説明

高流動性ポリアミド

本発明は、ポリアミド及びその製造方法及びポリアミドを含む組成物に関する。より詳細には、本発明は、アミン官能基又は酸官能基との反応によってアミド官能基を形成することができる多官能性化合物及び一官能性化合物の存在下で二酸モノマー及びジアミンモノマーを重合させることによって得られるポリアミドに関する。このポリアミドは特に、例えば成形することが予定される組成物を調製するのに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド及びその製造方法及びポリアミドを含む組成物に関する。より詳細には、本発明は、アミン官能基又は酸官能基との反応によってアミド官能基を形成することができる多官能性化合物及び一官能性化合物の存在下で二酸モノマー及びジアミンモノマーを重合させることによって得られるポリアミドに関する。このポリアミドは、例えば成形することが予定される組成物を調製するのに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドをベースとする熱可塑性組成物は、プラスチック部品を製造するために成形、特に射出成形によって転換することができる出発材料である。
【0003】
これらのポリアミドをベースとする組成物には、特にこれらの転換プロセスにおいて用いた時に、達成することが望まれる主要な特性が少なくとも3つある。
【0004】
これらの特性の内の第1のものは、用いられるこれらの熱可塑性組成物が溶融状態において、射出成形のような対象とする造形プロセスに適合する流動性又は流動学的挙動によって特徴付けられなければならないという事実に基づく。そのため、これらの熱可塑性組成物は、溶融させた時に、例えば射出成形のようなある種の造形装置において容易に且つ素早く搬送し且つ取り扱うのに充分な流動性を有していなければならない。
【0005】
また、これらの組成物の機械的特性を高めることも求められている。これらの機械的特性は、他にもあるが特に衝撃強さ、曲げ弾性率若しくは引張係数、曲げ若しくは引張破壊応力である。この目的で、ガラスファイバーのような補強用充填剤が一般的に用いられる。
【0006】
最後に、これらの熱可塑性組成物から成形される部品の場合、きれいで均一な表面外観が望まれる。この制約は、特にガラスファイバー含有率が高い熱可塑性組成物を用いる場合に、これらのガラスファイバーは成形部品の表面外観に悪影響を及ぼすので、解消するのが難しい問題となる。許容できる表面外観を得るために、高流動性を示す熱可塑性組成物を用いることが知られている。しかしながら、この流動性の増大は、得られる物品の機械的特性の悪化をもたらす。
【0007】
その結果として、ポリアミドをベースとする同一の熱可塑性組成物についてこれらの様々な特性を同時に得ることが困難となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願人は、多官能性化合物及び一官能性化合物によって変性されたポリアミドであって、慣用の線状ポリアミドと比較して高められた流動性及び同等の又は優れた機械的特性を示し、且つ特に充填剤を高レベルで含む場合に優れた表面外観を有する物品の製造を可能にするものを開発した。
【0009】
かかるポリアミドは、ジカルボン酸モノマー及びジアミンモノマー、前記ジカルボン酸モノマー及びジアミンモノマーの官能基と共にアミド結合を形成することができる酸又はアミン官能基を少なくとも3個有する多官能性化合物、並びに前記ジカルボン酸モノマー及びジアミンモノマーの官能基と共にアミド官能基を形成することができる(前記の多官能性化合物の官能基と同じ性状の)酸又はアミン官能基を1個有する一官能性化合物を重合させることによって得られるものである。この重合方法は慣用のものであり、ポリアミド6,6のような二酸モノマー及びジアミンモノマーをベースとするポリアミド重合用に通常用いられるものに相当する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の主題事項は、少なくとも次の(i)、(ii)及び(iii)の存在下における重合によって得られるポリアミド:
(i)ジカルボン酸モノマー及びジアミンモノマー又はそれらの塩;
(ii)前記ポリアミドの成分モノマー(前記ポリアミドの構成成分となるモノマー)のモル数に対して0.05〜0.5モル%の、少なくとも3個の官能基X1を含む多官能性化合物;
(iii)前記ポリアミドの成分モノマーのモル数に対して0.2〜2モル%の、1個の官能基X2を含む一官能性化合物:
であって、
前記官能基X1及びX2が前記ジカルボン酸モノマー及びジアミンモノマー(i)と反応してアミド結合を形成することができるカルボン酸官能基又はアミン官能基であり;
前記多官能性化合物(ii)がカルボン酸タイプの官能基X1を含む場合には前記一官能性化合物(iii)がカルボン酸タイプの官能基X2を含み;そして
前記多官能性化合物(ii)がアミンタイプの官能基X1を含む場合には前記一官能性化合物(iii)がアミンタイプの官能基X2を含む:
前記ポリアミドにある。
【0011】
用語「ポリアミドの成分モノマーのモル数」とは、ジカルボン酸のモル数とジアミンのモル数(これらは随意に塩の形で組み合わせたものであることができる)との和(に随意にアミノ酸又はラクタムのモル数を加算したもの)を意味する。
【0012】
従って、前記多官能性化合物(ii)及び一官能性化合物(iii)が有する官能基X1及びX2は、カルボン酸タイプ又はアミンタイプの同じ性状のものである。前記多官能性化合物(ii)の官能基X1と前記一官能性化合物(iii)の官能基X2とが同じものであるのが好ましい。
【0013】
本発明に従うポリアミドは、ジカルボン酸モノマー及びジアミンモノマー又はそれらの塩、単一のタイプの多官能性化合物(ii)並びに単一のタイプの一官能性化合物(iii)を重合させることによって得られるものであるのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
前記ジカルボン酸モノマー及びジアミンモノマーは特に、
・PA6,6、PA6,10、PA6,12、PA12,12若しくはPA4,6タイプの脂肪族ポリアミド、
・ポリ(m−キシリレンジアミンアジペート)(MXD6)、ポリテレフタル酸アミド、例えばポリアミド6,T及び6,6,6T、ポリイソフタル酸アミド、例えばポリアミド6,I及び6,6,6Iのような半芳香族ポリアミド、
・ポリアラミド、又は
・それらのコポリマー
の製造業者にとって慣用的に用いられるものである。
【0015】
これらのジカルボン酸及び/又はジアミンモノマーは、脂肪族(特に直鎖、分岐鎖若しくは環状鎖を含むもの)又は芳香族のものであることができる。
【0016】
ジカルボン酸モノマーとしては、特に4〜12個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、デカン二酸又はドデカン二酸を挙げることができる。
【0017】
ジアミンモノマーとしては、特に4〜12個の炭素原子を有する脂肪族(随意に環状脂肪族)又は芳香族ジアミン、例えばヘキサメチレンジアミン、ブタンジアミン、m−キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、3,3’,5−トリメチルヘキサメチレンジアミン及びメチルペンタメチレンジアミンを挙げることができる。
【0018】
本発明に従えば、特にポリアミド6,6の成分モノマーであるアジピン酸、ヘキサメチレンジアミン又はそれらの塩、例えばヘキサメチレンジアンモニウムアジペート(ナイロン塩又はN塩とも称される)を用いるのが好ましい。
【0019】
本発明に従う方法においては、等モル量のジカルボン酸及びジアミンを用いることもでき、当業者によく知られているように酸又はアミン末端基の不均衡を得るためにこれらの化合物の内の一方を過剰に用いることもできる。
【0020】
本発明に従う変性ポリアミドは、1種又はそれより多くのジカルボン酸及び1種又はそれより多くのジアミン(異なるタイプのもの)を含むことができる。従って、例えば等モル量のジカルボン酸及びジアミン並びに所定割合の別のタイプの別のジカルボン酸を重合に加えることができる。
【0021】
また、前記ジカルボン酸モノマー及びジアミンモノマーに、アミノ酸又はそれらのラクタム、例えばカプロラクタムを加えることもできる。特に、ポリアミドの成分モノマーのモル数に対して1〜15モル%、好ましくは2〜10モル%のアミノ酸又はラクタムを反応媒体に加えることができる。
【0022】
本発明に従う多官能性化合物(ii)は、官能基X1を少なくとも3個、好ましくは3〜10個、より一層好ましくは3又は4個含む。X1は、ポリアミドの成分モノマーと反応してアミド結合を形成することができるカルボン酸官能基又はアミン官能基である。
【0023】
官能基X1は、カルボン酸官能基又は第1若しくは第2アミン官能基、又はそれらの塩であるのが好ましい。
【0024】
好適であり得る多官能性化合物の例には、特に米国特許第5346984号明細書、米国特許第5959069号明細書、国際公開WO96/35739号パンフレット及びヨーロッパ特許公開第672703号公報に挙げられたものがある。
【0025】
次の一般式(1)の多官能性化合物(ii)が特に好ましい。

{ここで、
Rは少なくとも2個の炭素原子を有する脂肪族(直鎖状若しくは分岐鎖状)、環状脂肪族又は芳香族炭化水素基(これは1個又はそれより多くのヘテロ原子を含むことができる)であり、
Aは共有結合又は1個若しくはそれより多くのヘテロ原子を含むことができ且つ1〜20個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基であり;
X1はカルボン酸官能基又は第1若しくは第2アミン官能基、又はそれらの塩であり;そして
nは3〜10の範囲の整数、好ましくは3又は4である。}
【0026】
この多官能性化合物(ii)は、少なくとも4個、特に少なくとも5個、特に10〜100個の炭素原子を有し且つ1個又はそれより多くのヘテロ原子を含むことができる脂肪族(直鎖状若しくは分岐鎖状)、環状脂肪族又は芳香族炭化水素化合物であるのが好ましい。
【0027】
前記ヘテロ原子は、O、S、N又はPであることができる。
【0028】
Aはメチレン又はポリメチレン基、例えばエチレン、プロピレン若しくはブチレン基、又はポリオキシアルキレン基、例えばポリオキシエチレン基であることができる。
【0029】
Rは2〜10個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素鎖であることができ、これには、シクロヘキシル、シクロヘキサノイル、ベンジル、ナフチル、アントラセニル、ビフェニル、トリフェニル、ピリジン、ビピリジン、ピロール、インドール、フラン、チオフェン、プリン、キノリン、フェナントレン、ポルフィリン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、1,3,5−トリアジン、1,4−ジアジン、2,3,5,6−テトラエチルピペラジン、ピペラジン又はテトラチアフルバレンが含まれ得る。
【0030】
カルボン酸官能基X1を有する多官能性化合物(ii)の例としては、特に、2,2,6,6−テトラ(β−カルボキシエチル)シクロヘキサノン、ジアミノプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸、3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸、フタロシアニン又はナフタロシアニンから誘導される酸、1,3,5,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,4,6−ピリジントリカルボン酸、3,5,3’,5’−ビピリジルテトラカルボン酸、3,5,3’,5’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,3,6,8−アクリジンテトラカルボン酸、トリメシン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸及び2,4,6−トリ(アミノカプロン酸)−1,3,5−トリアジン(TACT)を挙げることができる。
【0031】
アミン官能基X1を有する多官能性化合物(ii)の例としては、ニトリロトリアルキルアミン、特にニトリロトリエチルアミン、ジアルキレントリアミン、特にジエチレントリアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、トリアルキレンテトラミン及びテトラアルキレンペンタミン(このアルキレンはエチレンであるのが好ましい)、4−アミノエチル−1,8−オクタンジアミン、メラミン、並びにトリメチロールプロパン又はグリセロールとプロピレンオキシドとを反応させ且つ末端ヒドロキシル基をアミノ化することによって得られる次の一般式:
【化2】

(ここで、R1はプロパン−1,1,1−トリイル又はプロパン−1,2,3−トリイル基を表わし、
Aはポリオキシエチレン基を表わす)
の化合物{Huntsman社からのJeffamine T(登録商標)}を挙げることができる。
【0032】
例えば、Huntsman社からのJeffamine T403(登録商標)(ポリオキシプロピレントリアミン)を本発明に従う多官能性化合物として用いることができる。
【0033】
前記一官能性化合物(iii)は、少なくとも2個の炭素原子を有し且つヘテロ原子(O、S、N又はP)を含むことができる脂肪族、環状脂肪族又は芳香族炭化水素化合物であるのが好ましい。
【0034】
前記一官能性化合物(iii)は、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン及びn−ドデシルアミン、酢酸、ラウリン酸、ベンジルアミン、安息香酸、プロピオン酸並びに4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンより成る群から選択されるのが好ましい。
【0035】
本発明の方法の重合は特に、前記多官能性化合物及び一官能性化合物の不在下で重合を実施する場合のジカルボン酸とジアミンとの重合についての慣用の操作条件に従って、実施される。
【0036】
かかる重合方法は、簡単に言えば:
・モノマー群、多官能性化合物(ii)及び一官能性化合物(iii)の混合物を加圧下で撹拌しながら加熱し、
・この混合物をこの圧力及び温度下に所定期間保ち、次いで圧力を解放し、特に窒素下又は真空下において、前記の混合物の融点より高い温度に所定期間保って生成する水を除去することによって重合を続ける
ことを含むことができる。
【0037】
前記多官能性化合物(ii)及び一官能性化合物(iii)は、重合開始時に添加するのが好ましい。この場合、ジカルボン酸モノマー及びジアミンモノマーと多官能性化合物(ii)及び一官能性化合物(iii)との混合物が重合せしめられる。
【0038】
重合から出て来た時に、ポリマーを(有利には水で)冷まし、押出し、次いで細断して粒体(グラニュール)にすることができる。
【0039】
本発明に従う重合方法は、連続式でもバッチ式でも問題なく実施することができる。
【0040】
本発明の重合方法においては、多官能性化合物(ii)をポリアミドの成分モノマーの総モル数に対して0.05〜0.5モル%、好ましくは0.2〜0.5モル%、より一層好ましくは0.25〜0.4モル%、特に0.25、0.5、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35及び0.4モル%の割合で用いる。
【0041】
本発明の重合方法においては、一官能性化合物(iii)をポリアミドの成分モノマーの総モル数に対して0.2〜2モル%、好ましくは0.5〜2モル%、より一層好ましくは0.5〜1モル%、特に0.4、0.5、0.6、0.7、0.8及び0.9モル%の割合で用いる。
【0042】
多官能性化合物(ii)及び一官能性化合物(iii)を次の関係式:
【数1】

(ここで、nCpoは多官能性化合物(ii)のモル数であり、
nCmoは一官能性化合物(iii)のモル数であり、そして
FX1は多官能性化合物(ii)の官能基X1の数である)
に従う割合で用いるのが好ましい。
【0043】
本発明に従えば、前記の変性されたポリアミドは、ISO規格307に従って(25℃の温度において90%ギ酸中の溶液状のポリマー0.5%で)80〜120の範囲、特に85〜110の範囲の溶液状での粘度指数を示すのが好ましい。
【0044】
本発明の別の主題事項は、少なくとも上で定義したポリアミドを含む組成物にある。
【0045】
本発明のポリアミドは、この組成物におけるマトリックスとして、特に成形物品を製造するために、用いることができる。
【0046】
この組成物の機械的特性を改善するために、少なくとも1種の補強用及び/又は増量用充填剤、好ましくはガラスファイバーのような繊維質充填剤、クレー、カオリンのような無機充填剤、又は補強用若しくは熱硬化性ナノ粒子、及びタルクのような粉体の形の充填剤を添加するのが有利であり得る。補強用及び/又は増量用充填剤の添加割合は、複合材料の分野における標準に従う。これは例えば1〜80%、好ましくは10〜70%、特に30〜60%の範囲の充填剤割合であることができる。
【0047】
前記組成物は、本発明の変性ポリアミドに加えて、1種以上の他のポリマー、好ましくはポリアミド又はコポリアミドを含むことができる。
【0048】
本発明に従う組成物は、成形することが予定されるポリアミド組成物の製造において慣用的に用いられている添加剤を追加的に含むことができる。例えば、滑剤、難燃剤、可塑剤、成核剤、触媒、衝撃強さ改良剤、例えば随意にグラフトされたエラストマー、光及び/若しくは熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、艶消剤、マット化剤、成形助剤又は他の慣用の添加剤を挙げることができる。
【0049】
これらの充填剤及び添加剤は、例えば溶融ブレンド又は重合の際に、各充填剤及び添加剤に適した標準的な手段によって、前記変性ポリアミドに添加することができる。
【0050】
本発明に従うポリアミドは、添加剤を高割合で含み、別の熱可塑性組成物とブレンドすることが予定されるマスターバッチタイプの組成物において、マトリックスとして用いることもできる。
【0051】
本発明に従うポリアミドはまた、熱可塑性ポリマー(特に(コ)ポリアミド)をマトリックスとして含む組成物中に、特にある種の特性(特に流動学的特性)を付与するために、添加剤として又はブレンドとして用いることもできる。本発明に従うポリアミドは、この場合、熱可塑性ポリマーと溶融ブレンドされるのが一般的である。特に、(コ)ポリアミドと本発明に従うポリアミドとの合計割合に対して10〜90重量%の範囲、好ましくは30〜80重量%の範囲の割合で(コ)ポリアミド(例えば線状(コ)ポリアミド)を用いることができる。
【0052】
本発明に従う組成物は、エンジニアリングプラスチックの分野、例えば射出成形、射出吹込み成形、押出又は押出吹込み成形によって得られる物品の製造において、出発原料として用いることができる。
【0053】
標準的な実施形態に従えば、前記変性ポリアミドは、棒材の形で、例えば二軸スクリュー押出装置を用いて押出され、次いで細断されて粒体にされる。次いで、上で製造された粒体を溶融させて、溶融状態で組成物を射出成形装置に供給することによって、成形部品が製造される。
【0054】
本明細書においては、本発明の原理の理解を容易にするために特定の用語を用いているが、しかし、これらの特定用語を用いることによって本発明の範囲が限定されるものではないことを理解されたい。用語「及び/又は」等は、「及び」の意味、「又は」の意味、並びにこの用語で結び付けられた要素の他のすべての可能な組合せの意味を含む。
【0055】
本発明のその他の詳細及び利点は、単に例示として与えられた以下の実施例からより一層明らかになるであろう。
【実施例】
【0056】
実験の部
【0057】
例1:ポリアミドの製造
【0058】
重合を、撹拌手段を備えた加熱オートクレーブ中で実施する。
【0059】
蒸留水5リットルを含有させたオートクレーブに90℃の温度において、N塩(等モル量のアジピン酸及びヘキサメチレンジアミン)11.111g、2,2,6,6−テトラ(β−カルボキシエチル)シクロヘキサノン81g(0.25モル%)、安息香酸80g(0.78モル%)及び消泡剤(Silcolapse)40gを添加する。
【0060】
この混合物を撹拌下に置き、7.5気圧の圧力下で280℃の温度に加熱する。この温度及び圧力に2時間保つ。
【0061】
次いで圧力を下げ、次いでオートクレーブを280℃の温度を保ちながら、窒素による掃除を1.5時間行う。次いで系を0.5気圧の真空下に1時間置く。
【0062】
次いで溶融ポリマーを棒材の形に押出し、次いで素早く水で冷却し、細断して粒体にする。
【0063】
この方法により、しかし多官能性化合物及び一官能性化合物の割合を変えて、様々なポリマーを合成する。
【0064】
例C1は、多官能性化合物及び一官能性化合物の不在下で製造された線状ポリアミド6,6に相当する。
【0065】
例2:ポリアミドの特性
【0066】
これらのポリマーの特徴、流動学的特性及び機械的特性を、下記の表1にまとめる。いくつかの特性を測定するために、射出成形によって製造された試験片を加工した。
【0067】
【表1】

【0068】
(1)粘度指数。ISO規格307に従って90%ギ酸中に溶解させたポリマーの0.5%溶液から測定したもの。
【0069】
(2)メルトフローインデックス(MFI)は、ASTM法D1238に従い、325gの荷重下で275℃において、g/10分として測定。
【0070】
酸及びアミン末端基の含有率は電位差測定によって定量測定し、アイゾッド衝撃強さはISO規格179/1eU及びISO規格179/1eAに従って測定し、引張強さ、伸び及び引張係数はISO規格527に従って23℃の温度において測定した。
【0071】
例3:充填剤含有組成物
【0072】
上で製造したポリアミドをポリアミドマトリックスとして含む組成物に、ガラスファイバー50重量%を、ガス抜き孔を備えたWerner-Pfleiderer ZSK 40タイプの二軸スクリュー押出機(L/D=36)を用いて溶融ブレンドすることによって、装填する。このガラスファイバーは、Vetrotex 99Bである。押出パラメーターは次の通りとする:押出温度=上昇勾配で235〜280℃;スクリュー回転速度=260回転/分;組成物供給量=40kg/時間;モータートルク及びモーター出力吸収はポリアミドに応じて変化する。
【0073】
この充填剤含有組成物の特性を下記の表2にまとめる。いくつかの特性を測定するために、射出成形によって製造された試験片を加工した。
【0074】
【表2】

【0075】
(3)メルトフローインデックス(MFI)は、ASTM法D1238に従い、2160gの荷重下で275℃において、g/10分として測定。
【0076】
表面外観は視覚的に評価した;スパイラル試験は、粒体を溶融させ、BM-Biraghi 85Tプレスを用いて、厚さ2mm、直径4cmを有する半円形断面の螺旋形の成形型中に、バレル温度275℃、成形型温度80℃、射出圧力80バールで射出することによって、組成物の流動性を定量化することができる(結果は正確に組成物で満たされた成形型の長さとして表わされる)。
【0077】
例4:線状ポリアミドと本発明に従うポリアミドとのブレンドを含む充填剤含有組成物
【0078】
例4のポリアミド(PA4)及び随意に様々な割合のポリアミド6,6(PA−C1)を含む組成物を、ガス抜き孔を備えたWerner-Pfleiderer ZSK 40タイプの二軸スクリュー押出機(L/D=36)を用いて、ガラスファイバー30重量%の存在下で溶融ブレンドすることによって、加工する。押出パラメーターは次の通りとする:押出温度=上昇勾配で250〜285℃;スクリュー回転速度=260回転/分;組成物供給量=40kg/時間;モータートルク及びモーター出力吸収はポリアミドに応じて変化する。
【0079】
この充填剤含有組成物の特性を下記の表3にまとめる。いくつかの特性を測定するために、射出成形によって製造された試験片を加工した。
【0080】
【表3】

【0081】
(3)メルトフローインデックス(MFI)は、ASTM法D1238に従い、2160gの荷重下で275℃において、g/10分として測定。
【0082】
シャルピー衝撃は、ISO規格179/1eAに従って測定した。
【0083】
本発明に従うポリアミドに線状ポリアミド6,6を添加することにより、メルトフローインデックスに悪影響を及ぼすことなく、得られる組成物の機械的特性を高めることができることが観察された。
【0084】
例5:変性ポリアミドの製造及び特性
【0085】
試験4のモノマーの割合に従い、そして5重量%又は10重量%のカプロラクタムを添加して(従って5重量%又は10重量%のN塩を置き換えて)、例1に記載したように本発明に従う変性ポリアミドを製造した。
【0086】
溶融ポリマーを次いで棒材の形に押出し、次いで素早く水で冷却し、細断して粒体にする。
【0087】
これらのポリマーの特徴、流動学的特性及び機械的特性を、下記の表にまとめる。
【0088】
【表4】

【0089】
(2)メルトフローインデックス(MFI)は、ASTM法D1238に従い、325gの荷重下で275℃において、g/10分として測定。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも次の(i)、(ii)及び(iii)の存在下における重合によって得られるポリアミド:
(i)ジカルボン酸モノマー及びジアミンモノマー又はそれらの塩;
(ii)前記ポリアミドの成分モノマーの総モル数に対して0.05〜0.5モル%の、少なくとも3個の官能基X1を含む多官能性化合物;
(iii)前記ポリアミドの成分モノマーの総モル数に対して0.2〜2モル%の、1個の官能基X2を含む一官能性化合物:
であって、
前記官能基X1及びX2が前記ジカルボン酸モノマー及びジアミンモノマー(i)と反応してアミド結合を形成することができるカルボン酸官能基又はアミン官能基であり;
前記多官能性化合物(ii)がカルボン酸タイプの官能基X1を含む場合には前記一官能性化合物(iii)がカルボン酸タイプの官能基X2を含み;そして
前記多官能性化合物(ii)がアミンタイプの官能基X1を含む場合には前記一官能性化合物(iii)がアミンタイプの官能基X2を含む:
前記ポリアミド。
【請求項2】
ポリアミドのジカルボン酸タイプの成分モノマーが脂肪族又は芳香族のものであって4〜12個の炭素原子を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド。
【請求項3】
ポリアミドのジアミンタイプの成分モノマーが脂肪族又は芳香族のものであって4〜12個の炭素原子を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリアミド。
【請求項4】
ポリアミドの成分モノマーがアジピン酸及びヘキサメチレンジアミン又はそれらの塩であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項5】
前記多官能性化合物(ii)が次の一般式(1):
【化1】

{ここで、
Rは少なくとも2個の炭素原子を有し且つ1個又はそれより多くのヘテロ原子を含むことができる直鎖状若しくは分岐鎖状脂肪族、環状脂肪族又は芳香族炭化水素基であり、
Aは共有結合又は1〜20個の炭素原子を有し且つ1個若しくはそれより多くのヘテロ原子を含むことができる脂肪族炭化水素基であり;
X1はカルボン酸官能基又は第1若しくは第2アミン官能基、又はそれらの塩であり;そして
nは3〜10の範囲の整数である}
で表わされることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項6】
前記多官能性化合物(ii)が少なくとも4個の炭素原子を有し且つ1個又はそれより多くのヘテロ原子を含むことができる脂肪族、環状脂肪族又は芳香族炭化水素化合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項7】
前記のカルボン酸官能基X1を有する多官能性化合物(ii)が2,2,6,6−テトラ(β−カルボキシエチル)シクロヘキサノン、ジアミノプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸、3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸、フタロシアニン又はナフタロシアニンから誘導される酸、1,3,5,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,4,6−ピリジントリカルボン酸、3,5,3’,5’−ビピリジルテトラカルボン酸、3,5,3’,5’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,3,6,8−アクリジンテトラカルボン酸、トリメシン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸及び2,4,6−トリ(アミノカプロン酸)−1,3,5−トリアジン(TACT)より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項8】
前記のアミン官能基X1を有する多官能性化合物(ii)がニトリロトリアルキルアミン、特にニトリロトリエチルアミン、ジアルキレントリアミン、特にジエチレントリアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、トリアルキレンテトラミン及びテトラアルキレンペンタミン(このアルキレンはエチレンであるのが好ましい)、4−アミノエチル−1,8−オクタンジアミン、メラミン、並びにトリメチロールプロパン又はグリセロールとプロピレンオキシドとを反応させ且つ末端ヒドロキシル基をアミノ化することによって得られる次の一般式:
【化2】

(ここで、R1はプロパン−1,1,1−トリイル又はプロパン−1,2,3−トリイル基を表わし、
Aはポリオキシエチレン基を表わす)
の化合物より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項9】
前記一官能性化合物(iii)が少なくとも2個の炭素原子を有し且つヘテロ原子を含むことができる脂肪族、環状脂肪族又は芳香族炭化水素化合物であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項10】
前記一官能性化合物(iii)がn−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン及びn−ドデシルアミン、酢酸、ラウリン酸、ベンジルアミン、安息香酸、プロピオン酸並びに4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンより成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項11】
前記多官能性化合物(ii)の官能基X1と前記一官能性化合物(iii)の官能基X2とが同じものであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項12】
多官能性化合物(ii)をポリアミドの成分モノマーの総モル数に対して0.2〜0.5モル%の割合で用いたことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項13】
一官能性化合物(iii)をポリアミドの成分モノマーの総モル数に対して0.5〜1モル%の割合で用いたことを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項14】
多官能性化合物(ii)及び一官能性化合物(iii)を次の関係式:
【数1】

(ここで、nCpoは多官能性化合物(ii)のモル数であり、
nCmoは一官能性化合物(iii)のモル数であり、そして
FX1は多官能性化合物(ii)の官能基X1の数である)
に従う割合で用いたことを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項15】
アミノ酸又はラクタムの存在下で前記重合を実施したことを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項16】
変性ポリアミドが、ISO規格307に従って90%ギ酸中にポリマー0.5%について25℃の温度において測定して80〜120の範囲の溶液状での粘度を示すことを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項17】
少なくとも請求項1〜16のいずれかに記載のポリアミドを含む組成物。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれかに記載のポリアミドをマトリックスとして含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
熱可塑性ポリマーと請求項1〜16のいずれかに記載のポリアミドとのブレンドを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
(コ)ポリアミドと請求項1〜16のいずれかに記載のポリアミドとのブレンドを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
少なくとも1種の補強用及び/又は増量用充填剤を含む、請求項17〜20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
請求項17〜21のいずれかに記載の組成物の射出成形、射出吹込み成形、押出又は押出吹込み成形によって得られた物品。

【公表番号】特表2009−531506(P2009−531506A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502116(P2009−502116)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053119
【国際公開番号】WO2007/113262
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(508076598)ロディア オペレーションズ (98)
【氏名又は名称原語表記】RHODIA OPERATIONS
【住所又は居所原語表記】40 rue de la Haie Coq F−93306 Aubervilliers FRANCE
【Fターム(参考)】