説明

高所作業車の安全装置

【課題】 起伏駆動されるブーム3の先端部にブーム3の起伏方向に揺動可能に取り付けられた作業台4を、レベリング装置5によりブーム3の起伏動に関わらず水平に維持するようにした高所作業車において、レベリング装置5を、作業台4を揺動させる揺動アクチュエータ6、作業台4の傾斜検出手段7(懸垂振り子7aと傾斜応答電気信号発生器7b、および、傾斜検出手段7からの信号を演算処理して揺動アクチュエータ6の制御信号を出力する演算回路8とで構成したもの)においては、傾斜応答電気信号発生器7bおよび演算回路8等が故障した場合、ブーム3の起伏動により作業台4が大きく傾く危険性がある。
【解決手段】 作業台4に取り付けた懸垂振り子11aと、作業台4が過傾斜した時に電気信号(オン/オフ電気信号)を出力するよう懸垂振り子11aに関連配置した一対のリミットスイッチ11b,11cとからなる過傾斜検出手段11を設け、この過傾斜検出手段11からの過傾斜検出信号で、ブーム3の起伏動を禁止する駆動禁止手段10を設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、高所作業車の安全装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図2に示す如く、高所作業車は、車両1上に旋回駆動自在に搭載した旋回台2に、起伏シリンダ3aにより起伏駆動されるブーム3を取り付け、このブーム3の先端部に当該ブーム3の起伏方向に揺動可能に作業台4を取り付けている。そして作業台4は、レベリング装置5によりブーム3の起伏動に関わらず水平に維持されるようになっている。
【0003】レベリング装置5は、図2〜図3に示すように、ブーム3の先端部に対して作業台4を揺動(ブーム3の起伏方向への揺動)させる揺動アクチュエータ6、作業台4に取り付けた傾斜検出手段7、および、傾斜検出手段7からの傾斜応答電気信号を受け取って演算処理し、受け取りに係る傾斜応答電気信号が作業台4の目標水平レベル範囲に該当する値となるよう前記揺動アクチュエータ6を駆動させるための制御信号を出力する演算回路8とから構成されている。
【0004】レベリング装置5の前記傾斜検出手段7は、作業台4に取り付けられた懸垂振り子4aとこの懸垂振り子に対する作業台4の傾斜に応答する傾斜応答電気信号を発生する傾斜応答電気信号発生器(ポテンショメータ等)とで構成されている。
【0005】レベリング装置5の前記演算回路8が出力する制御信号は、揺動アクチュエータ6の駆動制御部6aに入力されて、搖動アクチュエータ6をして作業台4を揺動駆動させる。演算回路8が出力する制御信号は、傾斜検出手段7からの傾斜応答電気信号が、作業台4の目標水平レベル範囲(作業台4の床面の水平レベルに対する傾き角が±Δθの範囲)に該当する値となるよう揺動アクチュエータ6を駆動するものである。換言すれば、演算回路8が出力する制御信号は、作業台4の目標水平レベル範囲からの逸脱を揺動アクチュエータ6の駆動を介して解消させようとするものである。
【0006】このようなレベリング装置5によれば、ブーム3の起伏動にかかわらず作業台4の対地姿勢を、目標水平レベル範囲に維持させることができるのである。
【0007】ところで、上記したレベリング装置5により作業台4を目標水平レベルに維持するようにした高所作業車においては、レベリング装置5が故障した場合に、ブーム3の起伏動につれて作業台4が目標水平レベル範囲を越えて傾斜すると、搭乗員に恐怖感を与えたり、さらに大きく傾斜すれば、作業の安全が確保できないという危険性がある。このため、この種の高所作業車には、作業台4が目標水平レベル範囲を越えて傾斜しようとした場合には、起伏シリンダ3aの駆動を禁止する安全装置が装備されている。
【0008】従来の安全装置は、図3に示す如く、演算回路8中に、傾斜検出手段7からの傾斜応答電気信号を受け取り、この傾斜応答電気信号が、過傾斜状態(作業台4が目標水平レベル範囲「±Δθ」から所定角度以上傾斜した状態「±(Δθ+α)」)対応値になると過傾斜信号を出力する過傾斜判別手段9を設け、この過傾斜判別手段9からの過傾斜信号でもって、起伏シリンダの駆動を停止する駆動禁止手段10を作動させるようにしている。なお、駆動禁止手段10は、起伏シリンダの駆動油圧をアンロードするソレノイド操作されるアンロード弁、あるいは、起伏シリンダ3aへの作動油を給排制御する電磁操作式の方向切換弁に対する電気操作信号の信号伝達系に介装した電気操作信号遮断手段等で構成されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このような安全装置は、作業台4が過傾斜すると自動的にブーム3の起伏動を禁止するので、高所作業車のレベリング装置5故障時の安全を確保することができる。しかしながら、上記従来の安全装置は、レベリング装置5の傾斜検出手段7における傾斜応答電気信号発生装置(ポテンショメータ)7bの故障、演算回路8中に設けた過傾斜判別手段9が故障した場合には、全く機能しない。しかも、傾斜応答電気信号発生装置(ポテンショメータ)7b、および、過傾斜判別手段9は、電気信号レベル(主として電圧信号レベル)を処理するものであるから検出精度が高い反面、故障につながり易い面があり、また、安全装置の作動が必要なレベリング装置5の故障に連動して故障し易いという問題がある。このため、上記従来の安全装置は、信頼性に問題点を含むものであった。従ってこの発明の目的は、信頼性のある安全装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため本発明に係る高所作業車の安全装置は、以下の如く構成する。起伏シリンダ3aにより起伏駆動されるブーム3の先端部にブーム3の起伏方向に揺動可能に作業台4を取り付け、この作業台4をレベリング装置5によりブーム3の起伏動に関わらず水平に維持するようにした高所作業車であって、前記レベリング装置5を、ブーム3の先端部に対して作業台4を揺動させる揺動アクチュエータ6、作業台4に取り付けられた懸垂振り子7aとこの懸垂振り子7aに対する作業台4の傾斜に応答する電気信号を発生する傾斜応答電気信号発生器7bとで構成された傾斜検出手段7、および、傾斜検出手段7からの傾斜応答電気信号を受け取って演算処理し、受け取りに係る傾斜応答電気信号が作業台4の目標水平レベル範囲に該当する値となるよう前記揺動アクチュエータ6の駆動制御部6aへ制御信号を出力する演算回路8とでもって構成したものにおいて、作業台4に取り付けた懸垂振り子と、作業台4の対地姿勢が前記目標水平レベル範囲から正逆方向へ所定角度以上逸脱した過傾斜となった時にこれを検出して過傾斜電気信号を出力するようこの懸垂振り子に関連付けて配置した一対のリミットスイッチとからなる過傾斜検出手段を設け、この過傾斜検出手段からの過傾斜電気信号でもって、起伏シリンダ3aの駆動を禁止する駆動禁止手段10を作動させるようにしたことを特徴とする高所作業車の安全装置。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の高所作業車の安全装置は、作業台4の過傾斜の検出を、レベリング装置5の傾斜検出手段7における傾斜応答電気信号発生器(ポテンショメータ)7bの出力、および、演算回路8中に装備した過傾斜判別手段9を利用することなく、作業台4に取り付けた懸垂振り子と、作業台4の対地姿勢が前記目標水平レベル範囲から正逆方向へ所定角度以上逸脱した過傾斜となった時にこれを検出して過傾斜電気信号を出力するようこの懸垂振り子に関連付けて配置した一対のリミットスイッチとからなる過傾斜検出手段で検出するものであるから、レベリング装置5の故障に連動して故障することは極めてすくなく、また、過傾斜の検出にあたり電気信号レベルを処理するものでなく一対のリミットスイッチのオン/オフ信号の処理ですむのでその点でも故障が少ないのである。
【0012】
【実施例】以下本発明の高所作業車の安全装置の実施例を図1に基づいて説明する。この発明の安全装置は、上記従来の技術で説明したレベリング装置5を持つ高所作業車に付加して使用されるものであるから、以下この付加部分について説明する。
【0013】図1において、11は過傾斜検出手段であり、この過傾斜検出手段11は、作業台4に取り付けた懸垂振り子11aと、作業台4の対地姿勢が前記目標水平レベル範囲(±Δθ)から正逆方向へ所定角度以上逸脱した過傾斜となった時にこれを検出して過傾斜電気信号を出力するようこの懸垂振り子に関連付けて配置した一対のリミットスイッチ11b,11cとで構成している。リミットスイッチ11b,11cは、オン/オフ電気信号を出力するものである。図1の例では、作業台4が時計回り方向に過傾斜「+(Δθ+α)」した時にリミットスイッチ11bが接となってオン信号を出力し、作業台4が反時計回り方向に過傾斜「−(Δθ+α)」した時にリミットスイッチ11cが接となってオン信号を出力するようになっている。そして、リミットスイッチ11b,11cからの過大傾斜信号は、過傾斜信号伝達経路12に集約されて、旋回台2に配置された駆動禁止手段10(起伏シリンダ3aの駆動を禁止する駆動禁止手段)に入力されるようになっている。
【0014】いま、レベリング装置5が故障してブーム3の起伏動につれて作業台4が過傾斜状態になると、過傾斜検出手段11のリミットスイッチ11bまたは11cが接となって過傾斜信号が出力される。この過傾斜信号は、過傾斜信号伝達経路12を介して駆動禁止手段10に伝達されてそれを作動させる。従って、ブーム3の起伏動が自動停止するのである。この場合、過傾斜信号を出力する過傾斜検出手段11の一対のリミットスイッチ11b,11cは、レベリング装置5の傾斜検出手段における傾斜応答電気信号発生器7bおよび演算回路とは独立して設けられているので、レベリング装置5のこれら箇所の故障と連動して故障することはなく、過傾斜信号は、オン/オフ電気信号の処理で発生させることができるので、この点でも故障が少ないのである。このため、信頼性のある安全装置を得ることができるのである。
【0015】なお、この発明に係る安全装置は、従来の安全装置、即ち、傾斜検出手段7からの傾斜応答電気信号が、過傾斜状態(作業台4が目標水平レベル範囲(±Δθ)から所定角度以上逸脱した状態)対応値になると過傾斜信号を出力する過傾斜判別手段9を設けたものに替えて装備しても良いし、追加して装備しても良い。後者の場合、従来の安全装置が過傾斜信号を出力する作業台4の傾斜角に対して、本発明に係る安全装置が過傾斜信号を出力する作業台の傾斜角を大きく設定しておくことで、作業台4の過傾斜による自動停止を、従来の安全装置による自動停止と、それが故障したときの本発明の安全装置による自動停止の二段階で行うことができるものである。
【0016】さらに、上記の実施例においては、懸垂振り子11aと一対のリミットスイッチ11b,11cとで構成される過傾斜検出手段11を、レベリング装置5の傾斜検出手段7と全く別物として構成しているが、過傾斜検出手段11の一対のリミットスイッチ11b,11cをレベリング検出手段7における懸垂振り子7aに関連配置するようにし、過傾斜検出手段11における懸垂振り子11aとして、レベリング装置5における懸垂振り子7aを共用するようにしても良いこと勿論である。
【0017】
【発明の効果】以上のように本発明の高所作業車の安全装置は、作業台4の過傾斜の検出を、レベリング装置5の傾斜検出手段7における傾斜応答電気信号発生器(ポテンショメータ)7bの出力、および、演算回路8中に装備した過傾斜判別手段9を利用することなく、作業台4に取り付けた懸垂振り子と、作業台4の対地姿勢が前記目標水平レベル範囲から正逆方向へ所定角度以上逸脱した過傾斜となった時にこれを検出して過傾斜電気信号を出力するようこの懸垂振り子に関連付けて配置した一対のリミットスイッチとからなる過傾斜検出手段で検出するものであるから、レベリング装置5の故障に連動して故障することは極めて少なく、また、過傾斜の検出にあたり電気信号レベルを処理するものでなく一対のリミットスイッチのオン/オフ信号の処理ですむのでその点でも故障が少ないのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る高所作業車の安全装置の説明図である。
【図2】 高所作業車の説明図である。
【図3】 従来の高所作業車の安全装置の説明図である。
【符号の説明】
1;車両、2;旋回台、3;ブーム、4;作業台、5;レベリング装置、6;揺動アクチュエータ、6a;駆動制御部、7;傾斜検出手段、7a;懸垂振り子、7b;傾斜応答電気信号発生器、8;演算回路、9;過傾斜判別手段、10;駆動禁止手段、11;過傾斜検出手段、11a;懸垂振り子、11b,11c;リミットスイッチ、12;過傾斜信号伝達経路、

【特許請求の範囲】
【請求項1】 起伏シリンダ3aにより起伏駆動されるブーム3の先端部にブーム3の起伏方向に揺動可能に作業台4を取り付け、この作業台4をレベリング装置5によりブーム3の起伏動に関わらず水平に維持するようにした高所作業車であって、前記レベリング装置5を、ブーム3の先端部に対して作業台4を揺動させる揺動アクチュエータ6、作業台4に取り付けられた懸垂振り子7aとこの懸垂振り子7aに対する作業台4の傾斜に応答する電気信号を発生する傾斜応答電気信号発生器7bとで構成された傾斜検出手段7、および、傾斜検出手段7からの傾斜応答電気信号を受け取って演算処理し、受け取りに係る傾斜応答電気信号が作業台4の目標水平レベル範囲に該当する値となるよう前記揺動アクチュエータ6の駆動制御部6aへ制御信号を出力する演算回路8とでもって構成したものにおいて、作業台4に取り付けた懸垂振り子11aと、作業台4の対地姿勢が前記目標水平レベル範囲から正逆方向へ所定角度以上逸脱した過傾斜となった時にこれを検出して過傾斜電気信号を出力するようこの懸垂振り子11aに関連付けて配置した一対のリミットスイッチ11b,11cとからなる過傾斜検出手段11を設け、この過傾斜検出手段11からの過傾斜電気信号でもって、起伏シリンダ3aの駆動を禁止する駆動禁止手段10を作動させるようにしたことを特徴とする高所作業車の安全装置。
【請求項2】 過傾斜検出手段11における懸垂振り子11aは、レベリング装置5の傾斜検出手段7における懸垂振り子7bとは別個のものであることを特徴とする請求項1に係る高所作業車の安全装置。
【請求項3】 過傾斜検出手段11における懸垂振り子11aとして、レベリング装置5における懸垂振り子7aを共用してあることを特徴とする請求項1に係る高所作業車の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−16785(P2000−16785A)
【公開日】平成12年1月18日(2000.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−204405
【出願日】平成10年7月3日(1998.7.3)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】