階反応ゾーンを含み、該第2段階反応ゾーンは複数の第2段階反応チャンバーを含み、各第2段階反応チャンバーは試料の他の増幅のために設定されたプライマー対を含む。1の例示的例では、第1段階反応ゾーンは第1段階PCR増幅ゾーンである。別の例示的な例では、第1段階反応ゾーンはイムノPCRのための抗原結合ゾーンであり、この中で、試料中に存在する抗原が認識され、そして特定の核酸セグメントと会合し、そして第2段階反応ゾーンは核酸増幅ゾーンである。さらに別の例示的な例では、容器はさらに、試料中に位置する細胞又は胞子を溶解するための粒子を含む細胞溶解ゾーン、及び核酸を精製するための成分を含む核酸調製ゾーンをさらに含む。例として、ブリスターは、個々のブリスターに加圧するとブリスターが崩壊して、内容物がブリスターから押し出されるような、フレキシブルな材料を含む。
【0008】
本発明の別の側面では、複数のチャネルを介して流動的に連結されている複数のブリスターを有するフレキシブルな部分、及び複数のリザーバーであって、各リザーバーが反応成分を含有し、各リザーバーが複数のブリスターの少なくとも1つに流動的に連結されている、前記リザーバー、及び試料を受け取るように設定され、複数のブリスターの1つに流動的に連結されている密封可能ポートを含む容器を提供する。1の例示的な態様では、反応成分は乾燥型であり、容器はさらに、複数のリザーバーの各々に流動的に連結された第2の密封可能ポートを含み、該ポートは反応成分を再水和するための水を受け取るよう設定されている。
【0009】
本発明の他の側面では、試料中の細胞を溶解するための方法であって、細胞溶解ブリスターを含むフレキシブルな容器を提供し、細胞を細胞溶解ブリスター内に導入し、ブリスターに力を適用して粒子及び試料を移動させて、高速衝撃を生じて溶解物を生じる工程を含む、前記方法を提供する。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、核酸の存在に関して試料を分析するためのデバイスを提供し、該デバイスは、その中に本発明の容器、容器の多様なブリスターに対応して位置し、各々、容器の対応するブリスターに加圧するように設定された複数のアクチュエーター、ブリスターの1の内容物をサーマルサイクリングするように設定された第1のヒーター/クーラーデバイス、及び第2段階チャンバーをサーマルサイクリングするための第2のヒーター/クーラーを受け取るように設定されている。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、方法を提供する。1の例示的な方法では、核酸を増幅する。別の例示的な方法では、イムノPCRを用いて抗原を検出する。
【0012】
本発明の他の側面では、チャネル、チャネルに流動的に連結され各々1又はそれ以上の試薬を含む、複数の高密度反応ウェル、及び高密度反応ゾーンへの試料の導入に際して、高密度反応ウェル間の交差混入を最小限にするバリア層を含む、高密度反応ゾーンを提供する。バリア層は、物理的層、例示的には、穿孔を通じて試料を移動させる力が存在しない場合は、穿孔を通じる流れを最小限にする穿孔層であってもよい。あるいは、バリアは、ウェルが密封されうるまで、ウェル中に試薬を維持する化学的バリアであってもよい。
【0013】
本発明の他の特徴は、現在知覚されるような、本発明を実行する最適な様式を例示する好ましい態様の以下の詳細な説明を考慮すれば、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の1の態様によるフレキシブルパウチを示す。
【図2】図2は、図1記載のフレキシブルパウチの細胞溶解ゾーンの態様を示し、図2aは、図2に示す細胞溶解ゾーンに対応するブラダーの部分の態様を示し、図2bは、別のボルテックス機構を有する、図1記載のフレキシブルパウチの細胞溶解ゾーンの態様を示す。
【図3】図3は、図1記載のフレキシブルパウチの核酸調製ゾーンの態様を示す。
【図4】図4は、図1記載のフレキシブルパウチの第1段階増幅ゾーンの態様を示す。
【図5】図5は、パウチの別の態様を示している以外、図1同様であり、図5aは、図5のパウチの装備の断面図であり、図5bは、図5のパウチの部分の拡大図である。
【図6】図6は、パウチの別の代替態様の斜視図であり、図6aは、図6のパウチの装備の断面図である。
【図7】図7は、図6のパウチと共に用いるための例示的なブラダー構成要素を示す。
【図8】図8は、図6のパウチを含む、図6のパウチと共に用いるための装置の分解斜視図である。
【図9】図9は、図7のブラダー構成要素を含む、図8の装置の部分的断面図を示し、図6のパウチを影に示す。
【図10】図10は、図6のピンチバルブ及びパウチ用の多様なブラダーを含む、図8の装置の部分的断面図を示す。
【図11】図11は、ELISA及びイムノPCRのスキームを示し、二次抗体(A);捕捉抗体(C);酵素(E);レポーター抗体(R);二重官能性結合部分(S)及び抗原(T)である。
【図12】図12は、イムノPCR用に設定されたパウチを示している以外、図6同様である。
【図13】図13は、PCR及びイムノPCRの両方のために設定されたパウチを示している以外、図6同様である。
【図14】図14は、図5のパウチ中で溶解して増幅した試料の第2段階増幅由来の増幅曲線を示す。
【表1】
【図15】図15は、第2段階高密度アレイを有するパウチを示している以外、図6同様であり、図15aは、図8の装置の構成要素の修飾を示す。図15のパウチと共に用いるように設定されたモーターを含めて、支持体メンバーが提供されている。
【図16】図16は、図15の第2段階高密度アレイの分解斜視図である。
【図17】図17は、第2段階高密度アレイの構築中を示す、図15の第2段階高密度アレイの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書記載の内蔵型核酸分析パウチを用いて、多様な生物学的物質、例として抗原及び核酸配列の存在を、例として単一閉鎖系において、試料をアッセイすることができる。1の態様では、パウチを用いて、多数の病原体をアッセイする。例として、場合によっては使い捨てパウチ中で、核酸調製、一次大量多重PCR、一次増幅産物の希釈、及び二次PCRを含み、リアルタイム検出及び/又は融解曲線分析等の増幅後分析に及ぶ、多様な工程を実行してもよい。しかし、病原体検出は、1の例示的な使用にすぎず、他の核酸分析、又は、ペプチド、毒素、及び小分子を含むがこれらに限定されない他の物質の検出にパウチを用いてもよいことが理解される。さらに、本発明のパウチでは、多様な工程を実行できるが、特定の用途のために1又はそれ以上の工程を省いてもよく、そしてパウチ設定はそれにより改変できることが理解される。
【0016】
PCRは、本明細書の実施例で用いられる増幅法であるが、プライマーを用いる任意の増幅法が適当でありうることが理解される。適当な方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);鎖置換増幅(SDA);核酸配列に基づく増幅(NASBA);カスケードローリングサークル増幅(cascade rolling circle amplification)(CRCA);DNAのループ仲介等温増幅(LAMP);核酸の等温及びキメラプライマー開始増幅(ICAN);標的に基づくヘリカーゼ依存性増幅(HDA);転写仲介増幅(TMA)等があげられる。したがって、用語PCRを用いる場合、他の代替増幅法が含まれることを理解すべきである。それによりプロトコルを調製する必要がありうることが理解される。
【0017】
図1は、例示的な内蔵核酸分析パウチ10を示す。パウチ10には、細胞溶解ゾーン20、核酸調製ゾーン40、第1段階増幅ゾーン60、及び第2段階増幅ゾーン80がある。核酸を含有する試料を試料注入ポート12を介してパウチ10内に導入する。パウチ10は、多様なチャネル及び多様なサイズのブリスターを含み、試料が系を通じて流動するように配置されている。試料は多様なゾーンを通過することによりプロセシングされる。
【0018】
試料プロセシングは、パウチ10内に位置する多様なブリスター中で起こる。プロセシングゾーン内及び当該ゾーン間で試料を移動させるための多様なチャネルが提供される一方、試料に流体及び試薬を送達するか、又は当該流体及び試薬を試料から除去するための他のチャネルを提供する。パウチ10内の液体は、以下に記載するように、例として圧、例として空気圧によりブリスター間を移動するが、パウチ内で物質を移動させる他の方法が意図される。
【0019】
例として、パウチ10は、押出、プラズマ蒸着、及びラミネート加工を含む当該技術分野で公知の任意のプロセスで作製できる、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、並びに当該混合物等の二層のフレキシブルプラスチックフィルム又は他のフレキシブルな材料で形成されるが他の容器を用いてもよい。金属ホイル又はアルミニウムラミネート加工を伴うプラスチックもまた用いてよい。共に密封してブリスター及びチャネルを形成できる他のバリア材料が当該技術分野で公知である。プラスチックフィルムを用いる場合、例として熱密封等で、層を共に結合させてもよい。例として、物質には低核酸結合能がある。
【0020】
蛍光モニターを用いる態様に関しては、作動波長で、吸光度及び自己蛍光が適当に低いプラスチックフィルムが好ましい。当該材料は、異なるプラスチック、異なる可塑化剤、及び混成比、並びに異なるフィルム厚を試すことにより同定できる。アルミニウム又は他のホイルラミネート加工を伴うプラスチックに関しては、蛍光検出デバイスにより読み取られるパウチ部分を、ホイルなしにしてもよい。例えば、パウチ10の第2段階増幅ゾーン80のブリスター82中で蛍光をモニターする場合、ブリスター82の一方又は両方の層を、ホイルなしにしてもよい。PCRの例では、約0.0048インチ(0.1219mm)厚のポリエステル(Mylar、Dupont、デラウェア州ウィルミントン)及び0.001〜0.003インチ(0.025〜0.076mm)厚のポリプロピレンフィルムで構成されるフィルムラミネートがよく機能する。例として、パウチ10は、入射光のおよそ80%〜90%を透過できる透明材料で作製される。
【0021】
例示的な態様では、ブリスター及びチャネルに対して、圧、例として空気圧を適用することにより、ブリスター間で物質を移動させる。したがって、空気圧を用いる態様では、パウチ材料は、例として、空気圧が所望の効果を奏することができる程度に十分にフレキシブルである。用語「フレキシブル」は、本明細書でパウチの材料の物理的性質を記載するのに用いられる。用語「フレキシブル」は、亀裂、破壊、ひび割れ等なく、本明細書で用いる空気圧レベルで容易に変形できるものと定義される。例えば、Saran(商標)ラップ及びZiploc(登録商標)バッグ等の薄いプラスチックシート、並びにアルミニウムホイル等の薄い金属ホイルはフレキシブルである。しかし、空気圧を用いる態様でさえも、フレキシブルでなければならないのはブリスター及びチャネルの特定の領域のみである。さらに、ブリスター及びチャネルが容易に変形できれば、フレキシブルでなければならないのはブリスター及びチャネルの1の側面のみである。パウチ10の他の領域は、剛性材料で作製されていてもよいし、又は剛性材料で補強されていてもよい。
【0022】
例として、パウチ10用にプラスチックフィルムを用いる。金属、例としてアルミニウムのシート、又は他の適当な材料を圧延するか又は別の方式で切断して、盛り上がった表面パターンがあるダイスを生成する。例として195℃の作動温度で制御された、空気圧プレス(例としてA−5302−PDS、Janesville Tool Inc.、ウィスコンシン州ミルトン)に適合させる場合、空気圧プレスは印刷機のように機能し、ダイスがフィルムに接触している箇所のみ、プラスチックフィルムの密封表面を融解する。パウチ10が形成されるにつれて、PCRプライマー(例としてフィルム上にスポッティングして乾燥させたもの)、抗原結合性支持体、磁気ビーズ、及びケイ酸ジルコニウムビーズ等の多様な構成要素を多様なブリスター内部に密封してもよい。集合的に又は別に、密封前に試料プロセシング用の試薬をフィルム上にスポッティングしてもよい。1の態様では、ポリメラーゼ及びプライマーとは別に、ヌクレオチド三リン酸(NTP)をフィルム上にスポッティングして、反応が水性試料により水和されるまで、ポリメラーゼの活性を本質的に排除する。水性試料が水和前に加熱されると、これは真のホットスタートPCRのための条件を生成して高価な化学的ホットスタート成分の必要性を軽減するか又は排除する。この別のスポッティングを、図5bについて、以下にさらに記載するが、当該スポッティングを、本明細書に記載する任意の態様で用いてよいことが理解される。
【0023】
空気圧を用いてパウチ10内の材料を移動させる場合、1の態様では「ブラダー」を用いてもよい。その一部を図2aに示すブラダー・アセンブリー710は、パウチ作製と類似のプロセスで製造できるが、ブラダー・アセンブリー710中の個々のブリスターには、ブラダー・アセンブリー710内の個々のブラダーが圧縮ガス供給源により加圧できる、空気圧装備(例として装備724a)が含まれる。ブラダー・アセンブリーは圧縮ガスに供され、ブラダー・アセンブリーは、多数回用いるため、パウチよりも堅牢であるか又は厚い材料で作製されてもよい。あるいは、ブラダーは、ガスケット、シール、バルブ、及びピストンで共に固定された一連のプレートから形成されてもよい。その他の配置は本発明の範囲内である。
【0024】
パウチ10を装置内に置く場合、空気圧ブラダー・アセンブリー710は、パウチ10の1の面に対して押しつけられ、特定のブラダーが膨張すると、圧により液体がパウチ10中の対応するブリスターから外に押し出される。パウチ10のブリスターの多くに対応する空気圧ブラダーに加えて、ブラダー・アセンブリーには、パウチ10の多様なチャネルに対応する、ブラダー又は空気圧駆動ピストン等の他の空気圧アクチュエーターがあってもよい。活性化された場合、当該他の空気圧アクチュエーターは、対応するチャネルをピンチオフし、閉鎖するピンチバルブを形成する。パウチ10の特定のブリスター内に液体を閉じ込めるため、ピンチバルブ空気圧アクチュエーターを、ブリスターに出入りするチャネル上で膨張させ、それにより、アクチュエーターは、チャネルをつまんで閉鎖するピンチバルブとして機能する。例として、異なるブリスター中の2体積の液体を混合するため、連結チャネルを密封するピンチバルブ空気圧アクチュエーターを減圧し、そしてブリスター上の空気圧ブリスターを交互に加圧し、ブリスターを連結しているチャネルを通じて、液体を往復させて、中の液体を混合する。ピンチバルブ空気圧アクチュエーターは、多様な形状及びサイズであってもよく、そして一度に1つより多いチャネルをピンチオフするように設定されてもよい。こうした例示的なピンチバルブを、全ての注入ポートを閉鎖するのに用いうるピンチバルブ16として、図1に例示する。空気圧アクチュエーターは本明細書で記載されるが、リニアステップモーター、モーター駆動性カム、空気、水又は電磁力により駆動される剛性パドル、ローラー、ロッカーアーム、及びある場合、コックト・スプリング(cocked spring)等の多様な電気機械的アクチュエーターを含めて、パウチに加圧する他の方法が意図されることが理解される。さらに、チャネル軸に垂直に加圧することに加えて、可逆的に又は不可逆的にチャネルを閉鎖する、多様な方法がある。これらには、チャネルを覆うバッグをねじること、熱密封、アクチュエーターの回転、並びにバタフライバルブ及びボールバルブ等の、チャネル内に密封された多様な物理的バルブが含まれる。さらに、小さいペルチェ素子又は他の温度制御因子をチャネルに隣接して配置して、液体を凍結するのに十分な温度で設定して、効果的にシールを形成してもよい。また、図1の設計は、自動化装置用に適応し、ブリスター及びチャネル各々の上に位置するアクチュエーター要素を特徴とするが、アクチュエーターが固定されたままでもよく、試料破壊、核酸捕捉、第1及び第2段階PCR、並びにイムノアッセイ及びイムノPCR等のパウチの他の適用を含む、いくつかのプロセシング・ステーション用に、少数のアクチュエーターを用いうるように、パウチを一次元又は二次元で移行させてよいこともまた意図される。チャネル及びブリスターに対して作用するローラーは、パウチをステーション間で平行移動させる設定で、特に有用であることが証明できる。したがって、現在開示する態様では、空気圧アクチュエーターを用いるが、用語「空気圧アクチュエーター」を本明細書で用いる場合、パウチ及び装置の設定に応じて、他のアクチュエーター及び加圧する他の方法を用いてよいことが理解される。
【0025】
図1に関して、核酸抽出及び多重PCR用に設定された、例示的な試料パウチ10を提供する。試料は、装備90中の試料注入ポート12を介して、パウチ10に入る。インジェクターポート12は、壊れやすいシール、一方向バルブ、又は他の進入ポートでもよい。パウチ10内部からの真空を用いて、試料をパウチ10内に引き入れてもよいし、シリンジ又は他の圧力を用いて、試料をパウチ10内に押し込んでもよいし、あるいはインジェクターポート12を介して、パウチ10内に試料を導入する他の手段を用いてもよい。試料は、チャネル14を介して、試料中の細胞を溶解する細胞溶解ゾーン20の三葉ブリスター22に移動する。試料が三葉ブリスター22に進入した時点で、ピンチバルブ16を閉鎖する。すでに閉鎖していてもよいピンチバルブ36と共に、ピンチバルブ16の閉鎖は、三葉ブリスター22中で試料を密封する。細胞溶解は全ての試料で必要ではないことが理解される。当該試料に関しては、細胞溶解ゾーンを省いてもよいし、又は試料を直接次のゾーンに移動させてもよい。しかし、多くの試料では、細胞溶解が必要である。1の態様では、ビーズミリングを用いて細胞を溶解する。
【0026】
ケイ酸ジルコニウム(ZS)ビーズ34等の溶解粒子の存在下で試料を振盪するか又はボルテックスすることによるビーズミリングは、溶解物を形成する有効な方法である。本明細書の「溶解する」、「溶解」、及び「溶解物」等の用語は、細胞の破裂に限定されず、当該用語には、ウイルス等の非細胞粒子の破壊が含まれることが理解される。図2は、収束流が高速ビーズ衝撃を生成して溶解物を生成する、細胞溶解ゾーン20の1の態様を示す。例として、三葉ブリスター22の2つのより下方の葉24、26はチャネル30を介して連結され、より上方の葉28は、チャネル30の反対側31で、より下方の葉24、26と連結される。図2aは、パウチ10の細胞溶解ゾーン20と接触するブラダー・アセンブリー710の対応する部分を示す。パウチ10を装置中に入れると、パウチ10上の各葉24、26、28に隣接するのは、ブラダー・アセンブリー710中の対応する空気圧ブラダー724、726、728である。用語「隣接する」は、パウチ中のブリスター又はチャネル及びそれに対応する空気圧アクチュエーター間の関係を示す場合、パウチが装置内に配置された場合のブリスター又はチャネル及び対応する空気圧アクチュエーター間の関係を示す。1の態様では、より下方の葉24、26に隣接する2つのより下方の空気圧ブラダー724、726の空気圧装備724a、726aが、共に配管される。空気圧装備724a、726a、及びより上方の葉28に隣接するより上方の空気圧ブラダー728の空気圧装備728aは、二重作用空気圧シリンダーを駆動するように設定された電気的に作動されるバルブの反対側に配管される。このように設定されると、圧はより上方の空気圧ブラダー728及び2つのより下方の空気圧ブラダー724、726の間で交互になる。バルブが往復するよう切り替えられると、パウチ10中の液体がより下方の葉24、26及びより上方の葉28の間で、チャネル30中の狭いネクサス32を通じて駆動される。2つのより下方の葉24、26は、同時に加圧されるため、流れは収束し、そしてより上方の葉28内に撃ち込まれる。葉の幾何学に応じて、ネクサス32でのビーズ34の衝突速度は、少なくとも約12m/秒であり、溶解を生じる高衝撃衝突を提供しうる。例示的な三葉系により、細胞破壊が優れ、構造的に頑強になる一方、サイズ及び空気ガス消費は最小限になる。ZSビーズを溶解粒子として用いるが、この選択は単なる例示であり、他の材料及び他の形状の粒子を用いてもよいことが理解される。細胞溶解ゾーン20の他の設定も本発明の範囲内であることもまた理解される。
【0027】
三葉ブリスターを細胞溶解に用いるが、他の多葉設定が本発明の範囲内にあることが理解される。例えば、四葉ブリスター、例としてクローバーの葉のパターンのものを用いてもよく、反対のブリスターを同時に加圧し、溶解粒子を互いに向かって押し出し、そして次いで、他の2つの葉に角度を変えて、次いでこれらを共に加圧してもよい。当該四葉ブリスターは、両方向に高速衝撃する利点があるであろう。さらに、一葉ブリスターを用いてもよいことが意図され、ここで、溶解粒子は、一葉ブリスターの1の部分から他の部分に迅速に移動する。例えば、空気圧アクチュエーターを用いて、一葉ブリスターの領域を閉鎖し、残りの領域中に多葉ブリスターを一時的に形成してもよい。デバイスの葉に作用する、モーター、空気、水、又は電磁的に駆動されるパドル等の他の作動法もまた用いてもよい。例として、より上方の及びより下方の葉間に再循環手段が提供され、そしてアクチュエーターが蠕動ポンプ作用を提供する場合、ローラー又は回転パドルを用いて、図2のネクサス32で流体を共に駆動してもよい。他の設定が本発明の範囲内である。
【0028】
多葉ブリスターを一時的に形成することなく、一葉溶解ブリスター内で、溶解を達成するために十分に迅速に試料及び溶解粒子を移動させることもできる。図2bに示す1の当該代替態様では、電気モーター19に取り付けられた回転ブレード又はパドル21でパウチに衝撃を与えてボルテックスを達成してもよい。ブレード21は、溶解ブリスターでパウチに衝撃を与えてもよく、又は溶解ブリスター近傍、例として溶解ブリスターに隣接するエッジ17で、パウチに衝撃を与えてもよい。当該態様では、溶解ブリスターは、1又はそれ以上のブリスターを含んでもよい。図15は、1の当該溶解ブリスター522を含む態様を示す。図15aは、ブレード21を含むビーズ攪拌モーター19を示し、これは図8に示す装置800の第2の支持体メンバー804の第1の側面811上に備え付けてもよい。しかし、モーター19は、装置800の第1の支持体メンバー802上又は他の表面上に備え付けてもよい。
【0029】
図2aはまた、空気圧装備716aを含む空気圧ブラダー716、及び空気圧装備736aを含む空気圧ブラダー736も示す。パウチ10がブラダー・アセンブリー710と接触して配置されると、ブラダー716はチャネル12と一致し、ピンチバルブ16が完成する。同様に、ブラダー736はチャネル38と一致し、ピンチバルブ36が完成する。空気圧ブラダー716及び736を作動させると、ピンチバルブ16及び36が開放されそして閉鎖されうる。細胞溶解ゾーンに隣接するブラダー・アセンブリー710の一部しか示していないが、ブラダー・アセンブリー710は、パウチ10の残りのゾーン全体の流体の移動を制御する空気圧ブリスターに類似の配置を提供することが理解される。
【0030】
他の先行技術装置で、密封されたフレキシブルな容器内のPCRを解説する。例えば、本明細書に援用される、米国特許第6,645,758号及び第6,780,617号、並びに同時係属米国特許出願第10/478,453号を参照されたい。しかし、密封されたPCR容器内に細胞溶解を含めると、特に、試験しようとする試料がバイオハザードを含有しうる場合は、使用の容易さ及び安全性が改善されうる。本明細書に例示する態様では、細胞溶解由来の、並びに他の全ての工程由来の廃棄物は、密封されたパウチ内に残る。しかし、他の試験のため、パウチ内容物を取り除いてもよいことが理解される。
【0031】
細胞が溶解した時点で、ピンチバルブ36を開放して、そして図3で最適に見られるように、チャネル38を通じて溶解物を核酸調製ゾーン40に移動させ、その後、ピンチバルブ36を閉鎖し、核酸調製ゾーン40中で試料を密封する。図3に例示する態様では、核酸の精製は、ビーズミリングされた材料を用いて、シリカに基づく磁気ビーズ56へのアフィニティー結合を用いて、ビーズをエタノールで洗浄し、核酸を水又は他の流体で溶出して、細胞溶解物から核酸を精製する。核酸抽出に必要な個々の成分は、例として、ブリスター44、46、48中に存し、これらは、試薬混合を可能にするチャネル45、47、49により連結される。溶解物は、チャネル38からブリスター44に進入する。ブリスター44に、磁気ビーズ56及び適当な結合緩衝液、例として1−2−3(商標)試料調製キット(Idaho Technology、ユタ州ソルトレークシティー)等の高塩緩衝液を提供してもよいし、ブリスター44に連結された1又はそれ以上のチャネルを通じて、当該成分のどちらか又は両方を続いて提供してもよい。核酸をビーズ56上で捕捉し、次いでピンチバルブ53を開放し、そしてブリスター44及び58に対して交互に穏やかに加圧して溶解物及びビーズ56を混合し、次いで、例としてブラダー・アセンブリー710上の対応する空気圧ブラダーにより提供される空気圧により、ブリスター58に移動させてもよい。ブリスター58に隣接する装置中に位置する引き込み式の磁石50により、ブリスター58中で磁気ビーズ56を捕捉し、そして廃棄物を廃棄物リザーバーに移動させてもよいし、又はブリスター58に加圧することにより、ブリスター44に戻してもよい。次いで、ピンチバルブ53を閉鎖する。ピンチバルブ55の解除に際して、ブリスター46から提供される、エタノール、イソプロパノール、あるいは他の有機又は無機洗浄溶液で、磁気ビーズ56を洗浄する。場合によっては、磁石50を引っ込めて、ブリスター46及び58に交互に加圧して、ビーズを洗浄させることができる。磁石50により、ブリスター58中にビーズ56をもう一度捕捉し、そして溶解物の非核酸部分をビーズ56から洗い流し、ブリスター46にまた移動させ、そしてピンチバルブ55により確保してもよいし、又は別のチャネルを介して廃棄物リザーバーに洗い流してもよい。磁気ビーズを洗浄した時点で、ピンチバルブ57を開放し、ブリスター48から水(例として緩衝水)又は別の核酸溶離剤を放出する。再び、磁石50を引っ込めて、例としてブリスター48及び58に交互に加圧して、水及びビーズ56を最大に混合することができる。ビーズ56を収集するため、磁石50を再び配備する。ピンチバルブ59を解除して、チャネル52を介して、溶出した核酸を第1段階増幅ゾーン60に移動させる。次いで、ピンチバルブ59を閉鎖し、こうして第1段階増幅ゾーン60中で試料を確保する。
【0032】
図3に示し、かつ上記のような、核酸調製ゾーン40の設定は、単なる例示であり、多様な他の設定が本開示の範囲内でありうることが理解される。
【0033】
本明細書で用いるエタノール、水、及び他の流体を、多様な方式でブリスターに提供してもよい。首が多様なピンチバルブ又は壊れやすい部分によりピンチオフできるブリスター中に流体を保存してもよく、試料調製順序の適当な時期にこれを開放してもよい。あるいは、図5中のパウチ110に示すように、パウチ中のリザーバー中に、又は図6のパウチ210に関して説明した装備中に、流体を保存して、必要に応じて、チャネルを介して移動させてもよい。さらに別の態様では、特にエタノール注入ポート41、88及びプランジャー67、68、69に関して、図1に示すように、外部供給源から流体を導入してもよい。例として、プランジャー67、68、69を、例としてより剛性の材料の、装備90内に挿入してもよく、本明細書に援用される米国特許出願第10/512,255号で、プランジャーを活性化させた場合に、正確に体積を測定した流体を提供してもよい。測定した体積は、各プランジャーで同じでも又は異なってもよい。最後に、さらに別の態様では、1又はそれ以上のブリスター中に保存される流体の測定された体積をパウチに提供してもよく、ここで流体はブリスター内に含有され、例としてブリスター内の小さい密封されたパウチ中で提供され、ブリスター内にブリスターを有効に形成する。適当な時点で、次いで、例として空気圧で密封されたパウチを破裂させて流体をパウチのブリスター内に放出してもよい。装置はまた、流体の通過が一方向バルブで厳密に制御されて、実行中に装置に混入するのを防ぐという条件で、装置及び装備又はパウチ材料間の直接の液体接触を通じて、試薬のいくつか又は全てを提供するように設定されてもよい。さらに、混入DNAがパウチから拡散するのを防ぐため、場合によっては、パウチ又はその装備が操作後に密封されるのが望ましいであろう。シリンジポンプ等、求めに応じて試薬を提供し、そして有刺装備又はoリングシール等、装備又はパウチと一時的に流体接触させる多様な手段が公知である。特定の適用で必要により指示されうるように、本明細書で記載のいかなるパウチの態様と共に、流体を適当なブリスターに導入するいかなる方法を用いてもよいことが理解される。
【0034】
上記のように、入れ子PCRは、2段階で実行される標的増幅を含む。第1段階では、例としてゲノム又は逆転写鋳型から標的を増幅する。望ましい場合、第1段階増幅をプラトー期前に終結させてもよい。第2段階反応では、第1段階単位複製配列を希釈してもよく、そして二次増幅は同じプライマーを用いるか、又は例として第1段階産物のプライマーに対して内部でハイブリダイズする入れ子プライマーを用いる。入れ子PCRの利点としては:a)最初の反応産物が均質かつ特異的な鋳型を形成し、二次反応で高忠実度が保証され、第1段階反応の効率が比較的低くても、頑強な第2段階反応を補助するのに適した鋳型を生成する;b)異なる入れ子プライマーを用いて元来の増幅鋳型(例としてゲノムDNA又は逆転写産物)は、二次増幅で有意性が排除される程度まで希釈されうるため、第1段階反応由来の非特異的産物は、第2段階反応と有意に干渉しない;かつc)入れ子PCRは反応多重化がより高次となりうる。第1段階反応には、いくつかの固有の増幅産物のプライマーが含まれうる。次いで、第2段階反応で当該産物を同定する。しかし、第1段階多重性及び第2段階単一性は単なる例示であり、他の設定ができることが理解される。例えば、第1段階は単一対のプライマーを用いて多様な異なる関連単位複製配列を増幅でき、第2段階を用いて、例として融解曲線分析を用いて、単位複製配列間の相違を標的化することもできる。
【0035】
図1では、核酸試料はチャネル52を介して、第1段階増幅ゾーン60に進入してブリスター61に送達される。ポリメラーゼ(例としてTaqポリメラーゼ)、dNTP、及びプライマー、例として多重増幅のための複数のプライマー対を含むPCR混合物を、ブリスター61中に提供してもよいし、上記の多様な手段を介して、ブリスター61内に導入してもよい。あるいはパウチ10を組み立てる際に、乾燥した試薬をブリスター61の位置上にスポッティングしてもよく、図1に示すように、例としてプランジャー68を介して、ブリスター61に水又は緩衝液を導入してもよい。図4に最適に見られるように、試料はここで、ピンチバルブ59及び72により、ブリスター61中で確保され、例として、装置中に位置し、ブリスター61と接触するよう設定される熱ブロック又はペルチェ素子により、2以上の温度間でサーマルサイクリングされる。しかし、当該技術分野で公知の、ブリスター61内に含有される試料を加熱して冷却する他の手段が、本発明の範囲内であることが理解される。サーマルサイクリングのための別の加熱/冷却デバイスの非限定の例としては、ブラダー内の空気循環ブリスターがあるものが含まれ、ブリスター61に隣接する空気圧ブリスター中の空気が2以上の温度間で周期処理されるか;あるいは本明細書に援用される米国特許出願第10/478,453号のような複数の空気圧を例として用いて、あるいはパウチ10を軸上で平行移動させるか、又はパウチ10に回転レイアウトを提供し、パウチ10をスピンさせて、固定した温度の熱ゾーン間で内容物を移動させることにより、試料をブリスター61内の温度ゾーンに移動させる。
【0036】
病原体由来の核酸は、かなりの量の宿主核酸と同時に単離される場合がある。当該宿主由来核酸は、プライマーと相互作用して、不要な産物を増幅する場合があり、当該産物は、プライマー、dNTP、及びポリメラーゼ活性を除去して、望ましい産物の供給源を潜在的に枯渇させてしまう。病原性生物由来の核酸は、一般的に存在量が少なく、不要な産物は潜在的な問題である。ゾーン60の第1段階反応における周期数を最適化して、特異的産物を最大化して非特異的産物を最小限にしてもよい。最適周期数は、約10〜約30周期であり、例として約15〜約20周期であると予期されるが、特定の標的、宿主、及びプライマー配列に応じて、周期数は多様でありうることが理解される。
【0037】
第1段階多重増幅後、二次反応部位への流動性輸送の前に、例として不完全PCRマスターミックス中で、第1段階増幅産物を希釈する。
【0038】
図4は、3の工程で試料を希釈するための例示的な態様を示す。第1の工程で、ピンチバルブ72を開放し、試料は、上記のように、ブリスター62由来の等体積の水又は緩衝液と試料をブリスター61中で混合して、2倍希釈を経て、ブリスター62、並びにブリスター64及び66に提供される。ブリスター61、62間で体積を往復して圧搾すると、完全な混合が提供される。上記のように、ブラダー710中で提供され、ブリスター61、62に隣接して位置する空気圧ブラダーにより、混合を提供してもよい。空気圧ブラダーを交互に加圧して、液体を往復させてもよい。混合中、ピンチバルブ74は、隣接するブリスター内への液体の流入を防止する。混合終了時、希釈試料の体積を領域70中に捕捉し、ピンチバルブ72を閉鎖し、希釈された試料を領域70中に密封する。ピンチバルブ74を開放し、ブリスター63、64のいずれか又は両方の中で提供される水又は緩衝液により試料をさらに希釈する。上記のように、ブリスター63、64間で体積を往復して圧搾して、混合を提供する。続いて、ピンチバルブ74を閉鎖し、他の希釈された体積の試料を領域71中で密封する。最終希釈は、例として、上記のように混合しながらブリスター65、66のいずれか又は両方で提供された緩衝液又は水を用いることにより、起こる。例として、この最終希釈は、流体としての不完全PCRマスターミックス(例えばプライマー以外の全てのPCR試薬を含有する)を用いて行われる。場合によっては、第2段階増幅前のブリスター66の内容物を加熱すると、高価な抗体又は酵素を必要とせずに、ホットスタート増幅の利点が提供されうる。しかし、水又は他の緩衝液を最終希釈のために用い、他のPCR成分が第2段階増幅ゾーン80中で提供されてもよいことが理解される。例示的な態様は3つの希釈段階を用いるが、適当なレベルの希釈を提供するために、任意の数の希釈段階を用いてもよいことが理解される。領域70及び71中に捕捉される試料の体積を調製して希釈量を調節してもよいこともまた理解され、領域70及び71に捕捉される試料の量が小さければ小さいほど、希釈量は大きく、又はピンチバルブ72及び74及び/又はピンチバルブ74及び76を反復して開放しそして閉鎖することにより、領域70及び/又は領域71に捕捉される他のアリコットを用いて、希釈量を減少させてもよい。約10−2〜約10−5希釈は、多くの適用に適していると予期される。
【0039】
二次PCR反応の成功は、多重第1段階反応で生成される鋳型に依存する。一般的には、高純度のDNAを用いてPCRを行う。フェノール抽出又は商業的DNA抽出キット等の方法で高純度のDNAが提供される。パウチ10を通じてプロセシングされる試料は、純粋でない調製を相殺するように適応させなければならない。PCRは、生物学的試料の成分で阻害される可能性もあり、潜在的に障害となる。例として、ホットスタートPCR、より高濃度のtaqポリメラーゼ酵素、MgCl2濃度の調製、プライマー濃度の調製、及びアジュバント(DMSO、TMSO、又はグリセロール)の添加は、場合によっては、低純度の核酸を相殺するのに用いてよい。純度の問題は、第1段階増幅で問題になりうるが、第2段階増幅でもまた、類似の調製を提供できることが理解される。
【0040】
例示的な態様では、パウチの第1段階PCR部分のブリスター及びチャネル中に、少量の増幅試料を保持して、希釈及び第2段階試料の調製が達成されるが、当該プロセスはまた、他の方式でも実行できることが理解される。1のこうした例示的な例では、予め増幅した試料を、メンバー中の小さい空洞中に捕捉してもよく、例としてメンバーを平行移動させるか又は回転させると、固定された体積の試料を、第1段階から第2段階PCR試薬に移動させることができる。予め増幅された試料の1マイクロリットルの部分を、100マイクロリットルの新鮮なPCR試薬と混合すると、濃度が100倍低下するであろう。この希釈は単なる例示であり、他の体積及び希釈レベルができることが理解される。当該アプローチは、第1段階増幅産物を剛性装備内に押し込み、図1のプランジャー68又は69の1つと接触させることにより達成できる。当該態様では、プランジャーは、試料のほんのわずかを、隣接する希釈緩衝液又は第2段階PCR緩衝液と接触させるよう、設定されるであろう。同様に、段階間のシールを維持しながら、そして増幅された試料を剛性装備90内に含有して、スライディング要素を用いて、少量の第1段階増幅産物を第2段階反応混合物と接触させてもよい。
【0041】
第1段階PCR及び希釈の後に、チャネル78は、二次入れ子PCRのため、複数の低体積ブリスター82に試料を移す。1の例示的な態様では、入ってくる水性材料により、第2段階ブリスター中で提供される乾燥プライマーを再懸濁して、反応混合物を完成させる。場合によっては、二重鎖核酸の検出に用いるLCGreen(登録商標)Plus(Idaho Technology、ユタ州ソルトレークシティー)等の蛍光色素を各ブリスター中で提供してもよいし、又は連続希釈終了時に提供される不完全PCRマスターミックスに添加してもよいが、LCGreen(登録商標)Plusは単なる例示であり、当該技術分野に公知の他の色素が利用できることが理解される。他の任意の態様では、各特異的単位複製配列用に設定された乾燥蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブを、各乾燥プライマーと共に、各第2段階ブリスター中で提供してもよい。さらに、パウチ10は、混入を減少させるため、全ての反応及び操作を含有するよう設計されているが、ある状況では、各ブリスター82から増幅産物を除去して、他の分析を行うことが望ましい場合もある。当該技術分野で公知のように、第2段階単位複製配列を検出するための他の手段が本発明の範囲内である。試料をブリスター82に移した時点で、ピンチバルブ84及び86を活性化して、ブリスター82を閉鎖する。各ブリスター82は、ここで、特定の標的の増幅に必要な全ての試薬を含有する。例として、各ブリスターは、固有のプライマー対を含有してもよく、又は複数のブリスター82が同じプライマーを含有し、いくつかの複製増幅を提供してもよい。
【0042】
本明細書に開示する態様は、第2段階増幅のためのブリスターを使用し、ブリスターは、フレキシブルな部分の残りと同じか又は類似のプラスチックフィルムで形成されることに注目されたい。しかし、多くの態様では、第2段階ブリスターの内容物は、第2段階ブリスターから除去されることはなく、つまり、第2段階反応はフレキシブルなブリスター中で行う必要はない。ブリスターに流動的に連結された複数の剛性、半剛性、又はフレキシブルなチャンバー中で、第2段階反応を行ってもよいことが理解される。チャンバーを連結するフレキシブルなチャネルに対して加圧して、本例のようにチャンバーを密封してもよく、あるいは例として熱密封又は一方向バルブを用いて、他の方式で密封してもよい。本明細書に記載の多様な態様には、廃棄物収集のためにのみ提供されるブリスターが含まれる。廃棄物は除去されないため、剛性、半剛性、又はフレキシブルなチャンバー中で、廃棄物を収集してもよい。
【0043】
第1段階増幅で用いたものと同一のプライマーを用いて、第2段階増幅を行うことが本発明の範囲内である(米国特許第6,605,451号を参照されたい)。しかし、第2段階反応では、第1及び第2段階プライマー結合部位間に重複がないか又は重複が最小限であるように、第1段階産物の内部にあるようなプライマーがあることが好都合な場合がある。第1段階産物を希釈すると、元来の鋳型DNA及び第1段階試薬の第2段階反応における関与を大部分排除できる。さらに、例として、第1段階で用いるものよりTmが高い第2段階プライマーを用いて、入れ子増幅を増強してもよい。有意なヘアピン、ヘテロ/ホモ二量体及び不要なハイブリダイゼーションを回避するように、プライマーを設計してもよい。第2段階プライマーは、入れ子形式のため、単一工程でゲノムDNAから標的を増幅するのに用いるプライマーよりも、有害な相互作用には極めて寛容である。場合によっては、第2段階増幅でホットスタートを用いる。
【0044】
当該技術分野で公知であるように、例としてdsDNA結合色素として、又は蛍光プローブの一部として、蛍光色素が第2段階増幅に含まれる場合、提供される光学を用いて、1又はそれ以上の試料の増幅をモニターしてもよい。場合によっては、増幅曲線の形状分析を提供して各試料が陽性であるか又は陰性であるかを判定してもよい。試料を判定する例示的な方法は、本明細書に援用される米国特許第6,730,501号に記載されている。あるいは、交差閾値(crossing threshold)を用いる方法を用いてもよい。外部、また装置内部にコンピュータを提供してもよいし、方法を実行し、第2段階増幅の存在又は非存在に基づいて試料を陽性又は陰性と判定するようにコンピュータを設定してもよいし、コンピュータは、標準曲線に対して、又は実行内の他の増幅曲線に対して、増幅曲線の特徴的なパラメーター(交差閾値等)を比較することにより、出発鋳型濃度に関する定量的情報を提供してもよい。しかし、当該技術分野で公知の他の方法を用いて、各試料を判定してもよいことは理解される。蛍光情報に対して他の分析を実行してもよい。1の非限定の例は、単位複製配列の適当な融解特性(例えばTm、融解プロフィール形状)を示す、融解曲線分析の使用である。全てのブリスター82の画像を一度に捕捉するように、提供される光学を設定してもよいし、又は各個々のブリスターに関して、個々の光学を提供してもよい。他の設定が本発明の範囲内にある。
【0045】
図5は、代替パウチ110を示す。この態様では、装備190を介して、多様な試薬をパウチ110内に装填する。図5aは、複数のプランジャー168の1つを含む装備190の断面図を示す。図5aは図5の態様に示すような進入チャネル115aを通じた断面図を示し、12の進入チャネルが存在し(進入チャネル115a〜115l)、その各々が装備190中で用いるためのそれ自体のプランジャー168があってもよいが、この特定の設定では、進入チャネル115c、115f、及び115iは使用されないことが理解される。12の進入チャネルを有する設定は単なる例示であり、そして任意の数の進入チャネル及び関連するプランジャーを用いてよいことが理解される。例示的な態様では、装備190の任意の真空ポート142が、装備190の第1の表面194を通じて形成されて、チャンバー192と連絡する。任意の真空ポート142を、真空又は真空チャンバー(未提示)と連絡するために提供して、パウチ110内から空気を吸い取って、パウチ110のチャンバー192並びに多様なブリスター及びチャンバー内に真空を生成してもよい。次いで、プランジャー168をチャンバー192内に十分に深く挿入して、真空ポート142を密封してもよい。例として、所定量の真空下でチャンバー192を提供して、使用に際して、チャンバー192内に所望量の体積の液体を引き入れる。チャンバー192の調製に関する他の情報は、本明細書ですでに援用されている米国特許出願第10/512,255号に見いだされうる。
【0046】
例示的な装備190には、装備190の第2の表面195中に形成される注入ポート141がさらに含まれる。例として、プランジャー168を十分に深く挿入して真空ポート142を密封する一方、注入ポート141を介して、チャンバー192へなおアクセスできるように、注入ポート141は、図5aに示すように、真空ポート142よりも、パウチ110のプラスチックフィルムにより近く配置する。示すように、プラスチックフィルム部分117の第2の表面119は、チャンバー192及び取り巻く大気間の、注入ポート141を経由した連絡を防ぐように、貫通可能シール139を提供する。しかし、第2の表面119は、場合によっては、注入ポート141まで伸びていなくてもよく、多様な他のシールを用いてもよい。さらに、シールのために別の位置、例えば装備190の第1の表面194上が望ましい場合、注入ポート141は、装備190上のその位置へのチャネルを含んでもよい。本明細書ですでに援用されている米国特許出願第10/512,255号は、シールが注入ポートから離れて位置しており、そしてシールがチャネルを介してチャンバーに連結されている、多様な設定を示す。やはり米国特許出願第10/512,255号は、チャネルが単一のシールを多数のチャンバーに連結する、多様な設定を開示する。シール位置並びに多数のチャンバーへの単一注入ポートの接続の変形は、本発明の範囲内である。場合によって、シール139は脆弱でもよく、そしてカニューレ(未提示)の挿入の際に破壊されて、カニューレ内から流体試料がチャンバー192内に吸引されるか又は押し入れられてもよい。
【0047】
パウチ・アセンブリー110の例示的なプランジャー168は、筒形状であり、そしてチャンバー192内に圧入されるように、直径は約5mmである。プランジャー168には、第1の末端部分173及び反対の第2の末端部分175が含まれる。図5aに示されるように、プランジャー168のノッチ169が、第2の末端部分175中で形成される。用いる際、第2の末端部分175をチャンバー192内に一部挿入し、そしてノッチ169を注入ポート141と並列させて、プランジャー168が十分に深く挿入されて、そうでなければ注入ポート141を遮断する場合であっても、流体試料がチャンバー192内に吸引されるか又は注入されてもよい。
【0048】
例として、先端にカニューレを取り付けた(cannulated)シリンジを含む容器(未提示)中に流体を入れて、これを注入ポート141内に挿入して、中のシール139を穿刺してもよい。空気を抜いて真空にしたパウチ・アセンブリー110を用いる際、シール139を穿刺すると、周囲空気圧に比較して、チャンバー192内が陰圧であるため、流体が容器から抜き取られる。次いで、流体はポート141を通過して、チャンバー192を満たす。この時点で、流体は通常、パウチ110のプラスチックフィルム部分117内には流れ込まない。最後に、プランジャー168をチャンバー192内に挿入して、プランジャー168の第2の末端部分175がチャンバー192の底191にアプローチして、測定された量の試薬又は試料をプラスチックフィルム部分117内に押し込むようにする。示すように、プランジャー168は、完全に挿入した際、第2の末端部分175がチャンバー192の底191と完全に触れあわないように設定される。残りの空間は、泡を捕捉して、それによりプラスチックフィルム部分117に進入する泡の数を減少させるのに有用である。しかし、いくつかの態様では、プランジャー168を完全に挿入した際、第2の末端部分175が底191と触れあうことが望ましい場合もある。図5に示す態様では、進入チャネル115a、115b、115d、115e、115g、115h、115j、115k、及び115lは、全て反応ゾーン又はリザーバー・ブリスターにつながる。進入チャネル115aと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試料が三葉ブリスター122内に押し込まれ、進入チャネル115bと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター101内に押し込まれ、進入チャネル115dと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター102内に押し込まれ、進入チャネル115eと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター103内に押し込まれ、進入チャネル115gと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター104内に押し込まれ、進入チャネル115hと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター105内に押し込まれ、進入チャネル115jと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター106内に押し込まれ、進入チャネル115kと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター107内に押し込まれ、そして進入チャネル115lと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター108内に押し込まれる。
【0049】
図5aに示す態様に例示するように、ノッチ169を含むプランジャー設計を用いる場合、ノッチ169をオフセットし、そして注入ポート141をチャンバー192との連絡から閉鎖して、内容物を中に密封するように、プランジャー168を回転させてもよい。これは、取り巻く大気への注入ポート141を通じた流体のいかなる潜在的な逆流も最小限にするよう作用し、これは、プランジャーの完全な挿入の遅延が望ましい場合に特に有用である。プランジャー168に関してノッチ169が示され、そして前記のとおり、流体試料をチャンバー192内に分配した直後に、例えばチャンバー192の底に向かうプランジャー168の押圧、熱密封、一方向バルブ、又は自己密封ポート等の他の手段により、注入ポート141を閉鎖することは本開示の範囲内である。熱密封を密封法として用いる場合、装置内にパウチを挿入した際に、全てのチャンバーが熱密封されるように、シールバーを装置中に含めてもよい。
【0050】
例示的な方法では、使用者は、進入チャネル115aと関連する注入ポート141内に試料を注入して水を多様な他の注入ポート内に注入する。水は、進入チャネル115b、115d、115e、115g、115h、115j、115k、及び115lの各々に関連するチャンバー192内で、先に凍結乾燥されていた試薬を再水和する。以下の図6に示すように、1の単一のシールを通じて水を注入して、次いで、チャネルを介してチャンバー各々へ分配してもよいし、又は水を各チャンバーに独立に注入してもよい。あるいは、水を注入して乾燥試薬を再水和するのでなく、溶解試薬、核酸抽出試薬、及びPCR試薬等の湿った試薬を、装備190の適当なチャンバー192内に注入してもよい。
【0051】
進入チャネル115aと関連するプランジャー168の活性化に際して、チャネル114を介して、試料を三葉ブリスター122内に直接押し入れる。使用者はまた、残りのプランジャー168を押し込んで、装備190中のチャンバー192各々から内容物を出し、そして108を通じてリザーバー・ブリスター101内に入れてもよい。この時点で、パウチ110は、プロセシングのために装置内に装填される。図8に示す装置800は、図6のパウチ210のために設定されているが、装置800のブラダーの設定を修飾すると、装置800がパウチ110及び510又は他の設定のパウチと共に用いるのに適したものになることが理解される。
【0052】
1の例示的な例では、プランジャー168の押圧に際して、リザーバー・ブリスター101は、ここで、イソプロパノール中のDNA結合磁気ビーズを含有し、リザーバー・ブリスター102は、ここで、第1の洗浄溶液を含有し、リザーバー・ブリスター103は、ここで、第2の洗浄溶液を含有し、リザーバー・ブリスター104は、ここで、核酸溶出緩衝液を含有し、リザーバー・ブリスター105は、ここで、多重化第1段階プライマーを含む第1段階PCR試薬を含有し、リザーバー・ブリスター106は、ここで、プライマーを含まない第2段階PCR試薬を含有し、リザーバー・ブリスター107は、ここで、プライマーを含まずそして鋳型を含まない陰性対照PCR試薬を含有し、そしてリザーバー・ブリスター108は、ここで、鋳型を含む陽性対照PCR試薬を含有する。しかし、当該試薬は単なる例示であり、そして所望の反応及び最適化条件に応じて、他の試薬を用いてもよいことが理解される。
【0053】
パウチ110が装置800内に入り、試料が三葉ブリスター122に移動した時点で、試料をZS又はセラミックビーズ等の溶解粒子と共に攪拌することにより、試料を破壊に供してもよい。溶解粒子を三葉ブリスター122中で提供してもよいし、又は試料と共に三葉ブリスター122内に注入してもよい。図5の三葉ブリスター122は図1の三葉ブリスター22とほぼ同じ方式で操作され、2つのより下方の葉124、126を共に加圧し、そしてより上方の葉128及びより下方の葉124、126の間で交互に加圧する。しかし、例示するように、より下方の葉124、126は、より下方の葉24、26よりもはるかに丸く、チャネル130へビーズがスムーズに流動でき、ネクサス32で三角流分離装置が存在しなくても高速衝突しうる。三葉ブリスター22でのように、図5の三葉ブリスター122により、試料中の微生物、細胞、及びウイルス粒子は有効に溶解又は破壊される。幅が約3〜4mm、例として約3.5mmであるチャネル130は、溶解中、比較的ビーズが含まれず、高速衝突を提供するのに有効であることが見出されている。
【0054】
溶解後、リザーバー・ブリスター101上に位置するブラダーを加圧することにより、チャネル138を介して、より上方の葉128内に核酸結合性磁気ビーズを注入する。例として溶解中より穏やかに、三葉ブリスター122の内容物と磁気ビーズを混合し、溶液を、例として約1分間インキュベーションすると、核酸はビーズに結合しうる。
【0055】
次いで、チャネル143を介して「図8」のブリスター144内に溶液をポンピングし、ここで例として空気圧的に駆動されて装置中に収納される引き込み式磁石によりビーズが捕捉される。ビーズ捕捉プロセスは、ビーズミリング器具122の全ての葉124、126、及び128を加圧して始まる。これは、122の液体内容物の多くを、チャネル143を通じて、ブリスター144内に押し入れる。磁石をブリスター144のより下方の部分144bと接触させ、試料を数秒間インキュベーションして、磁石が溶液からビーズを捕捉することができ、次いでブリスター122に隣接するブラダーを減圧し、ブリスター部分144a及び144bに隣接するブラダーを加圧して液体をブリスター122内に戻す。全てのビーズが1回の通過で捕捉されないため、このプロセスを最大10回反復して、実質的に全てのビーズをブリスター144中に捕捉してもよい。次いで、液体をブリスター144の外に押し出し、磁気ビーズ及び捕捉された核酸のみを残して後の2回の洗浄で洗浄試薬をブリスター144内に導入する(それぞれ、チャネル145及び147を介して、リザーバー・ブリスター102及び103から)。各洗浄中、洗浄試薬を含有するリザーバー・ブリスター上に位置するブラダーを加圧し、内容物をブリスター144内に押し入れる。磁石を引っ込め、ブリスター144の各葉144a及び144bを覆う2つのブラダー各々を交互に加圧することにより、磁気ビーズを含有するペレットを破壊する。より上方の葉144aを圧縮すると、液体内容物がより下方の葉144b内に押し入れられ、より下方の葉144bを圧縮すると、内容物がより上方の葉144a内に押し入れられる。ブリスター144中の溶液をより上方の葉144a及びより下方の葉144b間で攪拌することにより、磁気ビーズから不純物が有効に洗い流される。ビーズのペレットが乱されないままにしておく不適当な攪拌、及びビーズ表面から核酸を洗い流し、洗浄試薬と共に失う過剰な攪拌の間で、バランスを維持する。各洗浄周期後、ブリスター144において、磁石により磁気ビーズを捕捉し、洗浄試薬を、例として三葉ブリスター122内に押し入れ、このブリスターはここで廃棄物貯蔵所として働く。しかし、使用したリザーバー・ブリスターもまた、廃棄物貯蔵所として働くこともでき、また他のブリスターが特に廃棄物貯蔵所として提供されてもよいことが理解される。
【0056】
次いで、チャネル149を介して、リザーバー・ブリスター104由来の核酸溶出緩衝液をブリスター144内に注入し、試料をもう一度攪拌し、磁石を用いて磁気ビーズを再捕捉する。ブリスター144中の流体混合物には元来の試料由来の核酸が含まれる。ブリスター144に加圧すると、核酸試料がチャネル152を介して第1段階PCRブリスター161に移動し、試料は多数のプライマーセットを含有する第1段階PCRマスターミックスと混合され、このPCRマスターミックスは、チャネル162を介してリザーバー・ブリスター105から提供される。望ましい場合、試料及び/又は第1段階PCRマスターミックスを混合前に加熱してホットスタートの利点をもたらしてもよい。場合によっては、第1段階PCRの前に、RNA標的の逆転写のための成分を提供してもよい。あるいは、RT酵素、例として熱安定性RT酵素を第1段階PCRマスターミックス中で提供して、RNA標的を同時逆転写させてもよい。本明細書に開示する任意の態様では、第1段階PCR混合物中にRT酵素が存在していてもよいことが理解される。以下に見られるように、図5のパウチ110は、最大10のプライマーセット用に設定されるが、設定を改変してもよく、任意の数のプライマーセットを用いてよいことが理解される。ブリスター161上に位置するブラダーを低圧で加圧して、ブリスター161の内容物を、ブリスター161の他方の側面上の加熱/冷却素子、例としてペルチェ素子と密接に接触させるようにする。ブリスター161上の加圧は、加熱/冷却素子との接触が確実に優れる程度に十分でなければならないが、流体がブリスター161から押し出されないように、十分に穏やかでなければならない。加熱/冷却素子を、例として約60℃〜約95℃の間で、温度周期処理する。例として、約15〜20周期、温度周期処理を行って、存在する1又はそれ以上の核酸標的の増幅を生じる。又は例として、プラトー期前に温度周期処理を停止して対数期中に又は対数期前であってさえ、停止できる。1の例では、検出の最低レベルに到達せずに、試料中の所望の単位複製配列を単に濃縮することが望ましい場合もある。本明細書に援用される米国特許第6,605,451号を参照されたい。
【0057】
次いで、チャネル152を介してブリスター144内に試料の大部分を戻し、少量(例として約1〜5%)の増幅試料のみをブリスター161中に残してチャネル163を介してリザーバー・ブリスター106から第2段階PCRマスターミックスを提供することにより、増幅された試料を場合によっては希釈する。例としてブリスター106及び161間でチャネル163を介して往復して移動させて試料を完全に混合する。望ましい場合、第2段階増幅前に、伸長温度より高く、例として少なくとも60℃に反応混合物を加熱してもよい。次いで、チャネル165を通じて、第2段階増幅ゾーン180中央の低体積ブリスター182のアレイ内に試料を押し入れる。10の例示的な低体積ブリスター182には各々、異なるプライマー対が含まれてもよく、このプライマー対は、第1段階増幅のプライマー対の1つと本質的に同じであるか、又はより短い単位複製配列を増幅するため、第1段階プライマー対内の「入れ子」であるか、いずれかである。プライマーは、ここで試料により水和されて増幅混合物が完成する。各々リザーバー・ブリスター107及び108の内容物を加圧し、チャネル166を介してリザーバー・ブリスター107から標的DNAを含まずに、又はチャネル167を介してリザーバー・ブリスター108から対照DNAを含んでのいずれかで、PCRマスターミックスを押し入れることにより、陽性及び陰性対照試料もまた導入する。例示するように、陽性対照ブリスター183及び陰性対照ブリスター181が各々5つあり、これらを2倍に多重化して、10の異なる第2段階増幅反応に必要な対照を提供してもよい。この設定は単なる例示であり、そして任意の数の第2段階ブリスターを提供してもよいことが理解される。
【0058】
例として、第2段階増幅に用いられるPCRマスターミックスはプライマーがないが、そうでなければ完全である。しかし、「不完全」PCRマスターミックスは、他のPCR成分がなくてもよい。1の例では、第2段階PCRマスターミックスは、水又は緩衝液のみであり、これを次いで、場合によっては希釈された第1段階PCR増幅産物と混合する。全ての残りの成分が予め提供されている小体積のPCR反応ブリスターに、この混合物を移動させる。望ましい場合、全ての残りの成分を共に混合し、そして小体積PCR反応ブリスター内に、単一の混合物としてスポッティングしてもよい。あるいは、図5bに例示するように、各成分を小体積PCR反応ブリスター182の別個の領域上にスポッティングしてもよい。図5bに示すように、4つの領域が存在し、例としてdNTPが領域182aにスポッティングされ、プライマーが182bにスポッティングされ、ポリメラーゼが182cにスポッティングされ、マグネシウム化合物が182dにスポッティングされる。成分を別個にスポッティングし、成分を再水和する前に試料混合物を加熱すると非特異的な反応が最小限になりうる。成分の任意の組み合わせをこの方式でスポッティングしてもよく、ブリスターの1又はそれ以上の領域内に成分をスポッティングするこの方法は、本発明の任意の態様で用いてよいことが理解される。
【0059】
小体積PCR反応ブリスター181、182、及び183につながるチャネル165、166、及び167が密封され、空気圧ブラダーは、サーマルサイクリングのために、加熱/冷却素子、例としてペルチェ素子に向かってアレイを穏やかに加圧する。周期処理パラメーターは、独立に、第2段階サーマルサイクリングのためにセットされてもよい。例として、アレイ上に、励起供給源、例として青い光(450〜490nm)の焦点を合わせて、生じる蛍光発光、例として510nmを超える蛍光発光を画像化することにより、反応をモニターする。
【0060】
上記例では、ピンチバルブは説明されていない。しかし、試料がブリスターの1つに含められることが望ましい場合、特定のブリスターに出入りするチャネル上に位置する空気圧アクチュエーターが加圧され、ピンチバルブが生成されてチャネルが閉鎖されることが理解される。逆に、試料をブリスターの1つから移動させることが望ましい場合、適当な空気圧アクチュエーターを減圧して、チャネルを通じて試料を流動させる。
【0061】
図5で前記のパウチには、試薬リザーバー・ブリスター101〜108が含まれ、使用者は、例として装置内へのパウチ110の挿入前に、パウチ110のプラスチックフィルム部分117中の試薬リザーバー・ブリスター101〜108内に、装備190から試薬を注入する。異なる温度で、多様なブリスターの内容物を維持する機能があることを含め、図5の試薬リザーバー・ブリスターの使用には利点があるが、不都合な点もまたいくつかある。操作者は、装備190からリザーバー・ブリスター101〜108に試薬を移動させるのに関与し、これはしばしば機械の外で、したがって活性化されたピンチバルブを伴わずに行われるため、時に、試薬がリザーバー・ブリスターから作業中のブリスターに漏出しうる。リザーバー・ブリスター中の試薬は、調製及び装填の間、暴露される。これらが加圧されるか、圧搾されるか、又は軽くぶつけられた場合であっても、試薬は利用可能なチャネルを通じて漏出しうる。試薬がかなり喪失する場合、反応は完全に失敗するかもしれない。さらに、操作中、リザーバー・ブリスター101〜108から押し出される試薬の量は、ある程度変動する場合もあり、結果が一貫されない。装備190への試薬導入及び装備190から試薬リザーバー・ブリスター101〜108への試薬の移動を自動化すると、当該問題の多くが解決され、これは本発明の範囲内である。
【0062】
図6のパウチ210は、直接注入アプローチを用いることにより、異なる方式で、当該問題の多くに対処し、装置自体がプランジャー268を、例として空気圧ピストンを介して移動させて試薬が必要になるにつれて、多様な作業ブリスター内に試薬を押し入れる。図6の態様では、図5のリザーバー・ブリスター101〜108中に試薬を保存せず、試薬を装備290の多様なチャンバー292内に導入して、必要になるまでそこで維持する。適当な時点でピストン268を空気圧操作して、測定量の試薬を適当な反応ブリスターに導入する。上記問題の多くへの対処に加え、パウチ210はるかによりコンパクトな形状で、より小さい装置設計が可能になり、パウチ210のチャネルはより短く、流体流動により優れ、チャネル中の試薬喪失が最小限になる。
【0063】
図6の1の例示的な態様では、試験しようとする試料(100μl)及び溶解緩衝液(200μl)を含む300μlの混合物を、注入ポート241a内に注入する。シール239bを介して、装備290内に水もまた注入し、チャネル293(影に示す)を介して、各々、チャンバー292b〜292l中に乾燥型で予め提供されていた最大11の異なる試薬を水和する。当該試薬は、例として、凍結乾燥PCR試薬、DNA抽出試薬、洗浄溶液、イムノアッセイ試薬、又は他の化学実体を含んでもよい。図6の例に関して、試薬は、核酸抽出、第1段階多重PCR、多重反応の希釈、及び第2段階PCR試薬の調製、並びに対照反応のためのものであってもよい。図6に示す態様では、注入する必要があるのは、ポート241a中の試料及びポート241b中の水のみである。
【0064】
図6に示すように、シール293bを介して注入された水は、チャネル293を介して多様なチャンバーに分配される。この態様では、試料及び水をパウチ210に注入しさえすればよい。しかし、水を独立に各チャンバー292内に注入してもよいことが理解される。さらに、多様なチャンバー292中に乾燥試薬を提供し、水の注入に際して水和するのでなく、特定の湿った試薬を各チャンバー内に注入してもよいことが理解される。さらに、1又はそれ以上のチャンバー292に水のみを提供してもよく、必要な試薬を適当な反応ブリスター中で乾燥して提供してもよいことが理解される。特定の反応に必要であることにより指示されるような上記の多様な組み合わせが本発明の範囲内である。
【0065】
図6に見られるように、装備290の底面297上に、所望による突起213を提供する。示すように、突起213は、各進入チャネル215内に位置する。しかし、他の設定ができる。突起213は、進入チャネル215を開放しておくように補助し、プランジャー268を押圧した場合に、進入チャネル215をピンチオフする方式で底面297が別の平らな表面とかみ合うのを防ぎ、これにより、プランジャー268の活性化の際に逆流を防ぐ一助となる。当該突起は、本発明の多様な任意のパウチ上で用いてよい。
【0066】
水をパウチ内に注入して、装備中の多数のチャンバーで多数の乾燥試薬を水和する態様では、注入ポート及び多くのチャンバー間のチャネルを閉鎖する手段が望ましい。チャネルが閉鎖されないと、各プランジャーを活性化した際に各チャンバーの内容物のある程度がチャネルに戻る場合もあり、これが潜在的に隣のチャンバーに混入し、そしてチャンバー中に含有されてそしてチャンバーから送達される体積が改変する。このチャネルを閉鎖するいくつかの方法が用いられてきており、これには、上記ノッチ付きプランジャー268を回転させること、及びチャネルに渡ってプラスチックフィルムを熱密封し、それによりチャネルを永久に閉鎖すること、及びピンチバルブとしてチャネルに加圧することがあげられる。他の閉鎖もまた使用でき、例えば装備内に構築されたバルブ、例えば一方向バルブがある。
【0067】
流体がチャンバー292内に装填されてパウチ210が装置内に装填された後、プランジャー268aを、例として空気圧ピストンの活性化により押圧し、チャネル214を経由した三葉ブリスター220内に入る試料のバランスを取らせる。図1及び5に示す態様と同様に、三葉ブリスター220の葉224、226、及び228を、図7〜9に示すブラダー・アセンブリー810の作用ブラダー824、826、及び828を介して連続して圧縮し、葉間の狭いネクサス232を通じて液体を押し入れ、高速衝突を駆動し、試料を剪断し、例として硬くて開けにくい胞子、細菌、及び真菌由来の核酸を含めて、核酸を遊離させる。細胞溶解は、適当な期間、例えば0.5〜10分間続ける。
【0068】
細胞が適当に溶解された時点で、プランジャー268bを活性化し、チャネル236を介して、チャンバー292b中に保存された核酸結合性磁気ビーズを三葉ブリスター220のより上方の葉228内に注入する。試料を磁気ビーズと混合し、混合物を適当な期間、例としておよそ10秒間〜10分間インキュベーションする。
【0069】
ブラダー826の作用により、チャネル238を通じてブリスター244内に試料及びビーズの混合物を押し入れ、次いでブラダー844の作用によりブリスター246内に押し入れ、ここで図8に示すブリスター245に隣接する装置800中に位置する引き込み式磁石850が、溶液から磁気ビーズを捕捉し、ブリスター246の内部表面に対してペレットを形成する。次いで、ブリスター246上に位置する空気圧ブラダー846が、ブリスター246から液体を押し出し、そしてブリスター244を通じて、そしてブリスター222に戻し、該ブリスターはここで、廃棄物貯蔵所として用いられる。しかし、図5で上記したように、他の廃棄物貯蔵所が本発明の範囲内である。プランジャー268c、268d、及び268eの1つを活性化して、チャネル245を介してブリスター244に、そして次いでチャネル243を介してブリスター246に洗浄溶液を提供してもよい。場合によっては、磁石850を引っ込めて、そしてブラダー844及び846を交互に加圧して、チャネル243を介してブリスター244及び246からビーズを往復して移動させて、磁気ビーズを洗浄する。磁気ビーズを洗浄した時点で、磁石850を活性化して、ブリスター246中で磁気ビーズを再捕捉し、次いで、洗浄溶液をブリスター222に移動させる。このプロセスを必要に応じて反復して、核酸結合性磁気ビーズから溶解緩衝液及び試料破片を洗浄する。例として、チャンバー292c、292d、及び292e中の洗浄試薬を各々1回用いて、3回の洗浄を行う。しかし、洗浄がより多くても少なくても本発明の範囲内であることが理解される。より多くの洗浄が望ましい場合、より多くのチャンバー292を提供してもよい。あるいは、各チャンバー292は、より多くの体積の流体を保持してもよく、プランジャーの活性化が、各活性化に際して、チャンバーから体積の一部のみを押し出してもよい。
【0070】
洗浄後、チャンバー292f中に保存される溶出緩衝液は、チャネル247を介して、ブリスター248に移動し、磁石は引っ込められる。チャネル252を介して溶液をブリスター246及び248の間で循環させ、ブリスター246中で磁気ビーズのペレットを破壊し、捕捉された核酸がビーズから解離して、溶液中に流れうる。磁石850をもう一度活性化して、ブリスター246中で磁気ビーズを捕捉し、溶出した核酸溶液をブリスター248内に押し入れる。
【0071】
プランジャー268hを押圧し、そしてチャンバー292h由来の第1段階PCRマスターミックスをブリスター248中の核酸試料と混合する。場合によっては、ブラダー848及び864を交互に活性化させて、チャネル253を介して248及び264の間で混合物を移動させて混合物を混合する。数周期混合した後、溶液はブリスター264中に含まれ、ここで第1段階多重PCRを行う。望ましい場合、例として第1段階PCRマスターミックスをブリスター264内に移動させて、又はブリスター248に隣接するヒーターを提供して、第1段階PCRマスターミックスを予熱する間、混合前に、試料をブリスター246中に保持する。上記のように、予熱することにより、ホットスタートPCRの利点がもたらされる。図8に例示する装置800は、試料を加熱して冷却するペルチェに基づく熱サイクラー886及び888を特徴とする。しかし、上記のように、他のヒーター/クーラーデバイスを用いてよいことが理解される。場合によっては、熱サイクラー886がブリスター248及び264両方を加熱しそして冷却するように配置して、ブリスター248及び264の間の混合を温度周期処理中継続してもよい。当該混合は、いくつかの態様では、第1段階PCR反応を改善することが見出されている。また、2以上の異なるブリスター中で温度を変化させて、エネルギー消費を最小にし、サーマルサイクリング速度を最大にすることにより、サーマルサイクリングを達成してもよい。例えば、ブリスター248中で温度を95℃に、そしてブリスター264中で65℃に維持してもよく、当該ブリスター間で試料を移動させると、熱が試料にそして試料から効率的に移動し、サーマルサイクリングが迅速でそして正確になりうる。温度周期処理は、例として、15〜20周期行われるが、上記のように、適用に応じて、他のレベルの増幅が望ましい場合もある。以下のように、第2段階の増幅ゾーン280は、18の第2段階反応で、増幅を検出するように設定される。したがって、ブリスター264中で、PCR反応において、18の異なるプライマー対が含まれてもよい。
【0072】
別のホットスタート法では、ブリスターの1つ、例としてブリスター264中で提供されたプライマーを含めて、パウチ210を製造する。1の態様では、プライマーを別個に凍結乾燥して、次いで、製造中に、脆弱なペレットとしてブリスター264内に導入する。第1段階PCR前に、例として試料をブリスター246から溶出させ、ブリスター264に押し込んで、プライマーペレットを再水和する。ブリスター248及び264に隣接して位置するペルチェ886を48℃に加熱し、PCRマスターミックスをブリスター248に押し込む。例として10秒間保持して、この間、2つのブリスターが48℃に到達した後、ブリスター248及び264の間の混合を開始する。したがって、成分が別個に48℃に到達するまで、酵素及びdNTPがブリスター248中に残り、試料及びプライマーの大部分はブリスター264中に残る。しかし、48℃を選択したのは、第1段階増幅、及び50℃まで活性であるAMVを用いたRTを同時に行う場合に用いるためであることが理解される。RTが必要でない場合、又はより熱安定性が高いRT酵素を用いる場合、プライマー融点又は特定の第1段階増幅プロトコル中の他の要因に応じて、2つのブリスター248及び264の一方又は両方を58℃まで、又はさらにより高温で加熱してもよい。このホットスタート法を本発明の任意の態様で用いてよいことが理解される。
【0073】
別の態様では、第1段階PCR反応の複雑性を軽減するため、ブリスター248を2以上のブリスターに分割してもよい。多重反応の非特異的産物の数は、混合物中のプライマー数の二乗(又は場合によってはより高次の指数)に増加する一方、アッセイ感度の軽減は投入試料量の線形関数である。したがって、例えば、第1段階PCRを2つの反応に分けて、各々、この態様の単一反応の体積の半分とすると、感度は2倍低下するが、非特異的反応の量及び複雑性は、ほぼ1/4であろう。ブリスター248をより多くのブリスターに分割する場合、ブリスター264を、ブリスター248の数と等しい数のブリスターに分割してもよい。各ブリスター248は、各チャネル253を介して、各ブリスター264に連結される。各ブリスター264には、全てのプライマーサブセットを含むペレットを提供する。各ブリスター248にわたりブリスター246由来の試料を分割し、各ブリスター248を全ての他のものから密封して、上記のように、ブリスター248及び264の各対を用いてサーマルサイクリングが進行する。サーマルサイクリング後、試料を再びブリスター266内で合わせてもよいし、又は個々に第2段階ブリスターの別個のセットに送ってもよい。
【0074】
第1段階PCRが所望の周期数で進行した後、図5の態様に関して上記のように、大部分の試料をブリスター248に戻し、少量を残して、チャンバー292iから第2段階PCRマスターミックスを添加して、試料を希釈してもよい。あるいは、チャネル249を介して、292i由来の希釈緩衝液をブリスター266に移動させて、次いで、流体をブリスター264及び266間で往復して移動させて、ブリスター264中で増幅試料と混合してもよい。混合後、ブリスター264中に残った希釈試料の一部を、三葉ブリスター222に押し出すが、このブリスターは廃棄物貯蔵所である。望ましい場合、チャンバー292j及び292k由来の希釈緩衝液を用いて次いでチャンバー292gから第2段階PCRマスターミックスをいくつか又は全ての希釈された増幅試料に添加して、希釈を数回反復してもよい。希釈工程数を改変、あるいは希釈緩衝液又は第2段階PCRマスターミックスと混合する前に廃棄する試料の割合を改変すれば、希釈レベルを調節できることが理解される。望ましい場合、試料及び第2段階PCRマスターミックスの当該混合物を、第2段階増幅用の第2段階ブリスター282に移動させる前に、ブリスター264中で予熱してもよい。上記のように、予熱すると、第2段階PCR混合物で、ホットスタート成分(酵素、化学薬品、又は別のもの)が必要でなくなれうる。
【0075】
例示的な第2段階PCRマスターミックスは、プライマー対がなく不完全であり、18の各第2段階ブリスター282は、特異的PCRプライマー対を予め装填している。望ましい場合、第2段階PCRマスターミックスは他の反応成分がなくてもよく、次いで、当該成分がまた、第2段階ブリスター282中に予め装填されていてもよい。前記例と共に上記のように、各プライマー対は、第1段階PCRプライマー対と同一であってもよいし、又は第1段階プライマー対内で入れ子であってもよい。ブリスター264から第2段階ブリスターに試料が移動すると、PCR反応混合物が完成する。チャンバー292l由来の対照試料もまた、チャネル267を介して対照ブリスター283に移動する。対照試料は、所望のとおり陽性又は陰性対照であってもよい。例として、各パウチは、プロセス中の各工程の操作を認証し、陽性結果が、先に増幅された核酸の自己混入の結果でないことを立証する、対照反応を含有するであろう。しかし、これは、多くのプロトコルにおいて、特に非常に多重化された反応に関しては実際的でない。適当な対照を提供する1の例示的な方法は、パン酵母等の種を試料にスパイク処理する工程を伴う。他の核酸と共に、酵母から核酸が抽出される。第1及び第2段階PCR反応は、酵母ゲノムからDNA及び/又はRNA標的を増幅する。例として、イントロンにわたるプライマー配列を準備して、スプライシングされたプレmRNA由来のmRNA配列を用いて、RNA特異的標的配列を生成してもよい。参照標準に対して酵母コピー数を定量的に分析すると、系の各成分が機能するということを実質的に認証できる。多くの第2段階アッセイ各々に関する陰性対照反応にはさらに問題がある。平行又は別個の実行のいずれかで、対照反応を実行することが望ましい場合もある。
【0076】
ブラダー・アセンブリー810のブラダー882を活性化すると各第2段階ブリスター282、283内に試料が密封され、ブラダー880を活性化すると第2段階ブリスター282、283が穏やかに加圧され、第2段階ブリスター282、283がヒーター/クーラーデバイスと接触する。第2段階増幅ゾーン280上にあるウィンドウ847は、PCR中及び反応産物のDNA融解曲線分析中のアレイで蛍光モニターすることができる。
【0077】
図6のパウチ210は、密封されない領域255及び密封されない領域256等、いくつかの密封されない領域があることが注目される。当該密封されない領域は、この例示的な態様では、いかなる反応にも関与しないブリスターを形成する。むしろ、当該密封されない領域は、作業ブリスター及びチャネル間に空間を提供する。いくつかの製造プロセスにおいて、全ての使用されない空間中で密封されるパウチに比較した際、255及び256等の密封されない領域が提供された場合、おそらくフィルム材料中で問題となるしわが減少することにより、ときに、漏出が軽減することが見出されている。当該密封されない領域は、場合によっては、任意のパウチ態様上に提供されてもよい。
【0078】
図8は、パウチ210と共に用いうる例示的な器具800を示す。装置800には、ケーシングの壁を形成できるか又はケーシング内にマウントできる支持体メンバー802が含まれる。装置800にはまた、支持体メンバー802に対して場合によっては移動でき、パウチ210を挿入及び抜き取りできる、第2の支持体メンバー804も含まれる。移動可能支持体メンバー804をトラック上にマウントしてもよいし、又は多様な方式のいずれで、支持体メンバー802に対して移動させてもよい。例として、パウチ210を装置800内に挿入すると、ふた805はパウチ210上に適合する。別の態様では、支持体メンバー802及び804両方を固定してもよく、他の機械的手段により、又は空気圧により、パウチ210を適所に保持してもよい。
【0079】
例として、ブラダー・アセンブリー810及び空気圧バルブ・アセンブリー808を移動可能メンバー802上にマウントする一方、ヒーター886及び888を支持体メンバー802上にマウントする。しかし、この配置は単なる例示であり、そして他の配置もできることが理解される。ブラダー・アセンブリー810及び空気圧バルブ・アセンブリー808を移動可能支持体メンバー804上にマウントした際、空気圧アクチュエーターがパウチ210と接触して配置されるように、当該空気圧アクチュエーターをパウチ210に向かって移動させてもよい。パウチ210を装置800内に挿入して移動可能支持体メンバー804を支持体メンバー802に向かって移動させると、パウチ210の多様なブリスターは、ブラダー・アセンブリー810及び空気圧バルブ・アセンブリー808の多様な空気圧ピストンに隣接した位置になるため、空気圧アクチュエーターを活性化すると、パウチ210の1又はそれ以上のブリスターから液体を押し出しうるか、又はパウチ210の1又はそれ以上のチャネルを持つピンチバルブを形成しうるようになる。パウチ210のブリスター及びチャネル並びにブラダー・アセンブリー810の空気圧アクチュエーター及び空気圧バルブ・アセンブリー808間の関係は、図9及び10で、以下により詳細に記載される。
【0080】
各空気圧アクチュエーターには、1又はそれ以上の空気圧装備がある。例えば、ブラダー・アセンブリー810のブラダー824には空気圧装備824aがあり、空気圧ピストン843には関連する空気圧装備843aがある。例示的な態様では、ブラダー・アセンブリー810の各空気圧装備は、通路816を通じて、移動可能支持体メンバー804中に伸長し、ここでホース878が、バルブ899を介して、各空気圧装備を圧縮空気供給源895に連結する。例示的な態様では、通路816は、圧縮空気供給源895へのアクセスを提供するだけでなく、通路はまた、ブラダー・アセンブリー810の多様な構成要素を並列させる一助となり、ブラダーは、パウチ210のブリスターと適当に並列する。
【0081】
同様に、空気圧バルブ・アセンブリー808もまた、移動可能支持体メンバー804上にマウントされるが、他の設定もできることが理解される。例示的な態様では、空気圧バルブ・アセンブリー808上のピン858を、移動可能支持体メンバー804上のマウント開口部859中にマウントして通路816を通じて、空気圧ピストン843、852、853、及び862は、移動可能支持体メンバー804中に伸長して、パウチ210に接触する。例示するように、ブラダー・アセンブリーは、移動可能支持体メンバー804の第1の側面811上にマウントされる一方、空気圧バルブ・アセンブリー808は、移動可能支持体メンバー804の第2の側面812上にマウントされる。しかし、空気圧ピストン843、852、853、及び862は、通路816を通じて伸長するため、空気圧バルブ・アセンブリー808の空気圧ピストン及びブラダー・アセンブリー810の空気圧ブラダーは、共に働いて、パウチ210に必要な空気圧アクチュエーターを提供する。
【0082】
上記のように、ブラダー・アセンブリー810及び空気圧バルブ・アセンブリー808の空気圧アクチュエーターの各々には関連空気圧装備がある。図8には、いくつかのホース878しか示していないが、ホース878を介して、各空気圧装備が圧縮ガス供給源895に連結されていることが理解される。圧縮ガス供給源895は、圧縮装置であってもよいし、又は圧縮ガス供給源895は、二酸化炭素シリンダー等の圧縮ガスシリンダーであってもよい。圧縮ガスシリンダーは、携帯性が望ましい場合、特に有用である。他の圧縮ガス供給源が本発明の範囲内である。
【0083】
装置810のいくつかの他の構成要素もまた、圧縮ガス供給源895に連結されている。支持体メンバー802の第1の側面813上にマウントされている磁石850が例として配備され、そしてホース878を経由した圧縮ガス供給源895からのガスを用いて引き込まれるが、磁石850を移動させる他の方法が当該技術分野で公知である。磁石850は、支持体メンバー802中の凹所851中にある。凹所851が支持体メンバー802を通じた通路となり、こうして磁石850がパウチ210のブリスター246と接触できることが理解される。しかし、磁石850を配備した場合に、磁石850がブリスター246で十分な磁場を提供する程度に近接であり、かつ、磁石850を引っ込めた場合、磁石850がブリスター246中に存在するいかなる磁気ビーズにも有意に影響を及ぼさない限り、支持体メンバー802の材料に応じて、凹所851は、支持体メンバー802を通じて最後まで伸長しなくてよいことが理解される。磁石850の引き込みに言及するが、電磁石を用いてもよく、電磁石を通じた電気の流れを調節することにより、電磁石を活性化し、かつ不活性化してもよい。したがって、本明細書は、磁石を引き抜くか又は引っ込めることを記載するが、当該用語は、磁場を撤回する他の方法を取り込むように十分に広いことが理解される。空気圧連結は、空気圧ホース又は空気圧マニホールドであって、必要なホース又はバルブの数を減少させてもよいことが理解される。
【0084】
支持体802上にマウントされている、空気圧ピストンアレイ869の多様な空気圧ピストン868もまた、ホース878を介して、圧縮ガス供給源895に連結されている。空気圧ピストン868を圧縮ガス供給源895に連結する2つのホース878のみが示されているが、空気圧ピストン868の各々が圧縮ガス供給源895に連結されていることが理解される。12の空気圧ピストン868が示される。パウチ210が装置800内に挿入されると、12の空気圧ピストン868が配置されて、パウチ210の各12のプランジャー268を活性化する。空気圧ピストン868が活性化される際に、ふた805が装備290を適所に保持するように、ふた805がパウチ210上を閉鎖すると、ふた805上のリップ806が装備290の支持を提供する。装備290の他の支持が本発明の範囲内にあることが理解される。
【0085】
加熱/冷却デバイス対、例としてペルチェヒーターを支持体802の第2の側面814上にマウントする。第1段階ヒーター886は、第1段階PCRのため、ブリスター264の内容物を加熱し、そして冷却するよう位置する。第2段階ヒーター888は、第2段階PCRのため、パウチ210の第2段階ブリスター282及び283の内容物を加熱して冷却するよう位置する。しかし、当該ヒーターはまた、他の加熱目的にも使用でき、特定の適用に適当であるように、他のヒーターを含んでもよいことが理解される。
【0086】
望ましい場合、試料を実際に特定のブリスター内に押し入れるかどうかに関して、フィードバックを提供するため、装置800中にフィードバック機構(未提示)を含めてもよい。例示的なフィードバック機構には、温度又は圧センサー、あるいは特に蛍光又は着色色素が含まれる場合、光学検出装置が含まれる。当該フィードバック機構は、例として、支持体メンバー802又は804のいずれか上にマウントされていてもよい。例えば、圧センサーをブリスター264の位置に隣接する支持体802上にマウントしてもよい。試料が仮にブリスター264に移動する場合、圧センサーが押圧されたならば、試料プロセシングを持続しうる。しかし、圧センサーが押圧されなければ、試料プロセシングは停止するか、又はエラーメッセージがスクリーン892上に示される場合がある。ブリスターの任意の組み合わせ又は全てが、フィードバック機構をもち、パウチを通じた試料の適当な移動に関してフィードバックを提供してもよい。
【0087】
蛍光検出が望ましい場合、光学アレイ890を提供してもよい。図8に示すように、光学アレイ890には、光源898、例としてフィルター処理されたLED光源、フィルター処理された白色光、又はレーザー照射、及びカメラ896が含まれる。移動可能支持体804を通じたウィンドウ847は、光学アレイ890に、パウチ210の第2段階増幅ゾーン280へのアクセスを提供する。カメラ896には、例として、各々、パウチ210中の第2段階ブリスター282、823に対応する、複数の光検出装置がある。あるいは、カメラ896は、第2段階ブリスター282、283の全てを含有する画像を撮ってもよく、そしてその画像を第2段階ブリスター282、283の各々に対応する別個のフィールドに分けてもよい。設定に応じて、光学アレイ890は固定されていてもよいし、又は光学アレイ890は、1又はそれ以上のモーターに取り付けられた移動装置上に置かれて、そして各個々の第2段階ブリスター282、283からのシグナルを得るよう移動してもよい。他の配置もできることが理解される。
【0088】
示すように、コンピュータ894は、圧縮空気供給源895のバルブ899を制御して装置800の空気力学の全てを制御する。コンピュータ894はまた、ヒーター886及び888、並びに光学アレイ890も制御する。当該構成要素は各々、電気的に、例としてケーブル891を介して連結されるが、他の物理的又はワイヤレス連結が本発明の範囲内である。コンピュータ894は装置890内に収納されていてもよいし、又は装置890の外部であってもよいことが理解される。さらに、コンピュータ894には、構成要素のいくつか又は全てを制御する内蔵型回路基板が含まれていてもよく、そしてまた、光学アレイからデータを受け取り、そしてディスプレイするデスクトップ又はラップトップPC等の外部コンピュータも含まれてもよい。情報、及び温度、周期数等の変数をインプットするためのキーを含むインターフェース893、例としてキーボードインターフェースが提供されてもよい。例として、ディスプレイ892もまた提供される。ディスプレイ892は、例えば、LED、LCD、又は他の当該ディスプレイであってもよい。
【0089】
図9は、装置800の作動中のブラダー・アセンブリー810及びパウチ210の間の関係を示す。ブラダー・アセンブリーは、サブアセンブリー815、817、818、819、及び822を含む。ブラダー・サブアセンブリー815のブラダー809は大きいため、ブラダー・サブアセンブリー815には、例として2つの空気圧装備815a及び815bがある。ブラダー809は、チャンバー292(図6に示すようなもの)をパウチ210のプラスチックフィルム部分217から閉鎖するのに用いられる。1のプランジャー268を押圧すると、空気圧装備815a及び815bの一方又は両方が、ブラダー809を収縮できる。チャンバー292の1つから流体が通過した後、ブラダー809を再加圧し、チャンバー214、236、245、247、及び249を密封する。例示的なブラダー・サブアセンブリー815には、1のブラダー809しかないが、他の設定、例としてチャネル214、236、245、247、及び249の各々が、それ自体の関連するブラダー又は空気圧ピストンをもつ設定できることが理解される。ブラダー・サブアセンブリー822は、例として、3つのブラダー824、826、及び828を含む。上記のように、ブラダー824、824、及び828は、細胞溶解のため、三葉ブリスター222を駆動する。例示するように、ブラダー824、826、及び828は、対応するブリスター224、226、228よりわずかに大きい。膨張すると、ブラダー表面が幾分ドーム状になり、そしてわずかに大きいサイズのブラダーが、対応するブリスターの全表面上によく接触でき、圧がより均一になり及びブリスターの排気がより優れることが見出されてきている。しかし、いくつかの状況では、個々のブリスターの完全な排気は望ましい場合も不要な場合もあり、大きさがより大きいか又はより小さいブラダーを用いて、排気されるブリスター体積を制御してもよい。ブラダー・サブアセンブリー817には4つのブラダーがある。ブラダー836は、チャネル236のピンチバルブとして機能する一方、ブラダー844、848、及び866は、それぞれ、ブリスター244、248、及び266に対して加圧するよう設定される。ブラダー・サブアセンブリー818には、2つのブラダー846及び864があり、これらはそれぞれ、ブリスター246及び264に対して加圧するよう設定される。最後に、ブラダー・サブアセンブリー819は、第2段階増幅ゾーン280を制御する。ブラダー865は、チャネル265及び267のピンチバルブとして作用する一方、ブラダー882は、第2段階ブリスター282及び283に穏やかに加圧し、第2段階ブリスターをヒーター888と緊密に接触させる。ブラダー・アセンブリー810は5つのサブアセンブリーと共に提供されるが、この設定は単なる例示であり、任意の数のサブアセンブリーを用いてもよいし、又はブラダー・アセンブリー810が単一の完全なアセンブリーとして提供されてもよいことが理解される。
【0090】
図10は、同様に、装置800の作動中の空気圧バルブ・アセンブリー808及びパウチ210間の関係を示す。空気圧バルブ・アセンブリー808には、ブラダーではなく、4つの空気圧ピストン842、852、853、及び862がある。当該空気圧ピストン842、852、853、及び862は、各々圧縮空気により駆動され、チャネル242、252、253、及び262に加圧する。ピストンの直径はかなり狭いため、ブラダー・サブアセンブリー817及びブラダー・サブアセンブリー818の間に適合して、チャネル242、252、253、及び262のためのピンチバルブを提供し、チャネル242、252、253、及び262をかなり短くしうる。しかし、望ましい場合、空気圧ピストン842、852、853、及び862をブラダーで置き換えてもよく、これらはブラダー・アセンブリー810に含まれて、空気圧バルブ・アセンブリー808を不要としてもよい。ブラダー及び空気圧ピストンの任意の組み合わせが本発明の範囲内であることが理解される。当該技術分野で公知のように、パウチ210のチャネル及びブリスターに対して加圧する他の方法が本発明の範囲内であることもまた理解される。
【0091】
図15は、図6のパウチ210と類似のパウチ510を示す。進入チャネル515a〜515lを含む装備590は、進入チャネル215a〜215lを含む装備290と類似である。各チャネル538、543、552、553、562、及び565を含むブリスター544、546、548、564、及び566は、パウチ210の各チャネル238、243、252、253、262、及び265を含むブリスター244、246、248、264、及び266と類似である。パウチ210のチャネル245、247、及び249は、パウチ510上のチャネル545a〜c、547a〜b、及び548a〜cとして幾分再設定されており;510の各チャネルは、パウチ210上の対応するチャネルよりわずかに短い。しかし、チャネル設定は単なる例示であり、そして多様なチャネル設定が本発明の範囲内であることが理解される。
【0092】
図15のパウチ510及び図6のパウチ210の間には2つの主な相違がある。第1に三葉ブリスター222が溶解ブリスター522に置き換わっている。溶解ブリスター522は、図2bに示すような、電気モーター19に取り付けられた回転ブレード又はパドル21を用いた固着(impaction)によるボルテックスのために設定されている。この溶解法は、空気圧ピストンの交互の圧に依存しないため、一葉のブリスターのみが示される。溶解ブリスター522は、単一の葉しかないため、両チャネル514及び536は、溶解ブリスター522の単一の葉につながる。溶解ブリスター522は、本明細書記載のパウチ態様のいずれでも用いてよいことが理解される。溶解アセンブリー810が、例として、ブラダー・サブアセンブリー822のブラダー824、826、及び828を、ブリスター522用に設定された単一のブラダーで置き換えるように修飾されてもよいことがさらに理解される。逆に、上記の多様な他の態様に記載される三葉ブリスターを、パウチ510中で用いてもよい。溶解ブリスター522は、例として溶解ブリスター522の外表面に、接着剤又はラミネート加工を用いて取り付けられた、所望の補強パッチ523と共に提供されてもよい。補強パッチ523は、パドル21による反復接触のためにパウチ510が裂けるのを最小限にするよう補助する。図15aは、第2の支持体メンバー804上に取り付けられた電気モーター、例としてMabuchi RC−280SA−2865 DCモーター(日本・千葉)を示す。1の例示的な態様では、モーターは、5,000〜25,000rpmで、他の例として10,000〜20,000rpmで、そしてさらに他の例として、およそ15,000〜18,000rpmで回転する。Mabuchiモーターに関しては、7.2Vが溶解に十分なrpmを提供することが見出された。しかし、ブレード21がパウチ510に衝撃を与えている場合は、実際の速度はそれよりも遅い場合もあることが理解される。用いるモーター及びパドルに応じて、溶解のために他の電圧及び速度を用いてもよい。場合によっては、制御された小体積の空気を、溶解ブリスター522に隣接するブラダー内で提供してもよい。いくつかの態様では、隣接するブラダーに1又はそれ以上の小体積の空気を部分的に充填すると、溶解プロセス中に溶解ブリスターを配置し、そして支持するのを補助することが見出されている。あるいは他の構造、例として剛性の又は適合したガスケット又は溶解ブリスター522周囲の他の残りの構造を用いて、溶解中にパウチ510を拘束してもよい。
【0093】
図15のパウチ510及び図6のパウチ210の間の第2の主な相違は、第2段階増幅ゾーン280のブリスター281、282、及び283が、第2段階増幅ゾーン580では、高密度アレイ581により置き換えられていることである。高密度アレイ581は、複数の第2段階ウェル582、例として50以上、そしてさらに他の例として120以上のウェルを含む。より多くの第2段階ウェル582、例として約200、約400、又はさらに約500以上のウェルを含む態様が本発明の範囲内である。他の設定もまた、本発明の範囲内である。ウェル582をより小さくすることによるか、高密度アレイ581をより大きくすることによるか、又はその組み合わせにより、別の第2段階ウェル582を付加してもよい。第2段階PCRに関しては、各ウェルがプライマー対を含有してもよい。1又はそれ以上のウェルを陽性又は陰性対照のために用いてもよいことが理解される。
【0094】
ブリスター566中の希釈された第1段階増幅産物をウェルに充填する際、ウェル間の交差混入が大きな問題となりうる。交差混入は、パウチ210においては、図9に例示される、チャネル265の別個のブランチを通じて各第2段階ブリスターを充填し、次いでブラダー882で密封して制御された。流体がブリスター584のいくつか又は全てを充填されていてもよい高密度アレイ581を用いると、ウェル間の交差混入もまた制御しなければならない。1の態様では、第2段階PCRプライマーを共有的に又は非共有的に、各ウェルの内部表面に結合させてPCRチップと類似に機能させてもよい。しかし、多くの態様では、PCRプライマーをウェルに束縛することなく、ウェル間の交差混入を制御することが望ましい。ウェル間の交差混入の制御は、高密度アレイ581の第1の表面581aに流動させることにより、ブリスター566からの流れをウェル582に移動させる態様では、困難な場合もある。
【0095】
第2段階増幅ゾーン580の装填を成功させるためのいくつかの望ましい特徴がある。第1に、ブリスター566からの流体が、実質的に同じレベルまで、実質的に全てのウェル582を充填することが望ましい。充填されていないウェルは偽陰性シグナルを生じるであろう。第2に、ウェル582を充填するプロセスは、ウェル中のプライマーの漏出を起こさないことが望ましい。1のウェルからのプライマーの喪失は、当該ウェルでのPCR反応の効率を限定する場合もあり、近接するウェルを汚染させうる。第3に、ウェル582が充填され、PCRが開始された後、ウェルが互いから完全に密封されることが望ましい。単位複製配列が1のウェルから漏出し、別のウェル内に進入すると、第1のウェル中のシグナルが低下し、第2のウェル中のシグナルが上昇し、潜在的に、第1のウェル中では偽陰性を、第2のウェル中では偽陽性を導きうる。さらに、特定の種類の対照に関しては、1のウェルで生成された単位複製配列が、さらに増幅されうる別のウェルに進入しないことが重要である。
【0096】
この問題に対する解決法には、バリア層の使用が含まれる。1の例では、バリア層は、ウェルを迅速に装填し、かつ、バルク流体から迅速に密封しうるために提供される、物理的バリアである。別の例では、化学的及び物理的バリアの組み合わせを用い、ウェルを密封するのに物理的バリアを用い、次いで、化学的バリアが、例えば加熱、遅延放出、又は酵素消化により、ウェル溶液内にオリゴヌクレオチドプライマーを条件的に放出する。ウェルからの試薬の放出を制御するのに、ウェルの深さ又は各ウェルへのチャネルの長さもまた用いうる。高密度アレイ581を装填するための他の手段を用いうる。
【0097】
図15〜17は、物理的バリアを用いた、第2段階580の例示的な態様である。パウチ510の第1の層518及び第2の層519の間に挟まれて、ウェル582を含む高密度アレイ581がある。図16に最適に見られるように、穿孔586を含む穿孔層585が高密度アレイ581の1の側面上に提供されて、物理的バリアとして作用し、第2の層587が、高密度アレイ581の反対の側面上に提供されて、ウェル582の底を形成する。例として、穿孔層585及び第2の層587は、高密度アレイ581に対して、例として熱密封により密封されるプラスチックフィルムであるが、密封の他の方法もまた用いてよいことが理解される。高密度アレイ581用に用いられる材料、並びに穿孔層585及び第2の層587用に用いられる材料は、互いに、密封法と、そして用いる化学反応と適合しなければならないこともまた理解される。PCR用に用いる場合、高密度アレイ581用に使用でき、かつ熱密封できる適合するプラスチックの例は、PE、PP、Monprene(登録商標)、及び他のブロックコポリマー・エラストマーである。検出化学反応で蛍光色素を用いる場合、高密度アレイ581に関しては、黒又は他の比較的蛍光不透過性である材料から形成されて、1のウェル582から隣のウェルへのシグナル流出を最小限にし、層585及び587の少なくとも1つに関しては、比較的蛍光透過性であることが望ましい場合もある。穿孔層585及び第2の層587に関しては、PE、PP及びDupont Surlyn(登録商標)等の熱密封プラスチック層を用いた、Mylar(登録商標)又はPET等の強いエンジニアリングプラスチックのラミネート加工を用いてよい。接着剤に基づく系に関しては、PET又はポリカーボネート等の剛性のエンジニアリングプラスチックを用いて、高密度アレイ581を形成してもよく、次いで、PCR適合性プラスチックのフィルムを穿孔層585及び第2の層587として用いる。1の例示的な態様では、高密度アレイ581は黒いPEで形成され、高密度アレイ581に熱密封される穿孔層585及び第2の層587には混成ポリエチレン/PETラミネート(又はXerox(登録商標)PN104702ホットラミネート加工パウチ材料)が用いられ、そしてパウチ510の第1及び第2の層518、519には混成ポリプロピレン/PETが用いられる。
【0098】
穿孔586はウェル582と並列することが理解される。穿孔586は十分に小さく、何らかの力なしには、流体が穿孔586を通じて容易には流動しないこともまた理解される。例示的な穿孔は、0.001〜0.1mm、他の例として0.005〜0.02mm、そして他の例として約0.01mmである。例示的な態様では、流体がブリスター566から受け入れられると、真空が穿孔586を通じて各ウェル582内に流体を引き入れるように、第2段階増幅ゾーン580は真空下で提供される。ウェル582が充填された時点で、流体をウェル582内に又はウェル582の外に移動させる力はもはや存在しない。次いで、第2段階増幅ゾーン580に隣接したブラダー(未提示であるが、ブラダー880/882の位置と類似)を活性化して、高密度アレイ581に対して第1の層518を押しつけて、そしてウェル582内に流体を密封してもよい。ウェル582を密封するのにパウチ510の第1の層518が用いられるが、穿孔層585及び第1の層510の間に所望による密封層が提供されてもよいことが理解される。
【0099】
1の例示的な態様では、第2段階増幅ゾーン580を以下のように調製してもよい。プラスチックシート(例として0.1〜1mm厚)中にウェル582のアレイをパンチするか、モールドするか、又は別の方式で形成することにより、高密度アレイ581を調製してもよい。ウェルは、所望の任意の規則正しい又は不規則なアレイを形成してもよく、そして例として0.05μl〜20μl、そして他の例として0.1μl〜4μlの体積を有してもよい。次いで、層585又は587の一方を高密度アレイ581の第1の表面581aに、例として熱又は接着剤によりラミネート加工する。図17に示すように、穿孔層585を第1の表面581aに適用する。次いで、試薬589、例としてPCRプライマー対等の固有のアレイの化学反応の要素をピペッティングにより手動で、又は自動的に(例としてピン・スポッター等のx/y位置決定可能スポッター、ドットマトリックス・プリンター、小体積自動的ピペッター、又は微量流体ミクロ接触スポッターを用いる)のいずれかで、ウェル内にスポッティングする。試薬589を各ウェル582中で乾燥させた後、層585又は587の第2のものをアレイ581の第2の表面581bに適用する。小直径針のアレイを用いて、層585を穿孔して、穿孔586を形成する。層585をアレイ581に固定する前又は後のいずれに穿孔586を形成してもよい。穿孔前又は後に層585、あるいは層587のいずれかに対してスポッティングを行ってもよいことが理解される。予め穿孔された穴があるアレイにスポッティングすると、実質的に漏出を示さず、穿孔に用いる針が、スポッティングされた試薬に触れることによる混入がないという利点が提供される。あるいは、漏出の可能性を最小限にし、スポッティングされた試薬をアレイ中の最も遠い位置に配置するため、試薬589を第2の層587上にスポッティングし、アレイ581を層585で密封し、そして次いで層585を穿孔することが望ましい場合もある。例示的な例では、GeSiMA060−324Nano−Plotter2.1/E(Grosserkmannsdorf、ドイツ)を用いて、試薬を第2の層587上にスポッティングする。当該スポッターを用いると、多数のアレイに同時にスポッティングできる。
【0100】
スポッティングし、そして穿孔した時点で、アレイ581をパウチ510の層518及び519内部に入れ、そして例として熱密封、接着剤の使用、超音波溶接、機械的閉鎖、又はブリスター584内のパウチ510内部にアレイ581を被包する他の手段のいずれかにより、適所に密封する。ブリスター584が、チャネル565を介して、ブリスター566に流動的に連結され、そして液体がチャネル565からブリスター584内に、そして穿孔586上に流動できることが理解される。1の例示的な例では、ブリスター584が形成された場合、空気が抜けられるよう留意する。これは、第2段階増幅ゾーン580に隣接する第1の層518の内部表面を「ワッフル処理」して、わずかに盛り上がった風合いのパターンでフィルム材料をインプリントすることにより達成できる。これにより、空気及び液体が、穿孔層585の表面に沿って通過でき、液体がウェル582の全てに到達してこれらを充填することができる。次いで、パウチ510を真空チャンバー内部に入れて排気する。例として、圧がおよそ0.3ミリバールに達したら、真空チャンバー内部の空気圧シリンダーが作動して、プランジャーを装備590内に駆動してチャネル567を密封し、それにより密封したパウチ内部のアレイ、及び真空チャンバーから経路を遮断する。複数の他のプランジャーもまた、装備590内に駆動されて、多様な進入チャネル515を密封する。真空チャンバーからパウチを取り除き、そして真空バッグ中での長期保存のためにパッケージングしてもよい。
【0101】
パウチ510は、パウチ210と同様の方式で用いてよい。アレイ581は真空中でパッケージングされるため、液体をブリスター566から第2段階増幅ゾーン580に移動させると、穿孔586を通じて液体試料が抜き取られてウェル582内に入る。空気圧ブラダーがアレイ上に膨張することにより過剰な液体が排除され、上記のように、例としてアレイの1の側面に対して押しつけられたペルチェ素子を加熱しそして冷却することにより、サーマルサイクリングが達成される。
【0102】
上記のように、穿孔層585を多様な適当な物理的又は化学的バリアにより置き換えてもよい。化学的バリアを用いる1の例示的な態様では、穿孔層585が省かれ、試薬589は、比較的緩慢に溶解する緩衝液中で、ウェル582内にスポッティングされる。例として、適当な濃度で、PEG、Ficoll又はポリソルベート20等のポリマー、あるいはスクロース、トレハロース又はマンニトール等の糖を含有する試薬589は第2段階PCR反応に適合し、単に水又はTris/EDTA中でスポッティングされたプライマーで緩慢に溶解できる。上記のように、当該緩衝液の1の中でスポッティングされたプライマーをウェル582内で風乾してもよい(当該態様では、第2の層587がスポッティング用の高密度アレイ581に固定されることが理解される)。酵素試薬(例えばPCRにおいて用いる酵素及び緩衝剤)の凍結乾燥において、当該同じポリマーを用いて、安定化された酵素を含有するオープンマトリックスを形成してもよい。したがって、当該緩衝液中でスポッティングされたプライマーをウェル582中の適所で凍結乾燥して、風乾よりもより遅いが、潜在的により完全な再水和を導いてもよい。パウチ510を用いる場合、ブリスター566由来の流体は、真空又は圧によりウェル内に駆動されて、そしてプライマーミックスを溶解させ始める。適当に緩慢に溶解する緩衝剤を選択することにより、第2段階増幅ゾーン580に隣接するブラダーが作動し、いかなる実質的な交差混入も生じる前に、各ウェル582の内容物が密封される。
【0103】
別の態様は、第2段階増幅ゾーン580を所定の温度より高温で加熱されるまで、溶解しないマトリックスを用いる。当該マトリックスの1の例は、GenePureLowMeltアガロース(ISCBioexpress)等の低融点アガロースである。1の例では、このアガロースの1.5%溶液は、65℃で融解し、24〜28℃でゲル化する。スポッティング前に、試薬589を、例として50℃に温めて、すでに融解している当該アガロースと混合し、次いで、小体積(例として100〜500nl)中で、ウェル582内にスポッティングしてもよい。スポッティング中に混合物を液体のまま維持するため、アガロースの融点より高温で加熱されたキャビネット中でこれを行う必要がありうる。あるいは、融解せずにアガロースの薄い溶液をピペッティングでありうる。アガロース/試薬混合物をスポッティングした後、高密度アレイ581を乾燥させる。これは単純な風乾であってもよいし、又はプライマー−アガロース混合物は、試薬が凍結乾燥できるように、上に列挙する糖及びポリマーを含有してもよい。パウチ510をPCRに用いる場合、ブリスター566由来の流体が高密度アレイ581内に移動する際、第2段階増幅ゾーン580を例として55℃に加熱してもよい。この温度ではアガロースは融解せず、プライマーは溶液内に放出されない。高密度アレイ581が充填された時点で、対応するブラダーが膨張してウェルを密封する。第1のPCR周期の第1の変性工程において、温度が65℃より上昇すると、プライマーを含有するアガロースが融解して、プライマーをマスターミックス内に放出する。例として、サーマルサイクリングは60℃(又はアガロースの他の融点)未満にはならないため、アガロースはサーマルサイクリング中にはゲル化しない。さらに、図8の例示的な装置800において、反復される温度周期処理は、パウチの1の側面上に位置するヒーター888により駆動される。ウェル582中のPCR溶液に、しばしば温度勾配があり、これが対流によるプライマーの混合を促進することが予期される。類似の態様では、ワックスもまた用いてよい。
【0104】
他の態様では、プライマーをウェル581に条件的に結合させてもよく、ウェル581が充填された後、続いて溶液内にプライマーが放出される。プライマーをどのようにプラスチック支持体に付着させるかに応じて、熱(例としてPCR反応の最初の周期中)、光(例としてウィンドウ847を通じた照射)、化学薬品(例えば熱を伴うジチオスレイトールは、プライマーをウェルに連結するのに用いうるジスルフィド結合を還元する)、又は酵素(例えば組織プラスミノーゲンアクチベーター等の部位特異的プロテアーゼを用いて、プライマーを支持体に付着させる適当なペプチドリンカーを切断できる)を用いて、プライマーを切断できる。
【0105】
さらに別の態様では、増幅の後に、第2段階増幅ゾーン580内にDNアーゼを注入して、混入のいかなる潜在的なリスクも最小限にしてもよい。
【0106】
本明細書にPCRで用いるための第2段階増幅ゾーン580が記載されていることが理解される。しかし、パウチ510及び第2段階増幅ゾーン580に関する他の使用も、本発明の範囲内である。さらに、第2段階増幅ゾーン580を、核酸抽出及び第1段階増幅ゾーンを伴い又は伴わずに用いてもよいことが理解される。最後に、第2段階増幅ゾーン580を、本明細書記載の任意のパウチ態様と共に用いてもよいことが理解される。
【実施例】
【0107】
実施例1:入れ子多重PCR
装置800に類似であるが、パウチ110用に設定された装置上、図5のパウチ110中で、反応セットを実行した。細胞溶解及び2段階核酸増幅の有効性を示すため、対数期のS.セレビシエ(S.cerevisaie)及びS.ポンベ(S.pombe)の生存培養物各50μlを、健康なドナー由来の100μlの鼻咽頭吸引物試料と混合して試料を形成し、次いで200μlの溶解緩衝液(6MグアニジンHCl、15%TritonX100、3M酢酸ナトリウム)と混合した。次いで、溶解緩衝液中の400μlの試料のうち300μlをパウチ110のチャンバー192a内に注入した。
【0108】
三葉ブリスター122中に密封された0.25gのZSビーズを含めてパウチ110を製造した。以下に記載の第2段階プライマーもまた、パウチ110の製造中にブリスター181及び182中にスポッティングした。パウチ110に以下のように装填した:
115a 上記の試料及び溶解緩衝液
115b 溶解緩衝液中の磁気ビーズ
115d〜e 洗浄緩衝液(10mMクエン酸ナトリウム)
115g 溶出緩衝液(10mM Tris、0.1mM EDTA)
115h 第1段階PCR緩衝液:
0.2mM dNTP
0.3μM 各プライマー:
Sc1:S.セレビシエのRNA及びMEX67pに結合するYRA1核タンパク質の一部を増幅するように設定されたプライマー。cDNA(M−MLVにより逆転写されたmRNA)の増幅が180bp単位複製配列を生じるよう、イントロンにわたり増幅するようにプライマーを設定する;
Sc2:S.セレビシエのMRK1グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK−3)相同体のcDNAの121bp領域を増幅するように設定されたプライマー;
Sc3:S.セレビシエのRUB1ユビキチン様タンパク質のcDNAの213bp領域を増幅するように設定されたプライマー;
Sp1:S.ポンベのsuc1−サイクリン依存性プロテインキナーゼ制御サブユニットのcDNAの200bp領域を増幅するように設定されたプライマー;
Sp2:S.ポンベのsec14細胞質因子ファミリーのcDNAの180bp領域を増幅するように設定されたプライマー;
3mM MgCl2を含むPCR緩衝液(BSA不含)
50単位 M−MLV
4.5単位 Taq:抗体
100単位 RNAseOut
115j〜k 第2段階PCR緩衝液
0.2mM dNTP
1XLC Green(登録商標)Plus(Idaho Technology)
2mM MgCl2を含むPCR緩衝液(BSAを含む)、
4.5単位 Taq
115l 第1段階単位複製配列の試料を含む第2段階PCR緩衝液。
【0109】
製造中、第2段階ブリスター181及び182に、入れ子の第2段階プライマーをスポッティングした。第2段階PCR緩衝液で再水和した時点で、約0.3μMの最終濃度を生じる量で、各ブリスターに1のプライマー対をスポッティングした。第2段階入れ子プライマーは以下の通りである:
Sc1:Sc1cDNA第1段階単位複製配列の80bp断片を増幅するように設定されたプライマー;
Sc2:Sc1cDNA第1段階単位複製配列の121bp断片を増幅するように設定されたプライマー;
Sc3:Sc1cDNA第1段階単位複製配列の93bp部分を増幅するように設定されたプライマー;
Sp1:Sc1cDNA第1段階単位複製配列の99bp部分を増幅するように設定されたプライマー;
Sp2:Sc1cDNA第1段階単位複製配列の96bp部分を増幅するように設定されたプライマー;
いかなる標的でも、第1段階及び第2段階プライマー対間には重複はなかった。各第2段階増幅が2つ組で実行され、各2つ組が陰性対照を含むように、各対のプライマーを陰性対照ブリスター181及び2つの第2段階ブリスター182内にスポッティングした。
【0110】
装填後、進入チャネル115aと関連するプランジャーの活性化は、試料を三葉ブリスター122に移動させ、進入チャネル115bと関連するプランジャーの活性化は、磁気ビーズをリザーバー101に移動させ、進入チャネル115d〜eと関連するプランジャーの活性化は、洗浄緩衝液をリザーバー102及び103に移動させ、進入チャネル115gと関連するプランジャーの活性化は、溶出緩衝液をリザーバー104に移動させ、進入チャネル115hと関連するプランジャーの活性化は、第1段階PCR緩衝液をリザーバー105に移動させ、進入チャネル115j〜kと関連するプランジャーの活性化は、第2段階PCR緩衝液をリザーバー106及び107に移動させ、進入チャネル115lと関連するプランジャーの活性化は、陽性対照(先に調製した第1段階単位複製配列の試料を含む第2段階PCR緩衝液)をリザーバー108に移動させた。本実施例では、装置内へのパウチ110の装填前に、進入チャネル115a及び115bに関連するプランジャーを押圧した。実行中、全ての他のプランジャーを装置中で連続して押圧し、必要に応じて、流体をリザーバー102〜108に移動させた。
【0111】
パウチ110を装置内に入れた時点で、上記のようにZSビーズの存在下で攪拌を10分間行った。細胞溶解が完了した時点で、リザーバー101を圧迫し、リザーバー101由来の核酸結合性磁気ビーズを三葉ブリスター122内に押し込み、ここでビーズを穏やかに混合し、5分間インキュベーションした。
【0112】
次いで、試料−ビーズ混合物をブリスター144に移動させ、磁石の活性化により磁気ビーズを捕捉した。磁石を配備した時点で、ブリスター144に隣接するブラダーに加圧して、流体を三葉ブリスター122に戻した。次いで、リザーバー102及び103由来の洗浄溶液を用いて、捕捉したビーズを上記のように洗浄した。洗浄後、磁石の活性化によりブリスター144中にビーズをもう一度捕捉し、リザーバー104に保存された溶出緩衝液をブリスター144に移動させ、ここで2分間インキュベーションした後、次いで、上記のように、ビーズから溶出した核酸をブリスター161に移動させた。
【0113】
ブリスター161中、核酸試料をリザーバー105由来の第1段階PCRマスターミックスと混合する。次いで、試料を40℃で10分間(この間、M−MLVがmRNAをcDNAに変換する)、次いで94℃で2分間(M−MLVを不活性化し、そしてtaqから抗体を除去するため)保持した。サーマルサイクリングは、次いで、94℃10秒間及び65℃20秒間の20周期である。
【0114】
第1段階増幅の後に、リザーバー106由来の第2段階PCRマスターミックスを用いて、試料をおよそ100倍希釈する。次いで、上記のように、第2段階プライマーを予めスポッティングしておいたブリスター182に試料を移動させる。第2段階PCR緩衝液をリザーバー181から陰性対照ブリスター181に移動させ、そして陽性対照混合物をリザーバー108からブリスター183に移動させた。試料を94℃で30秒間変性させ、次いで94℃5秒間及び69℃20秒間の45周期、増幅させた。
【0115】
図13に見られうるように、全ての標的単位複製配列及び陽性対照は増幅を示し、一方、陰性対照はいずれも増幅を示さなかった。各試料を複製して実行した。複製は各々、類似の増幅を示した(データ未提示)。
【0116】
S.セレビシエ及びS.ポンベ・標的は単なる例示であり、そして他の標的が本発明の範囲内であることが理解される。
【0117】
実施例2:高密度PCR
上記実施例は図5のパウチ110を用いる。パウチ110には、5つの陰性対照ブリスター181、5つの陽性対照ブリスター183、及び10の低体積試料ブリスター182がある。図6のパウチ210は、低体積試料ブリスター282の数を18に増加させた。しかし、図15に示すパウチ510の高密度アレイ581には、120以上の第2段階ウェル582があってもよい。第2段階反応数のこの増加は、パウチ及びその装置のサイズを増加させずに、広範なセットの潜在的な診断及びヒト同定に適用できる。多様な例を本明細書に記載する。
【0118】
1の例では、一般的な呼吸器ウイルスに関する標準的な商業的免疫蛍光アッセイは、アデノウイルス、PIV1、PIV2、PIV3、RSV、インフルエンザA、及びインフルエンザBの7のウイルスを検出できることが公知である。より完全な組には、例として、コロナウイルス、ヒト・メタニューモウイルス、BOCAウイルス、ライノウイルス及び非HRVエンテロウイルスの他の5つのウイルスに関するアッセイが含まれる。アデノウイルス又はHRV等の非常に可変性のウイルスに関しては、ウイルス系譜の枝全てを標的とする多数のプライマーを用いることが望ましい(例としてそれぞれ4つの外部及び4つの内部プライマーセット)。他のウイルス、例えばコロナウイルスに関しては、1の季節から他の季節で変化しない4つの別個の系譜(229E、NL63、OC43、HKU1)があるが、これらは、別個のプライマーセットを要するほど十分に分岐している。例示的な完全呼吸器ウイルス組はまた、SARSコロナウイルス、おそらく鳥インフルエンザHA及びNサブタイプ、並びにおそらく他のものも標的とするであろう。最後に、呼吸器ウイルスのいくつかは、非常に高い配列変動率を示すため、当該ウイルス各々に関して、1より多い入れ子PCRアッセイを生成して、それによりプライマー下での配列変動による偽陰性結果の機会を最小限にすることが有益であろう。本明細書に記載するプライマーセットの全てが含まれる場合、当該呼吸器ウイルス組には、第2段階増幅において、80以上の特異的単位複製配列がありうる。高密度アレイ581は、単一パウチ510中で当該組を容易に収容しうる。
【0119】
パウチ510の高密度アレイ581の第2の適用は、感染患者から単離された多剤耐性細菌の同一性及び抗生物質耐性スペクトルを決定することである。現在の方法は、生物を培養し、個々の薬剤耐性プロフィールを実験的に試験するために数日かかる。結果を受け入れるための間、医師はしばしば、広域スペクトル抗生物質を投与し、これにより多剤耐性細菌が増加する。抗生物質耐性の遺伝子決定要因(抗生物質耐性遺伝子自体)を検出するためのPCRプライマーが開発されている。しかし、当該遺伝子のいくつかには非常に多数の変異体があるため、耐性プロフィールを完全に決定するには、多数の単位複製配列が必要である。Hujerらは、アシネトバクター属(Acinetobacter)単離体に存在する耐性遺伝子を同定するための62のPCRアッセイ組を記載する。ここでも、高密度アレイ581は、単一パウチ中で当該組を容易に収容しうる。
【0120】
高密度アレイの有用性の第3の例は、例としてヒトの遺骸の法医学的同定及び実父確定試験のための、ヒト同定分野における。ヒト同定における市場の大部分では、短いタンデムリピート配列(STR)を分析する系が優位を占める。この分析は、一般的に、大きさにより、例えばキャピラリー電気泳動を用いて、リピートを分離しなければならなかった。この目的に用いられる特殊化された実験室装置は、一般的に野外携帯用ではなかった。同定試験のために一塩基多型(SNP)を用いることにますます関心が高まっているが、これはSNPを同定するために多くの技術セットがあり、これらのうちいくつかは野外使用に受け入れられるためである。Sanchezらは、集合的に、個体が偶然マッチする可能性を非常に低くする(少なくとも5.0x10−19の平均マッチ可能性)、52のよく性質決定されたSNPを公表している。実際、各遺伝子座を正確に型決定するには、各SNPに関して2つの単位複製配列を要しうる(例えばZhouらを参照されたい)。したがって、104の第2段階ウェル582を持つ1のパウチ510は、52のSNP遺伝子座の全てで完全に個体を型決定することができる。
【0121】
異なる診断適用由来のアッセイを1のパウチ内で組み合わせることにより得られる、コスト及びワークフロー上の利点があることが理解される。例えば、完全呼吸器ウイルス組を、細菌同定組と組み合わせてもよい。組み合わせるパウチのタイプがより少ないため、当該組み合わせは製造を単純化しうる。クリニック中でストックする必要がある特殊なタイプのパウチがより少ないため、これらはまた、エンドユーザーの作業を単純化しうるし、また、特定の臨床試料に対して、誤ったパウチを用いる機会が軽減する。いくつかの適用に関して、当該利点は、より多い数のプライマー対を有するパウチを製造するコスト増を相殺しうる。したがって、100以上の第2段階ウェル582を含む1のパウチ510を用いて、多数のアッセイ組を収容しうる。
【0122】
実施例3:プロセス制御
非常に多重化されたアッセイの制御は、特に、品質が試験あたりのコストと競合しなければならない臨床診断設定では問題が多い場合もある。単一の実行でアッセイできる診断標的の数が増加するため、パウチ510の高密度アレイ582では、潜在的に、この問題が高まる。多様な種類の制御を本明細書で記載する。
【0123】
例示的なプロセス制御には、試料をパウチ内に注入する前に、無傷の生物、例えばRNA標的を含有する生物を患者試料内に混合することが含まれる。当該標的は、無傷のRNAバクテリオファージ(MS2又はQβ)又は無傷の植物RNAウイルス(タバコモザイクウイルス)又は無傷の酵母中に存在するmRNAであってもよい。RNA標的に特異的な外部プライマーが第1段階PCR中に存在し、内部プライマーを含有するウェル582が高密度アレイ中に存在する。このウェル582中の増幅産物を検出すると、プロセスの全ての工程が正しく働いていることが確認される。正しい特異的産物が作製されたことを確認するために、第2段階後の増幅融解曲線もまた用いてよい。増幅曲線から決定される交差点(「Cp」)を用いて、試薬の完全性の定量的測定値を得ることもできる。例えば、Cpを、異なる時点での同じロットの実行由来の他のパウチのものと比較してもよい。無傷の生物を用いる一方、溶解に関して試験することが重要でないならば、精製又は単離核酸を用いてもよいことが理解される。他の状況では、分析のより後の工程のみを試験する制御を用いることが望ましい場合もある。例えば、同族(cognate)プライマーを伴う、高密度アレイ中のウェル内への天然又は合成核酸鋳型のスパイキングを用いて、第2段階PCR反応を試験してもよいし、そして第1段階PCR増幅混合物において適当なプライマーと共に第1段階PCR内に、及び第2段階増幅ゾーンのウェル582中に、核酸鋳型をスパイキングすると、第1及び第2段階PCR反応が共に試験されるであろう。
【0124】
上記プロセス制御は、標的単位複製配列に特異的なプライマーの完全性を試験しない。特異的プライマーの完全性を試験する陽性対照の一例は、核酸、例として合成RNAの混合物を用いるが、これは、安定性及び可変性をさらに制御できる場合があり、当該配列が、混合物が特定のパウチ中に存在する各プライマーの核酸を含有する、環境的混入によっては存在しえないためである。診断設定において、患者試料を試験するのに用いたパウチの実行終了時に、この陽性対照を用いてもよい。混合物を、例として患者試料に用いたものと同じロットから、パウチに注入し、そして全ての標的単位複製配列が陽性結果を提供することにより、成功を定義する。陰性対照を同じ方式で行ってもよく;患者試料を試験するのに用いたパウチの実行終了時に、水又は緩衝液をパウチ内に注入し、そして全ての標的単位複製配列が陰性結果を提供することにより、成功を定義してもよい。
【0125】
診断研究室において、個々のワークフロー及びプロトコルを用いて、上記制御パウチを実行する前に、患者試料パウチ実行の数を決定してもよい。いかに頻繁に又は頻繁でなく制御パウチを実行するかにかかわらず、当該制御は、系全体で時間及びコストがかさむ。このため、対照をパウチに内在させることが有用である。高密度アレイ581の構造により、陰性対照に対する以下の新規アプローチをとれる。この例では、核酸、例として合成単位複製配列を、高密度アレイ581のウェル582aの1つにスパイク処理する。この配列を増幅するプライマーをこのウェル582a内に、そしてアレイに渡って間隔を開けた2つの他のウェル582b及び582c内にスパイク処理する。例として、単位複製配列及びプライマーは人工的であり、用いるプライマーがいずれも、偶然、別の標的を増幅しないように設計される。
【0126】
きれいな混入されていないパウチ510を装置800中で実行する場合、合成標的を含有するウェル582aは単位複製配列を生じ、したがって陽性と判定されるであろう。対応するプライマーを含有する2つの他のウェル582a、582bは、試料中で何も増幅せず、したがって陰性と判定されるはずである。パウチ510をさらに、他の制御のために処理してもよい。例として、次いで、ヒーター888に対して高密度アレイを保持するブラダー880/882を減圧して、ウェル582の内容物を混合する。1の例示的な方法では、ウェル582の内容物を以下のように混合する:ヒーター888を用いて、高密度アレイの温度を緩衝液の沸点より上及び下に、短時間、周期処理する(例えば85℃10秒間、次いで105℃20秒間の3周期)。高密度アレイ581のウェル582で生じた蒸気の泡は、ウェル582の内容物を第2段階増幅ゾーンブリスター580内に押し出すはずである。場合によっては、ブラダーを用いて、液体をパウチ510の一方の末端から他方の末端に移動させることにより、第2段階増幅ゾーン580の内容物を、パウチ510の残りの内容物と混合してもよい。当該工程の目的は、特異的混入制御単位複製配列を、パウチ全体のいかなる特異的標的単位複製配列とも共に混合することである。
【0127】
パウチがこの様式で実行された後、使用者が誤ってパウチを開けてしまった場合、特異的標的単位複製配列及び混入制御単位複製配列が放出されるであろう。微量の当該核酸が後のパウチ実行に混入した場合、合成単位複製配列に特異的なプライマーしか含まないウェル582b、582cが陽性と判定されうるため、装置は、混入事象を検出できる。装置中のソフトウェアは使用者に警告し、実行の結果が疑わしいと注意喚起するであろう。
【0128】
混入を制御する別の方法は、実行終了時に、DNA分解化学薬品又は酵素を添加して、第1及び第2段階PCR反応のDNA産物の実質的に全てを破壊してもよい。例として、これは、第2段階アレイの内容物を局所沸点より高温で加熱し、増幅された試料をアレイ851のウェル582から抜き取って、加熱された液体を第1段階反応の希釈された内容物と混合し、DNA分解物質のアリコットを、例として進入チャネル515kを通じて、混合物を冷却しながら又は冷却せずに添加して、PCR反応中に産生されたDNAの実質的に全てが破壊されるまで、DNA分解反応をインキュベーションしうることにより、上記混入検出法と同様の方式で実行できる。当該技術分野に公知であるように、DNアーゼ、酸、又は酸化剤を用いてこれを達成してもよい。
【0129】
本明細書記載の混入制御はいずれも、独立に又は任意の組み合わせで用いてよいことが理解される。
【0130】
実施例4: iPCR
別の例では、本発明のパウチ及び装置をイムノPCR(iPCR)に用いてもよい。iPCRはELISAの抗体特異性とPCRの感度及び多重能を組み合わせる。iPCRは、診断及び毒素検出に適用されているが、おそらく、開放ELISA形式において、PCR鋳型混入問題が深刻であるため、iPCRの商業的適用が広く普及していない。本発明のパウチ形式は、封印された環境を提供するため、本発明のパウチは、iPCRによく適している場合もある。
【0131】
伝統的なELISA検出スキームを図11に示す(「ELISA」と示す)。1992年、Cantor及び同僚ら(本明細書に援用される、Sano,T.ら,Science,1992.258(5079):p.120−2)は、基本的ELISA技術の修飾を記載し(図11、捕捉抗体C−Abを含まず、「イムノPCRI」スキームに類似)、この中で、特異的シグナルを生じさせるために用いる酵素を、ストレプトアビジン−プロテインAキメラ等の、二重官能性結合部分Sを通じて、レポーター抗体Rに間接的に付着された固有のDNA断片と置き換えている。続いて、このDNA断片をPCRにより検出する。PCR検出は、対応するELISAアッセイを超えるイムノPCRアッセイ感度を劇的に高めることもでき、感度の改善は、一般的に102〜104倍であることが知られる。定量的リアルタイムPCR法の進歩により、イムノPCRの速度及び定量性が改善された。レポーター抗体(R−Ab)をDNA鋳型タグに直接カップリングする(図11、「イムノPCRII」スキーム)と、アッセイ感度が102〜103倍さらに高まり、異なる抗体各々を異なるオリゴヌクレオチドでタグ付けし、したがって、各抗原を固有の増幅産物と会合させる、多重イムノPCRアッセイを開発できる。
【0132】
当該利点は伝統的なELISAに勝るにもかかわらず、iPCRは、最初に報告されてから13年間、商業的製品に広く採用されていない。これは、部分的に、いかなる開放試験管PCR分析法にも内在性の、混入の危険のためである。先行技術のiPCRプロトコルは、ELISAアッセイに由来し、多くの洗浄工程を要し、作業領域に増幅物質の混入の可能性が高まる。ワークフロー混入による偽陽性の有意なリスクが、診断評価におけるiPCRの回避の一因となっている。
【0133】
均質(すなわち「閉鎖試験管」)PCRアッセイが開発されるまで、単位複製配列混入問題のため、ヒト遺伝子状態又は感染性疾患の診断において、PCR自体が広く普及して採用されるのが遅れていた。閉鎖試験管系でアッセイの読み取りできることにより、単位複製配列の広がりは大幅に抑えられた。同様に、閉鎖系形式が利用できるならば、iPCRはより広く採用されうる。本系において、必要な試薬が全て提供されるパウチ内に、試料が注入される。抗原捕捉、洗浄、レポーター−抗体結合、洗浄、及びそれに続くPCR検出の工程がパウチ内で完全に実行できる。例として、核酸はパウチを決して離れず、そしてパウチと共に廃棄される。
【0134】
本発明のパウチのいずれをiPCR用に適応させてもよい。例えば、図6のパウチ210を、例として以下のように適応させてもよい。チャンバー292a〜292lに以下の構成要素を充填する。例として未精製及び/又は未修飾抗原(例えば毒素)を含む試料を、注入ポート241aからチャンバー292aに注入する。磁気ビーズにコンジュゲート化された捕捉抗体(C−Ab)をチャンバー292b中で提供する。多数の標的を試験しようとする場合、多数の抗原に対する特異性を有する多数の捕捉抗体を用いてもよいことが理解される。所望による前洗浄緩衝液をチャンバー292c中で提供する。オリゴヌクレオチド・鋳型にコンジュゲート化されたレポーター抗体(R−Ab−DNA)を、チャンバー292d中で提供する。捕捉及びレポーター抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであってもよいことが理解される。多数の抗原を検出しようとする場合、捕捉及びレポーター抗体は、ポリクローナル抗体のみ、モノクローナル抗体のみ、又は1の抗原に特異的なポリクローナル及び別の抗原に特異的なモノクローナルの任意の組み合わせを含有してもよい。レポーター抗体がポリクローナルである場合、そのセット中の多様な抗体間の特異性が多様である場合であっても、特定の抗原に特異性を有する全てのレポーター抗体は、1の特異的配列を有するオリゴヌクレオチド・鋳型とカップリングされることが理解される。オリゴヌクレオチドは二本鎖又は一本鎖であってもよい。多数のR−Ab−DNAを提供して多数の抗原を検出してもよく、異なる抗体は各々、固有のオリゴヌクレオチドにコンジュゲート化されている。洗浄緩衝液をチャンバー292e〜292h中で提供する。上記第1段階PCRマスターミックスをチャンバー292i中で提供する。希釈緩衝液をチャンバー292j中で提供する。上記第2段階PCRマスターミックスをチャンバー292k中で提供する。上記のように、試薬をチャンバー292b〜292l中で乾燥して提供してもよいし、シール239を通じた水の注入により使用前に再水和してもよく、又は各個々のチャンバー292への注入により、各試薬を湿った状態で提供してもよい。当該組み合わせが意図される。
【0135】
試料及び試薬を装填した時点で、パウチ220を装置800内部に挿入する。次いで、プランジャー268aを押圧し、試料を三葉ブリスター222に移動させる。プランジャー268bもまた押圧し、磁気ビーズにコンジュゲート化された捕捉抗体(図11にCとして示す)もまた、三葉ブリスター222に移動させる。ブラダー828からの圧力を、ブラダー824、826から交互に加圧して、試料及びC−Abを混合する。混合が望ましいため、ブラダー824、826、828からの圧力は、溶解に関して上記で用いた圧力よりはかなり低くてもよい。例として、穏やかな混合が得られる。捕捉抗体が試料中の抗原Tに結合するのに十分な時間、例として約5分間、試料及びC−Abをインキュベーションしうる(C−Ab−T複合体を形成する)が、他のインキュベーション時間が望ましい場合もある。iPCRに関しては、装置800中に他のヒーターを含めて、インキュベーションを約37℃に維持することが望ましい場合もある。
【0136】
試料中に存在する抗原が、捕捉のために十分にインキュベーションされた時点で、試料をブリスター246に移動させ、磁石850を配備して、捕捉抗体をブリスター246中で捕捉する。次いで、試料の未結合部分を三葉ブリスター222に戻すが、当該ブリスターは廃棄物リザーバーとして機能する。本明細書記載の実施例では、捕捉抗体を拘束するのに磁気ビーズが用いられるが、固体支持体、おそらくブリスターの内部表面への捕捉抗体の架橋さえ含む、他の捕捉機構を用いてよいことが理解される。
【0137】
望ましい場合、チャンバー292c由来の前洗浄緩衝液を用いて、C−Ab−T複合体を洗浄してもよい。チャネル245を介して前洗浄緩衝液をブリスター244内に移動させ、磁石を引っ込め、C−Ab−T複合体を遊離させ、そしてブリスター244及び246間でビーズを穏やかに移動させる。次いで、磁石850の活性化により、ブリスター246中でビーズを再捕捉し、そして残りの流体を三葉ブリスター222に移動させる。この前洗浄は、バックグラウンド陰性シグナルを超える陽性シグナルの区別を改善することもできるが、当該相違は、有意でないと証明される場合もあると予期される。望ましい場合、他の前洗浄を実行してもよい。
【0138】
プランジャー268dを押圧し、オリゴヌクレオチド・鋳型にコンジュゲート化された1又はそれ以上のリポーター抗体R−Ab(R−Ab−DNA、図11のイムノPCRIIスキームに核酸が付着したRとして示される)を含有する混合物をブリスター246に移動させる。磁石を引っ込め、ブリスター244及び246間で移動させて混合物を穏やかに混合する。例として約5分であるが他のインキュベーション時間が望ましい場合もあるインキュベーションにより、図11のイムノPCRIIに例示されるような三元複合体C−Ab−T−R−Ab−DNAが形成されうる。磁石850の活性化により、ブリスター246中に三元複合体が捕捉され、残りの流体は、三葉ブリスター222に移動する。
【0139】
プランジャー268eを押圧し、そして洗浄緩衝液をチャンバー292eからブリスター246に移動させる。上記前洗浄におけるように磁気ビーズ−三元複合体を洗浄し、磁気ビーズ−三元複合体をブリスター246中で再捕捉し、残りの流体を三葉ブリスター222に移動させる。ブリスター244又はチャネル243中に存在しうる未結合R−Ab−DNA複合体を再導入することを回避するため、混合がブリスター246及び248の間であることを除いて、チャンバー292f、292g、及び292h由来の洗浄緩衝液を用いて、洗浄を複数回反復する。この例示的な態様では、4回の洗浄が記載されるが、例として装備290中のチャンバーの数を改変し、又はチャンバーの体積を増加させ、各洗浄に関してチャンバー中の洗浄緩衝液の一部のみしか用いずに、任意の数の洗浄を用いてもよいことが理解される。全ての未結合R−Ab−DNA複合体全てを除去することは、多数回の洗浄を用いてさえ、非常に困難であることもまた理解される。さらに、試料中に存在しない抗原では、その抗原に特異的な未結合R−Ab−DNA又は非特異的に結合したR−Ab−DNA複合体がわずか数分子存在しても、増幅シグナルを生じうる。したがって、洗浄工程の理想的なゴールは、試料中に存在しない抗原に特異的な全てのR−Ab−DNA複合体を除去することであるが、1の例示的なゴールは、そのオリゴヌクレオチドに関する増幅曲線が遅延され、陽性試料の増幅曲線とは区別できるように、当該R−Ab−DNA複合体の十分な数を除去することである。例として、洗浄を多くすれば、より多くの未結合R−Ab−DNAが除去され、検出限界がより低下するはずであるが、洗浄がより多ければ、磁石により捕捉されていない磁気ビーズの解離又は喪失を通じて、望ましい三元複合体を喪失するリスクがある。洗浄が完了した後、望ましい場合、PCR前に、捕捉された三元複合体を加熱するか、又は酵素的に処理して(例として他のチャンバーを介して提供される、パパイン、プロテイナーゼK、又は他の適当な酵素を用いて)、DNAを遊離させる。当該処理は、第1段階PCR効率を改善しうる。本明細書で記載するiPCR例のいずれと共に、当該処理を用いてもよいことが理解される。
【0140】
洗浄が完了した時点で、プランジャー268iを押圧し、上記のように、第1段階PCRマスターミックスをブリスター246に移動させる。第1段階PCRマスターミックスは、全ての望ましい標的に関するプライマー対を含有する。磁石850を解除し、ブリスター246及び248間の所望による混合を用いて、三元複合体を再懸濁する。混合物をブリスター264に移動させ、上記のように第1段階サーマルサイクリングを行う。上記のように、複合体化オリゴヌクレオチドが十分なレベルまで増幅された時点で、チャンバー292j中で提供される希釈緩衝液を用いて、増幅された混合物を場合によって希釈する。第1段階増幅混合物のある程度又は全てを、チャンバー292kから提供される第2段階PCRマスターミックスと混合してもよく、次いで、この混合物を18の第2段階ブリスター282に移動させ、上記のように、第2段階プライマーを提供する。望ましい場合、第2段階ブリスター282の1つを陰性対照に用いてもよく、ここで陰性対照第2段階ブリスター282には、試料中に抗原がまったく存在しないが、R−Ab−DNAがチャンバー292dから提供され、そして適当なプライマーが提供されることが知られる。多様な洗浄にもかかわらず、少量のこの特定のR−Ab−DNAが第1段階PCR中に存在する可能性もあり、したがって、少量の第1段階増幅産物がこの第2段階ブリスター282に提供されうると予期される。しかし、量は非常に少なく、そして交差点は陽性試料のものをはるかに超えて遅延するはずである。また、望ましい場合、第2段階ブリスターの1つを陽性対照に用いてもよく、ここで、試料には、そうでなければ試験されない(おそらくC−Abビーズと共に含まれる)抗原がスパイク処理され、これはおそらく、対応するR−Ab−DNAに結合し、そしてこれが次いで、第1段階PCR中で増幅される。最後に、対照ブリスター283はこの例示的態様では用いられない。しかし、重要でない再設定を用いて、ブリスター283をブリスター266に連結してもよく、ブリスター283が6つの他の第2段階反応を提供してもよい。あるいは、特定の適用により望ましいように、ブリスター283を他の対照のために用いてもよい。
【0141】
上記のように、全ての未結合又は非特異的結合R−Ab−DNA複合体を除去することは困難であるため、陰性試料さえもある程度の増幅を示しうる。リアルタイム増幅分析は、閾値交差点の周期数(又は増幅の50%に到達する際の周期数等の、同等の周期閾値測定値)の相違により、陽性が陰性から区別されうると予期される。
【0142】
多数の抗原に関して試験する場合であってさえ、第1段階多重増幅は、iPCRでの検出に必要でない場合もあることが理解される。しかし、第1段階多重増幅により、感度はより高くなる。
【0143】
実施例5:iPCR特異的パウチを伴うiPCR
上記実施例は、iPCRのために図6のパウチ210を適応させる方法を例示する。しかし、図12は、iPCR用に例として設定されたパウチ310を示す。装備390には、15のチャンバー392及びプランジャー368がある以外、装備190及び290に類似である。各チャンバー392(例として試料を注入するチャンバー392a)には、それ自体の注入ポートがあってもよく、又はいくつかのチャンバーに連結チャネルがあってもよく、注入ポートを共有してもよい(例として各々洗浄緩衝液を含有する392e〜392k)。上記装備と同様、注入ポート及びチャネルの任意の組み合わせが本発明の範囲内である。パウチ310は1の主な点で図6のパウチ210と異なる。細胞溶解は、通常、iPCRには必要でないため、三葉ブリスター222は、単一の巨大廃棄物リザーバー322により置き換えできる。iPCRには多数の洗浄が望ましいため、廃棄物リザーバー322は、適用及び反応体積に応じて、多数の使用済み緩衝液を保持する程度に十分な体積、例えば2〜5mlで提供される。装置800は、パウチ390を収容するため、幾分再設定しなければならないことが理解される。
【0144】
装置内に挿入する前に、図12のパウチ390は、例として、チャンバー392中に以下の構成要素があるであろう。試験する試料をチャンバー392a内に注入する。磁気ビーズにコンジュゲート化された捕捉抗体(C−Ab)をチャンバー392b中で提供する。場合によって前洗浄緩衝剤をチャンバー392c中で提供する。各オリゴヌクレオチド・鋳型にコンジュゲート化されたレポーター抗体(R−Ab−DNA)をチャンバー392d中で提供する。上記のように、異なる抗体各々が固有のオリゴヌクレオチドにコンジュゲート化されている、多数のR−Ab−DNAを提供して多数の抗原を検出する。洗浄緩衝液をチャンバー392e〜392k中で提供する。第1段階PCRマスターミックスをチャンバー392l中で提供する。希釈緩衝液をチャンバー392m及び392n中で提供する。第2段階PCRマスターミックスをチャンバー392o中で提供する。
【0145】
最初に、プランジャー368a及び368bを押圧し、チャネル343を通じて試料及び捕捉抗体C−Abをブリスター344内に入れる。例としてチャネル345を介してブリスター344及び346の間を移動させて、試料及びC−Abを穏やかに混合し、上記のようにインキュベーションする。C−Ab−T複合体を形成する程度の時間が経過した後、チャネル338を介して混合物をブリスター346に移動させ、ここで装置中に収納された磁石350を配備し、複合体化されたビーズを捕捉する。残った流体は、チャネル339を介して、廃棄物リザーバー322に移動する。場合によって、チャネル345を介してチャンバー392c由来の前洗浄緩衝液をブリスター346に移動させ、磁石350を引っ込め、ブリスター344及び346の間で流体を移動させて、磁気ビーズを穏やかに洗浄する。磁石350を再び配備し、ビーズを再びブリスター346中に捕捉する。
【0146】
次にプランジャー368dを押圧し、核酸鋳型にコンジュゲート化されたレポーター抗体(R−Ab−DNA)をブリスター346に移動させ、磁石350を引っ込め、例としてチャネル345を介してブリスター344及び346間を移動させて、C−Ab−T及びR−Ab−DNAを穏やかに混合し、上記のようにインキュベーションする。三元複合体(C−Ab−T−R−Ab−DNA)を形成後、磁石350を再び配備し、三元複合体をブリスター346中に捕捉し、残った流体を廃棄物ブリスター322に移動させる。
【0147】
次いで、前洗浄は上記のように、チャンバー392e由来の洗浄緩衝液を用いて、三元複合体を洗浄する。磁石350を再び配備し、三元複合体をブリスター346中で捕捉し、残った流体を廃棄物ブリスター322に移動させる。チャンバー392f〜392k由来の洗浄緩衝液を用いて、洗浄を多様な回数反復する。こうして、図12の例示的な態様では、7回の洗浄を完了する。しかし、上記のように、特定の適用に応じて、洗浄がより多いか又は少ない場合が望ましい場合もありうる。
【0148】
図11に示すイムノPCRIIスキームに例示するように、レポーター抗体を核酸鋳型に直接コンジュゲート化する。本明細書に論じる態様のいずれでも、直接及び間接共有及び非共有結合を含む、任意の多様な方法により、リポーター抗体を核酸鋳型に付着させてもよいことが理解される。また、図11のイムノPCRIスキームに例示するように、例えば二次抗体の使用を通じるものを含めて、多様な機構を通じて、レポーター抗体を核酸に付着させてもよい。二次抗体又は他の間接的カップリング機構を用いる場合、他のポート及び他の洗浄工程を付加することが望ましい場合もある。
【0149】
次いで、上記のように、プランジャー368kの活性化により、第1段階PCRマスターミックスをブリスター346に配備し、磁石350をもう一度引っ込める。穏やかな混合が望ましい場合、チャネル347を介して、ブリスター346及び364の間で流体を移動させてもよい。先のようにブリスター346及び344の間で混合を行ってもよいが、例示的な態様では、ブリスター346及び364の間で混合を行う。これは、ブリスター344中に存在しうる未結合レポーター抗体複合体の再導入を低下させる一助となる。次いで、試料をブリスター364に移動させる。364上に位置するブラダーを穏やかに加圧して、ブリスター364がペルチェ素子等の加熱/冷却デバイスと接触するように移動させ、第1段階PCRに関して上記のように試料をサーマルサイクリングする。上記実施例では、上記のように第1段階PCRは現在記載されるiPCRでは不要でありえ、ブリスター364及びその関連ヒーターを省いてもよく、全ての洗浄を、例として、ブリスター344及び346間で混合して行ってもよい。第1段階PCRを省く場合、以下に記載の希釈もまた、省いてもよい。
【0150】
増幅された試料の大部分が廃棄物ブリスター322に移動し、ある程度の増幅された試料が、希釈されるためにブリスター364中に残る。ブリスター322のサイズを空間が制約するか又は他の懸念が制限される場合、残りの廃棄物を含有するのに、ブリスター344及び346を用いてもよいことが理解される。ブリスター366に移動していた少量の残りの増幅試料を、チャネル349を経由したチャンバー392m由来の希釈緩衝液と混合する。チャネル355を介して、試料及び希釈緩衝液を、ブリスター364及び366間で穏やかに混合してもよい。他の希釈が望ましい場合、チャンバー392n由来の希釈緩衝液を用いて希釈を反復してもよい。最後に、希釈試料のある程度を、廃棄物リザーバー322に移動させ、残った希釈試料をチャンバー392o由来の第2段階PCRマスターミックスと混合する。混合後、試料を多様な低体積第2段階ブリスター382に移動させ、ここで上記のように第2段階プライマーを提供する。この設定において、先のiPCR例では上記のように、ブリスター383を陰性対照用に用いてもよく、そしてブリスター384を陽性対照用に用いてもよい。先のiPCR例では上記のように、第2段階PCR及び分析を行う。
【0151】
実施例6 PCR及びiPCRの組み合わせ
ある状況では、1の反応セットで、抗原及び核酸を試験することが望ましい場合もある。例えば、テロリストの攻撃は、多数の人々を殺すために多様な因子を使用しうる。攻撃に応戦する際、原因因子がウイルス、細菌、又は他の生物であるのか、あるいは原因因子が毒素であるのか不明な場合もある。本発明のパウチの閉鎖環境系は、当該使用によく適している。本明細書に開示する態様では、PCR及びiPCRの両方を単一のパウチ内で行い、多様な生物学的及び抗原性因子を同時検出しうる。
【0152】
図13は、図6のパウチ210に類似のパウチ410を示す。例示的なパウチ410には、パウチ210の全てのブリスターがあるが、ブリスター430、431、432、及び433もまた含む。パウチ410にはまた、20の対応するプランジャー468と共に、20のチャンバー492がある、より大きい装備490もある。上記のように、装備には、各チャンバーに関して別個の注入ポートが含まれてもよく、又は多様なチャンバーには連結チャネルがあってもよい。多様な組み合わせが本発明の範囲内である。パウチ410の装置は、ブリスター430、431、432、及び433、並びにチャネル436、457、473、486、487、及び488に他の空気圧アクチュエーターが、並びにブリスター433及び431にそれぞれ隣接する他の引き込み式磁石451及び454が必要であることを除いて、装置800と類似である。
【0153】
例示的な態様では、チャンバーを以下のように装填する。iPCR洗浄緩衝液をチャンバー492a〜492e及び492j中で提供する。試験しようとする試料をチャンバー492f内に注入する。磁気ビーズにコンジュゲート化された捕捉抗体(C−Ab)をチャンバー492g中で提供する。場合による前洗浄緩衝液をチャンバー492h中で提供する。各オリゴヌクレオチド・鋳型にコンジュゲート化されたレポーター抗体(R−Ab−DNA)をチャンバー492i中で提供する。細胞溶解緩衝液をチャンバー492k中で提供する。核酸結合性磁気ビーズをチャンバー492l中で提供する。核酸洗浄緩衝液をチャンバー492m及び492n中で提供する。核酸溶出緩衝液をチャンバー492o中で提供する。第1段階PCRマスターミックスをチャンバー492p中で提供する。希釈緩衝液をチャンバー492q及び492r中で提供する。第2段階PCRマスターミックスをチャンバー492s中で提供する。図6に関して上に記載の対照をチャンバー492t中で提供する。この配置は例であり、そして他の設定ができることが理解される。また、上記の他の実施例同様、当該構成要素の1又はそれ以上を、パウチ410の1又はそれ以上のブリスター中で乾燥させて提供してもよい。
【0154】
試料をチャンバー492f内に装填し、そしてパウチ410を装置内に装填した時点で、プランジャー468f及び468gを押圧し、チャネル436を通じて試料及びC−Abをブリスター430に移動させる。ブリスター430及び431の間で穏やかに移動させて試料及び捕捉抗体を混合し、次いで、上記のようにインキュベーションして、C−Ab−T複合体の形成を促進する。試料をブリスター431に移動させ、そして磁石454を活性化し、C−Ab−T複合体を捕捉する。こうして、毒素又は他の標的化された抗原が、ここでブリスター431中に捕捉される。例示的な態様では、捕捉抗体とカップリングした磁気ビーズの磁気ビーズ部分の表面は、核酸結合性磁気ビーズの表面とは異なり、そして捕捉抗体にカップリングした磁気ビーズは、例として、核酸に結合しないように設定される。次いで、チャネル473を介して、残りの流体を三葉ブリスター422に移動させる。次いで、流体をプロセシングし、標的核酸の存在をアッセイしてもよい。試料のこの分割は、標的とされる抗原がPCR検出で標的とされる生物の表面抗原である場合、問題がある場合もある。当該状況においては、その生物に関する抗原検出及び核酸検出間で選択するか、又はPCR及びiPCRに関して別個のパウチを用いることが望ましい場合もある。あるいは、抗体捕捉前に、試料を溶解してもよい。例えば抗原の立体構造を変化させることにより、溶解が抗体捕捉に干渉するならば、試料を分割し、そして試料の部分のみを抗体捕捉前に溶解してもよい。C−Ab−Tの前洗浄が望ましい場合、プランジャー468hを活性化して、チャンバー492h由来の前洗浄緩衝液をブリスター431内に移動させる。磁石454を引っ込め、流体をブリスター430及び431間で混合し、磁石454をもう一度配備し、C−Ab−T複合体をブリスター431中で捕捉する。ここで、捕捉後に残されていた細胞をおそらく含有する洗浄緩衝液を、残りの未捕捉物質と共に、三葉ブリスター422に移動させる。
【0155】
試料がここで、別個のプロセシングのため、2つの部分に分割されることが理解される。試料中に存在する抗原は、ここで、ブリスター431中のC−Ab−T複合体中に捕捉される一方、試料中に存在する細胞、ウイルス、及び未結合核酸は、ここで、三葉ブリスター422中にあり、溶解される。両方が第1段階PCRのための準備ができるまで、試料の2つの部分を別個にプロセシングする。当該プロセスは任意の順序で又は同時に行ってもよい。しかし、本態様では、次いで三葉ブリスターが廃棄物リザーバーとして機能できるように、C−Ab−T複合体の実質的なプロセシング前に、細胞溶解が行われなければならない。別個の廃棄物リザーバーを用いる場合、望ましいならば、C−Ab−T複合体がプロセシングされた後に、細胞溶解を遅延させてもよい。
【0156】
チャネル436を介して、チャンバー492k由来の溶解緩衝液を三葉ブリスター422内に移動させる。三葉ブリスター422のブリスターに隣接するブラダーを、図6に関して上記のように加圧し、高速衝突を駆動し、試料を剪断し、核酸を遊離させる。細胞が適当に溶解された時点で、プランジャー468lを活性化し、チャネル436を介して、チャンバー492l中に保存された核酸結合性磁気ビーズを三葉ブリスター220内に注入する。試料を磁気ビーズと混合し、混合物がインキュベーションされうる。次いで、図6のパウチに関して上記のように、プロセシングを続ける。試料及びビーズの混合物を、チャネル438を通じてブリスター444内に押し込み、次いで、チャネル443を通じて、ブリスター446内に押し込み、ここで引き込み式磁石450が溶液から磁気ビーズを捕捉する。次いで、未捕捉の液体をブリスター446から押し出し、ブリスター444を通じて、ブリスター422内に戻し、これはここで、廃棄物貯蔵所として用いられる。プランジャー468mを活性化して、チャネル445を介してブリスター444に、次いで、チャネル447を介してブリスター446に洗浄溶液を提供してもよい。磁石450を引っ込め、ブリスター444及び446で、ビーズを往復して移動させて、磁気ビーズを洗浄する。磁気ビーズが洗浄された時点で、磁石450の活性化により、ブリスター446中で磁気ビーズを再捕捉し、次いで、洗浄溶液をブリスター422に移動させる。チャンバー492n中の洗浄試薬を用いて、このプロセスを反復してもよい。しかし、洗浄がより多くても少なくても本発明の範囲内であることが理解される。洗浄後、チャネル447を介して、チャンバー492o中に保存された溶出緩衝液をブリスター448に移動させ、磁石450を引っ込める。チャネル452を介して、ブリスター446及び448間で溶液を循環させ、ブリスター446中の磁気ビーズのペレットを破壊し、捕捉された核酸を溶液に入れうる。磁石450をもう一度活性化し、ブリスター246中で磁気ビーズを捕捉し、溶出された核酸溶液をブリスター448内に移動させる。
【0157】
ブリスター431に戻って、C−Ab−T複合体をそこで捕捉する。プランジャー468iを押圧し、核酸鋳型にコンジュゲート化されたレポーター抗体(R−Ab−DNA)をブリスター430に導入し、磁石454を引っ込め、例として、チャネル457を介してブリスター430及び431間を移動させて、C−Ab−T及びR−Ab−DNAを穏やかに混合し、上記のようにインキュベーションする。三元複合体(C−Ab−T−R−Ab−DNA)が形成された後、磁石454をもう一度配備し、ブリスター431中で三元複合体を捕捉して、残った流体をブリスター422に移動させ、このブリスターはここで、廃棄物リザーバーとして用いられる。
【0158】
次いで、前洗浄に関して上記のように、チャンバー492j由来の洗浄緩衝液を用いて、三元複合体を洗浄する。磁石454を再び配備し、ブリスター446中で三元複合体を捕捉して、残った流体をブリスター422に移動させる。チャネル486を介して、チャンバー492a由来の他の洗浄緩衝液をブリスター432内に注入し、磁石454を引っ込め、ブリスター431及び432の流体を混合して三元複合体を再懸濁する。次いで、チャネル487を介して、流体をブリスター433に移動させ、磁石451の活性化により三元複合体をそこに捕捉する。次いで、ブリスター433及び432を通じて、廃棄物流体をブリスター422に戻す。チャンバー492bからブリスター432内に他の洗浄緩衝液を導入し、ブリスター432及び433間で混合することにより、洗浄を反復する。チャンバー492c〜492e由来の洗浄緩衝液を用いて、洗浄を多様な回数反復する。したがって、図13の例示的な態様では、6回の洗浄が完了する。しかし、上記のように、特定の適用に応じて、洗浄がより多いか少ない方が望ましい場合もある。ブリスター432及び433を用いて、先の洗浄由来の混入を最小限にすることが理解される。望ましい場合、ブリスター432及び433を省いてもよく、そしてブリスター430及び431間で混合しながら、チャンバー492a〜492e中に含有される洗浄緩衝液をブリスター430又は431のいずれかに直接提供してもよい。
【0159】
ここで、洗浄した抗体三元複合体をブリスター433中に捕捉し、ここで、溶出した核酸はブリスター448中にある。PCRを通じて、独立した反応で、第2段階PCRブリスターの別個のセットへと、抗体三元複合体及び溶出した核酸をプロセシングしてもよい。しかし、本態様では、抗体三元複合体及び溶出された核酸をPCR分析用に合わせる。全ての第1段階プライマーを含有する第1段階PCRマスターミックスを、チャンバー492pからブリスター448内に注入する。次いで、チャネル453を介して、核酸試料をブリスター448及び464間で混合する。iPCR成分のために第1段階PCRが望ましい場合、次いで、核酸試料をブリスター433に移動させ、磁石451を引っ込め、再度合わせた試料を例としてブリスター433及び464間で混合する。次いで、試料をブリスター464に移動させ、ここで上記のように試料をサーマルサイクリングする。次に、チャンバー492q及び492r由来の希釈緩衝液を用いて、増幅された試料を1回又は数回希釈してもよい。各希釈前に、チャネル447又はチャネル488のいずれかを介して、増幅された試料の大部分をブリスター464から除去する。希釈緩衝液の各添加時、チャネル462を介して、ブリスター464及び466間で試料を混合する。希釈後、上記例に記載のように、試料の全て又は一部をチャンバー492s由来の第2段階PCRマスターミックスと混合する。
【0160】
次いで、チャネル465を介して、試料をブリスター466から第2段階増幅ゾーン480中のブリスター482に移動させる。ブリスター482は各々、プライマー対を含んで先に提供されており、いくつかのプライマー対は標的核酸に特異的だが、他のプライマー対は、レポーター抗体にコンジュゲート化されたオリゴヌクレオチドに特異的である。望ましい場合、上記のように、2つのブリスター482をiPCR対照に充ててもよい。図6のブリスター283に関して上記のように、PCR対照用にブリスター483を用いてもよい。18のブリスター482が示されるが、任意の数のブリスター482を用いてよいことが理解される。図6に関して上記のように第2段階PCR増幅が進行する。上記のように、PCR分析は、増幅曲線、融解曲線又はその組み合わせを用いてもよく、一方、iPCR分析は、交差閾値を用いてもよいことが理解される。他の分析法が本発明の範囲内である。
参考文献
【0161】
【表2】
【0162】
【表3】
【0163】
【表4】
【0164】
【表5】
【0165】
本明細書でPCR及びiPCRに言及するが、本明細書に開示するデバイス及び方法は、当該技術分野で公知のように、他の核酸増幅又は他の生物学的プロセシング法、特に第1段階多重反応及び第2段階の個々の反応から利益を得る方法で用いるのに適する。例示的な限定されない第2段階反応には、アレル特異的プライマー伸張を含むプライマー伸張;1又はそれ以上のジデオキシヌクレオチドの取り込みによる終結を含む、伸長終結;蛍光又は非蛍光標識の取り込み;並びに非対称PCR、アレル特異的PCR、インベーダーアッセイ、及び他の等温増幅又は検出化学反応等の、反応混合物における成分又は成分比の変化を必要とする他の酵素反応が含まれる。
【0166】
本発明は、好ましい態様に関して詳細に記載されているが、以下の請求項に記載し、そして定義するような、本発明の範囲及び精神内の改変及び修飾が存在する。
【技術分野】
【0001】
政府の所有権
本発明は、米国国立衛生研究所により付与された助成金番号U01AI061611号及びR43AI063695号で、政府の援助を得て行われた。政府は本発明において、特定の権利がある。
【背景技術】
【0002】
米国、カナダ、及び西欧では、感染性疾患はヒト死亡率のおよそ7%を占める一方、発展途上地域では、感染性疾患はヒト死亡率の40%以上を占める。感染性疾患は、多様な臨床的徴候を招く。一般的な明白な徴候には、熱、肺炎、髄膜炎、下痢、及び血液含有下痢がある。身体的徴候により、何らかの病原体が示唆され、そして他のものが病原因子としては排除される一方、多様な潜在的原因因子が残り、そして明白に診断するには、しばしば、多様なアッセイを行わなければならない。病原体を診断するための伝統的な微生物学技術は、数日又は数週間かかる場合もあり、適当な治療過程が遅れる場合がある。
【0003】
近年、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が感染性因子の迅速な診断のために選択される方法となっている。PCRは、感染性疾患を診断する、迅速、高感度、かつ特異的なツールでありうる。診断の主な手段としてPCRを用いる際、多様な原因生物が存在する可能性があり、かつ病理標本のいくつかは、存在する生物が低レベルである点で困難である。大部分が陰性であると予想される場合に、各々の可能性のある原因生物に関して1つずつ、大規模な一連のPCRアッセイを実行するのは非現実的な場合がある。病原体核酸が低濃度であり、かつ適当な反応鋳型を収集するために多量の試料が必要な場合、問題は悪化する。可能性のある原因因子全てについてアッセイするのが不適当な試料がある場合がある。解決法は、単一の反応で、多数の標的について同時に試料をアッセイする「多重PCR」を行うことである。多重PCRはいくつかの系では価値があることが証明されているが、高レベル多重反応の安定性に欠き、かつ多数の産物の明確な分析が困難である。当該問題を解決するため、その後、アッセイを多数の二次PCRに分割してもよい。初代産物内で二次反応を入れ子にする(nesting)と安定性が高まる。しかし、この他の処理は高価である場合もあり、かつ、混入又は他の問題が生じうる。
【0004】
同様に、イムノPCR(「iPCR」)は、非常に多様な抗原の高感度検出のための潜在能力がある。しかし、iPCRには伝統的ELISA技術が適用されており、iPCRは、PCRに基づく検出法を用いる場合に問題となる混入の問題がおこる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生物学的分析において、混入の多様な問題に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、生物を含む多数の生物学的物質に関して同時にアッセイする迅速高感度アッセイを提供する。内蔵系は、内蔵形式の安価な使い捨てプラスチックパウチを例示的に使用し、例として混入を最小限にして、そして頑強な増幅を提供しつつ、入れ子PCR及び他の手段が生物分子を同定するのを可能にする。
【0007】
したがって、本発明の1の側面では、閉鎖系において、試料に対して2段階増幅を実行するための容器を提供し、該容器は、試料の第1段階増幅のために設定された第1段階反応ブリスターを含む第1段階反応ゾーン、第1段階反応ブリスターに流動的に連結された他のリザーバー、試料に他の流体を提供するように設定された他のリザーバー、及び第1段階反応ゾーンに流動的に連結された第2段階反応ゾーンを含み、該第2段階反応ゾーンは複数の第2段階反応チャンバーを含み、各第2段階反応チャンバーは試料の他の増幅のために設定されたプライマー対を含む。1の例示的例では、第1段階反応ゾーンは第1段階PCR増幅ゾーンである。別の例示的な例では、第1段階反応ゾーンはイムノPCRのための抗原結合ゾーンであり、この中で、試料中に存在する抗原が認識され、そして特定の核酸セグメントと会合し、そして第2段階反応ゾーンは核酸増幅ゾーンである。さらに別の例示的な例では、容器はさらに、試料中に位置する細胞又は胞子を溶解するための粒子を含む細胞溶解ゾーン、及び核酸を精製するための成分を含む核酸調製ゾーンをさらに含む。例として、ブリスターは、個々のブリスターに加圧するとブリスターが崩壊して、内容物がブリスターから押し出されるような、フレキシブルな材料を含む。
【0008】
本発明の別の側面では、複数のチャネルを介して流動的に連結されている複数のブリスターを有するフレキシブルな部分、及び複数のリザーバーであって、各リザーバーが反応成分を含有し、各リザーバーが複数のブリスターの少なくとも1つに流動的に連結されている、前記リザーバー、及び試料を受け取るように設定され、複数のブリスターの1つに流動的に連結されている密封可能ポートを含む容器を提供する。1の例示的な態様では、反応成分は乾燥型であり、容器はさらに、複数のリザーバーの各々に流動的に連結された第2の密封可能ポートを含み、該ポートは反応成分を再水和するための水を受け取るよう設定されている。
【0009】
本発明の他の側面では、試料中の細胞を溶解するための方法であって、細胞溶解ブリスターを含むフレキシブルな容器を提供し、細胞を細胞溶解ブリスター内に導入し、ブリスターに力を適用して粒子及び試料を移動させて、高速衝撃を生じて溶解物を生じる工程を含む、前記方法を提供する。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、核酸の存在に関して試料を分析するためのデバイスを提供し、該デバイスは、その中に本発明の容器、容器の多様なブリスターに対応して位置し、各々、容器の対応するブリスターに加圧するように設定された複数のアクチュエーター、ブリスターの1の内容物をサーマルサイクリングするように設定された第1のヒーター/クーラーデバイス、及び第2段階チャンバーをサーマルサイクリングするための第2のヒーター/クーラーを受け取るように設定されている。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、方法を提供する。1の例示的な方法では、核酸を増幅する。別の例示的な方法では、イムノPCRを用いて抗原を検出する。
【0012】
本発明の他の側面では、チャネル、チャネルに流動的に連結され各々1又はそれ以上の試薬を含む、複数の高密度反応ウェル、及び高密度反応ゾーンへの試料の導入に際して、高密度反応ウェル間の交差混入を最小限にするバリア層を含む、高密度反応ゾーンを提供する。バリア層は、物理的層、例示的には、穿孔を通じて試料を移動させる力が存在しない場合は、穿孔を通じる流れを最小限にする穿孔層であってもよい。あるいは、バリアは、ウェルが密封されうるまで、ウェル中に試薬を維持する化学的バリアであってもよい。
【0013】
本発明の他の特徴は、現在知覚されるような、本発明を実行する最適な様式を例示する好ましい態様の以下の詳細な説明を考慮すれば、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の1の態様によるフレキシブルパウチを示す。
【図2】図2は、図1記載のフレキシブルパウチの細胞溶解ゾーンの態様を示し、図2aは、図2に示す細胞溶解ゾーンに対応するブラダーの部分の態様を示し、図2bは、別のボルテックス機構を有する、図1記載のフレキシブルパウチの細胞溶解ゾーンの態様を示す。
【図3】図3は、図1記載のフレキシブルパウチの核酸調製ゾーンの態様を示す。
【図4】図4は、図1記載のフレキシブルパウチの第1段階増幅ゾーンの態様を示す。
【図5】図5は、パウチの別の態様を示している以外、図1同様であり、図5aは、図5のパウチの装備の断面図であり、図5bは、図5のパウチの部分の拡大図である。
【図6】図6は、パウチの別の代替態様の斜視図であり、図6aは、図6のパウチの装備の断面図である。
【図7】図7は、図6のパウチと共に用いるための例示的なブラダー構成要素を示す。
【図8】図8は、図6のパウチを含む、図6のパウチと共に用いるための装置の分解斜視図である。
【図9】図9は、図7のブラダー構成要素を含む、図8の装置の部分的断面図を示し、図6のパウチを影に示す。
【図10】図10は、図6のピンチバルブ及びパウチ用の多様なブラダーを含む、図8の装置の部分的断面図を示す。
【図11】図11は、ELISA及びイムノPCRのスキームを示し、二次抗体(A);捕捉抗体(C);酵素(E);レポーター抗体(R);二重官能性結合部分(S)及び抗原(T)である。
【図12】図12は、イムノPCR用に設定されたパウチを示している以外、図6同様である。
【図13】図13は、PCR及びイムノPCRの両方のために設定されたパウチを示している以外、図6同様である。
【図14】図14は、図5のパウチ中で溶解して増幅した試料の第2段階増幅由来の増幅曲線を示す。
【表1】
【図15】図15は、第2段階高密度アレイを有するパウチを示している以外、図6同様であり、図15aは、図8の装置の構成要素の修飾を示す。図15のパウチと共に用いるように設定されたモーターを含めて、支持体メンバーが提供されている。
【図16】図16は、図15の第2段階高密度アレイの分解斜視図である。
【図17】図17は、第2段階高密度アレイの構築中を示す、図15の第2段階高密度アレイの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書記載の内蔵型核酸分析パウチを用いて、多様な生物学的物質、例として抗原及び核酸配列の存在を、例として単一閉鎖系において、試料をアッセイすることができる。1の態様では、パウチを用いて、多数の病原体をアッセイする。例として、場合によっては使い捨てパウチ中で、核酸調製、一次大量多重PCR、一次増幅産物の希釈、及び二次PCRを含み、リアルタイム検出及び/又は融解曲線分析等の増幅後分析に及ぶ、多様な工程を実行してもよい。しかし、病原体検出は、1の例示的な使用にすぎず、他の核酸分析、又は、ペプチド、毒素、及び小分子を含むがこれらに限定されない他の物質の検出にパウチを用いてもよいことが理解される。さらに、本発明のパウチでは、多様な工程を実行できるが、特定の用途のために1又はそれ以上の工程を省いてもよく、そしてパウチ設定はそれにより改変できることが理解される。
【0016】
PCRは、本明細書の実施例で用いられる増幅法であるが、プライマーを用いる任意の増幅法が適当でありうることが理解される。適当な方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);鎖置換増幅(SDA);核酸配列に基づく増幅(NASBA);カスケードローリングサークル増幅(cascade rolling circle amplification)(CRCA);DNAのループ仲介等温増幅(LAMP);核酸の等温及びキメラプライマー開始増幅(ICAN);標的に基づくヘリカーゼ依存性増幅(HDA);転写仲介増幅(TMA)等があげられる。したがって、用語PCRを用いる場合、他の代替増幅法が含まれることを理解すべきである。それによりプロトコルを調製する必要がありうることが理解される。
【0017】
図1は、例示的な内蔵核酸分析パウチ10を示す。パウチ10には、細胞溶解ゾーン20、核酸調製ゾーン40、第1段階増幅ゾーン60、及び第2段階増幅ゾーン80がある。核酸を含有する試料を試料注入ポート12を介してパウチ10内に導入する。パウチ10は、多様なチャネル及び多様なサイズのブリスターを含み、試料が系を通じて流動するように配置されている。試料は多様なゾーンを通過することによりプロセシングされる。
【0018】
試料プロセシングは、パウチ10内に位置する多様なブリスター中で起こる。プロセシングゾーン内及び当該ゾーン間で試料を移動させるための多様なチャネルが提供される一方、試料に流体及び試薬を送達するか、又は当該流体及び試薬を試料から除去するための他のチャネルを提供する。パウチ10内の液体は、以下に記載するように、例として圧、例として空気圧によりブリスター間を移動するが、パウチ内で物質を移動させる他の方法が意図される。
【0019】
例として、パウチ10は、押出、プラズマ蒸着、及びラミネート加工を含む当該技術分野で公知の任意のプロセスで作製できる、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、並びに当該混合物等の二層のフレキシブルプラスチックフィルム又は他のフレキシブルな材料で形成されるが他の容器を用いてもよい。金属ホイル又はアルミニウムラミネート加工を伴うプラスチックもまた用いてよい。共に密封してブリスター及びチャネルを形成できる他のバリア材料が当該技術分野で公知である。プラスチックフィルムを用いる場合、例として熱密封等で、層を共に結合させてもよい。例として、物質には低核酸結合能がある。
【0020】
蛍光モニターを用いる態様に関しては、作動波長で、吸光度及び自己蛍光が適当に低いプラスチックフィルムが好ましい。当該材料は、異なるプラスチック、異なる可塑化剤、及び混成比、並びに異なるフィルム厚を試すことにより同定できる。アルミニウム又は他のホイルラミネート加工を伴うプラスチックに関しては、蛍光検出デバイスにより読み取られるパウチ部分を、ホイルなしにしてもよい。例えば、パウチ10の第2段階増幅ゾーン80のブリスター82中で蛍光をモニターする場合、ブリスター82の一方又は両方の層を、ホイルなしにしてもよい。PCRの例では、約0.0048インチ(0.1219mm)厚のポリエステル(Mylar、Dupont、デラウェア州ウィルミントン)及び0.001〜0.003インチ(0.025〜0.076mm)厚のポリプロピレンフィルムで構成されるフィルムラミネートがよく機能する。例として、パウチ10は、入射光のおよそ80%〜90%を透過できる透明材料で作製される。
【0021】
例示的な態様では、ブリスター及びチャネルに対して、圧、例として空気圧を適用することにより、ブリスター間で物質を移動させる。したがって、空気圧を用いる態様では、パウチ材料は、例として、空気圧が所望の効果を奏することができる程度に十分にフレキシブルである。用語「フレキシブル」は、本明細書でパウチの材料の物理的性質を記載するのに用いられる。用語「フレキシブル」は、亀裂、破壊、ひび割れ等なく、本明細書で用いる空気圧レベルで容易に変形できるものと定義される。例えば、Saran(商標)ラップ及びZiploc(登録商標)バッグ等の薄いプラスチックシート、並びにアルミニウムホイル等の薄い金属ホイルはフレキシブルである。しかし、空気圧を用いる態様でさえも、フレキシブルでなければならないのはブリスター及びチャネルの特定の領域のみである。さらに、ブリスター及びチャネルが容易に変形できれば、フレキシブルでなければならないのはブリスター及びチャネルの1の側面のみである。パウチ10の他の領域は、剛性材料で作製されていてもよいし、又は剛性材料で補強されていてもよい。
【0022】
例として、パウチ10用にプラスチックフィルムを用いる。金属、例としてアルミニウムのシート、又は他の適当な材料を圧延するか又は別の方式で切断して、盛り上がった表面パターンがあるダイスを生成する。例として195℃の作動温度で制御された、空気圧プレス(例としてA−5302−PDS、Janesville Tool Inc.、ウィスコンシン州ミルトン)に適合させる場合、空気圧プレスは印刷機のように機能し、ダイスがフィルムに接触している箇所のみ、プラスチックフィルムの密封表面を融解する。パウチ10が形成されるにつれて、PCRプライマー(例としてフィルム上にスポッティングして乾燥させたもの)、抗原結合性支持体、磁気ビーズ、及びケイ酸ジルコニウムビーズ等の多様な構成要素を多様なブリスター内部に密封してもよい。集合的に又は別に、密封前に試料プロセシング用の試薬をフィルム上にスポッティングしてもよい。1の態様では、ポリメラーゼ及びプライマーとは別に、ヌクレオチド三リン酸(NTP)をフィルム上にスポッティングして、反応が水性試料により水和されるまで、ポリメラーゼの活性を本質的に排除する。水性試料が水和前に加熱されると、これは真のホットスタートPCRのための条件を生成して高価な化学的ホットスタート成分の必要性を軽減するか又は排除する。この別のスポッティングを、図5bについて、以下にさらに記載するが、当該スポッティングを、本明細書に記載する任意の態様で用いてよいことが理解される。
【0023】
空気圧を用いてパウチ10内の材料を移動させる場合、1の態様では「ブラダー」を用いてもよい。その一部を図2aに示すブラダー・アセンブリー710は、パウチ作製と類似のプロセスで製造できるが、ブラダー・アセンブリー710中の個々のブリスターには、ブラダー・アセンブリー710内の個々のブラダーが圧縮ガス供給源により加圧できる、空気圧装備(例として装備724a)が含まれる。ブラダー・アセンブリーは圧縮ガスに供され、ブラダー・アセンブリーは、多数回用いるため、パウチよりも堅牢であるか又は厚い材料で作製されてもよい。あるいは、ブラダーは、ガスケット、シール、バルブ、及びピストンで共に固定された一連のプレートから形成されてもよい。その他の配置は本発明の範囲内である。
【0024】
パウチ10を装置内に置く場合、空気圧ブラダー・アセンブリー710は、パウチ10の1の面に対して押しつけられ、特定のブラダーが膨張すると、圧により液体がパウチ10中の対応するブリスターから外に押し出される。パウチ10のブリスターの多くに対応する空気圧ブラダーに加えて、ブラダー・アセンブリーには、パウチ10の多様なチャネルに対応する、ブラダー又は空気圧駆動ピストン等の他の空気圧アクチュエーターがあってもよい。活性化された場合、当該他の空気圧アクチュエーターは、対応するチャネルをピンチオフし、閉鎖するピンチバルブを形成する。パウチ10の特定のブリスター内に液体を閉じ込めるため、ピンチバルブ空気圧アクチュエーターを、ブリスターに出入りするチャネル上で膨張させ、それにより、アクチュエーターは、チャネルをつまんで閉鎖するピンチバルブとして機能する。例として、異なるブリスター中の2体積の液体を混合するため、連結チャネルを密封するピンチバルブ空気圧アクチュエーターを減圧し、そしてブリスター上の空気圧ブリスターを交互に加圧し、ブリスターを連結しているチャネルを通じて、液体を往復させて、中の液体を混合する。ピンチバルブ空気圧アクチュエーターは、多様な形状及びサイズであってもよく、そして一度に1つより多いチャネルをピンチオフするように設定されてもよい。こうした例示的なピンチバルブを、全ての注入ポートを閉鎖するのに用いうるピンチバルブ16として、図1に例示する。空気圧アクチュエーターは本明細書で記載されるが、リニアステップモーター、モーター駆動性カム、空気、水又は電磁力により駆動される剛性パドル、ローラー、ロッカーアーム、及びある場合、コックト・スプリング(cocked spring)等の多様な電気機械的アクチュエーターを含めて、パウチに加圧する他の方法が意図されることが理解される。さらに、チャネル軸に垂直に加圧することに加えて、可逆的に又は不可逆的にチャネルを閉鎖する、多様な方法がある。これらには、チャネルを覆うバッグをねじること、熱密封、アクチュエーターの回転、並びにバタフライバルブ及びボールバルブ等の、チャネル内に密封された多様な物理的バルブが含まれる。さらに、小さいペルチェ素子又は他の温度制御因子をチャネルに隣接して配置して、液体を凍結するのに十分な温度で設定して、効果的にシールを形成してもよい。また、図1の設計は、自動化装置用に適応し、ブリスター及びチャネル各々の上に位置するアクチュエーター要素を特徴とするが、アクチュエーターが固定されたままでもよく、試料破壊、核酸捕捉、第1及び第2段階PCR、並びにイムノアッセイ及びイムノPCR等のパウチの他の適用を含む、いくつかのプロセシング・ステーション用に、少数のアクチュエーターを用いうるように、パウチを一次元又は二次元で移行させてよいこともまた意図される。チャネル及びブリスターに対して作用するローラーは、パウチをステーション間で平行移動させる設定で、特に有用であることが証明できる。したがって、現在開示する態様では、空気圧アクチュエーターを用いるが、用語「空気圧アクチュエーター」を本明細書で用いる場合、パウチ及び装置の設定に応じて、他のアクチュエーター及び加圧する他の方法を用いてよいことが理解される。
【0025】
図1に関して、核酸抽出及び多重PCR用に設定された、例示的な試料パウチ10を提供する。試料は、装備90中の試料注入ポート12を介して、パウチ10に入る。インジェクターポート12は、壊れやすいシール、一方向バルブ、又は他の進入ポートでもよい。パウチ10内部からの真空を用いて、試料をパウチ10内に引き入れてもよいし、シリンジ又は他の圧力を用いて、試料をパウチ10内に押し込んでもよいし、あるいはインジェクターポート12を介して、パウチ10内に試料を導入する他の手段を用いてもよい。試料は、チャネル14を介して、試料中の細胞を溶解する細胞溶解ゾーン20の三葉ブリスター22に移動する。試料が三葉ブリスター22に進入した時点で、ピンチバルブ16を閉鎖する。すでに閉鎖していてもよいピンチバルブ36と共に、ピンチバルブ16の閉鎖は、三葉ブリスター22中で試料を密封する。細胞溶解は全ての試料で必要ではないことが理解される。当該試料に関しては、細胞溶解ゾーンを省いてもよいし、又は試料を直接次のゾーンに移動させてもよい。しかし、多くの試料では、細胞溶解が必要である。1の態様では、ビーズミリングを用いて細胞を溶解する。
【0026】
ケイ酸ジルコニウム(ZS)ビーズ34等の溶解粒子の存在下で試料を振盪するか又はボルテックスすることによるビーズミリングは、溶解物を形成する有効な方法である。本明細書の「溶解する」、「溶解」、及び「溶解物」等の用語は、細胞の破裂に限定されず、当該用語には、ウイルス等の非細胞粒子の破壊が含まれることが理解される。図2は、収束流が高速ビーズ衝撃を生成して溶解物を生成する、細胞溶解ゾーン20の1の態様を示す。例として、三葉ブリスター22の2つのより下方の葉24、26はチャネル30を介して連結され、より上方の葉28は、チャネル30の反対側31で、より下方の葉24、26と連結される。図2aは、パウチ10の細胞溶解ゾーン20と接触するブラダー・アセンブリー710の対応する部分を示す。パウチ10を装置中に入れると、パウチ10上の各葉24、26、28に隣接するのは、ブラダー・アセンブリー710中の対応する空気圧ブラダー724、726、728である。用語「隣接する」は、パウチ中のブリスター又はチャネル及びそれに対応する空気圧アクチュエーター間の関係を示す場合、パウチが装置内に配置された場合のブリスター又はチャネル及び対応する空気圧アクチュエーター間の関係を示す。1の態様では、より下方の葉24、26に隣接する2つのより下方の空気圧ブラダー724、726の空気圧装備724a、726aが、共に配管される。空気圧装備724a、726a、及びより上方の葉28に隣接するより上方の空気圧ブラダー728の空気圧装備728aは、二重作用空気圧シリンダーを駆動するように設定された電気的に作動されるバルブの反対側に配管される。このように設定されると、圧はより上方の空気圧ブラダー728及び2つのより下方の空気圧ブラダー724、726の間で交互になる。バルブが往復するよう切り替えられると、パウチ10中の液体がより下方の葉24、26及びより上方の葉28の間で、チャネル30中の狭いネクサス32を通じて駆動される。2つのより下方の葉24、26は、同時に加圧されるため、流れは収束し、そしてより上方の葉28内に撃ち込まれる。葉の幾何学に応じて、ネクサス32でのビーズ34の衝突速度は、少なくとも約12m/秒であり、溶解を生じる高衝撃衝突を提供しうる。例示的な三葉系により、細胞破壊が優れ、構造的に頑強になる一方、サイズ及び空気ガス消費は最小限になる。ZSビーズを溶解粒子として用いるが、この選択は単なる例示であり、他の材料及び他の形状の粒子を用いてもよいことが理解される。細胞溶解ゾーン20の他の設定も本発明の範囲内であることもまた理解される。
【0027】
三葉ブリスターを細胞溶解に用いるが、他の多葉設定が本発明の範囲内にあることが理解される。例えば、四葉ブリスター、例としてクローバーの葉のパターンのものを用いてもよく、反対のブリスターを同時に加圧し、溶解粒子を互いに向かって押し出し、そして次いで、他の2つの葉に角度を変えて、次いでこれらを共に加圧してもよい。当該四葉ブリスターは、両方向に高速衝撃する利点があるであろう。さらに、一葉ブリスターを用いてもよいことが意図され、ここで、溶解粒子は、一葉ブリスターの1の部分から他の部分に迅速に移動する。例えば、空気圧アクチュエーターを用いて、一葉ブリスターの領域を閉鎖し、残りの領域中に多葉ブリスターを一時的に形成してもよい。デバイスの葉に作用する、モーター、空気、水、又は電磁的に駆動されるパドル等の他の作動法もまた用いてもよい。例として、より上方の及びより下方の葉間に再循環手段が提供され、そしてアクチュエーターが蠕動ポンプ作用を提供する場合、ローラー又は回転パドルを用いて、図2のネクサス32で流体を共に駆動してもよい。他の設定が本発明の範囲内である。
【0028】
多葉ブリスターを一時的に形成することなく、一葉溶解ブリスター内で、溶解を達成するために十分に迅速に試料及び溶解粒子を移動させることもできる。図2bに示す1の当該代替態様では、電気モーター19に取り付けられた回転ブレード又はパドル21でパウチに衝撃を与えてボルテックスを達成してもよい。ブレード21は、溶解ブリスターでパウチに衝撃を与えてもよく、又は溶解ブリスター近傍、例として溶解ブリスターに隣接するエッジ17で、パウチに衝撃を与えてもよい。当該態様では、溶解ブリスターは、1又はそれ以上のブリスターを含んでもよい。図15は、1の当該溶解ブリスター522を含む態様を示す。図15aは、ブレード21を含むビーズ攪拌モーター19を示し、これは図8に示す装置800の第2の支持体メンバー804の第1の側面811上に備え付けてもよい。しかし、モーター19は、装置800の第1の支持体メンバー802上又は他の表面上に備え付けてもよい。
【0029】
図2aはまた、空気圧装備716aを含む空気圧ブラダー716、及び空気圧装備736aを含む空気圧ブラダー736も示す。パウチ10がブラダー・アセンブリー710と接触して配置されると、ブラダー716はチャネル12と一致し、ピンチバルブ16が完成する。同様に、ブラダー736はチャネル38と一致し、ピンチバルブ36が完成する。空気圧ブラダー716及び736を作動させると、ピンチバルブ16及び36が開放されそして閉鎖されうる。細胞溶解ゾーンに隣接するブラダー・アセンブリー710の一部しか示していないが、ブラダー・アセンブリー710は、パウチ10の残りのゾーン全体の流体の移動を制御する空気圧ブリスターに類似の配置を提供することが理解される。
【0030】
他の先行技術装置で、密封されたフレキシブルな容器内のPCRを解説する。例えば、本明細書に援用される、米国特許第6,645,758号及び第6,780,617号、並びに同時係属米国特許出願第10/478,453号を参照されたい。しかし、密封されたPCR容器内に細胞溶解を含めると、特に、試験しようとする試料がバイオハザードを含有しうる場合は、使用の容易さ及び安全性が改善されうる。本明細書に例示する態様では、細胞溶解由来の、並びに他の全ての工程由来の廃棄物は、密封されたパウチ内に残る。しかし、他の試験のため、パウチ内容物を取り除いてもよいことが理解される。
【0031】
細胞が溶解した時点で、ピンチバルブ36を開放して、そして図3で最適に見られるように、チャネル38を通じて溶解物を核酸調製ゾーン40に移動させ、その後、ピンチバルブ36を閉鎖し、核酸調製ゾーン40中で試料を密封する。図3に例示する態様では、核酸の精製は、ビーズミリングされた材料を用いて、シリカに基づく磁気ビーズ56へのアフィニティー結合を用いて、ビーズをエタノールで洗浄し、核酸を水又は他の流体で溶出して、細胞溶解物から核酸を精製する。核酸抽出に必要な個々の成分は、例として、ブリスター44、46、48中に存し、これらは、試薬混合を可能にするチャネル45、47、49により連結される。溶解物は、チャネル38からブリスター44に進入する。ブリスター44に、磁気ビーズ56及び適当な結合緩衝液、例として1−2−3(商標)試料調製キット(Idaho Technology、ユタ州ソルトレークシティー)等の高塩緩衝液を提供してもよいし、ブリスター44に連結された1又はそれ以上のチャネルを通じて、当該成分のどちらか又は両方を続いて提供してもよい。核酸をビーズ56上で捕捉し、次いでピンチバルブ53を開放し、そしてブリスター44及び58に対して交互に穏やかに加圧して溶解物及びビーズ56を混合し、次いで、例としてブラダー・アセンブリー710上の対応する空気圧ブラダーにより提供される空気圧により、ブリスター58に移動させてもよい。ブリスター58に隣接する装置中に位置する引き込み式の磁石50により、ブリスター58中で磁気ビーズ56を捕捉し、そして廃棄物を廃棄物リザーバーに移動させてもよいし、又はブリスター58に加圧することにより、ブリスター44に戻してもよい。次いで、ピンチバルブ53を閉鎖する。ピンチバルブ55の解除に際して、ブリスター46から提供される、エタノール、イソプロパノール、あるいは他の有機又は無機洗浄溶液で、磁気ビーズ56を洗浄する。場合によっては、磁石50を引っ込めて、ブリスター46及び58に交互に加圧して、ビーズを洗浄させることができる。磁石50により、ブリスター58中にビーズ56をもう一度捕捉し、そして溶解物の非核酸部分をビーズ56から洗い流し、ブリスター46にまた移動させ、そしてピンチバルブ55により確保してもよいし、又は別のチャネルを介して廃棄物リザーバーに洗い流してもよい。磁気ビーズを洗浄した時点で、ピンチバルブ57を開放し、ブリスター48から水(例として緩衝水)又は別の核酸溶離剤を放出する。再び、磁石50を引っ込めて、例としてブリスター48及び58に交互に加圧して、水及びビーズ56を最大に混合することができる。ビーズ56を収集するため、磁石50を再び配備する。ピンチバルブ59を解除して、チャネル52を介して、溶出した核酸を第1段階増幅ゾーン60に移動させる。次いで、ピンチバルブ59を閉鎖し、こうして第1段階増幅ゾーン60中で試料を確保する。
【0032】
図3に示し、かつ上記のような、核酸調製ゾーン40の設定は、単なる例示であり、多様な他の設定が本開示の範囲内でありうることが理解される。
【0033】
本明細書で用いるエタノール、水、及び他の流体を、多様な方式でブリスターに提供してもよい。首が多様なピンチバルブ又は壊れやすい部分によりピンチオフできるブリスター中に流体を保存してもよく、試料調製順序の適当な時期にこれを開放してもよい。あるいは、図5中のパウチ110に示すように、パウチ中のリザーバー中に、又は図6のパウチ210に関して説明した装備中に、流体を保存して、必要に応じて、チャネルを介して移動させてもよい。さらに別の態様では、特にエタノール注入ポート41、88及びプランジャー67、68、69に関して、図1に示すように、外部供給源から流体を導入してもよい。例として、プランジャー67、68、69を、例としてより剛性の材料の、装備90内に挿入してもよく、本明細書に援用される米国特許出願第10/512,255号で、プランジャーを活性化させた場合に、正確に体積を測定した流体を提供してもよい。測定した体積は、各プランジャーで同じでも又は異なってもよい。最後に、さらに別の態様では、1又はそれ以上のブリスター中に保存される流体の測定された体積をパウチに提供してもよく、ここで流体はブリスター内に含有され、例としてブリスター内の小さい密封されたパウチ中で提供され、ブリスター内にブリスターを有効に形成する。適当な時点で、次いで、例として空気圧で密封されたパウチを破裂させて流体をパウチのブリスター内に放出してもよい。装置はまた、流体の通過が一方向バルブで厳密に制御されて、実行中に装置に混入するのを防ぐという条件で、装置及び装備又はパウチ材料間の直接の液体接触を通じて、試薬のいくつか又は全てを提供するように設定されてもよい。さらに、混入DNAがパウチから拡散するのを防ぐため、場合によっては、パウチ又はその装備が操作後に密封されるのが望ましいであろう。シリンジポンプ等、求めに応じて試薬を提供し、そして有刺装備又はoリングシール等、装備又はパウチと一時的に流体接触させる多様な手段が公知である。特定の適用で必要により指示されうるように、本明細書で記載のいかなるパウチの態様と共に、流体を適当なブリスターに導入するいかなる方法を用いてもよいことが理解される。
【0034】
上記のように、入れ子PCRは、2段階で実行される標的増幅を含む。第1段階では、例としてゲノム又は逆転写鋳型から標的を増幅する。望ましい場合、第1段階増幅をプラトー期前に終結させてもよい。第2段階反応では、第1段階単位複製配列を希釈してもよく、そして二次増幅は同じプライマーを用いるか、又は例として第1段階産物のプライマーに対して内部でハイブリダイズする入れ子プライマーを用いる。入れ子PCRの利点としては:a)最初の反応産物が均質かつ特異的な鋳型を形成し、二次反応で高忠実度が保証され、第1段階反応の効率が比較的低くても、頑強な第2段階反応を補助するのに適した鋳型を生成する;b)異なる入れ子プライマーを用いて元来の増幅鋳型(例としてゲノムDNA又は逆転写産物)は、二次増幅で有意性が排除される程度まで希釈されうるため、第1段階反応由来の非特異的産物は、第2段階反応と有意に干渉しない;かつc)入れ子PCRは反応多重化がより高次となりうる。第1段階反応には、いくつかの固有の増幅産物のプライマーが含まれうる。次いで、第2段階反応で当該産物を同定する。しかし、第1段階多重性及び第2段階単一性は単なる例示であり、他の設定ができることが理解される。例えば、第1段階は単一対のプライマーを用いて多様な異なる関連単位複製配列を増幅でき、第2段階を用いて、例として融解曲線分析を用いて、単位複製配列間の相違を標的化することもできる。
【0035】
図1では、核酸試料はチャネル52を介して、第1段階増幅ゾーン60に進入してブリスター61に送達される。ポリメラーゼ(例としてTaqポリメラーゼ)、dNTP、及びプライマー、例として多重増幅のための複数のプライマー対を含むPCR混合物を、ブリスター61中に提供してもよいし、上記の多様な手段を介して、ブリスター61内に導入してもよい。あるいはパウチ10を組み立てる際に、乾燥した試薬をブリスター61の位置上にスポッティングしてもよく、図1に示すように、例としてプランジャー68を介して、ブリスター61に水又は緩衝液を導入してもよい。図4に最適に見られるように、試料はここで、ピンチバルブ59及び72により、ブリスター61中で確保され、例として、装置中に位置し、ブリスター61と接触するよう設定される熱ブロック又はペルチェ素子により、2以上の温度間でサーマルサイクリングされる。しかし、当該技術分野で公知の、ブリスター61内に含有される試料を加熱して冷却する他の手段が、本発明の範囲内であることが理解される。サーマルサイクリングのための別の加熱/冷却デバイスの非限定の例としては、ブラダー内の空気循環ブリスターがあるものが含まれ、ブリスター61に隣接する空気圧ブリスター中の空気が2以上の温度間で周期処理されるか;あるいは本明細書に援用される米国特許出願第10/478,453号のような複数の空気圧を例として用いて、あるいはパウチ10を軸上で平行移動させるか、又はパウチ10に回転レイアウトを提供し、パウチ10をスピンさせて、固定した温度の熱ゾーン間で内容物を移動させることにより、試料をブリスター61内の温度ゾーンに移動させる。
【0036】
病原体由来の核酸は、かなりの量の宿主核酸と同時に単離される場合がある。当該宿主由来核酸は、プライマーと相互作用して、不要な産物を増幅する場合があり、当該産物は、プライマー、dNTP、及びポリメラーゼ活性を除去して、望ましい産物の供給源を潜在的に枯渇させてしまう。病原性生物由来の核酸は、一般的に存在量が少なく、不要な産物は潜在的な問題である。ゾーン60の第1段階反応における周期数を最適化して、特異的産物を最大化して非特異的産物を最小限にしてもよい。最適周期数は、約10〜約30周期であり、例として約15〜約20周期であると予期されるが、特定の標的、宿主、及びプライマー配列に応じて、周期数は多様でありうることが理解される。
【0037】
第1段階多重増幅後、二次反応部位への流動性輸送の前に、例として不完全PCRマスターミックス中で、第1段階増幅産物を希釈する。
【0038】
図4は、3の工程で試料を希釈するための例示的な態様を示す。第1の工程で、ピンチバルブ72を開放し、試料は、上記のように、ブリスター62由来の等体積の水又は緩衝液と試料をブリスター61中で混合して、2倍希釈を経て、ブリスター62、並びにブリスター64及び66に提供される。ブリスター61、62間で体積を往復して圧搾すると、完全な混合が提供される。上記のように、ブラダー710中で提供され、ブリスター61、62に隣接して位置する空気圧ブラダーにより、混合を提供してもよい。空気圧ブラダーを交互に加圧して、液体を往復させてもよい。混合中、ピンチバルブ74は、隣接するブリスター内への液体の流入を防止する。混合終了時、希釈試料の体積を領域70中に捕捉し、ピンチバルブ72を閉鎖し、希釈された試料を領域70中に密封する。ピンチバルブ74を開放し、ブリスター63、64のいずれか又は両方の中で提供される水又は緩衝液により試料をさらに希釈する。上記のように、ブリスター63、64間で体積を往復して圧搾して、混合を提供する。続いて、ピンチバルブ74を閉鎖し、他の希釈された体積の試料を領域71中で密封する。最終希釈は、例として、上記のように混合しながらブリスター65、66のいずれか又は両方で提供された緩衝液又は水を用いることにより、起こる。例として、この最終希釈は、流体としての不完全PCRマスターミックス(例えばプライマー以外の全てのPCR試薬を含有する)を用いて行われる。場合によっては、第2段階増幅前のブリスター66の内容物を加熱すると、高価な抗体又は酵素を必要とせずに、ホットスタート増幅の利点が提供されうる。しかし、水又は他の緩衝液を最終希釈のために用い、他のPCR成分が第2段階増幅ゾーン80中で提供されてもよいことが理解される。例示的な態様は3つの希釈段階を用いるが、適当なレベルの希釈を提供するために、任意の数の希釈段階を用いてもよいことが理解される。領域70及び71中に捕捉される試料の体積を調製して希釈量を調節してもよいこともまた理解され、領域70及び71に捕捉される試料の量が小さければ小さいほど、希釈量は大きく、又はピンチバルブ72及び74及び/又はピンチバルブ74及び76を反復して開放しそして閉鎖することにより、領域70及び/又は領域71に捕捉される他のアリコットを用いて、希釈量を減少させてもよい。約10−2〜約10−5希釈は、多くの適用に適していると予期される。
【0039】
二次PCR反応の成功は、多重第1段階反応で生成される鋳型に依存する。一般的には、高純度のDNAを用いてPCRを行う。フェノール抽出又は商業的DNA抽出キット等の方法で高純度のDNAが提供される。パウチ10を通じてプロセシングされる試料は、純粋でない調製を相殺するように適応させなければならない。PCRは、生物学的試料の成分で阻害される可能性もあり、潜在的に障害となる。例として、ホットスタートPCR、より高濃度のtaqポリメラーゼ酵素、MgCl2濃度の調製、プライマー濃度の調製、及びアジュバント(DMSO、TMSO、又はグリセロール)の添加は、場合によっては、低純度の核酸を相殺するのに用いてよい。純度の問題は、第1段階増幅で問題になりうるが、第2段階増幅でもまた、類似の調製を提供できることが理解される。
【0040】
例示的な態様では、パウチの第1段階PCR部分のブリスター及びチャネル中に、少量の増幅試料を保持して、希釈及び第2段階試料の調製が達成されるが、当該プロセスはまた、他の方式でも実行できることが理解される。1のこうした例示的な例では、予め増幅した試料を、メンバー中の小さい空洞中に捕捉してもよく、例としてメンバーを平行移動させるか又は回転させると、固定された体積の試料を、第1段階から第2段階PCR試薬に移動させることができる。予め増幅された試料の1マイクロリットルの部分を、100マイクロリットルの新鮮なPCR試薬と混合すると、濃度が100倍低下するであろう。この希釈は単なる例示であり、他の体積及び希釈レベルができることが理解される。当該アプローチは、第1段階増幅産物を剛性装備内に押し込み、図1のプランジャー68又は69の1つと接触させることにより達成できる。当該態様では、プランジャーは、試料のほんのわずかを、隣接する希釈緩衝液又は第2段階PCR緩衝液と接触させるよう、設定されるであろう。同様に、段階間のシールを維持しながら、そして増幅された試料を剛性装備90内に含有して、スライディング要素を用いて、少量の第1段階増幅産物を第2段階反応混合物と接触させてもよい。
【0041】
第1段階PCR及び希釈の後に、チャネル78は、二次入れ子PCRのため、複数の低体積ブリスター82に試料を移す。1の例示的な態様では、入ってくる水性材料により、第2段階ブリスター中で提供される乾燥プライマーを再懸濁して、反応混合物を完成させる。場合によっては、二重鎖核酸の検出に用いるLCGreen(登録商標)Plus(Idaho Technology、ユタ州ソルトレークシティー)等の蛍光色素を各ブリスター中で提供してもよいし、又は連続希釈終了時に提供される不完全PCRマスターミックスに添加してもよいが、LCGreen(登録商標)Plusは単なる例示であり、当該技術分野に公知の他の色素が利用できることが理解される。他の任意の態様では、各特異的単位複製配列用に設定された乾燥蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブを、各乾燥プライマーと共に、各第2段階ブリスター中で提供してもよい。さらに、パウチ10は、混入を減少させるため、全ての反応及び操作を含有するよう設計されているが、ある状況では、各ブリスター82から増幅産物を除去して、他の分析を行うことが望ましい場合もある。当該技術分野で公知のように、第2段階単位複製配列を検出するための他の手段が本発明の範囲内である。試料をブリスター82に移した時点で、ピンチバルブ84及び86を活性化して、ブリスター82を閉鎖する。各ブリスター82は、ここで、特定の標的の増幅に必要な全ての試薬を含有する。例として、各ブリスターは、固有のプライマー対を含有してもよく、又は複数のブリスター82が同じプライマーを含有し、いくつかの複製増幅を提供してもよい。
【0042】
本明細書に開示する態様は、第2段階増幅のためのブリスターを使用し、ブリスターは、フレキシブルな部分の残りと同じか又は類似のプラスチックフィルムで形成されることに注目されたい。しかし、多くの態様では、第2段階ブリスターの内容物は、第2段階ブリスターから除去されることはなく、つまり、第2段階反応はフレキシブルなブリスター中で行う必要はない。ブリスターに流動的に連結された複数の剛性、半剛性、又はフレキシブルなチャンバー中で、第2段階反応を行ってもよいことが理解される。チャンバーを連結するフレキシブルなチャネルに対して加圧して、本例のようにチャンバーを密封してもよく、あるいは例として熱密封又は一方向バルブを用いて、他の方式で密封してもよい。本明細書に記載の多様な態様には、廃棄物収集のためにのみ提供されるブリスターが含まれる。廃棄物は除去されないため、剛性、半剛性、又はフレキシブルなチャンバー中で、廃棄物を収集してもよい。
【0043】
第1段階増幅で用いたものと同一のプライマーを用いて、第2段階増幅を行うことが本発明の範囲内である(米国特許第6,605,451号を参照されたい)。しかし、第2段階反応では、第1及び第2段階プライマー結合部位間に重複がないか又は重複が最小限であるように、第1段階産物の内部にあるようなプライマーがあることが好都合な場合がある。第1段階産物を希釈すると、元来の鋳型DNA及び第1段階試薬の第2段階反応における関与を大部分排除できる。さらに、例として、第1段階で用いるものよりTmが高い第2段階プライマーを用いて、入れ子増幅を増強してもよい。有意なヘアピン、ヘテロ/ホモ二量体及び不要なハイブリダイゼーションを回避するように、プライマーを設計してもよい。第2段階プライマーは、入れ子形式のため、単一工程でゲノムDNAから標的を増幅するのに用いるプライマーよりも、有害な相互作用には極めて寛容である。場合によっては、第2段階増幅でホットスタートを用いる。
【0044】
当該技術分野で公知であるように、例としてdsDNA結合色素として、又は蛍光プローブの一部として、蛍光色素が第2段階増幅に含まれる場合、提供される光学を用いて、1又はそれ以上の試料の増幅をモニターしてもよい。場合によっては、増幅曲線の形状分析を提供して各試料が陽性であるか又は陰性であるかを判定してもよい。試料を判定する例示的な方法は、本明細書に援用される米国特許第6,730,501号に記載されている。あるいは、交差閾値(crossing threshold)を用いる方法を用いてもよい。外部、また装置内部にコンピュータを提供してもよいし、方法を実行し、第2段階増幅の存在又は非存在に基づいて試料を陽性又は陰性と判定するようにコンピュータを設定してもよいし、コンピュータは、標準曲線に対して、又は実行内の他の増幅曲線に対して、増幅曲線の特徴的なパラメーター(交差閾値等)を比較することにより、出発鋳型濃度に関する定量的情報を提供してもよい。しかし、当該技術分野で公知の他の方法を用いて、各試料を判定してもよいことは理解される。蛍光情報に対して他の分析を実行してもよい。1の非限定の例は、単位複製配列の適当な融解特性(例えばTm、融解プロフィール形状)を示す、融解曲線分析の使用である。全てのブリスター82の画像を一度に捕捉するように、提供される光学を設定してもよいし、又は各個々のブリスターに関して、個々の光学を提供してもよい。他の設定が本発明の範囲内にある。
【0045】
図5は、代替パウチ110を示す。この態様では、装備190を介して、多様な試薬をパウチ110内に装填する。図5aは、複数のプランジャー168の1つを含む装備190の断面図を示す。図5aは図5の態様に示すような進入チャネル115aを通じた断面図を示し、12の進入チャネルが存在し(進入チャネル115a〜115l)、その各々が装備190中で用いるためのそれ自体のプランジャー168があってもよいが、この特定の設定では、進入チャネル115c、115f、及び115iは使用されないことが理解される。12の進入チャネルを有する設定は単なる例示であり、そして任意の数の進入チャネル及び関連するプランジャーを用いてよいことが理解される。例示的な態様では、装備190の任意の真空ポート142が、装備190の第1の表面194を通じて形成されて、チャンバー192と連絡する。任意の真空ポート142を、真空又は真空チャンバー(未提示)と連絡するために提供して、パウチ110内から空気を吸い取って、パウチ110のチャンバー192並びに多様なブリスター及びチャンバー内に真空を生成してもよい。次いで、プランジャー168をチャンバー192内に十分に深く挿入して、真空ポート142を密封してもよい。例として、所定量の真空下でチャンバー192を提供して、使用に際して、チャンバー192内に所望量の体積の液体を引き入れる。チャンバー192の調製に関する他の情報は、本明細書ですでに援用されている米国特許出願第10/512,255号に見いだされうる。
【0046】
例示的な装備190には、装備190の第2の表面195中に形成される注入ポート141がさらに含まれる。例として、プランジャー168を十分に深く挿入して真空ポート142を密封する一方、注入ポート141を介して、チャンバー192へなおアクセスできるように、注入ポート141は、図5aに示すように、真空ポート142よりも、パウチ110のプラスチックフィルムにより近く配置する。示すように、プラスチックフィルム部分117の第2の表面119は、チャンバー192及び取り巻く大気間の、注入ポート141を経由した連絡を防ぐように、貫通可能シール139を提供する。しかし、第2の表面119は、場合によっては、注入ポート141まで伸びていなくてもよく、多様な他のシールを用いてもよい。さらに、シールのために別の位置、例えば装備190の第1の表面194上が望ましい場合、注入ポート141は、装備190上のその位置へのチャネルを含んでもよい。本明細書ですでに援用されている米国特許出願第10/512,255号は、シールが注入ポートから離れて位置しており、そしてシールがチャネルを介してチャンバーに連結されている、多様な設定を示す。やはり米国特許出願第10/512,255号は、チャネルが単一のシールを多数のチャンバーに連結する、多様な設定を開示する。シール位置並びに多数のチャンバーへの単一注入ポートの接続の変形は、本発明の範囲内である。場合によって、シール139は脆弱でもよく、そしてカニューレ(未提示)の挿入の際に破壊されて、カニューレ内から流体試料がチャンバー192内に吸引されるか又は押し入れられてもよい。
【0047】
パウチ・アセンブリー110の例示的なプランジャー168は、筒形状であり、そしてチャンバー192内に圧入されるように、直径は約5mmである。プランジャー168には、第1の末端部分173及び反対の第2の末端部分175が含まれる。図5aに示されるように、プランジャー168のノッチ169が、第2の末端部分175中で形成される。用いる際、第2の末端部分175をチャンバー192内に一部挿入し、そしてノッチ169を注入ポート141と並列させて、プランジャー168が十分に深く挿入されて、そうでなければ注入ポート141を遮断する場合であっても、流体試料がチャンバー192内に吸引されるか又は注入されてもよい。
【0048】
例として、先端にカニューレを取り付けた(cannulated)シリンジを含む容器(未提示)中に流体を入れて、これを注入ポート141内に挿入して、中のシール139を穿刺してもよい。空気を抜いて真空にしたパウチ・アセンブリー110を用いる際、シール139を穿刺すると、周囲空気圧に比較して、チャンバー192内が陰圧であるため、流体が容器から抜き取られる。次いで、流体はポート141を通過して、チャンバー192を満たす。この時点で、流体は通常、パウチ110のプラスチックフィルム部分117内には流れ込まない。最後に、プランジャー168をチャンバー192内に挿入して、プランジャー168の第2の末端部分175がチャンバー192の底191にアプローチして、測定された量の試薬又は試料をプラスチックフィルム部分117内に押し込むようにする。示すように、プランジャー168は、完全に挿入した際、第2の末端部分175がチャンバー192の底191と完全に触れあわないように設定される。残りの空間は、泡を捕捉して、それによりプラスチックフィルム部分117に進入する泡の数を減少させるのに有用である。しかし、いくつかの態様では、プランジャー168を完全に挿入した際、第2の末端部分175が底191と触れあうことが望ましい場合もある。図5に示す態様では、進入チャネル115a、115b、115d、115e、115g、115h、115j、115k、及び115lは、全て反応ゾーン又はリザーバー・ブリスターにつながる。進入チャネル115aと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試料が三葉ブリスター122内に押し込まれ、進入チャネル115bと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター101内に押し込まれ、進入チャネル115dと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター102内に押し込まれ、進入チャネル115eと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター103内に押し込まれ、進入チャネル115gと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター104内に押し込まれ、進入チャネル115hと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター105内に押し込まれ、進入チャネル115jと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター106内に押し込まれ、進入チャネル115kと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター107内に押し込まれ、そして進入チャネル115lと関連するプランジャーを完全に挿入すると、試薬がリザーバー・ブリスター108内に押し込まれる。
【0049】
図5aに示す態様に例示するように、ノッチ169を含むプランジャー設計を用いる場合、ノッチ169をオフセットし、そして注入ポート141をチャンバー192との連絡から閉鎖して、内容物を中に密封するように、プランジャー168を回転させてもよい。これは、取り巻く大気への注入ポート141を通じた流体のいかなる潜在的な逆流も最小限にするよう作用し、これは、プランジャーの完全な挿入の遅延が望ましい場合に特に有用である。プランジャー168に関してノッチ169が示され、そして前記のとおり、流体試料をチャンバー192内に分配した直後に、例えばチャンバー192の底に向かうプランジャー168の押圧、熱密封、一方向バルブ、又は自己密封ポート等の他の手段により、注入ポート141を閉鎖することは本開示の範囲内である。熱密封を密封法として用いる場合、装置内にパウチを挿入した際に、全てのチャンバーが熱密封されるように、シールバーを装置中に含めてもよい。
【0050】
例示的な方法では、使用者は、進入チャネル115aと関連する注入ポート141内に試料を注入して水を多様な他の注入ポート内に注入する。水は、進入チャネル115b、115d、115e、115g、115h、115j、115k、及び115lの各々に関連するチャンバー192内で、先に凍結乾燥されていた試薬を再水和する。以下の図6に示すように、1の単一のシールを通じて水を注入して、次いで、チャネルを介してチャンバー各々へ分配してもよいし、又は水を各チャンバーに独立に注入してもよい。あるいは、水を注入して乾燥試薬を再水和するのでなく、溶解試薬、核酸抽出試薬、及びPCR試薬等の湿った試薬を、装備190の適当なチャンバー192内に注入してもよい。
【0051】
進入チャネル115aと関連するプランジャー168の活性化に際して、チャネル114を介して、試料を三葉ブリスター122内に直接押し入れる。使用者はまた、残りのプランジャー168を押し込んで、装備190中のチャンバー192各々から内容物を出し、そして108を通じてリザーバー・ブリスター101内に入れてもよい。この時点で、パウチ110は、プロセシングのために装置内に装填される。図8に示す装置800は、図6のパウチ210のために設定されているが、装置800のブラダーの設定を修飾すると、装置800がパウチ110及び510又は他の設定のパウチと共に用いるのに適したものになることが理解される。
【0052】
1の例示的な例では、プランジャー168の押圧に際して、リザーバー・ブリスター101は、ここで、イソプロパノール中のDNA結合磁気ビーズを含有し、リザーバー・ブリスター102は、ここで、第1の洗浄溶液を含有し、リザーバー・ブリスター103は、ここで、第2の洗浄溶液を含有し、リザーバー・ブリスター104は、ここで、核酸溶出緩衝液を含有し、リザーバー・ブリスター105は、ここで、多重化第1段階プライマーを含む第1段階PCR試薬を含有し、リザーバー・ブリスター106は、ここで、プライマーを含まない第2段階PCR試薬を含有し、リザーバー・ブリスター107は、ここで、プライマーを含まずそして鋳型を含まない陰性対照PCR試薬を含有し、そしてリザーバー・ブリスター108は、ここで、鋳型を含む陽性対照PCR試薬を含有する。しかし、当該試薬は単なる例示であり、そして所望の反応及び最適化条件に応じて、他の試薬を用いてもよいことが理解される。
【0053】
パウチ110が装置800内に入り、試料が三葉ブリスター122に移動した時点で、試料をZS又はセラミックビーズ等の溶解粒子と共に攪拌することにより、試料を破壊に供してもよい。溶解粒子を三葉ブリスター122中で提供してもよいし、又は試料と共に三葉ブリスター122内に注入してもよい。図5の三葉ブリスター122は図1の三葉ブリスター22とほぼ同じ方式で操作され、2つのより下方の葉124、126を共に加圧し、そしてより上方の葉128及びより下方の葉124、126の間で交互に加圧する。しかし、例示するように、より下方の葉124、126は、より下方の葉24、26よりもはるかに丸く、チャネル130へビーズがスムーズに流動でき、ネクサス32で三角流分離装置が存在しなくても高速衝突しうる。三葉ブリスター22でのように、図5の三葉ブリスター122により、試料中の微生物、細胞、及びウイルス粒子は有効に溶解又は破壊される。幅が約3〜4mm、例として約3.5mmであるチャネル130は、溶解中、比較的ビーズが含まれず、高速衝突を提供するのに有効であることが見出されている。
【0054】
溶解後、リザーバー・ブリスター101上に位置するブラダーを加圧することにより、チャネル138を介して、より上方の葉128内に核酸結合性磁気ビーズを注入する。例として溶解中より穏やかに、三葉ブリスター122の内容物と磁気ビーズを混合し、溶液を、例として約1分間インキュベーションすると、核酸はビーズに結合しうる。
【0055】
次いで、チャネル143を介して「図8」のブリスター144内に溶液をポンピングし、ここで例として空気圧的に駆動されて装置中に収納される引き込み式磁石によりビーズが捕捉される。ビーズ捕捉プロセスは、ビーズミリング器具122の全ての葉124、126、及び128を加圧して始まる。これは、122の液体内容物の多くを、チャネル143を通じて、ブリスター144内に押し入れる。磁石をブリスター144のより下方の部分144bと接触させ、試料を数秒間インキュベーションして、磁石が溶液からビーズを捕捉することができ、次いでブリスター122に隣接するブラダーを減圧し、ブリスター部分144a及び144bに隣接するブラダーを加圧して液体をブリスター122内に戻す。全てのビーズが1回の通過で捕捉されないため、このプロセスを最大10回反復して、実質的に全てのビーズをブリスター144中に捕捉してもよい。次いで、液体をブリスター144の外に押し出し、磁気ビーズ及び捕捉された核酸のみを残して後の2回の洗浄で洗浄試薬をブリスター144内に導入する(それぞれ、チャネル145及び147を介して、リザーバー・ブリスター102及び103から)。各洗浄中、洗浄試薬を含有するリザーバー・ブリスター上に位置するブラダーを加圧し、内容物をブリスター144内に押し入れる。磁石を引っ込め、ブリスター144の各葉144a及び144bを覆う2つのブラダー各々を交互に加圧することにより、磁気ビーズを含有するペレットを破壊する。より上方の葉144aを圧縮すると、液体内容物がより下方の葉144b内に押し入れられ、より下方の葉144bを圧縮すると、内容物がより上方の葉144a内に押し入れられる。ブリスター144中の溶液をより上方の葉144a及びより下方の葉144b間で攪拌することにより、磁気ビーズから不純物が有効に洗い流される。ビーズのペレットが乱されないままにしておく不適当な攪拌、及びビーズ表面から核酸を洗い流し、洗浄試薬と共に失う過剰な攪拌の間で、バランスを維持する。各洗浄周期後、ブリスター144において、磁石により磁気ビーズを捕捉し、洗浄試薬を、例として三葉ブリスター122内に押し入れ、このブリスターはここで廃棄物貯蔵所として働く。しかし、使用したリザーバー・ブリスターもまた、廃棄物貯蔵所として働くこともでき、また他のブリスターが特に廃棄物貯蔵所として提供されてもよいことが理解される。
【0056】
次いで、チャネル149を介して、リザーバー・ブリスター104由来の核酸溶出緩衝液をブリスター144内に注入し、試料をもう一度攪拌し、磁石を用いて磁気ビーズを再捕捉する。ブリスター144中の流体混合物には元来の試料由来の核酸が含まれる。ブリスター144に加圧すると、核酸試料がチャネル152を介して第1段階PCRブリスター161に移動し、試料は多数のプライマーセットを含有する第1段階PCRマスターミックスと混合され、このPCRマスターミックスは、チャネル162を介してリザーバー・ブリスター105から提供される。望ましい場合、試料及び/又は第1段階PCRマスターミックスを混合前に加熱してホットスタートの利点をもたらしてもよい。場合によっては、第1段階PCRの前に、RNA標的の逆転写のための成分を提供してもよい。あるいは、RT酵素、例として熱安定性RT酵素を第1段階PCRマスターミックス中で提供して、RNA標的を同時逆転写させてもよい。本明細書に開示する任意の態様では、第1段階PCR混合物中にRT酵素が存在していてもよいことが理解される。以下に見られるように、図5のパウチ110は、最大10のプライマーセット用に設定されるが、設定を改変してもよく、任意の数のプライマーセットを用いてよいことが理解される。ブリスター161上に位置するブラダーを低圧で加圧して、ブリスター161の内容物を、ブリスター161の他方の側面上の加熱/冷却素子、例としてペルチェ素子と密接に接触させるようにする。ブリスター161上の加圧は、加熱/冷却素子との接触が確実に優れる程度に十分でなければならないが、流体がブリスター161から押し出されないように、十分に穏やかでなければならない。加熱/冷却素子を、例として約60℃〜約95℃の間で、温度周期処理する。例として、約15〜20周期、温度周期処理を行って、存在する1又はそれ以上の核酸標的の増幅を生じる。又は例として、プラトー期前に温度周期処理を停止して対数期中に又は対数期前であってさえ、停止できる。1の例では、検出の最低レベルに到達せずに、試料中の所望の単位複製配列を単に濃縮することが望ましい場合もある。本明細書に援用される米国特許第6,605,451号を参照されたい。
【0057】
次いで、チャネル152を介してブリスター144内に試料の大部分を戻し、少量(例として約1〜5%)の増幅試料のみをブリスター161中に残してチャネル163を介してリザーバー・ブリスター106から第2段階PCRマスターミックスを提供することにより、増幅された試料を場合によっては希釈する。例としてブリスター106及び161間でチャネル163を介して往復して移動させて試料を完全に混合する。望ましい場合、第2段階増幅前に、伸長温度より高く、例として少なくとも60℃に反応混合物を加熱してもよい。次いで、チャネル165を通じて、第2段階増幅ゾーン180中央の低体積ブリスター182のアレイ内に試料を押し入れる。10の例示的な低体積ブリスター182には各々、異なるプライマー対が含まれてもよく、このプライマー対は、第1段階増幅のプライマー対の1つと本質的に同じであるか、又はより短い単位複製配列を増幅するため、第1段階プライマー対内の「入れ子」であるか、いずれかである。プライマーは、ここで試料により水和されて増幅混合物が完成する。各々リザーバー・ブリスター107及び108の内容物を加圧し、チャネル166を介してリザーバー・ブリスター107から標的DNAを含まずに、又はチャネル167を介してリザーバー・ブリスター108から対照DNAを含んでのいずれかで、PCRマスターミックスを押し入れることにより、陽性及び陰性対照試料もまた導入する。例示するように、陽性対照ブリスター183及び陰性対照ブリスター181が各々5つあり、これらを2倍に多重化して、10の異なる第2段階増幅反応に必要な対照を提供してもよい。この設定は単なる例示であり、そして任意の数の第2段階ブリスターを提供してもよいことが理解される。
【0058】
例として、第2段階増幅に用いられるPCRマスターミックスはプライマーがないが、そうでなければ完全である。しかし、「不完全」PCRマスターミックスは、他のPCR成分がなくてもよい。1の例では、第2段階PCRマスターミックスは、水又は緩衝液のみであり、これを次いで、場合によっては希釈された第1段階PCR増幅産物と混合する。全ての残りの成分が予め提供されている小体積のPCR反応ブリスターに、この混合物を移動させる。望ましい場合、全ての残りの成分を共に混合し、そして小体積PCR反応ブリスター内に、単一の混合物としてスポッティングしてもよい。あるいは、図5bに例示するように、各成分を小体積PCR反応ブリスター182の別個の領域上にスポッティングしてもよい。図5bに示すように、4つの領域が存在し、例としてdNTPが領域182aにスポッティングされ、プライマーが182bにスポッティングされ、ポリメラーゼが182cにスポッティングされ、マグネシウム化合物が182dにスポッティングされる。成分を別個にスポッティングし、成分を再水和する前に試料混合物を加熱すると非特異的な反応が最小限になりうる。成分の任意の組み合わせをこの方式でスポッティングしてもよく、ブリスターの1又はそれ以上の領域内に成分をスポッティングするこの方法は、本発明の任意の態様で用いてよいことが理解される。
【0059】
小体積PCR反応ブリスター181、182、及び183につながるチャネル165、166、及び167が密封され、空気圧ブラダーは、サーマルサイクリングのために、加熱/冷却素子、例としてペルチェ素子に向かってアレイを穏やかに加圧する。周期処理パラメーターは、独立に、第2段階サーマルサイクリングのためにセットされてもよい。例として、アレイ上に、励起供給源、例として青い光(450〜490nm)の焦点を合わせて、生じる蛍光発光、例として510nmを超える蛍光発光を画像化することにより、反応をモニターする。
【0060】
上記例では、ピンチバルブは説明されていない。しかし、試料がブリスターの1つに含められることが望ましい場合、特定のブリスターに出入りするチャネル上に位置する空気圧アクチュエーターが加圧され、ピンチバルブが生成されてチャネルが閉鎖されることが理解される。逆に、試料をブリスターの1つから移動させることが望ましい場合、適当な空気圧アクチュエーターを減圧して、チャネルを通じて試料を流動させる。
【0061】
図5で前記のパウチには、試薬リザーバー・ブリスター101〜108が含まれ、使用者は、例として装置内へのパウチ110の挿入前に、パウチ110のプラスチックフィルム部分117中の試薬リザーバー・ブリスター101〜108内に、装備190から試薬を注入する。異なる温度で、多様なブリスターの内容物を維持する機能があることを含め、図5の試薬リザーバー・ブリスターの使用には利点があるが、不都合な点もまたいくつかある。操作者は、装備190からリザーバー・ブリスター101〜108に試薬を移動させるのに関与し、これはしばしば機械の外で、したがって活性化されたピンチバルブを伴わずに行われるため、時に、試薬がリザーバー・ブリスターから作業中のブリスターに漏出しうる。リザーバー・ブリスター中の試薬は、調製及び装填の間、暴露される。これらが加圧されるか、圧搾されるか、又は軽くぶつけられた場合であっても、試薬は利用可能なチャネルを通じて漏出しうる。試薬がかなり喪失する場合、反応は完全に失敗するかもしれない。さらに、操作中、リザーバー・ブリスター101〜108から押し出される試薬の量は、ある程度変動する場合もあり、結果が一貫されない。装備190への試薬導入及び装備190から試薬リザーバー・ブリスター101〜108への試薬の移動を自動化すると、当該問題の多くが解決され、これは本発明の範囲内である。
【0062】
図6のパウチ210は、直接注入アプローチを用いることにより、異なる方式で、当該問題の多くに対処し、装置自体がプランジャー268を、例として空気圧ピストンを介して移動させて試薬が必要になるにつれて、多様な作業ブリスター内に試薬を押し入れる。図6の態様では、図5のリザーバー・ブリスター101〜108中に試薬を保存せず、試薬を装備290の多様なチャンバー292内に導入して、必要になるまでそこで維持する。適当な時点でピストン268を空気圧操作して、測定量の試薬を適当な反応ブリスターに導入する。上記問題の多くへの対処に加え、パウチ210はるかによりコンパクトな形状で、より小さい装置設計が可能になり、パウチ210のチャネルはより短く、流体流動により優れ、チャネル中の試薬喪失が最小限になる。
【0063】
図6の1の例示的な態様では、試験しようとする試料(100μl)及び溶解緩衝液(200μl)を含む300μlの混合物を、注入ポート241a内に注入する。シール239bを介して、装備290内に水もまた注入し、チャネル293(影に示す)を介して、各々、チャンバー292b〜292l中に乾燥型で予め提供されていた最大11の異なる試薬を水和する。当該試薬は、例として、凍結乾燥PCR試薬、DNA抽出試薬、洗浄溶液、イムノアッセイ試薬、又は他の化学実体を含んでもよい。図6の例に関して、試薬は、核酸抽出、第1段階多重PCR、多重反応の希釈、及び第2段階PCR試薬の調製、並びに対照反応のためのものであってもよい。図6に示す態様では、注入する必要があるのは、ポート241a中の試料及びポート241b中の水のみである。
【0064】
図6に示すように、シール293bを介して注入された水は、チャネル293を介して多様なチャンバーに分配される。この態様では、試料及び水をパウチ210に注入しさえすればよい。しかし、水を独立に各チャンバー292内に注入してもよいことが理解される。さらに、多様なチャンバー292中に乾燥試薬を提供し、水の注入に際して水和するのでなく、特定の湿った試薬を各チャンバー内に注入してもよいことが理解される。さらに、1又はそれ以上のチャンバー292に水のみを提供してもよく、必要な試薬を適当な反応ブリスター中で乾燥して提供してもよいことが理解される。特定の反応に必要であることにより指示されるような上記の多様な組み合わせが本発明の範囲内である。
【0065】
図6に見られるように、装備290の底面297上に、所望による突起213を提供する。示すように、突起213は、各進入チャネル215内に位置する。しかし、他の設定ができる。突起213は、進入チャネル215を開放しておくように補助し、プランジャー268を押圧した場合に、進入チャネル215をピンチオフする方式で底面297が別の平らな表面とかみ合うのを防ぎ、これにより、プランジャー268の活性化の際に逆流を防ぐ一助となる。当該突起は、本発明の多様な任意のパウチ上で用いてよい。
【0066】
水をパウチ内に注入して、装備中の多数のチャンバーで多数の乾燥試薬を水和する態様では、注入ポート及び多くのチャンバー間のチャネルを閉鎖する手段が望ましい。チャネルが閉鎖されないと、各プランジャーを活性化した際に各チャンバーの内容物のある程度がチャネルに戻る場合もあり、これが潜在的に隣のチャンバーに混入し、そしてチャンバー中に含有されてそしてチャンバーから送達される体積が改変する。このチャネルを閉鎖するいくつかの方法が用いられてきており、これには、上記ノッチ付きプランジャー268を回転させること、及びチャネルに渡ってプラスチックフィルムを熱密封し、それによりチャネルを永久に閉鎖すること、及びピンチバルブとしてチャネルに加圧することがあげられる。他の閉鎖もまた使用でき、例えば装備内に構築されたバルブ、例えば一方向バルブがある。
【0067】
流体がチャンバー292内に装填されてパウチ210が装置内に装填された後、プランジャー268aを、例として空気圧ピストンの活性化により押圧し、チャネル214を経由した三葉ブリスター220内に入る試料のバランスを取らせる。図1及び5に示す態様と同様に、三葉ブリスター220の葉224、226、及び228を、図7〜9に示すブラダー・アセンブリー810の作用ブラダー824、826、及び828を介して連続して圧縮し、葉間の狭いネクサス232を通じて液体を押し入れ、高速衝突を駆動し、試料を剪断し、例として硬くて開けにくい胞子、細菌、及び真菌由来の核酸を含めて、核酸を遊離させる。細胞溶解は、適当な期間、例えば0.5〜10分間続ける。
【0068】
細胞が適当に溶解された時点で、プランジャー268bを活性化し、チャネル236を介して、チャンバー292b中に保存された核酸結合性磁気ビーズを三葉ブリスター220のより上方の葉228内に注入する。試料を磁気ビーズと混合し、混合物を適当な期間、例としておよそ10秒間〜10分間インキュベーションする。
【0069】
ブラダー826の作用により、チャネル238を通じてブリスター244内に試料及びビーズの混合物を押し入れ、次いでブラダー844の作用によりブリスター246内に押し入れ、ここで図8に示すブリスター245に隣接する装置800中に位置する引き込み式磁石850が、溶液から磁気ビーズを捕捉し、ブリスター246の内部表面に対してペレットを形成する。次いで、ブリスター246上に位置する空気圧ブラダー846が、ブリスター246から液体を押し出し、そしてブリスター244を通じて、そしてブリスター222に戻し、該ブリスターはここで、廃棄物貯蔵所として用いられる。しかし、図5で上記したように、他の廃棄物貯蔵所が本発明の範囲内である。プランジャー268c、268d、及び268eの1つを活性化して、チャネル245を介してブリスター244に、そして次いでチャネル243を介してブリスター246に洗浄溶液を提供してもよい。場合によっては、磁石850を引っ込めて、そしてブラダー844及び846を交互に加圧して、チャネル243を介してブリスター244及び246からビーズを往復して移動させて、磁気ビーズを洗浄する。磁気ビーズを洗浄した時点で、磁石850を活性化して、ブリスター246中で磁気ビーズを再捕捉し、次いで、洗浄溶液をブリスター222に移動させる。このプロセスを必要に応じて反復して、核酸結合性磁気ビーズから溶解緩衝液及び試料破片を洗浄する。例として、チャンバー292c、292d、及び292e中の洗浄試薬を各々1回用いて、3回の洗浄を行う。しかし、洗浄がより多くても少なくても本発明の範囲内であることが理解される。より多くの洗浄が望ましい場合、より多くのチャンバー292を提供してもよい。あるいは、各チャンバー292は、より多くの体積の流体を保持してもよく、プランジャーの活性化が、各活性化に際して、チャンバーから体積の一部のみを押し出してもよい。
【0070】
洗浄後、チャンバー292f中に保存される溶出緩衝液は、チャネル247を介して、ブリスター248に移動し、磁石は引っ込められる。チャネル252を介して溶液をブリスター246及び248の間で循環させ、ブリスター246中で磁気ビーズのペレットを破壊し、捕捉された核酸がビーズから解離して、溶液中に流れうる。磁石850をもう一度活性化して、ブリスター246中で磁気ビーズを捕捉し、溶出した核酸溶液をブリスター248内に押し入れる。
【0071】
プランジャー268hを押圧し、そしてチャンバー292h由来の第1段階PCRマスターミックスをブリスター248中の核酸試料と混合する。場合によっては、ブラダー848及び864を交互に活性化させて、チャネル253を介して248及び264の間で混合物を移動させて混合物を混合する。数周期混合した後、溶液はブリスター264中に含まれ、ここで第1段階多重PCRを行う。望ましい場合、例として第1段階PCRマスターミックスをブリスター264内に移動させて、又はブリスター248に隣接するヒーターを提供して、第1段階PCRマスターミックスを予熱する間、混合前に、試料をブリスター246中に保持する。上記のように、予熱することにより、ホットスタートPCRの利点がもたらされる。図8に例示する装置800は、試料を加熱して冷却するペルチェに基づく熱サイクラー886及び888を特徴とする。しかし、上記のように、他のヒーター/クーラーデバイスを用いてよいことが理解される。場合によっては、熱サイクラー886がブリスター248及び264両方を加熱しそして冷却するように配置して、ブリスター248及び264の間の混合を温度周期処理中継続してもよい。当該混合は、いくつかの態様では、第1段階PCR反応を改善することが見出されている。また、2以上の異なるブリスター中で温度を変化させて、エネルギー消費を最小にし、サーマルサイクリング速度を最大にすることにより、サーマルサイクリングを達成してもよい。例えば、ブリスター248中で温度を95℃に、そしてブリスター264中で65℃に維持してもよく、当該ブリスター間で試料を移動させると、熱が試料にそして試料から効率的に移動し、サーマルサイクリングが迅速でそして正確になりうる。温度周期処理は、例として、15〜20周期行われるが、上記のように、適用に応じて、他のレベルの増幅が望ましい場合もある。以下のように、第2段階の増幅ゾーン280は、18の第2段階反応で、増幅を検出するように設定される。したがって、ブリスター264中で、PCR反応において、18の異なるプライマー対が含まれてもよい。
【0072】
別のホットスタート法では、ブリスターの1つ、例としてブリスター264中で提供されたプライマーを含めて、パウチ210を製造する。1の態様では、プライマーを別個に凍結乾燥して、次いで、製造中に、脆弱なペレットとしてブリスター264内に導入する。第1段階PCR前に、例として試料をブリスター246から溶出させ、ブリスター264に押し込んで、プライマーペレットを再水和する。ブリスター248及び264に隣接して位置するペルチェ886を48℃に加熱し、PCRマスターミックスをブリスター248に押し込む。例として10秒間保持して、この間、2つのブリスターが48℃に到達した後、ブリスター248及び264の間の混合を開始する。したがって、成分が別個に48℃に到達するまで、酵素及びdNTPがブリスター248中に残り、試料及びプライマーの大部分はブリスター264中に残る。しかし、48℃を選択したのは、第1段階増幅、及び50℃まで活性であるAMVを用いたRTを同時に行う場合に用いるためであることが理解される。RTが必要でない場合、又はより熱安定性が高いRT酵素を用いる場合、プライマー融点又は特定の第1段階増幅プロトコル中の他の要因に応じて、2つのブリスター248及び264の一方又は両方を58℃まで、又はさらにより高温で加熱してもよい。このホットスタート法を本発明の任意の態様で用いてよいことが理解される。
【0073】
別の態様では、第1段階PCR反応の複雑性を軽減するため、ブリスター248を2以上のブリスターに分割してもよい。多重反応の非特異的産物の数は、混合物中のプライマー数の二乗(又は場合によってはより高次の指数)に増加する一方、アッセイ感度の軽減は投入試料量の線形関数である。したがって、例えば、第1段階PCRを2つの反応に分けて、各々、この態様の単一反応の体積の半分とすると、感度は2倍低下するが、非特異的反応の量及び複雑性は、ほぼ1/4であろう。ブリスター248をより多くのブリスターに分割する場合、ブリスター264を、ブリスター248の数と等しい数のブリスターに分割してもよい。各ブリスター248は、各チャネル253を介して、各ブリスター264に連結される。各ブリスター264には、全てのプライマーサブセットを含むペレットを提供する。各ブリスター248にわたりブリスター246由来の試料を分割し、各ブリスター248を全ての他のものから密封して、上記のように、ブリスター248及び264の各対を用いてサーマルサイクリングが進行する。サーマルサイクリング後、試料を再びブリスター266内で合わせてもよいし、又は個々に第2段階ブリスターの別個のセットに送ってもよい。
【0074】
第1段階PCRが所望の周期数で進行した後、図5の態様に関して上記のように、大部分の試料をブリスター248に戻し、少量を残して、チャンバー292iから第2段階PCRマスターミックスを添加して、試料を希釈してもよい。あるいは、チャネル249を介して、292i由来の希釈緩衝液をブリスター266に移動させて、次いで、流体をブリスター264及び266間で往復して移動させて、ブリスター264中で増幅試料と混合してもよい。混合後、ブリスター264中に残った希釈試料の一部を、三葉ブリスター222に押し出すが、このブリスターは廃棄物貯蔵所である。望ましい場合、チャンバー292j及び292k由来の希釈緩衝液を用いて次いでチャンバー292gから第2段階PCRマスターミックスをいくつか又は全ての希釈された増幅試料に添加して、希釈を数回反復してもよい。希釈工程数を改変、あるいは希釈緩衝液又は第2段階PCRマスターミックスと混合する前に廃棄する試料の割合を改変すれば、希釈レベルを調節できることが理解される。望ましい場合、試料及び第2段階PCRマスターミックスの当該混合物を、第2段階増幅用の第2段階ブリスター282に移動させる前に、ブリスター264中で予熱してもよい。上記のように、予熱すると、第2段階PCR混合物で、ホットスタート成分(酵素、化学薬品、又は別のもの)が必要でなくなれうる。
【0075】
例示的な第2段階PCRマスターミックスは、プライマー対がなく不完全であり、18の各第2段階ブリスター282は、特異的PCRプライマー対を予め装填している。望ましい場合、第2段階PCRマスターミックスは他の反応成分がなくてもよく、次いで、当該成分がまた、第2段階ブリスター282中に予め装填されていてもよい。前記例と共に上記のように、各プライマー対は、第1段階PCRプライマー対と同一であってもよいし、又は第1段階プライマー対内で入れ子であってもよい。ブリスター264から第2段階ブリスターに試料が移動すると、PCR反応混合物が完成する。チャンバー292l由来の対照試料もまた、チャネル267を介して対照ブリスター283に移動する。対照試料は、所望のとおり陽性又は陰性対照であってもよい。例として、各パウチは、プロセス中の各工程の操作を認証し、陽性結果が、先に増幅された核酸の自己混入の結果でないことを立証する、対照反応を含有するであろう。しかし、これは、多くのプロトコルにおいて、特に非常に多重化された反応に関しては実際的でない。適当な対照を提供する1の例示的な方法は、パン酵母等の種を試料にスパイク処理する工程を伴う。他の核酸と共に、酵母から核酸が抽出される。第1及び第2段階PCR反応は、酵母ゲノムからDNA及び/又はRNA標的を増幅する。例として、イントロンにわたるプライマー配列を準備して、スプライシングされたプレmRNA由来のmRNA配列を用いて、RNA特異的標的配列を生成してもよい。参照標準に対して酵母コピー数を定量的に分析すると、系の各成分が機能するということを実質的に認証できる。多くの第2段階アッセイ各々に関する陰性対照反応にはさらに問題がある。平行又は別個の実行のいずれかで、対照反応を実行することが望ましい場合もある。
【0076】
ブラダー・アセンブリー810のブラダー882を活性化すると各第2段階ブリスター282、283内に試料が密封され、ブラダー880を活性化すると第2段階ブリスター282、283が穏やかに加圧され、第2段階ブリスター282、283がヒーター/クーラーデバイスと接触する。第2段階増幅ゾーン280上にあるウィンドウ847は、PCR中及び反応産物のDNA融解曲線分析中のアレイで蛍光モニターすることができる。
【0077】
図6のパウチ210は、密封されない領域255及び密封されない領域256等、いくつかの密封されない領域があることが注目される。当該密封されない領域は、この例示的な態様では、いかなる反応にも関与しないブリスターを形成する。むしろ、当該密封されない領域は、作業ブリスター及びチャネル間に空間を提供する。いくつかの製造プロセスにおいて、全ての使用されない空間中で密封されるパウチに比較した際、255及び256等の密封されない領域が提供された場合、おそらくフィルム材料中で問題となるしわが減少することにより、ときに、漏出が軽減することが見出されている。当該密封されない領域は、場合によっては、任意のパウチ態様上に提供されてもよい。
【0078】
図8は、パウチ210と共に用いうる例示的な器具800を示す。装置800には、ケーシングの壁を形成できるか又はケーシング内にマウントできる支持体メンバー802が含まれる。装置800にはまた、支持体メンバー802に対して場合によっては移動でき、パウチ210を挿入及び抜き取りできる、第2の支持体メンバー804も含まれる。移動可能支持体メンバー804をトラック上にマウントしてもよいし、又は多様な方式のいずれで、支持体メンバー802に対して移動させてもよい。例として、パウチ210を装置800内に挿入すると、ふた805はパウチ210上に適合する。別の態様では、支持体メンバー802及び804両方を固定してもよく、他の機械的手段により、又は空気圧により、パウチ210を適所に保持してもよい。
【0079】
例として、ブラダー・アセンブリー810及び空気圧バルブ・アセンブリー808を移動可能メンバー802上にマウントする一方、ヒーター886及び888を支持体メンバー802上にマウントする。しかし、この配置は単なる例示であり、そして他の配置もできることが理解される。ブラダー・アセンブリー810及び空気圧バルブ・アセンブリー808を移動可能支持体メンバー804上にマウントした際、空気圧アクチュエーターがパウチ210と接触して配置されるように、当該空気圧アクチュエーターをパウチ210に向かって移動させてもよい。パウチ210を装置800内に挿入して移動可能支持体メンバー804を支持体メンバー802に向かって移動させると、パウチ210の多様なブリスターは、ブラダー・アセンブリー810及び空気圧バルブ・アセンブリー808の多様な空気圧ピストンに隣接した位置になるため、空気圧アクチュエーターを活性化すると、パウチ210の1又はそれ以上のブリスターから液体を押し出しうるか、又はパウチ210の1又はそれ以上のチャネルを持つピンチバルブを形成しうるようになる。パウチ210のブリスター及びチャネル並びにブラダー・アセンブリー810の空気圧アクチュエーター及び空気圧バルブ・アセンブリー808間の関係は、図9及び10で、以下により詳細に記載される。
【0080】
各空気圧アクチュエーターには、1又はそれ以上の空気圧装備がある。例えば、ブラダー・アセンブリー810のブラダー824には空気圧装備824aがあり、空気圧ピストン843には関連する空気圧装備843aがある。例示的な態様では、ブラダー・アセンブリー810の各空気圧装備は、通路816を通じて、移動可能支持体メンバー804中に伸長し、ここでホース878が、バルブ899を介して、各空気圧装備を圧縮空気供給源895に連結する。例示的な態様では、通路816は、圧縮空気供給源895へのアクセスを提供するだけでなく、通路はまた、ブラダー・アセンブリー810の多様な構成要素を並列させる一助となり、ブラダーは、パウチ210のブリスターと適当に並列する。
【0081】
同様に、空気圧バルブ・アセンブリー808もまた、移動可能支持体メンバー804上にマウントされるが、他の設定もできることが理解される。例示的な態様では、空気圧バルブ・アセンブリー808上のピン858を、移動可能支持体メンバー804上のマウント開口部859中にマウントして通路816を通じて、空気圧ピストン843、852、853、及び862は、移動可能支持体メンバー804中に伸長して、パウチ210に接触する。例示するように、ブラダー・アセンブリーは、移動可能支持体メンバー804の第1の側面811上にマウントされる一方、空気圧バルブ・アセンブリー808は、移動可能支持体メンバー804の第2の側面812上にマウントされる。しかし、空気圧ピストン843、852、853、及び862は、通路816を通じて伸長するため、空気圧バルブ・アセンブリー808の空気圧ピストン及びブラダー・アセンブリー810の空気圧ブラダーは、共に働いて、パウチ210に必要な空気圧アクチュエーターを提供する。
【0082】
上記のように、ブラダー・アセンブリー810及び空気圧バルブ・アセンブリー808の空気圧アクチュエーターの各々には関連空気圧装備がある。図8には、いくつかのホース878しか示していないが、ホース878を介して、各空気圧装備が圧縮ガス供給源895に連結されていることが理解される。圧縮ガス供給源895は、圧縮装置であってもよいし、又は圧縮ガス供給源895は、二酸化炭素シリンダー等の圧縮ガスシリンダーであってもよい。圧縮ガスシリンダーは、携帯性が望ましい場合、特に有用である。他の圧縮ガス供給源が本発明の範囲内である。
【0083】
装置810のいくつかの他の構成要素もまた、圧縮ガス供給源895に連結されている。支持体メンバー802の第1の側面813上にマウントされている磁石850が例として配備され、そしてホース878を経由した圧縮ガス供給源895からのガスを用いて引き込まれるが、磁石850を移動させる他の方法が当該技術分野で公知である。磁石850は、支持体メンバー802中の凹所851中にある。凹所851が支持体メンバー802を通じた通路となり、こうして磁石850がパウチ210のブリスター246と接触できることが理解される。しかし、磁石850を配備した場合に、磁石850がブリスター246で十分な磁場を提供する程度に近接であり、かつ、磁石850を引っ込めた場合、磁石850がブリスター246中に存在するいかなる磁気ビーズにも有意に影響を及ぼさない限り、支持体メンバー802の材料に応じて、凹所851は、支持体メンバー802を通じて最後まで伸長しなくてよいことが理解される。磁石850の引き込みに言及するが、電磁石を用いてもよく、電磁石を通じた電気の流れを調節することにより、電磁石を活性化し、かつ不活性化してもよい。したがって、本明細書は、磁石を引き抜くか又は引っ込めることを記載するが、当該用語は、磁場を撤回する他の方法を取り込むように十分に広いことが理解される。空気圧連結は、空気圧ホース又は空気圧マニホールドであって、必要なホース又はバルブの数を減少させてもよいことが理解される。
【0084】
支持体802上にマウントされている、空気圧ピストンアレイ869の多様な空気圧ピストン868もまた、ホース878を介して、圧縮ガス供給源895に連結されている。空気圧ピストン868を圧縮ガス供給源895に連結する2つのホース878のみが示されているが、空気圧ピストン868の各々が圧縮ガス供給源895に連結されていることが理解される。12の空気圧ピストン868が示される。パウチ210が装置800内に挿入されると、12の空気圧ピストン868が配置されて、パウチ210の各12のプランジャー268を活性化する。空気圧ピストン868が活性化される際に、ふた805が装備290を適所に保持するように、ふた805がパウチ210上を閉鎖すると、ふた805上のリップ806が装備290の支持を提供する。装備290の他の支持が本発明の範囲内にあることが理解される。
【0085】
加熱/冷却デバイス対、例としてペルチェヒーターを支持体802の第2の側面814上にマウントする。第1段階ヒーター886は、第1段階PCRのため、ブリスター264の内容物を加熱し、そして冷却するよう位置する。第2段階ヒーター888は、第2段階PCRのため、パウチ210の第2段階ブリスター282及び283の内容物を加熱して冷却するよう位置する。しかし、当該ヒーターはまた、他の加熱目的にも使用でき、特定の適用に適当であるように、他のヒーターを含んでもよいことが理解される。
【0086】
望ましい場合、試料を実際に特定のブリスター内に押し入れるかどうかに関して、フィードバックを提供するため、装置800中にフィードバック機構(未提示)を含めてもよい。例示的なフィードバック機構には、温度又は圧センサー、あるいは特に蛍光又は着色色素が含まれる場合、光学検出装置が含まれる。当該フィードバック機構は、例として、支持体メンバー802又は804のいずれか上にマウントされていてもよい。例えば、圧センサーをブリスター264の位置に隣接する支持体802上にマウントしてもよい。試料が仮にブリスター264に移動する場合、圧センサーが押圧されたならば、試料プロセシングを持続しうる。しかし、圧センサーが押圧されなければ、試料プロセシングは停止するか、又はエラーメッセージがスクリーン892上に示される場合がある。ブリスターの任意の組み合わせ又は全てが、フィードバック機構をもち、パウチを通じた試料の適当な移動に関してフィードバックを提供してもよい。
【0087】
蛍光検出が望ましい場合、光学アレイ890を提供してもよい。図8に示すように、光学アレイ890には、光源898、例としてフィルター処理されたLED光源、フィルター処理された白色光、又はレーザー照射、及びカメラ896が含まれる。移動可能支持体804を通じたウィンドウ847は、光学アレイ890に、パウチ210の第2段階増幅ゾーン280へのアクセスを提供する。カメラ896には、例として、各々、パウチ210中の第2段階ブリスター282、823に対応する、複数の光検出装置がある。あるいは、カメラ896は、第2段階ブリスター282、283の全てを含有する画像を撮ってもよく、そしてその画像を第2段階ブリスター282、283の各々に対応する別個のフィールドに分けてもよい。設定に応じて、光学アレイ890は固定されていてもよいし、又は光学アレイ890は、1又はそれ以上のモーターに取り付けられた移動装置上に置かれて、そして各個々の第2段階ブリスター282、283からのシグナルを得るよう移動してもよい。他の配置もできることが理解される。
【0088】
示すように、コンピュータ894は、圧縮空気供給源895のバルブ899を制御して装置800の空気力学の全てを制御する。コンピュータ894はまた、ヒーター886及び888、並びに光学アレイ890も制御する。当該構成要素は各々、電気的に、例としてケーブル891を介して連結されるが、他の物理的又はワイヤレス連結が本発明の範囲内である。コンピュータ894は装置890内に収納されていてもよいし、又は装置890の外部であってもよいことが理解される。さらに、コンピュータ894には、構成要素のいくつか又は全てを制御する内蔵型回路基板が含まれていてもよく、そしてまた、光学アレイからデータを受け取り、そしてディスプレイするデスクトップ又はラップトップPC等の外部コンピュータも含まれてもよい。情報、及び温度、周期数等の変数をインプットするためのキーを含むインターフェース893、例としてキーボードインターフェースが提供されてもよい。例として、ディスプレイ892もまた提供される。ディスプレイ892は、例えば、LED、LCD、又は他の当該ディスプレイであってもよい。
【0089】
図9は、装置800の作動中のブラダー・アセンブリー810及びパウチ210の間の関係を示す。ブラダー・アセンブリーは、サブアセンブリー815、817、818、819、及び822を含む。ブラダー・サブアセンブリー815のブラダー809は大きいため、ブラダー・サブアセンブリー815には、例として2つの空気圧装備815a及び815bがある。ブラダー809は、チャンバー292(図6に示すようなもの)をパウチ210のプラスチックフィルム部分217から閉鎖するのに用いられる。1のプランジャー268を押圧すると、空気圧装備815a及び815bの一方又は両方が、ブラダー809を収縮できる。チャンバー292の1つから流体が通過した後、ブラダー809を再加圧し、チャンバー214、236、245、247、及び249を密封する。例示的なブラダー・サブアセンブリー815には、1のブラダー809しかないが、他の設定、例としてチャネル214、236、245、247、及び249の各々が、それ自体の関連するブラダー又は空気圧ピストンをもつ設定できることが理解される。ブラダー・サブアセンブリー822は、例として、3つのブラダー824、826、及び828を含む。上記のように、ブラダー824、824、及び828は、細胞溶解のため、三葉ブリスター222を駆動する。例示するように、ブラダー824、826、及び828は、対応するブリスター224、226、228よりわずかに大きい。膨張すると、ブラダー表面が幾分ドーム状になり、そしてわずかに大きいサイズのブラダーが、対応するブリスターの全表面上によく接触でき、圧がより均一になり及びブリスターの排気がより優れることが見出されてきている。しかし、いくつかの状況では、個々のブリスターの完全な排気は望ましい場合も不要な場合もあり、大きさがより大きいか又はより小さいブラダーを用いて、排気されるブリスター体積を制御してもよい。ブラダー・サブアセンブリー817には4つのブラダーがある。ブラダー836は、チャネル236のピンチバルブとして機能する一方、ブラダー844、848、及び866は、それぞれ、ブリスター244、248、及び266に対して加圧するよう設定される。ブラダー・サブアセンブリー818には、2つのブラダー846及び864があり、これらはそれぞれ、ブリスター246及び264に対して加圧するよう設定される。最後に、ブラダー・サブアセンブリー819は、第2段階増幅ゾーン280を制御する。ブラダー865は、チャネル265及び267のピンチバルブとして作用する一方、ブラダー882は、第2段階ブリスター282及び283に穏やかに加圧し、第2段階ブリスターをヒーター888と緊密に接触させる。ブラダー・アセンブリー810は5つのサブアセンブリーと共に提供されるが、この設定は単なる例示であり、任意の数のサブアセンブリーを用いてもよいし、又はブラダー・アセンブリー810が単一の完全なアセンブリーとして提供されてもよいことが理解される。
【0090】
図10は、同様に、装置800の作動中の空気圧バルブ・アセンブリー808及びパウチ210間の関係を示す。空気圧バルブ・アセンブリー808には、ブラダーではなく、4つの空気圧ピストン842、852、853、及び862がある。当該空気圧ピストン842、852、853、及び862は、各々圧縮空気により駆動され、チャネル242、252、253、及び262に加圧する。ピストンの直径はかなり狭いため、ブラダー・サブアセンブリー817及びブラダー・サブアセンブリー818の間に適合して、チャネル242、252、253、及び262のためのピンチバルブを提供し、チャネル242、252、253、及び262をかなり短くしうる。しかし、望ましい場合、空気圧ピストン842、852、853、及び862をブラダーで置き換えてもよく、これらはブラダー・アセンブリー810に含まれて、空気圧バルブ・アセンブリー808を不要としてもよい。ブラダー及び空気圧ピストンの任意の組み合わせが本発明の範囲内であることが理解される。当該技術分野で公知のように、パウチ210のチャネル及びブリスターに対して加圧する他の方法が本発明の範囲内であることもまた理解される。
【0091】
図15は、図6のパウチ210と類似のパウチ510を示す。進入チャネル515a〜515lを含む装備590は、進入チャネル215a〜215lを含む装備290と類似である。各チャネル538、543、552、553、562、及び565を含むブリスター544、546、548、564、及び566は、パウチ210の各チャネル238、243、252、253、262、及び265を含むブリスター244、246、248、264、及び266と類似である。パウチ210のチャネル245、247、及び249は、パウチ510上のチャネル545a〜c、547a〜b、及び548a〜cとして幾分再設定されており;510の各チャネルは、パウチ210上の対応するチャネルよりわずかに短い。しかし、チャネル設定は単なる例示であり、そして多様なチャネル設定が本発明の範囲内であることが理解される。
【0092】
図15のパウチ510及び図6のパウチ210の間には2つの主な相違がある。第1に三葉ブリスター222が溶解ブリスター522に置き換わっている。溶解ブリスター522は、図2bに示すような、電気モーター19に取り付けられた回転ブレード又はパドル21を用いた固着(impaction)によるボルテックスのために設定されている。この溶解法は、空気圧ピストンの交互の圧に依存しないため、一葉のブリスターのみが示される。溶解ブリスター522は、単一の葉しかないため、両チャネル514及び536は、溶解ブリスター522の単一の葉につながる。溶解ブリスター522は、本明細書記載のパウチ態様のいずれでも用いてよいことが理解される。溶解アセンブリー810が、例として、ブラダー・サブアセンブリー822のブラダー824、826、及び828を、ブリスター522用に設定された単一のブラダーで置き換えるように修飾されてもよいことがさらに理解される。逆に、上記の多様な他の態様に記載される三葉ブリスターを、パウチ510中で用いてもよい。溶解ブリスター522は、例として溶解ブリスター522の外表面に、接着剤又はラミネート加工を用いて取り付けられた、所望の補強パッチ523と共に提供されてもよい。補強パッチ523は、パドル21による反復接触のためにパウチ510が裂けるのを最小限にするよう補助する。図15aは、第2の支持体メンバー804上に取り付けられた電気モーター、例としてMabuchi RC−280SA−2865 DCモーター(日本・千葉)を示す。1の例示的な態様では、モーターは、5,000〜25,000rpmで、他の例として10,000〜20,000rpmで、そしてさらに他の例として、およそ15,000〜18,000rpmで回転する。Mabuchiモーターに関しては、7.2Vが溶解に十分なrpmを提供することが見出された。しかし、ブレード21がパウチ510に衝撃を与えている場合は、実際の速度はそれよりも遅い場合もあることが理解される。用いるモーター及びパドルに応じて、溶解のために他の電圧及び速度を用いてもよい。場合によっては、制御された小体積の空気を、溶解ブリスター522に隣接するブラダー内で提供してもよい。いくつかの態様では、隣接するブラダーに1又はそれ以上の小体積の空気を部分的に充填すると、溶解プロセス中に溶解ブリスターを配置し、そして支持するのを補助することが見出されている。あるいは他の構造、例として剛性の又は適合したガスケット又は溶解ブリスター522周囲の他の残りの構造を用いて、溶解中にパウチ510を拘束してもよい。
【0093】
図15のパウチ510及び図6のパウチ210の間の第2の主な相違は、第2段階増幅ゾーン280のブリスター281、282、及び283が、第2段階増幅ゾーン580では、高密度アレイ581により置き換えられていることである。高密度アレイ581は、複数の第2段階ウェル582、例として50以上、そしてさらに他の例として120以上のウェルを含む。より多くの第2段階ウェル582、例として約200、約400、又はさらに約500以上のウェルを含む態様が本発明の範囲内である。他の設定もまた、本発明の範囲内である。ウェル582をより小さくすることによるか、高密度アレイ581をより大きくすることによるか、又はその組み合わせにより、別の第2段階ウェル582を付加してもよい。第2段階PCRに関しては、各ウェルがプライマー対を含有してもよい。1又はそれ以上のウェルを陽性又は陰性対照のために用いてもよいことが理解される。
【0094】
ブリスター566中の希釈された第1段階増幅産物をウェルに充填する際、ウェル間の交差混入が大きな問題となりうる。交差混入は、パウチ210においては、図9に例示される、チャネル265の別個のブランチを通じて各第2段階ブリスターを充填し、次いでブラダー882で密封して制御された。流体がブリスター584のいくつか又は全てを充填されていてもよい高密度アレイ581を用いると、ウェル間の交差混入もまた制御しなければならない。1の態様では、第2段階PCRプライマーを共有的に又は非共有的に、各ウェルの内部表面に結合させてPCRチップと類似に機能させてもよい。しかし、多くの態様では、PCRプライマーをウェルに束縛することなく、ウェル間の交差混入を制御することが望ましい。ウェル間の交差混入の制御は、高密度アレイ581の第1の表面581aに流動させることにより、ブリスター566からの流れをウェル582に移動させる態様では、困難な場合もある。
【0095】
第2段階増幅ゾーン580の装填を成功させるためのいくつかの望ましい特徴がある。第1に、ブリスター566からの流体が、実質的に同じレベルまで、実質的に全てのウェル582を充填することが望ましい。充填されていないウェルは偽陰性シグナルを生じるであろう。第2に、ウェル582を充填するプロセスは、ウェル中のプライマーの漏出を起こさないことが望ましい。1のウェルからのプライマーの喪失は、当該ウェルでのPCR反応の効率を限定する場合もあり、近接するウェルを汚染させうる。第3に、ウェル582が充填され、PCRが開始された後、ウェルが互いから完全に密封されることが望ましい。単位複製配列が1のウェルから漏出し、別のウェル内に進入すると、第1のウェル中のシグナルが低下し、第2のウェル中のシグナルが上昇し、潜在的に、第1のウェル中では偽陰性を、第2のウェル中では偽陽性を導きうる。さらに、特定の種類の対照に関しては、1のウェルで生成された単位複製配列が、さらに増幅されうる別のウェルに進入しないことが重要である。
【0096】
この問題に対する解決法には、バリア層の使用が含まれる。1の例では、バリア層は、ウェルを迅速に装填し、かつ、バルク流体から迅速に密封しうるために提供される、物理的バリアである。別の例では、化学的及び物理的バリアの組み合わせを用い、ウェルを密封するのに物理的バリアを用い、次いで、化学的バリアが、例えば加熱、遅延放出、又は酵素消化により、ウェル溶液内にオリゴヌクレオチドプライマーを条件的に放出する。ウェルからの試薬の放出を制御するのに、ウェルの深さ又は各ウェルへのチャネルの長さもまた用いうる。高密度アレイ581を装填するための他の手段を用いうる。
【0097】
図15〜17は、物理的バリアを用いた、第2段階580の例示的な態様である。パウチ510の第1の層518及び第2の層519の間に挟まれて、ウェル582を含む高密度アレイ581がある。図16に最適に見られるように、穿孔586を含む穿孔層585が高密度アレイ581の1の側面上に提供されて、物理的バリアとして作用し、第2の層587が、高密度アレイ581の反対の側面上に提供されて、ウェル582の底を形成する。例として、穿孔層585及び第2の層587は、高密度アレイ581に対して、例として熱密封により密封されるプラスチックフィルムであるが、密封の他の方法もまた用いてよいことが理解される。高密度アレイ581用に用いられる材料、並びに穿孔層585及び第2の層587用に用いられる材料は、互いに、密封法と、そして用いる化学反応と適合しなければならないこともまた理解される。PCR用に用いる場合、高密度アレイ581用に使用でき、かつ熱密封できる適合するプラスチックの例は、PE、PP、Monprene(登録商標)、及び他のブロックコポリマー・エラストマーである。検出化学反応で蛍光色素を用いる場合、高密度アレイ581に関しては、黒又は他の比較的蛍光不透過性である材料から形成されて、1のウェル582から隣のウェルへのシグナル流出を最小限にし、層585及び587の少なくとも1つに関しては、比較的蛍光透過性であることが望ましい場合もある。穿孔層585及び第2の層587に関しては、PE、PP及びDupont Surlyn(登録商標)等の熱密封プラスチック層を用いた、Mylar(登録商標)又はPET等の強いエンジニアリングプラスチックのラミネート加工を用いてよい。接着剤に基づく系に関しては、PET又はポリカーボネート等の剛性のエンジニアリングプラスチックを用いて、高密度アレイ581を形成してもよく、次いで、PCR適合性プラスチックのフィルムを穿孔層585及び第2の層587として用いる。1の例示的な態様では、高密度アレイ581は黒いPEで形成され、高密度アレイ581に熱密封される穿孔層585及び第2の層587には混成ポリエチレン/PETラミネート(又はXerox(登録商標)PN104702ホットラミネート加工パウチ材料)が用いられ、そしてパウチ510の第1及び第2の層518、519には混成ポリプロピレン/PETが用いられる。
【0098】
穿孔586はウェル582と並列することが理解される。穿孔586は十分に小さく、何らかの力なしには、流体が穿孔586を通じて容易には流動しないこともまた理解される。例示的な穿孔は、0.001〜0.1mm、他の例として0.005〜0.02mm、そして他の例として約0.01mmである。例示的な態様では、流体がブリスター566から受け入れられると、真空が穿孔586を通じて各ウェル582内に流体を引き入れるように、第2段階増幅ゾーン580は真空下で提供される。ウェル582が充填された時点で、流体をウェル582内に又はウェル582の外に移動させる力はもはや存在しない。次いで、第2段階増幅ゾーン580に隣接したブラダー(未提示であるが、ブラダー880/882の位置と類似)を活性化して、高密度アレイ581に対して第1の層518を押しつけて、そしてウェル582内に流体を密封してもよい。ウェル582を密封するのにパウチ510の第1の層518が用いられるが、穿孔層585及び第1の層510の間に所望による密封層が提供されてもよいことが理解される。
【0099】
1の例示的な態様では、第2段階増幅ゾーン580を以下のように調製してもよい。プラスチックシート(例として0.1〜1mm厚)中にウェル582のアレイをパンチするか、モールドするか、又は別の方式で形成することにより、高密度アレイ581を調製してもよい。ウェルは、所望の任意の規則正しい又は不規則なアレイを形成してもよく、そして例として0.05μl〜20μl、そして他の例として0.1μl〜4μlの体積を有してもよい。次いで、層585又は587の一方を高密度アレイ581の第1の表面581aに、例として熱又は接着剤によりラミネート加工する。図17に示すように、穿孔層585を第1の表面581aに適用する。次いで、試薬589、例としてPCRプライマー対等の固有のアレイの化学反応の要素をピペッティングにより手動で、又は自動的に(例としてピン・スポッター等のx/y位置決定可能スポッター、ドットマトリックス・プリンター、小体積自動的ピペッター、又は微量流体ミクロ接触スポッターを用いる)のいずれかで、ウェル内にスポッティングする。試薬589を各ウェル582中で乾燥させた後、層585又は587の第2のものをアレイ581の第2の表面581bに適用する。小直径針のアレイを用いて、層585を穿孔して、穿孔586を形成する。層585をアレイ581に固定する前又は後のいずれに穿孔586を形成してもよい。穿孔前又は後に層585、あるいは層587のいずれかに対してスポッティングを行ってもよいことが理解される。予め穿孔された穴があるアレイにスポッティングすると、実質的に漏出を示さず、穿孔に用いる針が、スポッティングされた試薬に触れることによる混入がないという利点が提供される。あるいは、漏出の可能性を最小限にし、スポッティングされた試薬をアレイ中の最も遠い位置に配置するため、試薬589を第2の層587上にスポッティングし、アレイ581を層585で密封し、そして次いで層585を穿孔することが望ましい場合もある。例示的な例では、GeSiMA060−324Nano−Plotter2.1/E(Grosserkmannsdorf、ドイツ)を用いて、試薬を第2の層587上にスポッティングする。当該スポッターを用いると、多数のアレイに同時にスポッティングできる。
【0100】
スポッティングし、そして穿孔した時点で、アレイ581をパウチ510の層518及び519内部に入れ、そして例として熱密封、接着剤の使用、超音波溶接、機械的閉鎖、又はブリスター584内のパウチ510内部にアレイ581を被包する他の手段のいずれかにより、適所に密封する。ブリスター584が、チャネル565を介して、ブリスター566に流動的に連結され、そして液体がチャネル565からブリスター584内に、そして穿孔586上に流動できることが理解される。1の例示的な例では、ブリスター584が形成された場合、空気が抜けられるよう留意する。これは、第2段階増幅ゾーン580に隣接する第1の層518の内部表面を「ワッフル処理」して、わずかに盛り上がった風合いのパターンでフィルム材料をインプリントすることにより達成できる。これにより、空気及び液体が、穿孔層585の表面に沿って通過でき、液体がウェル582の全てに到達してこれらを充填することができる。次いで、パウチ510を真空チャンバー内部に入れて排気する。例として、圧がおよそ0.3ミリバールに達したら、真空チャンバー内部の空気圧シリンダーが作動して、プランジャーを装備590内に駆動してチャネル567を密封し、それにより密封したパウチ内部のアレイ、及び真空チャンバーから経路を遮断する。複数の他のプランジャーもまた、装備590内に駆動されて、多様な進入チャネル515を密封する。真空チャンバーからパウチを取り除き、そして真空バッグ中での長期保存のためにパッケージングしてもよい。
【0101】
パウチ510は、パウチ210と同様の方式で用いてよい。アレイ581は真空中でパッケージングされるため、液体をブリスター566から第2段階増幅ゾーン580に移動させると、穿孔586を通じて液体試料が抜き取られてウェル582内に入る。空気圧ブラダーがアレイ上に膨張することにより過剰な液体が排除され、上記のように、例としてアレイの1の側面に対して押しつけられたペルチェ素子を加熱しそして冷却することにより、サーマルサイクリングが達成される。
【0102】
上記のように、穿孔層585を多様な適当な物理的又は化学的バリアにより置き換えてもよい。化学的バリアを用いる1の例示的な態様では、穿孔層585が省かれ、試薬589は、比較的緩慢に溶解する緩衝液中で、ウェル582内にスポッティングされる。例として、適当な濃度で、PEG、Ficoll又はポリソルベート20等のポリマー、あるいはスクロース、トレハロース又はマンニトール等の糖を含有する試薬589は第2段階PCR反応に適合し、単に水又はTris/EDTA中でスポッティングされたプライマーで緩慢に溶解できる。上記のように、当該緩衝液の1の中でスポッティングされたプライマーをウェル582内で風乾してもよい(当該態様では、第2の層587がスポッティング用の高密度アレイ581に固定されることが理解される)。酵素試薬(例えばPCRにおいて用いる酵素及び緩衝剤)の凍結乾燥において、当該同じポリマーを用いて、安定化された酵素を含有するオープンマトリックスを形成してもよい。したがって、当該緩衝液中でスポッティングされたプライマーをウェル582中の適所で凍結乾燥して、風乾よりもより遅いが、潜在的により完全な再水和を導いてもよい。パウチ510を用いる場合、ブリスター566由来の流体は、真空又は圧によりウェル内に駆動されて、そしてプライマーミックスを溶解させ始める。適当に緩慢に溶解する緩衝剤を選択することにより、第2段階増幅ゾーン580に隣接するブラダーが作動し、いかなる実質的な交差混入も生じる前に、各ウェル582の内容物が密封される。
【0103】
別の態様は、第2段階増幅ゾーン580を所定の温度より高温で加熱されるまで、溶解しないマトリックスを用いる。当該マトリックスの1の例は、GenePureLowMeltアガロース(ISCBioexpress)等の低融点アガロースである。1の例では、このアガロースの1.5%溶液は、65℃で融解し、24〜28℃でゲル化する。スポッティング前に、試薬589を、例として50℃に温めて、すでに融解している当該アガロースと混合し、次いで、小体積(例として100〜500nl)中で、ウェル582内にスポッティングしてもよい。スポッティング中に混合物を液体のまま維持するため、アガロースの融点より高温で加熱されたキャビネット中でこれを行う必要がありうる。あるいは、融解せずにアガロースの薄い溶液をピペッティングでありうる。アガロース/試薬混合物をスポッティングした後、高密度アレイ581を乾燥させる。これは単純な風乾であってもよいし、又はプライマー−アガロース混合物は、試薬が凍結乾燥できるように、上に列挙する糖及びポリマーを含有してもよい。パウチ510をPCRに用いる場合、ブリスター566由来の流体が高密度アレイ581内に移動する際、第2段階増幅ゾーン580を例として55℃に加熱してもよい。この温度ではアガロースは融解せず、プライマーは溶液内に放出されない。高密度アレイ581が充填された時点で、対応するブラダーが膨張してウェルを密封する。第1のPCR周期の第1の変性工程において、温度が65℃より上昇すると、プライマーを含有するアガロースが融解して、プライマーをマスターミックス内に放出する。例として、サーマルサイクリングは60℃(又はアガロースの他の融点)未満にはならないため、アガロースはサーマルサイクリング中にはゲル化しない。さらに、図8の例示的な装置800において、反復される温度周期処理は、パウチの1の側面上に位置するヒーター888により駆動される。ウェル582中のPCR溶液に、しばしば温度勾配があり、これが対流によるプライマーの混合を促進することが予期される。類似の態様では、ワックスもまた用いてよい。
【0104】
他の態様では、プライマーをウェル581に条件的に結合させてもよく、ウェル581が充填された後、続いて溶液内にプライマーが放出される。プライマーをどのようにプラスチック支持体に付着させるかに応じて、熱(例としてPCR反応の最初の周期中)、光(例としてウィンドウ847を通じた照射)、化学薬品(例えば熱を伴うジチオスレイトールは、プライマーをウェルに連結するのに用いうるジスルフィド結合を還元する)、又は酵素(例えば組織プラスミノーゲンアクチベーター等の部位特異的プロテアーゼを用いて、プライマーを支持体に付着させる適当なペプチドリンカーを切断できる)を用いて、プライマーを切断できる。
【0105】
さらに別の態様では、増幅の後に、第2段階増幅ゾーン580内にDNアーゼを注入して、混入のいかなる潜在的なリスクも最小限にしてもよい。
【0106】
本明細書にPCRで用いるための第2段階増幅ゾーン580が記載されていることが理解される。しかし、パウチ510及び第2段階増幅ゾーン580に関する他の使用も、本発明の範囲内である。さらに、第2段階増幅ゾーン580を、核酸抽出及び第1段階増幅ゾーンを伴い又は伴わずに用いてもよいことが理解される。最後に、第2段階増幅ゾーン580を、本明細書記載の任意のパウチ態様と共に用いてもよいことが理解される。
【実施例】
【0107】
実施例1:入れ子多重PCR
装置800に類似であるが、パウチ110用に設定された装置上、図5のパウチ110中で、反応セットを実行した。細胞溶解及び2段階核酸増幅の有効性を示すため、対数期のS.セレビシエ(S.cerevisaie)及びS.ポンベ(S.pombe)の生存培養物各50μlを、健康なドナー由来の100μlの鼻咽頭吸引物試料と混合して試料を形成し、次いで200μlの溶解緩衝液(6MグアニジンHCl、15%TritonX100、3M酢酸ナトリウム)と混合した。次いで、溶解緩衝液中の400μlの試料のうち300μlをパウチ110のチャンバー192a内に注入した。
【0108】
三葉ブリスター122中に密封された0.25gのZSビーズを含めてパウチ110を製造した。以下に記載の第2段階プライマーもまた、パウチ110の製造中にブリスター181及び182中にスポッティングした。パウチ110に以下のように装填した:
115a 上記の試料及び溶解緩衝液
115b 溶解緩衝液中の磁気ビーズ
115d〜e 洗浄緩衝液(10mMクエン酸ナトリウム)
115g 溶出緩衝液(10mM Tris、0.1mM EDTA)
115h 第1段階PCR緩衝液:
0.2mM dNTP
0.3μM 各プライマー:
Sc1:S.セレビシエのRNA及びMEX67pに結合するYRA1核タンパク質の一部を増幅するように設定されたプライマー。cDNA(M−MLVにより逆転写されたmRNA)の増幅が180bp単位複製配列を生じるよう、イントロンにわたり増幅するようにプライマーを設定する;
Sc2:S.セレビシエのMRK1グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK−3)相同体のcDNAの121bp領域を増幅するように設定されたプライマー;
Sc3:S.セレビシエのRUB1ユビキチン様タンパク質のcDNAの213bp領域を増幅するように設定されたプライマー;
Sp1:S.ポンベのsuc1−サイクリン依存性プロテインキナーゼ制御サブユニットのcDNAの200bp領域を増幅するように設定されたプライマー;
Sp2:S.ポンベのsec14細胞質因子ファミリーのcDNAの180bp領域を増幅するように設定されたプライマー;
3mM MgCl2を含むPCR緩衝液(BSA不含)
50単位 M−MLV
4.5単位 Taq:抗体
100単位 RNAseOut
115j〜k 第2段階PCR緩衝液
0.2mM dNTP
1XLC Green(登録商標)Plus(Idaho Technology)
2mM MgCl2を含むPCR緩衝液(BSAを含む)、
4.5単位 Taq
115l 第1段階単位複製配列の試料を含む第2段階PCR緩衝液。
【0109】
製造中、第2段階ブリスター181及び182に、入れ子の第2段階プライマーをスポッティングした。第2段階PCR緩衝液で再水和した時点で、約0.3μMの最終濃度を生じる量で、各ブリスターに1のプライマー対をスポッティングした。第2段階入れ子プライマーは以下の通りである:
Sc1:Sc1cDNA第1段階単位複製配列の80bp断片を増幅するように設定されたプライマー;
Sc2:Sc1cDNA第1段階単位複製配列の121bp断片を増幅するように設定されたプライマー;
Sc3:Sc1cDNA第1段階単位複製配列の93bp部分を増幅するように設定されたプライマー;
Sp1:Sc1cDNA第1段階単位複製配列の99bp部分を増幅するように設定されたプライマー;
Sp2:Sc1cDNA第1段階単位複製配列の96bp部分を増幅するように設定されたプライマー;
いかなる標的でも、第1段階及び第2段階プライマー対間には重複はなかった。各第2段階増幅が2つ組で実行され、各2つ組が陰性対照を含むように、各対のプライマーを陰性対照ブリスター181及び2つの第2段階ブリスター182内にスポッティングした。
【0110】
装填後、進入チャネル115aと関連するプランジャーの活性化は、試料を三葉ブリスター122に移動させ、進入チャネル115bと関連するプランジャーの活性化は、磁気ビーズをリザーバー101に移動させ、進入チャネル115d〜eと関連するプランジャーの活性化は、洗浄緩衝液をリザーバー102及び103に移動させ、進入チャネル115gと関連するプランジャーの活性化は、溶出緩衝液をリザーバー104に移動させ、進入チャネル115hと関連するプランジャーの活性化は、第1段階PCR緩衝液をリザーバー105に移動させ、進入チャネル115j〜kと関連するプランジャーの活性化は、第2段階PCR緩衝液をリザーバー106及び107に移動させ、進入チャネル115lと関連するプランジャーの活性化は、陽性対照(先に調製した第1段階単位複製配列の試料を含む第2段階PCR緩衝液)をリザーバー108に移動させた。本実施例では、装置内へのパウチ110の装填前に、進入チャネル115a及び115bに関連するプランジャーを押圧した。実行中、全ての他のプランジャーを装置中で連続して押圧し、必要に応じて、流体をリザーバー102〜108に移動させた。
【0111】
パウチ110を装置内に入れた時点で、上記のようにZSビーズの存在下で攪拌を10分間行った。細胞溶解が完了した時点で、リザーバー101を圧迫し、リザーバー101由来の核酸結合性磁気ビーズを三葉ブリスター122内に押し込み、ここでビーズを穏やかに混合し、5分間インキュベーションした。
【0112】
次いで、試料−ビーズ混合物をブリスター144に移動させ、磁石の活性化により磁気ビーズを捕捉した。磁石を配備した時点で、ブリスター144に隣接するブラダーに加圧して、流体を三葉ブリスター122に戻した。次いで、リザーバー102及び103由来の洗浄溶液を用いて、捕捉したビーズを上記のように洗浄した。洗浄後、磁石の活性化によりブリスター144中にビーズをもう一度捕捉し、リザーバー104に保存された溶出緩衝液をブリスター144に移動させ、ここで2分間インキュベーションした後、次いで、上記のように、ビーズから溶出した核酸をブリスター161に移動させた。
【0113】
ブリスター161中、核酸試料をリザーバー105由来の第1段階PCRマスターミックスと混合する。次いで、試料を40℃で10分間(この間、M−MLVがmRNAをcDNAに変換する)、次いで94℃で2分間(M−MLVを不活性化し、そしてtaqから抗体を除去するため)保持した。サーマルサイクリングは、次いで、94℃10秒間及び65℃20秒間の20周期である。
【0114】
第1段階増幅の後に、リザーバー106由来の第2段階PCRマスターミックスを用いて、試料をおよそ100倍希釈する。次いで、上記のように、第2段階プライマーを予めスポッティングしておいたブリスター182に試料を移動させる。第2段階PCR緩衝液をリザーバー181から陰性対照ブリスター181に移動させ、そして陽性対照混合物をリザーバー108からブリスター183に移動させた。試料を94℃で30秒間変性させ、次いで94℃5秒間及び69℃20秒間の45周期、増幅させた。
【0115】
図13に見られうるように、全ての標的単位複製配列及び陽性対照は増幅を示し、一方、陰性対照はいずれも増幅を示さなかった。各試料を複製して実行した。複製は各々、類似の増幅を示した(データ未提示)。
【0116】
S.セレビシエ及びS.ポンベ・標的は単なる例示であり、そして他の標的が本発明の範囲内であることが理解される。
【0117】
実施例2:高密度PCR
上記実施例は図5のパウチ110を用いる。パウチ110には、5つの陰性対照ブリスター181、5つの陽性対照ブリスター183、及び10の低体積試料ブリスター182がある。図6のパウチ210は、低体積試料ブリスター282の数を18に増加させた。しかし、図15に示すパウチ510の高密度アレイ581には、120以上の第2段階ウェル582があってもよい。第2段階反応数のこの増加は、パウチ及びその装置のサイズを増加させずに、広範なセットの潜在的な診断及びヒト同定に適用できる。多様な例を本明細書に記載する。
【0118】
1の例では、一般的な呼吸器ウイルスに関する標準的な商業的免疫蛍光アッセイは、アデノウイルス、PIV1、PIV2、PIV3、RSV、インフルエンザA、及びインフルエンザBの7のウイルスを検出できることが公知である。より完全な組には、例として、コロナウイルス、ヒト・メタニューモウイルス、BOCAウイルス、ライノウイルス及び非HRVエンテロウイルスの他の5つのウイルスに関するアッセイが含まれる。アデノウイルス又はHRV等の非常に可変性のウイルスに関しては、ウイルス系譜の枝全てを標的とする多数のプライマーを用いることが望ましい(例としてそれぞれ4つの外部及び4つの内部プライマーセット)。他のウイルス、例えばコロナウイルスに関しては、1の季節から他の季節で変化しない4つの別個の系譜(229E、NL63、OC43、HKU1)があるが、これらは、別個のプライマーセットを要するほど十分に分岐している。例示的な完全呼吸器ウイルス組はまた、SARSコロナウイルス、おそらく鳥インフルエンザHA及びNサブタイプ、並びにおそらく他のものも標的とするであろう。最後に、呼吸器ウイルスのいくつかは、非常に高い配列変動率を示すため、当該ウイルス各々に関して、1より多い入れ子PCRアッセイを生成して、それによりプライマー下での配列変動による偽陰性結果の機会を最小限にすることが有益であろう。本明細書に記載するプライマーセットの全てが含まれる場合、当該呼吸器ウイルス組には、第2段階増幅において、80以上の特異的単位複製配列がありうる。高密度アレイ581は、単一パウチ510中で当該組を容易に収容しうる。
【0119】
パウチ510の高密度アレイ581の第2の適用は、感染患者から単離された多剤耐性細菌の同一性及び抗生物質耐性スペクトルを決定することである。現在の方法は、生物を培養し、個々の薬剤耐性プロフィールを実験的に試験するために数日かかる。結果を受け入れるための間、医師はしばしば、広域スペクトル抗生物質を投与し、これにより多剤耐性細菌が増加する。抗生物質耐性の遺伝子決定要因(抗生物質耐性遺伝子自体)を検出するためのPCRプライマーが開発されている。しかし、当該遺伝子のいくつかには非常に多数の変異体があるため、耐性プロフィールを完全に決定するには、多数の単位複製配列が必要である。Hujerらは、アシネトバクター属(Acinetobacter)単離体に存在する耐性遺伝子を同定するための62のPCRアッセイ組を記載する。ここでも、高密度アレイ581は、単一パウチ中で当該組を容易に収容しうる。
【0120】
高密度アレイの有用性の第3の例は、例としてヒトの遺骸の法医学的同定及び実父確定試験のための、ヒト同定分野における。ヒト同定における市場の大部分では、短いタンデムリピート配列(STR)を分析する系が優位を占める。この分析は、一般的に、大きさにより、例えばキャピラリー電気泳動を用いて、リピートを分離しなければならなかった。この目的に用いられる特殊化された実験室装置は、一般的に野外携帯用ではなかった。同定試験のために一塩基多型(SNP)を用いることにますます関心が高まっているが、これはSNPを同定するために多くの技術セットがあり、これらのうちいくつかは野外使用に受け入れられるためである。Sanchezらは、集合的に、個体が偶然マッチする可能性を非常に低くする(少なくとも5.0x10−19の平均マッチ可能性)、52のよく性質決定されたSNPを公表している。実際、各遺伝子座を正確に型決定するには、各SNPに関して2つの単位複製配列を要しうる(例えばZhouらを参照されたい)。したがって、104の第2段階ウェル582を持つ1のパウチ510は、52のSNP遺伝子座の全てで完全に個体を型決定することができる。
【0121】
異なる診断適用由来のアッセイを1のパウチ内で組み合わせることにより得られる、コスト及びワークフロー上の利点があることが理解される。例えば、完全呼吸器ウイルス組を、細菌同定組と組み合わせてもよい。組み合わせるパウチのタイプがより少ないため、当該組み合わせは製造を単純化しうる。クリニック中でストックする必要がある特殊なタイプのパウチがより少ないため、これらはまた、エンドユーザーの作業を単純化しうるし、また、特定の臨床試料に対して、誤ったパウチを用いる機会が軽減する。いくつかの適用に関して、当該利点は、より多い数のプライマー対を有するパウチを製造するコスト増を相殺しうる。したがって、100以上の第2段階ウェル582を含む1のパウチ510を用いて、多数のアッセイ組を収容しうる。
【0122】
実施例3:プロセス制御
非常に多重化されたアッセイの制御は、特に、品質が試験あたりのコストと競合しなければならない臨床診断設定では問題が多い場合もある。単一の実行でアッセイできる診断標的の数が増加するため、パウチ510の高密度アレイ582では、潜在的に、この問題が高まる。多様な種類の制御を本明細書で記載する。
【0123】
例示的なプロセス制御には、試料をパウチ内に注入する前に、無傷の生物、例えばRNA標的を含有する生物を患者試料内に混合することが含まれる。当該標的は、無傷のRNAバクテリオファージ(MS2又はQβ)又は無傷の植物RNAウイルス(タバコモザイクウイルス)又は無傷の酵母中に存在するmRNAであってもよい。RNA標的に特異的な外部プライマーが第1段階PCR中に存在し、内部プライマーを含有するウェル582が高密度アレイ中に存在する。このウェル582中の増幅産物を検出すると、プロセスの全ての工程が正しく働いていることが確認される。正しい特異的産物が作製されたことを確認するために、第2段階後の増幅融解曲線もまた用いてよい。増幅曲線から決定される交差点(「Cp」)を用いて、試薬の完全性の定量的測定値を得ることもできる。例えば、Cpを、異なる時点での同じロットの実行由来の他のパウチのものと比較してもよい。無傷の生物を用いる一方、溶解に関して試験することが重要でないならば、精製又は単離核酸を用いてもよいことが理解される。他の状況では、分析のより後の工程のみを試験する制御を用いることが望ましい場合もある。例えば、同族(cognate)プライマーを伴う、高密度アレイ中のウェル内への天然又は合成核酸鋳型のスパイキングを用いて、第2段階PCR反応を試験してもよいし、そして第1段階PCR増幅混合物において適当なプライマーと共に第1段階PCR内に、及び第2段階増幅ゾーンのウェル582中に、核酸鋳型をスパイキングすると、第1及び第2段階PCR反応が共に試験されるであろう。
【0124】
上記プロセス制御は、標的単位複製配列に特異的なプライマーの完全性を試験しない。特異的プライマーの完全性を試験する陽性対照の一例は、核酸、例として合成RNAの混合物を用いるが、これは、安定性及び可変性をさらに制御できる場合があり、当該配列が、混合物が特定のパウチ中に存在する各プライマーの核酸を含有する、環境的混入によっては存在しえないためである。診断設定において、患者試料を試験するのに用いたパウチの実行終了時に、この陽性対照を用いてもよい。混合物を、例として患者試料に用いたものと同じロットから、パウチに注入し、そして全ての標的単位複製配列が陽性結果を提供することにより、成功を定義する。陰性対照を同じ方式で行ってもよく;患者試料を試験するのに用いたパウチの実行終了時に、水又は緩衝液をパウチ内に注入し、そして全ての標的単位複製配列が陰性結果を提供することにより、成功を定義してもよい。
【0125】
診断研究室において、個々のワークフロー及びプロトコルを用いて、上記制御パウチを実行する前に、患者試料パウチ実行の数を決定してもよい。いかに頻繁に又は頻繁でなく制御パウチを実行するかにかかわらず、当該制御は、系全体で時間及びコストがかさむ。このため、対照をパウチに内在させることが有用である。高密度アレイ581の構造により、陰性対照に対する以下の新規アプローチをとれる。この例では、核酸、例として合成単位複製配列を、高密度アレイ581のウェル582aの1つにスパイク処理する。この配列を増幅するプライマーをこのウェル582a内に、そしてアレイに渡って間隔を開けた2つの他のウェル582b及び582c内にスパイク処理する。例として、単位複製配列及びプライマーは人工的であり、用いるプライマーがいずれも、偶然、別の標的を増幅しないように設計される。
【0126】
きれいな混入されていないパウチ510を装置800中で実行する場合、合成標的を含有するウェル582aは単位複製配列を生じ、したがって陽性と判定されるであろう。対応するプライマーを含有する2つの他のウェル582a、582bは、試料中で何も増幅せず、したがって陰性と判定されるはずである。パウチ510をさらに、他の制御のために処理してもよい。例として、次いで、ヒーター888に対して高密度アレイを保持するブラダー880/882を減圧して、ウェル582の内容物を混合する。1の例示的な方法では、ウェル582の内容物を以下のように混合する:ヒーター888を用いて、高密度アレイの温度を緩衝液の沸点より上及び下に、短時間、周期処理する(例えば85℃10秒間、次いで105℃20秒間の3周期)。高密度アレイ581のウェル582で生じた蒸気の泡は、ウェル582の内容物を第2段階増幅ゾーンブリスター580内に押し出すはずである。場合によっては、ブラダーを用いて、液体をパウチ510の一方の末端から他方の末端に移動させることにより、第2段階増幅ゾーン580の内容物を、パウチ510の残りの内容物と混合してもよい。当該工程の目的は、特異的混入制御単位複製配列を、パウチ全体のいかなる特異的標的単位複製配列とも共に混合することである。
【0127】
パウチがこの様式で実行された後、使用者が誤ってパウチを開けてしまった場合、特異的標的単位複製配列及び混入制御単位複製配列が放出されるであろう。微量の当該核酸が後のパウチ実行に混入した場合、合成単位複製配列に特異的なプライマーしか含まないウェル582b、582cが陽性と判定されうるため、装置は、混入事象を検出できる。装置中のソフトウェアは使用者に警告し、実行の結果が疑わしいと注意喚起するであろう。
【0128】
混入を制御する別の方法は、実行終了時に、DNA分解化学薬品又は酵素を添加して、第1及び第2段階PCR反応のDNA産物の実質的に全てを破壊してもよい。例として、これは、第2段階アレイの内容物を局所沸点より高温で加熱し、増幅された試料をアレイ851のウェル582から抜き取って、加熱された液体を第1段階反応の希釈された内容物と混合し、DNA分解物質のアリコットを、例として進入チャネル515kを通じて、混合物を冷却しながら又は冷却せずに添加して、PCR反応中に産生されたDNAの実質的に全てが破壊されるまで、DNA分解反応をインキュベーションしうることにより、上記混入検出法と同様の方式で実行できる。当該技術分野に公知であるように、DNアーゼ、酸、又は酸化剤を用いてこれを達成してもよい。
【0129】
本明細書記載の混入制御はいずれも、独立に又は任意の組み合わせで用いてよいことが理解される。
【0130】
実施例4: iPCR
別の例では、本発明のパウチ及び装置をイムノPCR(iPCR)に用いてもよい。iPCRはELISAの抗体特異性とPCRの感度及び多重能を組み合わせる。iPCRは、診断及び毒素検出に適用されているが、おそらく、開放ELISA形式において、PCR鋳型混入問題が深刻であるため、iPCRの商業的適用が広く普及していない。本発明のパウチ形式は、封印された環境を提供するため、本発明のパウチは、iPCRによく適している場合もある。
【0131】
伝統的なELISA検出スキームを図11に示す(「ELISA」と示す)。1992年、Cantor及び同僚ら(本明細書に援用される、Sano,T.ら,Science,1992.258(5079):p.120−2)は、基本的ELISA技術の修飾を記載し(図11、捕捉抗体C−Abを含まず、「イムノPCRI」スキームに類似)、この中で、特異的シグナルを生じさせるために用いる酵素を、ストレプトアビジン−プロテインAキメラ等の、二重官能性結合部分Sを通じて、レポーター抗体Rに間接的に付着された固有のDNA断片と置き換えている。続いて、このDNA断片をPCRにより検出する。PCR検出は、対応するELISAアッセイを超えるイムノPCRアッセイ感度を劇的に高めることもでき、感度の改善は、一般的に102〜104倍であることが知られる。定量的リアルタイムPCR法の進歩により、イムノPCRの速度及び定量性が改善された。レポーター抗体(R−Ab)をDNA鋳型タグに直接カップリングする(図11、「イムノPCRII」スキーム)と、アッセイ感度が102〜103倍さらに高まり、異なる抗体各々を異なるオリゴヌクレオチドでタグ付けし、したがって、各抗原を固有の増幅産物と会合させる、多重イムノPCRアッセイを開発できる。
【0132】
当該利点は伝統的なELISAに勝るにもかかわらず、iPCRは、最初に報告されてから13年間、商業的製品に広く採用されていない。これは、部分的に、いかなる開放試験管PCR分析法にも内在性の、混入の危険のためである。先行技術のiPCRプロトコルは、ELISAアッセイに由来し、多くの洗浄工程を要し、作業領域に増幅物質の混入の可能性が高まる。ワークフロー混入による偽陽性の有意なリスクが、診断評価におけるiPCRの回避の一因となっている。
【0133】
均質(すなわち「閉鎖試験管」)PCRアッセイが開発されるまで、単位複製配列混入問題のため、ヒト遺伝子状態又は感染性疾患の診断において、PCR自体が広く普及して採用されるのが遅れていた。閉鎖試験管系でアッセイの読み取りできることにより、単位複製配列の広がりは大幅に抑えられた。同様に、閉鎖系形式が利用できるならば、iPCRはより広く採用されうる。本系において、必要な試薬が全て提供されるパウチ内に、試料が注入される。抗原捕捉、洗浄、レポーター−抗体結合、洗浄、及びそれに続くPCR検出の工程がパウチ内で完全に実行できる。例として、核酸はパウチを決して離れず、そしてパウチと共に廃棄される。
【0134】
本発明のパウチのいずれをiPCR用に適応させてもよい。例えば、図6のパウチ210を、例として以下のように適応させてもよい。チャンバー292a〜292lに以下の構成要素を充填する。例として未精製及び/又は未修飾抗原(例えば毒素)を含む試料を、注入ポート241aからチャンバー292aに注入する。磁気ビーズにコンジュゲート化された捕捉抗体(C−Ab)をチャンバー292b中で提供する。多数の標的を試験しようとする場合、多数の抗原に対する特異性を有する多数の捕捉抗体を用いてもよいことが理解される。所望による前洗浄緩衝液をチャンバー292c中で提供する。オリゴヌクレオチド・鋳型にコンジュゲート化されたレポーター抗体(R−Ab−DNA)を、チャンバー292d中で提供する。捕捉及びレポーター抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであってもよいことが理解される。多数の抗原を検出しようとする場合、捕捉及びレポーター抗体は、ポリクローナル抗体のみ、モノクローナル抗体のみ、又は1の抗原に特異的なポリクローナル及び別の抗原に特異的なモノクローナルの任意の組み合わせを含有してもよい。レポーター抗体がポリクローナルである場合、そのセット中の多様な抗体間の特異性が多様である場合であっても、特定の抗原に特異性を有する全てのレポーター抗体は、1の特異的配列を有するオリゴヌクレオチド・鋳型とカップリングされることが理解される。オリゴヌクレオチドは二本鎖又は一本鎖であってもよい。多数のR−Ab−DNAを提供して多数の抗原を検出してもよく、異なる抗体は各々、固有のオリゴヌクレオチドにコンジュゲート化されている。洗浄緩衝液をチャンバー292e〜292h中で提供する。上記第1段階PCRマスターミックスをチャンバー292i中で提供する。希釈緩衝液をチャンバー292j中で提供する。上記第2段階PCRマスターミックスをチャンバー292k中で提供する。上記のように、試薬をチャンバー292b〜292l中で乾燥して提供してもよいし、シール239を通じた水の注入により使用前に再水和してもよく、又は各個々のチャンバー292への注入により、各試薬を湿った状態で提供してもよい。当該組み合わせが意図される。
【0135】
試料及び試薬を装填した時点で、パウチ220を装置800内部に挿入する。次いで、プランジャー268aを押圧し、試料を三葉ブリスター222に移動させる。プランジャー268bもまた押圧し、磁気ビーズにコンジュゲート化された捕捉抗体(図11にCとして示す)もまた、三葉ブリスター222に移動させる。ブラダー828からの圧力を、ブラダー824、826から交互に加圧して、試料及びC−Abを混合する。混合が望ましいため、ブラダー824、826、828からの圧力は、溶解に関して上記で用いた圧力よりはかなり低くてもよい。例として、穏やかな混合が得られる。捕捉抗体が試料中の抗原Tに結合するのに十分な時間、例として約5分間、試料及びC−Abをインキュベーションしうる(C−Ab−T複合体を形成する)が、他のインキュベーション時間が望ましい場合もある。iPCRに関しては、装置800中に他のヒーターを含めて、インキュベーションを約37℃に維持することが望ましい場合もある。
【0136】
試料中に存在する抗原が、捕捉のために十分にインキュベーションされた時点で、試料をブリスター246に移動させ、磁石850を配備して、捕捉抗体をブリスター246中で捕捉する。次いで、試料の未結合部分を三葉ブリスター222に戻すが、当該ブリスターは廃棄物リザーバーとして機能する。本明細書記載の実施例では、捕捉抗体を拘束するのに磁気ビーズが用いられるが、固体支持体、おそらくブリスターの内部表面への捕捉抗体の架橋さえ含む、他の捕捉機構を用いてよいことが理解される。
【0137】
望ましい場合、チャンバー292c由来の前洗浄緩衝液を用いて、C−Ab−T複合体を洗浄してもよい。チャネル245を介して前洗浄緩衝液をブリスター244内に移動させ、磁石を引っ込め、C−Ab−T複合体を遊離させ、そしてブリスター244及び246間でビーズを穏やかに移動させる。次いで、磁石850の活性化により、ブリスター246中でビーズを再捕捉し、そして残りの流体を三葉ブリスター222に移動させる。この前洗浄は、バックグラウンド陰性シグナルを超える陽性シグナルの区別を改善することもできるが、当該相違は、有意でないと証明される場合もあると予期される。望ましい場合、他の前洗浄を実行してもよい。
【0138】
プランジャー268dを押圧し、オリゴヌクレオチド・鋳型にコンジュゲート化された1又はそれ以上のリポーター抗体R−Ab(R−Ab−DNA、図11のイムノPCRIIスキームに核酸が付着したRとして示される)を含有する混合物をブリスター246に移動させる。磁石を引っ込め、ブリスター244及び246間で移動させて混合物を穏やかに混合する。例として約5分であるが他のインキュベーション時間が望ましい場合もあるインキュベーションにより、図11のイムノPCRIIに例示されるような三元複合体C−Ab−T−R−Ab−DNAが形成されうる。磁石850の活性化により、ブリスター246中に三元複合体が捕捉され、残りの流体は、三葉ブリスター222に移動する。
【0139】
プランジャー268eを押圧し、そして洗浄緩衝液をチャンバー292eからブリスター246に移動させる。上記前洗浄におけるように磁気ビーズ−三元複合体を洗浄し、磁気ビーズ−三元複合体をブリスター246中で再捕捉し、残りの流体を三葉ブリスター222に移動させる。ブリスター244又はチャネル243中に存在しうる未結合R−Ab−DNA複合体を再導入することを回避するため、混合がブリスター246及び248の間であることを除いて、チャンバー292f、292g、及び292h由来の洗浄緩衝液を用いて、洗浄を複数回反復する。この例示的な態様では、4回の洗浄が記載されるが、例として装備290中のチャンバーの数を改変し、又はチャンバーの体積を増加させ、各洗浄に関してチャンバー中の洗浄緩衝液の一部のみしか用いずに、任意の数の洗浄を用いてもよいことが理解される。全ての未結合R−Ab−DNA複合体全てを除去することは、多数回の洗浄を用いてさえ、非常に困難であることもまた理解される。さらに、試料中に存在しない抗原では、その抗原に特異的な未結合R−Ab−DNA又は非特異的に結合したR−Ab−DNA複合体がわずか数分子存在しても、増幅シグナルを生じうる。したがって、洗浄工程の理想的なゴールは、試料中に存在しない抗原に特異的な全てのR−Ab−DNA複合体を除去することであるが、1の例示的なゴールは、そのオリゴヌクレオチドに関する増幅曲線が遅延され、陽性試料の増幅曲線とは区別できるように、当該R−Ab−DNA複合体の十分な数を除去することである。例として、洗浄を多くすれば、より多くの未結合R−Ab−DNAが除去され、検出限界がより低下するはずであるが、洗浄がより多ければ、磁石により捕捉されていない磁気ビーズの解離又は喪失を通じて、望ましい三元複合体を喪失するリスクがある。洗浄が完了した後、望ましい場合、PCR前に、捕捉された三元複合体を加熱するか、又は酵素的に処理して(例として他のチャンバーを介して提供される、パパイン、プロテイナーゼK、又は他の適当な酵素を用いて)、DNAを遊離させる。当該処理は、第1段階PCR効率を改善しうる。本明細書で記載するiPCR例のいずれと共に、当該処理を用いてもよいことが理解される。
【0140】
洗浄が完了した時点で、プランジャー268iを押圧し、上記のように、第1段階PCRマスターミックスをブリスター246に移動させる。第1段階PCRマスターミックスは、全ての望ましい標的に関するプライマー対を含有する。磁石850を解除し、ブリスター246及び248間の所望による混合を用いて、三元複合体を再懸濁する。混合物をブリスター264に移動させ、上記のように第1段階サーマルサイクリングを行う。上記のように、複合体化オリゴヌクレオチドが十分なレベルまで増幅された時点で、チャンバー292j中で提供される希釈緩衝液を用いて、増幅された混合物を場合によって希釈する。第1段階増幅混合物のある程度又は全てを、チャンバー292kから提供される第2段階PCRマスターミックスと混合してもよく、次いで、この混合物を18の第2段階ブリスター282に移動させ、上記のように、第2段階プライマーを提供する。望ましい場合、第2段階ブリスター282の1つを陰性対照に用いてもよく、ここで陰性対照第2段階ブリスター282には、試料中に抗原がまったく存在しないが、R−Ab−DNAがチャンバー292dから提供され、そして適当なプライマーが提供されることが知られる。多様な洗浄にもかかわらず、少量のこの特定のR−Ab−DNAが第1段階PCR中に存在する可能性もあり、したがって、少量の第1段階増幅産物がこの第2段階ブリスター282に提供されうると予期される。しかし、量は非常に少なく、そして交差点は陽性試料のものをはるかに超えて遅延するはずである。また、望ましい場合、第2段階ブリスターの1つを陽性対照に用いてもよく、ここで、試料には、そうでなければ試験されない(おそらくC−Abビーズと共に含まれる)抗原がスパイク処理され、これはおそらく、対応するR−Ab−DNAに結合し、そしてこれが次いで、第1段階PCR中で増幅される。最後に、対照ブリスター283はこの例示的態様では用いられない。しかし、重要でない再設定を用いて、ブリスター283をブリスター266に連結してもよく、ブリスター283が6つの他の第2段階反応を提供してもよい。あるいは、特定の適用により望ましいように、ブリスター283を他の対照のために用いてもよい。
【0141】
上記のように、全ての未結合又は非特異的結合R−Ab−DNA複合体を除去することは困難であるため、陰性試料さえもある程度の増幅を示しうる。リアルタイム増幅分析は、閾値交差点の周期数(又は増幅の50%に到達する際の周期数等の、同等の周期閾値測定値)の相違により、陽性が陰性から区別されうると予期される。
【0142】
多数の抗原に関して試験する場合であってさえ、第1段階多重増幅は、iPCRでの検出に必要でない場合もあることが理解される。しかし、第1段階多重増幅により、感度はより高くなる。
【0143】
実施例5:iPCR特異的パウチを伴うiPCR
上記実施例は、iPCRのために図6のパウチ210を適応させる方法を例示する。しかし、図12は、iPCR用に例として設定されたパウチ310を示す。装備390には、15のチャンバー392及びプランジャー368がある以外、装備190及び290に類似である。各チャンバー392(例として試料を注入するチャンバー392a)には、それ自体の注入ポートがあってもよく、又はいくつかのチャンバーに連結チャネルがあってもよく、注入ポートを共有してもよい(例として各々洗浄緩衝液を含有する392e〜392k)。上記装備と同様、注入ポート及びチャネルの任意の組み合わせが本発明の範囲内である。パウチ310は1の主な点で図6のパウチ210と異なる。細胞溶解は、通常、iPCRには必要でないため、三葉ブリスター222は、単一の巨大廃棄物リザーバー322により置き換えできる。iPCRには多数の洗浄が望ましいため、廃棄物リザーバー322は、適用及び反応体積に応じて、多数の使用済み緩衝液を保持する程度に十分な体積、例えば2〜5mlで提供される。装置800は、パウチ390を収容するため、幾分再設定しなければならないことが理解される。
【0144】
装置内に挿入する前に、図12のパウチ390は、例として、チャンバー392中に以下の構成要素があるであろう。試験する試料をチャンバー392a内に注入する。磁気ビーズにコンジュゲート化された捕捉抗体(C−Ab)をチャンバー392b中で提供する。場合によって前洗浄緩衝剤をチャンバー392c中で提供する。各オリゴヌクレオチド・鋳型にコンジュゲート化されたレポーター抗体(R−Ab−DNA)をチャンバー392d中で提供する。上記のように、異なる抗体各々が固有のオリゴヌクレオチドにコンジュゲート化されている、多数のR−Ab−DNAを提供して多数の抗原を検出する。洗浄緩衝液をチャンバー392e〜392k中で提供する。第1段階PCRマスターミックスをチャンバー392l中で提供する。希釈緩衝液をチャンバー392m及び392n中で提供する。第2段階PCRマスターミックスをチャンバー392o中で提供する。
【0145】
最初に、プランジャー368a及び368bを押圧し、チャネル343を通じて試料及び捕捉抗体C−Abをブリスター344内に入れる。例としてチャネル345を介してブリスター344及び346の間を移動させて、試料及びC−Abを穏やかに混合し、上記のようにインキュベーションする。C−Ab−T複合体を形成する程度の時間が経過した後、チャネル338を介して混合物をブリスター346に移動させ、ここで装置中に収納された磁石350を配備し、複合体化されたビーズを捕捉する。残った流体は、チャネル339を介して、廃棄物リザーバー322に移動する。場合によって、チャネル345を介してチャンバー392c由来の前洗浄緩衝液をブリスター346に移動させ、磁石350を引っ込め、ブリスター344及び346の間で流体を移動させて、磁気ビーズを穏やかに洗浄する。磁石350を再び配備し、ビーズを再びブリスター346中に捕捉する。
【0146】
次にプランジャー368dを押圧し、核酸鋳型にコンジュゲート化されたレポーター抗体(R−Ab−DNA)をブリスター346に移動させ、磁石350を引っ込め、例としてチャネル345を介してブリスター344及び346間を移動させて、C−Ab−T及びR−Ab−DNAを穏やかに混合し、上記のようにインキュベーションする。三元複合体(C−Ab−T−R−Ab−DNA)を形成後、磁石350を再び配備し、三元複合体をブリスター346中に捕捉し、残った流体を廃棄物ブリスター322に移動させる。
【0147】
次いで、前洗浄は上記のように、チャンバー392e由来の洗浄緩衝液を用いて、三元複合体を洗浄する。磁石350を再び配備し、三元複合体をブリスター346中で捕捉し、残った流体を廃棄物ブリスター322に移動させる。チャンバー392f〜392k由来の洗浄緩衝液を用いて、洗浄を多様な回数反復する。こうして、図12の例示的な態様では、7回の洗浄を完了する。しかし、上記のように、特定の適用に応じて、洗浄がより多いか又は少ない場合が望ましい場合もありうる。
【0148】
図11に示すイムノPCRIIスキームに例示するように、レポーター抗体を核酸鋳型に直接コンジュゲート化する。本明細書に論じる態様のいずれでも、直接及び間接共有及び非共有結合を含む、任意の多様な方法により、リポーター抗体を核酸鋳型に付着させてもよいことが理解される。また、図11のイムノPCRIスキームに例示するように、例えば二次抗体の使用を通じるものを含めて、多様な機構を通じて、レポーター抗体を核酸に付着させてもよい。二次抗体又は他の間接的カップリング機構を用いる場合、他のポート及び他の洗浄工程を付加することが望ましい場合もある。
【0149】
次いで、上記のように、プランジャー368kの活性化により、第1段階PCRマスターミックスをブリスター346に配備し、磁石350をもう一度引っ込める。穏やかな混合が望ましい場合、チャネル347を介して、ブリスター346及び364の間で流体を移動させてもよい。先のようにブリスター346及び344の間で混合を行ってもよいが、例示的な態様では、ブリスター346及び364の間で混合を行う。これは、ブリスター344中に存在しうる未結合レポーター抗体複合体の再導入を低下させる一助となる。次いで、試料をブリスター364に移動させる。364上に位置するブラダーを穏やかに加圧して、ブリスター364がペルチェ素子等の加熱/冷却デバイスと接触するように移動させ、第1段階PCRに関して上記のように試料をサーマルサイクリングする。上記実施例では、上記のように第1段階PCRは現在記載されるiPCRでは不要でありえ、ブリスター364及びその関連ヒーターを省いてもよく、全ての洗浄を、例として、ブリスター344及び346間で混合して行ってもよい。第1段階PCRを省く場合、以下に記載の希釈もまた、省いてもよい。
【0150】
増幅された試料の大部分が廃棄物ブリスター322に移動し、ある程度の増幅された試料が、希釈されるためにブリスター364中に残る。ブリスター322のサイズを空間が制約するか又は他の懸念が制限される場合、残りの廃棄物を含有するのに、ブリスター344及び346を用いてもよいことが理解される。ブリスター366に移動していた少量の残りの増幅試料を、チャネル349を経由したチャンバー392m由来の希釈緩衝液と混合する。チャネル355を介して、試料及び希釈緩衝液を、ブリスター364及び366間で穏やかに混合してもよい。他の希釈が望ましい場合、チャンバー392n由来の希釈緩衝液を用いて希釈を反復してもよい。最後に、希釈試料のある程度を、廃棄物リザーバー322に移動させ、残った希釈試料をチャンバー392o由来の第2段階PCRマスターミックスと混合する。混合後、試料を多様な低体積第2段階ブリスター382に移動させ、ここで上記のように第2段階プライマーを提供する。この設定において、先のiPCR例では上記のように、ブリスター383を陰性対照用に用いてもよく、そしてブリスター384を陽性対照用に用いてもよい。先のiPCR例では上記のように、第2段階PCR及び分析を行う。
【0151】
実施例6 PCR及びiPCRの組み合わせ
ある状況では、1の反応セットで、抗原及び核酸を試験することが望ましい場合もある。例えば、テロリストの攻撃は、多数の人々を殺すために多様な因子を使用しうる。攻撃に応戦する際、原因因子がウイルス、細菌、又は他の生物であるのか、あるいは原因因子が毒素であるのか不明な場合もある。本発明のパウチの閉鎖環境系は、当該使用によく適している。本明細書に開示する態様では、PCR及びiPCRの両方を単一のパウチ内で行い、多様な生物学的及び抗原性因子を同時検出しうる。
【0152】
図13は、図6のパウチ210に類似のパウチ410を示す。例示的なパウチ410には、パウチ210の全てのブリスターがあるが、ブリスター430、431、432、及び433もまた含む。パウチ410にはまた、20の対応するプランジャー468と共に、20のチャンバー492がある、より大きい装備490もある。上記のように、装備には、各チャンバーに関して別個の注入ポートが含まれてもよく、又は多様なチャンバーには連結チャネルがあってもよい。多様な組み合わせが本発明の範囲内である。パウチ410の装置は、ブリスター430、431、432、及び433、並びにチャネル436、457、473、486、487、及び488に他の空気圧アクチュエーターが、並びにブリスター433及び431にそれぞれ隣接する他の引き込み式磁石451及び454が必要であることを除いて、装置800と類似である。
【0153】
例示的な態様では、チャンバーを以下のように装填する。iPCR洗浄緩衝液をチャンバー492a〜492e及び492j中で提供する。試験しようとする試料をチャンバー492f内に注入する。磁気ビーズにコンジュゲート化された捕捉抗体(C−Ab)をチャンバー492g中で提供する。場合による前洗浄緩衝液をチャンバー492h中で提供する。各オリゴヌクレオチド・鋳型にコンジュゲート化されたレポーター抗体(R−Ab−DNA)をチャンバー492i中で提供する。細胞溶解緩衝液をチャンバー492k中で提供する。核酸結合性磁気ビーズをチャンバー492l中で提供する。核酸洗浄緩衝液をチャンバー492m及び492n中で提供する。核酸溶出緩衝液をチャンバー492o中で提供する。第1段階PCRマスターミックスをチャンバー492p中で提供する。希釈緩衝液をチャンバー492q及び492r中で提供する。第2段階PCRマスターミックスをチャンバー492s中で提供する。図6に関して上に記載の対照をチャンバー492t中で提供する。この配置は例であり、そして他の設定ができることが理解される。また、上記の他の実施例同様、当該構成要素の1又はそれ以上を、パウチ410の1又はそれ以上のブリスター中で乾燥させて提供してもよい。
【0154】
試料をチャンバー492f内に装填し、そしてパウチ410を装置内に装填した時点で、プランジャー468f及び468gを押圧し、チャネル436を通じて試料及びC−Abをブリスター430に移動させる。ブリスター430及び431の間で穏やかに移動させて試料及び捕捉抗体を混合し、次いで、上記のようにインキュベーションして、C−Ab−T複合体の形成を促進する。試料をブリスター431に移動させ、そして磁石454を活性化し、C−Ab−T複合体を捕捉する。こうして、毒素又は他の標的化された抗原が、ここでブリスター431中に捕捉される。例示的な態様では、捕捉抗体とカップリングした磁気ビーズの磁気ビーズ部分の表面は、核酸結合性磁気ビーズの表面とは異なり、そして捕捉抗体にカップリングした磁気ビーズは、例として、核酸に結合しないように設定される。次いで、チャネル473を介して、残りの流体を三葉ブリスター422に移動させる。次いで、流体をプロセシングし、標的核酸の存在をアッセイしてもよい。試料のこの分割は、標的とされる抗原がPCR検出で標的とされる生物の表面抗原である場合、問題がある場合もある。当該状況においては、その生物に関する抗原検出及び核酸検出間で選択するか、又はPCR及びiPCRに関して別個のパウチを用いることが望ましい場合もある。あるいは、抗体捕捉前に、試料を溶解してもよい。例えば抗原の立体構造を変化させることにより、溶解が抗体捕捉に干渉するならば、試料を分割し、そして試料の部分のみを抗体捕捉前に溶解してもよい。C−Ab−Tの前洗浄が望ましい場合、プランジャー468hを活性化して、チャンバー492h由来の前洗浄緩衝液をブリスター431内に移動させる。磁石454を引っ込め、流体をブリスター430及び431間で混合し、磁石454をもう一度配備し、C−Ab−T複合体をブリスター431中で捕捉する。ここで、捕捉後に残されていた細胞をおそらく含有する洗浄緩衝液を、残りの未捕捉物質と共に、三葉ブリスター422に移動させる。
【0155】
試料がここで、別個のプロセシングのため、2つの部分に分割されることが理解される。試料中に存在する抗原は、ここで、ブリスター431中のC−Ab−T複合体中に捕捉される一方、試料中に存在する細胞、ウイルス、及び未結合核酸は、ここで、三葉ブリスター422中にあり、溶解される。両方が第1段階PCRのための準備ができるまで、試料の2つの部分を別個にプロセシングする。当該プロセスは任意の順序で又は同時に行ってもよい。しかし、本態様では、次いで三葉ブリスターが廃棄物リザーバーとして機能できるように、C−Ab−T複合体の実質的なプロセシング前に、細胞溶解が行われなければならない。別個の廃棄物リザーバーを用いる場合、望ましいならば、C−Ab−T複合体がプロセシングされた後に、細胞溶解を遅延させてもよい。
【0156】
チャネル436を介して、チャンバー492k由来の溶解緩衝液を三葉ブリスター422内に移動させる。三葉ブリスター422のブリスターに隣接するブラダーを、図6に関して上記のように加圧し、高速衝突を駆動し、試料を剪断し、核酸を遊離させる。細胞が適当に溶解された時点で、プランジャー468lを活性化し、チャネル436を介して、チャンバー492l中に保存された核酸結合性磁気ビーズを三葉ブリスター220内に注入する。試料を磁気ビーズと混合し、混合物がインキュベーションされうる。次いで、図6のパウチに関して上記のように、プロセシングを続ける。試料及びビーズの混合物を、チャネル438を通じてブリスター444内に押し込み、次いで、チャネル443を通じて、ブリスター446内に押し込み、ここで引き込み式磁石450が溶液から磁気ビーズを捕捉する。次いで、未捕捉の液体をブリスター446から押し出し、ブリスター444を通じて、ブリスター422内に戻し、これはここで、廃棄物貯蔵所として用いられる。プランジャー468mを活性化して、チャネル445を介してブリスター444に、次いで、チャネル447を介してブリスター446に洗浄溶液を提供してもよい。磁石450を引っ込め、ブリスター444及び446で、ビーズを往復して移動させて、磁気ビーズを洗浄する。磁気ビーズが洗浄された時点で、磁石450の活性化により、ブリスター446中で磁気ビーズを再捕捉し、次いで、洗浄溶液をブリスター422に移動させる。チャンバー492n中の洗浄試薬を用いて、このプロセスを反復してもよい。しかし、洗浄がより多くても少なくても本発明の範囲内であることが理解される。洗浄後、チャネル447を介して、チャンバー492o中に保存された溶出緩衝液をブリスター448に移動させ、磁石450を引っ込める。チャネル452を介して、ブリスター446及び448間で溶液を循環させ、ブリスター446中の磁気ビーズのペレットを破壊し、捕捉された核酸を溶液に入れうる。磁石450をもう一度活性化し、ブリスター246中で磁気ビーズを捕捉し、溶出された核酸溶液をブリスター448内に移動させる。
【0157】
ブリスター431に戻って、C−Ab−T複合体をそこで捕捉する。プランジャー468iを押圧し、核酸鋳型にコンジュゲート化されたレポーター抗体(R−Ab−DNA)をブリスター430に導入し、磁石454を引っ込め、例として、チャネル457を介してブリスター430及び431間を移動させて、C−Ab−T及びR−Ab−DNAを穏やかに混合し、上記のようにインキュベーションする。三元複合体(C−Ab−T−R−Ab−DNA)が形成された後、磁石454をもう一度配備し、ブリスター431中で三元複合体を捕捉して、残った流体をブリスター422に移動させ、このブリスターはここで、廃棄物リザーバーとして用いられる。
【0158】
次いで、前洗浄に関して上記のように、チャンバー492j由来の洗浄緩衝液を用いて、三元複合体を洗浄する。磁石454を再び配備し、ブリスター446中で三元複合体を捕捉して、残った流体をブリスター422に移動させる。チャネル486を介して、チャンバー492a由来の他の洗浄緩衝液をブリスター432内に注入し、磁石454を引っ込め、ブリスター431及び432の流体を混合して三元複合体を再懸濁する。次いで、チャネル487を介して、流体をブリスター433に移動させ、磁石451の活性化により三元複合体をそこに捕捉する。次いで、ブリスター433及び432を通じて、廃棄物流体をブリスター422に戻す。チャンバー492bからブリスター432内に他の洗浄緩衝液を導入し、ブリスター432及び433間で混合することにより、洗浄を反復する。チャンバー492c〜492e由来の洗浄緩衝液を用いて、洗浄を多様な回数反復する。したがって、図13の例示的な態様では、6回の洗浄が完了する。しかし、上記のように、特定の適用に応じて、洗浄がより多いか少ない方が望ましい場合もある。ブリスター432及び433を用いて、先の洗浄由来の混入を最小限にすることが理解される。望ましい場合、ブリスター432及び433を省いてもよく、そしてブリスター430及び431間で混合しながら、チャンバー492a〜492e中に含有される洗浄緩衝液をブリスター430又は431のいずれかに直接提供してもよい。
【0159】
ここで、洗浄した抗体三元複合体をブリスター433中に捕捉し、ここで、溶出した核酸はブリスター448中にある。PCRを通じて、独立した反応で、第2段階PCRブリスターの別個のセットへと、抗体三元複合体及び溶出した核酸をプロセシングしてもよい。しかし、本態様では、抗体三元複合体及び溶出された核酸をPCR分析用に合わせる。全ての第1段階プライマーを含有する第1段階PCRマスターミックスを、チャンバー492pからブリスター448内に注入する。次いで、チャネル453を介して、核酸試料をブリスター448及び464間で混合する。iPCR成分のために第1段階PCRが望ましい場合、次いで、核酸試料をブリスター433に移動させ、磁石451を引っ込め、再度合わせた試料を例としてブリスター433及び464間で混合する。次いで、試料をブリスター464に移動させ、ここで上記のように試料をサーマルサイクリングする。次に、チャンバー492q及び492r由来の希釈緩衝液を用いて、増幅された試料を1回又は数回希釈してもよい。各希釈前に、チャネル447又はチャネル488のいずれかを介して、増幅された試料の大部分をブリスター464から除去する。希釈緩衝液の各添加時、チャネル462を介して、ブリスター464及び466間で試料を混合する。希釈後、上記例に記載のように、試料の全て又は一部をチャンバー492s由来の第2段階PCRマスターミックスと混合する。
【0160】
次いで、チャネル465を介して、試料をブリスター466から第2段階増幅ゾーン480中のブリスター482に移動させる。ブリスター482は各々、プライマー対を含んで先に提供されており、いくつかのプライマー対は標的核酸に特異的だが、他のプライマー対は、レポーター抗体にコンジュゲート化されたオリゴヌクレオチドに特異的である。望ましい場合、上記のように、2つのブリスター482をiPCR対照に充ててもよい。図6のブリスター283に関して上記のように、PCR対照用にブリスター483を用いてもよい。18のブリスター482が示されるが、任意の数のブリスター482を用いてよいことが理解される。図6に関して上記のように第2段階PCR増幅が進行する。上記のように、PCR分析は、増幅曲線、融解曲線又はその組み合わせを用いてもよく、一方、iPCR分析は、交差閾値を用いてもよいことが理解される。他の分析法が本発明の範囲内である。
参考文献
【0161】
【表2】
【0162】
【表3】
【0163】
【表4】
【0164】
【表5】
【0165】
本明細書でPCR及びiPCRに言及するが、本明細書に開示するデバイス及び方法は、当該技術分野で公知のように、他の核酸増幅又は他の生物学的プロセシング法、特に第1段階多重反応及び第2段階の個々の反応から利益を得る方法で用いるのに適する。例示的な限定されない第2段階反応には、アレル特異的プライマー伸張を含むプライマー伸張;1又はそれ以上のジデオキシヌクレオチドの取り込みによる終結を含む、伸長終結;蛍光又は非蛍光標識の取り込み;並びに非対称PCR、アレル特異的PCR、インベーダーアッセイ、及び他の等温増幅又は検出化学反応等の、反応混合物における成分又は成分比の変化を必要とする他の酵素反応が含まれる。
【0166】
本発明は、好ましい態様に関して詳細に記載されているが、以下の請求項に記載し、そして定義するような、本発明の範囲及び精神内の改変及び修飾が存在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖系において、試料に対して複数の反応を実行するための容器であって
試料を受け取るためのチャネル、
各々1又はそれ以上の試薬を含み、流動的にチャネルに連結されている複数の高密度反応ウェル、及び
高密度反応ゾーンへの試料の導入に際して、高密度反応ウェル間の交差混入を最小限にするバリア層
を含む高密度反応ゾーンを含む、前記容器。
【請求項2】
高密度反応ウェルに対して加圧して、複数の各ウェル中に試料の部分を密封することができる可動層を含む、請求項1記載の容器。
【請求項3】
試料が流体であり、かつ、バリア層が反応ウェルあたり1又はそれ以上の穿孔がある穿孔層であり、前記穿孔は、力の存在下で流体試料が通過できるほど大きいが、力の非存在下では流体試料が実質的に通過させないほど小さい、請求項1記載の容器。
【請求項4】
力が各高密度反応ウェルにおいて真空である、請求項3記載の容器。
【請求項5】
バリア層が、試薬を条件的に放出する化学的バリアである、請求項1記載の容器。
【請求項6】
試薬が各ウェルにおいて乾燥して提供され、かつ、化学的バリアが比較的緩慢に溶解し、かつ、試薬の再水和を遅らせる、請求項5記載の容器。
【請求項7】
化学層が保存温度では固形又はゲルである物質であるが、サーマルサイクリング温度では液体である、請求項5記載の容器。
【請求項8】
複数の高密度反応ウェルが、少なくとも50の高密度反応ウェルを含む、請求項1記載の容器。
【請求項9】
複数の高密度反応ウェルが、少なくとも120の高密度反応ウェルを含む、請求項1記載の容器。
【請求項10】
複数の高密度反応ウェルが、少なくとも400の高密度反応ウェルを含む、請求項1記載の容器。
【請求項11】
試薬がPCRプライマー対を含む、請求項1記載の容器。
【請求項12】
1のウェルが、対照核酸及び対照核酸を増幅するように設定されたプライマー対を含有し、かつ、少なくとも1の他のウェルが、同じプライマーを含有するが対照核酸を含有しない、請求項11記載の容器。
【請求項13】
対照核酸が合成核酸である、請求項12記載の容器。
【請求項14】
複数の高密度反応ウェルの各々がPCRプライマーの異なる対を含有する、請求項1記載の容器。
【請求項15】
試料を容器内に導入するための試料注入ポート、
試料注入ポートに流動的に連結されている、試料中に存在する細胞又は胞子を溶解するように設定された細胞溶解ゾーン、
細胞溶解ゾーンに流動的に連結されている、核酸を精製するように設定された核酸調製ゾーン、及び
核酸調製ゾーン及び高密度反応ゾーンに流動的に連結されており、試料の第1段階増幅のために設定された第1段階反応ブリスターを含む、第1段階反応ゾーン
をさらに含む、請求項14記載の容器。
【請求項16】
試料中の核酸を増幅する方法であって、以下の:
高密度反応ゾーンがある容器を提供する工程であり、前記高密度反応ゾーンは以下の:
試料を受け取るためのチャネル、
各々1対のPCRプライマーを含み、流動的にチャネルに連結されている複数の高密度反応ウェル、及び
高密度反応ゾーンへの試料の導入に際して、高密度反応ウェル間のPCRプライマー対の交差混入を最小限にするバリア層
を含み;
チャネルを介して高密度反応ゾーン内に試料を注入する工程;
各高密度反応ウェルに試料の部分を導入する工程;
高密度反応ウェル中の試料の部分を密封する工程;並びに、
高密度反応ゾーンをサーマルサイクリングするする工程;
を含む、前記方法。
【請求項17】
バリア層が反応ウェルあたり1又はそれ以上の穿孔がある穿孔層であり、前記穿孔は、力の存在下で流体試料が通過できるほど大きいが、力の非存在下では流体試料が実質的に通過させないほど小さい;
力が各反応ウェルに提供される真空であり;かつ、
試料の部分が穿孔を通じて各反応ウェル内に導入される;
請求項16記載の方法。
【請求項18】
バリア層が、試薬を条件的に放出する化学的バリアであり、かつ、
化学的バリアから試薬が放出される前に、試料の部分が各反応ウェル内に密封される、
請求項16記載の方法。
【請求項19】
試料中の核酸を検出する方法であって、以下の:
容器を提供する工程であって、前記容器には以下の:
フレキシブルな第1段階増幅ブリスターを含む複数の流動的に連結された反応チャンバー、並びに複数の第2段階ウェル及び交差混入を防止するためのバリア層を含む高密度アレイであって、各第2段階ウェルが試料中に存在しうる異なる標的核酸を増幅するように設定されたプライマー対を含有する、前記高密度アレイ、並びに
容器外部からのみ反応ブリスターへアクセスできるように、反応チャンバーに流動的に連結された1又はそれ以上の密封可能ポート
があり;
第1の密封可能ポートを介して容器内に試料を注入する工程で、かつ、試料注入の後に第1のポートを密封する工程;
標的を増幅するように設定された複数のプライマー対を含むPCR反応成分と、試料中の核酸とを混合する工程;
第1段階増幅ブリスター中で核酸をサーマルサイクリングする工程で、第1段階増幅混合物を生成する工程;
第2段階ウェル各々に、第1段階増幅混合物の部分を移動させる工程;
各第2段階ウェル内に、第1段階増幅混合物の各部分を密封する工程;
第2段階反応チャンバー中で核酸をサーマルサイクリングする工程で、第2段階増幅産物を生成する工程;かつ、
どの第2段階反応チャンバーが第2段階増幅産物を含有するかを検出する工程;
を含む、前記方法。
【請求項20】
それぞれの各標的について、第2段階プライマー対が、その対応する第1段階プライマー対内で入れ子になっている(nested)、請求項19記載の方法。
【請求項21】
第1段階サーマルサイクリング工程が対数期に到達する前に終結し、かつ、第2段階サーマルサイクリング工程が対数期に進行する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
移動工程が、第1段階増幅ブリスターに加圧して、第1段階増幅混合物を第1段階増幅ブリスターの外に出して第2段階増幅チャンバー内に入れる工程を含む、請求項19記載の方法。
【請求項23】
検出工程が、第2段階反応チャンバー中の蛍光色素からの蛍光放出を検出する工程を含む、請求項19記載の方法。
【請求項24】
高密度アレイが、複数の別の第2段階ウェルを含み、前記別の第2段階ウェルの1つが、対照核酸及び対照核酸を増幅するように設定されたプライマー対を含有し、かつ、少なくとも1の他の別のウェルは、同じプライマーを含有するが対照核酸を含有しない、請求項19記載の方法。
【請求項25】
対照核酸が合成核酸である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
検出工程の後に、第2段階増幅ウェルが開封され、かつ、第2段階増幅ウェルの全ての内容物が混合される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
第2段階増幅ウェルの内容物が、他の反応チャンバーの内容物と混合される、請求項26記載の方法。
【請求項1】
閉鎖系において、試料に対して複数の反応を実行するための容器であって
試料を受け取るためのチャネル、
各々1又はそれ以上の試薬を含み、流動的にチャネルに連結されている複数の高密度反応ウェル、及び
高密度反応ゾーンへの試料の導入に際して、高密度反応ウェル間の交差混入を最小限にするバリア層
を含む高密度反応ゾーンを含む、前記容器。
【請求項2】
高密度反応ウェルに対して加圧して、複数の各ウェル中に試料の部分を密封することができる可動層を含む、請求項1記載の容器。
【請求項3】
試料が流体であり、かつ、バリア層が反応ウェルあたり1又はそれ以上の穿孔がある穿孔層であり、前記穿孔は、力の存在下で流体試料が通過できるほど大きいが、力の非存在下では流体試料が実質的に通過させないほど小さい、請求項1記載の容器。
【請求項4】
力が各高密度反応ウェルにおいて真空である、請求項3記載の容器。
【請求項5】
バリア層が、試薬を条件的に放出する化学的バリアである、請求項1記載の容器。
【請求項6】
試薬が各ウェルにおいて乾燥して提供され、かつ、化学的バリアが比較的緩慢に溶解し、かつ、試薬の再水和を遅らせる、請求項5記載の容器。
【請求項7】
化学層が保存温度では固形又はゲルである物質であるが、サーマルサイクリング温度では液体である、請求項5記載の容器。
【請求項8】
複数の高密度反応ウェルが、少なくとも50の高密度反応ウェルを含む、請求項1記載の容器。
【請求項9】
複数の高密度反応ウェルが、少なくとも120の高密度反応ウェルを含む、請求項1記載の容器。
【請求項10】
複数の高密度反応ウェルが、少なくとも400の高密度反応ウェルを含む、請求項1記載の容器。
【請求項11】
試薬がPCRプライマー対を含む、請求項1記載の容器。
【請求項12】
1のウェルが、対照核酸及び対照核酸を増幅するように設定されたプライマー対を含有し、かつ、少なくとも1の他のウェルが、同じプライマーを含有するが対照核酸を含有しない、請求項11記載の容器。
【請求項13】
対照核酸が合成核酸である、請求項12記載の容器。
【請求項14】
複数の高密度反応ウェルの各々がPCRプライマーの異なる対を含有する、請求項1記載の容器。
【請求項15】
試料を容器内に導入するための試料注入ポート、
試料注入ポートに流動的に連結されている、試料中に存在する細胞又は胞子を溶解するように設定された細胞溶解ゾーン、
細胞溶解ゾーンに流動的に連結されている、核酸を精製するように設定された核酸調製ゾーン、及び
核酸調製ゾーン及び高密度反応ゾーンに流動的に連結されており、試料の第1段階増幅のために設定された第1段階反応ブリスターを含む、第1段階反応ゾーン
をさらに含む、請求項14記載の容器。
【請求項16】
試料中の核酸を増幅する方法であって、以下の:
高密度反応ゾーンがある容器を提供する工程であり、前記高密度反応ゾーンは以下の:
試料を受け取るためのチャネル、
各々1対のPCRプライマーを含み、流動的にチャネルに連結されている複数の高密度反応ウェル、及び
高密度反応ゾーンへの試料の導入に際して、高密度反応ウェル間のPCRプライマー対の交差混入を最小限にするバリア層
を含み;
チャネルを介して高密度反応ゾーン内に試料を注入する工程;
各高密度反応ウェルに試料の部分を導入する工程;
高密度反応ウェル中の試料の部分を密封する工程;並びに、
高密度反応ゾーンをサーマルサイクリングするする工程;
を含む、前記方法。
【請求項17】
バリア層が反応ウェルあたり1又はそれ以上の穿孔がある穿孔層であり、前記穿孔は、力の存在下で流体試料が通過できるほど大きいが、力の非存在下では流体試料が実質的に通過させないほど小さい;
力が各反応ウェルに提供される真空であり;かつ、
試料の部分が穿孔を通じて各反応ウェル内に導入される;
請求項16記載の方法。
【請求項18】
バリア層が、試薬を条件的に放出する化学的バリアであり、かつ、
化学的バリアから試薬が放出される前に、試料の部分が各反応ウェル内に密封される、
請求項16記載の方法。
【請求項19】
試料中の核酸を検出する方法であって、以下の:
容器を提供する工程であって、前記容器には以下の:
フレキシブルな第1段階増幅ブリスターを含む複数の流動的に連結された反応チャンバー、並びに複数の第2段階ウェル及び交差混入を防止するためのバリア層を含む高密度アレイであって、各第2段階ウェルが試料中に存在しうる異なる標的核酸を増幅するように設定されたプライマー対を含有する、前記高密度アレイ、並びに
容器外部からのみ反応ブリスターへアクセスできるように、反応チャンバーに流動的に連結された1又はそれ以上の密封可能ポート
があり;
第1の密封可能ポートを介して容器内に試料を注入する工程で、かつ、試料注入の後に第1のポートを密封する工程;
標的を増幅するように設定された複数のプライマー対を含むPCR反応成分と、試料中の核酸とを混合する工程;
第1段階増幅ブリスター中で核酸をサーマルサイクリングする工程で、第1段階増幅混合物を生成する工程;
第2段階ウェル各々に、第1段階増幅混合物の部分を移動させる工程;
各第2段階ウェル内に、第1段階増幅混合物の各部分を密封する工程;
第2段階反応チャンバー中で核酸をサーマルサイクリングする工程で、第2段階増幅産物を生成する工程;かつ、
どの第2段階反応チャンバーが第2段階増幅産物を含有するかを検出する工程;
を含む、前記方法。
【請求項20】
それぞれの各標的について、第2段階プライマー対が、その対応する第1段階プライマー対内で入れ子になっている(nested)、請求項19記載の方法。
【請求項21】
第1段階サーマルサイクリング工程が対数期に到達する前に終結し、かつ、第2段階サーマルサイクリング工程が対数期に進行する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
移動工程が、第1段階増幅ブリスターに加圧して、第1段階増幅混合物を第1段階増幅ブリスターの外に出して第2段階増幅チャンバー内に入れる工程を含む、請求項19記載の方法。
【請求項23】
検出工程が、第2段階反応チャンバー中の蛍光色素からの蛍光放出を検出する工程を含む、請求項19記載の方法。
【請求項24】
高密度アレイが、複数の別の第2段階ウェルを含み、前記別の第2段階ウェルの1つが、対照核酸及び対照核酸を増幅するように設定されたプライマー対を含有し、かつ、少なくとも1の他の別のウェルは、同じプライマーを含有するが対照核酸を含有しない、請求項19記載の方法。
【請求項25】
対照核酸が合成核酸である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
検出工程の後に、第2段階増幅ウェルが開封され、かつ、第2段階増幅ウェルの全ての内容物が混合される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
第2段階増幅ウェルの内容物が、他の反応チャンバーの内容物と混合される、請求項26記載の方法。
【図1】
【図2】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図6a】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図15a】
【図16】
【図17】
【図2】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図6a】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図15a】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2010−509918(P2010−509918A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537325(P2009−537325)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/084637
【国際公開番号】WO2008/140568
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(502420379)アイダホ テクノロジー インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/084637
【国際公開番号】WO2008/140568
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(502420379)アイダホ テクノロジー インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】
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