説明

高温抵抗性のひな型又は金型の製造方法

高温抵抗性のひな型又は金型の製造方法が提供される。基材のアセンブリを、硬化性ペーストの中間接着層によって形成することができ、同じ硬化性ペーストを、トップコート又はシーラーとして用いることができる。硬化性ペーストは、2成分組成物を混合するミキサーから機械施工することができる。組成物は、樹脂、充填剤、化学的チキソトロープ剤、潜在性硬化剤、及び他の硬化剤を含むことができる。本方法は、ひな型又は金型の簡単でコスト効率の高い製造法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性ペーストを用いて高温抵抗性のひな型又は金型を製造する方法、並びにかかる方法を用いて製造されたひな型又は金型に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の産業(例えば、自動車、風力エネルギー及び航空宇宙産業)においては、大型で寸法的に正確なマスターひな型及び金型を製造することがよく行われている。ひな型は、最終製品の個々の構成部品の概念設計を行うためにエンジニアによって用いられる。金型は、最終部品を製造するために用いられる。ひな型又はプロトタイプは、通常1回又は2回用いられ、主として目的物の外形を得るように設計される。金型又は成形型は、目的物の外形の陰型を提供し、目的物自体の製造を可能にするように、好ましくは数回設計される。金型に関する要求は、ひな型を製造するためのものよりも厳しいということになる。
【0003】
米国特許5,942,182においては、成形型内において、繊維プリフォームに、ノボラック樹脂、エポキシ希釈剤、及び潜在性硬化剤、通常は三塩化ホウ素アミンコンプレックスを含む一液型の室温安定性エポキシ樹脂組成物を含侵し、特定の温度以上で硬化させることを含む、例えば航空宇宙産業において用いる樹脂トランスファー成形(RTM)法が記載されている。
【0004】
特許出願WO 02/20261においては、機械的に発泡させたシンタクチック発泡体を、型形成ペーストとして、基礎構造体の外表面上に施し、ペーストを硬化させ、機械加工することを含む、継ぎ目のないひな型を製造することが記載されている。
【0005】
図1において「伝統的な方法」として示されている金型を製造する伝統的な方法は、基板又はSMP(シームレス型形成ペースト)から成形型を製造し、基構造体上にラミネートを施し、ラミネートを成形型から更に分離して、積層金型を製造することを含む。この方法は、幾つかの異なる工程を含んでおり、時間がかかり、仮マスターひな型の製造を必要とする。
【0006】
大型の金型を製造するための他の公知の方法としては、数個の基板を共に接着して粗構造体を製造し、これを次に機械加工して所望の形状を形成する「構築ブロック」法が挙げられる。しかしながら、この方法は、労力及び時間集約型で、正確な操作を必要とし、高コストを導き、更に、表面において視覚的に認知できる結合線と、審美的には望ましくなく、更には最終部品における表面欠陥の原因となる可能性のある外観を有するひな型を与える。
【0007】
米国特許5,707,477及び5,773,047においては、
−アルミニウムの上板を有する基材を製造し;
−所望の高さに到達するまで、好適な接着剤で、穿孔アルミニウムハニカムコアの連続層を接着し;
−アルミニウムハニカムコア層の積層体を、所望の最終外形の所望の許容誤差に機械加工し;
−機械加工されたアルミニウムコアの表面にシンタクチックエポキシの層を施し(これは、シンタクチックエポキシのパテを機械加工された表面に施し、次にパテを一緒に混練し、それを適度な手の圧力によってコアセル中に「着座」させることによってパテを連続層中に形成することによって行われる);
−エポキシ層を硬化させ、それを所望の最終外形に機械加工し、次に構造体をエポキシシーラーによって封止する;
工程を含む、ひな型又は金型を製造する方法が記載されている。
【0008】
この方法は、図1において「ボーイング法」として示されている。しかしながら、この方法も、労力及び時間集約型で、ハニカムコアの積層及び接着、並びに柔軟な固体のパテを手作業で施すことを包含する。この方法は、施したパテを硬化させるために全構造体を加熱することを必要とする。得られるひな型は、また、比較的高い密度のものである。幾つかの異なる材料、例えば、発泡性接着剤及び手作業で塗布するパテを用いなければならない。幾つかの材料を用いることは、最終的な成形材料に接着結合線を形成するという問題を引き起こす可能性がある。
【0009】
米国特許5,859,096は、高いTg及び低い熱膨張係数(CTE)を有する硬化組成物を与える一液型エポキシ樹脂型形成材料で作られたパテを提供する。組成物は、エポキシ樹脂、エポキシ希釈剤、三塩化ホウ素アミンコンプレックス、及びシリカ又はシリケート充填剤を含む。パテは、一緒に突き合わせて引き伸ばして、基礎構造体を被覆する層を形成し、これを次に熱硬化させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
而して、低い製造コスト、迅速な処理過程、及び改良された平滑性を有し、結合線を有しないより均一な表面によって特徴づけられるひな型又は金型、並びにひな型又は金型を製造する方法に関する必要性が未だ存在する。容易な切削性は、機械(旋盤、CNC又は他の形態)切削性と相まって望ましい特性である。更に、高い温度、好ましくは120℃を超える温度、より好ましくは150℃を超える温度に耐えることのできる金型を製造する必要性が大きくなっている。かかる温度抵抗性金型によって、次には、高温で硬化可能で且つ高温抵抗性の複合体又はラミネートの製造が可能になる。次には、これらの複合体は、航空宇宙、自動車、船舶、風力エネルギー、土木建築(例えば、レジャー施設、博覧会、映画館及び劇場用のひな型)における軽量強靱物体としての用途がより大きくなっていることが分かっている。かかる大型のひな型は、難燃特性を有するとうい利益を享受するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
高温抵抗性のひな型又は金型を製造する方法が提供される。硬化性ペーストの中間接着層を用いて基材のアセンブリを形成することができ、同じ硬化性ペーストをトップコート又はシーラーとして用いることができる。硬化性ペーストは、2成分組成物を混合するミキサーから機械施工することができる。組成物は、樹脂、充填剤、化学的チキソトロープ剤、潜在性硬化剤及び他の硬化剤を含むことができる。この方法により、ひな型又は金型の容易でコスト効率の良い製造が提供される。
【0012】
硬化性ペーストは、室温(20℃〜25℃)において、氷のような固体ではないが水のような完全な流体ではない硬化性の組成物又は混合物として定義することができる。ペーストは、例えばノズルから平坦な表面上に施し、その初期形状の少なくとも一部を保持することができる。
【0013】
本発明によれば、支持体層を積層及び結合し、支持体にペーストを施し;ペーストを硬化させ;ひな型の最終的な組立の後に、表面の硬化ペーストを所望の又は予め定められた外形に機械加工する;工程を含み、ペーストは、120℃を超える温度抵抗性を有するチキソトロピー性の硬化性ペーストである、温度抵抗性のひな型又は金型を製造する方法が提供される。
【0014】
また、
(a)接着性ペーストの層によって基材を他の基材に取り付け且つ接着することによって基材のアセンブリを構築し、好ましくは接着性ペーストの幾つかの中間層によって接着された基材の積層アセンブリを構築し;
(b)場合によっては、基材のアセンブリを機械加工し;
(c)基材のアセンブリの外表面を、好ましくは機械施工された硬化性ペーストの連続層によって被覆し;そして
(d)場合によっては、硬化後に、好ましくはコンピューターデザインにしたがって最終構造に機械加工する;
ことを含み、工程(c)の硬化性ペーストの組成物が、工程(a)の接着性ペースト層の少なくとも一つの組成物と同一である、ひな型又は金型の製造方法も提供される。
【0015】
更に、二つの成分、好ましくは、硬化性エポキシ樹脂を含むエポキシ成分、及び潜在性硬化剤及び他の硬化剤を含む硬化剤成分を混合して硬化性ペーストを形成し、
ペーストを、連続層の形態で基礎構造体の外表面上に施し、
ペーストの連続層を硬化させ、そして
該硬化層を所望の外形に機械加工する、
逐次工程を含む、ひな型又は金型を製造する方法が提供される。
【0016】
また、
(1)エポキシ樹脂;
(2)チキソトロピー性を誘発するのに十分な量のチキソトロープ剤;及び
(3)(a)少なくとも1種のポリエチレンイミン、(b)少なくとも二つのアミノ水素基を有する少なくとも1種の他のアミン、及び(c)潜在的反応性(完全に反応させるのに熱を必要とする)を有する少なくとも1種の他のエポキシ硬化剤を含み、(a)、(b)及び(c)の合計量はエポキシ樹脂の硬化を行うのに十分な量である、硬化剤系;
を含む組成物も提供される。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、機械施工機内で取り扱うことができ、したがって混合前の特に優れた保存安定性を活用することができる、2成分で形成されるペーストを提供することができる。
【0018】
更なる態様は、穏和な条件下で速やかに硬化し、個々の基材を一緒に接着して大型のひな型又は金型を形成する、硬化性で機械施工可能な組成物に関する。
この組成物は、基材のアセンブリを形成するか、又は基材のアセンブリの最終表面被覆を形成するための接着剤として用いることができる。好ましくは、同一の組成物を、基材を一緒に接着してアセンブリを形成する接着剤として、及びアセンブリの外表面上の外側被覆として用いる。
【0019】
同じ組成物は、ひな型又は金型の全体を継ぎ目なしに被覆し、取引事業所の条件下で速やかに硬化し、最終デザインに機械加工可能な、最終表面被覆を形成することができる。
最後に、同じ組成物は、硬化させて高温抵抗性材料を得る、即ち使用温度下でのひずみ/ゆがみに抵抗する(例えば少なくとも120℃の条件に耐える)ことのできるひな型又は金型を提供する。
【0020】
本発明の方法及び組成物によれば、以下の1以上の特性を得ることができる。
−出力自動化装置によって金型を速やかに構築する;
−一つの施工で厚い層(例えば4cm以下)を形成する;
−低レベルの発熱量;
−施工及び切削中の低い臭気;
−室温硬化性;
−特に後硬化の後の高いHDT;
−高い寸法安定性。
【0021】
本方法及び組成物を用いて、プレプリグ及び高温積層プロセスのための金型を製造することができる。
好ましくは、樹脂組成物は、樹脂系;チキソトロピー性を誘発するのに十分な量のチキソトロープ剤;及び硬化剤を含む硬化剤系;を含む。硬化剤系は、好ましくは、少なくとも1種の化学的チキソトロープ剤、好ましくはポリエチレンイミン化合物を含む。硬化剤は、好ましくは、硬化剤と、潜在性(「半」潜在性としても指定される)の硬化剤を含む。好ましくは、潜在性硬化剤は、硬化を行うために室温より高い温度への加熱を必要とする硬化剤である。好ましい潜在性硬化剤は、少なくとも50℃、好ましくは少なくとも70℃、より好ましくは少なくとも80℃、更に好ましくは少なくとも90℃の温度にかけると樹脂を硬化させるものである。
【0022】
好ましくは、樹脂組成物は、室温で硬化させる。驚くべきことに、本樹脂組成物は、より高い温度においてのみ有効な潜在性硬化剤の存在の利益を享受しながら、室温における第1の硬化を行わせることができる。組成物は、高温で後硬化することができる。好ましくは、後硬化は、少なくとも130℃の温度で行う。好ましくは、後硬化中に到達する最大温度は、220℃、より好ましくは200℃である。
【0023】
好ましくは、樹脂組成物は、エポキシ樹脂;チキソトロピー性を誘発するのに十分な量のチキソトロープ剤;及び、少なくとも1種のポリエチレンイミンのような化学的チキソトロープ剤、及び少なくとも二つのアミン水素基を有する少なくとも1種の(他の)アミンを含む硬化剤系(ここで、二つのアミンの合計量は、エポキシ樹脂の硬化を行うのに十分な量である);を含む。
【0024】
重要なことには、潜在性又は半潜在性アミン硬化剤を、硬化剤系において、より活性の非潜在性硬化剤と組み合わせて用いる。これによって、発熱の制御が可能になり、より柔軟な材料が速やかに製造され、これにより、より容易な中間切削段階が可能になる。最終的な熱硬化によって、高いTgの材料が得られる。
【0025】
潜在性又は半潜在性アミン硬化剤の例は、ジエチルトルエンジアミン、ジシアンジアミド、ジフェニルジアミノスルホン、ホウ素コンプレックス(例えば、アミン−ホウ素又はアルコキシド−ホウ素コンプレックス)、イミダゾール、及び当該技術において公知の他の物質である。
【0026】
特に好ましい潜在性硬化剤は、ホウ素含有化合物とアミンとのある種のコンプレックス、例えばボラン−アミンコンプレックス、及びハロゲン化ホウ素のアミノコンプレックス、例えば三塩化ホウ素−又は三フッ化ホウ素−アミンコンプレックスである。
【0027】
より一般的には、潜在性又は半潜在性硬化剤は、ルイス酸及びルイス塩基のコンプレックス(配位化合物と称されることもある)であってよい。ルイス酸は、塩基からの電子対を受容することのできる物質である。ルイス塩基は、電子対を供給することのできる物質である。供給された電子対は、次に酸と塩基との間で共有される。
【0028】
ルイス酸は、例えば、BX、AlX、FeX、FeX、ZnX、TiX又はTiX(ここで、それぞれのXは、独立して、C〜Cアルキル又はC〜Cアルコキシ基、或いは水素、塩素、臭素、ヨウ素又はフッ素原子を表す:但し、ルイス酸がBXである場合には、いずれのXもフッ素原子を表さない)であってよい。三フッ化ホウ素は、安定剤として有効ではなく、むしろ組成物を硬化させるように作用するので、本発明において用いるのに好適ではないことが分かった。好ましくは、それぞれのXは同一である。Xがアルキル基である場合には、好ましくはエチル基である。Xがハロゲン原子である場合には、好ましくは、臭素、ヨウ素、又は特に塩素である。好ましくは、ルイス酸は、BX、特にBH又はBCl、或いは鉄(III)のハロゲン化物、特にFeClである。ルイス塩基は、例えば、アンモニア、ホスフィン、アミン又はホスフィンであってよい。好ましいアミン及びホスフィンとしては、式:Z(R8)(IV)(式中、Zは窒素又はリンであり、それぞれのRa基は、独立して、水素原子(但し、2を超えるR8基が水素を表すことはない);1〜20個、好ましくは1〜8個、例えば1〜4個の炭素原子を有し、場合によっては1以上のフェニル基(ここで、フェニル基は場合によっては1以上のC〜C12アルキル基及び/又はハロゲン原子によって置換されていてもよい)又はC〜Cシクロアルキル基によって置換されていてもよいアルキル基;場合によっては1以上のC〜C12アルキル基及び/又はハロゲン原子によって置換されていてもよいフェニル基;又はC〜Cシクロアルキル基を表すか;或いは、二つのR8基が一緒になって、1以上が酸素又はイオウ原子によって置き換えられていてもよい4〜6個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、式IVの化合物中に存在するアルキル、シクロアルキル又はフェニル基のそれぞれは、場合によっては、1以上の、好ましくは1つ又は2つの基:−Z(Rs)−によって置換されていてもよい)のアミン及びホスフィンが挙げられる。例えば、それぞれのR8は、独立して、C〜C12アルキル基又はフェニル基を表すことができる。
【0029】
好ましくは、コンプレックスは、アミンコンプレックスである。かかるコンプレックスは、公知の方法によって製造することができ、多くは商業的に入手することができる。好適なコンプレックスの特定の例としては以下のものが挙げられる:ボランアンモニアコンプレックス;ボラントリエチルアミンコンプレックス;ボラントリブチルホスフィンコンプレックス;ボラントリメチルアミンコンプレックス;ボラントリフェニルホスフィンコンプレックス;ボラントリブチルアミンコンプレックス;ボランN,N−ジエチルアミンコンプレックス;ボランN,N−ジイソプロピルエチルアミンコンプレックス;ボランジメチルアミンコンプレックス;ボランN−エチル−N−イソプロピルアニリンコンプレックス;ボラン4−メチルモルホリンコンプレックス;ボラン4−エチルモルホリンコンプレックス;ビス(トリエチルボラン)1,6−ジアミノヘキサンコンプレックス;トリクロロボランN,N−ジメチルオクチルアミンコンプレックス;トリクロロボラントリエチルアミンコンプレックス;トリクロロボランピリジンコンプレックス;トリクロロボランベンジルアミンコンプレックス;三塩化鉄トリエチルアミンコンプレックス;三塩化鉄ピリジンコンプレックス;及び三塩化鉄N,N−ジメチルオクチルアミンが挙げられる。
【0030】
典型的には、コンプレックスは、ルイス塩基1当量あたり1当量のルイス酸、例えばアミン又はホスフィン1当量あたり1当量の式:BXの化合物を含む。
本発明は、曝露された外表面を有する基礎構造体を結合し、基礎構造体の外表面に連続層の形態でペーストを施し、施されたペーストの連続層を硬化させ、型形成ペーストのかかる硬化層を所望の外形に機械加工する逐次工程を含む、結合線を有しない継ぎ目のないひな型又は金型を製造する方法を提供する。この方法は、「シームレス型形成ペースト(SMP)」を用いる「正味寸法成形」と称される。この技術は商業的に用いられている。
【0031】
本発明においては、用いるペーストは、好ましくは、温度抵抗性樹脂を含む機械施工可能な硬化性混合物であることによって特徴づけられ、種々の基材を一緒に接着する接着性ペースト、且つ、ひな型又は金型の全体を平らに被覆し、機械加工して継ぎ目のない表面を生成させることのできる表面ペーストの両方として機能することができる。
【0032】
潜在性硬化剤及びチキソトロープ剤を含む組成物から形成されたペースト層は、基礎構造体上又は基材のアセンブリ上に層として施すことができ、展性があり、所望の場合には更に成形して硬化前に切削することができることが分かった。
【0033】
本発明によって用いるアンダーサイズの支持構造体及びこれらの構造体を製造する方法は、当該技術において公知であり、従来の基板ひな型のための基支持材として通常製造されているものと同じタイプの構造体であってよい。構造体は、型形成ペーストをその上に施すことができるコアとして用いることができる。それから支持構造体が製造される材料の例としては、例えばポリウレタン又はエポキシ材料から製造される低密度発泡体、アルミニウム又は繊維強化プラスチックから製造されるハニカムが挙げられるが、これらに限定されない。かかるハニカムの一つの例は、Hexcel compositesによって製造されているNomexである。
【0034】
組成物
樹脂混合物は、好ましくは温度抵抗性で硬化可能な熱硬化性材料である。
好適な熱硬化性材料は、エポキシ−アミン、無水物、イソシアネート−ポリオール、アクリル−アミン、エポキシ−アミン−フェノール等の付加重合材料及びこれらのハイブリッド混合物から誘導されるものであってよい。特に、保存安定性を有するように好都合に製造することができ、その上機械混合及び施工が可能であるので、2成分熱硬化性材料が好ましい。
【0035】
好ましい熱硬化性材料は、ペースト様のコンシステンシーを達成することができ、施工又は押出し後に非スランプ特性を与えるために極めて望ましい、充填剤を含むものである。非スランプ特性によって、施した材料の望ましくない垂れを起こすことなく速やかに使用することが可能になる。充填剤、例えば良好な圧縮強度のためのアルミニウムのような高密度充填剤、及び低密度軽量のための中空の微少球体を用いて、これも所望の塗布密度を達成することができる。ひな型に関しては低密度充填剤がより有用であろうし、一方金型用途に関してはより高密度の充填剤が好ましい。充填剤は、更に、熱硬化性材料の硬化を遅延させず、且つ、最終的なひな型又は金型を形成する機械加工段階中に過剰のダスト形成を引き起こさないように選択される。
【0036】
組成物、好ましくは2成分組成物は、混合直後にスランプ、即ち混合された組成物を所望の位置に配置した際の形状変化に対する抵抗性を与える高い粘度を有することが好ましい。必要とされる非スランプ性の度合いは、実に、成形オリフィスを通して組成物を押し出すことによって得られる形状及び寸法をほぼそのまま保持するものである場合がある。この非スランプ性のテクスチャーは、しばしば、十分なチキソトロープ剤を用いた場合にはそれらがゲル化及び硬化するまでそれらの形状及び非スランプ特性を概して保持する親水性ヒュームドシリカのようなチキソトロープ剤をブレンドへの成分の一つの中に分散することによって得られる。チキソトロピー性の組成物は、剪断下でのその粘度が非剪断下での粘度よりも低い組成物として定義することができる。
【0037】
2成分組成物は、樹脂又は樹脂系を含む成分Aと、硬化剤(系)を含む成分Bを含むことができる。成分A及びBは、成分Bの量が成分A中に含まれる硬化性樹脂を硬化させるのに十分であるような量で混合される。成分の密度は、しばしば、全く同等であって、比を容量によって容易に定義することができる。
【0038】
好ましい硬化性ペースト組成物は、(1)エポキシ樹脂;(2)チキソトロピー性を誘発するのに十分な量のチキソトロープ剤;及び(3)(a)少なくとも1種のポリエチレンイミン、(b)少なくとも二つのアミノ水素基を有する少なくとも1種の他のアミン、及び(c)潜在的反応性(完全に反応させるのに熱を必要とする)を有する少なくとも1種の他のエポキシ硬化剤(ここで、(a)、(b)及び(c)の合計量は、エポキシ樹脂の硬化を行わせるのに十分な量である)を含む硬化剤;を含む。
【0039】
好ましい硬化性エポキシ樹脂/硬化剤混合物は、例えば、米国特許6,077,886に記載されている。
エポキシ樹脂(1)は、それ自体が液体である1種以上のエポキシ樹脂から構成されていてもよく、或いは1種以上の固体のエポキシ樹脂と1種以上の液体のエポキシ樹脂との液体混合物であってもよく、或いはエポキシ樹脂組成物において従来用いられている任意の希釈剤のような希釈剤中に溶解している1種以上の固体のエポキシ樹脂であってもよい。エポキシ樹脂は、1,4−ブタンジオール又は1,3−ブタンジオールのような多価アルコールのポリグリシジルエーテル、又は好ましくは多価フェノール、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)又は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)のようなビスフェノールのポリグリシジルエーテル、ホルムアルデヒド及びフェノールそれ自体又はクレゾールのようなフェノール類から形成されるノボラック、或いはグリシジルアミン、例えばN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンビスベンゼンアミン、或いは2種以上のかかるエポキシ類の混合物であってよい。ビスフェノールAのポリグリシジルエーテル及びグリシジルアミンが特に好ましい。エポキシ樹脂は、特に固体のエポキシ樹脂を含む場合には、1種以上のエポキシ官能性希釈剤、通常はモノエポキシド、又は非エポキシド希釈剤、例えば、硬化性エポキシ樹脂組成物において従来用いられているモノエポキシド及び非エポキシド希釈剤を含んでいてよい。グリシジルアミン樹脂の例は、HuntsmanからのMY721及びMY0510、及び三菱ガス化学から入手できるTetrad X及びTetrad Cである。
【0040】
チキソトロープ剤(2)は、好ましくは、粒子間水素結合に大きく依存してそのチキソトロピー効果を達成すると考えられているチキソトロープ剤、特に親水性ヒュームドシリカ又は他のシリケートである。チキソトロピー性を誘発するのに必要なチキソトロープ剤の量は、用いる特定のエポキシ樹脂及び特定のチキソトロープ剤の性質に依存する。この量は、概して、エポキシ樹脂(1)の重量を基準として1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%である。これは、「物理的」チキソトロープ剤である。
【0041】
好ましくは、組成物、特に組成物の硬化剤系部分は、(物理的)チキソトロープ剤に加えて、化学的チキソトロープ剤も含む。好ましい化学的チキソトロープ剤は、700〜1,000,000又はそれ以上、好ましくは5000〜750,000、特に25,000〜750,000、特に好ましくは約750,000の分子量(Mw)を有していてよいポリエチレンイミンである。かかるポリエチレンイミンは、商業的に入手することができるか、或いは公知の手順によってエチレンイミンから調製することができる。
【0042】
ポリエチレンイミンの量は、概して、本発明のエポキシ樹脂組成物が、組成物の形成後の所望の時間の間流動しないように選択される。好ましくは、ポリエチレンイミンの量は、エポキシ樹脂組成物が、その形成後少なくとも60分間流動しないようなものである。本発明のある特定の態様においては、ポリエチレンイミンの量は、エポキシ樹脂組成物が、そのゲル化(場合によっては数時間を必要とする)まで流動しないようなものである。所定の時間の間非流動特性を与えるのに必要なポリエチレンイミンの量は、簡単な実験によって容易に決定することができる。本明細書で記載する特に好ましい成分(1)、(2)及び(3)(b)を含む本発明の組成物に関しては、エポキシ樹脂100重量部あたり0.2〜2重量部のポリエチレンイミンの量が好ましい。
【0043】
アミン硬化剤(3)(b)として用いるのに好適なアミンの例としては、エポキシ樹脂用の硬化剤として公知の脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族、及び複素環式アミン、例えば、エチレンジアミン又はブタン−1,4−ジアミンのようなアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン又はトリプロピレンテトラミンのようなポリアルキレンポリアミン;N−(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、又はトリエチレンテトラミンのモノ−N−2−ヒドロキシプロピル誘導体のようなポリアルキレンポリアミンのN−ヒドロキシアルキル誘導体;ポリオキシエチレン−及びポリオキシプロピレン−ジアミン及びトリアミンのようなポリオキシアルキレンポリアミン;N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン又はN,N−ジエチルプロパン−1,3−ジアミンのようなN,N−ジアルキルアルキレンジアミン;3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)のような、環に結合したアミノ又はアミノアルキル基を有する脂環式アミン;ビス(4−アミノフェニル)メタン又はビス(4−アミノフェニル)スルホンのような芳香族アミン;上記に記載したような脂肪族、脂環式又は芳香脂肪族アミンによるエポキシ樹脂のアミン末端停止付加物;N−(2−アミノエチル)ピペラジン又はN−(3−アミノプロピル)ピペラジンのようなN−アミノアルキルピペラジン;並びに、ポリアミノアミド、例えば、上記に記載したもののようなポリアルキレンポリアミンと、重合不飽和脂肪酸、例えば二量体化又は三量体化リノール酸又はリシノール酸のような重合植物油酸との反応生成物;或いは2種以上のかかるアミンの混合物が挙げられる。
【0044】
芳香族、脂肪族及び脂環式アミン硬化剤は、通常、組成物の成分(3)(b)として用いるのに好ましい。(3)(b)の量は、好ましくは、(3)(a)及び(3)(b)が一緒になって、エポキシ樹脂(1)の1,2−エポキシド1当量あたり約0.75〜1.25のアミノ水素当量を与えるようなものである。
【0045】
潜在性又は半潜在性の硬化剤(3)(c)は、通常の大気温度においてゆっくりと硬化するか或いは全く硬化せず、完全な反応を起こすためには熱を必要とする任意の遅反応性エポキシ硬化剤である。通常的でないことに、ここでこのタイプの潜在性硬化剤によって例示されるペーストは、基材の速やかな組立を可能にし、ペーストが硬化して柔軟な展性のある接着剤コンシステンシーを与え、基材のアセンブリに対して安定な支持を与えることが分かった。完全に組み立てた後、ひな型は、はるかに高い温度で変形を起こすことなく硬化させることが可能である。
【0046】
エポキシ樹脂組成物は、(1)及び(2)の予め形成された混合物を、(3)(a)及び(3)(b)の予め形成された混合物と一緒に撹拌することによって、簡便に形成することができる。また、チキソトロープ剤を硬化剤混合物中に好都合に存在させることができる。
【0047】
本発明にしたがって調製されるシームレス型形成ペーストは、また、希釈剤、充填剤(例えば炭酸カルシウム)、繊維、顔料、染料、難燃剤、消泡剤、湿潤剤、及びポリマー強化剤のような更なる成分を含むことができる。また、ステアリン酸カルシウムを加えることにより、硬化材料の機械加工性が改良されるので、その添加もまた有利であることが見出された。これらの補助材料は、硬化剤成分と共に簡便に添加することができ、或いは樹脂成分と共に加えることができる。
【0048】
型形成ペーストを施工する技術は、当該技術において公知であり、例えばTartler Nodopox機械を用いることによって行うことができる。好都合には、別々のドラムに樹脂及び硬化剤成分を充填する。ドラムに対して伴板を介して低圧を加えることによって、材料のポンプ移送が促進される。好ましくは、ポンプによって樹脂及び硬化剤をタンクから混合ブロックに供給し、ここで樹脂及び硬化剤を混合する。混合ブロック内の残留時間、機械的撹拌の速度、及び室に接続したホースの長さは、混合物の均質性に影響を与える。
【0049】
低粘度の樹脂混合物を用いることが特に好ましく、好ましい粘度範囲は1000〜10,000mPa・sである。成分における粘度が過度に高いと、ペーストを施工するために高圧のポンプ運転が必要となる。非常に高い粘度の組成物は、当該技術においてパテとして公知のもので、半固体であり、ポンプ移送もできず、機械施工もできない。粘度は、好ましくは、25℃及び0.01593Hzの剪断速度下で測定する。
【0050】
組成物の好ましい温度抵抗性は、140〜220℃の範囲である。
好ましくは、ペーストを用いて、次の二つの機能:
(1)ハニカムの連続層を一緒に接着し、これを硬化させ、アンダーサイズに切削することによって、基礎構造体又はコアを製造する(この場合、ペーストは二つの基材を一緒に接着するように作用する);
(2)全構造体を被覆する平滑で機械加工可能な上表面を製造する;
を有することによって全構造体を生成する。同じペーストの層を、高出力計量混合機械を用いて、ひな型全体、上表面並びに側面(傾斜面及び垂直面)を被覆する連続層の形態で、支持構造体表面上に施工する。ペーストは、好ましくは、厚さ約10mm〜約40mmの厚さ、より好ましくは厚さ約20mmで施す。次に、ペーストを硬化させ、機械加工する。本発明のペーストは、特に、継ぎ目のない結合及び平滑な表面を与え、高機能性のひな型及び金型を生成する。
【0051】
硬化性樹脂の硬化は、特定の用途における従来の方法にしたがって行うことができる。一般的に、組成物は、大気温度で硬化させることができ、場合によってはこの段階においておおよその寸法に粗切削し、次に後硬化して完全な反応を行わせ、次に所望の寸法への最終切削を行うことができる。
【0052】
典型的には、機械加工の間に約8〜10mmの材料を除去する。ひな型又は金型を製造する前に、表面を処理して、表面をシールしたり或いは非粘着性の表面を提供することができる。
【0053】
硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂であってよく、温度抵抗性樹脂である。良好な非スランプ特性と、垂直の表面上に水平に配向して載置した際に垂れ抵抗性を示すことが求められている。典型的には、垂直表面上で厚さ25mmの最小垂れ抵抗性が求められている。
【0054】
許容しうる温度抵抗性材料に関する総合的な要求を満足するためには、硬化組成物は、100℃を超え、好ましくは140℃を超える熱変形温度(HDT)、及び使用範囲において60×10−6ppm/K未満、好ましくは50×10−6ppm/K未満の熱膨張係数(CTE)を有していなければならない。微細なフライス加工及び/又は高いHDTが所望の場合には、ひな型又は金型を、機械加工又は切削する前に、好ましくは200℃以下で後硬化することが好ましい。
【0055】
所望の形状を達成するために、機械加工又は切削を、従来の工具(例えば旋盤)又は切削機械、例えばフライス盤、複合工作機械などを用いて行うことができる。コンピューター数値制御(CNC)機械を用いることが好ましい。本発明は、したがって、マスターひな型、設計ひな型、トレースひな型、及びプロトタイプ金型の製造に好適である。
【0056】
本発明の方法を用いるひな型又は金型の全製造コストは、例えば、金属、エポキシブロック又はパテを、接着剤フォーム及びトップペーストと共に用いる従来法よりも、簡単で、より経済的で迅速であることが認められるであろう。更なる重要な有利性は、得られるひな型の表面が、全領域(上面並びに垂直又は傾斜側面)に亘って、継ぎ目がなく結合線を有しないことである。
【0057】
本方法は、基礎構造体表面上に薄い層しか施工しないので、用いる材料の量が従来法よりも大きく減少されている点において更に有利である。
上記に記載の有利性(即ち、より迅速なプロセス、より良好な機械加工性、より平滑な表面特性、及びより大きな全体的効率)に加えて、本発明において用いるペーストは、低い線収縮を示し、高い許容誤差を保持する大型のひな型を製造するのに用いることができる。完成品は、優れたエッジ強度、硬化ショア硬度、曲げ強度、高い熱変形温度及び圧縮強度、並びに低い熱膨張係数を有する。
【0058】
公知の従来法(米国特許5,707,477)は、接着剤によって支持層を一緒に結合し、接着剤を硬化させ、エポキシパテで構成される表面層を手作業で施す積層法を用いる。本発明は、機械で混合した(且つ場合によって施工した)ペーストを用いて、支持層を結合し且つ表面層を生成させる遙かに迅速な積層法を提供することができる。
【0059】
本発明は、
(a)接着性ペーストの層によって少なくとも一つの基材を他の基材に取り付け且つ接着することによって基材のアセンブリを構築し;
(b)基材のアセンブリの外表面を、好ましくは機械施工された硬化性ペーストの連続層によって被覆する;
ことを含み、工程(b)の硬化性ペーストの組成物が、工程(a)の接着性ペースト層の少なくとも一つの組成物と同一である、ひな型又は金型の製造方法を提供する。
【0060】
本発明は、更に、
(a)接着性ペーストの層によって少なくとも一つの基材を他の基材に取り付け且つ接着することによって基材のアセンブリを構築し;
(b)基材のアセンブリの外表面を、好ましくは機械施工された硬化性ペーストの連続層によって被覆する;
ことを含み、工程(b)の硬化性ペーストの組成物が、工程(a)の接着性ペースト層の少なくとも一つの組成物と同一であり、硬化性ペーストの組成物が、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、及びポリエチレンイミンを含む、ひな型又は金型の製造方法を提供する。
【0061】
WO 03/051649は、未硬化ペーストの50〜80容量%の量の微細球を含み、未硬化ペーストの密度が0.4〜0.9g/cmの範囲である硬化性の型形成ペーストを用いて軽量ひな型を製造する方法を提案する。軽量性はひな型に求められており、一方金型は例えば圧力に対して抵抗性であることが求められている。本発明の硬化性組成物は、適当な抵抗性を保持するために制限された量のガラスバブルのような微細球を含むことができる。例えば、硬化性組成物は、最大で、硬化性組成物の40重量%、30重量%、25重量%、20重量%のガラスバブルを含む。
【実施例】
【0062】
本発明を、以下の非制限的実施例を参照して説明する。他に示さない限り、全ての部及びパーセントは重量基準で与えられる。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
試験条件
ペーストを、15〜50mmの厚さで基礎構造体上に施工し、大気温度で硬化させ(注:硬化時間又は施工厚さに限定はない)、粗フライス加工を行い、続いて少なくとも用途において求められている温度に後硬化した。次に、コンピューター数値制御(CNC)機械を用いることによって、物品をその最終的な外形に成形した。約100部の成分Aを約50部の成分Bと混合した。成分A及びBの密度は、いずれも約1g/cmであった。
【0067】
ペーストを以下のようにして評価した。ペーストの垂れ抵抗性は、硬化の前に、ペーストを15〜50mmの厚さで、垂直な表面の上に水平に施工することによって測定した。ペーストの密度及び熱変形(歪み)温度(HDT)を測定した。
【0068】
【表4】

【0069】
HDTは、熱変形温度であり、熱抵抗性の有効限界を与える軟化点の測定値であり、ISO75に従って測定される。
実施例1
実験結果は、調製したペーストの優れた性能特性を示した。とりわけ、ペーストは、優れた垂れ抵抗性及び適度の温度抵抗性を与えた。しかしながら、硬化ペーストのHDTは100℃を下回っており、これは、加熱の際の正確な形状保持性の度合いが低く、金型のためには不利である可能性があることを示している。
【0070】
実施例2
実験結果は、調製したペーストの優れた性能特性を示した。とりわけ、ペーストは、優れた垂れ抵抗性及び高い温度抵抗性を与えた。しかしながら、高い発熱は、応力、収縮及び寸法変形を引き起こす可能性があるので、望ましくなかった。
【0071】
実施例3
実験結果は、調製したペーストの優れた性能特性を示した。とりわけ、ペーストは、優れた垂れ抵抗性及び高い温度抵抗性を与えた。発熱は劇的に減少した。
【0072】
実施例4
実験結果は、調製したペーストの優れた性能特性を示した。とりわけ、ペーストは、優れた垂れ抵抗性及び極めて高い温度抵抗性を与えた。発熱は低かった。驚くべきことに、本実施例は、また、ハニカムに対して特に優れた接着を与え、硬化ペーストからハニカムを分離するためには破壊しなければならなかった。硬化による収縮は驚くほど低く、本実施例に関しては後硬化によって測定可能な収縮は見られなかった。
【0073】
ペーストの特性は、これらの配合物が、施工されたペーストの垂れに対する高い抵抗性及び増大した温度抵抗性によって示される改良された施工特性によって、継ぎ目のないひな型又は金型を形成するペーストの製造のために優れていることを示す。更に、実施例3及び4において半潜在性硬化剤(DDS)を使用したことにより、発熱が減少し、これにより、減少した歪み及び収縮によるより高い寸法精度が可能となった。
【0074】
実験結果は、調製したペーストの優れた性能特性を示した。とりわけ、ペーストは、優れた垂れ抵抗性及び改良された高い温度抵抗性を与えた。更に、ピーク発熱は劇的に減少した。
【0075】
半潜在性硬化剤を用いることの更なる有利性は、場合によっては、ペーストを、より容易な切削を可能にする半硬化状態でCNC機械加工することができるということである。
金型を構築し、金型を用いて、手積み成形法を用いて高温複合体部品を製造する方法の実施例を以下に説明する。
【0076】
十分な剛性を有する好適な材料(通常はアルミニウム又はスチール)の基板を調製し、必要な金型の寸法にしたがってペーストの薄い層を表面に施した。Tartler Nodopox機械を用いて、ペーストを混合し、施工した。アルミニウム又はNomexのハニカム(又は他の材料)をペースト層上に載置し、ペースト中に押し込んで、良好な接触を生成し接着を確実にし、所望の寸法が達成されるまで、ペースト及びハニカムの更なる層を施した。ペーストを室温で硬化させ、次にハニカムを最終表面のアンダーサイズにフライス加工した(場合によっては、プレカットハニカムを用いて、この硬化及び切削段階の必要性を除去することができる)。次に、ハニカム全体に亘って表面層を施した。次に、室温でペーストを硬化させ、粗フライス加工し、次に後硬化し、最終フライス加工を行った(場合によっては、硬化及び切削の前に一段階で後硬化を行うことができる)。
【0077】
次に、平滑に研磨し、離型剤を施すことによって、表面を調製した。
次に、ゲル被覆(例えば、Huntsman Advanced Materialsから入手できるSW5200及びHY5212)を施し、これを粘着性の段階に硬化させることによって部品を製造した。次に、積層用樹脂(例えば、Huntsman Advanced Materialsから入手できるLY5210及びHY5210)を薄い層で施し、繊維(炭素、ガラス又はアラミド)の層を施し、樹脂を繊維に含侵させた(これは、ローラー又はブラシ等を用いることで補助することができる)。所望の厚さの部品が得られるまで、樹脂及び繊維の更なる層を施した。
【0078】
好ましくは、複合体は、膨張黒鉛、シリコン含有材料、ナノフィラー(例えばナノクレー)、有機リン材料、最も好ましくは非ハロゲン化難燃剤のような難燃添加剤を含む。
次に、部品を、複合体部品の要求にしたがって硬化させ(180℃以下)、その後、型から取りだし、最終加工を行った。これにより、現在の方法よりも遙かに迅速に完成品を製造することができた。かかる成形複合体は、航空宇宙、自動車、鉄道、船舶、風力エネルギー、家具、及び建築(例えば、レジャー施設、博覧会、映画館及び劇場のひな型)産業のための、大型で、軽量で強固な目的物/部品を製造するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】金型の製造方法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)接着性ペーストの層によって基材を他の基材に取り付け且つ接着することによって基材のアセンブリを構築し、好ましくは接着性ペーストの幾つかの中間層によって接着された基材の積層アセンブリを構築し;
(b)場合によっては、基材のアセンブリを機械加工し;
(c)基材のアセンブリの外表面を、好ましくは機械施工された硬化性ペーストの連続層によって被覆し;そして
(d)場合によっては、硬化後に、好ましくはコンピューターデザインにしたがって最終構造に機械加工する;
ことを含み、工程(c)の硬化性ペーストの組成物が、工程(a)の接着性ペースト層の少なくとも一つの組成物と同一である、ひな型又は金型の製造方法。
【請求項2】
少なくとも2種の別々の成分を機械混合して硬化性で接着性のペーストを形成することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硬化性で接着性のペーストが、チキソトロピー性で、非スランプ特性を有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
硬化性で接着性のペーストが、25℃で測定して10,000mPa・s以下の動的粘度を有する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
硬化性ペーストが、エポキシ成分と硬化剤成分とを混合することによって得られるエポキシペーストである請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
硬化性ペーストが、硬化性エポキシ樹脂を含むエポキシ成分と、潜在性又は半潜在性の硬化剤を含む硬化剤成分とを含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
硬化性樹脂、好ましくは硬化性エポキシ樹脂を含む第1の成分、及び潜在性又は半潜在性の硬化剤を含む硬化剤系を含む第2の成分の二つの成分を混合して硬化性ペーストを形成し;
ペーストを、連続層の形態で基礎構造体の外表面に施し、ペーストの連続層を硬化させ、該硬化層を所望の外形に機械加工する;
逐次工程を含む、ひな型又は金型の製造方法。
【請求項8】
硬化性ペーストが、
(1)エポキシ樹脂;
(2)好ましくはチキソトロピー性を誘発するのに十分な量のチキソトロープ剤;及び
(3)(a)少なくとも1種のポリエチレンイミン、(b)少なくとも二つのアミノ水素基を有する少なくとも1種の他のアミン、及び(c)潜在的反応性(完全に反応させるのに熱を必要とする)を有する少なくとも1種の他のエポキシ硬化剤を含み、(a)、(b)及び(c)の合計量はエポキシ樹脂の硬化を行うのに十分な量である、硬化剤系;
を含む請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
潜在性又は半潜在性の硬化剤(3)が、通常の大気温度においてはゆっくりと硬化するか或いは全く硬化せず、完全な反応を起こすためには熱を必要とし、好ましくは、ジエチルトルエンジアミン、ジシアンジアミド、ジフェニルジアミノスルホン、ホウ素コンプレックス(例えば、アミン−ホウ素又はアルコキシド−ホウ素コンプレックス)及び/又はイミダゾールを含む任意の遅反応性エポキシ硬化剤を含む請求項6又は7に記載の方法。
【請求項10】
硬化ペーストが、100℃を超え、好ましくは140℃を超え、より好ましくは150℃を超える熱変形温度を有する請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
最終硬化ひな型又は金型を機械加工して、好ましくは非ハロゲン化難燃剤を含む積層複合体を製造するための金型を形成する請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
(a)接着性ペーストの層によって少なくとも一つの基材を他の基材に取り付け且つ接着することによって基材のアセンブリを構築し;
(b)基材のアセンブリの外表面を、好ましくは機械施工された硬化性ペーストの連続層によって被覆する;
ことを含み、工程(b)の硬化性ペーストの組成物が、工程(a)の接着性ペースト層の少なくとも一つの組成物と同一であり、この硬化性ペーストの組成物が、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、及びポリエチレンイミン化合物を含む、ひな型又は金型の製造方法。
【請求項13】
(1)エポキシ樹脂;
(2)好ましくはチキソトロピー性を誘発するのに十分な量で存在するチキソトロープ剤;及び
(3)(a)少なくとも1種のポリエチレンイミン、(b)少なくとも二つのアミノ水素基を有する少なくとも1種の他のアミン、及び(c)潜在的反応性(完全に反応させるのに熱を必要とする)を有する少なくとも1種の他のエポキシ硬化剤を含み、(a)、(b)及び(c)の合計量はエポキシ樹脂の硬化を行うのに十分な量である、硬化剤系;
を含む硬化性組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2008−520461(P2008−520461A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541925(P2007−541925)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055858
【国際公開番号】WO2006/024676
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(504177804)ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー (43)
【Fターム(参考)】