説明

高強度で軽量のタフティング基布及びその製造方法

溶融紡糸され高エネルギーウォータジェットで固化された合成フィラメントからなる少なくとも1つの層を有する、特にカーペットバッキング若しくはカーペットセカンダリバッキングとして使用するための、スパンボンド不織布からなる高強度で軽量のタフティング基布であって、熱活性化可能なバインダを少量含み、このバインダが、溶融紡糸フィラメントからなる前記層に少なくとも1つの薄膜の形で施与されていることを特徴とするものを記載している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融紡糸され高エネルギーウォータジェットで固化された合成フィラメントからなる少なくとも1つの層を有するスパンボンド不織布からなる高強度で軽量のタフティング基布(タフティング用のサポート裏地、Tuftingtraeger)に関する。
【従来技術】
【0002】
独国特許第1760811号明細書より、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布が公知である。このタフティング基布を形成するフィラメントは、10dtexを超える粗大な個々の繊度を有し、特定の方法で部分的に延伸されており、それにより、同じ糸の中で、高い結晶化度のより長い延伸セグメントに、僅かに低い融点を有し、より少ない度合いで延伸され且つより低い結晶性を有するセグメントが続くようになっている。これは、その複合材においてバインダ成分として用いられ、このバインダ成分は、後続の直接蒸気を用いた熱による固化の際に活性化される。上記特許文献によれば、十分に延伸した結晶性セグメントの長さは約11Zoll(インチ)であり、それに続くより少ない度合いで延伸され且つより低い結晶性を有するセグメントの長さは約1Zoll(インチ)である。よって、結晶性がより低いセグメントの重量割合は、約8%を超える。しかし、このようなタフティング基布が有する特別な不織布構造は、この考察ではあまり重要ではない。
【0003】
独国特許第2240437号明細書及び独国特許第2448299号明細書より、ポリエステルからなるスパンボンド不織布が公知である。これらの特許でも、タフティング基布の製造に太い糸、つまり繊度が10dtexを超えるポリエチレンテレフタレートからなる地糸(Matrixfaeden)が使用されている。これらの刊行物によれば、ポリエチレンテレフタレートからなる地糸と同時に、低融点のコポリエステルからなる繊度がより低い結合糸(Bindefaeden)も紡糸される。よって、この結合糸の重量割合は約20%である。
【0004】
上記特許の教示によれば、タフティング基布は、地糸と結合部とからなる系において、糸間の結合部が、それにより結合されている糸より常に弱くなっているように構成されているのが望ましい。この構成により、タフティング基布が標準的な状態で十分に高い強度を有することが達成できる。多数の針を基布に貫通させ、さらにパイル糸(Polgarn)を縫い込む、後のタフティング工程の際には、主として糸間の結合部が破壊され、糸の破断は生じない。糸は、貫通する針をよけて、その植え込まれたパイル糸の周囲に「カラー(Kragen)」を形成することができる。このように、タフティングされた粗製カーペットの強度及び引裂き強度(Weiterreissfestigkeit)は高い水準に保たれ、タフティング工程による損傷はほとんど生じない。
【0005】
公知の熱結合された系の場合には、通常、結合部が極めて高い強度を有すること、及び結合強度への目標を定めた介入が著しく困難であることが確認されている。よって、上述した結合部の強度と糸の強度との比を調整するには、より太い糸を使用することによってしか糸の強度を高めることができない。したがって、上記明細書では、地糸について10dtexを超える繊度が提案されている。しかし、このように太い糸の本質的な欠点は、タフティング基布にとって十分な強度及び被覆を達成するために、少なくとも100〜120g/mのオーダーの高い単位面積当り重量が必要となることである。
【0006】
この欠点を克服するために、上位概念である先行技術をなす独国特許第19821848号明細書では、合成フィラメントからなるスパンボンド不織布からなるタフティング基布をバインダなしで製造することを提案しているが、その場合、スパンボンド不織布が高エネルギーのウォータジェットの作用によってのみ固化されなければならない。ウォータジェットによりフィラメントが交絡されることによって、多数の極めて弱い結合部が生じる。境界面間の摩擦のみに基づいたそのような結合部はいずれも、それ自体、極めて弱く、いずれにせよ、このように交絡されたフィラメントより弱い。したがって、この結合部は、フィラメントが傷つけられることも破断されることもなく、解かれる(ゆるむ)ことが可能であり、それにより、タフティング工程におけるフィラメントの可動性が容易に保証される。タフティングの際、フィラメント構造の重大な損傷は生じない。しかし、その一方で、極めて多数の弱い結合部が合計されて、このように固化された不織布が全体として十分に高い絶対的な強度を達成するまでになる。この系の本質的な利点は、不織布材料の構造に細いフィラメントを使用することができることである。上記特許明細書には、0.7〜6dtexの繊度が示されている。これにより、タフティング基布として使用できるように、十分な強度を有し且つ十分に密集し、単位面積当りの重量が小さなスパンボンド不織布を製造することが可能である。
【0007】
上記のタフティング基布の欠点は、このタフティング基布がタフティング工程によって強度を失わないが、粗製カーペットの初期モジュラスが低く、よってこのタフティング基布がさらなる加工段階で十分に寸法安定でないことである。
【0008】
仕上げ段階で発生するほとんど回避不可能な応力によって、特に、粗製カーペットの縦方向の延び(Laengsverzug)とこれに伴う幅収縮(Breitensprung)が生じる可能性がある。これを防ぐためには、相応の予防措置、例えば応力の制御を行わなくてはならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上位概念の種類のタフティング基布を、タフティングの際の公知の良好な挙動が損なわれることなしに、タフティング後でもさらなる加工のために十分な強度を有し、及びそれにより寸法安定性を有するように発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の全ての特徴を有するタフティング基布によって解決される。本発明によるタフティング基布の製造方法は請求項11に記載されており、本発明の有利な使用は請求項15に記載されている。本発明の有利な形態は従属請求項に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によれば、溶融紡糸され高エネルギーウォータジェットで固化された合成フィラメントからなる少なくとも1つの層を有するスパンボンド不織布からなる高強度で軽量のタフティング基布において、このタフティング基布が、溶融紡糸フィラメントからなる前記層に少なくとも1つの薄膜の形で施与された熱活性化可能なバインダを少量含有している。
【0012】
本発明を制限する意図なしに、タフティング工程によって基布における弱い結合部に過度に著しいゆるみ(解れ)が生じ得ることが考えられる。これにより、粗製カーペットの初期モジュラスは、明らかに、粗製カーペットがさらなる加工の際に十分に寸法安定でない程度に低くなる。よって、粗製カーペットの上記の延びに至る。
【0013】
今回、意外にも、バインダからなる少なくとも1つの薄膜を溶融紡糸された合成フィラメントからなる層に施与し、それに続くウォータジェットによる固化、乾燥及びバインダの活性化が組み合わせることによって、ウォータジェットによる結合に追加的に、タフティングの際にスパンボンド不織布フィラメントの可動性を明らかに損なわない十分に弱い結合(若しくは結合点)がスパンボンド不織布フィラメント間に得られることが明らかになった。タフティング後にも残る多数の微細な上記の追加的な結合点によって相互に結合されたスパンボンド不織布フィラメントは、カーペットが高いモジュラス値を有すること及びさらなる加工のために十分な寸法安定性を有することに貢献する。本発明によるタフティング基布では、さらなる加工の際に寸法安定化のための追加的な措置、例えば上で言及した応力制御は不要である。この効果はとりわけ、バインダの一部が高エネルギーのウォータジェットによって不織布のより深い層の中にまでも運ばれ、そこで結合点を形成することにもよると考えられる。
【0014】
しかし、本発明によるタフティング基布は、スパンボンド不織布及びバインダからなる単層あるいは多層で構成されていてもよい。その他の追加的な層も、それがタフティング工程及びさらなる加工を妨げない限り設けることができる。
【0015】
本発明の有利な実施形態では、本発明によるタフティング基布は3層構造を有し、中央の層にバインダを含み、その外側の2層に溶融紡糸された合成フィラメントを含む。ウォータジェットによる固化は両面で行なわれることが多いので、この構成は、バインダが下面からも上面からも不織布層中に運び込まれるという利点を有する。
【0016】
バインダとしては、特に低融点の熱可塑性ポリマーが適しており、その融点がスパンボンド不織布フィラメントの融点よりも十分に低い熱可塑性ポリマーが有利である。好ましくは、その融点は、スパンボンド不織布フィラメントの融点を少なくとも10℃、特に好ましくは少なくとも20℃下回っていることが望ましく、それにより、このスパンボンド不織布フィラメントは熱による活性化の際に損傷されることがない。
【0017】
また、好ましくは、低融点の熱可塑性ポリマーは幅広い軟化領域を有する。これには、バインダとして使用される熱可塑性ポリマーを、その有効な融点より低い温度で活性化できるという利点がある。技術的な観点から見て、バインダは必ずしも完全に溶融している必要はなく、十分に軟化され、それにより結合すべきフィラメントに付着すれば十分である。これにより、活性化段階で、スパンボンド不織布フィラメントとバインダとの間の結合度合いを調整することができる。
【0018】
低融点の熱可塑性ポリマーは、好ましくは、本質的に、ポリエチレン、ポリエチレンが主成分であるコポリマー、ポリプロピレン、ポリプロピレンが主成分であるコポリマー、コポリエステル、ポリアミド及び/又はコポリアミドからなる。
【0019】
タフティング基布の全重量に対する低融点のポリマーの重量パーセントは、7%の値を超えないことが望ましい。このホットメルト接着剤の割合が高すぎると、スパンボンド不織布が過度に強く熱結合される危険がある。ホットメルト接着剤により得られた結合はいずれの場合にも、結合されたフィラメントによるものより強くなる。よって、タフティング工程の際、フィラメントはかなり傷つけられ、引き裂かれ、よってタフティング後の強度、特に引裂き強度も極めて著しく損なわれることになる。
【0020】
好ましくは、前記重量割合は1.5〜5重量%である。1.5重量%未満の重量割合では、特に初期モジュラスの観点からも十分に際立った補強効果がない。さらに、少量であることによって、ウォータジェット処理によるスパンボンド不織布横断面におけるバインダの十分に良好な分布を達成することもできない。しかし、ホットメルト接着剤の割合を少なくして使用すること自体は有利であり、よって本発明はそれを含むのが望ましい。
【0021】
低融点のポリマーは、例えば繊維若しくは微細繊維(Fibrille)の形であってよい。繊維としては、特に二成分系繊維(Bikon-Faser)を使用することかでき、その場合、低融点の成分が熱活性化可能なバインダとなる。
【0022】
本発明によって、低い繊度のフィラメントをスパンボンド不織布フィラメントに使用することが可能となる。その場合、小さな単位面積当り重量で良好な強度及び十分な被覆が達成される。好ましくは、繊維の繊度は0.7〜6dtexである。繊度1〜4dtexの繊維は、平均的な単位面積当り重量で良好な表面被覆をもたらす一方、この繊維自体が、タフティング工程の際に針の貫通によって損傷せず、引き裂かれないように十分な全体強度を有するという特別な利点を有する。
【0023】
本発明によるタフティング基布は、好ましくは、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートからなるフィラメント、及び/又はポリオレフィン、特にポリプロピレン、からなるフィラメントを含む。これらの材料は、至るところで十分な量及び十分な品質で入手できる大量原料から製造されるので、特に適当である。ポリエステルもポリプロピレンも、繊維製造及び不織布製造においてその有用性(使用上の堅牢性)のためによく知られている。
【0024】
本発明によるタフティング基布を製造するための適当な方法は、
a)スパンボンド不織布法による合成フィラメントからなる少なくとも1つの層の堆積、
b)熱活性化可能なバインダからなる少なくとも1つの薄膜の施与、
c)高エネルギーウォータジェットによるバインダの分散及びスパンボンド不織布フィラメントの固化、
d)乾燥、
e)バインダを活性化させるための熱処理
の工程を含む。
【0025】
スパンボンド不織布の製造、すなわち、種々のポリマー(その中にはポリプロピレン又はポリエステルも含まれる)からの合成フィラメントの紡糸は、支持体上に合成フィラメントを堆積させランダムウェブ(Wirrvlies)を得る従来技術で行われるものと同様である。幅が5m以上の大規模な装置は、複数の企業から入手することができる。この装置は、1個以上の紡糸システム(紡糸ビーム(Spinnbalken))を有していてよく、所望の出力に調整することができる。水流交絡システムも、同様に従来技術にある。このような装置も、大きな幅のものが多くの製造業者によって提供され得る。同じことが乾燥機及び巻取機にも言える。
【0026】
熱活性化可能なバインダは、種々の方法、例えば粉体塗布によって、また分散体の形で施与することができる。しかし、好ましくは、このバインダを、繊維若しくは微細繊維の形でメルトブローン法若しくはエアレイ法を用いて施与する。これらの方法も公知であり、文献に数多く記載されている。
【0027】
メルトブローン法及びエアレイ法は、スパンボンド不織布フィラメントのための紡糸システムと任意に組み合わせることができる点が特に有利である。
【0028】
ウォータジェットによる固化は、独国特許第19821848号明細書から公知のように、好ましくは、単位面積当り重量1g/m当りの比縦強度が少なくとも4.3N/5cmで、且つ5%伸長時の応力として縦方向で測定された初期モジュラスが単位面積当り重量1g/m当り少なくとも0.45N/5cmで達成されるよう実施されることが望ましい。これにより、タフティング基布の十分な強度及びスパンボンド不織布層におけるバインダの十分に良好な分布(分散)が保証される。
【0029】
活性化とは、本発明の意味するところでは、バインダによる結合点が、例えばバインダとして使用された低融点のポリマーの溶融若しくは融け始めによって生成されることである。乾燥及び活性化のための熱処理は、スパンボンド不織布フィラメントが、例えば溶融若しくは融け始めによって損傷することが確実に回避される程度に低い温度で実施されなければならない。プロセス上の経済的な理由から、乾燥とバインダの熱による活性化とは、好ましくは1つの工程で行なわれる。乾燥及び低融点ポリマーの活性化には、様々な種類の乾燥機、例えばテンター乾燥機(Spannrahmen)、バンド乾燥機又は表面乾燥機を使用することができるが、好ましくはドラム乾燥機が適する。乾燥温度は、最終段階で上記低融点ポリマーの融点におおよそ調整され、その結果に応じて最適化されることが望ましい。その場合、バインダの溶融挙動全体が特に考慮されるべきである。顕著に広い軟化領域を持つバインダの場合には、物理的な融点を制御する必要がない。それどころか結合効果の最適化は、この軟化領域内で求めれば十分である。これにより、不都合な副次的問題、例えば機械部品へのバインダ成分の付着及び過度の固化を回避することができる。
【0030】
本発明によるタフティング基布は、カーペット用一次裏張り(バッキング)としてだけはなく、カーペット用二次裏張りとしても適している。また、その極めて良好な機械的特性によって、本発明によるタフティング基布は、特に自動車内装での使用のための、三次元に(立体的に)変形加工可能なカーペットの製造にも適している。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例につき詳説する。
【0032】
実施例1:
スパンボンド不織布を製造するための実験装置は、1200mmの幅を有していた。この装置は、装置の全幅にわたって広がる紡糸ノズルと、この紡糸ノズルに平行に配置された2つの向い合うブローイング壁(送風壁)と、それに後置の、ディフューザ(拡散器)の下方範囲内に広がり且つ不織布形成チャンバを形成する排出ギャップ(Abzugsspalt)とで構成される。紡糸されたフィラメントは、不織布形成領域内で下から吸引される受容ベルト上で、均一な平面構造体、つまりスパンボンド不織布に形成された。この不織布を、2本のロール間で圧縮し巻き取った。
【0033】
この予備固化されたスパンボンド不織布を、ウォータジェットによる固化のための実験装置で巻きを解いた。エアレイのためのシステムを用いて、スパンボンド不織布の表面に短いバインダ繊維の薄膜を施与し、続いて、この2層の平面構造体を多数の高エネルギーウォータジェットで処理し、それにより絡み合わせ(水流交絡させ)、固化した。同時に、バインダを平面構造体中に分散させた。続いて、この固化した不織布複合材をドラム乾燥機で乾燥させ、その際、乾燥機の最終ゾーンでは、温度を、バインダ繊維を活性化し、追加的な結合を生じさせる程度に調整した。
【0034】
この試験では、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布を製造した。上記幅にわたり5479個の紡糸穴を有する紡糸ノズルを使用した。原料としては、MFIが36であるExxon Mobiles社のポリプロピレンペレット(Achieve PP3155)を使用した。紡糸温度は272℃であった。排出ギャップは幅25mmを有していた。フィラメント繊度は、スパンボンド不織布における直径で測定して2.1dtexであった。生産速度は41m/分に調整した。得られたスパンボンド不織布の単位面積当り重量は78g/mであった。水による固化のための装置においてはまず、気流中で不織布を形成するための装置を用いて、芯がポリプロピレンから且つ鞘がポリエチレンからなる芯鞘構造の極めて短い二成分繊維の3g/mの層を施与した。成分の重量比は50/50%であった。その後、スパンボンド不織布をウォータジェットにより固化させた。固化は、交互に両側から作用する6個のビームを用いて実施した。それぞれの使用水圧は、次のように調整した。
【0035】
【表1】

【0036】
ウォータジェットによる固化の際、短繊維が広範囲に及んでスパンボンド不織布中に引き込まれ、その結果、短繊維は純粋な表面層(短繊維からのみからなる表面)を形成していなかった。
【0037】
続いて、ウォータジェットで処理されたスパンボンド不織布をドラム乾燥機で乾燥させた。その場合、最終ゾーンで空気温度を123℃に調整し、その結果、ポリエチレンが容易に溶融し、熱的結合部が生成した。このようにして固化したスパンボンド不織布は、単位面積当り重量80g/mで、以下に示す機械的特性値を有していた。
【0038】
【表2】

【0039】
縦方向の比強度はm1g/m当り4.95N/5cmであり、5%伸長時の比セカントモジュラスは1g/m当り0.56N/5cmであった。
【0040】
固化されたスパンボンド不織布は、通常の機械ピッチ(Maschinenteilungen)で良好にタフティングできた。1/64インチの機械ピッチでは、タフティングされた状態で次の機械的特性値が得られた。
【0041】
【表3】

【0042】
実施例2:
実施例1に記載されたものと同じ実験装置で、ポリエステル粒状体を使用した。このポリエステル粒状体は固有粘度IV=0.67を有していた。残水量が0.01%未満となるようにこのポリエステル粒状体を入念に乾燥させ、温度285℃で紡糸した。その際、実施例1と同様に、幅1200mmにわたり5479個の穴を有する紡糸ノズルを使用した。ポリマー吐出量は320kg/時間であった。フィラメントは、スパンボンド不織布中で光学的に測定された繊度2dtexを有し、また収縮は極めて小さかった。装置速度は55m/分に調整し、それにより、固化されたスパンボンド不織布は単位面積当り重量80g/mを有していた。
【0043】
このスパンボンド不織布を、ウォータジェットによる固化のために同様の装置に装入した。予備固化されたスパンボンド不織布の表面には、3g/mの同じ二成分系の短繊維(PP/PE 50/50)層を載せた。その後、この複合材を、以下のように調整した6個のビームを用いたウォータジェットによる固化工程を通過させた。
【0044】
【表3】

【0045】
ウォータジェットによる固化の際、短いバインダ繊維が広範囲にわたりスパンボンド不織布中に取り込まれ、その結果、短繊維は純粋な表面層を形成していなかった。
【0046】
続いて、ウォータジェットで処理されたスパンボンド不織布をドラム乾燥機で乾燥させた。その場合、最終ゾーンで空気温温度を123℃に調整し、それにより、ポリエチレンが容易に溶融し、熱的結合部が生成した。このようにして固化したスパンボンド不織布は、単位面積当り重量82g/mで以下に示す機械的特性値を有していた。
【0047】
【表4】

【0048】
縦方向の比強度は1g/m当り4.82N/5cmであり、5%伸長時の比セカントモジュラスは1g/m当り0.59N/5cmであった。
【0049】
固化されたスパンボンド不織布は、種々のピッチで良好にタフティングできた。1/64インチの機械調整では、タフティングされた状態で次の機械的値が得られた。
【0050】
【表6】

【0051】
さらなる操作では、このタフティングされたカーペットの挙動は安定と判断された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に一次カーペット裏張り若しくは二次カーペット裏張りとして使用するための、スパンボンド不織布からなる高強度で軽量のタフティング基布であって、溶融紡糸され高エネルギーウォータジェットで固化された合成フィラメントからなる少なくとも1つの層を有し、溶融紡糸フィラメントからなる前記層に少なくとも1つの薄膜の形で施与された熱活性化可能なバインダを少量含む、高強度で軽量のタフティング基布。
【請求項2】
3層構造として形成され、その中央の層が前記バインダからなり、2つの外側の層が前記合成フィラメントからなる、請求項1に記載の高強度で軽量のタフティング基布。
【請求項3】
前記バインダが低融点の熱可塑性ポリマーである、請求項1又は2に記載の高強度で軽量のタフティング基布。
【請求項4】
前記低融点の熱可塑性ポリマーが、前記合成フィラメントの融点を少なくとも10℃、特に好ましくは少なくとも20℃下回る融点を有する、請求項3に記載の高強度で軽量のタフティング基布。
【請求項5】
前記合成フィラメントが、繊度0.7〜6.0dtex、好ましくは1.0〜4.0dtexを有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の高強度で軽量のタフティング基布。
【請求項6】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートからなる合成フィラメント、及び/又はポリオレフィン、特にポリプロピレンからなる合成フィラメントを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の高強度で軽量のタフティング基布。
【請求項7】
前記低融点のポリマーが、本質的に、ポリエチレン、ポリエチレンが主成分であるコポリマー、ポリプロピレン、ポリプロピレンが主成分であるコポリマー、コポリエステル、ポリアミド及び/又はコポリアミドからなる、請求項1から6のいずれか1項に記載の高強度軽量タフティング基布。
【請求項8】
前記低融点のポリマーが、タフティング基布の全重量に対して7%未満、好ましくは1.5〜5%の重量パーセントを有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の高強度で軽量のタフティング基布。
【請求項9】
前記低融点のポリマーが、特に紡糸若しくはメルトブローンされた繊維又は微細繊維の形で存在する、請求項1から8のいずれか1項に記載の高強度で軽量のタフティング基布。
【請求項10】
前記繊維が二成分系繊維であり、その低融点の成分が前記熱活性化可能なバインダである、請求項9に記載の高強度軽量タフティング基布。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の高強度で軽量のタフティング基布の製造方法であって、
a)スパンボンド不織布法による合成フィラメントからなる少なくとも1つの層の堆積、
b)熱活性化可能なバインダからなる少なくとも1つの薄膜の施与、
c)高エネルギーウォータジェットによるスパンボンド不織布フィラメントの固化及びバインダの分散、
d)乾燥、
e)バインダを活性化させるための熱処理
の工程を含む、方法。
【請求項12】
前記乾燥及び熱による活性化を1つの工程で行なう、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ウォータジェットによる固化を、単位面積当り重量g/m当りの比縦強度が少なくとも4.3N/5cmで、5%延伸時の応力として縦方向で測定された単位面積当り重量g/m当りの初期比モジュラスが少なくとも0.45g/5cmで達成されるように調整する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記繊維若しくは微細繊維をエアレイ法若しくはメルトブローン法を用いて施与する、請求項11から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
特に自動車内装での使用のための、三次元に変形加工可能なカーペットの製造への、請求項1から10のいずれか1項に記載の高強度で軽量のタフティング基布の使用。

【公表番号】特表2010−516918(P2010−516918A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547575(P2009−547575)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000457
【国際公開番号】WO2008/092586
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(509217806)
【Fターム(参考)】