説明

高濃度の農薬水分散体

【課題】保存安定性よく水中に分散させた、高濃度の農薬原体の水分散体、およびそれらの製造方法の提供。
【解決手段】油溶性の農薬原体を農薬水分散体に対して50質量%〜75質量%含有し、乳化剤兼分散質としてアニオン系乳化剤とノニオン系乳化剤との併用系、またはカチオン系乳化剤とノニオン系乳化剤との併用系を、農薬水分散体に対して20質量%〜45質量%含有し、水系分散媒を農薬水分散体に対して5質量%〜20質量%含有し、農薬原体のうちの半量以下、乳化剤兼分散質のうちの30%〜70%量および水系分散媒の混合物を、泡の発生を抑制した高速攪拌により乳化分散して乳化分散体を得、農薬原体のうちの残量および乳化剤兼分散質のうちの残量を均一に混合してから、泡の発生を抑制した高速攪拌を行いながら乳化分散体に添加することによって得られる高濃度の農薬水分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬原体の水分散体、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エマルションとは、均一には溶解しない二液体の一方が微細粒子(分散質)となって、他方の液体(分散媒)中に分散している系のことである。エマルションは熱力学的に不安定な系であるから、与えられた原料(水、油、乳化剤)の混合順序、混合条件(温度、乳化機の種類など)によって、生成するエマルションの型(分散質が水で分散媒が油の状態(W/O型)、分散質が油で分散媒が水の状態(O/W型))や安定性に差を生じる。
【0003】
その生成法は、種々あるが、代表的なものは機械乳化法および転相乳化法である。まず、機械乳化は、機械的な攪拌力により分散質と分散媒を混合し、分散質を微細な液滴とし、乳化剤である界面活性剤を添加することにより、エマルションを生成させるものであり、エマルションの生成法としては最も簡単な方法である。乳化機は種々のものがあり、高速攪拌機、コロイドミル、ホモジナイザー等である。これらの機械を組み合わせて使うこともある。
【0004】
一方、転相乳化法は、分散質が水、分散媒が油の状態(W/O型)から分散質が油、分散媒が水の状態(O/W型)へ移行(またはその逆)するとき(転相)に非常に微細な液滴が生成するため、その移行時に微細な液滴のままで進行を止めようとする方法である。
【0005】
エマルションの不安定化要因には3つある。クリーミング、凝集、合一である。クリーミングは、内相と外相の密度差によって生じる液滴の上昇(または下降)であり、凝集、合一を促進する。凝集は粒子間の乳化剤分子の界面移動、脱離によって滴の合一が起きるものである。合一が進むと油水分離が起こる。エマルションの安定化にはこの3段階に対する防止を講じる必要がある。
【0006】
エマルションを安定化する方法としては、溶融しているワックスに対して熱水を徐々に添加して、転相乳化を行ってからホモミキサーで高速撹拌し、続いてホモジナイザー380〜420kg/cm2の高圧下処理を行い、平均粒子径が2μm以下のワックスエマルジョンを得たことが開示されている(例えば、特許文献1参照)。ここで使用されたホモジナイザーはAPV−GAULIN,INC.製「15MR−STA」であるが、同公報段落0010中に、他に三和機械株式会社製「HOMOGENIZER」、みずほ工業株式会社製「超高圧ホモジナイザーM−110−E/H、M−140K、M−210C−E/H、M−610」、吉田機械興業株式会社製「ナノマイザーYSNM−1500AR、YSNM−1500−0025N」が報告されている。ホモジナイザーの圧力を高くする程、平均粒子径を小さくすることができ、そのことによってワックスエマルジョンの安定性が高まることが報告されているが、この場合生成したワックスエマルジョンは用途が床つや出し剤等、分散質がワックスそのものであって、生理活性等を有する有効成分を油性の溶液としてエマルジョン化したものでは無い。
【0007】
難溶性薬物を含有するマイクロエマルション製剤も開示されている(例えば、特許文献2参照)。同公報4ページ右欄に、高速撹拌下で乳化処理を行う方がより微細な粒子径のマイクロエマルション製剤を得ることができる、と報告され、具体的に米国マントンガウリン社製の加圧乳化機「マントンガウリンホモジナイザー15M−8TA」、米国ウルトラソニック社製の超音波乳化機「ウルトラソニックホモジナイザー」、スイス国キネマチカ社製の高速回転型乳化機「ポリトロン乳化機50/6ST」が報告されている。この方法で得られたマイクロエマルション製剤は直径0.5μm以下の微細な乳化粒子で、経時的安定性に優れている、と報告されている。しかし、得られたマイクロエマルション製剤はクリーム、乳液等そのまま使用に供される剤形であり、濃厚な有効成分を希釈して使用する農薬のような用途には適さない。また、平均粒子径を小さくするだけでは、クリーミングを完全に防止することはむずかしい。
【0008】
また、超高圧(処理圧2500kg/cm2)で従来とは異なる機種で処理して微細粒子化する方法も報告されている(例えば、特許文献3参照)。この方法では、日本ビーイーイー社製の「DeBEE」を使用して平均粒子径を0.5μm以下にして、優れた安定性を得ている。しかし、得られた乳化物はそのままの剤形で使用に供される乳液という使用形態であり、濃厚な有効成分を希釈して使用する農薬のような用途には適用できない。
【0009】
【特許文献1】特開2003−147088号公報
【特許文献2】特公平7−23303号公報
【特許文献3】特開2001−340752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ごく少量の水分散媒であっても、分散質である農薬原体を微粒子化し、保存安定性よく水中に分散させた、高濃度の農薬原体の水分散体、およびそれらの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記した課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、農薬原体の水分散体を乳化分散する際に、泡の発生を抑制した高速攪拌を採用することによって目的を達成できることを見出し、本発明を解決するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、農薬水分散体であって、油溶性の農薬原体を農薬水分散体100質量%に対して50質量%〜75質量%含有し、乳化剤兼分散質としてアニオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上とノニオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上との併用系、またはカチオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上とノニオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上との併用系を、農薬水分散体100質量%に対して20質量%〜45質量%含有し、水系分散媒を農薬水分散体100質量%に対して5質量%〜20質量%含有し、前記した農薬原体のうちの半量以下、前記した乳化剤兼分散質のうちの30%〜70%量および前記した水系分散媒全量の混合物を、泡の発生を抑制した高速攪拌により乳化分散して乳化分散体を得、さらに泡の発生を抑制した高速攪拌を行いながら、前記した農薬原体のうちの残量および前記した乳化剤兼分散質のうちの残量の均一混合物を、前記した乳化分散体に添加することによって得られる高濃度の農薬水分散体である。
【0013】
また本発明は、農薬水分散体であって、油溶性の農薬原体を農薬水分散体100質量%に対して50質量%〜75質量%含有し、乳化剤兼分散質としてアニオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上とノニオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上との併用系、またはカチオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上とノニオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上との併用系を、農薬水分散体100質量%に対して20質量%〜45質量%含有し、水系分散媒を農薬水分散体100質量%に対して5質量%〜20質量%含有し、前記した農薬原体のうちの半量以下、前記した乳化剤兼分散質のうちの30%〜70%量および前記した水系分散媒全量の混合物を、泡の発生を抑制した高速攪拌により乳化分散して乳化分散体を得、さらに泡の発生を抑制した高速攪拌を行いながら、前記した農薬原体のうちの残量および前記した乳化剤兼分散質のうちの残量の均一混合物を、前記した乳化分散体に添加することを特徴とする高濃度の農薬水分散体の製造方法である。
【0014】
本発明では、油溶性の農薬原体、乳化剤兼分散質および水系分散媒を、泡の発生を抑制した高速攪拌装置を採用することによって、乳化分散が系内に泡を極力巻き込むことなく、しかも強力な攪拌力を与えることが可能になるのである。本発明者はクリーミングが起きるメカニズムについて研究を行った結果、従来の高速撹拌機を使用した場合には、乳化分散時に微小な泡の粒子が多数生成し、それらが後に分散粒子を伴って上方に移動し、クリーミングを誘発することを見出した。本発明の農薬水分散体では系内に泡を巻き込まないので、クリーミングすることなく、被分散体である農薬原体の凝集、合一を防ぎ、保存安定性よく微細粒子として水中に分散しているのである。また、泡を極力巻き込むことなく、強力な攪拌力を系に与えることが出来ることから、高いエネルギーを効率よく水分散体の製造に費やす事が可能となり、非常に少ない水系分散媒量で10μm以下の平均粒子径の微細で安定性の高い被分散体を得ることが出来るのである。
【0015】
本発明では泡の発生を抑制した高速攪拌装置によって、乳化分散を行うが、装置の撹拌速度は高いほど得られるエマルションの粒径も小さくなり好ましい。高速攪拌速度は、50L容器において、4500rpm以上、さらに5500rpm以上であることが好ましい。4500rpm未満では、一般的な回転式乳化機との差別化が難しく、攪拌速度からの高いエネルギー効率で被分散体を製造することが出来ず、得られる被分散体の平均粒子径が大きくなる。また保存安定性を良くするためには多くの乳化剤量を用いなければならなくなる。泡の発生を抑制した高速攪拌装置の例としては、高速攪拌装置泡レスミキサー(日本ビーイーイー(株)社製)がある。
【0016】
本発明では農薬原体を高濃度とし、水系分散質を少量とすることに特徴を持たせたので、第1段階として、農薬原体のうちの半量以下、乳化剤兼分散質のうちの30%〜70%量および水系分散媒の混合物を、泡の発生を抑制した高速攪拌により乳化分散して乳化分散体を得ている。第2段階として、農薬原体のうちの残量および乳化剤兼分散質のうちの残量を均一に混合した後、泡の発生を抑制した高速攪拌を行いながら、先に得られた乳化分散体に添加していくことによって、高濃度の農薬水分散体を得ることを可能にしているのである。
【0017】
本発明が適用される農薬原体としては、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、植物生長調節剤、殺線虫剤等を挙げることができる。農薬水分散体が使用される場面では、通常農薬分散体を1000倍〜数千倍の水で希釈して、農薬として使用する。
【0018】
農薬水分散体に使用する乳化剤兼分散質としては、アニオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上とノニオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上との併用系、またはカチオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上とノニオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上との併用系が採用される。
【0019】
乳化剤を前記併用系とすると、得られる水分散体中の被分散体の体積平均粒径を小さくし、かつ水分散体の保存安定性を改善するために有効である。乳化剤兼分散質としては、炭素数が15以上の長鎖の炭化水素基を有するものが適している。炭化水素基は飽和、不飽和のいずれでも良い。長鎖炭化水素基の炭素数は15〜60程度である。さらに炭素数は30〜50であるのが、得られる農薬水分散体の保存安定性の点から好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ごく少量の水系分散媒であっても、分散質である農薬原体を微粒子化し、保存安定性よく水中に分散させた、高濃度の農薬原体の水分散体、およびそれらの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
農薬原体としては具体的に、イソプロピル−N−(3−クロロフェニル)カーバメート、4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イル−p−トルエンスルホネート、2−{4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3ジメチルピラゾール−5−イル}アセトフェノン、2−{4−(2,4−ジクロロ−m−トルオイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イルオキシ}−4−メチルアセトフェノン、N−2−ビフェニルスルフェニル−N’−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)ウレア、エチル5−{3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)ウレイドスルフォニル}−1−メチルピラゾール−4−カルボキシレート、メチル2−{3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)ウレイドスルフォニルメチル}ベンゾエート、3−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−1−{2−(2−メトキシエトキシ)−フェニルスルフォニル}ウレア、N−(2−クロロイミダゾール{1,2−a}ピリジン−3−イル−スルフォニル)−N’−(4,6−ジメトキシ−2−ピリミジル)ウレア、N’−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)N’’−(4−メチルフェニルスルフォニルアミノ)−N’’’−(4−エトキシカルボニル−1−メチルピラゾール−5−イル−スルフォニル)−グアニジン、N−(2−シクロプロピルカルボニルフェニルスルファモイル)−N’−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)ウレア、2,4−ビス(エチルアミノ)−6−メチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2−エチルアミノ−4−(1,2−ジメチルプロピルアミノ)−6−メチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−(β−ナフチルオキシ)プロピオンアニリド、N−(ホスフォノメチル)グリシン、(RS)−2−(2,4−ジクロロ−m−トリルオキシ)プロピオンアニリド、2,4,6−トリクロロフェニル−4’−ニトロフェニルエーテル、メチル2−{(4,6−ジメトキシ−ピリミジニル)オキシ}−6−{1−(メトキシイミノ)エチル}ベンゾエート、4−(4−クロロ−2−メチルフェノキシ)ブチリックアシッド、S−エチル−4−クロロ−2−メチルフェノキシチオアセテート、3,5−キシリルメチルカーバメート、2,4−ジクロロフェニル−3’−メトキシ−4’−ニトロフェニルエーテルが挙げられる。
【0022】
乳化剤兼分散質としては具体例に、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ポリエチレングリコールモノステアレート等のノニオン系乳化剤、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン系乳化剤が挙げられる。
【0023】
本発明では第1段階として、農薬原体のうちの半量以下、乳化剤兼分散質のうちの30%〜70%量および水系分散媒の混合物を、泡の発生を抑制した高速攪拌により乳化分散して乳化分散体を得ているが、第1段階で使用する農薬原体は少量である方が操作上好ましい。本発明では、農薬原体と乳化剤兼分散質は、予め溶解混合してから使用する事が好ましい。
【実施例1】
【0024】
以下、実施例および比較例で使用する各成分量「〜部」の意味は、「〜質量%」の意味と同様である。クロロ−IPC(イソプロピル−N−(3−クロロフェニル)カーバメート)(室温で固体)10部、ポリオキシエチレン(20モル)キャスターオイル5部、ポリオキシエチレン(15モル)キャスターオイル10部、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム1部、をPDM−50(泡レスミキサー、パドルミキサー複合機;日本ビーイーイー(株)社製)に入れ、約50℃に加温しながら、パドルミキサー20rpmにて溶解した。後、水19部をゆっくり注ぎ、泡レスミキサー5500rpmにて10分間攪拌し、平均粒子径約2μmのクロロ−IPC水分散体を得た。次いで、クロロ−IPC(室温で固体)40部、ポリオキシエチレン(20モル)キャスターオイル5部、ポリオキシエチレン(15モル)キャスターオイル10部をPDM−50(泡レスミキサー、パドルミキサー複合機;日本ビーイーイー(株)社製)に入れ、約50℃に加温しながら、パドルミキサー20rpmにて溶解し、先に調製しておいたクロロ−IPC水分散体へ注ぎ込み、泡レスミキサー5500rpmにて10分間撹拌し、平均粒子径4.3μmの50%クロロ−IPC水分散体を得た。
【実施例2】
【0025】
DCPA(3,4−ジクロロプロピオンアニリド)(室温で固体)10部、ポリオキシエチレン(20モル)キャスターオイル5部、ポリオキシエチレン(15モル)キャスターオイル10部、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム1部、をPDM−50(泡レスミキサー、パドルミキサー複合機;日本ビーイーイー(株)社製)に入れ、約50℃に加温しながら、パドルミキサー20rpmにて溶解した。後、水19部をゆっくり注ぎ、泡レスミキサー5500rpmにて10分間攪拌し、平均粒子径約2μmのDCPA水分散体を得た。次いで、DCPA40部、ポリオキシエチレン(20モル)キャスターオイル5部、ポリオキシエチレン(15モル)キャスターオイル10部をPDM−50(泡レスミキサー、パドルミキサー複合機;日本ビーイーイー(株)社製)に入れ、約50℃に加温しながら、パドルミキサー20rpmにて溶解し、先に調製しておいたDCPA水分散体へ注ぎ込み、泡レスミキサー5500rpmにて10分間撹拌し、平均粒子径3.5μmの50%DCPA水分散体を得た。
【実施例3】
【0026】
DCMU(3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル−ウレア)(室温で固体)10部、ポリオキシエチレン(20モル)キャスターオイル5部、ポリオキシエチレン(15モル)キャスターオイル10部、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム1部、をPDM−50(泡レスミキサー、パドルミキサー複合機;日本ビーイーイー(株)社製)に入れ、約50℃に加温しながら、パドルミキサー20rpmにて溶解した。後、水19部をゆっくり注ぎ、泡レスミキサー5500rpmにて10分間攪拌し、平均粒子径約2μmのDCMU水分散体を得た。次いで、DCMU40部、ポリオキシエチレン(20モル)キャスターオイル5部、ポリオキシエチレン(15モル)キャスターオイル10部をPDM−50(泡レスミキサー、パドルミキサー複合機;日本ビーイーイー(株)社製)に入れ、約50℃に加温しながら、パドルミキサー20rpmにて溶解し、先に調製しておいたDCMU水分散体へ注ぎ込み、泡レスミキサー5500rpmにて10分間撹拌し、平均粒子径2.8μmの50%DCMU水分散体を得た。
【実施例4】
【0027】
DBN(2,6−ジクロロベンゾニトリル)(室温で固体)10部、ポリオキシエチレン(20モル)キャスターオイル5部、ポリオキシエチレン(15モル)キャスターオイル10部、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム1部、をPDM−50(泡レスミキサー、パドルミキサー複合機;日本ビーイーイー(株)社製)に入れ、約50℃に加温しながら、パドルミキサー20rpmにて溶解した。後、水19部をゆっくり注ぎ、泡レスミキサー5500rpmにて10分間攪拌し、平均粒子径約3μmのDBN水分散体を得た。次いで、DBN40部、ポリオキシエチレン(20モル)キャスターオイル5部、ポリオキシエチレン(15モル)キャスターオイル10部をPDM−50(泡レスミキサー、パドルミキサー複合機;日本ビーイーイー(株)社製)に入れ、約50℃に加温しながら、パドルミキサー20rpmにて溶解し、先に調製しておいたDCMU水分散体へ注ぎ込み、泡レスミキサー5500rpmにて10分間撹拌し、平均粒子径6.5μmの50%DBN水分散体を得た。
【実施例5】
【0028】
XMC(3,5−キシリルメチルカーバメート)(室温で固体)10部、ポリオキシエチレン(20モル)キャスターオイル5部、ポリオキシエチレン(15モル)キャスターオイル10部、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム1部、をPDM−50(泡レスミキサー、パドルミキサー複合機;日本ビーイーイー(株)社製)に入れ、約50℃に加温しながら、パドルミキサー20rpmにて溶解した。後、水19部をゆっくり注ぎ、泡レスミキサー5500rpmにて10分間攪拌し、平均粒子径約2μmのXMC水分散体を得た。次いで、XMC40部、ポリオキシエチレン(20モル)キャスターオイル5部、ポリオキシエチレン(15モル)キャスターオイル10部をPDM−50(泡レスミキサー、パドルミキサー複合機;日本ビーイーイー(株)社製)に入れ、約50℃に加温しながら、パドルミキサー20rpmにて溶解し、先に調製しておいたXMC水分散体へ注ぎ込み、泡レスミキサー5500rpmにて10分間撹拌し、平均粒子径4.8μmの50%XMC水分散体を得た。
【0029】
[比較例1]
クロロ−IPC(イソプロピル−N−(3−クロロフェニル)カーバメート)50部、ポリオキシエチレン(30モル)キャスターオイル0.5部、ポリオキシエチレン(42モル)キャスターオイル4.0部、ポリオキシエチレン(50モル)キャスターオイル0.5部、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム3部、オレイルアルコール10部をCB−3S−100(ホモミキサー、ディスパー、アンカーミキサー3軸複合機;特殊機化工業(株)社製)に入れ、約50℃に加温しながら、アンカーミキサー100rpmにて溶解した。後、水32部を0.1kg/minの速度で滴下し、ホモミキサー2600rpmにて攪拌し、平均粒子径0.9μmのクロロ−IPC水分散体を得た。
【0030】
[比較例2]
DCPA(3,4−ジクロロプロピオンアニリド)50部、ポリオキシエチレン(30モル)キャスターオイル0.5部、ポリオキシエチレン(42モル)キャスターオイル4.0部、ポリオキシエチレン(50モル)キャスターオイル0.5部、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム3部、トルエン10部をCB−3S−100(ホモミキサー、ディスパー、アンカーミキサー3軸複合機;特殊機化工業(株)社製)に入れ、約50℃に加温しながら、アンカーミキサー100rpmにて溶解した。後、水32部を0.1kg/minの速度で滴下し、ホモミキサー2600rpmにて攪拌し、平均粒子径0.7μmのDCPA水分散体を得た。
【0031】
[比較例3]
DCMU(3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア)50部、ポリオキシエチレン(30モル)キャスターオイル0.5部、ポリオキシエチレン(42モル)キャスターオイル4.0部、ポリオキシエチレン(50モル)キャスターオイル0.5部、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム3部、キシレン10部をCB−3S−100(ホモミキサー、ディスパー、アンカーミキサー3軸複合機;特殊機化工業(株)社製)に入れ、約50℃に加温しながら、アンカーミキサー100rpmにて溶解した。後、水32部を0.1kg/minの速度で滴下し、ホモミキサー2600rpmにて攪拌し、平均粒子径1.1μmのDCMU水分散体を得た。
【0032】
[比較例4]
DBN(2,6−ジクロロベンゾニトリル)50部、ポリオキシエチレン(30モル)キャスターオイル0.5部、ポリオキシエチレン(42モル)キャスターオイル4.0部、ポリオキシエチレン(50モル)キャスターオイル0.5部、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム3部、ケロシン10部をCB−3S−100(ホモミキサー、ディスパー、アンカーミキサー3軸複合機;特殊機化工業(株)社製)に入れ、約50℃に加温しながら、アンカーミキサー100rpmにて溶解した。後、水32部を0.1kg/minの速度で滴下し、ホモミキサー2600rpmにて攪拌し、平均粒子径1.0μmのDBN水分散体を得た。
【0033】
[比較例5]
XMC(3,5−キシリルメチルカーバメート)50部、ポリオキシエチレン(30モル)キャスターオイル0.5部、ポリオキシエチレン(42モル)キャスターオイル4.0部、ポリオキシエチレン(50モル)キャスターオイル0.5部、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム3部、酢酸エチル10部をCB−3S−100(ホモミキサー、ディスパー、アンカーミキサー3軸複合機;特殊機化工業(株)社製)に入れ、約50℃に加温しながら、アンカーミキサー100rpmにて溶解した。後、水32部を0.1kg/minの速度で滴下し、ホモミキサー2600rpmにて攪拌し、平均粒子径1.0μmのXMC水分散体を得た。
【実施例6】
【0034】
[保存安定性1]
実施例1〜実施例5および比較例1〜比較例5で得られた水分散体500gをそれぞれ蓋付きガラス容器に入れ、−10℃で3カ月間保存した。1カ月経過ごとに粘度を測定器により計測し、水分散体の経時安定性を調べた。測定結果を[表1]に示した。実施例1〜実施例5で得られた、泡の発生を抑制した高速攪拌装置によって乳化分散された水分散体は、粘度の上昇が無く、安定性に優れていることがわかる。一方、比較例1〜比較例5で得られた、泡の発生を抑制されていない装置によって乳化分散された水分散体は、粘度の上昇が激しく、安定性が悪いことがわかる。
【0035】
【表1】

【実施例7】
【0036】
[保存安定性2]
実施例1〜実施例5および比較例1〜比較例5で得られた水分散体500gをそれぞれ蓋付きガラス容器に入れ、−10℃、室温(20℃)、40℃の3種の温度条件でそれぞれ3カ月間保存し、1カ月ごとの粒度分布を「MICROTRAC MP−3000」(日機装(株)社製)によって計測することにより、平均粒子径を求めた。得られた結果を[表2]、[表3]、[表4]に示した。実施例1〜実施例5で得られた、泡の発生を抑制した高速攪拌装置によって乳化分散された水分散体は、分散当初の粒子径を維持して粒子径の増加が無く、安定性に優れていることがわかる。一方、比較例1〜比較例5で得られた、泡の発生を抑制されていない装置によって乳化分散された水分散体は、粒子径の増加が認められ、安定性が悪いことがわかる。
【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0040】
ごく少量の水系分散媒量であっても、分散質である農薬原体を微粒子化し、水中に保存安定性よく分散させた高濃度の農薬原体の水分散体であって、使用場面では容易に水で数千倍に希釈されることを要求される農薬に好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬水分散体であって、油溶性の農薬原体を農薬水分散体100質量%に対して50質量%〜75質量%含有し、乳化剤兼分散質としてアニオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上とノニオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上との併用系、またはカチオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上とノニオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上との併用系を、農薬水分散体100質量%に対して20質量%〜45質量%含有し、水系分散媒を農薬水分散体100質量%に対して5質量%〜20質量%含有し、前記した農薬原体のうちの半量以下、前記した乳化剤兼分散質のうちの30%〜70%量および前記した水系分散媒全量の混合物を、泡の発生を抑制した高速攪拌により乳化分散して乳化分散体を得、さらに泡の発生を抑制した高速攪拌を行いながら、前記した農薬原体のうちの残量および前記した乳化剤兼分散質のうちの残量の均一混合物を、前記した乳化分散体に添加することによって得られる高濃度の農薬水分散体。
【請求項2】
前記した、農薬水分散体が除草剤水分散体であり、農薬原体が除草剤である請求項1記載の高濃度の農薬水分散体。
【請求項3】
前記した、農薬水分散体が殺虫剤水分散体であり、農薬原体が殺虫剤である請求項1記載の高濃度の農薬水分散体。
【請求項4】
前記した、農薬水分散体が殺菌剤水分散体であり、農薬原体が殺菌剤である請求項1記載の高濃度の農薬水分散体。
【請求項5】
前記した、農薬水分散体が植物生長調節剤水分散体であり、農薬原体が植物生長調節剤である請求項1記載の高濃度の農薬水分散体。
【請求項6】
前記した、泡の発生を抑制した高速攪拌が高速攪拌装置泡レスミキサーによって行われることを特徴とする、請求項1〜請求項5いずれかの項に記載の高濃度の農薬水分散体。
【請求項7】
農薬水分散体であって、油溶性の農薬原体を農薬水分散体100質量%に対して50質量%〜75質量%含有し、乳化剤兼分散質としてアニオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上とノニオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上との併用系、またはカチオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上とノニオン系乳化剤から選択される1種もしくは2種以上との併用系を、農薬水分散体100質量%に対して20質量%〜45質量%含有し、水系分散媒を農薬水分散体100質量%に対して5質量%〜20質量%含有し、前記した農薬原体のうちの半量以下、前記した乳化剤兼分散質のうちの30%〜70%量および前記した水系分散媒全量の混合物を、泡の発生を抑制した高速攪拌により乳化分散して乳化分散体を得、さらに泡の発生を抑制した高速攪拌を行いながら、前記した農薬原体のうちの残量および前記した乳化剤兼分散質のうちの残量の均一混合物を、前記した乳化分散体に添加することを特徴とする高濃度の農薬水分散体の製造方法。
【請求項8】
前記した、農薬水分散体が除草剤水分散体であり、農薬原体が除草剤である請求項7記載の高濃度の農薬水分散体の製造方法。
【請求項9】
前記した、農薬水分散体が殺虫剤水分散体であり、農薬原体が殺虫剤である請求項7記載の高濃度の農薬水分散体の製造方法。
【請求項10】
前記した、農薬水分散体が殺菌剤水分散体であり、農薬原体が殺菌剤である請求項7記載の高濃度の農薬水分散体の製造方法。
【請求項11】
前記した、農薬水分散体が植物生長調節剤水分散体であり、農薬原体が植物生長調節剤である請求項7記載の高濃度の農薬水分散体の製造方法。
【請求項12】
前記した、泡の発生を抑制した高速攪拌が高速攪拌装置泡レスミキサーによって行われることを特徴とする、請求項7〜請求項11いずれかの項に記載の高濃度の農薬水分散体の製造方法。


【公開番号】特開2007−230889(P2007−230889A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52712(P2006−52712)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000005315)保土谷化学工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】