説明

高密度還元鉄の製造方法および高密度還元鉄の製造装置

【課題】大掛かりなブリケットマシン設備を必要とせずに塊状還元鉄を均一に冷却することができ、製品全体としての目的金属化率を維持することができるとともに、強度低下を抑制することができる高密度還元鉄の製造方法およびその装置を提供する。
【解決手段】直接還元製鉄法で得られる一つの塊状還元鉄Rから高密度還元鉄を製造する装置であって、塊状還元鉄を高温下で加圧して密度を高める加圧装置2と、塊状還元鉄を加圧装置に導入する案内装置5と、加圧装置に設けられ、対向する両側から塊状還元鉄を挟持し略包摂でき塊状還元鉄を高温下で加圧する押圧部2a,2bと、その押圧部によって圧縮され密度の高められた高密度還元鉄を冷却する冷却装置4とを備えてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉、溶解炉、電気炉等の転炉や製鋼炉の溶解原料に使用される高密度還元鉄の製造方法および高密度還元鉄の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の還元鉄ブリケットの製造方法の一部を図9に示す。
【0003】
回転炉床炉等の直接還元炉で製造された還元鉄Rは、同図ではホッパ50を介してブリケットマシン設備51に供給される。
【0004】
上記ブリケットマシン設備51にはロール状のブリケッターおよびブレーカが備えられている。上記ブリケッターによって還元鉄Rは、所定間隔で切断溝を有する板状に加圧成形され、次いで、上記ブレーカにより個々に切断される。これにより、還元鉄ブリケットBが形成される。
【0005】
上記ブリケッターは、数個のDRI(直接還元鉄)をHBI(熱間ブリケット還元鉄)サイズの金型に押し込んで加圧成形を行う。上記HBIはその搬送中に例えば空気と反応して発熱したり、割れが生じないように、見かけ密度5.0g/cm以上に圧縮される。そして、このような高密度にするためには、ブリケッター用の特殊な加圧装置が用いられている。
【0006】
次いで、これらの還元鉄ブリケットBはクエンチタンク52に投入され、タンク内の水で急冷される。
【0007】
水で冷却された還元鉄ブリケットB′は、搬出コンベヤ53によってクエンチタンク52から引き揚げられて製品となる(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
上記方法で製造された還元鉄ブリケットB′(図10参照)は、主として原料、燃料が安価に入手できる国の製鋼用鉄源として、それらの国に輸出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−316718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記還元鉄ブリケットB′が外販用ではなく、例えば、同じブリケットマシン設備に隣接する製鋼工場や高炉に搬送されて使用される場合には、輸送時の割れをそれほど考慮する必要はなく、上記したブリケットマシン設備51を設ける必要がない。
【0011】
しかしながら、ブリケットマシン設備51による加圧工程を経ずに還元鉄Rを冷却しようとしても、還元鉄R自体に粒度分布があり、また、還元鉄R内の気孔率が高いことから、それらサイズの異なる還元鉄Rを同じ冷却速度で冷却することができないという問題がある。また、気孔率が高いことにより保管中の再酸化を抑制することができないという問題もある。
【0012】
本発明は以上のような従来の還元鉄ブリケットの製造方法における課題を考慮してなされた発明であり、ブリケットマシン設備を用いることなく還元鉄の再酸化を抑制し、同じ冷却速度で冷却することができ、また、目的とする金属化率を達成することができるとともに強度低下を抑制することができる、高密度還元鉄の製造方法および高密度還元鉄の製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、従来のHBIのように塊状還元鉄を塊成化せず、一つ一つの塊状還元鉄をばらけた状態のまま、HBIに比べて低圧で圧縮し、再酸化を抑制できる程度の見かけ密度にすることを特徴としている。
【0014】
a.本発明に係る還元鉄ブリケットの製造方法は、
直接還元製鉄法で得られる一つの塊状還元鉄から一つの高密度還元鉄を得る方法であって、上記塊状還元鉄を加圧装置に導入し、
その塊状還元鉄を挟持し得る上記加圧装置の押圧部により、上記塊状還元鉄を高温下で加圧し、
加圧された上記塊状還元鉄を冷却することを要旨とする。
【0015】
本発明における高密度還元鉄の製造方法には「生ペレット(酸化鉄ペレット)」や「生ブリケット(酸化鉄ブリケット)」を使用することができ、これらを直接還元炉に供給して還元したものを「塊状還元鉄」と呼ぶ。
【0016】
また、上記「高密度還元鉄」とは、直接還元炉に供給することにより還元された「塊状還元鉄」を加圧圧縮してさらに密度を高めたものであり、ホットブリケットマシン設備による圧縮成形に比べ、圧縮の程度が小さいものを意味する。
【0017】
本発明によれば、直接還元製鉄法によって得られた上記塊状還元鉄を加圧して、概ね同じサイズを有する高密度還元鉄が得られた後で冷却を行う。これにより、それらの高密度還元鉄の気孔率が低下して空気や水が侵入し得る空隙が減少するため、再酸化による金属化率の低減が抑制される。そのため、冷却方法についての格別の工夫が行われない場合であっても冷却速度の差によって金属化率がばらつくという事態を避けることができる。
【0018】
このように、本発明の高密度還元鉄の製造方法では、高密度還元鉄の冷却速度をコントロールする必要がなくなるため、そのための設備も不要になる。
【0019】
本発明に係る還元鉄ブリケットの製造方法は、上記押圧部として平行配置された一対のローラーを有し、各ローラーの周方向表面に設けられた凹部によって上記塊状還元鉄を加圧することができる。
【0020】
また、各ローラーの周方向表面に連続して波状に形成された複数の上記凹部によって上記塊状還元鉄を加圧することができる。
【0021】
上記高密度還元鉄の製造方法において、上記凹部同士の対向距離は、1つの塊状還元鉄を高密度化するために規定され、後述する二つの寸法設計のいずれかに基づいて定めることができる。
【0022】
(1)上記塊状還元鉄の3次元方向寸法のうち代表寸法をd、該凹部の最深部間対向距離をDとしたとき、D≦(0.5〜1.0)dの関係を満たすように調整する。
【0023】
(2)還元前の炭材を含有する生ペレットまたは生ブリケットの3次元方向寸法のうち代表寸法をd′、該凹部の最深部間対向距離をDとしたとき、D≦(0.3〜0.9)d′の関係を満たすように調整する。
【0024】
なお、代表寸法dは、塊状還元鉄の体積の1/3乗で定義された値であり、代表寸法d′は、酸化鉄ペレット(生ペレット)または酸化鉄ブリケット(生ペレット)の体積の1/3乗で定義された値である。
【0025】
また、その調整については目的の密度になるように、ロールに生じるトルクの値を制御することで行うこともできる。
【0026】
上記(1)、(2)の違いは、上記(1)では加圧対象となる塊状還元鉄(直接還元製鉄法で製造されたもの)の寸法を基準として定めるものであるのに対し、上記(2)ではその塊状還元鉄を製造する前の原料素材となる生ペレットや生ブリケットの寸法を基準として定める点である。これには、生ペレットや生ブリケットの製造条件や製造装置仕様から推定される値に基づいて最適なロール間寸法Dを決定できるという利点がある。
【0027】
なお、還元時の収縮により、還元鉄(塊状還元鉄)の寸法は、還元前の生ペレット、生ブリケットの0.7〜0.9倍となる。
【0028】
上記高密度還元鉄の製造方法において、上記塊状還元鉄を加圧する場合、見掛け密度が2.25±0.75g/cmである上記塊状還元鉄を、見掛け密度4.0±1.0g/cmの範囲に上昇させることが好ましい。
【0029】
また、上記塊状還元鉄を上記加圧装置に導入する案内装置を介して上記塊状還元鉄を上記加圧装置に導入することが好ましい。
【0030】
また、上記塊状還元鉄を加圧する場合、上記塊状還元鉄等の崩壊によって発生した粉(崩壊粉)を、上記塊状還元鉄と併せて上記加圧装置に導入することができる。これによって、崩壊粉の有効利用を図ることが可能になる。
【0031】
また、上記高密度還元鉄の製造方法において、上記塊状還元鉄の加圧後の冷却は、水冷、ガス冷却のいずれかで行ってもよい。例えば、上記水冷は、上記加圧された後の上記高密度還元鉄を搬送しつつ、これに散水して行う方法、或いは、上記加圧された後の上記高密度還元鉄を水中に浸漬して行う方法等が示される。
【0032】
b.本発明に係る高密度還元鉄の製造装置は、
直接還元製鉄法で得られる一つの塊状還元鉄から一つの高密度還元鉄を製造する装置であって、
上記塊状還元鉄を高温下で加圧して密度を高める加圧装置と、
上記塊状還元鉄を上記加圧装置に導入する案内装置と、
上記加圧装置に設けられ、対向する両側から上記塊状還元鉄を挟持し略包摂でき上記塊状還元鉄を高温下で加圧する押圧部と、
上記押圧部によって圧縮され密度の高められた高密度還元鉄を冷却する冷却装置とを備えてなることを要旨とする。
【0033】
本発明に係る高密度還元鉄の製造装置において、上記押圧部として平行配置された一対のローラーを有する場合、各ローラーの周方向表面に、上記塊状還元鉄を加圧するための凹部を形成することができる。
【0034】
また、上記案内装置として、上記塊状還元鉄を貯溜するホッパと、このホッパの下部に設けられ、一つの上記塊状還元鉄を通過させ得るように通路が絞られた出口部を有することができる。
【0035】
また、上記案内装置として、上記塊状還元鉄を貯溜するホッパと、このホッパから供給され複数層に重なった上記塊状還元鉄を一層に展開させて上記一対のローラーに案内する振動フィーダとを有することができる。
【0036】
また、上記案内装置として、上記塊状還元鉄を貯溜するホッパと、このホッパから供給される上記塊状還元鉄を整列させた状態で上記一対のローラーに案内する案内板付きトラフを有することができる。
【0037】
また、上記出口部または上記案内板付きトラフに振動装置を付加することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、格別に構成された、高動力を必要とし且つ加圧部の摩耗が高い大規模なブリケットマシン設備を必要とせずに塊状還元鉄を均一に高密度化することができ、製品全体としての目的金属化率を維持することができるとともに強度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る高密度還元鉄の製造装置の基本構成を示す正面図である。
【図2】図1に示すローラーの要部拡大図である。
【図3】還元鉄ペレットを加圧装置に供給するための案内装置の構成を示す正面図である。
【図4】本発明に係る第二の案内装置の構成を示す正面図である。
【図5】本発明に係る第三の案内装置の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る第四の案内装置の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る第五の案内装置の構成を示す正面図である。
【図8】図7の案内装置の変形例を示す正面図である。
【図9】従来の還元鉄ブリケット製造装置を示す正面図である。
【図10】図9の製造装置により製造された還元鉄ブリケットの斜視図である。
【図11】本発明の高密度還元鉄の形状を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0041】
1.高密度還元鉄の製造装置の基本構成
図1は、本発明にかかる高密度還元鉄の製造装置1の基本構成を示す。
【0042】
図1において、図示しない直接還元炉で製造された還元鉄ペレット(塊状還元鉄)Rは、高温(600〜800℃)のまま、加圧装置としてのローラープレス装置2に供給されるようになっている。
【0043】
上記ローラープレス装置2は、対向配置された一対のローラー2a、2bおよびその駆動装置(図示しない)からなる。一方のローラー2aは水平方向に配置された回転軸2cまわりに矢印A方向に回転し、他方のローラー2bは水平方向に配置された回転軸2dまわりに、矢印B方向に回転するように構成されている。
【0044】
各ローラー2aおよび2bの長さ(紙面厚さ方向)は本実施形態では例えば250mmであり、対向する各ローラー2aおよび2bの間の隙間は、1〜30mmの範囲で調整することができるようになっている。すなわち、ローラー2aの回転軸2cは固定であり、ローラー2bの回転軸2dは水平方向に移動可能なアームに枢支されている。
【0045】
上記アームは、油圧シリンダから伸縮するロッドで、上記水平方向の移動が可能になっている。
【0046】
なお、還元鉄ペレットRの粒径は塊状のもので5〜40mmの範囲に分布しているため、ローラー2aおよび2bの間の隙間は還元鉄ペレットRの平均粒径に応じて調整するものとする。
【0047】
2.ローラーの構成
図2は上記ローラー2aおよび2bの要部拡大図を示している。
【0048】
ローラー2aの外周面にはローラー周方向(C方向)に所定の間隔を空けて凹部2eが複数形成されている。これにより、ローラー2a全体が連続する波形面(断面)を有するようになっている。上記ローラー2aと対向するローラー2bにも上記凹部2eと対向する部位に凹部2fが複数形成されている。これにより、ローラー2b全体が連続する波形面(断面)を有するようになっている。
【0049】
このようにローラー2a,2bの周方向に、ローラー2aおよび2bの回転時に対向し得る配置で凹部2e,2fを複数形成することにより、ローラー2a,2bの間の隙間に還元鉄ペレットRを巻き込むことができるようになっている。
【0050】
なお、ローラー2aの周方向表面積を100%とした場合、上記凹部2eの開口面積が占める割合は70〜80%である。
【0051】
一列に並んだ複数の上記凹部2eおよび上記凹部2fは、還元鉄ペレットRを一つずつ加圧して密度を高めるための押圧部Eとして機能するようになっている。この押圧部Eは、ローラーの回転軸方向に複数列設けることができる。
【0052】
また、ローラー2a,2bの周方向表面を粗面にすれば、還元鉄ペレットRの滑りを抑制して還元鉄ペレットRを押圧部Dに効率良く巻き込むことができるようになる。また、ローラー2a,2bの外周をその回転軸方向から見て波形にすることによっても巻き込みの効率を高めることができる。
【0053】
また、上記押圧部Eにおける各凹部2e,2fは、還元鉄ペレットRを挟持して包摂できるように構成されている。凹部2e,2f同士の対向距離は、還元鉄ペレットRの3次元方向寸法のうち代表寸法をd、凹部2e,2fの最深部間対向距離をDとしたとき、D≦(0.5〜1.0)dの関係を満たすように調整されている。
【0054】
また、上記凹部2e,2f同士の対向距離は、還元前の炭材を含有する生ペレット(図示しない)のサイズで規定することも可能である。この場合、上記凹部2e,2f同士の対向距離は、上記生ペレットの3次元方向寸法のうち代表寸法をd′、該凹部の最深部間対向距離をDとしたとき、D≦(0.3〜0.9)d′の関係を満たすように調整されている。
【0055】
本実施形態において、上記ローラープレス装置2を通過する前の還元鉄ペレットRの見掛け密度は、2.25±0.75g/cmである。上記ローラープレス装置2を通過することによって加圧され、密度が高められた高密度還元鉄F(図11参照)の見掛け密度は4.0±1.0g/cmとなる。
【0056】
上記ローラー2a,2bのローラー圧およびトルクは、還元鉄ペレットRを加圧して高密度還元鉄に成形するのに必要な値に設定される。ここでは、図10に示したような還元鉄ブリケットB′を成形する際にブリケットマシン設備に設定されるような大きなローラー圧およびトルクまでは必要とされない。
【0057】
なお、従来のブリケットマシン設備を用いても、ローラー圧を下げて類似の塊状化が可能である。しかしながら、ブリケットマシン設備は、数個の還元鉄ペレットを高圧で一つに塊状化することを目的としているため、本発明のように低圧下の領域では、各ペレットに均等な圧力を及ぼす作用に不向きである。
【0058】
3.冷却装置の構成
図1に戻って冷却装置の構成を説明する。
【0059】
ローラープレス装置2から個別に排出(落下)される高密度還元鉄Fは、コンベヤ3上に受け止められ、水平方向(矢印G方向)に搬送される。
【0060】
上記コンベヤ3の搬送先には冷却水Waを噴射するスプレーノズル(冷却装置)4が配置されており、コンベヤ3によって搬送される高密度還元鉄Fを、冷却水Waにより冷却することができるようになっている。因みに本実施形態では300℃/分以下の冷却速度により冷却を行っている。
【0061】
急冷された高密度還元鉄Fは例えばヤードの堆積エリアに蓄えられる。
【0062】
還元鉄ペレットのサイズが不揃いの状態で冷却し過ぎると、製造された還元鉄の冷却が不均一に進行してしまう。従って、冷却をコントロールする必要が生じ、そのための冷却設備を設けなければならない。
【0063】
これに対し、本発明に係る高密度還元鉄の製造方法によれば、直接還元製鉄法によって得られた塊状還元鉄ペレットを加圧して密度を高めることによって、再酸化の原因となる空隙が縮小する。この工程に次いで冷却を行うため、ほぼ均一な冷却速度で冷却することが可能になる。従って、上記したような過冷却の問題も発生せず冷却をコントロールするための設備も不要になる。
【0064】
また、上記実施形態では高密度還元鉄Fに冷却水を噴射して急冷する冷却方法について説明したが、高密度還元鉄Fの冷却は、水中に浸漬することによって行うこともできる。さらにまた、上記水冷に限らず、ガス冷却であってもよい。
【0065】
上記ガス冷却とは、例えば圧縮空気を高密度還元鉄Fに吹き付けて急冷する方法や、空気と不活性ガスとの混合気体、または不活性ガスのみを高密度還元鉄Fに吹き付けて冷却する方法等が含まれる。
【0066】
4.案内装置の構成
図3は、ローラープレス装置2のローラー2a,2bに形成されている凹部2e,2fに対し、還元鉄ペレットRを一つずつ供給するための案内装置5の構成を示したものである。
【0067】
同図に示す案内装置5はホッパ5aを有し、このホッパ5aの出口部5bは、還元鉄ペレットRが一つずつ通過することができる程度に通路が絞られている。上記ホッパ5aに装入された還元鉄ペレットRは、重力により下方の出口部5bに移動し、押圧部Eに対し直接供給されるようになっている。
【0068】
なお、ホッパ5aの出口部寸法は約1.1dに設定されている。ただし、dは還元鉄ペレットRの代表寸法である。
【0069】
上記案内装置5は、上記ローラープレス装置2の押圧部E各列について、還元鉄ペレットRを一層に展開して供給することができるようになっている。
【0070】
図4は、第二の案内装置10の構成を示した正面図である。
【0071】
同図に示す案内装置10は、還元鉄ペレットRを貯溜するホッパ11と、そのホッパ11の下方に、先下がりに傾斜した状態で配置される振動フィーダ12とから構成されている。
【0072】
振動フィーダ12は、ホッパ11から供給される還元鉄ペレットRを受けるとともにその還元鉄ペレットRをローラープレス装置2の押圧部Eに搬送するためのトラフ12aと、そのトラフ12aを振動させる振動装置12bとから構成されている。ホッパ11から供給されて複数層重なった状態の還元鉄Rは、一層に展開させられ、一つずつ押圧部Eに供給されるようになっている。
【0073】
なお、上記トラフ12aの先端部12cは、還元鉄ペレットRを一つずつ通過させるように出口幅が先細に絞られている。
【0074】
また、上記振動装置12bは、電磁バイブレータ等を用いて電気的に振動させる振動装置であってもよく、駆動モータを用いて機械的に振動させる振動装置であってもよい。
【0075】
図5は、第三の案内装置20の構成を示した斜視図である。
【0076】
同図に示す案内装置20は、還元鉄ペレットRを貯溜するホッパ21と、そのホッパ21の下方に、先下がりに傾斜した状態で配置されるトラフ(案内板付きトラフ)22とから構成されている。この場合のトラフ22の傾斜角は、還元鉄ペレットRがその自重でころがることができる角度に設定される。
【0077】
上記ホッパ21の出口は、ローラー2a,2bの回転軸方向と平行に配置されたスリットから構成されている。
【0078】
上記トラフ22の横幅は、ホッパ21のスリット幅Wと略同じに構成されており、トラフ22は複数の案内板22aによって平行に仕切られている。それにより、トラフ22に複数の通路が形成されている。
【0079】
ホッパ21から供給される還元鉄ペレットRは案内板22aによって複数の還元鉄ペレットR列に分けられ、複数の通路から一つずつ押圧部Eに供給されるようになっている。
【0080】
なお、この場合、ローラー2a,2bの周方向表面には、複数の列から供給される還元鉄ペレットRを加圧することができるように、凹部2e,2fが、ローラー2a,2bの回転軸方向に複数列設けられている。
【0081】
図6は、第四の案内装置30の構成を示した斜視図である。
【0082】
同図に示す案内装置30は、図5に示したホッパ21と、そのホッパ21の下方に、先下がりに傾斜した状態で配置される振動フィーダ31とから構成されている。
【0083】
上記振動フィーダ31は、平面から見て先細に形成されており、側面から見て先下がりに傾斜した状態で配置されるトラフ31aと、そのトラフ31aを振動させる振動装置31bとから構成されており、ホッパ31から供給される還元鉄ペレットRを複数の列に分け、且つ一つずつ押圧部Eに供給するようになっている。
【0084】
なお、この場合も、ローラー2a,2bの周方向表面には、複数の列から供給される還元鉄ペレットRを加圧することができるように、凹部2e,2fが、ローラー2a,2bの回転軸方向に複数列設けられているものとする。ローラー2aの周方向表面積を100%とした場合、上記凹部2eの開口面積が占める割合は70〜80%である。
【0085】
図7は、第五の案内装置40の構成を示した斜視図である。
【0086】
上記案内装置40は、下方に向けて先細に形成された筒状シュート40aと、この筒状シュート40a内に設けられ、筒状シュート40aの筒軸まわりに回転するスクリューフィーダー40bとから主として構成されている。上記案内装置40は、上記筒状シュート40a内に装入された還元鉄ペレットRをスクリューフィーダー40bの回転によって下方に移動させ、開口面積が絞られたシュート出口40cから押圧部Eに供給することができるように構成されている。
【0087】
図8に示す案内装置は図3に示したホッパ5aの出口部5bに振動装置41が付加されており、出口部5b内を通過する還元鉄ペレットRに対して振動を与えるようになっている。この構成によれば、出口部5bにおける還元鉄ペレットRの詰まりを防止してより安定した供給を行うことができる。
【0088】
5.崩壊粉の再利用
上記還元鉄ペレットRを、上記ローラープレス装置2によって高温下で個々に加圧して密度を高めるに際し、還元鉄ペレットRの崩壊によって発生した粉(崩壊粉)が発生する。このような崩壊粉は、図9に示されるようなクエンチタンク等により捕集され、上記還元鉄ペレットRに併せ供給して加圧することができる。
【0089】
還元鉄ペレットRの崩壊によって発生した粉の主要成分は鉄分であり、これらの資源をリサイクル活用すれば、投棄量を削減し、資源を有効活用して省エネルギーを図ることができる。
【0090】
なお、上記実施形態では還元鉄ペレットRを例に取り説明したが、必ずしもペレット状である必要はなく生ブリケットであってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 高密度還元鉄の製造装置
2 ローラープレス装置(加圧装置)
2a,2b ローラー
2c,2d 回転軸
2e,2f 凹部
3 コンベヤ
4 スプレーノズル(冷却装置)
5 案内装置
5a ホッパ
5b 出口部
10 第二の案内装置
20 第三の案内装置
30 第四の案内装置
40 第五の案内装置
E 押圧部
F 高密度還元鉄
R 還元鉄ペレット(塊状還元鉄)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接還元製鉄法で得られる一つの塊状還元鉄から一つの高密度還元鉄を得る方法であって、
上記塊状還元鉄を加圧装置に導入し、
その塊状還元鉄を挟持し得る上記加圧装置の押圧部により、上記塊状還元鉄を高温下で加圧し、
加圧された上記塊状還元鉄を冷却することを特徴とする高密度還元鉄の製造方法。
【請求項2】
上記押圧部として平行配置された一対のローラーを有し、各ローラーの周方向表面に設けられた凹部によって上記塊状還元鉄を加圧する請求項1記載の高密度還元鉄の製造方法。
【請求項3】
各ローラーの周方向表面に波状に形成された複数の上記凹部によって上記塊状還元鉄を加圧する請求項2記載の高密度還元鉄の製造方法。
【請求項4】
上記凹部同士の対向距離は、上記塊状還元鉄の3次元方向寸法のうち代表寸法をd、該凹部の最深部間対向距離をDとしたとき、D≦(0.5〜1.0)dの関係を満たすように調整される請求項2または3に記載の高密度還元鉄の製造方法。
【請求項5】
上記凹部同士の対向距離は、還元前の炭材を含有する酸化鉄ペレットの3次元方向寸法のうち代表寸法をd′、該凹部の最深部間対向距離をDとしたとき、D≦(0.3〜0.9)d′の関係を満たすように調整される請求項2または3に記載の高密度還元鉄の製造方法。
【請求項6】
上記塊状還元鉄を加圧する際に、見掛け密度が2.25±0.75g/cmである上記塊状還元鉄を、見掛け密度4.0±1.0g/cmの範囲に上昇させる請求項1〜5のいずれか1項に記載の高密度還元鉄の製造方法。
【請求項7】
上記塊状還元鉄を上記加圧装置に導入する案内装置を介して上記塊状還元鉄を上記加圧装置に導入する請求項1〜6のいずれか1項に記載の高密度還元鉄の製造方法。
【請求項8】
上記塊状還元鉄を加圧する際に上記塊状還元鉄等の崩壊によって発生した粉を、上記塊状還元鉄と併せて上記加圧装置に導入する請求項1〜7のいずれか1項に記載の高密度還元鉄の製造方法。
【請求項9】
上記塊状還元鉄の加圧後の冷却を、水冷、ガス冷却のいずれかで行う請求項1〜8のいずれか1項に記載の高密度還元鉄の製造方法。
【請求項10】
上記水冷は、加圧された後の上記高密度還元鉄を搬送しつつ、これに散水して行う請求項9記載の高密度還元鉄の製造方法。
【請求項11】
上記水冷は、加圧された後の上記高密度還元鉄を水中に浸漬して行う請求項9記載の高密度還元鉄の製造方法。
【請求項12】
直接還元製鉄法で得られる一つの塊状還元鉄から一つの高密度還元鉄を製造する装置であって、
上記塊状還元鉄を高温下で加圧して密度を高める加圧装置と、
上記塊状還元鉄を上記加圧装置に導入する案内装置と、
上記加圧装置に設けられ、対向する両側から上記塊状還元鉄を挟持し略包摂でき上記塊状還元鉄を高温下で加圧する押圧部と、
上記押圧部によって圧縮され密度の高められた高密度還元鉄を冷却する冷却装置とを備えてなることを特徴とする高密度還元鉄の製造装置。
【請求項13】
上記押圧部として平行配置された一対のローラーを有し、各ローラーの周方向表面に、上記塊状還元鉄を加圧するための凹部が形成されている請求項12記載の高密度還元鉄の製造装置。
【請求項14】
上記案内装置として、上記塊状還元鉄を貯溜するホッパと、このホッパの下部に設けられ、一つの上記塊状還元鉄を通過させ得るように通路が絞られた出口部とを有する請求項12に記載の高密度還元鉄の製造装置。
【請求項15】
上記案内装置として、上記塊状還元鉄を貯溜するホッパと、このホッパから供給された複数層からなる上記塊状還元鉄を一層に展開させて上記一対のローラーに案内する振動フィーダとを有する請求項13に記載の高密度還元鉄の製造装置。
【請求項16】
上記案内装置として、上記塊状還元鉄を貯溜するホッパと、このホッパから供給される上記塊状還元鉄を整列させた状態で上記一対のローラーに案内する案内板付きトラフを有する請求項13に記載の高密度還元鉄の製造装置。
【請求項17】
上記出口部に振動装置が設けられている請求項14に記載の高密度還元鉄の製造装置。
【請求項18】
上記案内板付きトラフに振動装置が設けられている請求項16に記載の高密度還元鉄の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−285691(P2010−285691A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111862(P2010−111862)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】